TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#1169/08-Apr-2013

来年の 2 月初旬に Macworld/iWorld に出席するつもりでいた人は、計画を再考する必要がある。開催が 3 月下旬に変更されたからだ。現実世界のカンファレンスに出席するのは面倒だとお考えの方には、Google+ Hangouts On Air で何ができるか見ておくことをお勧めする。私たちも TidBITS Presents や Take Control Live のためにこれを使ったので、Adam Engst がその使い方を、プレゼンテーションを語る人と聴衆になる人双方のために説明する。Adam はまた、Gmail iPhone アプリのバージョン 2.1 で新たなジェスチャーを使いこなす方法を概観する。Matt Neuburg は Cloud Mate をレビューする。これは iCloud の Documents in the Cloud を Dropbox と同じように使えるようにするためのツールだ。そして David Rabinowitz が、今日の大学の環境の中で電子的な教科書を実際に使った体験談を語る。今週注目すべきソフトウェアリリースは、Snapz Pro X 2.5.2、TextWrangler 4.5.1、それに BBEdit 10.5.3 だ。

記事:

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Macworld/iWorld、2014 年の開催日を3月下旬に変更

  文: Adam C. Engst: [email protected], @adamengst
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

Macworld Expo が再び引越し! 遡って 1999年に、Macworld Boston が New York City に引越しするという当時最新のニュースに合わせて、我々は短い April Fools 記事を掲載し、Macworld San Francisco は Austin, Texas に引っ越すであろう、その理由は "Texas では何でも大きい" からだと伝えた。(Steve Jobs による "スパイナル・タップ" に影響を受けた引用と低賃金労働についての将来を暗示するコメントについては "Macworld Expo SF Moving to Austin" 1 April 1999 を参照。)

という訳で、本物のニュースに入る前に少々の時間をとってしまったことをお許し願いたい。本物の方は、1 April 2013 に発表されたもので、IDG World Expo は Macworld/iWorld 2014 の開催日を2月初旬から3月下旬に移すと言う。具体的には、カンファレンス前のワークショップは 26 March 2014 に開催され、カンファレンス自身は 27 March 2014 (木) から 29 March 2014 (土) までとなる。San Francisco ベースの会場も移動するが、通りを隔てた North Hall of Moscone Center に移るだけである。レジストレーションは 2013 年末に向けて開始される。

事前準備された声明の中で、IDG World Expo は、"出展者や参加者等は、このイベントを移動させて休日や冬の旅行シーズンの混雑を外して欲しいと言っていた。そして、嬉しいことに IDG World Expo は、このフィードバックに応えることが出来た。" 勿論、冬の旅の混雑から逃れたいというのは常のことだが、この変更が何故今年可能になったのかは知る由もない。いずれにしてもこの新しい開催時期は歓迎である。これまでの奇妙な土/日/月のスケジュールを解消し、そして Super Bowl と重なることも無くなるのは嬉しい。(従って、我々としては来年はもっと多くの NFL 選手が参加するのを期待したい。)

強いてマイナス面を言えば、多くの人が既に冬のさなかの Macworld/iWorld を彼らの年間計画の中に組み込んでいて、それを何カ月も動かすことでもう既に3月下旬に他の行事を計画している人の参加を難しくするであろうことである。2013 年には、IDG World Expo は参加者数は 25,000 であったと言っていたので、一年後にはこの日付変更が吉と出るか凶と出るかが分かるであろう。

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Gmail for iPhone 2.1、メッセージのナビゲーションを改善

  文: Adam C. Engst: [email protected], @adamengst
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

あなたが私と同じタイプなら、iPhone で電子メールを読むときメッセージからメッセージへと移動しつつ長い時間を過ごすだろう。一般的にそのためにはすごく小さい矢印をタップするか、あるいはメッセージのリストと実際のコンテンツとの間を何度も切り替えるかしなければならない。けれども最近リリースされた iPhone および iPod touch 用の無料の Gmail アプリのバージョン 2.1 で、そういう手間がもはや不要になり、メッセージを読みながら右や左にスワイプするだけでメッセージを移動できるようになった。(このスワイプ機能は iPad では動作しない。)

多くのジェスチャーのインターフェイスと同様、このやり方もシンプルかつ理に適っている。けれども何が理に適っていないかと言えば、そのことを知るまではこんなジェスチャー機能があることなど誰も気付かないという点だ。このジェスチャーの場合ならばいったん説明されればすぐに覚えられるだろうが、他のジェスチャー関係や、小さいスクリーン用のインターフェイスではもっと説明が必要と思われるものがたくさんある。

例えば、この Gmail アプリのバージョン 2.1 でのもう一つの新機能もやはりシンプルで理に適っているが、必ずしも分かりやすくない。リストの中でチェックボックスをタップしてメッセージを一つ選択すれば編集モードに切り替わって、そのまま他のメッセージも選択し続けることもでき、それから一番上にある三つのボタンのどれかをタップすれば選択されたメッセージをアーカイブしたり削除したり、あるいは(下向き矢印をタップすれば)移動したり、ラベルを付けたり、迷惑メールとして報告したり、未読とマークしたりできる。

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きちんとその功績を認めるために言えば、Google はこれらの機能の使い方の明確な説明を同社のブログ記事 にも、またこのアプリのリリースノートにも記載している。けれどもたいていの人は Gmail の公式ブログなんて読まないし、多数のアプリを一挙にアップデートする際にはいちいちリリースノートなんか読まないものだ。(かく言う私も読まない。)

だから、二つのことを言っておきたい。まず第一に、ジェスチャーのインターフェイスがあるのは良いことだ。これは手軽かつパワフルであって、モバイルデバイスの貴重なスクリーン面積を少しも使わないからだ。左右にスワイプしてメッセージを切り替えられるのは正しい方向への一歩だと言えるが、この分野ではもっと説明が提供されればいいのにとも思う。例えば iPhone アプリ Mailbox は独創的な方法で説明を提供している。(2013 年 2 月 22 日の記事“iPhone 用 Mailbox、メールの仕分けは簡単だが重要な機能が欠落”参照。)

第二に、開発者たちはユーザーを教育することを常に念頭に置く必要がある。メッセージの間でスワイプしたり、押し上げて検索したり、リストでスワイプして消去したりなど、何もしなければ隠れたままのジェスチャーベースの機能については、アプリ内に何らかのヒントを組み込むべきだ。そうでないと、私たちユーザーはアプリの中でゲームを「プレイする」みたいにして実験するしか機能を発見する方法がなく、それをしないと使用形態の効率性が下がったまま放置されることになる。

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Cloud Mate: iCloud を Dropbox に変える?

  文: Matt Neuburg: [email protected]
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

私がどの様に Mac から他所へと、或いは Mac から iPad や iPhone にドキュメントを移すか聞かれたら、私は恐らく "Dropbox" と答えるであろう。私は私の機器間でドキュメントを共有したり或いは移動させるために iCloud の Documents in the Cloud を使うことはまず考えたこともない。その理由は、私が思うに、iCloud に対する Apple のインターフェースは余りにお粗末だからである。これはとりわけ OS X 10.8 Mountain Lion の走るデスクトップ上で際立っており、そして Dropbox のインターフェースに較べてもそうである。

私の Dropbox フォルダは、嬉しいことに、Finder の中で通常のフォルダの一つであり、私が Dropbox 経由でクラウドに保存している全てのものを保管する中央保管所へのアクセスを Finder から直接させてくれる。簡単、直観的、直接、そして使い易い。

これに対して、iCloud ドキュメントは Documents in the Cloud として保持され、全く異なるやり方で表示される。これらは通常 Finder では全く見えない! 代わりに、あなたにこれらが見えるのは、奇妙な、標準以下の iOS 風の Open ダイアログの中でだけ、しかもたった一つのアプリケーションの中でだけである。この状況は正直言って馬鹿げている。自分の TextEdit ドキュメントを 見る だけなのに、それがたまたまクラウドの中にミラーされていたというだけで、(例えば) TextEdit を開いてそこから File > Open を選択することを強要されるのはおかしい! それに、そもそも私の iCloud ドキュメントが一つのアプリケーションに紐付されるべき理由など全くない、個別に見ることは使用者の任意のはずである:保存されたドキュメント、例えば TextEdit のクラウドフォルダは TextEdit ドキュメントでなければならないはずはない - 何でもいいはずである。

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どうしてもというのであれば、少々の困難さを受け入れパワーユーザーの役割を演ずるのを厭わなければ、iCloud ドキュメントを Finder フォルダ階層の中で見ることは 出来る。これらはあなたの Library フォルダの中、Mobile Documents と呼ばれるサブフォルダの中に保存されている。しかしながら、Finder はこの中で何が起こっているかをあなたに見せない様にするため一生懸命闘う。Library フォルダは通常は見えない (これを正すことは出来る;"Lion の隠れた Library に対処" 20 July 2011 参照)、そして Finder は Mobile Documents フォルダのウィンドウを "iCloud" というタイトルだと言い張る。その気にさえなれば出来るとは言っても、あなたの iCloud ドキュメントをこの様な形で見て、実際にどの様な役に立つであろうか? こんなことをすれば、恐らく何かを傷つけてしまう可能性の方が高いであろう。

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Red When Excited から出されている Cloud Mate ユーティリティは、iCloud ドキュメントへのアクセスを Dropbox ドキュメントへのアクセスの様なものにすると約束している。実現の方法は二つある。

Cloud Mate があなたの iCloud ドキュメントを示す最初の方法は、自らのウィンドウを通してである。Cloud Mate ウィンドウのサイドバーには、あなたの iCloud 対応のアプリケーションが列挙されるが、一度に見られるのは一つのアプリケーションのドキュメントだけである;そのウィンドウは少なくとも Finder の様には見える。Cloud Mate のウィンドウでは、フォルダを作成しそしてファイルやフォルダの名前も変えられる。更にファイルやフォルダを Finder からそこへドラッグすることも出来る。また、このウィンドウから へ、或いは一つのアプリケーションのドメインから他のアプリケーションのドメインに、ファイルやフォルダをドラッグすることも出来る。(もしこれをやる時には、アイコンがドラッグ出来る様になるまで多少の遅れがあるので押し続けなければならないことを覚えておいて欲しい。) そして Cloud Mate アプリケーションは、殆どどんな形のドラッグに対してもファイルを移動するのではなくコピーすることを守ることでデータを失うのを避ける手助けをしている。

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Cloud Mate があなたの iCloud ドキュメントを示す第二の方法は、各種の iCloud ドキュメントフォルダへのアクセスを一体化する仮想の Finder ボリューム経由でである。この魔術は OSXFUSE をインストールすることによって行われる。OSXFUSE は MacFUSE の後継者で、開発者が実質的に独自のファイルシステムを作成させてくれる低位に位置するソフトウェアである。私はこれに対しては多少恐ろしい気がするが、私の恐れは根拠のないものなのであろうと思うし、それにどうしても嫌であればこの機能を使わなければ良いだけである。

この場合、OSXFUSE は ~/Library/Mobile Documentsの内容を集めそしてその内容をより見慣れた形にするために使われている。com~apple~TextEdit の様な奇妙なフォルダ名は TextEdit の様な通常の名前に変更され、そしてその Documents サブフォルダのコンテンツはトップレベルにまで持ち上げられる。その結果生成される仮想ファイルシステムは、見慣れた本物の Finder ウィンドウでアクセス出来るボリュームを形成し、Finder の通常の能力を使える様にし、更に Mobile Documents フォルダを直接見るよりもずっときれいなインターフェースを提供する。

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得られる Finder ウィンドウは、思う程魔術的ではないかもしれない。コラムビューは良く働くので、これを使い続けることをお勧めする。しかし iCloud ドキュメントフォルダは、コラムビューでは一度に一つにしか入れないがリストビューではファイルエイリアスとして描かれる。しかし "反転三角" はついていず、これをクリックして同じビューの中でそのコンテンツを同時に見られる様に階層的に展開することは出来ない。いずれにしても、これはあなたの iCloud ドキュメントを Finder の中で直接探索するには賢いそして有用な手段である。

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Dropbox の場合と同様に、もしあなたの唯一のコピーを iCloud に任せてしまいたくないと言うのであれば、少々注意する必要がある。この仮想ボリューム上の iCloud ドキュメントフォルダにファイルをドラッグすることは、ファイルを 移動 しているのである;勿論 コピー したいのであれば、Option を押したままでドラッグするか、或いは Copy と Paste を使えば良い。同様に、iCloud ドキュメントフォルダからファイルをドラッグして出すと、例えばデスクトップへ、あなたはそれを iCloud から削除しているのである (ダイアログでもこれを警告する)。しかしながら、どれも驚くにはあたらない;実際のところ、これは嬉しい話である。これは Finder が通常働くやり方であり、それを iCloud にも反映させているだけである。

OSXFUSE によって生成された仮想 Finder ボリュームにはもう一つの特長がある:それは如何なるアプリケーションの Open と Save のダイアログからでも見えることである、少なくとも理屈の上では。例えば、BBEdit の Open ダイアログはこれを使って TextEdit の iCloud フォルダに保存されたテキストドキュメントを見て開くことが出来る。そして一旦開かれた後では、変更を保存するのも問題なく出来る。残念なことに、このやり方は新しいファイルを Save ダイアログ経由でやる時には同じ様には働かない。どうもあるアプリケーションがその Save ダイアログで出来ることは、それがどの種のアプリケーションであるかに依るらしい。BBEdit の Save ダイアログは TextEdit の iCloud フォルダを開いたり或いは新しいファイルをそこに入れるため入ったり出来ないし、また Microsoft Word 或いは TextMate での Save ダイアログでも出来ない。これらのどちらも Cocoa アプリでない。Pages も Safari もどちらも TextEdit の iCloud フォルダで Save ダイアログを使うことが 出来る。どうもこれらは Cocoa アプリだからのようだが、しかしどちらも TextEdit の iCloud フォルダ内のサブフォルダを見たりそこに保存したり出来ない。

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もう一つ Cloud Mate が Dropbox をエミュレートしているのは通知である。Dropbox は長いこと Growl 通知をサポートしてきたので Mountain Lion の Notification Center もサポートする。同様に、Cloud Mate は iCloud ドキュメントに関して動きがあった時 Mountain Lion の Notification Center に通知を送る。また、Cloud Mate は独自の iCloud Monitor ウィンドウを持っていて最近の iCloud ドキュメント活動を表示する - しかし残念なことに活動のリストは現れるとすぐに消えてしまう。ということで、その時見ていなかったらごめんなさいということになる。

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Cloud Mate は、私にとっては、本当に良いアイディアに対する素晴らしい取り組みである。そもそも、あなたの iCloud ドキュメントの統合された、そこそこに速いビューあれば、Documents in the Cloud をもっと使ってみようと言う気になるかもしれない。Cloud Mate が提供しているものは、Apple が提供しているリネン背景のドキュメントベースの Open と Save ダイアログよりも間違いなくずっとずっとましである。もし Apple にちょっとでも頭があれば、Cloud Mate を見て自らの額を叩くであろう:"イヤ、まいった。 これこそ我々 が最初にやっておくべき類のものだよな!"

Cloud Mate にも限界はある。Cloud Mate メインウィンドウの Finder の模倣は完全ではないし、全てが Finder の様という訳でもない。表示するのはアイコンビューだけで、本物の Finder の中では私はこれを一度も使っていない。開発者達は、私の感じでは (この件に関して私が質問した時の反応からすると)、他のビューも、例えばリストビューやコラムビューの様な、追加する積もりらしいので、将来はこの問題は無くなるのであろう。同様に、Cloud Mate の Finder 似の品質ゆえに、あなたが試してみる多くの Finder の様な動きは Finder の様には動かないかもしれない。例えば、ファイルを選択し Space バーを押すと確かに Quick Look のものに似たウィンドウを呼び出すが、それは本物の Quick Look ではないし、Space バーをもう一度押してもそれは消え去らない。他のキーボードショートカットも、階層を一段上がる Command-Up 矢印を押す様な、提供されてはいない。

しかしながら、これら全ては許容範囲内である;実際のところ、Finder 自身の様な同じ強力な世界にいると感じさせてくれる Finder の様に働くアプリケーションを書くのは実際に大仕事であり、恐らく Cloud Mate の開発者達は賢かったので、自らの目標をそれ程高く設定しなかったのではなかろうか。実際にそれを成し遂げた唯一のアプリケーションを私は知っている。それは Path Finder である ("Path Finder 5、完膚なきまでに Finder を叩きのめす" 29 June 2009 参照)。私が Cloud Mate で遊んでいる時になし得た私の iCloud ドキュメントの最高のビューは、Cloud Mate と Path Finder を一緒にしたことから得られた;Cloud Mate で作成された OSXFUSE 仮想ボリュームを Path Finder を通してリストビューの形で見ると全階層が表示される。これは本当に感激ものの経験である。

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もしあなたの iCloud ドキュメントに Dropbox の様なアクセスが出来るならば役に立つとお考えならば、それ程の大金を使わなくともそれを手にすることが出来る。Cloud Mate の値段はたったの $6.99 である (ライセンスを FastSpring 経由で購入する;この様なアプリは Apple によって Mac App Store での販売のために承認される見込みはまず無いであろう)。これは 9 MB のダウンロードで、Mountain Lion を必要とする。

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電子教科書の進化を生き抜く

  文: David Rabinowitz: [email protected], @david_rab
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Virginia 大学をもうすぐ卒業予定の大学四年生たる私は、高等教育における電子教科書の夜明けとゆっくりした前進を、直接肌で感じてきた。電子教科書のために必要なテクノロジーはもう何年も前から存在していたけれど、市場に足掛かりを得るのが目につき始めたのはつい最近になってからだ。もしもこの記事を三年前に書こうと思ったとしても、私には実体験も少なく書くべきことも大してなかっただろう。でも今は、ほんの短い期間のうちに、私は数多くの電子教科書やデジタル教育プラットフォームを使った。私が電子教科書を使ってきた歴史をここに書くことで、現時点でのデジタル書籍の状況をくっきりと描くことができれば嬉しい。それは、出版界の専門家たちが集う高尚なる頂からの眺めではなく、教育現場の内部から眺めた状況だ。電子教科書への目覚ましい移行をメディアが楽観的に書き立てているので電子教科書が今はいたる所で使われているという印象をお持ちの方もおられるかもしれないが、その真っただ中にいる学生の証言として、私は電子教科書はまだ使われ始めたばかりで変化は言われているよりずっとゆっくり起こっていると言っておきたい。

私がデジタル教科書の世界に始めて進出したのは 2007 年、高校二年生の時だった。教師たちや司書たちは生徒たちに、学術用データベースを使ってたくさんの調べものをさせた。Wikipedia の使用は禁止だったからだ。私の高校が購読していたデータベースの一つに Questia というのがあって、ノーカットの学術的電子ブックや、その他の学術的研究資料がウェブ経由で提供されている。コンピュータから本にアクセスするのは初めての体験だったので、私は大いに感銘を受けた。

高校時代には、電子ブックのデータベースはいくつかあったけれど、すべての生徒が常時コンピュータにアクセスできるわけではなかったので、電子教科書は実現可能とは言えなかった。もちろん、学校にはたくさん PC があったし、私が幼稚園から高校まで過ごした間には教育者たちがさまざまの種類のテクノロジーをカリキュラムに取り入れようとする結果がそこここに出現したものだ。小学校で Mac を使って Kid Pix で遊んだり、レーザーディスクの映画を観たりしたのは楽しい思い出だ。でもハードウェアはまだ安くなっておらずモバイルでもなかったので、すべての生徒が持つわけには行かなかった。ところが大学に入ると、いたる所にコンピュータがある。すべての学生はラップトップ機を買うことが必須か、あるいは強く推奨されているし、大学のキャンパス内にはいたる所に無料の Wi-Fi がある。また、私が大学一年生の年を終える頃には、ラップトップ機に代わるもの、つまり Kindle や iPad が登場していた。

悲しいことに、こうしたテクノロジーがいくら豊富になっても、私が大学一年生だった 2009 年にはまだ一つの教科書も電子的に入手できるようになっていなかった。両親は私に状況は自分たちが学生の頃と大して変わっていないと言い、中古の教科書を買ってお金を節約する方法を教えてくれた。どうやら、教科書の出版社は現代世界のテクノロジーの進歩を取り込むことに失敗し、依然として前世紀に閉じ込められたままだったようだ。私はいたる所で Wi-Fi にアクセスできる新品のラップトップ機を持っていたが、それは大きくて重いたくさんの教科書に(文字通り重量でも!)負けていた。

私が初めて電子教科書を使ったのは大学二年生の時だった。私が買った(普通の本の)教科書の一つに、出版社のウェブサイトから電子版を無料で入手できる権利が付いていた。その電子版の本は Flash ベースのインターフェイスで(その点は今も変わっていない)コピー&ペーストすることができなかったので、それをもとに自分用の参考書を自作するのは至難の業だった。それにこの本は常に表紙から開き、私が前回どこを読んでいたかは無視された。今学期私は別の授業でこれと同じ教科書が必要だったが、物理的な本を購入せずに電子教科書へのアクセスのみを購入することができた。その上この出版社は物理的な本よりも少し安い値段で電子版を売っていた。けれどもがっかりしたのは、二年以上経ったというのに、インターフェイスが以前と何も変わっていなかったことだ。

ここ二年間の大学生活で、私は電子教科書の提供が大幅に増えたのを目撃してきた。今は、私がとっている授業のうちで教科書がデジタルな形で入手できないものはたった一つしかないし、その例外の一つの教科書でさえ、オンラインのみで入手できる補助教材が付いている。

一年前に、私は幸運にも Virginia 大学がスポンサーとなった試験的プログラムとして、電子教科書を統合されたやり方で試す実験に参加することができた。私が受けていた Database Systems の授業の学生たちに、ある電子教科書に無料でアクセスできる権利が与えられた。認証は大学の講座管理ソフトウェアによって処理され、サードパーティの電子教科書サービス CourseLoad 用のウェブアプリを通じて私たちはこの本にアクセスした。CourseLoad はデジタル配布用のプラットフォームで、電子教科書を読んだり検索したりでき、ハイライトを入れたりメモを書き込んだり、他の人たちと協力したりもできる。デバイスによらず働き、Kindle ウェブアプリと似ている。

参加は任意だったけれども、クラスの全員が夢中になってこの電子教科書を使った。物理的な本の教科書を買うこともできたけれど、私の知る限り誰一人としてそちらを買った者はいなかった。

今年は、大多数の授業で私は電子教科書を買うことができていて、今のところ満足して使っている。試験的プログラムの際に無料で一冊手に入れられたのは素晴らしかったけれども、デジタル版の本をお金を出して買うことに私は別に抵抗を感じない。電子的教科書の価格は依然として流動的なので、小売業者によって価格が大きく異なることもある。10 から 40 パーセント安いというのは普通で、時には 50 パーセント以上安売りされていることもある。けれども、学期が終わっても電子教科書をキャンパス内の書店に持って行って売ることはできないので、安く買えても結局得にならないことが多い。

私が電子教科書で気に入っているのは、キーワードをタイプするだけでテキスト全体を検索してくれる機能だ。いちいち巻末の索引を開いてから書かれているページをめくったりする必要がない。この便利な機能のお陰で大きな時間の節約となり、情報を楽に見つけられるようになる。特に、索引は本によっていい加減な作りのこともあるからだ。また、キーワードからその定義にリンクできることもあり、電子ブックのプラットフォームによっては単語をハイライトさせただけでその定義が呼び出されるものもある。教科書の巻末で用語集をごそごそ手探りする必要はもうない。タップ一つだけで、スクリーン上のどんな単語でもその定義がわかる。

電子教科書のもう一つの利点は、瞬時に電子的に配布されることだ。私は今年、一度もキャンパス内の書店に行く必要がなかった。物理的な本の教科書ならば Amazon から借りたり買ったりできたし、電子教科書ならば Kindle アプリやその他のサービスを通じてアクセスできたからだ。書店の場合は売り切れる心配があるので学期が始まるずっと前に買うことが多かったけれども、今はもうそんな心配をする必要はない。そうそう、人類学の教科書は、一回目の授業の最中に私のラップトップ機からオンラインで購入したのだった。デジタルに配布されるので、必要な教材だと分かるまで購入せずに待つこともできる。一回か二回だけ授業を受けて脱落する学生も多いが、そんな場合も書店へ教科書を持って行って返品する手間が要らず、大いに時間の節約になる。それに、選定図書のリストにある教科書でも、実際に教授がその本を使うかどうか疑わしい場合には必要になるまで待っても書店が売れ残りを返品してしまうのではないかと心配する必要がない。

デジタルに配布されることは、また教科書の借り出しも楽にできることを意味する。Amazon など一部のオンライン小売店では、期間を指定して電子教科書を借り出すことができる。物理的な本の教科書ならば学期の初めに買った購入価格のほんの一部の金額で学期の終わりに売り払うことになるが、デジタルなレンタルならば学期の終わりにただ期限切れになるだけだ。私は $65 出して経済学の教科書を借りたが、これは Kindle 版を購入するより $40 安く、新品のペーパーバックの本を購入するより $105 安かった。この本の場合、レンタルを一日延長するごとに $0.30 ほどかかり、レンタル期間は 60 日間以上という決まりがある。

残念ながら、レンタル料金を払ってしまった後になって、このレンタル本が私の Kindle Touch と互換でないことに気付いた。Kindle Fire モデルに比べて機能が足りないのが理由だった。でも、Mac 上、およびウェブ上の Kindle アプリではちゃんと使えたので、Kindle Touch で使えなくても私に不満はなかった。デジタルなレンタルが物理的な本のレンタルよりも便利なのは、学期の終わりに郵便で送り返す手間が要らないからだ。さらに Amazon は有効期限が切れた後も私のハイライト個所やメモを保存してくれているので、仮に将来私がもう一度その電子教科書をダウンロードすることがあってもそれらはすべて記憶されている。

Virginia 大学の試験的プログラムに参加しながら、私は電子教科書の多くの利点に気付いたけれども、あまり経験できなかった機能が一つある。共有や共同作業関係の機能だ。CourseLoad ではハイライト個所やメモ、注釈などを他の学生たちや講師との間で共有できる。潜在的に素晴らしいものだとは思うが、他の学生たちも教授も、一つもメモを書き込んでいなかった。実際、 Virginia 大学が出したこのプログラムの公式報告書には、この機能があまり使われず、この機能があってもほとんど得るところはなかったと書かれている。

私の意見では、それらの機能は必ずしも不適切でも使いにくいわけでもなかったと思う。むしろ、学生たちや教員たちがこれらの機能に慣れて、自分たちのワークフローに組み込みさえすれば十分に生かせただろう。後日、授業を担当していたコンピュータサイエンスの准教授 Mark Sherriff に共同作業ツールについて聞いてみたところ、彼は自分の現在のワークフローが大量の電子メールを含んでいるので、それと整合させられるようにならなければ使うのは難しいと言っていた。例えば Kindle が頻繁にハイライトされる文章にアンダーラインを付けているように、何らかの方法で自動的にデータを集約して共有できるようになれば、新たな作業を誰もする必要がないので、もっと広く使われるようになるだろう。

この電子教科書の試験的プログラムでは、物理的な本の教科書にはない電子教科書ならではの弱点もいくつかあらわになった。最も目立ったのはいくつかの技術的問題点と、常時インターネット接続が必要な点だ。そう頻繁に起こったわけではないが、CourseLoad のサービスか Virginia 大学の講座管理システムがダウンした際には、教材に全くアクセスできなくなった。Kindle アプリはすべてのコンテンツをダウンロードするのでオフラインでも使えたので、モバイルデバイスを持っている学生にはこちらの方が適していると私は思う。もう一つの CourseLoad の問題点は、一部の学生たちが自分のデバイス上でテキストの表示やナビゲーションがおかしくなったと苦情を言っていたことだ。けれども技術的問題は深刻なものでなく、将来ソフトウェアが改訂されれば解決されるだろう。

もちろん、電子教科書で一杯の教室に居座る巨大な問題は、海賊版だ。教科書を Google で検索すると、推奨されるリンクの中に名前が "pdf" で終わるものが一つはあるのが常だ。著作権付きの教材を見つけるもう一つのよくある方法に、BitTorrent がある。これは広く蔓延した問題で、Virginia 大学やその他の大学にいる友人たちと話していても、金を払わず電子教科書を手に入れたと告白した人たちが多い。友人の一人は教授たちが教科書の PDF を無料で配っていたとさえ言っていたので、罪あるのは学生たちだけではない。電子教科書をクラウドサービスやその他何らかのタイプの独自仕様ソフトウェアの内部に限定すれば、出版社の側は海賊版の多くを一掃することができるだろうが、そのサービスに何か問題が起こったり、あるいはインターネット常時接続が必要となったりすればユーザーたちの使用感に大きな悪影響が出るかもしれない。

最後にもう一言。電子教科書の最も厄介な欠点の一つは、さまざまのプラットフォームごとに断片化され首尾一貫しないところがある点だ。一つのサービスですべての販売と読書を同時に扱えるものはなく、個々の出版社ごとにそれぞれ独自のやり方でそれらを処理しているように見える。現在のところ、私は Amazon の Kindle アプリ、PDF、独自仕様のウェブアプリ、物理的な本の教科書、の間を行き来している。私が一番好きなのは断然 Amazon Kindle のアプリケーションで、これはインターネット常時接続を必要とせず、クロスプラットフォームで、頻繁にハイライトされる文章にアンダーラインを付けてくれ、便利な文献参照ツールがあり、なかなか良い検索機能を提供している、などの点で他を圧倒している。けれども、Amazon Kindle にもいくつか問題はあって、学習過程に摩擦とフラストレーションを持ち込んできた。例えば、Kindle 本の多くにはページ番号が付かないので、どこを読むべきかを見つけるのにいちいちオンラインで公開されている目次を呼び出さなければならない。また、ハイライト個所、メモ、注釈などを他のプラットフォームに書き出すことはできないので、学習中はこのプラットフォーム内部に閉じ込められる。

今の私は卒業を目前に控えて、電子教科書の経験も相当に幅広く積んだので、物理的な本の教科書よりも電子教科書の方が好きだと自信を持って言える。もちろん電子教科書も完璧ではないが、デジタルなものであるからには、少なくとも改訂を経て改善を受けることができる。願わくはそれが素早く実現されるように。伝統的な教科書はもう何十年も基本的に変わらずそのままだが、ますますデジタル化されつつあるこの世界の中で、旧式な出版媒体がいまだに標準でなければならない理由を私は思い付けない。物理的な本の教科書を買う選択肢は引き続き学生たちに与えられるべきだけれども、すべての教科書に電子版も作られて、公正な価格で販売されるようになるべきだと思う。そして、私の予想を言わせてもらえるなら、短期間のうちに電子教科書が勝利を収めるのではないだろうか。

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Google+ Hangouts をセットアップして使う

  文: Adam C. Engst: [email protected], @adamengst
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

TidBITS Presents や "Take Control Live: Working with Your iPad" をしようというアイデアを思い付いたとき、そのためには何かしっかりしたテクノロジーでそれを支える必要があることに私たちは気付いていた。Joe Kissell はプレゼンテーションを語る側が望む機能として強い意見をいくつか持っていたので、私たちはそれをもとにウェブキャスティングやビデオ会議を提供する数多くの異なるサービスを一つ一つ調べてみる作業に取り掛かった。かなり意外なことに、いろいろの機能の組み合わせとして最良のものを提供しているのは Google+ Hangouts On Air であることが分かった。その上ボーナスとして、これは無料で使える。そこで私たちはこれを使うことにした。

けれどもその後、ちょっとおかしなことが起こった。そうした大きなイベントのために私たちは Google+ Hangouts On Air を使うことを計画したのだったが、そのうち私たちは小さなグループでの会話にもどんどんこれを使うようになってきた。スタッフ同士のミーティングや、さらには 1 対 1 の会話にさえ以前は Skype を使っていたのに今は Google+ Hangouts On Air を使うことが多くなった。

なぜ Google+ Hangouts か -- では、なぜ私たちは Apple の FaceTime ではなく、また iChat/Messages (AIM) や Skype によるビデオチャットでもなく、Google のツールを選んだのだろうか? Google+ Hangouts と、公開して使う Google+ Hangouts On Air には良い点がたくさんあり、他のツールにはない重要な利点がいくつかある。

何が必要か -- Google+ Hangouts に参加するにはさまざまの要件がある。これは On Air であろうとなかろうと同じことだ。

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ハングアウトをセットアップ -- 私たちが Google+ Hangouts でちょっと混乱すると思った個所の一つは、その "call" 段階だ。例えば Skype や Messages では、一般的にまず全員がアプリケーションを走らせていて用意ができていることを確かめ、それから通話を始めれば、ほとんど見落としようのない通知が生成される。

けれども Google+ Hangouts では、主としてウェブブラウザで使われているからなのだろうが、通知があまり分かりやすくない。(これは、iOS や Android 用の Google+ アプリを持つことの利点となる。そちらのアプリには招待された人に知らせる通知があるからだ。)だから、ハングアウトをセットアップするには基本的に三つの方法がある。

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最初の二つの方法については、まとめ役としてのあなたがハングアウトを始めるためにとるべき基本的手順は以下の通りだ。

  1. あなたの Google+ ホームページ または the Google+ Hangouts ページを訪れる。

  2. Hang Out ボタンまたは Start a Hangout ボタンを見つけて、クリックする。

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  3. すると新たに Hangouts ウィンドウが開いて、あなたの友人でオンラインにいる人たちのサムネイル画像が表示され、いくつかのフィールドに書き込めるようになる。サムネイルのどれかをクリックするか、または一番上のフィールドに人々かグループの名前をタイプし(Google+ サークルを作成して人々をそこに追加すればグループができる)第二のフィールドであなたのハングアウトに名前を付ける。

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  4. ハングアウトを公開の Hangout On Air にしたい場合は、Enable Hangouts On Air チェックボックスを選んで Okay, Got It! ボタンをクリックすることにより、そのハングアウトがあなたの Google+ ストリームとあなたの YouTube チャンネルに放送されることを承認する。それぞれのアカウントがあなたの望みに合ったものであることを確認しておこう。YouTube へ自動録画できるのは、公開の Hangout On Air を開始した人のみだ。

  5. Hang Out ボタンをクリックすれば、ハングアウトが開始されるとともに、あなたが招待した人たちにあてて招待状が発送される。

使い方のヒントがいくつかある。公開の Hangout On Air をしている場合、放送と録画の開始には Hangouts ウィンドウの中にある Start Broadcast ボタンをクリックする。同様に、終わったら End Broadcast をクリックする。放送を開始したり停止したりしてもハングアウトに参加している人たちには影響しないので、放送の前や後に他の人たちと話をしていてもそれを人に聞かれたり録画されたりする心配はない。

録画の内容を整然としたものにするには、Start Broadcast をクリックする際にあらかじめ適切な人を一番上のスポットに出しておく(下に並んだサムネイルの中からクリックする - この点についてはすぐ後で述べる)ようにすれば、開始直後に画面が切り替わって視聴者を混乱させることがない。放送がライブになる前には 10 秒間のカウントダウンがあるので、私の体験から言わせて頂ければ実際の話を始める前にライブ放送の部分に入っていることを確認するように気を付けよう。

同様に、End Broadcast をクリックする前には一番上のスポットに適切な人物が登場していることを確認し、他の人たちが挨拶をする様子がビデオフィードの無用な切り替えを生まないようにしよう。

ハングアウトを終えたら、右上隅にある通話終了ボタン(受話器のアイコン)をクリックする。すべての人たちがハングアウトを去っても同じ結果となる。

ハングアウトに加わる -- さて、今度は立場を変えて、あなたが Google+ Hangout に招待された場合のことを考えてみよう。ハングアウトに加わるための最も信頼性の高い方法は、あなたの Google+ ホームページへ行って通知ストリームの中に招待状が来ていないか見ることだ。さきほども触れたように、Google+ モバイルアプリも通知を出してくれるし、またもし Gmail のウェブインターフェイスが開いていれば、サウンドが聞こえて Google Talk のメッセージボックスが現われ、その隅に Join Hangout リンクがあってクリックできるようになっているかもしれない。

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Hang Out ボタンなり Join Hangout リンクなり適切なものをクリックすれば、Hangouts ウィンドウが開き、あなたのビデオ画像のプレビューを表示するとともに、歯車ボタンからオーディオやビデオの設定もできるように、Join ボタンをクリックすれば参加できるようになる。(一般的に言って、オーディオとビデオの設定はデフォルトのままでもよいが、システムデフォルトに設定されていない特定のヘッドセットをオーディオの入出力に使う場合などは設定の調整が必要だろう。)

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ウィンドウの下の方には個々の参加者たちのサムネイルが並び、上の方の大きな画像は現在話している人物を表示する。上のスポットに特定の人物を出したければ、下に並んだ中からその人物のサムネイルをクリックすればよい。すると、青い縁取りがそのサムネイルを囲んで、それが上のスポットにロックされていることを示す。別の人物のサムネイルをクリックすることにより手動で切り替えることもできるし、あるいはロックされたサムネイルをクリックすることによりそのロックを外して、Google のオーディオ探知コードによる自動切替に戻すこともできる。

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左側に並んだボタンから、さらにいろいろな機能にアクセスできる。(一番上のハンバーガー型ボタンをクリックすればアイコンのみ表示とアイコン・テキスト併用表示とが切り替わる。)Invite People ボタンでさらに他の人たちをハングアウトに追加し、Chat ボタンでグループテキストチャット(リンクを共有したり、あるいは公開の Hangout On Air の最中にバックチャンネルを維持したりするのに便利)を右側に開き、Screenshare ボタンでスクリーン全体または特定のウィンドウをあなたの顔の画像の代わりに共有させ、Capture ボタンでスクリーン上で起こっていることの画像を撮影してハングアウトに招待された人たち全員で共有するアルバムに保存することができる。(幸いにも、誰かが Capture を開いた際には、他のすべての人たちにそれぞれのカメラをオフにする機会が与えられる。)

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それ以外のボタンはすべてアプリで、あなたが自由に追加したり削除したりできる。特に楽しいのが Google Effects だ。すべての参加者たちに向けてサウンドを鳴らすことができ、あなたのビデオ画像に帽子や眼鏡、付け髭などを追加することもできる。私はまた Google Drive も使っている。ノート取りやスケッチブックを共有して使えるというものだ。追加できるアプリは他にもいろいろあるが、私がうまく使いこなせたものはまだない。

スクリーン共有(Screenshare ボタン)の機能について二つだけ言っておきたいことがある。まず第一に、これは表示のみだ。ハングアウトを通じて他の人のスクリーンを操作することはできない。第二に、共有できるのはデスクトップ全体(あるいは二台のモニタを使っている私の場合は、二つのデスクトップのうちいずれか)か、または現在開いているウィンドウのうちどれか一つかだ。これは重要なことで、特定の一つのウィンドウのみを共有することで、参加者たちがより見やすくなり、焦点を絞ったプレゼンテーションができる。

私たちの TidBITS Presents や Take Control Live のプレゼンテーションで非常にうまく行ったスクリーン共有のトリックを一つ紹介しておきたい。ハングアウトに招待された場合、同じ Google+ アカウントに複数のコンピュータからログインしておいてそのハングアウトに複数回参加しても何の問題もない。だから、一つのコンピュータから参加してそこでは自分の顔を共有し、次に別のコンピュータから参加してそこではスクリーンを共有するということもできる。こうすれば、自分の顔とプレゼンテーション画面が両方とも常時ハングアウトに出たままにできる。もちろんその場合は二つ目のコンピュータのマイクとスピーカーは消音設定にしてフィードバックを切っておくべきだし、視聴している他の人たちはプレゼンテーション画面を上のスポットにロックして読めるようにしておく必要がある。

いったんハングアウトに参加すれば、仲間の参加者たちとやり取りする以外にあまりすることはない。使い方のヒントをもう少し挙げておこう:

Hangout On Air をライブで、またはあとで視聴 -- 公開の Hangout On Air を招待されていない人が観るための、ただ一つ重要な点はそのリンクを知っていることだ。Hangout On Air に参加している人たちは、ハングアウトの内部からそのリンクをコピーできる。一番上に Embed リンクがあって、生の URL も、また YouTube ビデオプレイヤーをどんなウェブページにも埋め込むことのできるコード断片も、提供している。例えば私たちが TidBITS Presents イベントをする際には、いつもそのリンクをコピーして Twitter、Facebook、それに Google+ で広く共有している。それに加えて、観たい人たちがいつでも好きな時に訪れられるようあらかじめ公表してある特定のページにもビデオを埋め込んでいる。

そういうビデオを事後に観るのは、他のどの YouTube ビデオを観るのとも変わらないが、Hangout On Air をライブで観るための便利な技を私たちはいくつか学んだ。

試してみよう! -- ここは正直に言っておきたい。Google+ Hangouts の使い方に慣れるまで私たちは数回試行錯誤する必要があった。その理由の一つは、Skype や iChat/Messages のようにアプリ中心でもなければ通話中心にも出来ていないからだ。けれども信頼性の面ではそれら二つを上回っていることが分かり、今では私たちにとってグループ通話のための主力の手段となっているし、さらには 1 対 1 の会話にさえ時々使うようになった。Google+ Hangouts は究極のビデオチャットサービスとは言えないかもしれないが、かなり高いレベルでよく出来ており、今日のインターネット上でこれに勝るものを私たちはまだ目にしていない。とりわけ無料という価格を考えれば。

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TidBITS 監視リスト: 注目のアップデート、2013 年 4 月 8 日

  文: TidBITS Staff: [email protected]
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Snapz Pro X 2.5.2 -- Ambrosia が Snapz Pro X 2.5.2 をリリースして、選択領域の正しいピクセルを正確にキャプチャすることに関する問題を修正するとともに、画像の境界部分にいくつかのスタイルを付ける機能のサポートを復活させた。(この機能はバージョン 2.5 で削除されていた。)今回のアップデートではまた、ムービーのエンコーディングの信頼性を増し、OS X 10.8 Mountain Lion および Retina ディスプレイとの互換性を改善し、中国語とロシア語のローカライズ版を追加している。(新規購入 $69、無料アップデート、15.8 MB、リリースノート)

Snapz Pro X 2.5.2 へのコメントリンク:

BBEdit 10.5.3 -- まさに修正のてんこ盛りだ。Bare Bones Software が BBEdit 10.5.3 をリリースして 50 件以上のバグを解消した。(修正の多くは無料の汎用テキストエディタ TextWrangler のバージョン 4.5.1 にも含まれている。)今回のリリースノートで最も笑えたのは次の個所だ:

不可視の空白文字を("Show Invisible" と "Show Spaces" がともにオンの場合に)示す表示用記号を U+00B7 (MIDDLE DOT) に変えた。双方オンの設定なのに空白文字が表示されない場合は、あなたの表示用フォントがその記号を含んでいないということなので、ぜひともその点をそのフォントの開発者に対してバグとして報告して頂きたい。(私としてはユーモアだけの理由から U+1427 (CANADIAN SYLLABICS FINAL MIDDLE DOT) を使いたかったのだが、この記号に対応しているフォントはあまり多くなかった。残念。)

BBEdit 10.5.3 のみに施された他の修正点のうちから主なものを挙げれば、今回のアップデートでプロジェクトリストの中へプレインテキストがドラッグされた場合にもその中に URL を探す機能を復活させて FTP アプリから遠隔ファイルの参照情報を取り込みやすくし、instaproject で Close All in Project コマンドが働くようにし、(Markup > Tidy の) Convert to XML コマンドで起こったクラッシュを修正し、HTML および CSS 書類の中の相対パスによる参照が正しく解釈されるようにし、ソースファイルが多数のファンクション項目を含む場合に Functions フローターが「重い刑罰」を課すことのあったパフォーマンスの問題を修正している。(Bare Bones からも Mac App Store からも新規購入 $49.99、無料アップデート、12.5 MB、リリースノート)

BBEdit 10.5.3 へのコメントリンク:

TextWrangler 4.5.1 -- Bare Bones Software が TextWrangler 4.5.1 もリリースして、同時リリースされたよりパワフルな TextWrangler の(無料でない)兄貴分 BBEdit 10.5.3 に施された多数の修正を同様に盛り込んだ。この汎用テキストエディタへの主な修正点を挙げれば、Save ダイアログの Text Encoding ポップアップメニューが現在のエンコーディング設定を反映しなかった問題を修正し、大きくて複雑なファイルを開いた際に過剰にメモリを使用してクラッシュすることのあったバグを解消し、起動時に進行状況を表示する時間を減らし、Open ダイアログの Show Hidden Items 項目が無視されていたバグを修正し、いくつかの図柄が Retina ディスプレイで見栄えが良くなるようにした。(Bare Bones Software からも Mac App Storeからも無料、9.6 MB、リリースノート)

TextWrangler 4.5.1 へのコメントリンク:


ExtraBITS、2013 年 4 月 8 日

  文: TidBITS Staff: [email protected]
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

今週は裏社会の話題を集めてみた。特許荒らしの会社 Lodsys がまたもや iOS 開発者たちを標的にしようとしているというニュースと、セキュリティライター Brian Krebs が Flashback マルウェアの著者の正体を暴露した話、それから、スーパー悪漢たちの物語を読むには iPad が適しているという記事だ。

特許荒らしの Lodsys がまた iOS 開発者たちを悩ます -- 二年近く前に、Lodsys という会社が多くの iOS 開発者たちに対する訴訟を起こしてニュースになった。彼らがアプリ内購入を用いていることが Lodsys の所有する特許に触れるという訴えだった。そこで Apple が介入して、Apple が既に Lodsys との間で結んでいる特許ライセンスが iOS 開発者たちにも及ぶということで決着した。それにもかかわらず、MacRumors の Eric Slivka が伝える記事によれば、Lodsys がさらに十件の訴訟を大手 (Disney) から小規模 (PCalc のメーカー TLA Systems) までさまざまの iOS 開発者たちに対して起こしたという。Apple はまだこれらの新しい訴訟に対しては反応していない。

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Brian Krebs が Flashback マルウェアの著者を特定 -- Flashback は Mac OS X に影響を与えるマルウェアとしては最も重大なものの一つで、素早く姿を変えつつ 650,000 台以上の Mac に感染した。セキュリティライター Brian Krebs が今回、30 歳のロシア人の男を Flashback の作者であると特定した。こうして明るみに出たことでこの男の挙動に大きな違いが出るとは考えにくいが、マルウェアのニュースに人間的要素が加わったのはちょっと興味深い。

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なぜ iPad は漫画を読むためのスーパーヒーローなのか -- Jason Snell は iPad で漫画を読むのが大好きで、その点は彼のクレジットカード請求書を見れば証明される! Macworld に載った彼の記事は、デジタル漫画の現状に対する素晴らしい概観となっていて、伝統的な印刷された漫画本とデジタル提供との対応を説明するとともに、漫画を入手するためのいくつかの手段を比較検討し、漫画を読むにはモバイルデバイスが最も適していると論じる。

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TidBITS ISSN 1090-7017©Copyright 2013 TidBITS: 再使用はCreative Commons ライセンスによります。

Valid XHTML 1.0! , Let iCab smile , Another HTML-lint gateway 日本語版最終更新:2013年 4月 12日 金曜日, S. HOSOKAWA