TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#1068/21-Mar-2011

iOS 機器でパスコードを使っていれば、これでデータは暗号化されているだろうとお思いではなかろうか。Rich Mogull が、実は暗号化が起こらなくなってしまう、よくある状況を発見したが、幸いにもこれは簡単に正すことのできる問題だった。その他のニュースとしては、Joe Kissell が自らの電子ブック "Take Control of Your Paperless Office" の内容すべてを tweet しつつあり、Glenn Fleishman が AT&T による T-Mobile 買収の及ぼす影響を解説し、Michael Cohen がライブでテレビが観られる Time Warner の iPad アプリを概観する。また、今週号では Adam が Eudora から Gmail に切り替えた体験談を語る四部作の第一回をお届けする。今週注目すべきソフトウェアリリースは、Mac OS X 10.6.7、Security Update 2011-001 (Leopard)、Bento 4.0.2、DEVONthink と DEVONnote 2.0.9、Yojimbo 3.0.2 だ。

記事:

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あなたの iOS デバイスが本当に暗号化されているか確かめる

  文: Rich Mogull <[email protected]>
  訳: 柳下 知昭 <tyagishi@gmail.com>

iPad や iPhone 上のあなたのデータを暗号化することは、デバイスをなくすという万が一に備える主要な方法である。もし誰かがあなたのデバイスをコンピュータにつないだとしても、理論上はあなたのデータすべてを盗むことはできないだろう。現在の iOS デバイスでは、暗号化はパスコードを設定するだけで簡単にできる。

iOS 3 と iOS 4 での暗号化 -- 私が”理論上は”と書いたのは単にパスコードを設定することよりももう少し複雑であるとわかったからである。アップルは、最初に iOS 3 を使用している iPhone 3GS で ハードウェアによる暗号化によって、暗号化しようとしていた。そのバージョンは、おおきな問題があった、単に jailbreak することで悪者が暗号化を回避できたのである。

なぜならば、デバイスへの認証されたアクセスは、データ - iPhone へ持ち込むデータやiPhone から持ち出すデータ - を復号化することができるからである。悪者がデータを盗み読むためにすべきことは、デバイスを jailbreak するだけであり、その後パスコードは回避され、無効にされる。そうした後は、_全ての_アクセスは許可されるようになり、全てのデータは、都合の良いことにしゃれた新しいハードウェアチップによって_復号化_される。私が、このことを最初に書いたのは、"iPhone 3GS ハードウェア暗号化は簡単に破れる"(2009 年 8 月 7 日)である。

アップルは、iOS 4 のリリースでこれらの多くを修正した。このバージョンでは、あなたのデータの一部は、デバイスのパスコードで暗号化される。悪者が jailbreaking によってパスコードを回避したとしても、パスコードを_知る_ことなしには、保護されたデータにアクセスすることはできない。

”保護されたデータ”には、あなたのメール(とその添付ファイル)やアップルの暗号化とひもづけられた全てのアプリのデータが含まれる。デバイス上のその他のデータは、パスコードによって暗号化されていないため、危険な状態にあるが(繰り返すが、このことは、アプリに依存している)、もしだれかがあなたの Angry Birgs のハイスコアを盗んだとしてもおそらくあなたは気にしないだろう。

iOS 3 でと同様、iOS 4 やそれ以上の走る iPhone 3GS かそれ以降の機器では、パスコードを設定していると暗号化はデフォルトでは自動的に有効にされる。設定 > 一般 > パスコードロック メニューにより有効化できる。

iOS 4 アップグレードによる暗号化の抜け道 -- 残念なことに、あなたがパスコードを設定していても _あなたの機器がいまだ暗号化されない_ 状態のままになるケースが一つある。私はこのケースは滅多にないと思っていたが、私の Macworld 2011 iOS セキュリティセッションでの挙手により、参加者のうちの多くの人が保護されていなかったし、それは、比較的テクニカルなユーザーからの小さなサンプルであるため、一般の人に対しては、より危険であることを暗示している。

この問題は、あなたが、iOS 3 と共に出荷されたデバイス上でパスコードを設定し、その後、iOS 3 から iOS 4 へアップグレードしたときに発生する。これは、よくあるシナリオと言える。

iOS でバイスで暗号化が実際に有効化されているかどうかは、パスコードロックの設定画面で下部をみることでわかる。"データ保護は有効です"となっていれば、設定されている。もしそうでなかったならば、少し時間がかかるが(デバイス上のデータ量に依存する)、簡単な小さな変更を行う必要がある。以下のステップに沿って設定してほしい:

アップルは、すべての手順を示したわかりやすいサポート記事を用意している。

私はいつもどの会社のものかに関わらずスマートフォンやタブレットにパスコードをセットする様に勧めてきた。iOS では、パスコードを設定して、デバイス上の慎重に扱うべきデータを暗号化することで、追加の暗号化ハードウェアチップを活用する方が良いだろう。

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AT&T が T-Mobile を買収する影響

  文: Glenn Fleishman <[email protected]>
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

あまり競争の激しくない業界で巨大企業が小さいが強みを持つ企業を買収することで、料金に良い影響を及ぼすことは少ない。AT&T の T-Mobile 買収計画は、今後 Justice Department (反トラストやその他の問題で), Federal Trade Commission, そして Federal Communications Commission の審査を通らなければならない。しかし、それらはクリアされると想定すると、次に来るのはより高い料金 - そしてより良好な通話とデータサービスとなるであろう。

技術そしてビジネスの観点からすると、この買収は意味をなす。T-Mobile はこの市場で長いこと四番目の業者として後れを取ってきた - Verizon, AT&T, そして Sprint Nextel の後である、Sprint が Nextel を買収する前も後も。HSPA+ (超高速の 3G 方式だが、意味もなく 4G として宣伝されている) を前面に出してコーナーを頭一つ先んじて抜け出している様にも見えるが、T-Mobile は大手と同じ土俵で競争していくために必要な帯域も資源も持ち合わせていない。

AT&T も T-Mobile も GSM 方式を 2G, 3G, そして 3G+ (HSPA+) ネットワークに使用しており、そして AT&T はこれまでも LTE を使用する本格的な 4G により近いネットワークのための帯域に数十億ドルを費やしている。ビジネスの観点からは、AT&T も T-Mobile も、いまだに Verizon や Sprint の足を引っ張っている古いネットワークや一般的でない技術と言った特殊性は持ち合わせていない。(これらの二社は CDMA を使用している。Verizon は 4G LTE ネットワークで GSM に向かおうとしている。Sprint は別の標準である iDEN を Nextel の顧客に使用し、そして 4G のためには WiMax にお金をつぎ込んでいるが、これは間違った馬に賭けているように思える。)

この合併で、AT&T と Verizon Wireless は、米国モバイル勢力図に巨人としてより明確に地歩を築くであろう。Sprint Nextel には多くのハンデがあり、それが料金とサービスで T-Mobile の様に競争的であることを妨げてきた。そして今後も、AT&T/T-Mobile を合わせたもの、或いは Verizon のどちらよりも小さい音声と 3G のサービス地域を持つことになろう。Verizon が Sprint を買うのではないかとの噂は山ほどあるが、Sprint は Verizon に十分な価値をもたらさない。

顧客としては、この AT&T の買収から料金に対する如何なる特典も見ることは無いと思われる。T-Mobile は、音声、データ、そしてテキストメッセージングに対してどの組み合わせでも最も安い全国料金を幾つか持っており、競合する最安プランよりも時によっては毎月 $20 から $30 も少ない。AT&T の料金は Verizon のものとほぼ同等であり、殆どの T-Mobile プランは時とともに消え去り、新ユーザー或いは新しい電話の購入者はより高額な料金に切り替えることが必要になるであろう。

これは最低である、何故ならば我々が既に知っている様に、キャリアは音声やデータを運ぶようなインフラ投資が重いサービスには適正な価格を、そしてテクスティング (これに対するコストは誰が勘定してみても殆どゼロに近い)、そしてモバイルホットスポット (こちらは従量或いは定額プランの上に更なる追加コストは発生しない) の様なものにはほとんど全部が利益と言えるようなぼったくり料金を、と混ぜ合わせて課金している。(Verizon が iPhone にモバイルホットスポットに対して課金しているのには理があるかもしれない、何故ならば電話ベースのデータプランのみに無制限サービスを提供し、テザリングとモバイルホットスポットには別のデータプールを割り当てているからである。)

良い知らせは、AT&T 及び T-Mobile の顧客は、一旦この合併が認可されれば、音声品質とサービス区域に対してすぐにそして違いがわかる改善を見ることになるであろう。両社とも顧客を自らがサービスを提供している地域では可能な限り自分のネットワークに保持するであろう。ローミングはキャリアがカバー出来ない時だけ使われる。AT&T の場合だと、中西部と北東部のかなりの部分が該当し、その他の地区も勿論ある。(2009 年に AT&T は、Verizon が当時五位だった Alltel を買収する時売却を条件とされた農村地域で帯域を買うのに何十億ドルも投入した。)

T-Mobile の 3G ネットワーク展開には、タワーまでの高容量の接続回線が設置されている。同社は、可能な限りのトラフィックをさばくに必要な帯域を持つ 3G 及びそれを超えるネットワークの比率が同業よりはるかに高いと思われる。AT&T は後れを取っており、今でもその接続回線容量を上げる作業を遅々として行っている。T-Mobile のネットワークに寄りかかることは、既存の AT&T 顧客にはより高速のサービスを意味するであろう。

この二社は 4G を 95% の地域に展開することを約束しており、これは LTE 展開に対する AT&T の当初計画 (或いは認可要件) をはるかに超えている。計画では 2011 年半ばには開始される。Verizon は、既に内陸地域にも届ける意図を示しており、大都市のみならず比較的小さな町や農村地帯にも下り 5 から 12 Mbps を提供するとしている。奇妙なことは、最も厳しい競争は都市部の外で起こる可能性があるということで、この地域では小さなワイヤレスサービスプロバイダ、衛星インターネットオペレータ、そして AT&T と Verizon が顧客獲得を目指して競争する話となりそうである。

詰まる所、この合併は全体としてより多くのお金をセルラー会社の金庫にもたらすことになるであろう。既に AT&T や Verizon Wireless に料金を払っている人はすぐに違いを見ることにはならないであろう。しかし、これは AT&T を Verizon に対してより強力な競争相手とする。Verizon は、これまで AT&T と T-Mobile 両社のより小さなネットワークでより早い速度に対抗するため、より広域のネットワークサーブエリアを使ってきた。

この買収は意図しない結果をもたらすかもしれない - でも AT&T はこのメッセージに固執している、希望的観測に終わるかもしれないが。これにより地域のモバイルプロバイダからの競争が増えるというのである - Cricket, Leap, MetroPCS, そして US Cellular、等々である。これらの企業は時としてより安い価格と少数の都市部でしか働かない様な機能を持ち合わせている。ローミングは高価である、もし提供されているとしても。でも、自宅のサービスエリアの外にはめったに出ないのでより安い価格の方が魅力があるという人も多い。大手のプロバイダは誰にも何でも提供することで巨獣になった。隙間は、恐竜がその足元を毛皮に覆われた哺乳動物が走り回っている頃、やってくる隕石を無視した時に出現した。

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Time Warner、iPad にケーブルテレビを少しだけ

  文: Michael E. Cohen <[email protected]>
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

iPad 2 リリースの煙と輝きに隠されてしまったが、メディア巨人である Time Warner が無料の iPad アプリをリリースした。これは TWCable TV とよばれ、現在の Time Warner ケーブルの契約者を対象としたものである。オリジナルの iPad とそのいかした弟分のどちらともコンパチで、このアプリは一連の Time Warner ケーブルチャネルをこの魔法のタブレットの指紋のつかないスクリーンへ提供する。その通り、これはあなたの iPad のための生のケーブルテレビなのである。

アプリの動作 -- このアプリはケーブルテレビと同様に使い易いことを意図されているが、ひょっとするともっと使い易いかもしれない。このアプリを一旦設定しさえすれば、後はそれを開いて、チャネルをタップ、そして見るだけである。チャネル選択パレットは表示の左側に現れる (そして横位置では常時表示される)。スクリーンのどの場所でもタップすることで、このチャネルパレットを容易に出したり隠したり出来る。もしテレビのリモコンの Back 或いは Jump ボタンを使う様に二つのチャネル間の切り替えゲームをしたいのなら、アプリの Channel History ボタンをタップすると最近見たチャネルのリストが表示されるので、そこで見たいチャネルをタップすればよい。もしこのアプリを閉じ後で再度開くと、ちょうどテレビの様に前に見ていたチャネルをストリームし始める。

アプリの機能に関してはこれが全てである。これは生のテレビを再生しチャネルを切り替える以外のことは何もしない。

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設定の問題 -- このアプリで提供されている簡便さは、これを働くする様にするために最初にしなければならない設定の方には残念ながら反映されていない。まず、あなたは Time Warner ケーブルの契約者でありそして Time Warner Internet Service の契約者でもなければならない。更にあなたの Time Warner インターネットサービスが Wi-Fi 経由で使える様になっていなければならない。これらの条件を満たせるのであれば、次に進むことが出来る。

使い始めるには、Time Warner Cable のユーザー名とパスワードをアプリに入力する必要がある。これらを持っていない場合は (私は同社のインターネットサービスを何年も前から使っているが持っていなかった)、新たに作らなければならない。

これらの基本的な認証情報を作成するために、アプリはまずあなたを Time Warner サイトへ誘導するので、そこでユーザー名 (あなたが今現在使っているメールアドレス) とパスワードを選定する。パスワードは最低 8 文字で少なくとも一つの数字を含んでいなければならない。それからあなたが答えを知っているセキュリティ質問を二つ設定し ("あなたの母親の父の最初の名前は?" の様な)、そして最も直近の請求書からユーザーコードとあなたが支払った残高を入力、次に Time Warner があなたに送ってくるメールに答える形でユーザー名を確認する。

私の場合、この申し込みのプロセスは出来の良いクロワッサンよりもパサパサで、そしておいしいというのには程遠かった。最初に、この Time Warner サイトは、私の入れたパスワードを、書かれている要件は全て満たしているのにも拘らず、繰り返し拒否した。全ての必要とされる情報を入れた後、私が受け取った再確認のためのメールには私の申し込みを確認するためのリンクを含んでいた:このリンクはエラーとなって返ってきた。このエラーページには、助けのためには "以下をクリック" と言う指示があったが、クリック出来るリンクは見当たらなかった!しかしながら、この再確認エラーページそのものがどうも間違いだったように見受けられる、と言うのも私の入力したユーザー名とパスワードでアプリは働いたからである。

私の問題は、私が設定を試みたのはこのアプリのリリース最初の日だったことと関係あるのかもしれない。明らかに、このアプリは大変な人気で Time Warner のサイトは初日にダウンし、そしてまた同社は提供するチャネル数を一時的に約束の 30 からおよそその半分に切り下げねばならなかった。しかしながら、私がこの記事を書いている時点では、28 チャネルがリストされているのが見える。

制限 -- このアプリは、今では私の設定も完了しているが、極めて良く働く。しかし制限もある。

チャネル切り替え以外は他には何も見るためのコントロールはないことはさて置いても (例えば、一時停止もない、AirPlay 能力もない、スクリーン上での音量調節もない、ペアレンタルコントロールもない)、チャネル選択も自由度が少ない:提供されているチャネルはベーシックチャネルだけである。あなたが契約しているプレミアムサービスのどれも見ることが出来ないし、あなたのケーブル契約に含まれる地元の放送局のどれをも見ることが出来ない。私の理解では、これらの制限の一つの理由は、Time Warner が持つそのパートナーとのライセンス契約から来ているという。

更に、このアプリは Wi-Fi 上でしか、しかも自分の家でしか働かない。私が旅に出たとして、私がたまたま Time Warner のケーブルとインターネットサービスの契約をしている地域にいて、そしてその地域で通じるログイン認証を持っていない限り、使うことは出来ない。勿論、そうなる確率は極めて小さい。

考察 -- このアプリは、我々が知っている様なテレビの終わりでは決してない。これが課している制限は大きく、そして提供している機能も低い。これが実際に提供しているのはポータブルのテレビスクリーンで、家中を持ち運んで契約しているテレビチャネルの一部を見ることが出来るというものである。Time Warner は必要最小限のケーブルテレビのアプリを送り出すのに懸命の努力をしてきた。

一方では、私は失望しそして馬鹿にされた感じを持っている:私は、ケーブルとインターネットのサービスのためかなりの出費を Time Warner にしているのに、このアプリが課している制限のお蔭で、私のサービス契約からのボーナスと言うよりはむしろ金持ちだがケチな叔父から私の方に投げ与えられたしみったれの小銭の様にすら感じてしまう。

他方では、私はいつでも手元における高品位のスクリーンを持った極めて持ち運びし易いテレビを手にしたような感じがする。私は、どのテレビでもそうだが、他のことをしている間もつけっぱなしにしておくことが多い (例えばこの記事を書いている時の様に)、そしてその時に映っているチャネルにはどんな時でも見る価値があるものがあるものである。

上記した様に、生のケーブルテレビアプリにあったらいいのにと思われるものは沢山ある:

TWCable TV は必要最小限のそのまた最低限のケーブルテレビアプリではあるが、現状ではこれでも足りると言えるかもしれない。私はもっと欲しい、そんな日がいつか来るかもしれない。でも、息を殺してその日を待とうとは思わない。

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Joe Kissell、電子ブックを切り刻んで Twitter へ

  文: Joe Kissell <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

いつも TidBITS を読んでくださっている皆さんなら、きっと私の電子ブック "Take Control of Your Paperless Office" のことをご存じだろう。この本は 2010 年 11 月に出版された。この電子ブックで私が語ったことの中に、紙の書類をスキャンして元の本はリサイクルに出すかシュレッダーにかけるかしよう、という話があった。でも、_電子ブック_ をシュレッダーにかけたいならば、どうすればよいのか? 答は簡単だ。140 文字ごとに切り刻んで、次々と Twitter に放り込んでやればよいのだ! そこで、私はまさにそれを実行してみることにした。

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Adam と Tonya と私がこのアイデアを思い付いたのは数週間前のこと、三人で楽しく話していて、Take Control 電子ブックについてもっと広く知ってもらうためにはどうすればいいか、という話題になった時だった。このような実験をするということは、つまり本の内容全文を無料で提供することを意味していた(もちろんそれはあなたが 本気で 全部を Twitter で読破する気があればの話だが)けれど、結局私たちは、このプロジェクトによって電子ブックに興味を持った人たちならば一冊買ってみようかという気になることもあるのではないか、きちんとした本の形の方が遥かに読みやすいのだから、そして将来のアップグレードにもアクセスしてもらえるようになるのではないか、という意見に行き着いた。さらに魅力を付加するために、Take Control では現在、 この本を Twitter でフォローしている人すべてに対して 30 パーセント割引で提供している!

そういうわけで、実際の仕組みは次の通りだ。2011 年 3 月 21 日、太平洋時間で午前 9 時、東部時間で正午をスタート時刻として、この本 "Take Control of Your Paperless Office" の内容が (およそ) 140 文字ごとに切り分けられて、Twitter アカウント @zapmypaperに tweet される。15 分ごとに一回の頻度と決めたので、118 ページの本全体が tweet され終わるまでに 17 日間かかる予定だ。時折、私はメッセージを差し挟んで、フルの電子ブックを購入する方法や、私の Twitter アカウント (@joekissell) をフォローする勧めや、その他いろいろなヒントなどを入れるつもりだ。本の内容と区別するために、そのような挿入メッセージには冒頭に == を付ける。例えばこんな具合だ:

== Tip: Support author Joe Kissell's baguette and cheese habit. Buy this ebook at http://bit.ly/h2mPrl[== チーズ乗せバゲットが大好きな著者 Joe Kissell に援助の手を! 電子ブックの購入はこちらから: http://bit.ly/h2mPrl]

理想としては、手動のツイートや @返信、リツイートなどを @zapmypaper アカウントから出すのはなるべく差し控えたいと思う。このアカウントのストリームをできるだけクリーンに保って、フォローしやすくするためだ。けれども、何か特別の発表をしたり、その他のメッセージが必要になったりした場合には、その冒頭に必ず == を付けるようにするのでそれで本の内容そのものと区別して頂きたい。

本全体を tweet し終わった後は、この @zapmypaper アカウントをいろいろなニュースやヒント、紙のない仕事場を保つための質問などのために使っていこうと思っているので、フィードをフォローして下さった方々も引き続き紙のない生活のための情報源として活用して頂きたい。

Tweet はスタイル良く -- もしも私が小説その他、ただプレインなテキストだけが含まれる本を tweet しているのだったならば、その手順はずっと単純なものになっていただろう。けれどもこれはどちらかと言えば技術的な話題を扱ったハウツー本のタイプなので、単純に直接テキストのみにはできないさまざまの要素がたくさん含まれている。私が目標としたのは、できる限り元の本の構造を保ちながら、原本への忠実さと Twitter 内における読みやすさとのバランスを取ることだった。

その目標はかなりの程度実現できたと私は思う。ただ、変換には若干の劣化が伴った。つまり、tweet を全部集めればほぼ元の本に近いものが出来上がるだろうが、いくつかの要素(それとごく少量のテキスト)が失われる。好奇心の強い人たち、それに私の責任放棄声明にもかかわらず tweet から本を再構成するスクリプトを書こうとするギークたちも間違いなく出てくるだろうからその人たちのためにも、私がしたことをここにまとめておこう。

文字の書体以外に、Twitter への変換で完全に失われたものもいくつかある:

どうやってこれだけのことを実現したか -- 現実に自分の本を tweet してみようと思い立つ人が多くいるとは思えないが、ひょっとして私がこれをどのようにしてやってのけたのか気になる人もいるかもしれないので、簡単に私の方法を概観してみよう。

まず最初に、私は電子ブックの全テキストを含んだ Word ファイルに編集を加える作業をした。一連の検索・置換の操作によって、表題やサイドバーなどを(さきほど説明したように)プレインテキストで意味のあるフォーマットに変換した。文字の書体に依存したデータがそのファイルに残っていないことを確認してから、それを BBEdit で開き直した。こちらの方が、遥かにパワフルな grep ベースの検索・置換機能を備えているからだ。また、複数種類のテキスト処理操作を組み合わせて一つのコマンドで実行できる Text Factories の助けも借りて、残りの変換作業をすべて完成させることができた。真の段落区切りをすべて段落記号文字 (¶)に変換することで、本全体が一つの長い長い行となった。それから、ウィンドウを 140 文字ごとに折り返すように設定し、さっと目で見てこの自動化操作が見落とした改行に関する問題点がないかチェックした。(そういう個所はかなり多数あった。)すべてが望み通りになったのを確認してから、Text > Add Line Breaks コマンドを走らせて、各行の終わりに改行文字を挿入させた。その結果、本全体が一つのテキストファイルとなり、tweet に適したフォーマット、つまり個々の行が一つの tweet となれる状態となった。最後に、適当な間隔をおいてお知らせのメッセージなどを入れた。

そこから tweet を送信するために、 Python Twitter ラッパーと、それに付随したさまざまのものを私の Mac にインストールした。それから、私はユーザー "cydeweys" の寄稿によるシンプルな tweet_textfile スクリプトを見つけた。このスクリプトは、与えられたテキストファイルから一行一行を取り出して、順番に一行ずつ私の指定した時間間隔で tweet として送信してくれるというものだ。(私は時間間隔を 15 分と指定した。)実際、この tweet_textfile スクリプトはかなり古いもので、今は時代遅れとなった Twitter API を使用していたので、私は OAuth を使ってアップデートしなければならなかったが、スクリプトの基本ロジックは変えないままにした。

スクリプトのテストを走らせていた際、ある朝私は起きて一晩中 tweet が止まっていたことに気付いた。どうやら、Twitter の側が一時的に機能停止していたようで、一つの投稿がこのスクリプトの期待する受信確認を返してくれず、いくらかのエラーチェックは組み込まれていたものの、問題の起こったタイミングが悪くて実際のエラーメッセージが何も発生しなかったらしい。(エラーメッセージさえ返ってくれば、スクリプトが二分間待ってから再度トライしたはずだったのだが。)そのため、その時点でスクリプトがいつまでも停止した状態に陥ってしまったようだ。私としては API との相互作用がエラーに陥るあらゆる可能性を考えてスクリプトにすべての対策を組み込むだけの時間がなかったので、ちょっとずるい手段を考え付いた。それは、launchd を使って定期的に Python スクリプトをつついてみるという方法だ。エレガントなやり方ではないが、ちゃんと動く。

もちろん、ここに書かなかったこともいろいろあった。Twitter アプリケーションを登録したり、必要な API キーやら何やらを取り寄せたり、テストやバグ修正も山のようにしたり、やるべきことはやたらたくさんある。でも、基本的にすべきことといえば、書類をプレインテキストに変換し、140 文字ごとの行に分割し、Python スクリプトを使って tweet を送信する、というだけのことだ。簡単だ。少なくとも楽しくできた。ものすごくギーク風のやり方で。

_注記: _ この記事の大部分は、 私のウェブサイトに掲載した記事からの転載です。その記事は、このプロジェクトを説明するとともに、この電子ブックについて、あるいは Take Control 全般について、馴染みのない方々にももっとよく知ってもらえるための待ち受けページとなれば、という意図で書かれたものです。

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禅と Gmail 技術、第一部: なぜ私は切り替えたか

  文: Adam C. Engst <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

記録のために言っておくと、私が毎日使う電子メールプログラムとして最後に Eudora 6.2.4 を使ってからしばらく時間が経つ。今の私は、既に Google の Gmail に乗り換えている。それを聞いて驚く人もいるかもしれない。私はその昔の 1997 年に "Eudora Visual QuickStart Guide" を執筆したし、長年にわたって声高にこのプログラムを擁護する発言を続けてきたのだから。けれどもその後、Eudora は以前より頻繁にクラッシュするようになり、その過程でメールボックスを壊してしまうことも多くなった。壊れたメールボックスを修理することはできた(2008 年 4 月 4 日の記事“Eudora の壊れたメールボックスを修復する方法”参照)けれど、そのために時間がかかって苛立たしい思いをさせられるのみならず、日々の仕事を進める妨げとなってきたのだ。

このプログラムの動作のやり方が好きだったので、私はできる限り Eudora にしがみついてきた。いろいろ調整できてカスタマイズ可能なところや、プログラムが今何をしているかを明瞭に報告してくれるところ、非常に単刀直入なところが特に気に入っていた。長年にわたって私は他の Mac 用電子メールプログラムの多くを使ってみてそれらに関する記事も書いてきたが、あえて一般論を述べるとすれば、他のものたちはどれも Eudora と同じ理論的基盤から出発していて、ただいろいろの優先順位を変えただけのもののように感じられた。私はすっかり Eudora の考え方に馴染んでいたので、他のプログラムはどれもこれも、出来の悪い物まねのように思えたのだった。

そしてそれこそが、しばらく前に新しい電子メールプログラムを選ぼうという時になって、私が Google の Gmail を選んだ理由だった。当時私の選択肢にのぼったものの中でただ一つ、Gmail のエンジニアたちだけが、電子メールの概念を全体として考え直す決断をし、基本的な前提の多くを振り捨てて、一からデザインをやり直していた。私の感覚では、もしも私が大きなジャンプをするのならば(そして、電子メールは私の最重要のコミュニケーション手段なので、これは私にとって本当の意味で大きなジャンプであった)やはり新しくてより良い作業方法となるものを手に入れたかった。新しいプログラムに合わせて単に古い習慣が修正されたのみで、それでいて Eudora で気に入っていた機能がなくなったことに不満が募る、というのは嫌だった。

Eudora を含め、クラシックな電子メールプログラムは、そのアーキテクチャーのアイデアを 1950 年代の典型的なオフィス環境から取っている。そこでは到着した郵便がすべて一ヵ所に集められ、さまざまのルールに従って振り分けられる。読み終えて、必要ならば返事を書いた後は、また一ヵ所に集められて、階層的ファイリングシステムの中に保管されたり、あるいは捨てられたりする。このやり方は確かに機能的だが、ここ数年来の電子メールプログラムの進歩の多くはただ大量に流入するメールの処理を手軽にできるようにしたり、メッセージの整理を容易にしたり、整理したものをあとで探し出すのが簡単にできるようにしたり、といったことばかりを狙ったものだった。言い替えれば、これらの変更点はすべて、ただ 1950 年代のオフィスの中にロボットを導入して、すべてが高速で動くように改良しただけだった。他方、世の中の側では、お洒落にスーツを着込んだ重役の言葉を秘書たちが口述筆記していた時代に比べて、遥かに進歩を果たしつつある。

Gmail のエンジニアたちは、その代わりに努力の焦点を検索のみに絞った。これこそが遥かに現代的なコンセプトだ。結局のところ、とどまるところを知らない Google の巨大な富は、検索こそが勝利のためのアイデアだということを示唆しているのではないだろうか。検索を中心に据えて、Google の信じられないほど壮大なサーバー・ファームがそれを支えることによって、Gmail では一見シンプルに見えるけれども独立動作の電子メールプログラムにはできなかった、あるいはしようとしなかった種類のことができるようになった。とりわけ、旧来の「フォルダ」という概念を捨てて現代的な「ラベル」という概念で置き換え、メッセージのどのような集まりであってもすべて検索を通して生成させるようにした。

これは余談だが、そこがきちんとできる電子メールプログラムが今のところ Google のみであるという事実に私はひどくがっかりさせられる。現代の Mac ならば、それと同じレベルの機能性を提供できない理由はないと思うのだが。Google Gears を経由すれば Gmail をオフラインで動作させられるという事実を見ても、それは可能なはずだと思わざるを得ない。とは言うものの、私は Gears を使っていない。前回テストした際に動作がひどく不安定だったし、そもそもインターネットへのアクセスができなければ、私は仕事にならない。私の仕事の大部分は、単に電子メールを読んだり書いたりするだけでは済まないものだからだ。

私が Gmail を選んだもう一つの理由は、もちろん私はそのウェブベースのインターフェイスを使いたい(そこにこそあらゆる革新があるのだから)けれども、同時に自分の電子メールに IMAP 経由でアクセスできるようになっているという事実もありがたいと思うからだ。IMAP ならばローカルにバックアップを置いておくことも、また将来他の電子メールプログラムに切り替えたいと思った場合に備えることもできる。(人によっては、どんなコンピュータからでもウェブブラウザで Gmail にアクセスできるという点が大きいこともある。私の場合は、自分のコンピュータ以外を使うことがめったにないので、この点が大きな利点とは言えない。)

私の決断においてさらに大きな意味を持っていたのが、私自身独自のメールサーバを持っているとはいえ、メールは Gmail に転送して細かな運営を Google のエンジニアたちに任せることができるという事実だった。自分自身のメールの管理者として働くことはずっと以前から決して楽な仕事とは言えなかった。スパムへの対処から、数多くのローカルユーザーたちの電子メールアカウントに責任を持つことのストレスまで、多くのことが私の肩にかかっていたからだ。

こうして、以下のようなものが電子メールに対する私の新しい哲学となった。使い始めてみると、それ以前に Eudora を使ってきた時に比べて、ストレスのレベルがぐっと下がったことが実感できた。

Gmail の限界 -- 現在私は Gmail の大ファンだが、Gmail の欠点についてもきちんと認めておくことが重要だと思う。以下に挙げるいずれも、私にとっては些細ないら立ち程度のものだが、そうは思わない人たちもいるだろう。

まず第一に、よくある懸念だが、プライバシー、セキュリティ、広告といった問題がある。Google のプライバシー規約には適切でない方法で情報を共同使用することはないと書かれているが、Google があなたの電子メールすべてを保存しているという事実に変わりはない。(IMAP 電子メールプロバイダはすべてそうだ。)私はずっと以前から、New York Times 紙の第一面に載せられて困るようなことは電子メールに決して書くなという母の助言を守ってきたので、Google が理論的に私の電子メールすべてにアクセス可能だという事実も私には特に気にならない。たとえ Google が何らかの形で私のメールへのアクセスを誰かに販売したとしても、私は別に気を揉んだりしない。もしもそのようなことが起こったとして、それが世に知られれば(Google が世の注目を集めているからには必ず知られることだろう)間違いなく Google に修復不可能なダメージを与えることだろう。

また、自分の電子メールはすべてオンラインにあって、それを保護するものはパスワードのみだ。(だから、良いパスワードを選ぶべきだ!)もしもそれでは十分でないと思うなら、最近 Gmail が二段階認証のオプションを追加している。これは、新しい機器からあなたのアカウントにアクセスがあった場合にパスワードに加えてもう一段階のセキュリティを追加するものだ。良い説明とチュートリアルが Lifehacker にある。ただし注意しておかなければならないが、他のデスクトップ機あるいはウェブアプリケーションから Gmail あるいは他の Google サービスにアクセスしようとしてそちらではまだ二段階認証にアップデートしていない場合には、かなり厄介なことになるかもしれない。

それから広告は? Gmail はすべての電子メールメッセージを解析して、その内容に即した広告をメッセージの右の縁のところに表示する。馬鹿馬鹿しいものから、時には怪しげなものまでいろいろだ。正直言って、私はそういうものにまず気付きもしない。それに、私は Rapportive プラグインをインストールしたので、今は広告は現われない。(2010 年 3 月 27 日の記事“Rapportive プラグインが Gmail の広告を送信者情報で置換え”参照。)同様に、Gmail で気を散らされる Web Clips、つまり受信トレイの一番上のところに表示される小さな領域に、広告が含まれることもある。私は単に Gmail の設定のウェブクリップスクリーンでこの表示をオフにしている。(Gmail のウェブインターフェイスページの一番上にある歯車アイコンをクリックして、出てくるメニューから Mail Settings をクリックすればよい。)

Gmail のウェブインターフェイスは全体としては非常に良いものだが、いくつかの部分でまずいところもある。一番気になるのが、Gmail が時々メッセージの送信や新着メッセージのロードの際に動作が遅くなって、小さな進行中メッセージをじっと待っていなければならないことがある点だ。たいていの場合は大した問題ではないが、メッセージを送ったり新着メッセージを開いたりするのに 5 秒も 10 秒もかかるとやはりイライラさせられる。そういう時にだけ、私はデスクトップアプリケーションだったらよかったのにと思ってしまう。

いや、本気でそう思っているわけではない。Gmail のウェブインターフェイスは単一ウィンドウを前提としてデザインされている。それは一般的には問題とならない。なぜなら、ほとんどの電子メールは他のメッセージと見比べたりする必要もないか、あるいは同じ会話の中で遡ればよいだけだからだ。けれども時として、別の会話の中に出てきたメッセージを参照する必要があった場合は、編集途中のメッセージを別ウィンドウにポップアップさせてから、メインの Gmail ウィンドウに戻り、手早く検索をして、古いメッセージと見比べながら新しいメッセージを書く、という面倒な手間が必要になる。別ウィンドウを作るために Gmail はスクリーン上のコントロールとキーボードショートカットの双方を提供しているけれど、明らかにこれは重要度の低いものとして作られていて、デスクトップアプリケーションでするよりも手間がかかる。

それからもちろん、Apple Mail あるいは他の IMAP クライアントを使ってローカルに自分の電子メールのコピーをダウンロードすることが可能だが、自分のメールのバックアップを持っていたいのならばそれをする必要がある。Google があなたのメールを無くしてしまって二度と取り戻せないという事態を恐れる必然性は何もないが、自分のコントロールの届く範囲にバックアップを持っておくのはいつでも賢明なことだ。

それ以外では、Gmail の問題点のほとんどはその革新的な面と切っても切り離せないものだ。例えば、会話はほとんどの場合素晴らしいものだけれど、時にはそれが妨げになることもある。例を一つ挙げよう。新刊の Take Control 本についての電子メールを発送する度に、Tonya のところには個別に配慮することの必要な電子メールメッセージが多数届く。けれども、新しいメッセージは多くの場合届いたメールへの返信として作りがちなので、彼女にとっては複数メッセージの会話に見えても実際には一つ一つ独立のものとして扱う必要がある状況に直面することがある。そのような場合、会話の中でそのメッセージを扱うのはもともと個別のものである場合よりも複雑なことになる。(Gmail の設定で会話表示を全体でオフにすることも可能だが、それは行き過ぎというものだろう。)

同じように、メーリングリストの中でのスレッドも会話として並べ替えられる。ほとんど常に、これは良いことだ。けれども、そのスレッドに参加した誰かと個人的にメールをやり取りした場合、その個人的メッセージと公開のメッセージが混在することで混乱させられてしまうことがよくある。好きな会話を一つ選んでそれだけを個々のメッセージに爆発させられる機能が Gmail にあれば素敵だろうにと思う。

Gmail が伝統的な電子メールプログラムと競争しようとしない分野もいくつかある。例えば、スパムを判定するフィルタを作ろうという時、grep 機能を使ってテキストのパターンマッチングができるようになれば素敵だ。Gmail ではそれができない。実際、すべての検索は単語単位なので、単語の一部分で検索することがもともとできない。もう一つ不満なのは、好きなヘッダ行を検索することができないことだ。これができるようになれば、例えば外国語のスパムを除去する助けになるだろう。Gmail では From, To, Cc, Bcc, Subject, それに Delivered-To の各行を検索することができ、日付や添付ファイルも検索できる。実際問題としては、私は Gmail の検索における限界が大きな妨げになると感じたことはない。

もしもあなたが膨大な数の電子メールを受け取る人で、多くのメールに大サイズの添付ファイルが付いているならば、Gmail アカウントで得られる 7.5 GB の無料容量では十分でないかもしれない。ただ、年額 $5 で 20 GB ずつ (最大で 16 TB まで) 追加できるので、特に心配することではないだろう。

最後に、ローカルマシン上にある古い電子メールメッセージを Gmail に読み込むのはあまり簡単ではない。Mac 用の Google Email Uploader というものはあるけれど、これは Google Apps 内の Gmail でしか使えず、独立の Gmail アカウントに働かせることはできない。別の方法として、古い電子メールクライアントを IMAP 経由で Gmail に接続し(あるいは古いメールを Apple Mail または Thunderbird に読み込ませればスムーズに IMAP 経由で Gmail に接続できる)それから各メールボックスごとに手でメッセージをコピーするという方法もある。私は Eudora でこの方法を試みてみたが、読み込んだメッセージの日付が元の日付と違うものになってしまった。日付が違えば読み込む意味がないし、大量のメールを一度に読み込ませるのは難しい(タイムアウトしたり転送から漏れるメッセージが出たりする)という話を聞いたこともあった。

状況をよく考えてみた結果、私は古い Eudora メールを読み込ませてもあまり得にならないと判断した。Eudora は今でも私の Mac Pro で Mac OS X 10.6.6 Snow Leopard の下で問題なく起動して動作するので、ずっと古いメッセージを見つけ出す必要に迫られても、ちゃんとそうやって開くことができる。もしも本当に Rosetta が Mac OS X Lion で消滅してしまったならば、その場合は別のプログラムにすべての Eudora メールを読み込ませる必要が生じるかもしれない。何もないところから始めたために、最初の一・二ヵ月は何度か古い Eudora アーカイブを訪れる必要があったし、Gmail に私が最もよくメールする相手の電子メールアドレスを覚えさせるまでにしばらく時間がかかった。それ以外の点では、今回の切り替えは問題なくスムーズにできた。

何よりかにより、Gmail は無料であって、非常に優れたスパムフィルタリングを提供し、他のアカウントから転送されたメールを受けることもでき、POP と IMAP の双方で自分のメールすべてにアクセスできるので、テストしてみるのがとても簡単だ。

さて、このシリーズ記事の次の回では、Gmail が電子メールに対して検索を中心に据えたアプローチを採った結果として電子メールを読むために全く新しいテクニックが可能となった、という点について少し掘り下げて説明してみたい。(記事 "Zen and the Art of Gmail, Part 2: Labels & Filters" 参照。)それから "Zen and the Art of Gmail, Part 3: Gmail Labs" では、Gmail Labs を使って Gmail を拡張したり改善したりするためのさまざまな方法に踏み込もう。最後の "Zen and the Art of Gmail, Part 4: Mailplane" では、Gmail を単なるウェブブラウザのタブの中でなくそれよりずっと心地良く使えるようにする Mac プログラムについて調べることにしよう。

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TidBITS 監視リスト: 注目のアップデート、2011 年 3 月 21 日

  文: TidBITS Staff <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Mac OS X 10.6.7 -- Apple が Mac OS X 10.6.7 をリリースした。Snow Leopard と Snow Leopard Server に関するさまざまのバグを修正するためのものだ。最も重要な点としては、Back to My Mac (どこでも My Mac) 機能の信頼性向上、一部の SMB サーバへのファイル転送時に起きた問題の解決、Mac App Store で報告されていた複数の軽微な問題の修正などがある。前回のアップデート Mac OS X 10.6 を入手していなかった人のために、今回のアップデートには前回の修正もすべて組み込まれている。また、Safari 5.0.4 や、最新の raw 画像互換性アップデートの内容も含まれている。

さらに、セキュリティの修正も数多くのシステムコンポーネントに対して施されており、主なものとしては AirPort、Apache、AppleScript、bzip2、Carbon、ClamAV、フォント処理、HFS、画像処理、Installer、Kerberos、カーネル、Mailman、PHP、Quick Look、QuickTime、Ruby、Samba、Subversion、Terminal などがある。

それから、非常に具体的なバグ修正も数多くあり、主なものとしては ATI グラフィックスを持つ Mac 上で X-Plane 9 がウィンドウのリサイズの際に起こしていた問題点、外部ディスプレイやプロジェクタで輝度の改善、afp:// URL を開く際の問題、などがある。Apple のリリースノートにフルリストがある。

いつもと同じく、Mac OS X 10.6.7 はさまざまの形で出されている。最近リリースされた機種の MacBook Pro に特定したものもある。具体的には,以下のような種類がある:

今回修正された具体的なバグに苦しめられてきた人以外にとっては、今回のアップデートをインストールする意味は主としてセキュリティの修正のためということになる。それはさておき、このアップデートが他に何か問題を引き起こすことがないかどうか、しばらく待ってみるのも意味あることかもしれない。

Mac OS X 10.6.7 へのコメントリンク:

Security Update 2011-001 (Leopard) -- Mac OS X 10.6.7 に施されたセキュリティコンテンツを Mac OS X 10.5 にももたらすために、Apple はセキュリティアップデート 2011-001 を Leopard 用Leopard Server 用にそれぞれリリースした。ただし対処の施された項目の数は Mac OS X 10.6.7 より少なく、主としてオペレーティングシステムの中に含まれるオープンソースのコンポーネントに対するものに焦点が絞られている。主なものとしては、Apache、bzip2、ClamAV、画像処理、Kerberos、Libinfo、libxml、Mailman、PHP、Quick Look、Ruby、X11 などがある。(無料、241.35 MB/473.23 MB)

Security Update 2011-001 (Leopard) へのコメントリンク:

Bento 4.0.2 -- FileMaker が、ヒューマン・フレンドリーな同社のデータベースソフトウェア Bento をアップグレードした。バージョン 4 での新機能は、宛名ラベルや在庫タグ、名札、その他のラベルをこのソフトウェア内部から印刷できるラベルプリント機能だ。また、その他にも新しいプリントオプションが登場し、非常に細かなプリント調整や、新しいプリンタ向けテーマも使えるようになった。さらに、データを含むテンプレートの書き出し (あらかじめデータが入っている状態でデータベースを他の人たちと共有できる) や、場所データのサポート (データが入力された正確な地理的位置を記録できる)、簡単になった日付検索なども新機能だ。フルのリリースノートは FileMaker のウェブサイトにある。続けて出た 4.0.1 および 4.0.2 のリリースはそれぞれいくつかのバグを修正している。(新規購入 $49、アップグレード $29)

Bento 4.0.2 へのコメントリンク:

DEVONthink と DEVONnote 2.0.9 -- DEVONtechnologies が、同社の情報アシスタントプログラム DEVONthinkDEVONnote のすべての版に対し、またもや一連のマイナーアップデートをリリースした。最新版の DEVONthink と DEVONnote では電子メールのアーカイブ機能が大きく改善され、OCR リソースのダウンロード速度も高速化された。また、このソフトウェアでデータベースを改名したり移動したりできる機能も新たに組み込まれ、これはデータベースが開いたままでも実行できる。並べ替え、分類、検索などの機能も改善された。さらに、Install Add-Ons ウィンドウを使ってウィジェットをインストールできる機能も新設された。(DEVONthink Pro Office は新規購入 $149.95、無料アップデート; DEVONthink Professional は新規購入 $79.95、無料アップデート; DEVONthink Personal は新規購入 $49.95、無料アップデート; DEVONnote は新規購入 $24.95、無料アップデート)

DEVONthink と DEVONnote 2.0.9 へのコメントリンク:

Yojimbo 3.0.2 -- Bare Bones Software が同社の情報整理ツール Yojimbo に小さなアップデートをリリースした。新機能はなく、修正がいくつか施されている。Sidekick の書き出し場所設定を読み込む際にクラッシュすることがあった(Sidekick を使っていない人にさえも起こっていた)問題が修正され、iPad 同期で複数の問題があったのも解消された。注意すべきは、iPad 同期をするために iPad 用 Yojimbo のバージョン 1.0.3 が必要となったことだ。これは現在 App Store で入手できる。(新規購入 $38.99、Yojimbo 2.0 かそれ以降のオーナーには無料アップデート、7.2 MB)

Yojimbo 3.0.2 へのコメントリンク:

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ExtraBITS、2011 年 3 月 21 日

  文: TidBITS Staff <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

先週はたくさんのことが起こった。多くの Apple 開発者たちが収益の一部を日本での救援活動のために寄付しようとしているし、かの地では Apple Store の従業員たちが素晴らしい行動をしている。それらを物語る読み物へのリンクがあり、また Sprint が Google Voice を統合するというニュース、iPad 2 をミキサーにかけた Will It Blend? ビデオ (あ痛っ)、Flash にある脆弱性が Excel ファイルを通じて運ばれるという警告、それから Twitter 接続をセキュアにするオプションのニュースもある。

Apple 開発者たちが収益を日本の救援活動に寄付 -- 最近に起こった地震と津波のための日本での救援活動に役立とうと、収益の一部を寄付している開発者たちを称えたい。寄付に参加している開発者たちのリストを Macworld がまとめているが、その多くは期間限定のプログラムなので、素早く行動することが必要だ。

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Sprint、Google Voice 統合で Think Different -- The Washington Post 紙の Rob Pegoraro が、携帯電話キャリアの Sprint がそのほとんどすべてのアカウントで無料の Google Voice サービスを統合させる予定だと伝えている。これにより、Sprint のユーザーは Google Voice のあらゆる恩恵が受けられるようになる。例えば、通話の自動選別、ルールに基づく通話転送、留守番電話の文字転写などが使えるようになる。

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iPad 2: Will It Blend? -- おいおいこんなことをして、結果は分かり切っているじゃないか。でも、Apple が新製品を出す度にそれをミキサーの中に押し込んでみせる Will It Blend? のビデオは、いつ見てもちょっと愉快な気分になれる。

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警告: Excel ファイルが Flash 脆弱性を運ぶ -- Adobe がセキュリティ情報を公開し、現在および過去のバージョンの Adobe Flash Player がすべてのプラットフォームの上で、影響を受けたシステムが攻撃者によって制御されてしまう脆弱性を持っていると発表し、現にこの脆弱性が電子メールに添付の Microsoft Excel (.xls) 書類に埋め込まれた Flash (.swf) ファイルを通じて悪用されているという報告があると述べた。Adobe は今週中に修正を出すと述べているが、それまでは電子メールの中の Excel ファイルには注意しよう。[訳者注: 3 月 21 日付けで、 Adobe Flash Player 10.2.153.1 (Chrome ユーザーは Adobe Flash Player 10.2.154.25) アップデートが出ています。]

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日本の地震で Apple が素晴らしい行動 -- これは東京にある Apple Store の従業員が書いた手紙をブログに公開したものだ。地震のさなかに、日本では数少ない無料 Wi-Fi を提供する場所となっている Apple Store がどのような役割を果たしたか、また Apple がどのように従業員と家族たちを支えたか、を物語る。Apple が会社としてこの種のことにコメントすることはまずないが、さまざまの地位にいる Apple 従業員たちがそれぞれに仕事で要求されている以上の働きをする様は素晴らしい。

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Twitter、常時セキュアのオプションを追加 -- Twitter は、Facebook に倣い、プロフィールの設定に HTTPS を常時使用するオプションを追加した。これにより、同社のウェブサイトにログインした後も、いつも通りに tweet したり読んだりする際に常にセキュア接続が使われるようになる。ログインそのものは以前からセキュアであった。HTTPS を用いることにより、公共のネットワークにいる際に Firesheep その他のソフトウェアを持った第三者があなたの Twitter トークンを傍受することによりアカウント名やパスワードを知る必要なしに人物特定をハイジャックできてしまう危険から身を守ることができる。ログインし、右上にあるあなたの名前をクリックして「設定」を選び、下の方にスクロールすればこのオプションを設定できる個所がある。

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