TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#1186/12-Aug-2013

現在学生である人も、生涯かけて学び続ける人も、今週は Take Control 電子ブックのどの本でも 50 パーセント引きで購入できる! Apple も値引きを提供していて、注目を浴びた二件の感電事故の原因となった可能性のある模造品の USB 電源アダプタを持参した顧客は正規品を割引価格で購入できる。一方、Apple は米国司法省が電子ブック価格協定訴訟で示した厳しい「是正案」に直面しており、政府側がなぜこれほど行き過ぎた反応を示しているのかを Adam Engst が解説する。さて、もう 20 年以上も前に Apple Newton は盛大なファンファーレとともにデビューしたが、はたしてこれは傍目にそう見えるほどの大失敗であったのか? Michael Cohen がおもむろに彼の Newton MessagePad 2000 のスイッチを入れ、TidBITS アーカイブを掘り返しつつ記憶の小径を辿る。Jeff Carlson の "Take Control of Your Digital Photos" を読み続けて下さっている方々には、今週の章で写真をバックアップしアーカイブする方法を検討する。あなたのハードディスク上にあるデータの中で、それらの写真こそ最も重要なものかもしれないからだ。今週号の FunBITS 記事では、Chris Armstrong が革新的なアプリ Audiobus を紹介し、これを使って iPad を素晴らしい音楽のパワーハウスへと変貌させる方法を語る。今週注目すべきソフトウェアリリースは Skype 6.7 と Downcast 1.0.1 だ。

記事:

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Take Control の新学期セールでオール 50% 引き

  文: Adam C. Engst: ace@tidbits.com, @adamengst
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

ティーンエイジャーであるうちの息子は認めたがらないが、8 月に入り、私たちは否応なしに新学期のことを考えている。学ぶことは生涯かけて続けるものだと思っているあなたのために、私たちは新たなスキルを身に付けるのがほんの少し楽にできるようにと、こんな企画をしてみた。2013 年 8 月 15 日まで限定で、私たちの電子ブックの中のどの本も、何冊でも、定価の 50 パーセント引きの価格であなたの Take Control ライブラリに加えて頂ける。すべての本は DRM フリーで、PDF、EPUB、Mobipocket (Kindle) の各フォーマットで入手できるので、いつでも、どこでも、どんなデバイスの上でも読める。[訳者注: 上記の日付は米国太平洋夏時間ですが、翻訳作業の都合上、この記事をお届けできるのはセール期間の終了後になってしまうかもしれません。どうかご了承下さい。]

皆さんがすべての本を初めから終わりまで読み通して下さるとは思っていない。(もちろんそうして下されば大変嬉しいことだとは思うけれども。)その代わりと言っては何だが、個々の本に Quick Start セクションが付いていて、そこを見るだけで目次よりは少し詳しい内容が分かり、知りたいことが書いてあるセクションへ瞬時にジャンプもできるようになっている。

あなたがパスワードを決める際にも、分別あるバックアップ戦略を設定する際にも、iPad を使おうという際にも、紙の書類を減らそうとする際にも、あるいはついに望みが叶ってあなた自身の本を iBooks Author か Scrivener を使って執筆しようという際にも、私たちの本のどれかがお役に立つだろう。また、Mountain Lion (あるいは過去十年間の旧バージョンの Mac OS X)、iCloud、GarageBand、iTunes、Mail、Messages、Safari、CrashPlan、DEVONthink、Dropbox、LaunchBar、PDFpen、それに TextExpander についても、それぞれを解説した電子ブックがある。

わが熟練の著者たちの記した本から、あなたはどんなことが学べるだろうか? いくつか主だったことがらを列挙してみよう:

そういうわけで、あなたが今までに読みたいと思ったことのあるタイトルや、今後役に立つかもしれないと思ったタイトルを、このセールを機会に、一挙に全部 あなたの Take Control 蔵書に加えてみてはいかがだろうか!

皆さんのサポートに、また長年にわたって寄せて下さった数多くの有益な質問や心優しいコメントに、感謝します。そしてどうか、お願いですから、お友達や同僚の方々に、このセールについて言葉を広めて下さい!

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Apple の開発者向けサービスがオンラインに復旧

  文: Josh Centers: josh@tidbits.com, @jcenters
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Apple は開発者たちに電子メールを送り、一ヵ月近くにわたって機能停止していた同社の開発者向けサービスがすべて復旧したと発表した。不便を生じさせたことへの埋め合わせとして、Apple はすべての開発者購読を一ヵ月間無料で延長する。Apple が Developer Center をオフラインにしたのは、セキュリティ研究者 Ibrahim Balic が購読者の個人情報にアクセスする手段を公開してから間もなくのこと(2013 年 7 月 22 日の記事“Apple Developer Center の閉鎖は研究者が引き起こしたものか”参照)であったが、その二つの事象の間に関係があると同社が公に述べたことはない。完全復旧以前、Apple は復旧状況ページをリリースしてどのシステムがオンラインになっているかを開発者たちがチェックできるようにしていた。(2013 年 7 月 25 日の記事“Apple、Developer Center システム復旧状況ページを開く”参照。)

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Apple、サードパーティの USB 電源アダプタを回収中

  文: Josh Centers: josh@tidbits.com, @jcenters
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

2013 年 8 月 16 日から 2013 年 10 月 18 日まで、Apple は iPhone、iPad、および iPod 用のサードパーティ製 USB 電源アダプタを Apple 直営店および正規サービスプロバイダの店頭で回収しリサイクルする。また、Apple はそのサードパーティ製アダプタに代わる通常価格 $19 以上の Apple 製アダプタを $10 (あるいは他の国ではそれと同等の価格) の特別価格で販売する。ただし、特別価格で購入するにはサードパーティ製品を回収に出し、かつそのアダプタに対応するデバイスを持参しなければならず、また Apple はデバイス一台につき一個ずつのアダプタしか特別価格で販売しない。Apple のウェブサイトには公式の Apple 製アダプタを見分ける方法を実例で示したページもある。

この下取りプログラムは、中国で悲惨な出来事があったという報道が二件あったことがきっかけとなった。23 歳の中国人の女性が、充電中の iPhone 5 で電話に出たとたんに感電して亡くなった 。もう一つの事件では、 30 歳の中国人の男性が充電中の iPhone 4 で感電し昏睡状態となった。いずれの事件でも、被害者は非正規品の電源アダプタを使っていた。

これらのニュースを聞くと不安になるが、米国内にいる読者は慌てる必要はない。米国においてはたったの 120 ボルトしか使われておらず、中国の電源の 220 ボルトとは違う。米国では一部の大型家電と業務用機器にのみ 220 ボルトの電源が使われている。個人的経験から言って、120 ボルトの電気ショックは確かに恐ろしいけれども、死亡事故に至ることは滅多にない。ただしもちろん、どんな電気ショックでも状況によっては命にかかわることもあり得るが。

もしもあなたが非正規品の USB 電源アダプタを持っていて、危険性があると思うなら、Apple Store まで出向いて $10 払い、Apple 製の電源アダプタに取り替えるのも意味あることだろう。

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"Take Control of Your Digital Photos" 第八章、入手可能に

  文: Adam C. Engst: ace@tidbits.com, @adamengst
  訳: M.Sugimoto <dfbia300@kcc.zaq.ne.jp>

どんな家族でもその最も貴重なものに、火事の際に最も懸命に救おうとするものに、家族の写真がある。写真は単に美しい絵以上のものだ。記憶であり、決して再生し得ない過去の記録だ。今日のディジタル世界では多くの写真のコピーを電子的にも紙に印刷してもいずれも作るのは大したことではないが、それと同時に、別の種類の脅威もある。家が火事になったりするよりもはるかによく起こりがちな原因、例えばハードドライブのクラッシュ、ラップトップの落下、住居侵入その他の結果として、一瞬のうちにすべての写真を失ってしまうこともある。逆説的ではあるが、保存形態から来る帰結として、ディジタル写真はプリント写真よりずっと容易に破壊されてしまう可能性がある。

幸い、写真は保護するのも同様に容易で、私たちのストリーム電子ブック、"Take Control of Your Digital Photos" の第八章、"写真をバックアップしアーカイブする" で、Jeff Carlson は写真を保護する最高の方法を説明し、データ全体の強固なバックアップ戦略から話を始める。そこが大事なことで、どのデータをとり出し、選択しようとすれば、必ずミスをしたり、何かを見落としたりするからだ。しかし写真は実際あなたのハードディスクの最も重要なデータであるかもしれないから、Jeff はまた写真ライブラリの別のバックアップを用意することを勧め、そして、実際の写真ファイルと、あなたが苦労してそこに割り当てたキーワードとその他のメタデータを、両方とも保護するための最高の方法についてもアドバイスする。最後に彼は将来に備えて写真のアーカイブの仕方についてのお薦めで章を締めくくる。将来を予測するのが不可能であることを踏まえて、Jeff が提案するテクニックは確実に機能するけれども継続的な保守を必要とするものだ。

第七章、"(スマート)アルバムに写真を整理する"、第六章、"キーワードとデータを割り当てる" 、第五章、"写真を見分ける"、第四章、"写真を取り込む最良のやり方"、第三章、"写真管理アプリを選択する"、第二章、"より賢く撮る" と同じように、この章も TidBITS 会員のみ無料で読むことができる。第一章、"写真管理のより賢い方法" は誰でも自由に読むことができ、Jeff がどこに向かっているかが分かる。本全体はそれが完成したら、PDF、EPUB、そしてMobipocket (Kindle) フォーマットで、誰でも購入可能できる。

書かれているのと同時進行でこの本を丸ごと TidBITS 会員向けに発行することは、私たちが TidBITS 会員に感謝の気持ちをあらわす手段の一つだ。私たちは、今までずっと無料で TidBITS を読んでこられた読者の皆さんが、今後も引き続き私たちが注意深く考え抜かれプロの手で書かれ編集された記事を毎週皆さんの手許にお届けできるよう、私たちを援助して下さるための動機付けにもなればと思っている。(より詳細は、2012 年 12 月 17 日の記事、"2013 年も TidBITS に皆さんの援助を: あなたも TidBITS 会員に" 参考。)

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電子本価格操作訴訟での DoJ の改善措置案は的外れ

  文: Adam C. Engst: ace@tidbits.com, @adamengst
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

Apple に対する United States Department of Justice (DoJ - 司法省) と 33 州によって起こされた電子本の価格操作の反トラスト訴訟にまつわる法ドラマは今も続いている。10 July 2013 に Judge Denise Cote は Apple に不利な意見書を出し次の様に述べている "この法廷は証拠の優越によって、Apple が Sherman Act の Section 1 に違反して取り引きを制限しようとしたと判定する" (全般的な議論については "Apple の電子ブック価格操作訴訟を解説" 10 July 2013 を参照)。

Judge Cote の意見書は次の様に結んだ "差し止めによる救済と損害命令を求める原告要求に関しては、日程に関する命令を追って出す。" この訴訟は現在も進行中であり、Apple は Cote の裁定を Second Circuit Court of Appeals (第二巡回控訴裁判所) に控訴するとは言っていたが、最終的な判決が出るまでは控訴が提起されることはまずないであろう。

DoJ による Proposed Final Judgment (最終判決案) (PDF) の条項には以下の様な文言が含まれている:

言うまでもないことだが、Apple はこれらの条項に対して激怒していて - 法的に言って - これらを次の様に称した "Apple のビジネスに対する過酷で懲罰的な侵入であり、如何なる不正行為の判定或いは潜在的危害の枠をも大きく外れている。" そして反論として自らの準備書面 (PDF) を提出した。

正直言って、Apple が怒るのも当然だと思う。同社の回答が正確に描写している様に、救済が求められている幾つもの損害は出版社との和解で既に解消されている。これらの和解では、出版社は Apple との代理店契約を再交渉することが求められ、五年間小売り MFN を適用することが出来なくなり、そして $166 million の賠償と共に二年間値下げすること無しで代理店契約を結ぶことを禁じている。

DoJ の案で、既に起こったことを考慮すれば、電子本業界にどの様な前向きの効果が出るのか予測するのは難しい。加えて、法廷が明確に認めているように、代理店契約及び MFN 条項と上限価格の両方とも一般的には何ら問題ではないので、Apple がこれらを使うのを禁ずるのは理屈に合わないように見える。事実、出版社の方も法廷に申し立てを提出し、DoJ の案は Apple に対し電子本を値引きする能力を制限することで、結果的に自分たちにも害を及ぼすと言っている。

Apple にとってもっと厄介なのは、そして DoJ 側では行き過ぎていると思えることでもあるのは、差し止め命令案は App Store での電子本小売りアプリに対してやり方を強制しようとしていて - 購買リンクを許可するのを求めている - Apple の電子本ビジネスの範囲を逸脱していることである。

ただ誤解しないで欲しい - 一人の出版者として、Apple が外部サイトへの購買リンクを (私自身の様な!) 許さない事実は嫌である。しかし、他のビジネスに関わる Apple の規則はこの訴訟での争点ではないし、そしてそれが違法だとも見なされていないので、DoJ が Apple の行動をここで規制しようとするのは理屈に合わないと思う。

最後に、Apple は、そもそも反トラスト訴訟での差し止めによる救済は違反の結果生じたものを元に戻し、そして拘束のない競争が起こり得る状況を作り出すことを目的としたもので、過去の逸脱を罰することを目的にはしていないと反論している。Apple の行動が違法であると判定されたのは 2009 と 2010 年の電子本市場での特異な状況においてのみであり、これらの条項案がどの様に今日の市場に有益な効果をもたらすのか予測するのは難しい。

私として最も気になるのは、DoJ が Apple を電子本小売業界での支配的な会社として見ており、従って Apple の力を削ごうとしている様に見えることである。しかし、これは明らかに見当違いである - Apple はこれまで支配的な電子本小売業者であったことは全くない。過去における同社の出版社との談合により、いずれは Apple をその様な地位に押し上げる効果はあったかもしれないが、現実は Apple は Amazon に遠く離された二次的役割を常に演じてきた。

ここが難しい所である。この裁判は、明快に Amazon が何をしてきたのか或いは来なかったのかについてでは なく 電子本市場における全般的な競争についてのものである。Apple は他の電子本小売業者と公平な場で競争することを絶対的に強要されるべきであるが、もし反トラスト法の目的が制約のない競争の回復であるならば、差し止めという汚名を Apple という企業に被せるのはこの目的に反する。私は、iBookstore の立ち上げにつながった当時の Apple の行動は反競争的であったという点でどちらかというと Judge Cote の意見に賛成だが、その後の出版社との示談の成立そしてその違法な協定の破棄に至った今となっては、DoJ の Proposed Final Judgment の中に消費者の利益になるものを見つけるのは困難である。

いずれにしても、Proposed Final Judgment は差し当たりのもので、案に過ぎない。損害に対する裁判は 9 August 2013 に始まり、そして最初の審問で Judge Cote はどちらとも取れる印象を与えた。一方で、彼女は同社の出版社との契約に起因する価格操作を是正するため Apple に不利な差し止め命令を出すつもりだと言い、そして Apple をその違法な行動に対して "深い反省の念を表明" することを拒否しているとして非難した。この差し止め命令で恐らく出版社は代理店モデル下で価格を設定することが二年間出来なくなり、そして将来の談合を排除するため契約再交渉が組まれるであろう。Apple もまた内部コンプライアンスプログラムを立ち上げるよう求められるであろう。他方で、彼女は Apple の App Store を規制する気は毛頭無いし、Apple を外部のコンプライアンス観察に晒す気にはならないとも語った。

TidBITS はこの裁判の一挙手一投足まで報ずることにはならないだろうが、最低最初のものを報じた程度にはやりたいと思う。結局のところ、これは茶番劇に過ぎない。今後、更なる判決が出たり重大な動きがあった場合は、再度掘り返す積もりだ。

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Newton: 史上最大の素晴らしき大失敗

  文: Michael E. Cohen: mcohen@tidbits.com, @lymond
  訳: M.Sugimoto <dfbia300@kcc.zaq.ne.jp>

1980 年代後半、Apple の CEO、John Sculley には Knowledge Navigator として描いたビジョンがあった。それは人工知能のマジックと未だ存在していない公的なネットワーク化されたデータベースを活用して、ニュースを届け、予約をスケジューリングし、質問に応え、そして例えば、あなたの髪に絹のような光沢と艶を与える 21 世紀のディジタルアシスタントだ。そのビジョンの最初の具体的成果は 1992 年 6 月の夏の Consumer Electronics Show で浮上した。Apple が1984 年の Mac のデビュー以来最初の新たな製品ラインである Newton を発表したのである。

Newton 発表に関する Adam Engst の最初の解説は 1992 年 6 月 8 日 の記事、"Apple Newtons I" と 1992 年 6 月 15 日の記事、"Apple Newtons II" を見ていただきたい。

一年を超える期待の後、最初の Newton デバイス、MessagePad 100 が 1993年、Boston の Macworld Expo にて発売された。その期待がどのようなものだったか、感触をつかむには、Mark H. Anbinder の 1993 年 6 月 14 日の記事、"Waiting for Newton" を見ていただきたい。また、私たちの匿名の予想屋、Pythaeus のいくつかの第一印象は 1993 年 8 月 2 日の記事、"Newton Notes" を調べていただきたい。

1 ポンド (0.45 kg) より少々軽量で、336 x 240 ピクセルの白黒の画面と 640 KB の RAM をもった MessagePad 100 はキーボードに代わるスタイラスを装備し、唯一の入力方法として手書き文字認識機能を提供していた。MessagePad はコンピューティングデバイスの新たなカテゴリー、パーソナルディジタルアシスタント (PDA) の先駆けとして、大変な注目を集めた。それを使って人々はノートをとり、コンタクトとカレンダー情報を記憶し、計算と変換を実行できた。またシリアルケーブルを経由して Mac と接続し、二つのデバイス間で情報を同期することさえできた。

Apple にとって Newton がどれほど重要なものだったか、いくら誇張しても足りない。賭け金はあまりにも巨額で、開発の苦痛から自ら命を絶った若いプログラマがいたくらいだった。利益幅は縮小しつつあり、プロジェクトに懐疑的なApple ベテランが多いのもやむを得なかった。若く野心的な面々が秘密の倉庫にカン詰めになった Newton プロジェクトは、その昔 Macintosh を生み出し、Apple II と Apple Lisa に代わる製品にまで仕上げた、あの海賊船をも思わせた。Sculley の遺産、人々の仕事、そして Apple そのものさえもが危機に瀕していた。Adam Engst が Newton の立ち上げ後の日々について記載したように"Newton は成功しなければ ならない"。Jobs が二度目に戻ってくる以前の日々、Newton は Apple の将来の唯一の希望だった。(1993 年 8 月 9 日の記事、"Newton Arrives" 参考)

しかしすべての困難な仕事、誇大広告、圧力にもかかわらず、MessagePad の最大の特長である手書き文字認識は、このテクノロジーの最初の製品化としては驚くほど成功を収めたが、完成にはほど遠く、とんでもない間違いさえしかねないものであった。実際、製品ラインの運命はまさにこの欠陥により決定づけられたようなものだ。Garry Trudeau は MessagePad 発売後すぐに発表したDoonesbury 新聞漫画でその未完成さを馬鹿にした。漫画は "egg freckles" なる表現をテクノロジーの嘲りの歴史に加えた。Simpsons も後に続き、ガキ大将が "Beat up Martin" と書くと "Eat up Martha" と表示される、という漫画を書いた。

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手書き文字認識の欠陥に加え、MessagePad は皮肉にもメッセージを送るにも受けるにも適当なものでなかった。MessagePad はキーキーガーガー音を出すダイヤルアップモデムがまだインターネットにアクセスする際の最も一般的な方法であり、それで電子メールをし、Wi-Fi テクノロジー(もちろん、そのデバイスはなく)がまだ研究所の中にあった、そのような世界にモデムなしで現れた。MessagePad からメッセージを送るには MessagePad と Mac を同期し、Mac からメッセージを送るか、または MessagePad に組み込まれた赤外線機能を使って近くの MessagePad にメッセージをビームで送るかだった。

MessagePad の投入から数ヶ月も経ないうちに、Sculley と Apple は袂を分かった。Sculley は最初の特許トロールの会社の一つ Spectrum との悲惨な関係に移っていた。(1993 年 10 月 25 日の記事、"Sculley's New Job" 参考)にもかかわらず Apple は Newton のハードウエアとソフトウエアを次の数年間にわたって改良し続けた。Newton の手書き文字認識機能はまもなく完成をみたが、悲しいかな、あまりにも少なすぎ、あまりにも遅すぎた。

私はオリジナルの MessagePad 100 を一度も所有したことはなかったが、友人のそれで遊んだ後その機能に興味をそそられて、何回か製品改良を繰り返した後のNewton の最後から二つ目のモデル、MessagePad 2000 を結局購入するに至った。コストは今日のローエンドの MacBook の一つとほぼ同じだった。私はそれに感銘も受け、また失望もした。

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私が感銘を受けた点は、手書き文字認識機能の改善、より大きくなって今やバックライトを備えたスクリーン、MessagePad 用に作られ始めた、かなり複雑なワープロを含むアプリ、そして実キーボードや PCMCIA カード用スロットといったハードウエアアドオンなどだった。私は出張中に電子メールアクセスを可能にするため、カードスロットにモデムカードを装着していた。

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失望した点はデバイスの基本的な制約と全体的な具合の悪さだった。スクリーンは大きくはなったがワープロでまともに仕事するにはまだ不十分、モデムはせいぜい取ってつけたようで信頼できず、電池寿命(4 本の単三バッテリーで動作した)は並以下、さらには Mac に情報を転送するのに必要となる大変な苦労 (Mac にケーブルを接続し、Newton Connection Kit ソフトウエアを起動し、たぶんもし風が南西に吹いていたなら Mac のシステムクラッシュを回避して、Newton から Mac へせっせとファイルを移動することもできた)、こうしたことがすべて積み重なれば、使っていても思ったほど楽しくないのが人情というものだろう。

にもかかわらず私は MessagePad でいくぶんかは仕事をこなした。例えば、Newton とキーボードだけを武器にして、受賞経験のあるフィルム編集者に公園で午後即興のインタビューを行ったりしたことがあった。そして私が会議に出席したりノートをとったりしなければならない時、Newton は私の常連になった。そのせいで私はいくらか軽いからかいの対象になったけれど。

Steve Jobs の Apple への復帰をもって、1997 年 5 月までに Newton プラットホームは独立の Apple の所有する子会社、Newton Inc. にスピンオフされた。9月までに Newton Inc. の閉鎖が発表されたとき、その運命は封印された。全体で Newton が日の目を見たのはたった 4 年間だけだった。ほとんど成熟する時間もなく。(あるいは、egg freckles を発症することさえなく。)(Newton の死に関する最初のニュース記事を見るには、1998 年 2 月 27 日の記事、"ニュートン、リンゴの木から落ちる" 参考)

そして "成功しなければならない" プロジェクトは失敗したばかりでなく、やる気満々の情け容赦ない Steve Jobs によって窒息死させられた。しかし、それでも Newton はたぶんもしかすると、史上最大の素晴らしき大失敗といえるのかも知れない。Jobs は 1980 年代の早い時期にタッチスクリーンテクノロジーを見ていたが、Knowledge Navigator を思いつき、フラットな可搬型のタッチスクリーンベースのコンピューティングと通信デバイスをビジネスの現実に仕上げたのは John Sculley だった。Newton は たいして野心的ではないものの、より成功を収めた PalmPilot の先駆けになった。Palm の仕事は Windows Mobile に受け継がれ、アイデアは最後に私たちが今日愛する iPhones と iPads に進化した。最終的に、Apple を救わなければならなかったこの製品は、Apple を世界で最も金持ちのテクノロジー会社へと導く製品へと繋がった。

だから、Adam Engst は Apple が成功するために Newton が必要だとした点で間違っていたかもしれないが(その時点で Apple がより必要としていたものはSteve Jobs の復帰だったということが分かった)、あの 1993 年の記事の次の文章の "Newton" を "iPhone" で置き換えてみよう。

そう再度言うが、Newton は成功しなければ ならない。Apple のためのみならず、私たちのためにも。他のどんなコンピュータ会社もこのような革新的な新たなテクノロジーをこんな大きな方法で導入するのに必要な気構えをみせたことがない。Apple と Newton がなかったら、私たちは DOS 互換のパームトップにこだわり、寸法の縮小を継続し、相変わらず馬鹿なままでいたことだろう。私は決して Apple がすべての答を握っているなどと言う人間ではないが、他の会社が古く陳腐化したテクノロジーを捨ててまで進歩を進め続けようという意志を見せるのを見たことがない。たとえそれが、一部の顧客の機嫌を損ねようとも。これは Steve Jobs の病的なまでの自己中心主義のように聞こえるかもしれないが、なされなければならないことがある。それらが世界を変えるから。それらがすべき正しいことだから。Appleは今ここで、Newton こそが正しいことであって、Newton こそが世界を変える、と世界を納得させなければならない。言うは易く、行うは難しだ。

Newton の唯一の過ちは時代のはるか先を行っていたことだった。それは 1990年代のテクノロジーがサポートし得たより以上のものを思い描いていたところが欠陥であった。今でさえ私たちはまだ追いつこうとしている。その完成された手書き文字認識は Mac OS X の滅多に宣伝されない Ink 機能に生きている。Mac OS X の Dock からアイコンを外へドラッグしたときに出る "パッと消える" 効果をご存じだろうか?あれは Newton から直接やってきたものだ。そしてNewton のタグベースの "soup" ファイルシステムですら OS X 10.9 Mavericksに復帰する Finder タギングの中に残像を残している。

Newton は失敗はしたが、その背後のコンセプトは世界を永遠に変えた。私たちは昔を振り返って懐かしく思い返したり、"egg freckles" や "Eat up Martha"の冗談を言ったりするけれども、Newton こそは私たちがいまだに完成を目指しつつあるテクノロジーの驚異であった。そしてあなたが Newton を忘れることをApple はおそらく望むだろうが、Apple は依然として "新たな" アイデアのため、それを回顧している。Apple は Newton を忘れられたテクノロジーの大陸に送りこんだ後も、今日に至るまで依然 古い登録商標を保持している。おそらくもしかしたら、Newton はまた立ち上がるのかもしれない。

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FunBITS: Audiobus と iPad 音楽アプリの楽しい世界

  文: Chris Armstrong: chris@cgarmstrong.me, @cgarmstrong
  訳: M.Sugimoto <dfbia300@kcc.zaq.ne.jp>

iPad のオーディオアプリで仕事しようとすると私はいらいらすることが多かった。わくわくさせてくれたり、驚くべき機能の音楽作製ソフトは iOS にあるのだが、iPad の音楽の世界をかじった誰もがそのもっとも重大な制約を感じているだろう。アプリが協調して機能できないのだ。iOS アプリは他のアプリと直接データを共有できないので、あなたがギターアプリでちょっと作ったリフを iOS の GarageBand プロジェクトに直接追加する簡単な方法がないと分かるとがっかりする。幸い iOS 用 Audiobus(App Store で $4.99) はオーディオアプリ間のこの問題を解決し、iPhone や iPad があなたの音楽ライフの一部になっているなら、欠くことのできないものになる。

Bus に飛び乗る -- Audiobus は多数の iOS オーディオアプリの間の接着剤の役割を果たす。入力、効果、そして出力を互いに接続する独自の方法を提供し、Audiobus はまるで回路の部品間を線でつなげるかのように、音楽家のためにアプリをチェーンで繋ぐ。Audiobus チェーンの各アプリはそれぞれ目的がある。オーディオを創るもの(入力)、効果を適用するもの、オーディオを受けるもの(出力)。アプリの中にはこれら機能の一つ以上の機能を実行するものもある。このアプリ間通信のアプローチは洗練され、かつ驚くほど強力だ。とくにiOS の sandbox 化されたアプリ環境では。

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上のスクリーンショットで私は入力として Animoog、出力として GarageBand をセットしたが、効果は追加していない。Animoog のシンセサイザーで演奏し、出力を直接 GarageBand で動く曲に録音できる。アプリからの波形をエクスポートすることやそれを電子メールで戻したり送ったりすることは不要で、格好の悪いiTunes の共有も不要で、Audiobus を使用して直接ライブデータの共有をするだけだ。入力、効果、あるいは出力を追加するには関係する plus ボタンをタップし、リストからアプリを選択するだけだ。Audiobus からアプリをはずすには、eject ボタンをタップする。

iOS の sandbox 機構は通常アプリ同士が直接通信できないようにしているので、アプリ開発者は自分のアプリに Audiobus のサポートを追加する必要がある。Audiobus が提供し、約束するものは開発者たちの注目を引き、アプリにサポートを追加するため、これまでに 1000 を超える開発者がサインナップしているし、すでに 100 以上のアプリが Audiobus サポートを完全に統合している。iPad オーディオコミュ二ティーにおける Audiobus 人気は実際 Apple さえもがAudiobus のサポートを GarageBand の iOS 版に追加したことで分かる。言うまでもないことだが、私がここで紹介する音楽アプリは皆 Audiobus をサポートしている。

Bus を駆動する -- Audiobus の基本を理解すると、つまり一つのアプリから別のアプリへオーディオを送ることだが、自然ともっと先まで進んで実験したくなる。効果を追加することは簡単にできる。手っ取り早い例を続ける。入力はAnimoog で、出力は GarageBand のままであるが、この二つの間に歪み効果を加えることができる。例えば、AmpKit を使って GarageBand によって録音された信号をザラザラに歪ませる。

これは簡単な例だが、いくつかオーディオアプリをチェーンに加えると、それらの間の切り替えは面倒なことになる。解決法は Audiobus Connection Panelだ。これは Audiobus 対応のアプリに見られる浮動型コントロールパネルでAudiobus 信号チェーンのアプリが容易に相互作用するための方法を提供する。デフォルトの Connection Panel で Audiobus アプリの間をすばやく切り替えることができるが、アプリの開発者はパネルに自身のアプリに対する制御を追加することもできる。

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もし Connection Panel がある別のコントロールを覆い隠してしまうようなら、トップのドット領域経由で Connection Panel を移動できるし、さらにドット領域をディスプレイの横にスワイプして完全に隠すことも容易にできる。Connection Panel を再度表示するには小さな銀色のタブが現れるまでディスプレイの端からスワイプインする。ちょうど Notification Center を表示するディスプレイのトップからスワイプダウンするように。小さな銀色のタブを引き出すと、Connection Panel がディスプレイに拡大する。

Connection Panel では、バックグラウンドの音楽アプリから来たオーディオに対する複雑な操作ができる。例えば、Bebot を使用していくつか強烈なシンセサイザサウンドを作製するときに、私はもうちょっとザラザラ感が欲しかった。Audiobus の出力として AmpKit を接続し、そして Bebot のシンセサイザトーンに適用する豊かな厚い歪みを構成した後、Bebot それ自身を演奏する間、AmpKitの効果をオンオフにトグルした。

Bus に乗っているアプリ -- Audiobus が人を引きつけてやまないものは、それがつなぐアプリである。Audiobus 開発チームと iOS コミュニティーの間のパートナーシップは素晴らしいもので、多くの開発者たちがアプリの Audiobus統合の容易さを賞賛している。Alex Mathieu は GlitchBreaks の開発者であるが、Audiobus に関し、"それは夢のような SDK でちゃんと動作し、それを開発した人たちはすばらしく協力的で、また対応が非常に早い。" と語った。

Audiobus Web サイトにある Audiobus-compatible iOS apps の掲載リストを調べ、あなた独自のひらめきを見つけて欲しい。探し易く、デバイス(iPhone、または iPad)別に、また用途(入力、効果、または出力)別に容易にフィルタリングできる。日付で分類することさえ可能だ。もし特別な種類のアプリを探しているなら、訪れるべきサイトだ。

しかしあなたが Audiobus、あるいは iOS 音楽アプリという世界にちょうど脚を踏みいれたばかりならば、ここに iPad 用の Audiobus 対応アプリを 7 つ挙げてみた。私が楽しんでいるもので、機能の簡単な概略もついている。それぞれを完全にレビューする余裕はないが、私のお気に入りのテクニックとトリックのいくつかを紹介しているので、ちょっといくつか簡単にダウンロードしてみてAudiobus 設定から多くを知ることができる。

GarageBand -- Apple の GarageBand ($4.99) はどんな Audiobus ユーザーにとっても必須のものだ。Mac アプリの移植版、GarageBand は 8 トラックまでの録音と編集を提供する高品質のディジタルオーディオワークステーションだ。インターフェイスは美しく同時に使いやすい、ちょうどあなたが Apple のデザインしたソフトウエア部品から期待するような仕上がりだ。

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GarageBand は Audiobus の出力アプリで、私が iOS 用の録音、トラック編集に選んでいるアプリだ。Audiobus 統合はすでにこのきらきらしたアプリを音楽アプリの変革者に変えてしまっている。GarageBand に組み込まれたソフトウエア楽器たちは印象的ではあるが、容易に録音、編集、ミックス可能な Audiobus 可能なアプリが増加したので、影の薄いものになってしまっている。あなた独自のユニークな曲を作ることがかつてなかったほど容易になった。

Animoog -- 私は本物の、あるいはソフトウエアベースのシンセサイザに関して多くを知っているというつもりはないが、iPad 用のポリフォニックシンセサイザアプリの Animoog ($19.99) をものすごく楽しんできた。著名な会社 Moog によって開発された Animoog は音楽家が無限とも思えるほどさまざまのサウンドを生成できるフル機能のツールだ。

Animoog は Audiobus の入力になる。私のお気に入りのやり方は演奏するキーとスケールを選ぶことから始まる。ちょっといじるだけで、私は Animoog をAudiobus の入力に、出力に GarageBand をセットする。次いで単純なメロディーやベースラインをいくつか、各々別トラックに演奏することでGarageBand に約 30 秒のループを作る。一度これらループが連続すると、パワフルなリードサウンド(私はプリセットされている WideSawLead を楽しんでいる)を選んでそのループでジャムセッションをするのがおもしろい。

Bebot -- また別のシンセサイザで、愉快で単純な Bebot ($1.99) はパーソナリティーの可愛いロボットをベースにしている。カスタマイズ可能なスケールが iPad のディスプレイにロボットに沿って現れ、あなたがタップする場所によって、ロボットの表現が変化し異なるサウンドを演奏する。Animoog と同じくBebot は Audiobus の入力である。

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Animoog と比べ Bebot を単にオモチャと見なす人もいるが、私はそうは思わない。スケールとキーを選ぶことは容易だし、シンセサイザコントロールのいくつかは極めて柔軟だ。実際、Dream Theater のキーボード奏者、Jordan Rudess はiPod touch で Bebot を演奏した。2009 年の昔に出した、グループのシングル、"A Rite of Passage" だ。もし Animoog の価格が高すぎるけれど、ぜひともシンセサイザサウンドを楽しみたいなら、Bebot はよい選択だ。Animoog はプロ用に設計されたものだが、Bebot はアマチュアの私たち用のものだ。とくにAudiobus と結合すれば、まだまだプロ用のサウンドを作る能力がある。

AmpKit -- Bebot で特におもしろいことの一つは格好いいシンセサイザサウンドと AmpKit(無料)の強力な歪みを結合することだ。Bebot を Audiobus に入力として接続し、AmpKit を効果として選ぶ。私は AmpKit のプリセットから始めることを推奨する。私のお気に入りは Dynamically Dirty と Nu Metal ValveKing だ。

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もし演奏中に他の人に印象つけたいなら、Bebot で Audiobus の Connection Panel をアクティブにし、さらなる可能性を求めて演奏するように、AmpKit の歪みをトグルすることができる。楽しみは限りなくサウンド品質は驚くべきものだ。Audiobus を通じて接続される Bebot と AmpKit は iPad で音楽を作る私のお気に入りの方法かもしれない。

Fingerlab の DM1 Drum Machine -- DM1 ($4.99) は 2011 年以来 App Store にある強力なドラムマシーンだが、私は最近まで試したことがなかった。私は Audiobus の入力として DM1 のサポートがあることを知ったとき、すぐにドラムビートを作り、GarageBand でそれをミックスし始めた。楽しさが何倍にもなった。もしあなたが GarageBand のドラムツールが限界だと感じ始め、もっと進んだ何かを探しているなら、DM1 があなたにおすすめだ。

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ドラミングに関して言えば私は専門家ではないが、何が好きかは分かっている。DM1 はその美しいインターフェイスと Audiobus のサポートで、私が望む種類のサウンドを作製するパワーを与えてくれる。真に激しいサウンドには AmpKit を通じ DM1 を走らせてみよう。きっと吹き飛ぶ。そして何と言っても、自然発火しないから安全が保証されている。

SessionBand -- ドラムからギターに移って、 SessionBand Acoustic($5.99) はコードベースのアコースティックギターループ生成アプリだ。ちょっと長くて言いにくいが、可能性は注目に値するものだ。曲にリズムセクションを作ることがこれほど容易だったことはない。各セクションのコードと長さを選ぶだけですむからだ。手持ちの曲をカバーしたいなら SessionBand なら容易だ。欲しいアコースティックギターサウンドがたった数タップで作れる。

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SessionBand のインターフェイスは最初はやや扱いにくいが、ヘルプアイコンをタップして SessionBand がどう動作するか学ぶことができる。私はたった数分でアコースティックギターのバックトラックを作ることができた。SessionBandを Audiobus の入力としてセットし、GarageBand に出力を録音し、ループを連続演奏させた。その後、私の仮想のバックバンドの限界を超えてギターを演奏してずいぶん楽しんだ。もしあなたがリズムギターのパートを作りたいがGarageBand の楽器は単純すぎると思うなら、SessionBand Acoustic はおすすめだ。 SessionBand の他の変形版 もピアノループやジャズループを作るのに役立つ。またより一般的な Original Edition もある。

MorphWiz -- Jordan Rudess(そう、2009 年に Bebot を使ったのと同じキーボード奏者)は MorphWiz ($9.99) を開発するのにも貢献した。Haken Continuum Fingerboard によって一部刺激を受けて生まれた革新的な MIDI 楽器で、Jordan が Dream Theater の舞台とスタジオで使っている。MorphWiz は別の Audiobus 入力アプリだが、単純な言葉で表現できないアプリだ。それがどんな実世界の楽器も模倣しようとしないからだ。にもかかわらず広大な範囲のサウンドを生み出すことができ、大きな表現の可能性を提供している。

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だまされてはいけない。MorphWiz は単に廉価な iOS アプリだからと言って、プロレベルの音楽を作れないということではない。Jordan は Dream Theater で演奏するときに舞台でこのアプリを使いさえする。もしあなたが Jordan のキーボードサウンドにとにかく慣れているならば、MorphWiz があなた向きかどうか、もう知っているかもしれない。そして MorphWiz が好きなら、Jordan が開発に貢献した他のアプリ もきっと調べてみたくなるに違いない。

Audiobus の道 -- もしあなたが iPad で音楽を始めたばかりで、基本を学びながら楽しみたいなら、Bebot、AmpKit、そして SessionBand を調べてみよう。一方すでに iPad で音楽を作ることにどっぷりとはまっており、表現力のあるツールが欲しいなら、Animoog、DM1、そして MorphWiz の方に目を向けてみよう。そしてもちろん GarageBand が必要だ。

これらアプリのすべては単独でも素晴らしいが、Audiobus 経由でそれらをつなげれば、あなたの iPad を各アプリを全部足した以上に素晴らしい音楽作成マシーンに変えることができる。そして私はここでたった 7 つのアプリをとりあげただけだが、あなたが試すことのできるもっとたくさんのアプリが出ている。創造の可能性は驚くべきものだ。

Audiobus 統合は大変重要になったので、私は Audiobus をサポートしていないiPad の音楽アプリに出会ったら、その説明を読むことさえしないし、ダウンロードにも躊躇する。私はめったにこのやり方で失敗したことはない。実際、この記事のために上の 7 つのアプリを選ぶまでに私が試してみた他の音楽制作アプリも、そのほとんどが既に Audiobus サポートを誇っていた。MorphWiz は最初はそうでなかった唯一のアプリだったが、私がこの記事を書いている間にアップデートを受けた。その主要な新機能は、あなたの想像通り、Audiobus 統合だった。

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TidBITS 監視リスト: 注目のアップデート、2013 年 8 月 12 日

  文: TidBITS Staff: editors@tidbits.com
  訳:Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Skype 6.7 -- Microsoft が Skype 6.7 をリリースした。このインターネット電話アプリの検索機能が、全面的に書き直されている。今回からツールバーの検索フィールドに用語を入力できるようになり、関連のある会話のリストが表示されるとともに、会話の全履歴の中を探索することもできるようになった。数多くの問題点も解消されたが、主なものとしては通話中にアプリケーションを閉じると Skype がハングした問題、キーボードショートカットで通話を切ることができなかった問題、Facebook 連絡先に重複したメッセージが送られた問題などがある。Mac OS X 10.7 Lion では一つ既知の問題点が残っていて、プロフィール写真やファイル転送アイコンをクリックした際に時折アプリがクラッシュすることがある。Skype の自動アップデート機能により新バージョンが届いているのでない人は、Skype > Check for Updates を選ぶか、あるいは Skype のウェブサイトからダウンロードすることもできる。(無料、40.6 MB、リリースノート)

Skype 6.7 へのコメントリンク:

Downcast 1.0.1 -- Downcastに初めて出た今回のアップデートには新機能やデザイン変更などはないが、最近リリースされたばかりのこの Mac 用ポッドキャッチャーで 22 件のバグやパフォーマンスの問題点が修正されている。(2013 年 8 月 3 日の記事“Downcast Mac にやってくるが、Instacast の洗練さに欠ける”参照。)修正されたバグの主なものとしては、iCloud に関係する起動時のクラッシュループ、ダウンロードに失敗する問題、保存済みポッドキャスト画像や、ダウンロードの削除に関係するクラッシュ、プレイリストの優先順位が無視される問題、同期を妨げていたいくつかのバグ、OPML 読み込みができなかった問題などがある。エピソード再生の際のロード時間や、起動にかかる時間、プレイリスト削除にかかる時間なども改善された。( Mac App Store から新規購入 $9.99、無料アップデート、3.6 MB、 リリースノート)

Downcast 1.0.1 へのコメントリンク:


ExtraBITS、2013 年 8 月 12 日

  文: TidBITS Staff: editors@tidbits.com
  訳:Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

今週は、Adam が Tech Night Owl ポッドキャストに出演して Apple 電子ブック判決について議論する。ブロガーの Shawn Blanc が "Delight Is in the Details" という電子ブックを自らリリースしたが、ものを創り出すすべての人にとって、これは読んでおくべき本だ。Obama 大統領は NSA の監視活動をあなたが喜んでほしいと思っており、これをより透明性の高いものとすると約束している。長年 Apple 顧問であった Ken Segall は、Apple がプロフェッショナル向けの市場をよりアクセスしやすいものにしようとしていると説明する。一方、大手の電子ブックベンダー各社は、自社のデバイスをよりアクセスしやすいものにするよう強制されることに対し反論する。アクセスしやすさに定評のある Instapaper サービスが、今回ベータ版のウェブアプリを出した。Amazon は長年にわたり反 Apple の立場だと言われてきたが、アナリストの Horace Dediu は両社が人々が思うよりもずっと多くの共通項を持つと語る。特許荒らしの会社 Lodsys は開発者に対して起こしていた訴訟を取り下げ、Xerox のコピー機が数字を取り違えてしまう謎が解決し、有名どころのテクノロジー会社がワシントンでのロビー活動にどの程度の資金を費やしているのかを調べてみる。

Adam Engst、Tech Night Owl で電子ブック価格操作訴訟の新情報を語る -- 米国司法省は、電子ブック価格操作訴訟で敗訴した Apple に対し、同省が望む「是正案」を持ち出してきた。Gene Steinberg がホストする今回の Tech Night Owl Live ポッドキャストで、Adam Engst は今回の裁判を手短かに解説するとともに、今回提起された是正案がなぜこれほど的外れなのかを分析する。

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Shawn Blanc の Delight Is in the Details -- ブロガーの Shawn Blanc が、初めての著作 "Delight Is in the Details" をリリースした。これは、聴衆を楽しませる作品を創り出すにはどうすべきかというテーマの本で、デザイナーにも、開発者にも、またライターにもそれは当てはまる。$29 のこのパッケージには、PDF、EPUB、および Mobipocket (Kindle) フォーマットの電子ブックと、オーディオブック版、それから MacStories の Federico Viticci、開発者の Marco Arment、デザイナーの Jory Raphael といったクリエイターの面々との個別の対談も含まれる。この本を読み、対談のいくつかを聞いてみて、私はこれが何らかの製品を創り出すすべての人に助言とひらめきをもたらす、素晴らしい情報源だと感じた。電子ブックのみを $20 で購入することも可能だが、あと $9 払って対談集も入手することを強くお勧めしたい。

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Obama 大統領は NSA の監視活動が良いものと思われるのを望む -- 2013 年 8 月 9 日、Obama 大統領は国家安全保障局 (NSA) の国内スパイ活動に関する懸念に対処する声明を発表したが、その活動を削減するとは一切約束しなかった。大統領は NSA が新たなウェブサイトを開いてその中でこのプログラムをもっと説明すると発表した。Obama は「監視活動に対する質問を問うのは正しいことだ」とする一方、これらのプログラムを世界に暴露した Eric Snowden は「愛国者」でないと述べた。これと平行して、報道によれば Obama はテクノロジー会社の重役たちと秘密裏に会談して監視プログラムについて議論したとされ、Apple の Tim Cook もそこに加わっていたという。

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いかに Apple はプロフェッショナル市場を変えつつあるか -- あなたはプロフェッショナルのユーザーで、Apple に見捨てられたと感じてはいないだろうか? 長年 Apple 顧問であった Ken Segall が、Apple は決してプロたちを置き去りにしているのではなく、プロフェッショナル向けのツールをより多くのユーザーたちからアクセスできるものに変えようとしているのだ、と論じる。Segall は、Steve Jobs が Apple のプロフェッショナル向け製品を小規模のニッチ市場であるにもかかわらず大量のリソースを必要とするという理由で廃止したいと考えたことがあると明かす。対照的にコンシューマ向け市場はもっと大規模で要求度も低いからだ。Segall は Apple が一部のプロたちを遠ざけることになるとは認めつつも、同社が市場を前進させ、より多くのユーザーにパワーを与えることに成功するに違いないと思っている。

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新デザインの Instapaper ウェブアプリが公開ベータ版に -- Betaworks による Instapaper 買収の最初の果実が、ようやく現われ始めた。この「あとで読む」サービスは、もともと Marco Arment が始めたものだ。今回 Betaworks がお披露目したのはこのサービスのために新たにデザインされたウェブサイトで、より新しい、現代的な見栄えとなった。同社はユーザーたちに対して、ぜひともこのウェブサイトを使ってみてフィードバックを寄せてほしいと勧めている。今回もまだ依然として欠けているのは、保存された記事をフォルダに分けて整理する機能だ。

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Ebook 電子ブックリーダーのベンダー各社、アクセシビリティ要件に反論 -- 電子ブックリーダーの最も大きなベンダー三社、Amazon と Kobo と Sony が、米国連邦通信委員会 (FCC) に対し、電子ブックリーダーを連邦アクセシビリティ法から恒久的適用除外とするよう嘆願している。連邦法は「高度なコミュニケーションサービス」が身体障害者にもフルにアクセスできるものであることを要求する。しかしながら、これら三社は電子ブックリーダーはこの範疇に入るべきものでないと主張する。テキストのみを表示するという目的でデザインされた、限定的なデバイスであるからだ。意見を述べたい人のために、FCC はこの嘆願についてのコメントを 2013 年 9 月 3 日まで受け付けている。

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なぜ Amazon は反 Apple でないか -- 多くのアナリストたちは Amazon と Apple を両対極として言い表わそうと努めてきたが、アナリストの Horace Dediu は両社には異なる点よりも似た点の方が多いと論じる。Dediu によれば両社はいずれもよく似たものを探し求めている。具体的には利便性、使い易さ、制御された環境といったものだ。Amazon のビジネスのやり方はその大部分が薄利で、利益はゼロかあるいはほとんどないといったものが多いが、Apple の iTunes もやはり利益率が低い。全く違っているのは Amazon には競合相手が少ないけれども Apple には数限りない競合相手がいると見られる点だろう。しかしながら、Dediu は Amazon の立場が一般に思われているよりも不安定なものだと述べている。

コメントリンク: 14004

特許荒らしの Lodsys、特許訴訟の一つを取り下げる -- Lodsys というのは iOS アプリの開発者を訴えることを商売にしてきた会社だが、今回 TMSOFT を相手にした訴訟を取り下げた。TMSOFT は、おそらくその iOS および Mac 用の White Noise アプリで最もよく知られている。この訴訟は確定力のある取り下げとなったので、Lodsys は今後二度と TMSOFT を特許侵害で訴えることができない。TMSOFT は Public Patent Foundation (PPF) の支援を受けたが、これは特許侵害訴訟において無料奉仕で小規模ビジネスの代理人となる団体だ。PPF の Dan Ravicher は $190,000 にも相当する彼の時間を捧げて TMSOFT を弁護するために働いたと言っているが、一方の Lodsys は訴訟を起こすための費用 $450 のみしか払う必要がなかった。和解条件の一部として、TMSOFT は今後特許に関し Lodsys を訴えないこと、すべての動議(弁護士費用に関する動議も含む)を確定力をもって取り下げること、それから、互いに合意できる慈善団体に寄付をすることに合意させられた。慈善団体には Lodsys も同じ額を寄付する。

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なぜ Xerox コピー機は数字を取り違えたか -- Economist の記事で、我らがスタッフの Glenn Fleishman が、一部の Xerox コピー機がコピーの中の数字を取り違えてしまう理由を発見している。結局その原因は JBIG2 圧縮アルゴリズムにあった。デフォルトでこの圧縮アルゴリズムは有効となっておらず、これが有効になっている場合にはコピー機が明確な警告を表示する。JBIG2 は超高圧縮率の圧縮形式の一つで、同様に見える領域を複製で置き換える。これは、遠隔地にある石油掘削基地など、極めて厳しいバンド幅制限のある企業でよく使われているが、絶対に必要でない限り有効にすべきでない。Xerox は、システム管理者がこの機能を完全に無効にできるようにするパッチを開発中だ。

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テクノロジー関係のロビー活動にかかる高い費用 -- テクノロジー関係の会社が政府へのロビー活動にどの程度の資金を費やしているのか、考えたことはないだろうか? The Washington Post が、まさにそれを示したグラフを掲載しており、これが非常に興味深い。Google は、かつてはワシントンでロビー活動をするのを好まなかったが、今では年間 1,600 万ドルも費やしている。他のどのテクノロジー会社と比べても断トツだ。Microsoft は、近年ロビー活動の予算を大幅にカットしているにもかかわらず、まだ大差の二位だ。ロビー活動に参加したのが 2009 年以後という新参者の Facebook は、近年劇的に支出を増やしつつある。Apple は緩やかに支出を増やしているけれども、順位はずっと下で年間 200 万ドルほど、Amazon よりもほんの少し低い位置にいる。

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