TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#1113/13-Feb-2012

ようやく、次々と出てくる最新ニュースの連続から一息つくことができた! 今週はちょっと一歩退いて、何人かの寄稿者たちが書いてくれたいつも新鮮で役に立つコンテンツをお届けしたい。まずは Glenn Fleishman の、彼自身が新しい AirPort Utility 6.0 をくまなく説明した 15 分間のスクリーンキャストを紹介する短い記事だ。それから Marshall Clow が、あり得ないような名前の付いた iSesamo(これはへら (spudger) だが、何のことか分からなければぜひ記事をお読み頂きたい)をレビューする。Michael Cohen は、インストールに一時間も悪戦苦闘してやっと Fujitsu ScanSnap スキャナを動かすことに成功したが、このハードウェア会社はソフトウェアにも同じくらい努力を注ぎ込むべきだと指摘する。Steve McCabe は、iPhone 用の FileMaker Go を概観した記事を寄稿する。これを使えば外出中にも FileMaker Pro データベースが使えるようになる。最後に Tonya が今週号の締めくくりとして、彼女が Microsoft Word から Apple の Pages へ切り替えるために編み出した現実的な戦術のいくつかを詳しく語る。今週注目すべきソフトウェアリリースは、Bookle 1.0.3、Piezo 1.1.2、iMac, MacBook Pro, MacBook Air ファームウェアアップデート、Carbon Copy Cloner 3.4.4、それに ChronoSync 4.3 と ChronoAgent 1.3 だ。

記事:

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AirPort Utility 6.0 をスクリーンキャストで解説

  文: Glenn Fleishman <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Mac OS X 10.7 Lion 用の新しい AirPort Utility 6.0 に関して多数の質問を受けたので、それに応えるために私は 15 分間のスクリーンキャストを録画して、YouTube で観られるようにした。このスクリーンキャストには、今回の新バージョンの表と裏のすべてが示されている。バージョン 6.0 を気に入った人たちもそうでない人たちもいるけれど、私はこのバージョンにお薦めすべき点がたくさんあると思うし、ことに新たにネットワークをセットアップしたいと思っている人にお薦めしたい。(既存のネットワークを使っている人ならばバージョン 5.x を使い続けてもよいかもしれない。)

この記事のウェブ版にビデオを埋め込んでおいたが、このビデオは高解像度で録画されているので、リンクをクリックして YouTube で視聴される方がよいと思う。YouTube のページで、解像度ピッカーを使って 1080p HD を選べば、スクリーン上の文字も読めるようになるだろう。

AirPort Utility 6.0 を文章で説明したものとしては、2012 年 2 月 1 日の記事“AirPort Utility 6.0 が iCloud 対応を追加し、多くの機能を削除”をお読み頂きたい。

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iSesamo:より良いスパッジャーが出た

  文: Marshall Clow <[email protected]>
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

時折、電子機器(小物)を分解しなければならないことがある。時には易しいものもある - 例えば Mac Pro は素晴らしいデザインで、ラッチを反転させそして側面パネルを外せばバラバラになる。Mac mini - とりわけ前のモデル - はもっと難しい。[Tonya の 2010 Mac mini に SSD をインストールするのにほぼ一時間かかってしまった最近の経験から、私も証言出来る -Adam] 更にもっと難しいのは殆どの MacBook と全ての iPod である;概して、これらは工場でパチッと嵌めてしまえば後は Apple の訓練を受けた専門家以外の人によって分解されない様に設計されている。

しかしながら、一般の我々も時には中に入り込まなければならない場合もあるが、この仕事も今では iFixit や Other World Computing の Install Videos の様な資源のお蔭でずっとやり易いものとなっている。これらのシールされた機器に入り込んで作業をするには、適切なツール類が必要である、例を挙げれば、ドライバーだが、マイナス、プラス、それに Torx といったものが色々なサイズで必要である。(もしまだ何もお持ちでないのであれば、Newer Technology に $17.95 の 11 ピースの携帯ツールキット があり、これで最低限はカバー出来る。) しかしながら、例えば iPod ケースをこじ開けるのにマイナスドライバーを使えるのではとお考えなら、これはうまくいかない。通常の大きさのドライバーの刃は厚すぎて合わせ目に差し込むめないし、薄手の時計用ドライバーは先がとんがり過ぎている - ケースをこじ開けるに必要なテコにはなり切れずプラスチックに穴をあけてしまう結果となる。

解決策は "スパッジャー" と呼ばれる極めて簡単なツールである。これは薄い金属又はプラスチックの刃であり、この刃が二枚のプラスチックケースの間にぴったりはまり、何も壊すことなくこじ開けさせてくれる。

私は安売りサイト Meritline から入手した一組のプラスチック製のスパッジャーを持っていた。これは信じがたいほど安く- $1 で中国からの送料無料が含まれていた - そしてうまく働いた... 一回だけ。最初の作業で使った後、二つとも壊れてしまったのだが、柔らかすぎるプラスチック製であり無理もない (そして Newer Technology でさえこのプラスチックスパッジャーの寿命は限られていると前もって言っている)。と言うことで、Newer Technology の人が彼らの新しい iSesamo スパッジャーを試してみないかと言ってくれた時、私は是非にとお願いした。

この iSesamo は、極めて薄い、柔軟なスチール品で、寸法はおおよそ 5 インチ長 そして .75 インチ幅 (12.7 x 1.9 cm)、そして中央に握り易くするための柔らかいゴムのカバーが付いている。一端は角が丸められており、他端は緩やかに (しかし鋭くはない) 尖っている。両端のむき出しの部分がプラスチックケースの間に滑り込み、そしてこの金属は私が試した色々なものをこじ開けるのに必要なだけたわんでくれた:試したのは MacBook, 初期の白色 iPod、そして 私の地元の極小醸造所の生ビールつぎ栓である。

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iSesamo は $8.79 で Other World Computing から売られていて、これは私が前に持っていたプラスチックの $1 プラッジャーよりも間違いなく 9 倍は良い。これは一つの事しか出来ないものであるが、この技なしでは、あなたの iPod や iPhone の中に入り込むことは出来ない。"スパッジャー" はかなり総括的な言葉であり、Other World Computing では他のものも売っている - $3.95 の Apple Nylon Probe Tool - これはケースを開けるには iSesamo 程には役立たないが、内部のちっぽけな電線をソケットから外す時、周りの部品を傷つけたり或いは引っかいたりしない様にするためにはより使い易い。

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ScanSnap をインストールするのはスナップとはいかない

  文: Michael E. Cohen <[email protected]>
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

最近終了したばかりの Macworld | iWorld 2012 カンファレンスで ("Macworld | iWorld 2012: 一言で言えば、自信たっぷり" 30 January 2012 参照)、私は色々な製品の業者と話をすることにも時間を費やしたが、中には招待によるものも少なからずあった (この様なイベントにメディアの人間として参加したことのない人には、話をしたいというメールによる招待がどれ程沢山来るか見当もつかないかもしれない)。そんな中の一つが Fujitsu の人との会談で、彼らは各種のスキャン製品を手短にデモしてくれたのだが、これは私が Joe Kissell の本 "Take Control of Your Paperless Office" の作成の手伝いをする中で興味を引いたものであった。この本の中ではスキャナーは目に付くように特集されていた。この会談の終わりに、私は Fujitsu ScanSnap S1100 を一台レビュー用に与えられたことにびっくりした。これはデジタル道行く戦士のための小さなスキャナーである。

まずは、良い話から。この小さな機器はわずかに 3/4 ポンドを切る (0.35 kg) ほど軽く、極めてスリムでバックパックや鞄に容易に収納出来る。これは USB 給電だけで動くので電源ユニットは必要でなく、おまけに添付の USB ケーブルには Velcro 紐が付いていて、言ってみれば丸めてしまうのはスナップ(わけもない)である。ScanSnap S1100 は一度に一枚の紙、そして片面だけしかスキャン出来ないが、紙を通すのにきっちり位置合わせをする必要はなく、スキャンも早い。スキャンの品質も、超高性能という訳ではないが (600 x 600 ピクセル/インチ)、私のニーズに対しては十分以上と言える。これを家に持ち帰り設定が終わった所で、完璧なペーパーレスのオフィスとまではいかなくとも、散らばった紙が極めて少ないオフィスに向かっての第一歩を踏み出すには十分役立つと私は感じた。

一方で、設定するのは困難であった。お分かりの様に、Apple の Mac OS X 10.7 Lion は昨年の 7 月にリリースされており、更にそれに先立って開発者用の試験期間も数か月あった。にも拘らず、この ScanSnap S1100 に付属の設定用の DVD-ROM には Mac OS X 10.4 から 10.6 迄としかコンパチでないソフトウェアしか含まれていないのである。そしてこれは Fujitsu が意図してのものである:Getting Started には、バンドルされたアプリケーションの一つである Cardiris 3.6 は Rosetta を必要とすると書いてある。そして、我々全てが認識している様に、これは Mac OS X 10.7 下では故郷を想う死んだオウムになってしまっている。(異なる ScanSnap スキャナーモデルでは異なるソフトウェアがバンドルされている可能性は十分あるので、私の記述は私が受け取った S1100 ユニットにのみ当てはまることに注意されたい。)

しかしながら、包装の中にしまい込まれた一枚のペラペラ紙には "この ScanSnap を Mac OS X v10.7 (Lion) 上で使うためには、まずバンドルされたソフトウェアをアップデートする必要がある" と書いてあり、そこには (結構長い) URL が書かれていて、更に詳しく知るためにはそれを Web ブラウザに手入力する必要がある。もっとも、その参照されたページには一連のリンクが与えられているだけであった;まず S1100 リンクをクリックしなければならず、それで開くページにはまた幾つかのリンクがあって、目的のアップデートに到達するには更にその先からリンクを辿らなければならず、しかもそのページをずっと下までスクロールダウンしなければアップデートが見つからない。そして、その通り 幾つか" である - 実際には二つの個別のアップデートをダウンロードしなければならない、一つは ScanSnap Manager ソフトウェア用であり、もう一つはバンドルされた Cardiris ソフトウェア用である。ここから話は更に面白くなる (私は "更に面白くなる" と言ったが、その意味する所は逆である):この Cardiris ソフトウェアは単純にダウンロード出来ない、代わりに、そのソフトウェアの要求書を登録し、そして確認のメールメッセージが届くのを待つと、そこにようやくアップデートが得られるリンクが示される。

一行の Lion 使用説明が書かれた (11 の言語で) このペラペラ紙がはっきりさせていないのは、ScanSnap ソフトウェアを Lion 下でも幸せである様にするためになすべきことの順序である。DVD などバイパスして最初からアップデートをダウンロードすべきなのか、或いはまず DVD 上のそのソフトウェアをインストールしてそれからアップデートをダウンロードしインストールすべきなのか? 私は経験に基づいた推測をし、まず DVD 上にあったインストーラーを走らせた、と言うのもこのスキャナーにはソフトウェアがインストールされる迄接続しない様にと書いた大きな警告のテープが貼ってあったからである。

このインストーラーは、どの項目をインストールするかを選択出来る様になっている:私は私の Lion 化された iMac では Cardiris は走らないであろうことを知っていたので、これを外した - 間違いであることがすぐに分かった、何故ならば Cardiris アップデータは古いバージョンが存在することを必要としたからである。この古いバージョンは Lion 下では全く働かないにも拘わらずである。更にこの ScanSnap インストーラーは終了後再起動を必要とするタイプのものであることも気付かされた。ため息、それも二つ! 何故ならば、私はアップデートするために必要な Rosetta を必要とする Cardiris アプリケーションをインストールするためにこのインストーラーを再度走らせねばならなかったからであり、おまけに私はこれを入手するためにメールの山をかき分けねばならなかった。

この常識とかけ離れた全経験に、私は優に一時間を超える時間を費やした。結果的には、私は機能するスキャナーと使うために必要とされるソフトウェアを手にすることが出来た。このソフトウェアは完璧であるなどと言うつもりはない:、使用には耐えるが、ある部分は Mac OS X の初期の時代から逃れて来た様だし、他の部分では昔流のグレイ対話ユティリティの必要最小限をとったものの様でもある。更に言えば、これらは色々なコンポーネントの中に散りばめられていて、あなたの目の前にある物もあれば、また隠れているものもあり、ある与えられた場面でどれが仕切っているのかを知るのは不可能である:誰が最初で、二番目の名前は何というのかを知るにはオンラインのヘルプを本気で読まなければならない。いずれにしても、私はこのスキャナーを使って PDF (しかも検索可能な、バンドルされた ABBYY FineReader OCR のお蔭で) を作ったり、そしてドキュメントを直接 Word や Excel 或いは Google Docs へ送ったりすら出来る (もっとも Pages の様な Apple 自身のオフィスアップスのどれに対してもダメではあるが)。私のニーズに対しては、この ScanSnap は、ハードルが取り除かれた今では、十分に使えるものとなっている。

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しかし周辺機器ハードウェアに関して言えば、ソフトウェアが無ければ、ハードウェアがどれ程優れているかは (そしてこの ScanSnap ハードウェアは良さそうに見える) 問題ではない。周辺機器を動かすソフトウェアは完全に邪魔にならない様になっているか (表舞台からは見えず、無言でそして効率的にその仕事をこなす)、或いは可能な限り単純で切れ目のないユーザー経験を提供すべきである。私が受け取ったこの ScanSnap ソフトウェアは、その意味で落第である。それに、2012 年にもなって Fujitsu の様な大手企業がその Mac ユーザーに対してこの様な粗末な扱いをしなければならない如何なる理由も見当たらない。一方で Doxie の様なより小さな、そしてより動きの良い企業が、ほぼ同等のモバイルスキャナーを製造しており、しかもケーブルも必要とせず (これはメモリにスキャン出来そして Mac, PC, iOS 機器、或いはクラウドに無線で送信出来る)、そしてそのドライバーソフトウェアも使い易く、しかも 2012 年の Mac、2002 年ではない、用にデザインされている様に見える。

私はレビューユニットを提供してくれた Fujitsu に対して感謝しているし、しっかり使っていこうとも思っている。ハードウェアは本当に洗練されており、ScanSnap S1100 はソフトウェアが完全に作り直されればもっと良くなる。

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FileMaker Go で FileMaker データベースを iOS に

  文: Steve McCabe <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

FileMaker, Inc. が Apple の全額出資する子会社であることは、ともすれば忘れがちだ。Claris の直接の後継社たる FileMaker は、Apple 宇宙におけるいわば赤毛の継子のようなものと成り下がり、その主たる製品の数多くの熱心なユーザーたちを悲しませてきた。いろいろな意味で、同社のデータベースプログラム FileMaker はこの宇宙の中の変則的な存在であり、Apple のソフトウェアが Claris ブランドを身に帯びていた時代への先祖帰りとも言える。

1998 年以後、Claris は FileMaker, Inc. となった。この会社はその唯一の親会社とあまりにも完全に分離した状態となって、これら二つの会社が互いになんの繋がりもないと思っても何ら差し障りがないとさえ言えるほどになってしまった。Apple のウェブサイトで検索をすれば確かに FileMaker, Inc. に言及している個所が見つかるものの、それを見つけ出すのは容易ではない。実際、Mac App Store で入手できるのは Filemaker の個人用データベースたる Bento のみであって、同社の年長の方の製品は Mac App Store に見当たらない。そして、この二つの企業の間の距離がより明確になるのは、iPhone の上をおいて他にない。

Apple が 2008 年に iOS App Store をデビューさせた際、FileMaker の愛好家たちはこれこそ Apple 自身の提供する立派なデータベースソフトウェアなのだから間違いなく App Store にいの一番に登場する製品群のうちの一つとなるだろうと確信していた。結局のところ、FileMaker はモバイル市場に全く登場しなかった訳ではなかった。FileMaker Mobile は早くも 2006 年に Palm や Pocket PC のユーザーにソリューションを提供した。けれども、同社が FileMaker Go をリリースしたのは 2010 年 7 月、App Store の開店から二年も経ってからのことであった。私はその後かなりの期間にわたってこれを使ってきたので、ここに私の印象を紹介させて頂きたいと思う。

iPhone 用の FileMaker Go は。衝動買いで買えるものではない。$19.99 という価格では App Store で最も安価なものとは言えないし、FileMaker クライアントの中で最も安価ですらない。FMTouch ならその半額だ。それに、$19.99 で手に入るのは iPhone 版のみで、iPad 用の FileMaker Go は $39.99 もする。(注意: この記事では iPhone 版のアプリのみを扱うが、スクリーンサイズによる懸念が減るとはいえ、考え方としては iPad 版も同じだ。)

FileMaker Go は、基本的には FileMaker のシンクライアントだ。FileMaker データベースの内部のデータを、iPhone 上で、オンスクリーンのキーボードを使って、かなり手軽に操作できる。フィールドをタップすればそこに入力でき、Tab キーはないので Next ボタンをタップしてフィールド間を移動する。ボタンでスクリプトを呼び出すのはデスクトップのコンピュータでするのと同じだ。計算ツールは、もちろん、計算をする。全体的に見て、このソフトウェアの機能は、いったんデータベースが開きさえすれば、かなり満足できる。

FileMaker の開発者たちが直面する新たな困難とは、iOS デバイス用にデータベースを構成するところだ。特に、iPhone 上ではこれが大きな問題となる。デスクトップにおける FileMaker ソリューションは比較的広いスクリーン領域の利点を存分に活用できるけれども、縦長に持った iPhone で利用できるディスプレイ領域は狭い。FileMaker のデザインガイドラインによれば、レイアウトの横幅が 312 ピクセルを超えないことが推奨されている。それより広くすると、レイアウトの全体を見るためにユーザーがズームアウトせざるを得なくなるからだ。

狭い iPhone のスクリーンは見えるデータの量が少ないことを意味しているし、ポータルの中で関係するデータを表示するスクロールリストは一覧するのも困難になる。デスクトップやラップトップのコンピュータのスクリーンならば快適に使えるスクロールのナビゲーションキューも、iPhone のスクリーンではうまくスケール表示ができない。だから、レイアウトは極めて注意深くデザインする必要があり、データを操作するには一連のフォームを次々に抜け目なくスクリプトで組んで提示するのが最も実際的な手段となる。そのための補助として、そのデータベースのインスタンスが FileMaker Go 上で走っていることを識別するために FileMaker のスクリプト関数 Get(SystemPlatform) および Get(ApplicationVersion) を呼び出すことができ、そう識別した場合にはデータベースがモバイル対応のレイアウトのものへと切り替わるようスクリプトを組むことができるようになっている。下の二つのスクリーンショットで、前者 (デスクトップの FileMaker Pro) と後者 (iPhone 上の FileMaker Go) とを比較して頂きたい。

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データ構造そのものも、じっくりと見直す必要がある。なぜなら、データベースをいったん iPhone にロードすれば、そのデータベース構造をそこで変更することができないからだ。どんな FileMaker テーブルでもレコードの編集は(そのユーザーが適切なアクセス権を持っていれば)可能だが、FileMaker Go がデータとやり取りできるのはそこまでだ。テーブルを追加したり削除したりはできず、フィールドの追加や削除もできない。テーブルどうしのリレーションを編集することもできない。スクリプトを走らせることはできるが、スクリプトを書いたり編集したりはできない。同様に、どんなレイアウトも iPhone 上でアクセスできる(ただしすべてのレイアウトが iPhone に適している訳ではない)けれども、iPhone 上でレイアウトの編集はできない。

だから、データベースはデスクトップコンピュータ上の FileMaker Pro を使ってあらかじめ用意しておく必要があり、それを二つの方法のうちどちらかによって iPhone に転送しなければならない。もしもそのデータベースが共有されているならば、それは FileMaker Pro の下の FileMaker 共有でもよいし、また FileMaker Server 経由のものでもよいが、その場合は FileMaker Go が普通のデスクトップ版の FileMaker Pro がするのとほぼ同じやり方でアクセスできる。すなわち、iPhone 上のファイルブラウザのインターフェイスを使えば、選択されたサーバ上にあって利用できるすべてのファイルのリストが提供される。この方法の大きな利点は、即座にアップデートがなされることだ。サーバ上にあるデータベースに FileMaker Go が直接やり取りしているので、iPhone アプリで施したデータのアップデートは自動的にそのサーバ上にライブでアップデートされ、たまたまそのデータベースを開いている他のどんなクライアントにもそのアップデートが反映される。

FileMaker Go は Wi-Fi 経由で、またはセルラーデータ接続経由で、共有データベースにアクセスできる。つまり、例えばセールスマンが商談の電話をかけている最中に、その iPhone から在庫を調べたり注文の処理状況をチェックしたりできるということだ。ただしもちろん、その iPhone のインターネット接続が良好であって、かつ彼の会社のデータベースがインターネット上で共有されている必要はあるが。

また、データベースを iTunes の Apps タブを使って iPhone に同期させることもできる。この方法でインストールされたデータベースは完全にそのデバイス上にあって、サーバ上にはないので、ローカルに施した変更はそのデバイスと同期しているコンピュータ上にコピーし戻されるまでの間ローカルのままに留まる。

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レイアウトの制約を別にすれば、FileMaker Go はデータを取り込むための新しい方法を二つ提供している。FileMaker Go データベースの中におけるコンテナフィールドは、デスクトップ版におけるものと同じ種類のデータを含むことができるが、データ入力の面でちょっと面白いことがある。

Browse モードでコンテナをタップすると、当然ながら Choose From Library オプションが出るが、それ以外に新たに二つのデータソースも利用できるようになった。Take Photo を使うと、iPhone 内蔵のカメラで(iPhone 4 や 4S では前面と後面双方のカメラが使える)ユーザーが写真を撮影でき(ビデオ撮影はできない)フル、大、小の三つのボタンでファイルサイズと解像度も選べる。もう一つの選択肢、Get Signature を選ぶと真っ白なスクリーンに(横置きならば)水平の線と "Sign Here" という文字が記された画面になる。そこで指先(あるいはスタイラスペン)を使って署名をしてから、Clear をタップして署名をやり直すか(判読可能な署名を指先で書くのは簡単ではない)あるいは Accept をタップしてあなたの署名をコンテナフィールドに収めることができる。いったんコンテナフィールドに収まれば、そのコンテンツをタップすると新たに二つのオプション、Email と Open が出る。

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iPhone 上でフルにスクリプト化可能なデータベースを使えるということは、単なるデータベース処理に止まらず、いくつか興味深い可能性を提供している。FileMaker Go を、ある程度は iOS 上のソフトウェア開発プラットフォームと考えることができるからだ。現在の状態のままでも、開発者たちが複雑で豊かなソリューションを築いて、それをただ単に同期を走らせるだけで iPhone 上に持ち出すことができ、そのために Objective-C を使って一からプログラミングする必要などない。

データベース風のアプリケーションはもうかなり以前からデスクトップ上ではいろいろと利用できている。FileMaker Pro Advanced (旧名 Developer) には、データベースの機能をカプセル化した独立動作のアプリケーションを生成できる機能がある。iOS デバイスでの大きな違いは、独立動作のソリューションが不可能であるという事実だ。データベースにアクセスするには、iPhone または iPad の上で FileMaker Go を走らせなければならない。けれどもそれは、iOS 用のカスタム「アプリ」を手早く、かなり簡単に開発できるという事実に比べればそれほど大きな代償とは言えないだろう。FileMaker はそういうものもアプリと呼んでいるが、もちろんそれらは本当はアプリでなく、書類に過ぎない。確かに複雑で豊かな書類だが、やはり書類であることに変わりはない。

Bento の iOS 版は Mac 上の Bento との間でしかデータの共有ができないが、この FileMaker Go はそれとは違い、Steve Jobs が iPhone 上でサードパーティのアプリが走ることを発表したその日以来多くの FileMaker ユーザーたちが待ち焦がれてきたソリューションだ。(Bento については、これまで さまざまな TidBITS 記事がこのソフトウェアについて紹介しているのでそちらを参照されたい。)iPhone の小ささのために、レイアウトやデザインの制約が FileMaker 開発者たちの肩に課せられることは避けられないけれど、それでも iPhone 用の FileMaker Go はしっかりとしたソフトウェアであって、既存の FileMaker 宇宙と見事に統合を果たしている。Apple がなぜ距離を置いた関係を続けているのかは、依然として謎だ。

[ニュージーランドに住む Steve McCabe は、Mac コンサルタントで技術ライター、物理教師でもある。彼は ニュージーランドでの冒険について語りテクノロジーを題材にしたブログを綴り、つい最近彼の個人ブログの再構築を終えたばかりだ。]

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Word から Pages へ切り替える戦略

  文: Tonya Engst <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

去年、Take Control 電子ブックシリーズの制作を Microsoft Word 2008 から Pages '09 へ移行させた際に、私はまだ慣れぬソフトウェアに自分自身を習熟させるという困難な目標に加えて、大勢の著者たちのためにも切り替えの手助けをし、しかも、それらすべてを Apple の息もつかせぬ製品リリースのスケジュールに遅れずついて行くという時間制約の下で実現しなければならなかった。(なぜ私たちが切り替えを決断したかを巡る事情については、また私たちの制作過程を EPUB 対応のものにした背景については、2011 年 9 月 30 日の記事“How Take Control Makes EPUBs in Pages”を参照。)

今はようやく移行による騒動も落ち着いたので、私たちが Word から Pages への切り替えで採用した戦略をここに紹介させて頂くとともに、私のお気に入りの Pages のヒントもいくつか挙げてみたい。

一番下を見よう -- 長年 Word を使い慣れたユーザーが他のプログラムに切り替えた際に陥りやすい誤りは、とにかく辛抱強くメニューやダイアログを探し回りさえすればあらゆる入手可能なコマンドにいつかは出会うことができると思い込んでしまうことだ。(Word の Customize Keyboard ダイアログに馴染んだ人には特にこれが当てはまる。見つけにくいコマンドがこのダイアログに多数リストされているからだ。)Word では、メニューやダイアログを補助輪として利用すれば、そのうちに自然と自分がよく使うコマンドにキーボードショートカットを使えるようになるものだ。

ところが Pages ではこのやり方が全く通用しない。Pages では、重要な機能がユーザーインターフェイスのあちらこちらにしまい込まれていて、それらをすべてリストした参照ツールはどこにもないようだ。

重要なオプションのいくつかが Pages 書類の左下の隅に登場する。その部分は、Pages ウィンドウの高さを一杯に伸ばして Dock が水平に置かれていると、危険なほど Dock に接近した場所にある。以下に私が使っているオプションを三つ説明するが、もう一つ、この部分に単語数カウントを表示させるチェックボックスも Pages の「一般」環境設定にある。私はそのチェックボックスをオフにしている。

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一番左にあるポップアップメニューで、ズームのレベルを変更するとともに、一度に何ページずつを表示するかが選べる。Pages では「表示」メニューにも「拡大/縮小」コマンドがあるけれども、そちらでは特定の拡大率を選ぶことができない上に、ポップアップメニューにあるような一度に表示するページ数を選ぶコマンドもない。私の好みは 100% で一度に2ページを表示させる設定だが、他の Take Control 関係者はもっと拡大率を高くして一度に1ページだけを表示させるようにしている人が多いので、私たちがファイルを開くと最初にこのズームと表示のレイアウトを自分の好みに調整しなければならず、そのための唯一の方法がこの小さなポップアップメニューということになる。

ウィンドウ下縁のページ数表示部分は、実はクリック可能だ。ここをクリックすると、「次のページに移動:」ボックスが現われて、そこにあなたが移動したいページ番号をタイプできる。ナビゲーションのためのこのコントロールもやはり、通常のメニュー、ダイアログ、キーボードコマンドといったものからはアクセスできない。

その次にあるスクロールのための三角形と、それに付随した歯車メニューは、信じられないほど役に立つ。三角形が何をするかは歯車メニューを使って設定する。例えば、書類の中で次のコメントへジャンプするようにも、あるいは次のハイパーリンクへジャンプするようにも設定できる。一つの書類の中ですべてのコメントをざっと通して見たい場合、ここを使えばよい。

隠れた変更追跡ツールバーを表示 -- 何人もの人たちが一つの書類で作業をする場合、非常に役に立つもう一つのインターフェイス部分が「変更のトラッキング」ツールバーだ。これは 編集 > 変更をトラッキング メニューを選ぶか、またはメインのツールバー上で「変更をトラッキング」ボタンをクリックすれば現われる。「変更をトラッキング」ボタンはメインのツールバーのデフォルトでは表示されていないが、表示 > ツールバーをカスタマイズ を使うか、またはツールバー上で Control-クリックして「ツールバーをカスタマイズ」を選ぶかすれば、他の Apple アプリケーションと同様にカスタマイズできる。

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この「変更のトラッキング」ツールバーの右寄りの部分には、たいていの Take Control 関係者が最初の数回の執筆・編集のやり取りの間に気付くことのできなかった二つのポップアップメニューがある。「マークアップを表示」メニューは、あなたの目の前に表示される変更追跡の対象範囲をコントロールする。これは、追跡された削除部分を隠すために極めて重要だ。(「一般」環境設定パネルの「削除されたテキスト」で隠せると思っている人もいるかもしれないが、それは間違っている。)その右にある歯車メニューには、すべての変更を受け入れるかそれとも拒否するかを指定するコマンドがあるし、追跡されるあなたの変更部分を示すカラーもここで選べる。(私はカラーをいろいろといじって、とても楽しい思いをした。下の二つ目の図は、Adam の編集部分を紫色に、私の編集部分を緑色に示している。コメントは常に黄色で示される。)

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「変更のトラッキング」ツールバーのみにあるコマンドを組み込んで快適なワークフローを確立するため、私は Pages の範囲外にまで足を踏み出さねばならなかった。なぜなら、その種の機能のいくつかにキーボードショートカットがぜひとも必要だったからだ。特に、変更を受け入れることと、トラッキングのオン・オフの切り替えは、どちらも私が一日のうちに何百回も呼び出す操作なので、キーボードショートカットがなければ困る。結局私はこれらのアクションにキーボードショートカットを割り当てるため Keyboard Maestro のマクロを作って使うようになった。

一つだけ警告しておきたいことがある。ワークグループで作業をする状況においては、一つのファイルの複数の違ったコピーが存在してしまうのはよくあることだ。それぞれに、変更点がマークアップされている。残念ながら、Pages ではファイルとファイルの間でテキストをコピーする際にマークアップされた変更点も保持した状態でコピーする方法がないし、二つの書類を比較してそれらの間の変更点を特定できる機能もない。

インスペクタを精査 (inspect) しよう -- インスペクタは、表示 > インスペクタを表示 (Command-Option-I) を選ぶか、またはツールバーの「インスペクタ」ボタンをクリックすれば現われるパネルだ。このインスペクタにしかない Pages オプションが多数あり、インスペクタの一番上の部分には小さなボタンが並んでいて、それをクリックすれば異なるオプションのパネルに切り替わる。私は今はもうインスペクタを容易に使いこなせるようになったけれど、最初の一ヵ月間は何てのろのろしていて面倒なんだろうかと思えた。

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インスペクタの個々のパネルがそれぞれ違う大きさなのにもイライラさせられる。私は素早くアクセスできるようにインスペクタを常に開いたままにしているのが好きだが、スクリーン上でぴったりした場所に収まったと思ったとたん、パネルを切り替えればまたその場所に収まらないサイズになってしまいがちだ。著者たちの中には 表示 > 新規インスペクタ を使って複数のインスペクタを開いてこの問題を回避している人もいる。個人的に、私はインスペクタが一つの決まったサイズで開いて、Pages ウィンドウの縁にきちんと固定されていて欲しいと思う。例えば InDesign のパレットはそうなっている。現状では、使いたい時に何か他のものが邪魔になることがあまりにも多過ぎる。(Word の Formatting Palette にも同様の問題があるが、その機能の大多数は他のやり方でも利用できるので、通常は閉じっぱなしにしておいても差し支えない。)

スタイルドロワの中で探し回ろう -- Pages で心が躍るもう一つのインターフェイス部分が、スタイルドロワだ。これは「表示」メニューからも、キーボードショートカットでも、フォーマットバーの上にあるボタンからも、あるいは(デフォルトではないが)ツールバー上のボタンからでも開く。スタイルドロワの内部については、個々のスタイル名の右側の部分のぴったり正しい場所にポインタをかざせば小さな三角形がポップアップメニューを示すという事実に気付くのに私はしばらくかかったし、それと知った後もこのごく小さなメニューボタンに最初のクリックで命中させられるようになるまで時間がかかった。今ではすべてが易しく感じられるけれど、初めのうちは粘り強さを要した。

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そうこうするうちに、私はこのポップアップメニューを何度も何度も使い、その機能を自分のものにしたので、「ホットキー」コマンドを試してみる気になった。これで、ファンクションキー (例えば F3) を一つのスタイルに割り当てることができる。しかしながら、Take Control メンバーのほとんどの人たちは既にファンクションキーを他の機能に割り当てていた。そこで再び、サードパーティのソフトウェアに頼ることとなった。今回は、よく使うスタイルごとに AppleScript を使った。個々の著者はこれらのスクリプトを自分の Mac にインストールして、それからマクロユーティリティ (例えば Keyboard Maestro や QuicKeys) を使ってそれぞれのスクリプトにキーボードショートカットを割り当てることができる。試してみたい方のために、スクリプトの例を挙げておこう:

tell application "Pages"  
  set mySel to (get selection of front document)  
  set paragraph style of mySel to "Chapter Name"  
end tell  

(Chapter Name というのは "見出し 1" スタイルで、Pages から EPUB を書き出す際にはトップレベルの見出しにこのスタイルを割り当てておく。)

私たちはマニュアルを読んだし、Pages の隅から隅までくまなく探したつもりだが、段落スタイルやリストスタイルを手で 設定する 方法をまだ見つけられずにいる。つまり、私たちが含めたいさまざまな属性を選択できるようにしたいのだが。これは、文字スタイル「なし」のポップアップメニューから「選択部分から新しい文字スタイルを作成」を選んで新しい文字スタイルを作成し(既存のスタイルを編集することはできない)それから「すべての文字属性を含む」コントロールを展開すれば一応可能とは言える。けれども Word におけるテクニック、つまり Format > Style を選んでから New または Modify をクリックし、チェックボックスやメニューを使ってあらゆるスタイルの詳細を設定できる機能とは比較にもならない。その代わりに、ここではまず段落やリストを満足のいく見栄えに仕上げてから、その後で既存のスタイルを再定義しなければならない。どう見ても変だ。

これが私のアウトライン王国だ! -- Word の素晴らしい機能であり、移行で使えなくなって残念だと思うのは、Navigation バーだ。これは Word のバージョンによっていろいろ異なった名前が付いているが、機能はずっと変わっていない。Word ウィンドウの左側にあるバーからこれを開くと、その書類全体のアウトラインが表示される。ただし、これはあなたが Word 内蔵の見出しスタイルを使った場合に限られるが。(経験豊富な Word ユーザーなら誰でもこれらの内蔵スタイルを使うものだ。目次機能と、機能豊富で便利なアウトライン表示とに統合されたこれらの内蔵スタイルこそ、Word の珠玉の部分と言える。その一方で Pages にはなかなか優れた目次機能があるけれども、Word のアウトライン表示には全然かなわない。)

Word の Navigation バーでは、あなたが読んでいる「木」を取り囲む「森」が、常時見えている。さらに、Navigation バーの中にいながらにして見出しを編集することさえできる。だから、例えばある章の中にいて「見出し 3」レベルの話題のただ中に分け入っている時に、突然その原稿が「見出し 2」レベルと「見出し 4」レベルの話題を行き来し出したら、すぐにトラブルが起こったと気付いてその場で修正ができる。また、Navigation バーの中でどの行でもクリックするだけでそれに対応する見出しへジャンプすることができる。

何たることか、Pages にはそのような組織的なナビゲーションのインターフェイスがない。また、Pages ではリンクをクリックした後に使える「戻る」コマンドもないし、書類の中の二つのセクションの間で行きつ戻りつできるまともな方法もない。書類が長くなってくると、その中で動き回るのが困難になってくるのだ。

Pages で Navigation バーの代わりとなるべきものを求めて、私たちの中の数人は左側に 表示 > ページのサムネール を表示し、(右側の境界をドラッグして)それをできるだけ大きくして使っている。十分大きくすれば、サムネールの中のテキストも読めるようになる。私の場合はそれを目次ページで開いて、言わば「アウトライン」として見えるようにしておき、時には原稿の別コピーを別途の書類として開いて、アウトラインとしてフルに読めるようにしたり、あるいは原稿の別の部分を見えるようにしたりして使っている。

残念ながら、そういう間に合わせの対策も Word の Navigation バーに比べれば明らかに見劣りがするし、それに正直言って、この問題の結果として Take Control シリーズに使われるリンクベースのユーザーナビゲーションの組み込み件数もここのところ少し減ってしまった。著者にとっても編集者にとっても、リンクをどの場所へ繋ぐべきかを判断するのがあまりにも困難になってしまったからだ。

説明書を見つけよう -- プログラムを深く学ぶための古典的な戦術といえば、やはりマニュアルや、何らかの形の説明書を読むことだ。私は Pages マニュアルを全部読み通したけれども、ただイライラさせられただけだった。なぜなら、このマニュアルは Pages がどのように動作することになっているかを記しているけれど、ワードプロセッサにあるべきと期待されるけれどもここには存在していない機能については一切触れていないからだ。(公正を期して言えば、自らの至らないところを説明書に記しているプログラムは非常に少ない。)また、動作が少し不安定な機能にもいくつか気付いた。最も気になるのはセクションの切れ目とスタイルの修正だが、これは私が悪いのかそれとも Pages のバグなのか、私には判断できないでいる。マニュアルには実例が提供されず、一般的な使用事例の説明もない。

Pages > ヘルプ メニューからマニュアルが読めるが、頻繁に参照するつもりならば PDF ファイルをダウンロードしてどこか手近な場所に置いておくことをお勧めする。

電子ブックの出版者たちにとって便利な参照文献として、Apple が出している短い書類 "ePub Best Practices for Pages" がある。これは Apple のサポートページ“Pages で ePub ファイルを作成する方法”の中にあるリンクからダウンロードできる。この書類には、EPUB へ書き出すことを念頭に作る Pages 書類で使う必要のある少数のスタイルについて説明があり、そのような書類ではグラフィックスをフローティングでなくインラインにしておかなければならないという極めて重要な事実も記してある。

挿絵サイズのグラフィックをインラインで挿入する最良の方法が、あらかじめフォーマットを「行」が「少なくとも」指定の高さ以上になるように指定した段落を作っておくことだ、ということを学習するまでに私はかなりの時間がかかった。この「少なくとも」の設定により、行の高さがグラフィックの高さまで増えることが可能となる。(インスペクタを開き、T (テキスト) ボタンをクリック、それから「テキスト」ボタンをクリックする。)行の高さのフォーマットがいったん正しく設定されれば、あとは Command キーを押しながら Finder から画像ファイルをドラッグすればよい。

もう一つの有益な情報源は Pages Apple Support Community だ。私もこのコミュニティーを何度か訪れて質問をしたり、またいくつか質問に答えて人の助けになろうとしたこともある。もしも Pages に関して何か質問があれば、ここに質問を出してみるのがよいだろう。

素晴らしい人たちと一緒に働こう -- この記事を書き上げるのは結構簡単だったけれども、この記事で触れたことのすべてを私が身に付けるのは決して容易ではなかった。もしも私が賢くて心優しい人々から成るこの小さな作業グループに参加していなかったとしたら、もしもその人たちが私の悩みに同情して、私が見逃していたオプションを時々指摘してくれたりしていなかったとしたら、それはもっともっと困難なことになっていたことだろう。

Pages の微妙な点について、変更のトラッキングを使った作業について、あるいはコメントの挿入の際にタイムスタンプがあらかじめハイライトされた状態になっているのを避けるために(そうしないと最初に右矢印キーを押さない限りタイプを始めたとたんにタイムスタンプが消えてしまう)マクロを作成せざるを得なかったことについて、また Pages と Word でのテンプレートの違いについて、その他数々のことについてまだまだ書き続けることはできるけれど、とりあえずここまでで主だった良いところ(と悪いところ)はカバーできたと思っている。もしも何か皆に知ってもらいたい Pages のヒントをご存じなら、どうぞこの記事へのコメントとして書き込んで頂きたい。

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TidBITS 監視リスト: 注目のアップデート、2012 年 2 月 13 日

  文: TidBITS Staff <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Bookle 1.0.3 -- Stairways Software が Bookle 1.0.3 をリリースした。これは最近デビューした Mac 用 EPUB リーダーで、TidBITS の Adam Engst と Stairways Software の Peter Lewis との共同作業によって生まれたものだ。(2012 年 2 月 6 日の記事“Mac OS X 用の EPUB リーダー Bookle を紹介する”参照。)今回のアップデートは、EPUB ファイルに対して表示される名前の末尾に "-Temporary" が付加されてしまう問題点を修正するとともに、Mac OS X 10.6 Snow Leopard を使っている場合にウィンドウをリサイズすると目次が消えてしまうことのあったバグを解消している。さらに、このリリースでは古い EPUB ファイルに対して表示すべき名前を見出す機能が改善された。(Mac App Store からの新規購入 $9.99、無料アップデート、2.6 MB)

Bookle 1.0.3 へのコメントリンク:

Piezo 1.1.2 -- Rogue Amoeba が同社のミニマリスト風オーディオ録音アプリ Piezo のマイナーアップデートをリリースした。リリースされたばかりの Mac OS X 10.7.3 の上で Skype からのオーディオが録音できなくなっていた問題を修正している。Piezo 1.1.2 ではまた Toktumi および MagicJack VoIP アプリからのオーディオ録音と互換になった。このアップデートにはさまざまなバグ修正や改善も盛り込まれている。(新規購入 $10、無料アップデート、2.8 MB、リリースノート)

Piezo 1.1.2 へのコメントリンク:

iMac, MacBook Pro, MacBook Air ファームウェアアップデート -- Apple がまた一連のファームウェアアップデートをリリースした。これは数週前に出た三つのアップデートと似たような内容のものだ。(2012 年 1 月 25 日の記事“Mac mini, MacBook, そして 13-inch MacBook Pro に対するファームウェアアップデート”参照。)新しい iMac EFI ファームウェア・アップデート 1.8 (mid 2010 機種)、MacBook Pro EFI ファームウェア・アップデート 2.6 (early 2010 機種)、MacBook Air EFI ファームウェア・アップデート 2.3 (late 2010 機種) のそれぞれのアップデートでは、前回のものたちと同様、インターネット接続を使用した Lion 復旧機能が有効になる。(これらはすべて Mac OS X 10.7.3 かそれ以降を要する。)また、MacBook Air アップデートでは Deep Sleep が解除された直後にパワーボタンが押された場合にシステムが再起動する可能性がある問題を修正している。どのファームウェアアップデートでも言えることだが、インストールする前にあらかじめインストールの説明を注意深く読んでおくべきだ。必要な場合にのみアップデートを入手できるよう、ソフトウェア・アップデートに入手を任せることをお勧めする。もしもソフトウェア・アップデートに今回のアップデートが現われなければ、それはこれがあなたの Mac のためのものではないということを意味している。(無料、3 MB)

iMac, MacBook Pro, MacBook Air のファームウェアアップデートへのコメントリンク:

Carbon Copy Cloner 3.4.4 -- Carbon Copy Cloner の 10 周年の記念日を祝うため、Bombich Software は数え切れないほど多数の新機能や微調整、修正などを盛り込んで Carbon Copy Cloner 3.4.4 をリリースした。人気のドネーションウェアのこのディスク・クローニングおよびバックアップ用ユーティリティが、今回から Lion 復旧用 HD パーティションをアーカイブしたりクローニングしたりする機能に対応し、Lion Installation ディスクイメージを物理的なボリューム上へクローンすることもできるようになった。また、タスクをスケジュール化してシステムをスリープから目覚めさせたりブ−トさせたりもできる。このアップデートにはバグ修正もいくつかあり、最後に使ったプリセットの記憶に関する処理、タスクのスケジュールを月の最初の日に設定する場合、一般的でないアクセス権の状況下でディスクイメージをマウントする場合など、多数の問題点を解決している。(無料アップデート、6.0 MB、リリースノート)

Carbon Copy Cloner 3.4.4 へのコメントリンク:

ChronoSync 4.3 と ChronoAgent 1.3 -- Econ Technologies が ChronoSync 4.3ChronoAgent 1.3 をリリースした。いずれもメジャーアップデートで、この同期・バックアップ用アプリケーションとその遠隔ヘルパーアプリとの間の連携に大幅な改良が施された。ChronoSync の新機能としては、ChronoAgent 1.3 との接続に SSL 暗号化を使用するようになったこと、前回の同期状況に関する情報を失うことなくターゲットのフォルダ/ボリュームを変更できるようになったこと、同期のターゲットにカスタム名を付けられるようになったこと、前回同期したファイルを復旧させる機能などがある。ChronoAgent については、SSL 暗号化への対応の他に、複数の同時接続をより良く処理できるようアップデートされた。さらに双方ともスペイン語、ポルトガル語、ブラジルポルトガル語のローカライズを備えてアップデートされている。フルのリリースノートが ChronoSyncChronoAgent それぞれに用意されている。(新規購入は ChronoSync $40、ChronoAgent $10、無料アップデート、29 MB、8.1 MB)

ChronoSync 4.3 と ChronoAgent 1.3 へのコメントリンク:


ExtraBITS、2012 年 2 月 13 日

  文: TidBITS Staff <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

今週はいろいろと素敵な話がある! Adam と、彼とともに Bookle を作った Peter Lewis が MacVoices で Chuck Joiner で対談し、彼らの新しい Mac 用 EPUB リーダーの裏話を披露する。Apple は、Fair Labor Association (公正労働協会) が Apple サプライヤーに対する特別自主監査を実施すると発表した。Macworld にいる私たちの友人 Dan Frakes が新型の Mac にブート可能な Lion インストーラを作成する方法をついに見つけ出し、Instapaper の開発者 Marco Arment があなたの iOS の連絡先やカレンダーのデータベースにいろいろなアプリが自由にアクセスできてしまう現状に警鐘を鳴らし、iTunes Match が著作権者たちに対して実際にいくらかの著作権料を支払っていることが判明する。

Bookle の裏話を MacVoices で聴こう -- Stairways Software の Peter Lewis はオーストラリア在住かもしれないが、だからと言って Chuck Joiner が彼を Adam Engst とともに対談に出演させ、二人が共同で開発した Mac 用 EPUB リーダー Bookle について語ってもらう支障にはならなかった。Bookle がいかにして実現したか、Mac App Store により課せられた制約はどのようなものであったか、いろいろな大企業が今はどのように DRM を使用しているか、といったことを巡る裏話に興味ある方は、ぜひこの MacVoices をお聴きあれ。

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公正労働協会が Apple サプライヤーを査察 -- 労働環境に関する熱い議論が何週間も続き、抗議の声も挙がっていたのを受けて、Apple は同社が Fair Labor Association (FLA, 公正労働協会) に要請して同社の最終組立サプライヤーの特別自主監査を行なうと発表した。査察の対象となる会社には Foxconn、Quanta、それに Pegatron が含まれる。

コメントリンク: 12791

ブート可能な Lion インストールドライブを作成する、アクションたっぷりの解説 -- Macworld の Dan Frakes が、Mac OS X 10.7 Lion 用のブート可能なインストーラディスクまたはドライブを作成する手順を詳しく紹介する。特にこれは、Lion のリリース以後にデビューした機種の Mac においては(ダウンロード可能なバージョンのインストーラが付属していないので)重要だ。解説はなかなか徹底していて実際的だが、Mac OS X の再インストールとか Mac の PRAM 消去といったような事態を避けるため、身の毛もよだつような軽業をやってのけている点でも注目に値する。

コメントリンク: 12790

iOS はアプリにあなたのデータへのアクセスを許し過ぎているのでは? -- Instapaper の開発者 Marco Arment の意見では、iOS が彼に「ユーザーへの警告を強制することもせず (ユーザーの) Address Book (の中にあるデータ) へのアクセスをあまりにも多く許し過ぎている」という。TidBITS スタッフの Matt Neuburg も、彼の Programming iOS 本の中で同様の趣旨を次のように述べている: アプリがユーザーの写真にアクセスするにはあんなにもたくさんの Core Location アクセス権ゲートウェイを通り抜けなければならないというのに、ユーザーの Contacts および Calendar データベースの中にある情報については警告もせず自由に読み込んだりコピーしたり削除したりさえできてしまうのはいったいどういうことなのか、と。

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iTunes Match は (多少なりとも) 著作権者にとって儲け口 -- Apple の iTunes Match サービスを購読している人たちは著作権者に "magic money" を実際支払っている、と Jeff Price がオンライン音楽配布サービス TuneCore のブログに書いている。金額としては大金とは言えない (最初の二ヵ月分で $10,000、これは TuneCore のアーティスト 55,000 人分だ) が、Price はこれがアーティストたちにとって従来は一銭も受け取ることのできなかったところに発生する新たな収入源となったと指摘している。

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TidBITS ISSN 1090-7017©Copyright 2012 TidBITS: 再使用はCreative Commons ライセンスによります。

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