TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#1124/30-Apr-2012

今週はまた、幅広い内容の号に戻ろう。まず、Apple の Q2 2012 業績発表で 116 億ドルの純利益という驚異的な(もはや驚くことではないかもしれないが)数字が出た。Jeff Carlson が、詳細を眺めつつこの結果がどこから来たかを探る。もう一つこれも Apple のニュースで、Adam が iTunes アカウントで最近セキュリティの拡張が実施されたことを伝えるが、この変更がユーザーたちの間にさまざまの混乱を引き起こしている。Glenn Fleishman は、どんな iOS デバイスでも AirPlay 受信機に変えてしまう Airfoil Speakers Touch 3 のリリースについて報告するとともに、ほとんど肩を並べるようにしてリリースされた Google Drive と Microsoft の SkyDrive のメジャーアップデートと(いずれも Dropbox に狙いを定めている)について考察する。最後にもう一つ、Kirk McElhearn が、フランスの電気通信プロバイダ Free について語る。この会社は、フランスにおける携帯電話、インターネット、テレビ、さらには地上回線接続の価格を大幅に下げてみせた。今週注目すべきソフトウェアリリースは、Microsoft Office for Mac 2011 14.2.1、Pear Note 3.0、Carbon Copy Cloner 3.4.5、Send to Kindle for Mac 1.0、Firefox 12.0、PDFpen と PDFpenPro 5.8、それに Bookle 1.0.5 だ。

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Apple、$11.6 Billion の Q2 2012 利益を計上

  文: Jeff Carlson <[email protected]>
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

現時点において、Apple の四半期業績の最大の驚きと言ったら、同社が不可解にもあちこちで損を出しているかどうかぐらいなものであろう。しかし、Cupertino での波風の無さからして、結果は期待されたものであった:Apple はその Q2 2012 決算期に、その殆どの製品において巨額の利益を計上した。売上 $39.2 billion そして純利益 $11.6 billion (希薄化後 1 株当たり $12.30) をもって、同社の利益は前年同四半期から 94% 増加した ("2011 Q2 アップルさらに記録を破る" 21 April 2011 参照)。

これらの数字は、勿論素晴らしいが、Apple がどの様にそしてどこで稼いでいるのかのより興味深い側面の一部を明らかにはしていない。

売上のかなりの部分がこの四半期での 35.1 百万台にのぼる iPhone と (Q2 2011 には 18.7 百万台であった)、強烈な 11.8 百万台の iPad (前年同期には 4.7 百万台であった) の販売から来ている。後者には、3 月中旬に発売された第三世代 iPad も含まれているが、この四半期業績にはたった 3 週間分しか貢献していない。Apple は販売台数を第三世代 iPad と iPad 2 に分けては公表していないが、19 March 2012 には最初の週末の販売は 3 百万台に達したとは言っていた。つまり、iPad 2 の販売は - こちらも引き続きより廉価な $399 で販売されている - 新しいモデルが出るとの予測にも拘わらずその売れ行きはあまり減速しなかったのではないかと推測される。アナリスト達との電話会見で、Apple CEO Tim Cook は、Apple はちょうど 2 年前の発売から 67 百万台の iPad を売ったと語った。彼は更に、この数字に到達するのに Mac は 24 年、iPod は 5 年、そして iPhone は 3 年かかったと言った。

Mac の販売も増加し、前年同四半期の 3.76 百万台から 4 百万台に到達した。販売台数では Mac 携帯型が Mac デスクトップの二倍以上となった (2.8 百万台対 1.2 百万台、PDF リンク)。これは全 PC 市場に較べると 7% の成長に相当し、24 四半期連続の成長となる。私の好きなものの一つで、これまで一貫した数字を示してきたものが今回も真実となった:Apple Store の様な小売り販路で売られた Mac の半分は Mac は初めてという人によって買われた。

最近の傾向を反映して、iPod の販売は昨年から 15% 減少し、全部で 7.7 百万台であった。Apple は、全 iPod のほぼ半分が iPod touch であり、残りのモデル - iPod nano, shuffle, そして classic - が残りの半分を占めたとしている。iPod は引き続き携帯音楽プレーヤーの 70% 以上を占めている。

更に注目に値するのは、October 2011 に Apple が iCloud を導入して以来、この無料のサービスに 125 百万以上の顧客が申し込んだ。

この結果、Apple は今やほぼ $110.2 billion の現金と有価証券を保有している。(我々が、当時としては驚愕の $40 billion の手持ち資金をもってすれば Apple は何が出来るか勝手に想像したのはたった 二年前の事である;"Apple が 4 百億ドルで出来る事" 1 April 2010 参照。これから先の現金の成長は Apple の来るべき財務上の変更によりより緩やかになるであろう;"Apple、四半期配当を払い、株式を買い戻す" 19 March 2012 参照。) Apple は、次の四半期に売上 $34 billion、希薄化後 1 株当たり利益としておよそ $8.68 を見込んでいる。

ではこれらの驚くべき数字は何処から来ているのであろうか?

主要な貢献要素の一つは Apple の効率的なサプライチェーンである。Apple Chief Financial Officer Peter Oppenheimer は、購入品原価は見込みより低く済んだことを認めた。また、彼も Cook も、同社の現場の見事な実行力を称えていた。Apple は、前四半期末には "相当な" iPhone 4S 受注残を抱えていたが、1 月にはこれを解消し (Cook は "1 月の中の 1 月" と表現した)、そしてまた新 iPad を "相当の供給力" をもって立ち上げ、最初の週末での 3 百万台に貢献した;市場により多くの製品を実際に供給したことがより大きな売り上げにつながった。

とは言っても、二人の経営陣が何回も繰り返したことだが、Apple は現在第三世代 iPad が作ったそばから全部売れていく状況下にあるという。この成功の多くは、必要な部品を確保し昨年ハードディスク供給を脅かしたタイの大災害の様な予期せぬ事態に抜かりなく準備する Apple の能力にあると言える。Cook が言うには、Apple はその供給パートナーときわめて密接に連携しており、必要な部品を手に入れるため "我々の手の届くボタン全てを押している" という。

しかし、もっと重要な要素は中国における Apple の事業であり、この四半期には売上で $7.9 billion の貢献があり、これは同社の全売り上げの約 20% に相当する。

Cook は、これまでの 2012 会計年度における - 半年が過ぎた - 中国での売り上げは $12.4 billion に相当し、これに対し 2011 年度全年での中国での売り上げは $13.3 billion であったと語った。彼は、この急成長は iPhone 4S に対する累積需要、Mac 販売における 60% の成長、iPad 2 に対する強い需要 (第三世代 iPad は未だ中国本土では発売されておらず、 Hong Kong でのみ入手可となっている)、そして消費力を持つ大きなミドルクラスのお蔭だとした。

これらの結果はこの国の可能性に較べればまだまだ小さいということを覚えておく必要がある。中国で Mac を買える場所は 1,800 箇所しかなく、iPhone に対しては 11,000 以上あるとは言っても、これらの数字は米国での販路数に比べれば格段に少ない。

Cook 曰く、"中国を理解する企業にとっては非常に大きな機会があり、我々もそれを理解するため出来る限りのこと全てをやっている。"

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Airfoil Speakers Touch 3 が AirPlay 受信機を追加

  文: Glenn Fleishman <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Rogue Amoeba の Airfoil は長年にわたって、オーディオを Mac から(あとになって Windows システムからも)Airfoil と Airfoil Speakers プログラムの走る別のコンピュータへ、さらには AirPlay (以前の名は AirTunes) 受信機、例えば AirPort Express ベースステーションへ、リダイレクトするための素敵な方法となっていた。Airfoil によって、どんなプログラムからもシステム出力からもオーディオだけを分離して、Wi-Fi または Ethernet のネットワークを通してあなたの好きなところへ送り出すことができる。

同社は Airfoil には $25 を課金し、オーディオ再生のみの Airfoil Speakers は無料としている。2009 年になって iOS 用の Airfoil Speakers Touch も無料のアプリとして登場し、これはローカルネットワーク上で走る Airfoil からオーディオを受信することができる。さらに Airfoil Speakers Touch 3.0 ではネイティブな iPad インターフェイスが追加され、Retina ディスプレイのグラフィックスにも対応した。

けれどもここでの大ニュースは、アプリ内購入だ。Airfoil Speakers Touch のユーザーは、$2.99 払えば Enhanced Audio Receiving を追加することができ、これで Airfoil Speakers Touch が AirPlay 受信機として挙動できるようになる。どんな iOS デバイスも、または Mac や Windows 上の iTunes も、同じローカル Wi-Fi ネットワーク上にあって Airfoil Speakers Touch の走っている iOS デバイスを、普通の AirPlay 送信先として認識するようになる。さらに素晴らしいことに、これは AirPlay なので、Airfoil Speakers Touch が直接 iOS から iOS へのオーディオ出力をするようになる、これは、Apple が提供している他の方法ではこれまで実現できなかった。

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これは、古くなった iPhone や iPod touch の素晴らしい利用法になるかもしれない。スクリーンが割れてしまった、あるいはバッテリの調子が悪くなったものでも問題なく使える。その場合はそのデバイスを壁の電源に繋いでおき、ステレオヘッドフォンジャックに電源付きのスピーカー二台を接続すれば、どこでもあなたの好きな場所で素晴らしいオーディオを楽しめるようになる。

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Google Drive と SkyDrive、Dropbox に狙いを定める

  文: Glenn Fleishman <[email protected]>
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

実際の話、Google が Gmail サービスを始めて以来、この検索会社が Google Drive と呼ばれる一般的なインターネット蓄積サービスを提供するであろうという噂は絶えなかった 。24 April 2012 に、同社はついにこれを実現させた。Google アカウントを持っていれば無料でアクセスでき、しかも招待も必要とせず、このサービスに "ベータ" というラベルを付けることもしなかった。どうも同じドラム奏者が行進してくる音を聞いたかのように、Microsoft もまたその SkyDrive システムを一日早い 23 April 2012 に大幅にアップグレードした。しかし、このどちらかが人気の Dropbox サービスを上回る意味のある強みを提供出来るであろうか?

Google Drive は、ほぼ Dropbox と同じ様に動き、与えられたコンピュータ上の一つのフォルダ (Mac OS X 及び Windows) に焦点を当て、どのサブフォルダを同期したいのか選択させてくれる。iOS アプリも間もなく出てくるが、Android ソフトウェアはもう既に入手可となっている。あなたの Google Drive はまた Google Docs からの書類も同期出来るが、これらを編集するためには Web ブラウザと生きたインターネット接続が必要である。(Google Chrome Web ブラウザを使えば、 Google Docs ファイルをオフラインでも読み取り専用で.見ることは出来る。Google Docs ファイルを使える形で手元のコピーを得る他の方法については、"あなたの Google データを CloudPull でバックアップ" 6 March 2012 を参照。)

Google Drive には無料の 5 GB の蓄積容量が含まれるが、これは Gmail のためのもの (10 GB に上がった) そして Picasa 写真共有サービス (こちらは 1 GB) とは別にである。 追加の蓄積容量も Google Drive と Picasa に対して購入でき、追加の 25 GB 当たり月額 $2.50 から始まる。これらの料金プランは新しい;以前の年契約はもはや購入できないが、現存する年契約はそのまま継続できる。

一方で、Redmond に本拠地を置く Google の競争相手も時を同じくして、その 5 才になる蓄積と同期のサービス SkyDrive に対するアップデートを発表した。SkyDrive は以前まあまあの Mac 及び iOS サポートを提供していたが、直接的なファイルシステム統合を提供しておらず、そして幾つかの有用な機能も欠いていた。

SkyDrive は二つの個別のサービスからなっていた:Windows Live Mesh と呼ばれる同期で、クラウドベースの自動ファイル同期と、あなたのコンピュータ間での P2P ファイルコピーの両方を可能にしていた;そして Web アクセス可能な蓄積である。Microsoft は全部で 25 GB の無料クラウド蓄積容量を許していて、そのうち 5 GB はクラウドベースのコンピュータ間同期に使うことが出来た。P2P 同期は引っ込められ、そして新しい SkyDrive アカウントは 7 GB の無料蓄積容量を貰える。

幾つかのプラットフォーム上 (Mac OS X 10.7 Lion, Windows, iOS, そして Windows Phone) のアップデートで、Dropbox 似のフォルダと同期機能がもたらされた。SkyDrive はまた、あなたの他の SkyDrive が使えるコンピュータ上の遠隔ファイルへのアクセスもさせてくれる。これはかなり嬉しい追加であり他の同期サービスにはあまり見られないものである;通常は LogMeIn の様な遠隔スクリーンアクセスシステムの一部である。

既存のユーザーに対する蓄積容量の低下を埋め合わせするため、22 April 2012 以前に登録し 4 GB 以下しか蓄積していない人は、ログインした後 SkyDrive サイトでリンクをクリックすることで 25 GB にアップグレード出来る。登録ユーザーでもう既に 4 GB 以上を蓄積している人は自動的に 25 GB の無料蓄積容量を受け取っている。 追加の蓄積容量も 20 GB 当たり年額 $10 で購入 できる。

iCloud を Google Drive や SkyDrive と (或いは Dropbox と) 直接比較するのは不可能である、何故ならば iCloud は好みのファイルの保存や同期をやらせてくれないし、また如何なる共有機能も持ち合わせていない。そうではなくて、iCloud は、特定の Mac と iOS アップス間でのデータを同期し、そして iTunes Match, Photo Stream, そして me.com メールの様な Apple サービスに対する集中保管を提供する。

他方、Google Drive と SkyDrive は直接 Dropbox と競合している。 Dropbox には無料のアカウントで 2 GB の蓄積容量が含まれ、そして 50 GB 当たり月額 $10 から始まる有料アカウントも提供 している。しかしながら、"Dropbox の Camera Upload をテストして追加ストレージを貰おう" 29 March 2012 や "Dropbox 紹介ボーナス 500 MB へ倍加、しかも遡って" 4 April 2012 でも書いた様に、新しいカメラアップロードサービスをベータテストすることで無料アカウントに 5 GB の永久蓄積容量を追加し、一方で紹介することで無料アカウントを最大 16 GB まで増やすことも出来る。(無料アカウントに対する最大統合容量は 16 GB に限られる。)

Dropbox に対する比較は妥当である。それは単に Dropbox がこの様なサービス内容で市場参入したのが Microsoft や Google よりも前だったということだけではなく、何千万という人がもう既に Dropbox を使っており、そしてその統合と機能が、これらのそして他の十指に余るインターネット同期/蓄積サービスから何が期待できるかを規定してきたやり方ゆえである。Google Drive や SkyDrive が どの様 Dropbox に対してやっていけるかは時が経ってみないと分からない。それは何も機能群や提供される蓄積容量のせいではなく、Dropbox がネットワーク効果という波に乗っているからである - これ程多くの人が幸せに仲間達とファイルを共有しているので、殆ど同じ様な競争相手に切り替える気にさせるものは何であろうか見出すのは難しい。

それに Dropbox は黙って座っているわけでもない。Google と Microsoft の発表と時を同じくして、Dropbox もこれまでベータとしてしか提供していなかった機能を確定した - あなたの Dropbox フォルダにあるファイルに対する読み取り専用のリンク で、そのファイルがどのサブフォルダに入っているかは問わない。この機能は、ファイルを見ることは必要だが編集する必要はない人へ共有フォルダに入れて送る時には有用である。このアップデートでは更に全フォルダのコンテンツを共有する、そして公に共有されたリンクを無効にする能力も追加されている。

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Apple が iTunes アカウントのセキュリティを拡張、ユーザーは混乱

  文: Adam C. Engst <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

さて私は春休みでホテルに落ち着いて、その夜遅く無料の iPhone アプリを入手しようとする。すると突然、私の iPhone が尋ねてくる。いやいや、命令してくる。三つのセキュリティ質問を選んで、それぞれに答を提供し _なければならない_、と。深夜でそんな気分ではないが、私がそれをするまで iPhone は頑としてダウンロードの続きをしてくれない。そこで仕方なく、座り直して、質問を選び、答を書き込む。でも私は納得はしていない。この中断が、何らかのマルウェアのせいではないことにはかなり確信がある。Apple は iOS をしっかりとロックダウンしているからだ。でも、これらの質問がいったいなぜここで出されているのか、今後どのように使われるのかについて、Apple から詳しい説明が一切提供されないのは、どうにも我慢がならない。

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このように混乱しイライラしたのは私だけではなかった。このような形で質問の答を要求された人たちは大勢いて、ちょっと邪魔されただけという人たちもいれば、とても気味の悪い侵入と感じた人たちもいた。質問の多くが、かなり個人的な内容のものだったからだ。最近はマルウェアやセキュリティ関係の話題が多く世に出ていたので、突然このようなぶっきらぼうな邪魔が入れば、疑わしいという印象を持った人たちも多く、TidBITS Talk でも Apple Support Communities フォーラムでも、議論が盛り上がった。幸いにも、Macworld の Lex Friedman が Apple に問い合わせて これらのプロンプトが正当なものだという確認を得た。ただ、それ以上の詳しい情報は何も手に入らなかった。どうやら、iTunes を通じて何かを購入してもこれらの質問が出るようだ。

セキュリティの質問以外にも、Apple はあなたが Apple ID に対応させているものとは別の、あなたのもう一つの電子メールアドレスを提供することも求める。おそらくこれは、もしもアカウントに何か問題が起こって、あなたのメインのアドレスが侵入を受けたのではないかという懸念がある場合に備えてのことだろう。残念なことに、アドレス確認のため予期せぬ電子メールメッセージが届いたことで、家族用の iTunes アカウントのために家族の誰かがセキュリティ質問に答えていた人たちの間に狼狽が広がってしまった。

これらの新たなセキュリティ質問と別途の電子メールアドレスとが求められた理由が、iTunes アカウントにより高いレベルのセキュリティを提供しようとするためであることに疑いの余地はない。比較的答を見つけやすい質問であっても、悪事をはたらく者たちが答を推測できる可能性は減らせるはずだ。例えば母親の旧姓や、自分が生まれた町の名前などが最もありがちな質問だろう。

ただ、私が気になるのは、Apple が今回問うている質問の多くが、私が同じように問われて二度目にも全く同じ答が出せるかどうか疑問だったり、あるいは正確にタイプできる自身のない答になるようなものだったりした点だ。旧来の質問、例えば母親の旧姓や生まれた都市名などは(少なくともたいていの人にとっては)間違いようのない答が一つだけあって変化の余地がないし、自動化されたプロンプトにタイプする際にも間違わずにタイプできるだろう。それにひきかえ、Apple が問うている質問は例えば次のようなものだ。(再読み込みさせれば次々と新たな質問が出るが、どれも似たようなものばかりだ。)

自分がこういった類いの質問に深読みしてしまうタイプの人間であることは十分承知しているけれども、この中で私が自信を持って答えられるのは二つだけだ。一番好き・一番嫌いという質問は微妙だ。なぜなら、私が大好きな先生は何人もいたし、嫌いな先生など一人もいなかったからだ。また、自分の持っていた車に対する感情はどれも皆似たようなものだったし、子供のころの親友といってもどの時代のことを考えるかによって答が違う。初めてしたことについての質問にも戸惑ってしまう。なぜなら、記憶に一番残っているアルバムやコンサートは初めてのものではなかったからだ。それに、一般的な場所を聞かれても答え方がたくさんある。Y2K (2000 年) にいた場所をと聞かれても、答は「ワシントン州」「シアトル」「Issaquah」「Tiger Mountain」から「友だちと一緒に、新年に持ち込みたくないものをメラメラ燃えるたき火の中へ放り込んでいた」という言い方まで、さまざまだ。

さらに悪いことに、Apple がこれらのセキュリティ質問をどのように使うつもりなのかが、私には分からない。複数の選択肢の中から選ぶだけならば私は正しい答を選ぶ自信があるけれども、何もなしにただ答を入力せよと言われた場合に正解できる自信はない。それに、たとえ私が実際の答にかなり自信があったとしても、あのホテルの部屋でイライラしながら座っている状態で、はたして私は自分がタイプしたその通りの言葉を思い出せるだろうか? あるいは、これらの質問は私が援助を求めて Apple のカスタマーサービスに電話した際に私に問われるものなのだろうか? 例えば、利口ぶって個々の質問ごとにランダムな文字列を 1Password で生成させていたならばどうなるのか?

心理的な観点からは、否定的な質問をされること自体にも私は不安な気持ちにさせられる。いきなり何の前触れもなく、しかも多くの人たちが極めて個人的なものだと考えているこのデバイスから、自分が一番嫌いな先生や仕事のことについて問われるのは、重大なハラスメントを耐え忍んできた人や、でっち上げられた理由で解雇された人にとって、心に突き刺さるものであるのは容易に想像できる。

誤解しないでいただきたい。私は、Apple が iTunes アカウントのセキュリティを改善するためにさらなる一歩を踏み出したことに対しては称賛に値すると思っている。個人的体験からも、侵入を受けたクレジットカード番号を処理するのが厄介なことはよく知っているし、侵入を受けた iTunes アカウントの処理も同じくらい厄介であるのは間違いないだろう。

けれども率直に言って、これらの質問がよく出来ているかどうかと問われれば、これらは多くの人たちが要求に応じてその場で答を出せるようなものではないし、なぜこれらの質問が必要なのか、どのようにしてこれらの質問が使われるのか、といった点について明快な説明を提供していないことで、Apple は何百万人もの iTunes アカウント所有者たちの間に不必要な動揺を大きく引き起こしている。願わくは近い将来、Apple のセキュリティチームは Siri 開発チームと共同で働いて、もっと威嚇的でない、自然な会話による方法で、人物確認のために使える情報を引き出すようにしてもらいたいと思う。

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Free、フランスの電気通信市場を価格破壊

  文: Kirk McElhearn <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

これは、私が iPhone を入手した事情についての話であると同時に、私の決断を可能にしてくれた会社がフランスの電気通信市場をどのようにして揺さぶりつつあるかについての話だ。おそらく読者の皆さんの大多数はフランスに住んでおられないだろうが、比較的小さな会社がサービス価格をあっという間に下げてしまう可能性があるという点で、注目する価値のある話題ではなかろうか。それはここフランスで実際に起こったことであり、おそらく他の国で起こるのも時間の問題なのかもしれない。

私は、四ヵ月前に、iPhone を買った。パーティーに乗り遅れているのは分かっているけれども、それまで私は携帯電話を持つ必要を感じたことがなかった。少なくとも、めったになかった。私は自宅で仕事をするし、十二年間もの間、フランスのアルプス地方にある村に住んでいた。今年の 1 月に、私はもう少し大きな町 (人口およそ 40,000 人) に引っ越したが、そのため最も基本的な携帯電話(通話の送受信だけができるもの)では十分でないと思うようになった。私は引き続き自宅で仕事をしているけれども、買い物に出ている間に GPS や地図、インターネットアクセスが使えるのは便利なものだし、その他 iPhone が提供してくれるさまざまの付加機能も役に立つ。

もちろん私は iOS の初心者ではない。ずっと以前から、私は iPod touch や iPad のさまざまな機種を所有していたけれど、私が iPhone を一度も購入したことがなかった一番の理由は、コストだった。長らくの間、iPhone をフランスで使おうと思えば最も安価な標準的スマートフォン契約でも毎月 45 ユーロ (およそ $60) もした。それだけの料金を払って、平日は 2 時間の通話時間、夜間と週末は無制限の通話ができた。(ヨーロッパでは、他の世界中の多くの国でも同じだと思うが、プランの通話時間にはこちらからかけた通話のみが加算され、かかってきた通話を受けても加算されないので、プランの通話時間の量は米国におけるものよりずっと少ない。ただし、固定電話から携帯電話へかけた通話の料金は、米国よりも高い。)データ通信の量にも上限がある。以上はすべて Orange 社のもので、これはフランス人にとっては「歴史的」な電話会社とも言え、以前は国有の独占会社であった France Telecom が民営化されてできた会社だ。

電気通信市場が開かれて競争が始まると、他に二つの会社が携帯電話ネットワークを運営するライセンスを得たが、それら二社の価格も基本的にそれまでと変わらなかった。その後、Orange は第二のブランドとして Sosh を作り、こちらは無制限の契約を月額 40 ユーロ (およそ $53) で販売した。ただしここでの「無制限」は通話時間に制限はなくてもデータ通信量は 2 GB が上限となっていた。他の会社もまた低価格のブランドを作って、ほぼ同じくらいの価格でプランを販売した。

ところが、2012 年 1 月 10 日に(偶然にもそれは私が引越しをした日だった)新手の会社がこの携帯電話市場に参入して、価格をバッサリと下げつつ、長年停滞していたこの市場に競争を巻き起こした。その会社の名前が、Free だ。Free 社は、無制限(音声通話)携帯電話プランにデータ通信量 3 GB を付け、そのレベルを超えたデータに帯域制限を課す、という条件のプランを月額たったの 20 ユーロ (およそ $26) で売り出した。安いのはその価格だけでなく、自宅のインターネットアクセスを同じ Free 社と契約している場合は(またもや偶然にも、私はちょうどインターネットアクセスを Orange から Free に切り替えたばかりだった)月額たったの 16 ユーロに下がる。そうそう、しかもその価格にはテザリングも含まれている。そこで、私は即座に iPhone を注文した。(ご想像の通り、これらのプランには iPhone 4S の本体価格に対する補助金は付かなかった。私が買った 16 GB モデルは 629 ユーロした。すべてを付けて iPad を買った場合のおよそ $832 と同レベルの価格だ。一方良い面では、Free のプランには契約上の義務が付いておらず、次の iPhone が出てくれば iPhone 4S を転売しても構わなかった。)

あまりたくさん通話をしない人には、さらに安い料金のプランもある。1 時間プランは 60 通のテキストメッセージが付いて月額たったの 2 ユーロ ($2.64) だ。(追加の通話時間は 1 分あたり 0.05 ユーロ、追加のテキストメッセージは 1 通あたり 0.01 ユーロだ。)データプランは付いていないが、別途にデータ量毎月 20 MB の 3 ユーロのプランにサインアップすれば、旅行中にも最低限のことはまかなえるだろう。そして、Free でインターネット契約をしている場合は、突然 Free という会社名がその単語の本来の意味(「無料」)と合致する。つまり、上限のある音声通話のみのプランの価格が 0 ユーロだ。これほど安い価格で基本的携帯電話プランを提供している会社は、他のどこにもない。比較してみると、従来私は月額 7 ユーロで通話時間が付いていないプランを契約していた。通話時間に応じて、1 分あたり 0.42 ユーロの料金がかかっていた。でも私はあまり通話をしないので、これでも結構良かった。

Free の上限付きプランは多くの人々にとって非常に魅力的なものだ。もしもあなたがあまりたくさん通話をせず、接続のためには Wi-Fi が使えることが多いならば、この種のプランで十分満足できるだろう。

Free とフランスの古き良き電話会社 -- では、いったいなぜフランスで、またヨーロッパの各国で、携帯電話プランは長年これほど高価なままだったのだろうか? 長い間、そこには競争というものが存在していなかった。France Telecom は、ネットワークを(バックボーン回線とラストマイルの両方とも)所有するという利点を持っていた。そして、他の会社が電話サービスを、後にはインターネットサービスも提供することが許されるようになった後でさえも、France Telecom は顧客たちにとって切り替えが困難となるような対策を施していた。2003 年に、同社は(形式的には子会社 Wanadoo Interactive が)European Commission (欧州委員会) から反競争的慣行の宣告を受けた。

その後年月を経て、携帯電話サービスを提供するこれら三社はお互いに相手の領分を侵さないという暗黙の合意をしているかのように見えていた。個人のユーザーのための価格は基本的にそれほど変わらず、企業だけはより安価なレートを交渉できるようになった。

1999 年に、Free 社が生まれた。自分自身を言わば現代のロビンフッドと見なす大胆不敵な Xavier Niel に導かれて、この会社は低価格のインターネットアクセスを提供した。それから 2002 年にはフランスの一部の地域で ADSL アクセスの提供も始めた。Free としてはいたる所で他社と競争することはできなかった(セット販売でない電気通信サービスの提供は当初ほんの少数の大都市でしか提供されず、今日でさえ全国をカバーするには至っていない)にもかかわらず、同社は現在 23 パーセントほどの市場シェアを獲得している。

Free は、興味深いサービスを提供する。フランスのすべての ISP と同様、ここも ADSL アクセスと ADSL 経由のテレビ、それに固定式のインターネット電話を含む「トリプルプレー」プランを単一価格で、現在は月額 38 ユーロ (およそ $50) で提供している。そこには同社の統合ハードウェアデバイスである Freebox Revolution も含まれ、超大物のデザイナー Philippe Starckの手になる工業デザインを誇っている。

この Freebox Revolution は魅力的な2パーツのデバイスで、多機能のネットワーキングおよびインターネットツールだ。1つ目の部分、Freebox Server は、次の機能を提供する:

DECT はデジタルコードレス電話の規格で、北アメリカ以外の事実上全世界で使われている。DECT 電話は直接 Freebox と組にすることができるので、別個に DECT ベースステーションが必要となることはない。この Freebox Server はフランス国内では無制限の固定電話通話を提供し、通話相手は固定電話でも携帯電話でも構わないし、国外も 100 ヵ国にかけられる。

このデバイスの2つ目の部分は Freebox Player だ。これは電力線ネットワーク接続(Freeplug と呼ばれ、2本が Freebox に付属している)を経由して Server に接続する。この Player は、テレビやステレオに接続して、以下の機能を提供する:

インターネット購読があれば 200 近くのテレビチャンネルが得られる(ただしその多くは私が理解できない言語による放送だが)けれども、それ以外に月ごとの料金を払ってプレミアムチャンネルを追加することもできる。

これらすべてを合わせれば、私はインターネット、無制限の固定電話通話、テレビ、そして iPhone のために、全部で月額 54 ユーロ (およそ $71) を払っていることになる。これなら、文句なしに筋が通っている。

ただほど高いものはない -- Free も完璧ではない。同社が初めて携帯電話を提供し始めた日は、そこにサインアップするのは第三世代 iPad をデビュー初日に注文するのと同じくらい困難なことであった。翌日にはサイトの反応も改善したが、何人かの人、特にパリ在住の TidBITS 主任編集者 Joe Kissell は、契約が無事に開始されるまでにいくつかデコボコ道を乗り越えなければならなかった。電話サービスが何日も続けて利用できなくなった人たちもいたが、これはおそらく Free がまだ独自のネットワークを持たず、Orange からアクセスを購入しているという事実に関係しているのだろう。同社は現在、独自の携帯電話基地局の構築に努めているが、完成までにはまだ時間がかかる。

私も切り替え後に短期間インターネットに繋がらなくなったことがあるが、私の iPhone を通じてテザリングが可能だったので仕事を続けることができた。良い面もある。Free の技術者たちは概して非常に有能だ。(どの会社もそう言えるわけではない。)私が Orange にビジネス用アカウントを持っていた頃に私を担当してくれた技術者は良かったけれども、家庭ユーザーが Orange の技術サポート専用電話に電話をかけると、愛想の悪い、知識のない電話サポート担当者が出てくることが多かった。もちろん、私が Free を利用した経験は限られているけれども、サポートが酷かったという話をよく聞く一方で、Free のサービスを使っていると私が知っている多くの人たちの大多数は非常に満足しているようだ。

Free なる価格破壊 -- Free の低価格の携帯電話提供は、これまで暗黙のうちに価格を揃えているように見えた市場を揺すぶるために打ち出されたものだ。そして、それは確かに効果をあげた。今やすべての携帯電話キャリアがそれぞれ価格を下げて、Free に対抗しようとしている。また、それらの会社の多くが運営している「低価格」ブランドは価格を Free の価格に近いものにしている。ヨーロッパはこれまで電気通信市場に競争が存在しないことで知られていたが、Free は間違いなくそれに逆らってきた。

ここまで話を進めてきて、私たちが問うべき最も大きな問題は、米国や、他の各国では、いったいどうして接続性にこれほど高いコストがかかるのかという点だ。例えば、米国で AT&T から 16 GB の iPhone 4S を購入すると、価格は $199 となるが、それに加えて最も安価な音声プラン (450 分間) で $39.99 の月額料金と、最も安価なデータプラン (300 MB) で $20 の月額料金がかかる。ここにはテキストメッセージングが含まれておらず、それについては別途に無制限使用なら月額 $20、または送信および受信したメッセージ 1 通あたり $0.20 もかかる。というわけで、最低でも毎月 $59.99 も払わなければならない。もちろん、フランスでは iPhone の購入価格に補助金が付かないので、二年間の出費の合計はそれほど変わらないが、私の計算では、二年間(米国では標準的な契約期間)の iPhone とサービスの総費用はフランスの方が $180 ほど安い。さらに、もしもあなたの音声通話とデータ通信の必要量がごく少ないなら、Free の上限付きプランを利用すれば費用はもっとずっと少なくなる。

では、インターネットや、テレビ、固定電話サービスについてはどうだろうか。例として米国のメジャーなプロバイダの一つ、Time Warner Cable を選び、その可能な限り安価なオプションで Free のサービス (DVR 付きの基本的なテレビ契約、最大 3 Mbps のインターネットアクセス、無制限の国内通話) と肩を並べるものを契約すれば、支払う月額はおよそ $110 となる。Free の契約ならばそれと同等の(Freebox Revolution ハードウェアのお陰でおそらくより良い)プランとなり、それでいて価格は半額以下、月額およそ $50 だ。

Time Warner の請求額と AT&T の請求額を合計すれば、あなたは毎月およそ $160 を払うことになるが、それに対して Free のサービスならばおよそ $71 だ。これもやはり、米国での価格の半額以下となる。二年間の iPhone 契約でそれらを通算して、iPhone の購入価格を加算すれば、Free に支払う総額はおよそ $2500、一方米国で支払う総額は $4000 以上だ。

当然ながら、電気通信システムはフランスと米国では全く異なるやり方で進化してきたし、課されている規制制度も異なる。けれども、Free がこれほどに安い価格を提供することによって通信市場を完璧に揺さぶることができたのならば、米国においても、また他の国でも、同じことが実現するのは可能なはずではないだろうか。

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TidBITS 監視リスト: 注目のアップデート、2012 年 4 月 30 日

  文: TidBITS Staff <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Microsoft Office for Mac 2011 14.2.1 -- Microsoft が Office for Mac 2011 14.2.1 をリリースした。最近リリースされた Service Pack 2 (2012 年 4 月 12 日の記事“Microsoft Office for Mac 2011 14.2.0”参照) への改修であり、前回のこのバージョンに改善と調整とを施している。Office for Mac ブログによれば、この 14.2.0 アップデートが取り下げられたのは「ごく一部のユーザーに影響を与えた問題点」のせいであったという。それらの問題点の多くは主に Outlook でのさまざまの問題と、Word と Excel でのクラッシュであったが、MacInTouch のフォーラムに詳しい説明がある。現時点では、今回のアップデートを適用する際にも注意を怠らないことをお勧めする。(ダウンロードで、あるいは Microsoft AutoUpdate からも無料、110 MB、リリースノート)

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Pear Note 3.0 -- Useful Fruit Software が Pear Note 3 をリリースした。同社のマルチメディアノート取りアプリケーションの大幅なアップデートだ。この新リリースからは Mac OS X 10.5 Leopard に対応しなくなった一方で、10.7 Lion におけるオートセーブ機能とバージョン機能、およびフルスクリーンモードへの対応が追加された。Pear Note 3 はまた Lion における 720p HD ビデオ録画機能にも対応した。もちろんそのためには互換なビデオカメラが必要となる。さらに、Ecamm の Call Recorder for Skype アプリと統合されて、あなたの取ったノートと Skype 通話録音のタイムラインを同期できるようになった。それからもう一つ、対となる Pear Note for iPad アプリもバージョン 1.0.4 にアップデートされ、Pear Note 3 との互換性を追加するとともに Retina ディスプレイ対応のグラフィックスにアップデートされた。(新規購入は Useful Fruit Software からも Mac App Store からも $39.99、3.3 MB、 リリースノート)

Pear Note 3.0 へのコメントリンク:

Carbon Copy Cloner 3.4.5 -- Bombich Software が Carbon Copy Cloner 3.4.5 をリリースし、さまざまの問題点に対処した。このドネーションウェアの人気のディスク・クローニングおよびバックアップ用ユーティリティは、その内部的なキーチェーンの項目を OS X 10.8 Mountain Lion の Gatekeeper セキュリティ機能に準拠した新たなキーチェーンへ移行させる。キーチェーン項目へのアクセスを認めてよいかというシステムダイアログが現われたら、必ず Allow をクリックすること。また今回のアップデートでは、スケジュール化されたタスクがスリープ中に起こった場合、Mac がスリープから目覚め次第自動的にそのタスクを走らせるという挙動(3.4.4 より前のバージョンではその挙動がアプリに組み込まれていた)が復活した。スリープ中に過ぎてしまったタスクを自動的に無視するようにもできるが、これは隠し設定なので手引きが欲しい場合は Bombich Software Help Desk に問い合わせるとよい。その他の修正点としては、10.7 Lion における Growl 通知をより首尾一貫したものにしたこと、プリセット設定メニューで最後に選んだ項目が保たれるようにしたこと、毎週一回または毎月一回走るよう設定されたタスクの再スケジュールが正確に働くようにしたことなどがある。(無料アップデート、6.5 MB、 リリースノート)

Carbon Copy Cloner 3.4.5 へのコメントリンク:

Send to Kindle for Mac 1.0 -- Amazon が Send to Kindle for Mac 1.0 をリリースした。これを使えば、書類や画像を Kindle リーダーへ、あるいは iPad、iPhone または iPod touch 上の Kindle アプリへ、転送できる。ファイルの転送のために、この Send to Kindle アプリは三種類の方法を提供する。アプリの Dock アイコンかメインウィンドウへのドラッグ&ドロップ、Finder でファイルを選択してコンテクストメニューで Services > Send to Kindle を選択、それから Mac のどんなアプリからでも印刷の際に仮想プリンタ Send to Kindle を使うことによる PDF 送信だ。送信できるのはいくつかのごく限られたファイルタイプのみで、PDF、Microsoft Word (.doc と .docx)、テキスト書類 (.txt と .rtf)、それから各種さまざまの画像ファイルだ。(完全なリストは Amazon のヘルプページにある。)さらに、Adam Engst が指摘した通り(2012 年 4 月 22 日の記事“EPUB、PDF、Mobipocket を Kindle Fire にダウンロードする方法”参照)Mobipocket 電子ブックファイルもひっそりとサポート対象に加えられているが、EPUB は全くサポートされない。書類ファイルは Wi-Fi 経由であなたの Kindle や Kindle アプリに送信されるが、米国国内ではメガバイトあたり $0.15 の料金(外国で旅行中はメガバイトあたり $0.99)を払って Amazon の Whispernet サービスを利用することもできる。この Send to Kindle アプリには Windows 版もある。(無料、8.1 MB)

Send to Kindle for Mac 1.0 へのコメントリンク:

Firefox 12.0 -- もしもあなたが Mac 上で Firefox を再起動したばかりならば、あなたが一切手を下さないうちにこのウェブブラウザが勝手に自らを新しいバージョン 12 にアップデートしていることにお気付きかもしれない。この自動アップデートは Mac 上の Firefox がバージョン 4 となって以来ありふれた挙動となっている。(Firefox のバグ修正リリースごとに Mozilla が毎回メジャーなバージョン番号を上げてきたことを思い出して頂きたい。だから、今回のバージョン 12 は本来なら 4.8 程度の番号が相応しいところだ。)ただ、Windows ユーザーは (Ars Technica の記事によれば) どのような新しいアップデートでもインストールの際には Firefox にファイルシステムの高いアクセス権を与えるために User Access Control (UAC) プロンプト を越えなければならなかった。Firefox 12 では Windows ユーザーに対しても黙ってアップデートする機能が追加されたが、初回の UAC 承認は依然として必要だ。さて、皆さんがより興味をお持ちの話題に戻ると、Mac 版の Firefox 12 にはほとんど新機能がない。最も重要なのはページ内検索からの検索結果に関するものと、セキュリティの修正だ。また、Download Manager ウィンドウに貼り付けた URL をダウンロードするようになった。Mozilla は Firefox の開発者ツールに 85 件の改善があると宣伝している。例えば Scratchpad に Find および Jump to Line コマンドが追加されたこと、Web Console でメッセージを見るために毎回必要だったページのリロードが不要になったことなどがある。(無料、30.1 MB、 リリースノート)

Firefox 12.0 へのコメントリンク:

PDFpen と PDFpenPro 5.8 -- Smile が PDFpenPDFpenPro の双方をバージョン 5.8 にアップデートした。これらの PDF 処理用アプリケーションに、iCloud フォルダへの対応を実現している。既に前回のバージョンで iCloud 中にある PDF ファイルへのアクセスには対応していた(2012 年 1 月 25 日の記事“PDFpen と PDFpenPro 5.7”参照)けれども、今回のアップデートでは Mac 上のアプリと PDFpen for iPad (こちらもバージョン 1.1 にアップデートされた) との間で iCloud フォルダを共有する機能を改善している。新規のフォルダを作成したり、フォルダを改名したり、ドラッグ&ドロップで書類を移動したりができるようになった。また今回のアップデートでは OCR に関するいくつかの問題点を修正し、32-bit Intel プロセッサのサポートを中止し、その他詳細は不明だがさまざまのマイナーな修正や改善もある。Smile はまた Mac 用ユーティリティ PDFpen Cloud Access もバージョン 1.1 にアップデートした。($0.99 で Mac App Store から入手できる。)PDFpen か PDFpenPro を Mac App Store からでなく Smile から直接購入した人が iCloud アクセスをするにはこのユーティリティが必要だ。Mac App Store を通じて販売されたアプリケーションのみが、iCloud に結び付くことができるからだ。(新規購入 $59.95/$99.95、TidBITS 会員は 20 パーセント割引、43.3 MB)

iCloud フォルダの管理を改善した以外に、PDFpen for iPad 1.1 は Retina ディスプレイ用に最適化され、ページの回転にも対応した。App Store から、2012 年 5 月 1 日まで限定価格 $9.99 で入手できる。(それ以後は価格が $14.99 となる。)

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Bookle 1.0.5 -- Keyboard Maestro の開発はほんの少しお休みにして、Stairways Software の Peter Lewis が Bookle のマイナーなアップデート版 1.0.5 を出してくれた。私たちと彼との共同開発による EPUB リーダーだ。今回の変更点には、EPUB 表示のフルコントロールへ向けた最初の試みが含まれる。その一環として、テキストの左右両側に 20 ピクセルのマージンが追加された。この点は、私たちに最も多く寄せられたリクエストの一つでもあった。(今後、この機能を用いて読者が本の表示により多くのコントロールができるようにして行きたいと思っている。)また、今回の新機能として Delete Book コマンドのキーボードショートカット Command-Delete と、警告プロンプトを出さずに本を削除する Command-Option-Delete とが追加された。残念ながら、Peter はうっかり About ボックスの中でバージョン番号と日付をアップデートするのを忘れてしまったので、お持ちのものが 1.0.5 であるかどうか確認したければ、Finder でこのアプリを選択して Command-I を押し、Get Info ウィンドウをご覧頂きたい。このアップデートは App Store アプリから入手できる。(Mac App Store から新規購入 $9.99、無料アップデート、2.69 MB)

Bookle 1.0.5 へのコメントリンク:


ExtraBITS、2012 年 4 月 30 日

  文: TidBITS Staff <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

今週の興味深い話としては、Dropbox のアップデート、Apple の Worldwide Developer Conference のチケットが二時間で売り切れたニュース、それからスタッフが出演した番組が二つある: Tonya Engst が出演した Tech Night Owl ポッドキャストと、Jeff Carlson が Peachpit Press のために出演した Twitter 対談だ。

Dropbox で写真とビデオのアップロードが可能に -- Dropbox がそのソフトウェアをアップデートして、Dropbox がインストールされたコンピュータにカメラやスマートフォンを USB で繋いだり、USB リーダーにメモリカードを差し込んだりしただけで自動的に写真やビデオのアップロードができるようにした。Adam Engst が先月、これらの機能について詳しく解説している。あなたが写真やビデオをアップデートするに応じて、Dropbox は無料アカウントの許容量を 2 GB から最大 5 GB まで増やしてくれる。また、このアップデートでは好きなファイルやフォルダを選択してそれを URL 経由で他の人たちと共有できるようになり、従来のようにそのようなリンクが Public フォルダ内の項目に限定されることがなくなった。さらに、この新しいリンクフォーマットでは多くのサポート対象書類やメディアファイルフォーマットに対してウェブベースのプレビューも提供されるようになった。

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Apple WWDC 2012 は 6 月 11 日から 15 日までサンフランシスコにて -- Apple が、同社の毎年恒例の Worldwide Developers Conference をサンフランシスコで 2012 年 6 月 11 日から 2012 年 6 月 15 日まで開催すると発表した。チケットの価格は $1,599 だが、最初の二時間で売り切れてしまった。(朝目覚めてもう売り切れていると知った西海岸在住の開発者たちは仰天したことだろう。)

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Tonya Engst、Tech Night Owl Live で電子ブックについて議論 -- Tech Night Owl Live ポッドキャストで、Take Control 編集長の Tonya Engst が、Apple の iBookstore や Amazon の Kindle Store など大手のオンライン販売店で電子ブックを販売している小規模の出版者としての観点から電子ブックに関係した話題を議論した。また、彼女自身が書いた電子ブック "Take Control of Your iPad" についても語った。これは第三世代 iPad と iOS 5.1 の情報を入れて最近アップデートされたばかりの最新版だ。

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Jeff Carlson、Twitterview で写真家にとっての iPad について語る -- あなたの写真撮影において iPad はどんな位置を占めることができるだろうか? Jeff Carlson が、2012 年 4 月 25 日に Twitterview (つまり Twitter インタビュー) で、彼の著書 "The iPad for Photographers" について語った。写真の読み込み、旅行中にラップトップ機の代わりに iPad を使う方法、画像のランク付けやキーワードによるタグ付け、iPad 上での写真の直接編集などが話題となった。 この対談の筆写記録版 もあるので、iPad を使った写真の作業に関する短期集中コースを受けたい人は、140 文字ずつに切り分けられた知識の金塊を読むことができる。

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