TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#1160/11-Feb-2013

今週は Macworld/iWorld 2013 で私たちの目にとまった製品を紹介する記事の第二部をお届けしよう。けれどもそれは今週号のほんの一部だ。ニュースとしては、iPhone 4S ユーザーは既に iOS 6.1 を使っていて問題に見舞われているのでない限り iOS 6.1.1 をしばらく避けておくことをお勧めするとともに、Rich Mogull が Flash を使ったウェブサイトへのアクセスを完全に失うことなしに最新の Flash 脆弱性から身を守るための最良の方法を説明する。Glenn Fleishman は飛行機の機内でインターネット接続を提供する Gogo が大幅な値上げをしたニュースを概観し、Steve McCabe は Siri が異なる英語の方言を使い分ける機能をテストする。最後に、私たちの最新のスポンサー、ソーシャルストレージ機器 Transporter のメーカーである Connected Data 社を歓迎したい。今週注目すべきソフトウェアリリースは、Sandvox 2.7.6、AirPort Utility 6.2 for Mac と、OS X Server 2.2.1 だ。

記事:

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iPhone 4S 用 iOS 6.1.1 がセルラー問題の修正を狙う

  文: Adam C. Engst: [email protected], @adamengst
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

iOS 6.0.2 を iPhone 5 と iPad mini のみで働く形でリリースした前例を踏むかのように、Apple は今回、iOS 6.1.1 を iPhone 4S 用にリリースした。「iPhone 4S のモバイルデータ通信のパフォーマンスおよび信頼性に影響を及ぼす可能性のある問題」を修正しているという。いつもと同じく、それ以上詳しいことは一切明かされていないので、今回のアップデートが具体的に何を修正することを狙ったものか、また、それ以外の修正も含まれているかどうか、ユーザーが推察できる手掛かりもない。

しかしながら、ヨーロッパのいくつかのキャリア、中でも 英国の Vodafone 社は、iPhone 4S ユーザーに対して接続性の問題がある;ので iOS 6.1 にアップデートしないようにという通知を出していた。おそらく 6.1.1 はそれらの問題に対処することを狙ったものではないかと私たちは推測している。

私の解釈はこうだ: もしもあなたが iPhone 4S を持っていて iOS 6.1 を走らせており、かつ あなたが明らかなモバイルデータ通信の接続性の問題を経験しているのならば、思い切って今回のアップデートを試してみる価値はあるだろう。Settings アプリで、General > Software Update をタップしてワイヤレスでアップデートするか、または iTunes 経由でアップデートをダウンロードしインストールするかすればよい。けれども、もしもあなたが特に問題を経験していないか、あるいはあなたがまだ iOS 6.1 にアップデートしていないのならば、今のところはあなたが現在走らせている iOS のままで様子を見て、成り行きを見守るのが賢明だと思う。

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Connected Data が TidBITS スポンサーに

  文: Adam C. Engst: [email protected], @adamengst
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

私たちの最新の TidBITS スポンサーとして、全く新しい会社 Connected Data, Inc. を心から歓迎したい。以前 Drobo を作り出したストレージ業界のベテランたちが設立したこの会社は、新たにソーシャルストレージ機器 Transporterを生み出した。ソーシャルストレージというのは奇妙な言葉だが、よく考えればぴったり当てはまる。Transporter が何をするかといえば、インターネットを通じてデータを共有し、しかもすべてが自分のコントロール下に置かれるものだからだ。あなたが希望した人たちのみとデータを共有できるし、あなた自身が持っている他の Transporter やコンピュータとの間のみで共有することさえできる。その際、Dropbox や SugarSync といったサービスとは違って、あなたのデータがクラウドに保存されることは決してなく、料金を払い続ける必要もない。

データの量が大きくなれば、料金も馬鹿にならないものだ。例えば 500 GB のアカウントを持っていれば Dropbox ならば毎年 $499、SugarSync ならば毎年 $399 かかる。(その他のクラウドストレージサービスも同様だ。)それに比べて Transporter ならば 1 TB のモデルを $299 で、あるいは 2 TB のモデルを $399 で、いったん購入すればその後一切お金を払う必要がない。(まあ、ハードドライブが死んでしまったり、容量を増やしたくなったりすれば話は別だが。)空の Transporter を $199 で購入して、手持ちの 2.5 インチハードドライブをインストールすることさえできる。さらに、Connected Data から直接購入する際にコード "tidbits" を使えば 10 パーセント割引になる!

バックアップの観点から見ても、この Transporter は非常に興味深い。他の Transporter やコンピュータのうちどれが共有フォルダのコピーを保持するかはいつでも選ぶことができるけれども、個々の Transporter 上のすべてのデータがどこか他の場所に共有されている限り、その Transporter から死にかけたドライブを取り出して新しいものと交換したり、あるいは容量の大きいものと入れ替えたりしても、Transporter のソフトウェアが自動的にそのドライブにあったデータをすべて他の場所から取り寄せてくれる。この機能や、その他の Transporter の機能を、Joe Kissell と私は将来テストしてみたいと思っているので、結果が出ればまた報告させて頂きたい。

TidBITS と、Apple コミュニティーへの貢献に対して、感謝の気持ちを Connected Data に捧げたい!

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Google Chrome を使って Adobe Flash を隔離

  文: Rich Mogull: [email protected]
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

2013 年 2 月 7 日に、Adobe は Mac、Windows、Linux、および Android 上の Flash Player に対する重要なセキュリティ修正をリリースした。このリリースで修正された脆弱性 (APSB13-04) は、ウェブブラウザを介して、また電子メールに添付された悪意ある Microsoft Word 書類(Flash が埋め込まれたもの)を経由して、実際に Mac や Windows のユーザーに対して悪用されている事例があるという。私たち TidBITS スタッフはまだ今のところ Mac に対する攻撃の詳細を知り得ていないが、Adobe のサイトにははっきりと Mac も現に攻撃されていると書かれている。[訳者注: 2013 年 2 月 12 日に、さらに新しい Flash Player アップデート (APSB13-05) がリリースされています。]

通常の状況下では、重要なセキュリティパッチがリリースされ次第即座にアップデートすることを私たちはお勧めするのだが、今回のケースでは、少し違ったことをお勧めしたいと思う。あなたの Mac に Flash を今まで通りに残しておくのでなく、Flash を隔離して、悪人たちからの攻撃の余地を減らしておくのだ。その方法はあなたが想像するよりずっと簡単で、将来必要となる手間もはるかに少なくて済む。私も過去一年間ほど、自分の Mac をこちらの方法で使っている。

まず第一にすべきなのは、Adobe の公式のアンインストーラのアプリケーションを使ってあなたの Mac から Flash を完全にアンインストールすることだ。あなたのオペレーティングシステムから Flash が完全に削除されるので、アタックを目論む者がターゲットにすることが不可能になる。

「でもちょっと待って、そんなことをしたら Flash ベースの Disney ゲームがプレイできなくなってうちの子供たちに殺されるよ」とあなたは言うだろう。ご心配なく。そこには簡単な解決策がある。Google のお陰で。

無料の Google Chrome ウェブブラウザには、Chrome が独自に組み込んだバージョンの Flash が含まれている。さらに良いことには、2012 年 11 月以来、 Chrome は Flash をサンドボックス化して Mac の他の部分と切り離している。だからと言って Chrome 版の Flash が不死身だということにはならないが、アタックを試みるためにはまず Flash を攻略し、それに加えてさらにサンドボックスを破らなければ、あなたの Mac を攻撃できない。こうして追加のバリアを設けることで、たとえ Flash に脆弱性が発見されたとしてもあなたが攻撃の影響を受ける可能性が大幅に減るわけだ。その上、Chrome は自動的に自らをアップデートするので、あなたは今後二度と Flash Player のインストーラに触る必要がなくなる。

私がお勧めするのは、たとえあなたがメインのウェブブラウザとして使うつもりがなくても、とにかく Google Chrome をインストールすることだ。そうしておいて、あなたが Flash コンテンツを見たいと思う度に Chrome を起動するようにしさえすればよい。私が初めてこのやり方を耳にしたのは Daring Fireball の John Gruber からだったが、その後時間をかけて私は Flash を Chrome の中に隔離するというこのシンプルなやり方が素晴らしくうまく行くことを次第に実感するようになった。とりわけ、Flash が存在しなければ自動的に Safari に対して HTML5 ビデオを送り出すように作られているサイトの数がますます多くなりつつあるのだから。

個人的なことを言えば、私は Chrome に完全に切り替えることを決断した。全体的に見て、Chrome は現在市場にある Mac 用ブラウザの中で最もセキュアだからだ。特に Google が Chrome 版の Flash をサンドボックス化して以来そのことがはっきり言える。さて、Chrome をインストールした後で、私は次の二つのことをする:

まず第一に、Preferences > Settings > Show Advanced Settings > Privacy を開き、"Enable phishing and malware protection" 以外の項目をすべてオフにする。これで Google が追跡するものの範囲が少なくなる。ただし、それらの機能をオフにすることにより Chrome のページ読み込みに時間がかかり、あなたがウェブをブラウズする速度が落ちるかもしれない。

第二に、私は以下の二つの Chrome 拡張機能をインストールする。(Chrome の中からそれぞれのリンクをクリックして、ロードされる Chrome Web Store ページの中で Add to Chrome ボタンをクリックするだけでよい。)

広告や Flash 追跡をブロックすることにより、攻撃を受ける余地も減らすことができる。なぜなら、特に広告ネットワークがターゲットとされて、正当なサイト上でバナーを通じてマルウェアを配布するために利用されることが時々あるからだ。

さきほども書いたように、Chrome はデフォルトで自動的に自らをアップデートする。これは一般的にはセキュリティのために良いことだが、ただ Adobe が Flash をアップデートしてからそれが Chrome に組み込まれるまでに時間差が生じることもあり得る。幸いにも、そんな場合にもサンドボックスがあなたを保護する力となってくれるだろう。

これで終わりだ! Flash をアンインストールし、まだ Flash を要するサイトのために Chrome をインストールするという、すべての手順がほんの数分で済むだろう。そして、以前よりずっと大きなセキュリティが新たに提供されることになるだろう。

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高空での Wi-Fi、価格と我慢を試す

  文: Glenn Fleishman: [email protected], @glennf
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

これは警告として、そして言わば 買い手の危険負担としても見てほしい。Southwest を除く米国航空会社で機内インターネットサービスを提供している Gogo は、September 2012 に値上げしたばかりなのに、今度は気紛れの料金体系とも思える物を出してきた。同社はまた昨年帯域に関してかなりの改善を約束した - 生のレートで凡そ 3 Mbps からほぼ 10 Mbps へと - これで時にはじれったいサービスも少しは良くなるはずであった。

Gogo は、かって飛行時間によりフライト当たり凡そ $10 から $13 を課し、そして iPhone の様なハンドヘルド機器にはより安価なレートだが、タブレットに対して如何なる割引も提供していなかった。しかしながら、もしより高額の料金を払えば、機器間での切り替えも可能であった。

今や、Gogo はフライト当たりの料金体系はもう提供していない。代わりに、彼らは、30 分、60 分、そして 2 時間プランを提供している。加えてそれ以外の時間プランもあるが、料金は以前のフライト当たりの料金と同等かそれ以上のものとなっている。同僚たちは、先週のフライトで見た料金体系を私に送ってくれたが、それらは至る所に散らばっており (文字通り)、その中には "2 時間料金で 3 時間" のスペシャルも含まれていた。私は Alaska Airlines での東海岸への最近のフライトで、24 時間で $18.95 を勧められた... フライト時間は 4.5 時間しかないのに。

24 時間料金への切り替えは、幾つかのフライトを乗り継ぐ人を想定してのことと思うが、それ自体はおかしくはない。しかし、全ての便が Wi-Fi アクセスのある機体でというのは、あまり現実的でない。大きな例外は Delta で、彼らはその保有機を幅広くカバーしている;より小さなサービスエリアを持つ航空会社にも、Alaska Airlines や Virgin America の様に、同様なことをしているところがわずかだがある。(人里離れた所を飛行する Alaska 機の中にはインターネットサービスを持っていないものもあるが、その代りムース出現を知らせてくれる。) この 24 時間レートというのは、それが直行便だったり、フライト時間の間中あなたのラップトップを働かせてくれる差し込み電源が無かったりしたら、納得性は低い。

コスト削減の一つの方法は前払いでアクセスすることである。Gogo は $14 で前払いの 24 時間アクセスを提供しており、フライト内にアカウントにログインすることで利用できる。どうも、如何なるサービスを買っても、機器間で切り替えて使わせてくれる様である。私はラップトップから iPhone へそして再度戻るというのを、それぞれの機器上でログインしサービスを有効化することで切り替えることが出来た。

Gogo は、個々の航空会社当たり月額 $40 の無制限プランを提供している;月に $50 払えば、全ての Gogo 搭載の航空機での無制限サービスが買える。

Gogo は非上場の会社で、その財務状態、利用状況やその他のデータは公開されていない。同社は売上を伸ばすのに苦労してるのかどうかを知るのは難しいが、航空会社と売上を折半しているとの報告もある。恐らく、同社は、お金を払ってでも使いたいと言うユーザーはあまり料金にはこだわらないこと、そして顧客離れというリスクよりも全売上を増やすことの方が大事だと悟ったのであろう。

その理由が何であれ、予測不能のそして一貫性のない価格設定は、ビジネス上有効な動きというよりは気紛れにしか見えない。ひょっとすると、Gogo は Stopstop になって、もっと単純な解を探す必要があるのかもしれない。

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Macworld/iWorld 2013 のクールな製品: パート 2

  文: TidBITS Staff: [email protected]
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

ここ一週間の TidBITS 本部はてんやわんやだった。Macworld/iWorld から持ち帰った最も重大なみやげ物が一匹の虫で、そのため Adam は週の大半をベッドの中で過ごす羽目になった。ありがたい MacBook Air がもしもなかったなら、TidBITS を病欠にしなければならなかったかもしれない。さて、ショウで私たちの目にとまった素敵な製品の残りを、以下に紹介しよう。

Flint はカードリーダー不要の Square -- 支払い処理サービス Square は、小規模のローカルなビジネスでもそのハードウェアとソフトウェアのシステムさえあれば iOS デバイスを使ってクレジットカードによる支払いを受け付けることができるようにした。(2011 年 11 月 8 日の記事“Square は現金や小切手に代わる手軽な方法”参照。)ただ、そのためにはヘッドフォンジャックに小さなドングルを差し込んでそれでカードをスワイプせねばならず、少々不格好な上に、毎日それを使うのでない限り忘れたりなくしたりしがちだ。ところが Flintという新しい支払い処理サービスが、それと本質的に同じサービスを提供しつつ、iOS デバイスのカメラを使ってクレジットカードの番号を「スキャン」することによりカードリーダーを不要にした。Macworld/iWorld に出展した Flint の人たちは、このアプリがカードの写真を撮っているのではなく、ただ数字の画像をデジタル化してその情報を処理のために送信し、デバイス自体の中には何も保存しないと明言していた。結果としては同じことだが、カメラを使うことに問題があると受け取られているのは興味深い。Flint はその他に、購入に付随したソーシャルマーケティング、カスタマイズできる電子メール領収書、安い手数料 (デビットカードで 1.95% プラス一回あたり $0.20、クレジットカードで 2.95% プラス一回あたり $0.20) などを提供している。現在のところ Flint は米国のみで利用可能で、Visa および MasterCard ブランドのカードのみに対応している。[ACE]

BearExtender で Wi-Fi レンジを拡張 -- Wi-Fi ハッキングはもはや目新しくも何ともないが、時として Apple の内蔵ハードウェアではできないことをする必要が生じることもある。具体的には、もしもあなたが Wi-Fi ネットワークの到達範囲のすぐ外側にいる場合には、$49.97 の BearExtender Mini だけで解決するかもしれない。これは USB 接続、1000 ミリワットの Wi-Fi トランシーバで、無指向性の 2 dbi 外部アンテナを備えている。(オプションで 5 dbi のアンテナを付ければさらに到達範囲が広がる。)BearExtender は標準の AirPort カードに比べて二倍から四倍の到達範囲を持つと主張しているが、もしそれが本当だとすれば、最近隣に引っ越して来た友人たちがケーブルインターネット接続が設置されるのを待つ間、わが家の Wi-Fi ネットワークに接続することができて好都合だろう。ハードウェアはごく小さい。家の玄関の鍵と大して変わらないくらいだ。また、付属のクリップで MacBook のスクリーンに取り付けることもできる。また、BearExtender Mini を家の外に、あるいは干渉を避ける場所に置く必要がある場合に備えて 16 フィート (4.9 m) の USB 拡張ケーブルも別売されている。(注意: わが Michael Cohen はショウ会場の抽選でこれを当てた。彼自身は特にこれを使う実際的な必要はないようだが、手元にユニットが届けば彼が何か書いてくれるかもしれない。[ACE]

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CamRanger と CameraMator -- 今年の Macworld/iWorld で最も興味深かった写真関係の新展開は、iOS デバイスから Wi-Fi 経由で DSLR カメラ(デジタル一眼レフカメラ)を遠隔操作できる機能だった。実際、そのようなデバイスを展示しているベンダーが二社あった。 CamRangerCameraMator も、いずれもカメラの USB ポートに差し込んで使い、それぞれ独自の ad-hoc Wi-Fi ネットワークを作る。(CameraMator の方は既存の Wi-Fi ネットワークを利用することもできる。) iPad、iPhone または iPod をこのネットワークに接続すれば、カメラから見えるものが画面にライブで表示され、カメラのほとんどの設定をコントロールできる。例えばシャッター速度、絞り値、ISO 感度、といったものだ。この種のやり取りができるソフトウェアやデバイスはいろいろある(例えば OnOne Software の DSLR Remote Camera HD もその一つだ)が、そういうものはコンピュータとカメラを物理的に繋ぐ必要がある。いくつかの機能はカメラによって互換性に制限がある。CamRanger は対応するモデルとサポートする機能の表を発表しているが、現在のところ CameraMator のサイトにはその情報はない。いずれのデバイスも価格は $299.99 で、無料の iOS アプリを使ってカメラをコントロールする。[JLC]

iPad でより良いプレゼンテーション -- iPad は一対一でプレゼンテーションをしたり写真集を見せたりするのには便利だが、会議室のテーブルの両側に座って見せ合うにはスクリーンが少し小さ過ぎる。けれども Mobile Monitor Technologies の Monitor2Go を使えば、iPad の 9.7 インチのディスプレイを、聴衆の前に垂直に立てた 15.6 インチのスクリーンに映し出して、同時にあなたは水平に置いた iPad のスクリーンを見たり操作したりすることができる。この Monitor2Go は HDMI 経由で iPad に(あるいは他のデバイスに)接続し、180 度の範囲で回転させたりねじったりでき、iPad を収納できるスロットも付いている。また、DisplayLink テクノロジーを利用して USB 2.0 経由で Mac または Windows ラップトップ機の第二モニタとして使うこともできる。(USB 2.0 なので、動作はおそらく少し遅いだろう。近い将来 USB 3.0 版の DisplayLink テクノロジー を手に入れてパフォーマンスを改善してくれることを期待したい。)二つのバージョンがあり、解像度 1366×768 の Monitor2Go が $299、解像度 1600×900 Monitor2Go HD+ が $329 だ。両者は解像度の違いを除けば同一だ。解像度や縦横比が iPad と合っていないのが残念だが、遠くから見るためにはおそらく Retina 級のスクリーンは不要であると同時に値段が高過ぎるだろう。[ACE]

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iOS ユーザーにも路上写真を -- iPhone や iPad をカメラとして使って、デバイスを垂直に立てて構えるというあまりにもあからさまな格好をせずに写真を撮りたいと思うこともあるだろう。MirrorCase は iPhone 4 および 4S、iPhone 5、または iPad 用のケースだが、iPhone を水平に持って、何かを読んでいるような顔をしたまま、正面にあるものの写真を撮ったりビデオ撮影をしたりできる。あるいは、授業中に iPad を使ってノートを取っている際に、iPad を机の上に置いたままで講師のプレゼンテーションのスライドをカメラを通してくっきりと見ることもできる。すべては手品師の煙と鏡で、いやいや煙は使わないが、手品のように見事に鏡映される。無料の MirrorCase アプリが、必要なピクセル反転を処理してくれるので、いつでも正しい向きに映し出される。($0.99 の MirrorCase Plus バージョンのアプリならば共有機能が使え、アプリの中から直接 Camera Roll にアクセスできる。) iPhone 4/4S 用の MirrorCase は $49.95 で現在発売中、iPhone 5 版は $59.95 で予約注文受け付け中、iPad 版は近日発売予定で $79.95 だ。[ACE]

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iPad でノートを取りつつオーディオ、テキスト、写真を同期 -- 私はずっと以前から、ノート取りのアプリで講義の録音もでき、私が書いたメモをそのオーディオの正しい場所に同期させたり、撮った写真も同様に扱えたりできるものがあればいいのにと思ってきた。オーディオにテキストを同期させる機能はあちこちで見かけるけれども、写真を同期させることもできるものは私が今回のショウで見つけた iPad アプリ、$1.99 の Projectbook が初めてだった。これならば講演者のスライドも記録できるようになる。けれども Projectbook は単なるノート取りアプリをはるかに超えていて、to-do リストや、Word 書類や PDF、ウェブクリッピング、画像、スケッチなども保存できる。ノートにはスタイル付きテキスト、手書きテキスト、スケッチ、写真、同期されたオーディオも含めることができる。ノートやその他の書類は自動的にそれぞれのコンテンツで関係付けられ、ノートにタグ付けしたり、フォルダに分けてファイリングしたり、日付によって整理したりもできる。(少なくとも Mac 版と iPhone 版が出るまでは)自分のタスク管理に Projectbook を使おうとまでは思わないが、ノート取りや情報管理に関する魅力的な機能が揃っているように見える。[ACE]

Kanex ATV Pro -- 私が講演した "The iPad for Photographers" セッションのために、私はギークらしさを発揮してプレゼンテーションのすべてを私の iPad から、ワイヤレスで、AirPort Express と Apple TV を使って行なった。(その際のセットアップの詳細を Seattle Times の記事に書いておいた。)けれどもステージに上るその前日に、予期せぬ障害に見舞われた。ショウで使用されるプロジェクターが、古い VGA 接続にしか対応していなかったのだ。第三世代と第四世代の Apple TV は、ビデオとオーディオの出力に HDMI 接続しか使えないので、私は iPad の VGA アダプタを使うしかないだろう、とすると講演の最中はずっと講演台の前から離れられないということだな、と諦めかけていた。ショウのフロアにたくさんのベンダーが近くに並んでいるのが素晴らしいというのに! そこで私は Kanex のブースに行ってみた。長年、さまざまの種類のビデオアダプタを出していると知っていたからだ。思った通り、彼らはまさに私が必要とするものを提供していた。$59.95 の Kanex ATV Pro だ。これを Apple TV の HDMI ポートに差し込めば、VGA ケーブルを繋ぐポートが使える。3.5mm オーディオ出力ジャックもあるのでサウンドの出力もできる。ブースで同社の係員と話しながら、私は ATV Pro が同社のベストセラーの製品の一つで、とりわけ教育関係者で古いプロジェクターをアップグレードすることができないけれども AirPlay メディアや Apple の最新のデバイスを使ったスクリーン共有機能を利用したいと思っている人たちに人気が高いことを知った。[JLC]

Givit と BUZZcard が iPhone ビデオを拡張 -- 私たちは会場でビデオのインタビューもしたいと思って Macworld/iWorld に行った。いろいろな理由でそれは実現しなかったけれど、iPhone でビデオ撮影をする人が興味を持つかもしれないビデオアプリとサービスの組み合わせを二つ見つけた。Givit アプリおよびサービス (最大 5 GB のストレージまでは無料、100 GB ならば年額 $29.99) を使えば、長いビデオの中から最も良い部分だけを手軽にクリップしたり、ビデオをモーション効果(スローモーション、早回し、繰り返し)で拡張したり、音楽を追加したりでき、出来上がったものを手早く個人同士で共有したり、あるいはソーシャルメディアサービスで共有したりもできる。一方 BUZZcard の方は、編集機能は提供しない(プレビュー機能がもっとあればいいのにと思う)けれども、その代わりにビデオのブランド付けに絞った機能がある。導入(イントロ)部分やエンディング(アウトロ)部分を加えたり、ビデオ全体に音楽やウォーターマークを追加したりできる。こちらは主として、不動産業者や自動車のディーラーなど、商品の宣伝をしなければならないけれどビデオの編集をする技術も時間もない、セールスのプロフェッショナルたちをターゲットにしている。現在のところ、BUZZcard の月額 $9.95 のサービスは処理を終えたビデオを YouTube に投稿するが、近日登場予定で月額 $19.95 の Pro サービスはビデオを自前のサーバでホストする。すぐ後に、私たちが BUZZcard で作ったサンプルビデオがあるのでご覧あれ! [ACE]

鞄のデモは最高 -- Strotter の Platforma バッグは、そのエレガントなデザインと、その機能のすべてを見せつけようとデザイナー本人が作り上げたデモのパフォーマンスの双方が素晴らしかったのでここに載せることにした。このバッグは縦長のメッセンジャーバッグとしても肩に斜め掛けするバックパックとしても使え、クリップを付け替えるだけで iPad を乗せて使えるハンズフリーの台に変身する。磁石付きのポリカーボネート製ケースのお陰で iPad がバッグにきっちりと収まり、またこのケースで iPad を冷蔵庫に貼り付けておくこともできる。$169 のこの Platforma バッグは、防水加工の革製で裏地は鮮やかな赤いナイロン製、ジッパーにも防水加工が施され、ポケットは内側に一つと、表側に二つ、さらに裏側にもう一つ付き、フラップは磁石で閉じるようになっていて、1.5 インチ幅のシートベルトストラップにはカスタム動作のバックル付きだ。もっと詳しいことが Strotter のサイトで読めるし、あるいは私たちが撮影して BUZZcard で TidBITS のブランド付けをした ビデオもどうぞ。[ACE]

iPad と Chef Sleeve で楽しく料理 -- 私が思い出せる限りの昔から、コンピュータはキッチンにおけるデジタルな手引きとしての働きをする準備が出来ていた。それなのに、私たちの多くはキッチンのカウンターの前に立つ時には今でも紙の料理本の方に手を伸ばす。一つの問題は、料理をしていると汚れやすいし、自然は真空を嫌うかもしれないが iPad はスープを嫌うからだ。そこで、 Chef Sleeve では使い捨ての iPad スリーブ (25 枚入りが $19.99、直接購入も Target からの購入もできる) を販売していて、ミキシングボウルから必ずこぼれてしまう食材からタブレット機を保護できるようにした。ブースの係員によればこのプラスチック袋はいったん装着したものをまた後で再利用することも可能とのことだったが、たとえ再利用可能だとしても、私は使い捨てのプラスチック袋というのはあまり感心しないと思う。けれども、このブースで私がさらに気に入ったのは、同社から $34.99 で販売されている iPad 用の Dishwasher Safe iPad Stand と、$69.99 の Cutting Board with iPad Stand だった。いずれも、リサイクルされた木材繊維と食品安全な樹脂とで作られ、広告されているところによれば食器洗い器に入れても大丈夫だという。スタンドの方は、iPad を二種類の角度 (45 度または 20 度) で立てられるようにスロットが二つ付いている。幅の広いスロットの方には iPad を Smart Cover を背面に回したままの状態で立てられるのが嬉しい。まな板 (Cutting Board) の方には iPad を立てられるスロットが一つ付いていて、目の前でレシビを見ながら料理ができる。これなら、私もついに古いインデックスカード式のレシピをデジタル化してもよいかもしれない。[JLC]

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最もシンプルな iPhone ホルダー -- 最後に、Insanely Great Products も紹介しておこう。ここはカリフォルニアにある小さな会社で、多種多様のシンプルな、安価な iPhone ホルダーやエレガントな iPad スタンドなどを販売している。彼らの売りは何かって? それは、低賃金の労働者が中国で作った出来の悪い製品が溢れるこの業界で、「Made in America に回帰しよう」というトレンドの最前線に立つのが Insanely Great Products なのだ。彼らの製品はすべてシリコンバレーの中で製造されている。シリコンバレーは主としてソフトウェアで有名だが、ここはずっと以前からハードウェア製造の豊かな伝統と生態系を持っていた。だから、Insanely Great Products で働く人たち全員が、同社の製品の製造に参加している。アクリルシートや鋼板、アルミニウム板をもとにして、デザインし、材料を切り取り、折り曲げ、エッチング加工し、一つ一つを手で組み立てている。同社が生まれたのはサンフランシスコ湾岸地帯にある物作り主眼の TechShop というショップの中からだったが、その後彼らは十分な量の生産を可能にするため独自の設備を買い入れることになった。iPhone を机の上で立てたり、窓にくっつけたり、自動車の車内の換気口からぶら下げたりできる iPhone 用の小物を探しているのなら、吸盤とバインダークリップを組み合わせた巧妙なホルダーが見事に役割を果たしてくれる。それから、アルミニウムやアクリルや鉄が工業的過ぎると思うあなたには、自然の竹で作った iPhone 5 スタンドもあって、これは iPad mini もちょうど読書に良い角度に支えることができるので、魅力的なアクセサリの一つとなることだろう。[ACE]

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Siri の英語訛りを調べてみる

  文: Steve McCabe: [email protected]
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Apple の「賢いパーソナルアシスタント」Siri に向かって、有名な "Open the pod bay doors, Siri" という台詞を語りかけたり、"Beam me up, Siri" と言ってみたり、そういった目新しさの興味がいったん薄れた後で、どのような魔法の文言が有効に使えるかを次第に覚えてくるようになると、Siri はようやく彼女本来の実力を(国によっては彼本来の、かもしれないが)見せ始め、実際相当に賢いアシスタントであることが判明する。

けれども Siri はパーソナルかつ賢いものと宣伝されているので、そのために Apple は Siri に数多くの言語で聴いたり話したりする機能を与えた。iOS 5 を搭載した初代の iPhone 4S は英語、フランス語とドイツ語が話せたし、その後は次々と、日本語、韓国語、スペイン語、イタリア語、そして標準中国語と広東語が、Siri のレパートリーに加えられていった。

でも、私たちはここで正直にならねばなるまい。ただ「英語」と言っても、それはたった一つの言語的構成概念を表わすわけではない。私たちアメリカ人が "patting someone's fanny" と話すのを英国人が聞いたらどう思うか、ちょっと想像してみるとよい。[訳者注: アメリカ人が手のひらで異性の尻をポンと叩く (patting the fanny) のは「この人とつき合っている」ことを公衆の前で主張する動作ですが、英国語の fanny は全く違うものを意味し、それを pat するのはきわめて性的な意味合いを持ちます。]英語という範疇の中に多様な種類が存在することを認識しつつ(George Bernard Shaw が "Pygmalion" の中で、自分は訛りを聞くだけで通り二筋の精度でロンドン市内の住所を言い当てることができる、と Higgins 教授に言わせたのは、それほど大きな誇張ではなかった。少なくとも英国では狭い地域ごとの訛りの変化が顕著で、私たちがそれを実際気にするという意味で Higgins 教授の言ったことは正しい)Apple は当初から Siri を三つの異なる方言、アメリカ英語、オーストラリア英語、それから(繰り返し言葉でちょっと変だが)英国英語に対応できるように作った。その後、まるで思い付いたかのようにカナダ英語にも対応させたが、これはアメリカ英語と同じ音声に聞こえる。

英国英語バージョンは、男性の声で話す Siri のバージョンがたった三つしかないうちの一つで、残りの二つはフランス語とスイスフランス語だ。いったいどうして Apple がこんな風に性別を振り分けたのか、神のみぞ知るだ。ちなみに、Siri の英国訛りはどうやら英国南部の一般的な訛りに近いもののようで、"ask" や "answer" の "a" 音が「アー」と長く伸ばされる。

入力と出力に異なる音声を選択できる手段が iOS には一切提供されていないことを、ここで注意しておく方がよいだろう。例えば、あなたがアメリカ英語で Siri に話しかけるよう設定すれば、Siri も同じ言語で返事する。その設定のままであなたがいくらオーストラリアの女性の声や英国の男性の声を聞きたくても、それは叶えられない。

(Apple は Siri の性別を明言することを頑強に拒んでいるが、現実問題として Siri が明らかに女性あるいは男性の音声で話す以上、人々が音声に応じて Siri を女性または男性に擬人化するのは避け難いだろう。私もそれに逆らうつもりはない。)

他の言語も、それぞれに地域に分けて変更を受けている。例えばドイツ語は、標準ドイツ語 (かなり Hochdeutsch らしく聞こえる) とスイスドイツ語 (Schweizerdeutsch) の二つある。どうしてこの二つの方言だけを選んで、例えばオーストリアのドイツ語が省かれているのかは、ごく恣意的な決定のようだ。アイルランド英語やニュージーランド英語が今は抜けているのも同じだ。また、スペイン語はメキシコとスペインと米国の三つの種類があり、フランス語はフランスとカナダとスイスの三つ、標準中国語にも "China" と "Taiwan" の二種類ある。

では、英語がこれほど細かく地域の方言に分かれているが、それらは実際どれだけ違うのだろうか? 私は英国北部 Manchester 近郊の Salford の出身だ。テレビドラマ "Downton Abbey" のファンの方なら "below stairs" (使用人部屋) で交わされる言葉を思い浮かべて下さればそれが私の訛りに近いだろう。あるいは、去年私が自分の書いた TidBITS 記事を朗読した録音を聞いて下さることもできる。完全に、明確に、聞き分けられるだろう。きっと皆さんなら聞き分けて下さると思うが、はたして Siri はどうか? さらに言えばアメリカの Siri は? あるいはオーストラリアの Siri は、聞き分けられるのか?

アメリカ英語と英国英語の間には、違いがたくさんある。ペンシルバニア州に住む純朴な学生だった 20 代の私は、授業中ノートに書き間違いをして隣の女子学生に消しゴム (rubber) を貸してくれるよう頼むという誤りを犯した。それからまた、これは本当の話だと誓ってもよいが、私はまた別の女子学生に向かって、たった一度だが、明日授業の前に君の家に立ち寄っても (come and knock you up) よいかと尋ねたことがある。[訳者注: knock up は「ドアを叩く」という意味ですが、アメリカでは「妊娠させる」という意味に使うことがあります。](ちなみにその女性は、今は私の妻だ。だから、あれは必ずしもそれほど失言ではなかったのかもしれない。)

こういった古典的な言葉の行き違いをいろいろ挙げるのはとてつもなく楽しいことだけれども、現実を見れば本質的な問題が起こったり重大な違いがあったりするのはごく稀で、稀な例だからこそ話として面白いのだ。日常的な生活の中では、本当に違いが目立つのは単語の発音だけだろう。誰でも思い浮かべる単語 "lieutenant" はさておき(これを「レフテナント」と発音するのが正しいことは誰でも知っているので、これ以上ここでごちゃごちゃ言っても仕方がないし、私は大尉や中尉である人を知っているわけではないので Siri にその人に電話をかけるよう頼む必要もない)大西洋の両岸での発音の違いはかなり大きいので「万人が使えるワンサイズの」Siri としては苦労しなければならない点だろう。

そこで、テストをしてみることにした。"Schedule some water and butter for quarter to four on the third of February" というのは単純な文だが結構な地雷原だ。"Schedule" は「シェジュール」と発音するのが正しいが、米国では「スケジュール」と発音される方が多い。"Butter" と "water" はいずれも、アメリカ英語では最後の "r" が ("arrr" のように) はっきり発音されるが、英国人は最後の "r" をほとんど発音しない。また真ん中の "t" の発音も違っていて、英国で「ワーテ」に近いものがアメリカでは「ウォーッタルル」みたいになる。アメリカ人たちの中で暮らした私の経験から言えば「3 時 45 分」を言い表わすのに "quarter to four" と言っても通じないことが多い。アメリカ人は "three forty-five" と言うのが普通なのだ。そしてここにも "r" や "t" がある。たとえアメリカ人が英国流の表現をしてくれたとしても、まだ発音の違いが残るわけだ。最後に年の第二の月は、英国ではどちらかと言えば「フェブリー」に近いような読み方をするが、アメリカ人たちは一つ一つの音節をはっきりと分けて「フェブルアリー」のような発音をしがちだ。テストの題材としたこの文は、何となく不自然な文には違いないが、"schedule" コマンド (どう発音するにせよ) の後に時刻と日付が続くのだから、賢くて語学にも長けたパーソナルアシスタントと称するのならば、やはり合格してしかるべき課題と言えよう。

テストを実施するのはこの私(当然ながら、管理者その人であり、正統の英語 (Queen's English) を話す)と、米国出身で標準的なアメリカ中西部の方言を話す(それでも彼女を私は愛している)妻の Deborah、そして私たちの娘だ。ティーンエイジャーの彼女は、生まれてから 12 年間はフロリダ州に住み、最近の 3 年間はここニュージーランドに住んでいるが、未だにアメリカ訛りが抜けないので私は残念でならない。

最初に私が試してみた。英国英語バージョンの Siri は、一発で私の言うことを聞き分け、正確に理解した。これは驚きだ。二度目に試しても、やはり問題なくコミュニケーションが成立した。テストのために、私は "schedule" をアメリカ流で発音してみた。それでも彼 (Siri) は理解してくれた。次に、私は Siri をオーストラリアの音声に切り替えた。すると、いくつか問題に遭遇し始めた。私が "water and butter" と言っても、いつも "water bottle" と受け取られてしまうのだ。たぶん、これは十分妥当なことなのだろう。オーストラリア英語では二つの母音に挟まれた "t" を(例えば "water" や "butter" のような場合)アメリカ人たちと同じように "d" と発音しがちだからだ。

その次に私はアメリカ英語の Siri を試してみたが、そのとたんに奇妙なことが次々と起こり始めた。あまりにも奇妙過ぎて、Siri が私を理解しようと苦心惨憺している様を記録するのにたくさんスクリーンショットを撮っておかなければならないほどだった。彼女 (Siri) の最初の推測は "Sejal Sewalt Rubalcava for 3:45 on 3 February" で、その次に試すと "Sejal someone Trembleton for 3:45 on 3 February" となった。"Show George Washington for 3:45 on 3 February" というのも支離滅裂な文章だったが、"Children's Wincherm both of frequentatives Solecita February" というのよりはまだましだろう。こうなると、Siri がもはやあきらめて、他の人から聞いたことのある単語をデタラメに放り込んでいるのは明白だった。いずれにしても、彼女が聞き取った内容は、私が言った内容とはほとんどあるいは全く関係のないことばかりだった。

次に妻の Deborah が、彼女のアメリカ英語で語りかけた。彼女の iPhone の Siri をまずアメリカ英語に設定して、彼女は私と同じ文章を話した。結果は何の問題もなかった。けれども彼女の Siri が大西洋を渡り英国英語に設定されると、突然彼 (Siri) は彼女が "Schedule some minor in Barrowford kind of fire and the third of anyway" と言っていると思い始めた。けれどもオーストラリア英語の Siri の成績はずっと良くなって、"Schedule someone and butter for 3:45 on 3 February" となった。それから、アメリカで育った私たちの娘がやってみても同様で、アメリカ英語の Siri には完璧に理解してもらえたけれども、英国英語の Siri はやはり Barrowford と minor の入ったデタラメな文章を答え、オーストラリア英語の Siri は "Schedule someone Bonofiglio define Vodafone" と理解した。

明らかに、この文章の最初の単語、"schedule" が一番の問題だった。これは Siri を使用する状況としては十分以上に頻繁に使われる単語のはずだから、Siri が双方の標準的な発音「シェジュール」と「スケジュール」の双方ともを理解できることは必須だろう。それなのに、特にアメリカ英語に設定した場合にはアメリカ流の発音のみしか処理できず、一方英国英語やオーストラリア英語に設定した場合には双方とも処理できるようだ。

Siri が文章をどのように構文解析するかについて Apple はほとんど何も明かしていないけれども、iPhone がオーディオサンプルを Apple のサーバに送って処理をさせる際に施される言語分析が、厳密に文法的というより実用第一のシステムを中心としたものであることは明らかなようだ。私たちがテストに使った文章では、最初の単語が "Schedule" なので、これが Siri に対して私たちがカレンダー項目を作りたいのだということを知らせる。従ってその単語の後に続くものはイベントの内容であり、また日付・時刻・場所などの情報も含まれる可能性が高い。同様に、"Tell" や "Ask" はいずれもテキストメッセージを呼び出し、"Call" やその類語は電話に関係し、それらいずれについてもその後に連絡先データベースの中にある名前か、あるいは電話番号が続くはずだ。

だから問題は、もしもその最初の単語(いわば引き金となる言葉)が正しく理解されなければ、コマンド全体が正しく理解されない可能性が高い。その一方で、より安全かつお馴染みの部分、例えば時刻や日付などについては、一定のフォーマットに従うことが多いので、Siri が理解できる可能性が高まる。

私は一つ興味深いことに気付いた。私たち三人とも時刻に "quarter to four" というフォーマットを用いたのだが、Siri はいずれもこれをきちんと理解して、スクリーン上に 3:45 という正しい時刻を表示した。それで思い出すのがもう一つの興味深い体験だ。

Apple が初めて Siri が日本語を話せるようにした時、私はすぐに試してみなければと思った。私は自分の iPhone に「妻に電話して下さい」 (_Tsuma ni denwa shite kudasai_) と日本語で話しかけた。もちろん Deborah の名前は私の連絡先 (Contacts) リストに登録してあるが、その登録は私の "wife" と英語で登録してあるのみで、日本語で登録してあるわけではない。けれども私が Siri に日本語で「妻」と言っただけで("my wife" と言ったわけではないのに)Siri はちゃんと Deborah に電話をかけてくれた。つまり、ここでは相当に巧みなバックグラウンド処理が行なわれている。単語や文章の意味は、コンピュータやプログラミング相手に話しかける際、例えば "wife" といった情報の意味が数多くの異なったトークンにより、たとえそれらが異なる言語の単語であっても呼び出せるというレベルでの動作をしているのだ。

Siri の言語処理は、どうやらその入出力の言語設定とは独立に働いているように見える。だからこそ、どうして Siri の入力と出力の設定を常に同じにしておかなければならないのかと私は不思議に思うのだ。Siri が英国英語で聴く設定にしておく方が、私の場合はうまく行く可能性がずっと高い。けれども私はこの英国英語の音声があまり好きでない。(それに、どうして男性の声しかないのかとも思う。)出力も、反応の方法も、どうやらローレベルの処理システムで抽象的に働いているらしい、となれば、どうして私の好きなように、例えばオーストラリア英語の音声に、iPhone の出力を設定させてくれないのだろう?(残念ながら、ニュージーランド英語の音声はまだない。ニュージーランドで買った私たちの iPhone はデフォルトで英国英語になっていた。)

個人的嗜好(他のことはともかく私は女性の声を聞く方が好きだ)を別にしても、これらの合成音声はいずれも、少し変に聞こえる。ちょうど私たちの子供たちが、読んだことはあるが聞いたことはない単語をいつも変な発音で読んで私たちを苛々させるのと同じだ。ただし合成音声には誤りを直してやることができないので余計に苛々する。しかしながら、私が実感したのは、外国訛りで発音を間違えているのを聞いてもそれほど不快に感じないし、時には可愛いとさえ思えることだった。だから、もしも Siri で入力言語を英国英語に、出力言語をオーストラリア英語に、それぞれ設定できさえすれば、彼女 (Siri) が発音の間違いをしでかしても私はずっと簡単に許すことができるだろう。実際、Mac の中に棲むテキスト読み上げ音声は昔から無数にあるのだから、その中から好きなものを選べるようにしてくれたらもっといいのに。

もちろん、そうなれば Zarvox みたいな声でしゃべる iPhone が現われてくるかもしれないので、あまり良い考えとは言えないのかもしれない。

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TidBITS 監視リスト: 注目のアップデート、2013 年 2 月 11 日

  文: TidBITS Staff: [email protected]
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Sandvox 2.7.6 -- この週末に Karelia が Sandvox をバージョン 2.7.5 にアップデートしたが、その後素早くバージョン 2.7.6 を出して、一部のユーザーがこのウェブオーサリングツールを使えなくなっていたバグを修正した。この Sandvox 2.7.6 アップデートでは、存在しないメディアを出版したり処理したりしようとした際の安定性を改善するとともに、バナーや小アイコンの画像を選択する際の問題点にも対処している。さらに、バージョン 2.7.5 でリリースされていた改善や修正もすべて盛り込まれており、主なものを挙げれば新規の書類を起動ディスク以外の場所に保存しようとするとデータが失われることのあった問題、.ico ファビコン(小アイコン)ファイルを Sandvox で調整せずに直接出版する機能、外部にあるメディアに作業をする際の安定性改善、ネットワーク接続ストレージ (NAS) ドライブに保存された書類で作業する際の反応性向上、Sandvox の生成する RSS フィード(とりわけポッドキャストなどエンクロージャを含むもの)の有効性改善などがある。この記事の執筆時点で、Mac App Store にはまだバージョン 2.7.4 しかない。(新規購入 $79.99、無料アップデート、31.2 MB)

Sandvox 2.7.6 へのコメントリンク:

AirPort Utility 6.2 for Mac -- Apple が AirPort Utility 6.2 for Mac(日本では AirMac ユーティリティ 6.2 (Mac))をリリースした。Wi-Fi ゲストアクセスを複数の AirPort ベースステーションで構成されたネットワークにも拡張できる機能を追加している。さらに、今回のアップデートで WPS 対応 Wi-Fi プリンタを追加できるようになり、各国語でのサポートが改善されている。これらの新機能と組み合わせて、Apple は AirPort Base Station および Time Capsule ファームウェア・アップデート 7.6.3 もリリースした。こちらはすべての 802.11n AirPort Express、AirPort Extreme、および Time Capsule 各モデルで使える。このファームウェア・アップデートは AirPort Utility 6.2 の中からのみインストールが可能だが、もしもあなたが上記の新機能を必要としていないのならば、Apple Support Communities で取り沙汰されている いくつかの問題点に対処したアップデートを Apple が出してくれるまで少し待つのがよいかもしれない。iPhone、iPad、あるいは iPod touch で AirPort Utility for iOS を使っている場合は、これらの機能を利用するためにはバージョン 1.2 にアップデートしなければならない。(無料、20.64 MB)

AirPort Utility 6.2 for Mac へのコメントリンク:

OS X Server 2.2.1 -- Apple が OS X Server 2.2.1 をリリースし、OS X 10.8 Mountain Lion 用のこのサーバ・アドオンに二つの機能を追加するとともに、安定性のための修正を施している。まず、Caching Server が追加されて Mac App Store からのダウンロード速度が改善され、OS X Server の走る Mac にソフトウェアを一度ダウンロードすれば接続されたあなたの他の Mac にもそのコピーを配布できるようになった。今回のリリースではまた、Time Machine 監視サービスも追加されてどのコンピュータがバックアップされたかを(最近にバックアップした時刻とサイズの情報も)チェックできるようになり、Retina ディスプレイにおいても Wiki Server に対応し、Centralized Certificate 管理インターフェイスが採用された。今回のアップデートで施された修正としては、Profile Manager にアップロードされたアプリを削除する際の問題、SSL エラーによって設定が失敗していた問題、Lion Server からのアップグレードにおける問題などがある。さらに、OS X Server 2.2.1 には Ruby on Rails に関係した脆弱性に対処するセキュリティパッチも数件含まれている。(新規購入 $19.99、無料アップデート、153 MB、リリースノート)

OS X Server 2.2.1 へのコメントリンク:


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Valid XHTML 1.0! , Let iCab smile , Another HTML-lint gateway 日本語版最終更新:2013年 2月 20日 水曜日, S. HOSOKAWA