TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#1058/10-Jan-2011

今週の大きなニュースは Apple の Mac App Store が Mac OS X 10.6.6 に含まれる形でスタートしたことだ。Adam が、アップデート後あなたの目の前にどんなものが登場するのか、これが Mac のエコシステムに対してどのような利点と欠点を持つのか、詳しく検討する。また今週号では Adam が iPad 互換バージョンの TidBITS News アプリを発表し、毎日複数のリマインダを出せる便利な HabiTimer アプリをレビューし、ユーザーインターフェイスデザインにおける自由主義の問題点について考察する。それから、新登場のデータベースとスプレッドシートのハイブリッド、Panorama Sheets を Matt Neuburg が紹介し、Lorenz Szabo が九年ぶりに Mac の世界に戻って来た体験を物語る。そのきっかけは、iPhone だった。今週注目すべきソフトウェアリリースは、Adobe Photoshop Elements 9.0.2、Apple Remote Desktop 3.4、cf/x alpha 1.2、Mac OS X 10.6.6、iWork 9.0.5、GarageBand 6.0.1、iMovie 9.0.1 だ。

記事:

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TidBITS News アプリが iPad 用にアップデート

  文: Adam C. Engst <aceimagetidbits.com>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

プログラミングに力を尽くしてくれた Matt Neuburg に感謝したい。今回、無料の iOS アプリ TidBITS Newsがネイティブな iPad 版としても入手可能となり、従来の iPhone 専用版の機能をすべて引き継ぐとともにフルスクリーンのインターフェイスも提供するようになった。(バージョン 1.1 は iPad 上でも iPhone アプリのエミュレーションモードで動作したが、iOS 4 対応のバージョン 1.2 を iPad にダウンロードすることはできなかった。この件についての説明は 2010 年 8 月 21 日の記事“TidBITS News アプリのバージョン混乱の背景”でお読み頂きたい。)

今回のアップグレードを長らくお待たせして申し訳なく思う。iPhone や iPod touch と同じバージョンの iOS を iPad が共有するようになるまでの間は、アップグレード版の作成にあまり意味を持たせることができなかった。いったん共通の iOS が登場した後は、iPad が iOS 3.2 を走らせていた時代に比べてずっと楽に iPad 版が作成できるようになった。それからもちろん、初代の iPhone や iPod touch で iOS 4 を走らせることはできないが、それらの機器で TidBITS News 1.1 をお持ちの方は引き続きそれを使い続けることができ、機能的に大きく後れをとっているところはない。

iPad 用にデザインするに際して、Matt はこの TidBITS News アプリのインターフェイスのモデルとして Apple が Mail アプリで採用したものを真似ることにした。だから、横長モードでは、左側のパネルが記事タイトルと要約を表示し、その一つをタップすれば記事の全文が右側のパネルに表示される。

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縦長モードでは、記事タイトルと要約がポップオーバーで表示され、選択された記事がスクリーン全体を占める。

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それ以外の点では(また iPhone や iPod touch の上では)TidBITS News アプリは従来と全く同様に見えるし、全く同様に動作する。ただし、スクロールがスムーズに動くように若干の微妙な調整が施されている。フォントサイズは5種類の中から選べ、私たちの記事のオーディオ版が存在する場合には聴くこともでき、リンクをタップすれば Safari で開く。このアプリはオフラインでも動作するので、あらかじめ記事をすべてロードしておいてから地下鉄の車内で時間つぶしに読むこともできる。お楽しみあれ!

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HabiTimer が、複数リマインダ問題を解決

  文: Adam C. Engst <aceimagetidbits.com>
  訳: 柳下 知昭 <tyagishi@gmail.com>

常に私のポケットに、iPhone を入れておく理由のうちでもっとも気に入っているものとして、これから起こるイベントを思い出させてくれることがある。カレンダーアプリ経由の一回だけのイベントだけでなく、時計アプリのアラーム経由での繰り返しイベントも思い出させてくれる。私は、朝起きる時間と、スクールバスに間に合うように Tristan が朝食を食べ終わるべき時間と、ランニングへ出発すべき時間と、毎週 Tristan をフェンシング教室でピックアップすることを忘れていないことを確認するためにアラームをセットしている。

しかし、時計アプリのアラームが提供してくれないような共通のニーズが存在する。一日に複数回繰り返すアラームである。私は、小さな怪我のために、イブプロフェンを 4 時間おきに摂取することを覚えておきたかったが、そのためには、時計アプリで複雑なセットアップをしなければならないことが分った。特に、最初に服用した時間に応じて、開始時間が毎日変更されてしまうために、遅くに服用した場合に、以降すべての服用する時間を調整する必要がある。

幸運なことに、この問題を解決してくれる賢いアプリがあり、さらによいことに、それは無料である。Sciral から(Sciral Consistency の中にいるのと同じ人達である ;"全然いい加減じゃない Consistency" 2002 年 9 月 10 日を参照のこと)提供される HabiTimer は複数のアラームを設定することができ、複数の指定した時間にそれぞれ通知を受け取ることができる。したがって、イブプロフェンを 4 時間おきに摂取することを通知するようにセットすることや、椅子から毎時間立ち上ることを通知するようにセットすることは容易である。矢印ボタンですべてのリマインダを 1 時間や 15 分ずらすことができるため、(上下の矢印で 1 時間、左右の矢印で 15 分ずらすことができる)新しい開始時刻や忘れてしまったイベントに合わせてスケジュールを調整することができる。

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おそらくこのアプリの唯一紛らわしい点は、新しいアラームがデフォルトではすべて、"私のアラーム" と呼ばれることだろう。通知の際に意味のある名前にするためには、リマインダータイムスクリーンの右上にあるギアアイコンをタップしなければいけない。

HabiTimer 1.0.1 は無料で、iOS 4.0 以降を必要とする。iPad 上でも動作するが、いくらかビットが目立つ iPhone アプリエミュレーションモードでの動作となる。

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ユーザーインターフェイスにおける保守主義と自由主義

  文: Adam C. Engst <aceimagetidbits.com>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

小さなこともじっくり考える John Gruber が、ユーザーインターフェイス (UI) における保守主義対自由主義と題した 素晴らしい論説記事を Daring Fireball に公開した。彼はこう述べている:

ユーザーインターフェイスのデザインにおいては、保守主義対自由主義とも言うべき分岐が見られる。つまり、伝統に従うやり方と伝統にとらわれないやり方との対立だ。保守主義の者たちは、標準に従わないカスタム UI 要素を間違ったものと見なす。一方自由主義の者たちは、標準のシステム UI 要素のみで作られたアプリを退屈で、旧式で、面白みがないと見なす。

最近、私 (Adam) もこの問題が気にかかっていた。そして、App Store で見られるアプリケーションや、新しい Twitter アプリケーションの持つ極度に自由主義的なインターフェイスがこの問題を否応無しに最前面へと押し出した。(詳しくは Tim Morgan が彼のブログで分析している。)過去には Human Interface Guidelines を高らかに掲げ、インターフェイスの統一を目指していた Apple Computer 社は、いったいどこへ行ってしまったのだろうか?

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やんぬるかな、物事は変わる。Gruber も指摘している通りだ。そして Apple 自身も、Mac OS X の歴史を辿れば UI 自由主義へと傾きつつある。Finder、iTunes、iPhoto、Safari、これらすべてが、Apple にとって UI の実験という役割を果たしてきた。ただ、これらのアプリケーションがそれぞれにどれほど違っているかを見れば、これらの実験がうまく組織化されていたとは思えないのだが。ちなみに、上のスクリーンショットは冗談なので念のため。Apple は今でも、 Mac OS X 用\iOS 用の Human Interface Guidelines を、それぞれきちんと公開している。問題は、それらが守られているかどうかだ。

UI 自由主義における問題は、必ずしもそれが良くないインターフェイスを作り出すということではない。それどころか、仮想のツールとやり取りするために新しくて革新的な方法を提供する非常に良いインターフェイスも現に存在している。その上、UI 自由主義における問題は、悪いインターフェイスがたやすく作れてしまうという問題ですらない。ただしそれは確かに事実ではある。なぜなら、UI 保守主義の人たちなら、ただ単にルールに従って標準のコントロールに依存するだけで、ある程度良いインターフェイスが作れるからだ。

いや、UI 自由主義における真の問題点とは、それがこのプラットフォームの使い勝手を全体として損ねてしまうことだ。それは、個々の開発者にとってはそれほど大きな懸念とならない。個々の開発者は、ただ自分のアプリが他よりも際立てば満足だからだ。けれども、これは Apple にとって懸念材料となる。いや、少なくともそうなるべきだ。なぜなら、個々のアプリがそれぞれ勝手に物事を作り直すようになってしまえば、Apple のプラットフォームがそれだけ使いにくいものとなるからだ。

公正を期して言えば、iOS におけるプラットフォームの使い勝手は、Mac OS X に比べればそれほど大きな問題とならないだろう。ユーザーたちは一度に一つずつのアプリとしかやり取りせず、アプリの切り替えに伴ってメンタルなモデルも切り替えるからだ。それに、スクリーンが小さいことによる制約は、より広い場所でなら理想的と思えるものも帳消しにしてしまうことが多い。まあ、Apple の iBooks アプリにあるあの隠された Search フィールドの問題も、これが説明なのだと我慢すべきなのかもしれない。あの Search フィールドは、誰かからその存在を教えてもらうか、あるいはまるでビデオゲームでのように自分でアプリの隅々まで探索でもしない限り、見つけられないだろうから。さらに、これは以前にも触れたことがあるが、iOS 機器の魔術というのは、機器そのものが現在走っているアプリに なる ことだ。だから、個々のアプリのインターフェイスがそれぞれに大きく違っていたとしても、まごつかされる度合いは少ないのかもしれない。それからもう一点、たいていの iOS アプリは非常にシンプルで、ごく短い間しか使われないので、インターフェイスが普通でないからといって学習曲線が急上昇したり生産性が急降下したりすることはないだろう。

けれども Mac 上では、プラットフォームとしての使い勝手が大きな問題となる。まず何よりも、私たちの多くは同時に複数のアプリケーションを使って、双方を同じスクリーン上で見ながらクリック一つだけで行き来している。さらに重要なこととして、Mac では複数のアプリケーションが共に働くという事実がある。一つのアプリケーションから別のアプリケーションへ、コピーとペーストを使うにせよ、あるいは Apple の Data Detectors のような内蔵メカニズムによるにせよ、アプリケーション間でのデータの移動が継ぎ目なくスムーズにできることが期待される。複数のアプリケーションを協力して働かせる機会が増えれば増えるほど(そう、私たちの多くは一日中 Mac の前で仕事をしているのだ)ユーザーインターフェイスの首尾一貫性の持つ利点は大きくなり、UI 保守主義者たちのデザインしたものは、まさにそれに応えることができる。その上、いろいろなアプリケーションが首尾一貫したユーザーインターフェイスに依存するならば、その使い方を学ぶのも易しくなる。生産性アプリケーションについては、それこそが直接核心に迫る要点とも言える。

けれども、好むと好まざるとにかかわらず、UI 自由主義は Apple の内部でも、iOS ソフトウェア開発者の間でも、そして次第に Mac ソフトウェア開発者の間でさえも、優勢になりつつあるようだ。例えば Apple が iPhoto '11 で採用したフルスクリーンインターフェイスを見てみるとよい。これがそれ自体として良いインターフェイスであるかそうでないかはさておき、いずれにしてもこのプログラムの以前のバージョンを使った経験のある人ならば誰でも、この変更によって iPhoto '11 が使いにくくなったと感じることだろう。それは、今回からこのプログラムに互いに非常に異なった二つのインターフェイスが備わり、それぞれに独自の長所と短所を競い合っていることだけが理由ではない。その上、Mac OS X Lion が Mission Control を携えて登場するまでの間は、フルスクリーンモードにある iPhoto '11 から別のアプリに切り替えたとたんに、iPhoto は勝手にフルスクリーンモードを脱してしまい、行きつ戻りつ切り替える際にますます混乱が増してしまう。

Kai Krause が Kai's Power Tools にまるで異星人から発想を得たかのようなインターフェイスを盛り込んだ時、彼が実は数十年分も時代を先取りしていたのだと見抜けた人が、いったい何人いただろうか?

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ProVUE の Panorama に小さな弟が誕生: Panorama Sheets

  文: Matt Neuburg <mattimagetidbits.com>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Panorama は、ProVUE Development 社 ("Jim Rea と彼の仲間たち" としても有名だ) の旗艦製品たるデータベースアプリケーションだが、驚くべき歴史を持っている。これは、最も初期の Mac アプリケーションの一つであり、その登場は 1984 年にまで遡る。いや、それさえもこのアプリケーションの最初のバージョンではなかった。その後、Panorama は Mac 上でますます盛んに活動を続けた。(より最近には Windows 上でも活躍した。)これこそ現存する最高のデータベースプログラムだと考える人は多く、私もその一人だ。そのことは私の記事“Panorama で光明を見出す”(2001 年 11 月 19 日) をお読みになれば一目瞭然だろう。TidBITS 出版者の Adam Engst も、このプログラムのファンで、本格的に使っている。彼の記事“Panorama の眺めを必要とする時”(2005 年 3 月 14 日) と“Panorama の意外な使い方”(2005 年 4 月 11 日) をご覧頂きたい。また、歴史や懐古の情がお好きな方は、Jim Rea が Macworld Expo 2010 でインタビューされているビデオをぜひご覧あれ。

Panorama はパワフルなプログラムだ。そのパワーは、一連の異なったレベルが次々にレイヤーとして互いに重ね合わさっているところから来ていると考えてよい:

今回 ProVUE が新たにリリースした Panorama Sheets における創造的アイデアは、これらのレベルが本当の意味で基本的に別々のものであり、それぞれが次のものの上に首尾一貫して位置することをきちんと認識したことだ。多くのユーザーは、いや大多数のユーザーはと言った方が良いかもしれないが、これら三つのレベルすべてを意識する必要はない。私自身は、Panorama の中でほぼすべての時間を最初のレベル、つまりデータシートで過ごしている。それはつまり、もしも私が第二と第三のレベルにアクセスできなくなってもほとんど気付かないだろうということだ。そしてそれこそ、Panorama Sheets そのものだ。つまり、Panorama Sheets とは、Panorama の中からデータシートの部分だけを独立させたものだ。

これは素晴らしいアイデアだ。なぜなら、Panorama が突然、Panorama Sheets という形となり、もはや巨大で複雑なアプリケーションではなくなったからだ。これからはすべてが明快でシンプルだ。もう恐怖感や混乱と戦う必要もない。学習曲線などというものは存在しない。その上、使いたい気にさせる魅力に溢れている。「データベース」にはプログラミングも、さらにはフォームも必要ないと考える人たちは多い。そういう人たちには、ただ単にカラムに整列したデータを保存しておけるグリッドさえあればよい。そこに、住所録や、自分のユーザ名とパスワード、植物の病気のリスト、その他何でも書き込むだけだ。

Panorama Sheets は多くの部分を 2010 年前半に登場した Panorama 6 に依っている。(2010 年 7 月 14 日の記事“Panorama 6.0.0 build 92277”参照。) Panorama 6 にはいくつか素晴らしい新機能があった。例えば、データベースを以前に保存したバージョンのどれにでも復帰させられるグローバルな Undo 機能もあった。けれども、その主要な労力は驚くほど広範囲に及ぶ Panorama インターフェイスの見直しに注がれていた。それまで無骨だった、あるいは難解だった物事が、明快で分かりやすいものに生まれ変わった。メニューも大幅に単純化され、データシート自体にもコンテクストメニューが追加されていろいろ役に立つ操作ができ、例えばクリックしたデータに何らかの意味で関係あるレコードのみに表示を限定することもできるようになった。また、素晴らしいダイアログも導入されて、さまざまな基本的操作の補助として働けるようになった。

だから、例えば、データベースでフィールドの構造を変更したい場合には、別途に「デザインシート」などで設定するのではなく、ただ単にコンテクストメニューを使ってフィールドを追加したり、ダイアログでその設定をしたりするだけでよい。一つのフィールドの内容に基づいて別のフィールドの内容を決めたい(例えば First Name カラムと Last Name カラムから Full Name カラムを構築したい)あるいは一つのカラム内のデータを操作したい(例えば末尾の空白文字を削除するなどの)場合には、わざわざそのために処方式を書くのでなく、ただダイアログを使ってグラフィカルに、何をしたいかをポップアップメニューで指定するだけでよい。Panorama は非常に高速で動作するので、あなたが設定をしている最中にも、そのダイアログによる設定の結果をライブでプレビューすることができる。だから、実行するよりも前にあらかじめ結果がどうなるか分かるのだ。

それと同時に、あなたが処方式を書く方を望むなら、それも可能だ。Panorama の持つ何百ものデータ処理の関数や表現は膨大なパワーを誇るが、それらのすべてが Panorama Sheets にも備わっている。だから、例えば、一つのカラムがもう一つのカラムの内容に応じてスプレッドシートで使う類いの複雑なカスタム処方式に従って自動的に依存するようにしたければ、それも可能だ。ただ、Panorama Sheets では処方式と手続き型論理とを組み合わせることができない。けれども、たいていの人にとってそれはあまり大きな損失とはならないだろう。

Panorama Sheets はただデータを保存してそれを分析するための、素晴らしい場所となる。ことに、今回読み込みや書き出しがワンステップの操作で簡単にできるようになったのでなおさらだ。例えば、私はこれを使って自分が書いた iPhone や iPad 用のアプリの App Store におけるダウンロード状況を追跡している。毎週一回、Apple から私にそれらのダウンロードをリストしたテキストファイルが届くので、私は単純にそのテキストファイルを自分の Panorama 書類の上へ直接ドラッグする。するとたちまち、新しいデータがそこに追加されるのだ。

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けれども本当に楽しいのは、そのデータを操作する段階だ。Panorama は、そもそもの始まりからずっと、RAM ベースで動作する。だから、ファイルは一度完全にメモリに読み込まれ、その後明示的に保存をするまでは一切手が触れられることはない。(この事実のお陰で、思う存分実験ができる。さらに、たとえ保存したとしても、その内容がまずければ Total Recall 機能を使って過去に保存した内容に復帰させることができる。)その上、何をするのも電光石火の早業だ。一つのカラムの中に、別のカラムの内容に基づいて自動的にデータを入れることもできる。空白のセルの中にデータを埋めてから、中間集計を計算させることもできる。あらゆる種類の検索が可能で、表示されるデータをあなたの基準に合致したものだけに選り分けることもできるし、重複したデータを見つけ出すこともできる。もちろん並べ替えも、部分的並べ替えもできる。これらの機能の中には Excel でできるものもあるかもしれないが、使いやすさの点では比べ物にもならない。

でも、私が一番気に入っている機能は、Panorama があなたのデータをあなたのために分析し要約してくれるところだ。例えば、ダイアログを一つ使うだけで、私の App Store データについて個々のアプリのダウンロード総数を反映した形で整理するよう Panorama Sheets に命ずることができる。また、それらの総数を日付の範囲に分けて分割して整理し直すこともでき、それを見れば時間経過に応じたダウンロード数の増減が一目で分かる。その際、無関係なカラムがすべて自動的に隠されることに注意して頂きたい。そのお陰で私が調べたい事実のみに注意を集中させることができる。

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もしもあなたが Panorama Sheets を使い始めて、そのうちに本当はフル機能の Panorama が必要だった、フォームや手続き型プログラミング言語が欲しいから、と思うようになっても、何も問題ない。Panorama と Panorama Sheets は共通の書類に働くのであって、実際、同じコンピュータ上で共存することも完璧に可能だ。もちろん、アップグレードする際には特別価格が適用される。

でも、Panorama Sheets を単なる呼び込み版とか、何か機能の弱い Lite 版の Panorama だとか、そんな風に誤解して頂きたくはない。大多数のユーザーにとっては、Panorama Sheets だけで十分必要が満たされるだろう。価格も安くて機能も焦点が絞られており、Panorama 6 から継承したインターフェイスは明快で有用なので、非常にパワフルなデータベースプログラムとして機能すると同時に、使いやすく、使っていて楽しい。

Panorama Sheets が実際に動く様子を実感する最適の方法は、入門ビデオを観ることだ。その後で、もし気が向けば、15 日間有効の試用版がダウンロードできる。Panorama Sheets は Mac OS X 10.4 かそれ以降の走る Intel または PowerPC ベースの Mac を要する。ただし、これを Mac App Store から購入するには Mac App Store を認識するコンピュータ、つまり Mac OS X 10.6.6 以降が必要だ。Panorama Sheets の価格は $39.95 で、 ProVUE から直接に 、あるいは Mac App Store からも入手できる。

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9 年ぶりに Apple に戻る

  文: Lorenz Szabo <lorenzszaboimagefastmail.fm>
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

私はこの記事を新しい 11-inch MacBook Air で楽しみながらタイプしているが、幾つかの Mac OS X アプリケーションをインストールして、9 年前の古き良き時代を思い出してしまった。それは私が私の Power Mac G3 (Yosemite) を使うのを止めた時なのである。何故?銀行の中での仕事で Windows XP にそして後になって Windows Vista に切替えなければならなかったからである。

私はコンピュータを使い始めた時から猛烈な Macintosh ファンであった。最初は私の Atari ST の Macintosh エミュレータ上で System 6 を使い始めたのだが、私の最初の本物の Macintosh は中古の Macintosh Portable であった - これは最初の PowerBook が出た時に良い条件で入手したものである。その後、Macintosh IIci, そして各種の Power Mac と続いた。私の父は PowerBook 170 を持っており、私の最初の PowerBook は 3400c で、とても気に入っていた。大学にいた時は、Apple の推奨者として働き、最初の iMac の宣伝を手伝い、後に Microsoft Macintosh ソフトウェア推奨者として働いた。同時に、私は筋金入りの Newton ファンでもあり、MessagePad 120 を持っていたが、それは後には 130 になった。(事実、初代 Small Dog Don Mayer の Newton MessagePad レビュー記事はいまだ私のハードディスク上に残っていて、面白いことには "Newton" を "iPad" に置き換えててみると今でもこの記事は結構意味をなすのである。)

私は昨日最新の印刷本の Macworld を買ったのだが、とてつもなく分厚かった Macworld や MacUser を思い出し、懐かしくなりつい顔がほころんできた。 21-inch のモノクロモニターを求めて Macintosh の通信販売をやっているところ全てを探し回り、Microtech にするか eMachines にするかでで迷いに迷ったりした事が思い出された。私は今でも Now Menus, Claris FileMaker, そして StuffIt Deluxe, それにサードパーティ PowerBook Duo SCSI アダプタの宣伝を覚えている。

しかし、いったん Windows に切替えた後に、Mac とそのオペレーティングシステムに後ろ髪をひかれなかったかって?実際はそれ程でもなかった。何故ならば、私の仕事はグラフィックスにも、デザインにも、或いはマルチメディアにも関係なかったので、私はすぐに典型的な Windows 会社人間になってしまった。私が持ったのは、最初は Dell ノートブック、次は Dell Latitude ノートブック、それから HP と Nokia のノートブック、そして最近二年間は Sony Vaio で、これは今でも Windows Vista と一緒に使っている。それからモバイル機器も色々使った、幾つかの Palm、Windows Mobile が走る Treo (どうしようもないガラクタ!)、Sony PRS-505 電子本リーダー、それに勿論数多くの BlackBerry と言ったところである。同期に関して言えば、Outlook が走っている PC 或いは RIM サーバーに接続された BlackBerry に勝るものは無い!人々が Mac を取り出したりすると私は嬉しかったし微笑んだりもした、内心では涙しながら... いえ、いえ決してそんなことはない:それは希望的観測というものである!私は新しいものに取組む時、例えば Windows の様な、私は徹底的に調べ上げそしてそれに入れ込む。BBEdit はすぐに TextEdit Pro に置き換えられ、そして GraphicConverter は IrfanView になった。例を挙げればきりが無い。コンピュータは私の人生の中ではそんなに重要ではなかったし、今でも変わっていない:私が欲しいのはきちんと動くシステムであり、熱狂徒の一部にはなりたくない。

しかし Mac 教団には秘密兵器があり、それは iPhone と呼ばれる。私は持っていた色々な iPod を同期するのにずっとiTunes を使い続けてきた (私の好きなのは iPod shuffle である)。私の iPod 好きは変わらなかった、時折私の Dell ノートブックは iPod を付けたままでは立ち上がらない事もあったりしたが - iPod に音楽を同期する事は BlackBerry でメールを受取る様なものである:それはサーバー設定を変えない限り良く働く。しかしながら、iTunes と iPod だけでは、私は Mac に戻る気にならなかった。

いずれにしても、2009年10月に私は私の携帯電話の契約を更新するため T-Mobile に連絡を取った。面白い事に、iPhone の方が最新の BlackBerry よりも安かったのである。それで私は iPhone 3GS を試してみる事にした、と言うのも私の周りには iPhone 3G に満足している人が何人かいたからである。私はそれまでの BlackBerry Bold もバックアップとして持っている事とした、万が一に備えて!最初、この iPhone の印象はそれ程良いものではなかった:何だって、私のメールメッセージは即座に届くのではなく、15分毎にしか現れないんだって?それにメッセージをタイプするのは使い物にならなかった。

しかし私は何千もあるアップスにより iOS エコシステムへとだんだん引き込まれていった。私の最初のアプリは GoodReader だったと思う;それからどんどんと増えていった。(私のトップ 5 アップスは、ワードプロセッサの iA Writer, ファイル管理の iFiles, Twitter クライアントの Ofsoora, コンタクトアクセレータの Dialvetica, そしてタスク管理の OmniFocus である。)

私の興味は私のデータを常に同期しておくことであったので、iPhone を買ってすぐ MobileMe へと切替えた。他の誰もが同期のため Google Calendar を使っている時悔やんだりもしたが、私は私の iPhone のために MobileMe の遠隔ロックオプションが欲しかった。Mac OS X に戻した時、私の MobileMe 設定が、カレンダーもコンタクトも含めて、私の新しいコンピュータに転送される早さに感心した。私はまたファイル共有のため Dropbox も使うが、私の Mac と iPhone 上の同じファイルにアクセス出来るというのは極めて有用である。私は Dropbox をおよそ 10 人の人と使っているが、これで私が仕事をするやり方もすっかり変わってしまった。

iPhone 3GS は、私の Apple に対する興味を生き返らせた。発表を追いそして面白そうなアクセサリのレビューを読む様になった - 毎日噂サイトを読んだりする所までは行っていないが。でも、Apple ニュースを追い、そして iPad が発表された時胸が弾んだ。2010年8月に、私は突然 iPad 中毒になってしまった (iPad が Austria に着いたのは米国から何週間も遅れてのことであった)。10月下旬には、私は iPad, Apple ワイヤレスキーボード, そして Griffin A-Stand を携えて米国 4 州を旅していた。Las Vegas での最後の日に Apple Store には新しい MacBook Air ラップトップの最初の品が届いた所で、私はその 11-inch モデルに惚れ込んでしまった。大きな理由はその瞬時に動き出す能力で、完全なオペレーティングシステムを搭載したコンピュータでは私が見た初めてのものであった。

MacBook Air は真に興味をそそられるマシンである:これは速度やデザインで妥協することなくポータブルコンピュータがあるべき絶対的最少と言える。バッテリドア?付いていない、電池は取り外せないからである。現実は、私の経験から言うと 4 時間から 7 時間持つ機器では予備の電池は必要とした事が無い。メモリがもっと欲しい? 13-inch モデルを選べば良い。SuperDrive が無いことについて茶化したいのならどうぞお好きなように、でもあなたが最後に箱に入ったソフトウェア或いは CD の音楽を買ったのは何時でしたか?(確かに私は物事を大げさにしていると思うが、Adobe Creative Suite の様な本格的なパッケージに依存している様な人、或いは CD の音楽を沢山買う様な人であれば、もう一台のコンピュータを持っているか Apple の USB SuperDrive に飛びついているであろう。) MacBook Air を見てみればおわかりになると思うが、これは当時の PowerBook 100 そのものである:軽量で真にポータブルなコンピュータでありながら時代の最良の技術を搭載している。

私は戻ってこれて嬉しい、でも言わせて貰えばあの 3.5-inch フロッピーディスクを懐かしいとは思わない!

[Lorenz Szabo は事業開拓コンサルタントで Vienna, Austria に住んでいる。 彼のブログで彼の考え方をもっと読んでみてはいかが?]

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Mac App Store のカウンターの裏を覗き込む

  文: Adam C. Engst <aceimagetidbits.com>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

スタート時点で 1,000 以上のアプリを誇りつつ Apple は Mac App Store のカーテンを開き、Mac OS X 10.6.6 アップデートの主要な新機能としてこれをリリースした。iOS の App Store と同様、この Mac App Store も、いろいろなアプリについての情報を手軽に探したり読んだりできるインターフェイスを提供している。

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クリック一つで有料のアプリを購入(あるいは無料のアプリを入手)でき、すぐにそのアプリのアイコンがあなたの Dock の中に飛び込んで来て、アプリが Applications フォルダにダウンロードされる状況を示す進行バーが表示される。ダウンロードされたアプリはすべて Dock にアイコンを追加するが、当然のことながらあなたはアイコンを Dock の外へドラッグして取り除くこともできる。将来について言えば、今後それらのアプリのアップデートが Apple によって承認され次第、あなたの Mac 上にある App Store アプリがそのアップデートを提供することになる。

Apple は、Mac App Store からのダウンロード件数が初日に 100 万本を超えたと発表した。ダウンロード数がその後も累積し続けていることは疑いなく、今後 Mac App Store がさらなる記録的数字を達成するごとに Apple から得意気な発表が出ることだろう。

見て、感じて、買う -- Mac App Store の表の顔は App Store と呼ばれる小さなアプリケーションであるけれども、実は Apple は Mac App Store を Mac OS X の奥深くに統合させている。購入したアプリのアイコンが Dock の中に飛び込むアニメーションや、ダウンロード進行バーのアニメーション表示の他にも、Apple メニューに新設された App Store メニュー項目や、未知のタイプの書類をダブルクリックした際にアプリケーションを Mac App Store で検索する手段を提供するダイアログもある。さらに、開発者用にはさまざまの新しいフレームワークや内部的 OS サポートもある。

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App Store アプリケーション自体は基本的にはウェブブラウザであって、ちょうど iTunes が iTunes Store と iOS 機器用の App Store を表示するのと同じように、このアプリケーションが Mac App Store のインターフェイスを表示する。Mac App Store の内容は日々変化して行くのでこのやり方は道理にかなっているが、残念なことにこれはウェブブラウザとしての機能が凡庸で、提供するのは Back、Forward、Search のコントロールと、ハードコードされたボタン五個、Featured、Top Charts、Categories、Purchases、Updates のみだ。(対応するメニュー項目はあるが、キーボードショートカットはない。)思うに、ここにタブによるブラウジングを導入して、Mac App Store で複数の項目を Command-クリックしてそれぞれ別々のタブに開き、素早く行きつ戻りつして互いに比較できるようにすればもっと良くなるのではないだろうか?

アプリについての情報は実際にすべてウェブで、Mac App Store Preview ウェブサイトを使って見ることができる。(例として、下の写真には Things の情報が示されている。)けれども、この Mac App Store Preview ウェブサイトではおすすめのアプリのリストや、アプリのカテゴリー分けなどを見ることができないので、その主な存在意義は Mac App Store の内容が Google、Bing、Yahoo、その他検索エンジンで検索できるようになるということなのだろう。

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私には、二つの小さな不満点があった。まず第一に、Apple はこの App Store アプリケーションに、丸くて青いものでないアイコンを思い付くことができなかったのだろうか? Safari、iTunes、iChat と判別するのも難しいし、同じようなバッジ形のプログラムをあともう数個インストールすれば、Command-Tab アプリケーション切替を使う度にどうしようもなく混乱させられるだろう。それから第二に、いったい全体 Apple は、この Mac App Store のためのアプリケーションを、どうして単なる "App Store" でなく "Mac App Store" と名付けることができなかったのだろうか? これで、App Store アプリケーションを扱う Mac App Store と、App Store アプリを扱う (iOS アプリ用) App Store とが並立することになったわけだ。確かに、その時その時でどの機器が目の前にあるかによって区別できるのだが、文章で説明する場合には明確に区別するのが難しい。

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既存のアプリ -- では、もしもあなたが Mac App Store にあるものと同じアプリを既に持っていたらどうなるのだろうか? その場合、二つのことのうち一つが起こる。第一に、もしもあなたのハードディスクにあるアプリケーションのバージョンが Mac App Store にあるアプリのバージョンと完全に一致すれば、価格を示すボタンが Installed (インストール済み) という表示に変わり、アプリを購入することはできない。これは道理にかなっている。Apple としては、既に持っているアプリケーションを間違って買ってしまったという苦情がカスタマーサービスに押し寄せる事態を望んでいないからだ。私の場合、これに該当したアプリケーションとしては BBEdit、Transmit、Things、それに iWork '09 を構成する Keynote、Pages、Numbers があった。

残念なことに、これには副作用がある。これらのアプリケーションの開発者たちは現在、Installed (インストール済み) の表示を見てそのアプリケーションが Mac App Store と完全に統合されていると思い込んだ既存の顧客たちからの問い合わせに悩まされているのだ。実際は完全な統合にはほど遠い。例えば、Mac App Store 以外で購入したアプリケーションに対してレーティングを付けることができない。これは見落としのように思われ、Apple はこれを修正すべきだろう。自分の持っているアプリに対しては、レーティング付けができるべきだ。さらに重要なこともある。私が Twitter で話を聞いた多くの開発者たちによれば、既にインストールされていてそのように認識されているアプリであっても、App Store がそれを購入済みと見なさず、Mac App Store 経由のアップデートが認められないことがあるという。

より一般的な状況として、ハードディスク上に Mac App Store にあるものより古いバージョンのアプリケーションがある場合が考えられる。これは、多くの開発者たちが Mac App Store に提出するためにそれ専用のアップデートを作成しているからだ。私は Fetch 5.6 を持っているが、Fetch Softworks の Jim Matthews が Mac App Store に提出したバージョンは 5.6.3 となっているので、これがインストール済みとは認識されない。

そのような状況においても、そのアプリケーションを購入(あるいは無料の場合にはダウンロード)することは可能で、そうすると Applications フォルダの中に既存のファイルが黙って置き換えられる。私はこのことを、無料のアプリ Garmin Training Center をダウンロードしてそれが私の古いバージョンを置き換えるのを見届けて確認した。無料のアプリについては、おそらくこれが望ましい挙動だろう。Mac App Store が、今後は私のために Garmin Training Center のアップデート管理を引き受けてくれることになるからだ。けれども有料のアプリについては、既に持っているものを購入してしまわないように、十分注意する方が良いだろう。

Mac App Store と既存のアプリケーションとの関係について何か疑問があれば、Macworld の FAQ 記事を見るとよい。基本的なことがすべてカバーされている。

価格と推測 -- 多くの iOS アプリは $0.99 から $1.99 という安い価格で販売されている。もっと高い価格を狙っている iOS アプリもいくつかはあるものの、App Store がこれほどに価格を下げてしまったために、開発のためのコストをカバーできるのは極端に人気の高いアプリに限られるのではないかという議論が出ているほどだ。

それと同じ懸念が Mac App Store についても噂されていた。けれども、TUAW で Richard Gaywood が初期段階での分析をした結果によれば、どうやら大多数のアプリが $10 から $50 の間の価格を付けているようだ。それは、従来の Mac App Store 以外での価格と見合ったものだろう。$50 より高い価格を付けているアプリも少数ながら存在し、さらに少数のものは $100 を超える価格だ。こちらも、やはり既存の価格体系に見合っているだろう。その代わりに、$5 以下の価格を付けているアプリも多数ある。その多くは iOS から移植されたゲームだ。

長年の Mac ソフトウェア開発者たちの多くも、Mac App Store の中へ飛び込んでいる。(最も古参のアプリはどうやら Fetch のようで、これは 1989 年に初めて出荷された。それに続くのが 1992 年に登場した BBEditPCalcStuffIt Expander といったところだ。)けれども、もっともなことながら、彼らは非常な注意を払いつつそれをしているようだ。けれども例外もある。Pixelmator の開発チームは今後数ヵ月以内にすべての販売・配布を Mac App Store へ完全移行させると発表した。また、Sophiestication の CoverSutra は現在 Mac App Store 経由でしか入手できない。さらに、iOS ソフトウェア開発者たちの多くにとっては、Mac App Store は彼らが iOS App Store で既にしていることの延長と映るだろうし、あえて独自のオンラインストアを構築する必要などないと感じられるだろう。

Mac App Store が、ユーザーたちにも開発者たちにも大いなる恩恵をもたらすことに疑いの余地はない。新しいアプリを見つける方法が改善され、インストールも容易で、自動アップデートもあり、新しい Mac をセットアップする際にも再ダウンロードができ、シリアル番号などは不要となる。それに、iOS App Store とは違って、開発者たちはここ以外で販売する道を閉ざされているわけではない。だから、Apple による認可のポリシーをめぐる騒ぎもそれほど起こらないだろう。

けれども、Apple が売上げの 30 パーセントを取引手数料として取ることを別にしても、やはりまだ欠点はある。開発者たちにとって最も懸念されるのは、Apple がすべての顧客を自らのものとすることだ。つまり、開発者としての自分が、自分の作った製品を購入する人たちとの繋がりを持てなくなることだ。これは将来の市場開発の上で懸念材料になるのはもちろんだが、製品の顧客サポートの面で困難を生み出すことにもなる。今後、何らかの形で開発した会社への登録をあなたに求めてくるアプリが Mac App Store に増えるのは間違いないだろう。また、メジャーな新リリースを値引きしたアップグレード価格で既存の顧客に提供するのは今日のソフトウェアの世界では標準的なことだが、現在のところ Mac App Store でそれを提供する方法はない。

それからもちろん、Apple の課した制限事項のために Mac App Store で販売することができないものが、人気ある便利なアプリケーションの中にも多数ある。Apple は、OS の中にリソースをインストールするアプリを認可しない。(例えば、Mac App Store から入手できるバージョンの BBEdit は、コマンドラインツールをインストールしない。)また、root ユーザーとして走る必要のあるアプリも認可されない。(例えばバックアッププログラムの SuperDuper や、ファイヤウォールソフトウェアの Little Snitch などだ。)それに、システム環境設定パネルや、スクリーンセーバなど、標準的なアプリケーションとして実装されていないものはすべて Apple の認可対象から除外されている。

そうした問題はあるが、私は Mac App Store が良いことだと思うし、将来はこれが Mac ユーザーたちが標準の Mac アプリケーションを入手する第一義的な方法となるだろうと思う。そう思う理由としては、私の知っている Mac ソフトウェア開発者たちの誰もが、その売上げを Apple による Mac の売上げと比べれば遥かに見劣りのするものしか得ていないという事実が大きい。それに対して、iOS App Store の成功を見れば、購入作業での摩擦を Apple が減らすことで、膨大な数の人たちが購入に踏み切ることが分かる。結局のところ、Mac App Store はソフトウェア販売のための潤滑油となるのだ。

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TidBITS 監視リスト: 注目のアップデート、2011 年 1 月 10 日

  文: TidBITS Staff <editorsimagetidbits.com>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Adobe Photoshop Elements 9.0.2 -- あなたの写真を iPhoto から最近リリースされた Adobe Photoshop Elements 9 へ(正確に言えば Photoshop Elements に別途付属の整理用アプリケーション Adobe Photoshop Elements 9 Organizer へ)移そうと思っているなら、この Adobe のスリム化版 Photoshop を、バージョン 9.0.2 にしておく方が良い。Adobe はこのアップデートが「iPhoto からの読み込みに関する修正を提供」するとしか言っていないが、その一言だけで十分だ。私たちが前回のバージョンをテストした結果では、この読み込み機能が iPhoto '11 で全く動かなかったのだから。(新規購入 $99。無料アップデート、2.9 MB)

Adobe Photoshop Elements 9.0.2 へのコメントリンク:

Apple Remote Desktop 3.4 -- Apple が Apple Remote Desktop 3.4 をリリースした。ネットワークされた Mac を遠隔で管理するための同社のツールだ。Apple Remote Desktop 3.4 クライアント は Remote Management (システム環境設定 > 共有 にある) をアップデートし、Apple Remote Desktop Admin は遠隔管理のツール自体をアップデートしている。今回のリリースでの新機能は、Mac App Store のサポートと、あなたが管理する遠隔 Mac の一覧を提供する Dashboard ウィジェットだ。このウィジェットでどれか一つをクリックすれば、Apple Remote Desktop 3.4 Admin が開いてその Mac に対する作業が始められる。(もしもインストール後にこの Dashboard ウィジェット から "Missing Plugin" エラーが出れば、 Mac を再起動してみるとよい。)このソフトウェアは Mac OS X または Mac OS X Server のバージョン 10.4.11 か 10.5.7、またはそれ以降を要する。また、いくつか特定のバージョンの Apple Remote Desktop 3.x しかアップデートしないので、たぶん最も手軽な方法はソフトウェア・アップデートにダウンロードをまかせることだ。(新規購入 $79.99、無料アップデート、4.25 MB)

Apple Remote Desktop 3.4 へのコメントリンク:

cf/x alpha 1.2 -- Photoshop なんか学ばずに画像の配置や調整をしたい人たちのために、cf/x Software の画像合成ツール cf/x alpha が注目すべきアップデートを得た。cf/x alpha 1.2 には Arrange by Shape 機能が新設され、ユーザーが指定したいくつかの画像からユーザーの定義した形に基づいてコラージュ(合成写真)を作ることができる。また、新たに四つのコラージュ生成法を装備したので、何百もの画像を山のように集めて、それらをキャンバス一面にまき散らしたり、一つの隅に掃き寄せたり、格子状に整列させたり、といったこともできる。これらすべて、心に描くのは簡単だが実際に手で実行しようとすると非常に面倒な作業になる。その他の変更点としては、不規則なサイズや配置の画像が Mosaic 生成でサポートされたことや、さまざまのインターフェイスの調整などがある。(新規購入 $229、無料アップデート、91.8 MB)

cf/x alpha 1.2 へのコメントリンク:

Mac OS X 10.6.6 -- Apple が最新版の Mac OS X である Snow Leopard をバージョン 10.6.6 に上げた。この最新の OS アップデートでの目玉機能はもちろん新しい Mac App Store のサポートだ。(2011 年 1 月 6 日の記事“Mac App Store のカウンターの裏を覗き込む”参照。)10.6.6 にアップグレードすればあなたの Dock に Mac App Store のアイコンが登場し、Apple メニューにこのストアへのリンクが追加され、またあなたの Mac 上に既存のソフトウェアでは読めないファイルをあなたが開こうとするとストアへの訪問を促すダイアログが出るようになる。また、今回の 10.6.6 アップデートにはセキュリティの修正も一件含まれており、PackageKit の脆弱性によって攻撃者があなたの Mac 上でコードを実行できてしまう可能性があった問題に対処した。それから、今回のアップデートでは二件のバグにも対処が施された。一つは PostScript 印刷を横方向でする際のトリミングの問題、もう一つは ATI グラフィックカードを搭載した一部の Mac で外付け DVI ディスプレイを接続した場合にマウスポインタの動きが不安定になることがあった問題だ。

Mac OS X に対するアップデートに際しては、通常ソフトウェア・アップデートを使ってあなたの Mac とあなたの使用中のバージョンの Mac OS X に適用されるコードのみをダウンロードさせるのが最も手軽な方法だ。けれども直接ダウンロードでも、10.6.5 を 10.6.6 にアップデートする差分インストーラ (Snow Leopard 用Snow Leopard Server 用、それぞれおよそ 143 MB) や、すべてのバージョンの 10.6 を 10.6.6 にアップデートする非常にサイズの大きな統合インストーラ (こちらも Snow Leopard 用統合アップデートSnow Leopard Server 用 統合アップデート、それぞれサイズは 1 GB を少し超える) が入手できる。いつもと同様、必ずアップデートの前に最新のバックアップがあることを確認し、またアップグレードの作業が開始されたら進行中に中断したりしないように注意したい。

Mac OS X 10.6.6 へのコメントリンク:

iWork 9.0.5 -- iWork を使っている人は、Apple によるこのオフィス生産性スイートの最新バージョン、iWork 9.0.5 にアップデートするとよい。このアップデートでは Keynote にいくつか新機能が導入された。依然としてベータ版である iWork.com 上での Keynote プレゼンテーションの再生に対応し、Safari を使用した場合にはアニメーションやエフェクトの再生もできるようになった。新しいバージョン 1.2 の Keynote Remote iOS アプリもサポートした。また、さまざまのバグも修正されている。さらに、Pages から書き出した EPUB 書類の可読性を改善するとともに、三つの iWork アプリケーションすべてで iWork.com 共有オプションを充実させている。Apple はまた Pages EndNote Plug-in もリリースした。これは、Pages '09 を Mac App Store からダウンロードした人が Pages に EndNote 引用を挿入したい場合に必要となる。(ただし EndNote は別途購入する必要がある。)(iWork: 新規購入 $79、無料アップデート、67.06 MB; EndNote Plug-in: 無料、270 KB)

iWork 9.0.5 へのコメントリンク:

GarageBand 6.0.1 -- Apple が GarageBand をバージョン 6.0.1 に上げた。このソフトウェアの全体的な安定性を向上させるとともに、このアップデートでは Flex Time 編集の取り消しに関連する問題に対処し、ギタートラックでときどき発生する遅延の問題を解決し、グルーブマッチングでトラックの“音符のタイミングをクオンタイズ”メニューが使用できるようにした。(無料アップデート、iLife '11 の一部としての購入は $49、47.5 MB)

GarageBand 6.0.1 へのコメントリンク:

iMovie 9.0.1 -- Apple が iMovie 9.0.1 をリリースし、アマチュアのスピルバーグでも以前より少しは楽に映画が作れるようにした。永遠に付きまとう記述語「安定性の向上」以外に、Apple は今回のアップデートで iPhone および iPod touch からの一部のビデオクリップに手ぶれ補正が正しく適用されない問題を修正し、一部の Facebook パスワードや、カメラとの互換性、プロジェクトライブラリをスクロールする際のパフォーマンスに関する問題点に対処したと言っている。(無料アップデート、iLife '11 の一部としての購入は $49、27.52 MB)

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ExtraBITS、2011 年 1 月 10 日

  文: TidBITS Staff <editorsimagetidbits.com>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

今週 TidBITS から外れた場所を眺めてみたいと思われるなら、Joe Kissell がペーパーレスなライフスタイルについて語る話にぜひとも耳を傾けて頂きたい。また、火曜日には Verizon Wireless のメディアイベントがあって、いよいよ iPhone が Verizon にもやって来るのかどうかが分かる。

Joe、Tech Night Owl Live にてペーパーレスを語る -- Joe Kissell が、Tech Night Owl Live ホストの Gene Steinberg との対談で、紙を(ほぼ)使わずに済ませるライフスタイルのノウハウを議論する。紙の書類をデジタル書類で置き換えるために、あなたにもできる手順を紹介する。

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WSJ: ついに iPhone にも Verizon が登場するか? -- 「事情通」からの情報として、Wall Street Journal の記事が、1 月 11 日の火曜日にニューヨークの Lincoln Center で開催される招待者限定イベントにて Verizon Wireless が同社の契約者も Apple の iPhone が使えるようになることを発表するはずだと伝えている。私たちは、Beatles が iTunes にやって来る話と並んで噂の的であったこの話にようやく決着がつくのかどうか、息を殺して待っている。

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