TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#1208/03-Feb-2014

今週号の TidBITS では、Apple が史上最高の売上高を記録したにもかかわらずまたもや Wall Street を落胆させ、Josh Centers がスパイ活動の情報について NSA 関係の最新の展開を紹介する。Jeff Carlson は長らく待ち望まれていた OmniOutliner 4 をじっくりと検討し、Josh は FunBITS 記事でがらりと立場を変えて iPhone と iPad 用の Oceanhorn をレビューする。Nintendo の Zelda ゲームの魔力を iPhone と iPad にエミュレートしようとするゲームだ。はたして業績不振に苦しむ Nintendo は、Oceanhorn のような新興企業に逃げ切られる前にその本来の魔力を取り戻すことができるのだろうか? 今週号ではまた "pre-book" という実験をスタートさせる。Michael Cohen が執筆中の電子ブック "Take Control of Pages" を、Leanpub 経由で販売しようというのだ。このような形での販売を試みる理由とこれが通常のストリーミング本とどう違うのかを Adam が説明するので、どうぞお読み頂きたい。今週注目すべきソフトウェアリリースは、OmniOutliner 4.0.1、ChronoSync 4.4.4、それに ChronoAgent 1.4.5 だ。

記事:

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Apple の記録となる Q1 2014 販売でも Wall Street を満足させられず

  文: Josh Centers: josh@tidbits.com, @jcenters, Michael E. Cohen: mcohen@tidbits.com, @lymond
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

Apple はその Q1 2014 会計期間に対して製品群のほぼ全てで予想値よりも高い利益を計上した。売上は $57.6 billion で、純利益は $13.1 billion (希薄化後一株当たり $14.50、新記録) となり、売上は前年同期比で 6% 増加した (前期の結果については "Apple Q4 2013 業績、再度減益となる" 28 October 2013 参照)。

前年同期比で、Apple が作る全ての機器で売り上げが増加したが、唯一の例外は iPod ラインで、これに驚く人は誰もいないと思うが、売上の減少は続いている (前年比で 52% の減少)。とは言っても、iPod も ある程度の お金を稼ぎだしている:売上でほぼ $1 billion である (馬鹿に出来ない額)。iPod の販売は、当然のことながら、iPhone の販売 (51 百万台が売れ、売上は $32.5 billion に近い) や iPad の販売 (26 百万台以上が売れ $11.4 billion を Apple の溢れ出している金庫へと導いた) に比べれば小さく見える。Mac の販売も四半期の現金収入に貢献し、5 百万台の各種の Mac が売れ、売上では $6.4 billion 近くになっている。そして iTunes と App Store の売上もまた増えている;前年対比で 19% の上昇で、Apple の四半期売上の内 $4.4 billion 近くを占める。

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Apple は、この四半期に株主に対して配当で $7.7 billion を返したにも拘らず、手許現金は微々たる $158.8 billion に達した (過去 6 四半期の間に支払われた配当は全部で $43 billion に達する)。Apple の手許現金の規模を何かに比べてみると、State of California の 2014-15 会計年度の支出は $106.7 billion に達すると見込まれている。配当は、一株当たり $3.03 が株主に対して February 2014 に支払われる。

Mac は遅々としてはいるが着実に、生き残りの PC 市場に食い込んでおり、CFO Peter Oppenheimer をして "我々のこれまでの最善の Mac 四半期の一つ" と言わせている。販売台数は前四半期より 6%、前年比で 19% 伸びたのに対して、全 PC の出荷は IDC によると全体で 10% 落ちているという。中国では、Mac の販売がとりわけ良く、Cook が "収縮市場" と呼んでいる PC 分野で 28% も増加した。事実、過去 31 四半期のうち 30 で Mac は市場シェアを増やしている。

結果として、前期の業績電話会見で "iPad Christmas" とした Tim Cook の予見は当たっていた ("Apple Q4 2013 業績、再度減益となる" 28 October 2013 参照)。iPad の販売は Q4 2013 に対して実に 85% も、そして前年同期比で 14% も増えた。 iPad の成長は海外で著しく、中国では前年比で二倍、そして Russia, Latin America, そして Middle East でも強さを示した。iPad は、米国のタブレット市場で 78% のシェアを守っている。

Oppenheimer は iPad に関する面白い話を披露した:NFL チームの殆ど全てがプレーブックとして iPad を使っているというのだ。NFL は Surface タブレットを使うという契約を Microsoft と結んでいる

一方で、今や Apple の代表製品となった iPhone も怠け者ではなかった。販売は、前年対比で 7%、前期比では 51% の伸びとなった。CEO Tim Cook は iPhone 5s は北米では iPhone 5c よりもずっと人気があったと語った。その理由はと聞かれ、Cook は "人々は本当に Touch ID に興味を示した" と語った。(或は、ただ単に毎度パスコードを入力するのを嫌がったのかもしれない。) しかしながら、Cook は、かなりの数の新しい iPhone 顧客が iPhone 5c を購入してくれており、これが Apple の目標でもあり、その販売は前年対比で iPhone 4S を上回っているとも付け加えた。

世界的にみると、強くそして時には輝かしい iPhone 販売にも拘わらず (例えば、日本では iPhone は 69% の市場シェアを持っている)、アナリストは、何故 Apple はもっと売ることが出来なかったのか知りたがった。Cook は非難の矛先を主として米国のキャリアに向けた。彼らは最近数か月の間、早期アップグレードを制限してきた。また、Oppenheimer は Apple がこの四半期の間、iPhone 5s の需要に追いつけなかったとも語った。

Apple Store に関して:Apple は未だ小売担当の経営陣を設けていないが (Burberry CEO Angela Ahrendts の雇用がこの四半期中に発表されたが、彼女がこの地位に正式に就くまでにはまだ数か月を要する)、その小売店舗は $7 billion に近い額を稼ぎ出した - 最高の四半期となった。現在では Apple Store は 420 店あり、平均で毎週 21,000 の人が訪れる。

Apple は、その製品こそが開発者たちが頼りにすべきものであると引き続き主張している:App Store の開設以来、Apple は開発者に $15 billion を超える額を支払った。顧客ロイヤルティはこのバラ色物語の一部で、iPhone は 90% の顧客ロイヤルティ点数と 96% の顧客満足度を誇っている。とはいえ、iPad は顧客満足度で 97% を記録して iPhone に僅差で勝利している。

教育市場でも Apple 物語は進行している:iBooks Author で作成された教科書は 4 ヶ国から今では 50 ヶ国で入手可となっており、そして米国では色々な学校区が大量の iPad を展開している。Apple は Texas の学校区だけで 750,000 の iPad を販売している。"Take Control of iBooks Author" の大量購入割引の話があれば勿論大歓迎である。

いつもの様に、Cook は次期製品の話をするよう迫られたが、いつもの様に、それは時間の無駄であった。しかし Cook は次の様には言った、"我々のやりたい事に関する争点は無い。課題はいつも我々のエネルギー全てを注ぐ価値のある限られたものに焦点を当てることである。"

Apple のこの様に好調な四半期にも拘わらず、Wall Street は、いつもの様に、失望し、Apple 株は時間外取引の場で 8% 以上値を下げた。現時点で、Wall Street やそのアナリスト達を満足させるために Apple が出来ることは恐らく何もないであろう。しかし、もし Tim Cook が Apple の顧客を満足させ続け、引き続き同社の Scrooge McDuck (ドナルドダックのおじさん) なみの金蔵を一杯にしておけるなら、Apple が近いうちに姿を消すことになるとは思えない。

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スパイ活動の情報に遅れずついて行こう 3: 新たな希望

  文: Josh Centers: josh@tidbits.com, @jcenters
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

数週間前、Obama 大統領は NSA (国家安全保障局) に対する多数のささやかな改革を発表した。(2014 年 1 月 17 日の記事“Obama が提案した NSA 改革案を採点する”参照。)NSA の大量監視活動に関する Edward Snowden による暴露に応えたものだ。けれどもそれらの改革は十分大きな意味を持つものだろうか? おそらくそうではないだろう。NSA のさまざまな活動に関する騒動は、ますます大きくなりつつあるからだ。

2014 年 1 月 22 日に、連邦議会が 2004 年に設置した行政機関 Privacy and Civil Liberties Oversight Board (PCLOB) が、アメリカ人の電話の通話メタデータを収集する NSA のプログラムについて手厳しい報告書を発表して、その活動は違法であり停止すべきであるとはっきり述べた。

その報告書には次のように記されている。「アメリカ合衆国に対する脅威に関して、この通話記録プログラムによりテロリズム対策の捜査の結果に具体的な違いが生まれたという事例を我々は一つも見つけることができなかった。その上、それまで知られていなかったテロリストの陰謀の発見ないしはテロリストの攻撃の阻止にこのプログラムが直接寄与した事例も我々は一つも知らない。」

NSA に降りかかっている火は米国政府内部からのみでなく、欧州連合 (EU) からの火もある。EU のある議会での喚問において、米国および英国における監視プログラムは両方とも違法と思われるという宣言がなされ、PCLOB と同様に直ちにプログラムを停止するようにという要求が述べられた。

さらに、最新の Snowden 書類も、データ収集が私たち国民を保護するためにあるという NSA の論拠を危うくしている。最近発表された書類には、 NSA と GHCQ (英国政府通信本部) とが「漏れやすい」iPhone アプリ、例えば Angry Birds などを標的としてさまざまの個人データ、例えば年齢、性別、住所、また一部のアプリでは性的嗜好といった詳細情報まで収集していたことが示されている。また別の書類には、NSA が 2009 年のコペンハーゲン気候サミットにおいて交渉を有利に進める目的でスパイ活動をしていたことも示され、NSA のスパイ活動が経済機能のためにも働いているという主張に真実味を加えている。

高まりつつある圧力に対処するため、Obama 政権は状況が爆発しないうちに少しだけ排気弁を開こうと試みている。例えば、同政権は Apple、Google、および Facebook などテクノロジー会社との間で協定を結び、これらの会社が国家安全保障上のリクエストについてより多くの情報を公開できるようにした。この協定はこれらの会社が政府に対して起こしていた訴訟を実質的に和解に導き、また Apple は国家安全保障と法律施行令に関する同社の公開書簡を直ちに新情報で更新 した。

この協定はプライバシー擁護者たちにとって正しい方向に向けた一歩かもしれないが、そこにはいくつか但し書きが伴う。これらの会社は依然として具体的な数字を発表することはできず、許されるのは曖昧な範囲のみであり、またたとえどれほど不当だと思ったとしてもリクエストを拒絶することはできない。さらに悪いことに、 この協定が適用されるのは既に定評あるコミュニケーションサービスのみであり、存在期間が二年未満のサービスには適用されない。つまり、Apple は国家安全保障リクエストについて開示することができるかもしれないが、Snapchat がそれをすることはできない。また、たとえ Microsoft が新しいチャットプラットフォームを明日リリースしたとしても、その情報が開示できるようになるのは二年後だ。

それだけではない。この協定は「顧客セレクタ」のみに適用されるものであって、PRISM などの大量データ収集に関することには一切関係ない。ある意味で、この協定は泥棒が番犬にステーキを投げてやるようなものだ。犬は満足するだろうが、依然として泥棒はあなたの家中を好きなようにかき回すことができる。

政権がテクノロジーの巨人たちをいくらなだめたとしても、諜報機関コミュニティーは議会において依然として苦境にある。2014 年 1 月 29 日に開かれた上院の公聴会で、Director of National Intelligence (国家情報長官) James Clapper は上院議員 Ron Wyden に厳しく追及され、米国の諜報機関が米国の市民の情報を検索したことがあるかについて 30 日以内に回答することを約束 させられた。また CIA 長官 John Brennan は Computer Fraud and Abuse Act (コンピュータ犯罪取締法) が彼の機関にも適用されるかの回答を一週間以内に、FBI 長官 James Comey は携帯電話の位置情報追跡の前に FBI の係官が立証責任を負う内容の説明を、それぞれ約束させられた。しかしながらその同じ公聴会で、Clapper は Snowden の暴露について報道したジャーナリストは犯罪の共犯であるとほのめかしたようにも見える 。最後にもう一つ、史上初めて NSA に、市民的自由の問題に関する助言を担当する プライバシー責任者が置かれた

これらすべての背後にいる内部告発者 Edward Snowden に関して言えば、 彼はノーベル平和賞の候補に指名された。もしも彼が受賞すれば、同じくノーベル賞を受賞した Barack Obama は彼を祝福するのだろうか? Snowden はドイツの Norddeutscher Rundfunk による長いインタビューの中で数多くの興味深い言明をした。けれどもここで思い出しておくべき重要な事実は、個々の具体的暴露が Snowden 自身の手によってなされたものでなく、彼がジャーナリストたちに提供した書類によるものであるということだ。つまり、どの事実を公開するかを選ぶ責任と、公開に先立ってその事実を検証する責任は、そのジャーナリストたちおよび彼らの出版社にあるということだ。

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"Take Control of Pages" Pre-book を Leanpub 上で実験

  文: Adam C. Engst: ace@tidbits.com, @adamengst
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

長年 "Take Control of Pages" を求める顧客からのリクエストをさばいてきた末にようやく Apple のワードプロセッサアプリ Pages に関する "pre-book" をお届け出来ることに興奮を覚える。この pre-book は、Mac 上の Pages 5 だけでなく現在の iOS 及び iCloud バージョンの Pages についての 100 頁を超える完全に編集済みのテキストを提供する。我々はこの pre-book を買った人にはアップデートを Leanpub サービスを通して頻繁にリリースする予定である;完成した電子本は通常通り Take Control サイトで入手可となり、そして今 $15 で購入してくれた人には無料のアップデートとなる。TidBITS 会員に対する 30% の割引も適用になる;Member Benefits ページに行き必要なリンクを辿って欲しい。

何故この新しいやり方? 過去に何回かやった様に章毎に何故ストリームしないのか? 説明しよう!

Pages の様なフル装備のワードプロセッサを読者が "take control する (使いこなす)" 手助けとなる本を作成するのは野心的なプロジェクトであり、我々の身のこなしの軽い Take Control クルーをもってしても原稿書き、編集、そして出版へと漕ぎつけるのに数か月は要するであろうし、それもソフトウェア自身がこの期間中に変更されないという条件下でである。しかし、Apple はこれまでも Pages 5 は 2014 年にかなりの機能強化が図られると言っており、更に Pages for iCloud は公式には未だベータのままである。この不確実さが "Take Control of Pages" を TidBITS でストリームするのに適さないものとし、更にもし Apple が Pages 5 を仕上げる迄待っていたら、我々が仕事を終える前に Pages 6 が出てきてしまうという話にすらなりかねない!

という訳で、著者の Michael E. Cohen と共に、我々はこの "pre-book" という手法を考え出した。目指すところは Pages 5 とその現行の iOS 及び iCloud バージョンに皆さんを誘うこと、しかもそれらの進化に合わせて。このプロジェクトのために、我々は Leanpub の友人たちと密に作業を進めている。何故ならば、Leanpub サービスは頻繁なアップデートのために設計されており、我々は数週間毎にアップデートすることを考えている。これらのアップデート全てが pre-book の所有者には無料であり、そして本の中でも簡単に見分けられる様にする積りである。

"pre-book" とは一体どんなものか? それは長い本の最初の塊で、全体の骨子の一部として注意深く構成され、そして二人の編集者によって技術的正確性から調子、明瞭さからコンマの配置まで熟読されたものである。"Take Control of Pages" pre-book を Leanpub から買うと、PDF, EPUB, そして Mobipocket バージョンでダウンロード出来る;これらは通常の Take Control タイトルとほぼ同じ様に見えるが、例外はこれらにアクセスしそしてアップデートを入手するのは Take Control Web サイトからではなく Leanpub からとなることである。全てのコンテンツが揃い、そして Apple の開発速度が落ちたと思えたら (2014 年の後半)、この電子本を通常の Take Control タイトルの様に出版する - 覚えておいて欲しいのは、これは pre-book の所有者には無料のアップデートとなる - そしてこれをあなたの Take Control ライブラリに追加出来る。

では、"Take Control of Pages" pre-book の中身は? 現時点では、"自分の機能を探し出す" やり方を採っていて、Pages のツールの場所を明らかにしそしてそれらの使い方についての基本的な助言を提供する:

以上のもの全てが現在 pre-book に入っている。我々の最終の本では変わっているかもしれないが、以下の章を将来付け加えることを計画している。

最初の数日間、Leanpub は目覚ましい働きを見せてくれ、そして "Take Control of Pages" はあっという間に Leanpub のベストセラーリストに顔を出した。とてもありがたいことである。この実験の次のステップは数週間のうちに始まるアップデートプロセスがどれ程滑らかに行くかを見ることである;フィードバックを寄せて欲しい! そして勿論、我々のリストに載っていないもので取り上げて欲しいものがあれば、知らせて欲しい。

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OmniOutliner 4、より洗練されたアウトライン操作

  文: Jeff Carlson: jeffc@tidbits.com, @jeffcarlson
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

文章を仕事としているのでない人たちにとっては、アウトライン用ソフトウェアについての記事などつまらないものに違いない。アウトラインを作るだけなら、フル機能のワードプロセッサを使っても、あるいはごく基本的なテキストエディタを使ってもできる。単なるテキストに過ぎないからだ。私も、急いでいるときなどは BBEdit や Evernote でアウトラインを手早く作ることもあるし、iPad 上の Drafts アプリで単純にタブやダッシュを使って階層レベルを切り分けただけのものを作ることもある。

ならば、アウトライン用アプリケーションを使うことに何の意味があるのだろうか? それは、もしもそれが良いものなら、アウトラインの作業が煩わしくなくなり、あなたが情報の整理そのものに集中できるようになるからだ。最初にアウトラインを築く際には、アプリケーションは邪魔にならないように控えており、後になってものごとを再配置する必要が出てきた際にも、見つかりにくいコマンドや過密なインターフェイスであなたをつまずかせたりしない。

The Omni Group の製品 OmniOutliner は、私の Mac が起動する際に自動的に起動するようにしてある数少ないアプリケーションの一つだ。私は自分がアウトライナーに取り付かれた人間だとは思わない。例えば私はアウトライナーを連続的 to-do リストとして使ったりしないし、資産目録や財務状況の管理のために使ったりもしない。(そういう目的に使うことも可能ではあるが。)けれども私が記事や本を執筆する際には、その骨組みを組み立て、計画的にかつ柔軟性をもって文章を書くことができる必要がある。だから、私のどのプロジェクトも、ほとんどすべてが一つのアウトラインから始まる。

2014 年 1 月にリリースされた OmniOutliner 4 は、メジャーなバージョン改訂までに長い期間を置いている。OmniOutliner 3 は 2005 年に初めて出荷された。(Apple が Mac を Intel プロセッサに切り替えたより前のことだ。)その後 7 年間に、何回か互換性アップデートが出た。2012 年の末に、Omni Group CEO の Ken Case が OmniOutliner 4 の公開ベータ版をちら見せして、ブログ記事の中で既に彼自身がこのバージョンに切り替えて自分の書類を任せていると述べた。

けれども人生には何かが起こる。いや正確に言えば、Apple には何かが起こる。Case が書いた最新進行状況報告によれば、iOS 7 において大幅にデザインが変更された結果として、同社は他のアプリ(つまり、iPhone 用 OmniFocus 2、iPad 用 OmniOutliner 2、iPad 用 OmniPlan 2)の更新と調整に作業の重点を置かざるを得なくなった。

それら iOS のための奮闘が今は一段落したので、Omni はようやく Mac 用の OmniOutliner 4 を仕上げることができた。現在、Omni から直接にも Mac App Store からも入手でき、価格は Standard 版が $49.99、Pro 版が $99.99 だ。アップグレード価格はそれぞれ $24.99 と $49.99 で、2011 年 1 月 6 日以降に OmniOutliner 3 を購入した人は無料でアップデートできる。

アウトライナーの利点 -- Microsoft Word などいくつかのワードプロセッサ(例えば Apple の Pages 4.3 にはあるが、現行の Pages 5.1 にはない)にはアウトライン作成用のツールあるいは独立のアウトライン表示が含まれている。けれどもそのようなものを使う場合、やはり単語を次々と打ち込む作業が主であって、アウトライン作成用の機能はあくまでも二次的なものだ。その点 OmniOutliner はアウトラインのためのみにデザインされており、すべてがキーボードからできる(まさしく私の好みに一致する)ことに焦点が当てられている。

OmniOutliner でアウトラインを構築する際には、Return キーを押せば新規の行が作られ、Tab を押せばその行のレベルが変わって現在のレベルの「子」とされる。現在の行の 上に 新規の行を作りたい場合は、Shift を押しながら Return を押す。通常アウトラインを構築している間はアイデアを次々と膨らませたいものなので、OmniOutliner は行のテキストのすぐ下に Note フィールドを提供する。Command-' を押せばこのノート用フィールドが有効になる。

しかしながら、私はノートを独立に離して表示させる方が好ましいことに気付いた。そこで便利に使えるのが、カラムを作成する OmniOutliner の機能だ。カラムを使うことでアウトライナーが言葉のスプレッドシートに変身するけれども、Microsoft Excel や Apple の Numbers など伝統的なスプレッドシートにあるような番号主体のやり方に苦しめられることはない。

カラムのお陰で、あなたが作業中のコンテンツにもよるが、アウトラインの可能性がさらに広がる。例えば、現在のプロジェクトのリストをアウトラインにして、それぞれの締め切り日をリストするために日付フォーマットのカラムを付けることができる。カラムのその他のタイプとしては、チェックボックス、期間、数 (フォーマッティングおよび集計のオプション付き)、ポップアップ、それからデフォルトの Rich Text もある。

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アイデアを集め終えたら、アウトライン操作の次の段階は行の並べ替えだ。ここが OmniOutliner ではキーボードを使って素晴らしく簡単にできる。私が最もよく使うコマンドは行を上または下へ移動させるもので、Command-Control と一緒に上または下の矢印キーを押す。もちろん、マウスを掴んで、その行を選択して、好きな場所へドラッグする(または Organize > Move を選ぶ)こともできるけれども、キーボードショートカットは現在カーソルがあるどの行(およびその子たち)でも移動させることができる。

(私がこの記事を書いている最中にリリースされた OmniOutliner 4.0.1 では、残念なことにカーソルが行の中にある場合にこの Move のキーボードコマンドを押しても移動した結果がアウトラインに表示されないというバグが導入されてしまった。いったんそのファイルを閉じてから開き直せば行は実際移動しているのだが、操作したのに応じて結果が表示されることはない。Omni は既にこのバグの存在を認めており、私は次回のメンテナンスリリースで修正されるものと期待している。)

一つのアウトラインがだんだん大きくなってくると、Focus 表示モードを選べば現在の行とその子たちのみが表示される。(このアプリケーションの以前のバージョンでは Focus でなく Hoist と呼ばれていた。)また、サイドバーの Contents 部分でセクションを一つ選べばそのセクションのみに Focus される。

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新機能の罠を克服する -- OmniOutliner 4 での改善点や新機能のリストを見て、少々混乱してしまったことは認めねばなるまい。その理由の一部は、バージョン 4.0 のリリースノートのかなり興奮した感じの言い回しだ。例えばこんなくだりがある:「私たちは OmniOutliner 3 の旧式のスタイルドロワをすっぱりと捨て、新しい Sidebar を作ってあなたのアウトラインの Contents や Styles、その他たくさんのものをリストするようにしました!」

双方のバージョンを見比べてみると、基本的なアプローチはどちらも同じものが使われていることが分かる。スタイルの選択と、コンテンツ一覧とが、どちらもメインの書類ウィンドウの左側に並ぶ。ただ、バージョン 3 ではそれが Utility Drawer と呼ばれて書類ウィンドウの裏側から左へ引き出されるようになっていただけだ。(ドロワは、古びつつある Mac OS X の技法で、もはや流行ではない。)

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あるいは、リリースノートの最初の項目にはこうある:「ズーム機能 - テキストをスクリーン上で、プリントレイアウトを変更することなく拡大できるようになりました。」でも、テキストを拡大できることが、改善点の最初の項目としてリストされるほど胸躍る新機能なのだろうか?

いや、そう、ある意味ではその通りだ。

スクリーンのピクセル密度が増えたお陰で(そう、正直に認めよう、私の老眼が進んでいることも確かにある)私自身テキストを読みやすくするために拡大していることがよくある。多くのワードプロセッサでは実際のテキストサイズを変更することなくスクリーン上でテキストを拡大するズーム制御機能が提供される。(実際のテキストサイズが変更されると印刷がおかしくなりその書類を読む他の人たちを驚かせてしまうからだ。)OmniOutliner の中でも同様に、テキストサイズをいじらずズームして読みやすくできるようになった。

だから結局のところ、現行の OmniOutliner ユーザーたる私にとって(そしてきっと大勢の他のユーザーたちにとっても)テキストのズーム機能は実際優先度の高い新機能と言えるだろう。従来このアプリケーションを使うことと引き換えに慣れてしまっていた痛みが、この新機能のお陰で取り除かれた。新規のユーザーへの売り上げをこの機能が促進させることはないだろうが、それでも重要な追加機能ではある。

同様の考え方が、従来のバージョンに比べて全体的にクリーンになったこのアプリケーションの見栄えにも当てはまる。とりわけ Inspector は、複雑度がぐっと下がった。バージョン 3 では、個々のセクションがまるで、そう、それ自体がアウトラインであるかのように見えていた。例えば Column 見出しの展開三角形をクリックすると、それに関係するコントロールが見えるようになる。セクションを独立にフロートさせて取り除いたり、グループに取り込んだりもできる。

一方、バージョン 4 の Inspector はたった一つだけのもので、いくつかのアイコンが一番上に横に並び、個々のアイコンが一つのセクションを示し、他のセクションはすべて隠される。最初のうちはこれらのアイコンが見分けにくいと思うけれども、アイコンの上にポインタをかざせば Inspector のタイトルバー上にそのセクションの名前が出る。しかもそれはとてもクリーンで巧妙なやり方で示される。つまり、現在表示されているセクションの名前は標準的なローマン書体の文字で、他のアイコンの上にポインタをかざせばその名前がイタリック体の文字で表示される。

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新しい Inspector の方が優れており、散らかり具合の少ないやり方ではあるが、このような形で単純化された結果として、例えば Style と Column のコントロールの双方を手早く行き来して見たい人の中には改悪だと思う人もいるかもしれない。また、Omni はこれらのセクションの可視性を切り替えるキーボードショートカット (Command-1 から Command-5 まで) を削除してしまった。ただし、これらのショートカットは新バージョンのどこにも割り当てられていないので、システム環境設定の Keyboard 枠を使って簡単に割り当てることができる。(Shortcuts のところで App Shortcuts を選び、OmniOutliner を指定する。)

すべてはスタイルの話だ -- あなたは、ワードプロセッサの見栄えを設定するために途方もない時間を費やした経験がどれくらいあるだろうか? テキストが表示される見栄えなど一見どうでもいいと思えるが、実はそれは重要なことだ。たとえ BBEdit のような純粋なテキストエディタで文章を書いているときであっても(私はたくさんのテキストを BBEdit で書いている)適切なフォントとフォントサイズを選択することで大きな違いが生まれる。私がふだん使っている 14pt Lucida Grande を誰かが 12pt Garamond に切り替えたら、私は気を散らされてしまい慣れるのに苦労することだろう。

OmniOutliner はアウトラインの見栄えを定義するために文字スタイルと行スタイルを使う。私が本の改訂版を作る場合、私はまず前回のバージョンのアウトラインから出発し、何を追加すべきか、何を削除すべきかについてそれぞれアウトラインに印を付けて行く。単語、語句、あるいは行をハイライト表示してそれを赤(削除)や緑(追加)や青(新しいセクションへ移動)にマーク付けできるように、文字スタイルを定義している。これで、アウトラインをさっと見渡しただけで何をすべきかがすぐに分かる。そのようなカラーが他にもいくつか初めから設定してあり、ハイライト効果に関するものもある。必要に応じてあとからスタイルを変更したり、新たなスタイルを追加することもできる。

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個々の行やカラムにスタイルを付けることもできる。新しい行や子たちを追加するにつれて、それぞれのレベルに応じて見栄えが変わる。例えば第 2 レベルの行をすべて青いテキストでスタイル付けしたり、第 3 レベルの行をすべて等幅フォントにしたりすれば、複雑なアウトラインも見やすくなるだろう。

これらの機能は OmniOutliner 4 で新たに追加されたものではないが、それらの機能を駆動するエンジンは OmniOutliner 4 で新しくなった。実際、このアプリケーションのスタイルシステムはまず iPad 用の OmniOutliner 2 で開拓され、その後 Mac 用の OmniOutliner 4 に持ち込まれたので、双方のプラットフォームでうまく連携して働けるようになっている。

新しくなったのはテーマだ。テーマにはあらかじめフォーマットされたものも、またユーザーが定義するものもあり、すべてスタイルに基づいている。このやり方は、ウェブにおける Cascading Style Sheets (CSS) の使用に似ている。つまり、ウェブページのコンテンツは HTML で定義するが、フォーマッティングはスタイルシートを定義することにより制御する。サイトの中で一貫した見栄えの変更をしたい場合、例えばすべての見出しに新しい色を付けたい場合、個々の見出しの色を手でコーディングする必要はなく、CSS プロパティに小さい編集を加えるだけで済む。

あなたが新規の書類を作る際に、新設の Resource Browser があらかじめフォーマットされたテーマを備えたいくつかのアウトラインテンプレートを提示する。(そのうちの一つをもっとよく見たければ、それを選択してからスペースバーを押して Quick Look プレビューを見るとよい。)

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テキストのズーム機能と同様、この書類テンプレートも決して革新的な新機能ではない。けれども OmniOutliner 4 における実装が素晴らしいのは、アウトラインのコンテンツを乱すことなくテーマからテーマへと切り替えられる点だ。(Format > Apply Template Theme を選べば切り替わる。)その際、文字レベルのスタイルはそのままに保たれる。例えば、部屋一杯の人たちのためにプロジェクターで映写して読みやすいテーマを作っておいて(映写は Mac からも、あるいは $29.99 で別売の iPad 用 OmniOutliner アプリからもできる)映写が終わればまた通常の編集用テーマに切り替えて戻すこともできる。

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iPad の話のついでに言えば、Mac から iPad へ書類を転送するのは The Omni Group の OmniPresence 同期システムを使えば素晴らしくよく働く。スタイルのお陰で書類は双方で同じ見栄えとなり、編集の結果も素早く反映される。私は同社が無料で提供している Omni Sync Server を使っているが、自分で独自にサーバをセットアップして走らせることも可能だ。( iCloud の同期機能の持つ制約に直面した結果、The Omni Group は独自のサービスを構築する道を選んだ。)

私は自分のアウトラインに主としてテキストだけを使っているけれども、それは決して OmniOutliner に何か欠陥があるからではない。写真も、オーディオも、ビデオも、行の上へドラッグするだけで埋め込むことができる。バージョン 4 ではメディアが自動的にカラム幅に収まるようにされ、新設されたポップオーバーを使って画像の表示方法(プレビューとして、またはアイコンとして)や、ファイル名の代わりに使用する名前、およびどのヘルパーアプリケーションで開くかを指定できるようになった。

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OmniOutliner Pro の機能は -- Standard 版の OmniOutliner 4 ではここまで紹介してきた機能がすべて使えるけれども、さらにもっと機能が欲しければ、OmniOutliner Pro を選ぶこともできる。これは別途の購入としても、あるいは Standard 版の中からアプリ内購入のアップグレードとしても入手できる。

両者の違いの大部分は、行の高さや行とノートの間隔、行のハンドルの可視性、子の行を自動的にインデントするか(デフォルトではインデントする)または親の行と揃えるか、などのカスタマイズに関することだ。また、「折り畳み」編集を有効にできる設定もあり、有効にすれば行の中の長いテキストが現在作業中の行以外では切り落として表示されるようになる。

けれども私の見るところ、Pro 版を選ぶ人たちの大多数はその AppleScript 対応と、Microsoft Word の .docx.dochtml(HTML) など追加の書き出しフォーマット、それからノートをインラインで表示するかアウトラインの最後に別枠で表示するかを選べること、などの機能に興味があって選ぶことになるのだろうと思う。私がとりわけ気に入っているのは、カラムを隠して表示をすっきりさせ、今は見る必要がないけれども消したくはない情報を見えないようにできることだ。さらに、書類ごとに固有のツールバーを作ることもできる。

購入とアップグレード -- OmniOutliner 4 には二つの版がある。Standard 版は The Omni Group Store から購入しても Mac App Store から購入しても価格は $49.99 だ。一方 OmniOutliner Pro 4 は The Omni Group Store からも Mac App Store からも $99.99 だ。Standard 版を購入しても、アプリ内購入によって Pro 版にアップグレードすることができる。14 日間有効の試用版 が Omni からダウンロードでき、すべての機能がプレビューできる。

メジャーなバージョン改訂までに長い時間をかけているので、The Omni Group はバージョン 3 を過去三年以内に (2011 年 1 月 6 日以降に) 購入した人たちすべてに OmniOutliner 4 を無料アップデートとして提供している。それよりも前のバージョンの OmniOutliner を直接 Omni から購入した人の場合は、OmniOutliner 4 の Standard 版へ $24.99 で、Pro 版へ $49.99 で、アップグレードできる。

OmniOutliner 4 がぜひとも入手したいアップグレードであるかどうかは、あなたがそれをどのように使うかに強く依存する。ほんのたまにアウトラインを作るだけの人なら、新バージョンを購入したいという気にはならないかもしれない。とりわけ既にバージョン 3 を使っているのなら、OS X 10.9 Mavericks でも何の問題もなく動くのだから、それで十分だと思うかもしれない。もちろん、無料アップグレードの資格がある人は直ちにアップデートすべきだ。

その一方で、何かを アウトラインに構造化しなければ一日が終わらないという人ならば、とりわけその人が既に OmniOutliner ユーザーであるならば、バージョン 4 は満足できるアップグレードとなるだろう。クリーンになったインターフェイス、テキストのズーム機能、それにスタイル(とりわけ Mac と iPad の双方でアウトラインを使う人にはこれが重要だ)のお陰で、複雑なアウトラインを構築する際にも OmniOutliner 4 は決して邪魔になることなくあなたをうまく助けてくれるだろう。

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FunBITS: Oceanhorn が iOS に Zelda をエミュレート

  文: Josh Centers: josh@tidbits.com, @jcenters
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Nintendo は窮地に陥っている。一時はこの上なく強大であったこのビデオゲーム会社も、その旗艦製品である Wii U コンソールがファン層を呼び起こすことができなかったため、 収益の低下に直面しているのが現状だ。看板ゲームの Mario や The Legend of Zelda などを モバイルデバイス用にも出して欲しいという圧力に、Nintendo はますます晒されつつある。Nintendo はその圧力に抵抗し続けているところだが、フィンランドのスタジオ Cornfox & Brothers が出してきた iPhone と iPad 用のゲーム Oceanhorn: Monster of Uncharted Seas ($8.99) が、もしも iOS 用の Zelda ゲームがあったならこんな感じかもしれないという雰囲気を垣間見せてくれる。

Oceanhorn は、それが Zelda の模造品であるという事実を隠そうともしない。具体的に言えば、これは The Legend of Zelda: The Wind Waker の模造品だ。あなたが演じる主人公は若い男の子で、島から島へと旅をしながらダンジョンを発見しアイテムを集めて、世界を脅かす敵を倒すための冒険をする。Zelda シリーズの主人公 Link と同様、Oceanhorn の主人公(単に the Kid (若者) と呼ばれている)剣で敵に切りつけ、盾で攻撃をかわし、爆弾を落とし、矢を放ち、笛を吹く。Zelda と全く同じに、彼の健康状態はハートの数で測られ、ハートのピースを集めることでハートの数を増やせる。

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通常、私はこの種のずうずうしい模造品には徹底的に非難を浴びせたい気持ちになる。けれども私は Zelda ゲームが本当に大好きだ。Zelda は私が知っているゲームの中で一・二を争うものの一つで、私はコントローラを使えるほど大きくなって以来ずっと Zelda シリーズのゲームをプレイし続けてきた。でも残念なことに、Zelda シリーズのゲームは Nintendo のハードウェアに限定されていて、最近の私にとってそれは投資に見合うだけの価値はない。(私は DS Lite と Wii 以後同社のハードウェアに手を出すのを止めた。)それに正直言って、このシリーズの最近のゲームの多く、例えば Twilight Princess、Skyward Sword、Phantom Hourglass などからはあまり素晴らしさを感じない。(ただし聞いたところによれば最新の A Link Between Worlds は飛び切り良いという話だが。)

そしてこの Oceanhorn は、非常に美しい模造品だ。グラフィックスは Wii U 上でも違和感はないだろう。Zelda ゲームと同じように、単純化されているが、きちんと働く。

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もちろん、タッチスクリーンのゲームの命運を左右するのはコントロールだ。Oceanhorn のコントロールはなかなか優秀だが、タッチスクリーンの利点を生かし切っているとは言えない。スクリーンの片側で親指をドラッグすることで反対側のスクリーン上にあるボタンのアクションを実行する。このやり方はたいていの場合うまく働くが、時々不正確になることもある。でも、Oceanhorn に出来て伝統的なゲームコントローラでより良く出来ないものはない。

iOS 用のアドベンチャーゲームとしては、Oceanhorn は素晴らしい。価格もたった $8.99 なので、新しい Zelda ゲームを買うことに比べれば微々たるものだ。それでも Oceanhorn はあまりにも多くの要素を Zelda から借用しているので、やはり両者を比較しない訳には行かない。そして比較した結果は、惨敗となる。

戦闘をしていると、イライラする。Oceanhorn の開発者たちは典型的な誤りを犯した。Nintendo がはるか昔に Zelda II: The Adventure of Link (これだけはシリーズの他のゲームと全然似ていない) で犯したのと同じ誤りだ。剣が、あまりにも短過ぎるのだ。そこらのカブト虫に切りつけているなら気付かないだろうが、大きな戦槌を振り回すゴブリンと戦うときには剣が短くてどうにもならない。たちまち剣で戦うのをあきらめて、爆弾を投げたり、瓶やその他投げ付けられるものはないかとあたりを見回したりするようになる。つまり、切ったり切られたりの戦闘アドベンチャーというより、酒場での喧嘩みたいになる。

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Zelda ゲームでの戦闘はほとんどが剣と盾か、あるいは弓矢(時には投石器)だけを使うものだ。魔法とか爆弾とかは、大体において障害物を通り抜けたり、秘密を発見したりするためだけに使われる。けれども Oceanhorn では魔法と爆弾が頼みの綱となる。剣は短過ぎるし、スムーズに剣から盾へと持ち替えるのが難しいからだ。さらに厄介なことに、敵の強さが首尾一貫しない。時にはスイング二回で敵を倒せることもあるし、敵によっては五回必要なこともある。文字通りに Zelda をコピーしたいなら、細かいところまでちゃんとして欲しいものだ。

Oceanhorn の敵キャラたちはすべて名無しで覚えるのは無理だし、ダンジョンにもそのことが言える。それに、ダンジョンはとても分かりにくい。レイアウトは有機的でごちゃごちゃしていて、地点 A から地点 B へ行く道筋を見つけ出すことそのものが難しさの大きな部分であることが多い。でもその難しさはちっとも私をワクワクさせず、ただイライラし退屈に感じるだけだ。

かなり否定的な言い方になってしまったが、それは独立動作のゲームとしての Oceanhorn の欠陥というより、単純に Zelda ゲームと比較しての話だ。価格が $8.99 であることを考えれば、iPad や iPhone の上でプレイできる模造品としてはかなり良く出来ていると言えるだろう。

もしも Zelda の存在がなかったとしたら、Oceanhorn はどんなプラットフォームの上でも素晴らしいゲームとなっていたことだろう。Oceanhorn の欠陥は、その開発者たちが悪いというよりも、むしろ Nintendo だったらどんなに良くなっただろうかということを思わせる。私はずっと以前から、Nintendo と Apple は気心が合うのではないかと思っていた。それぞれの最良の時代には、両社とも革新的で見事なハードウェアをデザインし、エレガントで隅々まで配慮の行き届いたソフトウェアを開発していた。それぞれの最悪の時代には、両社とも非力で安っぽいハードウェアをリリースし、自らの最良のソフトウェアを停滞させ、頑固にも風変わりな独自仕様のテクノロジーに固執した。それが世界中の人たちから嫌われたとしても。

では、Oceanhorn は Nintendo が今後進むべき道を照らしているのだろうか? そう考える人たちは多いし、私も自分の iOS デバイスの上で Nintendo の昔からのゲームがプレイできればどんなに素敵だろうと思うけれども、そこには重大な問題が見逃されていると私は思う。Nintendo は決して、ハンドヘルド業界で業績不振となっている訳ではない。実際、その分野では今でも 3DS のお陰で繁盛している。(ただし 3DS の出だしは高価なハードウェアとゲームの数の少なさからあまり繁盛したとは言えなかったが。)Nintendo の問題は、リビングルームの中で Sony や Microsoft と競合できていないことだ。同社の GameCube と Wii U はいずれも商業的には大失敗となった。確かに Wii は Xbox 360 よりも PlayStation 3 よりも多くを売り上げたが、それはモーションコントロールという仕掛けがあったからこそであって、それは間もなく輝きを失って行った。

Wii U が競合して行けないのは今やスマートフォンやタブレットがコンソールに取って代わったからだと言う人たちもいるが、それは全然真実ではない。たった二週間の間に、PlayStation 4 は世界中で 420 万ユニットを売り上げたし Xbox One は 300 万ユニットを売り上げた。その上 PlayStation 4 は日本ではまだ発売すらされていない。(日本で発売されればスマッシュヒット間違いなしだ。)その一方で、 Wii U は昨年一年間でたった 280 万ユニットしか売れていない。コンソールは、取って代わられたどころかこれまでになく好調だ。ただ、Nintendo が売っているものを人々が欲しがらないというだけのことだ。

もう一つ別の懸念もある。Nintendo がハードウェアビジネスから手を引くのではないかという噂だ。過去にハードウェアを捨ててマルチプラットフォームのゲーム開発に焦点を絞った Sega や Atari と同じく、結局は主流から取り残されるのではないかという懸念だ。

TechCrunch の記事で、MG Siegler が Nintendo についてより独創的なアイデアを述べている。レトロゲーム専用のコンソールを $99 で売り出したらどうかと提案しているのだ。それはなかなか良いアイデアで、きっと Nintendo に一財産をもたらすに違いないが、Siegler も書いている通り、この会社はそのようなあからさまなことをするにはあまりにもプライドが高くて頑固過ぎる。

Siegler の考えは正しい方向を向いていると思うが、私は(諺にも言う通り)風呂水と一緒に赤ん坊まで捨ててはいけないと思う。Wii U には多くの問題があるけれども、状況の核心にあるのは三点だ:

  1. Wii U は、競合相手に比べて単純にパワーが足りない。Wii U のパワーは、相手方の前世代、Xbox 360 や PlayStation 3 と同レベルだ。

  2. Wii U の価格は高過ぎる。発売当時の価格が $350 で、その後 $300 に値下げされたが、そのことが Nintendo の収益を大幅に減らした。PlayStation 4 の価格はたった $400 で、長期的にははるかにたくさんのものを提供できる。Wii U の価格における問題点の一つは、本格的なタブレットを Wii U GamePad と呼んでゲームコントローラ専用に使っていることだ。

  3. Wii U は、開発者にとっては悪夢以外の何物でもない。システムソフトウェアが最悪で、とても開発などできるものではないという話をよく聞く。ほんの小さな変更を施すだけでもコンパイルに膨大な時間がかかり、サードパーティの開発者が Nintendo から受けられるサポートもほとんどないという。

Nintendo がこれらの問題に対処できない間は、ただ Sony の後についておこぼれをもらうしかないだろう。PlayStation 3 がデビューした当時、その価格は何と $600 もし、使いにくい風変わりなハードウェアであった。その結果として、Xbox 360 を相手に苦戦を強いられた。そこで新しい PlayStation 4 において、Sony は思いも寄らぬことをしてのけた。アメリカ人のソフトウェアデザイナーを雇って、開発をさせたのだ。その結果生まれたのが、価格が安く、よりパワフルな、しかも開発者たちに愛されるマシンであった。そして、最も重要なことに、店頭の棚から飛ぶように売れた。

Nintendo の秀でているところがたった一つあるとすれば、平凡な製品を大ヒット製品に変えられることだ。不格好にごつい Nintendo DS を、ほっそりとしてスタイリッシュな DS Lite に変えてみせた。変なところもあって人気のなかった GameCube を、大ヒット製品 Wii に変えてみせた。それから最近には、勢いの弱まりつつあった 3DS を、価格が安くて子供にも使いやすい 2DS と、高品質で大スクリーンの 3DS XL とに分化させてみせた。

私が思うに、Nintendo は Wii U に対しても同じ戦略を成し遂げることができるのではないだろうか。ただし、そのためにはいくつか根本的な改革が必要となるだろう。

  1. リブランド (商標変更)。この Wii U という名前は紛らわしい。Wii U とは Wii U GamePad のことだと思って、このタブレット型コントローラは Wii のための新しいアクセサリだと勘違いしている人たちも多い。Nintendo としてはもっとシンプルな名前、例えば Nintendo HD といった名前にすべきではないだろうか。

  2. Wii U GamePad を見限る。これは不格好で、バッテリ寿命も悪く、システム全体の価格を押し上げている。タブレットとしてもゲームコントローラとしても十分な働きをしない、中途半端なデバイスでしかない。別に手の込んだものは要らないが、最高の独立動作のコントローラをデザインすべきだ。そして、遠隔プレイ機能は 2DS や 3DS に移してしまえばよい。

  3. 現行のシステムソフトウェアは捨て去り、もっと優れた開発用ツールを提供する。自分が何をしているか分かっている人を迎え入れるべきだ。Apple から誰かを引き抜くというのはどうだろうか。

  4. ダウンロード可能なゲームタイトルについては、cross-buy を可能にする。つまり、現状では Wii 用に Super Mario Bros. を買っても、3DS 用にはまた別に買い直さなければならないし、Wii U 用にも(その Wii U を Wii システムソフトウェアでブートしない限りは - この面倒なゴタゴタについて今は詳しく触れたくない)またさらにもう一つ買い直さなければならない。でも、この App Store の時代に、それは馬鹿げたことだし、人々はそんな状態に我慢できないだろう。

これらの提案が仮に実現されたとしても、それだけでは Nintendo のリビングルームでの問題がすべて解決されたことにはならない。けれども顧客たちや開発者たちを Nintendo の世界へ呼び戻すために、きっと大きな役割を果たすことだろう。とりわけ、Nintendo HD の価格が $200 以下に抑えられたならば。

でも、Nintendo が私の声などに聞く耳を持たないのだとすれば、Cornfox & Brothers のような開発者たちにできる賢い一手は、Oceanhorn に磨きをかけて、目を見張るような続編を作り出すことだ。Nintendo の未来が独自のハードウェアにあろうと他社のハードウェアの上にあろうと、同社の最も価値ある資産は昔からあるその看板ゲームたちだ。もしも Nintendo が早く事態を把握しなければ、同社の王冠の宝石の魔力を、さらに多くの明敏なる開発者たちがエミュレートできてしまうリスクを冒すことになるだろう。

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TidBITS 監視リスト: 注目のアップデート、2014 年 2 月 3 日

  文: TidBITS Staff: editors@tidbits.com
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

OmniOutliner 4.0.1 -- The Omni Group が OmniOutliner 4.0.1 をリリースした。柔軟性あるアウトライン作成および情報整理アプリへのメンテナンスリリースだ。(今週 Jeff Carlson が“OmniOutliner 4、より洗練されたアウトライン操作”(2014 年 1 月 31 日) でレビューしている。)今回の新リリースではテンプレート二つ (Blank および Muted) を更新するとともに、新しい Compact テンプレート (基本的に Blank と同じだが行とノートに余白のないもの) を追加し、またインラインヘルプに新しいチュートリアルセクションを加えている。今回のアップデートではまた並べ替え、スタイル、HTML 書き出しに関する問題点をいくつか修正するとともに、Quick Look を使用した際にインライン画像が表示されるようにし、途中で切れた行の Tooltip を将来のリリースで適切に実装できるようになるまで一時的に無効にしている。それから、Jeff の記事でも触れられているように、このバージョン 4.0.1 においてアウトラインの中でカーソルが行の内部にある場合に Move キーボードコマンドの結果が表示されないというバグが導入されてしまった。Omni はこのバグを認識しているので、次回のリリースで修正されるはずだ。OmniOutliner には $49.99 の Standard 版と $99.99 の Pro 版があり、後者では AppleScript に対応し、書き出しフォーマットが増え、インターフェイスに多くのカスタマイズオプションを提供する。この記事の執筆時点で Mac App Store にあるものは Standard 版Pro 版もまだバージョン 4.0.1 にアップデートされていない。 (新規購入 $49.99、無料アップデート、43.3 MB、リリースノート)

OmniOutliner 4.0.1 へのコメントリンク:

ChronoSync 4.4.4 と ChronoAgent 1.4.5 -- Econ Technologies が ChronoSync 4.4.4ChronoAgent 1.4.5 をリリースした。数多くのバグが修正されたので全体的な安定性が改善しているはずだ。自動化された同期およびバックアップ用アプリ ChronoSync はいくつかのクラッシュの問題に対処した。具体的には、ある種の電子メールサーバを設定した際、InterConneX 共有スペースにデータをコピーした際、手動で同期を走らせた後で同期書類を閉じた際、同期書類のログに情報をポストした際などのクラッシュだ。また、safe-copy された読み出し専用のロックされた書類に正しくないアクセス権を与えていたバグを修正するとともに、インストーラが既にインストールされているコンポーネントすべてを正しく置き換えるようにしている。ChronoAgent ユーティリティの方ではマウントされたすべてのボリューム上で情報を収集するよう命じられた際にエージェントがクラッシュした問題を修正している。(いずれのアプリも無料アップデート、ChronoSync 新規購入 $40、27.2 MB、リリースノート; ChronoAgent 新規購入 $10、10.6 MB、リリースノート)

ChronoSync 4.4.4 と ChronoAgent 1.4.5 へのコメントリンク:


ExtraBITS、2014 年 2 月 3 日

  文: TidBITS Staff: editors@tidbits.com
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

今週の ExtraBITS では、グラフィックスのプロフェッショナルが新型 Mac Pro を詳しく調べ、Apple が Mac の 30 周年を記念するために素晴らしいコマーシャルを撮影し、ある少女のポケットの中で iPhone 5c が火を吹き、Michael Cohen が MacVoices で Chuck Joiner と Pages について議論する。

Michael Cohen、MacVoices で Pages を語る -- 新しい Mac 用 Pages 5、iOS 用 Pages 2、それに iCloud 用 Pages が揃い、Apple はそれらの間でシームレスに書類をやり取りできるシステムを作り上げた。けれどもそのことはまた従来あった機能のいくつかが欠落したことをも意味しており、Apple は今後もアップデートを続けると約束している。そこで、このポッドキャストでは、Michael Cohen と MacVoices ホストの Chuck Joiner が、Pages にはどのような問題があるか、Michael の pre-book "Take Control of Pages" が頻繁なアップデートを今後数ヵ月間にわたって出すことでどのようにユーザーの助けとなるかといったことについて議論する。

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少女の iPhone 5c がポケットの中で出火 -- メイン州 Kennebunk に住むある 14 歳の少女が、ポケットの中の iPhone 5c が出火したため第二度の熱傷を負った。幸いにも彼女は落ち着いて手を止め、落とし、転がったので火傷はそれ以上酷くならずに済んだ。iPhone に入っているタイプのリチウムイオンバッテリは出火することがあるが、それは非常に稀であり通常は充電中以外には起こらないものだ。今回のことは、極めて不運な事態という以上のことではないだろう。

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Macintosh の 30 周年を iPhone で見る -- 2014 年 1 月 24 日、Apple は Macintosh の 30 周年を記念して注目すべきコマーシャルを撮影した。同社は 15 組の撮影クルーを世界中に派遣して、総計 36 時間にものぼる映像を、すべて iPhone 5s を使って撮影した。このコマーシャル映像には 30 年前ならばSF小説の中にしかなかったようなシーンが数多く収められている。義手を iPhone で設定している男性、MacBook でロボットをコントロールしている子供たち、腕に取り付けたセンサーを MacBook に繋いで複数の無線操縦飛行機を飛ばしている男、といった具合だ。このビデオを監督した Jake Scott は、30 年前に "1984" コマーシャルを監督した伝説的な映画監督 Ridley Scott の息子だ。ビデオを鑑賞した後は、その制作物語をぜひ読んでおこう。

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新型 Mac Pro をプロフェッショナルが詳しく調べる -- Ars Technica に記事を書いているグラフィックスのプロフェッショナル Dave Girard が、最近リリースされた Mac Pro を詳細に調べてみた。彼の意見では、価格は高いけれどもそれに十分見合った価値があり、パワフルなグラフィックプロセッサが素晴らしく、また彼はこのマシンの静粛さと、電力消費の少なさ、場所を取らないことを称賛している。しかしながら、Girard はこの Mac Pro のクロック速度が比較的低いことと、第二 CPU ソケットのオプションが提供されないことについては批判的だ。

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TidBITS ISSN 1090-7017©Copyright 2014 TidBITS: 再使用はCreative Commons ライセンスによります。

Valid XHTML 1.0! , Let iCab smile , Another HTML-lint gateway 日本語版最終更新:2014年 2月 7日 金曜日, S. HOSOKAWA