今週号の TidBITS では、Julio Ojeda-Zapata が Apple の新しい iPhone を検討して競合製品と比較し、Joe Kissell は皆さんが避けるべき馬鹿げたバックアップ方法を 11 通り数え上げる。Josh Centers は OS X 10.10 Yosemite の Spotlight 機能を拡張する Flashlight に光を当て、また FunBITS 記事の中ではゲーミングにおける独創性の欠如を嘆く。今週注目すべきソフトウェアリリースは、ClamXav 2.8.1、Toast 14 Titanium と Toast 14 Pro、それに iMovie 10.0.9 だ。
記事:
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文: Josh Centers: [email protected], @jcenters
訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>
長年に亘って Mac のパワーユーザー達は、アプリを起動、自分のコンピュータを検索、そしてその他の多くの作業をするために LaunchBar や Alfred の様なサードパーティランチャーに依存してきた。OS X 10.10 Yosemite で Apple はこれら機能の多くを拝借し、再設計された Spotlight に組み込んだ。Mac 上のファイルを探し出すだけでなく、Spotlight は今や、Apple の各種のデジタルストアで欲しいものを探す、Wikipedia 記事を見る、計算をする、 等々をする事が出来る ("Apple、WWDC にて iOS 8 と OS X Yosemite をお披露目" 2 June 2014 参照)。
LaunchBar や Alfred の様なアプリをそれ程強力なものにしているものの一部はそのプラグイン機構であり、これにより開発者は能力を拡張出来ていたが、これは Spotlight には最近まで付いていなかった。開発者 Nate Parrot は Flashlight を作成した。これはオープンプラットフォームで、開発者が Spotlight のコマンドレパートリーを広げることを可能にする。この無料の Flashlight アプリは、あなたが必要なプラグインを見つけ、インストール、そして管理する手助けをする。
この Flashlight アプリを立ち上げたら、最初に Enable Spotlight Plugins をクリックして Spotlight を Flashlight のプラグインに対して開いてやる必要がある。それ以降は、ただ Flashlight を通して望みのプラグインを選択するだけである。箱から出したばかりの Flashlight で何が出来るか? 幾つかの例を挙げる:
Spotlight クエリーの前に /
を挿入し即時 Web 検索をする。
Google Maps 検索をクエリーの前に "google maps" 或いは単に "gm" を付けて行う。
マウントされたボリュームを取り外す。また "eject all" とタイプすることで全てのマウントボリュームを取り外せる。
リマインダーを作成する、"薪割りをするのを思い出させて" の様に。
カレンダーイベントを、ある程度の自然言語処理を使って作成する、"明日 3 時に医者の予約を取る" の様に。
iMessages を "textperson your message" とタイプすることで送る、前提条件は、その人が連絡先に登録されていること。Return を押せば、メッセージは送信される。
インストールされたコマンド全てを見るには、Flashlight のサイドバーで Installed カテゴリを選択する。また別に Flashlight メニューバーをクリックし、使えるコマンド全てに対する検索サンプルを見ることも出来る。
数百に及ぶプラグインのどれでもインストール出来る。この Flashlight アプリは、Design, Developer, Language, Media, そして System と言ったブラウズ出来るカテゴリも提供しているが、全てを対象とした検索も出来る。興味をひくプラグインをもう少し挙げると:
もし自分自身の Flashlight コマンドを作りたければ、Automator アクションを使って出来る、或いは、もっと技術に長けていれば、Python API経由でも出来る。
この初期バージョンの Flashlight は、多くの興味深い能力を提供しているが、まだまだ荒削りな所がある。例えば、天気コマンドは、市名に並んだ州名を認識するのに問題があり、"weather lafayette, in" とタイプすると、天気予報ではなく疑問符が返ってくる。私はまた、Web 検索をしたいと思った時にサーバーエラーに、そして使えるコマンドをブラウズしている時に表示問題に遭遇したことがある。そして、Flashlight は Spotlight を素晴らしく拡張してくれるが、LaunchBar の広範囲なファイルとクリップボード操作機能には較べようがない。
しかし、Flashlight の価格と、それが如何に Spotlight を有用な方向に拡張してくれるかを考えたら、文句は言えない。可能な限り Apple 内蔵のサービスに固執したいという人に対しては、Flashlight を有効にして、あなたのクエリーが少しでも楽になるのか試してみる価値はあると思う。
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文: Joe Kissell: [email protected], @joekissell
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>
先月、Adam、Tonya と私はサンフランシスコで ASMC (Apple Specialists Marketing Corporation) Spring Conference に参加したが、カンファレンスの特別行事の一つとして Novato にある DriveSavers 本部への現地調査旅行に出かけた。DriveSavers はデータ復旧をする会社だ。バックアップを作っていないハードドライブや SSD から、重要なデータを喪失してしまった場合に、あなたが電話をかける相手がこういう会社だ。彼らはクリーンルームの中でドライブを分解し、いわば脳外科手術の電子版をそれに施して、たいていの場合にはあなたの重要なデータを取り戻してくれる。(DriveSavers について詳しいことは Jeff Carlson の記事“DriveSavers 救助隊”(1999 年 8 月 30 日) を参照。)言うまでもなくこの種の復旧サービスは高くつくが、本当に重要な状況下ではそういう魔法に払う費用を惜しんでなどいられない。
DriveSavers 社の施設はギークにとっての天国だった。これほど多くのハイテクギアが一つの場所に集まっているのを見たのは、ジュネーブにある CERN の Large Hadron Collider (大型ハドロン衝突型加速器) を見学した時以来だ。データ復旧の手順の説明を、私は一つ一つ夢中になって聞いた。技術的な観点から、実に興味深いものであった。そしてまた、DriveSavers が手助けをした有名人たちの何人かについての話にも目を見張る思いがした。壁にはこの会社にデータを復旧してもらった著名人たちのサイン入り写真がずらりと並んでいた。(ちょっと皮肉にも、映画 "Star Trek: The Next Generation" で Data を演じた Brent Spiner の写真もそこにあった。)
このツアーの間ずっと、私は二つの矛盾する感情の板挟みになっていた。一つは「わあ凄い、ここで働けたらどんなにクールだろう!」というもので、もう一つは「私の仕事の目標は彼らを失業に追いやることなのだなあ!」というものであった。
もちろん、私がこんなことを言うのは DriveSavers で働く素敵な人たちに何も悪意があるからではなくて、何年も前から私がバックアップの重要さを説き続けてきたからだ。もしもすべての人たちが適切なバックアップさえ持っていたならば、DriveSavers 社の主要な存在理由が消滅するはずだからだ。(実際のところ、仮にそうなったとしてもこの会社は大丈夫だ。同社は法執行機関や政府機関などでもいろいろな仕事をしているし、バックアップが要因とはならないような状況への対処もいろいろとしているからだ。)
新刊書 "Backing Up Your Mac: A Joe On Tech Guide" の中で、私は言ってみれば「高度に防弾能力のある」バックアップ戦略を解説している。コンピュータに関してはどんな保証もあり得ないし、Robert Heinlein も言った通り「何かを絶対確実 (foolproof) にすることなどできない、愚か者 (fool) たちはあまりにも独創的だから」だ。そういうただし書きはさておき、私が個人的に使っているシステムは、これは私の本の中で説明している戦略でもあるが、多くの Mac ユーザーたちに心の平安をもたらす、シンプルな方法を提供できる。私がよく口にするのは、たとえ隕石が落下して私の家と装備をすべて破壊してしまったとしても(もちろんその時に私が家にいなかったとしての話だが)私は絶対に自分の重要なデータを一つも失わない確信がある。(核戦争が起こったり、ゾンビが世界の終末をもたらしたり、小惑星が地球に衝突したりした場合には全然話が違うだろうが、いずれにしてもそんな場合はデータ喪失よりももっと大きな心配事の方が優先となるだろう。)
私の本についていろいろな人たちに話をすると、こんな感じの反応が返ってくることがよくある:「私は、こんな風に Mac をバックアップしていますが、どう思われますか?」そんな時、私は言いたい言葉を我慢して返答を控えることがよくある。私の本音は「うわあ、そんな馬鹿げたバックアップ戦略なんて聞いたことがないぞ」というものだからだ。
あなたのバックアップ戦略が馬鹿げていても、別にあなた が馬鹿だということは意味しない。それはただ、思いがけない厄介事(盗難、火事、ハリケーン、マルウェア、ソフトウェアのバグ、ユーザーのエラー、その他)が起こった際にあなたのデータに何が起こり得るかについて、あるいは何かがおかしくなった際に具体的にどんな手順で対処すべきかについて、あなたがまだ十分に注意深く考察していなかったのだろうというだけだ。私は、皆さんに馬鹿げたバックアップ戦略を使って欲しくない。皆さんがちゃんとしたバックアップを持ち、どんな種類のデータ喪失が起こっても回復できるという正当な理由のある確信を持てるようになって頂きたいのだ。そういう気持ちで、以下に 10 個の... いや待て、11 個だ!... 馬鹿げたバックアップ戦略を、皆さんにぜひとも避けて頂きたいバックアップ方法を、挙げておこう。
1. バックアップを全く持たない。 -- Backblaze ブログの最近の記事によれば、毎年恒例の調査の結果、自分のコンピュータで毎日バックアップを取ると答えた人はたった 8 パーセントであったという。(心配なのはこの数字がここ二年間で減りつつあることだ。)バックアップするのが年一回未満の人は 16 パーセント、全くバックアップしない人は 25 パーセントであったという。
何もしないというのは、当然ながら最悪のバックアップ方法だ。あなたが何をしても(あるいは誰か他の人が何をしても)すべてが完璧に動作し続けるものと信用するのは、コンピュータに対する過大な期待と言うべきだ。いつの日か、必ずあなたはデータを喪失する。バックアップについては、何もしないよりも何かをする方が 必ず 良い結果を生む。
2. データ復旧アプリまたはサービスに依存する。 -- たとえあなたがうっかり Mac 上のファイルを削除してしまっても、たくさんあるデータ復旧アプリのどれかを使えば削除を取り消すことができる かも しれない。たとえそれが失敗しても(もしもそのドライブが電子的にまたは機械的にダメージを受けていたとすれば失敗する可能性が高い)例えば DriveSavers のような会社ならば失われたデータを救出できるかもしれない。けれども災難が起こったらそうしたやり方を使えばよいと思い込むのは、決して賢明ではない。そうしたやり方は失敗することもあるし、もしも喪失の原因が盗難であれば(あるいはさっき言ったように隕石があなたの Mac を粉砕したのであれば)復旧作業をすべきディスクそのものがないではないか。
これを機会に一言だけ言っておきたい。データ復旧ソフトウェアを作っている会社の方々、どうか私に製品のレビューを依頼するのをやめて頂きたい。私は予防が第一という主義なのだし、読者たちのお金は復旧ツールにでなくバックアップのために費やされる方がずっと価値があると思っているのだから。
3. 希望的な考えを持つ。 -- 二週間ほど前、知人の小説家が Facebook に、うっかり書類を削除してしまって小説の改訂版の中の三つのシーンが消えてしまったと愚痴をこぼしていた。彼女の友人の一人が親切にも、あなたは Mac ユーザーなのだから、Time Machine を使えば書類を取り戻せるのではないかと助言した。けれども彼女の返答は、いいえ、私は その書類を一度も保存したこともなければその書類に名前を付けたこともない ので、Time Machine には何も残っていない、というものだった。
ドゴン!(私の頭が机にぶち当たった音)
確かに、アプリの中にはあなたの作業の結果を自動保存してくれるものがあって、たとえ新規の書類にあなたが名前を付けさえしなくてもあなたが最後にそれを離れた場所に復帰してくれるものもある。(私が今この記事を書くのに使っている BBEdit もそのようなアプリの一例だ。)けれどもすべてのアプリがそのように機能する訳ではないし、たとえアプリがそのように機能したとしても、自動保存されたファイルをユーザーがうっかり削除してしまうケースはいろいろあり得る。事実上どんなバックアップ方法であっても、ユーザーが少なくとも最小限の基本は守ることを前提としている。つまり、自分のファイルに名前を付けて、少なくとも一回は自分で保存することくらいは、最低限の常識だ。(それを済ませた後には、定期的に自動保存が働き、自動的に追加的な変更を保存してくれるだろう。)
4. 手動でバックアップする。 -- 時々は、つまり気が向いた時にだけ、クローンを作成するか、またはファイルを他のドライブへ手動でコピーすることで自分の Mac を(または少なくともその一部のファイルのみを)バックアップするという人たちを私は知っている。さっき言ったように、何もしないより何かをする方が良いのだが、私の経験から言って、何かを手動でバックアップするのをうっかり忘れた日こそ(あるいは時間がなくてバックアップできなかった日こそ)まさにデータ喪失が起こりがちなのだ。バックアップは、自動的に走らせる方がずっと良い。
5. Time Machine のみ を使う。 -- Time Machine が存在するのは、素晴らしいことだと思う。それに、これは OS X に内蔵されている。Apple がバックアップをできる限り単純で便利なものにしたのは(無料で提供した点も言うまでもないが)絶対的に正しいことであった。確かに、Time Machine を使う方が全く何もしないより はるかに 良いことだ。
でも、Time Machine に関して私はあまりにも多くのトラブルを体験している。(他の人たちのそういう体験も数え切れないほど聞いている。)なので、これを自分の唯一のバックアップ用ソフトウェアとして信頼することはできない。例えば、Joe On Tech の私の記事 " Why I Don't Rely on Time Machine" に詳しく書いたように、先月妻と私は二人とも Time Machine で回復不能なエラーに遭遇して、私たちはバックアップ用ドライブを消去して Time Machine バックアップを一から作り直す羽目になった。ディスク自体に何も問題はなかったのだが、バックアップのデータに問題があり、高度なディスク修復ソフトウェアでさえも問題を修正することはできなかった。Time Machine は何年間も問題なく動作し続けるかもしれないが、時折こんな風に前兆なく固まってしまうことがある。だから、確かに Time Machine は便利だけれども(なので追加のバックアップとしてはまさに適任だけれども)それのみをバックアップ手段とするのは、自分でも安心できないし、人にも勧められない。
Time Machine にはもう一つ欠点がある。それは、ディスクが丸ごと死んだら、そのディスクを再フォーマットまたは交換してすべてを丸ごとバックアップからリストアする以外になく、それにはもの凄く時間がかかるという点だ。それをしている間、あなたの Mac は他の目的には一切使えない。これこそ、私がバックアップ戦略の一部としてブート可能な複製(つまり「クローン」)を強く勧めている理由だ。でも、それで思い付くのがもう一つの問題だ...
6. バックアップにクローン のみ を使う。 -- クローンは素晴らしい。もしも何かがおかしくなっても、クローンがあればほとんど即座に仕事に戻れる。(Option を押しながら再起動してクローンを選ぶだけでよい。)また、新バージョンの OS X にアップグレードした際にもしも何かがおかしくなれば、クローンが以前のバージョンの OS X にダウングレードする手段を提供してくれる。(ところで、あなたのクローンには Sarah、Alison、Cosima、Helena といった名前を付けていますか? そうでないなら Doing It Wrong ですよ!)
クローンのみをバックアップに使うことの問題点の一つは、うっかり削除してしまったファイル、またはそのファイルの古いバージョンを取り戻す手段を、クローンが必ずしも提供してくれないことだ。クローンをアップデートした後になって、ファイルをうっかり削除してしまっていたことに気付くこともよくあるからだ。(クローン作成ソフトウェアの中にはそういうファイルをアーカイブ保存してくれるものもあるが、そのためにはあなたがそれを使いこなせる必要がある。)もう一つの問題点は、クローンがあなたの Mac に保存されていれば、その Mac に何かあった場合に(竜巻、強盗、その他)あなたの唯一のバックアップもなくなってしまうことだ。それが次の問題に結び付く...
7. オフサイトのバックアップを持たない。 -- さっきから何度も隕石が落ちることに触れたのを思い出して頂きたい。隕石によってカリフォルニア州にある私の家は潰れるかもしれないが、ミネソタ州にある CrashPlan のデータセンターが、さらには私が自分のデータを保存している他のいくつかの場所が、それと 同時に 潰れることはほとんどありそうにない。同じことが泥棒や、水道管の破裂や、火事などによるデータ喪失にも言える。すべて、隕石の落下よりずっと高い確率で起こることだ。もしもバックアップがあなたの自宅の中にしか保存されていなかったならば、あなたのデータは限定されたほんの少しの種類の危険に対してしか保護されない。追加のバックアップをあなたの友人の家や、安全な貸金庫、その他の安全な場所に保存しておけばこの問題に対処できるし、また CrashPlan、Backblaze、 DollyDriveなどのクラウドサービスを使ってもよい。どんな方法をとるにせよ、必ずあなたのデータのオフサイトのコピーを作っておくようにしよう。
しかしながら、その反対もまた真実だ...
8. オンラインのバックアップ しか 持たない。 -- オンラインのバックアップは多くの点で優れているけれども、数ギガバイト以上のデータを(ましてやディスク丸ごとを)オンラインのストレージから読み込んでリストアするには長い時間がかかる。そこにはあなたのインターネットプロバイダのバンド幅による制約があるからだ。また、データ量の上限のせいでバックアップデータのすべてを一月のうちにダウンロードすることができない事態に直面することもあり得る。そのような問題に直面しても、バックアップのプロバイダに追加の料金を払えばデータをハードドライブに入れて送ってもらえるかもしれない。けれどもあなたのデータがダウンロードされている間は(あるいは FedEx のトラックがハードドライブを届けてくれるのを待つ間は)データにアクセスすることができない。これは個人的な意見だが、私はそのような中断時間があると非常に都合が悪い。なので、私は必ずローカルなバックアップも作っておくようにしている。(当然のことだが、クローンからブートしたいならば、そのクローンはローカルなハードドライブ上になければならない。)
さて、次の二つの馬鹿げた戦略も、オンラインのバックアップに関連している。
9. Dropbox (または類似のサービス) のみに依存する。 -- Dropbox は素晴らしい。私は毎日これを使ってファイルをクラウド上に保存し、デバイスからデバイスへとデータを同期させている。他にも(iCloud Drive、Box、Amazon Cloud Drive、Google Drive、Microsoft OneDrive など)いろいろなクラウドストレージサービスがあって、ほぼ同等の機能を提供している。そして、それらの多くが、機能限定で、原始的なものではあるが、バックアップ風の機能も提供する。つまり、ファイルの古いバージョンや削除されたファイルを復元できる機能だ。少なくとも、過去一ヵ月以内のものはたいてい復元できる。
それは素晴らしいことだし、実際 Dropbox のようなサービスを使うことで多くの場合にデータの復元が手早く簡単にできるようになる。けれども、あなたの Mac 上の すべての データを保存したり、それを永遠に保管したり、あるいは多数のデータを一度に復活させたりするためにこれらのサービスに依存することは不可能なので、適切なバックアップに代わるものとして使うことはできない。
10. ウェブアプリにはバックアップなんか必要ないと思い込む。 -- あなたは Google Docs、Office 365、iWork for iCloud、あるいはその他膨大な数の同種のウェブアプリのどれかを使って、書類を作成したり書類で共同作業したりしているだろうか? 少なくとも時々なら、そうしている人たちが大多数だろう。結構なことだ。でも、あなたはそれらの書類のローカルなコピー も 持っているだろうか? きっと持っていない人が多いとは思うが、それは良いことではない。
ある日 Google Docs (あるいは他の何か) を開いてみると、そこにあるはずの重要な書類が、見たところ何の理由もなく消えてしまい、見たところ取り戻す方法もない、という経験をした話をよく聞く。その種のことはそう頻繁に起こる訳ではないが、それでも実際に起こる。クラウドサービスがあなたのデータを適切にバックアップしてくれているなどと思ってはいけないし、たとえ彼らがバックアップしていたとしてもあなたが自分でそこから簡単に復旧できるなどと思ってはいけない。(それに、たとえデータがそこに あった としても、インターネットの接続停止やサーバ不良などのために肝心な時にそれにアクセスできなくなることもあり得る。)賢明な人なら聞く耳を持とう。クラウド上に作成したファイルは、自分で独自にバックアップするか、または CloudPullなど専用のユーティリティを使うか、どちらかにするべきだ。(2012 年 3 月 6 日の記事“あなたの Google データを CloudPull でバックアップ”参照。)
11. RAID をバックアップだと思い込む。 -- 私がこのリストを最初に公開した後、ある読者がこの項目の追加を提案してくれた。私も全く同感だ。実際、私の本でもこのことを議論している。RAID は、複数のハードドライブを組み合わせて、それらが一つの論理ボリュームとして機能するようにする。RAID の構成方法はたくさんあるが、中でも mirrored (二重化) RAID (RAID 1) はバックアップと混同されることが最も多い。このタイプの RAID はすべてのブロックを二つの異なる物理的ディスクに書き込み、100 パーセントの冗長性を提供するからだ。(RAID 5 と RAID 6 も冗長性を提供するが、方式が異なる。)うむ、これは基本的に、クローンを作っているのと同じことではないのか? しかも常時最新のクローンを作るようなものだから、より良いのでは?
いや、そうではない。実際、常時最新だという点こそが問題の一部なのだ。例えば、もしもあなたがうっかりファイルを削除してしまえば、二重化 RAID においては即座に双方のドライブからそのファイルが削除される。もしもディレクトリにダメージがあれば、あるいはファイルが壊れれば、あるいはマルウェアなど数限りない種類の他の問題が起こっても、やはり双方のドライブにその問題が及ぶ。そしてもちろん、もしもその RAID が盗まれたりダメージを受けたりすれば、何の役にも立たなくなる。唯一、二重化 RAID があなたを保護してくれるのは、片方のドライブだけにハードウェアの故障が起こった場合のみだ。それは、確かに、そういう問題は起こる。けれども、それはバックアップと同じものではない。
馬鹿げたバックアップは、やめよう! -- あなたがこの記事をここまで読んできて、一貫して目を丸くしながら、バックアップ戦略としては何て馬鹿げた言い草ばかりなんだろうかとあきれておられることを私は期待したい。そして、あなた自身のバックアップ戦略は 賢い もので、これらの欠陥に陥ることのないものだと確認しておられることを願いたい。もしもそうなら、世界の他の 92 パーセントの人々がどんな危ないやり方をしているのかと、あなたが笑いたい気持ちになるのも結構なことだと思う。
けれども、もしもひょっとして、あなた自身がこのリストに挙げられたどれかのことをしていることに気付いて、何度か顔をしかめておられたなら、それは決して恥ずかしがることではない。私たちは皆そういう時代を経てきたのだから、大丈夫。ただ、そこに留まっていてはいけない。どうぞ私の本 "Backing Up Your Mac: A Joe On Tech Guide" を入手して、きちんとしたバックアップの方法を学んで頂きたい。そうすれば、あなたも私も「たとえ隕石が落ちても私のデータは大丈夫」という自信を持つことができ、隕石よりもっと差し迫った危機、例えばゾンビの来襲などに備えることができるというものだ。
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文: Julio Ojeda-Zapata: [email protected]
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>
訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>
Apple ユーザーたちは初代の iPod ドックの時代以来、みんなドックが大好きだ。でも悲しいことに、Apple はその後長い間、iPhone ユーザーたちのためにその必要に応え続けてこなかった。
Apple は iPhone 5c 用と 5s 用に Lightning ベースのドックを販売したことがある。(後者は iPhone 5 とも後方互換であった。2013 年 9 月 25 日の記事“Dock の対決: Apple 対 Twelve South”参照。)けれどもこれらの台はあまりにもそれぞれの対応する iPhone に合うようカスタマイズされ過ぎていて、台の上の溝がハンドセットの底面の形に正確に沿うようになっていたので、iPhone 6 と 6 Plus が登場したとたんに使いものにならなくなってしまった。その後の Apple はドックを一切提供せず、それが私のフラストレーションを高めた。
けれども今回、ようやく Apple は iPhone Lightning Dock をリリースしてくれた。これは以前よりずっと融通の利く台になっている。Lightning ベースの iPhone や iPod touch ならばどれでも使え、たとえ保護ケースに入っていても使えることが多い。これは以前の Apple の Lightning ドックにはなかったことだ。
この新しいドックは、気持ち良いほどに最小主義の、ピカピカに白い装置だ。単なる台座にただ Lightning プラグが突き出しているだけ、と言っても過言ではない。
けれども、私がこれまで考慮の対象にしてきたのはこのドックだけではなかった。何ヵ月も前、まだ新しい Apple 製ドックなど全く姿が見えなかった頃、私はサードパーティの代替品をいろいろと調べ始めた。
それらのドックについて私が第一の判断基準としたのは、比較的コンパクトな iPhone 5 からかなり大きな iPhone 6 Plus まで、Lightning 世代のすべての iPhone モデルに適合すること、しかも裸の iPhone のみならず、保護ケースに入れたものでも収容できることであった。
私は iPhone 6 と iPhone 6 Plus を、Incipio、Seidio、Zuna Designz などさまざまな大きさのケースに収めた状態でテストしてみた。これらの iPhone とケースで使えるドックならば、おそらく将来のどんな iPhone でも使えるであろう。ただし、Apple が充電や同期のために Lightning から USB-C へ切り替えたような非常に大きなデザイン変更をしなかったならばという前提の下にではあるが。
ドックについて私が決めた要件のお陰で、選択肢として残った iPhone 用の台は、Apple のものの他には三つしかなかった。
Grovemade -- たいていの iPhone ドックにはデザイン上の欠陥がある。台に十分な重量がないので、片手でデバイスを引き抜こうとしても、もう片方の手で台を押さえていなければならない。
この先進国的問題点に対処したのが Grovemade だ。 重量のある金属製のドックに、ちょっと美的な洒落っ気を加えようと、本物の木製のカバーが取り付けてある。全体的な効果としては格好良いが、私の趣味にはちょっと合わない。ドックのスチール部分は黒とシルバーの二色から選べ、カバー部分はカエデ材かクルミ材が選べる。Lightning ケーブルは自分で用意しなければならない。
私が借りたドックは黒の台の上にクルミ財のカバーが付いたものだったが、内部のデザインが独特で、組み立てるのが厄介であった。内部のデザインは他のドック変種でも共通だ。
組み立てる際には、Lightning プラグを支えるプラスチック部品(何となくハサミかペンチに似た形)を差し込む必要がある。注意しよう、このプラスチック部品は壊れやすく、私は正しく差し込むやり方に気付くまでに二つも壊してしまった。(一般向けに販売されているドックキットにはこの部品が二つしか付いていない。私は Grovemade の PR 担当者に泣きついて交換部品を送ってもらわなければならなかった。)
いったん組み立ての手順が済むと、この Lightning プラグが少々傾いているのに気付いた。つまり、ドックに差し込んだ iPhone が少し傾いてしまうことを意味する。たいていの人なら大して気にもしないのだろうとは思うが、強迫神経症の私には拷問に近かった。いろいろいじくっても、部品を入れ替えても問題は直らなかった。
でも、iPhone を片手で引き抜けるという点では、この 3 ポンド (1.5 kg) あるドックは宣伝通りに働く。より軽量の他のドックでは、いずれも片手で引き抜くことができず、両手を使う必要があった。
この Grovemade ドックはどの組み合わせでも価格は $99 だ。ただし真鍮とクルミ材の「スペシャル版」は $149 だ。
木製のカバー部分は、異なる iPhone モデルに対応できるようにといろいろのサイズの溝のあるものが販売されているけれども、私としては開口部が最大のものを選ぶことをお勧めしたい。それならば過去・現在・未来のどの iPhone あるいは iPod touch でも、また多くの種類の保護ケースに入れた状態でも、使えるであろうからだ。
Belkin -- 長年 Apple 用アクセサリを作っているこの会社は、iOS デバイス用にさまざまのドックを用意している。Lightning ポートを持つものから、30-pin の変種や、さらには micro-USB の付いたものまである。この最後のものはバッテリーケースに入れた iPhone で使える。例えば Mophie のバッテリーケースは micro-USB ポートを持ち、iPhone とケースが同時に充電できる。
この記事では、Belkin の $29.99 の Cradle with Audio Port for iPhone 5 のみを扱うことにしよう。これは比較的古いものではあるが、その名前に反して新しい Belkin ドックよりも多用途に使える。
この Cradle with Audio Port は私の重要な判断基準、すなわちどの iPhone でも(さらに、この場合は iPad も)裸でもケースに入れても収容できるという条件を満たしている。
この点を強調したのは、より新しい Belkin ドックは収納性が大きく劣り、最も薄い iPhone ケースでなければドックに入らないからだ。その理由の一つは、それらのドックに内蔵された Lightning プラグがアクセサリの底面とぴったり揃っているからだ。
その問題を抱えている iPhone ドックとしては、 Mixit Lightning ChargeSync Dock や Express Dock for iPad などがある。
Belkin によれば、これらの新しいドックは「フルユーザー体験のためにポートの開口部が広くとられている」ケースで使うことを念頭に置いているという。
けれども Cradle With Audio Port には違ったデザインが採用されている。魅力的にも地味な、一つはシルバーでもう一つは黒のピースが磁石で連結され、あなたが自分で用意した Lightning ケーブルをこれらのピースを引き離してその間に装着するようになっている。
ケーブルはドックの底面の内部に隠された切り込みに収まり、上にある穴から Lightning コネクタが飛び出すようになる。コネクタは十分高く突き出しているので、一般的な iPhone ケースのほとんどすべてを(ただし OtterBox のように防水のために非常に大きくなっているものは駄目だが)収容できる。
この台ではケーブルを自分で嵌め込むので、プラグ部分がドックの穴から上にずり上がってきた場合など、時々いじって嵌め込み直す必要があるが、大した問題ではないだろう。
この Cradle with Audio Port にはもう一つ小さな問題点がある。名前の通り、ドックに収容した iPhone 5 や iPhone 5s のオーディオポートに差し込むための 3.5 mm オーディオプラグが付いていて、ドックの背面には外部スピーカーに繋ぐためのオーディオポートがある。けれどもこれは大型の iPhone 6 および 6 Plus モデルでは使えない。iPhone のオーディオポートがこの台のオーディオプラグと位置が合わないからだ。
幸いにも、このプラグは使わない時にはドックの台座部分の中にしまい込むことができる。なので、現行モデルの iPhone でもきっちりとこの台に収容できる。ただ、台に内蔵されたオーディオ機能が使えないだけだ。
Grovemade のドックとは異なり、この Belkin のドックは片手で iPhone を引き抜けるほどの重量がない。つまり、iPhone と一緒に持ち上げてしまわないように、もう片方の手でドックを押さえながら iPhone を引き抜く必要がある。
Twelve South -- この注目を浴びるアクセサリメーカーは特徴的な架台形デザインの HiRise ドックをしばらく前から出している。
私はこれについてはあまり時間をとるつもりはない、何故ならば TidBITS Managing Editor Josh Centers がしばらく前にこのドックを既にレビューしているからである ("Dock の対決: Apple 対 Twelve South" 25 September 2013 参照)。
Josh は、どんな Lightning ベースの iPhone でも、ケースありなしに拘わらず、或いは iPad mini ですらも (しかしフルサイズの iPad はダメ)、対応するこのドックの柔軟性に光をあてた。しかし、彼はこうも付け加えた、"柔軟性に富むと言うことは複雑性も増加させた。HiRise はドックと言うよりは趣味の組立キットといった方が合っている。"
これは今でもある程度そうであるが、組み立てをよりやりやすくするための設計の見直しがなされ、そして白状するが、私の評価ユニットを組み立てるのは結構面白かった。わたしに貸し出されたものは少々改良されたバージョンの $59.99 の HiRise Deluxe で、これは Josh が記事を書いた時点ではなかったものである。(元々の HiRise は今でも組立キットの形で売られており、$34.99 である。)
HiRise Deluxe バージョンでの強化点には、シルバーと黒に加えてゴールドの選択肢が加わったこと、より調整のし易い金属のダイヤル、ほんの少々スタイルが変更されたケース、そして iPhone を電池ケースに入れて使う人のための micro-USB コードが含まれたこと (Lightning コードに加えて) が挙げられる。
HiRise Deluxe に含まれているコードの一つは必須である。これはこのスタンドためにカスタマイズされたものであり、標準の Apple Lightning コードや汎用の micro-USB ケーブルは使えない。Twelve South は小さなプラスチックのスペーサーを同梱しており、これで自分の iOS 機器の厚さ (ケースの有り無し) に応じて、Lightning か micro-USB プロングに合った高さに調整する。
HiRise Deluxe は Belkin ドックの様に、片手で電話を抜き去るに足るだけの重さは備えていない - 少なくとも片手で電話を掴み上方へ持ち上げるという標準的な方法では。この方法では、スタンドもハンドセットの底にくっついたまま一緒に持ち上がってきてしまう結果となる。しかし、Twelve South は、少々手を捻る動作が伴う 賢い回避策 を提案している。
Apple -- この $39 の iPhone Lightning Dock は、サードパーティのアクセサリ業者に対する One Infinite Loop の KISS (keep it simple, stupid、おい、シンプルにしろよ)。実際、ここで取り上げたサードパーティのドックのメーカーはどちらかと言うと考えすぎの傾向がある;これはとりわけ複雑な Grovemade と Twelve South の製品に言える。この Apple のクレードルはこれ以上単純にしようがない;白い台の前端に近い所に Lightning コネクタが後退した角度で出っ張っており、背面には Lightning コード (含まれていない) と 3.5 mm オーディオジャック用のポートが付いている。
可動部品は一つも無く、そして組み立てが必要なものも (自分で用意する Lightning ケーブルと、場合によってはオーディオケーブルを差し込むことを除いて) 何もない。このドックを使うのに手間はかからない。
このオーディオポートは、外部スピーカー用として、或いは iPhone のヘッドフォンポート (こちらはハンドセットがドックされた時には使えなくなる) の完全に機能的な置き換えとして使える。あなたの Apple EarPods を差し込めば、機器に直接差し込んだかのように、電話を使えるようになる。
Apple はこのドックを多くのサードパーティケースに適合するよう配慮しており、そこには自らのものも含まれる (他社からのケースについては何も言っていないけれども)。私が持っているサンプルのサードパーティケースには全部対応している。ただ一つの例外は、Zuna Designz からの iPhone 6 Plus モデルの Zuna Drive ケースで、これは結構嵩張っている。
大抵の他のドックと同様、ハンドセットを引き抜くには、片手で Apple ドックを押さえ、もう一つの手で引き抜かねばならない。
結論 -- iPhone 所有者にとって、ここで取り上げた全てのドックは、多くのサードパーティ iPhone ケールとの適合性という観点からすれば、間違いのない選択肢である。
値段はまちまちで、$29.99 の Belkin ドック、$39 の Apple のものから、$59. 99 の HiRise Deluxe スタンド、そして $99 の Grovemade クレードルまでと広がっている。
Belkin のドックは少々扱いづらい側に属すると言えるが、小型でありそして魅力的であるし、その上 iPhone だけでなく iPad にも使える。
Grovemade の製品は少々グロテスクで、私はその美的感覚に多少疑問を感じるが、機能的には殆ど宣伝通りに動作する。これは片手でハンドセットを取り外せるに十分なだけの重さを持った唯一のものである。
Twelve South の HiRise Deluxe は、いったんその複雑な組立を解き明かしてしまえば、素晴らしい選択肢である。そのデザインは賢く、そして iPad mini タブレットにも使えるのはプラスである。
最終的には、Apple 自身の iPhone Lightning Dock は、最もすっきりしたそして単純なデザインで、これらの中では私の一番のお気に入りである。
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文: Josh Centers: [email protected], @jcenters
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>
「不眠症では、本物は何もない。何もかもが遠くにある。すべてが、コピーのコピーのコピーなのだ。」 - 映画 "Fight Club" の「僕」の独白
毎年恒例の大きなゲーミング・カンファレンス The Electronic Entertainment Expo (E3) は、今年は 2015 年 6 月 18 日に閉幕した。これで 20 年続いている E3 は、ビデオゲーム業界が私たちにゲーミングがどこへ向かっているかを示してくれる、年に一度の重要なイベントだ。今年の E3 は「ここ数年ではベスト,」と謳われたにもかかわらず、何だかゲーミングが堂々巡りをしているような印象を禁じ得なかった。今回発表された主なものをいくつか挙げよう:
Doom (1993 年にリリースされたゲームの再現)
Gears of War 4 (2006 年のゲームの続編)
Halo 5: Guardians (これも 2001 年リリースのゲームの続編)
Fallout 4(これもまた、1997 年に初めてリリースされた後 2008 年に一人称視点のロールプレイングゲームとして再現されたゲームの続編)
Final Fantasy VII(1997 年のゲームのリメーク)
Rise of the Tomb Raider (これもまた 1996 年に遡るゲームの続編で、このゲームの初めての映画化がリリースされた年に私は高校生だった)
Star Fox Zero (1993 年にスタートしたシリーズの続編、その大部分は未発表の 1990 年代の続編に基づいている)
Uncharted 4: A Thief's End (これもまた 2007 年のゲームの続編)
ずっと昔に私がプレイしていたものにゲーマーたちがすごく興奮しているのを見ると、ちょっと奇妙な感じがする。上に挙げたのはほんの一部分に過ぎない。他にも続編やリメークのゲームがまだまたたくさんある。中には面白そうなものもあって、例えば長らく息をひそめていたシリーズの意外な続編として登場したShenmue 3 や、パルクールに基づくシューティングゲームとしてある程度成功したゲームの、こちらも意外な続編 Mirror's Edge Catalyst などがある。ただし今回は元のゲームで扱いづらかった銃の操作がすっかり良くなっている。
誤解しないで頂きたい。私はこれらのシリーズのいずれも、大好きだと思うか、または少なくとも好意的な気持ちでいる。Doom、Fallout、Uncharted の三つは特に好きだし、Final Fantasy VII は Final Fantasy シリーズの中でベストという評判が高い。新しい Tomb Raider が出るのはいつでも大歓迎、なぜなら、これは女性を主人公として成功した数少ないシリーズの一つだからだ。シリーズだ、続編だ、時にはリメークだとしても、だからと言ってそれだけで悪い訳ではない。でも、新しいものはどこにある? ゲーミングとは限界なき媒体であるはずだ。だから、私たちの目に映るものの大多数がコピーのコピーのコピーであるのは、いったいなぜなのだろうか?
この問題は、大手のゲーム出版社以外にも広がっている。去年最も人気を得ていた iOS 用ゲームの一つに 2048 があるが、これは恥ずかしげもなく Threes をパクったものだ。(私が Threes をレビューした記事“FunBITS: Threes は iPhone と iPad の良き友”(2014 年 2 月 21 日) を参照。)App Store で Top Paid ゲームをブラウズして行くと、今や何年も古びた Minecraft、Terraria、さらには NBA Jam まで見つかる。NBA Jam は私が子供のころによく遊んだゲームだ。 Fallout Shelter はおそらく現時点で App Store で最も人気あるゲームだが、これは Fallout シリーズのスピンオフであり、実質的に SimTower のリメークであって、ただ薄気味悪い繁殖の要素とリアルタイムのプレイを盛り込むことにより、朝の 4 AM に起きてプレイしたくなる類いのものだ。まるでFarmville のように。
このような独創性の欠如はビデオゲームに限ったことではない。今年の夏の最大の呼び物映画は "Avengers: Age of Ultron"、"Mad Max: Fury Road"、それに "Jurassic World" で、ご覧の通りすべて続編であり、そのうち二つは私が子供のころからあった映画シリーズだ。さらには文学の世界においても、最も期待の集まっている近刊書の二つが、George R.R. Martin の "A Song of Ice and Fire" (氷と炎の歌、HBO ドラマシリーズ "Game of Thrones" の原作) の第六部と、Harper Lee の長年待ち望まれた "To Kill a Mockingbird" (アラバマ物語) の続編 "Go Set a Watchman" だ。("To Kill a Mockingbird" が書かれたのは実際 "Go Set a Watchman" より後だったという。)記事冒頭で触れた "Fight Club" の著者 Chuck Palahniuk でさえ、続編の流行に乗り遅れまいと "Fight Club 2" を書いた。おそらく Chuck も、主人公たる語り手の「僕」と同様に不眠症に悩まされたのだろうか? ちょっと話が逸れた。
ゲーミングには明るい話題もあるが、それらはよく探さないと見つからない。大いに期待されている No Man's Sky は、Minecraft の方式を一段高いレベルへ持ち上げると約束し、手続的に生成された惑星たちの宇宙すべてを探索できるという。Nintendo から出る予定の Super Mario Maker を使えば自分だけの Super Mario Bros. レベルを作成できる。ただし現時点で出されている実例は Nintendo 版の痛めつけ打撃のみだ。インディーの世界を見れば、未だ開発中のオープンワールド・サバイバル・シミュレータのThe Long Darkといったものもある。
けれどもメインストリームのゲーミングを見渡すと、さらにはポップカルチャー全体を見晴らすと、まるで自分が映画 "Groundhog Day" (邦題「恋はデジャ・ブ」) で Bill Murray が演じた主人公になったような気がする。つまり、同じ一日を何度も何度も生き直す羽目になったみたいだ。そう、"Groundhog Day" と言えば、ハリウッドは間違いなくこの映画をリメークするだろう。CGI で描かれた主人公 Phil が、Punxsutawney の町に降り立つのだ。
ゲーミングでこのパターンが始まったのがいつか、私ははっきり思い出せない。ある意味では、それは常に存在していたのだろう。その昔、一人称視点シューティングゲームは、どんなにユニークなものであっても、すべて「Doom のクローン」とレッテル付けされていた時代があった。また、それよりずっと以前、Pong や Pac-Man のクローンが数限りなく世に溢れていた時代もあった。けれどもこの傾向が年月を経てますます悪化しつつあるように見える。ごく少数のシリーズものが、ゲーミングの全支配権に近いものを獲得しているからだ。
私の推論は、ゲーマーたちが慣れ親しんだ高精細の 3D 体験を作り出すのには極めて多額の費用がかかるため、ゲームの出版社にリスクを負うだけの余力がなくなっているのではないかというものだ。二年ほど前、Call of Duty ゲームの製作責任者 Mark Rubin は次のように述べている:「ゲームを作るのはますます難しく、ますます費用がかかるようになった。だから、小規模の製作会社はトラブルに陥っていると思う。私が彼らを代弁することはできないが、おそらく彼らには大きな AAA 市場に乗り出せるだけの大きなゲームを作る余裕はないのではないか。そういうゲームは、製作が困難だから。」他のゲームのパクリを作るインディー系の開発者たちについても、やはり同じことがずっと小さな規模で起こっているのだと思う。例えば Flappy Bird のようにうまく行くことが分かっている調合法をコピーすることができ、それで収入が得られることが分かっているのなら、いったいどうしてわざわざ危険を冒して新しいコンセプトに賭けなければならないのか?
皮肉なことに、ゲーミングを無限のキャンバスにするものであったはずのテクノロジーが、まさにゲーミングを限定されたものへと押し込めつつある。それは、ゲームというものが、ほとんどあり得ないほどに複雑で費用のかかるものになってしまったからだ。PC 版の Batman: Arkham Knight ("Arkham" シリーズの第四部) は非常にバグが多かったので、Warner Bros. はその販売を中止した。この業界ではかつてなかったことだ。人気のオンライン・シューティングゲーム Destinyの製作会社 Bungie はその拡張 The Taken King を出してそのコンテンツすべてにアクセスするためプレイヤーに総額 $80 を課金するつもりであったが、プレイヤーたちの激しい非難 を浴びてそれを取り下げた。(ただ、独創的な一手を打ち出した点では Destiny チームを評価したい。いくらか派生的な面はあったにしても。)これらの状況において機能不全や金銭欲を非難することは簡単だけれども、私たちの側もやはり現代のゲーム開発の際立った困難さを認めて、それを考慮に入れることが必要なのだと思う。
延々と続く焼き直しや、まともにプレイできないほどバグの多いゲームや、あからさまな金銭欲や、さらには Gamergateのようなオンラインの騒ぎを見ていると、以前ほどゲーミングを楽しめなくなった気がしても不思議ではない。これは決して止むことなく再発明を続けて欲しいと言っているのでもないが、例えば Destiny のような多少派生的なタイトルでさえ、既存の技法を混ぜ合わせて新鮮な体験を作り出すことに成功したし、"Pulp Fiction" は、従来の映画からたくさんのものを借り受けつつ映画の世界で大きな分岐点となることに成功した。Steve Jobs が "great artists steal" (偉大なアーティストは盗む) と述べたのは正しかったのかもしれないが、最も偉大なアーティストは多くの場所から盗むものだ。
いずれにしても、私は引き続きフレッシュでオリジナルなゲームを探して、ここ FunBITS 記事で皆さんに紹介して行きたいと思う。なぜなら、フレッシュでオリジナルなゲームは存在すべきであり、そのようなゲームを作り出す人たちには励ましが必要だからだ。皆さんも、人真似で溢れかえるこのゲーミングの世界でもしも何か傑出したゲームに出会われたなら、どうぞ私にもお知らせ頂きたい!
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文: TidBITS Staff: [email protected]
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>
ClamXav 2.8.1 -- Mark Allan が TidBITS 監視リスト: 注目のアップデート、2015 年 6 月 29 日 を出して、この Mac 用ウイルススキャンツールに大きな変更を一つ加えた。即ち、これはもはや無料ではない。今回から Canimaan Software Ltd. (Allan がオーナーであり主任開発者である会社) を通してリリースされる ClamXav の価格は $29.95 (ただし現在は期間限定で 25 パーセント割引の $22.46) となっている。 Allan によれば「ClamXav に課金することによりようやく私はこれに捧げるべきリソースを得ることができ、注ぐべき労力を注ぎ込めるようになった」ので、今後は定期的にアップデートを行ないバグ修正も以前より素早く出せるようになるという。バージョン 2.8 では Yosemite に触発された Retina ツールバーアイコンが備わり、ClamXav と Sentry が隔離フォルダを正しくスキャンから除外するようにし、ClamAV エンジンをバージョン 0.98.7 にアップデートし、アニメーション化された Dock アイコンが過度の CPU 使用をしていたバグを修正し、ClamXav の環境設定での項目の除外設定を正しく守るようにし、(とりわけ Mac OS X 10.6 Snow Leopard において) 安定性を向上させている。(新規購入 $29.95、無料アップデート、20.9 MB、 リリースノート、10.6+)
Toast 14 Titanium と Toast 14 Pro -- Roxio がToast 14 Titanium をリリースした。この古参のデジタルメディアスイートの、メジャーなリリースだ。バージョン 14 では、新設の Toast Audio Assistant を使って外部のソース(例えばマイクロフォン、テープ、LP など)からのオーディオやストリーミングされたオーディオを読み込んでからそれを CD に焼いたり iTunes に送ったりできるようになった。また、ビデオを焼くための Toast MyDVD ソフトウェアも装備され、テーマ付きのテンプレートを使ったマルチメディア・ディスクのプロジェクトを DVD や AVCHD に焼けるようになった。今回のリリースでは iPhone 6 や iPhone 6 Plus、および Samsung Galaxy S6 への対応も追加された。Roxio は Toast 14 Pro も提供しており、こちらは上記と同じ新機能に加えて 6 つの新しいソフトウェアタイトルも揃えている。Corel AfterShot 2、FaceFilter3 Standard、HDR Express 3、iZotope Music & Speech Cleaner、それに Toast 14 と MyDVD 用の BD Plug-in だ。Toast 14 Titanium の価格は $99.99、Toast 14 Pro は $149.99 で購入できる。Roxio Toast、Popcorn、Easy VHS to DVD for Mac のオーナーならば $59.99 で Titanium 版に、また $99.99 で Pro 版にアップグレードできる。(新規購入 $99.99/$149.99、アップグレード $59.99/$99.99、10.7+)
Toast 14 Titanium と Toast 14 Pro へのコメントリンク:
iMovie 10.0.9 -- Apple がiMovie 10.0.9 をリリースし、CineForm コーデックを使用して GoPro Studio から書き出されるビデオクリップとの互換性に対処した。このビデオ編集アプリはまた、YouTube に送信中に iMovie が突然終了する問題も修正している。(Mac App Store から新規購入 $14.99、無料アップデート、2.0 GB、10.10.2+)
文: TidBITS Staff: [email protected]
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>
今週の ExtraBITS では Josh Centers と Joe Kissell が Tech Night Owl でお喋りし、Apple が AppleCare+ でバッテリーの保証交換の対象を拡大するとともに App Store から南部連合戦旗を排除し、Google が El Capitan での仮想ロッククライミングをデビューさせた。
Josh Centers、Joe Kissell、Tech Night Owl で陰謀とバックアップを議論 -- 私たちスタッフの Josh Centers と Joe Kissell が今週 The Tech Night Owl ポッドキャストのゲストとなった。Josh は Apple Music について語り、Taylor Swift に関する陰謀理論にも触れ、Apple TV の未来と、ARM ベースの Mac の可能性についても論じた。Joe Kissell は最近書いた TidBITS 記事から 11 通りの馬鹿げたバックアップ方法について、それらを避けるべき理由について語った。
Apple、AppleCare+ でバッテリー保証範囲を拡大 -- Apple が、iOS デバイスと Apple Watch のバッテリーの AppleCare+ における保証範囲を拡大した。今後、Apple は保証対象のデバイスのバッテリーの能力が製品仕様の 80 パーセント未満になれば交換する。従来、同社は製品仕様の 50 パーセント未満になった場合にのみ交換に応じていた。
Apple、App Store から南部連合戦旗を排除 -- Apple が、南部連合戦旗を目立つ場所に表示させているアプリをすべて App Store から削除した。(ただし、ちょっと検索しただけでも Apple が見落としたものがいくつか見つかるが。)先日サウスカロライナ州 Charleston の教会で起こった人種的動機による銃乱射事件をきっかけに南部連合戦旗はますます非難の的になりつつあり、Amazon、eBay、Walmart などの小売業者は南部連合戦旗を描いた商品を撤収してきた。しかしながら、Apple のやり方は行き過ぎだと指摘する人たちもいる。今回排除されたものの中には南北戦争をテーマにしたゲームが多数含まれており(教育者たちが頼りにして使っているものさえある)そこでは妥当な歴史的背景のもとにこの戦旗が使われているからだ。
El Capitan で仮想ロッククライミングを -- Google Maps が、El Capitan を登る仮想のロッククライミングを作った。いや、これは来たるべき OS X リリースの話ではない。Yosemite 国立公園の中にある実際の El Capitan 岩壁の話だ。この岩壁を登ったロッククライマーたちが撮影した 20 以上のパノラマ写真を、Google の Street View を使ってあなたも体験できる。
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