TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#1211/24-Feb-2014

iOS デバイスまたは Apple TV を持っている人は、必ずシステムソフトウェアをアップデートして、非常に厄介な SSL のバグから保護されるようにしよう。Mac OS X には依然としてこのバグが残っているが、Apple は近日中に修正を出すと約束している。最近はブロードバンド業界のニュースが大きく取り上げられているので、今週号では Geoff Duncan が、Comcast と Time Warner の合併が提案されているニュースと、FCC が三度目の試みとして ISP を common carrier と認定せずにネット中立性を確立しようと企てているニュースの双方を解説する。"Take Control of Apple TV" のリリース後さまざまのポッドキャストで宣伝行脚して来た Josh Centers は、Apple TV の未来について思いを巡らすとともに、FunBITS 記事で Threes というハマりやすいパズルゲームを紹介する。最後にもう一つ、St. Paul Pioneer Press の記者であり "The Mobile Writer" の著者でもある Julio Ojeda-Zapata が再登場し、Apple ユーザーの観点から伝統的でないハードウェア選択に関するシリーズ記事の第二回として Google Chromebook を扱う。今週注目すべきソフトウェアリリースは、SuperDuper 2.7.2、PDFpen と PDFpen Pro 6.1.5、それに Vox 2.0.1 だ。

記事:

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Apple、iOS と Apple TV をアップデートし SSL セキュリティバグを修正

  文: Josh Centers: josh@tidbits.com, @jcenters
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

Apple は iOS 7.0.6, iOS 6.1.6 (iPhone 3GS 及び第四世代 iPod touch のみに対応), 及び Apple TV 6.0.2 をリリースした。皆さんは直ちにこれらへアップデートすべきである。何故ならばこれらは危機的な SSL/TLS 脆弱性を修正しているからである。この脆弱性は、放っておくとあなたのオンラインアカウントや財務情報が洩れてしまう可能性をもたらす。iOS 上ではこのアップデートを Settings > General > Software Update 又は iTunes 経由でダウンロード出来る。(不幸にして、もしこれまで iOS 7 にアップグレード出来る機器なのにアップグレードしてこなかった人達には、この脆弱性を閉じる方法はない - 牢破りをしない限りは - 唯一の方法は iOS 7.0.6 にまで遡ることである。) Apple TV 上では Settings > General > Software Updates > Update Software でアップデートをダウンロードする。

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この脆弱性は Mac OS X にも影響を及ぼすが、この原稿を書いている時点ではまだそのパッチは当てられていない。しかし Apple は "すぐに" 修正を出すと約束しており、それは OS X 10.9.2 の形で出されると思われる。その間、Safari Web ブラウザを使うのは控えて、このバグには影響されない Google Chrome や Firefox を使う事をお薦めする。あなたのブラウザが脆弱性を有しているかどうかは、この テストサイトを訪れることでチェック出来る。他の Mac アプリは一般的な修正がリリースされる迄は脆弱性を持ったままであり、可能な限り、安全対策の施されていない公衆 Wi-Fi ネットワークでの使用は避けた方が良い。勿論、Apple が修正をリリーする前に、この脆弱性を突くような影響の大きい攻撃が広まってしまう可能性は低いとは思われるが。

[訳者注: 2014 年 2 月 25 日に、この脆弱性を修正した OS X 10.9.2 がリリースされました。]

SSL/TLS での問題は Apple のコードが TLS Server Key Exchange において署名を確かめないことにまつわるもので、これが攻撃者に SSL サーバーをだますのに中間者攻撃を使う事を許してしまう。

セキュリティ解析者はこの脆弱性はオペレーティングシステムソースコードの中に "goto fail" ラインが紛れ込んでしまったことに起因している事を突き止めた。開発者 Jeffrey Grossman は この脆弱性は iOS 6.0 で始まっていて、iOS 5.1.1 では存在していなかった事を認めている。つまり、ほぼ 18 ヶ月近く存在していたことになる。

Daring Fireball の John Gruber は、iOS 6.0 のリリース日 24 September 2012 を、NSA の PRISM プログラムについての漏洩した PowerPoint 資料にある Apple が October 2012 にこのプログラムに加えられたことと関連づけている。Gruber は これら二つの出来事の日付が近いのは偶然のなせる技だと思うと話しているが、NSA はオンラインセキュリティの効果を覆してきたことで有名である。

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FCC、ネット中立性ルールに三度目の正直を願う

  文: Geoff Duncan: geoff@quibble.com
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

大きな意味を持つ「ネット中立性」論争に、新たなページが開かれた。U.S. Federal Communications Commission (FCC、連邦通信委員会) が、米国国内の ISP がオープンなインターネットを保持し、すべてのインターネットユーザーがどのような合法的なコンテンツあるいはサービスにでも、それが自分の ISP の運営するものであろうと、またはそのパートナー社、あるいは競合社の運営するものであろうと、ユーザーが自分で選んでアクセスできることを保証するための、新たなルールを作りたいと発表したからだ。しかしながら、現時点において FCC はインターネットプロバイダを電話会社や各種公益事業と同等の common carrier (通信事業者) と分類し直すことにより広範なルール策定権力を振るうことは意図 せず、FCC は再度の試みとして既存の電気通信事業法の枠内で限定的なルールを作ろうとしている。そして、今度こそそのルールが守られることを願っている。

今回の発表は、最近の裁判所の判決において 2010 年の "Open Internet Order" (オープン・インターネット規則) に基づいて FCC が ISP をオープンインターネット要件に従わせることはできないとされたのを受けたものだ。(2014 年 1 月 20 日の記事“ネットの中立性は低下したが、廃れてはいない”参照。)裁判所は基本的に、FCC が ISP を common carrier だと分類することをせずにそれに相当する規制を加えようとしていると判断し、そのような二股をかけることは許されないと裁定したのだった。今回 FCC が新たなルールを押し出してきたのは、1 月の判決に控訴することで従来のルールを守ろうという方法をあきらめたことを意味している。FCC は、古い試みを捨てて、新しい試みに切り替えようとしているのだ。

消費者保護団体も、大企業も小企業も、ネット中立性が会社と会社の間で公平な競争の場を作るために極めて重要であると同時に、言論の自由などの基本的権利を後押しするためにも欠くことのできないものであると一貫して論じてきた。はたして FCC の新しいプランは、オープンインターネットの強みを保護することになるだろうか?

新しいボスを紹介しよう、古いボスと同じ人物だ -- 最近 FCC の委員長に就任した Tom Wheeler は、新しいオープンインターネットのルールにおける主要な目標として次の三つを提起した:

FCC は 2014 年中頃までに新しいルールを定めたいとしている。これはブロードバンド運営企業をネット中立性規定に従わせようとするための、FCC としては 三度目 の試みにあたる。一度目は 2005 年、二度目は 2010 年にあった。

Wheeler の構想は、大体において FCC が従来から掲げてきた「オープンインターネット」の枠組みと同じものだ。しかしながら、その三つの目標のうち、FCC に権限があると裁判所に認められたのは最初の、透明性に関するもののみだ。この状況の中で透明性要件が意味することとは、ISP 各社が自社のネットワークをどのように管理しているかを開示して、そのサービスについて消費者や関連ビジネスが十分な情報を得た意思決定ができるようにするということだ。それ以外の二つの目標、つまりブロック行為の防止と差別の防止とは、Comcast が起こした訴訟と(最近の)Verizon が起こした訴訟の双方で裁判所に却下されている。言い替えれば、現在のところ、アメリカのインターネット運営企業はどんなサービスでも、思いのままにブロックしたり差別したりできるということだ。ただし、それを正直に開示するならばという条件が付く。

FCC は、今回の新しいルールを 1996 年の Telecommunications Act (電気通信法) Section 706 に根拠を持たせたものにしようとしている。この法律は、FCC に対して「高度な電気通信機能」を所管する権限を与えている。これは曖昧な表現ではあるが、今年の 1 月に大筋で Verizon 勝訴の判決を出したその同じ裁判所が、FCC はブロードバンド運営企業がトラフィックを扱うやり方を統制するルールを Section 706 を用いて発令することができると述べている。Wheeler 委員長は、この判決がネット中立性規定を Section 706 の観点から練り直すようにという「誘い」であると見なしたのだ。Wheeler はまたネット中立性について一般から意見を募る場所も開いた

ある意味で、FCC のこの戦略は、以前と同じお決まりの繰り返しとも言える。ISP やブロードバンド運営企業たちを common carrier だと分類することなく規制しようとしているのだから。その一方で、FCC はすべてが解決するまでの間 ISP 各社にはネット中立性ルールの精神に従うという約束を守らせるとしている。ただし、それを強制できる法律的権限は無いが。

Common Carrier を怖がっているのは誰か? -- FCC が ISP を common carrier だと宣言するだけでネット中立性を義務付けることができるのだとすれば、いったいなぜ FCC はそれをしないのか? 一つの理由は、もしもそれをすればブロードバンド業界が必ずや強硬な反撃に転ずるだろうからだ。そして、より限定的な規制を Section 706 を通じてしようとするよりも、もっと長く険しい戦いが待ち構えていると思われるからだ。ある意味、FCC は単に現実的になろうとしているだけかもしれない。

別の側から見直せば、ブロードバンド運営企業や ISP 各社は以前から、もしも common carrier となれば自分たちは窒息死する運命にあると言い続けてきた。そうなれば自分たちは投資家たちの目に魅力的なものと映らなくなり、その結果として、基盤構造を構築し、より大きなブロードバンド容量を実現し、新たなサービスを導入するための資金が乏しくなる。投資が減れば米国におけるブロードバンドが他の先進諸国からますます取り残されるだろう。アメリカ人のブロードバンドアクセスを、とりわけ田舎でサービスの行き届いていない地域で 拡張する ことが、FCC の最優先課題の一つだというのに。ISP 各社に言わせれば、そもそもこの米国にインターネットブームが起こったただ一つの理由は、ISP 各社が common carrier の要件に縛られて いなかった からなのだ。

FCC 内部にもそうした立場に同調する要素はある。Wheeler 委員長の発表に付随して出された概況報告書は、ISP を common carrier として規制せずに発展してきたいくつかの巨大な市場を主として扱っている。(例えば携帯電話やオンラインビデオなどだ。何とそこにはアプリストアやタブレットに関する記述さえある。)FCC 委員の何人かは、ネット中立性はもともと不必要だとさえ発言している。消費者たちが望みのコンテンツにアクセスできなくなった証拠はないのだから、と彼らは言う。Obama 政権により FCC 委員に任命されてからまだ一年も経たない Ajit Pai 委員は「ネット中立性はずっと以前から、解決ありきでそのための問題を探している状態」だと書いている。ホワイトハウス自身も、オープンインターネットが「不可欠」だと述べつつも、進むべき道は FCC が自ら選ぶべきだと述べている。

それはそれとして、Wheeler 委員長は、FCC の強制力を実際に行使しようとはせずとも、少なくとも積極的にひけらかそうとはしている。Wheeler は、FCC が ISP を common carrier と分類できる権限を「引き続き検討中」であると明言している。

今度はうまく行くのか? -- 今回の FCC の発表に対しては、消費者や言論の自由の擁護者たちからも、また 政府による規制に強硬に反対する側からも、厳しい非難の声が挙がった。

FCC は Section 706 を利用してブロードバンドトラフィックの規制には成功するだろうが、それだけではサービス差別の問題や言論の自由の問題に対処することにはならないと言う人たちもいる。Free Press の President 兼 CEO の Craig Aaron は、Section 706 の定める権限は言論の自由を保護せず、結局のところ Wheeler の発表は FCC がオープンインターネットのルールを策定する権限を持つ「ふりをする」だけのものに過ぎない、と主張した。それとは対照的に、下院議員 Marsha Blackburn (共和党、テネシー州) は Wheeler の発表を「社会主義的規制」を実施しようとする運動だと形容し、FCC にネット中立性ルールを作らせない法律を導入すると誓った。

時には、どちらの側をも怒らせることこそ良き妥協の前兆であることもあるが、Electronic Frontier Foundation は FCC の(裁判所で既に認められた!)透明性要件でさえ必ずしもものごとをそれほど透明にはしないと指摘している。結局のところ、インターネットは何万ものネットワークが互いに相互接続して成り立っている。だから、いつどこで技術的な問題の結果としてサイトやサービスが低速になったりアクセスできなくなったりするかは誰にも予想できず、それは何もネットワークプロバイダが意図的に接続を絞ったり差別したりしている訳ではない。あらゆる接続、あらゆる設備、運営企業間のあらゆる協定をすべて追跡して差別があるかないかを証明するなど非常に困難な仕事であり、透明性要件の下でさえ運営企業各社の手に多くの融通の余地が残されることになる。第一、そのような大仕事を体系的なやり方で実行している人など、今のところ(FCC にさえ)誰もいない。

要するに、アメリカの消費者たちはおそらく長い戦いの最中に直面しているということだ。FCC はこれまで二度にわたって ISP を common carrier だと宣言せずにネット中立性を命じようと試みたが(大部分において)裁判所に却下される結果に終わった。今回の FCC の三度目の試みに対しても、まず間違いなく異議申し立てがなされるだろう。そしてまず間違いなく、その異議申し立てに結論が出されるまでに二年も三年もかかるだろう。2017 年か 2018 年になっても、ネット中立性は今日と全く同じ状態かもしれない。その時点になってみれば、FCC には ISP を common carrier だと宣言するか、または議会に訴えて彼らを規制できる明確な権限を与えてもらうか、いずれかしか道が残されていないのかもしれない。

あるいは、FCC がネット中立性に完全に見切りをつけてしまうということも、あり得るかもしれない。

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Comcast、Time Warner Cable に $45 Billion の買収提案

  文: Geoff Duncan: geoff@quibble.com
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

我々は Big Media の時代に生きていて、それは日に日に大きくなっている。先週、米国最大のインターネットサービス及びケーブルテレビプロバイダーである Comcast が Time Warner Cable と合併すると発表した。後者は米国第二のインターネットサービス及びケーブルテレビプロバイダーである。この取引価値は $45.2 billion はあるとされている。もしこの取引が規制機関に承認されると、二社合わせた会社は米国のケーブルテレビサービスの約三分の一、そして電話、テレビ、そしてインターネットサービスを束ねたいわゆる "トリプルプレイ" サービスの半分以上を手にすることになる。Comcast は既に NBCUniversal を所有し、Time Warner は多くの州で地方テレビ局を持っているので、この合併会社はこの国における最大のコンテンツプロバイダー及びニュース配信社の一つともなる。

Comcast と Time Warner (こちらは以前 Road Runner High Speed Online と言う名前をそのインターネットサービスに使っていた) は、この買収は消費者の利益になると言っている:彼らの言い分は、スケールメリットと事業効率のお陰で、彼らが別々にやるよりも、より良いそしてより高速のサービスを顧客にずっと早く提供出来るようになると言うものである。

当事者以外の殆どの人は懐疑的である:米国人はケーブル会社を蔑視しており (両社ともケーブルプロバイダーとしても ISP としても、全国顧客満足度においてはかなり下位に位置している)、そして "事業効率" は より低額 のケーブル代になったためしがない。結局の所、ケーブルテレビ代はおよそ 10 年毎に二倍になってきた

では、何が起こっていて、そしてこの合併があなたにとって意味するものは何か?

大きくなればなるほど... -- Time Warner Cable は他の Big Media 合併のなごりである:14 年前の $160 billion に達する Time Warner と AOL の合併である ("AOL が Time Warner を買収" 10 January 2000 参照)。これがうまく行かなかった時、Time Warner はその礎である映画とテレビの事業へと規模の縮小を行うことを考え、その結果 AOL, Time Inc., Warner Music, 等々はスピンオフして自立する事となった。Time Warner Cable はその課程の一部で、2009 年に別会社となった。

Time Warner Cable は米国第二のケーブル及びインターネットサービスのプロバイダーかもしれないが、その加入者基盤は Comcast の約 半分 に過ぎない (2011 年には Insight Communications を買収して 750,000 の顧客を獲得したにも拘わらず)。しかしながら、Comcast と Time Warner Cable の両社ともテレビ加入者を毎年確実に失っている。これはその顧客が、Netflix, Amazon Instant Video, Hulu, Xbox Live, PlayStation Network, そして iTunes のように、ビデオコンテンツをインターネット接続上で家庭に届ける "over the top" と呼ばれるインターネットビデオサービスの方を好んで、ケーブルテレビを解約しているからである。この傾向は一部にはケーブルサービス料金の止まることを知らない高騰と、そして住宅危機と大恐慌期間中の月々の支払いを削る消費者側の動きとに起因している。使用頻度の低いインターネットユーザーの中には、モバイルだけにして、全てのインターネットニーズに対して 3G/4G モバイルサービスに依存している人もいる。

Comcast と Time Warner Cable を併せた会社は、電話、テレビ、そして (最重要の) インターネットサービスを米国における 50 大都市圏のうち 43 都市で提供出来るようになる。これは両社にとっても大きな跳躍である (Comcast は現在これらのうち 31 市場を持っている)。合併会社は重複する経理、顧客サポート、等々の分野でコスト削減が可能である。そう、それの意味する所は人減らしだが、収益の改善は投資家に歓迎されるであろう。

反トラスト法はどうなっているのか? -- 一見して、米国の最大級のケーブル会社二社の合併など反トラスト法のあからさまな違反に見えるかもしれないが、必ずしもそうではない。この合併会社は凡そ 3 百万の加入者を断念する計画だが (米国のケーブルテレビ市場の 30% を超えない様にするため)、両社とも既に大部分の所で地域独占企業であり、かつそれぞれの市場も地域的重なっている所は殆ど無い。従って、合併によって新たな独占企業が生まれるわけではない。米国のケーブル市場では殆ど競争はなく、独占状態は既に存在している。

だからといって、Comcast と Time Warner Cable 合併に疑念が生じないわけではない。現時点では、ケーブルが米国のブロードバンドを支配している。DSL は電話会社から広く提供されているが、そのスループットには大きなばらつきがある:良い時もあるが、多くの DSL 接続は高精細度インターネットビデオストリーミングをサポート出来ない。衛星はやり取りを伴うサービスには遅延が多すぎ (FaceTime, Skype, そしてゲームの様な)、そしてファイバは滅多にお目にかからない:現時点では、Google Fiber が運用されているのは Kansas City だけ (Provo は Utah でまもなくオンラインとなる予定で、Austin, Texas が計画されている);AT&T U-verse は主として South, Midwest, そして California の一部だけ;そして Verizon は FiOS をこれ以上展開する計画を持っていない。多くの場所で、ケーブルが消費者の 唯一の 現実的なブロードバンド選択肢である、そして - 地域独占のお陰で - それは通常一つの会社からのみ入手可となっている。

ブロードバンドの落とし穴 -- 勿論、Comcast-Time Warner 合併は一面では市場シェアを拡大し、コストを削減することであるが、一方では、米国のインターネットアクセスとそれに伴って発生する事業機会をもっとしっかり握ることでもある。

どの様な機会か? Comcast は Federal Communications Commission の "ネット中立性" 規制を潰してしまう立役者であった。この規制は ISP に全ての合法的なインターネットデータを同じ優先度をもって扱うことを要求しているが ("ネットの中立性は低下したが、廃れてはいない" 20 January 2014 参照)、同社は既に優先パートナーには ブロードバンドデータの上限を適用しないという手心を加えている。Comcast は 2011 年の NBCUniversal 買収に伴いネット中立性条項は甘受する事に同意しているが、この同意は 2018 年には失効となる。Comcast は Netflix の性能を自分のネットワーク上では制限することで、自らの優先ストリーミングとビデオオンデマンドのサービスが優位に立つ様にしていることを示唆する証拠が山ほどある。

米国のブロードバンド市場のほぼ三分の一に対する管理者としての役を果たすことで、合併した Comcast/Time Warner は、Netflix の様なビデオサービス、Google や Facebook の様なインターネット巨人、そして Sony や Disney と言ったその他のコンテンツ会社に対してほぼ難攻不落の交渉力を持つことになるであろう。これはどの様な種類のニュースやコンテンツが制作され配信されるか (されないか) に対しても重大な影響を及ぼす可能性を持つ。前 FCC 委員長 Michael Copps は最近エッセーを書き、 過去 10 年間でのメディア統合がどの様にメディアの性格を変えたか、とりわけ公衆の利益にかなった活動、例えば長編のそして事実究明型の報道が激減している事を嘆いている。

Public Knowledge の John Bergmayer は、拡大した Comcast を "学校でのいじめっ子" と特徴付けた 。意図する所は、インターネット性能を米国民大多数のためだけではなく操り、かつ彼らが簡単にアクセス出来るコンテンツやサービスは何であるかにまでも影響を及ぼす様になりつつある。Comcast はまた Universal Studios, NBC 放送網、そして数え切れない程のケーブルチャネルの所有権を梃にして、他のインターネットやテレビサービスプロバイダーに対して強権を発しそのコンテンツに対して Comcast の望みの価格を払わざるを得ないようにも出来るであろう。これが Netflix や Amazon が "House of Cards" や "The After" の様な独自のコンテンツを作り溜めて行くのに必死になっている一つの理由である - HBO や Showtime の様に。彼らは Comcast の顧客が欲しがるコンテンツを持つことで、生き残りを図ろうとしている。

次は何か? -- Comcast はこの買収が 2014 年末までに完了することを望んでいる;しかしながら、同社が NBCUniversal との合併の承認を勝ち取るのに一年以上かかった。FCC 及び Department of Justice の両者とも間違いなくこの取引を極めて綿密に調査するであろうが、Comcast は友好関係を保てそうな政治家をサポートする事を長年にわたってやってきた。そこには FCC を管轄する委員会のメンバーに対する寄付金も含まれ、これは Center for Responsive Politics からのデータを分析した MapLight によると、2001 年以来 $850,000 を超える。現在の FCC 委員長 Tom Wheeler はこの地位に就いてまだ間がなく、彼がどの様な反応をするのかを予測するのは困難である。

ところで、Comcast が Time Warner Cable を買収しようとしていることで、民間企業の所有ではない地方自治体のブロードバンドネットワークの方にも興味が示されるかもしれない。勿論、その方向での新しい動きが見えるようになるのは、Comcast と Time Warner Cable の運命が決まってしばらく経ってからの事となろう。

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Apple TV の未来

  文: Josh Centers: josh@tidbits.com, @jcenters
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

私の最初の本 "Take Control of Apple TV" が出てから一週間ちょっとになるが、反応は極めてありがたいもので、売れ行きの方も丁度 1,000 冊を超えたところである。MacStories の Federico Viticci はこれを "Apple TV の所有者で全てを知りたいという人には必携のもので、$10 には十分に値する" と呼んでくれた。 Chambers Daily そして Out of SchoolポッドキャストのBradley Chambers は、"これは Apple おたくでなくとも、彼が言おうとしていることを理解出来るように書かれている" と言っている。

私はまたこの本について語るべく沢山のポッドキャストにも呼ばれた。Apple TV について語る機会を与えてくれた次の方々に感謝したい:MacVoices の Chuck Joiner, The Tech Night Owl の Gene Steinberg, Pulling the String の Benjamin Alexander, The Menu Bar (警告:露骨な表現あり) の Zac Cichy, そして TUAW Talkcast の Kelly Guimont と Benjamin J. Roethig である。

どのショーでも聞かれたのは、この春発表されると噂の次期 Apple TV はどんなものだと私が思うかであったので、ここでもそれを取り上げてみたいと思う。私は前にこれについて "FunBITS: Apple がゲーミング市場で勝てる理由" (4 October 2013) でも触れたが、そこに書いたものを更に発展させてみたいと思う。

Apple TV にまつわる噂の出所の多くは、Steve Jobs が Walter Isaacson に、彼は TV を "解読した" と語ったことに関係している。しかし注意すべきは、Steve Jobs はこれまで嘘をついてきたという重要な事実である。意図的に。しかも沢山。数ある中でも、Jobs は色々な所で、iPod でビデオを見たいと思う人などいるわけがない、人々は読むことをしなくなった、Apple はタブレットなど開発していない、そして Apple は携帯電話の事業などうまくやれないであろうと発言している。Steve Jobs は彼の伝記作家に競争相手をヒステリー状態にさせるためだけに敢えておいしそうな話をするであろうか? そう思った方が間違いない。

Apple TV の未来 -- まず、第四世代の Apple TV は今日のものとは形ががらりと変わるとは思えない。私には Apple が本格的な TV セットを提供することに利点があるとは思えない。考えてみて欲しい、Tim Cook はサプライチェーンの男である;彼は、もし避けられるものならば、大型の製品は望まない。より小型であることは、より多くのものを船、飛行機、トラックに積め、そして Apple Stores の背後に収納出来る事を意味する。Apple の一番の問題は供給不足である;それに悪影響を及ぼす事など同社が一番やりたくないことの一つであろう。もっと悪いのは、TV セットは視聴距離に応じて色々な大きさが必要で、Apple が 3 から 5 つもの異なるサイズの在庫を抱えることに興味を示すとは思えない。

あるとすれば、Apple TV がより小さくなることだが、これもありそうには思えない。何故ならば、Apple は同じ筐体を Apple TV と AirPort Express の両方に使っているからで、製品効率は簡単に諦められるようなものではない。

また Apple が、 Roku がやった様に、TV メーカーとパートナーを組むとも思えない。他のハードウェアメーカーと大事な事業でパートナーを組むのは Apple の DNA の中にはないし、これまでも Apple のためになったためしもない。

では、まず間違いなく実現しそうなものは何であろうか? 私の考えでは、A7 プロセッサは当確で、iOS 7 スタイルの画面デザインも採用されるのではなかろうか。また 802.11ac Wi-Fi なしの新しい Apple TV と言うのも考えにくい。Apple が第三世代モデルを 1080p サポートを主眼に出したことを考えると、4K サポートもまたありそうに思われるが、これは Apple が独自のコンテンツ配信ネットワーク、content delivery network (CDN)、を構築しているという報道とも符合する。Apple は 4K ストリーミングコンテンツを提供する最初の企業の一つとなることで、来たるべき 4K 市場で大きく一歩先行する事が出来る。

Apple はまたケーブルプロバイダーと組み、ケーブルボックスを Apple TV で置き換え、ライブコンテンツを Apple TV アプリ経由でストリームしたり、番組表を提供したりすることも可能である。だからといって、次の Apple TV に無骨な同軸コネクタが付いてくるのかとの心配はご無用に。それは恐らく Microsoft が Time Warner と共に Xbox をストリームケーブルボックスとして使ったのと似た様なやり方になるであろう。こうすることが帯域制限に不利に働く事は無いし、Apple も同様な提携をする可能性はあり、そうであればなぜ同社がコンテンツ配信ネットワーク (CDN) を構築しているのかの説明にもなる。

その他の可能性は Bluetooth オーディオ機器に対するサポートで、私としても是非実現して欲しいものでもある。今でも Apple TV からオーディオを AirPlay することは可能だが、ワイヤレスヘッドフォンを使おうとすると、これは役に立たない (私の本では、格好は悪いが一つの回避策を紹介している)。独自の AirPlay 標準を広げたいという Apple の立場を考えれば、同社が Bluetooth オーディオをサポートする事に気乗りしないのは理解出来るが、別の見方をすれば、これはアクセシビリティの問題でもある。Bluetooth 型の補聴器に依存している人をどう考えるのか?

Apple はまた Bluetooth ゲームコントローラーに対するサポートも加えられるはずである。これは最近 iOS 7 と OS X 10.9 Mavericks に加えられている。しかし、これをやる唯一の理由はゲームのサポートであり、Apple TV に特化した App Store も必要になる。私は、これを予想するのは気が進まない、何故ならば、これは第二世代 Apple TV の時から噂されていたからである。

では、Apple はこれまで何故 Apple TV のための App Store に消極的であったのか? 一つの理由は人である。iOS 上でと同様に、Apple は個々のアプリを認定したいと思うであろうし、それは投資としても馬鹿にならない。もう一つはストレージである。Apple TV には 8 GB のフラッシュストレージしかなく、その殆どがストリームコンテンツのバッファとして使われる。App Store 対応の Apple TV となると、少なくとも 16 GB - 8 GB がバッファ用、そして残りの 8 GB はユーザー用 - は必要で、更に最近のゲームの大きさを考えるともっと必要になるかもしれない。第三の問題は、Roku とは異なり、Apple は独自のコンテンツストアを提供していることである。Apple は、Apple TV 上で Amazon Video アプリを許可し、競合するコンテンツストアへのアクセスを提供するのをよしとするであろうか?

他の噂として、Apple は Apple TV と AirPort Express を統合して一つの製品とするというのもある。表面上、これはうなずける、何故ならばこれらは同じ筐体を使っているからである。しかし、もしそれがあなたの商売だとしたら、二つの高価でない製品を統合して売価をその合計価格の半分に設定しますか? 私なら、やらない。しかし、顧客としてなら、すぐに飛びつく。

Siri が Apple TV でも使われると憶測する人もいるが、私にはそうは思えない。理由は二つ。第一に、Siri は主たるインターフェースとなれるほどの信頼性は未だ持ち合わせていない。第二に、Apple TV のインターフェースは極度に物理的で、殆どのやり取りがボタン操作の繰り返しである。そしてまた階層的であり、コンテンツはしばしば複数のアプリで重複しており、やり取りは単純なコマンドとは縁遠いぎくしゃくしたものとなりがちである。恐らく Apple はインターフェースを通り抜けるのに Siri を使う事も可能であろうが、その実現可能性は低いと思う。

まあ、こんな所である。次世代 Apple TV で目を見張る様なものが出てくるとは思えないが、Apple は人々から笑われる様な製品を出し、少し経ってみるとその市場を支配していた、というのが好きである。人々は Mac, iPhone, そして iPad を嘲笑したが、今笑っているのは誰か? Tim Cook, そしてその先ずっと銀行までの人達である。

Apple TV 事業 -- Apple に関する噂や憶測を目にした時は何時でも、Apple は根本的にはハードウェア事業者であることを念頭に置くことが大事である。Apple は、ソフトウェア、オンラインサービス、或いは世界を変革する事業をやっているわけではなく、ハードウェアの事業に携わっているのである。半端でない売り上げをあげているかもしれないが、App Store, iTunes, そして iCloud 全ては、Apple が本当に儲けているハードウェア機器に価値を付加し、そしてそれらと一体的に結びついたプラットフォームを築くために存在しているのである。

$99 の Apple TV は Apple の目から見れば未だプラットフォームではなく、同社の稼ぎ頭に価値を付加する単なるアクセサリに過ぎない:稼ぎ頭は iPhone, iPad, そして Mac である。Apple は、同社がモバイル機器に投入している様な資源を投入出来る程の利益を Apple TV からは得ていない。

どうやったら変わるか? 答えはケーブルとの提携であり、これが実現すれば Apple TV の販売量は "本物" の商売へと発展可能である。

Apple の iPhone 事業の要は、それが二つの顧客を持っていることにある:電話の持ち主であるあなたと、そのキャリアである。Apple は個人に売り込みをし、そしてその人達大部分はキャリアに行き購入する。キャリアは iPhone を全原価で購入し、それらをあなたには安く売るが、その差額は高価なサービスプランで回収する。キャリア経由で販売することで、Apple は市場と iPhone の浸透を大々的に拡大している。

もし同じ事を Apple がケーブル会社とやったらどうであろうか? ケーブルボックスのインターフェースの悪さは有名であり、もし Apple が TV 番組にアクセスするのに圧倒的に良い方法を提供出来るのであれば、加入者はそれを要求するかもしれない。ケーブル会社は Apple TV を配る契約を Apple と行い、顧客にはそれを無料或いは安価な月額レンタル料で提供出来る。

一旦相当数が行きわたれば、Apple は Apple TV App Store を追加し、全ての Apple TV ユーザーが Apple の顧客ともなる可能性を持つ状態を作り出すことが可能となる。ケーブル会社は引き続きそのパイプを所有しそして番組を提供し続けるが、Apple は何にもましてインターフェースを制御することとなる。そしてここにこそ真の力が存在する。

勿論、これは乱暴な推測であるが (そしてケーブル会社はまず間違いなく Apple によるそのような動きを警戒している)、もし私が Apple の人間で Apple TV を真の事業に転換したいと望むなら、私のとる切り口はこれである。これこそが Apple が最も得意とすることでは無いだろうか? 技術的そしてインターフェース改善が残っている市場を見つけ、より良い解を創造し、そして乗っ取る。

いずれにしても、これらの想像にあまり投資しすぎないように、そしてあなたの Apple TV を今出来る事で楽しんで欲しい。それに手持ちの Apple TV があっという間に時代遅れになってしまうのではないかとの心配も無用であろう。私の第二世代 Apple TV は未だに最近のアップデート全てを受け入れるし、今後当分の間は大丈夫だと思っている。そして現在使える機能を最大限に使いこなしたいとお思いなら、"Take Control of Apple TV" を一冊お求めあれ!

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Google の Chromebook は立派な補助的ラップトップ

  文: Julio Ojeda-Zapata: julio@ojezap.com
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

この形式張らないシリーズ記事の第一回で、私は iPad Air こそ外回りの記者にとって最高のテクノロジーだと思う理由を論じた。(2014 年 2 月 17 日の記事“モバイルライターが持つべきは iPad か MacBook か”参照。)その記事で、私がテクノロジー系ジャーナリストとしての自分の仕事の中でさまざまの Chromebook もテストしたことに触れた。モバイルライターとしてのこの私にとって、Chromebook は確かに iPad Air に及ぶものではなかったけれども、それでも Chromebook は私にとって、またモバイル生産性のための簡易化された機器を必要とするどんな人にとっても、十分魅力あるものだ。

なぜか? それは、Michael Cohen が記事“iCloud: これはアンチ・ソーシャル・ネットワーク”(2014 年 2 月 6 日) で述べているように、Steve Jobs が 1997 年に Apple に復帰した際に述べたコンピューティングの未来についてのビジョンが、シン・クライアント、すなわちネットワークを生かしたシステムの中で自分のデータを自分のコンピュータと分離させるというアイデアを含んでいたからだ。Jobs は次のように述べた:

私は Apple に、NeXT に、Pixar に、そして自宅に、それぞれコンピュータを持っています。私がそのどれにでも歩み寄って自分でログインすると、そのコンピュータはネットワークを探索し、サーバ上に私のホームディレクトリを見つけ、私はどこにいても自分のデータが手に入ります。なのに、データのどれ一つとしてローカルなハードディスク上にはないのです。

その当時、Jobs は NeXTSTEP の走る NeXT ハードウェアを念頭に置いていた。そこで Michael は iCloud こそ Jobs の Apple でのビジョンを現代に具現化したものではないかと論じた。けれどもこのようなコンピューティングの未来を見据えていたのは Jobs だけではなかった。2009 年以来、Google は独自のアイデアを Chrome OS という形で提供し、一括して Chromebook という名前で呼ばれる一連のラップトップ機の上でそれを走らせた。

基本的に、低価格のそれらのマシンはウェブブラウザを、具体的には Google の Chrome ブラウザを中心に築かれたハードウェアであり、それ以外にほとんど何も含まない。

これを声高に笑う人たちも多い。「それじゃあ本物のコンピュータとは言えない」と彼らは言う。私も、その概念を冷笑していたこともあった。何年も前、Google の Chrome OS および Chromebook 開発チームのメンバーをインタビューしてコンピューティングの未来に対する彼らのビジョンを問いただした際に、私は心の中でいったい彼らは何を煙に巻こうとしているのかと自問した記憶がある。(ただ、当時私が書いたコラム記事の中では、言わずに済ませた多くの疑問をもっとずっと丁寧な言い回しでほのめかすに止めた。)

Chromebook プラス Mac は? -- それでも、ずっと昔から Mac 中心だった私としてはありそうもないことだが、Chrome OS と Chromebook をありのままの姿で私は好きになった。それは Mac と比較してどうこうという話ではなかった。実際、Mac と Chromebook は根本的に違う種類のコンピュータなので、私の生活の中で重複して不要と感じることは全然なかった。両者はとてもうまい具合に互いを補完し、それぞれ異なったやり方で私のオタク琴線に触れた。

ここで改めて私の Apple 趣味を正当化する必要もなかろう。ただ、私の大好きな iMac 上の iMovie で仕事関係のビデオを編集したり、依頼された講演の準備を Keynote でしている時など、Apple のハードウェアはアートのような感覚で私にしっくりと馴染み、多くの Mac アプリはほとんど荘厳と言ってもよい感じがすると言っておけば十分だろう。

けれども Mac のデスクトップアプリケーションの最善の組み合わせのいくつかを使っているのでない時の私は、Chrome ウェブブラウザの中にいることが多い。Google の Gmail で電子メールを読んだり、Google Calendar で予定を確認したり、書き上げた記事を Google Docs で編集者に送ったり、TweetDeck で Twitter をフォローしたりしている。

一週分の私の Mac 時間を集計すれば、かなり多くの部分がウェブベースで過ごされていて、その部分は Google Chrome の中にいることが分かるだろう。

この点で、私が例外的だとはとうてい言えまい。平均的な Mac や PC のユーザーの間で、ウェブアプリはたとえ標準的とは言えないまでも、かなり人気があって行き渡っているのは確かだろう。

そこで登場するのが Chromebook だ。私のコンピューティングは個人用にも仕事用にもウェブ上ですることが多いので、特に何も学ぶ必要もなしにこれらのノートブック機を使うことができ、すぐに仕事を始めることができる。ログインすればすぐに、Gmail も、TweetDeck も、Autodesk の画像編集用ウェブアプリ Pixlr も、すべてが目の前にある。私が Mac や PC の上で Chrome を開いた場合と全く同じだ。私の Mac の上で何らかの設定を Chrome にしていれば、それと同じカスタマイズが Chromebook 上にも反映される。逆も同じだ。

だから、私は心底から Mac ユーザーではあるのだけれど、それでも自宅や仕事場での毎日の中で Chromebook の役割を見出すことができる。私にはお金が有り余っている訳ではなく、二台も Mac を持つのはやり過ぎだと思うので、iMac と Chromebook を組み合わせて使うのは十分まともなことだ。iMac は主力として、Chromebook はモバイル補完用として使うのだ。こうして私は、外出中は Chromebook を使ってたくさんのことをやり遂げ、要求の多い作業、例えば複雑なビデオ編集といったものは iMac でしている。

Chrome OS -- Google の Linux ベースの Chrome OS は、なかなか面白い存在だ。当初は Chrome ウェブブラウザとほとんど区別がつかないようなものだったが、その後 Chrome OS は進化を遂げて、伝統的なオペレーティングシステムのいくつかの装飾品を取り込むようになった。

Chromebook の蓋をぐいと開ければ Mac 風の dock が見えて、スクリーンの下、左、右のいずれかの縁に沿って置いておくことができる。Windows の Start メニューによく似たアプリランチャーもある。どのコンピューティングプラットフォームのものよりも素敵なデフォルトの壁紙セットを備えたデスクトップもある。それから、ディスプレイ、タッチパッド、キーボード、Wi-Fi および Bluetooth のネットワーキング、印刷、アクセシビリティ、その他についてのオペレーティングシステム設定も、お馴染みのものばかりだ。

けれども奇妙なところもある。デスクトップは大体において見かけだけのためのもので、ファイルやフォルダをその上へドラッグすることはできない。ただし、ダウンロードしたファイルをローカルに保存しておくための場所はある。その Linux 基盤とデスクトップ風の見栄えにもかかわらず、Chrome OS は依然として根本的にウェブ中心のコンピューティング環境なのだ。つまり、使うのはウェブアプリのみで、ネイティブな、あるいはデスクトップ流のアプリはない。RdioWeVideoPreziTrelloBasecamp といったウェブアプリはずらりと揃っているけれども、iTunes や Photoshop といった伝統的なソフトウェアをインストールすることなど望むべくもない。

長所を言えば、Chrome OS はメンテナンスがとても楽だ。実際、何もする必要がない。伝統的なソフトウェアを常に最新に保つ作業も要らないし、マルウェアの心配をする必要もない。なぜなら、ほとんどすべてがウェブの中で起こっているからだ。(書類をダウンロードすることはできるけれども、アプリが走るのはブラウザの中のみだ。)Chrome OS もウェブアプリも、自動的に自らをアップデートしてくれる。こうして、Chromebook は IT の数多くの頭痛を取り去ってくれる。あなた自身が自らの IT 部局であろうと、あるいはあなたが大きな組織の中でハードウェアを管理していようと、そのことは変わらない。

Chromebook を Mac として使うことすら、一応は可能だ。Apple の iCloud 用 iWork は、Mac ベースの生産性アプリスイートの中にある iWork アプリのウェブ版だが、これが Chromebooks の上で問題なく動く。ただし、そういうマシンはハードウェアスペックが並み以下であることが多いのだが。

Chrome ハードウェア -- そう、ハードウェアスペックこそ、難しいところだ。たいていの Chromebook はかなり非力で、並み以下のデザインと、それに見合った価格、つまり $200 から $400 程度となっている。最近のリリースサイクルでは着実に進歩しているところも見られるけれども、依然として大多数の Chromebook は月並みで、時には安っぽいと感じられることもある。

Chromebook の中には、サイズもコストも抑え過ぎたためまともに働かなかったあの悪名高き Windows ノートブック機「ネットブック」の二番煎じとしか思えないようなものもある。Acer 製の Chromebook のうちいくつかの機種は、その昔の恐ろしきネットブックと事実上見分けがつかない。ただし機能性だけはものすごく進歩している。なぜなら、Chrome OS はそのような非力なハードウェア上でも Windows に比べてずっと効率的に走るからだ。

他方、一から作り上げられた工業デザインの Chromebook もあり、そのうちのいくつかはかなり良いものだ。

私のお気に入りの Chromebook は 11.6 インチ HP Chromebook 11 で、曲線美に優れて白く輝き、ちょっと Apple の第二世代 iBook を思わせるところがある。近年のモデルの MacBook のものに似たキーボードを備え、その驚くほど素晴らしい IPS ディスプレイは現行の 11 インチ MacBook Air のものとほぼ同等だ。ちょっと素敵な一ひねりとして、この HP Chromebook 11 はかさばる電源コードと大きなアダプタでなく普通の Android フォンで使われるものと同じタイプの標準的な micro-USB ケーブルを使って充電できる。2 GB の RAM と、16 GB の SSD、6 時間使える十分な容量のバッテリを備え、価格は $279 だ。ボディ色は白でさまざまの色のアクセントが付いているが、私は全体が黒のモデルの方が良いと思う。

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この Chromebook の欠点は、そしてそれが理由で私はこれを買わなかったのだが、その ARM ベースのグラフィックプロセッサだ。とりわけ要求の高い状況下で、例えば多数の Chrome タブが同時に開いている場合など、パフォーマンスがのろのろしている。この Chromebook も、例えば少しだけこれより古い Samsung モデルなど他の Chromebook も、とにかく遅過ぎる。

Chromebooks の中には、エレガンス、パフォーマンス、値ごろ感のバランスがちょうど良いものもあるが、それでもやはり完璧にはほど遠い。

例えば、11.6 インチ Acer C720P Chromebook は美的に一段階上がってネットブック風には見えない上に、USB 2.0、USB 3.0、HDMI という本格的なポートを装備し、加えて 2 GB の RAM、比較的大きな 32 GB のオンボードストレージ、それに 1.4 GHz の Intel Celeron CPU が十分良いパフォーマンスとバッテリ寿命 (およそ 7.5 時間) を兼ね備える。さらにタッチスクリーンまで持っていて他の Acer C720 モデルとは一線を画している。これだけの組み合わせがあれば CNET が「廉価版 Chromebook の王様」と呼ぶのもうなずける。ただ、私は何となくぼんやりして見えるディスプレイと、少しぐにゃっとした感触のキーボードが好きになれない。

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Chromebook のエコシステムはますます拡張しつつある。もっと大きなスクリーンが欲しければ、Toshiba や HP から 13 インチや 14 インチのディスプレイを持つモデルが出ている。Asus や Lenovo も、数ヵ月以内に独自のコンシューマ向けモデルで Chromebook に参入するはずだ。

それから、Google Apps の中で日々を過ごしている企業の重役たちに向けては、 Chromebook Pixel がある。これは Google がデザインし販売している超高級モデルで、Chromebook だからと言って必ずしもハードウェアの美点をケチる必要はないことを示すために作られたものだと言ってもよい。そのスペックは 13 インチ MacBook Pro と同等、あるいはそれ以上のところもあり、豪華な 12.85 インチの Retina レベルのディスプレイはタッチスクリーンの背後にインチあたり 239 ピクセルを備えている。Steve Jobs はラップトップ機にタッチスクリーンを装備しても腕が疲れるだけだと言ったけれども、椅子にゆったりと座った状態で使えば作業によってはタッチスクリーンが快適なこともある。(それに、iPad にすっかり慣れた人たちがうっかり Mac のスクリーンに指でタッチしてしまうことが何度あったことだろうか?)

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Chromebook Pixel の価格も、やはり MacBook Pro レベルだ。32 GB Wi-Fi モデルが $1,299、64 GB モデルにどこからでもインターネットにアクセスできる LTE セルラーデータ接続性を加えたものは $1,499 もする。ウェブブラウザを中心に築かれたハードウェアの値段にしては相当なものだ、と多くの人は言う。でも、こんな風にアルミニウムの厚板に覆われ、驚天動地のスクリーンを備え、素晴らしいバックライト付きキーボードと、最高にスムーズなトラックパッド、Google カラーに輝く Cylon (宇宙空母ギャラクティカ) 風リッドストリップと揃えば、感銘を受けること間違いなしだ。足りないものはって? 標準の電源アダプタの差し込みの代わりに MagSafe 風の磁石付き電源プラグが付いてさえいれば、誤って足をコードに引っ掛けて Pixel をデスクから引っぱり落とすこともないだろうに。

今では Chromebook のエコシステムがかなりいろいろなハードウェア選択肢を取り揃えるようにはなったけれども、すべての人に適したものがある訳ではない。この種のマシンを考慮中の人は、まずはいくつかの質問をよく考えてみるべきだろう。

最も重要なのは、Mac や PC で特定のデスクトップアプリケーションに依存して使っている人にとって Chromebook は役に立たないことだ。通常の状況の下で、Chromebooks はその種のアプリを受け入れることが全然できない。Chrome Web Store には驚くほど多数のウェブアプリがずらりと揃っていて、EvernoteDropboxTweetDeckAngry BirdsFeedlyHootSuiteその他有名どころもたくさんある。技術オタクなら、Chrome OS とのデュアルブートとして Linux をインストールすることも可能で、LibreOffice、GIMP、Thunderbird、Skype、VLC、Spotify、Dropbox などの Linux アプリ(Lifehacker に素敵なリストがある)を拡張として使うこともできる。そのような目的のためには Chromebook Pixel が特に優れている。ただ、そのような使い方は実行可能なのは事実だが、平均的なユーザーに向いたものではない。

また、Chromebook は他のコンピュータに比べてはるかに大きくインターネットに依存する。Wi-Fi (あるいは、セルラー内蔵モデルの場合はセルラーデータサービス) がなければほとんど役に立たない。このことで、Chromebook が不当な非難を受けているのも事実だ。インターネット接続がない状態でも動き続けるアプリも多くあり、Gmail や、Google Docs のワードプロセッサもそうだ。Chrome Web Store にはオフライン対応アプリというカテゴリーさえある。けれども、インターネットに接続できない時間が長く続くような状況で使いたい場合には Chromebook に踏み切る前によく考えた方がよいだろう。ただし、今日では従来型のコンピュータでさえインターネットのライフラインから切り離されれば大きく機能が落ちるというのも事実だ。

それでも、さきほども述べたように、ブラウザ内でのコンピューティングはあまり要求の多くない作業をする多くのユーザーにとって十分実行可能な選択肢だ。私も、相当長い時間強制的に自分自身を Chrome OS の中で過ごさせてみたが、本当に困るような事態に陥った回数は驚くほど少なかった。もちろん、通常のデスクトップ環境と同じようにすべての作業をこなしすべての問題点を解決できる訳ではないけれども、たいていいつも回避策が見つかった。

ウェブ生産性 -- 私が障害にぶつかることの多かった分野の一つが、写真の編集だ。Chromebook を使っている間は、iPhoto、Aperture、Google Picasa、その他お馴染みのデスクトップアプリケーションには手が届かない。以前の私にはこれが大問題だったのだが、その後面白いことが起こった。ウェブベースの画像編集ツールが適齢期を迎えたのだ。今では、山ほどたくさんの選択肢がある。Google のGoogle+ ソーシャルネットワークには写真セクションがあって、そこに備わったブラウザベースの編集オプションは今や相当に洗練されたものとなった。これは Nik Software からの技術注入によるところが大きい。モバイル写真編集アプリ Snapseedや、Aperture、Photoshop、Lightroom 用のプロ級のプラグインで有名な Nik Software を Google は買収した。

Autodesk は、Pixlr ブランドの一連の無料の写真編集用ウェブアプリで私をワクワクさせた。Photoshop には及ばないとしてもその機能を真似た Pixlr Editor アプリ(機能としては Mac 用アプリ Pixelmator に近いと言った方がよいかもしれない)から、スリム化されながらも有能な Pixlr Express や、Instagram 風の Pixlr-o-matic まで揃っている。ただし Pixlr Touch Up は特殊で、これは新しいタイプの Chrome ブラウザおよび Chrome OS 用アプリで、挙動がデスクトップ用アプリに非常によく似ている。Mac 上では、ブラウザウィンドウ内でなく独立のウィンドウの中に登場し、さらには独自の Dock アイコンまで出る。Chromebook 上ではますます Chrome OS をデスクトップ風のルック&フィールに変えてくれるので私は大好きだ。

こうして、私は Chromebook を使って非常に生産的になる。私が最も好きなモバイル取材用デバイスは iPad Air だが、Chromebook も私の用途に十分使える。その理由は、私が Google の各種サービスのヘビーユーザーだからだ。私は文章を書いて投稿するにはほとんどいつも Google Docs のワードプロセッサを使っている。その上、私の St. Paul Pioneer Press での雇用主も、またニューヨーク市在住のその Digital First Media (DFM) オーナーも、いずれも最近になって DFM ブランド版の Google Apps に従業員たちを移行させた。今は私たちのニュース編集室の技術コーディネーターは取材に出掛ける記者たちに PC を手渡しているが、いずれ近いうちにこれも Chromebook に変わるに違いないと私は思う。

このような状況はますます一般的に見られるようになってきている。学生たち、特に幼稚園から高等学校まででは、米国国内の多くの学校で、あるいは学区全体として、安価でほとんどメンテナンスの不要な Chrome OS に切り替えつつあるため、Chromebook を使うところが急激に増えている。最近 Futuresource Consulting が調査した結果によれば、幼稚園から高等学校までの市場において Chromebook はモバイルコンピュータの購入実績のうち 19 パーセントを占めている。それは 2012 年にはたったの 1 パーセントで、他方 PC の購入は 2012 年の 47.5 パーセントから去年の第三四半期の 28 パーセントへ落ちた。

Google は、教育における Chromebook というこのトレンドを促進すべく、学校管理者たちにノートブック機貸出しでうまみのある契約を結んだり、HP や Lenovo といったメーカーと提携してコンシューマ向けには発売しない教育専用モデルを作ったりしてきた。

Chromebooks が教室で理想的なのには多くの理由がある。予算の縛られた学校の多くは既に Google Apps を使っていたので、Chromebooks はそこにちょうどうまく収まることができる。私の 15 歳の息子は Google Docs を使ってさまざまの文章を書きつつ、Google Talk を使って休みなしにクラスメートたちとお喋りをしている。それは私の息子だけではない。TidBITS 出版者の Adam Engst の 15 歳の息子も似たような感じで、学校でも自宅でも手元にあるどのコンピュータを使っても読めるという理由で Google Docs に依存して学校の宿題をしているし、友だちとのコミュニケーションには Google+ と Google Hangouts を使っている。

もちろん、そういったことのどれにも Chromebook が必須だという訳ではない。私の息子はたいていのことに MacBook Air を使っている。でも私がその Air を使いたい場合、テスト用に借りていて手近にある Chromebook を息子に手渡している(今は Acer C720P を使っている)が、息子はそれも十分に使える。ただ、息子は時々これじゃ Apple の洗練が足りないと文句を言うこともあるが。それから、現代の教育現場では共同作業が非常に重んじられているので、Adam の息子はよく Chromebook を自分のアルミニウム MacBook の横に並べて置いて、片方のスクリーンで作業をしつつ、もう片方でクラスメートたちとプロジェクトについて Google 流の議論をしている。確かに iPad は教育現場で一番ホットかもしれないが、現代のティーンたちが必要とするタイプの共同作業やマルチタスクのためにはウェブベースのツールの方がうまく働く。

Chromebook はコンシューマの世界にも根を下ろしつつあって、Amazon の売り上げランキングでも上位に顔を出している。この記事の原稿を書きながら調べた時点では、Samsung、Acer、HP 製の Chromebook が Amazon のラップトップ売上げリスト上位五つのうち四つを占め、MacBook Air モデルは 12 位だった。その後具体的な順位は多少変動したが、Chromebook は依然として良い成績を残している。

一方、ビジネスの世界においては Chromebook はそれほどしっかりした足場を築いていない。少なくとも iPad には追い付いていない。けれども会社によっては Google ノートブックを採用しつつあるところもある。ここ Twin Cities (ミネソタ州 Minneapolis と St. Paul のこと) では、Egan Company と呼ばれる製造業・建築業の大会社が、つい最近 800 名の従業員のうち 140 名を Chromebook へ移行させたばかり だ。Egan は現在 Minneapolis と St. Paul 両市のダウンタウンを鉄道で結ぶ Central Corridor Light Rail の一大プロジェクトを進めているところで、現場監督たちにモバイルコンピュータを持たせる必要があった。低価格と、ハードウェアが壊れた場合に処理しやすいことが、分野によっては大きな魅力となることがあり、仮設の事務所のような場所で働く際には LTE が内蔵されていることが非常にありがたい。

ビジネスの場面でのそうした事例はまだ比較的珍しいが、Google Apps が職場で使われるようになるに従い、ビジネスコンピュータとしての Chromebook が Windows の覇権にとって脅威となるのは時間の問題だと私は思う。Microsoft は間違いなくそれを意識していて、同社の TV スポット放送 "Scroogled" (Google をやっつけろ) は、Chromebook がインターネットに依存していることを嘲って「れんが」と呼んでいる。噂によれば、この Redmond の巨人は低価格 PC のメーカーに対する Windows の価格を 70 パーセントカットする計画で、低価格の Chromebook と直接競合する分野にてこ入れしようとしているらしい。

私は今、Chromebook に夢中だ。もしも明日の朝私の雇用主が Chromebook を私に支給してくれて、以前に私や私の同僚たちに支給された iPhone 5c ハンドセットと共に使うようにと言ってくれたならば、もはや私にはデスクを訪れる必要もなく自分の仕事ができるすべての用意が整ったことになるだろう。仕事場が Microsoft Exchange に標準化され、在宅勤務となって Pioneer Press 用カスタマイズ版の Microsoft Word と Microsoft Outlook などデスクトップツールとお別れとなった際には取り残された気持ちになった、そんな時代と比べれば、それは相当に大きな転換だ。(私は、その後秘かに反抗を企てた。Google Apps が Digital First Media の目に留まったよりもはるかに以前、私はすべての記事を Google Docs で執筆して提出し始め、私あての Exchange 電子メールを私の個人用 Gmail アカウントへ自動転送するようにしたのだ。編集者たちの名誉のために言えば、彼らは一言も文句を言わなかった。)

前回の記事で、私は iPad Air こそ執筆用の機能と写真撮影用の機能とを兼ね備えた理想的な取材用コンピュータだと書いた。Chromebook は後者の目的にはあまり良いとは言えないが、その部分は私の iPhone が処理できる。それ以外の部分、つまり文章の執筆と、写真の編集、さらには軽いビデオ編集まで、Chromebook は見事にこなしてくれる。

その上、Chromebook の価格は iPad Air の三分の一から半分までの間だ。だからこそ、私の将来の仕事に組み込まれるのは iPad よりも Chromebook になる可能性が高い。(私が現在使っている iPad Air は Apple からの借り物なので、いずれ返さなければならない。)Chromebook にできることを考えれば、格安だ。私は今、廉価版のハードウェアがもう少し大きくならないか、あるいは Chromebook Pixel クラスのハードウェアがもう少し安くならないかと思っているところだ。実際、Google とその提携各社は、どうやらその中間に狙いを定めているらしく、Chromebook を持ちたいと思う多くの人たちが望んでいる低価格のハードウェアで(超豪華ではなくても)ある程度は良いスペックを持つものを出してくれそうだ。それこそ、私の Chromebook となるに違いない。

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FunBITS: Threes は iPhone と iPad の良き友

  文: Josh Centers: josh@tidbits.com, @jcenters
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

これまで、この冬は幸運なことが続いてきたのに、それはついに起こった。私は中程度レベルの風邪でダウンしてソファから立ち上がれず、風邪薬のせいで頭がボーッとしている。これはまさに、Sirvo LLC の Threes ゲームについて記事を書くべき最適のチャンスだ。Threes はスタイリッシュな iOS 用パズルゲームで、価格はたったの $1.99、アプリ内購入など余計な仕掛けもない。

名前から分かる通り Threes は数学パズルで、4×4 のグリッドが一杯になる前にできるだけ多くの 3 の倍数を作るのが目的だ。そのためにグリッド上で数字の付いたタイルを押して動かし、同じ 3 の倍数を合体させてより大きな数にする。つまり、3 を 3 に重ねれば 6 となり、6 と 6 を重ねれば 12 となる、といった具合だ。

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重要なポイントは、タイルを一個だけ動かすのではないことだ。そうではなくて、端に行き当たったり重ねられないタイルに前を遮られたりしているものを除き、すべてのタイルを同時に同じ方向へ動かさなければならない。つまり、タイルをタイルに重ねるためには、片方のタイルを端に追い込んでおいてから、その上にもう片方のタイルを動かすということだ。それと同時に、動かそうとするすべてのタイルに気を配っておく必要がある。さらに新たなパズル要素として、タイルをスライドさせる度に、あなたが動かす方向と反対側の端から新たなタイルが一個出現する。何が出現しようとしているかは毎回ヒントとして示されるので、戦略的な位置に新しいタイルを出すようにすべきだ。

事態をさらに複雑にするために、3 の倍数でないタイルもある。1 のタイルと 2 のタイルがあって、これらは重ね合わせて 3 のタイルにしなければならない。それ以外には用途がないので、注意して扱わないとボードの上でどんどん邪魔になってくる。だから、できるだけ早くこれらを 3 のタイルに変えようと集中したくなるだろう。

混乱しただろうか? 心配は要らない。説明を聞くよりもプレイしてみる方が簡単で、ゲーム自身がルールを手引きしてくれる。これこそまさに、習うのは簡単だが熟達するのは難しいゲームだ。幸いにも時間制限はないので、一手ごとにじっくり先を考えることをお勧めする。また、タイルをゆっくりドラッグすれば、確定する前にどのタイルが動くか知ることができる。

Threes の開発者たちは、ともすれば面白みのないものになりかねないこのゲームにたくさんの個性を注ぎ込んだ。サウンドトラックは驚異的だし、ゲームのボードはパステル調にうまくデザインされているし、動かすにつれて数字たちさえもあなたに語りかける。その通り、個々の数字タイルにそれぞれ独自の顔と奇抜な個性が備わっていて、ボードの上を動くにつれて一言ずつ何か喋る。"Hey"、"Sup"、"I'm bored" といった具合だ。大きな数字のタイルにはそれぞれ独自の名前と略歴さえある。

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Threes はごく単純なゲームに見えるかもしれないが、見かけは当てにならないものだ。このゲームの背後には三人の天才たちがいる。ゲームをデザインした Asher Vollmer は以前 PlayStation 3 用の素晴らしいゲーム FlowerJourney のメーカー thatgamecompany で働いていた。イラストレーターは Ridiculous FishingHundreds を作った Greg Wohlwend、音楽は Call of Duty: Black Ops 2Mass Effect 2 の制作に加わった Jimmy Hinson が担当している。これだけの才能が集まってさえ、Threes の開発には何年もかかった。最小主義というのは、見かけよりずっと困難なものだ。

そういうわけで、たった $1.99 で手に入る Threes は非常に巧みに作られたパズルで、私のように数学が不得意な者でも楽しめる。ではそろそろ失礼して、また風邪薬を飲んで、ソファに横にならせてもらおうか。

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TidBITS 監視リスト: 注目のアップデート、2014 年 2 月 24 日

  文: TidBITS Staff: editors@tidbits.com
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

SuperDuper 2.7.2 -- 長い間待たされたが、Shirt Pocket が OS X 10.9 Mavericks にフル対応した SuperDuper 2.7.2 をリリースし、Mavericks において Spotlight の処理に起こった問題を回避するとともに、スケジュール化されたコピーにおける自動マウントおよび自動イジェクトの機能を復活させた。(長期間を要した理由の技術的背景については Shirt Pocket のブログ記事を参照。)このドライブクローン作成・バックアップ用アプリではまた、コピー元およびコピー先のポップアップにボリュームサイズの情報が載るようになり、Smart Update の速度が改善し、スケジュール機能が cron から launchd に替わり、スケジュール化されたコピーの際に厄介な誤りのセキュリティプロンプトが出ないようになった。SuperDuper 2.7.2 からは 10.6 Snow Leopard またはそれ以降を要するが、10.4 Tiger や 10.5 Leopard を使っている人たちのためにバージョン 2.7.1 も引き続き入手可能だ。(基本的機能は無料、追加機能は $27.95、無料アップデート、2.9 MB、 リリースノート)

SuperDuper 2.7.2 へのコメントリンク:

PDFpen と PDFpen Pro 6.1.5 -- Smile が PDFpenPDFpenPro のバージョン 6.1.5 をリリースした。小さなアップデートだが、それでも前回のアップデート(2014 年 2 月 13 日の記事“PDFpen と PDFpen Pro 6.1.4”参照)で入り込んでしまったいくつかの問題の可能性に対する重要な修正が施されている。今回のリリースではパスワード保護の付いた PDF を開いても空に見えた問題を修正し、(印刷の際のものなど) いくつかのクラッシュのバグを解消し、走り書きツールをタブレットで使った際の反応を改善している。Mac App Store 版の PDFpenPDFpen Pro もバージョン 6.1.5 が入手可能となっており、後者では HTML から PDF を作成する際の最大ページ数が 999 に増えた。(新規購入 $59.95/$99.95、 TidBITS 会員には 20 パーセント割引、52.5/53.3 MB、リリースノート)

PDFpen と PDFpen Pro 6.1.5 へのコメントリンク:

Vox 2.0.1 -- Coppertino が Vox 2.0.1 をリリースした。Kirk McElhearn が最近レビュー記事を書いた最小主義の音楽プレイヤー(2014 年 2 月 4 日の記事“Vox 2.0: 最小主義の音楽プレイヤーだが改良の余地あり”参照)の、メンテナンスリリースだ。今回のアップデートでは、現在再生中のトラックを入れ替えることなく音楽ファイルをドラッグ&ドロップで追加できる機能が復活するとともに、グローバルなホットキー(および詳細不明だがいくつかのアプリ内ホットキー)への対応が追加された。また、Search モードに関係する誤った挙動やクラッシュを修正し、iTunes ライブラリをロードする際にアプリがフリーズしないようにし、ダブルクリックで開いた場合にトラックリストが表示されなかったバグを解消し、Repeat モードでのいくつかの問題点を修正し、Search モードで FLAC ファイルや APE ファイルが正しく表示されるようにした。( Mac App Store から無料、11 MB)

Vox 2.0.1 へのコメントリンク:


ExtraBITS、2014 年 2 月 24 日

  文: TidBITS Staff: editors@tidbits.com
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

今週の ExtraBITS では、制作進行中の "Take Control of Pages" にスタイルを解説した新しい章が加わり、iPhone は 1991 年の Radio Shack 広告に載ったほとんどすべてのものの代わりとなり、Steve Jobs の記念切手が出る。ショウ関係の話題では、iTunes Festival が SXSW に到来し、NSNorth 2014 カンファレンスがカナダの開発者、デザイナー、ビジネスリーダー向けに Ottawa で開催される。また、Apple が R&D (研究・開発) にかける費用が驚くほど少ないこと、新工場を再生可能エネルギーで動かそうとしていることが判明する。

"Take Control of Pages" の最初のアップデートがスタイルを追加 -- 約束通り、私たちは "Take Control of Pages" pre-book の初めての大幅なアップデートを Leanpub にポストした。今回のアップデートは、最初のリリースを購入した人は無料で入手できるが、いくつか細かな調整を施すとともに、新たな章を追加して Mac 用の Pages 5 の中で三つのタイプのスタイル(段落、文字、オブジェクトのスタイル)を扱う方法を解説した。(iOS 版と iCloud 版の Pages では、テキストやオブジェクトに適用できる以外に大してスタイルを扱える機能はない。)この pre-book に対する今後の無料アップデートでは、ページレイアウト、ファイル書き出し、テンプレート、それから Pages 書類の中でオブジェクトを使いこなす方法などを解説する予定だ。

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iPhone は 1991 年の Radio Shack 広告の何を置き換えたか -- Trending Buffalo の Steve Cichon が、1991 年に Radio Shack が出した新聞広告を見つけ、その広告に載っていたほとんどすべてを今や彼の iPhone が代わってできることに気付いた。デスクトップコンピュータ、CB ラジオ、テープレコーダー、CD プレイヤー、留守番電話、電卓、目覚まし時計、ビデオカメラも。iPhone が置き換えたそれらすべての機器類を当時購入すれば $3,054.82 となり、これは 2012 年のドル通貨に換算すれば $5,100 ほどに相当する。iPhone や、いろいろのアプリの価格と大局的に比べてみよう。たった二つ、その新聞広告に載っていてまだ iPhone では代われないものがある。レーダー探知器と、大型スピーカーだ。

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Steve Jobs を記念した郵便切手が出る -- The Washington Post に流出した資料によれば、元 Apple CEO の Steve Jobs を描いた記念切手が 2015 年に United States Postal Service (米国郵政公社) から出るという。これはまだデザイン中の段階だが、願わくは "フラットな Steve" と "異素材模倣風 Steve" の人気投票をして欲しいものだ。1992 年の "若い Elvis" 対 "熟年の Elvis" の切手対決のように。

コメントリンク: 14536

iTunes Festival が SXSW で米国初登場 -- iTunes Festival が今年は米国で初めて 5 月 11 日から 15 日まで開催される。五夜連続のこの音楽の祭典はテキサス州 Austin の SXSW から放送され、Coldplay、Imagine Dragons、Keith Urban、その他のアーティストが出演する。通常通り、iTunes Festival のパフォーマンスはあなたの Apple TV、iOS デバイス、あるいはコンピュータ上でライブでも、またオンデマンドでも視聴できる。

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Apple の長年にわたる R&D 出費額 -- Yoni Heisler が TUAW の記事の中で、SEC (証券取引委員会) の資料をもとに Apple が研究および開発にかけた出費額を追跡し、いくつか驚くべき事実を得た。Steve Jobs の復帰の後、彼が多数のプロジェクトを削減したため、R&D (研究・開発) 出費額は大幅に減った。それ以後、Apple の R&D 経費はまた大きく増え、2011-2013 の期間における出費額は 1995 年以後の R&D 経費総合計の 50 パーセントに相当するものとなった。それでも、同社の出費額は競合各社のものに比べれば何十億ドルも少ない。かつて Steve Jobs が述べた通り、「問題は金額ではない。大切なのはどんな人材がいるか、どのように率いられるか、どれだけのものを得るかだ。」

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Apple の新工場は再生可能エネルギーで操業 -- Apple はアリゾナ州に新しい工場を建設中で、ここではサファイアガラスが製造されると報道されているが、同社はこの工場を操業初日から再生可能エネルギーを電源として動かしたいとしている。Apple は地元の電力会社 Salt River Project と交渉中で、この会社は新工場に電力を供給するため新たに太陽光および地熱による発電所を建設してきた。

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NSNorth 2014 は Ottawa の開発者向け専門特化型カンファレンス -- 多くのテクノロジーカンファレンスが米国の大都市に集中しているので、たまには Great White North (つまりカナダ) であるのも嬉しい。カナダの Ottawa で開催される NSNorth 2014 は小規模のブティック型 (専門特化型) カンファレンスで、三日間の期間内に、さまざまの高度に特化された、クリエイティブな話題を iOS および Mac の開発者、デザイナー、およびビジネスリーダー向けシングルトラックのセッションとして揃えている。開催期間は 5 月 8 日から 10 日までで、出席者たちがちゃんと 11 日の母の日には帰宅できるよう配慮して終わるようになっている。定員は意図的に 100 名までに制限されていて、チケットの売れ行きも良いので、興味ある人は早めにチェックしておこう。

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TidBITS ISSN 1090-7017©Copyright 2014 TidBITS: 再使用はCreative Commons ライセンスによります。

Valid XHTML 1.0! , Let iCab smile , Another HTML-lint gateway 日本語版最終更新:2014年 3月 2日 日曜日, S. HOSOKAWA