TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#1079/06-Jun-2011

先週は Memorial Day の休暇を頂いたので、今週は普段の倍量の特大号をお届けする。今週の Worldwide Developer Conference で、Apple からたくさんのキーノート発表があったからだ。Adam が、これらの発表と Apple の公式な数字とが業界におけるこの会社の位置に関して何を意味するかを考察する。また、Mac OS X Lion、iOS 5、それに iCloud について、Apple が明かした内容のあらましを紹介する。(今日はキーボードに向かい続けた長い一日だった。)今週号にはセキュリティ関係のニュースもある。Flash Player に重要なアップデートが出たのでこれはぜひダウンロードすべきだし、また次第に深刻化する MacDefender 問題についても新たな展開があった。最後に、これも見過ごして頂きたくないが、Take Control 電子ブックの重要な新刊書が三冊出た。Joe Kissell の "Take Control of Speeding Up Your Mac" と "Take Control of Troubleshooting Your Mac, Second Edition" それに Michael Cohen の "Take Control of TextExpander" だ。過去二週間の注目すべきソフトウェアリリースは、Growl 1.2.2, Data Rescue 3.2、Logic Pro 9.1.4 と Logic Express 9.1.4、Moneydance 2011、Fantastical 1.0、DEVONthink と DEVONnote 2.1、Sparrow 1.2、それに Adobe Photoshop Lightroom 3.4.1 だ。

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Apple、 WWDC 2011 キーノートで力を誇示

  文: Adam C. Engst <[email protected]>
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

もしコンピュータ業界の将来を担う Apple の能力に依然として残る疑問があるとしたならば、本日の Worldwide Developer Conference キーノートでの三つの壮大な発表で ( そのストリーミングが見られる) 終止符が打たれるべきであろう。二時間にわたって、Apple CEO Steve Jobs と他の Apple 経営陣のチームは Mac OS X Lion, iOS 5, そして同社の新しい iCloud サービスの説明とデモを行った。ここ何年かの間、そして他のどこの会社でも行うであろうという尺度から言っても、これらのプラットフォームのどの一つでも - どれ一つとっても開発者達が革新的な新しいアプリケーションやサービスをその上に作り上げる真のプラットフォームである - 単独で発表されるに十分な価値を持っている。

三つの大きなプラットフォームを発表することで、Apple は三つの全く異なる空間でその力を誇示した:デスクトップコンピューティング、ここでは伝統的に Microsoft の Windows との競争であった;モバイルコンピューティング、ここでは Apple は一方では RIM の BlackBerry がかって保持していた市場の支配力を解体しつつ、Google の Android と戦わなければならない;そしてクラウドコンピューティング、ここでは Apple はようやく開発者が拡張可能なサービスを提供するようになり Google, Yahoo, Facebook 等々からのサービスと競合することとなる。これは素晴らしいし、そして正直言って我々の様に同社の動きを追いかけそしてますます回数も増え中身も大きく変わる変化を理解しようとする者にとっては少々圧迫感を感じさせられる。

しかし将来の製品の発表だけを見て市場での Apple の地位を占う必要は無い、何故ならば我々が Lion を評価できるのは 7月になってからでないと出来ないし、iOS に至ってはそれからさらに数か月待たねばならないからである。同社の習慣にのっとり、WWDC キーノートでは Apple の業績についての多くの統計数字が披露された、そして数字は Apple が最もよく見えるよう注意深く拾われていると思わなければならないが、だからと言ってそれらを信じるべきではないという理由もまた無い。

WWDC 自身もこれらの基準の一つであることを示した - 近年ではこの大会はいつも売り切れとなっており、昨年は 8 日で売り切れていたが、今年は 5200 枚の切符が 2時間でなくなってしまっていた。Jobs は人々を断らねばならなかったことを謝罪し、Apple はもっと多くの人を受け入れたいと思っているが、適切なより大きい会場を見つけられないと語った。この WWDC の人気は、開発者達が Apple のプラットフォームは技術的に面白いというだけでなく事業をそれを基にするだけの価値があるとみているしるしでもあろう。

この点を立証すべく、Apple は iOS App Store には 425,000 程のアップスがあり、そのうち 90,000 は iPad 専用に作られたものだとわざわざ言及していた。アプリのダウンロード数は今や 140 億を超えた。そして更に内情を明かすかのように、Apple は iOS 開発者達に $2.5 billion を超える金額を払い戻したと言った。たとえその払戻金の分配は極端に偏ったものであっても、そして現実はきっとそうであろうと思われるが、これは Apple が殆ど何もないところから創り上げた極めて巨大なビジネスエコシステムと言えるであろう。

しかしながら、Mac App Store に対しては、Apple は全容を示す数字は避け、デスクトップコンピュータのソフトウェアを購入するチャネルとしては Best Buy, Walmart, そして Office Depot を抜いてトップに躍り出たと言った。Apple が代わりに出してきたのは基本的には相対的な数字で、Mac App Store のお蔭で Autodesk の Sketchbook は 1 百万の新たなユーザーを獲得した (前はいくらだった?)、ゲーム出版社の Feral は Mac App Store に来てから総売り上げを倍増させた (いくつから?)、そして Pixelmator はその売り上げを 4 倍にする中で最初の 20日間で $1 million を売り上げたと語った。

同様に、iBookstore に対しては、Apple は 大手の出版社 6 社が参加を表明しそして顧客のダウンロードは 130 百万冊に達したという事実を誇示しただけであった。Apple の好みは販売台数や売上高を謳いあげることであることであり、ダウンロード数というのは多くは無料のタイトルである可能性もあるので、このことは私の目から見ると (そしてこれは Take Control での我々の iBookstore 経験とも合致している)、iBookstore は真に驚愕すべき販売には到達していないと言うことであろう。これはお気の毒としか言いようがない、とりわけ今や Kindle フォーマットの本が印刷本よりも売れているという最近の Amazon の発表と較べると尚更である。我々の感覚では電子本は最近曲がり角を抜け、読者の期待も広がっている。

勿論 iBookstore や Mac App Store と言ったより小さなビジネスもあるが、 大物は何と言っても iTunes Music Store であり、これは今や 18 百万の曲を提供しそして創設以来 150 億曲を売った。iTunes は世界でも断トツの最大手の音楽販売者である。

Apple は未だ統合問題を解決しようとしている所だが - 例えば、同社は今日になって Mac 上の iTunes で iBookstore からの購入を可能にしたばかりだし、そして Apple からの Mac アプリケーションで未だ EPUB ファイルを読むこともできないが - Apple の成功の理由の一部は 225 百万にも及ぶ iTunes アカウント (或いは Apple ID) に根ざしていて、これを使えば Apple の色々な店のどこからでも購入が出来る。小売りの関係を管理する再販店を通さずに直接購入してくれる顧客をこれ程多く持っている企業は殆どない。

もし Apple がもはやあのキュートな Macintosh コンピュータを作るコンピュータだけの会社では無いことに少しでも疑問があるなら、Apple は 200 百万台を超す iOS 機器を販売し、そのうち 25 百万台は iPad であるとの発表はどうであろうか。Apple が以前発表したのは、iPad は 2010年の 9カ月で 15 百万台売れたということだったので、2011年の最初の 6カ月で更に 10 百万台の iPad を売ったことになる。2011年の初期には iPad 2 を待つ買い控えで販売の落ち込みがあったにも拘らずである。

しかし Mac を軽んじてはいけない;現在世界中には 54 百万の現役の Mac ユーザーがいて、そして Apple は毎四半期に 3 から 4 百万台の Mac を売っている。Apple によると、Mac の市場は前の四半期に前年より 28% 拡大したが、PC 市場は同じ期間に 1% 縮小したという。Mac の初期の時代から我々は多くの時間を費やしてきたが、ラップトップがデスクトップよりも売れるという傾向はますます顕著になってきていて、MacBook, MacBook Air, そして MacBook Pro モデルは全ての Mac 販売の実に四分の三 (73%) を占め、Mac mini, iMac, そして Mac Pro は 27% を占めるに過ぎない。

前にも言ったが、Apple は都合の悪い数字は隠す傾向にあるので、Apple の殆ど無視されたソーシャルネットワーキングサービスである Ping の現状については何も述べられていないし、そして MobileMe について Jobs からはいささか驚きのさげすみの発言もあったが、何人のユーザーがいるのかについては一切言及していない。だからと言って驚くべきではない - 詰まる所これは Apple のパーティであり、自らのパレードに自ら雨を降らせることはしないであろうし、このパレードも刻々と大きくなりそしてより印象深くなっている。

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新刊 Take Control 電子ブックで Mac を高速化し問題を解決

  文: Adam C. Engst <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

例えば、テレビ番組 "House" に登場する Dr. Gregory House が、単に頭の切れる診断医であるだけでなく、好感の持てる雄弁な男でもあり、夜はフィットネストレーナーとして働いていたと想像してみよう。そんな人物像の現実世界での Mac エキスパート版が具現化したとしたら、それこそまさに私たちチームの一員、Joe Kissell に他ならない。今回、彼は「Mac フィットネス三部作」の第三作となる電子ブック、196 ページから成る "Take Control of Speeding Up Your Mac" を完成させたところで、最近リリースされた "Take Control of Troubleshooting Your Mac, Second Edition" と、先月リリースされた "Take Control of Maintaining Your Mac, Second Edition" と並び三部作が揃った。

"Take Control of Speeding Up Your Mac" は、あなたの Mac のアルミニウム製ケースの内側奥深くに分け入って、以前はスピーディーであった Mac がいつの間にかその速度を鈍らせてしまった原因が何かについて、秘密を明かすとともに、誤った俗説を払拭する。Joe があなたのガイドとなって、さまざまのコンポーネントで Mac のパフォーマンスに影響を与えるものたちを一つ一つ紹介して行く。RAM の役割、あなたのハードディスクが担う任務、あなたのネットワーク接続、あなたが走らせているソフトウェア、そういったものたちについて解説するとともに、それらの一つ一つをどのように診断し、Mac が最高の効率で走ることができるようにそれらを調整するための方法も説明する。

それとともに、Joe はマシンの動作を遅くする原因と言われることの多かったいくつかの誤った考えについても説明する。ハードディスクをデフラグ(最適化)すれば Mac が速く走るようになるだろうか?(たいていのユーザーでは、そうはならないだろう。)アクセス権の修復はどうか?(いや、これは他の問題を解消するかもしれないが、マシンの動作速度とは無関係だ。)キャッシュのクリアはどうか?(いや全然。多くの場合、キャッシュがあれば Mac の動作を高速化する要因となり得る。)

いろんな噂やデマ話に依存するのでなく、"Take Control of Speeding Up Your Mac" はあなたが科学的な目で Mac を調べることによって、パフォーマンスを遅くしている原因を見つけ出すとともに、当て推量に頼らずそれを解消できる方法を示してくれる。そのための手順の一つ一つごとに、あなたは実際に何が起こっているのかを調べ、どんな変更を加えればどんな効果があるのかを実地に学ぶことができる。

率直に言って、"Take Control of Speeding Up Your Mac" は私たちがこれまでに出版した中で最も有益な本だと言っても過言でないかもしれない。

でも、速度の問題以外にも他の問題があなたの Mac に起こっていたならば、どうすべきだろうか? そこで役立つのが、最近リリースされた Joe の "Take Control of Troubleshooting Your Mac" 第二版だ。110 ページから成るこの電子ブックは、基本的な 17 種類のトラブルシューティング手順を解説するとともに、よくある 15 種類の問題の解決方法を示している。また、あまり一般的でない問題についても、それらを解決するために必要となる知識を提供する。さまざまの機種の Mac と、さまざまの Mac OS X リリース (10.4 Tiger まで遡る) をカバーするとともに、10.7 Lion についてもいくらかのプレビュー情報に触れている。あなたの Mac の挙動がおかしくなれば、まず参照すべき場所が "Take Control of Troubleshooting Your Mac, Second Edition" だ。

もちろん、問題なんか一つも起こらないに越したことはない。そのためにも大切なのが、定期的なメンテナンスだ。103 ページから成る "Take Control of Maintaining Your Mac, Second Edition" で、Joe はあなたが Mac をスムーズに走らせ続けるために何をすべきかについて常識的なアプローチを語る。毎日、毎週、毎月、毎年、それぞれどんなことをすべきか、Mac OS X のアップデートに備えるにはどうするか、あなたの Mac の健全性をモニターして問題の兆候を早期に捉えるには何をすべきかを説明する。

$15 の "Take Control of Speeding Up Your Mac" と $10 の "Take Control of Troubleshooting Your Mac, Second Edition" を一緒に購入すれば 20 パーセント割引になるし、さらに $10 の "Take Control of Maintaining Your Mac, Second Edition" も加えれば三冊合計で 30 パーセント割引になる。(それぞれの本のページの左側にバンドル割引へのリンクがある。)もしもあなたの Mac の動作が遅かったり調子が悪かったりすれば、これらの電子ブックがドクターの処方通りの解決を提供してくれるかもしれない。

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"Take Control of TextExpander" でタイプ量は少なく結果は多く

  文: TidBITS Staff <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

道案内、使用説明、URL、情報請求、その他さまざまのことで、同じ文章を何度も何度も、電子メールメッセージやその他の書類にタイプしなければならないことがある。George Harrison が "A Hard Day's Night" で印象深く語ったように、それは「うんざりだ。誰でも知ってるうんざりだ。」けれども、繰り返しのストレスで物理的にも精神的にも追い込まれずに済む方法がある。Smile の製品、TextExpander だ。この製品で特に新しく変わったことはないが、新しいのは Michael E. Cohen の "Take Control of TextExpander だ。この $10 の電子ブックは、TextExpander の手引書となり、このソフトウェアにできることの数々を説明するとともに、あなたがそれらを使いこなす方法も示してくれる。

Michael はまず基本的な説明からスタートする。Mac OS X 10.6 Snow Leopard で TextExpander 3 を使ってテキストの「スニペット」(例えばあなたの住所) を作成し、短い略語 (例えば addd) をタイプするだけでほとんどあらゆるアプリケーションの中でそのスニペットが自動的に挿入されるようにするやり方を紹介する。次に、こうした TextExpander の基本的な操作やオプションにあなたが十分慣れたところで、Michael は TextExpander のいろいろな上級オプションの説明に移る。スニペットの作成・挿入・操作のさまざまの方法や、Smile の TextExpander touch アプリを iPad、iPhone、iPod touch で使う方法もある。

例えば、次のようなことのやり方が分かる:

経験を積んだ TextExpander ユーザーでさえ、忘れてしまった、あるいは見過ごしていた機能を思い出すかもしれない。例えば:

この本は、TextExpander のメーカーである Smile 社と共同で制作された。著者の Michael は技術的な質問にも素早い回答を得ることができ、TextExpander ユーザーたちがよく質問するようなことがらにもインサイダーからの識見を知ることができた。

私たちは長年、ごく単純なやり方のみでこうしたテキスト展開ソフトウェアを利用してきたが、この電子ブックのための作業をしつつ、プロジェクトに参加した私たち全員が、以前より効率的にタイプすることができるようになった。編集上のコメントや、本のタイトル、URL、その他さまざまのものを自動展開させられるようになったからだ。もしもあなたがテキストの同じ一塊をいつも決まって打っているなら、それが短い名前のようなものでも、あるいはずっと長い文章でも、TextExpander を使うだけでどれほど物書きの作業が効率的になるか、また、この "Take Control of TextExpander" が TextExpander を最大限に活用するためにどれほど役に立つか、きっとあなたも嬉しい驚きを実感できるようになるだろう。

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Flash Player 10.3.181.22 にアップデートしよう

  文: Adam C. Engst <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

MacDefender への対処だけでは十分でないとでも言うかのように、Adobe から、重要な脆弱性に対処を施した新バージョンの Flash Player がリリースされた。Adobe は次のように述べている:

このユニバーサルクロスサイトスクリプティングの脆弱性(CVE-2011-2107)により、悪意のある Web サイトにユーザーがアクセスした際に、ユーザーになりすまして Web サイトや Web メールプロバイダーにアクションを起こされる可能性があります。この脆弱性を悪用し、メール本文内に組み込まれた悪意のあるリンクをユーザーにクリックさせるという事例が確認されています。

あなたが現在どのバージョンの Flash Player を走らせているかを知るには、Adobe - Flash Player ページを訪れれば、あなたの使っているバージョンと、最新のバージョンとが表示される。もしそれらのバージョン番号が合致しなければ、最新バージョン (現在は 10.3.181.22) を Adobe Flash Player Download ページからダウンロードしよう。

Mac OS X 用 Flash Player の前回のリリース 10.3.181.14 で、Adobe はシステム環境設定パネルを追加し、その中で自動アップデート通知機能を提供した。私たちの推測では、これは将来アップデートが必要になれば Flash Player が通知してくれるということなのだろう。理想的には、Flash Player のアップデートも自動的にしてくれればと思う。

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いずれにしても、自動アップデート通知を利用するため、また既知の脆弱性を除去するためにも、最新版の Flash Player にアップグレードしておくことを強くお勧めする。

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Lion、出荷日と価格と共に詳細が明らかに

  文: TidBITS Staff <[email protected]>
  訳: 柳下 知昭 <tyagishi@gmail.com>

我々は、以前よりアップルから時々提供される比較的精緻な説明でMac OS X 10.7 Lion がどのようになるかについてかなりのことをすでに知っている。(2010 年 10 月 20 日の記事"Apple、Mac OS X Lion をチラッと見せる"と2011 年 2 月 24 日の記事"アップルが Mac OS X Lion についてさらに明らかに"を参照のこと)。しかし、ワールドワイド デベロッパーズ カンファレンスのキーノートの間にアップルは、沢山の情報をステージで紹介し、Lion の新機能として250 件の機能リストを公表した。

Lion は、Mac OS X をリフレッシュするために、iOS のまねをするだけのものではない。デスクトップオペレーティングシステムについて、覚えたくないユーザーや、使いこなすことができないユーザーからオペレーシングシステムのもっとも混乱させるような部分を隠すことができる覆いも備えている。我々は、そのどちらのカテゴリの人達もよく知っている。

Lion についてのわかっている機能のうちで、これまで公開されていなかった機能について見ていこう。以前の記事で紹介したことと同じものについて着目することを避けるように努力するが、いくつかの機能については、要約になるだろう。

誰のために、いつ -- Lion は、250 の新機能を持つと豪語されているが、アップルは、新規マック購入者を獲得し、ベテランのマックユーザーの体験を改善することに関する少数の重要なカテゴリに焦点をあてている。Phil Schiller は、世界中で、5400 万人のアクティブな マックユーザーがいて、そのユーザーが、アップルの非常に多くの顧客基盤となっているとした。

(公平のために言っておくと、250 の"新しい"機能のいくつかは、すでに何らかの形で Snow Leopard で使用可能となっている。例えば、FaceTime は、7 つの機能として、Mac App Store は、4 つカウントされている。また、アップルは、新しい AirDrop で転送をキャンセルできるというようなことも"機能"としてカウントすることで、すこし増やしている。)

Schiller 氏は、プレゼンテーションの中で、Mac の売上は、おおきくラップトップに傾いていて、73% の Mac が、ラップトップとして販売されているとしている。ラップトップ Mac のオーナーたちは、すでにジェスチャーを使用しやすいトラックパッドを持っているし、デスクトップのオーナーたちも Magic Trackpad を購入することで、新機能のメリットを最大限に享受できる。

Lion は、7 月に低価格、$29.99 という低価格で出荷される、これは、Snow Leopard と同じ価格であるが、Lion は、Leopard に対して充分に新しいバージョンと考えられる。アップルは、Snow Leopard までは、$129 という価格で 新しい OS をリリースしてきている。同一の iTunes Store アカウントを使用しているならば、何台のコンピュータで使用しても追加で支払う必要はない。アップルは、これまで 5 台のファミリーパックという別料金を適用してきていたため、これは大きな変更である。

これまでのリリースとは異なり、現在のところアップルは、Lion は Mac App Store からのダウンロードでのみ入手できるとしている。我々は、それが完全に真実だとは信じられないが、すぐにさらなる詳細を知ることができるだろう。アップルは、Lion Server は、アドオンとして Store から入手できるとしている、価格は、$49.99 である。

心配ない、アプリは友達 -- マルチタッチジェスチャー、フルスクリーンアプリケーション、Mission Control、LaunchPad のすべては、iOS の知見を Lion に持ち込むことを目的としている。ジェスチャーは、Mac OS X の前回のリリースにも含まれていたが、Lion では、運動量をベースにしたスクロール、マルチタッチタップ、ピンチによるズームや拡大が追加されている。

フルスクリーンモードは、アプリの書き直しを必要とする。スクロールバーは、隠され、iPad の大きなスクリーンのようにスクリーンに没入できるようになる。アップルは、自身のアプリの多くをすでに書き直し、フルスクリーンの利点を享受できるようにしていて、そこには、Safari、Mail、iCal、プレビュー、Photo Booth、iPhoto、iMovie、iTunes が含まれている。

Mission Control は、基本的に Spaces と Expose のマッシュアップであり、デスクトップアプリやウィンドウで動作しているすべてについて俯瞰できるようにする。この機能は、単純さを好むユーザーには複雑すぎるものとなるだろうが、沢山のウィンドウやアプリを開いているときの "車の鍵をどこに置いたっけ?" という質問に対する回答となるであろう。

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最後に、Launchpad は、iOS でのホームスクリーンのようにすべてのアプリケーションを表示するアプリケーションランチャである;シングルクリックでアプリを起動できる。Launchpad により、なぜアクションを実行するのにダブルクリックしなければならないかについて説明する必要がなくなる。もちろん、あなた(親戚のどなたかを想像して欲しい)は、それでも Launchpad でダブルクリックしてしまうことだろう。我々としては、Apple がそのことも考慮に入れてくれることを願いたい。

取り戻す -- 機能の 2 つめのグループは、変更点に気付かない新規ユーザーとドキュメントをあまりに頻繁に失くしてしまうと不満をもらすベテランの両方を明かに、ターゲットにしている。Resume, Auto Save, Versions では、ソフトウェアを終了(もしくはクラッシュ)し再起動しても、作業中のファイルを再度開く必要はないし、特に指定をしなくとも、作業中のデータのセーブとバックアップをしてくれる。これは、BBEdit が、何年もの間バックグラウンドで実行してきてくれたことであり、Adobe の InDesign にも同様の機能がある。

Resume は、単純にアプリケーションの状態を保存する、そのためプログラムに戻った時に、残してきた状態そっくりそのままの状態に戻る; アップルは、iOS 開発者たちに iOS 4 のリリース前から 復帰をサポートするように推奨しているし、Lion でも、"clean start" を選択しないかぎり、残してきたそのままの状態に戻してくれる。

Auto Save と Versions は、ファイルの保存とバージョン管理を不要にしてくれる。Auto Save は、作業中継続的にセーブしてくれる、必要ならば、変更点を UNDO することもできるし、最後にオープンされた時のドキュメントの状態まで戻ることもできる。Versions は、1 時間毎に新しいスナップショットを保存し、Time Machine の様な過去のバージョンのビューを提供してくれて、現在のものとの差分を見ることができ、過去のものとの間でコピーペーストまですることができる。

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開発者は、これらの機能を明示的にサポートする必要があり、そのことは、我々にとって 2 つのタイプのソフトウェアがあることを意味する - 手動でセーブする必要があるものと、そうでないものである。このことは、混乱させることになるだろう。

ドラッグと放り投げ -- ファイル共有は、どのようにしていてもつねに苦痛だった、社内ネットワークを使用していないユーザーにとっては、特にそうだった。同一ローカルネットワーク上の Mac 間でファイルを転送する最も簡単な策は、サードパーティアプリケーションである DropCopyであり、それは、ファイルをドロップすれば他の Mac へとファイルを送付してくれる仮想の穴を作ってくれる。AirDrop は、同様の機能を Lion ユーザーに提供するが、多くの制限も存在する。

AirDrop では、Finder ウィンドウのサイドバーにあるアイコンをクリックするとあなたの Mac と AirDrop が有効化された他の Mac が現れる。その後、ファイルを他のコンピュータのアイコンへドラッグし、他の人がファイルを受け取るためにクリックすると、セキュアな転送が開始される。Mac OS X アカウントが Apple ID と関連付けられている(Lion の新しいオプション)場合は、受信側がその人を認証するために、Lion は、送信側の Apple ID を使用する、

AirDrop は、Wi-Fi を必要とするが、ただ Wi-Fi であればよいわけではない。比較的最近の Wi-Fi チップセットを備えた Mac が必要となる、どのモデルがこの条件を満足するかはまだ調べなければいけない。同僚がイーサネットでは、機能しないことに驚いていたので、再度繰り返しておく。AirDrop には、Wi-Fi が必要である。

アップルは、特別なピア to ピア Wi-Fi モードを使用しているため、AirDrop を機能させるために Wi-Fi ネットワークに接続する必要はない。それは、設定が不要な Bluetooth ファイル転送のようなものである。

他機能について -- Mail にも 2 カラムもしくは 3 カラムのビューが使える新しいインターフェースの素敵なアップグレードが行われた、それは iPad のMail から取り込んだものである。Gmail がずっと前から採用しているような会話ビューは、関連するメッセージをスレッドにまとめ、同じやりとりの中では他のメッセージから引用された引用符で囲まれた内容は、自動で削除される。Mail には、他にも多くの改良がなされている。

アップルは、キーノートで FileVault 2 について触れなかったが、それは、ディスク全体を暗号化するための重要な安全に関わる拡張である。起動時のパスワードなしでは、ディスクには、でたらめな価値のないデータが詰まっているように見える。再フォーマットやディスクの再設定なしに、FileVault 2 は使うことができる。インスタントワイプは、暗号化キーを削除し、データを回復不能にし、万が一あなたのあとに NSA がきても良いように追加のセキュリティとしてドライブのデータに対して細部にわたる上書きを続けて行なう。

Snow Leopard は、いくつかのリモートのネットワーク要求 - 画面共有のような - に答えるために、要求による起動機能を追加して、イーサネットや Wi-Fi (2007 年以降のモデル)越しに Mac OS X の側面をつついて、起動することができたが、Lion は新しいオプションを追加する。省電力での起動は、ファイル共有やバックアップなどの (Apple TV 2 とのiTunes Home Sharing のような) 操作が接続されているモニターや USB デバイスをアクティブにすることなく行なえる。(どうか、本物の雪豹やライオンをつつかないでもらいたい。)

画面共有のその他の改善項目として、リモートアクセスでの Fast-User Switching のような機能を追加した。もし遠くからコンピュータの画面を制御したいときには、アクティブなアカウントでないアカウントを使用してログインでき、リモートマシンを使用しているユーザーは、あなたがバックグラウンドで別のユーザーとしてセッションを使用している間も作業を続けることができる。

Time Machine は、ローカルスナップショットを持てるようになり、普段バックアップに使用しているドライブやネットワークに接続していない時でもバックアップすることができるようになった。このバックアップは、通常のシステムに接続されていない間使用することができ、ネットワークやドライブに接続された時には、統合されたビューで表示される。

私が吠えるのを聞いて -- たくさんの説明べきことがある、新しいものも古いものも。Lion は、Mac OS X についての新しい考え方をたくさん提示し、それについて学ぶほどに、改めて新しい Mac ユーザーがどのようにプラットフォームにアプローチするかについて緻密に見ることができる。

さらに興味深いことは、既存の Mac ユーザーが Lion の新しい機能をどうやって慣れていくかについて見ることであろう - たとえ新しいユーザーや、iOS のみに慣れているユーザーには新しいアプローチの方が良かったとしても、自分には新しい作業方法などいらない、と思っている人も多いだろう。しかし、いつものことであるが、たとえそれらのすべてが等しく魅力的ではないとしても、それら機能の誘惑に抵抗することは難しいだろう。

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iOS 5 がへその緒を切り、多くのイライラに対処

  文: Michael E. Cohen <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

今日の WWDC での Apple キーノートプレゼンテーションでは、パラダイムの変化を内包した発表があまりにも多かったので、その発表を聞いたか、見たか、あるいはライブブログでフォローしたかした私たちはほとんど全員、いまだに頭がクラクラしている。Apple は、この「秋」出荷予定 (おそらく 2011 年の 9 月か 10 月と思われる) の iOS 5 が 200 件以上の新機能を提供すると発表し、そのうち 10 件を今回の WWDC キーノートで紹介した。だがその 10 件の中でも iOS プラットフォーム全体に対して最も根本的な変更を及ぼすものは一つ、それは、iOS 5 が (USB の) へその緒を切り、iOS 機器が完全に Mac や PC と独立して動作することができるようにした点だ。

例えばネットブックのような独立の機器に代えて iPad を使う際に最も大きな不満の原因となるものの一つは、iPad が単独では動作できないということだった。iPad をセットアップしたり、そこに情報を読み込ませたり、万一の時のためにバックアップしたりするために、iTunes の走る Mac あるいは PC が要る。だから、例えばコンピュータに詳しくない年配の親戚に iPad を贈りたいと思っても、コンピュータのない家でそれをどうやってセットアップし維持して行くのかという問題が障壁となるのだった。また、Linux のみに依存している人たちや、Windows で絶対に iTunes など走らせたくないという人たちの数も決して無視できないが、今回のことでそういう人たちにも iPad の市場を拡張して行くことが可能となるだろう。

そうした問題がすべて、今日のキーノートの途中、ケーブルがはさみで切られその脇に「PC Free」(PC は不要) と書かれているスライドが大写しになった瞬間、見事に消え去った。iOS 5 以降、iOS 機器をアクティベートする際にもはや Mac や PC への接続は必要でなくなる。その代わり、必要なのは Wi-Fi または 3G の接続を使って Apple のサーバと連絡を取ることだけだ。

また、iOS 機器がソフトウェアアップデートを得る際にもコンピュータへの接続は必要でない。こちらも、必要となる度にクラウドから「救いの神の手」が降臨してくることになる。注意しておくべきは、iOS のアップデートが従来の形とは違ったものとなることだ。これまでは、iOS 機器に対するアップデート配布には iOS が 丸ごと 含まれ、そのためサイズも数百メガバイト以上に達することが多かった。けれども iOS 5 に対するアップデートは「差分」のアップデートとなり、iOS の中でアップデートされた部分のみがダウンロードされるようになる。そのためアップデートの処理がずっと高速になるのみならず転送されるデータ量も少なくなり、これはバンド幅の制限に苦しむ人たちにとっては朗報だろう。

詳細はほとんど明かされなかったが、Apple は iOS に Wi-Fi Sync オプションが提供され、コンピュータ上の iTunes と iOS 5 機器との間でメディアの移動ができると述べた。これはものすごく大きなことだ。なぜなら、iOS 機器をコンピュータから充電せずに壁のコンセントから電源アダプタを通じて充電するようにしたとしても、今よりもずっと手軽に機器を同期させておくことができるようになるからだ。

もちろん、へその緒を切ることは、単に iOS のアクティベーションやアップデートのみに関するものではない。iOS の使用に際してこれまでコンピュータへの接続を要していた部分がいくつかあった。最も分かりやすいものの一つは カレンダー アプリだ。これまで、このアプリでユーザーがカレンダーを作成することは許されず、コンピュータ上あるいは MobileMe で作成しておいたカレンダーを iOS で利用することができるだけであった。けれども、iOS 5 における カレンダー アプリならば、iOS 機器上で新規にカレンダーを作成することができる。他にも、コンピュータ中心の制限事項が iOS 5 で同様に消え去ることがいろいろと期待される。PC Free の iOS という考え方は、PC 以後時代の幕開け期の終わりを告げている。つまり、Apple のモバイル機器たちは独立して、コンピューティング・コミュニティの一人前のメンバーとして立ち上がろうとしているのだ。

コンピュータを要する iOS から大きく踏み出したこと以外にも、iOS 5 には他の機能や拡張された点が数多くある。実際、私の印象では Apple が iOS に寄せられた苦情の膨大なリストを作り、そこからできる限り多くの項目を取り除こうと仕事に取り掛かったのではないかという感じさえする。

改善点や拡張点の主なものを手早くまとめてみよう。通知の方法が完全に改訂され、通知の履歴を提供する(新しい通知が古い通知を置き換えたりしない)とともに、作業の邪魔にならないようデザインし直された。通知は画面の上部に表示されるので、通知が来ても作業中の仕事をそのまま続けることができ、通知を処理したい時に処理することができる。ロック画面にも通知は表示される。メッセージングは従来 Apple 製のものでは iPhone 上の Messages アプリのみが使えたが、iPod touch や iPad でも使えるようになり、新たに加わる iMessage アプリがメッセージのレシート、タイピング表示、機器間の同期などを提供する。iPhone で会話を始め、iPad でその会話を続けることもできる。モバイル Safari にも多数の改善が施され、タブブラウズ、Reader、(Mac OS X Lion にも搭載される) Reading Listなどが装備される。Reading List 機能を使えばあとで読みたい記事を保存しておくことができるが、これは自分のすべての iOS 機器に同期させることができるので、一つの機器で Reading List を作っておいけばそれが別の機器で読めるようになる。

いや、まだまだ他にもある。iOS 5 には Reminders アプリがあるので、これまで iCal で to-do リストを作っても iOS の カレンダー アプリに出てこないことに不満を持っていたユーザーたちには朗報だろう。さらに、これらのリマインダーは位置情報に対応しているので、あなたがいる場所に応じてリマインダーを出すことができる。例えば、仕事場を出て駐車場から車を出したとたん、ミルクを買って帰るようにと iOS 機器が知らせてくれる、というような使い方ができる。Mail にも多くの改善が施され、電子メールメッセージの中でリッチテキストを使うオプションや、iOS 機器の検索スクリーンからメッセージ内容を検索できる機能も加わる。カメラ アプリにもまた多数の改善が加わり、グリッドラインや、写真の切り取りや回転、カラー処理などの機能が付く。

それでも満足できないって? まだ終わりじゃない。Apple は Twitter アプリを提供するわけではないが、Twitter はどうやら iOS 5 のいたる所に存在することになるようだ。「設定」で Twitter アカウントに一元管理サインオンをしておけば、Apple の提供するアプリの多く、例えば カメラ、連絡先、写真、マップ、YouTube などに Twitter が統合される。また、ゲーム好きのユーザーならば Game Center の新機能、例えば プロフィール、ゲーム推薦、写真、友だちなどが気に入るだろう。そして、Apple は購読モデルを巡る最近の騒ぎにもう片足も突っ込むつもりなのだろうか、Newsstand という新しいアプリを登場させる。このアプリはどうやらホームスクリーンにあるようで、iBooks と同様、定期購読しているものを管理する中心的アプリとなるらしい。例えば、新しい号が配信されれば自動的にダウンロードされる。

最後に、システムワイドの機能にちょっとした素敵な調整がいくつか施される。すべてのアプリで辞書が利用可能になり、異なったタイプの警告に対して異なるパターンのバイブレーションをカスタマイズでき、新しいマルチタスキングジェスチャーや、他のモバイルプラットフォームで親指タイプに慣れたユーザーのためのスプリットキーボードもある。

iOS 5 は今後数ヵ月間以内にリリースされる予定で、iPhone 3GS かそれ以降、第三世代かそれ以降の iPod touch 機器、それからすべての iPad モデルで動作する。Apple は一言も触れなかったが、同時に iPhone 5 もリリースされるというのはかなり有望な予想だと思われる。

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iCloud の出現で、長期予報は嵐を予想

  文: Jeff Carlson <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

今日の Worldwide Developers Conference キーノートの前までは、私たちは Apple が新しい iCloud サービスを発表して、これが MobileMe を補完するか、あるいは MobileMe を置き換えるものになるのだろうと思っていた。けれども今、私たちが理解したのは iCloud がただの新機能というだけでなく、これは私たちがさまざまの Apple 機器の上で自分のデータをやり取りするための新しいプラットフォームであって、これがあればマシン間で「同期」をする必要などすっかり忘れてしまってもよいようになるかもしれない、ということだ。

この iCloud のもたらす嵐は Apple がこの秋 (おそらく 9 月か 10 月) になって iOS 5 をリリースするまで出現しないが、少なくとも iTunes in the Cloud と呼ばれる一つの要素だけは現在既に稼働中だ。iCloud は無料のサービスとなり、MobileMe を置き換える。(移行についてはあとで触れる。)iCloud のベータ版が今日開発者たちに配布されたので、彼らはこのサービスを利用するアプリの準備を始めることができる。

最新流行の用語に馴染みのない方のために説明しておくと、クラウド ("the cloud"、雲) というのは、あなたのコンピュータやスマートフォン、タブレット機などから離れたオンラインの場所に保存されたデータを短く言い表わした言葉だ。例えば Dropbox はあなたのファイルを同社のサーバに保存して、あなたが Dropbox ソフトウェアをインストールしている機器へそれらのファイルをコピーする。(あるいはそれらのデータにアクセスできるアプリのためにその機器へコピーすることもある。)将来の記事で、"the cloud" が何を意味するかについて詳しく書いてみたいと思っている。

iCloud にもそれと同じ原理が当てはまるけれども、Apple がこのサービスを実装しようとしている方法は、あなたが自分のデータをやり取りするやり方を劇的に変更することになるに違いない。楽曲や書類を機器間でコピーするために iPhone、iPad、iPod touch と Mac や PC との間でドラッグしたりする代わりに、すべてのデータが iCloud にコピーされ、それらがあなたのすべての機器へと複製される。写真は、それが iPhoto に保存されようと、iPhone のカメラで撮影されようと、すべて自動的に現われる。Mac 上で Pages 書類に変更を加えれば、その書類を iPad 上の Pages で開いても変更が現われる。Steve Jobs が繰り返し言ったように、iCloud を利用するために「あなたは何も学ぶ必要はない。」

Apple は、iCloud を構成するコンポーネントのいくつかについて発表した。iTunes での楽曲の操作と新しい有料サービス iTunes Match について、カレンダー・連絡先・電子メール・アプリ・本・その他のデータのバックアップについて、写真の保存と共有について、それからアプリの持つ書類の機器間での共有について。

iTunes in the Cloud (雲の中の iTunes) -- 大きな iTunes 音楽ライブラリを持つ人たちは、ストレージ量の限られた iOS 機器への同期の際に選択を迫られることが多かった。どのアルバムなりプレイリストなりを含めるべきか、と。ある曲を聴きたいと思っても、それを同期していなかったならば、どうしようもない。けれどもiTunes in the Cloud 機能があれば、あなたが iTunes Store から購入した音楽はすべて、即時にダウンロードできるようになる。

実際、これは今すぐテストすることができる。iOS 機器上で iTunes アプリを開き、画面の一番下にある Purchased ボタンをタップする。Not On This iPhone (または iPad または iPod touch) ボタンをタップすればアーティストのリストが出るので、アーティスト名をタップすればあなたが持っているけれども現在その機器上にはないアルバムや楽曲が分かる。曲をダウンロードしたければ iCloud ダウンロードボタンをタップすればよい。

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どの機器の上でも音楽を購入すれば最大 10 台の機器に自動的にそれがコピーされるようにできる。(この機能を有効にするには、iOS 機器の Store 設定画面に行き、Music オプションをオンにすればよい。)現在のところこの機能は音楽のみで使え、iTunes Store で購入した映画やテレビ番組には使えない。

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ベータ版の iTunes 10.3 が Mac および Windows 版のアプリケーションにこの機能を追加するが、この記事の執筆時点で、まだ Apple はダウンロードできるようにしていない。[訳者注: iTunes in the Cloud は「米国から順次提供開始」となり、また下記の iTunes Match は「米国のみ」のサービスとのことです。]

iTunes Match -- では、他で購入した音楽、あるいはあなたが CD から自分でリッピングした音楽はどうなるのだろうか? 年額 $24.99 の料金を払えば、iTunes Match がそれらの曲も利用できるようにしてくれる。iTunes があなたのライブラリにある曲のリストをアップロードし(これは現在 iTunes Genius の結果がアップロードされるのと同様だ)それらを Apple の持つ 1,800 万曲のトラックと比較する。その曲を持たない機器上にそのトラックをダウンロードするように指定すれば、Apple はその曲の iTunes Plus 音質版 (256 Kbps、DRM なし) を提供する。たとえあなたが元々持っていたものがより低い音質であったとしても。

Amazon や Google による同種のクラウドサービスと異なり、iTunes Match ではあなたの音楽ライブラリを丸ごとアップロードする必要はなく、ただトラックのリストがアップロードされるだけだ。けれどももしあなたが望めば、マッチしなかった曲をアップロードすることも _可能_ であって、あなたがこっそり録音した珍しい楽曲を好きな時にダウンロードできるようにしておくこともできる。

iTunes Match は、iCloud の全機能と時を同じくして登場することになる。年ごとの購読が切れた場合に何が起こるかははっきりしない。おそらく、あなたがアップロードしておいたファイルは削除され、マッチした曲で他の機器上にあるものには(手動で同期する以外に)アクセスできなくなるのだろう。

雲の中のデータ -- もしもあなたが既存の MobileMe 購読者なら、あなたはずっと以前からイベントや電子メール、連絡先、iBooks タイトルなどでクラウド同期をすることに慣れているだろう。iCloud でも引き続きこうした情報がすべての認証済み機器からワイヤレスで利用できるが、それに加えてそれら以外のタイプのデータを同期する機能もある。

iTunes in the Cloud 機能と同様、App Store から購入したものはすべて、手動でも自動でも、他の機器へダウンロードすることができる。この機能は現在ベータ版として利用可能だ。

Pages、Keynote、Numbers (あるいは iCloud 対応を開発者が組み込んだものならばどんなアプリでも) によって作成された書類については、なかなか興味深いことになっている。iCloud によって、iWork.com で約束されていたものがついに実現し、機器間で書類を共有するために iTunes を通じて同期するという身の毛もよだつような方法をついに捨て去ることができるのかもしれない。キーノートで実演があったように、iPad 上で書類を編集すれば、他の機器上でもその編集が具現化する。だから、仕事場に出かける前にファイルを同期しておくなどという手間をかけずとも、いつでも他の機器あるいはコンピュータでただその書類を開けば、最も新しい編集がちゃんとそこに盛り込まれている。そうは言っても、Apple はまだ詳細情報を明かしていないので、iCloud をただ単に機器同士の間でデータを動かすのみでなく、何人かの人々の共同作業のためにも利用できるようになるのかどうかはまだ分からない。

汎用のデータについては、iCloud は Backup 機能を使って iOS 機器上に保存されている重要な情報に対するオフサイト・バックアップを提供する。iCloud は購入した音楽・アプリ・書籍、カメラロールの中にある写真やビデオ、機器の設定、アプリのデータ、ホームスクリーンとアプリの構成、テキストおよび MMS メッセージ、それから着信音を、自動的にバックアップする。機器をリストアする必要が生じたり、新たに機器を購入したりした場合には、それらのものが iCloud からダウンロードされる。

Photo Sync と Stream -- iCloud には、新しい Photo Stream サービスも含まれる。iPhone で写真を撮影して、それを iPhoto で処理したり iPad 上に表示させたりしたいと思ったことのある人なら、誰もがこれを人生を豊かにしてくれるオプションだと思うのではなかろうか。あるいは、デジタルカメラで写真を撮影して、時間を見つけて iPhoto にアップロードしたけれども、iPhone に同期するのを忘れていた、という経験がある人も多いだろう。そういう人は、きっとそこのところを心得ている。

Photo Stream があれば、一つの機器に写真を追加すれば、それが iPhone の カメラ アプリで撮影したものであろうと、あるいは Mac 上で iPhoto に加えた写真であろうと、Photo Stream が自動的にその写真を iCloud のサーバに (Wi-Fi または Ethernet で) アップロードし、それからその写真をあなたのすべての他の機器に送り返す。そこには第二世代の Apple TV も、iOS の Photos アプリも、Mac 上の iPhoto も、Windows PC 上の Pictures Library も含まれる。iOS 機器上で Photo Stream は最も新しい 1,000 枚までの写真のみを保存する。(Mac や PC 上では保存無制限だ。)iCloud のサーバ上では新しい写真が 30 日間保存される。その後も機器上で写真を保存しておきたければ、機器上にあるアルバムの中へその写真を移動しておけばよい。

MobileMe はどうなる? -- Steve Jobs は、MobileMe がもはやこの先長い命ではないと明確に述べた。いわく、「あなたはいったいなぜ彼らを信じなければならないのかと問うかもしれない。彼らこそ、私に MobileMe を持って来た人たちなのだ。」Apple の Apple の KnowledgeBase 記事によれば、現在 MobileMe を購読している人は 2012 年 6 月 30 日までサービスを利用し続けることができる。アカウント情報を me.com で確認すれば、この契約延長が既に反映されていることが分かるはずだ。

既存の me.com および mac.com 電子メールアドレスはそのまま保たれるし、ファミリーパックの購読者は引き続き新規のファミリーメンバーアカウントの作成もできる。けれども、新たに 60 日間トライアルアカウントを作成したり、個人アカウントをファミリーパックアカウントにアップデートしたりすることは既にできなくなっている。パッケージ版 MobileMe を購入してからまだ一度も起動コードを使っていない場合は、Apple から返金を受けられる

まだ明らかになっていない点は、MobileMe のサービスで直接 iCloud の雲影の下に収まらない部分の運命だ。例えば Back to My Mac (どこでも My Mac) や、Personal Domain といったものだ。Apple が現在発表している情報では、ただ単に「なお、移行に関する詳細や方法については、今秋 iCloud をご利用いただけるようになった時点であらためてお知らせいたします」となっている。

積雲たなびく -- 私たちはずっと以前から、同期というものはうまく実行するのが難しいと言い続けてきた。トラブルに満ちた MobileMe の歴史と、おかしくなることの多いその同期を見てもそれと分かるだろう。けれども、私たちは iCloud に大きな期待を寄せている。明らかに、Apple は同期を十分に解明できたと自信を持っているのであろうし、iCloud がすべての機器を一つに結び付けて、顧客にとってシームレスな、Apple にふさわしい使用体験が実現されることに、大きく賭けているのであろう。

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Apple、次第に深刻化する MacDefender 問題に反応

  文: Adam C. Engst <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

ここ数年で登場した Mac のマルウェアの大多数は、火事というより単なる煙だけのものが多かった。何か新たなマルウェアについてひどく恐ろしげな警告がセキュリティ会社から出されても、数週間も経てばどこにも見当たらなくなっていた。ところが、最近現われたスケアウェア MacDefender は、これはまた MacProtector とか MacSecurity とかいう名前でも出現しているものだが、そのパターンから外れている。その被害を受けた人たちの数が急激に上昇しているからだ。(MacDefender 発見時の状況については 2011 年 5 月 2 日の記事“偽の MACDefender アンチウイルスソフトウェアに注意”参照。)ZDNet の Ed Bott は、AppleCare のサポート担当者から聞いた話をもとに、ちょっと計算しただけでも 60,000 人から 125,000 人の顧客が被害を受けたと推定できるとしているし、今もその数は増え続けている。

Bott の記事に載った話から、興味深い事実が見て取れる。Apple は AppleCare の担当者たちに対し、MacDefender の除去を手伝うことはせず、人々にアンチウイルスソフトウェアを紹介するようにせよ、と指示したというのだ。これは奇妙な話だった。なぜなら MacDefender はそれほど深くシステムの中に入り込むようなものではなく、また、簡単に手で除去できるものであるからだ。

現在 AppleCare の担当者たちが電話をかけてきたユーザーたちに MacDefender の除去を手伝うことを許可されているのかどうか私たちは知らないが、Apple は明らかにこのマルウェアを深刻に受け止めるようになってきている。今回同社はサポート書類を公開して、その中で MacDefender を見つけ出し除去するための方法のあらましを記している。さらに興味深いことに、Apple は先週、このマルウェアに対処するための セキュリティアップデート 2011-003 をリリースした。(2011 年 5 月 31 日の記事“Security Update 2011-003 が MacDefender マルウェアに対処”参照。)

この動きが非常に興味深いのは、Apple が特定の具体的なマルウェアについて認めることがほとんど皆無であるからだ。Apple が Mac OS X や Safari に一般的な保護機能を追加することは珍しくないが、特定の具体的な脅威に対処する目的で Apple が Mac OS X にコードを追加することはめったにない。

他方、今回の場合はそうすることに意味がある。なぜなら、MacDefender の手口は多数のユーザーを欺いて管理者パスワードを入力させられるだけの巧妙なもので、しかもそれに対する防御の可能なアンチウイルスソフトウェアを走らせている Mac ユーザーの割合は比較的少ないからだ。その一方で、Apple が今後もある程度以上深刻な脅威が登場する度に同じことをする予定でいるのか、それともこれは今回一回限りのことなのか、と思案せざるを得ない。もちろん、Intego、Symantec、McAfee といったアンチウイルス会社たちも、間違いなく同じことを思案しているだろう。なぜなら、もしも Apple がマルウェアに対する保護にもっと正面から取り組もうとしているのだとすれば、これら各社がアンチウイルス解決手段の製品を Mac ユーザー相手に販売して行くことがますます難しくなるかもしれないからだ。

MacGuard に注意を -- さらに懸念のレベルを引き上げている事実がある。Intego が、MacGuard と呼ばれる新たな変種の MacDefender .を特定したのだ。MacGuard は、大まかに言って MacDefender と同じように動作するが、インストールのテクニックとして違ったものを用いているため、管理者パスワードを必要とせずにインストールされる。

MacGuard はこのトリックを遂行するため、それを仕掛けたウェブページが自動的にアプリケーションをダウンロードするのでなく、avSetup.pkg という名前のインストーラパッケージをダウンロードするようにしている。もしも Safari の「ダウンロード後“安全な”ファイルを開く」設定がオンになっていれば(あるいは Firefox や Google Chrome で同様の設定がオンになっていれば - これについては上で引用した記事を参照)Apple のインストーラが自動的にこの avSetup.pkg を開いてしまい、そのパッケージが Applications フォルダの中に avRunner という名前のアプリケーションをインストールするとともに、パッケージ自体を削除して証拠隠滅を図る。これは Applications フォルダの中にインストールされるため、もしもあなたが管理者としてログインしていれば、インストールにパスワード入力は必要ない。その後 avRunner が自動的に起動し、インターネットから MacGuard アプリケーションをダウンロードして、それを avRunner パッケージの内部に隠し、それも起動する。

当然のことだが、たとえあなたば「ダウンロード後“安全な”ファイルを開く」設定をオフにしていたとしても、あなたの Downloads フォルダの中にはまだ avSetup.pkg を含んだ Zip ファイルが残っているので、それを手で開いてしまわないよう注意しなければならない。そのままゴミ箱に捨てよう。

MacDefender を避けるには -- ここで言っておかねばならないのは、MacDefender というのは単なるスケアウェアに過ぎず、その主な脅威はもしもあなたが騙されてソフトウェアを「購入」すればクレジットカード番号が知られてしまうという点にあることだ。現時点で知られている限り、MacDefender がするのは、ただポルノサイトのウェブページを開いて(もちろんそれ自体みっともないことではあるが)それからあなたの Mac が感染したという偽の警告を表示するのみであり、これらすべては、あなたにソフトウェアを「購入」して警告が出ないようにしたいと思わせることを狙っている。基本的に、これはヤクザに用心棒代を払うようなものだが、MacDefender は自己増殖したりしないし、現在知られている限り他の危害を加えることはない。

だから、もしもあなたが、あるいはあなたの知っている誰かが、MacDefender の攻撃を受けた場合には、その邪悪な計画を阻止できる方法がいくつもある。順々に紹介して行こう:

最後に、もしもその種のアプリケーションがあなたにクレジットカード情報を入力せよと迫って来ても、決してそんなことをしてはいけない。現在のところ、MacDefender がダメージを与えることができるのはそこまでだが、クレジットカード番号を盗まれるというのは決して楽しいことではないし、自動支払いなどの契約変更や、保存された支払い情報など、後始末に結構手間がかかる。

私たち報道に携わる者の多くは、MacDefender に対してどちらかと言えば馬鹿にした態度を取ってきたと思う。なぜなら、その非道な計画を避けて通れる個所があまりにも多くあるように見えたからだ。けれども、どうやら私たちは多くの Mac ユーザーの間でのセキュリティ素養を過大評価していたのかもしれない。Apple の運勢が上昇するに伴い、セキュリティのことなど気にも留めない Mac ユーザーたちの数も増えた。例えて言えば、田舎の人たちが大挙して都会に押し寄せたようなものだ。そういう人たちは、あらゆる種類の詐欺や犯罪行為の餌食にたやすく陥ってしまう。子供のころから都会に住んでいる人たちは、錠前を増設したり、自動車にアラームを取り付けたり、財布を常に身に付けたりして我が身を守る術を心得ているのだが。

私の友人の一人には 11 歳になる息子があって、その子が MacDefender (の MacSecurity 変種) に感染した。このマルウェアがどのサイトからダウンロードされたものなのかははっきりしないが、マルウェアが管理者パスワードを要求してきた際にその子はパスワードを知らなかったので、母親に助けを求めた。母親は、自分がダウンロードを始めたわけではなかったので、それほど注意を払っていなかった。そこで母親は、上の空のままで黙って管理者パスワードを子供のために入力してやった。こうして、悪事は実行された。幸いなことに、IT 関係のディレクターである私の友人が誰もまだプログラムを「購入」していない段階でこの状況に気付き、マルウェアの痕跡をすべて消し去ることができた。でも、この話を聞くだけで、MacDefender のテクニックがどれほど巧妙かが分かるではないか。

ならば、このことによって、Mac ユーザーはアンチウイルスソフトウェアを走らせない方がよいという私たちのアドバイスを変更すべき必要が生じたのだろうか?(2008 年 3 月 18 日の記事“Mac ユーザーはアンチウイルスソフトウェアを使うべきか?”参照。)TidBITS 読者の皆さんに対しては、私は引き続きその必要はないと言いたい。なぜなら、いつも TidBITS を読んでおられる皆さんなら、何か普通でないことや何かおかしなことが起これば察知できるだろうし、またそれを防げるだけの知識もお持ちだろうからだ。それはそれとして、普通でないことが起こっても気付く可能性がほとんどないというタイプのユーザーに対しては、私たちからのアドバイスを考え直さなければならないのかもしれないと思っている。それはちょうど、小さな町の大学を卒業して大都市に引っ越そうとしている学生にアドバイスするのに似ている。そういう人たちは、都会で小さい頃から育ち、いつもこれをしなさい、あれはしてはいけない、と言われ続けてきた人たちと比べて、大都市で生活するためにより多くの指導と手助けを必要としているであろうからだ。

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Security Update 2011-003 が MacDefender マルウェアに対処

  文: Jeff Carlson <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Apple が セキュリティアップデート 2011-003 をリリースし、Mac OS X 10.6.7 Snow Leopard における ファイル隔離機能をアップデートして、最近登場した MacDefender マルウェアをブロックできるようにした。(2011 年 5 月 25 日の記事“Apple、次第に深刻化する MacDefender 問題に反応”参照。)アップデートを適用する際に、ソフトウェア・アップデートがこのマルウェアの既知の変種を探して、検出した場合には除去する。また、今回のアップデートではシステム環境設定の「セキュリティ」パネルに「安全なダウンロードリストを自動的にアップデート」というオプション(デフォルトでオンになっている)が加わった。Apple によれば、Mac OS X がそのリストのアップデートを毎日チェックするという。今回のアップデートはサイズが 2.1 MB で、インストールしても再起動の必要はない。

この Security Update 2011-003 が Mac OS X 10.6.7 のみにしか適用されず、10.6 Snow Leopard や、それ以前のバージョンの Mac OS X には適用されない(この記事の初期の原稿にはその点で誤った記述があった)ことに注意しておくべきだろう。MacDefender やその変種が古いバージョンの Mac OS X とどの程度「互換」であるのかはちょっとはっきりしないが、もしもあなたがまだ Leopard か Tiger を走らせているなら、注意を怠らないようにしておくことをお勧めする。

ファイル隔離 -- この用語を聞いたことがない方たちのために説明しておくと、ファイル隔離という Mac OS X 機能は 10.5 Leopard で導入されたものだが、今やよく知られるようになった「 ファイル名 は、アプリケーションで、インターネットからダウンロードされました。開いてもよろしいですか?」というダイアログを生成する。Mac OS X は「安全でない可能性のあるファイル」が Finder、Spotlight、または Dock から開かれる度にこのダイアログを表示する。残念なことに、実行可能コードを含むことのできるファイルタイプの大多数がこの「安全でない可能性のある」分類に属してしまう。その結果、ユーザーたちはアプリケーションをダウンロードする度に毎回この警告を目にすることとなり、よく考えもせず「開く」ボタンを押してしまうという危険な習慣に、すぐに陥ってしまいがちだ。

10.6 Snow Leopard で、Apple はマルウェアに対する具体的なチェックをここに追加した。ダウンロードされたファイルを既知のマルウェアの定義リストと照合する機能だ。この定義リストは Mac の System フォルダ階層の奥深くに保存されていて、次の場所にある:

/System/Library/CoreServices/CoreTypes.bundle/Contents/Resources/XProtect.plist

Snow Leopard では、既知のマルウェアがダウンロードされると、Mac OS X がより有益なダイアログを表示する。「 ファイル名 を開くとコンピュータが破損します。ゴミ箱に入れることをお勧めします。」と書かれたこのダイアログには、探知されたマルウェアの具体的な名前と、それがいつ、どのアプリケーションによってダウンロードされたかという情報も表示される。このダイアログには「ゴミ箱に入れる」ボタンもある。

Security Update 2011-003 により、このマルウェア予防チェックにいくつかの新機能が追加される:

いつもと同様、私たちはすべてのユーザーの皆さんに対して、Mac OS X のファイル隔離ダイアログで「開く」ボタンをクリックするのはあなたが許可を与えようとしているものが何なのかをあなたがはっきりと自覚している場合に限るようにすること、また Safari ユーザーの皆さんに対しては Safari 環境設定の「一般」パネルにある「ダウンロード後“安全な”ファイルを開く」オプションのチェックを外しておくことを、お勧めする。

いたちごっこ -- Security Update 2011-003 が出てからしばらくして、新たな MacDefender の変種が出現した。もしもあなたがセキュリティアップデートをそのリリース日当日に適用していたならば、その隔離リストはまだこの新しい変種に対応できるようにアップデートされたものでないかもしれない。Macworld の Lex Friedman によれば、この状況を是正できる簡単な方法があるという。それは、システム環境設定の「セキュリティ」パネルを開き、まず「安全なダウンロードリストを自動的にアップデート」オプションをオフに切り替えてから、その後でもう一度、そのオプションをオンに切り替えるのだ。(Lex の記事 "How to force your Mac to update its malware definitions" には、ファイルがいつアップデートされたものかを知る方法の説明もある。)

Intego からは、さらにまた別の MacDefender 変種が出回っているという報告もある。ただし同社は Apple のコードがその変種を探知できるのか否かについては述べていない。変種の名前としては現在 MacSecurity、MacProtector、MacGuard、それに MacShield が知られている。いずれ、この種の似たような名前だけに頼るのでなく、現存のアンチウイルスソフトウェアの名前を騙ったマルウェアが登場してくることも十分考えられる。

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TidBITS 監視リスト: 注目のアップデート、2011 年 6 月 6 日

  文: TidBITS Staff <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Growl 1.2.2 -- The Growl Project が、システムワイド通知ユーティリティ Growl のバージョン 1.2.2 をリリースした。 Growl 1.2.2 では、MobileMe メールアカウントとの非互換性の解消その他、いくつかの細かなバグ修正が施されている。また、同グループの製品 GrowlTunes もアップデートされた。こちらは iTunes の生成したイベントを通知する機能を提供するために使われる。開発者たちが Growl との間のインターフェイスを得るためのライブラリもアップデートされた。いずれの修正もあっと驚くようなものではないが、Growl がアップデートの存在を通知してくるのを止めるためにも、入手しておいて損はないだろう。(無料、6.9 MB)

Growl 1.2.2 へのコメントリンク:

Data Rescue 3.2 -- Prosoft Engineering が Data Rescue 3.2 をリリースした。Mac OS X 用データ復旧ソフトウェアの、大幅なアップデートだ。今回の新リリースでは、Microsoft Office 2011、AutoCAD 2010/2011、OpenOffice、QuickBooks 2006 から 2011 まで、iWork '05 から '08 までなど、いくつかの新しい Mac アプリケーションが作ったファイルを復旧させる機能が盛り込まれた。また、今回のアップデートでは失われた AppleScript、暗号化スパースディスクイメージ、Java アーカイブ、X3F および MRW 原画像、その他さまざまのものを見つけ出せるようになった。その他の改善点としては、フォルダを指定しての検索、ドライブ故障の可能性の警告、新設の HTML ヘルプ、検索のパフォーマンス改良などもある。 フルリストはリリースノートを参照。このソフトウェアの 無料試用版 は、失ったファイルをスキャンすることはできるが、復旧がサイズが 10 MB のファイル一個のみに限られる。(新規購入 $99、無料アップデート、13.2 MB)

Data Rescue 3.2 へのコメントリンク:

Logic Pro 9.1.4 と Logic Express 9.1.4 -- Apple が,音楽作曲用アプリケーション Logic ファミリーにマイナーなアップデートをリリースした。Logic Pro 9.1.4Logic Express 9.1.4 のいずれも、主たる新機能は iPad 上の GarageBand で作成したファイルを開けるようになったことだ。その他にも、今回の新リリースでは詳細は分からないがいくつかのマイナーな問題点に対処が施されている。(無料アップデート、それぞれ 192.5 MB と 138.7 MB)

Logic Pro 9.1.4 と Logic Express 9.1.4 へのコメントリンク:

Moneydance 2011 -- Moneydance から、同社の Mac OS X 用個人向け財務管理ソフトウェアの 2011 年版がリリースされた。Moneydance 2011 にはいくつか新機能があるが、主なものとしては Quicken Essentials から直接データを読み込める機能、ダウンロードした取引表を管理するための完全に一新されたインターフェイス、さらなるグラフやレポート、複数通貨への対応の改善、レポート印刷機能の拡張などがある。無料の試用版が同社のウェブサイトから入手できるので、ダウンロードして試してみることができる。(新規購入 $50、Moneydance 2010 のオーナーには無料アップグレード、旧バージョンからのアップグレードは $25、9.4 MB)

Moneydance 2011 へのコメントリンク:

Fantastical 1.0 -- Flexibits が Fantastical 1.0 をリリースした。Mac OS X 10.6 Snow Leopard 用の新たなカレンダーアプリケーションだ。「実際に使って楽しいカレンダー」と謳われる Fantastical は、自然な言語認識、オンラインのカレンダープロバイダ (MobileMe、Google Calendar、Yahoo Calendar など) との互換性、自動アラーム、その他の高度な機能を、見事なユーザーインターフェイスの中に包み込んでいる。Fantastical が他と違っているのは、既存のカレンダーアプリケーションに置き換わろうとするのではなく、それらを拡張しようとしている点だ。Fantastical は iCal、Entourage、Outlook と互換で、私たちのテストした限りでは BusyCal とも問題なく使えるようだ。無料の試用版もある。(新規購入は Flexibits からも Mac App Store からも $20、7.7 MB)

Fantastical 1.0 へのコメントリンク:

DEVONthink と DEVONnote 2.1 -- DEVONtechnologies が、情報管理アプリケーション DEVONthink と DEVONnote のすべての版に対して大幅なアップデートをリリースした。DEVONthinkDEVONnote のバージョン 2.1 には、それぞれの製品のリリースノート.に詳述されている通り多数の変更点がある。主なものとしては、ウェブページからデータを取り込むための Clip to DEVONthink ブックマークレットの完全な改訂、ヒント・チュートリアル・ダウンロード可能な追加機能などへのアクセスを提供するありがたいサポートアシスタント、あなたの作業環境の状態をいつでも保存できてそれらの状態の間で即座に切り替えて使える workspaces 機能、すべての版の DEVONthink で利用できるようになった (ただし DEVONnote では利用できない) 改善された Sorter、Google Chrome ブラウザ拡張、さらには多数のその他の改善点や多くのバグ修正などがある。(DEVONthink Pro Office: 新規購入 $149.95、無料アップデート、DEVONthink Professional: 新規購入 $79.95、無料アップデート、DEVONthink Personal: 新規購入 $49.95、無料アップデート、DEVONnote: 新規購入 $24.95、無料アップデート)

DEVONthink と DEVONnote 2.1 へのコメントリンク:

Sparrow 1.2 -- Sparrow 1.2 から、この電子メールクライアントには Facebook との接続機能 (友だちの写真を表示したり、Sparrow 内から友だちを追加したりできる)、統一 Inbox、Gravatar 対応、Subject-ベースのスレッド分け、Sparrow の Dock アイコンを Control-クリックして新規メッセージを作成できるオプション、八カ国語のローカライズ版などが加わった。さまざまのバグも修正されている。私の意見では、まだ Sparrow を使いものになる Gmail クライアントと見ることはできない。最新のものが一番上になるように会話がソートされる(従って下から上へスレッドを読み進まなければならない)ことと、メッセージ本文をロードするパフォーマンスが非常に遅いことが理由だ。たった一つの Gmail アカウントでのみ働く無料の Sparrow Lite もある。(Mac App Store から $9.99、無料アップデート、11.9 MB)

Sparrow 1.2 へのコメントリンク:

Adobe Photoshop Lightroom 3.4.1 -- Adobe が、同社のプロフェッショナル向け写真管理アプリケーション Photoshop Lightroom のバグ修正リリースを出した。Photoshop Lightroom 3.4.1 では、詳細は不明だが「Lightroom 3 の旧リリースで確認された問題」の修正と、カメラ固有のデータの大きなブロックがあった場合に JPEG 画像を壊してしまう可能性のあった、3.4 アップデートで持ち込まれた稀に起こるバグへの対処が施されている。また、Canon Rebel T3i、Nikon D5100、Fuji FinePix X100 に対する raw 画像のサポートも今回のアップデートで追加された。(新規購入 $299、Lightroom 3 のオーナーには無料アップデート、旧バージョンからのアップグレードは $99、88.5 MB)

Adobe Photoshop Lightroom 3.4.1 へのコメントリンク:


ExtraBITS、2011 年 6 月 6 日

  文: TidBITS Staff <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

今週は TidBITS スタッフの出演したポッドキャストが二つと、Lodsys による特許騒ぎの続報、MacBook のケース交換プログラムのニュース、Apple からの iPhone および iPod touch 用 iWork のリリース、それから Gmail が people ウィジェットを新設したというニュースがある。

Lodsys、iOS 開発者を引き続き標的に -- 私たちの記事でも指摘した通り、この Lodsys による特許騒ぎは Lodsys が終わらせようとしない限り終わらない。Apple が、Apple が Lodsys と結んだライセンスにより iOS 開発者たちもカバーされていると主張しただけで、終止符が打たれる訳ではない。ZDNet の記事によれば、Lodsys は同社のブログに新たな長談義を展開して、同社の立場を主張するとともに、もしも Apple の言うことが正しいとなれば標的となった開発者たちに $1,000 ずつ支払おうという奇怪な申し出を述べた。状況はますます奇妙なものになりつつあるが、今週 Apple の Worldwide Developer Conference では間違いなくこの状況に関する議論があるだろう。

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MacBook の下部ケース交換プログラム -- Apple が、MacBook の下部ケースからゴム部分が剥がれる問題を修正する交換プログラムを開始した。このプログラムは、2009 年 10 月から 2011 年 4 月までの間に出荷された MacBook であって、この問題が発生しているものを対象としている。問題が見られる MacBook を Apple 直営店または Apple 正規サービスプロバイダに持ち込むこともできるし、オンラインで交換キットを注文してセルフサービスで交換することもできる。

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Adam、MacBreak Weekly で Lodsys、iCloud その他を語る -- Adam が MacBreak Weekly でまたもや Andy Ihnatko、Chris Breen、John Gruber、Leo Laporte と語り合った。非常に楽しい議論となったがその話題はギーク向けのヘアケア (Gruber は Perl スクリプトを使っている!) から、Lodsys に対する Apple Legal の反応、さらには来たるべき Apple の iCloud 音楽サービスにどんなことが期待できるか、といったことまで広がった。

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Apple、iWork を iPhone と iPod touch にも -- Apple が、iWork アプリスイート (Pages、Keynote、Numbers) を iPhone と iPod touch 用にリリースすると発表した。これら三つのアプリは新規ユーザーには各 $9.99 となるが、iPad 版を持っている人に対しては無料アップデートとして提供される。

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Gmail、People ウィジェットを導入 -- Google の Gmail グループが、新たに "people widget" を出すと発表した。このウィジェットは Gmail での会話に参加している人たちについての情報、例えばその人たちから最近届いたメッセージへのリンクや、Buzz ポスト、共有書類、カレンダーイベントなどを表示する。私たちのアカウントではまだこのウィジェットが登場していないが、これが Rapportive に取って代われるものとなるのかどうか、興味を持って見守りたい。

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MacVoices で Rosetta が脚光を浴びる -- Lion で走らなくなる場合に備えて自分の PowerPC アプリケーションを見つけようという TidBITS 記事に続き、Matt Neuburg が MacVoices に出演して Chuck Joiner と対談する。Rosetta 喪失の可能性は、歴史的観点から見ればどうか、ユーザーにとっては何を意味するか、といった話題が語られる。

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TidBITS ISSN 1090-7017©Copyright 2011 TidBITS: 再使用はCreative Commons ライセンスによります。

Valid XHTML 1.0! , Let iCab smile , Another HTML-lint gateway 日本語版最終更新:2011年 6月 11日 土曜日, S. HOSOKAWA