TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#1289/14-Sep-2015

今週の TidBITS には Apple の大きな発表のあらゆる詳細情報が詰まっている。iCloud のストレージ価格が値下げされ、新たな Apple Watch モデル、新型の iPhone 6s と 6s Plus、Apple Pencil と Smart Keyboard というアクセサリーがオプションで付いた iPad Pro、それから来たるべき第四世代の Apple TV が発表された。でも、新型の iPhone を買おうと考えている人は、今回その使用体験ががらりと変わることに気付くだろう。そこで Josh Centers と Adam Engst が、あなたとあなたの家族のためにどの購入方法とデータプランがベストかを詳しく掘り下げる。最後にもう一つ、Josh が Mac におけるアキレスの踵と呼ぶもの、壊れやすくて当てにならないヘッドフォンポートを取り上げて Apple を叱責する。今週注目すべきソフトウェアリリースは Final Cut Pro X 10.2.2、Compressor 4.2.1、Motion 5.2.2、それに ChronoSync 4.6.3 だ。

記事:

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Apple、静かに iCloud ストレージ料金を下げる

  文: Josh Centers: [email protected], @jcenters
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

Apple の最近の盛り沢山の発表の中に埋もれて見逃してしまいそうな小さなニュースがあった:200 GB と 1 TB のストレージに対する料金は下がり、有料での最小容量が 20 GB から 50 GB に増え、500 GB の区分は無くなりそうなのである。全ての iCloud アカウントは無料で 5 GB のストレージを得られるが、iCloud Photo Library, iCloud バックアップ、iCloud Drive の様な機能のためにもっと容量が欲しい人に対しての新しい料金体系は次の様になる:

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新しい料金は iCloud を、競合する Dropbox や Google Drive と同等レベルにする。競合はどちらも 1 TB に対して $9.99 である。我々の財布は、この値下げを歓迎するであろうが、年払いの選択肢もあると帳簿管理も簡単になるのだが。Apple は既存の顧客への月額料金を変える方が容易であるとして、年払いの選択肢を避けたのではないかと推測される。現状では、200 GB と 1 TB のプランに入っている人達は単純に今後新しい料金で請求を受け、そして 20 GB と 500 GB プランの人達は、同じ料金のまま 50 GB と 1 TB のストレージを受け取ることになるのではないかと思われる。

Apple はこの新料金体系が何時から適用になるか発表していないが、我々は来月あたりに、iOS 9 と OS X 10.11 El Capitan に合わせてそうなるのではないかと推測している。

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Apple Watch に新しいバンド、watchOS 2 出荷日決まる

  文: Jeff Carlson: [email protected], @jeffcarlson
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

この秋のメディアイベントで、Apple はその Apple Watch に付け加える一連の新しいバンドを公開した - 新しい高級ブランドの参加を含む - それから、この機器の次期バージョンのソフトウェア watchOS 2 のリリース日を 16 September 2015 とした。

数か月前の WWDC で発表された watchOS 2 は ("Apple の watchOS 2、ネイティブアプリと、他社製の複雑時計を獲得" 8 June 2015 参照)、この時計上でネイティブアプリを走らせることが出来る。現在の watchOS では、iPhone 上にあるアプリに対するフロントエンドという位置づけである。ネイティブアプリも幾つか紹介されて、そこには iTranslate と GoPro が含まれ、そして AirStrip Technologies の Dr. Cameron Powell が AirStrip アプリをデモした。このアプリは医師たちに、患者の情報を回診中に見たり、実時間の生命情報へアクセスする、そして他のプロ達と通信することをさせてくれる。これら全てには HIPAA プライバシー方策が適用されている。彼はまた Sense4Baby のデモもした。このアプリは (カスタムの Sense4Baby センサーと共に) 妊婦の心拍数、胎児の心拍数、そして陣痛の進行度を記録 - 妊婦も胎児の心拍音を聞くことが出来る - そしてその情報を医師に送ることが出来る。

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Apple Watch の内部は変わっていないが (恐らく来年であろう)、Apple はアルミの仕上げに 2 色を加えた、ゴールドとローズゴールドである。また、ラインナップに加えられたのは一連の新しいバンドで、ラベンダー、アンティークホワイト、ストーン、ミッドナイトブルー、オレンジ、そして (PRODUCT)RED スポーツバンド、更に、ブラック又はサドルブラウンの革製ツートン Classic Buckle である。

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高級市場向けとして、Apple Watch Hermes エディションは、ステンレスケースと 3 つのレザーバンドの組み合わせだけではなく、マッチするカスタムの Hermes 盤面も提供する。価格は $1,100 から $1,500 の間である。

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これらの新しいモデルは現在入手可である;Hermes モデルの方は October 2015 になるが、限定された Apple 販売店でしか手に入らない。

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iPhone 6s と iPhone 6s Plus、タッチの感触を得る

  文: Jeff Carlson: [email protected], @jeffcarlson
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Apple のサンフランシスコでの大きなメディアイベントについて何の噂も聞かなかった人でさえ、Apple が iPhone の新機種を出してくることは当然推察できただろう。何年も前からのパターンの通りに、Apple は今回、iPhone 6s と iPhone 6s Plus を発表した。これらは、去年の iPhone 6 および 6 Plus の各モデルとフォームファクターは同じだが、コンポーネントが大幅にアップグレードされている。ただし今回はハードウェアとソフトウェアにいくつか新しいものが加わっており、さらに(米国向けには)新しいアップグレード契約もあって、iPhone 6s と 6s Plus をとりわけ興味深いものとしている。

iPhone 6s と iPhone 6s Plus の予約注文は 2015 年 9 月 12 日に開始され、2015 年 9 月 25 日に出荷が始まる。新たに加わった重要な点を挙げよう:

3D Touch -- Apple が Apple Watch に Force Touch を導入したので、私たちはいずれ間違いなくこれが iPhone にもやって来ると確信していた。でも、強く押したか否かをデバイスが認識できたとしても、単にそれだけでは魅力的な機能とはならない。興味深いのはその結果として生まれるアクションであって、Apple は新型 iPhone においてこれを 3D Touch と呼んでいる。

ウォッチにおいては、Force Touch はインターフェイスから見えない追加のオプションを呼び出す働きをした。例えば、時計画面を切り替えたり、すべての通知をクリアしたりといったことだ。けれども iPhone 6s と iPhone 6s Plus における 3D Touch はさらにもう一歩進んで、Peek と Pop と呼ばれる二つの新しいジェスチャーを提供する。

名前から推察される通り、Peek は項目をフルに開くことなく素早く中を覗いて見る。スクリーン上で普通より少しだけ強く押すことで、Peek が呼び出される。例えば、Mail の中で電子メールの Subject 行をちょっと押せば、そのメッセージを開かずメッセージ内容が見える。(その後で Inbox に戻る操作は不要だ。)あるいは、Instagram のタイムライン上に興味深い写真があれば、それをちょっと押せばプレビューが表示される、その際、背景にある項目はぼやけて見え、今 Peek しているものがインターフェイスの中にある他のすべてのものの上に表示されているということがよく分かる。

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一方、Pop はそれよりもう少し強く押し込むもので、そのままそのメッセージやページなどがロードされることになる。ここでもやはり、Peek を離れることなくそのまま進むし、またスクリーンから指を離してアプリを切り替えたりすることも要らない。

3D Touch はまた Quick Actions も可能にする。私が思うに、これこそずっと便利に使えるだろう。例えばホーム画面から、Phone アプリアイコンを強く押すことでよくやり取りする相手に即座に電話をかけたり、Camera アプリアイコンを強く押すことでセルフィーを撮ったりビデオを録画したり Slo-Mo 撮影をしたりスナップ写真を撮ったり、あるいは Maps アプリを強く押すことで自宅への道順を得たり現在地をマークしたり自分の現在地を送信したり周辺を検索したりといったことができる。これらの Quick Actions の多くは基本的に Mac 上のコンテクストメニューと似たようなものだ。

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これらの 3D Touch アクションにスワイプを加えればさらにもっといろいろなことができることもある。Peek したばかりの電子メールが重要でないものだと分かれば、右にスワイプして既読にマークできる。

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3D Touch の動作を可能にしているテクノロジーは、とても興味深いものだ。これについては iPhone の Technology ページにも説明があるし、この機能を紹介した Apple の紹介ビデオにも示されている。

また、Bloomberg Business も、3D Touch がどのように生まれたかを描き出す背景記事を出している。

カメラの技 -- これもお馴染みの戦略通りに、Apple は今回の iPhone "s" シリーズで、世界で最も人気のあるカメラの一つとなった iPhone の写真関係の機能を一段と改良した。

背面の iSight カメラは一画像あたり 12 メガピクセルの情報を記録することができるようになり、従来の iPhone 6 と iPhone 6 Plus における 8 メガピクセルから大幅に進歩した。メガピクセル数が増えても感度の向上が実際に画質の向上に結び付かなければ意味はないが、Apple の Marketing 担当副社長 Phil Schiller はセンサーがどのように改良されたかを強調してみせた。ピクセル数が 50 パーセント増加した(従って Focus Pixels も 50 パーセント増えた; このテクノロジーについては 2014 年 9 月 9 日の記事“Apple、大型画面搭載の iPhone 6 と iPhone 6 Plus を発表”参照)ことに加えて、カラーを明確化するためのフィルターがセンサーアレイの上側からアレイ自体の上部へと移された。Apple はまた deep trench isolation というテクニックも使っている。光ダイオード同士を分離することにより、隣接するフォトセンサーに漏れ出る光の量を減らすためのものだ。

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前面の FaceTime カメラは 5 メガピクセルの画像データを記録するようになり、このカメラを使ったセルフィー撮影は Apple が Retina Flash と呼ぶものによって改善される。これは、スクリーン全体が明るく光ってあなたの顔を照らす(単純に聞こえるが Apple はこの機能専用に特別のチップを開発した)というもので、Apple の True Tone フラッシュテクノロジー(これは背面のフラッシュにも使われる)によって最適な色温度を判断する。

これらはすべて興味深い改善点だが、iPhone 6s における真にユニークな新機能は Live Photos だ。写真を撮影すると、iPhone は実際にはあなたがシャッターを押した瞬間の前後それぞれ 1.5 秒間のスチール写真も撮影する。それらを Live Photo としてまとめれば、その瞬間のミニ・ビデオを観ているような効果が得られる。(言わば、Harry Potter シリーズに出てくる魔法の写真のようなものだ。)Live Photos はデフォルトで有効となっており、撮影の際に黄色い "Live" インジケータが見える。写真を表示させている状態でそれを軽く押せばライブ版の写真が観られる。(百聞は一見にしかずなので、Apple のデモをぜひご覧あれ。)

iPhone 6s と iPhone 6s Plus ではビデオも劇的に進化した。映像は 4K 解像度、3840 × 2160 ピクセルでの録画が可能となり、iPhone 6 の 1080p HD ビデオの 1920 × 1080 ピクセルに比べれば大幅な改良だ。Apple の iPhone 6s Cameras ページの一番下に 4K 映像のサンプルダウンロードがあるので実際にご覧になって頂きたい。iMovie も、4K ビデオの再生と編集に対応する。

内部の事情 -- これら新型の iPhone では内部のコンポーネントも改良されている。製品発表の場で改善点を並べ立てれば素晴らしく聞こえるが、デバイスの購入を検討中の消費者から見ればそれ自体としては重要なことではない。たいていの人にとっては、ただいろいろのことがより良く、より高速になったというだけだ。けれども、注目しておくべき変更点はいくつかある。

iPhone 6s と 6s Plus は、新しい 64-bit の A9 プロセッサで動く。それを補うのが M9 モーションコプロセッサで、これは別チップとして働くのでなく A9 に組み込まれ、常時動作できるようになった。Apple によれば、CPU 性能は A8 チップに比べて 70 パーセント速く、グラフィックスの処理は 90 パーセント速くなったという。

Touch ID センサーはこれまでの iPhone 6 や iPhone 5s 各モデルに搭載されていたものに比べて反応性が 2 倍速くなったので、指紋認識の際の待ち時間が減るはずだ。

Apple によれば、iPhone 6s は Wi-Fi 接続の際の速度が最大 2 倍になるという。またセルラーネットワーキングも改善され、Apple は LTE Advanced と呼んでいるが、23 の周波数帯で最大 2 倍のスループットを提供し世界各国でのローミングが改善されるという。

これらすべてのことが、iPhone 6 と同じ大きさの筐体の中に実現されている。一つだけ新たに追加されたのが、ローズゴールド薄色のアルミニウムケースのオプションだ。私たち TidBITS スタッフは誰も実際にイベントに出席してはいないが、きっと去年のモデルと同じくらいに格好良い筐体に違いないと思う。でも、やはりしっかり握って手に持つのが難しいだろう。私はデザインの見栄えには心を奪われたが、去年のモデルで初めて、私は iPhone をケースの中に常時入れておくようになった。そうしないとしっかり掴めないからだ。

そうそう、これは Apple Watch に見倣ったのだろうと思うが、iPhone 6s と iPhone 6s Plus では、いつでも "Hey Siri" と言えば Siri が呼び出せる。iPhone を電源に繋いだ状態でなくても構わない。

iPhone Upgrade Program -- iPhone 6s 各モデルの料金は、従来よりもやや複雑になる。最近セルラープロバイダ各社がビジネスモデルを見直したからだ。まずはいろいろな構成とそれぞれのフル価格から話を始めよう。驚くことに、いずれの iPhone も依然として容量は 16 GB から(2015 年 9 月 24 日の記事“Apple は何故 32 GB にせず 16 GB iPhone を残したのか”参照)で、中段の 64 GB と、ハイエンドの 128 GB という選択肢がある。それぞれのモデルを契約なしでそのまま購入する際の価格は以下の通りだ:

プロバイダ各社は、それぞれ独自の分割払いプログラム (例えば AT&T Next) を提供するか、あるいは当初のコストを抑えた割引価格にして 2 年間の契約で縛るかするのが一般的だ。これらのプランを比較するとどうかについての詳しいことは 2015 年 9 月 11 日の記事 "Comparing U.S. iPhone Plan Costs in a Contract-Free World" を参照して頂きたい。

しかしながら Apple は今回、 iPhone Upgrade Program を打ち出してきた。これは Apple から直接購入する場合のみに適用され、月額 $32 から $40 程度 (iPhone 6s の場合) または月額 $37 から $45 程度 (iPhone 6s Plus の場合) を払えば 12 ヵ月ごとに新しい iPhone にアップグレードできるというものだ。しかも、新規の iPhone 用に別途購入すれば $129 もする AppleCare+ が、この iPhone Upgrade Program の価格に含まれている。おそらく、アップグレードの際はダメージを受けていない iPhone を返却することが条件となるからだろう。このプログラムで入手する iPhone はロックなし ("SIM フリー") で、どのキャリアとでもセットアップできる。[訳者注: この iPhone Upgrade Program は(現在のところ)米国向けのみのプログラムです。]

iPhone 6s と iPhone 6s Plus は、今年の発表イベントの大本命と見なされていた。Apple の最大の収入源として、iPhone が Apple の最重要の製品であることに疑問の余地はない。今回のアップデートは、より高速に、より良くという私たちの期待に概ね沿うものではあった(ローズゴールド色のアルミニウム筐体の追加という意外性はあった)けれども、ただ流れに身を任せるだけ、あるいはただ速度向上を提供するだけではいけないということを Apple はよく承知している。3D Touch や、劇的に改善されたカメラや、そのハードウェアの利点を生かした Live Photos などのソフトウェア機能や、さらには iPhone Upgrade Program も、すべて新しいデバイスへの移行を考える論拠となるべきものだ。もちろん、だからと言ってすべての人を説得できる訳ではない。とりわけ現在 iPhone 6 か 6 Plus を使っている人を動かすのは難しいかもしれない。けれども、もっと古い機種を使っている何百万人もの人たちや、Apple の最新のテクノロジーに通じていたいと思う人たちには、非常に魅力的なものと言えるだろう。

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iPad Pro、Smart Keyboard と Apple Pencil と共に発表される

  文: Michael E. Cohen: [email protected], @lymond
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

Apple CEO Tim Cook は、San Francisco での Apple のメディアイベントの iPad の部分を、iPad は "将来のパーソナルコンピュータに対する我々のビジョンの最も鮮明な表現" であると言って開始した。そのビジョンの一例として、iPad Pro が、その補助的だが望ましい周辺機器と共に、November 2015 に登場する。iPad 国での新しい出来事を記す。

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前菜から始めよう:iPad mini 4 である。これの前身である iPad mini 3 と比べると、この最も小型の iPad の改訂版は、より薄く、より速くなり、そしてより高級なカメラに変わったが、値段は据え置かれた。(iPad mini 3 のために作られたケースは合わないかもしれない;買う前に製造者に確認されたし。) これはもう既に入手可であるが、前モデルの一部も価格を下げて残されている。しかし、このためにわざわざ足を運んだのではない? おっしゃる通り、次へ進みます。

余りにしばしば噂に上るので半分ジョークと化していた iPad Pro が遂にやって来る。色は三色で (シルバー、ゴールド、そしてスペースグレイ)、11 月のどこかで入手可となる。この機器は、見慣れた他の iPad とほぼ同じ様に見えるが、違うのはこれには 12.9-inch、5.6 百万画素のスクリーンが、高さ 12 インチ (305.7 mm)、幅 8.68 インチ (220.6 mm)、厚さ 0.27 インチ (6.9 mm) の筐体に組み込まれていることで、iPad Air 2 よりもほんの少々厚いだけである。重量は 1.57 ポンド (713 グラム) で、初代の iPad よりもほんの少々重い。

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内部的には、iPad Pro は Apple の最新の A9X プロセッサを M9 モーションコプロセッサと共に採用している。これらは前のモデルの性能を凌駕していて、Apple の比較表をみれば一目瞭然である。つまるところ Apple によれば、この機器は、昨年出荷されたポータブルコンピュータの 80% よりも高速だという - そこには Cupertino の会社によって開発されたものも含まれるのであろう。

画面の大きさは 2732 x 2048 ピクセル (密度は iPad 標準の Retina ディスプレイと同じ 264 ピクセル/インチ) であるが、これには熟考の跡が見える:短辺の大きさは iPad Air/Air 2 の高さと全く同じで、iPad Pro を横置きしても、iPad アプリの縦位置表示がそのまま可能となる。その結果、脇には iOS 9 の新しい Split View 機能を使っての二番目のアプリの画面を表示するに十分な余地が残される。更に、4 つのスピーカーが付け加えられた - 2 つが上部に、そして 2 つが底部に - これらは、機器の向きに関係なく高品質のステレオ再生を提供すべく意図されている。また、iPad では最初のモデルからほぼ全てで標準となってきている 10 時間の電池寿命も提供している。

より良い音とより大型の画面 (実際に、フルサイズのキーボードが画面に収まる程大きい) を持ったより高速の iPad のみで、この機器をプロモデルとしているわけではない。鍵はアクセサリで、それが旅に出ているプロが持ち歩く典型的なノートブックコンピュータを置き換える可能性をもたらしている。まず Smart Keyboard で、これは他の iPad 用の Smart Cover と同じ機能を持つ - 違いは、このカバーには物理キーボードが組み込まれており、個々のキーは布で覆われた 4 mm 高のキーで、"レーザーアブレーションの技法で成形されている。" Apple によれば、布で覆うことで、もっと厚みを要する機構なしでも触覚フィードバックが得られているという。Smart Keyboard は、iPad Pro の側面にある 3 つの小さな磁石の Smart Connectors を使い、キーボードに電力を供給すると同時に iPad Pro と通信をする。直接接続することで、あまり利口でない Bluetooth ペアリングも必要ないし、そして近くにいる Bluetooth ハッカーがあなたのキーストロークを密かに盗み見する危険もない。

二つ目のアクセサリは、Steve Jobs が即座にはねつけた種類の機器である (しかし、我々の所の Josh Centers は "Apple Pen の可能性は?" 6 February 2015 で予言していた):スタイラスで、Apple Pencil と呼ばれる。Apple が既存の機器に挑戦してきた多くのものと同様、これも普通のスタイラスではない。Apple Pencil にはセンサーがあり、毎秒 240 回通信する。そして、iPad Pro スクリーンには別の回路が組み込まれており、正確な動き、場所、傾き、そして強さのデータを提供する。Apple Pencil がどの様に働くかについてを説明している印象的な Jony Ive のビデオを見て欲しい。勿論、その様なスタイラスには電源が必要で、Apple はそのために Lightning コネクタを Apple Pencil の頂点に組み込んだ:それを iPad Pro に 15 秒間差し込めば、30 分の使用に十分なだけの充電が出来る。フル充電で Apple Pencil は 12 時間動作できる。

Apple は、iPad Pro が事務的なそして創造的な仕事のどちらでも対応出来ることを示した。Microsoft の Kirk Konigsbauer は、書類上に Apple Pencil を使ってメモを書き留めそしてデータをウィンドウ間で効率よくコピー&ペーストするもう一人のユーザーと画面上で隣り合って Office アプリのデモをした。次に壇上に上がったのは Adobe の Eric Snowden で、彼はテキスト、写真、そして描画を Adobe の 3 アプリスイートの中で非破壊型のレイアウトワークフローを示した:使われたのは Comp CC, Photoshop Sketch, そして新しい Photoshop Fix である。

しかし、インフォマーシャル (情報山盛りのコマーシャル) の人達は間違いなく尋ねるであろう:これら全てで幾らかかるのか? iPad Pro に関しては、モデルによる:Wi-Fi と 32 GB のストレージを持つ低価格モデルは $799;Wi-Fi と 128 GB のストレージを持つ高価格モデルは $949;そして 128 GB のストレージと Wi-Fi 及びセルラーの両方に対応する高価格モデルは $1,079 で売られる。Smart Keyboard は $169 で、Apple Pencil は更に $99 を計算書に加える。言い換えれば、最高級のポータブル一式でおよそ $1,347 となるが、重さは 2 ポンドに満たない。

iPad Pro を、$1,449 の 13-inch モデルの高速 MacBook Air と比べてみよう。そこには 2.2 GHz dual-core Intel Core i7 プロセッサ、8 GB の RAM、そして 256 GB のフラッシュストレージが付くが、Retina ディスプレイとセルラー接続は無いし、重量もフル装備の iPad Pro よりもまるまる 1 ポンド多い。それでも、利用できる色々なソフトウェアやシステムアテンダントサービスのために実際の Mac を必要とするプロも多いが、そうでない人達もいる。iPad Pro は、本来であれば MacBook Air (そして、新しい 12-inch MacBook) に向かうであろう販売の一部に食い込むであろうことは予測できる。Apple とて、他の商品を伸ばすため一つの商品が犠牲になる話には無縁ではなく (iPhone は iPod を殆ど絶滅させてしまった)、iPad Pro もその伝統を引き継ぐことになるのかもしれない。

Apple は、自らのパーソナルコンピューティングのビジョンである豊かに実体験の様に感じられるユーザー経験を提供するために、自らをそしてそれを含む機器を殆ど意識させない先進的な技術を開発することに長い間努力してきた。iPad Pro と Smart Keyboard そして Apple Pencil の組み合わせは、とても印象深く、安価ではないかもしれないが、そのビジョンに向けた次の一歩のように見受けられる。

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ついに第四世代 Apple TV が登場間近

  文: Josh Centers: [email protected], @jcenters
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

今度こそ本当にやって来る。長らく噂されていた、いろいろと推測されていた Apple TV が、公式に登場すると発表された。(私の以前の推測と山勘のごった煮は、2015 年 7 月 6 日の記事“iOS 9 の中に次期 Apple TV の手掛かりを探す”と 2014 年 2 月 21 日の記事“Apple TV の未来”をご覧あれ。)登場は 2015 年 10 月後半、価格は $149 (32 GB 版) と $199 (64 GB 版) だが、この第四世代 Apple TV には改善されたハードウェア、タッチ対応で Siri 対応の新しいリモコン、アプリを走らせられる新しい iOS ベースの tvOS、それに独自の App Store がお目見えする。

デモのビデオがあるのでご覧あれ。

「私たちのビジョンは単純で、おそらく少々挑発的なもの、すなわち、テレビジョンの未来はアプリにあるというものだ」と Apple CEO の Tim Cook は宣言した。(ただしこれはそれほど挑発的とは言えないかもしれない。Amazon、Microsoft、Roku、それに Sony も、何年も前から TV アプリを作っている。)

まずは新しい Apple TV のハードウェアから話を始めよう。高さは 1.3 インチ (33 mm) と、この新しい箱は(そう、依然としてこれは黒い箱だ)第二および第三世代のモデルに比べて少し厚みがあり、従来のモデルに搭載されていた光学オーディオポートが省かれている。新しい Apple TV の背面には 4 つのポートがある。電源、HDMI、10/100 Ethernet、それに診断・サポート用の USB-C ポートだ。内部には iPhone 6 のものと同じ A8 プロセッサ、2 GB の RAM、MIMO 対応 802.11ac Wi-Fi、それに Bluetooth 4.0 がある。この新しい Apple TV は 4K 解像度には対応していないが、毎秒 60 フレームの 1080p に対応する。

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もっと印象的なのが新しい Siri Remote で、従来の Apple Remote を大幅に作り直したものとなっている。Siri 用デュアルマイクロフォンと、ガラス製タッチサーフェス、Menu および Home ボタン、それに Siri の音声コントロールを呼び出す新しい Siri ボタンがあり、テレビや受信機の音量を調節するための音量ボタンまである。Bluetooth 4.0、IR トランスミッタ、加速度センサーとジャイロスコープ、それから充電可能なバッテリーも内蔵する。この Siri Remote は Lightning コネクタを使って充電するが、あまり頻繁な充電は要らない。Apple によれば、Siri Remote は一回の充電で 3 ヵ月保つという!

tvOS -- iOS 9 に基づいているけれども Apple の Eddy Cue の言葉によれば「リビングルームのためにデザインされた」新しい tvOS は、Apple TV ユーザーたちが既に慣れ親しんできたものと見た目はそれほど違わないが、アイコンには素敵な視差アニメーションが付く。メインメニューが並ぶ背後にあるのは、既存のさまざまの Apple TV アプリの、再デザインされたバージョンだ。

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Apple TV のインターフェイスは、リモコンの新しいタッチサーフェスのため、また Siri のために作り替えられた。巻き戻したり早送りしたりするには、従来はリモコンの方向リングを押していたけれども、これがタッチサーフェス上のスワイプでできるようになる。

Apple TV の Siri は、どうやら私が想像したことをはるかに超えて素晴らしいものになるようだ。もちろん Siri を使ってアプリを開くことはできるが、映画や番組の検索を、その名前、監督、俳優、さらには年齢制限によってもできる。しかもその検索は単に iTunes コンテンツの中だけでなく、Netflix、Hulu、HBO、Showtime などにわたって走り、将来はさらに他のサービスもここに加わるはずだ。

Siri を使えば、次のようにして検索を狭めて行くことができる。まず初めに "Show me some movies" と Siri に語りかけてから、その次に "Show me some James Bond movies" と言い、最後に "Just the Sean Connery ones" と言えばよい。さらには "What are some good movies to watch with kids?" といった質問を Siri に投げ掛けることもできる。

これこそ新型 Apple TV の 飛び切りの 機能かもしれないが、"What did she say?" と言うことができる。テレビ番組を観ていて、会話の中の一言が聞き取れなかったとしよう。新しい Apple TV なら、Siri に "What did she say?" (あるいは "What did he say?") と尋ねれば、Siri がビデオを 15 秒だけ巻き戻した上で、一時的に字幕をオンにしてくれる。これは間違いなくわが家で頻繁に使われる機能となるだろう。

また、ビデオを観ながら Siri にそのビデオに関する情報を尋ねることもでき、さらには天気予報を尋ねればビデオの下の方のスクリーン上に天気予報が表示される。その後で上へスワイプしてビデオの再生を一時停止し、天気予報をフルスクリーンで表示させることもできる。

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新しい Apple TV インターフェイスには、この新しいデバイス専用に撮影された、高解像度でスローモーションのビデオによるスクリーンセーバがいくつか含まれている。これらのスクリーンセーバには昼の場面も夜の場面もあり、時刻に応じて使い分けられる。もちろん、新型 Apple TV は Apple Music にも iCloud Photo Library にも(ようやく)対応する。

オーケー、皆さんは忍耐強かった。では、そろそろ皆さんがじりじりして待っていた話題、つまりアプリの話題に移ろう。

お願いだから、アプリの話をしてくれ! -- さきほど触れたように、新しい Apple TV には App Store がある。開発者たちは、現在既にソフトウェア開発キットにサインアップできる。tvOS は、直接 iOS アプリを走らせることはできないが、開発者がユニバーサル購入を提供できるので、あなたが iPhone 用にアプリを購入すれば、それに相当する Apple TV 用アプリを受け取ることもできるようになるかもしれない。

ここで誰もが思い付くのがゲーミングだろう。Apple は多数のゲームを誇示している。例えば、新しいマルチプレイヤーモードを備えた Hipster Whale の Crossy Road、レーシングゲーム、Rock Band、Harmonix の Beat Sports と呼ばれる新しい音楽野球ゲーム、Rayman Adventures、Disney Infinity、また Apple Watch と協力して働く新しいフィットネスゲーム Zola もある。

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開発者用書類が示唆するところによれば、新しい Apple TV はサードパーティのゲームコントローラにも対応するようだが、Xbox や Playstation に代わるものとして Apple TV を考えたならおそらく落胆することになるだろう。たいていのゲームは Siri Remote を念頭に置いて構築されており、従って動作とタッチの入力を中心にデザインされている。例えば Crossy Road のようなマルチプレイヤーゲームの場合は、追加のコントローラとして iOS デバイスが使えるように作られていることもある。

Apple TV 用アプリがどの程度大きなサイズになり得るかについてはいくらか混乱がみられた。当初のインストールサイズは上限が 200 MB と定められていて、これはあまり大きくもないが、 iMore の Serenity Caldwell が説明しているように、アプリが後日 2 GB の追加データをダウンロードすることが可能で、さらに iCloud の中に追加の 20 GB のリソースを保存できる。あなたがアプリを使用中に、そのアプリは不要なコンテンツ、例えばゲームの最初の方のレベルをフラッシュすることができるので、Apple TV アプリのストレージは効率的に働くはずだ。これとは対照的に、Playstation 4 のゲームは 1 GB から 50 GB までというサイズになっている。

けれども Apple TV のアプリはゲームだけとは限らない。いつも通りに Major League Baseball は素晴らしいアプリを提供して現在の試合の途中経過やハイライトシーンを表示する。さらに、新しい MLB アプリはこれから始まる試合や次に来るプレイを通知することもでき、二つの試合を横に並べて同時に観ることさえできる。

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おそらくもっと驚くべきことだが、Apple TV には従来型のアプリもいろいろある。宿泊設備共有サイト Airbnb、不動産サービス Zillow、ブランドもののショッピングサイト Gilt、さらには漫画リーダー Madefire でさえ Apple TV に参加するという。つまり、あなたはリビングルームに座ってビデオを観たりゲームで遊んだりできるだけでなく、ショッピングをしたり漫画本を読んだりすることもできるのだ。

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答の見つからない疑問 -- Apple はたくさんのクールなものを見せてくれたが、Apple TV について答の見つからない疑問はまだまだたくさんある。

まず第一に、新しいコンテンツサービスが発表されなかった。噂によれば、独自の TV サービスを、さらには Netflix に対抗できるようなものをスタートさせるため Apple は契約を交渉中とのことであった。もしもそれが事実ならば、Apple はまずはハードウェアを出して、新しいサービスは後から来るということなのだろうか。新しいハードウェアが登場するのにこれほど長い時間がかかったのも、これが理由だと考えれば納得がいく。Apple は、未だに実体化しないコンテンツ契約が追い付くのを願っていたのかもしれない。

次なる疑問は、ケーブルテレビの認証に関するものだ。Apple TV を使う際の苛立たしい側面の一つは、そして私たちが "Take Control of Apple TV" を出版して以後状況はますます悪化しているのだが、衛星またはケーブルのプロバイダの TV パッケージを必要とする新しいアプリが次々に登場して、個々のアプリが個別の認証を必要とするようになっている。願わくは、tvOS でこの問題に対する解決が図られるようになって欲しい。たとえ、それが単なる統一化された認証パネルに過ぎなくてもあれば嬉しい。

また、32 GB なのか 64 GB なのか、どちらの Apple TV モデルを買うべきかという問題もある。一つのアプリが一度に(最大で)たった 2.2 GB のストレージしか必要としないので、それはつまり 32 GB のレベルでさえ最大 14 個のアプリを収容できることになる。実際、たいていのアプリはそれよりずっと少ない量しか占有しないだろうと思う。64 GB モデルなら 28 個の巨大なアプリを許容できるので、Apple TV でゲーミング三昧をしたい向きにはそちらの方が良い選択肢かもしれない。でも、たいていのユーザーはおそらく 32 GB で十分だろう。それでもアプリのリソースの多くが iCloud からのストリーミングで取り込まれることになるので、もしもインターネットか iCloud サービスがスローダウンしたり中断したりすればどうなるのかと思わざるを得ない。

Apple は第三世代の Apple TV も $69 で販売を継続すると述べた。でも、ストレージ容量はどうなるのか? tvOS へのアップデートを受けられるのか? それとも既存のソフトウェアを使い続けるのか? もしも tvOS へのアップデートを受けられるとすれば、どの機能に対応できるようになるのか? 第三世代の Apple TV は A5 プロセッサ、512 MB の RAM、8 GB のフラッシュストレージを持つ。これは第四世代モデルの A8、2 GB の RAM、32 GB または 64 GB のストレージに比べれば大きく劣る。(iPhone の世界で A5 が最後に使われたのは iPhone 4S、つまり iOS 9 に対応可能な最も古いデバイスだ。)

新型 Apple TV が第三世代モデルと比べて具体的にどれだけ違うのか、あるいは Amazon Fire TV や Roku といった競争相手に比べてどうなのかは、実際に見てみるまでは分からない。思うに、非常に予算の厳しい人を除いて、ほとんどの第三世代 Apple TV オーナーにとってアップグレードするのは容易いことだろう。他方、Fire TV や Roku のオーナーにとって価値があるどうかには疑問が残る。もしもあなたが Amazon のエコシステムに十分入り込んでいるのなら、やはり Fire TV の方が理に適っているだろう。ただし、コンテンツの選択肢が多いという理由で Fire TV か Roku に気持ちが傾いているのなら、あなたの欲しいアプリが新型 Apple TV に到来するか否かを見てから判断する方が良いかもしれない。けれども、もしもあなたが速さとインターフェイス、それに音声検索の面で Fire TV を気に入っているのなら、どうやら見たところ新型の Apple TV はそれらの面では飛躍的に上回るものとなるはずだ。

いずれにしても、私は不満を言うことができない。この第四世代 Apple TV には本当に長いこと待たされたが、Apple が今回示してみせた内容は素晴らしい。その Siri 機能だけでさえ、競争相手を打ちのめすに十分だろう。私としては、新型 Apple TV に実際に手を触れながら "Take Control of Apple TV" の更新作業を始められる日が待ち遠しい。

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Comparing U.S. iPhone Plan Costs in a Contract-Free World

  文: Adam C. Engst: [email protected], @adamengst, Josh Centers: [email protected], @jcenters
原文記事:

[この記事は米国における iPhone プラン料金に関するもので、日本には適用されないことがらですから、申し訳ないですが翻訳を省略させていただきます。原文記事: をご覧ください。日本における iPhone プランについては、たとえば“ASCII.jp:【決定版】iPhone 6sの料金・端末価格を徹底分析 どこがオトク? (1/5)”などの記事が出ています。]

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ヘッドフォンポート: Mac におけるアキレスの踵

  文: Josh Centers: [email protected], @jcenters
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Apple は史上最も美しい、見事にデザインされたデスクトップコンピュータやラップトップコンピュータのラインアップを備えている。でも、それらすべてのコンピュータに共通する一つのポートが、私に他の何より多くのトラブルを経験させてきた。それが、あのいまいましい 3.5 mm ヘッドフォンポートだ。私は 1980 年代以来、この種のポートを備えたデバイスを何十台、いやひょっとすると何百台も所有してきたが、二台の Mac を除いてそのポートで問題に出会ったことは一度もなかった。そして、その例外の二台こそ、2011 年型の MacBook Pro と、最新型の Retina 5K ディスプレイモデル iMac だ。

問題の原因は、Chris Breen が Macworld 記事に書いたことがある通り、すべての Mac のヘッドフォンポートの内部には小さなセンサースイッチがあって、プラグを差し込んだ際にそれを探知するようになっているという事実だ。ヘッドフォンをそこに接続すればこのスイッチが入り、すると Mac の内蔵スピーカーがオフになってサウンドがヘッドフォンに出力されるようになる。プラグを抜けばスイッチが切り替わり、内蔵スピーカーが再びオンになる。

それは賢明な設計決定のように見えるけれども、少なくともコンピュータの上である以上、この設計決定には不備がある。私の実例が、それを証明している。

The Sound of Silence -- 数ヵ月前のこと、私の (2011 年型) MacBook Pro の内蔵スピーカーが働かなくなった。音量を上げようとしてみたが、スクリーン上のアイコンはスピーカーが音を出さない状態を示したままだった。けれどもヘッドフォンを差し込んでみると、すべてが正常に働いた。

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いろいろと調べてみた結果、私はヘッドフォンポート内部のスイッチのことを知り、きっとそのスイッチが引っ掛かって詰まったのだと推測するに至った。この問題は決して珍しいことではない。上記の Macworld 記事にも書かれているし、Apple サポートサイトの議論スレッドのこことこことこことここを見ても分かる。

スイッチが引っ掛かって詰まったと確実に知るにはどうすればよいか? その場合、次のような症状が出る:

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引っ掛かったスイッチを直すための一般的な方法が、いくつかある:

残念なことに、私の場合はいずれの方法もうまく行かなかった。けれどもその MacBook Pro はまだ AppleCare の保証期間内であったので、サービスに持ち込むことにした。数日後、新しいロジックボードに交換された MacBook Pro が戻って来て、私はおおむね良い状態に戻った。

新しいロジックボードになっても、同じ問題があと何回か起こった。ありがたいことに、いずれの場合もヘッドフォンの抜き差しでこの MacBook Pro ではスイッチがリセットされた。

一方、私の (最新型の) iMac での問題は、パーツが壊れた訳ではなく、デザイン欠陥が原因であって、これがさらにもっと苛立たしい。

不便なポート -- この Retina 5K ディスプレイモデル iMac は芸術品だ。巨大で鮮明なスクリーンと、すっきりしたデザインを持っている。いや、少々すっきりし過ぎかもしれない。

ご存じの方も多いだろうが、iMac のポートはすべて背面にある。ヘッドフォンポートも背面にある。このような不可解な設計決定ができるのは Apple の Ive をおいて他にないだろう。彼はしばしば機能より形を優先する。

この設計決定の問題点は、ヘッドフォンを接続したり接続を外したりする度に iMac の背面に手を伸ばさなければならないことだ。iMac は非常に薄くて軽いので、その度に間違いなくスクリーンが横にずれてしまうし、私は毎回 iMac を倒してしまうのではないかと心配になる。また、手探りでヘッドフォンポートに差し込むので、スクリーン上に指紋の汚れを残さず作業するのが難しい。本当に嫌になってしまう。

そうだ、こうすればいいじゃないか、と私は思った。私は Beats Solo2 ヘッドフォンを持っていて、ここでレビューするつもりはないが、その素敵な機能の一つとして取り外し可能なケーブルが付いている。ケーブルを iMac に差し込んだままにしておいて、単にヘッドフォンをケーブルから外せばスピーカーからオーディオが流れるようになるのではないかという気がしたのだ。デバイスによっては、そういう動作をするものもあるからだ。けれども残念ながら、iMac ではそうはならなかった。もちろん延長ケーブルを便利な場所まで延ばす方法も同じく駄目だった。

そうだ、でも OS X の中で手動でオーディオ出力を内蔵スピーカーに切り替えればいいんじゃないか? ここでヒントがある。メニューバーの音量アイコンを Option-クリックすれば、オーディオの出力と入力を選択できるメニューが出る。でも残念ながら、この方法もうまく行かなかった。

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いずれの方法もうまく行かなかった原因は、このヘッドフォンポートの中のスイッチが、ハード・ワイヤードだからだ。つまり、このセンサーがプラグの物理的存在を探知すれば内蔵スピーカーが無効にされ、このセンサーを切り替える以外に内蔵スピーカーを有効に戻す手段が存在しないのだ。

これが、あらゆる Mac におけるアキレスの踵(かかと)だ。なぜなら、もしもこのちっぽけなセンサーが引っ掛かって詰まったら(それは事実かなりの数のユーザーに起こっているようだ)Mac の内蔵スピーカーはもはや動作しなくなるからだ。反対に、スピーカーが常に動作しヘッドフォンが動作しない側に引っ掛かって詰まることも考えられるのかもしれない。

現状では、私には次のような選択肢がある:

もう一つ、私は次のような無料の裏技も試してみた。ただしこれは誰もが使える方法ではない。私の Dell 製の第二モニタには独自のヘッドフォンポートが付いていて、Mac からその第二モニタへの Mini DisplayPort 接続はオーディオも扱えるので、音量メニューからオーディオ出力としてこのモニタを選ぶことができる。ただし一つ難点があって、OS X はこのモニタが独自の音量コントロールを持っていることを期待して、私にヘッドフォンの音量を調節させてくれないのだ。

これに対しても無料の回避策がある。Sound Siphon 2 は $39 のオーディオユーティリティだが無料のデモ版があって、デモ版がまさに私の必要とする音量コントロールをしてくれる。 Sound Siphon FAQ に説明がある通り、Sound Siphon を起動してから Sound Siphon > Preferences に行き、ドロップダウンメニューから実際の出力デバイス (今の場合は DisplayPort) を選ぶ。それから Sound Siphon 環境設定を閉じ、左上の On をクリックする。すると、音量メニューで Sound Siphon Out を選べばヘッドフォンが選択され、Internal Speakers を選べばスピーカーにオーディオが流れるようになる。

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このやり方の問題点はヘッドフォン出力の音量があまり大きくならないことだが、音量を上げてくれる Boom アプリ(2014 年 4 月 18 日の記事“FunBITS: Mac 用 Boom で音量アップ”参照)がこの状況では使えない。私がポッドキャストの仕事をするには音量があまりにも小さ過ぎるので、現在私は他のやり方を模索中だ。

$2,200 も払ったコンピュータでこんな問題が起きるなど、馬鹿げている以外の何物でもない。私の iMac での厄介事も、最初に述べた MacBook Pro での沈黙も、根本の原因は同じ、あのいまいましいヘッドフォンポート内のスイッチをソフトウェアで無効にする手段を Apple が提供していないことが原因だ。

問題はこうだ。スイッチが入っていてもスピーカーがちゃんと働けることは分かっている。ヘッドフォンを差し込んだまま iMac を再起動すれば、ちゃんと Mac の起動音が私の仕事部屋に響き渡るからだ。起動音をスピーカーが再生できるからには、他のオーディオを再生することも 間違いなく 可能だろう。

だから Apple よ、どうかお願いだ。私たちに、内蔵スピーカーとヘッドフォンを OS X の中で切り替えられる手段を提供して欲しい。本当に一生のお願いだ。ただ、Sound 環境設定枠に単純なオプションを一つ追加するだけのことで、そんなに難しいことじゃないはずだ。OS X 10.11 El Capitan のベータ版にでもそっと潜り込ませてくれるか、またはマイナーアップデート版で入れてくれるか、それも駄目なら少なくとも開発者向けに API を出して、彼らが問題を解決できるようにして欲しい。

あるいは、仮に百歩譲って OS X にはヘッドフォンポート内のスイッチを無効にする手段がなかったとしてみよう。その場合は、Apple よ、もう一度一生のお願いだ、将来の Mac からは、この馬鹿げたスイッチを取り去って欲しい。こういうことは、ソフトウェア機能にして欲しい。Mac 以外で私が最後に持っていたコンピュータは自作の Windows PC だったが、サウンドカードの設定で簡単にヘッドフォンとスピーカーの切り替えができた。しっかりしろよ Apple、Microsoft Windows と、台所のテーブルの上で安物のコンピュータを組み立てた少年が、ここで完全にあんたを打ちのめしてるじゃないか! それだけでも十分恥ずかしいことだと思うべきだ。

Apple よ、こういう風に考えてもらえないだろうか。このスイッチを厄介払いすることで、首尾一貫したオーディオソース管理のインターフェイスが OS X に提供され、サポートに殺到する電話の件数も、Genius Bar への訪問者数も、さらには資源の無駄も、減るだろうと。だって、ちっぽけな間抜けなスイッチが引っ掛かって詰まっただけでロジックボードを丸ごと交換するなんてことがなくなるのだから。本当にこれは、Mac におけるアキレスの踵(かかと)だ。

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TidBITS 監視リスト: 注目のアップデート、2015 年 9 月 14 日

  文: TidBITS Staff: [email protected]
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Final Cut Pro X 10.2.2, Compressor 4.2.1, Motion 5.2.2 -- Apple が、同社のプロフェッショナル向けビデオ編集アプリのシリーズをアップデートして、Final Cut Pro X 10.2.2Compressor 4.2.1Motion 5.2.2 をリリースした。Final Cut Pro X と Motion はいずれも、3D テキスト付き反射素材を使用する際に起こったレンダリングエラーを修正し、テキストスタイルを読み込む際のパフォーマンスを向上させ、テキスト・レイアウト・パラメータが公開された Motion Title タイトルテンプレートを正しく書き出せるようにしている。さらに、Final Cut Pro X では最大解像度 4K の Sony XAVC-L および Panasonic AVC-Intra 4:4:4 のネイティブサポートを追加し、インターレース H.264 ビデオの書き出し機能を追加し、Final Cut Pro から送信時にアセット管理システムがライブラリ・バックアップ・ファイルを取り込み可能になった。

Compressor 4.2.1 は、ユーザアカウントを別のシステムに移行した後に発生したクラッシュを修正し、H.264 書き出しで i-フレーム配置用マーカーを使用する機能を復活させ、クローズドキャプション/字幕とオーディオ/ビデオの同期を改善している。(Final Cut Pro 新規購入 $299.99、2.83 GB、リリースノート、10.10.4+; Compressor 新規購入 $49.99、431 MB、リリースノート、10.10.4+; Motion 新規購入 $49.99、2.21 GB、リリースノート、10.10.4+。三つのいずれも Mac App Store から入手可能、過去に購入済みの場合は無料アップデート)

Final Cut Pro X 10.2.2, Compressor 4.2.1, Motion 5.2.2 へのコメントリンク:

ChronoSync 4.6.3 -- Econ Technologies が ChronoSync 4.6.3 をリリースし、OS X 10.11 El Capitan に特有のいくつかの問題を修正するとともに、新たなコントロールを追加して ChronoAgent とのコミュニケーションの際にバンド幅を制限できるようにした。El Capitan において、この同期およびバックアップ用アプリは書類ウィンドウを閉じる際に対応するログウィンドウが開いていると起こったクラッシュを修正し、SMB ターゲットが El Capitan システムであった場合に正しく探知できなかった問題を解消し、ユーザ名に空白文字が含まれていてもファイル共有ターゲットの自動ログインが正しく働くようにしている。今回のアップデートではまた、リムーバブルメディア(ディスクイメージも含む)に SmartScan サポートを追加し、NAS デバイスがファイルやフォルダの作成の際に Parameter Error を発生させていたバグを回避し、複数個の同期書類が完全に同時に起動した際に起こったクラッシュを修正している。(無料アップデート、ChronoSync は新規購入 $49.99、TidBITS 会員には 20 パーセント割引、28.5 MB、リリースノート、10.8+)

ChronoSync 4.6.3 へのコメントリンク:


ExtraBITS、2015 年 9 月 14 日

  文: TidBITS Staff: [email protected]
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

今週の ExtraBITS では、Josh Centers が Tech Night Owl ポッドキャストで Apple の発表を議論し、New York Times が Mac ユーザーグループの栄枯盛衰について検証し、Apple が暗号化を巡って米国政府と闘う。

Josh Centers、Tech Night Owl で Apple の新製品を議論 -- Josh Centers が再び Tech Night Owl ポッドキャストに出演して Apple の最新の発表について議論した。Josh は、今回の秋イベントが退屈でなかった理由、Apple が教会ではない理由、iPad が消費用デバイスか創作用デバイスかを議論するのが馬鹿げている理由を説明する。彼はまた、iPad Pro の購入を考えている人へのアドバイスを述べ、新しい Apple TV についても論じる。

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Mac ユーザーグループの栄枯盛衰 -- 私たちはずっと以前から Mac ユーザーグループ (MUG) が大好きで、これを支えてきた。けれども今回の New York Times 記事は多くの MUG が衰退しつつある実情を見事に描き出す。Apple のユーザーベースが極めて大きくなったにもかかわらず(あるいはひょっとするとそれが原因かもしれないが)ほとんどのユーザーグループは出席者数の現象に悩んでいるが、それでも今や高齢化しつつある会員たちの必要は満たすことができている。Apple が Times に語ったところによれば、Apple は「多くが何十年にもわたって Apple コミュニティーに加わっておられる Mac ユーザーグループ会員に代表される忠実な顧客の支援を受けることを、私たちは非常に光栄に思っている」という。

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暗号化を巡る政府とテクノロジー各社との争い -- こだわりの強い iMessage ユーザーたちよ、安心せよ! Apple は、iMessage 上の会話をリアルタイムで司法省に引き渡せという裁判所の命令を拒否した。その理由は? Apple 自身でさえ暗号化されたメッセージを復号化することが不可能なので、同社としては命令に応じることができないからだ。しかしながら、Apple は iCloud に保存されたメッセージの一部を引き渡した。一方、Microsoft は司法省を相手取って訴訟中で、テクノロジー会社がいったいどれだけのデータを司法当局に提供することを要求されているのかを見出そうとしている。

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TidBITS ISSN 1090-7017©Copyright 2014 TidBITS: 再使用はCreative Commons ライセンスによります。

Valid XHTML 1.0! , Let iCab smile , Another HTML-lint gateway 日本語版最終更新:2015年 9月 17日 木曜日, S. HOSOKAWA