TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#1272/11-May-2015

特集記事が満載の今週の TidBITS では、写真家 Jeff Carlson が新しい二つのクラウドベースの写真管理方法を比較する。Apple の Photos と、Adobe の Lightroom CC だ。Josh Centers はもう一度スパイ活動の話題を取り上げ、議会の新しい法案、最近判明した監視活動プログラム、大量監視活動に対する姿勢に基づく各大統領候補者のランク付け、その他を詳しく伝える。FunBITS 記事では、最も著名なロックアルバムの数々が録音された、あの伝説的な Abbey Road Studios を巡るツアーを Google が提供しているので Geoff Duncan がこれを探訪する。Geoff の素晴らしいオーディオ版もぜひお聞きあれ! 今週注目すべきソフトウェアリリースは Fantastical 2.0.4、ChronoSync 4.6.1 と ChronoAgent 1.5.2、Downcast 1.1.10、Safari 8.0.6, 7.1.6, 6.2.6 だ。

記事:

----------------- 本号の TidBITS のスポンサーは: ------------------

---- 皆さんのスポンサーへのサポートが TidBITS への力となります ----


Lightroom CC と Photos for OS X で、写真を何処でも

  文: Jeff Carlson: [email protected], @jeffcarlson
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

最近では、写真を一台のコンピュータ上に保存しそして管理するだけではもう十分ではない;我々はこれらの写真を自分たちの他の機器上にも欲しいのである。しかし、それだけではなく、iPhone (そして iPad) で撮った写真も逆向きに流れて Mac 上の写真ライブラリにも追加されて欲しい。そして、全ての編集と整理の結果も同期されるべきである。

April 2015 に Apple は Photos for OS X をリリースした。これは iPhoto と Aperture に置き換わり、そして複数の Apple 機器上で画像を共有するための iCloud Photo Library をサポートする。同じ月の後半には、Adobe が Photoshop Lightroom CC を発表、新機能だけではなく、この写真管理ソフトウェアは、タブレットや電話上の写真も対象とするより広範囲なモバイルワークフローの一部とするやり方に焦点を当てた。

ちょっと便利なだけと見えるかもしれないことが - 考えてもみて、自分の iPhone で写真を撮って、そしてそれが Mac 上に現れるのだ! - 我々がデジタル写真を扱う方法における目に見える変化の始まりなのである。では、この両方のアプリケーション - 実際には、両方のエコシステム - がこの目標をどう達成するのかを見てみよう:

iCloud 版 -- Apple は、My Photo Stream の導入以来顧客が要望してきたことを実際に実現させた:全てのことを何処でも同期する、である。もし画像が OS X のあなたの Photos ライブラリにあるのであれば、それはあなたが所有する全ての Apple 機器、iPad や iPhone から Apple Watch まで、の Photos アプリに現れる。(時計は、最初はあなたが好みとした写真だけを対象とするよう設定されているが、選んだアルバムどれでも、All Photos を含んで、同期することが出来る;現れる画像の数は、写真の保管にどれだけのスペースを割いているかで決まるが、最大では 500 枚の写真で 75 MB を要する。) 一人だけ除け者となっているのが Apple TV で、これは My Photo Stream と iCloud Photo Sharing はサポートしているが、iCloud Photo Library はまだである。iCloud Photo Library を有効にすると、あなたの Mac 上の Photos アプリはライブラリにある写真を iCloud にアップロードする。あなたのライブラリの大きさとあなたのインターネット接続の速さにもよるが、このプロセスはかなりの時間を要する - 場合によっては、何日という単位で。

(注記:iCloud Photo Library はこの新しい Photos アプリケーションを使うための必須要件では ない。iPhoto や Aperture からアップグレードする人は、この iCloud の要素無しで Photos を使い続けることも可能である。もしこの道を選択する場合、写真を iPhone や iPad に iTunes 経由で移動させること、そして iOS 機器上で撮られた写真をコピーすることは可能であるが、編集や他の整理の結果は同期されない。)

勿論、平均的な Photos ライブラリは iOS 機器には収まりきらないであろう。全てを収納するため、iCloud は圧縮された、低解像度のサムネールを送り、ストレージを節約する。ある画像を見たいと思った場合、より解像度の高いバージョンが必要に応じてダウンロードされる - その画像が転送される間、小さな進行歯車が右下隅に現れる。もしライブラリが小さいなら、圧縮版ではなく、元の画像を iOS 機器にダウンロードする選択も出来る:Settings > Photos & Camera に行き、そして Download and Keep Originals を選択する。

image

更に、同じ Apple ID にサインインした複数の Mac 間でも一つの Photos ライブラリを同期出来る。この場合、Photos は最大解像度のオリジナルか或いは最適化されたバージョンのどちらかをダウンロードするオプションを提供する;後者は、例えば、旅をする時に使うストレージ容量の限られた MacBook Air 上で自分のライブラリにアクセスするには最適である。これはまた、主たる Mac 上でスペースを空けたい時にも使える。オリジナルは iCloud に保存されたまま残るが、私はこれを良いバックアップの代用になるとは思わない。私の場合、私のライブラリは私の MacBook Pro に最適化された形で保存されるが、私は更に私の仕事場にある Mac mini 上に Photos を設定し、そこにオリジナルを保存している。これは、外部ハードドライブへの手元バックアップに加えてのものである。自分の写真をバックアップする時、ケチってはいけない!

image

Creative Cloud 版 -- Lightroom CC (そして、Creative Cloud 購読加入の一部の場合、以前のバージョンの Lightroom 5) は、Apple のものと似たアプローチを取っているが、包括的であろうとはしていない。Lightroom のデスクトップバージョン (OS X 及び Windows) と iOS の Lightroom モバイルアプリの間で写真を移送する媒体は、Adobe 独自のデータクラウドである Creative Cloud である。

多くの写真家は、私も含んで、ライブラリの管理や写真の編集に Lightroom を使うのを好む (これについてもっと知りたければ、私の本 "Take Control of Your Digital Photos on a Mac" がある)。しかし、最近まで写真に iOS 機器からアクセスするのは簡単ではなかった。最も直接的な方法は iPhone 或いは iPad を Mac に USB 経由で接続し、写真を通常のカメラからの様に Lightroom にインポートすることであった。面倒な手順というわけではないが、近頃では iPhone を Mac に物理的につなぐことなどもう殆どしないのは私だけではないであろう。私が必要とする他のデータ全ては iCloud 経由で転送されるので、私は単純にプラグインするのを忘れてしまうのである。そして、当然のことながら、その接続は双方向ではなく、写真を Lightroom エコシステムの中で Mac から iOS 機器へと戻す手立てはない。

Lightroom モバイルアプリは Creative Cloud 経由でその接続を私の代わりにやってくれる。Apple の iCloud モデルとの主な違いは、Lightroom は Mac 或いは Lightroom モバイルの中で特定したフォルダのみを同期することなので、iOS 機器上で写真ライブラリ全部にアクセスすることは出来ない。Lightroom CC の Collections リストの中で、フォルダの名前の左にある同期ボタンをクリックすると、そのコンテンツは Creative Cloud にアップロードされる。

image

Lightroom モバイルの中で、そのフォルダは新しく同期されたコレクションとして現れる。一旦同期コレクションが作成されると、それに加えるものは何でも - Mac 或いは iOS 機器に拘わらず - 両方の場所に現れる。最初は気がつかないかもしれないのは、iPhone や iPad で撮った新しい画像は Mac 上の Lightroom に自動的に送られる能力である。

image

これをやるには、Lightroom モバイルで、新しいコレクションを作成し (+ ボタンをタップする) それからコレクションのカバーの右下隅の省略符 (...) をタップし、更なるオプションを見る。Enable Auto Add をタップ、そして現れるダイアログで自分の行動を確認する。その機器を使って撮った新しい写真は全てそのコレクションに現れ、そしてデスクトップ上の Lightroom に Creative Cloud 経由で同期される。

image

モバイル機器上で同期された写真が占有するストレージ量を最小化するため、Lightroom は最初に画像を Adobe のロス無しの DNG (Digital Negative) フォーマットに変換する。これは細部を犠牲にすることなく上手に圧縮する。

Photos での同期編集 -- 写真のコピーを作成し複数の場所に現れるようにするのは大事なことだが、では、そのアプリはあなたが編集した画像をどう扱うのか? この観点からすると、事態は数ヶ月前よりずっとましである。

Photos for OS X は、機器間で編集をどう連携するのかの仕組みを改善した;以前は、iPhone や iPad 上の Photos アプリでなされた編集は iPhoto や Aperture には移行されなかった。(事実、この制約は Photos for OS X に切り替えずにこれらアプリケーションのどちらかに固執している場合は、未だ存在する。) 今や、Photos for iOS でなされた編集は OS X バージョンに移行されるし、その逆も真である。この修正はまた、非破壊的である。つまり、元になっているオリジナルのピクセルを変更しない。

例として、iPhone 上で写真を撮り、そして簡単に分かるような変更を Color 制御に加えてみることにしよう:Saturation を 1.00, Contrast を 0.71, そして Cast を 0.73 に動かしてみる。

image

Done をタップすると、このアプリは編集バージョンを iCloud にアップロードし、そして Photos for OS X の私のライブラリにあるその写真をアップデートする。Adjust 編集モードにおける Color 設定値は iPhone 上のものと一致していることに注目して欲しい。

image

現時点では一つの制約があるが、将来のアップデートで Apple が対応してくれることを願いたい。Photos for OS X には、iOS バージョンには無い幾つかの調整が含まれている。例を挙げると、ビネット効果 (画像の周辺を暗くして、背景になじませる) を追加する能力である。私がこれを Mac 上の写真に追加すると、Saturation, Contrast, そして Cast の色設定はゼロにリセットされてしまう - 画像は変わらないが、数値はリセットされる。

image

その時点で、Photos アプリはその画像をあたかも編集されていない画像であるかのように扱う。Photos アプリの両方のバージョンに存在する編集だけを使う限り、その設定を調整出来る。(オリジナル画像に戻ることも出来、そうすると全ての調整は取り除かれ、もう一度最初から始められる。)

Lightroom での同期編集 -- Lightroom の編集もまた Mac 上でも Lightroom モバイル上でも、非破壊的である。Photos での時のように、iPhone 上で行った調整はデスクトップに引き継がれる。編集はテキストコマンドとして記録されるので、一つの機器上での画像をアップデートするには、その変更のテキスト記述だけを他の機器と同期すればすむ。

image

image

Lightroom で一つ奇妙なのは、Lightroom モバイルにはない編集が適用された時に起こることである。iOS アプリはデスクトップバージョンの Develop モジュールにある Basic ペーンを再現するが、勿論 Lightroom はもっと色々な事が出来る。例えば、Lightroom は画像の一部分に段階的な塗りつぶしを適用出来る。空だけを暗くしたいとか、或いは写真の下部の前景を明るくしたいとかである。

Lightroom モバイルには段階的なフィルタツールはないが、その効果はモバイルバージョン上でも適用される。事実、Lightroom モバイル内で、それを更に他の写真に適用することも可能である。これは、Lightroom モバイルには Copy Settings 機能があり、適用された如何なる調整でも、そのアプリにあるコントロールを持つものに限定されず写真間でコピペさせてくれる。(Adobe の Russell Brown はこの課程をもっと詳細に説明している。それには、特定のレンズ調整を適用するためのテンプレートの作成方法も含まれている。)

image

整理の同期 -- 良い写真ライブラリとは、あなたの画像を投げ入れておいてそして後日それをかき分けるというバケツではない。多くの人が、写真を整理するためアルバムにグループ分けする、そしてまた、画像を説明するメタデータ、題名、注記、そして評価、を付け加える。

その様な整理の中で、Photos for OS X と iOS 機器上の Photos アプリの間で行き来をするものは殆ど無い。アルバムは保持される。そこにはアプリケーションが、お気に入り、パノラマ、ビデオ、スローモーションとこま撮りの映画、そしてバーストを集めて作るものも含まれる。しかし、題名、注記、そしてキーワードは iPhone や iPad 上には現れない (Photos for OS X は、iPhoto や Aperture からの星評価をキーワードに変換する)。メタデータはそこにあるのだが、Photos for iOS では見たり編集したり出来ない。評価の代わりに、Photos は二値のお気に入り機能を使う:写真はお気に入りかそうでないかのどちらかにマークされる。

Lightroom モバイルは、正しい方向に向かって数歩前進しているが、Lightroom ユーザーが慣れ親しんでいる整理のやり方にはまだ追いついていない。星評価はプラットフォーム間で同期するし、フラッグもそうであるが、題名、注記、そしてキーワードは無い。カメラが提供するメタデータ - シャッター速度、絞り、ISO、 寸法、そして撮影時間と日付 - は見ることが出来る。(勿論、アルバムは転送されるが、それはアルバムを同期するよう指定しなければならないからである。)

残念ながら、Lightroom も Photos も、どちらも現時点ではスマートアルバムの同期はさせてくれない。私は、伝統的なものよりもスマートアルバムの方を遙かに好む、何故ならば、私は通常写真の特徴を、例えば、ある特定期間における最高評価のショットの様な、探し求めるからである。

金食いクラウド -- 写真を各々の会社のクラウド銀行に預けそして同期するのは、勿論、全く無料というわけでは無い。あなたの写真ライブラリの大きさにもよるが、自分の写真は地上に置いておくという選択をする人もいるかもしれない。

Apple は 5 GB の無料ストレージを含んでいるが、これは iCloud Drive や iOS バックアップのような他のサービスでも使われる。それ以上のストレージには毎月の支払いが発生する:$0.99 で 20 GB, $3.99 で 200 GB, $9.99 で 500 GB, そして $19.99 で 1 TB である。もしあなたのライブラリが 1 TB を超える場合、iCloud はクラウドストレージからより古い写真を自動的に削除する。

Adobe の Creative Cloud には、たったの 2 GB のストレージがその Photography プラン に含まれるが、料金は月額 $9.99 である。月額 $49.99 の Complete プランだと Lightroom を手にすることが出来、これには 20 GB のストレージが含まれる。これは Apple の全ライブラリを収容するアプローチとは大違いで、共有するのは一部の写真だけで、全部がその対象になることは無いという考え方を反映している。

現在、Creative Cloud 用にこれ以上のストレージを購入するオプションは無く、強いて挙げれば、Creative Cloud for Teams プランがあるが、これだと 100 GB のストレージが得られるが、遙かに高価となる。Single App プランは月額 $29.99 で、Complete プランは月額 $69.99 である。そして Adobe Web サイトでははっきり言っていないが、Adobe の電話セールスレップは我々に Creative Cloud for Teams には、少なくとも二つのライセンスを必要とすると言っており、そうであれば、これらの料金は二倍になる。

勿論、Creative Cloud は Apple の iCloud よりも遙かに少ないストレージをより高価な値段で提供しているが、更に手にするものは、Photoshop CC と Photography か Single App プラン、又は Adobe のアプリのスイート全部である。従って、同じ土俵での比較は出来ない。

写真を何処でも、もはや頭痛の種ではない -- あなたの写真全てをあなたの機器全てで見られるようにするという点では、Apple の新しい Photos for OS X と iCloud Photo Library の組み合わせはほぼ要求を満たす。多少の奇癖、例えば、ものすごくバンド幅を食うとか、もあるが、Apple はこれらを修正するであろうことを望みたい ("iCloud Photo Library: 問われなかった FAQ" 15 April 2015 参照)。

もし既に Adobe の Lightroom に投資しているのであれば、同期するのは Apple 程には広範囲ではなくそしてより手数もかかるが、Creative Cloud システムの中に、あなたのプランのストレージ限度の範囲内に収まっている限りは、とどまることを可能にしてくれる。

そして、どちらのアプリケーションも非破壊的編集を適用するという正しい選択をしており、編集はどの機器からでも可能である (主として、Photos の場合)。整理オプションの同期はどちらの場合も遙かに弱いが、メタデータはこの同期プロセスで失われることはない。

最終的には、もしこれ迄に、機器間で写真を移動させようとしてあまりに多くの時間を要してきた、或いは違う機器上で自分の写真をいじろうとするのは諦めてきたと言うのであれば、良い知らせは、これらの苛立ちは過去のものだと言うことである。解は、無料でも完全でも無いし、新たな苛立ちを経験することになるかもしれないが、写真一式に複数の機器からアクセスしたいという人には今や、二つの真に実行可能な選択肢がある:Apple の Photos と iCloud Photo Library の組み合わせ、そして Adobe の Lightroom と Creative Cloud の組み合わせである。

コメントリンク15640 この記事について | Tweet リンク15640


スパイ活動の情報に遅れずついて行こう X 10.0

  文: Josh Centers: [email protected], @jcenters
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

スパイ活動関係の最新情報をお伝えした前回の記事(2015 年 4 月 17 日の記事“スパイ活動の情報に遅れずついて行こう 9: PRISM の中身はガラクタ”参照)以後、たくさんのことが起こった。議会は新しい法案をこしらえるために忙しく働き、新たな監視プログラムが明かされ、新たな大統領候補者が争いに加わり、司法当局と Silicon Valley との戦いがエスカレートし、人目を引く漏洩者が法廷に臨んだ。

法案はまだまだ動く -- 前回の記事の時点で、Patriot Act (米国愛国者法) は静かな最期に向かいつつあり、USA Freedom Act (情報自由法) はとうの昔に死んでいた。それ以後、議会はずっと忙しく働いていた。

上院多数党院内総務 Mitch McConnell (共和党、ケンタッキー州) は 2015 年 4 月 21 日に、Patriot Act を 2020 年まで延長する法案を発表した。この法案はまた、通話記録の大量収集の法律的根拠として言及されることの多い条項 Section 215 をも延長するものとなる。

その数日後、2015 年 4 月 30 日に、下院司法委員会が USA Freedom Act を死地から復活させた。前回のバージョンの法案は昨年否決された。(2014 年 11 月 21 日の記事“スパイ活動の情報に遅れずついて行こう 7: スパイが多過ぎる”参照。)

今回の新しい超党派バージョンの USA Freedom Act は、大量監視活動を終わらせるためのいくつかの対策を講じるとともに、国家安全保障書簡の口外禁止規定への法的な異議申し立てを認め、FISA court (外国諜報監視法による合衆国外国情報活動監視裁判所) をより透明性の高いものとするよう定めている。けれども他方、大量監視活動を支持する側をなだめるための条項も含まれている。例えば民間の電気通信業者が運用する通話記録プログラムを新設したり、合衆国に入国する外国人を追跡するためにより大きな権限を政府に与えたり、テロリストを援助した者に対する最大刑期を増したりなどの譲歩がなされた。

この新しい USA Freedom Act への反応はさまざまだ。Electronic Frontier Foundation はこれは「理想には程遠い」けれども「正しい方向への一歩」だと評した。American Civil Liberties Union は「いくつかの点では現状を改善するものになっているけれども、この USA Freedom Act は NSA による乱用を防止するに十分なところまで至っておらず、さらにいくつか懸念すべき条項も含んでいる」と述べた。人権ジャーナリストの Marcy Wheeler は この法案に対して完全に懐疑的であり「実際上、スパイ活動をプロバイダに外部委託することにより、テロリズムにほんの些細な関連しか持たないような人も監視できるようにこの法律を巧みに導こうと政府は狙っており、しかもそれをその種のスパイ活動が犯罪的状況に陥らないかどうかのチェックを一切することなしにしようとしている」と述べた。

私がこの記事を書いているたった今、下院はこの新しい USA Freedom Act を可決した

しかしながら、2015 年 4 月 22 日に下院は Protecting Cyber Networks Act (PCNA) も可決している 。こちらは民間企業と政府の間で情報を共有し易くするためのものだ。55 の人権グループが署名した書簡には「PCNA は National Security Agency (NSA) による個人情報へのアクセスを大幅に増やし、連邦政府がその情報をサイバーセキュリティとは無関係のさまざまな目的に利用するのを認めることになるだろう」とある。

けれども議会がこれらの法案について論議している間にも、既存の法律に対する解釈は変わり続ける。巡回控訴裁判所 Court of Appeals for the Eleventh Circuit は 2015 年 5 月 5 日に以前の判決を覆し、ワイヤレスキャリアの携帯電話通話記録を捜索するために政府は令状を必要としないと裁定した。

しかしながら、巡回控訴裁判所 Court of Appeals for the Second Circuit は 2015 年 5 月 7 日に、国内通話の記録を Section 215 の下で大量収集するのは 違法であるという判決を出した。判事らは「もしも議会がこのような広範囲に及ぶ前例のないプログラムを認めようと思うならば、議会にはそれをするあらゆる機会があり、それを曖昧さなしにすると十分に理解した上で私たちは安心して今回の判決をした」と述べた。

議会は引き続き大量監視活動を論議しているが、それはひいき目に見ても無駄なことであるとした宣言がいくつも出ていることには注意しておくべきだろう。NSA の Stellarwind プログラムに関する政府の報告書で最近機密扱いから外されたものには、大量監視活動と秘密主義はテロリストを追跡する努力の妨げにしかならなかったと書かれている。大西洋の向こう側のヨーロッパでは、欧州評議会の議員会議が「諜報機関の高官たちが従来主張してきた内容と異なり、大量監視活動はテロリスト攻撃の予防には貢献しなかったように見える。その代わり、攻撃を予防するために使えたはずの資源が大量監視活動へと流用され、潜在的危険人物が自由に行動できる結果となっている」と宣言した

European Union (EU) が大量監視活動を非難した一方で、フランスは独自の愛国者法を推し進めている。この法律はアメリカ流の大量監視活動を認めるばかりでなく、法執行機関がフランス市民の住居や自動車の中に隠しマイクを仕掛けることさえ許すものとなる。

あなたの電話は聴かれている -- Obama 大統領は以前に「電話の通話に関して言えば、誰もあなたの通話など聴いていない」と述べたことがある。いやいや、それは必ずしも正しくないかもしれない...

The Intercept が さらなる Snowden 書類を公表して、NSA がおよそ 10 年前に電話の通話を文章に起こすシステムを開発したことを明かした。内部文書で "Google for Voice" と呼ばれていた。このテクノロジーがどれほど広範に用いられたかは明らかでなく、国内にいるターゲットに対して用いられたことがあるか否かも明らかでない。

大統領候補者最新情報 -- 前回の記事で、2016 年大統領選挙の公式候補者たち、Hillary Clinton、Ted Cruz、Rand Paul、Marco Rubio の、政府による大量監視活動に関する立場を検討した。それ以後これらの政治家にそれほど大きな動きはないが、他の政治家たちによる重要な進展がいくつかある。

上院議員 Bernie Sanders (無所属、バーモント州) も公式に出馬を表明した。この社会主義者の上院議員が 指名を獲得できる可能性はペットロックが勝つ可能性より低いが、監視活動に反対する彼の姿勢は極めて強硬だ。彼は一貫して Patriot Act に反対投票し、元の USA Freedom Act には賛成投票した。

退職した神経外科医の Ben Carson は 2015 年 5 月 3 日に共和党の大統領候補に指名されることを目指すと発表した。最近の彼は大量監視活動に対する考えを表明していないが、Fox News に出演して Edward Snowden についてバランスの取れた見解を述べ、その手段に対しては非難しつつも、次のように語ったことがある。「何が為され何が監視されているのかを私たちが知っていることが極めて重要です。今現在も続いている秘密主義は、政府がどうやら不正直であるように見えることと合わさって、人々が自らの政府の誠実さを願う気持ちを削いでしまったことは明らかでしょう。」

元 HP の CEO であった Carly Fiorina もやはり共和党の候補争いに出馬したが、大量監視活動についてははっきりした立場を表明していない。ただ、彼女は NBC の Meet the Press に出演して NSA にいかにして責任を負わせるかを議論したことがある。彼女は過去に CIA や NSA と連係して働いたこともある。 Fiorina について CNN は次のように述べた:

「彼女は Hewlett を率いていた頃に非常に NSA の役に立ってくれました」と NSA の元相談役であり CIA 長官の元上席顧問であった Robert L. Deitz は語った。Deitz は Fiorina の大統領選挙への出馬を支持している。

また、次のようにも述べた:

「私は Edward Snowden のしたことは極めて破壊的であったと思います」と彼女は CNN のインタビューで述べたが、それでもこれらの機関にもっと透明性があれば良かったとも付け加えた。「彼は包み隠さず明かすことなどしませんでした。あれは、NSA がしたことを大きく歪めて描いたものであったし、彼自身そのことを知っていたのです。」

Mike Huckabee は 2015 年 5 月 5 日に共和党の指名を目指した選挙運動を公式に開始した。元アーカンソー州知事の彼はワシントン部外者なので、評価できるだけの投票履歴がない。彼がホストを務めた Fox News 番組 Huckabee の中で、彼はあくまでも中立的な立場を保ち、大量監視活動には懐疑的な印象も見せつつ、ゲストであった二人の元 NSA 係官に対して賢明な質問をいくつか投げ掛けた。

公式に候補者とはなっていないが、Jeb Bush は 2015 年前半に 1 億ドル以上の資金を集める計画を持っているので、おそらくは彼も共和党の指名を目指していると考えてよいであろう。彼は最近 Obama 大統領による監視活動強化を賞賛して「私に言わせれば、Obama 政権の最良の側面は NSA を拡張しつつビッグデータを使って祖国を保護する活動を継続したことです」と述べた。だから彼の立場はもうお分かりだろう。

今や評価すべき候補者たちの数はかなり多いので、ここで試しに、大量監視活動に対してどの程度反対の立場を取るかの順序でランク付けしてみよう。もちろんこれは主観的なリストには違いないし、候補者たちの立場もいつ変化するか分からないが、私は今後も論拠を正当化するよう努めたいと思っている。

  1. Bernie Sanders (一貫して Patriot Act に反対し USA Freedom Act に賛成している)

  2. Rand Paul (Patriot Act に反対し、大量監視活動に関して Obama 政権を相手取った訴訟にも参加したが、USA Freedom Act には反対した)

  3. Ted Cruz (Patriot Act に賛成したが、USA Freedom Act にも賛成した)

  4. Ben Carson (記録としては不明だが、NSA の大量監視活動を強く非難する発言をしたことがある)

  5. Mike Huckabee (記録としては不明だが、NSA の大量監視活動に対して懐疑的であるように見える)

  6. Hillary Clinton (一貫して Patriot Act を支持し、Edward Snowden を批判しているが、大量監視活動については最近疑問を呈した)

  7. Carly Fiorina (立場は不明だが、諜報機関と緊密な関係を持つ)

  8. Marco Rubio (Patriot Act に賛成し、USA Freedom Act に反対し、監視活動を支持する発言をしている)

  9. Jeb Bush (Rubio と同様の意見を持ち、また NSA の監視プログラムをそもそも開始した政権を率いた George W. Bush の弟でもある)

子供たちのために -- このシリーズの最初の記事“スパイ活動の情報に遅れずついて行こう”でも触れたように、NSA はジャーナリズム専攻の大学生たちや、さらには高校生たちをも、魅力的なインターンシップ(実務研修)やワークスタディ(作業研究)のプログラムを通じて雇い入れようとしている。そうした努力は理解できるけれども、NSA はそれとともにもっと小さな子供たちの心も掴もうとしている。

PandoDaily の Dan Raile は RSA カンファレンスの NSA ブースを訪れ、 NSA が子供向けの題材を配布していることに気付いた。そこには、NSA ブランドの付いた Post-it Note (付箋) キットや、"America's CryptoKids" (アメリカの暗号キッド) と題した塗り絵帳まであった。

この "America's CryptoKids" で塗り絵をしながら、子供たちは亀の T.Top、リスの技術者 Joules、犬の無線諜報分析者 Decipher Dog や猫の情報保証分析者 Crypto Cat たちの冒険をたどって、コードをクラックしたり、ギターをジャム演奏したり、ネズミを感電させたりする。

いったいなぜ NSA は塗り絵が好きなほど小さな子供たちにまで手を伸ばそうとするのか? 他の連邦法執行機関にも塗り絵帳を作っているところがあるのか? そう考えると、Drug Enforcement Administration (DEA、麻薬取締局) の塗り絵帳なんかがあったら面白いと思うのだが。

でも、政府が口説き落とそうとしているのは、思春期以前の子供たちだけではない...

スパイの陰の谷を行くときも -- 政府は、その存在を西海岸へも拡張しようとしている。Department of Homeland Security (国土安全保障省) はサテライトオフィスを Silicon Valley に開いてテクノロジー労働者を採用し「重要な Silicon Valley との結び付きを強化」することを予定している。

この新しいオフィスは、テクノロジー業界と政府との関係が Snowden の暴露以後緊迫している結果として生まれた。Apple やその他の会社はその製品の中で消費者の暗号化を堅牢にするための開発を進め、それが政府の怒りに火を付けた。今年の RSA カンファレンスで、2015 年 4 月 21 日に、国土安全保障長官 Jeh Johnson は基調講演の中で次のように述べた。「暗号化された情報に私たちがアクセスできないことで、公安の難題がもたらされます。実際、暗号化によって皆さんの政府が犯罪活動を見つけ出すことが困難になりつつあります。テロリストの活動の可能性があるものについても同じです。」

Jeh Johnson の話のついでに、上院議員 Rand Paul は 2015 年 4 月 29 日の上院公聴会で大量監視活動について彼に質問した。Paul が「あなたは政府が何百万人もの個人の記録を令状なしに大量収集する権利を持つと考えるのですか」と尋ねると、Johnson は「それは私の国土安全保障長官としての力量の下では合理的かつ合法的な方法でお答えすることはできません」と答えた

当然ながら、合衆国政府は緊張の高まりを Edward Snowden のせいにしている。国防長官 Ash Carter は「Snowden 問題はものごとを不透明にします」と述べた。作家でありブロガーでもある Cory Doctorow は Carter の発言を「いったん真実を知れば、テクノロジー専門家たちは政府を嫌い恐れるようになる」と言い替えてみせた

その一方で、テクノロジー会社、とりわけ Apple に対して、暗号化を弱めよという政府からの圧力は高まっている。下院の監視・政府改革委員会に提出された書面の証言の中で、マサチューセッツ州検事 Daniel Conley は Apple の iOS 暗号化を 変質者のためのツールに結び付けて、女性のスカートの中を盗撮する男について「もしも犯人の携帯電話が令状に応じて捜索できなければ、証拠を回収することができず、この行為を刑事犯として起訴することは絶対にできなくなってしまうだろう」と述べた。Conley はまた、ボストンマラソンの爆弾犯がもしも暗号化を使っていたならば捕まることはなかったのではないかと疑問を投げ掛けた。ただ、そこには一つだけ問題がある。Dzhokar Tsarnaev (爆弾犯の一人) は彼のコンピュータを暗号化していたのに、捜査官たちは彼のパスワード "AllahuAkbar1" をクラックしたのだった。

同じ書面の証言の中で、Conley は 次のようにも述べた。「Apple と Google は政府による侵入という理不尽かつ仮説的な作り話を根拠として新しい暗号化ソフトウェアを使っている...」彼が過去二年間に起こったことに単に無知なだけなのか、それとも依然として極秘とされているプログラムを彼が意図的に無視することに決めたのかは私には分からない。

Conley の証言は下院議員 Ted Lieu (民主党、カリフォルニア州) の 怒りを買った。彼はたった四人しかいないコンピュータサイエンスの学位を持つ下院議員の一人だ。Lieu は次のように述べた:

これは問題に対する根本的な誤解です。Apple と Google がなぜそれをしているとお思いなのでしょうか? それは、一般の人たちからの要求があるからです。私のような人たち、つまりプライバシーを擁護する人たちです。一般の人たちは、制御不能の監視状況を望みません。これは、一般の人たちに望まれてしていることなのです。Apple と Google は稼げる収入が減るからそれをしているのではありません。それは、政府の行き過ぎに対する民間部門からの反応なのです。

それからまた、プライベートなデータを収集している会社がそのようなことを言っても信用できないといった主張もなされましたが、それは違います。Apple と Google は強制力を持っていません。地方検事も、FBI も、NSA も、強制力を持っています。私に言わせれば、法の執行とプライバシーの問題について正しいプライバシーのバランスを取る方法は極めて単純、ただ、憲法に従うのみです。

そして判決を受けた者もいる -- Edward Snowden は依然としてロシアで手の届かないところにいるが、もう一人の漏洩者が連邦裁判所に出廷した。引退した陸軍大将 David Petraeus だ。

Petraeus は 2008 年から 2010 年まで合衆国中央軍司令官を務め、2010 年から 2011 年まで国際治安支援部隊の司令官となり、2011 年から 2012 年までは中央情報局 (CIA) 長官であった。軍務経歴を通じて、彼はイラクおよびアフガニスタンでの戦争で最も高い評価を受けた司令官であった。

Petraeus はまた、今や 有罪判決を受けた犯罪者でもある。Paula Broadwell は彼の伝記の執筆者であり当時彼が不倫していた女性でもあったが、New York Times の記事によれば彼はこの女性に「公式会議、戦争戦略および諜報能力に関する機密情報と、秘密諜報員の名前の書かれた黒い手帳」を手渡したという。そこに書かれた内容の一部が「極秘の」ものであったことを Petraeus は認めている。それにもかかわらず、彼は CIA を監督している期間中にこの情報を彼女に教えたのだった。

はたして Petraeus は現在、元 CIA 職員であり内部告発者となってまさに今日三年半の実刑判決を受けたばかりの Jeffery Sterling と同様に刑務所の中にいるのだろうか? それとも彼はロシアに亡命して Snowden の隣に住んでいるのだろうか? はたまた彼は、WikiLeaks に情報漏洩した Chelsea Manning と同様に軍事刑務所で 35 年の刑に服しているのか? Manning は丸一年間の独房監禁も経験したのだが?

いいや、そのようにはならなかった。司法取引の結果、Petraeus にはたった二年間の執行猶予と $100,000 の罰金のみが課された。

おそらく最もはっきりと悪事を証明しているのは Petraeus 自身の言葉である、と New York Times は指摘した:

彼は 2012 年 10 月に、ある C.I.A. 係官が機密情報を漏洩したことに関して司法取引を受け入れたのを受けてこう述べた。「誓約はとても重大なものです。そして実際、自らが法律を超越していると信じている者たちにとっては、同僚の係官たちを保護し、アメリカの諜報機関が必要な程度の秘密に守られて活動できるようにすることに大きな意味があるのです。」

その係官はその後 30 ヵ月の刑を受けた。

では、次回の記事までの間、皆さんは電子メールを暗号化して、シトロエンの車内に何か仕掛けられていないかチェックして、また機密書類を漏洩させようなどとは考えないで頂きたい。あなたが陸軍大将でない限りは。

コメントリンク15632 この記事について | Tweet リンク15632


FunBITS: Google で Abbey Road へ行こう

  文: Geoff Duncan: [email protected]
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

[この記事には Geoff が作った素晴らしい音楽付きオーディオ版がある。この記事(英語版)ページの一番上のところにあるメタデータ行の Listen リンクをクリックして、お聴き頂きたい。-Adam]

音楽界では、"in the studio" (スタジオで) という表現は演奏者にとっても聴く人にとってもある種特別な威信を伴うものだが、ロンドンの Abbey Road Studios ほど世界中に知られたスタジオはないだろう。1931 年に開かれたこのスタジオは、1960 年代に The Beatles とプロデューサーの George Martin がポピュラー音楽を大幅に再定義したことで有名になった。そして今、Google がそのエンジニアリングとウェブの技能の一部を注いで Inside Abbey Road を生み出した。オンラインで Abbey Road Studios のインタラクティブなツアーが体験でき、スタジオの部屋や、歴史や、テクノロジーをユーザーが仮想的に見て回ることができる。また、The Beatles や Pink Floyd の古典的なアルバムから、有名な映画のサウンドトラック、さらには Oasis、Florence and The Machine、また Sam Smith のような当代に近いアーティストまで、このスタジオでレコーディングされた有名な楽曲を聴くこともできる。

仮想的に歩き回る仕掛けやガイド付きツアーは特に目新しいものでもない。結局のところ、何十年も前からいろいろなゲームが基本的にそれと同じことをしてきた。けれども Google は、現代的なブラウザで使えるテクノロジーのみを使って Inside Abbey Road を作った。HTML5、CSS、パノラマ式画像化、ウェブオーディオ、WebGL といったものを使って、ナビゲーション、高解像度のパノラマ画像、環境オーディオ、シームレスに統合されたビデオ、インタラクティブなガジェットを処理するようにしたのだ。たった数年前でさえ、このようなプロジェクトは Adobe Flash に頼らなければ考えることすらできなかっただろう。ところが今やこれがタブレット機でもスマートフォンでも、また伝統的なノートブック機でもデスクトップコンピュータでも動作するのだ。

このような Google の努力はあなたの時間を費やす価値があるのか? もしもあなたが世界的レベルの録音設備がどのように働くかについて少しでも興味を引かれるなら、あるいは長年にわたって Abbey Road でレコーディングをした極めて多岐にわたるアーティストたちの作品を楽しみたいと思うなら、その答は間違いなくイエスだ。

Abbey Road について -- Abbey Road Studios がある建物は、1830 年代に大きなタウンハウス(集合住宅)として建てられたものだが、その後アパート (apartments、イギリス英語では flats) に模様替えされ、1931 年になって Gramophone Company がかなり老朽化していたこの物件を買い取ってレコーディング用の場所として改築した。Abbey Road には現在三つの主要なスタジオがあり、Studio One、Studio Two、Studio Three と呼ばれている。1930 年代に Gramophone Company (犬が蓄音機を聴くあの "His Master's Voice" レコードラベルを覚えておられるだろうか) は当時クラシック音楽のレコーディングに主たる関心があったので、Studio One は非常に大規模なオーケストラと少人数の聴衆を 同時に 収容できるよう設計され、レコーディング用にも演奏会用にも使える場所になっていた。(後でも述べるが、この考え方は多かれ少なかれ Abbey Road の歴史を通して引き継がれている。)Studio One は、世界最大の 専用 レコーディングスタジオと主張して差し支えないだろう。もっと広い場所でレコーディングされたものはたくさんあるけれども、それらは多くの場合コンサートホールやチャペル、劇場などであり、レコーディング専用の施設ではない。あなたが特定の世代の読者ならば、きっと Studio One を目にしたことがあるはずだ。1967 年の、ライブの衛星放送番組 "Our World" の Beatles 出演部分 ("All You Need is Love" を演奏した) は Studio One から全世界に衛星中継され、4 億人以上の人たちがこれを見た。

image

それより小さい Studio Two は(関係度は少し低いが Studio Three も)英国のロックおよびポップ音楽の中心となった。Abbey Road がロックンロールのヒットチャートに初めて載ったのは 1950 年代後半の Cliff Richard 以降で、真の意味で地歩を固めたのは The Beatles 以降だ。The Beatles はそのアルバムのほとんどすべてを Studio Two で、George Martin をプロデューサーとしてレコーディングした。ちなみに私が Studio Two を「小さい」と形容したのは、相対的な意味での話だ。私は 10 代の頃からいろいろなレコーディングスタジオで仕事をしたけれども、Abbey Road の Studio Two や Studio Three ほど大きなスタジオはほとんど見たことがない。

物理的な部屋としては、Studio Two は The Beatles がここで録音していた頃とあまり変わっていない。背が高くて車輪が付いたバッフル板がスペースの形状を買えるために使われ、意図的に音を外したタックピアノ、一時は有名だったが今やほとんど忘れ去られた弾き語り歌手 Gladys Mills の名前の付いたピアノがそこにある。あなたも、"Lady Madonna" やその他の Beatles トラックで Paul McCartney がこのピアノを使っているのをお聴きになったことがあるかもしれない。

image

Studio Three は、Pink Floyd が "Shine on You Crazy Diamond" のレコーディング中に以前中心メンバーだった Syd Barrett が現われても誰も彼だと気付かなかったという話で有名なスタジオだが、今はもっと現代的な場所に改装されていて、Abbey Road の名物である 1980 年代そのままの鏡張りドラム部屋も健在だ。(ドラムのサウンドを大きくする方法の一つは、ほとんどすべての面が音を反射する非常に「ライブ」な部屋で録音することだ。)

image

Google の Abbey Road ツアーはまたマスターのための一連の過程も強調する。録音したものをイコライザーにかけ、処理を施し、デジタルサービスへ直接に出すにせよ、ビニル製のレコード盤にカットするにせよ、配布の準備をする。その通り、Abbey Road は今でも、クライアントからの依頼さえあれば、本来の「レコード」を制作することができる。このスタジオにある最も素敵な人工物の一つは、Alan Blumlein が 1930 年代に開発したステレオカット用のヘッドだ。それは、蓄音機用レコーディングでステレオが標準となるより何十年も前のことであった。今でもまだ機能する。

あちこち歩き回る -- Google Map の Street View を使ったことがあるなら、Google の Abbey Road ツアーもナビゲートできるだろう。このスタジオの物理的空間のリアルな感覚を得ることができ、Studio Two の有名な階段を上ったり下ったりでき、スタジオ内のあちこちを探索できる。加えて、オーディオマニアは備品の棚にズームインしてすべての機器のラベルを読むことができる。(試しに、銀色の Mac Pro タワー機を全部探してみよう。どのコントロールルームにも必ず一台はある。)Google によれば、このサイトはヘッドフォンがあれば最高の体験ができるとのことで、それは彼らが本気で環境雑音に気付いて欲しいと思っているからだ。例えば、Studio One の大きな隔離ブースを歩いて通り過ぎると、そこでハープ奏者がウォーミングアップをしている音が左から右へ(さらには前後方向にも)あなたが歩くにつれて移動する。これは本当に楽しい。

ツアー中のあらゆる場所にホットスポットが散りばめられていて、それぞれがさらに詳しい情報や、あるいは Abbey Road に関係あるさまざまのアーティストたちのビデオや写真にリンクしている。特に覚えておきたいものをいくつか挙げれば、Abbey Road の反響室 (これは本物の部屋であって電子的効果ではない!)、このスタジオの珍しいマイクロフォン・コレクションの詳細、映画音楽用の諸機能、プロデューサーの役割、さらには Studio One のオーケストラ演奏家用の軋まない椅子などがある。ビデオの大多数は YouTube か Vevo から直接読み込まれる。

image

しかしながら、おそらく最も使いやすい機能は三つあるガイド付きツアーだ。声の出演はそれぞれプロデューサー Giles Martin (彼は George Martin の息子だ)、Abbey Road のオーディオ製品責任者 Mirek Stiles と、おそらく BBC の Radio 6 Music のホスト(イギリス英語では presenter) として最もよく知られている Lauren Laverne だ。それぞれのツアーは Abbey Road の別の部分を紹介しており、Martin はレコーディング処理を担当し、Stiles はテクノロジーのいくつかと Abbey Road の著名な作品を解説し、Laverne は何人かの人物像と舞台裏の節目に光を当てる。

これらのツアーはあなたのペースで進むことができ(なので途中でどこにでも止まって好きなだけ見学することができる)また個々の部屋ごとのサウンドが反映される。ただし Google と Abbey Road はここで少々ズルをした。それぞれのホストの声は別々に録音され、その後で個々の部屋の中でスピーカーで再生されて個々の部屋のサウンドを取り込むようにしたのだ。これはよくあるテクニックで、Abbey Road は映画 "The King's Speech" でも同じことをした。あらかじめ録音してあった Colin Firth の声を、1939 年に King George VI がドイツに宣戦布告をした際に使ったものと同じ EMI PM 201 ダイナミックマイクを通して再録音したのだった。

image

またこのサイトにはいくつかの「ガジェット」もあって、訪問者が自分の手でオーディオトラックのミキシングを試したり、昔流のテープ効果を作成したり、4トラックのレコーディングをミックスダウンしたり、つまり The Beatles がする必要のあったものと同じ作業をすることができる! また別のガジェットは、非常に珍しく高価でほとんどの人が他の方法では決して目にすることができないようなマイクロフォンのパノラマを提供する。

ここでちょっと、TidBITS の歴史からこぼれ話を語らせて頂きたい。私は基本的に音楽とオーディオの世界で育ってきたのだが、Adam と Tonya はただ音楽を心から 楽しむ のみで、音楽関係の経歴は何もなかった。はるかに大昔のこと、私たちの何人かはシアトルの EMP Museum を訪れたが、そこではインタラクティブな展示がなされていて、音楽の経験が全くない人でも自分の手で本物の楽器や、ミキシングボード、さらにはターンテーブルまで試せた。(記録のために書いておくと、Tonya はほんの一分ほどで "Wild Thing" のベースラインをロックしていたが、Adam の方はドラマーとして見込みがないようだった。)この EMP での体験は、普通の人たちにも使えるようにすることがいかに 困難か を私に強く印象付けた。即座にロックスターになれなかったのは Adam と Tonya だけではなかった。ほとんど誰もが悪戦苦闘していた。

そういう訳で、私は Inside Abbey Road のガジェットに極めて低い期待しか持っていなかったのだが、それは嬉しい驚きで裏切られることとなった。これらのガジェットは特に直感的という程でもないのに、重要な概念を 実際に 取り込んで説明している。それに、ガジェットが J37 4トラックテープレコーダーをエミュレートしていること自体、もの凄く楽しい。今ではもはや文字通り誰もそんなスキルは必要としないとしても。私がただ一つ感じる不満は、これらのガジェットが少々ゲーム風になり過ぎていることだ。ユーザーが自分の結果をあらかじめ設定された目標と比較できるようになっているが、これでは経験のない人の気を削ぐことになるかもしれない。初回の得点はきっと無惨なものになるだろうからだ。また、Google が Flash やその他のブラウザプラグインに一切依存することなくこれらすべてをやり遂げられたのも本当に素晴らしいと思う。ウェブオーディオは、大きな進歩を遂げたものだ。

何か気に入らないものは? -- Google が Inside Abbey Road プロジェクトを呈示するやり方はちょっと奇妙だ。テクノロジーのアイデアの一部は Google Cultural Institute によるもので、重要な文化施設、歴史的出来事、自然の素晴らしさなどに、世界中のどんな人でもある程度のインターネット接続さえあればアクセスできるようにしようという意図から来ていた。それに、比べてみれば似ているので、この Inside Abbey Road サイトはポンペイボリショイ劇場、あるいは南アフリカのロベン島などを扱った Google の仮想ツアーと同種のものと思えてしまう。

でも、実際はそうではない。最近になって英国政府から(あの有名な横断歩道 (crosswalk、イギリス英語では zebra crossing) とともに)文化・歴史遺産の指定を受けたけれども、Abbey Road Studios は非営利文化施設ではない。Abbey Road は、今は Universal Music Group をオーナーとし極めて競争の激しい業界の中にいる知名度の高い商業事業だ。Google の Inside Abbey Road は基本的に、Abbey Road Studios と Universal 社、それに関係する多くのアーティストたちのための、巨大な、高度にインタラクティブな 広告 なのであって、おそらく Google Play から音楽を購入するリンクが組み込まれるのもそれほど先のことではないだろう。(けれども The Beatles の音楽はそこに含まれない! 彼らには依然として iTunes 独占契約がある。)この種の露出を喉から手が出るほど欲しがるレコーディングスタジオは、世界中に何百何千とあるだろう。

そして Abbey Road は、非常に自分自身を宣伝したがっている。80 年以上にわたって門戸を開いてきたが、Abbey Road の生き残りは決して保証されたものではなかった。例えば、専用の施設であるにもかかわらず、Studio One はクラシック音楽用のものとしてそれほど評判が良くなかった。残響時間が少なめだったので、Abbey Road はある意味必死になって「アンビオフォニー」つまりスタジオの残響を補うために 100 個ものスピーカーを使う方法を実験したくらいだ。結局それはあまりうまく行かず、クラシック音楽の市場が小さくなるにつれて Abbey Road は Studio One を小さなスペースに分割することを検討し始めた。けれども著名なエンジニア Ken Townsend による賢明な(しかも安価な!)音響の再調整のお陰で Studio One は救われ、その後は映画やゲームのサウンドトラックをレコーディングするビジネスを開拓した。

デジタル音楽革命と、それに伴うレコード会社の収入の落ち込みは、ほとんどのレコーディングスタジオにとって不景気を生み出した。Abbey Road にとってもそれは同じことだった。その当時でさえ、知識と多少の運さえあれば世界一級のスタジオがなくても世界一級のレコーディングができた。(例えば Joe Meek の作品、例えば 1959 年のスペース・スキッフルのアルバム "I Hear a New World" は Abbey Road で作られた他のアルバムと同程度に影響力があったけれども、その大部分はたぶん一マイルも離れていない彼の自宅で制作された。)今日では、スタジオ使用料を払うよりも、自宅の寝室でラップトップ機を使ってアルバムを録音する方が一般的になっている。それにロンドンの物価は安くない。ほんの数年前、当時のオーナーの EMI が財政的危機に陥ったため Abbey Road が取り壊されて分譲マンションになるのではないかという懸念があったくらいだ。

Abbey Road は長年、それ自体がブランドであり文化施設であるという考えを強調してきた。さきほど私が、この三つの主要なスタジオがレコーディング用にも演奏会用にも使える場所だと述べたことを思い出して頂きたい。Google のツアーには登場しないが、このスタジオには建物の中にレストランやバーがあり、個人的なイベントのために使える庭まである。(主としてミキシングのために使われる小さな二つのスタジオも Google のツアーには登場しない。)また、テレビ番組 "Live from Abbey Road" もある。これは 5 つのシーズン(イギリス英語では series と言う)にわたって Studios One, Two, および Three からライブの HD パフォーマンスを放送したものだ。今ではこういったライブのイベントやセッション撮影などが、Abbey Road のビジネスの大きな部分を占めている。このスタジオは、そしてそのオーナーたちは、Abbey Road での演奏が Royal Albert Hall、Carnegie Hall、Grand Ole Opry など憧れの場所でする演奏と同等に名声あるものとなることを願っている... ただしそこでは聴衆ではなく演奏家たちが料金を支払って参加するということだ。

このような説明を読むと、Inside Abbey Road サイトの魅力が損なわれるだろうか? まあ多少はそうかもしれない。でも、もしもあなたが音楽がどうやって作られるかに少しでも興味があるなら、あるいは創造的エネルギーで私たち皆の心に何かを届けてくれた数え切れないアーティストや、エンジニアや、プロデューサーたちに少しでも関心があるなら、どうかそれだけで嫌にならないで頂きたい。Abbey Road はおそらく少なくともあと数年は生き残るだろうけれども、このサイトがどうなるかは誰にも分からない。ウェブの世界は移り変わりが激しいし、Abbey Road とは違って、ウェブはそれ自身の歴史などには一顧だにしないのだから。

コメントリンク15648 この記事について | Tweet リンク15648


TidBITS 監視リスト: 注目のアップデート、2015 年 5 月 11 日

  文: TidBITS Staff: [email protected]
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Fantastical 2.0.4 -- Flexibits が Fantastical 2.0.4 をリリースして、この人気のカレンダーアプリにたくさんの便利な機能を追加した。今回のアップデートでは、到着した招待をすべて一覧できる未決招待セクション、誕生日イベント用の新しいアピアランス、イベントを Option-ドラッグして複数の日で同じ時刻に繰り返すようにできる (Week 表示で使う) 機能、OmniFocus から項目をドラッグしてイベントを作成する機能への対応を追加した。バージョン 2.0.4 ではまたデフォルトのスヌーズ継続時間の変更機能、イベント情報の中で複数の招待者をコピーする機能、一つの通知を Option-クリックすることですべての通知を片付ける機能、編集不可のカレンダーでアラートを無効にする機能を追加している。Fantastical 2 は 14 日間無料で試用でき、現在の定価は Flexibits Store からでも Mac App Store からでも $39.99 だ。当初の値引期間が終わった後は $49.99 となる。(新規購入 $39.99、無料アップデート、12.8 MB、 リリースノート、10.10+)

Fantastical 2.0.4 へのコメントリンク:

ChronoSync 4.6.1 と ChronoAgent 1.5.2 -- Econ Technologies が ChronoSync 4.6.1ChronoAgent 1.5.2 をリリースし、いずれもパッケージ合併に対応させた。この新機能により、パッケージ(例えば Photos ライブラリ)の中でほんの少しの変更があっただけの場合に ChronoSync がパッケージ全体をコピーせずともよくなる。パッケージファイルの内容をコピー先のものと比較してから、ChronoSync は実際に変更されたコンポーネントのみをハードリンクを使ってコピーし、コピー先で残りのコンポーネントを再構築する。この同期およびバックアップ用アプリはまた進行状況の統計数字報告を拡張し、File Info データの取り込みと設定を最適化し、フォルダのアクセス権の変更に失敗していたバグを修正し、ブート可能バックアップ/ミラーの同期操作の効率を改善し、Analyze Panel に表示されたコンテンツを更新する際に起こったハングを修正している。(いずれのアプリも無料アップデート。ChronoSync は新規購入 $49.99、 TidBITS 会員には 20 パーセント割引、28.4 MB、リリースノート、10.8+。ChronoAgent は新規購入 $14.99、10.3 MB、リリースノート、10.8+)

ChronoSync 4.6.1 と ChronoAgent 1.5.2 へのコメントリンク:

Downcast 1.1.10 -- Jamawkinaw Enterprises が Downcast 1.1.10 をリリースし、エピソードの開始・終了時刻を指定してポッドキャストのイントロ・アウトロ部分を飛ばすことができるようにした。このポッドキャッチャーアプリはまた、保護付きポッドキャストで認証情報にアクセスするため 1Password を開くボタンを追加し、OS X 10.8 Mountain Lion で Downcast が動作しなくなっていたバグを修正し、ID3 チャプター抽出における問題点を解消し、10.8 Mountain Lion と 10.9 Mavericks でのユーザーインターフェイスの問題を修正している。Downcast は現在 Mac App Store で期間不明ながら $5.99 でセール中だ。(Mac App Store から新規購入 $9.99、無料アップデート、20.9 MB、 リリースノート、10.8+)

Downcast 1.1.10 へのコメントリンク:

Safari 8.0.6, 7.1.6, 6.2.6 -- Apple が Safari 8.0.6 を OS X 10.10 Yosemite 用に、また Safari 7.1.6 を 10.9 Mavericks 用、Safari 6.2.6 を 10.8 Mountain Lion 用に、それぞれリリースした。これら三つの版のいずれも WebKit に関係したセキュリティ修正を受けた。今回のアップデートでは、悪意あるウェブサイトが任意のコードを実行できる可能性のあった WebKit 内部の複数件のメモリ破壊の問題を解消し、ユーザー情報漏洩の可能性のあった WebKit の履歴ファイルシステムの裂け目をパッチし、ユーザーインターフェイスでなりすましを許す可能性のあった WebKit のページロードにおける問題を修正している。三つのバージョンの Safari はいずれも Software Update 経由のみで入手できる。(無料)

Safari 8.0.6, 7.1.6, 6.2.6 へのコメントリンク:


ExtraBITS、2015 年 5 月 11 日

  文: TidBITS Staff: [email protected]
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

今週の ExtraBITS では、MacKeeper の開発者がユーザーたちに巨額の賠償金を支払う可能性があり、Mac App Store の不振に関する具体的な数字が分かり、ある開発者が Apple のネットワーキングコードについて不満を述べ、Apple がサードパーティの Apple Watch 用バンドについて正式発表をする。

MacKeeper オーナー ZeoBIT、ユーザーに 2 百万ドルの賠償支払いか -- MacKeeper の制作者 ZeoBIT に対し 2014 年に起こされた集団訴訟で提起中の和解条件では、同社が払い戻しという形で顧客に 2 百万ドルを支払うこととなっている。ZeoBIT はシステムテストで存在しない問題を警告する悪徳手法を使ったとして訴えられた。オーストリアの会社 AV Comparatives が OS X 10.10 Yosemite を新規にインストールしたばかりの状態で MacKeeper の最新の試用版をテストしたところ、このソフトウェアはコンピュータが「深刻」な状態にあって 500 MB もの "junk" ファイルが存在すると警告した。

コメントリンク: 15651

Mac App Store の悲しい状況 -- Mac App Store が当初の約束を果たせていないというのは Mac 専門家たちの間ではよく知られたことだが、開発者 Sam Soffes はその問題が実際どの程度悪いものかを数字で示した。2015 年 5 月 6 日に彼は新しいアプリ Redacted for Mac をリリースしたが、これがたちまち U.S. Top Paid リストの第 8 位となった。でも、このアプリは思ったほど成功ではなかった。最初の一日で売れたのはたった 94 個、売上げの合計額は $452 に過ぎなかった。

コメントリンク: 15650

Apple のネットワーキング騒動 -- ネットワーキングの問題を経験したことのある Apple ユーザーは多いが、開発者 Craig Hockenberry は汚い言葉に満ち満ちた非難の文章を書いた。OS X 10.10 Yosemite と iOS 8 で導入されたサービス discoveryd が問題の根源だ。残念なことに、ネットワーク上にある Apple デバイスの数が多ければ多いほど、これらのネットワーキング問題が起こる可能性が高まる。現在のところ、すべての Apple デバイスを再起動する以外に修正の手段はないようだ。AirPort ルータと Apple TV の両方がある場合には、まず Apple TV の電源を切ってから、ルータを再起動して、それから Apple TV の電源を入れ直さなければならない。

コメントリンク: 15649

Apple、サードパーティ Apple Watch バンドについて発表 -- Apple が、承認を受けた Apple Watch バンドを他の会社が製作することを可能にする Made for Apple Watch プログラムを提供すると発表した。バンドのメーカーがどんなことをするのかはまだ明らかになっていないが、一つだけ確かなことがある。承認を受けたバンドは、少なくとも電磁誘導充電を使っては、Apple Watch を充電できない。Band Design Guidelines for Apple Watch 書類にははっきりと「バンドに電磁誘導充電器を組み込んではならない」と書かれている。

コメントリンク: 15645


tb_badge_trans-jp2

TidBITS は、タイムリーなニュース、洞察溢れる解説、奥の深いレビューを Macintosh とインターネット共同体にお届けする無料の週刊ニュースレターです。ご友人には自由にご転送ください。できれば購読をお薦めください。
非営利、非商用の出版物、Web サイトは、フルクレジットを明記すれば記事を転載または記事へのリンクができます。それ以外の場合はお問い合わせ下さい。記事が正確であることの保証はありません。
告示:書名、製品名および会社名は、それぞれ該当する権利者の登録商標または権利です。

TidBITS ISSN 1090-7017©Copyright 2014 TidBITS: 再使用はCreative Commons ライセンスによります。

Valid XHTML 1.0! , Let iCab smile , Another HTML-lint gateway 日本語版最終更新:2015年 5月 15日 金曜日, S. HOSOKAWA