TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#1066/07-Mar-2011

今週号のニュースは、発表されたばかりの iPad 2 と iOS 4.3、それに新しい iMovie と GarageBand iOS アプリに関するものだ。これらすべてについてお伝えするとともに、Jeff Carlson が Apple のメディアイベントの場で実際に iPad 2 に手で触れてみた印象をお届けする。また今週号ではリリースされたばかりの iTunes 10.2 に隠された秘密を寄稿者 Kirk McElhearn が明かし、Adam は Apple が間もなく強制的アップグレードを実施しようとしている新しい MobileMe Calendar について実際的なアドバイスを提供する。また Glenn Fleishman は Thunderbolt を使って新型 MacBook Pro にひょっとしたら二台の外部モニタを付けられるのではないかという疑問に答えたい衝動を抑え切れなかった。最後にもう一つ、Windows 仮想化を考えている方々は、ぜひ Joe Kissell の "Take Control of Running Windows on a Mac, Fifth Edition" をご覧頂きたい。今週注目すべきソフトウェアリリースは、Firefox 3.6.15、SpamSieve 2.8.5、BusyCal 1.5.2、Dragon Dictate 2.0.3、Airfoil 4.0.2 だ。

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MacBook Pro では、 Thunderbolt は 1 つの外部モニタをサポート

  文: Glenn Fleishman <[email protected]>
  訳: 柳下 知昭 <tyagishi@gmail.com>

アップルが新しい MacBook Pro モデルに Intel の非常に高速なThunderbolt テクノロジを採用したとアナウンスしてから、Twitter やコメントフォーラム、電子メールのいたる所で、新しいMacBook Pro は、買ったままの状態で、Thunderbolt ポートから2 つの外部モニタに接続できるのか?という議論が続けられている。

その答え : 出来ない。 うそだと思いたいなら思えばよい。アップルに聞いたのだ − 事実私は、2 回も質問した、2 回目は、最初の回答と矛盾する新しい情報が見付かった後だった。1 回目も 2 回目も非常に明確な回答をもらった。出来ない、できない、できない、できない、できない、できない。(このことは、"Thunderbolt と Lion の秘密"(2011 年 2 月 27 日)にも書いたのだが、質問が続いたので、よりはっきりとしてみよう。)

どこでこの混乱が起っているのだろうか? それは、 遺伝子とその表現との違いだろう。まぁ最後まで聞いてほしい。 Thunderbolt の仕様が遺伝子である。MacBook Pro モデルは、その表現である。Thunderbolt の仕様(その遺伝子)は、仕様としてチェーン上に 2 つまでのモニタをサポートする。これは事実である。しかし、(その遺伝子の表現としての)MacBook Pro のグラフィック回路は、すでに 1 つのモニタ:内蔵画面をサポートしている。そのため、ただ 1 つだけの外部モニタを接続することができる。

オーストラリアのアップルの MacBook Pro の製品ページにある"15 インチ、17 インチの MacBook Pro は、2 つのディスプレーをサポートします;13 インチの MacBook Pro は、1 つのディスプレーをサポートします。"という脚注(番号 4)によって一部紛らわしくなった。この脚注は、奇妙なことにページ下部のそばの "Port with possibility" 見出しからその筋と関係なく参照されていた。アップルはすぐにこのページを改訂し、この脚注は消えてしまっている。

サードパーティの提供する DisplayPort 分配器を使用することもできる。(オンラインでは、$160 から $200 程度の) Matrox 社の DualHead2Go のようなものや以前の DisplayPort のみの Mac での時と同様である。この分配器は、利用可能な解像度を Mac OS X が別々のモニタとして扱ってくれる複数の小さな矩形に分割する。Thunderbolt は表面上、現在使用されている USB-to-video 変換器のようにThunderbolt のデータ面を使用するようなより精巧な外部アダプタもサポートする。さらなる詳細は、"ViBook+ でデスクトップにもっとピクセルを"(2009 年 11 月 13 日)を参照のこと。

MacBook Pro (2011 early) の蓋を閉めて内部ディスプレーを使わないようにし意識的に 2 つの外部モニタへ出力するようにしてもこの問題を回避することはできないことも確認した。

アップルは、将来の製品についてコメントしないが、以下のことは極めて明白である:

これで解説はおしまい。それでもこの記事に対する最初のコメントは、おそらく"本当に?" だろう。

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新刊 Take Control 電子ブックで Windows を Mac で飼い馴らす

  文: Tonya Engst <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

今や、Intel ベースの Mac の上で Windows を走らせるのは、珍しくも何ともないことだ。だから、きっとこれは簡単にできるようになったのだろうとお思いかもしれない。残念ながら、テクノロジーの神々はまだそうはしてくれていない。スムーズに Windows を走らせるのは、実は未だにとても骨の折れる仕事だ。この事実が同時に、Joe Kissell をはじめとする Mac ライターたちをまだまだ忙しくし続けている。Joe の飽くなき好奇心のお陰で、ちょうど私たちは包括的で役に立つ電子ブック "Take Control of Running Windows on a Mac, Fifth Edition" をリリースしたところだ。178 ページから成るこの電子ブックは $15 で入手できる。

"Take Control of Running Windows on a Mac, Fifth Edition" はまず最初に、あなたがどのバージョンの Windows を走らせるべきか (XP か、Vista か、それとも 7 か)、どの仮想化ソフトウェアが適しているか (Parallels Desktop 6 か、VMware Fusion 3 か、それとも VirtualBox 4 か)、あるいは Apple の Boot Camp でデュアルブートする道を選ぶ方が良いのか、判断できるよう手助けをする。その次に、Joe はあなたが必要なハードウェアとソフトウェアを集め、必須の準備手順を踏むことができるようガイドする。電子ブックの中盤に達する頃には、あなたがインストールしたハードウェアドライバはすべて正しく動作し、プリンタはきちんと印刷し、アンチウイルスソフトウェアは周辺をパトロールしてまわり、すべてが働き出しているだろう。最後に達する頃には、あなたは Mac と Windows それぞれのインストールの間でファイルを共有する方法を身に付けているし、最新バージョンの Parallels Desktop や VMware Fusion に含まれる素敵な新機能も使いこなしているし、ちゃんと機能する Windows インストールのバックアップを作っているし、Windows を使いながらあなたの生活全般を進めることができているだろう。

この電子ブックでは、次のような質問に対する答が提供される:

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MobileMe Calendar に 5 May 2011 までにアップグレード

  文: Adam C. Engst <[email protected]>
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

Apple は、全ての MobileMe メンバーは 5 May 2011 までに新しい CalDAV ベースの MobileMe Calendar に移行しなければならないと発表した。もしあなたが自らの手でアップグレードしないと (Apple があなたに代わってやってはくれないと言うこと)、あなたの機器間でのイベントの同期と me.com Web サイト上であなたのカレンダーを見る能力を失うであろうことは、下記の Apple の声明からも明らかである。

May 5, 2011 に MobileMe 10月に立ち上げた新しい Calendar サービスに完全に移行します。新しい MobileMe Calendar には、カレンダー共有、招待状、そして新しい Calendar Web アプリケーションが含まれる。あなたの機器間でのカレンダー同期、そして me.com であなたのカレンダーへのアクセスを引き続き継続したい場合は、新しいCalendar に May 5, 2011 までに移行しなければならない。

一般的に言えば、新しい MobileMe Calendar は良いことである。CalDAV 標準を使っているし、そしてどの接続機器からでも作成されたカレンダーに対するプッシュアップデート、家族や友人との読み書き可能なカレンダー共有、グループに対するカレンダーの公開、そして RSVP 付きのイベントへの招待を提供している。これに対するアクセスは、iCal 経由、iOS 4.2.1 かそれ以降が走っている iOS 機器の Calendar アプリで、me.com Web サイト経由、そして幾つかの独立カレンダーアップス、BusyMac の BusyCal そして Chronos のリリースされたばかりの SOHO Organizer の様な、から可能である。

殆どの人にとっては、新しい MobileMe Calendar にアップグレードするのは、そんなに大変なことではないし、Apple も MobileMe Calendar FAQ を出していてやり方へのリンクもあり、大抵のことはカバーしている。しかしながら、場合によっては事前に考えある程度のことはする必要がある状況もあるし、そして Apple からの助けを必要とする問題を経験した人達もいる。

まず最初にやるべきこと -- この先読み進んだり何かをする前に、まずあなたのカレンダーを iCal から一つずつ File > Export > Export を選択してバックアップする。こうしておけば、何かがどうしようもなくなっても、必要なら全てを解体して最初から組み立て直すことが出来る。バックアップするには他の方法もあるが、役に立たない可能性もある; これが Apple が勧めている方法である。

iCal 内でイベントに添付したファイルはあなたのイベントから自動的に取り除かれてしまうこと、そしてこの先ファイルをイベントに添付することは出来ないことを認識しておく必要がある。大抵の人はイベントにファイル添付したことなど無いと思うが、これをやってきた人は既存のカレンダーはローカルに残したままにしておき (iCal の中の "On My Mac" カテゴリに) そして共有と同期用には MobileMe の中で新しいカレンダーを始めることを考えるべきである。

最後に、Daylight Saving Time の境界をまたがって繰り返されるイベントは一時間時間が変更されてしまうという報告もある。これに対しては、どうも回避策は無さそうなので、アップグレードした後自分で再チェックしなければならない。この様な問題の修正は、どうも MobileMe の Web インターフェース経由で行うのが一番のようである。これはきっとそれがデータのマスタコピーである故であろう。

適切なソフトウェアを使う -- 次に、あなたは適切なソフトウェアを使っていることを確認しよう。 Mac に対しては、Mac OS X 10.6.4 Snow Leopard (或いはそれ以降) を意味する。Mac OS X 10.5 Leopard でも働くが、出来ないこともある。例を挙げれば、プッシュアップデート、iCal での共有カレンダーを共有し容認する能力、そして参加したカレンダーの同期などが欠けている。

iOS 機器に対しては、Apple は iOS 4.2.1 かそれ以降が必要と言っており、これだと最初の iPhone と初代の iPod touch は MobileMe カレンダー対象から自動的に外れてしまう。これらの機器に対しては、カレンダーとコンタクトの同期はiTunes 経由で行う必要がある (iTunes で対象の機器の Info タブから Sync Address Book Contacts と Sync iCal Calendars を選択する)。コメントを寄せてくれた MetalSamurai は、iOS 3.1.3 でも実際に働くが、やり繰りが必要でそこには別個の CalDAV アカウントを設定することも含まれる。

Windows ユーザーは最低でも MobileMe Control Panel 1.6.4, Outlook 2007 か 2010 (32-bit), そして iTunes 10 が必要である。ただ実際にはこれらのバージョンを標準の Windows 環境下で走らせて思いもかけない問題が出ないのかどうかは私にはわからない。

BusyCal を使う -- もしあなたが MobileMe Calendar 移行の前に、我々の様に、家族や小さな作業グループの間でカレンダー共有をするため BusyCal に依存しているのならば、新しい MobileMe Calendar にアップグレードする前に簡単な一連のステップを踏む必要があり、そしてあなたの BusyCal カレンダーも維持する必要がある。もし BusyMac の古い BusySync ソフトウェアを使っているのであれば、新しい MobileMe Calendar に対しては読み取り専用のアクセスを提供することは出来るが、BusyCal にアップグレードするのが最善のオプションということになる。もっとも BusyMac からは、 BusySync を MobileMe と読み取り専用のモードで使用するための取説 が出されてはいる。

BusyCal と共に MobileMe Calendar へアップグレードするには、あなたがカレンダーを共有するやり方に変更を加えることが必要となる。ブログに BusyMac が載せたように、あなたの LAN 同期 (BusyCal 自身の中で、あなたのローカルネットワーク上で BusyCal を走らせている他の Mac と共有する) をクラウド同期 (ここではあなたのカレンダーは MobileMe か Google Calendar 上でホストされる) に切り替える必要があるという。加えて、Google Calendar 利用契約では MobileMe にも iOS 機器にも同期してくれないので、Google Calendar 上にホストされたカレンダーに iOS 機器からアクセスするには Google Calendar と直接同期をとることが要求される。これに対しても、BusyMac には取説が載せられている。

私は新しい MobileMe Calendar にアップグレードしそして BusyCal を設定するのに大きな問題なしに出来たが、ファイルの中には手を加えなければならないものもあった。これは私の BusyCal サーバーが Leopard 下で Power Mac G5 上で走っていて、この Mac 上の iCal 内ではアップグレードを完了出来ないという事情もあった。この問題を回避するため、私は BusyCal バックアップファイルを Snow Leopard 下で走っている Mac Pro に移しそこでアップグレードを実行した。別のやり方も可能で、個々のカレンダーファイルをアップグレードの前に BusyCal からエクスポートし、それからアップグレードを実行、MobileMe 上に新しいカレンダーを作成、そしてエクスポートされたカレンダーを新しい MobileMe カレンダーにインポートする。

勿論、 MobileMe Calendar の欠点は、複数の機器を同期したいという人は全員自分の MobileMe アカウントを必要とすることであり、これは大きな作業グループでは現実的ではないと言えるであろう。このような場合は、MobileMe そのものを完全に避け、代わりに Google Calendar の様な解に頼る方が賢いと言えるかもしれない。BusyMac はまた iCal Server (Mac OS X Server の一部) と Kerio Connect を使うことにも言及している。

Apple が強要するこの新しい MobileMe Calendar へのアップグレードに関して、さらなる疑問や懸念をお持ちの方もおられると思う。もし Apple の MobileMe Calendar FAQ, BusyMac の取説、或いはこの記事でも取り上げていないことがあれば、下記のコメントに出して貰えれば、私に出来ることは考えてみたいと思う。

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iPad 2: より速く、薄く、軽く、カメラも2つ

  文: TidBITS Staff <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Apple は先週、Apple CEO の Steve Jobs が登場したメディアイベントにおいて、iPad 2 と iOS 4.3 を発表した。Jobs はまず最初に、病気治療の休暇をずる休みしてまであえて登壇した理由をこう説明した:「私たちはずっとこの製品にかかりっきりでしたので、今日は休んでいたくなかったのです。」

彼の通例通り、Jobs は数字による要約から話を始めた。彼は Apple が今までに 1 億台以上の iPhone を、さらに 2010 年の 9 ヵ月間のみで 1,500 万台の iPad を販売した、と語った。これで iPad は最も成長速度の速い Apple 製品となり、ことによると史上最も成長速度の速いコンシューマ向け製品となったかもしれない。Jobs はその点 Apple としては確信が持てなかったと述べた。この 9 ヵ月間で、iPad は Apple に 95 億ドル以上の収益をもたらした。

Jobs はさらに、新たに Random House 社が 17,000 冊の書籍で iBookstore に参加し、今や Apple が 2 億以上の iTunes Store アカウントを持っているという事実に魅せられた 2,500 以上の出版者たちの列に加わったと発表した。これまでに 1 億冊以上の電子ブックがダウンロードされた。ただし、私たちの推測ではその大多数が無料の電子ブックだろう。

それから、Jobs は Apple がこれまでに 20 億ドル以上を iOS アプリ開発者たちに支払い、開発者たちは総計 350,000 個のアプリを作り出し、そのうち 65,000 は iPad 対応だと述べた。けれどもここに数学をちょっと当てはめれば、それはつまり有料のアプリが(私が調べたさまざまの統計に従えばアプリのうちおよそ 75 パーセントが有料だという)平均すれば一つあたりたった $7,600 ほどしか稼ぎ出していないということになる。そこから Angry Birds が稼ぎ出した額を差し引けば、金額はさらにもっと低くなる。言い替えれば、売れ行きの良かったものは少数あるけれども、この上げ潮はすべてのアプリのボートを浮かべている訳ではないということだ。

以上の前置きに続いて、本当のニュースが明かされた。iPad 2 だ。今回改訂されたモデルは、驚嘆すべきものであると同時に、予想されたものとあまり変わらなかった。従来よりも薄く、軽くなり、前面と後面に一つずつカメラが付き、ジャイロスコープと、A5 チップ (従来のモデルの A4 チップを置き換えるもの) を備え、米国の二大データネットワークをそれぞれサポートする二種類の 3G モデルから成る。一つのモデルは GSM 版で、これは AT&T のネットワークと、それに加えて世界中の何百もの他のキャリアのネットワークで働く。もう一つのモデルは CDMA で、これは Verizon Wireless 専用となる。4G バージョンは全く見当たらなかったが、これは別に驚くには当たらない。現在 Motorola の Xoom タブレット機のみが Verizon のネットワーク用に 4G オプションを提供しているが、その工場アップデートはまだこれから何ヵ月も経ってからしか入手可能にならないのだから。

物理的には、新型 iPad は以前のものと基本的に同じ高さと幅を持ち、スクリーンサイズも以前と同じだが、以前よりも薄く、軽くなったので、積み上げた紙の山に中に埋もれて見つからなくなる危険が高まった。(これは注意が必要!)厚さは .34 インチ (8.8 mm) で重量は 1.33 ポンド (601 g) となり、初代の iPad の .5 インチ (13.3 mm) と 1.5 ポンド (680 g) よりもかなりスリムになった。3G モデルでは重量がこれよりも少しだけ重くなる。写真で見ると、iPad 2 は以前よりかなり平らになったように見えるので、テーブルや机の上に置いてもしっかりと落ち着いて、ぐらぐら揺れたりしないようだ。

前面を向いたフロントカメラと後面を向いたバックカメラが一つずつ付いているが、これは iPhone 4 と第4世代 iPod touch に同様のものが付いたことから多くの人たちが予想していたことであった。フロントカメラは FaceTime で使うためのもので、VGA 画質のビデオを最大 30 フレーム毎秒で撮影し、静止画も同じく低画質の VGA だ。それとは対照的に、バックカメラは 720p のビデオ (中間 HD 解像度) を最大 30 フレーム毎秒で録画するとともに、5 倍デジタルズームの静止画カメラとしても働く。iPhone のカメラと同様に、タップして露出をコントロールでき、写真とビデオにはジオタグが添付される。新型の MacBook Pro には新しい FaceTime HD カメラが装備されているが、これを使って 720p の FaceTime セッションが可能なのかどうか、Apple は明かしてくれなかった。

内部に目を移せば、この iPad 2 には A5 チップが装備される。これは Apple がデザインしたデュアルコアの CPU で、Jobs によれば初代 iPad の A4 チップに比べて最大二倍高速となるという。Apple はまたグラフィックスのパフォーマンスも改善し、iPad 2 は最大 9 倍高速となったという。その上、一般的には処理のパフォーマンスが改善すれば消費電力が大きくなるものだが、Apple によれば iPad 2 のバッテリ寿命は初代 iPad と変わらず、一回の充電ごとに最大 10 時間使えるという。

そうそう、それからジャイロスコープもある。おそらくこれはある種のゲームで役に立つだろう。また、ジャイロスコープが装備されたことによって GPS の位置測定やナビゲーションも向上するようだ。以前と同様、GPS 受信機が付くのは 3G モデルのみだ。

iPad 2 では Wi-Fi 専用モデルと 3G モデルの双方とも、それぞれ三種類のストレージ容量、16 GB、32 GB、64 GB が用意される。従来のものとサイズは変わっていないが、ハイエンドのものは依然として市場にある他の機器、あるいはリリース予定の機器と比べて余裕のある容量と言えよう。Apple は、いつもと同様、iPad 2 の内蔵 RAM の量を明かしていない。これは初代の iPad ではたった 256 MB で、iPhone 4 では 512 MB に増やされていた。

3G モデルは AT&T など GSM ネットワーク用のもの一つだけを出すのでなく、Apple は GSM ネットワーク用の iPad 2 と、Verizon Wireless の CDMA ネットワーク専用の iPad 2 とを、同時にリリースする。iPad 2 には、ブラックと...おっと待て...ホワイトのモデルがある! それに、Jobs はホワイトのモデルもブラックのモデルと同時に出荷すると約束していた。(Apple メロドラマをフォローして来なかった人のために説明すると、この会社は iPhone 4 にホワイトモデルを発表しながら、ついにそれを出荷できなかった。)

Apple の市場優位性をさらに強固なものとするため、競合する他のタブレット機の大多数が未だに初代 iPad の価格と機能性とに追い付くことができないでいる状況を見つつ、iPad 2 の価格は以前と同じとされた。16 GB Wi-Fi 専用モデルの $499 から、64 GB 3G モデルの $829 までとなっている。

オンラインの Apple Store では 2011 年 3 月 11 日にならないと注文の受付が始まらないが、iPad 2 はその日に米国内での出荷が始まり、国外での出荷開始は 2011 年 3 月 25 日となる。だから、オンラインで注文したいのならば、3 月 11 日というのが覚えておくべき日付だ。一刻も早く iPad を手にしたいという人には、Apple リテール店での店頭販売がその日の午後 5 時に開始される。

Apple はこれと同時に、新しい Smart Cover をデビューさせた。今までにない、魅力的な方法でスクリーンを保護するカバーだ。Apple のこれまでのケースは、はっきりと言ってしまえば、魅力的でもなく使いにくいものだった。この Smart Cover はソフトで、フラップ風に折り畳め、磁石を使って iPad に取り付けるようになっている。感覚をつかむには Apple のビデオを見る必要があるかもしれない。カバーを装着すれば、スクリーンを覆うとともに自動的に iPad をスリープさせる。カバーを開けば iPad がスリープから目覚め、カバーはまるで折り紙のように巧妙に畳まれて、文字入力用のスタンドとしても、また横長の状態で立てておけるスタンドとしても使える。内部の面はマイクロファイバーの裏地になっていて、閉じている間にスクリーンをクリーンに保つ働きをする。Smart Cover は 10 種類のカラーから選べ、価格は明るい色のポリウレタン製が $39、より落ち着いた色のレザー (革) 製が $69 だ。装着用の磁石は実際 iPad の内部に組み込まれているので、今後これを利用する独立のケースメーカーも出てくるだろう。

最後にもう一つ、こちらのアクセサリは iPad を人気あるプレゼンテーション用機器とするのに役立つと思われるが、Apple は $39 の Digital AV Adapter も発表した。このアダプタを使えば、1080p HD ビデオによるミラーリングができる。(iPad 2 から旧型の VGA アダプタを使ったミラーリング出力も実際可能となる。)これはすべてのアプリで動作し、大サイズのビデオスクリーンに、あるいは HDMI 対応のプロジェクタに iPad を繋げば、あなたの iPad のスクリーン上に表示されるものならば何でも大画面で人々に見せることができる。この Digital AV Adapter は実際二つのポートを持ち、一つは HDMI 用、もう一つは Dock コネクタ用で、プレゼンテーションをしながら同時に iPad を充電することも可能だ。

iPad 2 に関係したことで何か難癖をつけようと思っても難しい。例えば大量のメディアを扱う人のために 128 GB さらには 256 GB モデルも欲しいとか、4G ワイヤレスのモデルも欲しいとかいう希望は興味深いものかもしれない。まだ、それほど広く使い道がないのは確かだが。また、スクリーンの解像度をさらに上げることも理論的には可能かもしれないが、そのために必要なハードウェアを十分に供給できるのかどうかは不透明だ。それから、価格がもっと下がるのは大歓迎だが、競合する他社がタブレット機を Apple の価格以下にすることができないでいるのを見れば、iPad 風のタブレット機を Apple が既に打ち出しているよりずっと安い価格で作るのはおそらく困難なのだろう。そしてまた、iPad 2 の発表が済んだ今、これから一年以内に控えている iPad 3 に追加するべき何か新しいものを、Apple はまだちゃんと隠しているのだ。

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iPad 2 と iOS 4.3 を使ってみた体験を詳しく

  文: Jeff Carlson <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

これまで iPad が重過ぎる、かさばり過ぎると思っていた人たちは、今度新しい iPad 2 を手にする機会があればぜひ試してみて頂きたい。私は 3 月 2 日の Apple の発表の場に出席していて、この新しい機器をしばらく使ってみることができ、新しいクールな Smart Cover のフィーリングさえも実感することができたので、Steve Jobs のプレゼンテーションでは語られなかった細かなこともいくつか知った。(2011 年 3 月 2 日の記事“iPad 2: より速く、薄く、軽く、カメラも2つ”参照。)

Smart Cover -- Apple が新たに出した iPad 2 用 Smart Covers には、ほとんど iPad 2 自体と同じくらいの時間がプレゼンテーションにあてられた。その理由は私にも理解できる。これは、本当にクールだ。私が初代の iPad で Apple の黒い iPad ケースを使ってきた理由は、特にそれが格好良かったからではない。(実際格好良いとは言えない。)ただ、薄くて機能的だったからだ。もちろん、できれば iPad をそのままで持ち歩きたかったのだが、ケースが全く無い状態で iPad を持ち歩くのはいろいろな意味で具合が悪いことが分かった。ノートのように横向きに掴んでスクリーンを汚すのも嫌なので、いつも私はそのことに注意を払っていなければならなかった。黒い iPad ケースに入れさえすれば、スクリーンが覆われるのでどんな風にでも掴めるし、必要ならば腕の下に抱えたり、鞄の中に放り込んだりしても、スクリーンに傷が付く心配をせずに済んだ。

今回の新しい Smart Cover は、以上のことすべてを、可能な限り最小限の方法で達成しているように見える。金属製のジョイント部分の内部に組み込まれた磁石が、iPad 本体の左側の縁に沿って組み込まれた磁石に合わさるようになっており、これでカバーが iPad 本体にしっかりと固定される。美しくて耐久性にも優れているように見えるこのカバーには、レザー (革) 製とポリウレタン (「宇宙服を作るのに使われる素材だ!」と Jobs は叫んだ) 製とがある。革製のカバーは見栄えも素敵で、薄く、感触も良い。私に手渡された iPad が使っているカバーが革製かポリウレタン製か、私はすぐには気付かなかった。ただ正直に言えば、その時私の注意は iPad 自体の方に向いていたのだった。

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$39、あるいは革製の方ならば $69 という値段に、それだけの価値があるか? 私はそうだと思うが、このカバーの詳しい仕様と、どこに磁石を組み込むべきかという情報を得たサードパーティのケースメーカー各社が今後どんなものを出してくるか、興味深いところだ。自分の iPad 2 にはぜひとも Smart Cover を買いたいと思うけれど、高い値段を出して革製の方を買うべきかどうか、私はまだ決めかねている。また、Apple が製品ページの中でこの革製のカバーについて「使用中に摩耗などの影響で色落ちする場合があります」と書いていることにも注意すべきだろう。

サードパーティのカバーといえば、この iPad 2 にはシステム環境設定の項目で、カバーを閉じたり開いたりすれば自動的にスリープしたり復帰したりする設定が選べる。これは素晴らしい追加機能で、実際にカバーの端を持ち上げたり下ろしたりを繰り返してみたところ、非常に反応が良いようだった。

この Smart Cover は四つの部分に分かれて折れ曲がるが、このやり方は非常に巧みであり、非常に便利だ。(Apple のサイトにあるサンプル画像をクリックしてドラッグすれば、その仕組みが分かる。)私はいつも自分の黒い iPad ケースのカバー部分を後ろにまわし、それを留め具として iPad に角度を付けて置いている。実際、iPad を縦長にして Smart Cover で支えるように立ててみたが、古い iPad カバーを使った場合よりも安定した感じだった。古いカバーを使うと底部のあたりがちょっと曲がってしまって不安定に感じられることが時々あるからだ。

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新しいマシンのフィーリング -- 第1世代 iPad の大きさと重量が嫌だったという人たちを私は何人も知っている。ほんの少しだけ重過ぎるので、長い時間持ち続けると(たとえ足の上に立てかけて置いたとしても、もちろん何時間も続けて iPad を持ち上げる話をしているのではない)疲れてしまう。

(ちょっとここで脇道に逸れて、初代の iPad でさえ、それ以前にあったタブレット機に比べればずっと薄くて軽かったことを指摘しておこう。だから、これは Apple の功績だ。けれどもテクノロジーを語る際には、それまでの機器がどのようなサイズであったかにかかわらず、私たちは新しいテクノロジーが以前よりも薄くて軽いものを作り出すことを期待してしまうのが現実だ。)

私は重量が以前とどの程度違うか、はっきりと感じ取ることはできなかった。違いはたったの 3.2 オンス (90 グラム) に過ぎない。けれども薄さの違いは歴然としていて、これは本当に素晴らしかった。薄さのために、iPad 2 の方が軽いという印象が実際より強まったということもあるかもしれない。あなたの脳裏に映るのは、ガラスとアルミニウムでできた _薄片_ であって、それは決して厚板でもなく、石板でもない。そしてこの物理的効果はいつまでも脳裏に残るものだと私は思う。ちょうど、私が自分のユニボディ MacBook Pro を手で持ち上げる度に、これが旧型のボディに比べてどんなに頑丈かを実感するように。

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FaceTime -- もう何ヵ月も前から iPad 2 にはカメラが2つ付くだろうという推測が世に溢れていたので、今回 FaceTime が登場したことは驚きでも何でもなかった。イベントのお試し部屋の中で見た限りではちょっと画質が甘い感じだったが、これはフロントカメラの VGA 解像度によるものでもあったろうし、また部屋中で多数の FaceTime デモチャットが飛び交っていたせいでもあったかもしれない。けれども私はもう少し様子を見てみたいと思う。iPhone 4 上の FaceTime は、私の娘が私の母とビデオチャットをするのに素晴らしく良く働いてくれている。(母は Mac の上で FaceTime を使っている。)おばあちゃんは衛星経由のインターネット接続を使っているのでなおさら素晴らしい。実際、FaceTime の画像品質は一貫して iChat ビデオの画質より優れていた。FaceTime が使えるのは、依然として Wi-Fi ネットワークのみだ。

高速になったモバイルブロードバンド -- iPad 2 の発表で表に出なかったのが、速度向上だ。ただ、どの程度の結果が得られるかは実際に測定してみる必要がある。3G GSM (AT&T 対応) 版の iPad 2 は GSM 版の iPhone 4 と同じく、3G GSM ネットワーク用のアップロード標準 HSUPA を使って可能となったより高速なアップロードをそれぞれの製品ラインの中で初めてサポートした機種となる。iPhone 3G と 3GS、それに初代の 3G iPad にはアップストリームのトラフィックのために UMTS しか含まれておらず、最大で 384 Kbps しか得られなかった。これに対して iPhone 4 や、おそらく iPad 2 でも使われているタイプの HSUPA では、生のスループットで 5.8 Mbps に達すると言われている。ただし、AT&T のネットワークは 2 Mbps を少し下回るあたりで頭打ちとなる。他の国ではより高速のネットワークを走らせているキャリアもあるし、また AT&T も、いずれはそのレベルのアップストリーム速度にアップグレードすることだろう。

ダウンロードの側については、iPhone 4 と初代 3G iPad に組み込まれている 7.2 Mbps ダウンストリームのタイプの HSDPA と比べて iPad 2 が改善されているのかどうか、まだ Apple から何の情報もない。AT&T は全国のセルラー基地局をこの速度になるよう設置しており、現在はさらに、生のスループットで 21 Mbps を提供できる HSPA+ と呼ばれるものへの増設を進めている最中だ。iPad 2 に HSPA+ が組み込まれていることもあり得るとは思うが、AT&T は昨年末に、HSPA+ を装備したタブレット機の登場は 2011 年の後半になるだろうと述べたことがある。実際問題としては、7.2 Mbps の HSDPA が現実的な使用で最大 4 Mbps 程度となり、21 Mbps の HSPA+ は良い条件の下でならば持続的ダウンロード速度として 8 Mbps 程度を提供できるかもしれない。

Verizon Wireless CDMA 版の iPad 2 は、引き続き Verizon の現行の 3G 標準である EVDO Rev. A に固定されている。同社は現在、LTE と呼ばれるより高速の標準を展開することによりこれを拡張しようとしている。AT&T もまた、今年中には LTE を打ち出す予定だ。iPad 2 の二つの 3G モデルのいずれにも LTE 接続性は含まれていないが、その点は現在市場にあるどのラップトップ機でも同じことだ。Motorola は最近、LTE サポート組み込みアップグレードが可能な同社のタブレット機 Xoom について、そのアップグレードが今後数ヵ月以内に可能となるがその際に新しいモデムをインストールするため機器自体を工場に送り返して六日間作業することが必要となると発表して私たちの多くをあきれ返らせた。LTE によってダウンストリームで 5 から 12 Mbps が実現されるかもしれないが、今日ある GSM と CDMA の 3G ネットワークの上に全国的に LTE が展開され終わるのは 2013 年のことになるだろう。

iMovie と GarageBand -- 私は iOS 用の新バージョンの iMovie を使い始めてみたくてワクワクしている。この iMovie は、iPad 2、iPhone 4、それにカメラ装備の iPod touch で使える。後者二つの機器ではスクリーンが小さいので、このバージョンの機能を Apple がどのようにこれらの機器に実現したのか、私は非常に興味がある。

初期の報道とは食い違っているが、その日の午後遅く私はこの iMovie が第一世代の iPad では動かないことを確認した。私の推測だが、そこには二つの大きな原因があると思う。一つには、初代の iPad にはカメラがないので、映像を読み込んで iPad で編集できれば確かに役に立つこともあり得るだろうけれども、Apple としては iMovie のようなアプリではすべての機能が利用できるようになっていなければならないと考えたのだろう。もう一つの原因は、思うに、メモリの制限だろう。iPhone 4 には 512 MB の RAM があり、iPad 2 にも少なくともそれだけはあるはずだ。(第四世代の iPod touch には 256 MB の RAM しかないのにサポート対象に含まれているのは事実だが。)Apple は、iPad にどれだけの RAM があるのかを公表することに極めて消極的だ。ただ、発売されたばかりのユニットを iFixit のようなところが購入し、バラバラに分解して公開すれば、RAM の量はすぐに私たちの知るところとなるだろう。

もう一つの大きなソフトウェア発表、iOS 用の GarageBand も、やはり非常に洗練されていて楽しそうだ。ただ、私はミュージシャンではないので、それほど興味が湧くわけではない。でも、普通ならこの種の音楽アプリに見向きもしないような人たちにもアピールできるようにという努力が注がれていることははっきり見て取れ、それは嬉しいことだと思う。また、先月の Macworld Expo で音楽関係の iPad アプリやアクセサリが非常に多く見られたことを考えれば、そこに市場があることは間違いないだろう。あるいは、少なくとも音楽関係のギアを開発して販売するために資金を注ぎ込もうという人たちが多数いることだけは確かだ。

iMovie とは違って、GarageBand は第一世代の iPad でも動く。ただ、おそらくパフォーマンスの点で制限があるのだろう。また、iPad で作ったプロジェクトを Mac に転送して、そちらで編集作業を続けることも可能だ。(ただし、間もなくリリースされる GarageBand '11 アップデートが必要となる。)けれどもそれは一方通行のみ、つまり、iPad と Mac の間で行き来することはできない。Mac で始めたものを iPad で仕上げることはできない。それでも、インスピレーションが閃けばいつでもどこでもその音楽的アイデアを演奏に書き留めることができ、自宅に帰ってからデスクトップコンピュータで磨きをかけることができる、という素晴らしい手段がここに生まれたわけだ。

その他こまごまとしたこと -- iPad のスクリーンを HDTV または HDMI 対応のプロジェクタにミラーリングできる HDMI ビデオアダプタは素晴らしい追加機能だが、試してみたところ Apple の既存の iPad VGA Adapter を使っても同じことが実現できると分かった。その場合 iPad を旧型のプロジェクタやディスプレイにも繋げる。どうやら、ミラーリングを可能とすることについて HDMI アダプタには何も特別なことはないようだ。それを可能にしているのは、iPad 2 の中にある A5 プロセッサが持つグラフィックス機能だ。初代の iPad も HDMI コネクタを使うことができるが、利用できるのは特に機能を有効化されたアプリのみであり、既に Dock コネクタ経由で使えている機能のみだ。

iOS 4.3 アップデートで加わった機能である iTunes ホームシェアリングにより、あなたのネットワーク上にある iTunes からあなたの iPad へ、メディアをストリームできるようになる。わざわざ同期作業をして転送する手間は要らない。その上、ホームシェアリングを使ってあなたのライブラリを最新の状態に保つこともできる。iOS 機器を使って購入した楽曲は、その機器をあなたの iTunes ライブラリにワイヤレスで接続しただけで、自動的にあなたのライブラリに転送される。まるで、あなたの iOS 機器が Apple TV になったようなものだ。

最後にもう一つ、皆さんにはぜひ今回のイベントを録画した Apple のビデオ を観て、Steve Jobs が元気に語るところを目にして頂きたい。私が指摘したいのは、彼の健康状態ではない。(見たところ、彼は 2010 年 10 月の Apple のイベントの際と同じように見えた。つまり、病気に立ち向かっている人物には見えるが、衰弱しているようには見えなかった。)そうではなくて、見て頂きたいのは彼がタブレット市場にいる他の会社を批判したところだ。私が思うに、Apple がこれほど他社を引き離していることに対して、Jobs は心底驚いているのだろう。他のメジャーな会社はすべて、ただただ去年の iPad と競合することだけを目指しているように見えるからだ。このプレゼンテーションの最初の数分間を見れば、Jobs の、そして Apple の、対抗意識むき出しの本質が、くっきりと垣間見えることだろう。

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Apple、iOS 4.3 の新機能をプレビュー

  文: TidBITS Staff <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

公式に iPad 2 を発表したのに加え、Apple は iOS 4.3 にどのような機能が登場するかについてもいくつか詳しい情報を明かした。iOS 4.3 は、2011 年 3 月 11 日に、対応する iOS 機器すべてに対する無償のアップグレードとして提供される。

iOS 4.3 用に、Safari アプリで Apple はパフォーマンスに焦点を絞った。Nitro JavaScript エンジンを Mac OS X から iOS に移行させて組み込むことにより、Apple によれば Safari の JavaScript 処理性能が従来の二倍以上に向上しているという。インタラクティブな要素で JavaScript に強く依存するような現代的ウェブサイトも、快適に使えるようになるはずだ。

持っているすべての機器を接続させて統合されたメディア体験を楽しめるようにしたいという努力の一環として、Apple はコンピュータから Wi-Fi 接続の iOS 機器へ、音楽、映画、テレビ番組を移動させるための新たな方法を追加した。iOS 4.3 の下では、iTunes ホームシェアリング機能を使って、ローカルコンピュータ上の iTunes から iPad、iPhone、または iPod touch へ、メディアをストリームできるようになる。USB を媒介とした同期は必要ない。この機能は最近リリースされた iTunes 10.2 アップデートによって可能となる。

AirPlay (Mac または iOS 機器から、AirPort Express ベースステーション、Apple TV、あるいはその他の AirPlay 対応機器へメディアをストリームできる) 機能も強化された。従来からサポートしていたメディアに加えて、サードパーティ製のアプリやウェブサイトにある動画などを、フルのオーディオ・ビデオとしてストリームできるようになった。さらに、AirPlay を使って iPad にある写真のスライドショーを Apple TV で使えるトランジションを利用して再生することもできるようになる。

iOS 4.3 で加わった次の機能を歓迎する iPad ユーザーは多いだろう。iPad 本体の右上横にある小さな物理的スイッチの機能選択ができるようになった。これを、スクリーン回転ロックのスイッチ (iPad 向けに最初に出された iOS リリースでの挙動) とするか、それとも音量ミュートのスイッチ (iOS 4.2 での挙動) とするかを、カスタマイズできるのだ。Apple は通常このようなオプションを提供することを好まないが、iOS 4.2 でスイッチの挙動が変わった際にあまりにも多くの苦情の声が寄せられたために考えを変えたのだろう。

新しい Verizon iPhone とそのホットスポット機能とに対抗すべく、Apple も iOS 用に公式のパーソナルホットスポット機能を発表した。少なくともスタート当初は、GSM ベースの iPhone 4 (米国においては AT&T の iPhone 4) のみで動作する。AT&T は数週前、それぞれ機能が使えるようになり次第としつつ、同社のすべての携帯電話でモバイルホットスポット機能の料金表を設定した。

テザリングについての場合と同様、AT&T はこの機能を使うためには月額 $25 の 2 GB DataPro 利用プランに追加して月額 $20 の Personal Hotspot プラン (これでさらに 2 GB の容量が追加される) に加入する必要があるとしている。Personal Hotspot プランのユーザーは、電話、テザリング、ホットスポットのデータを合計して最大 4 GB を利用できる。このホットスポット機能のオン・オフ切替も、DataPro プランと DataPlus プラン (200 MB で月額 $15) との切替も、いずれも自由にできる。(2011 年 2 月 2 日の記事“AT&T、テザリングをモバイルホットスポットに変更”参照。)

Apple は 2011 年 3 月 11 日に iTunes 経由のダウンロードにより iOS 4.3 をリリースする予定だ。これはすべての iPad、GSM 版の iPhone 4 (米国内では AT&T のネットワークで動作するもの)、また第三および第四世代の iPod touch で動作するが、Verizon 版の iPhone 4 や、初代の iPhone および iPhone 3G、また第一および第二世代の iPod touch では動作しない。Verizon 版の iPhone 4 で iOS 4.3 が走らないというのは興味深い。おそらく、将来のアップデートですべての機器が同等の扱いを受けるようになるのだろう。

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iMovie と GarageBand に新しい iOS 版

  文: Michael E. Cohen <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

先週、Apple は新しい iPad 2 と iOS 4.3 を発表した他に、新しいアプリを二つリリースした。いずれも特に驚くほどのことではないが、いずれのアプリを見ても、引き続き iLife と iWork のアプリを iOS に移行させてゆきたいという Apple の意図が透けて見える。

iMovie -- 一つ目のアプリは、$4.99 の iMovie アプリの universal 版だ。これは、iPhone 4 (Retina ディスプレイのお陰だ) でも、iPad 2 でも動作する。iMovie アプリの新機能としては、次のようなものがある:

そして、あなたの手の上の機器で傑作が完成すれば、それを直接 CNN iReport、YouTube、Vimeo、Facebook、それからもちろん MobileMe にも、アップロードできる。あるいは、Wi-Fi と AirPlay を使ってあなたの Apple TV に送ったり、ケーブルを通してあなたの iTunes ライブラリと同期させたり、さらには新発売の $39 の $39 Digital AV Adapter (Apple が iPad 2 とあわせて発表したアクセサリ) を iPad 2 に繋げば直接 HDTV テレビであなたの作品を鑑賞したりすることもできる。

GarageBand -- あなたの内に潜む Domenico Scarlatti と心を通わせられるようにと、Apple は iPad 用の新しい GarageBand アプリも発表した。こちらも価格は $4.99 だ。この新しいアプリでは、Touch instruments (iPad のマルチタッチ機能を利用) での演奏もできるし、本物の楽器 (エレキギターなど) を iPad に接続して演奏することもできる。このアプリは iPad の内蔵マイクで録音したオーディオを使うことさえできる。GarageBand は iPad 2 または初代の iPad で走る。

Apple がこの新しいアプリをデモした際に分かったことだが、GarageBand の旧来の機能の上に、タッチスクリーンのお陰で可能となった新しいオプションがいくつか加わっている。主なものとしては:

いったんあなたの楽曲の傑作が完成すれば、そのオーディオファイルを電子メールで友人に送ったり、あなたの iTunes ライブラリに追加したり、あるいはあなたの Mac 上の GarageBand に読み込んでさらに作品を磨いたり、という共有機能が利用できる。(イベント開場からの最初の報道では iMovie プロジェクトをデスクトップ機に送ることもできるという話が囁かれていたが、その後 Apple はその機能が GarageBand でしか使えないことを確認した。)

Jobs は発表の中でこう語った:「Apple の DNA に根差した考え方とは、テクノロジーだけでは十分でないというものです。テクノロジーがリベラルアートと結び付いたとき、テクノロジーがヒューマニティーと結び付いたとき、そのとき初めて私たちの心は歌を歌い始めるのです。」

そう、そのとき私たちは、ちょっと踊り出してみたくもなるのだ。

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iTunes 10.2 には iPad 2 と iOS 4.3 のサポート以上のこともある

  文: Kirk McElhearn <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Apple が iTunes 10.2 をリリースした。これはマイナーなアップグレードだが、その中にたくさんの興味深い変更点が隠されている。Apple は公式には iOS 4.3 との同期のサポートと、ホームシェアリング機能の改善にしか言及していない。ただし、iTunes 10.2 for Windows (64 bit) にはいくらかのセキュリティ上の修正も施されている。

けれども、iTunes 10.2 を詳しく調べてみると、それ以外の機能にも注目すべき変更点がいくつか見られる。ただ、幸いなことに、私が電子ブック "Take Control of iTunes 10: The FAQ" で述べたアドバイスを書き換えなければならないような変更はない。では、まず環境設定から見て行こう。ここにはかなり多数の変更がある。

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もう一つ、メニュー項目でマイナーな変更がある。詳細 > オーディオストリームを開く コマンドが、単に「ストリームを開く」という名称に変わった。

新しいホームシェアリングのシステムには興味深い機能が一つある。もしも、システム環境設定の 省エネルギー パネルで「ネットワークアクセスによってスリープを解除」の設定項目があなたの Mac のどれか一つででもオンになっていれば、かつその Mac でホームシェアリングが有効になっていて iTunes が走っていれば、その Mac をスリープさせた場合にも、そのライブラリは他の Mac 上の iTunes から見え続ける。別の Mac でそのライブラリをクリックすれば、スリープしていた Mac が目覚め、そのライブラリがロードされる。

使い始めてみた感触としては、iTunes 10.2 は以前よりも少々きびきびと動くようになったと思う。特に、非常に大きなライブラリからファイルを削除する際に違いが感じられた。私のライブラリには 65,000 個以上の項目があるので、これまではその作業に二秒ほどかかっていて、回転するビーチボールがいつも出ていた。正確に時間を計測したわけではないが、今は即座に消去が済むようになった。

また、CD からファイルを読み込む作業も以前より少し速くなったように思える。従来は、個々のトラックが終わるごとにはっきりと遅れがあり、その間 iTunes は、たぶんファイル書き込みの作業中だったのだろうが、やはりビーチボールを表示していた。今でもビーチボールは見えるけれど、それが消えた時にはもう既に次のトラックが読み込まれている最中だ。以前はそんなことはなかった。

今回のアップデートの主要な理由は、iPad 2 と iOS 4.3 のために互換性を提供することだ。いずれも 2011 年 3 月 11 日には入手可能となる。けれども、Apple は内部の動作にもかなり手を加えているようだ。環境設定の項目を変更するというのは比較的マイナーなことだが、速度が向上したように見えるというのは大サイズのライブラリを持っている人たちにとって非常にありがたいことに違いない。繰り返して言うが、これは私の第一印象に過ぎないので、私としても今後はさらにもう少しテストをしてみて、他のところでも速度向上が見られるのかどうか、調べてみたいと思う。

[Kirk McElhearn は Macworld の Senior Contributor であり、時々 TidBITS にも寄稿して、自身のブログ Kirkville には「ただ Mac だけでないいろいろ」(Writings about more than just Macs) を書き留めている。Twitter でのフォローは @mcelhearn で。Kirk の最新の本は "Take Control of iTunes 10: The FAQ" だ。]

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TidBITS 監視リスト: 注目のアップデート、2011 年 3 月 7 日

  文: TidBITS Staff <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Firefox 3.6.15 -- Mozilla が Firefox 3.6.14 をリリースした。このオープンソースのウェブブラウザへのマイナーなセキュリティおよび安定性アップデートだが、もうじきメジャーな新バージョンも控えているようだ。今回の変更点について Mozilla はあまり述べていないし、これまでの数回のアップデートと同様に変更点は小さなものばかりのようだが、やはりいつも Firefox を使っている人ならば、最新のコードを持つためにもアップデートしておくべきだろう。さらに、新たに出た Firefox 3.6.15 では 3.6.14 の下でいくつかの Java アプレットがロードしなかった問題が修正されている。(無料、17.6 MB)

Firefox 3.6.15 へのコメントリンク:

SpamSieve 2.8.5 -- そこここに顔を出すナイジェリアの王子様は悔しがっているに違いないが、C-Command が SpamSieve 2.8.5 をリリースした。今回の新アップデートでは、SpamSieve のフィルタリングの正確度が向上するとともに、新型 MacBook Pro、プレリリース版の Mac OS X Lion、それに Freron Software の新しい MailMate との互換性が改善されている。Outlook や Entourage との統合もよりスムーズに働くようになり、SpamSieve の Apple Mail 用プラグインが Mac OS X 10.6 の下で 64-bit で動作することができるようになった。また、このソフトウェアの説明書やローカライズ版にも改良が施された。(新規購入 $30、無料アップデート、7.8 MB)

SpamSieve 2.8.5 へのコメントリンク:

BusyCal 1.5.2 -- BusyMac の人たちが BusyCal に新機能を追加するため忙しく働いている (busy) のは驚くにあたらない。同社の最新のアップデートが BusyCal 1.5.2 だ。招待状の発送を Apple Mail にリンクさせた場合、それに対する返事を表示するようになった。また、今回のアップデートでは Google のバグにより同期にコンフリクトが起こっていた問題に回避策を講じ、「アプリケーションを再インストールする必要あり」というエラーを修正し、MobileMe CalDAV 同期を改善し、その他多数の細かなバグ修正も施している。(新規購入 $49、無料アップデート、6.6 MB)

BusyCal 1.5.2 へのコメントリンク:

Dragon Dictate 2.0.3 -- NuanceDragon Dictate 2.0.3 をリリースし、この口述筆記ソフトウェアを Microsoft WordFileMaker 11 で使った場合のパフォーマンスの問題に対処した。その他に変更はないが、Dragon Dictate を使って Word あるいは FileMaker に語りかけている人たちはきっとこのアップデートを待ち焦がれていたことだろう。(新規購入 $199.99、無料アップデート、13.4 MB)

Dragon Dictate 2.0.3 へのコメントリンク:

Airfoil 4.0.2 -- 単細胞のソフトウェア会社 Rogue Amoeba が、 Airfoil 4.0.2 をリリースした。[訳者注: アメーバは単細胞生物です。]Mac のオーディオをさまざまな種類の機器に送ることのできるユーティリティへのアップデートだ。今回の新バージョンには多数のバグ修正が含まれているが、主なものとしては AppleScript サポートの改良、Instant On 機能のパフォーマンス改善、Airfoil の Video Player でのフルスクリーン再生改良、よりスムーズなネットワークロードのパフォーマンス、稀に起こったいくつかのクラッシュの修正などがある。また、いくつか新機能も今回のリリースに盛り込まれ、主なものとしては Deselect All Speakers メニュー項目、Flash 10.2 のサポート、ウィンドウ状態のセッション間保存などがある。(新規購入 $25、無料アップデート、11.1 MB)

Airfoil 4.0.2 へのコメントリンク:

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ExtraBITS、2011 年 3 月 7 日

  文: TidBITS Staff <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

もっと何か読みたいという方は、John Gruber が Apple の取り分 30 パーセントというビジネスモデルに深い考察を加えた記事と、Verizon Wireless の iPhone 無制限データプランが数ヵ月以内に姿を消すというニュースをどうぞ。

John Gruber が Apple の 30 パーセントを分析 -- 最近最も論議を呼んだ話題といえば、Apple による定期刊行物の購読プランだろう。Apple は App Store における 70 対 30 の収益分割法をここにも適用することにしたが、その契約条項のいくつかは多くの出版者たちが嫌うものだった。ことに、購読ベースのアプリが必ず Apple の購読 API を使用するように義務付けられたこと、アプリ以外で提供される購読と同一料金であることが要求された点が問題とされた。Daring Fireball の John Gruber が、Apple のポリシーに対し論議の的となった主要な点のいくつかを検討し、結論として、基本的には、Apple の規定しているルールは Apple のために良いものであると同時に、ユーザーのためにも良いものと考えられる、と論じた。では、出版者にとっては? 出版者は Apple のルールに従って参加することもできるし、Apple のサンドボックスには足を踏み入れないこともできる。

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Verizon Wireless の無制限データプランはこの夏にも消滅か -- Fierce Wireless の記事によれば、Verizon Wireless がアナリストたちに向けて、同社が iPhone を同社のネットワークに導入した際に設定した無制限データの価格プランがこの夏に段階的サービスの価格体系によって置き換えられることになる、と述べたという。驚くことではない。おそらく、AT&T の場合と同様に、2年契約を持つ現行の契約者は、自分からより安価な従量制プランに切り替えない限り、契約期間内は無制限プランを続けることができるのだろう。

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