TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#1044/13-Sep-2010

今週号は、デジタル写真と iOS の話題で一杯だ。まず初めに Tonya Engst が iOS 4.1 を概観し、これが何を提供するか、どの程度うまく動くかを調べる。それから、Apple が iOS の制限を緩和し、より透明な App Store 審査基準を公開したことについて Adam Engst が検討する。ゲスト寄稿者の Jeff Lynch は、写真家がデジタル写真集を iPad の上で最高の見栄えにするためのコツを説明する。最後に、Charles Maurer が詳細にわたる論説を寄稿してくれた。というより不平不満を詳細にぶちまけたと言うべきだろうか。今日のデジタルカメラのどこがいけないかというテーマだ。(実は、機能が足りないのが問題なのではない。)また、私たちの最新のスポンサー、The Data Rescue Center を歓迎するとともに、先週の DealBITS で当選しなかった方のために Raskin の値引き販売をお知らせする。今週の注目すべきソフトウェアリリースは、Carbon Copy Cloner 3.3.4、Firefox 3.6.9、PDFpen/PDFpenPro 5.0.1、Safari 5.0.2/4.1.2、iWeb 3.0.2、それに Cyberduck 3.6.1 だ。

記事:

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iOS 4.1:それは機能するか? そしてインストールすべきか?

  文: Tonya Engst <[email protected]>
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

Apple が先週発表した様に、iOS 4.1 は今や iTunes 経由でダウンロードそしてインストールが可能となっている。私はこれをインストールすることをお勧めする。対象は勿論これを走らせることの出来る iPhone 或いは iPod touch で、具体的には両方のモデルの第一世代のもの以外である。iPad のユーザーは iOS 4.2 まで待たないといけないが、予定は November 2010 で、その時には iOS 4 の機能が取り入れられる。

もう既に多くの人が問題無しに iOS 4.1 にアップデートしており、新機能と問題修正を考慮すればアップデートする価値があると言える。例えば、iPhone 3G での性能改善、より完全になった Bluetooth サポート、そして iPhone 4 上での HDR 写真などは、これらの機器の有用性を高めている;他の変更も、例えば iTunes Store での TV レンタルそして新しい Game Center の様なものは多くのユーザーにとってより楽しめるものを提供していると言えるであろう。

もし iPhone 4 をお持ちなら、他の機器には無い幾つかの iOS 4.1 での変更がなされている:

私は、この修正は誰にでも働くわけではないという報告を読んだ事がある。もしあなたがそれに該当するなら、通話中は iPhone をあなたの耳と頬に当てて持つようにすると良い - ひょっとするとこれまでの通話中断のせいで顔から離して持つような癖がついてしまっている可能性がある。私はまた近接センサーに関してまだ残っている問題は Settings > General > Reset で iPhone の設定をリセットすることで解決できるという進言も見た事がある。Reset All Settings をタップするのである。勿論、この後はこれまで構築した自前の設定はすべてやり直さなければならなくなるので、自分の設定を失ってもこの問題の解決を試みたいと言うのでなければ、やるべきではない。もう数日待って更なる情報が出てこないか様子を見てみるのも一つの手である。

もしiPhone 3G の他に iOS 4 コンパチの機器をお持ちなら、新しい Game Center アプリがホームスクリーンに現れ、マルチプレーヤーのゲームへのアクセスが可能になる。

そして、どの iOS 4 コンパチの機器かに拘わらず iOS 4 をインストールすると次の様な変更が加えられる:

新しい機能や問題修正についてもっと読みたければ "Apple、iOS 4.1 と 4.2 をプレビュー" (1 September 2010) をご覧頂きたい。

Apple のリリースノートに挙げられている重要なもう一つの修正は iPhone 3G に対する性能向上である。私の記事 "iOS 4 ベースの iPhone 3G をスピードアップ" (27 August 2010) のフォローアップとして、私の iPhone 3G にこのアップデートをインストールした。私には iPhone 3G が iOS 3.1.3 の時と全く同じに速くなったのどうかは分からないが、ほぼ同じようには感じる。Web 上には私の印象と同じ様な報告が沢山見られる。もし自分自身で見てみたいと言うのであれば、iPhone 3G Speed Test を見られたい:Lifehacker での iOS 4.0 対 iOS 4.1 ビデオ。進歩という高速道路上に iPhone 3G を見捨てたまま置き去りにしなかった Apple に対して賛辞を贈りたいが、そもそも iPhone 3G の所有者が劣等な性能とその問題に関する貧弱な情報提供に何ヶ月もさらされる事など起きなかったならばもっと良かったのに。

iOS 4.1 で第二世代 iPod touch の性能問題も解決したと報告している人が何人かいるが、Apple は iOS 4.1 のリリースノートの中ではそれについて何も触れていない。

更に、iOS 4 全体としての新しい機能に Notes アプリからのメモを MobileMe と同期出来るというのがある。iOS 4.1 で Apple はどういうわけかこの機能を iPhone 3G と第二世代iPod touch から取り除いてしまった。Apple はこの削除について、先週改訂したサポート記事の中で簡単に触れたが、もっときちんとしたリリースノートにしておけば、自分のメモをワイヤレスに同期させる能力を不意に失ってしまった人達の時間と混乱を未然に防げていただろうにと思えてならない。

(ところで、何人かの読者が、iPhone 3G をスピードアップすることに関する記事の中で紹介したヒントの幾つかが iOS 3.1.3 を走らせている iPhone 3G の動作速度も改善できたとのコメントを寄せてくれた。と言うことで、この記事はもしあなたの iPhone - どのモデルであれ - の動作が遅くなっていると感じるのであれば、読む価値があるかもしれない。)

iOS 4.1 をインストールするには結構時間がかかるので、家を出ようとする直前にアップデートを開始するのは止めた方が良い。私の場合、私の iPhone 3G に iOS 4.1 をダウンロードしそしてインストールするのに約 30 分要したし、私の iPhone 3GS では 約 20 分かかった。いずれの場合でも私は既に iOS 4.0.2 を走らせていた。もし未だ iOS 3.1.3 を走らせているのであれば、悪くすると数時間はかかってしまう場合も想定しておくべきであり、もしあなたの機器には多くのコンテンツが載っている場合はとりわけそうである。

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Apple、iOS の制限を緩和し、アプリの審査基準を公開

  文: Adam C. Engst <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

これは異例と言える動きだが、Apple は先週、iOS Developer Program License Agreement (iOS 開発者プログラムライセンス規約) を変更して従来の制限を緩和すると発表した。おそらくその目的は、独占禁止法に関する検査を受けるリスクを減らそうということではないかと思われる。

それと同時に、Apple は開発者向けに App Store Review Guidelines (App Store 審査ガイドライン) をリリースするとともに、App Review Board (アプリ審査掲示板) を作って却下に対する苦情に対処できるようにした、と発表した。これはちょうど良い頃合いだ。却下されたもののうち 99.99 パーセントがきちんとした技術的理由によるものだということは間違いないと思うが、残る、議論の余地のある却下については、これまで Apple にとっても Apple コミュニティー全体にとっても具合の悪いものとなっていた。では、まず初めに、この App Store の問題について見て行こう。

App Store 審査基準 -- 正直言って、この App Store 審査ガイドラインは全体としては至極妥当なものに思える。ただ、依然として曖昧な点がかなり残っているので、Apple がその気になれば何でもできるようになっている。けれども、基準はわかりやすい言葉で書かれており、また Apple は明らかにアプリと本や楽曲とを区別している。本や楽曲については、同社は iTunes Store において監督行為をしていないからだ。何はともあれ、事実が公式の言葉としても述べられるのは良いことだ。

主として開発者に興味のある多数の具体的なガイドラインを別にすれば、今回 Apple が並べ上げたいくつかの大きなテーマは以下のように要約できる:

最後に、提出したアプリが却下された場合には、App Review Board に申し立てができる。ただ、Apple は続けてこう述べている:「メディアに駆け込んで我々への非難を述べても何の役にも立たない。」

私としては、この最後の部分がきちんと実現されることを願っている。なぜなら過去においては、公衆からの非難が唯一の理由でアプリで却下が取り消されるという事例が何度もあったからで、そういう場合に公衆からの非難を可能にしたのはメディアの報道に他ならなかったからだ。(そのような報道へのリンクは App Store での検閲を扱った Wikipedia 記事 に載っている。)Apple が独自の判断のみでそうした決断を下すことがあり得ただろうか? 私にはそうは思えない。

このような種類の状況に光を照らすことこそ、 まさに 報道のすべきことだ。一般大衆は Steve Jobs の私生活についてすべてを知る権利は持っていないが、Apple が政治的風刺を App Store から却下しようとしているとすれば、それは絶対に一般大衆の関心の対象となるべきことだ。

アプリ開発言語への制限を撤廃 -- ここからは、iOS Developer License Agreement (iOS 開発者プログラムライセンス規約) への変更について見て行こう。まずは、次の条項が完全に削除された:

 アプリケーションはもともと Objective-C、C、C++、あるいは iPhone OS WebKit エンジンで実行される JavaScript、のいずれかで書かれたものでなければならず、C、C++、および Objective-C で書かれたコードのみが Apple の文書化した API に直接リンクしてコンパイルできる。(例えば、仲介的翻訳あるいは互換レイヤーまたはツールを通じて文書化 API ににリンクするアプリケーションは禁止される。)

この条項は、数ヵ月前に Adobe の Flash-to-iPhone コンパイラなどクロスコンパイラの使用を禁じるために追加されたものだ。(2010 年 4 月 9 日の記事“iPhone Developer Agreement の変更で Flash-to-iPhone コンパイラが禁止に”参照。)表向きの理由は、セキュリティ脆弱性の可能性を減らすことと、クロスプラットフォームのアプリの低品質のインターフェイスを避けることであった。

忘れてならないのは、これらすべてが Apple が Adobe を相手に Flash をめぐる論争を続けていた期間に起こったということで、Steve Jobs は論争を始めたのは Adobe だと主張している(2010 年 6 月 11 日の記事“Steve Jobs、D8 にて(ほとんど)すべてを明かす”参照)けれど、双方でが感情的になっていたことは疑いなく、その悪感情がこの全面的禁止令という結果を生み出して、Adobe の Flash-to-iPhone コンパイラを標的とするに至ったということもあり得る。

では、なぜそれが変更されたのか? なぜ今なのか? New York Post に載った短い記事によれば、Apple がクロスコンパイラを禁止したことに対し、U.S. Federal Trade Commission (米国連邦取引委員会) と、ヨーロッパの監査機関が、独占禁止に関する調査に乗り出したという。いずれの側からもコメントは得られなかったが、この Post の記事に真実味があるとすれば、Apple が前言を撤回したのは独占禁止法に関係した意味合いがあったとも考えられる。

アプリにインタプリタによるコードを容認 -- 次に、これまでいかなる方法でもアプリが他の実行可能コードをインストールしたり起動したりすることを禁止していた条項が、今回改訂された。従来は、プラグイン・アーキテクチャや、他のフレームワークの呼び出し、他の API の使用、Apple が提供あるいは承認したコード以外のインタプリタによるコードのダウンロードや使用が、すべて禁止されていた。

この条項は今後も実行可能コードのダウンロードやインストールは禁止とするが、インタプリタによるコードについては、すべてのスクリプトやコード、それにインタプリタがそのアプリ内部に含まれておりダウンロードされるものでない限り、明示的に許可している。ただし、一つだけ例外として、Apple による内蔵の WebKit フレームワークがダウンロードし走らせるコードは制限から除外されている。

ここでもやはり、今回の変更は開発者が独自のインタプリタによるコードを作ってアプリ内部で使用することを認めるためにデザインされたもののようだ。ただし、それらのコードをダウンロードすることを認めなかったのは、それを認めれば大きなセキュリティホールに結び付く可能性があるからだろう。そしてここでも、今回の決断の技術的側面はさておき、これが独占禁止に関する調査と関係があることは十分考えられる。

ユーザーデータの収集に関する制限を簡略化 -- 最後に、ユーザーや機器のデータを収集できる状況についてこれまでかなり具体的に制限していた条項が、大幅に簡略化された。従来は、データをいつどのようにして収集してよいかがこの条項によってこと細かに規定されていた。(基本的には、そのアプリの使用に直接関係あるサービスまたは機能を提供するためのものか、あるいは広告のための、それも Apple が広告目的に利用できると指定したデータセットに含まれるものに限るとされていた。)今回、この条項は単にアプリがユーザーの承認なしにユーザーまたは機器のデータを収集してはならず、収集の目的はアプリの機能の拡張または広告配信のために限られ、アプリが分析ソフトウェアを用いて機器のデータを収集してサードパーティに送信することを禁ずる、と述べるのみとなっている。

さきほどの New York Post の記事によれば、Apple の iAd サービスについても独占禁止関係の調査が入っているかもしれないといい、iOS 開発者プログラムライセンス規約に対するこの変更も、サードパーティの広告サービスに対する制限を緩めるものと解釈することはたやすい。実際、既に Google もまさにそのことを明言している。

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あなたの最高を iPad 写真作品集で見せる

  文: Jeff Lynch <[email protected]>
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

私は最近私の写真作品集として使うため iPad を買った。正直言うと、そんなうまい話は無いだろうと思っていたのだが、新しい iPad を手にして一週間たった後では、もうプリントの写真集に戻るなど考えられない。しかしながら、持っている画像を iPad 上で最高の状態で見える様にするというのは最初思っていたほど簡単ではなかった。

多くの写真家と同様、私も Adobe Photoshop Lightroom 3 を使って私の raw ファイルを管理しそしてそれらを JPEG としての出力する準備をする。過去数年間にわたって自分用に幾つかの異なった Export Presets を築き上げてきた。これは最終の画像がどの様に使われるのか、つまりプリントなのか Web 上かによっている。幾つかの画像を私の既存の設定を使ってエクスポートしそして iTunes を使って iPad にインポートしてみたが、全ての画像が私の MacBook 上の Lightroom の中での様に鮮明には見えるとは限らないことに気付いた。

問題の一部は物理的なものである。iPad は MacBook ではなく、そして iPad の 9.7-inch スクリーンは最も小さい MacBook Pro の 13.3-inch スクリーンよりもずっと小さい。iPad の解像度は固定で 1024 x 768 そしてインチ当たり 132 ピクセルであり、これは MacBook Pro の 1280 x 800 そしてインチ当たり 101 ピクセルの解像度よりも明らかに少ない。これらの違いから、あなたの画像は iPad 上でよりも MacBook 上での方が常に良く見えることになる。しかしながら、この土俵の違いをなくすために Lightroom の中で出来る事が幾つかある。

写真セットと仮想コピー -- 最初にする事は、iPad 画像を保存するため別個の Lightroom Collection Set を作成することである。私は通常、私の iPad 作品集に入れる個々の画像の Virtual Copy を一つ作成し、そしてこれらを Landscape 或いは Portrait (横或いは縦位置) 写真セットへと移す。

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私は私の画像をこの様に分ける、と言うのも私の作品集を見るお客さんが画像を繰って行く時に iPad を横から縦へそして逆へと始終回し続けないで済むからである。仮想のコピーを使うことも大事である、何故ならばこれらの画像はプリントしたり或いは Web イメージとする時とはちょっと違う風に処理しなければならないからである。

iPad 用に切り取る -- 次にしたい事は、個々の画像を iPad の生来の 4:3 (1024 x 768 ピクセル) アスペクト比を使って切り取ることである。これまで投影する PowerPoint や Keynote プレゼンテーションの中で使うために画像を作った経験があるならば、これが何故それ程大事なのかはお分かり頂けると思う。プレゼンテーションのためには、通常あなたの画像を投影スクリーン上で可能な限り大きくしたいと思う。iPad の場合も同じで、違いはスクリーンを自分で持ち歩くことだけである。

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いったんあなたの画像が正しく切り取られたら、iPad 上であなたの画像が如何にシャープにそして生き生きと見えるかに関して大きな違いを見せる二つの Lightroom 設定があることを私は見つけた。

iPad のためにエクスポートする -- 何時間もの試行錯誤の末見つけた最後のキーは、以下に示すようにあなたの画像を iPad の生来の精細度にぴったり合わせてエクスポートすることである。これをすることで iPad の Photos アプリがこっそりとその画像を再サイズ (そして再サンプリング) するのを、これは画質を損なう可能性を持つ、防止する事が出来る。

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iPad 上に表示された画像の鮮明さの違いは大きい、そしてこれを確認するため私の 21 メガピクセル Canon 5D Mark II で撮った幾つかのフルサイズの JPEG をエクスポートした。これらの 15 MB のファイルは、上記のスクリーンショットに示された設定を使ってエクスポートされた 780 KB のファイルよりもより柔らかで鮮やかさも劣る様に見える。

結論 -- iPad は信じられない程素晴らしい機器であり、そして我々がパーソナルコンピュータについて考えるやり方をも変えてしまうかもしれない。今でもお客様とは顔つき合わせて会うことにしている写真家にとっては (もしあなたが顔つき合わせてなんて時代遅れと考えているならば、それはとんでもない考え違いである)、それは絶え間なく変化する作品集を見せるために費用効果の高いツールである - 見せるのが静止画か或いはビデオかに拘わらず。それにおもちゃとしても楽しいし (しかし子供に言っちゃダメ)。

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[Jeff Lynch は、商業、風景、そして自然写真家で、ブロガーで、そして作家でもあり Sugar Land, Texas を本拠地としている。]

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The Data Rescue Center が TidBITS のスポンサーに

  文: Adam C. Engst <[email protected]>
  訳: 大石哲伸<tedz2000@gmail.com>

喜ばしい事に、私たちはThe Data Rescue Center を最新のスポンサーとして迎えいれる事になった。The Data Rescue Center と云う名前をご存じないかもしれないが、親会社の方には覚えがあるかもしれない。Prosoft EngineeringData RescueDrive Genius というソフトウエアを制作したメーカーである。Prosoft は1985年からの操業でドライバーやディスクに関連するコードを書き、これらは Apple に Drive Setup そして、iTunes のディスク焼き込み機能としてライセンスされている。

2009年に The Data Rescue Center が創業した時に Prosoft が設定したゴールは、手頃な値段でデータ復旧サービスを提供し、ハードディスクの物理的な損傷に対しても、ロジカルな(物理的な障害ではない)障害に対しても、両方に対応する事である。彼らの知るところでは、沢山の名高いデータ復旧会社が存在するにもかかわらず、彼ら以外の会社では数百あるいは数千ドルを復旧作業の対価として請求していて、実際この作業には彼らが提供している99ドルの Data Rescue ソフトウエアを必要とするだけなのである。

私が The Data Rescue Center 社長の Gordon Bell と話した時に彼が語ったところでは、最初に人々を安心させるために、彼らのディスクが変な音を立てている時に(あるいは物理的な損傷を示す他の兆候が出ている時に) Data Rescue のデモ版を使用するように勧める。そうすると、復旧可能なファイルの一覧が表示され、ファイル一個から復旧を進めることが出来る。もし、これが動作すれば、オンラインで簡単に登録して使用することが出来る。(心得ておかなければいけない事は、Data Rescue はファイルを他のディスクに復旧する事である。ディスクの構造を修復しようとはしない。だから、おそらく復旧した後にフォーマットを改めて行い、データを元に戻すと云う事をやりたくなるだろう。バックアップをとっておいた方が良い!)

もしあなたがどうにも確信が持てないのなら、技術者と話し 、どのような対策をとれば良いのか無料でアドバイスを受ける事が出来る。もし、最終的にロジカルな問題を抱えるディスクを送ることになり、診断と復旧を Data Rescue を利用して行う Red Box サービス(彼らはハードディスクを安全に梱包するため、専用の箱を送ってくる)を受けた場合、費用は150ドル程になる。このコストには、あなたのデータと一緒に送り戻されてくる Data Rescue のコピーも含まれ、もし、既にソフトウエアを持っている場合には100ドルの割引が適用される。

物理的な損傷の場合の費用は、もちろん高くなるし、場合によって違ってくる。そのために受け取りから1日から2日のうちに、技術者が電子メールで診断内容を送付してくる。これに伴って電話での質問に対して回答を得る事ができる。物理的な損傷に対しての費用は最低でも300ドルであり、Gordon Bell 曰く、通例では600ドルから1000ドルの費用が人件費として、クリーンルーム環境の使用や交換部品費用としてかかる。このすべての作業上、もし、物理的障害に対してデータ復旧が出来なかった場合に費用は発生しない。ただしディスクのヘッドが損傷していた場合は例外で、これはデータ復旧を試みる際に交換したヘッドも損傷してしまうことがよくあるからである。

The Data Rescue Center の復旧サービスは素敵に見えるが、もしバックアップをきちんと取っていれば、その必要がなくなる事をいつも念頭においておく事は有益である。しかし、The Data Rescue Center は、データ復旧と云う説明書きとはまた種類の違うサービスも提供している。実際、彼らは 多くの写真を保管している -物理的な写真をデジタル形式へスキャンするので原本を失う危険が無くなる(そして、これらを最近のデジタル写真のように扱うことが出来る)。この用途で彼らは素晴らしい Kodak 製スキャナーを使用している。読者の中には自分自身のスキャナーでスキャンできる方もいるかもしれないが、多くの人が持っていない。値段づけ(写真一枚を300dpi の画像にするのに0.29ドル、600dpi で0.39ドル、1200dpi で0.49ドル)に関して Gordon Bell に聞くと、かなり大きく引き延ばさない限り 300dpi あれば十分であり、スキャン作業は彼らのオフィスがあるシリコンバレーで行い、いくつかの会社が行っているようにインドへ送り出したりはしていない。

同様に、もし、あなたのデータが古いハードディスクや、テープ機器、Zip や Jaz カートリッジのようなものに縛られてしまっている場合には、The Data Rescue Center があなたのデータをハードディスクや DVD に移して「復旧」してくれる。彼らは古いカセットテープやビデオテープすらもデジタル化して、様々な形式にしてくれる。 データの移行費用はもちろん、様々であり、移行先のハードディスクや DVD の費用は含んでいないが、これを提供する事はできる。

正直に云って、私自身はこれまで復旧サービスを必要としなかった。バックアップをきちんと取っていたからである。しかし、古い写真がたくさんあって、デジタル化したいし、ビデオテープにしても長年デジタル化したいと思いながら果たせなかった。だから、The Data Rescue Center のサービスをいくつか、保管しているものの整理を行う時間が出来次第試してみたい。そして、アナログのままで廃れてしまわないようにすべきなのはどれとどれか、 見極めたい。

The Data Rescue Center の TidBITS や Mac コミュニティーに対するサポートに感謝したい。

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DealBITS 値引き: Raskin 1.1 が 20% 安くなる

  文: Adam C. Engst <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

先週の DealBITS 抽選で当選し、 Raskin 1.1 ($49 相当) を受け取ることになったのは、aol.com の James Smith、gmail.com の Dave Gerlits、earthlink.net の Stephen Narron、aol.com の Ernest Friar の4名だ。おめでとう! 残念ながら当選しなかった皆さんもがっかりすることはない。Raskin Software ではすべての TidBITS 読者を対象に、2010 年 9 月 27 日までの期間、Raskin 1.1 を $20 値引きで提供しているからだ。つまり、価格がたったの $29 となる。値引き価格で購入するには、Raskin Software ストアへのリンクから注文する。今回 DealBITS 抽選に応募して下さった 408 名の皆さんに感謝したい。また今後の DealBITS 抽選もお楽しみに!

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デジタルカメラのどこがいけないか

  文: Charles Maurer
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

今日の私は手当たり次第ものに噛み付きたい気分だ。この写真をご覧あれ:

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私が噛み付きたい気分でいる理由は、妻の Daphne のコンパクトカメラがたった三年間、それもごくたまに使っただけなのに、駄目になってしまい、その上それに代わるべきまともなカメラがどうしても見つからないからだ。私はいろいろの「シンプルな」コンパクトカメラを見てみたが、どれもこれも複雑過ぎるものばかりだった。

今から一世紀前、George Eastman は「あなたはシャッターを押しさえすれば、後は我々がやります」のスローガンで、一財産を成した。[訳者注: George Eastman ははイーストマン・コダック社の創業者で、ロールフィルムの発明者です。]ところが今日、彼の後継者たちはこう言っているのだ:「あなたは百ページもあるマニュアルを読んで、その曖昧なところもすべて解読し、それを覚え、そこで学んだことを、写真を撮る度に生かさなければなりません。その上で、あなたがシャッターを押しさえすれば、後は我々がやります。」

「シンプルな」コンパクトカメラ -- Daphne と私は Samsung EX1 を買うことに決めた。(米国では Samsung TL500 と呼ばれ $400 で販売されている。)この機種を選ぶにあたり、私たちは記事“デジタルカメラを買わずに済ます方法”(2010 年 6 月 17 日) に私が書いたコンパクトカメラ購入への助言に従った。つまり、画像安定化機能を持っていて、ズームレンズを備え、ディスプレイが見やすいものの中で、メガピクセル数が最も少ないものを探したのだ。この機種は画像安定化機能と、3 倍にズームするレンズを備え、ディスプレイも非常に素晴らしい。このディスプレイは LCD の代わりにある種の LED を使っているのみならず、傾けたり回転させたりもできるので、日光の反射を避けるよう角度を調整して使える。

このディスプレイこそ、私たちがこのカメラを選んだ最大の理由だ。スクリーンをカメラに沿って平らにしておけば、日光の反射が直接目に入る時以外はスクリーンがよく見えるし、反射が邪魔になる時にはディスプレイの角度を変えるだけでよく見えるようになる。

このカメラを選んだもう少し小さな理由の一つは、センサーのピクセル数が他のたいていのコンパクトカメラ (10 メガピクセル) でちょっと大きなセンサーを持っているものに比べて少ないからだ。1平方センチあたりのピクセル数が、普通のものに比べておよそ半分となっている。その意味するところは、ノイズがいくらか少なくなり、細かいところも真っ暗になる前に少しはよく見えるようになる。(でもその違いはほんの少しだけだ。その点 DSLR (Digital Single Lens Reflex camera, デジタル一眼レフカメラ) ならばピクセル密度が半分でなく 20 分の 1 であって、クリーンで幅広い色調が得られる。)

その上、この EX1 は未処理の画像を raw ファイルとして保存することも、画像を JPEG へと変換することもできる。カメラが JPEG 画像を作成する際は、情報が失われる。Daphne はたいていの場合彼女のカメラが吐き出して来たものに満足しているが、時々私は手元に彼女のカメラしかなくて「本物の」写真が撮りたいと思うことがある。写真を編集しようという際には、元の写真の持つすべての情報に手が届くようにしたい。つまり、JPEG でなく、raw ファイルが必要になる。けれども raw ファイルを保存してくれるコンパクトカメラはあまりない。

他のどんなコンパクトカメラも同じだが、この EX1 も使いやすいことを前面に出して広告されている。実際、これは市場にあるものの中では比較的シンプルな方に属するだろう。その点もこれの魅力の一つだ。けれども、この程度のシンプルさでも、その説明に 128 ページのマニュアルを要し、その上マニュアルを読み終えた私でも、山ほどある設定のどれがどんなことをしていつどれを使えばよいかなど、とても分かったものではない。

ただただ曖昧 -- 例として、マーケティング部長どもが昼寝をしている下の写真を見て頂きたい。マニュアルによれば、ベストな結果を得るためにはその場面が 8 つのカテゴリーのうちどれに属しているかを私がカメラに指示してやらなければならないことになっている。でも、この写真はいったいどのカテゴリーに属するのか? "landscape" (風景) か、それとも "beach & snow" (ビーチや雪) なのか?(縮小した画像では見にくいかもしれないが、ワニたちは砂だらけのビーチの上にいて、砂の上に草がたくさん生えている。)

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マニュアルには、この種の曖昧さをどう判別すればよいのか、一切説明がない。それぞれのカテゴリーがどのように違って処理されるのかの説明もない。だから、私としてはどれを選ぶべきか判断のしようがない。

別の方法として、"smart auto" に設定することによってカメラが自動的にカテゴリーを選ぶようにさせることもできる。この "smart auto" は 17 のカテゴリーの中から選ぶらしく、つまり自動判別の方が識別力があるということだ。(ただ、こちらには "beach & snow" という選択肢はない。)でも、もしも "smart auto" が実際に機能して、そちらの方が識別力があるというのならば、いったいなぜそちらを常時使わないのだ? マニュアルにはその点についての手掛かりさえない。

あるいは、次の写真を見て頂きたい。この写真を私はゆらゆら揺れるカヌーに乗って撮った。だから、その動きのせいでカメラがぶれるのではないかと心配だった。この EX1 はデフォルトで光学式手ぶれ補正がオンになっているが、私はカメラのぶれが非常に心配だったので、もしもこの時 EX1 を使っていたならば、私はきっとこのカメラのもう一つの機能 "dual image stabilization" (二重手ぶれ補正) を使いたい気持ちになっていただろう。

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Samsung によれば、この機能は光学式の手ぶれ補正の上に、ある種のデジタル補正を重ねて施すものだといい、この機能は大きな目玉として宣伝されている。この機能をオンにする設定はカメラの上部にあるダイヤルを使ってするが、これは "smart auto" を選ぶのに使うのと同じダイヤルだ。つまり、この機能と "smart auto" を同時に選ぶことができない。でも、もしもこれがそれほどうまく働くのなら、いったいどうしてすべてのモードでこの機能をオンにしておかないのか? もしもこれがある場合にしか働かないか、あるいは何らかの不都合があるかするならば、どういう場合に私はそれを使わない方がよいのか? どういう場合に場面モードの "smart auto" を選ぶ方が良くて、どういう場合にデジタル手ぶれ補正を使う方が良いのか? マニュアルにはそのような説明はどこにもない。

ただただ馬鹿げている -- 仮にこれらのたくさんの設定が実際に何か意味あることをしていて、これらが本物の機能であったとしても、私としてはいったい誰がそんなものを使いたいと思うのか、見当もつかない。思うに、妻と私は写真の市場における両極端を代表していると言ってもそれほど的外れではないのではなかろうか。Daphne は写真について何も知らないし、私はそれよりはかなりましなことを知っている。もし Daphne が上のような写真を撮りたいと思っても、彼女は特殊な設定のどれを使えばよいのか皆目分からなかっただろうし、ただ "smart auto" を選んでそれがベストであることを祈るしかなかっただろう。他方、私が彼女のカメラを持ったとしても、私もやはり、どの特殊設定を使うべきかを分別をもって選ぶことなどできず、従って私も彼女と同じことをしただろう。

これらの機能は、基本的なコンパクトカメラで撮れるよりも優れた写真を撮りたいと思うけれどもカメラの使い方はよく分からない、という人たちを助けるためのもののはずだ。そういったものを業界では「移行的機能」と呼ぶが、移行的とは業界のために言っているのであって、顧客のためではない。これらの機能の目的は、人々を安価なカメラからより高価なカメラへと誘い込もうということなのだ。写真について学ぶための移行的援助にはなり得ない。それらは伝統的な制御機能とは全く異なるからだ。類似点を匂わせるようなところはこれっぽっちもない。これらの機能が伝統的なカメラの使い方を学ぶ役に立つとしたら、子供に英語の読み書きを教える近道は先にギリシャ語を教えること、という話になるだろう。

この EX1 は、本格的な写真家であってコントロールの効くポケットカメラが欲しいという人たちにも焦点を置いてマーケティングされている。これは手動の、DSLR で言う絞り優先やシャッター速度優先のモードで使うこともできるからだ。実際そういうことは可能だが、例えば露出補正といったお決まりの操作をするために、このカメラでは "menu" を押してから、右矢印、下矢印、下矢印、下矢印、それから "ok" と続けて押さなければならない。それだけのことをして、まだやっと設定変更をするためのスクリーンにたどり着くだけなのだ。その上、ディスプレイに露出の情報を出してからそれを隠して写真の枠取りに戻るためには、4つのモードを切り替えるボタンを押さなければならない。私は、そこまで我慢したいと思うほど本格的な写真家ではない。カメラを使う際には、私は "smart auto" モードで使えればよいと思う。でも残念ながら、"smart auto" はあまり賢くなくて raw ファイルでは保存できないらしい。

それに、この "smart auto" は傲慢でもある。露出が間違っていても、露出の修正をさせてくれない。まあ、傲慢であるにはそれだけの理由があると言ってよいかもしれない。私はあちこち歩き回って、いろいろ異なった環境で写真を撮ってみた。異様な照明、逆光、太陽を入れた写真、夜景、などだ。そして、結果の写真はどれも、まあまあ無難な仕上がりだった。それでも、少しだけ露出を下げればもっと良くなったのにと思えるものは多かったし、raw ファイルを使ってあとで作業することができればどの写真も良くなったであろうことに私は確信があった。

デジカメ車 -- Samsung EX1 は他のデジタルカメラと細かいところでの違いはあるが、私の見た限り、市場にあるカメラはすべて、役にも立たない複雑さにまみれている。Canon、Kodak、Nikon、Olympus、Panasonic、Pentax、Ricoh、Samsung、Sony、どのメーカーのカメラも、そのユーザーインターフェイスは「悪い」から「言語道断」までの範囲内にある。コンパクトカメラで写真を撮るために必要なのは、シャッターボタンと、三位スイッチ (オフ/オン/オートフラッシュ)、オートタイマースイッチと、写真が暗過ぎたり明る過ぎたりした場合に絞り目盛りの半分刻みで露出を増減できるダイヤル、それだけだ。

カメラのメーカーが自動車を作ったらどんなだろうか、と私は思わず想像してしまう。Pentacanakon Zoom 8 には、変速レバーもヘッドライトのスイッチも、暖房のスイッチもない。なぜなら、そういったことのすべてをコンピュータがやってくれるからだ。その上、Zoom 8 のコンピュータは従来の自動車になかったさまざまの便利な機能を提供してくれる。例えば、気筒のいくつかをオフにできる。Zoom 8 は 8 気筒でスムーズに走ることもできるし、コンピュータの自動調節によって 7 気筒でラフな走りを楽しむことも、6 気筒で乗っている人を振り落とすような走りも、あるいは 5 気筒でジリジリと少しずつ進むこともできる。どれだけガソリンが節約できるか想像してみよう!

Pentacanakon Zoom 8 のコンピュータはあまりにもたくさんのことができるので、非常に複雑なメニュー体系が必要になる。運転中はメニューの読み取りが難しいので、便利な設定のいくつかがプログラムされたプッシュボタンがずらりと並んでいる。こうして、気筒の無効化がしたければ2つのボタンを正しい順序で押すだけでよい。その結果として、ラジオのスイッチを入れようとしてうっかり違ったボタンを押すと、ラッシュアワーの高速道路で突然ガクッと低速に切り替わるかもしれない。幸いなことに、別のボタンを1つ押すだけでアクセル全開になって、あなたが運良くそのボタンをもう一度見つけてもう一度押すまで、ずっとアクセル全開が保たれる。

気筒の無効化が突飛過ぎるとお考えなら、今日作られているどんなカメラにも一連の小さなボタンとそれぞれに対応したメニューがあることを思い出して頂きたい。それらを使いこなすことによってあなたは完璧に良い写真が撮れ、それからその写真の一部を捨て去ることもできる。つまり、カメラがそのファイルをさまざまのレベルでロスを生じる JPEG に圧縮するコントロール、画像の解像度を下げるコントロール、一挙に大量の画像に対してそれらの一部を切り取ったりするコントロール、などが取り揃えられている。この、画像の一部を切り取る機能などは、「デジタルズーム! 四種類のアスペクト比! 七種類の美的効果!」などと言って大々的に宣伝されているのだ。

私は画像を圧縮したり縮小したり切り取りをしたりすることがよくある。その作業の後でフルサイズのオリジナルを削除することも時々はある。例えばカメラをコピー機として使う場合などはそうだ。けれども、私はコンピュータの大スクリーンでその作業をするのであって、カメラのちっぽけなスクリーンではしない。私は、小さくしたバージョンを慎重に調べて、それがきちんとしていることをよく確認した後でなければ、オリジナルを削除することなど到底考えられない。オリジナルを自動的に削除しておいて、その後になって初めて小さくしたバージョンを目にする人がいるなんて、とても信じられない。なのに、この驚くべき「機能」たちは、まさにそういうことをしているのだ。

アクセルを全開にするボタンといえば、この EX1 にもそれがある。つまり、手間をかけてモードの変更をする必要なしにただビデオ撮影を開始するボタンだ。うっかりと間違ってこのボタンを押してしまえば、ありがたいことにこのカメラはあっという間にメモリカードを一杯にし、バッテリを消費してしまう。

原理上は、これらの「機能」をすべて無視することは可能だ。けれども実際上は、知らずにメニューを変えてしまうことがよくある。何かの設定を変えようとしていて、あるいはカメラを手に持っていて偶然にどこかのボタンに触れてしまったりすることがある。例えば、EX1 に付いている "Fn" ボタンは、解像度を放り捨てて画像を破壊する機能以外はわけの分からないものばかりだ。実際、この種の事故が(私の DSLR の一つで)起こったことが、私がこの記事を書こうと思い立ったきっかけとなった。

プロたちの撮影イベントではその場で数多くの JPEG が必要となることが多い、ということは私も知っている。できる限り早く写真を販売できるようにしたいからだ。また、スナップ写真を撮る人たちはほとんど常に JPEG が欲しいのは確かだが、それでも時々は raw ファイルに戻るという選択肢が欲しくなることもあるだろう。そういった理由から、JPEG と raw フォーマットの両方で写真を保存できる設定があることは理解できる。けれども、それを例外とすれば、私にはカメラがその能力のベストでないフォーマットでファイルを保存すべき理由など一切思い当たらない。

ベターなカメラがいつもベターとは限らない -- ここでもう一度、私があくまでも例として EX1 を取り上げているだけだということを言っておこう。上でも述べたように、。この EX1 は実際、市場にある比較的シンプルなモデルのうちの一つだ。私は Samsung だけを批判しているわけではなく、この業界全体を批判しているのだ。私の知る限り、どのデジタルカメラも例外なしに、不必要な複雑さに毒されている。

あるいはむしろ、すべての写真家が、自分の持つデジタルカメラの不必要な複雑さに苦しんでいると言うべきだろうか。私は、素晴らしい出来の写真をいくつか失ったことがある。その理由は、カメラを持ち運んでいる間かそれとも手元に抱えている間かに、私が知らぬうちに ISO 感度とファイルフォーマットを変更してしまっていたからだった。結局私は、カメラを目覚めさせる度に、毎回ボタンを押してそれらの設定を表示させ、すべての設定値が正しいかどうか確認してから、その後で別のボタンに触れて設定を変えてしまうことのないように同じボタンをもう一度押す、という習慣を身に付けるに至った。

デジタル画像はフィルムよりも比較にならないほどずっと実用的であり、コンパクトカメラにおける自動化はありがたいものだ。けれども、DSLR における自動化は事実上何の役にも立たない。例えばオートフォーカスを考えてみよう。手動カメラで焦点を合わせるためには、画像の中で私が焦点を合わせたい部分がシャープに見えるようになるまでレンズを回す。これは簡単に手早くできることだ。ところが私の DSLR では、まず手動フォーカスからオートフォーカスへスイッチを切り替えてから、私が焦点を合わせたい部分にカメラを向けて、シャッターを半分だけ押してカメラが焦点を合わせるのを待ち、それからまたスイッチをオートフォーカスから手動フォーカスへ切り替えて焦点が変わらないようにしておいてから写真のフレームをとる、という手順が必要になる。これでは簡単というには程遠く、手動で焦点を合わせるより速かったとしても、ほんの少ししか速くならない。特に、私がうっかりとシャッターボタンを半分より深く押し過ぎて、そのつもりでないのに写真を撮ってしまえば完全な時間の無駄だ。(念のために強調しておきたいが、カメラの焦点を手動で合わせるのが苦手という人たちがいることはよく承知している。私の妻もそこに含まれるが、そういう人のためには完全自動フォーカスというものがある。)

同じように、自動露出についても、それほど容易にも高速にもならない。どんなカメラであっても、カメラで写真を撮る際は、その前に私はあらかじめ考えておく必要がある。これから撮ろうと心に描いている写真に最も相応しい被写界深度を提供できる中で、最大の絞り値は何かと考える必要があるのだ。さらに、被写体が平均的な被写体と違っているために露出計の値を修正する必要があるかどうかも考えておかなければならない。そういったことを考えておいてから、私はカメラを調節する。カメラが手動であろうと自動であろうと、私はまず第一に絞り値を決める。たいていの場合それにはつまみを回す必要がある。手動カメラの場合、私はその次にシャッター速度のダイヤルを回して、露出計の針がマークを指すようにする。それは標準のマークか、それとも露出の修正を込めたマークかのいずれかだ。いずれにしてもこれは簡単な作業で、ほとんど時間はかからない。私の DSLR では、標準の露出を受け入れている限り、私はほどんど何もする必要がない。ただし、露出の補正をしたい場合には、ボタンを押して、そのボタンを押したままでつまみを回す必要がある。これは、針をマークに合わせるのにくらべて相当厄介な作業だ。

こんな自動化が大きな改善なのだとしたら、きっと私は流暢にフランス語が話せたことだろう。実際、絞りや露出の補正の手順にメニューが絡んでくる場合、自動化されたカメラの操作の方がはっきりと手動カメラよりも遅い。

もしもあなたがカメラのすることを制御したいと思うなら、つまり、ただ単にボタンを押すだけということ以上の何かをしたいのなら、デジタルカメラにはフィルムのカメラに比べて一つだけはっきりと大きな利点がある。それは、あなたの撮った写真がどういうものになったかを即座に見ることができる点だ。そして、そのことはカメラの操作が自動化されているかどうかとは何の関係もない。

スピードが殺す... 写真を -- 「でも」と反論する声が聞こえてきそうだ。「高速で動いているシーンを撮影するには、1ミリ秒でも速いことが重要じゃないか」と。確かに、何かに反応して撮る場合にはそういうことも言えるかもしれない。でも、リアクションで撮影した写真が良いものであることはまれだ。時々は幸運に恵まれるかもしれないが、幸運を確かなものにするためには、あらかじめよく計画を立てて自身の幸運を作り出す必要がある。つまり、あなたの眼前に何が展開しているかをよく見つめ、あなたに撮影できるかもしれない写真を心に描き、その写真を得るためにあなたと被写体とがどこに位置しなければならないかを思い浮かべ、そこへ移動し、あなたの腕をリラックスする時間の余裕を持ってそこに到達し (筋肉が緊張しているとカメラをしっかり安定させることができないからだ)、それからあなたの写真が実体化するのを待つ、これだけのことをすべてやり遂げる必要がある。

この記事に写真を載せたワニたちは、剥製ではない。それでも、私の動きをあらかじめ計画することによって、私には露出について考え、手動で焦点を合わせるのに十分な時間があった。(ここで使ったような極端に長いレンズの場合、オートフォーカスよりも手動フォーカスの方が信頼性が高いことを私は経験で知っている。)もしも私がその時間を取れなかったとしたら、これらの写真を撮影することは無理だったろう。ワニたちは、150 メートルの距離からでも私たちを見たとたんに水の中に潜ってしまうだろうからだ。

映画の中で、写真家がカメラをサッと取り出してはまだその腕の動きが収まらないうちに素早く写真を撮る、というのをご覧になったことがあるかもしれない。また、Lone Ranger の中で、ホルスターからピストルを抜くやいなや、やはりまだその腕が動いているうちに、通りの向こう側にいる誰かの手の中からピストルを撃ち落とす、というシーンを見られたかもしれない。どちらも、同じくらい馬鹿げている。プロの写真家は、抜き打ちざまに撮影したりはしない。私たちは、自分が何をするのか、あらかじめ計画を立てるものだ。その計画は非常に素早くて大まかなものかもしれない。時にはほんの一瞬でごく雑なものかもしれない。それでも、私たちは必ず計画をする。写真家が必要とするのは、眼前のシーンを私たちに観察させてくれて、気を散らすことなく計画を立てさせてくれる、そんなカメラなのだ。

認知の限界 -- 気を散らされるというのは深刻な問題だ。なぜなら、カメラにしろコンピュータにしろ、その主要な限定因子はハードウェアでもソフトウェアでもなく、それを使っている人の認知能力にあるからだ。この問題を理解するために、次の写真をご覧頂きたい:

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きっと皆さんの目にはワニの頭が見えるに違いない。でも、もう一度よく見て頂きたい: 実際にワニが見えているわけではない。細長い染みみたいで、真ん中に丸いものがある何かが見えていて、その右側にもう一つ、小さめの細長い染みみたいなものが、見えるだけだ。これでは、記事の初めにあるワニの頭とずいぶん違う。あの写真は、たくさんの歯と長い顎で一杯だった。こちらの写真にはそうしたワニの特徴は見えていない。あなたは、ワニがいると 推測 しているに過ぎない。

これが、ほとんどの場合、私たちの目に入るものを、私たちが見ているやり方だ。私たちの目が、シーンのいくつかの個所をサンプルとして取り出し、それから私たちの脳が、過去の経験に基づく確率的重み付けを通じて残りを推測するのだ。だからこそ、スナップ写真の多くが、撮影者の意図と違う結果になる。だからこそ、ゼルダおばさんの頭から木が生えている写真を見て、驚かされることになる。実物のゼルダおばさんを見ていた時、あなたの目は彼女に注意を向けていて、木には注意していなかったからだ。あなたは彼女に興味があり、木には興味がなかったので、あなたの脳には彼女の後ろにある木が見えなかったのだ。あの木を避けるためには、撮影の際、あなたは意図的に 彼女を 見るのでなく、彼女の後ろを見なければならなかった。

さて、これを念頭に、もう一度ワニの細長い染みを見直して頂こう。あなたがこれをワニだと推測する助けとなるよう構図を決めた要素の一つは、この写真に写ったすべてが水平方向を強調している点だ。ワニというものは長くて低い、つまり水平だ。だから、この構図の水平性は、ただ水平方向を強調するのみならず、ワニへの連想を助ける鍵ともなる。その効果を生むために、私は川岸も水位線も、それからワニが水面上に出している二つの部分も、すべてが水平となるよう心がけた。そして、川岸とワニとが十分近く写るようにすることで、ワニに気付かれないほど遠くにいながらにして水平性を暗示することができた。このような構図を思い付くためには、深く注意を集中させることが必要だった。

カメラに何か機能があって、写真家がそれについて考えなければならないならば、それは必然的に、良い写真を撮るために注意を集中させなければならないところから写真家の注意を他へと散らしてしまうことになる。写真を撮るためのコントロールはできるだけシンプルで簡単なものとし、カメラを操作するために考えを散らされることのないようにするべきだ。メニューや、入り組んだボタン、撮影モードなど、そういったものはすべて、今すべき仕事に対して認知的に邪魔になるものばかりだ。その、今すべき仕事とは、写真を心の中でビジュアル化して、どうすればすべての要素をそれぞれの場所に、必要に応じて、配置できるかを見つけ出すことなのだから。

よりシンプルな DSLR -- 気が散らされるのを最小限にするためには、単純さが必要となる。本格的な写真を撮るのに適した自動カメラならば、手動カメラよりも、またコンパクトカメラよりも、より複雑性が伴うはずだ。なぜなら、自動化機能にはそれを無効にして手動でできる機能を付随させることが必要だからだ。それ故、私にはフルに手動のカメラの方が好ましいということになる。けれども、現代のカメラはやはり自動化されなければならないということならば、私が DSLR あるいは電子的にそれと同等なカメラで写真を撮る際に持ち合わせていたいコントロールは、次のようなものだ。以下に挙げるコントロールがすべて揃っている必要がある:

注意して頂きたいのは、よく見られるボタン、被写界深度をプレビューするボタンを私が挙げなかったことだ。そういう機能はほとんど役に立たない。なぜなら、レンズを絞った状態ではファインダーが薄暗くなって、大してよく見えないからだ。被写界深度を調べてみたいのならば、テスト撮影をしてそれを拡大して見た方が、ずっと簡単でずっと正確に評価できる。

Leitz を見る -- これらの撮影コントロールだけでは殺風景だと思われたら、Leica カメラを思い浮かべて頂きたい。Leica (ライカ) は Lei_tz camera (ライツ社のカメラ) から来た名前だが、これこそ世界初の 35mm カメラだった。そして、連動距離計(レンジファインダー)を搭載した Leica 機種は、いつの時代も写真市場における高嶺の人気者であった。常に一ランク上の価格で販売されたが、融通が利くかどうかという点に関しては、いつもその時代のより一般的なプロ用カメラに比べて劣っていた。1970 年代の後半、私がメインに使っていた 35mm システムは、二台の Leica M4 と、それに使える限りあらゆるレンズを取り揃えたものだったが、この Leica にはかなり制約が多かったので、それとは別に重たい SLR を一台と、それに合ったレンズのセットも揃えて持ち歩く必要があった。私の Leica ギアは、うまくデザインされていて造りもしっかりしていたが、決して並外れて優れたところが一目でわかるというようなことはなかった。飛び抜けていたのはいろいろの使用上の制約と、高い値段だけだった。私が Leica を使う選択をした理由は他のプロたちと同じ理由、Leica がコンパクトであって、コントロールが直接的で、素早く操作できるからだった。Leica を使っていれば、カメラに集中するのでなく被写体に注意を集中することが容易だった。

私は最新の M-シリーズ Leica を調べてみはしなかった。これは私の M4 のデジタル後継機種にあたるものだが、調べなかった理由はただ一つ、そのとんでもない価格だ。本体だけで $7,000 もするのに、柔軟性は最も安価な DSLR にも劣り、画像センサーは私の $1,000 の DSLR が搭載する Foveon センサーに比べて画質が良いとも悪いとも言えない。その上にレンズが $6,000 もして、これがまたどんな安価なズームレンズよりも柔軟性に劣るし、デジタル処理を施した後でよりシャープな画像を提供できるとも思えない。実際、Leica のレンズは画像安定化を提供しないので、多くの状況下で画像のシャープさは安価なズームレンズより劣る可能性が高い。それでも、私のカメラをデザインした人たちがその際に古い Leica のことをもう少し参考にしてくれていたなら、という気はする。

もしも Leica の価格がその機能と釣り合いのとれたものであったなら、もしもその価格でゼロが一つ少なかったなら、私は現在進行中のプロジェクトのために Leica を考慮したかもしれない。でも実際は、私は価格が 20 分の 1 のカメラ、 Sigma DP2sを買った。

安価で快活 -- $700 の DP2 は、非常に制約の多いカメラだ。M-シリーズ Leica よりもさらに制約が多い。交換レンズもなければ、ズームレンズもない。画像安定化もなければ、ファインダーもない。高速連写もできず、ディスプレイは小さめで薄暗く、コントロールはほとんど Leica の価格と同じくらいにとんでもないものだ。けれども、今回のプロジェクトについて言えば、私は何よりカメラのサイズの小ささと画像の品質の良さとを優先させたかった。この DP2 は EX1 とほぼ同じ大きさだ(重量ははっきりと EX1 より軽い)が、搭載された Foveon センサーはフルフレームのセンサーを備えた大型の DSLR にも匹敵する画質を生み出せる。(2010 年 6 月 17 日の記事“デジタルカメラを買わずに済ます方法”で、私は Foveon センサーと Canon のフルフレームセンサーとを比較している。)

この DP2 は熱狂的なカメラのファンを狙って作られている。実際、このカメラを使っていてその制約の多さとコントロールの厄介さに悪態をつかない人は相当の熱狂的ファンだと言えるだろう。けれども、私自身も驚いたことだが、私はこれがある一つの特殊な分野において現在市場にあるものの中で最も適切なカメラであると思うに至った。それは、教育の分野だ。もしも私が教室で写真学を教えることになったとしたら、私は学生たちがこの DP2 を使って欲しいと願うだろう。

この DP2 は、写真を撮るためにプロフェッショナルな姿勢を要求する。動作があまりにも遅いので、DP2 を使って人物の肖像を撮ろうと思えば、やみくもに何十枚も撮ってその中から良いものを選ぶということはできない。そうではなくて、注意深く写真のセットアップをして、モデルをじっくりと観察し、あなたの望むつかの間の表情を、まさにその一瞬で捉えられるように、シャッターを絞り込む準備をする必要がある。また、風景を撮ろうと思えば、ディスプレイでは細かいところがほとんど見えないので、ディスプレイを全く使わずにカメラの位置取りをする必要がある。カメラの上に頭を出して自分の目で風景を観察し、ディスプレイはフレーミングのためだけに使うのだ。

これこそ、プロたちが大型の、前面に蛇腹のあるビューカメラを使って写真を撮る時にするやり方だ。カメラ上の画像は上下逆さまで、裏返っていて、薄暗い。その上、フィルム板を差し込めば完全に見えなくなる。そういうものを使えば、写真をどうやって撮るかを教えられるというものだ。

DP2 にはもう一つ教育的な利点がある。レンズだ。このカメラには、標準的な焦点距離を持った固定レンズが付いている。レンズを交換したり、広角から望遠へとズームしたりはできない。写真をどう見るか、どうフレーミングするかを学ぶには、この制約は価値あるものだと私は思う。絵を描くのを学びたければ、箱一杯の絵筆を使うより鉛筆一本だけを使う方が効果的なのと同じことだ。

写真を学ぶ学生たちは、たいていいろいろな機器やいろいろな機能が大好きだ。だから、彼らの多くは DP2 を強制されれば激しく反論するだろう。もしも私が写真学の授業を担当したとして DP2 を強制すれば、あっという間に受講生の数は減ってしまうだろう。けれども、それを使ってきちんと学んだ学生は皆、標準以上のことまで身に付けることができるだろうし、その学生の写真の持つ技術的品質は、このカメラのサイズや価格とは不釣り合いなほど高いものとなるだろう。

道具類を鞄に詰める -- 写真というものはいつの時代も、道具大好き人間たちの趣味であった。「道具」という言葉は密接に写真と結び付けられていて、Oxford English Dictionary で "gadget" という単語の項目に「Gadget bag とはカメラのアクセサリを入れておくケースのこと」という挿絵が付いているくらいだ。けれども、昔はカメラと別になっていた道具類が、今ではカメラに内蔵されている。これは、大きな変化だ。道具鞄の奥深くにまぎれ込んだ道具の方が、なかなか探しても見つからない。

その上、デジタルカメラの道具類は奇妙なものだ。例として、光バランスフィルターを考えてみよう。フィルム写真の場合は、カラーバランスのために薄く色の付いたフィルタを必要とすることが多い。けれども、そういうものを使いたくないと思えば、そのフィルタを道具鞄の中に放り込んで、持っていることさえ忘れてしまうこともできた。デジタルカメラがカラーバランス用のフィルタを必要とすることはない。なぜなら、自動アルゴリズムで通常は十分良い結果が得られるし、あとでいつでもコンピュータの中で色調整はできるからだ。それなのに、どのデジタルカメラにも、一連のカラーバランスフィルターが、必ず含まれている。(「ホワイトバランスがカスタマイズ可能!」などと宣伝されている。)そして、それを使うためのコントロールが、必ず顔のすぐ近くにあるのだ。

私が今までに所有したことのあるフィルムカメラはすべて、手動で使うものだった。私のデジタルカメラはすべて、自動のものばかりだ。それなのに、使ってみるとほとんどのフィルムカメラの方がデジタルカメラより使いやすい。デジタル画像処理の恩恵はありがたいと思うし、フィルムに比べてもデジタル処理の方がずっと楽しめる。(この点私は決して技術革新反対論者ではない。)けれども、私が避けて通れない結論は厳然として存在する。それは、自動カメラで写真を撮るのが手動カメラで写真を撮るよりも困難なのだとしたら、それは自動カメラのどこかが間違っているのだ、ということだ。デジタルカメラは、必要以上に複雑になってしまっている。

1888 年よりも前には、写真を撮りたいと思う旅行者は、写真用機器を持ち運ぶために荷馬が必要だった。(文字通り、馬を連れて行ったのだ。)そこで登場した George Eastman が、カメラを「鉛筆と同じくらい便利」なものにしようと心に決め、そして彼は成功したのだった。彼は、ロールフィルムとボックスカメラを発明した。写真の品質は非常に優れたものというわけではなかったが、最新式の Kodak カメラは持ち運ぶのにバックパックさえ要しなかった。ましてや馬など不要だった。ボタンを押すだけで(それからノブを回してフィルムを進め、レバーを動かしてシャッターの用意をする)あとは The Eastman Company の業者がすべてをやってくれた。そこから出発した会社が、今日では世界の巨大企業の一つとなるまでに成長したのだ。ここでどこかのメーカーがもう一度、鉛筆と同じくらい便利に感じられるカメラを作ることができたなら、間違いなくそれは採算の取れる製品になるのではないだろうか。

[もしもこの記事がお役に立ったのなら、Charles はあなたが国際援助団体 Doctors Without Borders (国境なき医師団) に少しでも寄付してくださるようお願いしています。]

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TidBITS 監視リスト: 注目のアップデート、2010 年 9 月 13 日

  文: TidBITS Staff <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Carbon Copy Cloner 3.3.4 -- Bombich Software が、バックアップソフトウェア Carbon Copy Clonerをバージョン 3.3.4 にアップデートし、多数のバグを修正するとともにさまざまの細かな改善を施した。修正点の主なものを挙げれば、126 個以上の Access Control Entry を含むファイルで起こったエラー、状況により拡張アトリビュートがファイルに再適用されなかったエラー、Leopard のみで起こった暗号化バックアップのパスワードを保存する際の問題、現在のユーザでこのソフトウェアのログファイルが書き込み不可になることのあった問題などがある。その他、認証作業中のハングアップやアクセス権チェックが実行されない問題など、数え切れないほどのバグも修正された。 Bombich ではフルのリリースノートも公開している。(ドネーションウェア、3.7 MB)

Carbon Copy Cloner 3.3.4 へのコメントリンク:

Firefox 3.6.9 -- Mozilla が Firefox 3.6.9 をリリースした。人気のウェブブラウザに HTTP レスポンスヘッダ X-FRAME-OPTIONS への対応を追加したアップデートだ。これを使用することにより、ウェブサイトの所有者が自分のコンテンツを他のサイトへ埋め込まれないようにすることができる。そのような埋め込みはクリックジャッキング攻撃に結び付くことがあるからだ。また、このアップデートでは他にも多数のセキュリティ脆弱性やバグに対処が施されている。そのいくつかはクラッシュに結び付くものであった。(無料、19 MB)

Firefox 3.6.9 へのコメントリンク:

PDFpen/PDFpenPro 5.0.1 -- PDF の利用者も、悪用者も喜べ。Smile (以前の名前は SmileOnMyMac) が PDFpenPDFpenPro 5 をリリースした。バージョン 5 で、PDF 編集ツールや処理ツールが大幅に強化された。最も重要なのは、PDFpen の両バージョンとも 64-bit となり、パフォーマンスの改善によって大きな書類の編集が高速化したことだ。また、スキャンした書類に OCR を施す際に、PDFpen が複数 CPU コアの利点を生かしてさらなるパフォーマンスの向上を果たせるようになった。PDF 中の情報を編集で塗り潰し削除 (redact) したい場合、PDFpen が手軽にそれをできるようになった。さらに、Search & Redact コマンドを使えばその PDF 全体にわたって一挙にその作業ができる。(Search & Replace の方は通常通りのテキスト置換を提供する。)画像編集機能も改善され、スキャンした書類の歪みを直したり、コントラストや彩度などの画像設定を調整したりする機能も加わった。それに加えて、PDFpen は解像度やカラー深度を低くして画像をサンプルし直し、PDF のファイルサイズを削減することもできるようになった。PDFpenPro 5 では、ウェブサイトを複数ページの PDF 書類に変換する機能が追加され、PDF フォームの中にリストウィジェットやポップアップが作れるようになり、PDF フォームデータをウェブまたは電子メール経由で投稿できる Submit ボタンが作れるようになった。現行バージョンは 5.0.1 で、Mac OS X 10.6 Snow Leopard を必要とする。フルのリリースノートもある。(新規購入 $59.95/$99.95、アップグレード $25、購入日が 2010 年 2 月 14 日以降の場合は無料アップデート、42.8/43.1 MB)

PDFpen/PDFpenPro 5.0.1 へのコメントリンク:

Safari 5.0.2/4.1.2 -- Apple が Safari 5.0.2Safari 4.1.2 をリリースした。(前者は Mac OS X 10.5 Leopard かそれ以降を走らせている場合、後者はまだ 10.4 Tiger を走らせているユーザーのためだ。)今回のアップデートでは、悪意を持って作られたウェブサイトが自分のコードを実行させたり Safari をクラッシュさせたりする可能性のあった脆弱性2件をパッチしている。セキュリティの修正以外にも、これらのアップデートは両者ともフォームを送信する際の問題点を修正している。また、Safari 5.0.2 は Flash 10.1 がインストールされている場合の Google Image 結果表示に関するバグに対処し、Safari Extensions Gallery をサーフィンする際に暗号化接続を用いるようになった。これらのアップデートはソフトウェア・アップデートから、あるいは Apple からの直接ダウンロードとしても入手でき、すべての Safari ユーザーに対して推奨される。(アップデート無料、Snow Leopard 用 37.56 MB、Leopard 用 46.71 MB、Tiger 用 29.46 MB)

Safari 5.0.2/4.1.2 へのコメントリンク:

iWeb 3.0.2 -- Apple が iWeb をバージョン 3.0.2 に上げた。Apple の非常に簡潔なリリースノートによれば、このマイナーなアップデートでは Apple の MobileMe サービスに公開するブログやポッドキャストでのコメントや検索のサポートが改善された。また、MobileMe に公開する際のいくつかの問題点も修正された。(iLife の一部として $79、アップデート無料、177.14 MB)

iWeb 3.0.2 へのコメントリンク:

Cyberduck 3.6.1 -- オープンソースのファイル転送ユーティリティ Cyberduck が、バージョン 3.6.1 にアップデートされた。Cyberduck 3.6 では大量の新機能が一気に解き放たれた。その中には Google Storage への接続機能もある。(これは、このソフトウェアに既存の FTP、SFTP、WebDAV、Rackspace Cloud Files、Google Docs、Amazon S3 への接続機能に追加してのものだ。)また、S3、Google Storage、Google Docs で Access Control List (ACL) を編集できるようになり、S3 専用のファイル制御機能も多数追加され、他のファイル転送ユーティリティからブックマークを読み込む機能が導入され、Dock アイコンにアクティブなファイル転送の件数を表示する、などの改良もある。Cyberduck 3.6 ではまた Eucalyptus Walrus、Dunkel Cloud Storage、Akamai NetStorage との相互運用性に関するバグも修正された。その後素早く出された 3.6.1 リリースでは、3.6 で持ち込まれたマイナーな FTP と SFTP のバグが2件修正された。 フルのリリースノートには、他にも多数の修正点や追加事項が記されている。(無料、19.2 MB)

Cyberduck 3.6.1 へのコメントリンク:

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ExtraBITS、2010 年 9 月 13 日

  文: TidBITS Staff <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

通勤中に聴いて楽しむものをお探しの方々のために、Adam は先週 MacBreak Weekly と Tech Night Owl Live の両方にゲスト出演した。いずれも、最近の Apple の発表について語っている。また、新型の iPod nano を買おうかとお考えの方々には、これを腕時計にする手軽な方法があり、VersionTracker はどうなったのかとお思いの方には、これが CNET Downloads に組み入れられたというニュースをお届けしよう。

iPod nano をあなたの腕に -- iPod nano はずいぶん小さくなって、ようやくあなたの体の最も適した部分にぴったり収まるようになった。つまり、あなたの手首だ。iLoveHandles が $19.95 で販売している Rock Band は革製の帯で、これに新型 iPod nano を取り付ければまさに腕時計のように見える。そこで頭に浮かぶのは、いつの日か iPhone nano が出て、同じように手首に付けて使えるようになるのではないかという考えだ。

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Tech Night Owl Live で Apple の発表をさらに議論 -- 最近の Apple のいろいろな発表についてさらなる分析が聴きたければ、今週の Tech Night Owl ポッドキャストで、Adam がホストの Gene Steinberg と語り合っている。

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Adam、MacBreak Weekly で Apple のリリースを議論 -- 先週、Adam は人気の MacBreak Weekly ネットキャストで、間際になってゲスト出演者に加えられた。ホストの Leo Laporte と Andy Ihnatko とともに、最近の Apple 関係のニュースについてさまざまなことを語り合った。Ping、Apple TV、新しい iTunes インターフェイス、モバイルゲーミング、その他の話題が出た。Apple をめぐるこの楽しいお喋りには、オーディオ版とビデオ版の双方のフォーマットがある。

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VersionTracker が CNET Downloads に -- VersionTracker の閉鎖にまつわる話を教えてくれた Ted Landau に感謝したい。読者からも問い合わせの声が届き始めていたところだった。数年前に VersionTracker を買収した CNET が、今回 VersionTracker を CNET Downloads に組み入れようとしている。全体的な機能性はそれほど変わらないようだが、VersionTracker の名前は消えることになる。

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Valid XHTML 1.0! , Let iCab smile , Another HTML-lint gateway 日本語版最終更新:2011年 1月 8日 土曜日, S. HOSOKAWA