TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#1167/01-Apr-2013

今日の号では、再び Apple 関係のニュースがスポットライトを浴びる。ただし Apple は、いずれの新機能についても同社のスペシャルメディアイベントで発表してはいない。どうやらそれは、来たるべき大きなハードウェアリリースを控えて保留となっているようだ。どの変更点が心に響くかはあなたの状況に依存する。親たちは、iCloud for Families のいろいろな機能を歓迎するだろう。これについては Rich Mogull が徹底的に解説する。プロフェッショナルのユーザーたちには、Joe Kissell が Mac Pro の後継機種のスペックを概観し、Matt Neuburg が Snow Leopard に留まっていた人たちも今や Mountain Lion を避けたい動機が一つ減ったことを説明する。開発者の人たちに興味ある話としては、Michael Cohen が今年は WWDC の入場券があっという間に売り切れる心配をする必要があまりない理由を伝え、Adam Engst が Apple の App Store ポリシーにおける三つの歓迎すべき変更の概略を語る。最後に、Apple がまたもや Dropbox を買収したがっているという噂が飛び交うとともに、私たちが Take Control で進行させつつある最新の実験として "Take Control of Crowdsourcing" の試みを発表する。[訳者注: 念のため申し添えますが、この号、TidBITS#1167/01-Apr-2013 の すべての 記事は、あくまでもエイプリルフールの日のみ、4 月 1 日一日限りの内容となっておりますので、あしからず!]

記事:

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Apple、競争率の高い WWDC 2013 登録にオークションを計画

  文: Michael E. Cohen: [email protected]
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

今年は、 Worldwide Developers Conference (WWDC) の登録が毎年あっという間に売り切れて開発者たちの不満を募らせていた従来の問題に対処するため、私たちが聞いたところによれば Apple は WWDC 2013 の登録受付が始まり次第、登録スロットの 10 パーセントほど(およそ 500 の登録スロット)を確保することを計画しているという。Apple の担当者の声明によれば、登録がすべて売り切れてから 3 日後に同社は確保しておいた分をオークションにかけるとのことだ。最も高値を付けた人から順に登録を入手できるという。

Apple の Developer Relations 担当者 W.T. Fiata は、次のように述べた。「これなら両者が共に得をすることになる。たまたま東部のタイムゾーンに住む人が優先されるのではなく、この予約分の登録はただ最も強く参加を願う人たち、腹の底に最も熱意をかき立てている人たちの手に渡ることになるし、その一方で Apple はのどから手が出るほど欲しい追加資金を得ることができて WWDC をさらに良いものとすることができる。」

未確認情報だが、このオークションは完全にインターネット上のみで実施され、未リリースの iOS アプリ、その名も iBay というものが使われるらしい。ただ、Fiata のオフィスに問い合わせてもコメントは得られなかった。インターネットオークションの巨人である eBay は、しかめ面をするかもしれない。明らかに Apple は彼らの会社名を真似ているのだから。ただ、商標争いにかけては Apple にもたっぷり経験がある。iPhone でやってのけたようにまず侵害しておいてからあとで和解するのもお手のものだろう。

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"Take Control of Crowd Sourcing" の執筆にご協力を

  文: Adam C. Engst: [email protected], @adamengst
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

お気付きかもしれないが、Take Control で私たちはちょっとした問題を抱えている。その名も、Joe Kissell という。誤解しないで頂きたい。問題といっても、Joe は人の望み得る限り最良の問題に違いない。編集者の目からも出版者の目からも Joe こそが dream writer、素晴らしい書き手だけれども、彼がどんなに良い書き手であろうと、彼がどれほどたくさんのことをできようとも、それでもやはり彼という人間は一人しかいない。

そこで、ビジネスの目から見つつ、私たちはライターたちの手があいていない場合に備えてもっと新しい執筆者たちを見つけるにはどうすればよいか、考え始めた。正直言って、うまく行く時もあれば、そうでない時もあった。その主題についてよく知っているので自分は本を書くことができると思っている人たちは多いけれども、最良の意図を持った著者であってもあまりにも多くのものを詰め込み過ぎれば行き詰まって妥当な期間のうちに本を仕上げることができなくなるし、また本を制作するプロジェクトにおいて必要な、緊密な構成を持つ長文を書き上げる経験が足りずに行き詰まることもある。

だから、チームの一員である Glenn Fleishman の勧めに従った私たちは(彼は最近この問題にちょっぴり心を奪われているようだ)まるきり新しいことを始めようとしている。もう何年も前から私たちの話題に上ってきたけれども、まだ実を結ぶには至っていなかったアイデアだ。それは、本のクラウドソーシング (crowdsourced book)、つまり、一人か二人の人だけが執筆し編集するのでなく、多くの寄稿者たちの力を合わせて本を作るのだ。Wikipedia を見れば、この種のモデルが実際にうまく行く実証例になっていることが分かるだろう。私たちは Wikipedia ほど野心的なことを目指そうというのではないけれども、この新しいやり方でまずはテスト用の本を一冊作ってみようと考えた。その名も、"Take Control of Crowdsourcing" という。さあどうぞ皆さん、このリンクをクリックして頂きたい。でもクリックしたからには、何か書き込む心積もりをお願いしたい。

結局のところ、クラウドソーシングはホットで流行の先端だが、大いに誤解されている。何ができるのか? 何をすべきなのか? 人々 (crowd) をどうやって見つけるのか? あなたのためにその仕事をしたいと思う熱意をどうやって人々に持ってもらうのか? そのプロジェクトのための資金をどうやって調達するか? これらの疑問や、他にもたくさんある疑問こそ、皆さんに、その通り、私たちの crowd である皆さんに、"Take Control of Crowdsourcing" の中で問いつつ答を探して頂きたいと願っているテーマなのだ。

私たちは Tom Sawyer を演じているわけではないのでご安心頂きたい。もしもこのプロジェクトが成功して、最終的に本物の本が出来上がって販売できるようになれば、その収益をすべて Wikimedia 財団 に寄付して Wikipedia やその他のクラウドソーシングによるプロジェクトを支えるために使ってもらおうと思っている。[訳者注: Tom Sawyer を演じるとは、人を騙すために大袈裟な嘘や巧妙な罠を使うという意味です。今週号の中で、このクラウドソーシングの記事 のみ が、唯一、嘘が含まれていない記事です。上記のリンクからは実際 Google Drive のページが開きます。]

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Dropbox が iOS のファイルシステムになるというのは本当か?

  文: Adam C. Engst: [email protected], @adamengst
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

遡って 2011 年に、Dropbox が Forbes 記事に取り上げられて一躍注目の的となったのだが、その記事の中で Victoria Barret は、Dropbox の作者 Drew Houston が Apple から(Steve Jobs 本人から!)の申し出、九桁の金額(つまり一億ドル以上)で Dropbox を買い取りたいという申し出をどうして断わったのかという話を述べている。その後 Dropbox の幸運は衰えるどころでなく、今やこのサービスは一億人以上のユーザーと 40 億ドル以上と見られる評価額を誇るに至った。ところが、私たちの聞こえてきた噂によれば、Apple はもう一度 Dropbox の買収を模索中で、その目的は iOS に真の分散ファイルシステムを提供するためだという。

同社内部の情報源によれば、Apple CEO の Tim Cook は Dropbox の大ファンであって、すべての企業文書を彼の Dropbox フォルダに入れるように命じて、どこにいてもすぐに自分のデバイスで読めるようにしているという。その上、iPad と Mac の間で書類をやり取りしたり、同僚と書類を共有したりするのが難しいことに不満を漏らしているとも伝えられる。私たちの情報源の話では、Cook はミーティングの席でそのフラストレーションを語り、以前地図の不具合の問題について Bloomberg Businessweek のインタビュー で公式に述べたと同じ「大失敗だった」という言葉を iOS 書類についても口にしたという。

その始まり以来ずっと、iOS は出来の悪いアプリベースのファイル処理に悩まされてきた。アプリ同士をサンドボックスで分離することで、セキュリティは増したけれどもユーザーたちに負担をかける結果となった。アプリとアプリ、デバイスとデバイスの間でファイルをコピーするために大変な苦労を強いて、重複データのためにそれぞれのデバイスの上で貴重なストレージ容量を浪費し、ユーザーたちが互いに協力して仕事をするのをことさら困難にするという具合だ。そこで多くの開発者たちは iOS のこうした制約を回避しようとして、自らのアプリに Dropbox 対応を組み込み、クラウドのファイル共有サービスに保存された書類をアプリが読み書きできるようにする道を選ぶようになった。また、Dropbox に対応していれば、書類を共有しているすべての人が、どのプラットフォーム上のどのアプリケーションを使ってもその書類で作業をすることができる。Apple のプラットフォームと iCloud 対応のアプリに限定され、しかもそのアプリの Mac 版は Mac App Store を通じて配布されたものでなければならない、などという制約はない。

Apple が以前に買収を試みた時点に比べて Dropbox ははるかに人気を増しているけれども、そうした解決法に向けての Apple の側の必要度もまた、当時よりずっと大きいものとなった。顧客たちは iOS のファイル処理に対する憤懣の声を挙げ、競合各社はそれぞれに Dropbox に似たサービスをひねり出した。とりわけ目立つのが Google Drive と Microsoft の SkyDrive だろう。(2012 年 4 月 24 日の記事“Google Drive と SkyDrive、Dropbox に狙いを定める”参照。)だから、Dropbox を買収するとすればその価格は相当高いものになるに違いない。Apple は 100 億ドルは出さなければならないだろうと予測する人たちもいるくらいだ。けれども私たちの情報源の説明によれば、この点に Tim Cook が動じることはなく「それくらいの金を Apple が持っていないわけはないし、金は欲しいものを買うためにあるんじゃないのか?」と述べたという。

現時点での懸念材料の一つは、仮に Apple が Dropbox を買収したとしても、iCloud の Core Data 同期を巡る 開発者たちの拒絶感は解消されないだろうということだ。Dropbox のテクノロジーは、依然として完全に書類ベースのものだからだ。Dropbox API を拡張し、データベースレベルの同期ができることを目指して Dropbox が開発作業中だというのも考えられないことではないが、同社はその点に関して何ら公式声明をしていない。

もしも Tim Cook が Dropbox の重役たちを説得することができて買収に成功したとすれば、重要な問題は Apple 以外のプラットフォーム上の Dropbox ユーザーたちに何が起こるかという点だ。Apple が Windows のプログラムに乗り気であったことはかつて一度もなく、Apple がわざわざ Android や Windows Mobile のクライアントを継続したいと思うとは考えにくい。そういう事態になれば、SugarSync や Dolly Drive といった Dropbox の競合各社にとっては願ってもないチャンスとなるだろう。ただ、これら二社とも、独立のアプリと API ベースで統合するという面では Dropbox のレベルに達していないのだが。

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Mac Pro が Mac Prime に進化

  文: Joe Kissell: [email protected], @joekissell
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

昨年 Tim Cook がほのめかした 通り、Apple は長らく待たれていた Mac Pro 後継機をリリースした。Apple の新しいハイエンドのデスクトップ Mac は、単にデザインが劇的に異なるものになったのみならず、新しい名前まで付いた。Mac Prime だ。この名前は、すべての Mac Prime 機種に装備されるプロセッサコアの個数が素数 (prime number) であるという、驚くべき事実に由来する。通常、プロセッサコアの個数は 2 の倍数だが、Mac Prime で構成できるプロセッサコアは 5 個から 17 個までだ。(最近の Mac Pro 機種はコアの個数が 4 個、6 個、または 12 個だ。)また、広く噂されてきたように、これは米国国内のみで生産される初めての Mac 機種となる。組み立てが行なわれるのはオレゴン州 Portland の近くに新しく建設された Apple 工場だ。

Apple のウェブサイトによれば、Mac Prime のパワーは「フラクタル処理」と呼ばれる先進的なテクニックによるものだという。Intel との共同開発で生まれたフラクタル処理により、従来のプロセッサ・アーキテクチャと比べてコアあたり毎秒ずっと多数の計算が可能となり、Turbo Boost (アクティブなコアの数を減らすことによりクロック速度を増やす) や Hyper-Threading (仮想コアの個数を倍増する) など既存のテクニックを組み込んだものをも大きく凌ぐことができる。例えば、5 コアの Xeon フラクタルプロセッサは、同じクロック速度で走る標準的な 6 コアの Xeon プロセッサよりも実効パフォーマンスが高いと言われている。Apple によれば、このテクニックのためにはプロセッサあたりのコアの個数も、そのコンピュータのコアの合計数も、ともに素数である必要があるとのことだ。

Mac Prime では、ただプロセッサコアの個数だけが素数 (prime) なのではない。こちらは単にマーケティングの理由に過ぎないのだろうが、Apple はそのスペックに登場するほとんどすべての数字を素数に選んだ。RAM の搭載量、ポートや拡張スロットの数などだ。さらにはその筐体さえ、側面の個数が素数だ。通常の六面体でなく、Mac Prime の筐体は七面体だ。(見た目の効果は微妙だが、背面が僅かに傾けて繋がった二枚の鉛直方向のパネルで出来ている。)

この筐体についてもう一言。同社お得意のつや消しアルミニウムであることは変わっていないが、Apple はリクエストの多かった「ミニタワー」のデザインを心に留めたらしい。少なくとも、妥当な拡張可能性を保てる限りにおいては。報道によれば、Mac Prime は従来の Mac Pro に比べて 31 パーセント小型化されたという。小さくなったために、2 基の内蔵光学ドライブベイがなくなり(ただし外付け USB SuperDrive には対応する)ハードドライブベイと PCI Express スロットの数も従来の 4 基からそれぞれ 3 基に減った。Apple のウェブサイトにある写真を見れば、Mac Pro のモジュール性と内部のコンポーネントにアクセスしやすい点はそのままに保たれていることが分かる。

Mac Pro ユーザーの中には内蔵拡張オプションが減ったことに腹を立てる人たちもきっといるだろうが、Apple が外部ポートに集中することにより全体的な拡張可能性を増したことはほぼ間違いない。Mac Prime には、過去に前例のない 7 基の Thunderbolt ポートが備わる。前面に 3 基、背面に 4 基だ。いずれも、外付けストレージ、ディスプレイ、その他の周辺機器を直接にサポートできる。(FireWire 800、gigabit Ethernet、eSATA、Fibre Channel、PCIe、ExpressCard/34、その他一般的なさまざまのタイプのデバイスに接続するための Thunderbolt アダプタは広く入手可能だ。)加えて、Mac Pro に 5 基あった USB 2.0 ポートに代えて、Mac Prime は 7 基の USB 3.0 ポートを備える。前面に 4 基、背面に 3 基だ。Mac Pro と同様、Mac Prime にもフロントパネルにヘッドフォンジャック、光学デジタルオーディオ入力および出力ポート、ステレオラインレベル入力および出力ジャックが付く。Wi-Fi と Bluetooth への対応も、Mac Pro と変わっていないようだ。しかし、Mac Prime には独立の FireWire、Ethernet、ビデオポートが付かない。(Thunderbolt がある以上、これらはすべて不必要なものと今の Apple は考えているらしい。)

Mac Prime には標準構成が二種類あるが、いずれもさまざまの工場出荷オプションが可能だ。ベースモデルは 4.21 GHz で走る 5 コア Xeon "Westmere" プロセッサが装備されて $2,399 となり、オプションで 4.43 GHz で走る 7 コアプロセッサ (追加料金 $500) にアップグレードできる。このシングルプロセッサ構成には標準で 11 GB の RAM が付き、これは 67 GB に拡張可能だ。一方ハイエンドモデルの価格は $4,099 で、11 コアのプロセッサとデュアルコアのプロセッサ (合計 13 コア) を組み合わせて 2.9 GHz で走る。工場出荷オプションとして 17 コア (11 + 3 + 3) で 3.1 GHz (追加料金 $1,200) または 3.3 GHz (追加料金 $2,400) にアップグレードできる。ハイエンドの Mac Prime には標準で 17 GB の RAM が付き、127 GB に拡張可能だ。

いずれの Mac Prime 機種にも、2 TB、7207-rpm ハードドライブが標準で付く。工場出荷オプションとしては(Mac Prime に 3 基内蔵されるドライブベイのそれぞれに)3 TB、7207-rpm ハードドライブ、2 TB または 3 TB Fusion ドライブ、または 1 TB (1031 GB) SSD から選べる。また、ATI Radeon HD 7963 グラフィックスカード (HD 7963 カード二つまたは 7993 カード一つにアップグレード可能) を内蔵し、それぞれ最大 3 台のディスプレイを 7681 × 4801 の最大解像度でサポートする。(これは現在市場にあるどんなものよりも高性能で、Apple が 30 インチ Retina ディスプレイか何かを開発しているのではないかという考えを暗示する。)

セキュリティ担当編集者の Rich Mogull が、新しい Mac Prime のリリース前下見をして、本物のイースターエッグを教えてくれた。テキスト入力可能な Cocoa ベースのどんなアプリでも (例えば TextEdit、Pages、その他) その中に "Steve Jobs lives!" とタイプすれば、Mac Prime は生前の Jobs が作成した特別のビデオを再生する。これは Mac Prime の ROM の中に保存されているものなので(少なくとも私たちの知る限り)Mac Prime 以外で再生することはできない。

すべての Mac Prime 構成は、本日 (2013 年 4 月 1 日) 入手可能だ。

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OS X 10.8.3 のチェックボックスで Snow Leopard の書類保存が復活

  文: Matt Neuburg: [email protected]
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  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

最近出された OS X 10.8.3 Mountain Lion へのアップデートでは、ほんの数個の具体的なバグが修正された(2013 年 3 月 14 日の記事“OS X 10.8.3 Mountain Lion、なかなか直らなかったバグを修正”参照)以外、いつも通りに最小限で不明瞭なリリースノート(「Mac の安定性、互換性、セキュリティを強化する」)しか付かず、Apple の貧弱な付属文書に何かが加えられることもなかった。表面上は、大きな変更点は何もなかったかのように見える。だから、以下に述べる点に私が気付いたのは全くの偶然だった。けれどもこれは私に言わせれば極めて大きな変更であり、広範囲にわたって影響を及ぼすものだ。

私は "Take Control of Using Mountain Lion の著者なので、Mountain Lion のアップデートを済ませた後には必ず、手早くシステム環境設定パネルを次々とすべて開いて、説明の文言やオプションの配置にどんな小さな変更があっても見落とすまいと見て回ることにしている。今回もたった今それをする機会をやっと見つけたところだったが、システム環境設定の General パネルの中に新しいチェックボックスが存在しているのに気付いて私は大きな衝撃を受けた。"Save documents manually"(書類を手動で保存する)というチェックボックスだ。その上、これをチェックしてみると、そのすぐ下の二つのチェックボックスが両方とも自動的に無効になる(ぼやけて表示される)のを見て私は驚いた。この二つのチェックボックスこそ、私が Mountain Lion を使いこなすために決定的に重要なものであった。実際、記事“現代的 Mountain Lion 書類モデルの様式とは”(2012 年 8 月 7 日) で説明した通り、Mountain Lion が私にとって使えるものとなったのはこの二つのチェックボックスがあったからだ。なぜならこれら二つのチェックボックスは、10.7 Lion で導入されたあの煩わしいオートセーブ機能を完全に無効にしてくれる訳ではないものの、少なくとも Mountain Lion が 10.6 Snow Leopard やそれ以前と同じ挙動をするかのような錯覚を起こさせてくれるものであったからだ。つまり、書類ウィンドウの「閉じる」ボタンに "dirty" 黒点を復活させ、"dirty" な書類を閉じようとした場合には変更内容を保存するかどうか尋ねるダイアログを出すようにしてくれたからだ。

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私は、これら二つのチェックボックスの機能を失いたくなかった! だから、新しい "Save documents manually" チェックボックスをチェックするとこれら二つのチェックボックスがなぜ無効になるのか、私は見極めなければならなかった。それを調べるために、私は TextEdit を起動した。書類を中心に働く Cocoa ベースのアプリケーションの標準挙動をテストするには、いつもこれを使っているからだ。私は、我が目を疑った。書類ウィンドウのタイトルバーに、あの小さなポップアップメニューはもうない。メニュー項目 File > Duplicate (ファイル > 複製) はもはやない。嬉しいことに、そこには File > Save As (ファイル > 別名で保存) という項目がしっかりあって、ユーザーがいちいち Option キーを押したり、あるいはシステム環境設定の Keyboard パネルでアプリケーション・キーボードショートカットにショートカットを追加したりする必要はもうない。File > Rename や File > Move To も、もうない。階層的な File > Revert To メニューもなくなり、シンプルな File > Revert (ファイル 復帰) で置き換えられた。実際、TextEdit 書類のタイトルバーもファイルメニューも、_Snow Leopard におけるものと全く同じに見える_。

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さらにいろいろと実験してみて、私の疑念は裏付けられた。TextEdit はただ単に Snow Leopard におけるものと同じに 見える だけでなく、挙動も Snow Leopard におけるものと同じだった。まさしく、この 10.8.3 のシステム環境設定 General パネルに新設されたチェックボックスは、オートセーブを完全にオフにする オプションと同等だった。事実上、Mountain Lion の書類保存挙動を Snow Leopard やそれ以前の書類保存挙動に戻すことになる。だからこそ、この新しいチェックボックスをチェックすれば他の二つのチェックボックスが無効になるのだ。それらは、無関係となり不必要になるからだ。

当初、私はこの変更がどれほど広範囲にわたって影響を及ぼすことかと衝撃を受けたけれども、正しい視点から考え直せばそれほど驚くようなものではない。結局のところ、オートセーブ自体は影響が広範囲に及びものであって、それがあまりにも広範囲なので、丸ごとオフにするオプションがあれば影響が広範囲に思えるだけのことだ。でも、これはまさに私が繰り返しリクエストし続けてきたオプションなのだから、それが実現した日に、私はなぜ驚かなければならないのだろう?

場所によっては、まるで公理であるかのように、Apple が決して道を引き返すことなどないしメジャーなシステムアップデートで設けた変更を元に戻すことなどないと言われることもあるが、その公理は誤っている。結局のところ、Mountain Lion 自体が既に、ある種 Lion から道を引き返したものであると言うこともできる。Lion ではオートセーブが絶対的に強制され、その挙動を変更できるオプションは一切与えられていなかった。ユーザーたちは、メニュー項目 File > Save As や書類ウィンドウの "dirty" 黒点がなくなったことや、File > Save As の欠損を補うために File > Duplicate を使って似た挙動をさせなければならないことに混乱し、不満を言い立てた。開いている書類に対して意図せず変更が保存されてしまうのを防ぐために、あらかじめ計画を立てた全く新しいワークフローが必要となったからだ。Snow Leopard のユーザーベースに Lion がなかなか受け入れられなかったのはこのことも理由の一つであった。Mountain Lion では、私が記事“現代的 Mountain Lion 書類モデルの様式とは”で説明したように、オートセーブ自体を取り去ることはなかったけれども、その表に出ているところの最も馴染めない部分を元に戻すオプションを与えるとともに、それ以外にもいくつかの重要な点を撤回した。例えば、Lion で酷評された書類の自動ロック挙動(2 週間にわたって編集されなかった書類は自動的にロックされた)もその一つだ。その後、10.8.2 でさらにもう一つ撤回がなされた。私が記事“10.8.2 になり Mountain Lion の保存挙動がさらに改善”(2012 年 9 月 20 日) で説明したように、Apple は File > Save As の本来の意味を復活させたのだ。Save As コマンドを当初 Mountain Lion で復活させた際に、その挙動が本来とは違っていて混乱の元となっていたからだ。

しかしながら、明白な事実を言えば、多くのユーザーたちは尻込みし続けた。完全に Snow Leopard のまま続けるか、または(私のように)必要となればしぶしぶ Mountain Lion を使うけれども本格的に作業をする際にはできる限り Snow Leopard に戻して使った。この事実と、Mountain Lion に対してユーザーたちから寄せられた声高な不服の声には、Apple も注目せざるを得なかったようだ。だから、彼らが特に重要と思う Snow Leopard の側面を復活させるオプションという形で Apple がそういうユーザーたちに受け入れられるアップグレードの道を提供するのも、決して不合理なことではない。

これは、Apple としては良い決断だ。欠点はあるけれども、Mountain Lion は間違いなく OS X の未来だからだ。表面から見えないところに、数多くの貴重な技術的改善が含まれている。それだけではない。開発者たちにとって後方互換性を確保するのは達成困難なことなので、ますます多くの新しいアプリケーションが Snow Leopard では動作しなくなる。つまり、現在 Snow Leopard を使っているユーザーたちも、いずれは前進する道が必要となる。そして、今回のたった一つのチェックボックスは、Mountain Lion がより普遍的に受け入れられるのを促進し正当化するものとなるだろう。

他方では、ツバメが一羽来ただけでは夏にならないと諺にも言うように、たった一つのチェックボックスが魔法のように Snow Leopard のすべてを復活させることにはならない。なくなって残念だとユーザーたちが思う点は他にもある。例えば、ウィンドウやデスクトップの管理は Snow Leopard の Expose の方が Lion や Mountain Lion の Mission Control よりも首尾一貫していたと思う人たちのために将来のアップデートで Mission Control が魔法のように元に戻るということは考えにくい。また、PowerPC アプリケーションは、ずっと前に私が記事“Lion に備える: お持ちの PowerPC アプリケーションを見つけよう”(2011 年 5 月 6 日) で警告したように、何らかの高度な仮想システム配置の下でない限り、Lion や Mountain Lion では決して動作しないだろう。

でも、Apple が過去の決定を再考するのはこのチェックボックスが唯一の例ではない。Dan Moren と Lex Friedman が Macworld 記事で詳しく検討してくれた(お陰で私が同じことをせずに済んだ!)ように、10.8.3 では Contacts アプリケーションが本物のアドレス帳のように見え Calendar アプリケーションが本物の卓上カレンダーに似て見える異素材模造のウィンドウ表現を取り去ることのできるオプションが追加された。Dan と Lex の記事には注目すべき詳細情報も載っていて、実は 10.8.3 に複数通りのビルドがあるらしく、本日 (2013 年 4 月 1 日) 付けの特別の Build 12D79 を入手しない限り、それらのオプションは一切現われないのだという。Apple メニューから About This Mac (この Mac について) を選び、"Version 10.8.3" と書かれている場所をクリックすれば、Apple の有益なイースターエッグの一つが使える。最初のクリックでビルド番号が表示され、二度目のクリックであなたの Mac のシリアル番号が表示される。

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App Store 2.0 の新方針が開発者たちの不満に対処

  文: Adam C. Engst: [email protected], @adamengst
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

数週前の OS X 10.8.3 のリリースに伴い、Apple は App Store の方針に重要な変更を秘かに施した。アップデートされた付属資料と、iTunes Connect の奥深く埋もれた新しいオプションに開発者たちが気付くにつれて、私たちは今、その変更のもたらした結果を目にし始めているところだ。開発者たちの不満のすべてに対処が施されたわけではないが、今回の変更は Apple のアプリのエコシステムの未来に向けて極めて建設的なものだと言える。

有料アップグレード -- 最も注目すべきは、Apple がついに開発者たちの圧力に屈して、アップグレードへの課金を許したことだ。iOS App Store の始まりからずっと、そして Mac App Store にも引き継がれたことだが、これまでアプリのアップグレードはすべて無料とされていた。Apple はユーザーにとって良いこととしてこれを大きく宣伝してきたが、一年ほど経過した頃から、この方針が深く備えている否定的な意味合いが明らかとなってきた。Stairways Software の Peter Lewis が指摘したように、問題は Apple が 新規の 顧客が常に十分存在するのを前提としていることで、その前提の下に開発者たちには無料でアップグレードを制作する余力があると見なされていた。彼はこう語る:「有料アップグレードができないことで、フィードバックのサイクルと顧客との関係性が断たれてしまい、その結果として開発者たちは自分の書いたプログラムを現在使用している人々のために働くことができなくなっている。開発者たちは、現在そのプログラムを使って いない 人々のためにのみ働いている。それはつまり、既存の顧客のためにプログラムを改良しようという財政的誘因が完全に欠落する結果となる。積極的に購入したいと思わないのは既存の顧客のみ、というあべこべの状況になっているのだ。」

大多数の開発者たちにとって、これは不幸なことだ。高度に特定された働きをするアプリならば、愛好家たちの人数も限られていて、いつまでも新規の顧客が増え続けたりはしない。アップグレードによる収入がなければ、多くの開発者たちは直ちに売れ行きが伸びないアプリを見限ってしまうものだ。なぜなら、既存の顧客に無料で提供することを Apple に強制されたアップグレードに、開発のための時間を充てられる金銭的余裕はないからだ。一部の開発者たちは Apple の制約を回避するためにアップグレードを新規のアプリとしてリリースすることを試みたが、そのやり方ではたとえマイナーなアップデートであっても既存のユーザーとの結び付きを切ってしまうことになるし、アップグレードの通知を送ることも、有利なアップグレードの方法を提供することもできず、さらにはストアの中で売り上げのランキング、レーティング、レビューを失う結果認知度を減らすことになってしまう。Apple の姿勢で最も気に障るのは、Apple 自身は本質的にアップグレードによる収益に大きく依存しているという事実だ。ユーザーをプラットフォームに囲い込むという Apple の目標は、私たちが皆新しい Mac や iOS デバイスを数年に一度購入し続けるようにするためのもの、すなわち古いマシンをアップグレードさせるためのものだからだ。

でも、不平ばかり言っていても仕方がない。今や、そういう不平はすべて過去のものとなった! 報道によれば、非公式に App Store 2.0 と呼ばれている iTunes Connect インターフェイスの中で、Apple は開発者たちに個々のアップデートを無料にするか有料にするかを自由に選ばせるようになって、有料のアップデートについては開発者が過去のすべてのバージョンをリストしたポップアップメニューから選ぶことで過去のどのバージョンからのアップデートが有料になるか、どれだけのアップグレード料金にするかを指定できるようにしたのだという。つまり、バージョン 2.x やそれ以前から 3.1 にアップデートするのは有料で 3.0.x からは無料、という設定も可能ということだ。

ユーザーの観点からは、私たちが理解したところでは有料アップデートは自動的にはダウンロードされず、App Store アプリの Updates スクリーンに値引価格の表示を添えて登場するようだ。ユーザーがお金を払うことを選ぶか、あるいは Hide ボタンをクリックするかすれば、初めてそのアプリは Updates リストから消える。

起動数や時間で限定された試用バージョン -- もう一つ、極めて歓迎すべきユーザーフレンドリーな動きとして、すべての有料アプリが試用バージョンとして入手できるようになった。つまり、ユーザーにとっては多くの有料アプリの中からどれが自分の目的に最も適しているかを判断するのがずっと手軽にできるようになった。

Apple は試用のやり方についてかなり革新的なところを見せた。ほんの数回しか使われない iOS アプリが多いという事実を踏まえて、試用バージョンとして使われることを選んだ有料アプリは(ほとんどの有料アプリがそうなると私たちは予想している)起動を 7 回して、しかも 7 日間使えば、タイムアウトになる。回数で制限するのは、何か特別の目的で一月に一回ずつしか使わないようなアプリの場合に、動くかどうかまだ試していないのにお金を払わなければならない状況になるのを防ぐためだし、7 日間の制限の方は、例えばゲームならば一週間にわたって毎日何度も使えば十分試せたことになるだろうからだ。

App Cubby の David Barnard は、この新しい試用バージョン対応に驚喜している。「 Launch Center Pro にとってこれは完璧だ。今まで、多くの潜在的ユーザーが、実際に試してみないとこのアプリが何をするものなのか心に描くことさえできなかったけれど、これで誰でもそうすることができる。」

試用バージョンを追加したことのもう一つの良い効果は、無料の試用バージョンを提供する目的で同じアプリの複数のバージョンが App Store を人為的に埋め尽くしたり、開発者たちが複数のアプリを管理し続けなければならなかったりという状況がなくなることだ。さらにユーザーの観点からは、私自身、自分の必要とするアプリが無料で見つかったように見えて、実は何らかの重大な点で機能が制限されていることに気付いて苛々することが多かった。

アプリをサポートするコミュニティ -- 最後に、App Store 開店の初日から声高に求められてきたもう一つの新機能は、現在の、そして将来の顧客たちと直接やり取りできる機会だ。現状では、顧客は誰でも App Store にレビューを書くことができるし、多くの人たちがその機会を利用して問題点に不満を述べたり広く怒りを爆発させたりしている。けれども開発者たちにはそれに反応する手段が一切与えられておらず、単純に事実を誤認している投稿に対して誤解を正したいと思う開発者はフラストレーションを募らせ、連絡さえつけば問題点がすぐに解決できるかもしれないというのにユーザーには何の助けも差し伸べられないままだ。

けれども App Store 2.0 で、Apple はすべての製品のレビューをパワフルで使いやすい討論フォーラムエンジン(Apple Support Communities フォーラムの基盤となっているもの)の中に織り込んで、一人一人の開発者がユーザーたちを援助し、ユーザーたちもお互いに助け合える場を作った。開発者が iTunes Connect でアプリの管理に使っている Apple ID でログインすれば、自動的に投稿が開発者からのものだとマークされる。

Rogue Amoeba の Paul Kafasis は、Apple に対してこの機能を求めてロビー活動をした人たちの一人だが、こう述べている:「人々は、Mac App Store のレビューセクションを技術サポートの窓口として扱っている。けれども私たち開発者はその場で反応することができなかったし、その顧客が誰かを知ることもできなかったので、私たちには援助ができなかった。今までは。」

さらに追加のボーナスとして、ウェブの検索エンジンがこの App Support Communities にアクセスできるので、特定のアプリについて助けを求めていたり適切なフォーラムを探していたりする人たちも、また特定のアプリを探している人たちも、別の方法を探してウェブを検索するだけで簡単にそこに導かれるようになるかもしれない。つまり、誰にとっても結果は上々となるだろう。

まだ欠けているもの -- これらの変更点はとても歓迎すべきものだが、他に開発者コミュニティーでずっと以前から要望があったけれどもまだ答が出されていない事柄もまだある。匿名を条件に語ってくれた一人の開発者によれば、それらの問題点は引き続き Apple 内部で「活発な議論」の対象になっているという。

その中で優先度の高いものの一つが、開発者が値引を提供するためのクーポンのサポートだ。さまざまなクーポンがウェブ上で広範に使われているという事実はあるけれども、Apple はその考え方に必ずしも熱狂的なわけではない。その立脚点は、クーポンというものは本質的に、異なる顧客に異なる価格を設定するためのものであるが、Apple としてはすべての人たちが同じに扱われるのが望みだからだ。けれどもその議論は、今や Apple が提供するようになった、期間限定のセールにおいて完全に崩れ去る。そこでは、間に合ううちにセールのことを知った顧客のみに利用が可能となるからだ。その時点で既に、顧客の差別化が行なわれている。

開発者たちの願い事リストに載っている他の機能としては、Mac App Store 以外で販売されたアプリによる iCloud のデータと書類の共有 (および iCloud の Core Data 同期に対する大幅な改善)、アプリの認可に長い時間がかかることやその意思決定プロセスが往々にして気まぐれなものに見えるという懸念、それからユーザーによる発見のツールの改善などがあるだろう。さらに、驚くような事態の展開として、三年前に私たちが仮想のページで初めて報告した過激なプラン、すなわち App Store のフランチャイズ店を認めてそれぞれの店が独自のアプリ受け入れ基準を設けられるようにするアイデア(2010 年 4 月 1 日の記事“Apple、フランチャイズと Mac アプリケーションで App Store 大変革を計画”参照)を、Apple が引き続き考慮中であると信じる根拠を私たちは得ている。その三年前の記事の後半部分の内容は実際に将来を予知していたことが証明済みなのだから、その Apple 内部での「活発な議論」がこれらの問題点に対する動きに繋がることを私たちは願わずにいられない。

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iCloud for Families が登場

  文: Rich Mogull: [email protected]
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

大がかりな発表は今後のハードウェアリリースのために保留にしつつ、Apple は今日、iCloud に大幅な拡張を施すことになった。iCloud に新たな機能やアプリケーション追加してそれらを既存のサービスと結び付けることにより、家族がまとまって、それぞれの Apple デバイスを使って連絡を取り合えるための新たな方法を提供し、Glassboard などのアプリとサービス(2012 年 11 月 12 日の記事“Glassboard で家族が連絡を取り合う --(end)--”参照)でできる範囲を超えたものを提供しようというのだ。iCloud for Families と名付けられたこのサービスは、発足当初から素晴らしいものとなっている。個々の家庭内の必要にも応じつつ、世代も居住地も異なる現代の家族同士を結び付けるためにテクノロジーが果たすべき役割をきちんと認識している。当然のことだが、親と子供のやり取りにはセキュリティが大きな役割を果たすので、Apple はセキュリティコンサルタントの私に対して事前にこれを見せてくれた。

iCloud for Families の核心をなすのは、iCloud ウェブサイトに新設された Family セクションと、それと組み合わせて使う(近くリリースされる)同名の iOS アプリで、このアプリを使って自分の家族を定義し管理できる。すると家族の設定が iCloud 全体にわたって適用され、既存の各種サービスとデバイスを設定することにより、例えば Find My Family、共有カレンダー、家族のメーリングリストやインスタントメッセージ、統合フォトストリーム、ペアレンタルコントロールなどの機能に対応する。iCloud for Families は、本日 (2013 年 4 月 1 日) 利用可能で、料金は年額 $29.95 だ。

世帯と拡大家族 -- iCloud for Families を購読すれば、あなたがすべき最初の手順は自分の家族を「定義」することだ。iCloud for Families は家族のメンバーを二つのカテゴリーに分けて認識し、それぞれに対して自動的に適切なサービスを設定する。

あなたの世帯 (Household) には、直接の身近な家族のメンバーが属する。両親と子供たち、といった風だが、このサービスは具体的にそのタイプを限定することはしない。融合した、伝統的でないタイプの家族もあるからだ。世帯の個々のメンバーはそれぞれ iCloud アカウントを持っていなければならない。世帯に加われば、指定された iCloud アカウントでサインインされたすべての Mac や iOS デバイスに対して自動的に Mail、iMessage、FaceTime、Location Services、Calendar、Notes、Reminders、Photo Stream が設定される。また、iCloud ウェブサイトと iOS アプリの中で My Family ダッシュボードへのアクセスもできるようになる。それから、子供たちのデバイスにペアレンタルコントロールやその他の設定をプッシュするための iOS 構成ファイルを親たちが作成することもできる。

好きな電子メールアドレスをあなたの拡大家族 (Extended Family) に割り当てることができ、拡大家族にはより限定された範囲のサービスが有効となる。世帯用の機能が日々の家族の活動を狙いとしているのに対して、拡大家族用の機能は祖父母たちやいとこたち、親しい友人たち(それと、やはり含めておかなければならないあの厄介な親戚たち)との間で最新情報をやり取りすることを狙っている。プライバシー機能がきちんと定められているので、Facebook に対する威嚇射撃となるかもしれないが、ソーシャルメディアサービスに取って代わるものとして作られているのでないことは明らかだろう。

誰かをあなたの拡大家族に追加すれば、四つの機能が設定される。Events (共有カレンダー)、Contacts (共有される連絡先情報)、News (電子メールによるアップデート)、それに Photo Stream (共有される写真) だ。拡大家族に追加された人自身は、追加のソフトウェアをインストールする必要もなく iCloud にサインアップする必要もない。ただし、一部の機能は iCloud にログインしていないと働かない。

既に働いているものを活用する -- iCloud for Families はまず、共有家族カレンダーからスタートする。ここにはグループでのイベントが含まれ、世帯の個々のメンバーのデバイスに表示される。個人的なカレンダーを個々のメンバーごとに作ることもでき、それは自動的に家族全員に共有される。世帯のメンバーがそれぞれカレンダーを作ることができるが、親たちは常に子供たちのカレンダーにアクセスできる権限を持ち、子供たちが親の個人的カレンダーに変更を加えることはできない。また、親たちがプライベートなカレンダーを作ることもできて、そのイベントは他の人たちの目から隠され、しかも家族カレンダーにおいてはそのイベントの時間をブロックするようになっている。

拡大家族のメンバーは、誕生日や、その他家族の行事を思い出すために、別途 Family Events カレンダーを購読できる。またもう一つ別のカレンダーを管理しなければならないのが嫌なら、Family カレンダーの中のイベントで Share with Extended Family チェックボックスをチェックするだけでそのイベントが世帯の外でも共有されるようになる。

次に、iCloud for Families は世帯のメンバー用にグループ電子メールリストをセットアップする。これは普通のメーリングリストと同じように機能し、家族のメンバー全員のアドレスブックに自動的に追加される。何とも巧妙なことに、このアドレスは常に [email protected] であって、Apple のサーバがこのアドレスを定義済みの家族のものと認識し、適切に家族のメンバーに配送するとともに、iCloud 生成のメッセージのみに対象を絞ることでなりすましを防ぐようになっている。もう、[email protected] とかいったアドレスをいちいちセットアップする必要などない! 同じアドレスが iMessage でも使える。リアルタイムで世帯の全員とコミュニケーションできる、便利な手段となる。

家族のメンバーが送信したり受信したりするすべての電子メールメッセージは、グループ宛てのものであろうと個人対個人のものであろうと、あらゆるバージョンの Mail で "Family" とマークされ、特別のスマートメールボックスで読める。その点は VIP メッセージと同じことだ。また、Do Not Disturb や通知の呼び出しの設定を無視するよう設定することもできる。

拡大家族に最新情報を知らせるために、iCloud は第二の電子メールアドレス、[email protected] も使う。このアドレスに宛てられたメッセージは、さきほどと同様に世帯の iCloud 電子メールアドレスから送信された場合に限られるが、拡大家族のメンバー全員に届く。このように世帯内から拡大家族への一方通行とすることで、家族内の摩擦を減らすことができる。親としての決断や政治的考えに、親戚たちから公開の論争を仕掛けられたりすることがないからだ。この機能によって、広く散らばった家族に最新情報を知らせることができ、そのために全員が Facebook などを使わなければならないという必要もない。

Reminders や Notes にも、グループリストが付くとともに、親たちには子供たちの情報にアクセスできる権限が与えられる。これで、Susie に毎晩の仕事を言い付ける際に、リマインダーが彼女の iPod touch に必ず出る(通知で悩ます)ようになる。親が作成したリマインダーを子供がオフにすることはできないので、あなたの家のティーンエイジャーも知らぬふりができなくなる。受取り人が通知をタップしたことを送り主が追跡できて、そのことが金で縁取りされた高級紙にくっきりと印刷され、Tim Cook の署名まで付けば、いつもの「そんな話、ほんとに聞いてないから」という言い訳も通用しなくなるだろうにと思う。

家族に宛てたメモは、ただ単に冷蔵庫に貼り付けるメモの代わりというよりも、むしろ情報アーカイブとしての性質を持つ。例えば「今夜は遅いシフトの仕事なので夕食は電子レンジで温めて食べて下さい」といったような情報にはテキストメッセージや電子メールが優れているからだ。

Contacts は自動的に家族全員の連絡先情報をアップデートし、拡大家族のメンバーには別途グループが作られる。ますますモバイル化する社会に対応して、拡大家族に属する誰かが引っ越して Contacts 内の住所が変われば、その変更が自動的に拡大家族に属する全員の Contacts アプリに伝わる。

私が最も期待している機能の一つは、Family Photo Stream だ。世帯のメンバー全員の、個々の Photo Stream(あるいは、すべてを共有したくない人ならばその人が選択したアルバム)に含まれる写真が一つにまとめられて、すべてのデバイスに push される。

私は、Family Photo Stream がきっと拡大家族向けの機能の中で最も人気あるものになるだろうと思う。イベントと同様、すべての Photo Stream に新たなオプションとして Share with Extended Family という設定が付き、それを選んでおくだけで、もはやたくさんの電子メールアドレスを覚えている必要もなく、iCloud for Families があなたの拡大家族リストに属する全員にその写真の通知をしてくれる。例えば、休暇旅行中に新しく "Disneyland" アルバムを作り、それを共有するようマークしておけば、自由に使えるお金のすべてをあのネズミに注ぎ込んだ長い一日の終わりに、iPhone で撮っておいた写真をそのアルバムに移すだけで、自動的に家族全員と共有できる。

ただのコルク版と呼ぶべきではない -- iCloud for Families を購読すれば、その iOS アプリを起動すると My Family ダッシュボードが表示される。ウェブユーザーも、iCloud.com 上で他の iCloud サービスとともに並ぶアイコンから My Family ダッシュボードにアクセスできる。

嬉しいことに異素材模造のデザインに頼る流行に流されるのを避けて(おそらくこれは Jonathan Ive が新たに Apple ソフトウェアを掌握したことの兆候ではなかろうか)My Family ダッシュボードはよくある家庭用コルク版のようには見えない。その代わりに、ごくシンプルでフラットなデザインとなっていて、Windows 8 を思わせるタイルを使ってあなたの世帯の現在の状況が示され、また拡大家族から送られたイベントやニュースもここに示される。

さまざまのタイルが、今日のイベント、今週のイベント、リマインダー、家族からのメッセージのまとめ、家族の現在位置を示す地図、最近のメモ、統合された Photo Stream、それに拡大家族のニュースを表示する。タイルをタップすれば詳細情報が表示され、新規のイベント、リマインダー、メッセージ、メモなどをそれぞれのタイルの上で作成できる。

Find My Family -- 家族用の位置情報サービスというのは、興味深い難問だ。子供たちが小さいうちは、位置情報の把握は安全と心の平安のためのツールとなる。子供たちが成長するに従い、位置情報の追跡は食事を届けるためや、子供たちが正しい活動、遊びの仲間、イベントに加わっているのを確認するためのものになる。子供たちがもう少し大きくなれば、追跡は安全を確保するためのものか、食事を楽に届けられるためのものにもなるが、プライバシーの全面的な侵害ともなり得る。親として、あと 5 分で迎えに行けると子供に知らせたいと思うこともあるけれども、夜に自分がデート中の場合には近所のホテルにいることを子供に知られたくないこともあるだろう。

Find My Family は興味深い方法でこれらの必要の間のバランスを取る。まず第一に、Find My iPhone と同じ常時有効の機能を活用して、アプリを終了しても位置情報追跡が切れないようにする。安全を期すために、あるデバイスで Find My Family が有効となっていて、そのデバイスが一定の時間にわたってネットワークに接続できなくなるか、あるいはデバイスが終了してしまえば、このサービスが親に警告を送るとともに、知られている最後の所在地を表示する。ティーンたちが Airplane Mode をオンにして追跡を避けようとするのも、これで予防できるだろう。

第二に、親たちが地理的な「垣根」を設定して、子供がその境界に近づいたり、その外に出たりすれば警告するようにできる。その動作は、多少の違いはあるけれども、Find My Friends のジオフェンシング通知機能とよく似た働きをする。親たちは日常的に追跡したい場所のリストを作ることができる。例えば学校、友だちの家、商店街、といった場所だ。さらに興味深いのは、子供たちが特定のタイプの場所、例えば居酒屋、刺青店、(コロラド州とカリフォルニア州では) 医療用マリファナ薬局、といったところに近づけば親たちに通知が行くようにすることもできる。ただしこの機能は Maps データベースに依存して働くので、ウェブベースのフィルタリングを完全に信頼してはいけないのと同様、完全に依存することはできない。

最後に、第三の点として、親たちが Private Mode を設定して、一時的に自分たちの位置を家族の他のメンバーの目から隠しておくことができる。この場合は通常の青い点が疑問符に変わり、その横に「場所は明かせません」という表示が出る。プライベートでいたい時間間隔は(30 分刻みで)設定可能だ。

素晴らしいペアレンタルコントロール -- 子供に iOS デバイスを持たせることを巡る大きな問題点の一つは、ある程度の監督と制御の力を保ちつつ連絡を取り続けていられるかどうかだ。Apple は、独創的なやり方でこの問題を解決した。誰かを子供と指定すれば、ペアレンタルコントロールを設定することができる。それはただ単にサービスに対して適用されるだけでなく、構成ファイルを作成してそれを子供たちの Mac、iPhone、iPad にインストールし、まるであなたが企業の権力者であってコンプライアンス方針を従業員たちに強制しているかのようにできるのだ。

iOS デバイスについては、ペアレンタルコントロールはまず従来 Settings > General > Restrictions で設定できた制限の中からどれでもあなたがあらかじめ構成に組み込んでおけるようにする。例えば、FaceTime をブロックしたり、購入を制限したり、iTunes Store でコンテンツの年齢区分範囲を指定したり、といった基本的な設定がここに含まれる。報道によれば、これらの制限は iOS 7 にも拡張されることになっていて、iOS 7 では親たちがそのデバイスの使用可能な時間帯と一日の合計使用時間を設定して子供たちがベッドに入るべき時間に使ったり長く使い過ぎたりするのを防止でき、さらには特定のアプリや特定のタイプのアプリにタイムリミットを設定して子供たちがゲームで遊んでばかりいるのを防ぐことができるようになるという。

iCloud for Families では、こうした制限をさらに拡張して、電話の通話やテキストメッセージ、電子メール、それに FaceTime の使用を、世帯および拡大家族のメンバー、さらには信頼できる友人たちや近所の人たちに対して制限できるコントロール機能が付く。それでは制限が強過ぎるという場合には、子供が通話やテキストメッセージをできる不適切な友だちの数をブロックするようにもできる。世帯のメンバーの電話番号は自動的に Phone アプリのお気に入りに加えられる。もちろん、緊急電話 9-1-1 が決して制限を受けないことも、Apple は忘れずに表示している。

最も興味深い、そして同時に必ずや論争を生む点は、Photo Stream に関するペアレンタルコントロールだ。一つのオプションは「強制的 Photo Stream」を作成し、これはそのデバイスで撮影した写真をすべて家族の Photo Stream に push する。これならば子供が iPhone のカメラを悪い目的に使わないようにするための面白い方法となるし、万一そんなことが起こった場合にもあなたがすぐにそれと知れるようになる。それは極端過ぎるというなら、別の設定として、写真の中に肌色の割合が多過ぎると探知した場合のみ親に警告する(そしてその写真を送信する)ようにもできる。勧められない被写体の選択を予防する目的と「そんな格好で出歩くんじゃありません!」問題に対処する目的との両方を目指したこの機能は、実際にテストしてみるとあまり当てにならないことが分かった。海水浴場で誤判定してしまったり、特定の民族性にしか対応していなかったりしたからだ。

全体的に見て、iCloud for Families は発足当初から素晴らしいものとなっている。既存の iCloud サービスを活用してそれらを拡張していること、すべての Apple デバイスにわたってペアレンタルコントロールを及ぼしていること、世帯と拡大家族の両方に対応していること、などが主たる理由だ。ペアレンタルコントロールが極端に走り過ぎれば家族内部においても社会全般においても論争を生むに違いないが、常に言えることながらそれはテクノロジーに問題があるのではなくて、テクノロジーをどのように使うかという点に問題がある。いずれにしても、iOS デバイスと深く統合された点が、家族の生活の中で魅力が大きいと言えるだろう。そしてその結果は、ただただより多くの iOS デバイスが売れるようになるということで、その事実以外に Apple にとって重要なことなど、他にあるだろうか!

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[訳者注: 念のため申し添えますが、この号、TidBITS#1167/01-Apr-2013 の すべての 記事は、あくまでもエイプリルフールのための冗談で、4 月 1 日一日限りの内容となっておりますので、あしからず!]


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