TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#1173/06-May-2013

今週の TidBITS は大きなことが起こっている。Josh Centers が、TidBITS の新しい編集主幹としてスタッフに加わってくれたからだ! 一方 iOS で起こっていることはあまり大きいとは言えず、iPhone 5 のみを対象とした極めて小さいアップデートが出た。その他のニュースとしては、MacTips.info ウェブサイトが起業してみたいすべての人のために売りに出され、私たちのサイトのコメントシステムにあったバグのために一部のユーザーに身元確認の取り違えが起こったかもしれず、私たちのスタッフ円卓会議では Apple が株価を気にすべき理由が話題となり、David Rabinowitz が Apple の最近の財務的展開を掘り下げる。最後にもう一つ、Joe Kissell がまたもや必読の FlippedBITS 記事を書いて、その中で Java に関することすべてと、Apple が Java 非推奨へと動いている理由とを解説する。今週注目すべきソフトウェアリリースは、Cyberduck 4.3.1、Postbox 3.0.8、Little Snitch 3.1、Transmit 4.3.4、SpamSieve 2.9.7、それに GraphicConverter 8.6 だ。

記事:

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Josh Centers が新しい編集主幹に

  文: Adam C. Engst: [email protected], @adamengst
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Josh Centers がフルタイムの TidBITS 編集主幹として TidBITS Publishing Inc. に加わることに同意してくれたというニュースを、大きな喜びをもってお知らせしたい。既に彼はその仕事を始めている。彼の連絡先は電子メールで [email protected] あるいは Twitter と Twitter and App.net では @jcenters だ。

去年、Glenn Fleishman が、iOS 6 における不当なセルラーデータ使用量について調査をしていた際に Josh を「発見」した。この問題は今もまだ一部の人たちに起こり続けている。(2012 年 9 月 29 日の記事“iOS 6 の不可思議なセルラーデータ使用量の背後にあるもの”参照。)Glenn の勧めに従って、私たちは何度か Josh に TidBITS 記事の執筆を依頼し、その度に彼はいとも素早く、よく練られた正確な内容の記事を書き上げてくれた。彼の熱意と、執筆の速さ、細かい点まで目の行き届いているところは強く私たちの印象に残った。そこで私は、もっと大きな役割でスタッフとして働いてもらえば彼は貴重な存在になるのではないかと考え始めた。そこでいくつかの記事の編集作業を依頼してみると、彼はその仕事もしっかりとこなしてくれた。

TidBITS 会員からの収入のお陰で、Josh に常勤の職を提供できると私たちは考え、私の手に余るようになってきている TidBITS 関係のさまざまの職務を手伝ってもらえればと思った。幸いにも、彼はこれまでの会社での仕事に未練はなく、Western Kentucky 大学で得たジャーナリズムの学位を生かして毎日 2 時間の通勤時間を在宅勤務に切り替えられるチャンスに飛び付いてくれた。

しばらくの間、Josh は記事の割り当て、執筆、編集、調整の作業で私の手助けをすることになるが、私たちの運用のしかたに慣れた後は、TidBITS に新たな方向性を提案しそれを実装する役割を始めてもらいたいと思っている。それらはすべて、思慮に富んだ、プロフェッショナルに制作されたコンテンツを注意深くまとめ上げて読者の皆さんに提供したいという私たちの目標に向かってなされるべきことだ。正直言って、私は長年この仕事を続けてきてだんだん気難しい感情が出てくるようになってしまったので、テクノロジーに対して若々しい熱情を持ち合わせている人物と一緒に仕事することができるのをとても楽しみにしている。

毎日の仕事の一部を Josh が担当してくれるので、私はもっと記事を書いたり、より大局的なプロジェクトに取り組んだりするために時間を割けるようになるだろう。これまで細かいことを気に病んだり、毎週の出版スケジュールに間に合わせようと焦ったり、読者からのコメントや問い合わせに返事を書いたりしつつ脇に追いやりがちだったことにも取り組めるわけだ。すべてが見込み通りに進めば、Josh が加わってくれたことで私たち皆がより幸せに、より生産的になれるだろう!

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iOS 6.1.4、iPhone 5 のスピーカーフォン用オーディオをアップデート

  文: Adam C. Engst: [email protected], @adamengst
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

的を絞ったアップデートとはまさにこのことだ! Apple が iOS 6.1.4 をリリースしたが、これは iPhone 5 のみ (GSM および CDMA モデル双方とも) を対象としている。Apple のリリースノートの全文を丸写しにすることをお許し願いたいが、それはたった五つの単語のみから成る "Updated audio profile for speakerphone" (スピーカーフォン用にオーディオプロファイルがアップデート) というもので、どの単語一つを抜かしてもニュアンスが正しく伝わらないのではないかと思う。いや、これが実際的に何を意味しているのか、私にはさっぱり分からないが、少なくともこのアップデートのサイズはたった 11.5 MB だ。

いつもと同じく、アップデートは iPhone 5 の上で Settings > General > Software Update による(その方が簡単だ)か、あるいは iTunes を経由してもできる。私自身はこのアップデートをインストールして、スピーカーフォンがこれまで通り使えることを確認し、他に何も悪影響には気付いていないけれども、頻繁にスピーカーフォンを使っていてオーディオの音質に満足できていないという人でない限り、わざわざ今回アップデートすることはお勧めしない。今回の新しいプロファイルのどこがどう良くなっているのか私は知らないが、明らかに Apple は良くなっていると思っているようで、だからこそこれのみのためにアップデートを出す価値があると思ったのだろう。もしもあなたがこれをインストールして、その結果スピーカーフォンのオーディオが以前と違って聞こえるようになったならば、どうぞコメントで教えて頂きたい。

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MacTips.info ウェブサイトが売りに出される

  文: Adam C. Engst: [email protected], @adamengst
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

インターネットのコンテンツビジネスに参入することは決して手の届かない困難な仕事ではないが、それでも品質の高いコンテンツを定期的に生み出し、インターネットにおける存在感を築いてそれを維持し、支持してくれる人たちを惹き付けるためには、大変な重労働が必要になることもある。加えてそこからお金を稼ぎたいと思うならば、さらにマーケティングやビジネス開発にも多くの努力を注がなければならないし、必ずや少々の幸運も必要となることだろう。

もしもあなたがこの分野に手を染めたいと考えているのなら、有利なスタートを切れる機会がある。Miraz Jordan が、13 年間続けてきた MacTips.info サイトを、1,000 以上もある記事すべてとともに、オークションにかけているのだ。この記事の執筆時点で価格は $3,500 となっているが、これだけの量のコンテンツがあって毎月平均して 30,000 人の訪問者(2012 年 1 月に訪問者数 105,000 人を記録した)と 350 人の電子メール購読者、Twitter フォロワー 600 人、RSS 読者 2,100 人、YouTube チャンネル登録者 400 人と Facebook の "like" 500 件を誇るサイトならば、この値段でも安過ぎるように思える。この The Flippa オークションは 2013 年 5 月 7 日に終了することになっている。[訳者注: 結局、$4,250 で落札されたようです。]

MacTips.info は今ではそれほど膨大な収益をあげてはいないが、これまでに Take Control ブックのアフィリエイト販売により $1,000 以上を得て、私たちのアフィリエイト先の中でもトップクラスの一つとなっている。Miraz がここを売りに出したのはお金の問題も一つの理由ではあるが、彼女は長年にわたってこのサイトに執筆を続けてきて、これからこのサイトをまた一段高いレベルへと持ち上げるだけのエネルギーは持ち合わせず、彼女自身の人生をまた別のことに向けたいと思ったからでもある。それは十分に筋の通った話であると私は思うし、このような著者一人のウェブサイトであってもちょっとした小さな商店と同じように、オーナーが別の人に替わっても引き続き忠実な顧客たちのために役に立てるというのは素敵なことだと思う。

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TidBITS コメントシステムで身元確認の取り違え

  文: Adam C. Engst: [email protected], @adamengst
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

大変申し訳ないことをしました! 少し前に、私たちは TidBITS Commenting System に見栄え上のバグがあったのを見つけてそれを修正したのだが、その副作用として、コメントを投稿しようとするとそのコメントに他のユーザーの名前が付いて表示されてしまうという現象が少数のユーザーに発生してしまった。私たちの書いたコードが、ごく稀な状況下において不正なクッキーを設定してしまうことにより、その問題を起こしていた。

何が起こっているのかに気付いてすぐに私たちはこのバグを修正したけれども、どれくらいの人数の人たちが影響を受けたのかは分からない。残念ながら、不正な身元確認情報は遠い未来の期限満了日付と共にクッキーの中に保存されているので、問題は今も出現し続ける状態にある。さらに悪いことに、それらの不正なクッキーを私たちの側から判別したり修正したりできる良い方法はない。

解決法は簡単だ。ユーザーの側で、tidbits.com に関する "tbcomm" クッキーを削除すればよいだけだ。けれども私たちには誰が影響を受けたかを知る方法がなく、そのためどなたにも連絡することができないので、最後の手段としてこうしてこの記事を書いて、影響を受けてしまったユーザーの皆さんが読んで下さることを願っているという次第だ。このバグを起こしてしまったことについても、このような形で説明しなければならないことについても、誠に申し訳なくお詫び申し上げます。ただ、この記事が少しでも多くの方々に役立つように願って、クッキーを削除するための具体的な手順を、人気ある三つのウェブブラウザについて以下に記しておいた。万一何か他の理由でクッキーを削除したいと思われる場合にも以下を役立てて頂ければ嬉しい。[訳者注: 英語版の TidBITS ウェブサイトの記事ページに最近コメントを投稿したことがない場合は、このバグの影響を受ける可能性はありませんのでご安心下さい。]

Safari

  1. Safari > Preferences を選んで Safari の環境設定ウィンドウを開く。

  2. Privacy ボタンをクリックする。

  3. Cookies And Other Website Data の隣の Details ボタンをクリックする。

  4. 検索フィールドに tidbits.com とタイプする。

  5. そこで表示される tidbits.com の項目を選び、Remove ボタンをクリックする。(Safari では一つのクッキーだけを単独で削除することはできない。)

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  6. Done をクリックして環境設定ウィンドウを閉じる。

Chrome

  1. Chrome > Preferences を選んで Chrome の Settings ページを開く。

  2. 一番下にある Show Advanced Settings をクリックする。

  3. Privacy 見出し(上級設定を開けばこれが最初の見出しとなる)の下にある Content Settings ボタンをクリックする。

  4. Content Settings ダイアログで、Cookies 見出しの下にある All Cookies and Site Data ボタンをクリックする。

  5. Cookies and Site Data ダイアログで、検索フィールドに tidbits.com と入力する。

  6. 表示された tidbits.com 項目を選び、私たちが TidBITS Commenting System 用に使っているクッキーに対応する "tbcomm" ボタンをクリックして、Remove ボタンをクリックする。(X ボタンをクリックして tidbits.com に対応するすべてのクッキーを削除することもできるし、他の tidbits.com ドメインからのクッキーがある場合はそれらもすべて削除できる。ただしこれをした場合、いったんログアウトするとサイトはあなたが記事の要約を隠したいか表示したいかの設定を忘れ去ってしまう。)

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  7. Settings ページを閉じる。

Firefox

  1. Firefox > Preferences を選んで Firefox の環境設定ウィンドウを開く。

  2. Privacy ボタンをクリックする。

  3. History 見出しの下の Remove Individual Cookies リンクをクリックする。

  4. Cookies ウィンドウで、Search フィールドに tidbits.com とタイプする。

  5. 必要ならば下の方へスクロールして、tidbits.com のクッキーを表示させ、その中で Cookie Name カラムに "tbcomm" と表示された項目を見つける。それを選んで、Remove Cookie ボタンをクリックする。

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  6. Cookies ウィンドウと環境設定ウィンドウを閉じる。

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VidBITS: Apple 株価と日々のスコアカード

  文: Adam C. Engst: [email protected], @adamengst
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

Apple の最近の業績電話会合の後、我々は Apple の経営者達が、その四半期の結果について討論するよりも、会社と製品に対する応援に如何に多くの時間を使ったかに目を奪われた ("Apple Q2 2013 業績、増収減益となる" 23 April 2013 参照)。それをきっかけとして、我々の間でも Apple は何故その株価を気にすべきなのか、そして Apple が仕えていると思っているのは誰なのかについて内部討論を持った - 顧客、素晴らしい製品とサービスをもって;株主、配当と事業を絶え間なく拡大することによって;或いは、投機家、この人達は事業のことなどには何の関心も無く、株価の変動から利益を上げることにしか興味ない。勿論、Apple は実際に投機家に関心を持つことなどないが、その様に見えることもある。何故ならば、主流メディアは Apple の株価を扱うのが好きで、そして Apple はその取り上げ方は前向きなものであることを望んでいるからである。

直近のスタッフ円卓会議,で、Tonya Engst と Michael Cohen と私は Apple は何故その株価を気にすべきかについて話し合った。その中で幾つかの興味深い見方が示された。

他の会社と同様、Apple が何故株価を気にすべきなのかの理由の一つは、株式が従業員報酬のかなりの部分を占めているからである。その形には、従業員株式購入プランとストックオプションの二つがある。我々の円卓会議では、これの中身にはあまり立ち至らなかったが、これは興味深いやり方である。その理由は、従業員に自社の株式を確保してやることで彼らには会社に対してある程度のオーナー意識が生まれ、そこから事業を進めようというやる気も出てくるからである。それはまた有能な人を惹きつけたり或いは定着させるのにも役立つ。しかし、企業はその株価を操作できないので、株式の価値はしばしば事業がどれだけうまくいっているのかとは関係のないものとなってしまうことがある - 従業員のインセンティブとしては利益に基づいたボーナスの方が分かり易いかもしれない。

これら全てにおけるメディアの役割を考えてみると、ビジネスの世界では株価はある会社の現在の健康状態を表す毎日のスコアカードに一番近いのかもしれない。(この流れで言うと、我々は Dow Jones Industrial Average には何故重大な誤りがあるかを説明した Planet Money ポッドキャスト も紹介した。) Apple の株価が上がったか下がったかについて言えるということは、どのスポーツチームが勝ったのか負けたのかを報ずることに対する欲求に応えるのと同じ様なものなのである。それはまた現在進行中の物語に核となるものを与えるが、問題の多い形でもある。何故ならば、株価とはある企業の将来価値に対する市場の見方を現わすものだからである (そしてもっと悪いのは、噂や暗示によって動かされる)。

我々は最後に企業の健康度を判断するスコアカードをもっと正確に展開する方法は無いのであろうかを話し合い、一つの考えに到達した。それは Twitter のポストを分析してそれをクラウドソース (集計) するというものである。これは別に新しいアイディアではない - いわゆる "センチメント分析" を行うことで 株価を予測する手法 はある程度の成功を収めており、 ヘッジファンドの投資戦略の基礎としても使われている。勿論、その理由から、今ではセンチメント分析はアルゴリズム法売買ソフトウェアでは操作可能な入力として使われている。従って、株価は今やその企業についてソーシャルメディアで何が言われているかによっても影響される。

そうではあっても、センチメント分析に基づいた数字が企業に対する現在の見方を報じるのに、株価をその数式の中に取り込むことなく、使われる可能性はあると私には思える。少し調べてみたら、この種の追跡をやっている会社が幾つか浮かび上がってきた。一例は Topsy で、その Pro サービスでは、キーワードに対するセンチメント点数を提供しており、それを時間軸でグラフ化することも可能である。

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(いつものことだが、このビデオは必ずしも見る必要はない;オーディオだけを聞くには、この記事の Web 頁の一番上にある Listen リンクをクリックするか、或いは TidBITS ポッドキャストに申し込んで iTunes 或いはあなたの好みのポッドキャストアプリに自動的にダウンロードすることも出来る。)

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Apple の財務判断に分け入る

  文: David Rabinowitz: [email protected], @david_rab
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

Apple は、現金と短期投資を溜め込んで July 2011 以来ほぼ二倍の $144.7 billion にしておきながら、いつも倹約的であるという印象を与えて来た。そんなことで、昨年 Apple が $10 billion の自社株買戻し計画と四半期毎の配当を発表した時は驚かされたものである ("Apple、四半期配当を払い、株式を買い戻す" 19 March 2012 参照)。もっと驚かされたのは、同社が買戻し額を $60 billion に増やし、そして配当も 15% 増額するという最近の発表である。

これらの決定は、Apple に前例のない程の額の現金を使わせるという新しい財務戦略の始まりを意味する。いや違う。少なくとも厳密にはそうではない。結果的には、Apple は今後二年間でこれらの株式を買い戻すのに自分の現金を使うのではなく、お金を借りるのだということが分かった。銀行に $145 billion 近い資金を持っている会社が何故お金を借りる必要があるのか? そして Apple は何故今になって急に現金の蓄えに手を付け始めたのか? 同社の金蔵は実際に満杯だという殆ど知られていない事実はさて置いて、Apple はお金を株主に可能な限り安い費用で返したいと思っているように見える。

もう少し具体的な話をすると ("Apple Q2 2013 業績、増収減益となる" 23 April 2013 参照)、Apple は 2013 会計年度第二四半期の業績を 2 週間前に発表した。同社は Wall Street の予測を僅かに上回ったが、利益はここ 10 年で初めて前年同期を下回った。他の鍵となる数字、例えば一株当りの利益そして粗利率の様な、も下落し、Apple が出した第三四半期に対する見通しも大方のアナリスト達の予測を下回った。こんな話をすると全部が悪い様に聞こえるかもしれないが、Apple はそれでも巨額のお金を生み出している - 今年の第二四半期だけで売上げは $43.6 billion そして利益は $9.5 billion であった。心配は Apple が成長株から値打ち株へと移行しているのかも知れないことで、その場合株主は儲けの殆どを定常的な配当から稼ぎ出す。大儲けの可能性に賭ける代わりに、投資家達は Apple を今やより動きの遅い、長期的な投資と見るようになっているのかもしれない。

二週間前の業績電話会合で、Tim Cook は Apple は今後手持ち資金を大きくいって二つのやり方で使い始める積りだと言った。一つは、自社株の買戻しを $10 billion から $50 billion 増やして $60 billion にする。二つ目は、Apple の四半期配当を 15% 増やして一株当たり $3.05 にする。Cook の目標は $100 billion を投資者に 2016 年迄に返還することである。これは巨大な額に聞こえるかもしれないが、Apple の株価は、$700 を超える最高値から最近の $460 近辺にまで下がって、時価総額は $200 billion 以上も消し飛んだ。そして、勿論のことだろうが、Apple はこの間も更に多くのお金を稼ぐ積りである。

買戻しと配当は Apple にとっては新しい方向である。Apple が最後に配当したのは 1995 年であったことを考えると、この動きは昨年までは殆ど考えられないものであった。そして 伝説的投資家である Warren Buffett の進言にも拘わらず、数年前に Steve Jobs は買戻しに抵抗した。当時の Apple の株価は $200 代であった。

この決定で最も興味深いのは、Apple がこれらの試み全てを賄う資金を借りることである。同社は銀行におよそ $145 billion 持っている。これはこの大きな数字の水面下を見れば納得がいく。Apple の現金のうち約 $100 billion は海外にあり、買戻しのためにこれを本国に戻そうとするとかなりの税金が課せられることとなる。専門家によると、同社がこのお金を米国に持ち帰るとすると、Apple は更に 10% から 30% 余分に税金を払わなければならないであろうという。債券格付け会社 Moody's によると、海外の現金を本国送還しないことで、Apple は 35% の課税を逃れ、それにより $9.2 billion の節約が出来 、おまけに社債の利息として支払う年 $100 million は税金の控除対象となる。ということで Apple は先週 銀行以外では最大となる $17 billion の社債を発行した。そして、どうも供給は需要を満たすには小さすぎたようである。

株買戻しのために借金をするというのには二つの明らかな利点がある。最初でそして最も明らかなのは、株買戻しにより同社が支払わなければならない配当金額は減る。しかも今や Apple は配当金を増額しているのでその効果はさらに大きい。次は、それ程目立たない理由だが、借金に対する利息は課税控除となる。要するに、お金を借りることで Apple は、両方の世界で良いとこ取りをする方法を見つけたと言える。株買戻しで配当額を減らし、そしてその買戻しの資金を借りることで利息分を控除しようと言うのである。思うに、Apple は社債の支払いよりも多くの現金を稼げると信じているのであろう。

株の買戻しはまた Apple の従業員の助けにもなる。Apple には Employee Stock Purchase Plan があり、数か月前までは、高い利益があげられる投資の様であった。このプログラムでは、従業員は年に給料の 10% まで (上限は $25, 000) を使って AAPL の株を 15% 引きで買える。 他の利点もあるが、株買戻しはお金を投資家に返すのに税効率のいい方法であると考えられている。それが従業員であろうと、他の個人であろうと、或いは団体であろうとである、何故ならば配当は課税対象だからである。Apple が最初に株買戻しプログラムを発表した時、Asymco の創業者である Horace Dediu は計算をしてみて次の結論に到達した、"Apple は株を報酬の一部として今後も提供し続け、その割合は賃金に対して 1:4 となろう"。Employee Stock Purchase Plan とストックオプションの供与は従業員に対する大きなインセンティブである。特に Apple の様な会社にとってはそうであり、一株当り利益を増やしそして同社の株価は過小評価されていると信じていることを強調することで、株の買戻しで株価を上昇させ、そして従業員や長期の株主に益することが出来る。

Apple はこれまで何年もの間、その現金に手を付けないで来たのに、何故今それを変えようとしているのか? Apple は公式には何も説明していないが、幾つもの問題からこれら最近の決定がなされたのであろう。同社は、物言う投資家でありヘッジファンドマネジャーである David Einhorn からの訴訟に直面 している。彼は同社がこれ程の現金を保有し続けていることに不満であった。理屈の上では、株の買戻しで、Apple は大株主の気まぐれへの脆弱性を減らすこと出来る。また、Apple の株価が上がっている時には投資家達は何も不満はない、何故ならば自分の投資に対して大きな見返りを目にしているからである。もし Apple がその株価は、もはやあの様な右肩上がりを続けられないことを認識しているなら、いわゆる値打ち株アプローチに移行することで、紙の上で同社が良く見えるように (とりわけ、一株当り利益と株主資本利益率を良くすることで)、そして Wall Street もなだめられるかもしれない。

Apple の規模をもってすると、同社は製品工学にだけ焦点を当てることは出来ず、周到な金融工学にも携わらなければならない。最近までは、資金管理は大部分舞台裏で行われることが出来た (Apple は、本国送還して課税対象となるのを避け、注意深く海外での利益はその国に留めて置いたことがそれを証明している)。しかし、Apple の成長が実際に鈍りつつあるのであれば、これはどの企業でもいつかはそうなるのを避けられない、この巨大な株買戻しや配当増額の様な公の動きは Wall Street を幸せにしておく助けにはなるであろう。 世間には 、これは技術革新も横ばいになる前兆なのではと見る人もいる。この人たちが例に挙げているのは、Microsoft が経験した同様な動きの後の株価と技術の停滞である。勿論ここからが Apple のチャレンジでもある - 期待を受け止め、そしてしっかりした大企業としての堅実な金融行動を維持しながら、製品レベルでは急成長企業の様に行動するために。

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FlippedBITS: Java、JavaScript とあなた

  文: Joe Kissell: [email protected], @joekissell
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

最近、Java に関するセキュリティの懸念とか、Apple から Java 関係のソフトウェアアップデートが出たとか、その他 "Java" という単語を「危険」に結び付けて報告するニュースがたくさん聞こえてくる。それと同時に、Java とは何か、そこにどんな問題の可能性が潜んでいるのか、Java を取り除けばどんな結果が生じるのかといったことについてあまりにも多くの混乱が巷に溢れているのを私は目にしてきた。それに加えて、Apple から出される Java アップデートと Oracle から出される Java アップデートの違い、Java Runtime とは何か、JavaScript は Java にどう関係しているか (その答を言えば、両者は全く関係ない)、といった点についての混乱もあまりにも多い。今回の FlippedBITS 記事では、こうした混乱をすべてきちんと明らかにするという、無謀な目標に挑戦してみたいと思う。

まずはすべての発端から話を始めよう。

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Java、Krakatoa 島の東 -- Java というのは、インドネシアで五番目に大きな(そして人口が最も多い)島の名前だ。私は二回ここを訪れたことがある。最近に訪れたのは私が 40 歳になった年だった。私の誕生日の夜明けに、妻と私はハイキングで活火山 Mt. Bromo に登った。いつか家に来てくれれば、その時に撮ったスライドをお見せしながら、美味しい... java (コーヒー) をご馳走しよう。そう、たまたま Java 島では品質の良いコーヒーがたくさん栽培されているので、コーヒーのことを java と呼ぶようになった。(さらに、たまたま私は一人で世界のコーヒーの 3.5 パーセントを消費しているので、コーヒーを "Joe" と呼ぶ人もいる。)1990 年代の初め頃、Sun Microsystems 社のエンジニアたちのチームが新しいプログラミング言語を開発していた時に、彼らはその名前をいろいろと検討した挙句、Java という名前に決めた。どうやら彼らもコーヒー愛好家だったようだ。

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だから、この記事で扱う Java は、プログラミング言語だ。これがおおむね C++ に基づくオブジェクト指向言語だと説明をすることはできるけれど、プログラマーの方々はとうにそんなことはご存じだし、プログラマーでない方々には興味のないことだろう。そこで、ここでは Java はプログラミング言語としてかなり良いものだということだけ言っておこう。これはパワフルで、人気があり、そしてここが重要な点なのだが、いったん Java アプリケーションがコンパイルされればそれが多くの異なったプラットフォームの上で走ることができるようにデザインされている。そう、同じ一つの Java アプリケーションが、Mac でも、Windows PC でも、Linux PC でも、あるいはスマートフォンでも、何の変更も必要とせず走るのだ。(実際にはこれは少し単純化し過ぎた言い方だが、極端に言えばそういうことになる。)

いったいどうやって Java はそんな曲芸の技をひねり出すことができるのだろうか? Java はいわゆる 仮想マシン に依存している。Parallels Desktop や VMware Fusion のようなアプリケーションを使って Mac の上で Windows や Linux を走らせたことがあれば、既に仮想マシンとは何かを大体はご存じだろう。それはソフトウェアの中に作られた一つの環境で、あたかも物理的なコンピュータであるかのように機能する。Windows 仮想マシンを使えば Mac 上で (または別の Windows の上で) Windows を走らせられるように、Java Virtual Machine (JVM) はどんなプラットフォームの上でも Java ソフトウェアが走るようにする。ホストとなる個々のプラットフォームにはそれぞれ異なった JVM があって、それぞれの物理的ハードウェア上で走るようにデザインされている。例えば Intel x86 チップには一つの JVM があり、ARM チップには別の JVM がある。

さて、ここでもう少し言っておくべきことがあるので、あと段落二つ分だけ、技術的なことになるけれどもどうか我慢して読み進めて頂きたい。

第一に、JVM が「Java ソフトウェア」をどんなプラットフォームの上でも走るようにすると私は言ったが、そこで言うソフトウェアとは、いわゆる Java バイトコード というものだ。Java バイトコード自体は Java ではなくて、むしろ Java のコードがコンパイラと呼ばれるプログラムを通じて走る際に作り出される中間的言語のようなものだ。両者の違いは通常はプログラマーでない人が気にする必要のあるものではないが、ただ問題は、Java とは別のプログラミング言語がコンパイルされて Java バイトコードとなり、それも また JVM で走ることがあり得るという点だ。だから、誰かが例えば Python や Ruby でプログラムを書き、特別のコンパイラを使ってそれをビルドして、その結果が JVM から見る限り Java で書かれたプログラムによるものと区別がつかない、ということも起こり得る。この記事では、JVM で走るソフトウェアすべてを考えているので、それがどの言語で書かれているかは関係ない。

第二に、通常 JVM だけでは、コンピュータの上で Java バイトコードを走らせるには十分でない。そのプラットフォーム特定のバージョンの Java Class Library も必要となる。このライブラリが、そのプラットフォーム上で個々のタスクをどうやって実行するかを JVM に指示する。例えば、Java プログラムの中にシステムビープ音を鳴らせという命令が含まれていたとしよう。その命令の実行は Mac OS X ならばある方法でするし、Windows はまた別の方法でする。そこで、JVM がホストプラットフォームに送ろうとしている命令を Java Class Library が受け取り、それをホストプラットフォームが期待する形に直して手渡すのだ。JVM と Java Class Library はほとんど常に一つのパッケージとして配布され、そのパッケージは Java Runtime Environment (JRE)、あるいはたいてい縮めて "Java Runtime" と呼ばれる。Java Runtime はサンドボックス化されている。(iOS や Mac App Store アプリと同じだ。)これはセキュリティを高めるためのものだが、セキュアなサンドボックスを開発するのは極めて困難なことであるので、Java のサンドボックスもあまり良い結果を出しているとは言えない。この点についてはあとでまた述べる。

ここまでをまとめると、どんなデバイスでも、Java Runtime がインストールされていれば、Java バイトコードを走らせることができる。その Java バイトコードは、もともと Java で書かれたものかもしれないし、他の言語で書かれたものかもしれない。

むかしむかし、あるプラットフォームで -- 初期の頃の Mac OS X においては、Apple は Java Runtime を(当時のオーナーであった Sun からライセンスして)内蔵して含めたばかりでなく、積極的に Java を「第一級市民」として奨励した。開発者たちは自分のアプリケーションを、もともと NeXTSTEP の一部であった Apple 独自のプログラミング言語 Objective-C でも、あるいは Java でも、自由に書くことができた。いずれの場合も、ユーザーたちは見栄えも使用感も(多かれ少なかれ)ネイティブな、きちんとしたアプリケーションを得ることができた。(Java アプリはネイティブな Mac アプリのものと異なるインターフェイス要素を使うことが多かったためにしばしば「あまりちゃんとしていない」と批判されたが、それは比較的些細な問題と言える。)結果として、たくさんの Mac アプリが Java で書かれ、今でもそういうものはいくつかある。

でも、ここで大切なことがもう一つある。Java は、独立動作の、ダブルクリックで動くアプリケーションだけのものとは限らない。それ以外に、Java アプレット がウェブページに埋め込まれることもある。コンピュータに Java Runtime がインストールされていて、ブラウザに(埋め込まれたアプレットをサポートするための)Java プラグインがあり、しかも Java への対応が有効となっている場合には、アプレットと呼ばれる高度に複雑なプログラムがウェブブラウザの内部で走ることができる。Flash や Silverlight などがまだ人気を得ていなかった時代に、Java アプレットはウェブページに双方向性を追加し複雑なコンピュータ機能を持たせるための一般的な方法であった。

けれどもその後年月を経て、Java は第一級市民の座を滑り落ちて、疑いの目でよそ者扱いをされるようになった。(そしてそれは何も Mac の上に限ったことではなかった。)そこには技術的、法律的、さらには政治的な問題も絡み合っていて、すべてを話せば長く入り組んだものになってしまうので、ここでは最近持ち上がった重要な点のいくつかを紹介するだけに止めたい。

Java は、開発やコンパイルに使うツールや、ランタイム環境、その他さまざまな部分も含めて、少なくとも 2007 年以降はオープンソースであった。ところが、その管理は主として 2010 年に Sun Microsystems を買収した Oracle Corporation の手によって行なわれてきた。Oracle の実装した Java だけが唯一のものではないけれども、実質的にそれは限りなく「公式」なバージョンとなっている。長い間、Apple が Mac OS X に内蔵してきたバージョンの JRE はいつも Oracle の最新バージョンより数ヵ月も遅れていた。そしてその点こそ、例えばセキュリティの欠陥が発見された場合などには大きな問題となった。Oracle がそれを素早く修正したとしても、Apple がそれに追い付くまでの間 Mac はずっと脆弱なままだったからだ。

ここで、セキュリティの欠陥について少し話しておこう。Java Runtime の中に深刻なセキュリティの問題が多数あるのは残念なことで、四六時中新たな問題が出現するのが実情だ。(数字を言えば、2013 年に Apple が出した Java アップデートだけでも 56 個の個別の脆弱性に対処が施されている。)私が Java Runtime と言ったことに注意して頂きたい。問題は Java プログラミング言語自体の中にあるのではなくて、Java バイトコードを走らせるために使われる環境の中にあるのだ。さらに、真の問題は Java Runtime それ自体にあるのではなくて、むしろそれは、もしもあなたのウェブブラウザに Java プラグインがインストールされ有効になっていて、あなたが悪意ある Java アプレットを含んだウェブページをたまたま訪れた場合に、それがあらゆる種類の深刻なダメージを及ぼすかもしれない、という事実にある。いくつかの欠陥には、ウェブブラウザの内部のみに安全に留まっているはずの Java コードが言わばサンドボックスの外に飛び出して、あなたのコンピュータ上の別の場所でさまざまな悪さをすることを許すようなものさえ含まれている。厄介な、非常に厄介な挙動だ。悪漢たちは、この種のセキュリティホールを見つけ出して攻撃しようと、休みなく働き続けている。

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これらの問題に対処するために Apple は複数の戦術を使ってきたし、ここしばらくの間はユーザーたちに Java を 一切使わない ことを勧めようと懸命に努めてきている。

Mac OS X 10.7 Lion 以降、Apple はもはや Java Runtime をオペレーティングシステムの中に含めていないが、あなたが Java アプリを走らせようとすれば Mac があなたに Java Runtime をダウンロードしてインストールするかどうか尋ねてくるようにした。数回クリックするだけで、Java Runtime がインストールされる。ただし、そうやってあなたが入手するのは最新リリース版ではない。Apple は Java 6 の一つのバージョン (つまり build 1.6.x) をあなたに渡す。けれども Oracle から出ている最新版は Java 7 (つまり build 1.7.x) だ。Oracle のバージョンが欲しければ、それをダウンロードしてインストールすれば Apple のバージョンに代わってそちらが使われる。でも、おそらくそうすることは賢明でない。なぜなら、Java 7 には Java 6 よりもさらに もっと多くの セキュリティの問題点があるからだ。現在のところ、Apple は同社のバージョンの Java 6 に対して積極的にセキュリティパッチを施してアップデートをしており、Oracle も Java 7 に対して同様の修正を加えている。それに、以前とは違って、今では Apple も Oracle と同じくらい素早くそうしたパッチを用意するようになっている。それに加えて、Apple は Safari の中に脆弱性の多い特定のバージョンの Java プラグインを使えないようにする対策も組み込んだ。(一方 iOS では Java は利用できない。理由はお分かりだろう。)

Joe から Java について言いたいこと -- 一点の曇りもなく明確になるように、ここでもう一度重要な二点を繰り返しておこう。一つには、Java プログラミング言語も Java Runtime も、それ自体ではあなたの Mac の害になることはない。単に Java Runtime をインストールしているだけでセキュリティのリスクが生まれることはない。実際、独立動作の Java アプリケーションを走らせることさえ、それがよく知られた入手源から来たものである限り、安全だ。あるいは別の言葉で言えば、独立動作の Java アプリを走らせるのは、他のどんなアプリを走らせるのとも全く同等に安全だ。(なぜなら、結局のところ、どんなアプリも理論的には悪意ある改変を受けることがあり得るからだ。)

他方、ウェブブラウザの中で Java を有効にしておくことは、現時点では、極めて危険だ。ブラウザではオフにしておくことを強くお勧めする。Safari でそれをするには、Safari > Preferences を選び、Security をクリックし、Allow Java (Java を有効にする) のチェックを外す。Chrome でするには、chrome://plugins を訪れ、Java の下にある Disable リンクをクリックする。Firefox では、Tools > Add-ons を選び、Plugins をクリックし、Java Applet Plug-in の横にある Disable ボタンをクリックする。

あなたが最新版の Safari を使っているなら、個々のウェブサイトごとに選択的に Java を有効に できる。(Java は有効にしておくが、個々のサイトごとにそのサイトが安全だと確信できるもののみで個別に Java の使用を認める設定にしておく。詳しくは 2013 年 4 月 26 日の記事“Safari アップデートで更なる Java 保護を加える”参照。)けれども最近では正当な方法で Java を使っているウェブサイトの数も実際少ないので、普段はブラウザでは Java をオフにしておき、絶対に必要だという確信がある場合のみオンに切り替えることをお勧めしたい。

さて、Java Runtime 自体をアンインストールしようかどうしようかと思案中の方のために、その点についてきちんと説明しておこう。Lion かそれ以降を走らせている場合は、あなたの Mac に Java Runtime が存在しているとすれば、それはあなたが Java アプリを走らせようとしたことがあるか(その場合、今後もそのアプリを走らせたいのなら、あなたは Java Runtime をまだ必要としている)それともあなたが Oracle から Java Runtime を自分でダウンロードしたか(この場合もやはり、あなたはそれを必要だからそうしたのだろう)のいずれか しか ない。あなたが CrashPlan を使っているならば(このアプリを私は強くお薦めしている)現時点ではあなたはまだ Java を必要としている。(CrashPlan の開発者 Code 42 Software は現在 Java を使わないバージョンの Mac 用 CrashPlan を開発中で今年中にはリリースされる予定だ。)Adobe Creative Suite の一部も、そこには Photoshop も含まれるが、Java に依存している。その他にも OpenOffice や、いくつかのゲーム、ほんの少数の生産性アプリなどもそうだ。もしもあなたが Java に依存するアプリを必要としているならば、あなたは Java Runtime を持っていなければならない。Apple が 出したバージョンの Java を使い、ウェブブラウザでは Java をすべて オフにしておく ことをお勧めする。

もしもあなたが Java を必要とせず、それなのに Java がインストールされているのならば、アンインストールするとよい。Rich Mogull が、Macworld 記事 "How to disable Java on your Mac" の中で、状況に応じて Java をアンインストールしたり無効に設定したりする方法を解説している。

JavaScript -- Java については、以上の通りだ。けれどもここで、コーヒーに関係するもう一つのコンピューティング用語、JavaScript についても触れておこう。JavaScript は、また別のプログラミング言語の名前だ。こちらはもともと Netscape によって開発されたものだ。JavaScript と Java の間には、どちらもずっと古い C 言語からインスピレーションを得て生まれたものだという点以外、似ているところはほとんどない。名前が似ているのは、基本的にマーケティングの離れ業によるものに過ぎなかった。JavaScript はもともと LiveScript と呼ばれていたが、どうやら Netscape は当時人気を得ていた Java にあやかろうとしたらしく、JavaScript という名前に変えてしまった。とてもとても残念なことだ。当初から多くの人々が JavaScript は Java と何らかの関係があると思い込まされてしまったのだったが、何のことはない、全然別の言語だったのだから。

Java とは違って、JavaScript は仮想マシンに依存したりしない。しかしながら、これは インタープリタ言語 だ。つまり、この言語で独立動作のアプリケーションを作ることも、アプレットを作ることさえもできない。インタープリタ と呼ばれるソフトウェアが、生のプログラミングコードを読み込んで、その場でその命令を実行しなければならない。JavaScript はウェブページに何らかの機能を追加するために使われることが多いので、事実上あらゆるウェブブラウザがそれぞれ独自の JavaScript インタープリタを備えている。

JavaScript は、ウェブページの上で驚くほど多様なことができる。従来 Java が使われていたタスクの多くが、JavaScript を使ってできる。JavaScript を使った動的なメニューや、その他ナビゲーション関係のコントロールを使っているサイトはたくさんある。フォトギャラリーや、電子メールとカレンダー用のウェブアプリ、Google Docs などのワードプロセッサ、その他よくあるさまざまのツールが、JavaScript に大きく依存している。そうしたければ、ブラウザの中で JavaScript を無効にすることも可能だ。けれどもそんなことはしない方がよい。これはあまりにも便利でいたる所で使われているツールなので、これがなくなるとあなたのウェブ体験はとたんに粗末なものに成り下がってしまうだろう。まともに使えなくなるサイトも多いかもしれない。(もう一つ付け加えると、JavaScript は iOS デバイスの上でさえも使える。)

だからと言って JavaScript がこれまでセキュリティに関して完璧な実績を残したというわけでもない。確かに、ポップアップ広告や、ウィンドウの自動リサイズなど、いろいろ迷惑なことのために JavaScript が使われることもある。けれども JavaScript の脅威レベルは、Java の脅威とは比較にもならない。JavaScript は、ブラウザの外へ手を届かせることができないからだ。

最後に一言 -- 私は Java が大好きだ。(あの島も、飲み物も、そしてプログラミング言語さえも。)けれども私はすべてのブラウザで Java をオフにしているし、私がいつも使っている Java ソフトウェアにいつかネイティブ Mac 版が出さえすれば、すぐに Java をアンインストールして二度と後ろを振り向かないつもりだ。Java の持つ「一度書き上げれば、どこででも走る」というアプローチは理論的には素晴らしいが、実際問題としては煩わしさを我慢するだけの価値はない。一方 JavaScript に関しては、すべてが良いことずくめだ。ただし、私が自分のブラウザを調整してポップアップウィンドウやその他迷惑な挙動をブロックしても、文句は言わないで欲しい。

[Java 島の地図は Burmesedays による。CC-BY-SA-3.0, via Wikimedia Commons.]

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TidBITS 監視リスト: 注目のアップデート、2013 年 5 月 6 日

  文: TidBITS Staff: [email protected]
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Cyberduck 4.3.1 -- ファイル転送アプリは Fetch と Transmit だけではないぞと言わんばかりに、Cyberduck チームがそのオープンソースアプリのバージョン 4.3 をリリースした。2011 年末ごろ以来の、久しぶりのアップデートだ。今回の最大のニュースは Cyberduck が Dropbox、Google Drive、および Windows Azure への対応をしなくなったことで、これにより開発者たちが労力を Amazon S3 への対応の改善に集中できるようにした。( Cyberduck ブログ記事によれば、ユーザーからの要望が多ければ Azure と Google Drive への対応は復活させるかもしれないという。)今回の新リリースでは OS X 10.8 Mountain Lion 用のアップデートが施されて Gatekeeper と通知センターにも対応し、また Retina ディスプレイへの対応も追加された。また、今回から Cyberduck が Qloudstat とも統合された。これは CloudFront の流通、S3 のバケット、および Rackspace CloudFiles のコンテナの監視と分析を提供するサービスだ。この 4.3 アップデートが出てから数日後、制限速度の無制限設定ができなくなっていた問題を修正した Cyberduck 4.3.1 がリリースされた。Cyberduck は無料だが、ドネーションの送金により、あるいは Mac App Store 経由で $23.99 で購入することにより支援することもできる。(無料、26.1 MB、リリースノート)

Cyberduck 4.3.1 へのコメントリンク:

Postbox 3.0.8 -- Postbox が、同名の電子メールクライアントのバージョン 3.0.8 をリリースした。デュアル GPU を備えた MacBook Pro モデル専用のグラフィックスプロセッサを統合することにより、電力消費を抑え、結果としてバッテリ消費を減らしている。今回のアップデートではまたツールバーに Run Filters on Folder ボタンを追加し、通知センターのアラートが直接メッセージにリンクされるようにし、メッセージパネルのフォルダ名の隣にアカウント名も表示するようにし、iCloud 電子メールアカウント用にアカウント自動設定への対応も追加している。さらに、Growl 統合に関する問題点と、索引付けの際のクラッシュ、Thunderbird からの読み込みの際のクラッシュも修正している。(新規購入 $9.95、無料アップデート、21.5 MB、 リリースノート)

Postbox 3.0.8 へのコメントリンク:

Little Snitch 3.1 -- トラフィック監視ユーティリティ Little Snitch でプロファイルを使って接続制限のルールのセットを作ることは従来も可能ではあったけれども、そのためにはそのプロファイルへ手動で切り替えることを覚えていなくてはならなかった。今回リリースされた Little Snitch 3.1 で、Objective Development は新たに Automatic Profile Switching 機能を追加して、一つのネットワーク(例えばあなたの自宅の Wi-Fi ネットワークや、コーヒーショップのホットスポットなど)ごとに特定のプロファイルを割り当てることができるようにした。一つのネットワークに初めて接続する際に、アラートウィンドウが開いてどのプロファイルをそのネットワークに割り当てたいかを尋ねてくる。そのネットワークでは何もしないように設定することも、またあらかじめデフォルトのプロファイルを設定しておいて未知のネットワークではすべてそれを使うようにすることもできる。アラートウィンドウが開いている間は一切ネットワークトラフィックの通過が許されないので、望ましくない状況下で電子メールやファイル同期アカウントが勝手にデータの送受信をしてしまうことはない。Little Snitch 3.1 でのその他の変更点としては、Restore Factory Defaults 機能の改善、稀にカーネルパニックを起こすことのあったバグの修正、Automatic Profile Switching 機能の追加に対応したヘルプセクションのアップデート、などがある。(新規購入 $34.95、無料アップデート、13.2 MB、リリースノート)

Little Snitch 3.1 へのコメントリンク:

Transmit 4.3.4 -- Panic が Transmit 4.3.4 をリリースした。Mac OS X 10.6 Snow Leopard を走らせている人たちに喜びをもたらすための、小さなメンテナンスリリースだ。今回のアップデートでは Snow Leopard 上でフォルダを同期しようとする際に Transmit のユーザーインターフェイスが反応しなくなるバグが解消された。さらに、このファイル転送プログラムで TLS/SSL を経由した FTP に接続しようとする際に一部のサーバで接続に失敗していた問題が修正され、転送の最中やお気に入りにサーバのファビコンをダウンロードしている最中にアプリを最小化しようとすると起こったクラッシュが解消され、Transmit Disk の自動アップデートに関する問題が修正された。(新規購入 $34、無料アップデート、29.4 MB、 リリースノート)

Transmit 4.3.4 へのコメントリンク:

SpamSieve 2.9.7 -- C-Command Software が SpamSieve 2.9.7 をリリースし、このスパムフィルタリングユーティリティの動作の全体的な正確度を向上させた。今回のアップデートで、AppleScriptKit へのリンクをしなくなった。その結果として GUI スクリプティング機能がいくつか失われたが、SpamSieve が起動できなくなることのあったバグが回避された。また、Outlook が特別の Junk E-mail フォルダを見失った場合に訓練済みのメッセージの挙動を改善し、連絡先の電子メールアドレスを取得しようとする際にエラーが返ってきた場合アドレスがロードできなくなる Outlook のバグを修正し、Apple Mail ではアクセス権に関する問題を修正するとともにルール同期のバグを回避し、必要なフォルダにアクセスするために SpamSieve が正しいアクセス権を持っているかどうかのチェックを増やし、Apple Mail と Growl に関するエラー報告を改善し、また日本語ローカライズ版を改善している。SpamSieve は今回から Mac OS X 10.5 かそれ以降を必要とする。(Mac OS X 10.2 から 10.4 までと互換な旧バージョンはサポートページから入手可能だ。)(新規購入 $30、 TidBITS 会員には 20 パーセント割引、無料アップデート、10.8 MB、 リリースノート)

SpamSieve 2.9.7 へのコメントリンク:

GraphicConverter 8.6 -- Lemkesoft が GraphicConverter 8.6 をリリースして、数多くの新機能を追加した。主なものとしては、レイヤーの追加、カーブ付きの明るさ機能、オンライン共有およびバックアップサービス DPHOTO への対応などがある。その他の追加機能としては、ムービーの表示の際のフィルムストリップオプション、ロスレス・バーチャルの回転・ミラー操作に対するショートカット、RGBA ファイルを TIFF で保存する際にアルファチャンネルのプリマルチプライを切り替えるオプション、最後に使ったズームを使用するオプションもある。この画像変換・編集ユーティリティにはまた、WPG および WPG2 読み込みの改善、ExifTool のアップデート、ブラウザ内での拡張キーボードによるコントロール、シャープネスレンジの改善など、多数のアップデートも施された。今回のアップデートではまた、JPEG 圧縮付き CMYK TIFF ファイル、32-bit グレイスケール TIFF、および GIF アニメーションの読み込みに際して特定の状況化で影響していたバグも修正された。(Lemkesoft ウェブサイトから新規購入 $39.95、 Mac App Store から新規購入 $38.99、155 MB、 リリースノート)

GraphicConverter 8.6 へのコメントリンク:


ExtraBITS、2013 年 5 月 6 日

  文: TidBITS Staff: [email protected]
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

今週は注目したい記念日の記事を二つ紹介しよう。World Wide Web がパブリックドメインになってから 20 年目の記念日を祝い、SF出版社の Tor が DRM フリーの電子ブック出版の一周年に達する。

World Wide Web はパブリックドメインになって 20 周年 -- 1993 年 4 月 30 日に、ウェブを作り出す背後にあった団体 CERN が公式に World Wide Web プロジェクトのソフトウェア(行モードのクライアント、基本サーバ、および共通コードライブラリ)をパブリックドメインに置いた。歴史にそれを記したのは Tim Berners-Lee で、Robert Cailliau が大きな助力をした。今回この大きな記念日を祝うために CERN が開いたサイトでは、それらの歴史について詳しく読めるとともに、世界初のウェブサイトと、当時の法律書類を見ることもできる。(Adam です。シアトルの Hypertext '93 カンファレンスで私が Cailliau に会った時に、私は自分が昼食を共にしつつ彼のティーンエイジャーの娘へのお土産をどこで買うのがいいか助言しているその相手がどんな人物かを全然知っていなかった。それと知って、私はとても恥ずかしい思いをした。著書 "Internet Starter Kit for Macintosh" の中で、彼の MacWWW ブラウザについて、このソフトウェアはごく原始的でとてもバグが多いなどと書いてけなしてばかりだったからだ。それでも彼はとても優しく私に接してくれた。)

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Tor が DRM フリーの電子ブック一周年に到達 -- およそ一年前、SF小説やファンタジー小説で定評ある出版社の Tor Books が、同社のすべての電子ブックからデジタル著作権管理の保護を取り除くと発表した。今回、Tor UK の Julie Crisp が、その決断が海賊版電子ブックに関して何を意味したかを明かしている。「実際には、DRM フリーになってから一年近く経ちましたが、わが社のタイトルで海賊版が特に増えたとは認められません。」(当然ながら、私たちから見てもこれは全く驚くに当たらない。私たちも Take Control 電子ブックを DRM フリーで十年近く出し続けているが、結果は私たちも全く同じだからだ。)Tor にとって同じくらい心強いのは、同社の DRM フリーのポリシーに対して著者たちから大きな支持が寄せられていることだ。

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