TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#1179/24-Jun-2013

NSA (米国国家安全保障局) がオンラインサービスのユーザーたちをスパイしていたという疑惑についてさらに新たな情報が出現し続けているが、その一方で TidBITS セキュリティ編集者の Rich Mogull はあなたが Apple に預けているデータのうち実際どれだけが政府によるスパイ活動に晒される危険の下にあるのかを分析する。かくして権力者 (Big Brother) はあなたを見張っているのかもしれないが、私たちも兄貴 (Big Brother) を見張ることができるのか? Jeff Porten が、スマート腕時計から Google Glass まで、身に付けることのできるさまざまのコンピュータが持つ社会的影響について考察する。さて現代社会に戻って、Michael Cohen が新たに改良された Marvin 電子ブックリーダーをもう一度取り上げる。Josh Centers は最近になって Apple TV で新たに観られるようになったチャンネル、とりわけ HBO と ESPN について紹介するとともに、それを聞いてケーブルテレビの契約を切ってしまうと観られなくなる番組もあるという注意点も書き添える。最後にもう一つ、Josh は号の結びに、最新の FunBITS 記事として Apple からグッドデザイン賞を受けた iPhone および iPad 用のゲーム、Badland を紹介する。今週注目すべきソフトウェアリリースは、Mellel 3.2.1、Java for OS X 2013-004 および Java for Mac OS X 10.6 Update 16、TweetDeck 3.0.2、それに Hazel 3.1.1 だ。

記事:

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電子ブックリーダー Marvin がより賢くなって戻ってきた

  文: Michael E. Cohen: [email protected], @lymond
  訳: M.Sugimoto <dfbia300@kcc.zaq.ne.jp>

一ヶ月か少し前に、私は Appstafarian Limited の無料の iPad 電子ブックリーダーアプリ、Marvin を試してみた。(2013 年 5 月 10 日の記事 "賢い電子ブックリーダー Marvin が(ほぼ)正しいことをする" 参考)そして、電子ブックコレクションを読んだり、構成したりする強力なツールに非常に印象を受ける一方で、Take Control タイトルのような複雑な電子ブックを表示する際の、貧弱なレンダリング能力に失望した。大多数の EPUB はそのような規定をしていないけれど、私が記事の中で指摘したように、Take Control books のみならず、ベストセラーの J.K. Rowling のハリーポッター EPUB 版などのいくつかのEPUB が規定している、発行者規定の EPUB のタイプフェイスとテキストカラーを Marvin が尊重していない点にも落胆した。

私が記事を投稿して数時間も経ないうちに Marvin の開発者、Kristian Guillaumier は TidBITS の私たちに連絡をしてきた。その電子メールの中で、彼は複雑なレイアウトに関する Marvin のレンダリング問題に気づいていたことを記し、Marvin の次期バージョンでそれに対して注意を払うつもりであることを約した。

私は彼が約束を守ったことを伝えることができるのがうれしい。Marvin は、今や発行者レイアウト規定をもつ、どの EPUB に対してもそれを尊重するようになっている。さらにそうであって欲しかったように、規定に従うかどうかはユーザーが制御できるオプションになった。つまり、Marvin のフォーマットペインのよく目立つ場所に Switch to Publisher's Formatting というオプションが付き、これを使ってその設定をオンにしたりオフにしたりできるようになった。

ハリーポッターブックを例にとってみよう。Marvin の旧版は読む際には十分に読みやすかったが、各章を開くドロップキャップの配置やサイズといった細かいタッチの扱いができなかった。一方、新版では発行者のフォーマットを使用すると設定した場合は大変見事な仕事をする。

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さらによいことに、Marvin の発行者フォーマットオプションは Take Control book に含まれる複雑なごちゃまぜのフォーマットさえ扱うことができる。テキストの色、背景の色、傍点つきリスト、水平方向の罫線、ハンギングインデント、そのすべてを Marvin の旧版はひどくつっかえてしまったが、最新版ではまったく障害がなくなっている。実際、どちらかと言えば、Marvin は iBooksがやるよりも傍点つきリストのレンダリングをうまく扱う。Marvin が Take Control book を提供する際の唯一の欠点はそのリンクテキストの表示の仕方にある。Take Control books はリンクテキストを提供するために下線なしの青いテキストに依存する傾向があるが、Marvin は相変わらずリンクを下線付きにすることに固執している。しかし、Marvin は今や正しい色でそれを表示するので、私はそのやり方でやっていける。

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Marvin を最初にみたとき、私はそのツールセットだけで私の頼りになる電子ブックアプリになる可能性が十分あると言った。今やテキストレンダリングがずっと改善し、Marvin は私の iPad のドックの場所を得ている。

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Apple TV 更新 HBO GO、ESPN 追加、さらに追加も

  文: Josh Centers: [email protected], @jcenters
  訳: M.Sugimoto <dfbia300@kcc.zaq.ne.jp>

Apple は第二世代と第三世代の Apple TV をバージョン 5.3 に更新した。追加されたものは、いくつかの新しいコンテンツの選択肢で HBO GO、WatchESPN、Sky News、Crunchyroll、そして Qello だ。それらに馴染みがないなら、ここに各サービスの概要がある。

HBO GO -- 現行の HBO 加入者は HBO の拡張コンテンツライブラリとオリジナルのプログラムに HBO GO でアクセスができる。残念なことにケーブルや、あるいは衛星プロバイダへの参加を通じて、すでに HBO に加入している必要がある。コードカッターは HBO には歓迎されないし、DirecTV の顧客も DirecTVが大量の Twitter のクレームに対応するまで歓迎されなかったのだが。これはオンライン討論の大きな主題だが、テレビの現行のビジネス構造をもってして、何かすぐには変わりそうにない。しかし、HBO の CEO である Richard Pleplerの最近のコメント はケーブルに加入することなく、HBO GO 経由で HBO コンテンツを購読することが可能になる日がいつか来るかも知れないというわずかな希望を提供している。

ケーブルプロバイダは HBO に大金を払っており、もし HBO が直接消費者に販売するなら、HBO はこうしたプロバイダから追い出されるリスクを負うかもしれない。しかし、HBO がかつてそれ自身が衛星プロバイダであったということは永い間忘れられていた事実だ。1990 年代の昔、私の家族は大きな古い伝統的な C バンドの衛星アンテナの一つを所有していた。そして HBO と Cinemax プログラムのすべてを含む HBO Direct という名前のサービスを経由して HBO の直接アクセスを購入していた。 HBO はこのビジネスを 2001 年 にやめた

業界が変化するまで、あなたはケーブル TV プロバイダを通じて HBO GO をアクティベイトする必要がある。HBO GO Apple TV アプリの中で Setting を選択し、Activate Device を選択する。そしてオンスクリーンの指示に従う。その後、ウェブサイトを訪問し、アクティベーションコードを入力する。

しかし、HBO GO はティーザーとしていくつか無料のクリップとエピソードを特長としているので、アプリはコードカッターにとっても完全に無意味という訳ではない。

WatchESPN -- スポーツファンにとっては WatchESPN はわくわくような追加サービスで、ESPN のすべてのチャンネルのスポーツ生中継とプログラム、そして SportsCenter も流している。サービスを受けるためには、HBO GO のときのように、加入中のプロバイダからのケーブル加入が必要だ。あるいは、私は分かったのだが、たとえ ESPN に加入していなくても、ComCast Internet の顧客は WatchESPN へアクセスすることができる。Apple TV で WatchESPN をアクティベートするためには、WatchESPN アプリの中で Setting を選択し、Verify Your TV Provider へ行く。ここでもやはり、ウェブサイトを訪問し、アクティベーションコードを入力する必要がある。

HBO GO アプリのときと同じで、ニュースハイライトを含むすべてに対し視聴可能ないくつかの無料のクリップがある。

Sky News -- 英国をベースとし、Rupert Murdoch の News Corporation が所有し、運営する Sky News は 24 時間のニュースネットワークである。アプリはニュースクリップと 24 時間のニュースストリームを提供する。ニュースとして私の第一のおすすめではないものの、しばしばむらのあるニュースを提供するWall Street Journal チャネルの代替肢をもつことはよいことだと思う。そして完全に無料だ。

Crunchyroll -- アニメファンなら Crunchyrollへのアクセスがうれしいかも知れない。アニメとアジアのテレビ番組専門の Netflix のようなものだ。アニメメンバーシップは 1 ヶ月 $6.99、ライブアクションドラマも含む全アクセスメンバーシップは $11.99 で直接 Apple TV を通じてサインナップできる。

Qello -- TV でコンサートを見たい?Qello は HD 記録のコンサートと音楽ドキュメンタリーを提供する。セレクションをブラウズするにも無料のアカウントが必要で、コンテンツの多くを見るためには、加入のためにサインナップがいる。コストは 1 ヶ月 $4.99 か、年間で $29.99 かだ。

WWDC -- しばらくはそこにあるのだが、Apple Events アプリから今年のWWDC 基調講演をまだ見ることができる。しかし、もしあなたが登録開発者でセッションビデオをみたいなら、Safari か、WWDC iOS アプリからそれをAirPlay して見る必要があるだろう。

「依然として欠けている」もの -- これらはすべて Apple TV に対する歓迎すべき追加であるが、Roku が提供している多種多様なコンテンツチャネルと比べると、その選択肢は見劣りしたままだ。iOS がいかに閉ざされているか、の話ばかりされているが、それは Apple TV に比べれば、普通の制約のない自由競争だ。Apple TV は依然として Amazon Instant Video、PBS、Blockbuster on Demand、Crackle、そして Roku で可能な他の何百ものチャネルのサポートを欠き、厳重に制御されている。あなたは AirPlay を使用してこれらサービスの多くからビデオを Apple TV に送れるが、それは長時間の視聴に対してはちょっと格好が悪い。

しかし、Apple TV のコンテンツの不十分さに対しては、サードパーティーの解があるのかも知れない。メディア管理ソフトウェア Plex の開発者たちはApple TV のセレクションを拡大する賢明なハックである、PlexConnect を立ち上げた。

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Apple データ、米国政府は何にアクセス出来、何に出来ないのか

  文: Rich Mogull: [email protected]
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

17 June 2013 に Apple は、NSA がユーザーデータにアクセスしていたとする最近の疑惑に対する声明 を出した。その中で Apple は、如何なる政府機関も Apple サーバーへの直接アクセスはしていないこと、同社は合法の法的要求にのみ対応しており、要求に応ずるに必要な最小限の個人データのみを提供していること、そして iMessage や FaceTime メッセージを傍受するのは端から端まで暗号化されているので技術的に不可能であることを述べている。Apple はまた、米国法執行機関からの 4,000-5,000 の要請に今年対応したこと、そしてこれらの圧倒的多数が通常の刑事事件に関するもので、その他には行方不明の子供、アルツハイマー病の成人、そして自殺するリスクの高い人々を救出する手助けをするためのものであったことも明らかにした。

セキュリティとプライバシーの世界にいる我々は、最近のこのメディアの嵐に過度に驚かされることは無かった。政府活動に関する情報の多くは既に知られている事であったが、その範囲の広さ (とりわけ電話のメタデータを調べていたこと) には少々びっくりした。これは記事にするには難しい問題である、何故ならば話は急速に展開していくし、誇張の程度は天文学的だし、そして真実の全貌が明らかになっているとは到底思えない (何時かはそうなるとしても) からである。しかし、政府とテック企業の両者が発言しているので、そしてこれまでの知識に基づけば、我々はその全貌は理解出来ないとしても、何が 可能である かのうわべだけは知ることが出来る。

私の職業的見解は、我々は法律とビジネスモデルによって可能とされた我々個人のプライバシーの浸食に関心を持つべきだが、政府と民間企業の両者とも今はこれらの境界の中で行動しているということである。技術的に言えば、我々が Apple を使って蓄えている如何なる情報も、或いは殆ど全てのオンラインサービスでもそうだが、アクセス可能である。必要条件はそれが遠隔サーバーに保存されていることだが、如何なる政府も毎日の様にそれを全て走査している可能性は極めて低い。

法が許しているのは何か -- 最初に、一般的な開示をしておきたい。私は法律家ではないし、テレビで演じてもいない、そして私の直近の家族にも法律家はいない (義理の兄弟に一人だけいる)。しかし、10 年以上に亘って世界の情報セキュリティの中で働いてきた人間の一人として、データプライバシーに対する国際的な法制についてはそれ相応に知っている必要がある。

最初に理解すべきは、司法権という概念である - 会社はそれが事業を営む国における法に従わなければならない。これは極めて厄介なものであるが、ある会社がある国においてある事業をしていれば、その国の中で法律に従わなければならない、さもなくば退去するしかない。例えば、 Google は今でも中国での事業展開に苦闘している。これは全てのデータを保持しそしてそれを政府に対してアクセス可能にしなければならないという規制要件のためである。多くの欧州企業が顧客や従業員データを合衆国に合法的に移行できないでいるが、これは我々の税プライバシー法によるものである。Amazon は Amazon Web Services データセンターを他の国々にも建設しているが、これは性能問題というよりは、むしろその国の法的要件を満足しながらこのサービスをビジネスに生かしていくためである。

Apple のデータセンターは現在合衆国にある。同社はこれまで他の国においてどれだけ多く法的要請に応じてきたかについて語ったことはないが、最低限 Apple は米国法に従い、そしてそれが事業を展開する他国においてはそれらの国の市民に関するデータをリリースする様要求されてきたであろうことは我々にも推測出来る。

合衆国の現在の法律は多くの住民を驚かしそうである。例えば、法執行機関は次の様に言っている、現行法の下では、サーバー上に 180 日を超えて蓄えられた既読のメールは如何なるものでも、令状や相当な理由すら無しで、アクセス出来る。同じ解釈があなたが如何なるオンラインサービス上に蓄え、自ら意識して保護していない殆どのデータに対しても拡大される。というのも、法はあなたが自ら身に着けていないことで自らのプライバシーを放棄したと見做すからである。これらの企業はあなたのデータを保護するためにしばしば戦うが、彼らのユーザー同意書では (クリックする前に読むことなどまずない)、通常彼らに対してあなたのデータへの全面的なアクセス権を与えている。更に、電話通話は法律では保護されているが、あなたが にかけたかについてのメタデータはそうではない。そして、これらのどれもが米国市民でない人には適用されないし、あなたのデータが単にこの国を通過していくだけも同様である。

諜報とテロ対策の場合には、米国政府機関は更に強い力を持っている。彼らは電話通話を、もし一方が外国のテロ容疑者である場合は、令状なしで盗聴出来る。彼らは事後に殆ど正当化する必要もなく秘密の令状を入手出来る。彼らはテック会社に、Apple の様な、特定のデータを捜査と作戦のために提供するよう強制出来、一方でその様な要請がかつてなされたこと (なされたかどうかすら!) を企業が暴露するのを許さないように出来る。これが、何故 Apple が対応した 法執行要請 は幾つなされたかは言えても 諜報要請 は幾つなされたかは言えない理由である。我々には未だ NSA が Apple (或いは他のどの会社) からどのぐらいのデータを得たのか分からない。

これで PRISM と NSA が全ての Verizon 通話情報を入手したという暴露が一つの話としてつながってくる。行間を読めば、テック会社が完全に合法的な要請に必要最小限の情報で応えたと言う以上の何物でもない様に見える。我々にはその規模を知る術がないし、誰かが嘘をついているのか或いは何かが機密扱いになっているかもしれないが、そしてあなたは法の及ぶ範囲の広さに辟易しているかもしれないが、誰も法を破ったようには見えない。

Apple が政府に提供出来るのは何か -- Apple は実際に、他の多くの競合社、とりわけ Google より良好な状態にある。Apple は、二つの分野でのデータと三つ目の状況で法執行機関や諜報機関を手助け出来る:

あなたの iCloud 設定を開けばどのデータが入手可なのかが分かるが、代表的なものには、全てのメール、カレンダーイベント、そしてやること項目が含まれる (但し iCloud にあるもので、あなたの他のアカウントのものではない)。その他含まれるもの:あなたの写真とそれに関連するメタデータ (場所の様な)。あなたの iCloud 書類、連絡先、ノート、そしてリマインダー。あなたの App Store 及び iTunes Store での購入品。あなたの Safari ブックマークと同期されたタブ。Apple に関連して最大の露出の可能性があるのは、あなたの iOS バックアップであろう。勿論あなたが iCloud にバックアップしている場合に限られるが、バックアップにはあなたの電話器にあるもの全てが含まれるからである。

このデータを Google が保存しているものと較べてみよう。それらは、Web 検索、Web ブラウジング履歴 (Google の大規模な広告ネットワークを通して)、Gmail のメールメッセージ、Google Voice 経由でかけた電話、Google Calendar に蓄えられたイベント、Picasa や Google+ にアップロードされた写真、Google Maps での場所検索、そしてその他全ての Google サービス上であなたが行うものである。

声明の中で、Apple はまた自らが アクセスできない ものは何かについても明らかにした。Apple は Siri 検索や要求は保持しない、そして Maps での場所検索も保持しない。iMessage や FaceTime は端から端まで暗号化されているので、このデータは Apple サーバー上ではアクセス出来ない。

しかし、Apple があなたに信じさせようとしている程話は単純ではない。Apple は "信頼の根幹" を iMessage 及び FaceTime 会話暗号化に対して管理しており、その気さえあれば、man-in-the-middle (MITM) 攻撃を使ってこのデータを傍受することは可能である。しかし、その様な能力が現在組み込まれている可能性は極めて低いであろう。可能性が高いのは、もしその様な要請がなされたら Apple の弁護士達は徹底抗戦するであろうことである。何故ならばそれをするには Apple のサーバー上で実際にコード変更をすることが必要で、それは同社の公式プライバシー声明に反するからである。

Apple はまたこの機を利用して Google にジャブを送ろうとしているのかもしれない;"Apple は常に我々の顧客の個人データを保護することに優先度を置いてきた。そして我々は最初から我々の顧客についての山の様な個人情報を集めたりしていない。我々には保持しないと言う選択をしている種類の情報があり、従ってこれらが法執行機関或いは他の如何なるグループにも提供されることは無い。" この批判はまた他の会社、例えば Facebook や Amazon と言った、にも当て嵌まる。これらのビジネスは、顧客に個人化した情報を提供することを前提としているからである。

(ただ単に会社がユーザーに関するデータを集めるからと言って、その会社がそのデータを他の人と任意に共有することにはならないことは、気に留めておく価値がある。世の中にはインターネット会社が顧客データを腐敗した商人に売り渡すという陰謀説は溢れているが、現実問題としては、顧客データは Google, Facebook, そして Amazon と言った企業にとっては企業秘密である - 彼らはそれを、Coca-Cola が Coke の製法を共有しても良いと思う以上に売りたいと思ったりはしないであろう。この様なデータの周りにビジネスを構築する方が、それを将来の競争相手に売るよりも遥かに大きい金儲けの機会が待っている。)

Apple は場所の履歴を 保存 しないが、あなたの 現在の 場所にはアクセス出来る。これが恐らく Apple が、法執行機関が行方不明の子供や精神障害の成人を見つけ出すのを手助けした方法なのであろう。以前救助のプロの一人だった者として、私もこの様な情報があったら命を救えたであろう場面に個人的に直面したことがある。

最後に、法執行機関が暗号化された iOS 機器上のデータを犯罪捜査のために迅速に復元するのを Apple は手助け出来るという噂がある。これはまず間違いなく秘密の裏口を提供してではなく、恐らく機器外での力ずくでの暗号解読を支援してのことなのであろう。現状では、十分な長さを持つパスコードを用いれば暗号解読は実効的に不可能である。セキュリティと牢破りの研究者たちは絶え間なく iOS と Apple の機器に狙いを定めている;可能性を言えば、彼らが意図的な秘密の裏口を探し出すのは時間の問題であろう。加えて、その様な秘密の裏口は Apple のビジネスの利益にならないのはもちろん、巨大な広報上の (そして可能性としては法的な) 責任問題となり得る。

透明性の欠如 -- 内側の人間ではないので、我々には Apple や他のテック会社がユーザーデータを政府から守るためにどれ程懸命に闘っているかは分からない。企業は国内法に従う必要があるが、その対応法は会社によってまちまちである。Google は広範囲な個人ユーザーデータを集めるかもしれないが、政府のアクセスを最小化する最善の努力をしているのは我々の目にも明らかである。Google は、明かすのを許可されている政府要請の実時間の Transparency Report すら提供しているし、米国司法長官と FBI に対して Transparency Report でもっと多くの要請を明かせるよう要請もしている。

Apple は政府のアクセスを出来る限り限定しようと努力している様に見えるし、他の会社よりはるかに少ないデータを集めていて、それもユーザーの許可を得た場合だけに限られる。もしあなたは iCloud を使わず、自分自身のメールサーバーに依存し、そして暗号化した iOS バックアップを手元にだけ保持しているのであれば、Apple が政府に提供出来るものはあまりない。加えて、FaceTime と iMessage も通常の電話通話やテキストよりもずっと安全の様に見える。そして携帯電話は物理的に発見されることもある、勿論 Apple データの方がより綿密である可能性はあるが (そしてあなたの電話キャリアはそのデータをかなり長いこと保存するであろう)。

少なくとも、現時点では、連邦当局は、政府が現在電話ワイヤタップが許されている様に、全ての通信サービスに対して 秘密の裏口を持てるよう今もロビー活動している。(これは破滅的である、何故ならば敵対する政府そしてオンライン犯罪者達は、どんな直接アクセスのセキュリティでも破ってしまうであろうからである。) 我々はまた、現在の米国法及びその 使用 の及ぶ範囲についてははっきり分かっていない、というのも Apple や Google の様な会社は、米国政府がこの様な力をどれ程頻繁に使用しているのかを公にするのを許されていない、そして政府はこの様な情報がテロや他の犯罪を阻止するのにどれ程有効なのかを明らかにしていないからである。

合衆国は見出しに取り上げられたが、他の国の行状についての我々の洞察力は更に少ない。これらの国の中には、インターネットサービスプロバイダーに対して、将来捜査のために必要になる場合があるとしてメタデータ或いは全てのトラフィックすらを 何年 にも亘って取っておくことを義務付けている所もある。最後に、一般的な話として覚えておいて欲しいのは、あなたがデータを提供している如何なるオンライン会社も、欲する時は何時でもそれを見られるということである - 私はこれが可能なのかどうか見極める方法を "クラウドプロバイダがあなたのデータを読めるかどうか判別する方法" (9 April 2012) で説明した。

つまり、良い知らせは、Apple は政府に対して我々に関するデータを可能な限り少なくして提供している様に見えること、そして出せるデータについても実際に限界があることである。悪い知らせは、米国政府が我々を代表して何をしているのかの識見を我々は殆ど持たないことであり、それが現行法の範囲内にあるとは言っても、それらを理解している人は殆どいない。

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身につけるコンピューティングの社会の未来を考察

  文: Jeff Porten: [email protected]
  訳: M.Sugimoto <dfbia300@kcc.zaq.ne.jp>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

私たちのテクノロジーの心と頭脳での戦いは手首と顔での戦いへと移行しつつある。 多くの人先を争っ時計の中にコンピュータを置こうとしているが、Google は身体のいくつかの部分を飛び越して コンピュータを顔の上に置こうとしている。一方メディアはこれをホットな物語と見なし、見出しは予測解析や噂で持ち切りだが、いずれもたいした価値はない。

当然ながら、大部分はまだ存在すらしていないこれらデバイスについて息もつかせぬほど矢継ぎ早に出される報道の一部は、どのデバイスが「すべてを支配」するものとなるか、またそのメーカーが「かつてないほど市場を占有」するために、どんな機能が"必須"なのか、といった点について休む間もなく語られる識者の予想に過ぎない。しかし実のところ、どのデバイスが成功するか、あるいはデバイスの何かが成功するのか、誰も何の糸口も得ていない。

私たちの次のおもちゃが何になるか決めるのは、会社でもなければ、間違いなくそれを束にして買い込むであろう初期採用者ですらない。

それを決めるのは、他のすべての人たちだ。

普通というのはひどくおかしなもの -- ちょっとあなたのスマートフォンのことを考えてみよう。私が"電話を手にとって、それを見なさい"とあなたに言ったとする。でもおそらく皆さんのうち半数は既にそうしているのかもしれない。

もしあなたが 20 歳以上なら、おそらく携帯電話による時間が貴重で、あまり使用されてもいず、ちょうど白黒映画の長距離電話のような時代のことを覚えているだろう。もし 30 歳以上ならば、携帯電話を_持つ_ことさえ、おそらく非道徳と思える理由から.信じられないほど裕福であることを意味した時代を覚えていることだろう。かたや 2013 年は、コーンフレークの箱にオマケとして Androidフォンが付いていても不思議ではないような時代だ。実際そんなことが行なわれたのかどうかは知らないが、可能性は十分あると思う。(しかし、Entertainment Weekly は広告の中に その種のオマケを含めた。)

他の大多数のテクノロジー的変化と異なり、私たちは現実にこれが始まった日付けを書き留めることができる。最初の iPhone が出荷された日、2007 年 6 月29 日。それ以前は平均的な普通の人がポケットの中にウェブをもつことは極めてまれなことだった。私はその例外的な側の人間だったので自信をもって言うことができる。携帯電話のモダンな時代に先立ち、もしあなたが Sony Ericssonの P900 を持ち歩き、Sony Ericsson T68iを使って電子メールの送り方を知り、あるいは Palm VII でウェブページを見ようとするなら、あなたはどうしようもないほどおかしい人と思われただろう。(たぶん、Palm VIIでウェブサーフィンを試みることは、また ものすごくあなたをみじめにさせただろう。)

iPhone のリリースをもって、そして同程度に重要なことだが、Android フォンがずっと安価に入手できるようになって、かつて"奇妙"と"怖い"のどこかと見なされていたことが普通になった。(もしあなたが怖いという私を信じないなら、私が初めて電話のヘッドセットをつけて会話したとき、接続コードがないのを見たスーパーマーケットの女性が私の顔をちらりと見るやいなや恐怖に震えて文字通り私から_走り去った_。)"奇妙"と"普通"の境界は初期採用者と一般大衆の間の非武装ゾーンである。初期採用者が最先端の魔法のようなデバイスを動作させるために喜んで多額の金を払い、多くのテクノロジーの試練を受けようと試みることは十分に理解できる。さらにおもしろいことに、彼らはまたそうすることで、むしろ喜んで馬鹿に見えようとする。

つまり、大衆の中でテクノロジーを使用することは社会的な行動である。初期採用者は喜んで注意を引かなければならないし、"私はのろまであると大衆が考える"以上にむしろ、"大衆は私のテクノロジーに興味をもっている"と考える精神を必要とする。それは、そのいずれが真実であるかには 関係ない。初期採用の段階からそれが一般的に使用されるようになるまでの動きを創造するどのテクノロジーもそれを使う行動を標準化する必要がある。

しかし、"特殊"から"普通"へのシフトに関して、魅力的でおもしろいことは、普通とは大変広い雨傘で、たくさんの開いた穴から雨が降り込んでくることを許容するということだ。

スマートフォンで夕食 -- あなたは仲間と夕食に出かける、おそらく配偶者や、職場の仲間や、友達や、あるいはデートで。当然、あなたがた二人はスマートフォンか、最低でも 1993 年には想像もできなかった方法であなたにつながる何かの携帯デバイスをもっている。

多くの人は、意識しているか、いないか分からないが、座ったときにスマートフォンで何かをする。それが後ろのポケットに入っているなら、巨大な画面の強度をテストすることがないように移動させないといけないし、もし、前のポケットにあるなら、同じように座骨をへこませないようにする。財布の中の電話は盗難や引っかき傷を避けるために移動できるし、ジャケットポケット内の電話はドレープに影響がないように意識的に取り去ることもできる。

それから電話で何をするか?着信音をオフする?振動音をオンにする?夕食のテーブルにそれを置くなら、伏せて置く、それとも表を上にして置く?食事のコースの間中、電話がビートと鳴ったり、着信音が流れたり、ガタガタいったりしたら、注意を求めるそのデバイスをどうするのが正しいマナーなのだろうか?

重要なのはここだ。今のは、引っ掛けの質問だ。質問に対する答えは、電話とは何の関係もない。そして多くの場合、あなたの好みともほとんど関係ない。答えは、あなたが 誰と 食事をしているか、どこで食事をしているか、などと私がさらりと言ってのけた時点で、既に述べられている。デートに出かけた二人の社会的標準は同じカップルの 5 年後とは完全に違っている。同僚 2 人で食事をしているときと、片方がもう片方の上司であるときとでは、反応の仕方は当然違っている。

そしてこれらの標準が何ダースもの順序と例外をもっている。電話が不意に大きな音で鳴ったり、ブザーが鳴ったりしたときにほとんど世界中どこも同じで、ボタンを押して静かにさせる。でもそんなとき、あなたはどんな場合にスクリーンを見て何が音を鳴らしたのか調べ、どんな場合にそれをしないだろうか?もし、古い、あるいは大事な友達と夕食をしているなら、スマートフォンを見てもよいかとはっきり相手に訪ねるかもしれない。もっと普通には、あなたの周囲の人々のリアクションから単純に分かる。あなたの電話がお葬式の最中や映画の間に鳴ったとき、きっと非難の目があなたに集まるだろう。一方、あなたが外科医であって、外科医であることを 相手が知っている ならば、何も言われず認めてもらえるだろう。

人類学者の用語で言えば、携帯電話を取り巻く文化には"厚み"がある。つまり、あなたが誰であるか、あなたが誰といっしょにいるか、あなたがどこにいるか、その他何十もの要因に依存して変わる規則と標準の集合体が、即座に処理されコード化される。

こうした規則はあなたの近くの人たちがどう応答することを許されるかに拡大する。もしあなたがスターバックスで絶え間なく話しているなら、人はあなたをじっと見るかもしれないが、あなたの電話を取りあげて、あなたのラテに浸すようなことは滅多にしない。携帯電話で絶え間なしに話すことは無作法だと思われるけれど、規則違反ではない。"Dexter" のきわどいエピソードやアダルト映画を公衆の中で MacBook で見ることと比較すれば、こちらの方がより強い反応を引き起こすかも知れない。

おもしろいことは私たちがこれらの規則を作ってきたのではない。食事中のあなたがするすべてに、ストローの正しい使い方からウェイターにいかに呼びかけるかまで、同様な規則が存在する。おもしろいことは私たちがたった 5 年間で携帯型インターネットコンピュータに対してこうした厚い規則の集合体を作ってきたことだ。

これこそが、スマートウォッチや Google Glass が成功しようと思うならば注意すべき重要な点だ。それはテクノロジーではなく、機能でもない。それはそれを使う大衆の行動で、そしていかに社会的標準がそれを受け入れるためにシフトするかどうかである。

三つのスクリーン -- スマートウォッチについて言えば、これはほとんど誰もが少しは体験したことのあるテクノロジーだ。つまり、手首に取り付けられた装置が何か役に立つ情報を表示し、時には前もって設定されたアラームであなたに注意を喚起してくれることもある。そう、この説明なら、過去数十年間存在し続けていた普通の腕時計にも結構当てはまる。腕時計もまた、どんな場所でどんな風に使うことが許されるかのルールに縛られるという点で、文化的意味での影響を持つ。例えば、何かのイベントの最中にあなたがじっと腕時計に見入っていれば、こんな魅力的なイベントなのに変な人だと誰かに思われるかもしれない。

そう、そんな風に見られたこともあるなとあなたが思い出し笑いをしているにせよ、あるいは他の人があからさまに退屈そうにしていた態度を思い出してあなたが苛立った気持ちでしかめっ面をしているにせよ、あなたがそれらの反応を示す可能性があるということ自体が、この文化的な比喩が普遍的に成立することを示している。腕時計を見つめるという動作は、苛々した気持ちや退屈な気分を示唆する。でも、それは腕時計が する ことの内容に由来している。あなたが腕時計を見るのは、細かく時間を知りたいというのが唯一の理由だ。あなたが水深 10 メートルで潜水していなかったとしても、誰もあなたがそれ以外の目的で腕時計を見ているとは思わない。もしも腕時計が非常に違った情報を表示するかもしれないということになれば、その動作に対する世の中の理解は変化するだろう。ただし、その変化はテクノロジーの変化の速度に比べてずっとゆっくりと進む。

今から三年か五年くらい先の夕食の風景を想像してみよう。あなたが夕食を共にしている彼が、腕時計を見たとする。それは、時間を見るためか? それとも Facebook のアップデートをチェックするためか? それとも、テキストメッセージを読むためか? 携帯電話がブザーを鳴らすのとは違って、腕時計はいつも肌に密着しているので、ずっと低電力の振動器だけで十分合図を伝えることができ、その合図はそれを身に着けている本人以外にはおそらく聞こえないだろう。だから、食事の相手が 自ら その動作をしているのか、それとも合図に 反応している だけなのかさえあなたには分からない。では、その違いには何か意味があるだろうか? また、その合図を引き起こした コンテンツ の違いによって何か差が生まれるだろうか?

スマートフォンとは違って、腕時計を外すことは少ない。つまり、携帯電話ならばどこかにしまっておくこともできるけれども、あなたはこれまでに公衆の面前で自分の腕時計を腕から取り外したことがあるだろうか? ほとんどの人は決してそんなことはしない。人によっては、防水の腕時計を買ってシャワーの中でさえ着けっぱなしにしているくらいだ。おそらく、スマートウォッチでならスマートフォンと同様にブザーやアラームをすべて無音に設定することもできるようになるだろうが、スマートフォンに比べてスマートウォッチは着けている人にもっとこっそりと合図を出すことができるので、それをオフにするのもやはりもっとプライベートな行動になるだろう。スマートウォッチを身に着けていれば、あなたが今その時点でどれだけ外と接続しているのか、一緒にいる人には全く分からなくなる。だから、その人が誤った推測に基づいて社会的な結論を導き出してしまうこともあるかもしれない。

さて、スマートウォッチでさえこれほどの地雷原となる可能性を秘めているとすれば、そのスマートウォッチをあなたの顔のところまで移動させればどんなことになるのか、考えてみよう。

Google Glass は、人からどの程度注目してもらえるかによって自分の重要度が判断できると考えている人たちにとって、最大の悪夢となるかもしれない。つまりそれは、人類すべてにとって、ということだ。腕時計を見つめる動作は退屈を示唆するかもしれないが、スマートフォンの画面を読む動作は「ここに書いてあることの方があなたよりも興味深い」と叫んでいるのに等しい。だからこそ私たちは、スマートフォンをポケットにしまっておくべき社会的手掛かりをこれほど数多く作り出してきたわけだ。ところが、Google Glass は単に電子的なもてなしを受ける際の物理的に電話機を扱う必要を取り去ってくれるばかりでなく、私たちが何をしているかをまわりの人たちが知ることのできる手掛かりさえも取り去ってしまう。

それからまた、Google Glass にはビデオカメラとマイクロフォンが付いていて、しかも ウィンクするだけでスイッチを入れることができるという問題もある。プライバシー問題を扱うコミュニティー(かく言う私もその一員だと自認している)からは、この件に関して多くの懸念の声が挙がっている。つまり、Google Glass は不適切な時と場所でオーディオやビデオの録音・録画ができてしまうからだ。それに対して Google Glass 擁護派の人たちも反撃の声を挙げて、その種の監視ならば既存のテクノロジーでも可能だと指摘した。かく言うこの私でさえ、記事“iOS 補聴器... 或いは、スーパーマンの耳の買い方”(2011 年 2 月 8 日) の中でその種のデバイスの作成方法を論じている。

でも、まさにそこが問題だ。もしもあなたがペンや帽子に盗撮カメラを仕込んでいるのなら、あなたは James Bond であるか、それともいやらしい人間であるかのどちらかだ。その両者の中間に、盗撮用のペンを身に着けて公共の場を歩き回ることを許された社会的立場などない。あなたがそのようなテクノロジーをただ 持っている だけで、あなたはある特別の種類の人間であると区分され、子供たちや、あるいは猫たちに近づけるべきでないと見なされる。それとは対照的に、スマートフォンの内部には 誰もが それと同じテクノロジーを持っている。あなたがそれを使っていやらしいことをしない限り、あなたはいやらしい人間に区分されたりはしない。そう、すべてのスマートフォンの中にビデオカメラが入ったことで、いやらしくなれる機会が多くの人々に与えられたばかりでなく、それと同時に、いやらしさの 定義 の境界線が移動してしまった。つまり、ただそのテクノロジーを持っているだけでは、もはやその人を切り分けるには十分でなくなった。

では、盗撮用のペンと iPhone とはいったいどこが違うのか? 私が提言したいのは、盗撮用のペンにはたった一つの機能、つまり人に知られずその人を監視するという機能しかないのが、その理由だという点だ。iPhone にも同様に監視用の機能が備わっているが、iPhone が世の中に広く行き渡っていることにより、ビデオの撮影対象に知られずビデオ撮影するのは難しくなっている。Google Glass は、ちょうどその両者の中間点にある。つまり、それは人に知られず監視することの できる テクノロジーだが、同時 にそれは公共の場でそれを使う「口実」を与える他の諸機能も備えている。

だから、ここでの根本的問題は、Google Glass が監視を可能にすることと、それを防ぐための主たる防壁が社会的規範しかないことだ。Google Glass を身に着けている人が今現在カメラをオンにして録画中でないかどうか、あるいはその動画をインターネットにライブ中継していないかどうか、その点についてはあなたがその人を信頼する以外に判断のしようがない。この点こそまさに、その種のテクノロジーを身に着けている人は本質的に信頼できない人だという従来の規範と真っ向から矛盾する。私たちが問うべきは、盗撮用のペンに関する社会的規範がそのまま Google Glass にも適用されるべきものなのかどうか、もしそうならばその規範はいつまで生き残れるのか、という問題だ。

監視の代償 -- 最近の 12 年間には目を見張る変化があり、それは社会的な問題としてプライバシーの警鐘を鳴らしてきた私たちにとって、良い方向への変化ではなかった。私は、長年の活動家の一人として、プライバシーのための行動主義の 30 年間をここに要約しておきたい:

  1. コンピュータ化の進行とビッグデータにより、かつてなかったほどの規模で私企業が顧客たちについての情報を得られるようになった。このことはまた、弾圧的な政府の手で用いられた場合には懸念ともなるが、西側諸国では法律的な保護が個人や集団に対する監視を抑止すると思われているため行動主義はそれほど活発でない。

  2. 各国政府は、一部のテクノロジー(とりわけ強力な暗号化)を非合法化または規制しようと努める一方で、保護的手段を講ずることなしに(例えば令状なしに)電子的通信を監視する手段を拡大しつつある。9/11 以後の世界においてはこの傾向が雪崩を打つように顕著となり、監視カメラやビッグデータ処理が全く珍しくない普通のこととなってしまった。

  3. 社会的規範の観点から最も重要なのは、監視の対象となることに対する考え方が変わったことだ。以前は「有罪だと疑われていなければ監視されない」のが当たり前であった。少なくとも、政府があなたの挙動や居場所を追跡するには理由が必要とされた。ところが今やそれが「私は何も隠すことなどない」という考え方に変わり、行動の責任が監視者の側から対象の側へと切り替わった。つまり、対象者が ちゃんとした 人間ならば、監視されても実際何も困ることはないはずだ、という議論だ。

こうした変化の帰結として、次のような状況が生まれた。私が思うに、以前にはプライバシー活動家たちの間に共通の認識として、プライバシーの侵害が続けばどこかの時点で人々の堪忍袋の緒が切れ、巨大な不満の声が盛り上がって強力な保護が作り出されるはずだという考え方が存在していた。実際そのようなことが起こったこともある。そう、そのお陰で、あなたがレンタルビデオを借りても その情報が他人から覗かれる心配はない。けれども、レンタルビデオの件以外の他のすべてのことがらについては、そんなことは心配ないというのが社会的な規範のようになってしまった。もちろん、あなたが「何か隠すべきものを持っている」のならば別だが。そうでないのなら、なぜ心配しなければならないのか、というわけだ。

そのような考え方における問題は、恥について、あるいは慣習に逆らった行動についての社会的規範について考えてみれば浮き彫りとなる。 Tyler ClementiRehtaeh Parsons も、インターネットに「背徳的」な行動のビデオを晒された結果、自らの命を絶つまでに追い込まれた。Clementi の場合は男性にキスしている映像、Parson の場合は複数の男たちに襲われてレイプされる映像であった。

かなり以前からアメリカとカナダの文化は同性愛的な挙動やレイプの被害者となることを自殺の正当な原因として受け入れているけれども、性的な行為全般とその結果生じるビデオ映像に対する私たちの規範は、実際の行動に比べてまだ数十年分遅れている。友人たちがそれぞれの家の中で何をしていようと自分には関係ないと考えるのは私だけでないとは思うが、それと同時に友人たちの誰一人として自分の裸のビデオをインターネットに出すような「タイプの人」でないことに私は確信がある。

では、はたしてそれはどのような「タイプの人」なのか? 論理的には、明かりの点いた場所で裸になったことのある人すべてがそこに属する可能性がある。つまり、自分で撮影してインターネットに公開した人たちと、知らないうちにそういうことをされてしまった人たちとの、両方が含まれるからだ。かくして、そのような「タイプの人」という言い方で人を区分けするのは極めて非論理的なことだと思う。

この例においてとりわけ多くを語るのは、恥ずべき背徳的な行動の例として大多数の読者に共感してもらえると私が思い付くものが、性的行為に関するものばかりであったことだ。Reno へのビジネス出張の途中で売春宿に立ち寄ったことを示す GPS データを喜ぶ人は少ないだろう。結婚している人たちの大多数は昼休みに勤め先の近くのホテルに同僚と一緒にいることを示す GPS 記録を望まないだろう。けれども、私が社会人としてあえて無視した他の種類の恥ずべき行動や、あるいはその種の事件が起こるまで私が気付きもしないような種類の背徳的な行動も、まだまだたくさんある。(議論の余地はあるかもしれないが、Rehtaeh Parsons の事件でとりわけ悲劇的なのは、数十年前には「レイプされる」こと自体が恥とされていたと私が確信しているという側面だ。)

Google Glass が前兆を見せているのは、そのような監視が (1) 対象者からは手を出せない状態で強いられ、(2) しかも一般市民の手によって実行される、そういう未来だ。私の考え方に照らせば、法的執行力を持つ政府機関がその種のデータを手にしているという現状は、より大きな、全く別の問題だ。実際、政府機関 監視することが広く行き渡れば、権力の濫用がなされているかどうかの判断材料として役に立つ。

けれども、それを一般大衆の手に渡すことにおける問題は、あからさまに言ってしまえば、一般大衆の中には少数だがいやな連中が確かにいるという事実だ。テクノロジーの適切な使用法について私たちが育ててきた規範は、必ず 破られる運命にある。人々が「盗撮される」ことについて私たちが現在持っている規範も、それが誰でもその被害者になり得るという現実に追い付くまでにはまだ長い時間がかかるだろう。

では、私たちの文化的および法律的環境が支配を及ぼせないのならば、いったい私たちはどこへ向かうのだろうか? 一つの可能性は、私たちが間違ったことを言ったり悪い人々とつき合ったりしないように政府が監視の目を光らせるという未来だ。私たちがプライベートな活動においても常時自らを律していなければ公共の場で恥をかかされる、そんな未来だ。そこにおける問題は、どの一線を越えれば罪になるのかの境界線が常に変化することだ。悪い人とは、悪い発言とは、恥ずべき行為とは、それらの定義は十年後には今とは大きく違ったものとなっているだろう。ただ、私たちのデータはおそらく十年よりも長く生き続けるのだ。

さあ賭けの時間だ -- ここまでの議論から、私がビデオカメラ全般に、とりわけ Google Glass に、反対していると受け取られたかもしれないが、決してそうではない。価格が馬鹿げたほど高額のものでなかったならば私も非公開の Glass ベータ版に参加していただろうし、2014 年にどんな形で登場したとしてもまず間違いなく私はいの一番に飛び付いて使い始めることだろう。人々の大多数が Glass 風のデバイスを身に着けるようになればどんなことが起こるのか、私は非常に心配しているけれども、法律的な保護に加えて、私たちが誰を「悪い人」と見なすかに関する文化がもっと積極的に発展することにより、きっと解決をみることができるだろうと思っている。

とは言うものの、この分野がどのような方向に進むのかについて、ここで議論してきた文化的考察と、私たちが過去にスマートフォン、GPS、ウェブカメラなどのテクノロジーに対してどのように対応してきたかの経験を踏まえて、いくつかの予測を述べることはできる。

  1. スマートウォッチは、Google Glass よりも早い時期に世の中の標準となるだろう。私たちは既にハンドヘルド機のスクリーンに馴染んでいるし、テキストメッセージや通知の文章が手首の上で読めるのを歓迎する人が多いことに疑問の余地はない。疑問の余地があるとすれば、それは私たちの文化的規範がスマートウォッチを受け入れられるものへと変化するかどうかという点だ。私は、その変化はきっと起こると思う。ただし、そのためにはたくさんの議論と、罵り合いと、人間関係のアドバイスを書くコラムニストたちへの手紙が必要となるに違いない。言ってみれば、どんな状況で、どんな場所で、スマートウォッチを使うのが失礼と見なされるようになるのかを注意して見守るべきだし、そこのところが興味深いと言える。また、スマートウォッチが広く使われるようになれば、公然とスマートウォッチを使うのが社会的に受け入れられないような状況と場所が、次第に広がって行くことになるのかもしれない。

  2. Google Glass は、いずれはその次に来るものとなるだろうが、今はまだその時代が来ていない。例えてみれば、2013 年における Newton のようなものだ。SF小説の中ではもう何十年も前からヘッドアップディスプレイが使われてきたし、ものを観たり読んだりする人々の一部は(ここでもやはり私はその一員だと自認しているが)「こいつは ほんとにクールだ」という反応を示している。ただ問題は、Google Glass があまりにも多くの社会的規範を押し広げていること、おそらく限界点を越えて押し広げてしまっていることだ。最初に登場する第一世代の Glass は誰が見ても一目でそれと分かるものとなるが、将来のモデルでは Glass がもっと目立たないものとなり、まさにあのいやらしい盗撮用のペンに より近い テクノロジーとなるだろう。その反対の向きには進まないだろう。私は不本意ながら、腕時計やヘッドウェアに装備されたビデオカメラはその種のデバイスの普及を促進こそすれ遅らせる働きはしないだろうと思う。けれどもその一方で、そのようなビデオカメラがいつでも音もなく私たちに付き従い、寝室やプライベートな場所も例外でない(しかも瞬時に情報を外の世界へ発信できる)という独特の機能は、従来スマートフォンでは考えられなかった方向へいやらしさの定義を拡張して行くのかもしれない。

  3. これら二つのテクノロジーの双方で未解決の問題は、制御の仕組みだ。公共の場で携帯電話で短時間の会話をするのは既に社会的に受け入れられているけれども、同じ場所で Siri を使ったり口述筆記をしたりするのは一般的にまだ礼儀に適ったこととは見なされていない。けれども Google Glass を制御する主たる方法は音声による口述だ。スマートウォッチでも、おそらく複雑なことをするには口述が不可欠となるだろう。(ユーザーインターフェイスの大革新が起きて 2 インチ平方の画面を使いこなせるようになれば話は別だが。)私が思うに、スマートデバイスの音声による制御は近い将来今より遥かに一般的なものとなって、公衆の中での行動に新しい規範を生み出すことになるだろう。Amtrak の列車に Quiet Car (乗客が音を立てない決まりの車両) があるように、カフェやレストランに "Quiet" 指定の店ができてもおかしくない。

  4. 私が Apple に圧倒的力をふるってもらいたいと期待しているのは、これらを初期の新し物好きの人たちのものの段階から世の中の主流へと押し出すところだ。Apple ならば、腕時計を通して他の Apple デバイスとやり取りするための、(一般的基準で) 使いやすい、(ギークの基準で) 力不足の、(あなたの両親の基準で) シンプルな、やり方を思い付くという離れ業をきっとやり遂げることができるだろう。だからと言って Apple が直ちにスマートウォッチ競争に「勝利する」だろうということにはならないが、スマートウォッチを「単なるギークのおもちゃ」から「空港の中でみんなが身に着けているもの」へと移行させるためには Apple がそこに関与することが必要で、Apple の関与があって こそ それが実現し得るのではないだろうか。

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FunBITS: iOS 用 Badland

  文: Josh Centers: [email protected], @jcenters
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

毎年、私はどのアプリが Apple Design Awards (Apple グッドデザイン賞) を受賞するのかを楽しみにしている。素晴らしい珠玉を私が見逃していても、賞のお陰で注目することができるからだ。そして、今年の受賞作品もやはりそういうものであって、2013 年 3 月にこのアプリがデビューした際残念なことに私は全く気付かなかった。けれども賞のお陰で目を向けることのできたこのアプリ、それが Frogmind のゲーム、 Badland だ。通常価格は $3.99 だが、この記事の執筆時点で $1.99 のセール価格となっており、App Store から入手できて iPhone でも iPad でも動く。

Badland は、基本レベルにおいては、エンドレスランナーだ。このジャンルのゲームは iPhone により人気を得た。つまり、あなたがコントロールするのはどこまでも走り続けるキャラクターで、ジャンプしたり、時には銃を発射したりする以外、常に走っている。iPhone に内在する制約から生まれたジャンルではあるが、Badland はその概念を全く新たなレベルへと引き上げている。

このゲームは、暗いけれども素晴らしく美しい。影を多用する一方で、鮮やかな、しかし陰気な色調でコントラストを付ける。見た目は、 World of Goo の暗い世界や、あるいは Tim Burton の映画のような印象だ。あなたがコントロールするものは、そう、何と言ってよいのかよく分からないが、とにかくこのゲームではすべての設定とすべての物語がプレイするあなたのイマジネーションに任されている。でも、この主人公をどう受け取るのも自由だが、とにかくこれは太ったハリネズミか、油まみれのトリブル[訳者注: Star Trek に登場する生命体]か何かのように見える。

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良い名前を思い付かないので単にキャラクターと呼ぶことにするが、このキャラクターは歩いたり、走ったり、さらには飛んだりさえもしない。ただ、ぎこちなくゆらゆらと浮かんで、あなたがスクリーン上で指を押さえ続けると前に進む。このゲームでは物理法則が大きな役割を果たす。もちろん重力も働くので、あなたの指がスクリーンから離れると、たちまちキャラクターは地面に墜落してびくとも動かなく (dead stop) なる。この場合、それは文字通り dead であって、レベル開始の際にキャラクターが油っぽいパイプから吐き出されるやいなやスクリーンは右へスクロールを始め、あなたがそのスクロールについて行けなくなった瞬間、キャラクターは死んでしまう。

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エンドレスランナーの流儀通り、あなたは常に動き続け、障害物をかわし続けて、レベルの終わりまでたどり着かなければならない。このゲームには 50 のレベルがある。けれども、必要な動きはただ単に裂け目を飛び越えたりゾンビをショットガンで撃ったりとかいう単純なものではない。その代わりに、あなたはパズルを解かなければならない。レバーや、木の枝や、岩や、スチームパイプなどを、ぴったり正しいタイミングで押さなければ、時間内にそこを通過することができない。しかも、それらすべての動きを、飛んで来るのこぎりの刃や、とげや、跳ね回る岩などを避けながら実行しなければならない。

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いろいろなパワーアップがあるが、その中にはあなたを助けるものも、傷付けるものもある。あなたを極小サイズにするものや、極大サイズにするものや、ものの表面にしがみつく助けになるものもあり、すべてが何らかの意味でゲームプレイに重大な影響を与える。あなたが小さいときは、ごく狭いところを通り抜けることができるけれども、何かを押して行くには力が足りない。あなたが大きいときは、障害物を簡単に押しのけることができるけれども、動きは遅くなるし狭いところが通れなくなる。時にはパワーアップを取らずに進む方が有利なこともある。それを取ってしまえばレベルの次の部分が通過不可能になることもあるからだ。また、ある部分を通り抜けるためには大きいと同時に小さい必要があることもあり、そんな場合にはあなたのクローンを注意深く使い分けなければならない。

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レベルを通り抜ける間に、あなた自身のクローンを拾い上げることができ、どれだけ多くのクローンをレベルの終わりまで連れて行けたかに応じてスコアが決まる。けれども、それは言うほど簡単なことではなくて、ゲームの中に潜むさまざまのパズルや罠を大勢のクローンを引き連れて通過するのは難しく、時にはいくつかのクローンを犠牲にしなければ生き残れないこともある。時には、注意深くクローンをグループ分けしなければならない。パズルによっては、大きなキャラクターが何かをすることで隙間が開き、小さいキャラクターのみがそこを通れるということもある。

Badland はなかなか手ごわいゲームで、試行錯誤が必要となり、生き残るためには何度も繰り返してやり直さなければならないことが多い。達成は困難だが、だからといってイライラのあまり iPad を窓の外へ放り出したくなる衝動に駆られるようなことはない。個々のレベルの中には数多くのチェックポイントがあるので、最初はうまく行かなくても、素早くそのすぐ前のチェックポイントからやり直すことができ、毎度レベルの最初まで戻る必要はない。また、コントロールの反応性が良いので、あなたが感じるフラストレーションは純粋にあなた自身の失敗に対するもののみだ。実際、画面は暗くゲームプレイは難しいけれども、Badland をプレイしていると本当にリラックスした気分になれる。落ち着いたジャングル風の環境とサウンドがその効果を高めてくれる。たとえ、幸運なしにはジャングルを無事に通り抜けることができなかったとしても。

Badland にはマルチプレイヤーのコンポーネントもあって、最大 4 人までのプレイヤーに対応している。ただし、同じスクリーンでのプレイしかできない。つまり、ネットワーク経由のプレイには対応していない。マルチプレイヤーのゲームは一つのレベルを通り抜ける競争という形をとっていて、レベルの終点に生きてたどり着いた最初のプレイヤーが勝者となる。マルチプレイヤーのレベルに興味があってかなり器用な人ならば、一人で複数のキャラクターを操ることも可能だ。

たいていの iOS 用ゲームはコンソール用のゲームから余計なものを削ぎ落として作られているので、スクリーンの中にあまりにもたくさんのものがごちゃごちゃと詰め込まれてしまい、ほとんどコントロール不能に近いことが多い。さもなくば、どんなプラットフォームでも動作できる程度に非常にシンプルなゲームであるかのどちらかだ。けれども Badland は、デバイスに忠実であって iPhone と iPad のどちらでも全く同じ体験ができ、さらにはゲームの進行状況をやり取りできる完璧な iCloud 同期機能まで内蔵している。これほど完璧な同期を実現しているアプリは、あなたが思うほど多くないものだ。これをプレイしていて機能の限定された移植版だという印象を受けたことは一度もなく、最小公倍数志向の低俗なデザインに感じられたこともない。それでいて、ゲームとして非常にバランスが取れていて、気軽にプレイしたい人も、本格的なゲーマーも、どちらも楽しめる。iPhone や iPad で遊べる、豊かな、しかもユニークなゲーム体験を求めるあなたに、Badland はダウンロードしてみる価値が十分にあるだろう。

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TidBITS 監視リスト: 注目のアップデート、2013 年 6 月 24 日

  文: TidBITS Staff: [email protected]
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Mellel 3.2.1 -- Mellel 3.2 のリリース (2013 年 6 月 12 日) からまだ二週間も経っていないが、開発者の RedleX は Mellel 3.2.1 をリリースして Mac OS X 10.5 Leopard との互換性の問題を修正した。このワードプロセッサの今回のアップデートではまた、MathType における方程式のベースラインシフト自動調整への対応を復活させ、新規の書類に対するデフォルト言語の適用機能を以前より賢くしている。(RedleX からも Mac App Store からも新規購入 $39、無料アップデート、105 MB、リリースノート)

Mellel 3.2.1 へのコメントリンク:

Java for OS X 2013-004 および Java for Mac OS X 10.6 Update 16 -- Apple が、OS X 10.8 Mountain Lion および 10.7 Lion 用の Java for OS X 2013-004 と、Java for Mac OS X 10.6 Update 16 をリリースした。いずれも Java SE 6 を 1.6.0_51 にアップデートするが、ブラウザ内蔵の Java プラグインに対する挙動が異なる。10.6 Snow Leopard 用のアップデートではプラグインがサイトごとに制御できるようになるが、Lion および Mountain Lion 用のアップデートでは Apple が提供した Java プラグインがすべて削除され、必要な人は Oracle のプラグインをダウンロードするようにという指示が出るようになる。Apple のセキュリティページによれば、これらのアップデートでは Java サンドボックス外の任意のコードが実行される可能性があったいくつかの重大な脆弱性や、その他 33 件の脆弱性に対処が施されたという。これらのアップデートは App Store アプリやソフトウェア・アップデートを経由しても、直接のダウンロードでも入手でき、Apple はインストールの前にウェブブラウザと Java アプリケーションを終了すべきだと念押ししている。Mac 上の Java について詳しくは 2013 年 5 月 2 日の記事“FlippedBITS: Java、JavaScript とあなた”を参照。(無料、2013-004 は 64.01 MB、Update 16 は 69.48 MB)

Java for OS X 2013-004 および Java for Mac OS X 10.6 Update 16 へのコメントリンク:

TweetDeck 3.0.2 -- Twitter がTweetDeck 3.0.2 をリリースして、インターフェイスに重要なデザイン変更を施した。従来一番上に出ていたコントロールに代わって左側にアイコンサイドバーが新設され、新規 tweet 作成と検索のための二つのボタンと、各カラムごとの一連のボタン、それから一番下には三つのボタンがあってそれぞれアイコンをテキストに拡張、リスト表示を開く、設定画面にアクセス、という働きをする。サイドバーアイコンをドラッグすることでカラムの並べ替えがようやく可能になり、カラムアイコンをクリックすればそのカラムにフォーカスが移ってメインのウィンドウを必要に応じてスクロールするようになった。近い将来さらなるインターフェイス改訂も予定されているが、まだ Mac App Store には登場していない。次のバージョンが登場した際には、グラブハンドルをドラッグしてカラムを並べ替えることも可能になり、表示されているカラムが三つ以下の場合にはカラムアイコンをクリックすればカラムが左端に来るようになり、再度カラムアイコンをクリックすればそのカラムが一番上までスクロールするようになるはずだ。(無料、1.4 MB、 リリースノート)

TweetDeck 3.0.2 へのコメントリンク:

Hazel 3.1.1 -- Noodlesoft が Hazel 3.1 をリリースして、このファイルクリーンアップおよび処理用ユーティリティに多数の変更を施した。新機能の主なものとしては、マッチしたファイルの FTP、SFTP、WebDAV 経由のアップロードへの対応、PDF および特定のタイプのテキストファイルのコンテンツからパターンを使ってマッチさせ抽出できる機能、テキスト内の日付にマッチさせることのできるカスタマイズ可能な日付トークン、あとで参照して使うためのルール記述保存、既存のフォルダ構造の上へコピーするオプション、既存のファイルに一切上書きしないオプション、などがある。また、ユーザーインターフェイスにも多数の変更があって、Hazel が以前より使いやすくなったはずだ。内部の動作に関しては、Hazel 3.1 において最適化が施されてファイル処理の際に不要な繰り返しパスを使う回数が減り、重複したファイルやサイズの大き過ぎるファイルを削除する前に遅延時間が追加され、メタデータ処理が改善されてパフォーマンスが向上したはずだ。さらに、さまざまなバグも修正された。修正点の大多数はかなり個別的なものだが、Noodlesoft は リリースノートを「甘くてたっぷりの修正を施した」と結んでいる。[訳者注: "honey bunch" =「恋人」という駄洒落です。]その後すぐリリースされたバージョン 3.1.1 では、クラッシュ 2 件を含むいろいろのバグが修正された。(新規購入 $28、無料アップデート、7.5 MB)

Hazel 3.1.1 へのコメントリンク:


ExtraBITS、2013 年 6 月 24 日

  文: TidBITS Staff: [email protected]
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

今週の ExtraBITS では、Marco Arment が App Store の "Top" リストの廃止を要望し、Computer Desktop Encyclopedia がすべての人に対して無料で公開され、来たるべき新型 Mac Pro について音楽家が評価を述べ、AT&T の顧客も iOS 6 で緊急警報の受信ができるようになり、iPhone 5 がようやく Virgin Mobile で使えるようになる。待ちに待ったものといえば HBO GO がとうとう Apple TV に登場し、そのために必要であったことがらを The Verge が物語る。さて、新型 MacBook Air でバッテリ寿命が長くなるのを多くの Mac ユーザーが楽しみにしているけれども、Wi-Fi の問題にがっかりしている人たちもいる。最後にもう一つ、Tech Night Owl Live ポッドキャストに Adam Engst が出演して新型 MacBook Air やその他の WWDC ニュースを語る。

より良いコンピュータ百科事典? -- New York Times の David Pogue が、Wikipedia に人気が集まった結果としてコーポレートライセンスを失ったオンラインのコンピュータ用語百科事典 Computer Desktop Encyclopedia について書いている。それに応えて、創設者の Alan Freedman が今回、彼の作った百科事典を computerlanguage.com において無料で利用できるようにした。コンピュータ用語を調べたいときには、ぜひお試しあれ。Wikipedia では時々ひどい文章が使われていることがあるけれども、こちらの百科事典の説明はしっかり書かれた文章で、内容もずっと分かりやすいことが多い。

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新型 MacBook Air のオーナーが Wi-Fi の問題に悩む -- Gizmodo のレポート記事によれば、新しい 2013 年型 MacBook Air のオーナーの多くが Wi-Fi 接続が失われて再起動しなければ接続できなくなる問題に苦情を述べているという。記事によればデスクの上に MacBook Air を置くと問題が悪化するらしく、これはおそらくハードウェアに問題があることを示唆しているのだろう。そういうわけで、バッテリ寿命の大幅な改善に惹かれて新型 MacBook Air を買おうかと思っている人も、この Wi-Fi 問題についてもう少し情報が判明するまで待った方がよいかもしれない。

コメントリンク: 13870

HBO の Apple TV に至る長い道のり -- The Verge の記事に、HBO がコンテンツを Apple TV に届かせるために越えなければならなかった障壁について、読み応えある物語が載った。一つは技術的な障壁で、HBO の全ライブラリを効率的にエンコードする困難や、新たにソフトウェアを書かなければならない困難があったが、Seattle に新しく設置された HBO 開発センターのお陰で見事に克服された。もう一つは政治的な障壁で、多くのケーブルテレビ会社が HBO のオンライン配布やセットトップボックスに対し拒否反応を示していた。

コメントリンク: 13871

iPhone 5、Virgin Mobile を目指す -- プリペイドの携帯電話を使っている人に朗報だ! iPhone 5 が、2013 年 6 月 28 日からようやく Virgin Mobile でも使えるようになる。Sprint ネットワークで運営される Virgin Mobile は、16 GB の iPhone 5 を RadioShack やその他の提携小売店において $549.99 の助成金なし価格で販売する。この iPhone 5 は、Virgin Mobile の Beyond Talk プランで使え、最も安いものは $35 で 300 分間の通話と無制限のテキストメッセージ、無制限のデータ通信(ただしその月の使用量が 2.5 GB を超えると 256 Kbps かそれ以下に抑えられる)が付く。料金自動支払契約にすれば月額料金が $5 値引きされる。

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Adam Engst、Tech Night Owl Live で WWDC を語る -- Adam Engst がホストの Gene Steinberg と対談し、WWDC における発表について電光石火の素早さで語る。話題となるのは Apple のオペレーティングシステムにおけるローレベルの改善点、新型 MacBook Air のバッテリ寿命、iCloud Keychain のリリースにより 1Password はどうなるか、アプリはどのようにして iOS 6 と iOS 7 の双方に対応するのか、OS X Mavericks における Mac 互換性対応表、などだ。

コメントリンク: 13849

AT&T がようやく iOS 6 の緊急警報機能に対応 -- AT&T が iPhone 4S および 5 のオーナー向けにアップデートを出して、iOS 6 で導入された緊急警報機能に対応した。Verizon の顧客は 2012 年 9 月以来この機能が使えていた。この緊急警報は FCC の CMAS (Commercial Mobile Telephone Alerts) 構想の一部をなすもので、気象警報、児童誘拐事件を知らせる AMBER 警報、および Presidential Alert (全国規模の緊急通知) を含む。Presidential Alert 以外は設定でオフにすることもでき、いずれの警報もデータ量やメッセージ数の上限の計算には勘定されない。

コメントリンク: 13862

新型 Mac Pro はオーディオのプロにとって何を意味するか -- 音楽家であり発明家であり Create Digital Music に記事を寄稿する教師でもある Peter Kirn が、ミュージシャンやオーディオのプロにとって来たるべき Mac Pro がどのような影響を及ぼすかについて論じる文章を書いた。かなり長い読み物だが、その分野にいる人にとっては読んでおく価値があるだろう。彼が主に検討するのは新しい Mac Pro に内部的な拡張性が欠落している点に関することだ。PCI スロットがないことに落胆するプロたちも多いだろうが、Kirn は「スタジオで作り上げた素材を持ち出して旅先へ持って行きたければ、Thunderbolt アクセサリを引き抜いて、それをラップトップ機に繋いで使えばよい。これはどう見ても良いことではなかろうか」と言う。

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Marco Arment、App Store "Top" リストの廃止を求める -- Instapaper と The Magazine の創設者である Marco Arment が、App Store における "Top" リスト、Top Paid Apps、Top Free Apps、Top Grossing Apps の廃止を要望すると論じている。彼が述べる理由は、これらのリストはよく売れているアプリが上位に留まるのを援助する役にしか立っていないという点だ。なぜなら、これらのリストのみを使ってアプリを探す人たちが多いからだ。さらに彼は、結果的にこれらのリストは安直な、底の浅いアプリを奨励することになっている上に、これらのリストを生成するシステム自体も簡単に恣意的操作を受けるものだとも述べた。App Store 内部における検索とアプリ発見のより良い手段を提供するとともに、もっと人手による管理を加える必要がある、と彼は訴える。

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