TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#1080/13-Jun-2011

WWDC が終わり、Lion は 7 月になるまで登場しないし、iCloud は霧のごとき大きな塊の中にまだ私たちを包み込み始めたばかりなので、今はただいろいろと質問を発し始めたり、Apple の発表を秩序立てて眺め直したりすべき時だろう。Glenn Fleishman は、バンド幅の上限が iCloud の使用に及ぼすかもしれない効果について検討し、また Joe Kissell と協力して Lion が Mac App Store のみに依存する (DVD はない?) と言われていることに関する疑問を列記する。Glenn はまた、Lion の新機能の多くが iOS インターフェイスにそのまま対応するよう作られているのではなく、むしろクラシックなデスクトップのインターフェイスから iOS 流のアプローチへと前進したいという意図を持っているのだと論ずる。その他のニュースとしては、iBookstore がついに iTunes に登場し、Guy Kawasaki が MacTech Conference 2011 でキーノート講演をし、Amazon が Mac Downloads Store を発表した。最後に、Rich Mogull が「クラウドコンピューティング」とは実際には何を意味するのかについて詳細な解説を寄稿する。実は、これは単にインターネットに何かが存在するとかいうだけのことではないのだ。

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iBookstore、ついに iTunes に登場

  文: Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

先週 Mac 上で米国 iTunes Store のホームページに行き、そこをよく観察してみた人は、Apple の新しい翼、iBookstore を初めて目にする喜びに浸ったはずだ。その通り、これによってついに、Mac や PC からも、iTunes の中で iBookstore にあるすべてのタイトルをブラウズすることが可能になり、iOS 機器上の iBooks アプリからアクセスする以外の方法ができた。(米国以外で iBookstore が利用できるかどうかについてはまだよく分からない。おそらく、Apple は異なる国それぞれで別々にスタートさせ、国によってタイトルの取り揃えも異なったものになるのではないかと思う。)

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今回のことはあまりにも長い間もうじき来るという状態が続いていたし、それが必要であることも痛々しいほど明らかであった。iBooks 内から本が購入できることに何も問題はなかったし、それは Kindle から本が購入できるのと同じこととも言えたが、Mac や PC 上の iTunes 内で本の購入ができないことは全く意味を成さなかった。ことに、これまで Apple はあまりにも多くのタイプの購入を iTunes を使ってするよう私たちを訓練し続けてきたのだから。Amazon が比率を公開することはあり得ないだろう(その点では Apple も同じだろう)が、Kindle ブックの大多数は同社のウェブサイト経由で購入され、あとで Kindle 機器あるいはアプリにダウンロードされて利用されるのが実態だと私は確信している。それこそが、Amazon で Kindle ブックの売り上げが印刷本の売り上げを凌いだ大きな要因となったに違いない。

もしもあなたが iTunes Store に慣れていさえすれば、iBookstore もシームレスにそこに融合するだろう。Books のトップレベルボタンがあり、その単語の上にマウスを持ってくれば現われる小さな三角形をクリックすればメニューがドロップダウンする。このメニューにはすべてのプロモーションとカテゴリーがリストされ、その一つを選ぶとそのカテゴリーに属する本だけが表示される。また、New & Notable とか Bestsellers とかいうコレクションもある。(私たちの Take Control タイトルのいくつかや、私たちの執筆陣による他のいくつかの本が Bestsellers リストに登場しているのも嬉しいことだ。)

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検索結果に出た本は一つのカテゴリーとなるが、残念なことに、本のタイトルが長い場合、iTunes はその終わりの方を切り捨ててしまう。iBooks でも同じことだが、これは Take Control のようなシリーズ本では非常に不都合な結果となる。"The Complete Idiot's Guide" シリーズの場合はさらに深刻で、肝心のその後の部分がすべて切り捨てられてしまい何の役にも立たない。このように長いタイトルを差別する iBookstore のやり方を回避するにはサムネイル写真に見える文字が読みやすいという点がこの上なく重要となる。

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購入はまさしく予期した通りに働く。ダウンロードした本は iTunes の中で Books カテゴリーに置かれ、あとでそれを iOS 機器へと同期できる。注意しておくべきは、今後初めて iTunes から購入をする際、Apple の取引条件規約の変更に同意するよう求められることだ。変更された点のうち最も重要な三つは以下の通りだ:

検索結果に対する懸念と、Mac 互換な EPUB リーダーが Apple から出ていない点とを除けば、私たちは Apple が iBookstore を iTunes にもたらしてくれたことを大きな喜びをもって迎えたい。私たちの出している電子ブックの売れ行きが良い影響を受けるかどうかも気になるところだ。私たちの正直な気持ちを言えば、既存の顧客の皆さんには今後も私たちから直接購入をしていただきたいと思う。なぜなら、その方が私たちが手にする売り上げも多いのだし、また私たちのシステムから購入していただければ個々の顧客ごとに自動的に Take Control アカウントが作成され、その人が購入した本の記録がそこに追加されるからだ。それに対して、iBookstore から購入された方についてはアカウントの作成やタイトル管理を手動の作業で施さなければならなくなる。けれどもその一方で、iBookstore のお陰で新しい顧客が私たちの仕事の成果を発見できる可能性が高まるとなれば、それは非常に歓迎すべきことだ。そして、iBookstore が iTunes からもブラウズできるようになることで、その可能性はますます高まるに違いない。

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Guy Kawasaki が MacTech Conference 2011 でキーノート

  文: Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

MacTech Magazine は 11月にある MacTech Conference 2011 のキーノートスピーカーとして比類なき Guy Kawasaki、前の Apple の首席擁護者が登場すると発表した。昔からの Mac ユーザーの多くは Guy の仕事、そして彼の最新の著書 "Enchantment: The Art of Changing Hearts, Minds, and Actions" が New York Times のベストセラーリストに顔を出したことを知っているであろう (私の記事 "Guy Kawasaki の "Enchantment" は真に魅了する" 21 March 2011 参照)。

(もしあなたが "Enchantment" を既に購入しているのであれば、Garr Reynolds による "Presentation Zen" の 無料電子本を入手できる期間限定の機会がある。この本は、プレゼンテーションを行うことに関する最も有用でそして重要な本の一つと言える。もし MacTech Conference 2011 に参加する前にこの両方の本を読んでいれば、Guy は "Enchantment" に書いた彼のアドバイスと、そして Garr Reynolds が "Presentation Zen" で説いたレッスンを実行に移していることを見て取れるであろう。)

この三日間の MacTech Conference 2011 は 11月2日から 4日まで Los Angeles の Sheraton Universal で開催される。昨年の様に、これはセッション単位の技術カンファレンスで、対象は IT と企業の専門家、そして Apple 開発者で、これらの主たる聴衆に対する個別のトラックが用意される。セッションは、デスクトップ (Mac OS X) とモバイル (iOS) の両方の分野をカバーする。そしてApple Certification 試験も別料金で受けられる。

MacTech Conference 2011 の料金は、全ての食事を含んで $999 だが、30 June 2011 までならアーリーバード割引 $200 が適用されるので $799 となる。数に制限があるが Sheraton Universal での宿泊も一泊 $179 の割引料金で提供されている。この料金にはインターネットアクセスも含まれる。

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Amazon 狙いを Mac App Store に

  文: Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
  訳: 柳下 知昭 <tyagishi@gmail.com>

なんと! Amazon は予想されていなかった Mac Downloads Store を発表した、それは恐らく Amazon からパッケージ販売もされているMacintosh のソフトウェアとゲームからいくつかえりすぐりのものを提供する。いくつかの有名なデベロッパのパッケージ、Microsoft や Adobe、Intuit を除くとこれを書いている時点では、200 のソフトウェアパッケージのほとんどは、言語学習コースとトレーニングソフトウェアとみえる。残りの 51 はゲームである。

この記事の最初に Web に公開されたバージョンでは、私は、なぜ物理的な流通で販売していない独立デベロッパが含まれていないのか疑問だった。Amazon は、多数の有名な開発者にアプローチしていたが、Amazon に、十分な説得力がなかったのか、それとも開発者が必要な労力に対して、十分有利な機会であると考えなかったために私が話を聞いただれもこの話には乗らなかったことがわかった。

私は、新たなチャネルを扱う時間ができるにつれて、いずれ多数の Mac 開発者が Amazon の Mac Downloads Store でも販売を開始するようになるのではないかと思う。単に Amazon にリストされただけでは販売の保証はないが、主な否定的側面は、また新たな再販業者と作業を始めなければならないことである(特に、小さな開発者にはそれはかなり大きな負担になりえる)。良い点は、Amazon は、アップルが Mac App Store での販売に要求するのと同レベルの審査を行わないことであり、そのため、開発者は、アップルが許可しないソフトウェアも Amazon で売ることが可能となる。

Amazon が Mac App Store と競合しようとしていない 1 つの点は、統合である。購入すると、後々 Amazon からダウンロードするためのアクセスはできるが、現在のところ、Amazon は ユーザにアップデートの通知(email 以外)の手段を持たず、ダウンロード可能となったアップデートについても、手動でのダウンロードとインストールが必要となる。FAQ の中で、Amazon は、以下のように言っている:

いくつかのゲームとソフトウェアは、パッチやアップデートを自動で探します。アップデートを自動で行なわないその他の製品は、製品の製造元のウェブサイトでアップデートやパッチを探す必要があります。

FAQ にある別のコメントは、それ以上の詳細が説明されていないが少し気掛りである。DRM について、Amazon は以下のように言っている:

ダウンロードしたソフトウェアやゲームには、DRM ソフトウェアが含まれています。DRM (デジタル著作権管理) の詳細については、エンドユーザーライセンス (EULA) を参照してください。

長期的に見たときに、どちらのストアの方が安くすむかについてまとめることはできない。今、Mac Downloads Store と Mac App Store の両方で販売されている製品はほとんどない; Macware. からリリースされているMacFreelance と Logo Design Studio Pro が販売されているのを見つけた。両方とも Macware 自身のウェブサイトより安く販売されていて、Mac App Store ではMacFreelance がより安く、Log Design Studio Pro は、$5 のディスカウントによって、Mac Downloads Store で、より安くなっている。

今のところ、Amazon Mac Downloads Store は、Mac App Store ほど、魅力的ではないが、Amazon は、非常に多くの小売りの経験を持っているし、マーケットを作るまでに必要な辛抱強さも見せている。一年もしないうちに、Mac Downloads Store は、非常にバラエティに富んだ Mac のソフトウェアを探して購入するための信用できる方法になるかもしれない。

使い方 ーー Amazon の Mac Downloads Store がどのようなものか見るために、そう高くないゲーム - Airport Mania: First Flight をダウンロードしてみた。(この Store が開店したとき、このゲームは、無料だった。)

一度、アプリケーションを購入すると、すぐにダウンロードできる権利かAmazon の Your Games and Software Library から後で取得できる権利が与えられる。もしソフトウェアがアクティベーションキーを必要とする際は、同様に、Your Games and Software Library から入手できる。

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"Start Download" をクリックすれば、操作手順を説明したウェブページが開く。操作手順はごくおおざっぱなものだが、要するに Amazon はあなたにディスクイメージに格納された Amazon Software Downloader を取得せよと言っているのだ。Amazon Software Downloader をディスクにコピーする必要はない;ダウンロード手続きを継続するためには、ディスクイメージから起動するだけでよい。

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Amazon Software Downloader は、購入したものを取得する処理をすすめ、ダウンロードフォルダに保存し、終了すると Install ボタンが現れる。それはアプリをアプリケーションフォルダにインストールするためのものだと思うかもしれないが、そうではない; Install ボタンをクリックすると代わりに購入したもののディスクイメージを開く。Airport Mania の場合は、インストールは単にドラッグアンドドロップするだけだが、他のアプリケーションではおそらくインストーラーを使用するのだろう。

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まとめると、個々の手順は、多くあった - Mac Downloads Store は、Mac App Store の手順ほどのシンプルさではなかった - が、ソフトウェアをダウンロード購入した経験があれば特に難しい手順はない。

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iTunes 10.3、自動ダウンロードと購入品へのアクセスを提供

  文: Kirk McElhearn <kirk@mcelhearn.com>
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

今週の WWDC キーノートでの音楽関連の iCloud 機能の発表と並んで ("iCloud の出現で、長期予報は嵐を予想" 6 June 2011 参照)、Apple は iTunes の新しいバージョンをリリースしユーザーにクラウドの味見の機会を与えた。iTunes 10. 3 は、Software Update 経由或いは Apple の Download iTunes Now ページから入手可で、このプログラムに対して二つの大きな変更をもたらす。(10.3 はまた新しいバグももたらした、何故ならば Apple は数日後に iTunes 10.3.1 をリリースしたからである;これがこの記事を書いている時点での最新版でもある。)

iCloud に関連したこれら二つの変更は、iTunes Store から購入したコンテンツに関係する。最初は Automatic Downloads で、これによりどの iTunes - そして あなたの iOS 機器も - でも他のコンピュータや機器上で iTunes Store から購入したコンテンツを自動的に捕まえられるようになる。iTunes Preferences ウィンドウの Store ペインに Automatic Downloads の場所が追加され、そこには三つのチェックボックスがあり、あなたの iTunes Store アカウントにリンクした他のコンピュータ又は機器上で購入された時自動的にダウンロードされるコンテンツの選択が出来る: Music, Apps そして Books である。これらのどれをチェックしても iTunes にあなたが購入 - 或いは無料ダウンロード - したファイルのコピーを自動的に行うよう指示する。これはあなたが同じ Apple ID を使っている限り、どんな機器を使っているかに拘わらず行われる。

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あなたの iOS 機器では同様なオプションが Settings > Store で見つかる。他には 3G が使える機器では、もし Wi-Fi が使えない場合セルラーデータを使うかどうかのオプションもある。

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Automatic Downloads は機能するが、未だ完璧というわけにはいかない。私が iMac 上の iTunes から無料の曲を一曲ダウンロードした時、ダウンロードは私の MacBook Air 上でも直ちに開始した。こちらの方ではこの機能を既にオンにしていたのである。同時に、私の iPad と iPod touch にも通知が届き、私が一曲ダウンロードしたばかりであり、将来これらの機器に自動的に同期させるため自動ダウンロード機能をオンにすることが可能であることを伝えてきた。しかしこれらの機器で Automatic Downloads をオンにした時、Mac 上で無料の曲をダウンロードしても、これがこれらの機器にコピーされることは無かった。また、Adam Engst の場合は、彼の機器のどれにも通知が来ることは無かった、そしてこれには Automatic Downloads が既にオンにされていた機器も含まれる。しかし、この機能が再度オフにされていた場合、この機能が再度オンにされると今度はどこでもダウンロードは期待された様に機能した。あなたの iTunes パスワードを入力するよう要求される場合もあるが、これは必要な認証が最近なされていない場合である。

二つ目の変更は、iTunes での購入履歴を見る、そしてあなたが既に購入した、或いは無料でダウンロードしたコンテンツを iTunes Store から再ダウンロードする能力である。(待ちかねた!) iTunes Store のメインページに行き、そして、右にある Quick Links の所で Purchased をクリックする。iTunes は、あなたがこれまでダウンロードしたことのある音楽、アップスそして本の全てが見られるページをロードする。そのリストをスクロールして、項目を選択することが出来、その項目があなたの現在の iTunes ライブラリに無い場合は、クラウドアイコンをクリックすることでダウンロード出来る。もしそれがあなたのライブラリに既にある場合は、iTunes は Downloaded というアイコンを代わりに表示する。

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同じ機能が今や iOS 機器上の iTunes アプリでも使える;音楽のリストを見るにはツールバーにある Purchased のボタンをタップする。iOS の iTunes は購入した曲のみへのアクセスを提供する;App Store アプリのツールバーでの Purchased ボタンをタップすると以前購入したアップスのダウンロードをさせてくれる。同様に、この機能はこの場合は新しいものではないが、iBooks (Store をタップ、それからツールバーの Purchased ボタン) もまた購入済みの本を再度ダウンロードさせてくれる。

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しかしながら、この機能には多少の付帯条件が付く。まず、米国以外にお住まいなら、少なくとも音楽に関しては運がない。Apple は世界中のレコードレーベルと未だ交渉成立まで行っていないので、もし U.S. iTunes Store アカウントをお持ちでないなら、アップスと本だけを見ることになる。

第二に、このサービスを記述している脚注で Apple が言っているように、 "以前に購入したものでも現在 iTunes Store に無いものは入手できないかもしれない。" 私の場合、私の購入した音楽のうちかなりのものがもう入手出来ないということを発見した。例えば、2005年に私が購入した "Complete U2" は今ではもう無い。

興味深いことには、私の購入履歴リストで U2 の下に "A Celebration" というのがあり、これは U2 の曲の中でも一番のコレクションだと思えるのだが、これをクリックすると出てくるのは "Three" というタイトルの EP である。私が 2006年に買った "Bob Dylan - The Collection" の全セットは "Dylan" として出てきて、多くの曲が私の iTunes ライブラリには無いと示される、実際にはそこにあるのにである。そして Vagn Holbmoe の "Four Symphonic Metamorphoses" は 3つのトラックしか入手できないと表示される (アルバムには 9 曲収められている)、そして View Full Album へのリンクをクリックすると、iTunes ダイアログが出てきてこの音楽は U.S. iTunes Store では入手できないと言ってくる。

私の購入履歴にある音楽の多くに対しては、この新しい機能は十分に働くが、私はクラシックの音楽を結構 iTunes Store から買っているので、アーティストのリストは紛らわしい。多くのアルバムが一旦個々のアーティストの名前の下になると、何回もリストされる。しかし検索フィールドがあるので、曲を手早く探すにはそこに作曲家、曲、或いはアルバムの名前をタイプすることも出来る。或いはまた、Not in My Library ボタンをクリックすれば、あなたのライブラリに現在入っていないと iTunes が思うコンテンツを見ることが出来る。しかしながら、私の場合はこれで Bob Dylan による 170 トラックもが見つけ出されたが、前にも言ったようにこれら全ては私のライブラリの中に存在している。

アップスに対しては、この機能はよりよく働くようである。これは - ちょっとびっくりしたのだが - 471 ものアップスを私が購入したものとして見つけ出した。私は私のアカウントを息子と共有している、そしてこのリストアップされたアップスの多くは彼のダウンロードで、かつその多くは無料のものである。しかしリストがこれほど長くなると、一度は試してみたが消してしまった無料のアップスの様なものを間引きし、それらをリストから除去できると都合が良いのだが。このリストを多少見やすくするために、iPhone (そして iPod touch) 或いは iPad 用のアップスを選択することも出来る。

最後に、本を再ダウンロード出来る、そして、繰り返しになるが、私がダウンロードした無料の本、そして私が購入した本の両方に対して、多くの購入品がリストされない経験をしている。例を挙げれば、私は Stephen King の Dark Tower シリーズ全 7 巻を iPad で読むため数年前に購入したが、私の購入リストにはそのうち 3 冊しか現れなかった。

この機能は完璧に働くべきだが - Apple はあなたの購入履歴を持っているのだから - 私が経験したようにあなたの場合もリストに出てこないコンテンツがある可能性がある。結論を言えば、この様にコンテンツを再ダウンロード出来ることに依存するべきではなく、そしてあなたの購入品は常にバックアップすべきである。Apple はその iCloud Features ページで、これらの新機能は単にベータの状態であると言っているので、構築に多少手の届かないところがあるだけなのかもしれない。

最後の一つの新機能もようやく今週日の目を見た。これは iTunes 10.3 に直接関係しているわけではないが iTunes Store に施された変更だ。言ってみれば見栄えのいい Web ページとそう変わらないのだから、ここは一瞬にして変わることが出来る。iBookstore からの本が、一部の Take Control 電子本、例えば私の"Take Control of iTunes 10: The FAQ" も含めて、Mac 上の iTunes 内で買うことが出来るようになった。ただし、これらを Mac 上で読むことは出来ない。更なる詳細については、Adam の "iBookstore、ついに iTunes に登場" 7 June 2011 を参照のこと。

と言うことで iTunes 10.3 は幾つかの興味深い機能を iTunes Store からコンテンツをダウンロードする人々にもたらしたが、現実を見れば、これは今日では殆ど誰でもということを意味する。とりわけ、Automatic Downloads は何台かのコンピュータと iOS 機器を持っている人には嬉しいもので、また一つのアカウントを誰かと共有しており、彼らが何をダウンロードしたかを知り、彼らの音楽、アップス、そして本も試してみたいという人にはとりわけ嬉しいものである。

[Kirk McElhearn は Macworld への Senior Contributor であり、TidBITS にも時折寄稿している。彼のブログKirkville では Mac だけでなくいろいろ書いている。Kirk の最新の本は "Take Control of Scrivener 2" である。彼を Twitter で追いかけたい人は @mcelhearn で。]

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Lion の App Store インストール条件に対する質問

  文: TidBITS Staff <editors@tidbits.com>
  訳: 柳下 知昭 <tyagishi@gmail.com>

Mac OS X Lion では、DVD は見捨てられる - それが必要なあなたには、天の助けを!アップルは、$29.99 のオペレーシングシステムアップデートは、Mac App Store 経由のダウンロードのみで入手できるとしていて、10.6.6 Snow Leopard 以降でのみ購入できる。このことから、Mac App Store で 突然 Lion が購入できるようになるその日まで回答を得ることができそうもない多くの質問へとつながる。

インストール -- アップルは、インストールプロセスのかなりの部分を説明してくれている。我々は、同一の Apple ID を使用しているならば、複数台のコンピュータに Lion をインストールすることができる。つまり、$29.99 の Lion の料金で、Snow Leopard では、$49.99 であり、Leopard では、$199 であったファミリーパックにとってかわることとなる。

しかし、アップルがインストールの数を制限するかどうかやどうやって制限するかについてわかっていない - 恐らく、あなたの iMac や MacBook にインストールする $29.99 の Lion のコピーと 25 人のオフィスの全ての Mac にインストールするためのものとは、違うだろう。そして、そのような小さなオフィスでも少なくとも 25 回の Lion のダウンロードが必要だろうし、数百台や数千台のインストールが必要になるような企業のインストールは、どうなるだろうか?

1 つの可能性として、ありそうもない 1 つかもしれないが、シリアル番号がある、1 つのコピーをダウンロードし、適切なシリアル番号を使用して複数回インストールするのである。アップルは、これまでデスクトップ Mac OS X クライアントのインストールでシリアル番号を要求したことはないが、Max OS X Server で、昔は、シリアル番号が必要だった。Lion Server は、Max App Store から別途 $49.99 でダウンロードされ、Lion 上にインストールされる。

Mac App Store 経由で Lion を購入し、ダウンロードすると、アプリケーションフォルダのインストーラが実行可能となる。表面上は、このインストーラを他のコンピュータへコピーすることができ、ダウンロードすることなしに起動することができる。Lion の要求システムは、Intel Core 2 プロセッサ以降のプロセッサを必要とし、2006 年以降の全てのマシンが含まれる。しかし、10.4 Tiger や 10.5 Leopard で Lion のインストーラを起動できるだろうか?もしくは、Lion のインストール前に Snow Leopard へのアップグレードが必要なのだろうか?調査を待たなければならないが、アップルのウェブサイトでは、最初に Snow Leopard へのアップグレードが必要であると暗示されている。( 開発者向けプレビューでは、答えはわからないだろう、それは、市販でのインストール向けに設計されていないのだから。)

我々は、インターネットへの回線が無い、もしくは限られたスピードのユーザについて特に心配している。遅い回線のアカウントの人もいる(例えば、衛星通信や遅い DSL 通信)、25% のアメリカ人は、いまだダイアルアップアクセスを使用してインターネットへ接続している。さらに、世界の多くの地域でインターネットアクセスは、従量制であり、数ギガバイトのダウンロードは、少なくない料金になる。現在、言えるところでは、このような状況の人達は、代替手段を考えなければいけない。しかし、もしその人達がラップトップを持っていなかったり、手近な代替手段がなかったら?アップルは、ダウンロードを簡単に行うことのできない人達に、Lion に DVD インストールのオプションを追加してくれてもよいのではないだろうか?27-inch の iMac をもよりの Apple Store や、認定販売店へ持っていく必要があるのだろうか?我々は期待することはできるが、アップルはこの件について何も言っていない。

復旧 -- もちろん、Mac OS X は一度インストールすればよい、、、ラッキーならば。我々が知るところでは、インストールは、失敗することがあるし、ハードディスクは故障するし、ユーザーはより大きなディスクへとアップグレードする、そのため、そのような時に、オペレーシングシステムの再インストールが必要となる。これまでは、頼りになる Mac OS X インストール DVD があったが、もし Lion を Mac App Store から入手した場合は、別のリカバリー手段を使わなければならない。(それが何を意味しているかは、2011 年 6 月 10 日の記事"Recovering from Disk Corruption Without a SuperDrive" を参照のこと)

もちろん、Lion のシステムを Time Machine バックアップを使用してリストアすることは以前の Mac OS X のバージョンと同様にできる。しかし、Lion は、特別なリカバリーパーティションを内蔵ハードディスク内に作成し、そのパーティションから Lion の最小インストールを起動することができ、そこには、別パーティションを修復したり Time Machine から復旧するための標準的なMac OS X のユーティリティすべてが含まれている。これは、Apple が良いことをしてくれたと言える。

しかし、もしハードディスクが故障して、リカバリーパーティションからもブートできなくなり、Time Machine のバックアップが最新で無く、別のバックアップ手段でブート可能ボリュームを作成しないものを使っていたとしたら?DVD や フラッシュドライブにブートできる Lion インストーラを作成できるかわからない。Mac App Store から取得できるものは、それ自体がアプリケーションであって、ディスクイメージでないのだから。この問題への解決策は、持ち主がバックアップやハードウェアへの配慮を欠いていたとしても一定の間隔で、不安定な Mac を調子の良い状態にする必要に直面するような Mac のコンサルタントにとって特に重要である。

ほとんどの人達は、疑う余地なくこれらの問題に遭遇しないが、これらの問題は、それに遭遇する人達だけにとって致命的なのではない、Mac 人口の増加 - 5400 万のアクティブなユーザーを思い出してほしい -によって、インストールの問題や、問題発生時の再インストールの問題に実際に遭遇する人数は、増加する。

我々は、積極的にこれらの質問へのアップルの回答を見いだそうとしているが、アップルは、率直であるとは思えないので、7 月のいつかに Mac App Store に Lion が現われるまでは、確実な情報は手に入れられないかもしれない。

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バンド幅の上限が iCloud の輝きを奪う

  文: Glenn Fleishman <glenn@tidbits.com>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

iCloud の同期サービスと、Mac OS X Lion と iOS 5 が両方ともダウンロードで入手できることになるという発表とを見れば、バンド幅というものが安価でかつ潤沢に手に入る未来を Apple が心に描いていることは明らかだ。高速のインターネット接続と、活発な 3G データ接続を持っている人々の数がますます増えつつあることに疑問の余地はないけれども、Apple の計画はそれを相殺する効果を持つトレンドに、真正面から衝突してしまう可能性がある。それが、毎月の使用量上限と超過料金だ。

OS のアップデートは数百メガバイトから数ギガバイトに達することもあり、iCloud ではインターネットとの間で何ギガバイトものデータを毎月やり取りすることになるかもしれない。そこで、バンド幅の上限を超えてしまう懸念が、突然困難な、かつ費用のかさむ問題として持ち上がりかねない。もしもあなたが現在既にバンド幅の上限からそう遠くない量を使用しているのなら(例えば、ストリーミングで Netflix から映画を観たり、バンド幅の使用の多いゲームをプレイしたりしている場合は)そこに iCloud を加えるやいなや、たやすく上限を超えてしまう可能性がある。

AT&T は 2011 年 5 月に、有線ブロードバンドサービスに毎月の使用料上限を導入した。その結果、現在では米国内でブロードバンド契約をしている家庭の半数以上が何らかの種類の上限を持つこととなった。AT&T などいくつかの会社では、設定された制限値、例えば毎月 100 GB とか 250 GB とかいった値を超えた使用量に対して料金を課している。Comcast などの会社では、250 GB という毎月の上限を設定しておき、あなたが初めてその上限を超えた際には警告を出して、その後一年以内に二度目の警告を受ければあなたのサービス契約が取り消されるようになっている。

モバイルブロードバンドにはずっと以前から制限が課されていた。段階付きのサービスプランはたった数百メガバイトから 1 ないし 2 ギガバイトまで程度しか提供しない。米国の T-Mobile では、これは世界中の多くのキャリアでも似たようなものだが、あなたがこの上限を超えればバンド幅を毎秒数十キロバイト程度に絞るし、他の会社では超過料金を課したりあるいは接続を切ってしまったりするところもある。(Verizon Wireless の iPhone プランでは現在のところそのようなことはないが、近いうちに同社が他のスマートフォンで提供しているような段階付きプランへと移行することが予想される。)

では、Apple の約束する各種サービスが、あなたの限られたバンド幅の中からどの程度の量を消費するか、それぞれ見て行こう。

あなたが MiFi などのパーソナルホットスポットを使って iCloud を欺いている場合を別とすれば、iCloud サービスがそれ自体のみで一般的なモバイルブロードバンドの使用量上限を超えることは考えにくい。けれども iCloud は、ブロードバンド転送をあなたのいつもの使用量に加えてさらに数ギガバイト、場合によっては数十ギガバイトも増やすかもしれず、Lion と iOS 5 もあなたのバンド幅要求をただただ増すのみだ。一言で言えば、あなたが Apple の新しいオペレーティングシステムの使用に次第に慣れてくるにつれて、ブロードバンドプロバイダが提供しているあなたの使用量グラフや警告に、しっかりと注意を払っておく必要があるということだ。

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Lion の二つの顔

  文: Glenn Fleishman <glenn@tidbits.com>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

月曜日に Apple の Worldwide Developer Conference 基調講演があって以来、私が最も頻繁に耳にした質問は、Mac OS X 10.7 Lion が「つまらない」ものなのかどうか、という問い掛けだ。それは、もっともな質問だ。ユーザー体験に大きく影響するような機能のオーバーホールが Mac OS X に真の意味で施されたのは、10.5 Leopard が最後だった。10.5 Leopard ではインターフェイスが調整されるとともに、私たちがいつも使っている数多くのアプリケーションやシステム要素、例えば Finder などに改善が施された。それとは対照的に、Apple は 10.6 Snow Leopard を主として内部的な変更を施して、パフォーマンスを改善するとともに将来の発展のためにより一貫性のある基盤を提供するものと位置付けた。(個人的には、私は Snow Leopard が強力なリリースだと感じたことは一度もない。初期のいくつかの改訂版では数多くの問題を経験したし、今もまだ説明の付かないシステムの故障が起こって再起動を余儀なくされることがあって、その頻度は私が Leopard や、さらには 10.4 Tiger で経験したよりも高い。)

けれども Lion は、数多くのユーザーレベルの仕掛けや、飾り立てや、新しい作業のやり方などに満ち満ちている。Lion をテストしながら、私は Apple が長年 Mac OS X に存在していたけれどもあまり価値が高くなかったもののいくつかを _削除_ しさえしたことに気付いた。(それらが具体的に何かはリリース後に議論したい。)

しかしながら、それらの新機能の大多数は、これまで一度も Mac を使ったことがない、さらにはコンピュータを使ったことさえないユーザーたち、あるいは伝統的なオペレーティングシステムを使いこなすのにいつも困難を感じていたユーザーたちを狙ったものだ。iOS は、コンピュータを欲しいと思わない人たちを惹き付けることに成功した。なぜなら、iPhone や iPad はデスクトップのオペレーティングシステムと同じ困難を引き起こさず、過剰な選択肢を提供しないからだ。

あなたが iPad の電源を入れると、スワイプすればスクリーンのロックが外れ、あなたにできることが画面一杯に表示される。それらはアプリであるが、同時にそれぞれが通常非常に具体的なアクションと結び付いている。大多数のアプリはたった一つのことだけをするからだ。Apple は、ウィジェットだらけの多目的プログラムが増えないようにと努めてきた。一方 Mac や Windows のシステムに電源を入れれば、さまざまのものたちがあって、それらとやり取りできる方法も多種多様に可能なので、圧倒されてしまうことがある。私の義理の母が言うように「何かを何かの中へ動かそうとしても、何にも起こらないことがよくある」ということにもなる。

クラシックなデスクトップのインターフェイスは、1950 年代のオフィスのデスクの上という時代遅れなモデルを持っている。書類はフォルダの中に入れて整理され、傍らにはゴミ箱がある。このモデルは、何百万という人たちにとって Unix のコマンドライン・インターフェイスに比べてずっと使いやすかった。それはちょうど、コマンドライン自体がそれ以前のコンピュータとの交流方法(パンチカード、スイッチ、ワイヤーなど)に比べて大きな前進であったのと同様だ。そして、1980 年代に成人した人たちや、あるいはデスクトップのメタファーが自然に感じられる人たちにとっては、たとえ抽象的なものと具体的なものを奇妙な具合に頭の中で結び付けなければならなかったとしても、このデスクトップのインターフェイスは問題なく使いこなせるものだ。

でも、今や誰もがこのデスクトップのインターフェイスをうまく使いこなせるわけでないことは明らかだ。これまで三十年間大衆市場に出て、いくら洗練に洗練が重ねられたとしても。それは、ユーザーたちの知能に問題があるのではない。私の義理の母は非常に賢く、何十年もプロの世界で仕事をしてきた人だ。また彼女は二十年以上も Mac を使ってきた。それでも、彼女にはすべてが全く意味を成さない。

もちろん、私たちの多くはオペレーティングシステムを自分の中に取り込んで、これらの仮想的ツールがまるで自分の考えの延長であるかのように使いこなせるようになっている。けれども人によっては(おそらくそういう人たちが大多数かもしれないが)デスクトップのインターフェイスに含まれるものたちすべてが、互いに無関係なオブジェクトが雑多に並び、具体性も予想可能な性質も何もなくただ困惑するばかり、そのため基本的な使用法においても丸暗記しておいたものを苦労して思い出しながら一連の手順をこなす苦行が要求される、という風になる。。そういった手順の覚え書きを小さなメモ帳に書き留めている人たちを、あなたは何人知っていることか?

だから、それこそが Apple が iOS で目標とした狙いだ。デスクトップのメタファーが全然ピンと来ないという人たち、可能な場所、オブジェクト、アクション、結果の膨大さに、ただただ困惑させられるという人たちを対象としたのだ。私たちは皆、この区分けに属する人たちを知っている。はっきりさせておきたいが、これは決して iOS が「使いやすい」かどうかという話ではない。そうではなくて、直接操作というメタファーを捨てて、従来たくさんあった場所、アクション、オブジェクト、結果などを大幅に減らしたのだ。iPhone、iPod touch、iPad の成功をたった一つの要因に結び付けることはもちろん不可能だが、iOS で焦点を絞り単純化したことがそこに大きく働いたことは疑いない。

話を Lion に戻そう。Lion には、私たちオールドタイマーを狙った要素ももちろんたくさんある。AirDrop は、あらかじめネットワークの設定をせずとも人々の間でファイルの移動ができるようにしたいという問題に対処する。それは素晴らしいアイデアであり、Wi-Fi Alliance の Wi-Fi Direct 構想から大きくアイデアを取り込んでいる。いつの日か、Wi-Fi Direct 構想はすべての Wi-Fi-認定機器で利用できるようになるだろう。また、長年の Mac ユーザーたちの多くが歓迎するであろうもう一つの機能は、Apple Mail がビジュアルに、また会話ベースに、強化されることだ。さらに Preview も機能強化されて Office や iWork の書類が読めるようになるし、ユーザーごとのスクリーン共有や、FileVault 2 のフルディスク暗号化もある。

その他の Lion の新機能の多くは、ちょっと慣れを要するかもしれないが、いったん広く利用されるようになれば既存の Mac ユーザーたちのほとんどが歓迎するようになると思われる。例えばオートセーブとバージョンは、最初のうちはこれまでより多くの精神的努力を要するだろう。どのアプリが手動で保存しなければならず、どのアプリではそれが必要でないかを自分の手で切り分けて使わなければならないからだ。でも、いったんほとんどすべてのプログラムが私たちの書く原稿をオートセーブするようになり、作業中は一時間ごとに原稿をファイリングしてくれるようになれば、私たちは仕事の効率の向上と成果を失う危険度の減少とを経験できるようになるだろう。私の場合、「再開」機能がきっと気に入るに違いない。プログラムをスタートさせた際に、前回と同じ書類がすべて前回と同じ状態で開くだけでなく、再起動や、あるいは(まだ間違いなく起こるであろう)クラッシュの後にも、システム全体がその前と全く同じ状態に戻るからだ。

それから、例えば Launchpad のように、無視しても何の問題もない機能もいくつかある。Launchpad はランチャーだが、長年の Mac ユーザーでアプリケーションの起動に問題を感じていた人はほとんどいないだろう。私たちは既に、Dock でアイコンをクリックしたり、Finder でアプリケーションや書類のアイコンをダブルクリックしたり、あるいは LaunchBar などのユーティリティを使ってキーボードから起動したりしている。

だから、私としてはそういった機能のいくつかにちょっとだけワクワクした気持ちを持ってはいるものの、圧倒的な魅力を感じることはないだろうという点ははっきりしている。長年の Mac ユーザーの多くにとって、Lion で最も重要なのは Snow Leopard で目にしたと同じような細かな改良の類いだ。それは、近く iOS 5 リリースで登場するような根本的な変更とは大違いで、iOS 5 で Apple は、知能のきらめきを欠いていたコンポーネント (Camera アプリや Messages アプリなど) や、いつもユーザーたちを困らせていたテクノロジー (iTunes 依存や、通知など) の多くを、新たなものに取り替えたり、徹底的に見直したりしている。

でも、それは私たちにとっての話だ。Lion を最も興味深く感じる人たちは、この記事を読んでいる皆さんではない。Lion が出荷されたら、新しいユーザーか、以前からいつも苦闘していたユーザーを座らせて、Launchpad の使い方を教えてあげるとよい。マルチタッチジェスチャーもいくつか教えてあげよう。ウィンドウがどこへ行ったか分からなくなった時のために Mission Control を説明しよう。初回を除いて、手で保存する必要がないと知らせてあげよう。(たぶん Apple は初回の保存についても何か開発中なのだろう。)自分が変更した内容も、バックアップも、すべて自動的にディスクに保存されることを説明してあげよう。Time Machine をセットアップしてバックアップを管理させれば、毎度毎度外付けハードドライブを差し込まなくてもよい。ちゃんと働いているのだから。

Lion は、iOS を真似ているのではない。むしろ、クラシックなデスクトップのインターフェイスが向いていない人たちにも iOS を極めてアプローチしやすいものとした理由の真髄を、Apple が把握したということなのだ。つまりそれは、大多数の人々に向いているということだ。たいていのスマートフォンで従来「ビジネスユーザーだけが好きになれる」ものであったインターフェイスを iOS が打ち破ったのと同様に、Lion がコンピューティング体験をテクノロジーに詳しくない平均的な人々のためのものへと転化させる、ということも十分考えられる。さらに、Lion はその方向へ向かう単なる第一歩に過ぎないのかもしれない。iOS が指し示すその方向へ、さらにもっと進化したバージョンの OS X (もはや Mac という単語は付かない) が登場してくるのかもしれない。

未来に関する予測はすべて、実際にその時にならなければどうなるか分からない。私としては、新しいユーザーに説明する際デスクトップのさまざまのややこしいインターフェイス慣習にいちいち言い訳せずに済むのは嬉しいと思うし、彼らが iOS に慣れるに従って獲得してきたスキルの多くをそのまま持ち込めるのも良いことだと思う。けれども、私の Mac から生産性の最後の一滴までを絞り出せることで生計を立てているパワーユーザーとしての私にとっても、私の仕事の効率を少しも改善しないような初心者向け機能は全部ただ無視すればよいと知っただけでも大いに安心できると思う。

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iCloud、Dropbox、Elastic Computing について: クラウド入門

  文: Rich Mogull <rich@tidbits.com>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Apple が、長らく噂されていた iCloud サービスをついに公表した。どうやら、今どきはちょっとマウスを振っただけで必ず「クラウド」なるものに行き当たるようだ。この「クラウド」という漠然とした用語は、時としてインターネットの上で走るものなら何でもこの言葉で表わすことができるという風に思われている。

けれど現実には、クラウドコンピューティングという用語には実際はっきりとした定義があって、これはメインフレームの時代以来データセンターに襲いかかったものの中で、唯一群を抜いて破壊的とも言えるテクノロジーだ。このクラウドコンピューティングに、同じくらい影響力の大きいモバイルコンピューティングの急成長を組み合わせることで、今や私たちはインターネットの誕生時と肩を並べられるほど大きなインパクトを持つ可能性を秘めたテクノロジーの嵐の中をさまよっていることに気付かされる。

クラウド(雲)が形を成す -- この「クラウドコンピューティング」という用語は世に長年漂ってきたが、2006 年に Amazon が Elastic Compute Cloud (EC2) サービスを開始しして以後、より明確な形をとるようになり始めた。Amazon Web Services の拡張として始まった EC2 では、顧客が Amazon のデータセンターにあるコンピュータを「借りる」ことができる。実際にそれ専用のコンピュータを借りるわけではなくて、仮想マシンをブートさせていつまでも好きなだけ走らせ続けることができ、Amazon は十分なコンピューティング能力とメモリ、ストレージの空きがあるどこかのホストマシンを選んでそれに割り当てる。

EC2 は、Amazon がそのデータセンターにあるリソースの利用を最適化するために開発したテクノロジーの拡張となっている。専用のコンピュータを専用の機能に割り当てて使うのは極めて効率が悪い。システムを構築する際には需要急騰の可能性にも対応できるだけの処理能力を備えておかなければ、ロードが急激に増えた場合にアプリケーションが機能しなくなってしまうかもしれない。例えば、自分のサイトがDaring Fireball によってリンクされたためにトラフィックが急騰してクラッシュしたという経験を持つ人も多い。

状況によっては、例えば大規模な小売業ウェブサイトで、年末前にショッピングが集中してサイトが止まっては非常に困るというような場合、その時以外には利用されることのない膨大な処理能力を用意しなければならないかもしれない。また、サービス全体の中の個々のシステムすべてで処理能力が必要となるため、配分は均等にならない。例えば、一つ一つのデータベースサーバが需要の集中を見越してそれぞれに余分の処理能力を必要とする上に、さらに状況が悪化した場合に備えて別途に専用のデータベースシステムも作っておく必要がある。

EC2 (および Amazon の内部プラットフォーム) はこの問題に対処するため、すべてのハードウェアをプロセッサとメモリの一つのプールとして集め、通常のオペレーティングシステムではなく「ハイパーバイザ」として走るらせる。ハイパーバイザは仮想化を可能にするソフトウェアで「仮想マシンマネージャ」とも呼ばれる。Windows、Linux、Mac OS X などのオペレーティングシステムがこのハイパーバイザの上で走り、ハイパーバイザがそれぞれの仮想マシンにプロセッサタイムあるいはコアを分配し、ストレージやメモリを割り当てる。仮想化のお陰で、データベースサーバとアプリケーションサーバを同じプラットフォーム上で、別々の分離された仮想マシンの中で走らせることが可能となる。それらは同じ物理的サーバの上にあってもよいし、なくてもよい。そのいずれであるかをあなたが気にする必要もない。(TidBITS は去年、私たちのメインの Xserve に問題が起こったのを機会に仮想化へ移行した。2010 年 8 月 24 日の記事“TidBITS の緊急脳移植”参照。)

仮想化は強力ではあるが、同時にまだ非効率的とも言える。個々の仮想サーバにどれだけの能力を割り当てるかを計画する作業はやはり必要だ。この点について私たちは体験から学んだ。(最近起こった TidBITS および Take Control サイトの数回の機能停止は、予想外にロードが集中した場合それを処理できるよう Apache と MySQL の設定を調整する必要があったことに関係していた。)動作中の仮想マシンをシステム終了せずもっと大きなハードウェアへ移動させることができるなど、気の利いたことも時にはできるけれど、やはりたくさんの手動の管理作業が今もまだ必要となる。そして、その点こそが、クラウドの魔法が力を発揮するところなのだ。クラウドコンピューティングにおいては、すべてのリソースが一つ所にプールされ、プールに貯えられたものの備えと利用を、必要に応じて「クラウドコントローラ」が調整し指揮する。

その動作方法は次のようなものだ。もしも特定のサイズのデータベースサーバが必要となれば、あなたはクラウドコントローラにそれを命じて、どれだけの量のメモリやストレージが必要か、どのオペレーティングシステムを使いたいかなどの注文を伝える。「イメージ」を注文することさえできる。これはあらかじめ設定済みの仮想マシンで、あなたが必要とするアプリケーションがすべて組み込まれており、すべてを一からインストールする必要がない。クラウドコントローラは、あなたの注文を満たすことのできる物理的サーバを選択する(そのサーバは他のたくさんの仮想マシンも走らせているかもしれない)とともに、そのサーバに対してあなたが注文したイメージをストレージから読み込みインスタンスを作成するよう命じる。このコントローラは賢くて、利用可能な能力を最も効率的に利用できるように仮想マシンを配置することができる。

さらに良いことには、殺到した要求を処理するために多数の余分な仮想サーバを開くのではなく、クラウドコントローラは必要に応じて追加の仮想サーバを(自動的に、決められたルールに従って)素早くスタートさせ、必要がなくなれば素早く終了させる。もしもあなたが多数の異なったアプリケーションをあなたのデータセンターの中で走らせていれば(大企業では何百ものアプリケーションを何千ものサーバで走らせているのが普通だ)それらすべてが同時に高い需要度となる可能性は低いので、クラウドコントローラがすべてをうまく指揮してあなたのリソースを最も効率的に利用するようにできるわけだ。

こうして、私たちのデータセンターは、単に多数の独立のサーバが別々に走りつつそれぞれが余分の能力を備え、かつ予備のサーバが溢れたロードを処理できるよう控えているという状態を脱して、共有されたハードウェアのプール、つまりクラウドの中で、いくつものサーバがそれぞれ必要に応じて動き出したり止まったりする状態へと移行したのだ。これが「コンピュート・クラウド」と呼ばれるものだが、その他に「ストレージ・クラウド」というものもあって、こちらは多数のハードドライブを組み合わせてストレージのプールとして利用するためにデザインされている。もしも Amazon がさらなる能力を必要とするようになっても、同社の技術者たちはただ適当にハードウェアを追加して、そこにそれを同社のクラウドに接続するためのソフトウェアをロードするだけでよい。あとはクラウドコントローラが、どうすればそれを最大限に使いこなせるかを見出してくれる。これこそが重要なことだ。つまり、あなたが自分ですべてを手で管理し、個々のアプリケーションやサービスごとにそれぞれ特別の設定を施すという必要が、なくなるのだ。

さて、ちょっと物事を単純化して説明し過ぎたかもしれないが、基本的にこれがクラウドの基盤構造の仕組みだ。Amazon は自らの手でカスタムソフトウェアを作ってすべてを構築しなければならなかったが、今日では、商品化されたクラウド基盤構造プラットフォーム (例えば VMware) もあるし、またオープンソースの選択肢 (例えば OpenStackEucalyptus) もある。

公の場に出る -- Amazon にはまだ他の問題もあった。自社のコアビジネスのために以前よりはるかに効率的に自社のリソースを使えるようにはなっていたけれども、同社は依然として、活動内容の急激な上昇、例えば年末のショッピングシーズンなどに対応できる予備のハードウェア能力を必要としていた。それらのハードウェアは、普段はただ控えているのみだが、必要時にハイパーバイザが仮想の指を動かして呼び出せるよう備えているものだ。

Amazon は、この予備の能力を借りられれば有益だと思う人たちがいるだろうというところに目を付けた。(余分の内部サーバを購入せず)新しいアプリケーションを開発するためにも、あるいは永続的な目的のためにも。そこで同社は Amazon EC2 をスタートさせ、誰でもクレジットカードと、ある程度の技術的知識を持っていさえすれば、Amazon のクラウドの中で自分独自の仮想システムを走らせることができるようにした。Amazon はまた、それ単独にも EC2 と共にも動作できるストレージサービス Amazon S3 と、リレーショナルデータベースサービス Amazon RDS もリリースした。その他にもいくつか提供したものがあるが、それらはあまりにも難解で情報テクノロジーの専門家でなければ好きになれないようなものばかりだ。

そこで興味深い問題が発生した。今ではさまざまの人たちがさまざまのアプリケーションを共通の基盤構造の上で走らせるようになった。けれども、彼らは皆、近所の住人たちが自分のサーバを覗き見することは望まない。そのため、Amazon は顧客たちを互いに分離する機能を盛り込んだ。あなたが使う仮想サービス同士をあなたが接続することはできるが、他の人たちのものはすべて切り離されている。

最初のバージョンの EC2 はかなり限定的なものであった。けれども現在では多数の異なったことができる。Evite など人気あるウェブアプリケーションや、大規模な企業向けアプリケーション、さらには個人のブログなども走らせられる。これらの顧客たちは固定料金を払うのではない。そうではなくて、料金は 何を使うかに基づいて決められる。ちょうど、電気料金が使った電力量に応じて決まるようなものだ。これを「ユーティリティ・コンピューティング」という。他の公共ユーティリティを利用するのと同じ形でコンピューティングのリソースを利用するからだ。例えば、私の会社は EC2 上で VPN サーバを走らせて、コーヒーショップでワイヤレスのインターネット接続をする際にも暗号化された接続が持てるようにしている。この仮想 VPN サーバの毎月の利用料金は、コーヒー(ラテでなくブラック)一杯と同じくらいだ。

EC2 は開拓者であったが、今日では他のクラウドコンピューティングサービス会社も多数存在している。例えばRackspace (ここは TidBITS をホストしている) や、 Hosting.com などだ。

プラットフォームを築く -- 今私が説明したのは、いわゆる IaaS (イアース、Infrastructure-as-a-Service) として知られるもので、そこであなたが消費するのはインターネット上に生の状態であるコンピューティング基盤構造だ。(あるいはあなたが自分で基盤構造を築くこともできる。)けれどもクラウドには他にもいろいろのものがある。例えば、あなたが仮想マシンといったものに煩わされることは望まず、ただカスタムアプリケーションを走らせたいだけだった場合はどうだろうか?

そのような需要に応えるために、PaaS (パース、Platform-as-a-Service) と呼ばれるサービスモデルが生まれた。これはなかなか奇妙な集合体であって、インターネット上のデータベースなどを含むとともに、それを Google のサービスに接続させることであなたのアプリケーションに Google の機能(例えば Maps など)を組み込むことができるようにし、さらにはブログや、カスタム Java アプリケーションなどそれだけで完結したアプリケーションも走らせられるようにする。

例えばブログを例にとって考えてみよう。従来は、自分のブログを共有ホストの上で運営する(その場合は使えるリソースに限界がある)か、または専用のホストか仮想プライベートサーバなどを使う(その場合はあなたがすべてを自分で設定しなければならない)必要があった。けれども PaaS があって、そこにブログのプラットフォームがサポートされていれば、あなたはもはや限度容量の問題を一切気にしなくてよい。ほとんどの PaaS サービスは IaaS サービスの上で動作していて、PaaS コントローラは単にあなたの必要に応じてリソースを確保するだけだ。あなたはもはや、プロセッサとか、メモリとか、オペレーティングシステムとかいったものを完全に忘れ去ってよく、あなたのアプリケーションを、そのサポートするプラットフォームの上で単に走らせるだけ、そのプラットフォーム自体が必要に応じて伸びたり縮んだりしてくれる。PaaS の実例としては、Microsoft の Windows Azure (.NET ベースのアプリケーションを走らせる) や、 Amazon の Elastic Beanstalk (Apache Tomcat 用の Java アプリケーションをサポートする) がある。

こうして、あなたが必要とするリソースのみを利用する、弾力性あるアプリケーションをあなたは手にできるようになる。もちろん、利用料金はあなたが使ったものに応じて決まるので、あなたのサイトが突然人気を博すれば、あなたの許に驚くような請求書が届くことを覚悟しなければならない。

クラウドソフトウェア -- では、ローレベルのことがらをすべて忘れて、ただ料金を払ってアプリケーションを使うだけにしたい場合はどうだろうか? これが SaaS (サース、Software-as-a-Service) と呼ばれ、Amazon EC2 よりもずっと以前から存在していた。 Gmail などのウェブメールサービスや、 Yahoo Calendar などのオンラインカレンダー、あるいは Salesforce などの高度なアプリケーションを使えば、それがまさに SaaS の実例だ。あなたはやはり他の顧客たちとリソースを共有するが、あなたの使用するものは他のすべての人たちから分離されている。ただ、何かをビルドするのではなく、あなたは既に完結したアプリケーションを利用して、使ったものに対して料金を払い、生のリソースそのものについては一切考える必要がない。

でも、すぐ後で見るように、何かが SaaS サービスであるからといって、必ずしもそれがクラウドコンピューティングの実例になるとは限らない。

クラウドを定義する -- 今私が説明してきた IaaS、PaaS、SaaS は、いずれもクラウドコンピューティングの サービスモデルだ。あなたが消費することのできるサービスを、違ったやり方でそれぞれ山盛りにした一つ一つのものと言える。私はまた主要な二つの 配置モデルについても述べた。一つはあなたが内部的に走らせるプライベートクラウドで、もう一つは Amazon Web Services や Rackspace のようなパブリッククラウドだ。それ以外の配置モデルとしては、内部的なリソースに外部のクラウドを予備能力として接続するハイブリッドクラウドや、政府の諸機関など互いに関連あるクループで一つの専用のクラウドを共有するコミュニティークラウドがある。

クラウドコンピューティングの定義はいろいろの異なったものが言われているが、最も一般的に受け入れられている定義は NIST (米国標準技術局、U.S. National Institute for Standards and Technology) によるものだろう。NIST は、三つの主要な部分に分けてクラウドの定義 (PDF リンク) をしている。本質的特性、サービスモデル、配置モデルの三つだ。

クラウドコンピューティングのサービスモデルと配置モデルについては既に説明してきた。また、本質的特性のいくつか(弾力性、サービス使用量の測定、リソースのプールなど)についても述べた。それ以外の特性としては、オンデマンドのセルフサービス(誰か他の人があなたのために何かを手で設定する必要がない)や、ブロードバンドのネットワークアクセス(それがなければクラウドへの接続も難しい)がある。

さて、ここからが定義のちょっと微妙な点だ。技術的に言えば、私たちが「クラウド」と呼ぶもののすべてが本当に「クラウド」であるわけでは ない。例えば、SaaS プロバイダの多くは未だに従来型の基盤構造の上で運営していて、要求が増加すればそれを処理するために手でリソースを追加しているのが実態だ。つまり、そういうところのサービスは弾力性を欠いている。また別の例としては、ブログのホスティングサービスがある。そういうものの多くは、個々のサーバごとにそれぞれブログの最大個数を設定していて、それぞれのリソースに上限を定めている。また、仮想化は使わない。たとえ仮想化を使っていても、それは静的な仮想マシンであってクラウドコントローラに管理されるものではない。さきほど私が説明したリソースのプールとは対照的だ。

アプリケーションあるいはサービスがインターネット上にあるからといって、必ずしもそれがクラウドコンピューティングを使っているとは限らない。

他のサービス、例えば Dropbox のようなものは、こういった定義の領域をまたいでいる。Dropbox にはウェブインターフェイスがあって、SaaS と似た形で機能する(あなたのファイルにアクセスして、例えばファイルの古いバージョンをダウンロードしたりもできる)けれども、Dropbox はプログラマーがそれを PaaS として利用することを可能にするような API もサポートしている。その上、あなたがファイルを Dropbox フォルダに入れて、それがクラウド上にミラーされたとすると、これは Dropbox が IaaS として機能していると言えなくもない。そう考えてくると非常にややこしいが、ユーザーとしての私にとって意味があるのは、自分のファイルが自分のコンピュータ一台一台すべてに魔法のように現われるということだけだ。

クラウドのパワー -- クラウドコンピューティングの本当のパワーと魔法が作用し始めるのはまさにここだ。データセンターの中にあるたくさんのハードウェアから、インターネットを横断して配布されるアプリケーションまで、今や私たちは膨大な、グローバルな、リソースのプールを持っていて、私たちはそれを、必要に応じて、オンデマンドで消費し、まるで電気代を払うかのようにしてその料金を支払うのだ。

このことに、ブロードバンドのネットワークアクセスとモバイルコンピューティングとを組み合わせれば、私たちが従来から知っているインターネット、つまり電子メールや、ファイル転送、ウェブのブラウズなどが、何だかちょっと時代遅れのもののように思えてくる。パーソナルコンピュータにしても、私たちはもちろん大好きだが、やはり少し時代遅れの感は否めない。今は、私たちのファイルがすべて、私たちがどこにいても、いつでも好きな時にアクセスできる。私たちの to-do リストやカレンダーが、使いたい機器のどれにも魔法のように同期される。携帯電話でブログを管理していれば、たとえ火の玉に襲われたとしても、サイトがクラッシュするのを心配したりする必要もない。

そして、サーバを運営している人たちはどうか? そういう人たちは、余っているハードウェアやソフトウェアをすべて一緒くたに共有プールの中に放り込み、その中から必要に応じて必要なものだけを取り出せるようになる。あるいは、仮想サーバをクラウドに準備しておいて、それらを iPad で管理し、インターネットのトラフィックが増えたり減ったりするに応じて膨らませたり縮ませたりできる。すべて自動的にだ。料金は、実際にあなたが使ったコンピューティングとメモリ、ストレージの量に応じて支払えばよい。

それから、私たちのインターネットアプリケーションはほとんどどこからでもサービスに接続してそれを利用することができる。Microsoft Azure 上でデータベースを走らせ、Google から地図を取り寄せ、訪問者にその人の Facebook ID を使ってログインさせられる。インターネットはもはや多数の孤立したサイトの集合体ではなく、互いに結ばれたサービスたちの一つの大きな連鎖であって、それらを組み合わせればあらゆる種類の興味深い使い道が生まれるものと感じられるようになってきた。

それはまるで、インターネット全体が一つの巨大なリソースのプールとなって、私たちがどのコンピュータからも、どのスマートフォンからもアクセスできるようなものだ。

iCloud とクラウド -- Apple の MobileMe サービスの現状は、SaaS (電子メール、カレンダー、ギャラリー、連絡先) と PaaS (同期、iDisk) との興味深い混合形と言える。MobileMe のバックエンドの基盤構造が本当にクラウドのプラットフォームであるのかどうか私は知らないが、表面上はクラウドコンピューティングの特性の大部分を満たしている。

では、発表されたばかりの iCloud についてはどうだろうか。見たところ、iCloud は SaaS、PaaS、IaaS のすべてを一つに集めて、Mac OS X と iOS の双方をサポートできるものにしたような感じだ。

Apple がこれらすべてを組み込むために同社のデータセンターでクラウドテクノロジーを利用しないということもあり得るけれど、消費者の観点から言えば、iCloud が私たちの言う本質的なクラウド特性の(全部ではないとしても)大部分を満たしていることは確かだろう。そこには弾力性があり、リソースのプールを用いていて、ブロードバンドのネットワークアクセスをサポートし、フルにセルフサービスだ。厳密な意味でサービス使用量の測定がなされるわけではなく、単にサービスの段階分けに依存するのみ(例えば料金を払ってストレージ容量を追加できる)だが、いずれにしても大多数の消費者にとってはその方が手軽だ。(だからこそ私たちは携帯電話の契約で通話数ごとでなく通話時間のブロック分けで支払っているのだ。)

iCloud はまた、デスクトップとモバイルのコンピューティングプラットフォームを完全に新たな方法で増築したものとなっている。Mac OS X と iOS の両方に結び付くことによって、iCloud はコンシューマ向けオペレーティングシステムとデバイスの歴史上最も大幅な進展の一つとなるかもしれない。それは Apple の複数のオペレーティングシステムと統合されて、現在全く異なってしまっている両端を一つに束ねることができる。もはや、コンピュータ同士の間でファイルを移動させる心配をする必要はない。もはや、新しいシステムを手で設定する面倒は起こらない。もはや、ハードドライブが故障しても大切な家族写真が全部失われることはない。あなたのコンピュータもモバイル機器も、もはやあなたのデジタル生活の中心ではなく、はるかに大きなプラットフォームの、いつでも交換可能な端点となる。iCloud は、最初の一歩からすでにこれらすべての機能を備えているわけではなく、すべての問題に対処できるわけでもないが、その道に向けて進み出していることだけは明らかだ。

私の Mac たちも、iOS 機器たちも、ある日突然に、それぞれ独立したプラットフォームであることを止めて、より大きな総体の一部分だという感じを見せ始める。それは魔法ではない。ただ、Arthur C. Clarke[訳者注: SF 作家、「2001年宇宙の旅」の作者]が言った通り、ある程度以上高度なテクノロジーはすべて、魔法と区別がつかないものであり、クラウドコンピューティングがそれに該当することは疑いを入れない。

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ExtraBITS、2011 年 6 月 13 日

  文: TidBITS Staff <editors@tidbits.com>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

今週私たちの課外読物となったのは Apple を巡るさまざまなニュースがほとんどで、それ以外では Adam が WWDC に関連して Tech Night Owl Live に出演し、Mac OS X Lion アプリケーション互換性を追跡する wiki が登場した。Apple は引き続き Lodsys に対して iOS 開発者のために立ち上がり、アプリ内購入に課していた過度の要件を撤回した。ビデオで見られるニュースとしては、Steve Jobs が Cupertino に建設を計画中の新社屋をプレゼンテーションしている様子をぜひご覧あれ。未来型の本館は一見の価値ありだ。

Adam、Tech Night Owl Live で WWDC の発表を議論 -- Apple の WWDC での発表が何を意味するのかと今も思案しているなら、あるいは少なくとも Apple がまだ Mac OS X Lion、iOS 5、iCloud をリリースしていない現時点で分かっていることをもとに私たちがその意味をどう考えているか知りたいなら、Adam がホストの Gene Steinberg と対談した今週の Tech Night Owl Live ポッドキャストをどうぞ。

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Apple、Lodsys の特許訴訟で仲介に動く -- Macworld に移った Lex Friedman が、Lodsys による特許侵害騒ぎの最新ニュースを報告する。5 月末に、Lodsys は七人の開発者たちに対して訴訟を起こした。(Apple はその七人に含まれていない。)けれども Apple は今回、この Lodsys の訴訟に被告として仲介に入ることを求める申し立てを提出した。Apple が Mac および iOS の開発者たちを風にさらされたままにすることを望まず、同社の法務部門の力を駆使することで開発者たちが Apple プラットフォームの上でそれぞれの製品を開発しても特許訴訟にさらされる心配が起こらないようにしたいと考えていることは明らかだろう。

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Apple、アプリ内購読の規約を変更 -- App Store 利用規約に近く変更が施され、Apple は出版者たちに対して定期刊行物のアプリ内購読料金を App Store 外での販売価格と同等もしくはそれ以下にしなければならないとしていた条項を撤廃する。2011 年 6 月 30 日をもって、出版者たちはアプリ内での購読に自由な価格を設定することができるようになり、またアプリ内購入を全く使わず購読を提供することも可能になる。ただし、アプリ外での購読を購入できるリンクをアプリ内に提供することは今後もできない。

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Lion アプリケーション互換性 Wiki -- RoaringApps が、数百の Mac アプリケーションをリストした wiki を作って、それぞれの Lion 互換性について現時点で知られている情報を示している。誰でもこのリストに項目を追加したり既存の情報を修正したりできる。これらの情報は予備的なものである(公式な情報源から来たものばかりとは限らない)けれども、来月 Lion にアップグレードするのに備えてディスクの準備を始めようと思っている人たちにとっては有益なガイドとなるかもしれない。

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Apple、円形の「宇宙船型」新社屋を計画 -- Apple のデザイン能力がその道具類に限られたものと思っているなら、あなたの頭をぐるりと回すことのできるものがある。360 度全方位の Apple 建築だ。Cupertino 市議会におけるプレゼンテーションで、Apple CEO の Steve Jobs が計画中の新社屋について概要を説明した。円形の本館には 12,000 人の従業員が勤務でき、現在工業オフィスパークとなっている広い一帯を、緑あふれる新しいキャンパスに変える。

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