TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#1242/29-Sep-2014

多くの iPhone ユーザーのセルラー接続性を止め Touch ID を使えなくしてしまった iOS 8.0.1 アップデートの失敗の後、Apple は素早く iOS 8.0.2 をリリースしてそれらの問題点を修正し、他にもいくつか iOS 8.0 の問題点を修正した。けれども今週 Apple のソフトウェアの懸念はそれだけではなかった。どこにでも存在する Bash シェルの中にずっと以前からあった脆弱性が、一部のシステムを無防備な状態にしていた。Rich Mogull がこの問題について解説する。Jeff/Geoff 論説三人衆の記事では[訳者注: アメリカ英語では Jeff と Geoff の発音は全く同じです]Apple が 16 GB の iPhone をシリーズに残して 32 GB モデルを捨て去ったのはなぜかを Jeff Carlson が説明し、Jeff Porten は Apple が最新発表した製品に気持ちを動かされなかった理由を詳しく語り、Geoff Duncan はプライバシーに対する Apple の新しいコミットメントを調査する。最後に今週の FunBITS 記事では、Josh Centers が Epic Zen Garden を見学する。これはゲームというよりも、むしろ iPhone 6 のパワーをまざまざと見せつけるための、見た目にも素晴らしいデモだ。今週注目すべきソフトウェアリリースは、OS X Server 3.2.1、Evernote 5.6、SpamSieve 2.9.16、Sandvox 2.9、PopChar X 6.7、それに Typinator 6.2 だ。

記事:

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Apple、iOS 8.0.2 をリリース、今回は大丈夫

  文: Josh Centers: [email protected], @jcenters   訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

何万人という iPhone ユーザーの電話接続と Touch ID を不能にしてしまい失敗に終わった iOS 8.0.1 アップデートの後 ("Apple Releases 8.0.1, but Don't Update Yet!" 24 September 2014 参照)、Apple は iOS 8.0.2 で正常に戻ったようだ。これは 73.1 MB のダウンロードで、Settings > General > Software Update から入手出来る。我々の所には、iOS 8.0.2 をインストールした人達からの問題報告は来ていない。

Apple は iOS 8.0.1 アップデートを手早く引き上げたが、不運なユーザーの中にはこのアップデートパッケージが機器上に残ってしまった人達もいて、その場合、アップグレード手順が混乱してしまう可能性がある。この無用のアップデートを削除するには、Settings > General > Usage > Manage Storage > iOS 8.0.1 (その大きさは 1.1 GB、その場合一番上近辺にある、或いは 73.1 MB である可能性が高く、後者の場合はずっと下の方にある)。iOS 8.0.2 は、その後自動的にダウンロードされるはずである。

iOS 8.0.1 で導入された上記の電話接続と Touch ID の問題の修正に加えて、iOS 8.0.2 では、HealthKit が戻された。こちらは iOS 8 のリリースに先立ってバグのせいで引っ込められていた。開発者達は今や、HealthKit を利用して iOS 8 で導入された内蔵の Health アプリと統合したアプリをリリースすることが出来る。

iOS 8.0.2 で修正されたもう一つの苛立ちは、サードパーティキーボードがパスワード入力の時非選択となってしまう問題であった。この修正で、沢山報告された "消えるキーボード" 問題が解決されているのかどうか我々は掴んでいないが、そうであって欲しいと願っている。

iOS 8.0.2 はまた、iPhone 6 の新しい Reachability 機能の信頼性を向上させているとの報告もある。Reachability は画面の大きくなった iPhone のための回避策の一つで、Home ボタンに二回触る (押すのではない) ことで、画面のトップを下方に移動させてくれる。iOS 8.0 では、これを実現するのは結構大変だった。私が iOS 8.0.2 を試した結果からは、信頼性が上がったのか、下がったのかが分かる程の違いは見られなかった。

iOS 8.0.2 で修正された他の問題には、Photo Library の写真へのアクセスが出来ないアプリが出たバグ、テキストメッセージを受信する時予想外のデータ使用量になるバグ、iCloud バックアップからリングトーンが復元出来ないバグ、そして Safari で写真やビデオをアップロード出来ないバグが含まれる。加えて、iOS 8.0.2 では、アプリ内購入に対する Family Sharing の Ask to Buy 機能の改善が約束されている。

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Mac は Bash 脆弱性に対してまず安全だが、パッチの心積もりを

  文: Rich Mogull: [email protected]
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

新しいソフトウェアの脆弱性が見つかった時、嬉しがる人は誰もいないが、今週明らかになった一般的な Unix ツールに内在する大きなバグは、セキュリティ社会を震わした。Unix の殆ど全てのバージョン、Linux 及び OS X も含まれる、が脆弱であるだけでなく、初期のパッチ殆どがこの穴を塞ぐのに完全には効果的ではない。これは最悪の事態に近い状況で、インターネット上の Windows でないサーバーのほぼ全てが - そして Apple の市場拡大のお陰で増えたかなりの数のパーソナルコンピュータも - 色々な種類の遠隔攻撃に対して弱点を持っていて、結果的にはシステムを完全に乗っ取り、そしてそれを止める方法は全くないという事態が可能となる。

その重大さにも拘わらず、Apple の設計判断と我々がどう Mac を使うかの組み合わせにより、実際のリスクは劇的に軽減されているが、注意を払う必要はあり、そして Apple の次のセキュリティアップデートをインストールする心積もりをして欲しい。

Shellshock -- Bash は Unix ベースのシステム上の最も基本的なツールの一つであり、Linux 及び BSD も該当し、そして BSD は OS X の心臓部でもある。Terminal を立ち上げると、デフォルトで Bash がコマンドラインインターフェースを提供するプログラムとなる。これは何十年も前から存在し、群を抜いて最も人気のある対話シェルである。

皆さんはその血なまぐさい詳細を知る必要はないが (もしどうしてもというなら、Troy Hunt の記述を読まれたし)、簡単に言うと、一人の研究者が攻撃者にやりたいことを殆ど何でもやらせてくれる脆弱性を Bash の中に見つけたのである。これは、セッションを開く時にシェルに送られた環境変数を操作することに関わっている。これは、もし誰かが皆さんのコンピュータに直接或いは遠隔でアクセスすれば、明らかに問題であるが、Bash は Unix システムの奥深くに埋め込まれているので、この脆弱性はある種の通常でない効果をもたらす。

多くの プログラムが、コマンドライン命令を出すために、Unix システムのデフォルトシェルに接続する。何故ならば、それがコンピュータと会話する便利なやり方だからである。これは最も安全なやり方ではないので、これらのコマンドは低権限ユーザーアカウントだけにしばしば限定されるか、或いは他の安全の仕組みと一緒に用いられる。不幸にも、この仕組みは悪意のデータに対して送られたコマンドから悪い部分を除去することはめったにしない。プログラマーならなすべき事と分かっていることだが、効果的にやることは難しいこともある。

Apache Web サーバーの多くのものは脆弱であること分かっており、更に多くの Unix システムが彼らの IP アドレスを得るために使っている DHCP ソフトウェアもそうである。そしてこれら二つは単に表面をなでたに過ぎない。Bash 経由でコマンドを送るのは余りにも一般的なやり方なので、それが悪用される可能性の全てを、そしてそのやり方がどれ程簡単なのかも我々には分かっていない。DHCP の例では、悪意のあるネットワークにつなぐだけで (有線、無線に拘わらず) あなたのコンピュータを攻撃者の手に委ねてしまう可能性がある。そして一番困るのは、この悪用方法は正気とは思えない程簡単なことである - 攻撃者がやらなければならないことは、受け手のアプリに目的に合ったテキストを送りつけることだけ。

例えば、セキュリティ研究者 (そして友人でもある) Rob Graham は、インターネットの部分スキャンを行って、Shellshock を使えば新しいインターネットワームを作成出来ることを見つけた。

Bash のパッチが完全に当てられれば、この脆弱性は阻止出来るはずであるが、未だ見つかっていない奇妙な派生種が存在する可能性は否定出来ない。もっと悪いのは、パッチが当てられなければならないコンピュータの膨大な数は、ほぼ理解の域を超えている。Bash は、ネットワーク機器、家電製品、工業制御機器 (皆さんの電力会社を想像してみて欲しい)、そして家庭オートメーションの様な思いもかけない所にも使われている。肯定的な側面としては、全てが悪用に晒される訳ではないことである。それが起こるためには、Bash の脆弱性を持つバージョンと、それに任意コマンドを送りそしておかしな方法で実行させる何らかの仕組みの組み合わせが必要となる。しかし、繰り返しになるが、我々はこれらの組み合わせ全部を知っているわけではない。

我々は、Shellshock と今後何年にも亘って付き合うことになるであろう。

何故殆どの Mac は安全なのか -- 前述したように、最近の全てのバージョンの OS X には Bash がデフォルトシェルとしてインストールされており、他の Unix ベースのオペレーティングシステムと同様に脆弱であることに変わりはない。しかしながら、殆どの Mac のデフォルト構成は、Shellshock バグを悪用する最もリスクの高い方法は阻止している様に見える。あなたの Mac を Web サーバーとして設定しているか、或いは Bash にリンク出来る何らかの遠隔ソフトウェアを有効化していない限り、皆さんは安全である。そうではあるが、Mac サーバーを走らせている人は誰でも、 Bash を再コンパイルすることを検討すべきである。

皆さんがホームネットワーク上にいて、NAT の背後にいる限り (皆さんのルーターは単一 IP アドレスを ISP から得て、それから複数の IP アドレスをそのネットワークに接続されている全ての機器に配分する)、安全である可能性は高い。しかしながら、外出先で安全性が分からないネットワークにつなごうとする場合は、OS X 内蔵のファイアウォールをオンにする事をお勧めする (System Preferences > Security & Privacy > Firewall > Turn On Firewall)。それから、Firewall Options ボタンをクリックし、Block All Incoming Connections を選択する。これはやり過ぎかもしれないが、これが皆さんが Mac を使う上で目に見えた悪さをする事はないであろうし (私は私の MacBook Pro を常にこの様に設定している)、それに、これのオンオフの切り替えは簡単にできる。

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私がとりわけ心配しているのは、DHCP 経由の攻撃で、皆さんがやったことはネットワークに接続することだけであっても、皆さんの Mac をその攻撃に晒す危険性を持つ。この心配を検証するため、私は自分自身の悪意の DHCP サーバーを設定し、そして攻撃をかけてみようとしたが、成功しなかった。私は自分の Mac を騙せなかった。Twitter 上で訊いてみたら、Apple は独自の DHCP クライアントを使っている事が分かった。こちらの方がより安全である。

この Bash 脆弱性の全容を我々は十分に理解していないので、行き当たりばったりに Bash をパッチしようとしたりせず、Apple からのセキュリティアップデートに目を光らせるべきである。(古いバージョンの OS X で、最早セキュリティアップデートの対象になっていないものを走らせているのであれば、 あなたのバージョンの Bash を再コンパイルした方が良い、何故ならばこの脆弱性は何十年も前に遡るからである。) しかし、それ以外の我々は公式なアップデートを待つべきである、何故ならば通常の Mac ユーザーに対するリスクは低いからである。Apple は報道に対して (我々も含まれる)、彼らはこの問題に取り組んでいると通告しており、そして他の修正策は完全ではないので、私としては、もう少々待つ分には何ら問題ない。

[訳者注:Apple から OS X bash Update 1.0 が出ています。但し、自動アップデートとはなっていませんので、下記のサイトから個別のダウンロード、インストールが必要です:
Apple Updates Bash for the Shellshock Vulnerability - by Adam C. Engst
(日本語)OS X bash Update 1.0 - OS X Lion(日本語)OS X bash Update 1.0 - OS X Mountain Lion(日本語)OS X bash Update 1.0 - OS X Mavericks]

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Apple は何故 32 GB にせず 16 GB iPhone を残したのか

  文: Jeff Carlson: [email protected], @jeffcarlson
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

ひょっとすると iPhone 6 と iPhone 6 Plus の紹介での一番の驚きは、より大型になった画面サイズではなく、モデル間でのストレージ容量配分であった。最も高価な構成では大容量の 128 GB が搭載されるが、低価格モデルにはたったの 16 GB しかついてこない。その間の選択肢は 64 GB 一つしかない。

残念ながら、16 GB の自由空間はあっという間になくなってしまう。これは多くの人が iOS にアップグレードする時に経験している;彼らは、このアップデートをダウンロードし適用するためだけに、自分の機器から 6 GB 近くを空けなければならなかった。(iPhone を iTunes に接続してアップデートする方法だと、この制約からは逃れられる。)

これ迄、Apple は等倍間隔の容量を提供してきた。2007 年の最初の iPhone では 4 GB と 8 GB であった。そして昨年の iPhone 5s と iPhone 5c では、16 GB, 32 GB, そして 64 GB モデルが用意された;これらの機種は、今でも購入出来るが、iPhone 5s には 16 GB と 32 GB しかなく、iPhone 5c では失笑ものの 8 GB しかない。

では、Apple は何故 iPhone 6 をこれ迄のパターンに倣って 32/64/128 GB で出さなかったのであろうか?

その答えは、勿論のこと、利益である - それも、少々の販売心理学が組み込まれた利益である。

重要なのはお金 -- Apple は、初期の iPhone の改訂版を 2008 年に出した時から、16 GB 構成を iPhone, iPad, そして iPod touch に適用してきた。これらのメモリチップの速度は時と共に向上してきたことは間違いないが (そして、恐らく 2008 年当時よりもより高価にもなった), Apple の大量仕入れの力をもってすれば - 同社は 何百万台 もの機器に搭載している - これらの単価はまず間違いなく極めて安いであろう。

IHS は、iPhone 6 の 16 GB メモリは、彼らの同機の分解解析で $15 と見積もっている。これには 1 GB の LPDDR3 アクティブメモリも含まれており、Re/code の記事は、この分解解析を主導した IHS アナリスト Andrew Rassweiler が Apple はフラッシュストレージに対しギガバイト当たりおよそ $0.42 を払っていると言ったと引用している。これは 16 GB の Apple のコストは $6.72 であることを示唆している。IHS は、64 GB RAM モジュールの価格まで分析していないが、同じギガバイト当たりコストを使えば、64 GB の Apple コストは $26.88 となる。

Apple は 16 GB モデルを維持することで $199 (キャリア奨励金後) という低い導入価格を iPhone 6 で実現出来ているとしている。最低価格のオプションとして 16 GB モデルは余りメディアをため込まない人向けにはまず間違いなくよく売れると思われ、その結果 Apple は 16 GB iPhone が売れる度に相当の利益を手にする事となる。

しかしながら、もし Apple が $199 モデルを 32 GB で出したとすると、同社はこのクラスでの利益を少し減少させる事となる、何故ならば、ストレージコストは $6.72 ではなく $13.44 となるであろうからである。iPhone 販売の規模からすると - 最初の週末で 10 百万台 - 販売一台当たり $6.72 の損失でも、馬鹿にならない金額となる (もし全体のうち 4 百万台が低価格モデルだとすると、Apple は $26.9 million を儲け損ねる勘定となる)。Apple はそれでも満足かもしれない。しかし、それよりも大きな稼ぎの機会がある。

心理学 -- 32 GB のクラスを飛び越えた裏にあるやむにやまれぬ事情は、2005 年に Apple が iPod nano のリリースした時に、私が (そして他の TidBITS 編集者も) 参加した会見に関係しているのではと私には思える ("iPod nano が iPod mini に代わって新登場" 12 September 2005 参照)。

予期せぬ動きとして、Apple は一番よく売れている iPod mini を中止して、より小型の iPod nano に置き換えた。iPod nano はストレージに、極小のハードディスクではなく固体メモリを採用した。iPod nano は三つの構成で世に出された:1 GB が $149, 2 GB が $199, そして 4 GB が $249 で。しかしながら、Apple は iPod nano と並行して、フルサイズの第五世代 iPod も同時に販売し、こちらはハードディスクを搭載、30 GB 構成が $299 であった (そして 60 GB モデルは $399)。

Apple の国際マーケティング担当シニア VP であった Phil Schiller との会見で、我々は多くの人々が抱いていた疑問を彼にぶっつけてみた:顧客は 30 GB のストレージを $50 余分に出せば買えるのに、何故敢えて 4 GB iPod nano を $249 で出すのか?

Apple はより高額の製品が売れるのは何にも勝る喜びだと答えた時、Schiller の眼は輝いた (私の比喩的表現)。(熟練のマーケターとしても、彼は iPod nano のより小型のサイズと最先端のデザインを賞賛するメッセージを持ち出すことを忘れなかった。)

私はこの同じ販売心理学が働いている様子を、iPhone 6 が発表された時に感じていた。電子工学に関心が向きがちな私の様な人間からの一般的なアドバイスは 16 GB モデルは避けることである。何故ならば、それは iOS 8 を走らせ、そして、アプリ、音楽、写真、更にビデオをきちんと管理もしないで溜めたままにしておく多くの人達にとっては十分な容量ではないからである。

しかし、ここで作用しているより大きな影響因子は次のような考えではないかと私には思える:"あと $100 出せば、4 倍も大きなストレージが手に出来る!"

"あと $100 出せば" は、Apple が長年成功裏に使ってきた本当に強力な販売戦略である。

これはまた "価格帯戦略" とも呼ばれる方法とも関わってくる。このやり方では、製品を三つの価格帯で売り出す。この場合、消費者は次のように見る (或いは我々のような評論家の話に耳を傾ける!) 可能性が高い:16 GB モデルは小さすぎるし、128 GB モデルは大きすぎる、ということは 64 GB モデルが最適だ。Goldilocks 経済 (インフレなき成長を維持する絶好調な景気) は Apple Store で健在であり、近くの AT&T ストアのデータを借りると 128 GB モデルは三つのうちで一番人気がないという。

しかし、皆さんが買うのは何であれ、Apple は幸せである。16 GB モデルは 32 GB を入門機とするよりも、コストは安いであろう。より重要なのは、IHS により見積もられた材料費と製造費のコスト $200.10 と、上記にある様なギガバイト当たりのコストからすると、皆さんが 64 GB モデルに $100 余分に払うと、Apple は 1 台売る毎におよそ $80 余分に利益を手にする計算になる。そして、128 GB モデルはあまり売れないとしても、Apple が手にするのは、皆さんが 64 GB モデルを買う時よりも更に $75 近く多くなる。

誰もが勝者である。顧客は恐らく前に持っていたであろうものよりも大きなストレージを手にすることで幸せであり、どこから見ても正当な値段に見える価格で、そして Apple は更に大きな利益を獲得する。

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Apple、プライバシーについて声明

  文: Geoff Duncan: [email protected]
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

先週、Apple は プライバシーに関する公開書簡を発表した。その中で CEO の Tim Cook は、Apple 製品は顧客のプライバシーを最優先としてデザインしていると強調した。この公開書簡と、それに付随する「プライバシーポリシー」サイトには、プライバシーに関する Apple の実践とテクノロジーの一部、および同社が広告主、提携先、および政府との間で要求し順守するポリシーが詳しく記されている。Apple はいろいろの国際サイトにも同じコンテンツを掲載している。一見の価値ありだ。

一つには、このサイトと公開書簡は広報活動の戦略でもある。Apple はここ数週間、著名人たちが iCloud に置いていた写真にアタッカーたちがアクセスした事件に関して非難を受けてきた。(Apple によればこの攻撃はパスワードやセキュリティ質問を使って破られたものであって、内在するセキュリティ欠陥によるものではないという。2014 年 9 月 2 日の記事“著名人の写真盗難は iCloud の欠陥が原因ではない”参照。)その結果として、Apple は現在、消費者の信用を得る価値のある会社という立場に戻ろうと苦闘中なのだ。もちろんこのサイトは iOS 8 における新しいプライバシー関係テクノロジーも強調している。今回の公開書簡が大規模な Apple 製品発表と時を合わせて出されたのも決して偶然ではない。

一つのレベルにおいては、このサイトは Apple が他のテクノロジー会社と同じ立場にいることを示している。Apple は何億人もの人々からのデータを絶えず保存し処理し続けており、政府から法律に則った命令により情報を渡せと言われればそれに従わなければならない。しかしながら、Apple のプライバシーポリシーページには同社が他のテクノロジーの巨人たちと 違っている 点も強調される。それは主として、Apple が広告主に顧客へのアクセスを売ることよりも、製品を販売することによって収益の大部分を得ているからだ。

そうした違いはあなたにとって重要なことだろうか? その答は、あなた(とあなたの知っている人たち)がテクノロジーとオンラインサービスをどのように使っているかに依存する。

Apple の主たるプライバシーの要点 -- Apple の新しいプライバシーサイトには個々の Apple テクノロジー(iCloud、Maps、Siri、FaceTime、Messages、Apple Pay、HealthKit、その他)が個人情報をどのように管理し保存するかが詳しく書かれている。それと同じく重要なこととして、Apple はユーザーが 自らの個人情報が保存され共有されるやり方をコントロールする方法を詳しく述べるとともに、プライバシーを保護しフィッシング詐欺を避けるための基本的なアドバイスもいくつか提供する。とりわけ、このサイトは専門的な技術用語や法律用語をできるだけ避け、分かりやすい英語の表現を使うことに配慮している。それでもなおプライバシーポリシーは難解なものなのだが。

そこには、いくつかの要点が浮かび上がる:

Apple を他と比べるとどうか -- Apple はその製品やサービスで一つの重要な点において Google や Microsoft などの会社との違いを際立たせようとしている。それは、広告主にアクセスを販売するかどうかという点だ。Google は、 ユーザーたちの電子メールやウェブ検索、連絡先、その他オンライン活動をアルゴリズム的に監視して 広告主たちのための情報を集めている。(Yahoo や Microsoft も大体同じようなことをしているが、Microsoft はもはや電子メールのスキャンをしていない。)Google のユーザーたちは、 広告の環境設定で どの広告を見るかについて多少のコントロールはできるけれども、自分のデータを Google がスキャンしたり、自分の位置情報を知るために Google がありとあらゆる努力をしたり、ユーザーが見たり修正したり削除したりできない形で Google がそれらの統計データを集めたりといったことについてオプトアウトすることはできない。Google の製品やサービスの多くはユーザーには無料かもしれないが、Tim Cook が公開書簡の中で言っているように「オンラインサービスが無料の場合、あなたは顧客ではない。あなたは製品だ。」そう、Google の顧客は広告主だ。2014 年の前半に、 Google の収益の 90 パーセントは広告によるものであった。

だからと言って Google が Android やその各種サービスをセキュアにしたがっていないという訳ではない。Google はいつもセキュリティに高い優先度を与えてきたし、近年はサイバー攻撃や大量監視活動の暴露などもあったのでその努力を倍加させている。Android は 2011 年以来デバイス上でユーザーデータの暗号化をオプションとして提供しているし、また Google は今後数ヵ月以内に出るはずの Android L においてはデバイス暗号化をデフォルト設定とするようになる。

大きな違いは、Google、Yahoo、Microsoft、Amazon、Facebook その他があなたのデータを セキュア にしようとしている一方で、彼らはそれを プライベート にしようとはしていないという点だ。彼らは皆、それぞれのビジネスモデルに供給するため、ユーザーたちについての具体的なことがらをできる限り多く知る必要がある。それとは反対に、Apple は特定の機能やサービスに必要なデータのみにアクセスし、ユーザーの同意の下にのみそれを使い、しかもサードパーティが収集できるデータについても(可能な限り)同じスタンスを広げるのだと主張する。アプリ(または会社)があなたのあらゆる活動を追跡することに、もしもあなたが不満を感じないのならば、Android フォンでするのと同じくらい簡単にそれを iOS デバイスでもすることができる。けれどもそれは、Apple のアプリやサービスのデフォルト挙動ではない。

公平のために言えば、Apple は大衆のために製品をデザインしマーケティングするので、個々の顧客について Apple が何かを知ってもそれがより多くの製品を売る助けにはならない。ユーザーのプライバシーに対する Apple の公約が偽りのものだと疑う理由は何もないが、同社がこの基本的なビジネスモデルの事実からマーケティングの黄金を生もうとしているのは間違いない。

裁判とカナリア -- 去年、Apple は政府による情報要求についての透明性報告書を公開したが、そこにはいわゆる「令状のカナリア」が含まれていた。それは「Apple は USA Patriot Act の第 215 条に基づく命令を一切受け取ったことがない」という一文だ。これはまだ法廷で試されていないアイデアだが、Apple は大部分が秘密の Foreign Intelligence Surveillance Court (FISC、外国情報監視裁判所) による情報開示命令を受け取ったか否かを開示することを禁じられるかもしれないが、そのような命令を受け取って いない と嘘をつくよう強制されることはないという事実に基づいている。もしも後日この報告書のアップデート版においてこの一文が消えたなら、読者は Apple が少なくとも一回はそのような命令をかの秘密法廷から受け取ったのだと勝手に察するだろう。

この令状のカナリアが 2014 年の前半を扱った Apple の透明性報告書で消えたことで、多少の混乱が起こった。実際、Apple は 2013 年の後半、Google、Microsoft、Facebook、Apple その他の会社が米国政府と協議して FISA 命令と National Security Letters (NSLs、国家安全保障書簡) の報告を集約できるようにした変更を反映して、この一文を削除したのだった。その代わりに、現在 Apple は「今まで、Apple は大量データに関するいかなる命令も受け取っていない」と述べている。その意味するところは、Apple は FISC からの情報開示命令を受け取ったかもしれないが、それらの命令が仮にあったとしても大量のデータ引き渡しや、あるいは NSA の PRISM プログラムに見られたような継続的監視に関係したものではなかったということだ。もしも将来この一文が消えれば、読者たちは Apple がデータを大量に引き渡すよう命令されたと推察してよいかもしれない。

プライバシーポリシーに意味はあるのか? -- Apple が改訂したプライバシー情報サイトはひときわ人目を引くが、これは基本的に、法律的誓約のリストというより、むしろ自らの意図を述べたものと見るべきだろう。もしもどこかの一部が不正確ないし事実でないことが判明したとしても、その際に Apple が直面し得る結果は最悪でも不当表示に対する民事訴訟止まりだろう。(プライバシーに適用される米国の法律は極めて少ない。Apple に最も関連あるものは Children's Online Privacy Protection Act (COPPA、児童オンラインプライバシー保護法) だろう。)Apple はその実践方法をいつでも、何の警告もなしに変更することができ、このサイトを一年に一回ずつ、または同社のポリシーに何か「重大な」変更があった場合にアップデートすることを予定している。変更があった場合に Apple がそのことをどうやって人々に知らせるのかについては何の説明もない。

とはいえ、もしも公共性の高いこのプライバシーサイトおよびポリシーの一部分でも虚偽が発覚したならば、Apple のブランドとその評判に対するダメージは計り知れないものとなるだろう。Apple は、まさに 自らの身を危険に晒しているのだ。

もう一つ、明らかなことがある。Apple は今や、プライバシーに対する意識を、高画質のディスプレイや、性能の良いカメラ、高速のグラフィックス、そしてエレガントなデザインなどと同列に、同社の製品エコシステムの 機能 だと考えているのだ。Apple は、世界にあるどんな Google、Facebook、Microsoft、Amazon であろうとも、その点では Apple に太刀打ちできないと思っている。

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9 月が過ぎても、まだ Apple を見張り (Watch) つつ待っている

  文: Jeff Porten: [email protected]
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

長年の Apple 観察者でありファンである私は、Apple のキーノートを興味を持って毎回待ち望んでいるし、ライブのストリーミングを観られるようにと、可能な限りカレンダーのその部分を空けて 楽しみにしている 。それでがっかりさせられることは極めて稀だった。まあ、 iPod 用の靴下を別にすればの話だが。けれども今回は、ストリーミングが始まった後でさえ、私はそのほとんどの時間を頭を掻きつつ過ごした。「ハァ? 何だこりゃ」と(心の中で)声に出しながら。

皮肉なことに、Apple は今回 iPhone 6 と Apple Watch のキーノートの冒頭で、「ものごとを違う目で見る (see things differently)」人々を称賛するビデオを上映した。それを見た私の反応は、きっと Apple の意図したものとは違っていただろうと思う。当然ながら、私は自分が Apple のするあらゆることの完璧なターゲットだなどと思っていないので、キーノートを観つつ結局私が気付いたことと、私が依然として当惑させられていることがらとを以下に記してみたいと思う。

Venti, Vidi, Vici (来た、見た、勝った)? -- 奇妙なことに、このイベントのビッグニュースの三分の一は確かに“ビッグ”であったが、特にニュースと言えるようなものでもなかった。なぜなら、大型化した iPhone が出るという予想はイベントの前からインターネットのいたる所に満ち満ちていたからだ。ここで私は iPhone 6 を無視しようというのではないが、むしろ iPhone 5 を称賛し追悼したいと思う。

「追悼だって? おいおい Porten、ちょっと先走り過ぎてるんじゃないか? まだまだ 5s も 5c も Apple Store で入手できるよ。」確かにその通りだ。新しい iPhone がリリースされればいつも起こる通りに、旧型の機種は「無料または契約付き特価」のバーゲン箱に放り込まれたのだ。でもそこはまた、古い機種が死にに行く場所でもある。iPhone 5 が iPhone 5c としてある意味で復活したことを例外とすれば、私が覚えている限り Apple が旧型 iPhone を化粧直しして出したことは一度もない。iPhone 5 は、5s がリリースされる前までトップモデルであった。

その一方で、私は 4.7 インチの iPhone についてはリリース以前からそれと同等の代用品をかなり使い込んでいた。これは、私の iPhone 5 の首根っこを押さえ込んでいる巨大 (Titanic) かつ酷い (Terrible) キャリアとの言い争いの結果生まれた状況だった。私は 2013 年の初め頃にキャリアを T-Mobile へ切り替えたのだったが、その際 iPhone を二台持つのは馬鹿げている気がした。そこで私は HTC One を買った。これはたまたま物理的なフォームファクターが iPhone 6 とほとんど同じで、ピクセル解像度は iPhone 6 Plus と同等だ。私は普段両方のスマートフォンを持ち歩き、HTC One をテザリング用のホットスポットとして使うことによって iPhone が常時インターネットに繋がるようにしている。(そして Google Voice のお陰で、どちらを使って電話に出ることもできる。)

私は普段 iPhone をズボンのポケットに入れて主力のデバイスとして使っていて、HTC One の方はバックパックの中でホットスポットとしての役割を果たしている。その理由は私が Android より iOS の方が好きだということもあるが、そのことよりむしろ物理的なフォームファクターの理由の方が大きい。Jeff Carlson は双方の iPhone 6 モデルともズボンのポケットに十分入ると言っているけれども(2014 年 9 月 9 日の記事“Apple、大型画面搭載の iPhone 6 と iPhone 6 Plus を発表”参照)どうやら彼はそれと同時に生体認証鍵を備えた未来のキャッシュレス世界に住んでいるらしい。私の住む世界では、金属製のキーや、現金なども持ち歩かなければならないので、ズボンの前ポケットにスマートフォンを入れていては、大切な機器に引っ掻き傷が付いてしまう。私の HTC One をズボンの後ポケットに入れるとはみ出してしまい、すりの絶好の標的になるばかりでなく、知らぬ間に人の家のソファの隙間に潜り込んでしまうかもしれない。ソファに座るというリスクの大きい行動をする度に、私は恐怖の虜となってしまうだろう。それに比べて iPhone 5 は、 ズボンの後ポケットの中でしっかりと布で包まれ、座っていても十分に余地がある[編集者注: TidBITS 編集長の Tonya Engst は、女性用の服の非実用的なポケットをいつも我慢しなければならないのだが、iPhone 4S から iPhone 5s へ変わった時点で既に長さが長過ぎると不満を口にした。来年、彼女がアップグレードする番になれば、iPhone 6s がどんなものになるにせよ彼女はきっとさらなる不満を言うことだろう。-Adam]

誤解しないで頂きたい。スクリーンが広くなるのは素敵なことだし、Apple もサードパーティの開発者たちもきっとそれをうまく使いこなしてくれるだろう。私と意見を異にする人たちが少なくとも 1 千万人いることは承知している。それでも私は本物の 1080p ビデオと HTC One の 1080p スクリーン上の HD コンテンツの違いを見分けることができないし、iPhone 6 Plus の 5.5 インチディスプレイ上でさえ、そのことは変わらないと思う。もちろん、Apple は大きなスクリーンも試してみるべきだ。ただ私が意外に思い、少々ムッとしたのは(「何だこりゃ」という気持ちになったのは)ほっそりした iPhone 5 がどうやら廃止されるように見えるからだ。来年になってから Apple が初めてバーゲン箱に手を伸ばして iPhone 5 を見直し、この古いフォームファクターに内部的アップデートを施してくれるのでない限り、私たちのような小型のスマートフォンの大ファンは、未来永劫 A8 チップもなく、voice over LTE もなく、高画質のスローモーションビデオもなく、2015 年のアップグレードももちろんない、そんな状態に放置されることになるのだろうか?

確かに、他の iPhone 6 機能、例えば光学的安定化とか、より高解像度の画像とかは、おそらく iPhone 5 のフォームファクターの中には収まり切らないだろう。その一方で、Reachability (簡易アクセス) 機能(私はどうしてもこれを Reachability と呼びたいと思えず、いつも Reacharound と呼んでしまう)は、必須とは言えなくなるだろう。ただ、iPhone 5 でも HTC One でも私が片手で持つと経験する困難はそれがあると解消されるのだろうが。

Apple Watch で時計を Watch (見張る) -- さて、頭をズボンの後ポケットにしっかりと押し込んだ後は、頭をそこから引き抜いて、今度は手首に注目してみよう。覚えておられるだろうか、私はスマートウォッチ市場におけるいくつかの競争相手についてレビュー記事を書いた。(2014 年 7 月 31 日の記事“スマートウォッチを四つ比較: Cookoo、Martian、MetaWatch、i'm Watch”参照。)ここでもまた私は明らかに少数派、Apple Watch を「何だこりゃ」と思う側の陣営にいる。なぜ少数派かって? Tim Cook がそれを発表した途端、まだ詳しいことは何も明かされていないのにスタンディング・オベーションが起こったのを見れば明らかだろう。Cook は Apple が「人々がこのカテゴリで期待する内容を再定義しようとしている」と述べた。そのことには私も賛成だ。この Apple Watch は間違いなく、$300 以上のスマートウォッチが乗り越えるべき基準となるだろう。(一方、Pebbles、 Metawatches、 Martians といったものたちには $150 前後の製品という余地が市場に残されるだろう。)

Apple は私が記事に書いた三つの主要な要因のいずれについても場外ホームランをかっ飛ばした。「一目で見られる」情報と、二つの新しい制御画面、それに旧来からの腕時計としての機能だ。けれども Apple Watch が私を驚かせたのは、あまりにもクソ手間がかかり過ぎるというところだ。例えば、新規のアプリを起動する手順を見てみよう。まず、指で押してホーム画面にする。次に「デジタルクラウン」を回してズームアウトし、欲しいアプリのアイコンを見つける。そのアプリがあるあたりの領域に回り込んでから、もう一度クラウンを回してズームインし、今度はさらにもう少し回り込ませてそのアプリが中央に来るようにしてから、うまくタップできますように、間違って隣のアプリを起動してしまいませんようにと心で祈る、という手順だ。思うに、ごくちっぽけなスクリーンの上で百個もあるアプリを表示できるようにするにはおそらくこれが最良の方法なのだろう。また、初めてこれをうまくやり遂げるまでにはきっと相当に緊密な指と目の協調が必要となることだろう。

同じように、それら百個のアプリが一斉にあなたの Apple Watch へ通知を投げ込んできたらどうなるのだろうか? 私はスマートウォッチに望むこととして「(ウォッチ用)ウィジェットのアプリストアがあればもっとアイデアが浮かぶと思うのだが」などと書いたが、今考え直してみると Apple Watch はその意味であまりにも良過ぎるのかもしれない。WatchKit が発表されたことで、Apple Watch のリリース後間もなく何百何千というアプリが入手可能になるのは間違いない。他のウォッチを使ってみた私の経験を信用して頂きたい。到着するたくさんの通知のうち「手首に表示する価値のあるもの」のみに制限したいという願いが、きっと強く強く沸き起こることになるだろう。それはつまり、あなたの手首を叩いて注目を得ようとするものの個数を制限するため、Apple Watch なり、iPhone 上のホストアプリケーションなりを、散々手間をかけていじくらなければならないことを意味するのだ。(ただ、もし Apple が通知のタイプに応じて手首を叩くやり方を切り変える方法を提供してくれたなら、それは全くもって天才的なインターフェイスだと私は思う。)

最後にもう一つ、必要とする iPhone の電波の到達範囲の外で Apple Watch を使った場合、どのような制約が生じるのかを私は知りたい。iPhone を補うためでなく、iPhone に代わってウォッチを使いたいような状況はいろいろある。だから、Apple Watch を単独で使った場合、いったい何ができるのだろうか? 同じように、さきほど大型の iPhone について書いたことを思い出して頂きたいが、Apple Watch が iPhone 5 にも対応しているのは嬉しいけれども、必要なサイズのポケットが付いていないスポーツウェアを着てランニングに出かける iPhone 6 ユーザーがどうすべきなのか知りたいものだと思う。(あるいは Geoff Duncan が口走ったように、オーバーオールが流行の最先端に躍り出るのだろうか?)

Quis Custodiet Ipsos Apple Watch (誰が見張りを見張るのか)? -- またまたラテン語を引用するのをお許しあれ。でもここで私は、Apple Watch でどこがうまく行っているかもしれないか、あるいは少なくとも出荷初日のレビュー記事にどんなことが書かれるのを私が期待しているかという話題に移りたい。

私は Apple が私の意見と同じく Siri を内蔵してくれたのを見て元気づけられた。これで、クソ手間が減ることを願いたい。「Hey, Siri、Activity を起動して」と口で言うだけなら(ホーム画面でアプリを探し回らずに済むので)ずっと手軽で素早くできる。ここでの問題は、この重要なる Siri の機能性がタッチによるユーザーインターフェイスを上回る程度に高速なのかどうかという点だ。Siri がすることの一部は Apple Watch に内蔵され、残りの部分は近くにある必須の iPhone に引き渡されるのだろうと思う。Martian をレビューした際、私はその Siri に相当する機能に(引き渡しによる遅延があったため)あまり感銘を受けなかったし、スマートウォッチで手首上に双方向のマイクロフォンを持つことにむしろ嫌気が差した。今回は、ウォッチ上の Siri にはシームレスな使用体験を望みたいものだ。それはつまり「本当に即座に近い」反応であって、iPhone に手を伸ばすよりは良いもの、そしてできればタップしたり回したりといった手間なしに済むものであって欲しい。

私は Apple Watch に関する Apple の言葉にしない約束に心を惹かれた。つまり、Apple Watch がまさにあなたをより良い人にするという約束だ。少なくとも私にとっては、それこそが Apple Watch 内蔵のアプリが全体として健康・フィットネス志向のものとなっていることの意味合いだと思える。将来たくさんのサードパーティのアプリが出てくることも言うまでもない。あなたがどの程度頻繁に立ち上がるか、どの程度の時間を机の前で過ごしているかといったことをスマートウォッチが記録すれば、それは事実上あなたの生活の一瞬一瞬をゲーム化する効果を持つ。日常的にエクササイズなどする習慣のない私たちフィラデルフィア市民(その食生活はホーギーとチーズステーキ)にさえも、従いやすいシンプルなリマインダーが提供されて生活に小さな変化が起こり、より健康的なライフスタイルに繋がるだろう。フィットネスアプリというものは、従来「フィットネスこそわがライフスタイル」という人々に向けたものであった。でも今回のアプリは、「その他大勢の私たち (the rest of us)」のためのものだ。はたして私たちは、そのようなアプリを迎える用意ができているのだろうか。

私はまた、Apple Watch がまさに私たちすべてがお互いに交流する際の社会的規範を変更することになるのかどうかについて目を配って (watching) いたい(いや、決して駄洒落のつもりはない)と思う。Apple は Apple Watch からの通知を他の人たちから見えないものにする決断をした。(他の多くのスマートウォッチではそのようなことはなく、バイブレーターが他の人にも聞こえる音を出すこともある)そこのところがまさに、私が 2013 年に発した質問に関係している。(2013 年 5 月 29 日の記事“身につけるコンピューティングの社会の未来を考察”参照。)

人類学者の用語で言えば、携帯電話を取り巻く文化には"厚み"がある。つまり、あなたが誰であるか、あなたが誰といっしょにいるか、あなたがどこにいるか、その他何十もの要因に依存して変わる規則と標準の集合体が、即座に処理されコード化される。... 驚くべきは私たちがたった 5 年間で携帯型インターネットコンピュータに対してこうした厚い規則の集合体を作ってきたことだ。

あなたが夕食を共にしている彼が、腕時計を見たとする。それは、時間を見るためか? それとも Facebook のアップデートをチェックするためか? それとも、テキストメッセージを読むためか? ... 食事の相手が 自ら その動作をしているのか、それとも合図に 反応している だけなのかさえあなたには分からない。では、その違いには何か意味があるだろうか? また、その合図を引き起こした コンテンツの違いによって何か差が生まれるだろうか?

Apple Watch において、Apple は「腕時計を見る」という行為の意味について私たちが新たなルールを習得するようになると確信している。Apple Watch 以前の日々には、その行為は「ああ退屈だ」とか「私が待っているのは、ええと、あなたより大切なものなんです」とかいう意味を持つのが一般的であった。このケースでは、Apple は自らの策に溺れたかもしれない。手首を持ち上げて回せば自動的にスクリーンがオンになる機能が、こっそりとウォッチをチェックするのをかえって難しくしている。問題は、まわりにいる他の人たちがそれをどう受け取るかだ。そして、さまざまなスマートウォッチが一般大衆にどの程度素早く受け入れられるかに依存しながら、状況は時間とともに変化して行くに違いない。

これが、私が Apple Watch を「手間がかかり過ぎる」として非難する評価を与えたことの主たる意味だ。私は、腕時計を時折 ちらっと見る だけならば社会的に容認されると思うけれども、腕時計を いじくる ことはずっと容認され難いと思うからだ。Apple Watch の実演は見事だったけれども、それがどのように受け入れられるかの問題は、結局はちらっと見ること以外のやり取りがどの程度頻繁に必要となるかというところに行き着くだろう。私の推測を言えば、これまでに登場した他のどのスマートウォッチよりも状況は良いだろうけれども、社会的に見て「手首で容認可能」なことは何かについてのルールを再定義せずに済むほどうまくは行かないだろうと思う。

Apple Paying the Piper (笛吹きに支払う) -- そこで次に考えたいのが、Apple の発表の第三の部分、私が未だに困惑したままでいるもの、Apple Pay だ。話を明確にするために言えば、Rich Mogull と Adam Engst が既に私たちの現行のクレジットカードシステムという汚れに満ちた下水溜めについて記事を書いている。(2014 年 9 月 9 日の記事“Apple Pay が代金決済業界に揺さぶりをかける”参照。)基本的に、現行のクレジットカードシステムは、あなたのクレジットカードを目にする人たちの圧倒的大多数が、圧倒的大部分の時間、品行方正な人間であるという大原則の上で機能している。Apple Pay が示したセキュリティ対策を見ただけでも、その成功は即座に明らかだろう。

問題が生じるのは実際に Apple Pay を使用する段階、とりわけ採用の初期の段階だ。Cook は 220,000 の店舗で使えると述べたが、その数字が素晴らしいと感じた人も、現在米国内に 3 千万 の商店があることを思えば考えが変わるだろう。財布を持たずにランニングに出かけてもペットボトルの水は買えるが、それは Walgreens か McDonald's の店舗に寄った場合に限られる。現在のところ、Apple Pay は PayPal や LevelUp など他の決済方法と同じ問題に直面する。それらが使える商店が限られているので、どこで使えるかを覚えていなければならないのだ。

ここでいったん楽観的に考えて、2015 年の中頃には Apple Pay が相当数の商店で受け入れられ、もはや使えることが特殊ではないと思えるようになったと仮定しよう。あなたは売場のレジに行き、そこでは Apple Pay もクレジットカードもどちらも使えたとしよう。もしもあなたが Apple Watch を身につけているなら、答は簡単だ。まるで手品師 Mandrake になったかのようにサッと手を振れば支払いが終わるのだから、これほど便利なことはない。

でも、もしもあなたがまだウォッチを持たない人だったら、そんなあなたに Apple が想定するのは、ポケットから iPhone を取り出す方がクレジットカードに手を伸ばすよりも簡単だということだ。けれども残念ながら、次の二つの事実がある:

  1. その iPhone 6 は、もはや小切手帳と同じくらい大きい。
  2. クレジットカードは、落としても割れたりしない。

クレジットカードは貴重品だが、交換するのに大して費用はかからない。ところが Apple Pay はまさにその方程式をひっくり返すことになる。iPhone 6 と Apple Watch はあなたの銀行のアカウントにアクセスするには役に立たないが、交換するとなれば非常に高価だ。Cook は iPhone 6 を使ってドライブスルーで支払いができると言ったけれども、私はそんなことはしたくない。それは、走る自転車に乗ったまま光学的安定化機能を使って映画を撮るというデモを自分で繰り返したくないと思うのと同じ理由だ。

もちろん、iPhone を決済用の台にタップするのはそれほど危険なことではない。ただ、何かに気を取られている時に片手でするには少々危険な行為だということだ。そして、買い物をしている時というのは、まさにそれが当てはまる。それに加えて、あなたが年に二百回買い物をすればそれだけの回数を掛け算しなければならないし、Apple Pay が二百万回使用されるとすればそれを考慮する必要がある。間違いなく、Apple Pay がスタートしてから三日もしないうちに、どこかの愚か者が iPhone を壊して Apple がそれを交換してくれないというニュースが聞こえてくるだろう。つまるところ、Apple Pay はもはや無料のサービスではないということだ。私なら、まず AppleCare+ にサインアップしておかなければ怖くて使えないだろう。

私たちが現在見て知っているクレジットカードというのは、いずれ死ぬべきものだ。実際、ヨーロッパでシステムをよりセキュアにしている chip-and-PIN のテクノロジーがようやく米国にも上陸しようとしている今、クレジットカードは死ぬ運命にある。私の理解するところでは(これも Rich と Adam に感謝しなければならないが)Apple Pay には chip-and-PIN を上回る利点がいくつもある。ただ、Apple Pay を使う場合は、使っているものを壊した際に新しいクレジットカードを入手するため $200 以上の大金が必要になるという話だ。

何を見張る (Watch) べきか -- 以上述べてきたことが、私が 2015 年には Apple アップグレーダーとなりそうもない理由のあらましだ。けれども、私は期待(と若干の不安)を持ちつつ 2015 年 9 月頃の iPhone 発表を待ち望みたい。その際のアップグレードの中に iPhone 5 くらいのサイズのモデルが含まれるのか、それとも iPhone 5 のサイズは iPod classic と同じ消滅の運命にあるのか、つまり愛なき長寿なのか、を知りたいからだ。(私の予想を言えば、期待はまさに叶うだろう。それを何と呼ぶべきか? iPhone 6s Minus なのか? iPhone 6s mini か? それとも iPhone 6s nano なのか?)

また、私は Apple Watch がきっと成功すると思う。よく売れるのは主として Pebble が Kickstarter プロジェクトであった頃から喜んでサインアップした種類の人たち、中でもその種類には属するけれども実際には Pebble を購入しなかった人たちだ。私はこのアップグレードの道には乗らないが、その理由は私が iPhone のアップグレードの道に乗っていないからだ。もしも仮に、私の HTC One ほど図体が大きくない iPhone 6 の選択肢があって十分に魅力的だったなら、私は購入を検討しただろう。また、Apple Watch は確かに iPhone 5 と互換だけれども、契約外であるにもかかわらずオンラインにはなっている私の iPhone の状況(風変わりなものであることは認めよう)で使えるのかどうか、私は知りたい。たとえ使えたとしても、その時点で私は Apple エコシステムの中で生きるかどうかの決断をすることになるだろう。過去二年間の私は iPhone と Android の間で切り替えつつ使ってきたのだが。(これと同様の決断の時が Android Wear ウォッチを買った場合にもやって来るだろう。ただ、人々の心を捉え売り上げを伸ばすという点においては、どんな Wear ウォッチよりも Apple Watch の方が成功するに違いないと私は思う。)

Apple Pay について言えば、それが使える少数の場所においては素晴らしく働くだろうと思うけれども、現状のアメリカの金融システムを根こそぎ乗っ取るようなものにはならないだろう。Apple Pay が本格的に入り込むであろう分野は二つだ。一つは Apple Watch のオーナーたち、彼らには支払いがとても簡単になるからだ。もう一つはオンライン決済、ここでは Apple Pay の厄介な点がまだ少ないからだ。

だから、点数を付けるのが好きな人たちのためにまとめれば、今回発表されたものはどれも、失敗に終わる可能性は低いと思う。ただ私は、既に iPhone 6 を使い始めていて Apple Watch のためにせっせと貯金もしている人たちを除いて、2015 年の Apple 発表会にはいつもよりもう一段、注意深く目を光らせておく必要があると思う。そうは言っても、私は逃げも隠れもしない。もしも来年になって、結局私自身もこれらのデバイスのどれかを身につけていたなら、必ず私は TidBITS に戻って自分の claim chowder を残さず食べてみせよう。

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FunBITS: Epic Zen Garden で新型 iPhone が実力を発揮

  文: Josh Centers: [email protected], @jcenters
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

もしもあなたが Apple の 2014 年 WWDC キーノートを観たなら、Epic Games の Tim Sweeney が壇上に招かれて彼の会社の Zen Garden デモを実演したのを覚えておられるかもしれない。このデモは、iOS 8 の新しい Metal API のパワーをまざまざと見せつけた。シェーダ、人工知能、粒子効果などにおける驚くべき進歩を、彼のデモは示してみせた。

さて、その技術デモ、Epic Zen Garden が App Store から無料で入手できるようになった。iOS 8.0 かそれ以降を要し、iPhone 5s、iPad Air、iPad mini Retina ディスプレイモデルまたはそれ以降で動作する。ダウンロードサイズは 232 MB だ。

ゲームプレイについて言えば、Epic Zen Garden では大したものは提供されない。けれども、もしあなたが新型 iPhone 6 か iPhone 6 Plus を購入したばかりなら、あなたの新しいおもちゃを友だちに自慢するための、これは最高に華麗な手段となるだろう。

Epic Zen Garden は、まず一軒の家の外側からスタートする。そこにはタップ可能なターゲット(白い丸で示してある)が三つある。三つのターゲットはそれぞれに異なる活動を開く。(スクリーンショットはすべて iPhone 6 で撮影したものだ。)

image

それだけだ。名前には Epic とあるが、ここにはとりたてて epic (壮大) なものは何もない。ただ、豊かで美しいビジュアルと、今後やって来るべきテクノロジーの約束があるだけだ。オープンワールドの Epic Citadelを覚えておられるだろうか。あれは iPhone 4 の優れた能力のデモのためのものであったが、その後より窮屈な、しかし信じられないほど人気を集めたゲーム Infinity Blade へと進化した。(三代目を私がレビューした記事“FunBITS: Infinity Blade III で新しい iPad を自慢しよう”(2013 年 11 月 8 日) を参照。)

Epic Citadel の「ゲームプレイ」がその最終的な製品リリースでは非常に異なるものに進化したのと同じように、肉付けされた後の Epic Zen Garden がどのようなものになるにせよ、それが今回の技術デモの「ゲームプレイ」と似たものになるとは思えない。でも、Apple の Metal API の持つ新たなるパワーを生かして Epic がどんなことをしてくれるのか、今からとても胸躍る楽しみではないか。

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TidBITS 監視リスト: 注目のアップデート、2014 年 9 月 29 日

  文: TidBITS Staff: [email protected]
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

OS X Server 3.2.1 -- Apple が OS X Server 3.2.1 をリリースして、Profile Manager 対応を追加することにより iOS 8 と OS X Yosemite のいくつかの新機能に対応した。Mobile Device Management (MDM) を使って iOS 上では PDF、EPUB、および iBooks Author ファイルをインストールでき、OS X に企業向けアプリをインストールでき、Mac や iOS デバイスの名前を変更できるようになった。iOS 8 において、OS X Server 3.2.1 は管理対象のアプリがデータを iCloud に保存しないようにできるとともに、セルラーデータの使用、Handoff、同期、管理対象ブック、および Spotlight 検索に制限を付けられる。今回のアップデートではまた、iOS 8 での管理対象ウェブドメインの設定や、iOS 8 と OS X Yosemite でのメールドメインの設定もできる。(新規購入 $19.99、無料アップデート、185 MB、10.9.5+)

TidBITS 会員はストリーミング中の Charles Edge 著 "Take Control of OS X Server" の各 "chapticle" を読んで OS X Server を学ぶことができる。この本は近日中に一般向けに出版される予定だ。最初の二つの章、"Take Control of OS X Server, Chapter 1: Introducing OS X Server" と "Take Control of OS X Server, Chapter 2: Choosing Server Hardware" は(TidBITS 会員に限らず)誰でも読める。TidBITS 会員は今後の chapticle にもフルにアクセスできる。さらに、 TidBITS 会員プログラムにはすべての Take Control ブックの 30 パーセント割引、一流の Mac アプリの割引購入、フルテキストの RSS フィード、バナー無しバージョンの TidBITS ウェブサイトなど数々の特典があるので、これを機会にぜひ加入して頂きたい。

OS X Server 3.2.1 へのコメントリンク:

Evernote 5.6 -- Evernote 5.6 は一目見ただけではそれほど違って見えないかもしれないが、この情報管理アプリはそのエンジンを刷新して全体的な速度、同期、および編集の機能を改善している。今回のリリースではノートの作成と編集の際の新たなオプションを提供し、ノートの中で画像を(元の画像のサイズを変更することなく)リサイズできるようにし、ノート内部のチェックボックスのデザインを変更し、テーブルエディタを新設し、Evernote Business ユーザーや多数の共有ノートブックを持つユーザーのために同期時間を改善している。Evernote 5.6 ではまたノートの検索を改善して検索結果を関連度の順序で表示できるようになるとともに、Spotlight 検索を Evernote アカウント内部のみで使う機能への対応も追加している。この記事の執筆時点で Mac App Store にある Evernote のバージョンがまだ 5.5.1 であることに注意したい。(Evernote からも Mac App Store からも無料、55.9 MB、リリースノート、10.6.6+)

Evernote 5.6 へのコメントリンク:

SpamSieve 2.9.16 -- C-Command Software の Michael Tsai が SpamSieve 2.9.16 をリリースし、OS X 10.9.5 Mavericks に対応するとともに SpamSieve のフィルタリング精度を上げた。今回のリリースではまた 10.10 Yosemite との互換性のため Outlook と Entourage のスクリプトを更新し、Yosemite のバグを回避するためいくつかの Apple Mail スクリプトを更新した。さらに、SpamSieve 2.9.16 は(Info.plist ファイルの編集に依存しない)新しい方法で SpamSieve の Dock アイコンを隠すようになり、フォルダの所有権とアクセス権の修理を改善し、MailTags がインストールされていると起動時にハングした問題を回避し、Apple Mail の環境設定ファイルが余分に存在するという誤った警告を削除している。(新規購入 $30、TidBITS 会員には 20 パーセント割引、無料アップデート、13.3 MB、リリースノート、10.5+)

SpamSieve 2.9.16 へのコメントリンク:

Sandvox 2.9 -- Karelia が Sandvox 2.9 をリリースして出版パフォーマンスを改善し、FTP と WebDAV を SSL セキュリティに対応させ、Vimeo オブジェクトを新設して Vimeo.com でホストされたビデオを手軽に表示できるようにした。このウェブサイトオーサリングツールはまた、出版作業の最中のエラー報告を改善し、出版作業を中断した際に現在アップロード中のファイルを最後までアップロードできるようにし、パフォーマンス改善のため SFTP と FTP の接続をできる限り再利用するようにし、出版されたビデオや MP3 オーディオを Internet Explorer 9 上で(Flash に依存する必要なく)ネイティブに再生できるようにし、Google Chrome でのファビコンの互換性を改良し、Raw HTML 編集と Code Injection ウィンドウでスマートクォート置換を無効にし、Dock 上の出版作業進行インジケータを修正している。(新規購入 $79.99、Karelia または Mac App Store から無料アップデート、38 MB、 リリースノート、10.6.6+)

Sandvox 2.9 へのコメントリンク:

PopChar X 6.7 -- Ergonis Software が PopChar X 6.7 をリリースして、この文字発見ユーティリティにいくつかの速度改善を施した。最近使ったフォントの更新や、文字検索がアクティブな際のフォントテーブル更新も高速化し、利用可能な文字やレイアウトの計算も以前よりきびきびしたものとなった。今回のアップデートではまた PowerPC プロセッサで動く Mac で文字が不可視になっていた問題を修正し、OS X 10.10 Yosemite の Find フィールドの自動選択における問題を回避し、ライブラリのいくつかのコンポーネントにおけるローレベルの問題点の処理を改善して一部のシステム構成の下でのクラッシュを回避している。(新規購入 29.99 ユーロ、TidBITS 会員には 25 パーセント割引、無料アップデート、3.8 MB、リリースノート、10.5.8+)

PopChar X 6.7 へのコメントリンク:

Typinator 6.2 -- 正規表現に基づく拡張を作成できるこのユーティリティの機能を基にして、Ergonis はいくつか新しい内蔵関数を盛り込んだ Typinator 6.2 をリリースした。Count、List、Any、Index の四つだ。これらを使って、より長いテキスト断片の一部分を抽出して解析できる。このテキスト展開ツールはまた、入力フィールドがスクリーンに収まらないほど多くある場合にスクロールするリストを使って表示するようになり、スペリング間違いの修正処理を改善し、LaunchBar の入力フィールドでは展開をしないようにし、Microsoft Remote Desktop がアクティブな際には(正しく)自身を無効にし、ライブラリのいくつかのコンポーネントにおけるローレベルの問題点の処理を改善して一部のシステム構成の下でのクラッシュを回避している。(新規購入 24.99 ユーロ、 TidBITS 会員には 25 パーセント割引、7.3 MB、 リリースノート、10.5.8+)

Typinator 6.2 へのコメントリンク:


ExtraBITS、2014 年 9 月 29 日

  文: TidBITS Staff: [email protected]
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

今週の ExtraBITS には 2014 年における Mac OS 9 の生存能力について、古いセキュリティ脆弱性が死に絶えない理由について、それから Apple による iPhone ストレステストの手順についてのリンクが集まった。

この 2014 年に Mac OS 9 を使う -- Ars Technica の Andrew Cunningham は同僚たちから、数日間 Mac OS 9 を使ってみろという課題を突き付けられた。2002 年型 PowerBook G4 を用意して、Cunningham は今や 12 年前のものとなった Mac OS 9.2.2 の上で自分の仕事に取り掛かった... がしかし、結局は何も仕上げることができなかった。しかしながら、彼はこれがもはや現代の Apple デバイス上では走らないクラシックなゲームのための素敵なセットアップになることに気付いた。

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なぜセキュリティ脆弱性は死に絶えないか -- 古いセキュリティ脆弱性も、いつまでも消え去らないように見える。Boing Boing の記事で、私たちスタッフの一員 Glenn Fleishman がその理由を説明する。つまるところそれは、古いソフトウェアの使用を停止しない会社が多くあることと、それを管理する財源がないことが原因だ。

コメントリンク: 15106

iPhone が死に行く場所 -- ズボンのポケットの中で iPhone 6 が曲がってしまったという申し立てへの反応として、Apple は珍しく The Verge に、新型 iPhone モデルをストレステストする施設を見せた。リリース前に Apple は 30,000 台の iPhone をテストしたが、その中にはズボンのポケットの中で受ける圧力をシミュレートする特殊なテストもあった。Apple は、これまでに販売された 1 千万台の iPhone 6 と iPhone 6 Plus モデルのうち、曲がってしまったという苦情が届いたのはたった 9 件であったと述べた。

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TidBITS ISSN 1090-7017©Copyright 2014 TidBITS: 再使用はCreative Commons ライセンスによります。

Valid XHTML 1.0! , Let iCab smile , Another HTML-lint gateway 日本語版最終更新:2014年 10月 3日 金曜日, S. HOSOKAWA

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