TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#1119/26-Mar-2012

Apple の第3世代 iPad が、今週号の話題の中心となる。Adam が最初の週末におけるその素晴らしい売れ行きについて報告し、Sharon Zardetto が彼女の古い iPad 2 を Amazon で売ろうといろいろ調べてみる。Matt Neuburg は新しい iPad に彼の持っていた iBooks を移行させた際に電子ブックがすべて消えてしまったミステリーを解決する。Matt はまた通話のタイプごとに最良の結果を得るために iPhone 4 や 4S をどのように持つべきかを説明する。この携帯電話には二つのマイクロフォンが付いているからだ。紙に描いたスケッチが自動的に Mac に取り込まれたらいいのにと思っている人のために、Steve McCabe が Wacom の Inkling をレビューした記事を寄稿する。これは、グラフィックタブレットでもなくデジタルノート取り機でもない、非常に興味深いデバイスだ。それから、あなたが Inkling で描いたスケッチを保存しておくアプリをお探しなら、DEVONthink がお薦めだし、Joe Kissell が改訂したばかりの電子ブック "Take Control of Getting Started with DEVONthink 2, Second Edition" もある。今週注目すべきソフトウェアリリースは、CrashPlan と CrashPlan PRO 3.2、Skype 5.6.0.143、Keyboard Maestro 5.1、Fantastical 1.2.2、それに Apple ソフトウェア・インストーラ・アップデート 1.0 だ。

記事:

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第3世代 iPad、最初の週末に 300 万台を販売

  文: Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
   訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Apple が、第3世代 iPad の販売台数がその最初の週末のうちに 300 万台を達成したことを発表した。ただし、その数には前の週に受け付けた予約分も含まれている。(2012 年 3 月 7 日の記事“Apple、第3世代の iPad を発表”参照。)Apple の Worldwide Marketing 担当上級副社長 Phil Schiller は、これがかつてないほど強力な iPad 発売開始であったと述べた。(iPhone 4S の最初の週末における売り上げは 400 万台を上回り、iPhone 4 の 170 万台、iPhone 3GS の 100 万台という記録を大幅に更新していた。)

これに比べて、第1世代の iPad は 100 万台を売るまでに 28 日間を要し、300 万台に達するには 80 日間を要した。Apple は第2世代の iPad 2 については具体的な販売速度の数字を発表しなかったが、iPad 2 リリース後の最初の四半期の間に Apple は 920 万台の iPad を販売したので、そこから推測すれば iPad 2 が 300 万台を達するまでにおよそ 30 日間を要した計算になる。

こうした結果こそまさに、最近四半期配当を発表したことも成長速度の鈍化を示すものではないという Apple の主張に根拠を与えるものとなる。(2012 年 3 月 19 日の記事“Apple、四半期配当を払い、株式を買い戻す”参照。)そしてそれは、第3世代の iPad が発表された当日にオンライン Apple Store の反応が遅くて途切れがちであったのを見て私たちが個人的に感じた販売予想とも一致する。Apple はその種の発表によってどのようなトラフィックが発生し得るかを十分に承知しており、ウェブサービスのスケーリングにも十分経験を積んでいるにもかかわらず、それでも今回の圧倒的な需要の下ではオンラインの Apple Store を適切に動作させ続けることができなかったのだ。

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改訂版電子ブックが DEVONthink 2 のデータ管理を解説

  文: Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

紙に印刷された請求書や、ダウンロードした PDF、電子メールで届いた領収書、ウェブのブックマーク、RSS フィード、テキストファイル、その他、あちこちから届いたたくさんの有益な情報断片の山に、あなたは圧倒されていないだろうか? Joe Kissell も昔はそうだったけれど、情報管理アプリケーションの DEVONthink 2 のお陰で、彼は情報過多を撃退できたばかりでなく、彼の自宅の狭い仕事部屋から紙の書類のほとんどを取り除くことに成功した。二年前、彼は "Take Control of Getting Started with DEVONthink 2" を執筆して、他の人たちが DEVONthink 2 を効率的に使いこなす手助けをしたが、その後になって DEVONtechnologies は DEVONthink To Go という iOS アプリも出してきたし、DEVONthink 2 には十数回にもわたるアップデートをリリースして、このプログラムを以前にも増してよりパワフルなものにしてくれた。

もしもあなたが大量のデータに埋もれつつあって、DEVONthink の助けを得てあなたのデジタルライフを掌握したいと思っているのなら、リリースされたばかりの第2版の "Take Control of Getting Started with DEVONthink 2" が、完全に最新になった情報とともに DEVONthink の核心を成す概念を説明し、あなたが DEVONthink を使いこなせるさまざまの側面を手引きして行く。(あまりにも最新情報なので、まだ実際には利用できるようになっていない機能まで解説しているくらいだ!)DEVONtechnologies の協力を得て作成されたこの 199 ページから成る電子ブックは、$15 で購入できる。

(初版のオーナーで、アップグレードの連絡を申し込まれた方には、既に割引購入の案内が電子メールで届いているはずだ。けれども Take Control アカウントの Profile ページで Contact Me オプションが No の設定になっている方は、お持ちの初版の表紙にある Check for Updates ボタンをクリックして頂ければ割引の案内が開く。)

Joe は DEVONthink のたくさんの機能を説明しているが、もっと重要なのは、DEVONthink の多数のオプションをあなたの個性と必要性に合わせて使いこなすためのお手伝いを目指していることだ。多数の情報源からデータを読み込む方法や、階層的グループ分けやフリーフォームのタグ付けを使って情報を整理する方法、ブラウズあるいは検索で情報を見つけるやり方、DEVONthink To Go と組み合わせての活用、その他いろいろのことが学べる。

この電子ブックでは、DEVONthink 2 の三種類の版、つまり DEVONthink Pro Office、DEVONthink Professional、DEVONthink Personal の三つともが扱われており、今月リリースされた DEVONthink 2.3.3 における完全に最新の情報が含まれている。

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Amazon の電子機器下取りプログラム:さよなら iPad 2!

  文: Sharon Zardetto <szardetto@szardetto.com>
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

Apple のハードウェアをいつも最新のものにしておくため、私は通常新しいモデルが出る度に、私のものを売ることにしている、とりわけ私の旧型となったばかりのものが未だ良い中古価格を持っているうちに。iPad 2 が出た時には、それは実質的には $75 しかかからなかった、何故ならば私の初代 32 GB Wi-Fi モデルは地元の大学では高値で受け入れられていたからである。Wi-Fi だけが彼らが必要としていたのものである (そして買える範囲内!)。

私は第三世代 iPad にも同じアップグレード手法をとることを考えていて、私の完全無欠な、大事に使った中古 iPad 2 には $400 程度の値は付くのではないかと胸算用していた。私が考えもしなかったことは Apple がこの Wi-Fi iPad 2 モデルを未だラインナップに残すということであった;私の 32 GB モデルは、容量が倍あると言っても、新品で AppleCare の付いたモデルと中古品との間に $100 しか違いがないのでは、それが如何にピカピカであってもまず売れない。

そうこうしているうちに、私は中古電子機器に対する Amazon の下取りプログラムに関するツイートを目にした。(申し訳ないが、それが私の追いかける誰の間のものであったか、或いは誰が再ツイートしたのかとか、元々は誰からのものであったのかとか思い出せない。) このプログラムは、まだ一年も経たない May 2011 に始まったものなので、聞いたことある人が殆どいないのかもしれない。私は、Amazon が提供する値段はきっと二束三文に違いないだろうと思った、と言うのも販売部門での彼らはできるだけ安くものを売っているからで、それにきっと手間がかかるであろうとも思った (販売部門では顧客に手間がかからないようになっているが)。

私の予測はこれ以上外れ様がないという程のものであった:値段は申し分ないものだったし、面倒なことは何もなかった。

Amazon は、電子機器なら何でも買うわけではない - 彼らの最近の製品のまあまあ幅広いリストに載っているものでなければならないが、iPad 2 は現時点では売れ筋商品である。 メインの Trade-In ページからスタートして、Electronics カテゴリーで iPad 2 (或いは、何であれ) を検索する。あなたのモデルを見つけ出して、Trade In ボタンを押し、そしてあなたのものの状態を Acceptable, Good, 或いは Like New の中から選択して等級付けする。

良くわからない場合は、定義も提供されている。Like New (新品同様) カテゴリには、目に見える損耗は無く、刻印も無く、そして動作も完璧であるだけではなく、オリジナルの包装全てが揃っていなければならない。一番下に位置する Acceptable (許容範囲) では、引っ掻き傷、個人化、動作状況も "完璧" ではなく "良好" でも許され - とは言ってもその違いは定義されておらず、iPad では具体的に何を意味するのかは私には見当もつかない - そして充電器或いは USB ケーブルが無いのも許される。そうすると、値段が提示される。ネゴの余地は与えられず、受けるか受けないか決めなければならない。

あなたのものの状態について嘘をつけるか? 勿論出来るが、でも逃げ切ることは出来ない。Amazon は受け取った機器を検査し、あなたが与えた等級に対する要件を満たすかどうかを調べる。もしあなたが過小に評価していれば、Amazon はその上の値段のカテゴリに上げると言っている;私にはこれは信用出来ないと思う理由は何も見当たらない、何故ならば、残りのプロセスも同様に公平であるからである。もしあなたが過大評価していれば、彼らはあなたを一段階下げるか、或いはそれを送り返してくる - それはあなた次第であり、しかもそれを送る前にその選択をする。いずれにしろ、返送料は彼らが払ってくれる (これは私が最も感銘を受けた部分でもある)。

もし Amazon の提示を受け入れると決めると、このサイトはあなたの箱に貼り付ける前払いの USPS 又は UPS の送り状ラベルを発行する。もし他の業者を使って送りたい或いは送らねばならない場合は、自前となる。いずれにしろ、この提示が期限切れとなる前の 7 日以内に送付しなければならない。

と言うことで、私は私の大事な iPad 2 をその元々の包装に細部に至るまで戻してやった - 去年細心の注意を払って取り出したプラスチックの袋に至るまで。そして私はその途中でも沢山の写真も撮った、iPad、付属品、そして包装まで。感傷のために? いいえ、何かが足りないとか、傷があるとか、或いはその他の無意味なたわごとで不公平に階級を下げられるような扱いを受けたくなかっただけである。私は、そんなことになるとは思ってはいなかった;しかし、だからと言って懐疑的な態度を捨てる気もなかった。

私の心配は不要であった。数日のうちに、$375 のギフトカードが私の Amazon アカウントに付与されていた。人々の中には、それが狙いなのさと思う人もいよう:これは Amazon にとっては悪い話ではない、何故ならば、私は私のお金をそこで使わなければならなくて、それは彼らの収入を増やし、そして彼らのアクセス量も増える、等々。だから何なの? そこは私が買い物をして来た所だし、これからもどの道お金を使うであろう所でもある。

$375 は良い価格であったか? 勿論。(今週はほんのちょっぴりそうでもない、と言うのも値段は $380 へと 上がった からである!) Gazelle は、同じ iPad の完璧な状態のものに $290 しか提示していない;そして彼らは PayPal への入金をしてくれるが、そのために $90 を犠牲にすることになる。NextWorth はもっと少ない - $273 である。eBay 上でさっとながめてみると、現在ビッドされているのは $325-$350 のあたりである。

こうして見ると、私は Amazon に売れる他のおもちゃもないか家中を探してみたい気にさせられる。私の夫のものでさえ。

[Sharon Zardetto は、まだ紙でしか出版されない時代に Mac 本を何十冊も書いた。彼女はその後電子本に移行し、彼女の最新のタイトルは "Take Control of Safari 5" と "Take Control of Spotlight for Finding Anything on Your Mac" である。Twitter で彼女をフォローするには @SharonZardetto で。]

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iPhone 4 のどこに話しかけるべきか

  文: Matt Neuburg <matt@tidbits.com>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

iPhone 4 および 4S に付いているマイクロフォンについて、私はあることを知ったのだが、それが本当に大きな驚きだったので、ここに皆さんにもお伝えしておきたいと思う。それを知るまでは、私は次のことだけを知っていた。

iPhone には2つのマイクロフォンと2つのスピーカーが付いている。それぞれ、底面に一つずつと、上方に一つずつだ。底面に付いているマイクロフォンは、iPhone の正面から見れば Dock コネクタポートの 左側 にある格子部分だ。(右側 にある格子部分はスピーカーだ。)電話として通話中は、この底面のマイクロフォンに向かって話すのが具合良くなっている。iPhone を耳に当てている際には、あなたはもう一つの、つまり iPhone 前面上の一番上近くにあるスピーカーを通じて聴いている。もしも、それと同時に、あなたが iPhone をくるりと回して iPhone の左下の角があなたの口の近くに来るようにすれば、あなたの声は自然に直接底面のマイクロフォンに届くようになる。これは、音声メモを録音する際にも、Siri に話しかける際にも同じことだ。

上面にあるマイクロフォンは、ヘッドフォンポートの隣にある小さな穴だ。あなたが通話中、iPhone を耳に当てて底面のマイクロフォンに話しかけている間、この上面のマイクロフォンはノイズキャンセル(雑音防止)機能の実行のために使われている。この上面のマイクロフォンは底面のマイクロフォンに比べてあなたの口からずっと遠い位置にあるので、このデバイスは上面のマイクロフォンから聞こえるものはほとんどが背景雑音であって底面のマイクロフォンから聞こえるものが主にあなたの声だと想定することができ、雑音部分の入力を反転したものを音声入力にミキシングすることで雑音部分を減らしてあなたの声がより明瞭に相手に届くようにしている。

そして、ここからが驚きの情報だ。通話中に、あなたの顔から iPhone を離してスピーカーフォンモードに(「スピーカー」ボタンをタップ)した場合は、アクティブなマイクロフォンが 上面 にあるマイクロフォンに切り替わる。皆さんはこのことをご存じだったろうか? 私は全然知らなかった。

考えてみれば、この事実は理に適っている。なぜなら、スピーカーフォンモードでは、音声が iPhone の底面にあるスピーカーから出るからだ。だから、iPhone の底面にあるマイクロフォンはオフにしておかなければならない。そうしないと、スピーカーから発する音がマイクロフォンで拾われ、通話相手にフィードバックされてしまうだろう。そうならないように、上面のマイクロフォンの方を使い、サウンド出力(iPhone の底面)と音声入力(iPhone の上面)との距離を最大限に広く取るようにしているのだ。従って、この場合は雑音防止機能は働かない。たった一つのマイクロフォンしか動作していないからだ。そして、これも理に適っている。スピーカーフォンモードにおいては、iPhone は通話相手に対し周辺環境全体の音を送信しているからだ。FaceTime ビデオ通話の際にも同じルールが適用される。なぜなら、適用される状況が同じだからだ。FaceTime ビデオ通話は、その定義からして、スピーカーフォン通話だからだ。(ビデオ録画をする際にも、やはり上面のマイクロフォンだけが動作する。)

そういったことを、私は知らなかった。だから、私は iPhone 4 を入手して以来、ずっとスピーカーフォン通話で iPhone の間違った持ち方をしていた。私は上面のマイクロフォンが私と反対を向くようにしてスピーカーフォン通話をしていたのだった。なぜなら、通話中には「マイクは底面にあるものだ」と思い込んでいたからだ。けれどもこの事実を知った今、私は iPhone を正しい方法で持つようになり、通話相手の人たちは私の声を以前よりよく聞き取れるようになった。また、通話相手のことを考えて、私は以前よりもスピーカーフォン通話をあまり使わなくなった。底面のマイクロフォンを使えば、そちらの方がより良いマイクロフォンなのだから、より優れた電子機器を利用していることになる。さらに、ノイズキャンセル(雑音防止)機能も働く。だから、通話相手にできるだけよく聞き取ってもらいたいと思うなら、iPhone を耳に当てて通話するか、または何らかのヘッドセットを使うかするようにし、スピーカーフォンモードは使わないようにする方が良い。

この話題について私が言いたいのはそれだけだ。私は、とても興味深くしかも実際に役に立つことを知ったし、きっと知らない人たちも多いだろうと思ったので、ここで皆さんに披露したいと思ったのだ。でも最後に一言だけ文句を言わせて頂きたいのは、こんなに単純で役に立つ事実を、いったい どうして 私はこれまで知らなかったのかという点だ。私が知らなかったのは、Apple が私に教えてくれなかったからだ! ひょっとしたらどこかの Knowledge Base 記事に書いてあるのかもしれないが、私は気付かなかった。なぜなら、そんなことを探す必要があるとは思わなかったからだ。(そして、この事実を知った今、あらためて探してみたけれども、まだ見つけられていない。)iPhone に付いていたあの薄っぺらい小さなパンフレット (" Finger Tips - クイックスタートガイド" などという洒落たタイトルが付いている) を探してみたけれども、そこにも何も書いてない。実際、私がこの小さな金塊のような知識に出くわしたのは、本当に単なる偶然だった。何とそれは、WWDC 2011 で録画された技術的な開発者向け講演のビデオを観ていて気付いたのだ。もしも私が開発者でなかったら、あるいは、私がたまたまそのビデオを観る気にならなかったとしたら、私はこの事実に全く気付かなかったかもしれない。ただし、この記事を書く準備をしながら、私は この同じ話題が議論されているものをいくつか見つけた。主に「もしもし、聞こえますか?」というタイプの話題を探していて見つけたものだ。[訳者注: 特に上面マイクを覆うようなスキン/カバーを装着した iPhone でビデオ撮影をするような場合には注意が必要ですね。

Apple が自社のハードウェアの使い方についてまともな説明を顧客に提供したら、何か都合の悪いことでもあるのだろうか? 私には何も思い浮かばない。iPhone のすべては一目瞭然でマニュアルなんか要らない、という神話に固執することで、間違いなく Apple はユーザーたちに害を及ぼしている。そして Apple は、結局自社にも害を及ぼしている。なぜなら、情報公開によって人々はもっと効率的にデバイスを使うようになり、もっとそのデバイスを気に入るようになるからだ。

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おい iBooks、僕の本をどこへやった?

  文: Matt Neuburg <matt@tidbits.com>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

新しい第3世代 iPad (あるいは iPad 3 でも、新型 iPad でも、iPad Early 2012 でも、何でも好きなように呼べばよいと思う) が届いた日、私はそれまで使っていた第1世代 iPad の人格をそのままこの新しい iPad にシームレスに引き継がせたいと思った。そこで私が最初にしたのは、古い iPad を私のコンピュータに接続して、iTunes を使ってバックアップを作ることだった。それから私は古い iPad の接続を外し、新しい方の iPad を接続した。新しい iPad を起動させて、いくつか必要な準備を済ませると、iTunes がダイアログを出したが、そこには実質的に次のようなことが書いてあった:「さて、あなたはこの iPad を完全に新規の iPad として設定することも 可能 ですが、お見かけしたところあなたは別の iPad のバックアップをお作りのようですので、おそらくあなたは新しい iPad の上に古い iPad のアプリやデータ、設定などをリストアしたいとお思いなのではないでしょうか?」

そう、まさにそれが私のしたいことだったので、それから数分後にはその作業が終わった。私は新しい iPad をコンピュータとの接続から外し、スクリーンのロックを外して、古い iPad でこれまでいた世界と事実上全く同じ世界に自分がいるのを目にした。もちろん、古い iPad には付いていなかったカメラが新しい iPad には付いているので、カメラに関係する Apple 製アプリが三つ新たに出現していた。けれどもそれ以外は、私の古いアプリのすべてと、私の古いフォルダのすべてがあって、古いデータのすべてがちゃんとそこにあった。パスワードのうちいくつか(例えばメールの取得と送信に使うパスワード)が忘れられていてもう一度入力しなければならなかったけれども、それ以外ではすべてのアプリがそれぞれのサンドボックスを持ち込んでいて、それらは古い iPad に存在していたものと全く同じ保存設定や書類の世界から成っていた。

例えば、私が GoodReader を起動してみると、以前に私がそこに持ち込んであった PDF 本や書類などがすべてそこにあって、GoodReader は私が最近どの書類を読んだかも、どのページが開いてあったかも、すべて覚えていた。他のアプリでも同様だった。古いデータがすべて持ち込まれており、まるでデバイスからデバイスへの移行がなかったかのように、前回と同じ状態ですべてが開いた。ただ、たった一つの例外を除いて - それが、iBooks だった。

私が iBooks に託していた本は、何十冊もあったというのに、それらがことごとく完全に、消滅していた。

これは極めて困った状況であった。ことに、iBooks が Apple 製のアプリであることを考えればなおさらだ。実際、ある意味これは iPad における Apple の旗艦アプリであると言っても過言ではない。なぜなら、iPad の主要な目的の一つは読書のためなのだから。(そして、第3世代 iPad の Retina ディスプレイに表示される極めて鮮明な文字のお陰で、今はことさらそう言える。)だから、私の持っているすべてのアプリの中で、変な挙動を最もして欲しくないのが iBooks だった。なのに、いったいなぜこんな挙動だったのか?

私は他の TidBITS スタッフたちに質問してみた。すると、Michael Cohen がこう言った:「何が問題なの? iBooks の中の僕の電子ブックは全部、問題なく移行したよ。確かに最初のリストアでは移行しなかったけれど、そのあとで実行した最初の同期の結果としてすべてが移行されたよ。」えっ、何だって? 最初の 同期 ? そう、あとで分かったのは、Michael は彼の電子ブックを iTunes で同期させていたということだ。つまり、彼の iTunes ライブラリの中にリストされている Books コレクションが、彼が同期を走らせる度に自動的に彼の iPad へミラーリングされていたのだ。それに対して、私は本の同期はしていない。

いったい なぜ 私が iPad の本を iTunes で同期しないのかと不審に思われる方もおられるだろう。それには、二つ理由がある。一つは、私が自分の本を手で管理するのが好きだからだ。これは私が音楽を管理するのと同様で、その際のテクニックは Apple が喜んで完全に許容しているものを使っている。私は、音楽を iPad に取り込む際に同期は使わない。その代わり、私は iTunes にある楽曲を iTunes のサイドバー上にある iPad の項目の上へドラッグすることによって iPad の中へ入れている。本についても状況は同様で、ただいくつか他にも選択肢があるだけだ。私は電子ブックを iTunes のサイドバー上の iPad 項目の上へドラッグすることもあるし、時には iPad 自体を使って電子ブックを入手することもある。例えば Dropbox を通じて持ち込んだり、あるいは Safari を使ってダウンロードしたり、あるいは誰かが電子メールで私に本を送ってくれることもある。そしてその後で、私は iOS の書類交流の機能(つまり Open In ボタン)を使ってそれを iBooks へ移動させるのだ。

私が本を iPad との間で同期していないもう一つの理由は、そうするのが怖いからだ。iTunes で iPad との本の同期をオンにしようと試みる度に、不快な言い方のダイアログが現われて、私の楽曲や映画を削除するぞと脅してくる。でも、そんなものは根拠のない削除に思える。本の同期が、私の楽曲や映画と、いったい何の関係があるというのだ? それに、いずれにしても削除を認める気など私にはさらさらない。そういうわけで、私は結局一度も本の同期をオンにしなかった。(このダイアログを敬遠したのは私が最初ではない。Apple の討論フォーラムにもこの話題が登場している。)

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でも、私は問いたい。いったいなぜ、同期などをする必要があるのか? いったいどうして iBooks は、どこから入手した本であっても、普通に データ として扱って、バックアップに保存しリストアで復旧させられるようにしないのか? 他の アプリは皆、それぞれのデータをそのように扱っているではないか? どうして iBooks は、本の保存と復旧の主要な方法として同期を使うのか? いったい Apple は何を考えて iBooks にこのような予想外の挙動をさせたのか? もちろん私は Apple が実際に何を考えているのかを知らないが、次のような点を手掛かりとして Apple の考えを想像することはできる:

私が何を言いたいかお分かりだろうか? これを見れば、Apple が電子ブックを楽曲と同じようなものだと考えている のが明らかではないだろうか。彼らは本と曲(さらには映画や、それと類似のタイプのデータ、例えばテレビ番組やポッドキャストなど)との間に類似性が成立すると考えていて、私たちはそれらのタイプのファイルが持つ次のような全体的性質を意識することで、そのアナロジーを理解することができる:

問題は、当然ながら、その Apple の考えが間違っていることだ。本は、iOS 世界の中で、楽曲と類似のものでは ない。このアナロジーは全く人工的なものであって、実際的な現実と直面するやいなや崩壊する。私の身に起こったことがまさにそれだ。

さきほども述べたように、本がそのデバイスに到着する方法には、楽曲には当てはまらないものがいくつも存在する。例えば、その本が Dropbox か Safari を経由してそのデバイスにやって来て、私がそれを iBooks に移したとしよう。私が何らかの他の手段を用いて別途バックアップを作っていない限り、それは 私が持っているその本の唯一のコピー である可能性が高い。その上、その「他の手段」はなかなか実行が難しい。なぜならこのデバイスは、この奇妙な「音楽と映画と本」のカテゴリーに関しては、まるでダイオードのような働きをするからだ。つまり、電流は片方の向きにしか流れない。音楽をデバイスの上へコピーすることはできてもそこから取り出すコピーはできないのと同様、本をデバイスへ持ち込むことはできてもそこからコピーして取り出すことはできない。その一方で、本は私のコンピュータにバックアップされていない。だから、次の世代のデバイスへ移行する際に生き残れなかったのだ。

結局、私は自分の本を失ったわけで、もしあなたも手動で本を管理しておられるなら、あなたも、注意深くしていない限り、本を失う可能性がある。あらかじめよく計画を立てておくのが肝要だ。こうして私の身に起こったことを知ったあなたは、大切な本のコピーが iPad 上にしかないという状態を作り出すべきではない。もしもその本が iBookstore から購入したものならば、iTunes で File > Transfer Purchases from iPad を選べば iTunes に転送されるはずだし、また iBookstore からダウンロードし直すこともできるはずだ。さらに、あなたのデバイスを iCloud にバックアップすることでコピーを保存しておくこともできるかもしれない。TidBITS 出版者の Adam Engst が調べたところによれば、iCloud バックアップから後日適切にリストアできるのは、あなたがその本を 一度も iTunes で同期させなかった場合 のみ だという。いったん同期をしてしまえば、iOS は(正しいことか間違ったことかはさておき)iTunes がすべてのコピーを保持していると想定するらしく、もはやあなたの本をクラウドにバックアップしなくなる。確信が持てないなら、その本の別コピーを何らかの方法で手に入れてそれをあなたのコンピュータに保管しておけばよい。そうすればもしもバックアップとリストアの作業の最中にあなたの iPad からデジタルな煙のごとくパッと消え失せてしまったとしても、それがあなたの唯一のコピーでなければ安心だ。

あるいは、完全に屈服してあなたの本を全部 iTunes に同期させるのもきっと一方法なのだろう。個人的には、私は白旗を掲げるのは嫌だ。私は、自分のメディアを手動で管理する権利を守り抜くためにできる限り長く戦い続けたいと思う。それに第一、私はあのボタンを押すのが怖いのだ!

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Wacom Inkling でデザインを紙にスケッチできる

  文: Steve McCabe <steve@stevemccabe.net>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

その昔の 1997 年、System 7.6 が最新の OS として私の PowerBook 1400 で走っていたころ、PC を使っていたある友人が彼の CrossPad を私に見せてくれた。これは独創的なデバイスで、外見はどう見ても単なるクリップボード文具だった。けれどもそのボードの中に、小型の発信器を備えた特別の Cross ペンの動きを探知するトラッキングシステムが内蔵されていた。実際的には、この板の上であなたが動かしたペンの動きが記録され、あなたのいたずら書きも、手書きの図も、文章も、すべて画像ファイルとしてコンピュータへ転送された。つまり転送というのは、パラレルバス経由か、あるいはそれに相当する何か PC のたわ言を通して、ということだ。この CrossPad はアイデアとしては輝かしいものであったけれども、まず Windows でしか使えないことに加えて、いかに理論的に素晴らしかったとしても、やなりどうしても乗り越える (cross) ことのできない壁というものがそこにはあった。(駄洒落は、断然、意図的なものだ!)

そういうことをわざわざ書いたのは、Wacom の素晴らしい人たちから私の許に届いた新しい Inkling を初めて手にして、私がどれほど興奮したか(それと同時にちょっと奇妙なノスタルジーも感じてしまったか)を説明したいと思ったからだ。Wacom 社は、名前はびっくりするほど奇妙だけれども機能は高く評価されているグラフィックタブレット、例えば Cintiq、Intuos、Bamboo Fun といったものでよく知られている。この Inkling は、CrossPad でやって行けないと Cross 社が 2001 年に決断して以来大きく開いていたギャップを埋めることを目指したものだ。

Inkling のセンサーとペン -- Inkling は、その隙間需要を埋めるために大きな役割を果たす。まずあなたの目に留まるのはマッチ箱二つ分くらいの大きさのセンサーボックスだ。これを、普通の紙の一番上の部分に取り付ける。残念ながら、そこがこのデバイスの最初の欠点となる。このセンサーデバイスはその底部に小さなクリップがあって紙に取り付けるようになっているが、このクリップの開きが少なく (およそ 3 mm) たった 20 枚程度の紙しか挟めない。用箋の綴じた部分を挟むのは無理だ。

将来のバージョンでは、クリップをもっとずっと大きく開くものにするか、あるいは何らかの方法でセンサーボックスをクリップボード文具に固定できるようにするなどの方法を工夫してもらえれば便利だろうと思う。片側に綴じ目のあるスケッチ帳を使う場合は、単にセンサーをそのページの一番上に挟むだけでよい。スケッチ帳が上の辺で綴じられているなら、クリップをページの横側に挟むこともできる。その場合は、生成された画像をあとでソフトウェアの中で回転させればよいだけだ。でも、この製品は現在のところ机の上で使う必要がある。CrossPad では当たり前であったようなクリップボード文具風の台の上で使うのは、今は現実的ではない。センサーは紙の縁に挟んで装着し、それから机の上に置いて使うように作られている。何か支える台が欲しい場合、あるいは紙の下に何らかの下敷きが欲しい場合は、十分大きな台で Inkling も一緒に支えるようにするか、または十分薄い下敷きでセンサーが端から垂れ下がって後ろに傾いてしまわない強度のあるものを使うかしかない。

この Inkling は最大 A4 サイズ (メートル法を使っていない国の人のために説明しておくと、US Letter サイズに近い) までの紙で動作するようにデザインされている。これで、使えるスペースが十分広く確保できる。このセンサーは、センサーから 2 cm (0.8 インチ) 以内の至近距離からの入力は処理できないからだ。

いったん Inkling をクリップで紙に装着すれば、ボタンを一つ押すだけでセンサーが稼動し始める。あとは、Inkling の特殊なペンを使って書くだけだ。このペンは普通のボールペンと同じように書ける。(実際、標準的なミニサイズのボールペンの替芯も使えるし、出荷時には四本の替芯も付属している。細かいことだが、とても素敵だ。)ただし、このペンの先には小型の送信機も内蔵されている。センサーのことを考えて、ペンを持つ際にはペンの先からこころもち離れたところを指先が掴むようにし、送信機とセンサーの間に障害物がないようにして使う必要がある。

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あなたが文字や絵を書くと、このペンはペン先にかかる筆圧を感知して動作するが、センサーが働いているとあなたが体で感じることはない。その結果、完全に自然な形で使い続けられる。けれどもペンが働き始めると、紙の上の部分にクリップ留めされたセンサーにペンからの信号が伝わり、あなたの書いているものが認識され、システム全体が動作を始め、あなたのペンの動きをすべて記録する。あなたはただ普通通りに書いているだけだ。私の感じでは、Inkling はとても書き心地が良いと思った。

理論的には、このペンは頭の部分にあるボタンに触っただけでオンになることになっているが、私はその部分にちょっとがっかりした。タッチしても少し不格好でローテクな感じが拭えず、バッテリのキャップを開く方がずっと信頼できる感触だ。

Inkling の使い方 -- 書き終えた後にデータを Mac へ転送するのは、驚くほど簡単だ。(念のために言っておくと、あなたが書いている間は Inkling を Mac に接続させておく必要はない。)この Inkling には 25 cm (10 インチ) の micro-USB ケーブルが付属していて、これはデバイスを充電もするし、それと同時にデータが Inkling の Sketch Manager ソフトウェアへとコピーされる。Sketch Manager の中には、あなたの紙のページに書かれているものが、その通りに複製されて表示される。あなたが何を描いたとしても、それがそのまま忠実に Inkling がキャプチャする画像に再現されている。

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Sketch Manager はあなたの画像に二種類の便利な調整を施すことができる。例えば、線の太さを調節することができる。Inkling のセンサーは単にあなたが何を書いたかだけでなく、あなたが書いた順番も覚えているので、Sketch Manager はあなたが書いたり描いたりしたものの中からタイムラインの一区間を選んでその部分だけを消すこともできる。ただし、そんな機能があまり役に立つとは私には思えないのだが。

もっと役に立つのは、Inkling のスケッチをレイヤーに分けてアクセスできる機能だ。図を描いたり文字を書いたりしながら、センサーの上にある "layer" ボタンをちょいと押してやると、センサーはそこから新しいレイヤーをスタートさせる。それらのレイヤーは Sketch Manager の中で分離することができ、別々に書き出すこともできる。このようにして Sketch Manager に読み込まれるものは、一つのファイルであってもその中に複数のレイヤーが含まれている。物理的に新しい紙に移る度にレイヤーボタンを押せば、一つの書類の中で個々のページが別々に保存される。

Sketch Manager が書き出せるフォーマットはいつもの面々、PNG、JPEG、PDF、SVG、BMP といったものが可能だ。おそらくそれよりも役に立つのが、直接に Illustrator および Photoshop へ書き出せる機能だ。Illustrator にスケッチを送ればベクターグラフィックスに変換され、ペンによる個々の一筆がそれぞれ別々のベクターオブジェクトになる。一方 Photoshop への書き出しはというと、いや、私はよく知らない。私が試してみた限りでは、Photoshop への書き出しが最後まで完結したことは一度もなかった。Sketch Manager は書き出しが完結したと主張するのだが、Photoshop は Sketch Manager が何を言っているのかまるで理解できない風に挙動した。

残念なことに、Inkling のハードウェアが私のペンの動きを正確にキャプチャすることにかけては素晴らしい働きをしているにもかかわらず、ソフトウェアたる Sketch Manager の働きはぎこちない。インターフェイスは標準とはほど遠く、書き出しするだけのような単純な作業にも、分かりにくいボタンのシステムを解読する苦労が必要となる。別の方法として、File メニューの Save as Different Format という(奇妙な名前の)コマンドを使うこともできるが、これには Command-F という信じられないようなショートカットが付いている。確かに Sketch Manager は動作はするが、その方法は快適でもなければ馴染みあるものでもない。

ハードウェアの使いやすさとソフトウェアの不格好さとの対比は、そのまま Wacom の強みと弱点を際立たせている。同社のグラフィックハードウェアは、私が初めて CrossPad に憧れを抱いたころから変わらず市場のトップを走っているし、それにはちゃんと正当な理由があるのだが、同社のソフトウェアには足りないところがたくさんある。その結果として、最も賢明な対策は、できるだけ早くグラフィックスを Sketch Manager から外へ出すこと、比較的静的なフォーマットである JPEG や PDF として、あるいは操作の可能な Illustrator ファイルとして、書き出してから使うことだと言える。

Illustrator に書き出されたベクターイメージは、ほとんど圧倒されるかと思うほど細部にわたる情報を提供する。100 パーセントのズームで画像を表示させると、アンカーポイントがあまりにも密集していて互いに溶け込み、まるで図柄の線の上にさらに青い筆で一筆書き加えたかのように見える。ズームしてもっと拡大すると作業がしやすくなるが、そこからこの画像の現実が明らかとなる。つまり、Inkling は単純にそのペンから一連の位置情報を検出して、それぞれにアンカーポイントを割り当てているのだ。大きくて幅広い、全体を素早く払うようなカーブの方がうまく行く。細かな図形、例えば手書きの文字などは、Illustrator の中で図形として処理するのが難しくなるので、ラスター画像として書き出す方が適していることが多い。

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対象となるユーザーは? -- では、どういう人のために Inkling はあるのだろうか? 思うに、CrossPad は、ライターたちやノートを取る人たちを狙ったものであった。けれどもこの Inkling はそれよりもアーティストたちにより焦点を絞ったもののように思える。このデバイスの来歴を見れば、それは驚くことでもなければ不合理なことでもない。それを念頭に置いて、また私が生活のために絵を描いたことがないという事実も深く意識した上で、私はこの Inkling を私よりずっと芸術家肌の妻に手渡した。

妻の Deborah は最近ある友人のためにロゴをデザインしているところだったので、喜んで Inkling を試してみたいと言った。彼女はまず、ロゴの土台として使いたい写真をプリントアウトしてから、その上に Inkling で手書きし始めた。つまり、グラフィックタブレットを使ってトレースするのと同様の作業だ。それを彼女は Illustrator に持ち込むことができたが、その時点で Sketch Manager の提供したベクターイメージを使うのでなく、それよりはるかにアンカーの数の少ない、自分で手書きした図を使った。つまり、Inkling から読み込んだものをテンプレートとして使ったのだ。それから彼女は Illustrator の中で、結果のファイルを目的の形に仕上げた。

この Inkling には、CrossPad にあった「いつでもそこにある」感がない。クリップの顎がちっぽけなこともちょっと問題だし、私の感じではこのクリップの質感はまだ頑丈さが十分でない気がする。それに、これだけではグラフィックタブレットの代わりにはならない。Inkling はペンの一筆一筆をキャプチャすることにかけては素晴らしい働きをするが、私のお気に入りのグラフィックソフトウェアからはあまりにもかけ離れている。逆に、グラフィックタブレットでは常にコンピュータに繋いだ状態で使う必要があるが、Inkling に欠けているのはリアルタイムのフィードバックだ。それは、コンピュータから離れて独立で使えることの代償とも言えるだろう。

だから、これが提供してくれるものは、ポータブルな状態でスケッチやノート取りができるという、興味深い可能性だ。このキット全体が、とてもコンパクトでうまくデザインされた携帯用ケースに入っており、ケースの大きさは筆箱くらい、ペンはヒンジ部分に、センサークリップと micro-USB ケーブルはケース内部に収納するようになっている。さきほども触れたように、使っている間はコンピュータと接続する必要はない。ミーティングにこれを持って行って、紙にクリップを挟んでそのまま仕事を始めればよく、その際ラップトップ機を取り出す必要もない。すべてをケースに収めた状態で、家に帰ってから、あなたのデータをまとめてケーブル経由の一方通行で移し、それと同時に逆方向でセンサーとペンの両方のバッテリを充電すればよい。

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グラフィックアーティストにとって Inkling が魅力あるものであるのは至極明らかだろうが、学生たちにとってもまた魅力あるものとなり得る。手書きのノートがキャプチャされ、それを DEVONthink のような情報管理アプリケーションへ書き出すことができる。追加のメタデータはあとで書き込めばよい。このような Inkling ベースのノートが最も便利なのは、ただ単純に文字だけではない授業だろう。数学や物理のノートに数式やグラフ、図式などを書くことができればとても役に立つ。Jane Austen についてのメモを MacBook にタイプするのならば簡単だろうけれど、立体的なベクトル図式を普通のラップトップ機のトラックパッドで再現するのは非常に困難か、あるいは不可能と言ってもよいだろう。

結びに、Inkling は私がずっと欲しかった CrossPad でもなければ、グラフィックタブレット機に代わるものでもない。けれどもこれは、フリーハンドのアート作品や、図入りのノートを Mac へ転送するための便利な手段だ。これは、自らの周囲の世界の様相をグラフィカルに記録したい人たちの多くにとって、魅力あるものとなるだろう。

残念ながら、これをすぐに入手するのは難しいかもしれない。Wacom はどうやら Inkling の販売を Amazon.com 経由のみで扱っているようで、Amazon の Inkling ページにあるコメントの内容から判断すると、2011 年 11 月に初めて Inkling が出荷された際には予約分をさばいたのみで売り切れ、それ以後も新たな出荷がある度に即座に売り切れているらしい。現時点では、Wacom は「在庫状況は Amazon.com でお調べ下さい」と言っているのみで、Amazon はただ Inkling が入荷次第通知の欲しい人はサインアップするようにと言っているのみだ。[訳者注: 日本の Wacom ストアでは直接注文を受け付けているようですが、現時点では「現在品切れ中です。次回入荷は 2012 年夏頃を予定しております。」と書かれています。]

[ニュージーランドに住む Steve McCabe は、Mac コンサルタントで技術ライター、教師でもある。彼は ニュージーランドでの冒険について語り、テクノロジーを題材にしたブログを綴り、最近個人ブログの再構築を終えたばかりだ。]

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TidBITS 監視リスト: 注目のアップデート、2012 年 3 月 26 日

  文: TidBITS Staff <editors@tidbits.com>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

CrashPlan と CrashPlan PRO 3.2 -- Code 42 Software が、同社のバックアップソフトウェアおよびオンラインバックアップサービスである CrashPlanCrashPlan PRO のバージョン 3.2 をリリースした。最も注目すべき点は、メニューバーにアイコンが追加されて、内向きおよび外向きのバックアップ状況を見たり、すべてのバックアップを一時中断すべき時間間隔を指定したり、CrashPlan アプリケーションを開いたりすることができるようになったことだ。その他の新機能としては、ラップトップ機のバッテリ残量が低くなった場合に自動的にバックアップを一時中断するオプションや、ネットワークのインターフェイスやワイヤレスネットワーク接続の状況に応じて自動的にバックアップを一時中断するオプション、元のファイルアクセス権かあなたの現在のファイルアクセス権かのいずれかに基づいて他のユーザーからファイルをリストアできる機能などがある。既存のユーザーは、手持ちのクライアントソフトウェアへのアップデートを自動的に受け取ることになり、 いくつか既知の問題点 も積極的に対処されつつある。(30 日間の無料オンラインバックアップ試用あり、17.8 MB、 リリースノート)

CrashPlan と CrashPlan PRO 3.2 へのコメントリンク:

Skype 5.6.0.143 -- 数多くの歓迎すべき改善を提供しつつ、Microsoft の所有するビデオおよびオーディオのインターネット電話ソフトウェア Skype が Mac OS X 用バージョン 5.6.0.143 にアップデートされた。追加機能のリストで一番に挙げられているのが自動ソフトウェアアップデート機能だ。これで、手動でアップデートをチェックする必要が軽減されるとともに、とうてい信頼できるとは言えなかった Check for Updates メニュー項目も修正されることになるはずだ。今回のリリースではまたグループ通話のユーザーインターフェイスに「ダイナミックモード」が追加され、これを選べば現在話している参加者が画面の一番上に来るようになる。これをもう一つの追加機能、すなわち Mac OS X 10.7 Lion のフルスクリーンモードへの完全対応と組み合わせればうまく働くはずだ。このアップデートではまたメッセージを会話からも履歴からも削除できるようになるとともに、背景雑音を減らすためにマイクロフォン設定の自動調整をオフにできるようになった。これらの追加機能のお陰で以前より快適に Skype が使えるようになったはずだが、The Verge の指摘によれば Mac 版のリリースは機能面で Skype 5.8 の Windows 版リリースに比べてまだまだ見劣りし、特に push-to-talk ショートカットや 1080p でのビデオ通話などが欠けているという。もし Skype の自動アップデート機能でこの新リリースが見えなければ(その点も今回のアップデートで修正されているはずだが)同社のブログからダウンロードすることもできる。(無料、22.7 MB)

Skype 5.6.0.143 へのコメントリンク:

Keyboard Maestro 5.1 -- Stairways Software が Keyboard Maestro 5.1 をリリースし、この自動化ユーティリティに数多くの改善や修正を施した。最も注目すべきは、このアップデートで新たに For Each アクションが追加されたことだ。これを使えばさまざまの集まり(例えば一つのフォルダ内部にあるファイル、マウントされたボリューム、一つのファイルの中の行、など)の上でループして、個々の項目に順番に作用することができるようになる。その他の追加機能としては、URL をフィルタ分けするための Percent Encode 機能や、OS X 10.8 Mountain Lion の Gatekeeper セキュリティ機能で使われる開発者 ID による署名などがある。このアップデートではまた、呼び出された text factory がもはや存在なかった場合に起こっていたクラッシュを修正するとともに、引用された文字列を計算の中に入力した場合に起こったロックアップも修正している。このアップデートに含まれるすべての改善点や修正点の完全な要約が同社のブログで読める。(新規購入 $36、無料アップデート、5.0 より前のバージョンからのアップグレードは $25、16.3 MB、 リリースノート)

Keyboard Maestro 5.1 へのコメントリンク:

Fantastical 1.2.2 -- Flexibits が Fantastical 1.2.2 をリリースし、さまざまの修正や改善を施した。これは主としてメンテナンス用のアップデートではあるが、このカレンダーユーティリティの今回のリリースではいくつか便利な追加機能もある。例えばイベントリストの垂直方向のリサイズ (Mac OS X 10.7 Lion のみ)、イベントメモの中での検索、イベントリストの中で明日の日付の代わりに "Tomorrow" と表示するオプションなどだ。修正点としては、新規に追加されたアカウントが Fantastical の中で同期されなかった問題点や、Google アカウントでイベントによりアップデートされないものがあった点などが今回のアップデートで対処された。また、ローカライズ版にいくつかの改善(例えばオーストラリアのタイムゾーンの修正)を施し、購読同期の挙動を iCal の再読み込み周期の挙動に似たものへと変更している。このアップデートは、あなたのキーチェーンへの再度のアクセスを求めてくるかもしれないが、それは OS X 10.8 Mountain Lion の Gatekeeper セキュリティ機能に対する準備のために必要なことだ。(Flexibits からも Mac App Store からも新規購入 $19.99、無料アップデート、8.8 MB、リリースノート)

Fantastical 1.2.2 へのコメントリンク:

Apple ソフトウェア・インストーラ・アップデート 1.0 -- Apple が Mac OS X 10.6.8 Snow Leopard 用のソフトウェア・インストーラ・アップデート 1.0 をリリースした。このアップデートでは、ソフトウェア・アップデートが利用できることを探知したソフトウェアを実際にはインストールできなかった問題が解決している。通常、私たちは Apple のソフトウェアへのアップデートを入手するに際してソフトウェア・アップデートに頼ることを勧めているけれども、もしもあなたがソフトウェア・アップデートから直接にアップデートをインストールする際の問題を経験していたならば、今回のインストーラは Apple のサポートページから入手すべきだろう。(無料、1.34 MB)

Apple ソフトウェア・インストーラ・アップデート 1.0 へのコメントリンク:


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