TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#1062/07-Feb-2011

私たちはまだ Macworld 2011 からの回復途上だし、また自分たちのインフラ整備プロジェクトに手を加えなければならない仕事もいろいろ残っているが、今週号はセルラー契約プランに関係したニュースが多い。Verizon Wireless が同社の iPhone プランを発表する一方で、AT&T もスマートフォン用モバイルホットスポットのオプション追加を (iPhone の名前を出さずに) 発表した。また今週号ではインターネットバックアップサービスの MozyHome が値上げを発表したこと、GadgetTrak が同社の iOS アプリにスナップショット機能を追加したこと、Rupert Murdoch の News Corp. が The Daily という iPad 専用の全国ニュース出版を始めたことも紹介する。(Adam はこの新しい出版形態がそれほど興味を惹かないのはなぜかについて考察する。)最後に、セキュリティ担当編集者の Rich Mogull が、Windows XP の時代以降セキュリティの世界がどう変わってきたか、また、そのことが Apple によるデジタルセキュリティに対する取り組みにおいて何を意味するか論ずる。今週注目すべきソフトウェアリリースは、Mailplane 2.3、DEVONthink と DEVONnote 2.0.7、Dragon Dictate 2.0.2、1Password 3.5.4、Things 1.4.4、Audio Hijack Pro 2.9.10、EyeTV 3.5.1、LaunchBar 5.0.4 だ。

記事:

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TidBITS アカウントが新しいサーバに移行

  文: Adam C. Engst
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

予定より遅れたことは申し訳ないが、テストや調整を重ね続けた日々を経て、Glenn と私はようやくすべての TidBITS 関係のアカウントと購読を私たちの古い Xserve から新しい仮想のプライベートサーバへと移行させる作業を終えた。(2011 年 1 月 2 日の記事“TidBITS メーリングリストに大幅な変更を計画中”参照。)今回の移行の大きな理由は、これにより TidBITS のアカウントと Take Control のアカウントを一つのシステムに統合し、私たちの希望する通りのやり方で動くようにそのシステムを構築することが可能になったことだ。出来合いのメーリングリストソフトウェアを持ち込むだけでは、それは不可能に近いことだった。

電子メールで TidBITS を購読している方は、旧システムにアカウントをお持ちだった。そういう皆さんは,この移行についてお知らせし、新しいパスワードを記した電子メールを、既に受け取っておられるはずだ。[訳者注: 既に新システムの Take Control アカウントをお持ちの場合は、TidBITS 購読の旧アカウントがそこに統合されて既存の Take Control パスワードが統合後のアカウントでも有効、と記された電子メールが届いているはずです。]そのような電子メールは届いていないとおっしゃる方は、どうぞ Sign Up or Sign In ページ を開いて頂きたい。ページ左側のナビゲーションバーにある My Account の下に、アカウントの管理に必要なコントロールがすべてまとめてある。まず My Account をクリックし、次に Log In をクリック、それから Need a New Password リンクをクリックすれば、購読にお使いの電子メールアドレスあてに新しいパスワードが届くはずだ。そのパスワードを使っていったんログインすれば、あとは Account Info ページでパスワードを変更したり電子メールアドレスを変更したりできる。

一つお願いがある: もしもあなたがこのシステムに既存のアカウントをお持ちならば、どうかそれだけを使うようにし、行き当たりばったりに新規のアカウントを作成したりしないようにして頂きたい。必要以上にアカウントが存在するのは、後になって混乱を招くだけだから。どうかよろしくお願いします!

願わくは、アカウント管理のインターフェイスは説明を要しないものになっているはずだ。そうなるように、私たちは慎重に言葉を選び、挙動の確認もしたつもりだ。でも、もしもあなたが何かの作業をするためにどうしたらいいのか混乱してしまったなら、どうかまず私たちの新しい Get Satisfaction サイトをチェックしてみて頂きたい。このサイトで、質問を投稿したり、他の人たちの質問に対する私たちの回答を読んだりできる。(この Get Satisfaction サイトは完全に独立のサイトなので、あなたの TidBITS 認証情報は使用しない。Get Satisfaction 用に新規のアカウントを作成するのがお嫌なら、あなたが Google、Twitter、あるいは Facebook でお持ちの認証情報を使ってサインインして頂くこともできる。)あるいは、この記事に対するコメントとして書き込んで下さってもよい。ただし、長期的に見ればサポート関係の討論を保持しておく場所として Get Satisfaction サイトは結構良く出来ていると思う。

もしもすべてがうまく行けば、電子メール版 TidBITS の次号はこの新しいシステムから配送されることになる。特に以前と変わったところは何もお気付きにならないはずだ。ただ、発送するマシンが変わったために、電子メール版のヘッダが以前とは少々違ったものになる。どうかうまく行きますように!

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Verizon Wireless、iPhone プランを決定、データに絞りも

  文: Glenn Fleishman
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

Verizon Wireless は $30 をいわゆる "無制限" と呼ばれるデータプランに課する予定である。これは Apple が Verizon の CDMA ネットワークに対応するよう設計した iPhone 4 と対になったものである。しかしながら、Verizon はまた契約条件とサービスの詳細ドキュメント も発表しており、そこではメディアをダウンサンプルしたり(データを間引きする)トランスコードしたり(コード操作して解像度を落とす)する可能性、そしてネットワークの一番のヘビーユーザーに対して絞りを(速度制限を)課する可能性についても触れている。

この "無制限" プランは Verizon から提供されている唯一のデータプランであり、Verizon はこれが期間限定のものとなることも明確に述べている。時間がたてば、同社は、同社と AT&T が他の電話に対して提供しているものと似たような二段階のサービスに切り替えるものと思われる。June 2010 に AT&T は、新規契約者とサービスプランを変更する人達から、月額 $15 の 200 MB DataPlus プランと月額 $25 の 2 GB DataPro プランを適用するよう切り替えた。Verizon はまたその iPhone 4 の Personal Hotspot 機能に対する値段も月額 $20 に設定したが、これには他のスマートフォンに対して提供されているのと同様、別に計測される 2 GB のサービスが含まれている。これ以上のデータの使用に対しては請求期間内に使用されたギガバイト当たり $20 が課金される。("AT&T、テザリングをモバイルホットスポットに変更" 2 February 2011 参照、これは AT&T の来たるべきモバイルホットスポットに関するものであるが、未だ iPhone に対しては発表されていない。)

Verizon の二つの帯域制限策には腹立たしさを感じるユーザーもいるであろう。 "最適化する" と "トランスコードする" とは、画像データを間引きすることを指していて、例を挙げれば、送信する時に帯域を減らすために JPEG 画像をオリジナルからより忠実でないものにするとか、ビデオの品質を下げる (その結果動きがぎくしゃくしたり不自然さが目に付くようになる) とかである。技術的に言えば、どちらもネット中立の原則には反しない、何故ならばそれはネットワーク管理方策と呼ばれているもので、Verizon 自身或いはそのパートナーからの画像やビデオを他のパーティからのものをよりよりよく見せるための差別的な方法ではないからである。

速度制限(絞りをかける)の方がより大きな問題かもしれない。モバイルキャリアは全て、正当な利用の規定に違反していると彼らが見なす人々に対して制限を設けたり或いは使えなくしたりする権利を有している。キャリアの細則には、モバイルはメール、Web サーフィング、そしてイントラネットのためにのみ使用できると書いてあるものが少なくない。スマートフォンはそれ以外の何百万もの仕事を扱えるという事実にもかかわらずである。勿論、世の中にはネットワーク乱用者というのがいることも事実であり、彼らは電話を Web サーバーとして走らせたり、或いは一日に 20 時間もビデオをストリームしたりする。Verizon は、95% 値のユーザー(上位 5%)だけに目を向けていると言っているが、これでは膨大な数の人々が掻き込まれてしまうことになる。ケーブルブロードバンドに対して毎月 250 GB までという利用上限に関して私がよく話をしてきた Comcast の場合、使い過ぎで問題になるようなユーザーは 1% にも満たないと言い、そしてこの様な人の多くは、盗用メディアの配信や或いは悪のゾンビ媒体として使われる汚染されたコンピュータを持っている。

Verizon Wireless や他のキャリア達は、自分達には都合がよいが顧客にはそうではない規則を採用してきた歴史を持つ。何が速度制限を課す引き金になるのか - 例えば 1 時間或いは 24 時間の間に消費されるある決まったデータ量とか、或いは 許されないと Verizon が主張する加入者によるサービス等 - についての明快なガイドラインなしで、そして Verizon がこれは許されない行為であるときちんとわかるよう警告してくることなしでは、同社は連邦議会からの監視、影響を受けた顧客からの訴訟、そして規制を当てはめようとする試みに直面するかもしれない。

現時点では、Verizon は公共ラジオの番組 Marketplace の中で (ここでは私の話も聞ける)、速度制限を課す計画は持っていないと言っていた。同社はただその権利は保有しておきたいと言うことであるが、広報担当はその原因となる理由をはっきり言うことは出来なかった。

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AT&T、テザリングをモバイルホットスポットに変更

  文: Glenn Fleishman
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

AT&T は 13 February 2011 から一部のスマートフォンでモバイルホットスポット機能を提供し始める。この発表では iPhone は触れられていない。この機能を使えば、あなたの電話がセルラールーターへと変身し、MiFi ルーターと同じ様に、電話の内蔵 Wi-Fi アダプタを使って複数の機器間でモバイル広帯域ネットワークへの接続を共有出来る。このサービスは 4G 電話と呼ばれる HTC Inspire 4G を使って開始されるが、これだと AT&T が現在合衆国内で展開中のより高速な方式を利用することが可能となる。AT&T は、改定されたテザリングとモバイルホットスポットプランに、2 GB の追加データ使用を組み合わせる。

iPhone もまたこの機能をまず間違いなく得ることになる、何故ならば Verizon Wireless は iPhone 4 に対するオプションとしてポータブルホットスポットを提供するからである。Verizon も AT&T もこの機能に対しては別料金を課するが、Verizon は幾つかの Palm Pre モデルに対してはこれを免除している。AT&T はきっと Verizon が依存しているものと同じ機能を使うであろう、それは Settings アプリの中で Personal Hotspot と呼ばれているものである。Macworld の Jason Snell は、彼の Verizon iPhone レビューの中でこの機能を紹介している。Personal Hotspot には iPhone と必要なドライバサポートを有するコンピュータの間での Wi-Fi 共有と、そして Bluetooth 或いは USB 接続が含まれる。

現在のテザリングを、或いは将来スマートフォンモデルに提供される様になった時に新しいホットスポット機能を使うためには、AT&T は、あなたがより容量の大きな DataPro プラン (2 GB で月額 $25) に加入していることを必要とする。名前はどうであれ、月に $20 余分にかかることに変わりはない。DataPlus ($15 で月に 200 MB) と DataPro の間での変更は変更料金を支払うことなしに可能で、そしてモデムとしての電話の機能もオン、オフ出来る。この新しいプランは、DataPro に含まれる既存の 2 GB にさらに 2 GB のデータ使用を追加する。それでも、利益だけが目標と見なさざるを得ないテザリングやモバイルホットスポットを正当化するにはまだかなりの距離がある、と言うのもすべてのデータ使用はすでに計測されているからである。 DataPro (2 GB 以降) そしてテザリング/ホットスポットアドオン (4 GB 以降) のどちらでも追加のギガバイト (全量又は部分で課金される) は月額 $10 である。

Verizon Wireless iPhone サービス は、月額 $30 の無制限データプランしか提供していず、更にホットスポット機能は月額 $20 である。Verizon はこのホットスポットとテザリングだけに対して 2 GB の利用を含めていて、この最初の 2 GB を使い切った後は GB 当たり $20 の追加料金が課される。

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GadgetTrak アプリが進化して盗人の写真を撮影

  文: Glenn Fleishman
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

iOS 用の盗難対策アプリ、$0.99 の GadgetTrak にアップデートが出され、あなたの機器を持ち去った不心得者のスナップ写真が撮影できるようになった。今回のバージョン 2.5 リリースは、バックグラウンド位置情報更新機能を追加し、盗人に正体を暴露されたと勘違いさせるための push 通知も提供した前回のバージョン 2.0 アップデートが出されてから一ヵ月後となる。(2010 年 12 月 27 日の記事“iOS 用 GadgetTrak が位置情報のバックグラウンド更新を追加”参照。)

写真の撮影は、GadgetTrak のウェブサイトにあるあなたのアカウントで追跡をオンにしてこのアプリが起動すれば、正面と背面の双方のカメラを使って実行される。Macworld 2011 での記者会見の場で GadgetTrak 社が私に説明してくれたところによれば、同社から push 通知が送られ、それを開けばアプリが起動されて写真が撮影されるという。もしもその電話機がネットワーク上にあれば、撮影された写真が送信される。

その push 通知を開くなんてよほど愚かな盗人でなければしないだろうと思えるかもしれないが、反射的にタップしてしまう人は多いものだし、それを誘うようなメッセージが出るようになっている。その上、GadgetTrak 社の説明によれば電話機がロックされている最中に push 通知が届いた場合、ロックを解除するためにスワイプするだけでアプリが起動されて写真が撮影されるという。写真は、他の追跡情報とともに電子メールで送信される。

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GadgetTrak 社は、私が前回 2.0 リリースの際に記事で触れた謎についても説明をしてくれた。アプリのトレイで強制終了の方法(home ボタンを二度押ししてから、アイコンを押さえ続けると、アイコンの左上に X 印が出るので、それからアイコンをタップすればアプリが強制終了される)を使った場合にもこのプログラムが追跡を続けられるのはなぜか、という疑問だ。

バックグラウンド機能を利用するアプリはすべて、インストールの際に iOS に登録される。アプリが起動された際に登録されるだけではない。そうすると iOS のバックグラウンドロケーションマネージャがそれらのアプリにイベントを送ることができるようになる。たとえそのアプリのフォアグラウンドの部分が走っていなくてもそれは可能だ。つまり、この機能は古いバージョンの Mac OS におけるシステム機能拡張に相当し、ただ当時のシステム機能拡張が引き起こしていたさまざまの醜い側面がなくなっている。

これらの新機能により、電話機が盗まれた場合にもそれを追跡して悪漢どもを告発できるだけの詳細情報を法的機関に提供できるようになる可能性がぐっと高まった。あの、iPhone 4 の試作機が漏洩した事件の際に、Apple がそこに GadgetTrak をインストールしてさえいれば!

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MozyHome 価格上昇、無制限サービス廃止

  文: Joe Kissell
  訳: 柳下 知昭 <tyagishi@gmail.com>

Decho 社から、彼らの良く知られている MozyHome バックアップサービスの価格改訂の発表があった。以前の MozyHome では、バックアップ向けの無制限のオンラインストレージを1 台のコンピュータから使用する場合には、月額 $4.95 で利用できた。新しい料金プランでは、1 台のコンピュータからのバックアップに、50GB の容量で、月額 $5.99 か、3 台のコンピュータからのバックアップに、125GB の容量で、月額 $9.99 のどちらかから選択することになる。どちらのプランにしても、コンピュータの追加や、20GB の容量単位の追加が、それぞれ月額 $2 ずつでできる。

Mozy の発表では、(例えば、iPhone からの HD Video クリップ等による)急速なストレージの増加が変更の理由として引用されていると同時に、大抵の個人ユーザーは、50GB 以上のバックアップストレージを必要としていないとも主張されている。さらに、3 台以上のコンピュータを使用するユーザーにとっては、各コンピュータのバックアップ対象はさらに少なくなるため、新しい料金プランでは、従来のコストより低くなるだろうとしている。

しかし、大抵の利用者にとっては、Dencho 社が丁寧に組み立てた説明は、虚しく聞こえるだろう。要するに、MozyHome の価格は、より少ない容量で価格が上昇しているということだ。競合サービスが、このことを利用してサービスを切り替えるように勧誘するチャンスを見逃すはずがない。例えば、 Backblaze は、"byemozy" クーポンを使用した乗り換えユーザーには、10% の割り引きを提供しているし、CrashPlan は、Mozy からの乗り換えユーザーに 15% の割り引きを提供している。Backblaze も CrashPlan も - 特別割引なしでも - MozyHome の新しい価格よりも低価格で容量無制限のストレージを提供している。

改訂された MozyHome の価格は、新規ユーザーには即時適用される。既存の MozyHome ユーザーは、支払い済み期間は、容量無制限のストレージを使用できるが、2011 年 3 月 1 日以降に更新する際は、新しい価格が適用される。

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Apple のセキュリティ、その過去が将来を規定する

  文: Rich Mogull
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

現代のインターネットで根本的とも言える伝承となっているのは、どこかはわからないが Apple の市場シェアがある特定のレベルにいったん達しさえすれば、Mac ユーザーたちもたちまち膨大なウイルスやワーム、その他極悪非道のマルウェアの数々に直面することとなり、これまで私たちを包んでいた純潔の泡はあっという間に破れて、Windows 使いの同僚たちが長らく苦しめられてきたのと同じ絶望の淵へと引き込まれてしまうだろう、というものだった。けれども、異なるプラットフォーム間の相対的セキュリティに対して市場シェアが重要な要因として働くのは確かだし、さらには歴史的観点から言ってもこれがおそらく最も大きな影響を与えてきたのではあろうが、Apple の各製品とインターネット全般とをめぐる現行の脅威の環境に関する限り、そのような議論は必ずしも成立しない。

最近の Apple 社の動向、とりわけ著名なセキュリティ専門家の David Rice ("Geekonomics: The Real Cost of Insecure Software" の著者) や Window Snyder (Firefox のメーカー Mozilla 社で以前セキュリティ主任を担当していた人物) を雇用したり、製品のアップデートも頻繁に出したりしていることを見れば、Apple が静かに、けれど大幅に、セキュリティに関する同社の基盤を改善しつつあるのではないかと思われる。そのような動きは、Apple の人気が高まり、企業における利用度も増し、モバイルコンピューティングで優位を得るに従い、Microsoft 社が過去十年間にわたり陥り続け、今なお悩まされ続けている危険を、今後 Apple が避けて行くために役立つであろう。

しかしながら、Mac がセキュリティの問題に晒されることがないとか影響を受ける心配がないなどとは、決して一瞬たりとも考えてはいけない。ほんの一週間前にも、私はセキュリティソフトウェアメーカー Immunity 社 のエンジニアが(ウェブベースのデモを使って)最新の状態にアップデート済みの Mac OS X 10.6 Snow Leopard に対する攻撃を成功させるのを目撃した。この攻撃は Safari を使い、新しい、またパッチされていない WebKit の脆弱性を突いたものだった。ただリンクを一つクリックするだけで、攻撃者がその Mac をフルにコントロールできるようになってしまった。

Microsoft、セキュリティの挑戦に立ち上がる -- 今世紀の初め(つまり今から丸々十年前)に、Microsoft は同社の歴史の中で最大の課題の一つに直面した。インターネットワームやウイルスがそのプラットフォームにあまりにもまん延したので、そのシステムを保護することが(さらには使うことすらも)ほとんど不可能な事態に立ち至ったのだ。今日のような金銭目的の動機によるマルウェアと違い、当時のこのソフトウェア暗部は、クレジットカードを盗み出したりするのと同程度の気安さでハードドライブ全体を消去してしまうようなものが多かった。当時の Microsoft は、今日と同様に一般消費者の間では優位なプラットフォームであったと同時に、企業の市場においては(ビジネス分野も政府系の分野も)ほぼ完全に支配的な地位を占めていた。

2001 年に、あらゆる企業の IT 担当プロフェッショナルたちは、Code Red や Nimda などのワーム、あるいは Melissa や LOVELETTER などのウイルスが彼らのシステムを散々に荒しまわるのを目にして身の縮む思いをした。ファイヤウォールやアンチウイルスのソフトウェアを作る会社は売上げの急上昇に大喜びしたが、それ以外の会社でこの新しい現実に喜びを覚えたものはほとんどなかった。

状況があまりにも手に負えないものとなったので、Microsoft の最も大手の顧客たちは同社に対決姿勢を示して、Windows をセキュアにすることがあまりにも困難かつ高くつくものとなってきたので、たとえ大きなコストを負担することとなったとしても別のプラットフォームに移行する以外に選択肢はない、と最後通牒を突き付けた。これに応えて、Microsoft は 2002 年に Trustworthy Computing Initiative (“信頼できるコンピューティング”の取り組み) を開始した。Microsoft が会社としての優先順位を再編成して、市場投入までの時間やその他の要因よりもセキュリティの方を優先させるようにしたのだ。このプログラムの基軸の一つが、Microsoft の Security Development Lifecycle (SDLC, セキュリティ開発ライフサイクル) だ。これにより、ソフトウェア開発のすべての段階においてセキュリティが統合的に扱われることとなった。

世の中ではいまだに Microsoft のソフトウェアはセキュアでないと一般的に思われているが、実はこの会社は今やセキュアなソフトウェアの開発とセキュリティの問題に対する反応の良さにおいて世界をリードしているというのが現実だ。多くの人たちが見逃しているのは、Microsoft の製品で深刻なセキュリティの問題が起こっているのは古い製品、とりわけ Windows XP のソフトウェアが大多数である、という事実だ。それらの製品は、揺りかごから墓場までの SDLC の世話になったことがなく、その代わりいまだに一連の修正やパッチに依存している。さらに、Adobe Flash や Java といったようなサードパーティのソフトウェアの中にある深刻な弱点の数々が、問題を一層悪化させている。(Adobe Flash は、現在独自の SDLC プログラムに入りつつある。)

完全な SDLC プロセスを通り抜けてからリリースされた最初の Microsoft 製品は SQL Server であった。これは競合するどのデータベースプラットフォーム(数年間にわたってほんの数えるほどしかなかった)と比べてもソフトウェアの脆弱性が少なかった。SDLC を経て作られた最初のオペレーティングシステムは Windows Vista であって、これは Windows XP と比べて著しくセキュア度が上がっている。(ただし、ユーザーインターフェイスの観点から言えば、ほとんど使いものにならない。)さらに最近になって、Windows 7 は使い勝手とパフォーマンス、それにセキュリティを、相当程度にしっかりしたプラットフォームの中に溶け込ませていて、これを攻撃することは遥かに困難なものとなった。

けれども、既に Microsoft から Windows XP は入手不可能となっているにもかかわらず、ユーザーたちの手にある Windows のバージョンとしてはいまだに Windows XP が優勢であるのが現状だ。だから、Windows XP を使っているユーザーたちは、より近代的なオペレーティングシステムにアップグレードしない限り、Microsoft が最近になって採用したセキュリティの取り組みによる恩恵を受けることができない。

Apple の Unix ルーツと市場シェア -- Bill Gates が Trustworthy Computing Initiative (“信頼できるコンピューティング”の取り組み) を発表したのと同じ年、Steve Jobs は Mac OS X をリリースした。Unix の基盤の上に構築された Mac OS X は、当時、ユーザーアカウントの処理の方法において Windows XP よりもセキュアであった。大多数の Windows ユーザーたちは自分のシステムを管理者として走らせる必要があったのに対し、Mac OS X ユーザーは低いレベルのアクセス権を持つユーザーとして走ることができ、何か特別に高いアクセス権を必要とする操作、例えばソフトウェアのインストールなどの際にはパスワードを入力することによってそれを可能とすることができた。攻撃者にとっては単なる速度の障壁に過ぎないと言えるかもしれないが、それでもこの機能は多少なりともセキュリティを増していた。

1990 年代以来ずっと企業の分野で苦戦していた Apple の市場シェアは一桁どまりで、教育関係とメディア関係を除けば企業ユーザーの数は非常に少なかった。1990 年代後半から 21 世紀初頭にかけて、Microsoft のソフトウェアは容易に攻撃されるものであると同時に、馬鹿馬鹿しいほど市場を圧倒していた。

Mac の市場シェアが少なかったという事実は、また意図せず新たなセキュリティの利点をもたらすことにもなった。ウイルスやその他のマルウェアを書くことを学んでいる悪漢どもは、彼ら自身 Mac を使っている可能性がずっと低かった。Windows PC は安価で、どこでも手に入り、プログラミングを教えるプラットフォームとしてより一般的でもあった。悪い連中が Mac を使わなければ、ある意味 Mac がよりセキュアと言え、しかも世界中には遥かに多数の Windows ターゲットが存在していた。

Mac の数は増えたが、環境は違う -- どこでもいいからコーヒーショップの店内であたりを見回せば、あるいは Apple Store を覗いてみれば、過去数十年のどの時点に比べても今は Mac の人気が高まっていることがすぐに分かる。こうして市場シェアが増した今になっても依然としてセキュリティの問題がそれほど増えていないことを指摘しつつ、それこそが Mac が本質的によりセキュアなものである証拠に 違いない と論ずる Mac 擁護論者たちもいる。他方、否定論者たちは、今や Mac も Windows ユーザーたちが直面しているのと同じセキュリティの課題に直面する日が目前に迫っているのだと確信している。

いずれの側も、現行バージョンの Windows のユーザーが直面している問題が Windows XP におけるものと比べて比較にならないほど小さいことを理解していないし、また現在の Mac が十年前とは全く違った環境の中にいることをも理解していない。

Windows 7 では、従来のバージョンの Windows に対する攻撃に成功したマルウェアのうち、ごく一部のものからしか攻撃を受けない。実際に有効な攻撃ができるものの多くは Adobe Flash または Reader、あるいは Java に依存して働くものたちだ。(そしてさきほど述べたように、Adobe はようやく重い腰を上げてセキュリティの改善に取り組みつつある。)

Apple も、自身のセキュリティについて学習し、それを改善するだけの時間があった。Snow Leopard には Windows 7 に用いられているのと同じセキュリティコントロールの多くが組み込まれている。ただしそこには大きな例外が一つ、Library Randomization (Windows では ASLR と呼ばれているもの) の実装が完結していない。けれども、 セキュリティ研究者の Stefan Esser がデモ実演してみせた通り、Mac OS X 上で Library Randomization をフルに実装するための技術的障壁は何もない。これに加えてその他のセキュリティ技術、例えば Data Execution Protection や 64-bit オペレーティングシステムなどを組み合わせれば、どのようなオペレーティングシステムにおいてもセキュリティを大幅に改善する機能となるはずだ。

Apple はまた、企業相手の市場を以前よりも真剣に考えているようだ。Apple の企業に対するアプローチのしかたは Microsoft のちょうど正反対とも言える。最初に企業に焦点を合わせるのではなく、Apple はまず消費者に集中し、その後でゆっくりと企業における採択への障壁を下げて行く。(例えば、継続的に Microsoft Exchange、社内 VPN、モバイル機器のプロビジョニングなどのサポートを向上させつつある。)Apple は、もしもセキュリティの問題が同社の製品に取り憑いて離れなくなれば、企業相手の市場での成功を継続できる可能性がたちまち崖を落ちるごとく急降下するであろうことを知っている。

そして最後にもう一つ、マルウェアの生態系というものは、やはり Mac OS X とは合わない。マルウェアの著者たちで一からプログラムを書く者は少ない。彼らは、出回っているツールキットやパッケージを利用して、そういった既存のコードに対するカスタム版を作ったり、あるいは「新機能を追加」したりするものだ。だからと言って Mac を攻撃できないということにはならないが、それでも実際そのためにはより大きな努力が必要となる。一団の羊が目の前にいるというのに、遠くに見える鹿を追いかける理由があるだろうか?

Mac ユーザーたちは、マルウェアが世にまん延していた十年前の Windows ユーザーたちと同じ環境に置かれることは決してない。公平な比較ができるのは、今日の Windows 7 ユーザーを相手にした場合のみだ。そして、彼らもまた、以前よりは遥かにセキュアな世界の中に暮らしているのだ。

iOS と MobileMe に見られる明るい兆候 -- Apple の最も人気あるプラットフォーム、つまり iOS 機器はまた違った状況に直面している。Apple がこの機器の上にほぼ全面的なコントロールの力を持ち、アプリケーションの生態系全体がそのコントロールの下にある。もちろん iOS 機器も完璧にセキュアとはとても言えないが(いわゆる jailbreak (脱獄) はすべてセキュリティ攻撃の成功例でもある)Apple がこのプラットフォームのコントロールのために用いているツールそのものがユーザーにとってのセキュリティを増す働きをする。

iOS 機器は、そのプラットフォームを保護するために、ハードウェアとソフトウェア双方によるセキュリティの組み合わせを用いている。セキュリティの問題は現実に発生してはいるけれども、jailbreak されていない iOS 機器に対する大規模な攻撃はまだ世に現われていない。この二年間、世界でただ一つ最も人気あるスマートフォンに、広範囲なセキュリティの問題がまん延したことがいまだかつてないのだ。それはいったいなぜだろうか? それは、プラットフォームが堅固ならば、それに対するマルウェアを開発するためにより多くの労力が必要となるからだ。

MobileMe も、Apple がより真剣にセキュリティを考慮しているもう一つの実例と言える。MobileMe におけるすべてのコミュニケーションは現在デフォルトで暗号化されているが、他のメジャーなウェブメールプロバイダでこれをサポートしているところは Google 以外にない。Apple は、重大な問題が発生するよりも前の段階で MobileMe のセキュリティ改善を果たしたのだ。

Apple のセキュリティの未来 -- Apple は、記事“Apple に5つの提案: Mac と iPhone のセキュリティ改善”(2009 年 6 月 3 日) で私が指摘したセキュリティの問題の多くをまだ抱えたままだ。この記事の冒頭で触れた攻撃デモは WebKit に存在する既知の脆弱性を突いたものだが、この脆弱性にはいまだにパッチが出されていない。Apple は今になっても Library Randomization を完成させていないし、最近に出されたパッチが修正した脆弱性のいくつかには、同社のセキュリティ開発やテスト体制の弱さが垣間見えるものもある。

こうした根本的問題点のいくつかを Apple はいまだに解決していないものの、大体においてユーザーたちはまだ影響を受けずにいる。反応が遅れがちであることについて Apple を批判するのは容易だが、大規模にユーザーに影響を与える問題が起こってそれが売り上げにも影響する事態とならない限り、Apple の行動に異論を差し挟むのは難しい。私の知っている大規模な攻撃の実例としては Mac OS X サーバにおける DNS の問題に関係したものがあるが、Apple のプラットフォームのうちで Mac OS X サーバは優先順位の最も低いもののようだ。

けれども、Mac OS X は高度にセキュアなオペレーティングシステムのためのコア要素をすべて含んでいるし、もしも Apple が繰り返し繰り返し実証してきたものをたった一つ挙げよと言われれば、それは Apple が自身の成功の伸びを妨げるものならば何であれそれに対して極めて敏感に反応するという事実だ。最近 Apple が雇い入れた著名なセキュリティ専門家たちも、この会社とその製品に影響力を及ぼしたいと思わなかったならばそのような地位の申し出を受けなかっただろう。

おそらくさらにもっと重要な点として、iOS App Store と Mac App Store の興隆がある。アプリケーションを入手する場としてこのように集中化された、コントロールされた出所を提供することで、ユーザーたちがインターネットの薄暗い隅からさまざまの怪しげながらくたをダウンロードする可能性が減る。もちろん、裸の写真を探したり、いかさまのギャンブル場に貯金を注ぎ込んだりするためにリスクを冒す人たちは今後もいるだろう。けれども大多数のユーザーは、安全なショッピングモールにとどまる方を選ぶことだろう。

Mac や iOS 機器の利用が広まるにつれて、Apple ユーザーたちは確かに以前よりも大きなセキュリティ上の危険に晒されるようになるだろう。けれども、攻撃を試みる者たちにとっては、過去十年間に Windows で見られたような広々とした遊び場が提供されている訳ではない。過去のバージョンの Windows のような完全に無防備な状態に Mac が陥ることは決してないだろうし、消費者感覚と製品の売り上げに何か悪影響を及ぼしそうなことが起これば Apple が素早く対応しないとは考えにくい。

Apple ユーザーにとって最も大きな脅威とは何かといえば、それは特定の脆弱性とかセキュリティ機能の弱さとかいったことではない。それは、Windows XP がなかなか衰えてくれないことだ。真の問題点は、Mac 対 Windows ではない。問題なのは「Mac OS X と Windows 7」対 Windows XP だ。二つの堅固なプラットフォームに加えて宝の詰まった幼稚な怠け者がいるという状態が消え去り、ただ二つの堅固なプラットフォームがあるだけの状況が生まれれば、その時に初めて市場シェアの比較が本当の重要性を持ってくるだろう。

実際問題としてその意味するところは、私たちにとってセキュリティの問題はいくつかの単発的事件として、あるいはユーザーに焦点を当てた騙しの手口として今後も起こることが考えられるが、Windows XP のように大規模な感染騒ぎが起こるのは考えにくい、ということだ。Apple は間違いなく今後もセキュリティの手綱を締め続けるだろうし、同社がスタッフを雇い入れる傾向を見れば、深刻な問題に対して数年前よりもさらに素早く反応することが今この時点でできる可能性が高まっていると考えてよいだろう。

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なぜ The Daily はこんなに古臭いのか

  文:Adam C. Engst
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

The Daily は、Rupert Murdoch が発表したばかりの iPad アプリであり全国ニュース出版だが、そこの担当者から突然個人的な電子メールが届いて、彼らのニュースリリース部門に「情報、画像、ビデオ、その他」を投稿してくれないか、と言われたときの私の驚きを想像していただきたい。新たに発足した出版ベンチャー企業の内輪ネタなどに興味のない人なら、きっとその発表に気付かなかったか、あるいは気付いてもすぐに忘れてしまっていただろう。結局のところ、これは単に iPad ニュースアプリがまたもう一つ登場したというだけの話で、出版業界の外にいる人にとってはニュースでも何でもないのだろう。

ならばなぜ私はここにその記事を書いているのか? それにはいくつか理由がある。最も重要な理由は、iPad が出版業界の救世主だと唱える人たちの声がこれまでずっと聞こえていたからだ。だがそれはまだ実際には起こっていない。有名どころの雑誌アプリ、例えば Wired などは当初注目を集めた(最初の号は 100,000 部のアプリ売上げを記録した)けれどもすぐにその売上げは急降下(数ヵ月後には 20,000 部に下落)してしまった。そんな Wired でもこれまでは最高の成功例だったのだ。他の雑誌アプリ、例えば GQ などは、大体において相手にもされなかった。一説によれば毎号数百部程度しか売れなかったという。(毎号かかる費用、アプリ内購読の欠如、既存の購読者が入手可能でないこと、使い勝手の悪さなどさまざまな要因がこのような芳しくない結果に結び付いてきたのだろう。)

また、セレブ(有名人)の一挙手一投足に注目が集まるこの時代、億万長者が何かをすればニュースになるというものではないだろうか? News Corporation の Rupert Murdoch は、世界で最も金持ちで最も影響力ある人々の中の一人だ。彼は、出版業界にこれまで 60 年近くにわたる経験を持つ。だから、開発費用 3 千万ドルと毎週 5 十万ドルを彼が The Daily の出版のために投じた(数字は New York Times の記事による)とすれば、それは興味ある話だろう。ただ、しばらくの間はそれに見合う金をもうける望みが皆無だからという理由からだったとしても。結局のところ、まだ世界にはたった 1,500 万台の iPad しかなく、The Daily の料金、毎週 $0.99 の中から Apple が同社に渡す $0.70 をもとに計算すると、運営コストに見合うためだけでも 715,000 人のユーザーを獲得しなければならないことになる。これは、Wired の創刊号売上げの七倍以上だ。(The Daily は広告も扱っているが、最初のうちは大きな収入を広告から得ることは望めない。)

それからもう一つ、The Daily は、App Store で販売される他の出版ではごく少数の例外を除きこれまで見られなかったタイプのビジネスモデルを用いている。購読料金が毎回発生し毎週 $0.99、または年額 $39.99 となる。(例外の一つは Wall Street Journal だが、これも News Corp. 社の出版だ。)報道によれば、Steve Jobs は個人的に The Daily に大いに興味を惹かれているという。彼は Manhattan にある The Daily の編集局に頻繁に現われ、病気休暇が発表される前には彼が Murdoch と共にスタート祝賀行事のステージに登場する予定だとさえ報道されていた。はたして今後、億万長者が後ろ楯に控えていない他の出版社がこれと同等の扱いを Apple から受けることがあるのか否か、興味深いところだ。

というわけで、これはピカピカの新しい iPad アプリで、出版業界の超大物が潤沢な資金で財政的に支え、さらには Apple からの直接的な関わりもある。どこか文句の付けどころがあるだろうか? それが、たくさんあるのだ。

技術的な面から言えば、 The Daily は単にありきたりのニュースアプリに過ぎず、何か新天地を開いたわけでも全くない。(iPhone や iPod touch で動かないのもひどい!)確かに、Cover Flow 風にブラウズするインターフェイスはあるし、個々の記事にはギャラリー、ビデオ、アニメーション、360 度回転する全方向写真、タップすれば詳細情報を表示するホットスポットなど、さまざまの「インタラクティブ」要素を含めることができる。その上クロスワードパズルや Sudoku (数独) ゲームまであって、それらのページにナビゲートすれば、他の人たちと「プレイ」できる Game Center にサインインしませんかとうるさく誘われる。

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The Daily のデモの印象は良かった。けれども、時とともにこれは使いやすいものとなるだろうか? 宣伝用ビデオには、主としてアプリの中でナビゲートする方法の説明に時間が費やされている。実はこれこそが、iPad ニュースアプリすべてに共通の問題なのだ。私が最近聞いた Macworld Expo の講演では、Media7 Consultancy の Colin Crawford が、いろいろの異なるアプリでナビゲーション関係のヘルプスクリーンがどれほどさまざまに大きく違っているかをスライド上映を使って示していた。現在のところ、いろいろのニュースアプリに共通したナビゲーションの慣習のようなものは何もない。そのようなものが生まれてくるまでは、馴染めずに避けがちな気持ちになる読者が増えるのはしかたのないことだろう。

私が最初に The Daily を使ってみた印象は、ものすごくイライラが溜まるものだった。スワイプの反応も遅いし、アプリが日ごとのコンテンツをダウンロードする際には長々と待たされる。(何も読み始めないうちにまず最初に待たされるし、その号全体がまだ到着し切らないうちに内部のセクションにジャンプする際にもまた待たされる。)少なくとも一度、私は新しい号を取り込ませ始める前にアプリを強制終了させなければならなかったし、クラッシュも数回あった。タップしても無視されることはしゃっちゅうで、これはホットスポットが非常に小さいから(あんなちっぽけな青いボタンをタップするなんて!)ということもあったし、アイコン(例えば右向きの矢印)をタップしても何も起こらないこともあった。さらに、ナビゲーションが広告で中断されるのは単に煩わしいだけでなく混乱の原因にもなった。広告による中断でナビゲーションの連続性が途切れてしまうからだ。(そのため、期待した場所に到達しないことも起こる。)

The Daily のコンテンツの中には、iPad を置く向きによって見られないものもある。ただ、そのことを示す手掛かりが分かりにくく(手掛かりが何もないことさえある)あったとしても一番隅にごく小さい字で "Turn to see story" (記事を見るには回す) と出るだけだ。それに、記事によって左から右へとスクロールするものもあるし、上から下へとスクロールするページもある。それからもう一つ、この点はいずれ修正される類いのミスだとは思うが、ランダムに切り刻まれたページが出ることがよくあった。

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良い点を挙げれば、レイアウトが魅力的であるのが印象的で、iPad のスクリーンによく適していると私は思った。またいろいろの写真も美しく、フォントの全体的な選び方もうまく効いていた。

それでもなお、The Daily に潤沢な財政基盤があるという事実は、iPad 出版をしようとする他のすべてのベンチャー企業にとってハードルを上げる働きをするに違いない。確かに、最先端を一歩進めるのは悪いことではない。けれども、既に多くのニュースアプリがを財政的損失を重ねてきたこの分野に、膨大な赤字をものともしないリーダーが登場して最先端を引っ張るということは、ただ競争相手を追い込む結果にしかならないだろう。ちょうど、1980 年代にアメリカが大量の軍事費を注ぎ込んだことがソビエト連邦の財政的破産を招いたように。

さらに懸念を抱かざるを得ないのがコンテンツの側だ。基盤となるテクノロジーが何であれ、The Daily が成功するか失敗するかは人々の心をつかむコンテンツを提供できるかどうかによって決まる。現時点では、これはニュース雑誌の皮をかぶったタブロイド紙のように見える。トップに掲げられた6つのセクションの中に Gossip (ゴシップ記事) というセクションがあるのみならず、これが最初の News の直後、2番目に並べられているのだ。また、カスタマイズのオプションはあまり数多くないが、その一つがあなたの星座を設定する項目だ。いったい、iPad を持っている人たちの中で、星占いなんかに興味を持つ人がどれくらいいるだろうか? 私が読んだ限りでは号の中の記事はどれも短くて、文章にして iPad スクリーン2枚分より多いものはなかった。こんなに軽薄な指向のものがジャーナリズムの世界を変えて行くことができるなんて、私にはとうてい思えない。少なくとも、良い方向に変えることは。

The Daily と比較されてきたのが、USA Today, だ。USA Today は 1982 年にデビューした際、伝統的な新聞のモデルに挑戦したものとして脚光を浴びた。この比較がふさわしいものとなるかどうかは今後を待たなければ分からないが、少なくとも The Daily は地方新聞とは競合しない。The Daily は地方ニュースを一切載せていないようだが、人々を新聞に引き付ける大きな要素の一つが地方ニュースだ。人々は、自分のコミュニティーで何が起こっているかを、その地域の出来事に利害関係のある他の人たちの立場から書いたものを読みたいと思うものだ。

The Daily はあなたの位置情報を尋ねてくる。それを使って天気予報を表示するが、これは専用のアプリを使う方がずっと良い結果が出る。(2010 年 3 月 4 日の記事“WeatherBug Elite 1.0”参照。)また、Sports セクションをカスタマイズして好みのチームを指定(ただし野球、バスケットボール、フットボール、アイスホッケーのプロチームのみ)すれば、それに応じて最近の試合結果や記事見出しを表示した画面が追加される。それら4つ以外のスポーツは扱われず、個人設定はあらかじめプログラムされたコンテンツには影響しないようだ。

さらにもう一歩後退して言えば、この The Daily を他のたくさんのものと似たような、単なる iPad 上のニュースアプリの一つと考えるなら、特に文句を言うべきことはあまりない。けれども、私が違和感を覚えるのは、The Daily が Next Big Thing (次なる目玉) として提示されてきたこと、そして、これを作り上げるためにあれほど大量の努力と資金とが注ぎ込まれたことだ。毎日毎日何百万人もの人々の目を引き付けるだけの価値のあるものとなるために、The Daily は旧来のデジタル雑誌のモデルの枠を超えて、このインターネット時代に人々がニュースを読みたいと思う方法についての新しいトレンドを認識すべきだったのではないだろうか。

まず第一に、自分の読むニュースをすべて一つの出所から入手するという考え方そのものが、既にもはや捨て去られた、古いものだ。今日のニュース情報の流れの圧倒的大部分はリンクによって動かされており、特定の一つの記事が何らかの理由で注目を浴びれば、それが何百何千というビジターを呼び寄せるようになっている。けれどもそうした人々はその記事が読みたくてそこに来ているのであって、その出版自体に興味があるのではない。だから、彼らがその出版物の忠実な読者で居続けることはない。私たち TidBITS でも、このタイプの一時的なトラフィック集中現象が何度も起こってきた。私たちの記事のどれかが Daring Fireball や Slashdot で紹介されればそういうことが起こる。このような傾向が出版のビジネスモデルにとって巨大な脅威であることは疑う余地がないけれど、The Daily はそのための 決定的 解決策ではないし、それが解決策と言えるかどうかさえ疑わしい。

第二に、リンクによって動かされるトラフィックは必ずしも私が今述べたような集約サイトに起因したものとは限らない。もう一つ、ソーシャル共有というものがある。電子メールにしろ、Twitter や Facebook といったところにせよ、自分のソーシャルネットワークで誰かが推薦したからという理由で、私たちはニュースを読むことが多い。The Daily も実際ソーシャルな推薦を発表する場をアプリ内に設けているが、Flipboard アプリのように推薦されたコンテンツをアプリの動作に統合させる機能は一切ない。それが困ったことであるのはなぜかというと、友人たちから推薦されたリンクの魅力の一つは、それがウェブ全体から発していて、さまざまの幅広い視点や意見を持った人たちから集まるものだからだ。すべての人々のためにあらゆることをすることのできる出版物など、あり得ない。それなのに、The Daily はまさにそれを目指しているかのように見える。

第三に、The Daily はたった一つの声しか持っていないので、インターネットの興隆によりもたらされたコンテンツの民主化という概念を完全に無視している。例えば、プロによる小規模の出版やブロガーたちの仕事が完全に欠落している。彼らは個々人単位では大規模な聴衆に声を届かせることはできないかもしれないが、総体として集まれば、ジャーナリズムの活動の場を根本から変えることのできた人たちなのだ。

結局のところ、The Daily はまさに、iPad ニュースアプリに何ができるのかを、今までと同じくもう一振り、定め直しただけのもののように感じられる。新しいアイデアもほとんどなく、使い勝手もパッとしない。たった一つの出所から浅く幅広いコンテンツを提供しているが、このインターネット時代にジャーナリズムと読書の方法が変革されたという事実を完全に無視している。これは、あたかも 1980 年代の出版方法の上に、見た目の美しいデジタルな顔を載せただけのようなものだ。

それに正直言って、これはとても残念なことだ。3 千万ドルの資金と、Steve Jobs への直接の繋がりがあれば、The Daily はもっともっと興味深いものになれたかもしれない。もしも、The Daily が購読によって支えられた何らかの方法を見つけ出して、私たちが読み、聞き、視聴するさまざまなコンテンツを広め、かつ今日のインターネット上で私たち皆が互いにやり取りし合う手段をより高められるようになりさえすれば。

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TidBITS 監視リスト: 注目のアップデート、2011 年 2 月 7 日

  文:TidBITS Staff
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Mailplane 2.3 -- Gmail のウェブインターフェイスを可能な限り最高の電子メールクライアントに作り替えようという目標に向けて努力を続けている Uncomplex が、 Mailplane 2.3 をリリースした。今回の変更点で最も注目すべきは、Gmail のスポンサーによるリンクを隠す Hide Ads 環境設定と、"Inbox Zero" を電子メールを返信、アーカイブ、消去する度にポイントが付くゲームに変える 0Boxer プラグイン(0Boxer サービスへのサインアップが必要)のサポートだ。より重要度の低い新機能としては、リンクを Command-クリックするとウェブブラウザでなくすべて Mailplane の中で開く機能、Gmail 以外のコンテンツについて URL をステータスバーに表示する機能、新規メッセージのウィンドウタイトルバーにアカウント名を表示する機能(複数のアカウントを切り替えて使う際に便利)などがある。TrueNew と Rapportive の両プラグイン (後者も Gmail の広告を置き換える) もアップデートされ、またフランス語、ルーマニア語、スペイン語のローカライズ版もそれぞれアップデートされた。マイナーなバグもいくつか修正され、その一つは添付ファイルがダウンロードできないことがあるというものだった。フルのリリースノートは Mailplane Blog で読める。そうそう、これは別に新機能ではないが、The Omni Group 製タスクマネージャを使っている人向けの 無料の OmniFocus プラグインもある。(新規購入 $24.95、無料アップデート、21.9 MB)

Mailplane 2.3 へのコメントリンク:

DEVONthink と DEVONnote 2.0.7 -- DEVONtechnologies が、すべてのタイプの DEVONthinkDEVONnote に対してそれぞれマイナーなアップデートを施した新バージョンをリリースした。DEVONthink と DEVONnote へのこれらのアップデートにより、Take Note パネルでより多くのテキストフォーマットの選択肢が提供され、Microsoft Outlook 2011、PowerMail、Postbox の最前面のウィンドウから URL を正しくキャプチャできるようになった。また項目を Outlook からも電子メール送信できるようになった。さらに、ウェブ表示で新たに三番目のマウスボタンもサポートされ、すべての環境設定パネルに Help ボタンが追加された。 フルのリリースノートは DEVONtechnologies のウェブサイトにある。(DEVONthink Pro Office: 新規購入 $149.95、無料アップデート、24 MB; DEVONthink Professional: 新規購入 $79.95、無料アップデート、19 MB; DEVONthink Personal: 新規購入 $49.95、無料アップデート、13.4 MB; DEVONnote は $24.95、11.6 MB)

DEVONthink と DEVONnote 2.0.7 へのコメントリンク:

Dragon Dictate 2.0.2 -- Nuance が Dragon Dictate 2.0.2 をリリースしたが (comma), これは同社の Mac 用口述筆記ソフトウェアの最新バージョンだ (period). この新バージョンでは口述筆記の結果の中で文字の順序が入れ替わってしまう問題点が修正された。Dragon Dictate は Intel ベースの Mac と Mac OS X 10.5.6 かそれ以降を要する。(新規購入 $199.99、無料アップデート、13.4 MB)

Dragon Dictate 2.0.2 へのコメントリンク:

1Password 3.5.4 -- Agile Web Solutions が、1Password をバージョン 3.5.4 にアップデートした。このパスワード管理ユーティリティに今回から Firefox 4 のベータ版における HTTP Basic Authentication ウィンドウのサポートが加わり、またスクリーンセーバが動き出した際に従来からしてきたのと同様に、Keychain Access によってスクリーンがロックされた場合にもオートロックが働くようになった。新設の Never Display In Browser オプションはにより、Identities や Wallet の項目(例えばクレジットカード番号など)を消去する必要なく表示だけ隠せるようになった。また、パスワードをその強力さによって検索できるようになり、変更の必要があるほど弱いパスワードを探せるようになった。VoiceOver のサポートも改善された。フルの変更履歴は Agile ウェブサイトにある。(新規購入 $39.95、無料アップデート、20.3 MB)

1Password 3.5.4 へのコメントリンク:

Things 1.4.4 -- Cultured Code の開発者たちがまたもう一つ、自分たちの to-do リストに線を引いて項目を消した。Things 1.4.4 のリリースだ。このタスク管理ユーティリティの新バージョンでは Repeating Tasks エンジンが完全に書き換えられた。これにより繰り返すタスクが iOS 機器と同期できるようになり、一年の最後の週に予定されている繰り返しタスクも正しく処理されるようになり、繰り返すプロジェクトの挙動も改善され、また Enter を押すだけで Repeating Tasks ダイアログの提出ができるようになった。日付ピッカーでのいくつかのバグや、チェックの付いた項目が誤ってリストの一番上に出てしまう問題にも対処が施された。(新規購入 $49.95、無料アップデート、8.2 MB)

Things 1.4.4 へのコメントリンク:

Audio Hijack Pro 2.9.10 -- Rogue Amoeba が Audio Hijack Pro 2.9.10 をリリースした。どこからでもオーディオを Mac 上にキャプチャできるユーティリティの最新バージョンだ。今回からこのソフトウェアは Mac OS X 10.6 Snow Leopard を必要とするようになった。Instant On コンポーネントがオーディオキャプチャの際に以前より良く働くようになり、また Install Extras ウィンドウも使いやすくなったはずだ。バグもいくつか修正され、Logitech 製ハンドセットや Blue Snowball 製マイクを使っている人たちが録音の際に遭遇した問題点が解消した。また、AAC ファイルの録音でハングすることのあったバグや、ディスプレイがスリープできなくなっていた問題、過去の日付のものであってもタイマーが働こうとしていた問題なども修正された。(新規購入 $32、無料アップデート、5.7 MB)

Audio Hijack Pro 2.9.10 へのコメントリンク:

EyeTV 3.5.1 -- Elgato が、同社のビデオ録画ソフトウェア EyeTV を早送りしてバージョン 3.5.1 とした。今回のアップデートから PowerPC ベースの Mac がサポートされず、Intel 専用のソフトウェアとなった。このバージョンでの新機能は、EyeTV Sat Free と、KPN の Digitenne 用の EyeTV One とのサポートだ。修正されたバグも数十件あり、ビデオを iOS 機器にストリームする際の問題点や、パフォーマンスや安定性の問題、予約録画での問題などが解決した。また、Smart Playlists が曜日を基準に検索できるようになり並べ替えが容易になった。HDMI 経由のオーディオ出力も改善された。(新規購入 $79.95、無料アップデート、109 MB)

EyeTV 3.5.1 へのコメントリンク:

LaunchBar 5.0.4 -- Objective Development の LaunchBar さえ持っていれば、もはやマウスなんて要らないんじゃないか? キーボードによる起動ユーティリティ LaunchBar がバージョン 5.0.4 に上がり、この最新リリースで Cyberduck 3.8 との互換性が追加されるとともに多数の修正が盛り込まれた。メーリングラベルに関係した多数の問題点に対処が施されるとともに、iCal イベントを作成する際の問題、Start Screen Saver アクションでのバグ、Dvorak キーボードレイアウトでの問題点も解消された。さらに、索引付けルール User Accounts がネットワークユーザアカウントを索引付けしなくなった。(新規購入 $35、無料アップデート、2.23 MB)

aunchBar 5.0.4 へのコメントリンク:

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ExtraBITS、2011 年 2 月 7 日

  文:TidBITS Staff
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

先週の私たちは何万人分もの TidBITS アカウントを移行させる仕事に忙し過ぎてあまりウェブサーフィンをする暇がなかった。ただ、固唾を飲んで待ち続けていた方々のために、Macworld が Verizon iPhone 4 をレビューした記事があることだけは紹介させて頂く。

Macworld が Verizon iPhone をレビュー -- Macworld 編集主任の Jason Snell が、Verizon Wireless のセルラーネットワーク用にデザインされた iPhone をレビューする。従来版の iPhone との最も大きな違いはパーソナルホットスポット機能が追加されたことだ。ケースにも若干デザインの違いが見られる。

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