TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#1295/26-Oct-2015

先週、Apple が大量のアップデートを出した。OS X 10.11.1、iOS 9.1、それに watchOS 2.0.1 だ。それぞれ、詳しくお伝えする。第四世代 Apple TV の販売が開始され、今週中には出荷が始まる。また今週は Julio Ojeda-Zapata が iOS ユーザーのために Android Wear スマートウォッチのプラットフォームを検証し、Josh Centers が iOS 9 の Siri コンテンツ対応リマインダーを解説し、Adam Engst がインターネットのコンテンツにおける悩みの種の元凶を指摘する。今週注目すべきソフトウェアリリースは、Tinderbox 6.3.2、Postbox 4.0.7、SpamSieve 2.9.22、Safari 9.0.1、Mac EFI セキュリティアップデート 2015-002、セキュリティアップデート 2015-007 (Mavericks) と 2015-004 (Yosemite) だ。

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Apple、OS X 10.11.1 で Microsoft Office 2016 のクラッシュを修正

  文: Josh Centers: [email protected], @jcenters
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Apple が OS X 10.11.1 をリリースして、いくつかバグ修正を施した。中でも注目すべきは Microsoft Office 2016 との互換性改善で、アプリが頻繁にクラッシュするという多くのユーザーが経験していた問題が修正されているはずだ。今回の 942 MB のアップデートは Software Update 経由でインストールでき、また独立のダウンロードとして 1.19 GB の差分アップデータもある。

Apple によれば OS X 10.11.1 はその他に、OS X El Capitan にアップグレードする際のインストーラの信頼性を改善し、特定の Audio Unit プラグインが正しく機能しなかった問題に対処し、VoiceOver の安定性を向上させているという。El Capitan の Preview で JPEG 画像が灰色か緑色のボックスとして表示されていた問題も、今回修正された。

Apple Mail のユーザーも、一部のメッセージやメールボックスが表示されなかったバグが修正され、また送信サーバの情報が消えてしまうことのあった問題も修正されたのを歓迎するだろう。残念ながら、El Capitan 版の Mail では TidBITS の HTML 版の中で目次部分のリンクをクリックしても何も起こらないが、このバグは修正されていないようだ。

さらに、今回のアップデートで 150 以上の新しい絵文字が追加され、タコス、ブリトー、弓矢、「悪魔の角」手振り、要望の多かった「中指を立てる」手振りなどの絵文字が使えるようになった。絵文字マニアのために Tech Insider がまとめを出している

いつもと同様、OS X 10.11.1 には多数のセキュリティアップデートも含まれている。正確には 37 件の修正が施された。

私たちの見解を言えば、Microsoft Office 2016 を走らせている人はおそらく直ちにアップデートすべきだろう。Office アプリを使っている最中にクラッシュやその他の問題に悩まされていた人は特にそうだ。それ以外の人たちは、新し物好きの人たちからの体験談が聞こえてくるまで数日待つのも良い考えかもしれない。

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iOS 9.1 が Live Photos を改善

  文: Adam C. Engst: [email protected], @adamengst
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

El Capitan への 10.11.1 アップデートと watchOS 2.0.1 とともに、Apple は iOS をバージョン 9.1 にアップデートして、たった二つだけの機能変更を加えた。まず第一に、iPhone 6s や iPhone 6s Plus で Live Photos 写真を撮る人たちのために、iPhone を上げたり下げたりした際に iOS がそれを感知してそれらの動きが録画されないようにした。思わぬ動きで Live Photos が挟まれてしまうことが多かったので、これはありがたい変更だ。

第二に、El Capitan のアップデートと同様、iOS 9.1 にも 150 以上の新しい絵文字が追加され、さらなる食べ物、異なる世帯、新たな顔、動物、スポーツ用品、さまざまの天気記号などが揃った。これで、アーチェリーの試合が濃い霧のために延期されてふくれっ面をしている、という気持ちを単語を一切考える必要なく伝えられるようになった。絵文字マニアは、 新しい絵文字のまとめを Tech Insider が出しているのでご覧あれ。

これら二つの変更以外では、iOS 9.1 は安定性の改善に集中しており、具体的内容は不明だが CarPlay、Music、Photos、Safari、Search、それにパフォーマンス上の問題点を解消するとともに、マルチタスキングのユーザーインターフェイスの反応性を改善しているという。その他修正されたバグとしては次のようなものがある:

セキュリティアップデートも含まれており、24 件の脆弱性がブロックされた。

iPhone 6 用に 246 MB というサイズの iOS 9.1 は、おそらく直接デバイス上へ Settings > General > Software Update を使ってインストールするのが最も簡単だろう。もちろん、iTunes 経由でインストールしても問題ないはずだ。

もしもあなたがリリースされたばかりの iPhone 6s モデルのどちらかを使っていて、Live Photos 写真を撮影しているのならば、できるだけ早く iOS 9.1 をインストールするのが良いだろう。それ以外の人は、新し物好きの人たちがどんな体験をしているかをオンラインで読めるようになるまで数日間待つのも良い考えかもしれない。ただ、私たちのテスト用デバイスでは目立った問題は起こっていない。

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watchOS 2.0.1、あなたの手首にバグ修正を

  文: Josh Centers: [email protected], @jcenters
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

OS X 10.11.1 と iOS 9.1 をリリースしても、まだオペレーションシステムの怒濤のアップデートを続けるべく、Apple が watchOS 2.0.1 を出してきた。残っていたいくつかのバグを修正するとともに、新しい絵文字を追加している。iPhone 上の Watch アプリの、My Watch > General > Software Update で、この 62.8 MB のアップデートが見つかる。Apple Watch をアップデートするには、iPhone の電波到達範囲にあること、充電器に接続されていること、少なくとも 50 パーセント以上充電されていることが必要となる。

Apple によれば、watchOS 2.0.1 はソフトウェアアップデートを停止させることがあった問題点と、バッテリ寿命に悪影響を与えていた問題点を修正しているという。また、位置情報が適切にアップデートされないことがあった問題、Digital Touch で電話番号でなく電子メールアドレスから送信されることがあった問題、Siri を使って心拍数を計測している際にセンサーが無期限にオンのままになっていた問題にも対処している。今回のアップデートではまた、管理対象の iPhone で iOS のカレンダーイベントが Apple Watch に同期できなくなった問題も解消された。最後にもう一つ、watchOS 2.0.1 では Live Photo を時計画面として使っている際の安定性の問題にも対処が施された。

アップデートの歴史があまりにも少ないので、OS X や iOS のアップデートに見られたような問題が watchOS のアップデートにもあるかどうかを知るのは不可能だ。それでも、修正されたバグはマイナーなものなので、アップデートをインストールする前に数日待つのがおそらく賢明だろう。万が一、予期せぬ悪影響があった場合に備えてのことだ。皮肉なことに、Adam Engst の Apple Watch は 2.0.1 にアップデートした前日に、watchOS 2.0 にアップデートして以来初めてバッテリ切れになったので、きっとこのウォッチはアップデートして欲しいと訴えたかったのだろう。

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Android Wear 時計が iPhone でも働く

  文: Julio Ojeda-Zapata: [email protected]
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

Google の Android Wear オペレーティングシステムで走るスマートウォッチは、最近まで iPhone ユーザーにとっては殆ど無関係なものであった。何故ならばそれらは公式には Android スマートフォンとしか働かないからである。

これまでもある程度の iPhone 互換性を可能にする非公式のハックはあちこちで現れたが、大多数の iOS ユーザーにとっては Google 風の時計は基本的には存在していなかった。

この状況は、最近 Google が Android Wear app for iOS をリリースし、iPhones と Android Wear スマートウォッチの Bluetooth ペアリングを可能にしたことで一変した - この動きは長いこともうすぐ実現すると噂されてきた。

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Google は Android Wear app for iOS が iPhone 5 にまで遡る iPhone モデルで、iOS 8.2 かそれ以降が走るのものと互換だと言っている。

これにより、Android Wear 時計は Apple Watch ともある程度 iOS 競合となるが、Apple Watch の方は Android 互換となる可能性は全くなく、更に iPhone と Android フォンの両方と長いこと動作してきている Pebble 時計とも互換となる ("Pebble Time、Apple Watch に代わる低価格製品を提供" 7 Sep 2015 参照)。

問題は:Android Wear 時計を iPhone と共に使おうなどと思う人はいるであろうか? iOS にとって使いやすい選択肢は他にあるのに。

その答えは... 複雑である。

私には少々の Google 寄りの偏見があることは認めておこう。私は Apple ユーザーではあるが、クラウドサービスに関しては Apple のではなく、もっと強力な Google のものにほぼ全面的に依存している。結果として、iPhone と協調して腕につけて使える Google クラウドコンソールが持てる可能性があるというのには興奮を覚える。と言うことで、iPhone 上の Android Wear アプリを、幾つかの Android Wear 時計と共に簡単なテストをしてみた。

しかし、これをやっている途中で、大方の iPhone ユーザーを躊躇させるであろう幾つかの問題に遭遇した。幾つか例を挙げると、対応する Android Wear モデルが限られている、そして時計を Android スマートフォンと共に使っている人と較べると使えるアプリと盤面が限られることがある。

通知は素晴らしい -- Android Wear 時計を iPhone と Android Wear アプリ経由でペアリングするのは容易である - どうして Google はこんなに時間がかかったのかと不思議に思えるほどである。

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Bluetooth 経由で一旦ペアリングされると、次の手順も同様に容易である。それには、時計による私の iPhone のカレンダーへのアクセスを許し、そして通知と場所の追跡を有効にすることが含まれる。

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私はこれら全てを LG の最近リリースされたばかりの Watch Urbane を使ってやった。この時計は Google が iPhone と共に使うために勧める Android Wear スマートウォッチの一つである。この時計と私の iPhone 6 Plus はすぐにウマがあう仲間となった。Urbane のスタイルは私の好みではなかったが、この時計は素晴らしい通知機器となった。

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Google はスマートウォッチ表示に、そのコンピュータ及び電話ベースの Google Now知的アシスタント及び通知システムのカード型のフォーマットを採用してきた。これの意味する所は、メールメッセージや他のアップデートは小型のカードとして現れ、同じ様な通知 (例えば色々な Gmail メッセージの様な) のグループ はカードの積み重ねとして現れる。

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カードの扱いは楽しく、そして直感的である。右にスワイプすればカードは退けられ、左なら次の情報 (もしあれば)、そして上ならばカードの山を順繰りにめくる。このカードとカードの山は、特徴的なアイコンと色 (例えば、Gmail に対しては赤で、このメールサービスのアイコンは際立つよう表示される) で簡単に区別出来、そしてカード毎に、或いは全部まとめて退けられる。

これは腕時計上での私好みの通知の受け方であり、Apple Watch や Pebble のやり方よりもずっと良い。通知を受けるという観点からすると、Android Wear が私好みのスマートウォッチプラットフォームとなる。

iPhone ユーザーも Android Wear 時計の振る舞いに関する様々な制御が出来る。例えば、Google Now をオフに出来る。これでカードスタイルが変わるわけではないが、体験は貧しくなる。もし Google Now を不能にすると、iPhone と時計は、関係ありそうで有用な情報を提供することであなたのニーズを掴もうとはしなくなる - 例えば、フライト、ホテル、或いは公共郵送期間のアップデートなど。しかしながら、簡単な通知は引き続き提供される。

また、カレンダー通知を iPhone 上の Google 又は Apple カレンダーアプリから受けるかどうかを決定出来る、そしてあるアプリからの通知を止める (例えば、Apple Mail、もし Gmail ユーザーならば) ことも出来る。Android Wear には "rich Gmail cards" というオプションもあり、メールに対するアーカイブや返信する選択の様なやりとりの程度も決められる。

例えば、私がバス停に向かって歩いている時に、私の編集者からの Gmail メッセージが入ってきたとする。音声制御を立ち上げて - "Hey, Siri" の代わりに、"OK, Google" と言って - 口述しそして簡単な返事を送ることが出来た。Android Wear にはまた絵文字オプションもあり、指でなぞった顔文字を対応する黄色のアイコンに変えてくれる。

アプリと盤面は欠乏 -- 私の Android Wear への思いは、Android Wear スマートウォッチユーザーが現在 Android スマートフォン経由で満喫していることと較べてこの経験がどれ程限定されたものであるかを知った時に萎んでしまった。

アプリと盤面を見てみよう。Android ハンドセットと一緒にこれらの時計を使っている人は Google Play ストア経由で サードパーティアプリ盤面の膨大なライブラリへアクセス出来るが、これらのアプリは現時点では iPhone ユーザーに対しては殆どがオフリミットとなっている。

代わりに、iPhone ユーザーはほんの少数の Google 認可のアプリへのアクセスがあるだけである。例を挙げれば、懐中電灯とストップウォッチ、それにカロリー、歩数、心臓の働きを追跡するフィットネスアプリ、等々である。マジかよ、Google?

盤面に関しては事態は少々マシで、サードパーティの顔少々と、標準で用意された顔がある。しかし、ここには私の好きなサードパーティの顔は、例えば漫画の表紙や、美術や民芸の作品の様な、含まれていない。まして Street Art の様な Google 創作の顔すらも iPhone からは除外されているのは実に情けない。

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将来のサードパーティアプリや盤面は、Android ユーザーに対して現在行われているように Android Wear アプリ経由で Google から直接出されるのか、或いは Apple や App Store 経由で間接的に出されるのかは、私には分からない。前者の場合だと、Apple は大きな問題だととらえるかもしれないし、そしてそれがアプリや盤面を iOS ユーザーに開放していない理由なのかもしれない。

いずれにしろ、標準で用意されているアプリもまた iPhone と共に使う Android Wear スマートウォッチには限られたものしかない。Google 独自のメッセージングアプリである Hangouts も、Gmail の様な双方向的な通知は提供しない。この Hangouts アプリは、機器が Android 電話とペアリングされた時は現れるのに、現れもしない。Google Maps もまた iPhone とペアリングされた時はスマートフォン上では行方不明となる。また、ペア付けされた iPhone を探す Google の機能が無いのも残念である、とりわけこの機能の Apple Watch バージョンに取り込まれてしまった後では。

数は少なく、高価な時計 -- 時計の互換性と価格の問題が事態を更に複雑にしている。

Google は、発売後たった 1 ヶ月にしかならない機器 Watch Urbane、更に Asus, Huawei, そして Motorola の様な所からリリースされつつある、或いは発表されたばかりの少数の時計しか Android Wear app for iOS ではサポートしていない。LG は Urbane の次期機 Watch Urbane Second Edition をお披露目したがまだリリースはしていない。これもまた iPhone 対応と言われている。

これは、Motorola の人気の第一世代 Moto 360 の様な、より旧式の、高価でない Android Wear モデルも公式にサポートしてくれるのではという私の長年の夢を打ち砕いてしまった

現行の Moto 360 は $150 かそれ以下だと掘り出し物である、もし探せればではあるが (Motorola は次世代 360360 Sport モデルを発表している)。これは、限定機能は厭わない価格志向の iPhone ユーザーに対する格好の Apple Watch 代替品となり得たであろう。

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しかし非公式には、第一世代 Moto 360 を私の iPhone と Android Wear アプリを使ってペアリングするのに問題があるようには感じられない。時計は、ペアリング後でもソフトウェアアップデートを受けているし、そして通知のような機能もちゃんと働いているように見える。また、Watch Urbane 上で使ったサードパーティ盤面にもアクセス出来ている。

従って、冒険心のある iOS ユーザーで、そして何処かで大幅に割り引かれた Android Wear 時計を見つけられるのであれば、それが探し求めていた iPhone の相方となり得るのかもしれない - しかも Apple Watch に較べれば破格の値段で。

しかしながら、これは自信をもって進める状況ではない、何故ならば、自分の古い時計を将来とも iPhone との全面的な互換性を保っていくために必要なソフトウェアアップデートを得られる保証が無いからである。

今は、期待していない -- 感情のレベルでは、私は Android Wear 時計を私の iPhone とペアにして使いたいと切望している、何故ならば、私は腕時計で受ける通知のスタイルとしては Google のものの方がずっと好きだからである。私は、一般的な話としていえば、Google のサービスに惚れていて、投資もしている。

しかしながら、$300 かそれ以上も Android Wear スマート時計に使うというのは、iPhone 経由で使う時にそれがどれ程自由を失うかを考えると、とりわけ使えるアプリと盤面の数の観点から、余り意味をなさない。この点からすれば、入門レベルの Apple Watch 或いは Pebble ですらより良い投資といえる。

可能性から言えば、あと一年か二年後に、今は高価な Android Wear 時計も値段が下がってきて、Apple Watch に対する魅力的な廉価代替品となる日が来ないとはいえない。そして望むらくは、その時までには Google もアプリと盤面の供与についての問題を解決していてくれることを望みたい。

もしそうなれば、私の iPhone に対する Google の腕嵌め型の助手という私の夢もついに現実となるかもしれない。

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Apple TV 予約注文受付開始

  文: Josh Centers: [email protected], @jcenters
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

第四世代 Apple TV が公式に発売され、2015 年 10 月 30 日に出荷が開始されることとなった。記事“ついに第四世代 Apple TV が登場間近”(2015 年 9 月 9 日) で報告した通り、新型の Apple TV にはより高速のハードウェア、新しい Siri 対応のリモコン、そして App Store が備わる。構成は二種類あって、32 GB モデルが $149、64 GB モデルが $199 だ。第三世代 Apple TV も引き続き $69 で販売されるが、これが新世代モデルに少しでも近づけるようにソフトウェアアップデートが出るのか否かについて Apple から何の発表もない。

では、ストレージ容量はどちらを選ぶべきか? たいていの人はビデオと音楽のストリーミング用とアプリやゲームをいくつか使うだけなら 32 GB モデルで十分だろう。Apple によれば、たくさんのアプリやゲームをダウンロードして使うつもりならば 64 GB モデルの方が良いだろうとのことだ。ただ、同社の説明は具体的な理由を何も語っていない。Twitter で ScreenCastsOnline の Don McAllister が、Apple TV のストレージはローカルなキャッシュ保存のために使われると説明しているので、非常に多数のアプリを使うつもりの人は、奮発して 64 GB モデルを買えば再ダウンロードの必要度が減るだろう。現実の使用の下でどの程度なら違いが出るのかはまだ分からない。私たちは、いずれ iCloud Photo Library から写真をキャッシュしてスクリーンセーバとして使えるようになればストレージ容量の余裕が有効になるだろうと期待しているが、まだそのような機能が実現するかどうかも分からない。

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興味深いことに、Apple は Apple TV 用の AppleCare を $29 で販売している。ただ、これはほとんどの人にはおそらくお金の無駄となることだろう。また、新型の Apple TV には HDMI ケーブルが付属していないことにも注意しよう。Apple が $19 の別売 HDMI ケーブルを出しているが、 AmazonMonoprice を探せばもっと良いケーブルがもっと安く手に入る。

第四世代 Apple TV には中国、ハワイ、ロンドン、ニューヨーク、サンフランシスコの美しいスクリーンセーバが付属する。Apple TV が届くのを待ちながらどんなスクリーンセーバなのか見てみたいと思う人たちのために、Benjamin Mayo がそれらを抽出して彼のウェブサイトに投稿している。

Apple TV 関係のそれ以外のニュースとしては、Apple が第三世代 Apple TV に三つのチャンネルを追加した。CBS と、NBC と、ファッションに重点を置いた Apple TV 専用チャンネルの M2M だ。CBS アプリでごく短いクリップ以外のものを見るには月額 $5.99 の CBS All Access 購読が必要となる。(一週間有効の試用もできる。)CBS All Access は、一部の市場でライブのテレビ番組ストリーミングもしている。NBC アプリは最近の番組のフルエピソードを提供するが、短い広告付きだ。NBC アプリは表向きケーブルプロバイダでアクティベーションが必要とのことだが、私がテストした限りではそのようなことは一度も要求されなかった。

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iOS 9 のコンテンツ対応リマインダーを使う

  文: Josh Centers: [email protected], @jcenters
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Siri の非常に便利なリマインダー機能については、皆さんもおそらくよくご存じだろう。Siri を、iOS 内蔵の Reminders アプリと統合させて使う機能だ。時刻や場所をもとに Siri が何かを思い出させてくれるので、例えば "Remind me to drop off the package tomorrow at 9 AM" とか、"Remind me to grab the package when I leave home" とか、Siri に向かってそう話しかけるだけでよい。Apple Watch からも呼び出せるのが特に便利だ。そうすれば iPhone を見つける必要さえないからだ。

でも、iOS 9 において、いくつかのアプリで Siri がコンテンツに応じたリマインダーを出してくれるようになったことはご存じないかもしれない。魔法の単語 "this" を使えば、それが「私が今目の前に見ているもの」という意味に解釈されるのだ。私は自分の書いた本 "iOS 9: A Take Control Crash Course" の中でこの機能を紹介しているが、これがどれほど役に立つ機能であるのかを実感したのは、最近になって休暇に出かけた時が初めてだった。

休暇中も私は、インターネットとの接続を完全に切ったままではいなかった。電子メールや Twitter タイムラインを時折チェックして、外の世界で何が起こっているかを知っているようにしていた。例えば、Apple から電子メールが届いて、以前私が報告したバグを解消するのに役立てるため私の Mac の診断情報を送って欲しいと言ってきた。でも、ここは自宅から何百マイルも離れた場所だ! そこで私は Mail の中でその電子メールメッセージを見つつ、Siri を呼び出して "Remind me to read this when I get home" と声に出して言った。これで、数日間はこの問題を考える必要がなくなった。そして、自宅に帰り着いて、車庫に車を停めた瞬間、私の iPhone に Reminders アプリからの通知が出た。リマインダーは私が done とマークするまでずっと Lock 画面上に出たままだった。

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休暇中でなくても Siri の電子メールリマインダーがありがたいことはある。例えば、夜にベッドの中で iPad で読書中、電子メールが届いて TidBITS のためにすべきこと(例えばある記事を編集せよという用件)を言ってきたなら、Siri に "Remind me about this in the morning" とだけ話しかけておけば、次の日までそのことを忘れていても問題ない。

このようなコンテンツ特定のリマインダーは、Safari でも使える。もちろん、何か興味深い記事を見つけたら、それを Reading List に追加しておけばあとでゆっくり読める。でも、その記事の内容が特に重要なものならば、読むように促す通知が出ればなおさら嬉しいので、Siri に "Remind me to read this tomorrow at 10 AM" と話しかけておくのだ。

注意すべきことがある。Safari View Controller で表示されたウェブページ(例えば Tweetbot の中で開くページ)について Siri がリマインダーを作ることはできない。この場合はまず Safari ボタンをタップしてそのウェブページを Safari の中で開いてから、その後で Siri を呼び出せばよい。けれども、iPad 上で Slide Over を使って Safari で見ているウェブページについては Siri が問題なくリマインダーを作ってくれる。

また、Siri は Notes (メモ) アプリでリマインダーを作ることもできる。ただし奇妙なことに On My iPhone フォルダの中にあるメモについては働かない。例えば Notes アプリの新しいチェックリスト機能を使って買い物リストを作っていたとして、店に到着したらそのリストを見よというリマインダーを出すように Siri に頼むことができる。あなたのお気に入りの食料品店を連絡先として登録しておくこともできるが、Siri は近所の店を認識する能力も持つ。例えば私が Siri に "Remind me of this when I get to Walmart" と話しかければ、Siri は私が近所の Walmart ストアに到着したとたんに呼び出されるリマインダーを作ってくれる。もしもあなたが私のように片田舎に住んでいるなら、遠くの町の店でもリマインダーが必要になるかもしれないが、そんな場合には "Remind me about this when I get to Home Depot in Bowling Green, Kentucky" のように言えばよい。

いったいなぜ、リマインダーを直接 Reminders アプリの中で作成せずにこのようにするのか? それは、柔軟性があるからだ。Notes アプリでは写真を挿入したり手書きの絵を描いたりできるが、これは Reminders アプリの中ではできないことだ。私は変わった形の電球で交換の必要のあるものは写真を撮っておく。わざわざ電球を店まで持って行くのは具合が悪いからだ。

Siri のコンテンツ対応リマインダーは Maps アプリでも使える。ただ、私はどうしてもこの機能に一貫した挙動をさせることができないでいる。ある時は、私が見ている地点を Siri が認識してくれるのに、ある時は Siri から "OK, just tell me what you'd like to be reminded about" という何とも素っ気ない返事が来るだけだ。

コンテンツ対応リマインダーは数多くのサードパーティのアプリでも働くが、どのアプリがこの機能に対応しているかを見分けるには試行錯誤で確かめるしかない。例えば、Siri は Pixelmator で開いた書類や、PCalc で現在計算しているものについてリマインダーを作ることができる。他に Siri がどんなものでリマインダーを作れるかは、どうぞ実験して見つけて頂きたい。

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最後にもう一言。iOS 9.0.2 には Siri のリマインダーに関係するバグがある。リマインダーを作成したすぐ後で Siri 画面からリマインダーを削除した場合(例えば、これは依然としてよく起こることだが、Siri があなたの意図を完全に誤解してしまった場合など)削除したにもかかわらずそのリマインダーがそのまま Reminders アプリに追加されてしまう。もしも、要りもしないリマインダーがたくさん溜まってしまっていたのなら、たぶん原因はこれだ。もちろん Reminders アプリの中で削除できる。幸いにも、このバグは iOS 9.1 で修正された。

見落としがちな機能だが、Siri のコンテンツ対応リマインダーは iOS 9 のベストの新機能の一つだ。毎日使うものではないかもしれないが、使いこなしてみれば、後ですべきことではなく今していることに集中するために大いに役に立つだろう。

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インターネットコンテンツで悩みの種の元凶とすべき少なからぬ人々

  文: Adam C. Engst: [email protected], @adamengst
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

もう今では、読者の皆さんもおそらく iOS の広告ブロッカーを巡る騒動について聞き及んでおられるだろう。そうでない人のために手短に説明しておくと、Apple は iOS 9 で、iPhone や iPad 上の Safari の中に広告が表示されるのを防止できる広告ブロッカーを開発者たちが作成することを可能にした。そして開発者たちはそれを作成し、私が最後に確認した時点では Purify Blocker が Productivity カテゴリーの有料アプリのトップセラーとなっていた。明らかに、人々は広告ブロッカーによって提供される高速で煩わしさの少ないブラウジング体験を望み、開発者たちの何人かは他人のビジネスを妨げるためにデザインされたツールを販売して利益を得ることにためらいを感じなかったという訳だ。躊躇を感じた開発者たちもいた。開発者 Marco Arment の作った広告ブロッカー Peace は短期間 iOS アプリ全体のトップセラーとなったが、ほんの数日後に彼は その販売を中止してしまった。この騒ぎを受けて、オンライン広告の整備を目指す業界団体 Interactive Advertising Bureau でさえ広告が 既に度を超してしまったと認めている。

それから数週間のうちに、インターネットには広告ブロッカーに関する議論が猛烈な勢いで飛び交った。高速かつプライベートなブラウジングはもはや過去のものとなり、今やインターネット出版の大多数は広告収入に依存している。広告ブロッカーに対する反動も既に始まっていて、目立った反応の例を挙げればドイツの会社 Axel Springer は同社の Bild タブロイド新聞ウェブサイトで広告ブロッカーを使う読者をブロックしていると発表した。同社は読者たちに対してこのサイトをホワイトリスト指定するかまたは広告ブロッカーをオフにするかして広告が表示するように求め、そうしない場合は月額 2.99 ユーロ (US$3.37) を支払えば広告なしのブラウズができるとした。

もしもあなたがインターネット体験を広告に邪魔されるのが嫌で、あるいはそもそも主義として追跡されることが嫌で、広告ブロッカーを考慮中あるいは既にインストールしているなら、きっとあなたも一度はいったい誰がこの混乱状況の元凶なのかと考え込んだことがあるだろう。貪欲な出版社や、たちの悪い広告主を名指しするのは簡単だが、ここはもっとよく見る必要がある。今朝、私はシャワーを浴びながらこの問題を考えていて、そこを出る時に、浴室の鏡に映る自分の姿を見て、ハッと思い当たった。問題の本当の原因は、この私であり、あなたであり、インターネット上にいるすべての人ではないのかと。

その通り、責任は私たち皆にある。それは、こんなにも貪欲に消費するニュース、雑誌記事、ブログ記事、さらにはアプリにさえ、私たちがほんの数ドルも出したくないと思うケチなろくでなしだからだ。( TidBITS 会員の皆さんに申し上げたいが、皆さんはご自分をこの問題の解決を担う力の一部だと考えて頂きたい。なぜなら、皆さんは TidBITS を支えるためにお金を支払ってくださるのみならず、それを自分の意志で進んで払っておられるからだ。)

でも、それは非難の言葉として軽薄過ぎる。もちろん、無料と有料の選択肢があれば、ほとんどの人がほとんどの場合、無料の方を選ぶだろう。それは別に悪いことではない。「ケチなろくでなし」というのは、ただ「理性的に経済に参加する人」を面白おかしく言い替えたに過ぎない。有用度が同等である二つの選択肢があれば、払う必要のないものに誰がお金を払うだろうか?

歴史のあれやこれやの中にあまり踏み込み過ぎることは避けて、とりあえずは自由市場の資本主義という概念を作った人物、すなわち「見えざる手」で有名な Adam Smith に責任を負わせることにしてはどうか? 彼の著書 "Wealth of Nations" (国富論) を私は読んだことがないが(私はライターであってエコノミストではない!)私の印象では自由市場の基本の基本は供給業者と消費者の間の同意に基づいて価格が自由に設定されるということ、政府からも、独占企業からも、あるいは他のどんな権力からも干渉されないことだ。私の理解では、多様なビジネスモデルが容認されることが、そこに暗黙のうちに了解されている。それぞれ異なった形での同意であるからだ。(そして、何かが無料で利用できる状況の下では、同意は消費によってのみ決定される。)

けれども、いくら Adam Smith を非難してみても満足は得られない。なぜなら、問題点は他にもあるが、何よりこの男は 1790 年に死んだのであって、つまりそれは彼がインターネットのビジネスモデルについて何も知らなかったことを意味しているからだ。彼の生涯は Charles BabbageAda Lovelace (それぞれ 1791 年と 1815 年に生まれた) とすら重なり合わない。この二人のせいだと言いたい気もするし、コンピューティングの開拓者 Alan Turing に結び付けたい誘惑にも駆られるかもしれない。複製が品質の低下なく いくらでも 可能なデジタルコンテンツは、コンピューティングなしには生まれ得なかったのだから。でも、もちろん、彼らも皆もうこの世にはいない。

時代を進めて 1830 年代にジャンプしよう。この時代には "penny press" が始まった。新聞の値段が 6 ペニーが普通であった時代に一枚 1 ペニーで売り出され、ジャーナリズムを大衆化しつつ有料の広告によって金を稼いだ。そして次にいくらかの責任を負わせるべきは、George Jones と Henry Raymond だ。彼らは後になってから penny press に参入したのだし、決して初めて広告を取り入れたのでもなかったが、彼らは 1851 年に The New York Daily Times を創設し、これが後に The New York Times と改名された。

ここで話が本筋に入る。The New York Times は、広告ブロック騒ぎを記事にしつつ、広告ブロッカーの効用に関する論争にも自ら加わり、その一方で広告の表示もして、そしてまさしくその広告が、デザイナーでありブロガーでもある Khoi Vinh (以前 NYTimes.com で Design Director として働いていた) の目に広告ブロックに関する記事を読めなくしていた。何とも皮肉ではないか?

けれどもそれを言うのはフェアではない。The New York Times は人々にお金を払ってもらえるよう懸命の努力をしているからだ。読者が無料で読める記事を毎月たった 10 個までとし、オンラインアクセスの料金を(スマートフォン、タブレット、あるいはその双方を使って家族とも共有できるかなどに応じて)週あたり $3.75 から $8.75 としている。付け加えれば、紙に印刷された新聞を毎日配達してもらう場合の料金は週あたりたった $8.90 だ。

そういう訳で、The New York Times は主としてコンテンツに対して課金するという姿勢のようだ。見たところ、紙のため木材を消費し配達のためトラックを動かす費用は、購読料金の差額つまり週あたりたった 15 セントとなるからだ。それはつまり、インターネット自体がこれらすべてと表裏一体の関係にあることをも意味する。だから、ここで Al Gore も非難すべきではないか? 彼は自分がインターネットを発明したと明言した訳ではなかったが、差し当たりここでいくらかの非難を浴びてもよい立場にいるのではなかろうか。でも、実際に Gore のせいだと指摘できるものはせいぜいインターネット基盤のための政府資金くらいなので、非難の矛先はウェブ (World Wide Web) の生みの親である Tim Berners-Lee に向けた方がよいかもしれない。それは、彼がウェブを作ったからではなくて (作ってくれてありがとう、Tim!) Ted Nelson による知的成果を無視したことに対してだ。Ted NelsonProject Xanadu には、ウェブよりもはるかに強力な、例えば双方向のリンク、使用に対する自動的な印税を含む権利の管理機能、少額決済などのコンセプトがあった。でもここで Ted Nelson にも責任の一端を負わせようではないか。彼はあまりにも洞察者であり過ぎて、実装者としての面があまりにも少なかったのだから。

でも、彼らは決して、コンテンツを無料で提供しつつ広告のみで収益を発生させるという現行の支配的なインターネットビジネスモデルに対して責任がある訳ではない。その点はおそらく、広告に支えられた無料新聞に起因するものだろう。それは 1885 年に遡る。しかしながら、当初のフリーペーパーの類いは近年ほどの勢いを持たなかった。罪を負わせるにもっと適しているのは、おそらく 1920 年代に生まれた 商業ラジオと、1950 年代以来の商業テレビだろう。当初、ラジオもテレビもたった一つのスポンサーモデルを使っていたが、後になって広告の時間を細かく切り分けて複数のビジネスに売る方が容易であることに気付いた。その後、スポンサーモデルが復活したのは非営利の National Public Radio (NPR) と Public Broadcasting Service (PBS) においてで、いずれも 1970 年にスタートした。彼らにも責任を負わせよう。何より、Tonya と私が 1992 年にインターネット上の広告プログラムを始めた(1992 年 7 月 20 日の記事 "TidBITS Sponsorship Program" 参照)のは彼らに触発されての思い付きだったのだから。そう、私たちもこれらすべてのことに対する非難を逃れる訳には行かない。その点は 1993 年に史上初めてクリック可能な広告を取り入れたウェブ出版 Global Network Navigator を作った Tim O'Reilly も同罪だ。

私がここで罪を認めるとするなら、あと何人かの億万長者にも同じ罪を背負ってもらいたいものだと思う。Larry PageSergey Brin が作った Google は、インターネット広告というコンセプトそのものを中心に据えて運営をし、魅力的なインターネットサービスを無料で利用できるようにしつつ、ユーザーに興味ある広告の表示を試みるコンテクスト対応でターゲットを絞った広告に基づいて収益を発生させることで巨大企業を築き上げた。

ユーザー追跡の話題が出たついでに、ここで U.S. National Security Agency (NSA、米国国家安全保安局) にも非難の矛先を向けよう。彼らは、広告ベースの追跡という、人の気に障る可能性を持ち少なくとも理論的には厄介であるようなものを、真の意味で身の毛のよだつもの(つまり政府機関による国内大量監視活動)へと変貌させた。

一方 Apple では Tim Cook とその一党が、Apple としてはターゲット広告に利用するためにユーザーたちの情報を収集することをせずその種の情報を政府に獲得させることもしないという事実を早速利用した。だからと言って Apple が私たちに広告したいと思っていない訳ではない(iAd がどうなったか、誰かご存じかな?)けれども、同社のビジネスモデルは主として製品を売って金にするという、今や古臭いとさえ思えるような原則に基づいている。しかしながら、Apple もインターネットコンテンツの悩みに関して責任がないどころではない。高度に人為的な App Store と iBooks Store という市場を作り出した、同社の役割があるからだ。その点で責めを負うべきは Steve Jobs だ。これらのストアにおいて Apple がアプリのデモ版や有料アップグレードを認めないこと、開発者たちとユーザーたちの間に乖離を引き起こしたこと、まずいインターフェイスの結果として類似製品との違いが主に価格でしか判断できないことにより、アプリも電子ブックもほとんど完全に消費者の目からは価値を下げている。多くの人にとって、パーキングメーターが多額の費用に思えるほどだ。

もちろん、Apple が先陣切ってソフトウェアの価値を下げることなどあり得ない。その点については、フリーソフトウェア運動の旗手 Richard Stallman と、Linux カーネルの背後で推進役となった Linus Torvalds を見逃す訳には行かない。Linux カーネルはその後、数限りないオペレーションシステムの核心に座ることとなり、中でも Google の Android は何十億ものコピーが世界中で動いている。公平を期して言えば、とりわけ Stallman はソフトウェアがフリー (free) であるのは言論の自由 (free speech) と同じ意味であるべきで、無料で配るビール (free beer) のフリーとは意味が違うと明言したが、今やその区別は多くの人に忘れ去られている。

今日議論を進める際に問題となるのは、ソフトウェアが(ビールと同じ意味で)無料の場合、開発者たちが別のビジネスモデルを開発しなければならないことだ。例えば技術サポート、ホスティング、補助的サービス、あるいは上級機能に課金するなどの方法だ。それは、それ自体として問題ある訳ではないが、他の分野でも同じ種類の挙動を促進することとなる。Google はもちろんそうだが、Facebook も見てみよう。Facebook では、Mark Zuckerberg とその一党が、あなたの人間関係を収益化するためにあなたの個人的コミュニケーションに沿った広告を販売することを思い付いた。

ここで最も気に障るのは、これらの会社にとって私たちが大して価値を持たないという点だ。Facebook のユーザー一人あたりの平均収益 (average revenue per user, ARPU) は およそ $10, で、これは Twitter の ARPU $5 の倍であり、Google の ARPU $45 には遠く及ばない。ああ何てことだ! もしもそういう選択肢さえあったならば、広告を見させられる代わりに Google が提供してくれる素晴らしいものの対価として私は何の躊躇もなく年額 $45 を支払うだろうし、広告なしの Facebook と Twitter に対する合わせて年額 $15 だって喜んで支払うだろうに。

でも、製品と価格を分離するビジネスモデルに伴うさまざまの否定的側面がありながらも、私たちが利用するサービスや、消費するコンテンツ、あるいはインストールするアプリに対して実際に支払うとなると、それはやはりなかなか受け入れるのが困難なこととなる。それで思い出したが、ここはデジタル商品の価格を下げる者として Jeff Bezos の名前も挙げておきたい。彼の創設した Amazon は、電子ブックを特売品として売り出すことで価格を押し下げ、最近では新しい Amazon Underground アプリおよびサービスを通じてますます価格を下げている。Amazon Underground は、1 万ドル以上に相当するアプリ、ゲーム、アプリ内購入を Android ユーザーにすべて無料で提供し、開発者に対してはユーザーが使った時間に応じて 1 分あたり $0.0020 を Amazon が支払うというものだ。1 分で 0.2 セントということは 5 分で 1 ペニー、 1 時間で 12 セントだ。Amazon はおそらく他の製品の売れ行きが増すことをこのサービスの財源にあてているのだろうが、このことすべてが「一つ売るごとに損しても、多売で埋め合わせる」という古い冗談を思い出させる。

このようにして、さまざまのデジタルコンテンツが無料であり、私たちがまさに原料として扱われる、そんな今日の世界のますます厄介になりつつある収益化スキームの中に私たちを陥らせるために力を貸した人々の名前を数多く挙げることができる。ごく最近には広告業界のやり方が状況を危機的なものへと追い込みつつあるが、もしもオンライン広告がこれほどまでに人々に無視されるものとなっていなければ、広告業界としてもターゲット追跡による広告などという手段に出る必要を感じていなかったかもしれない。いや、いずれにしてもそれは感じていたのかもしれない。ケーブルテレビ会社や映画館は、私たちがケーブル料金を払ったり映画館のチケットを買ったりした後でも映画に広告を加えることをためらわない。そしてまた、個々の広告主は確かに問題の中心にいるけれども、彼らはただ自分たちの製品やサービスを私たちに知らせようとしているだけに過ぎない。何か新しいことを広告を通じて一般に紹介するのも難しいことだが、広告をしなければそれはもともと不可能に近い。

結びに、記事の初めのところで述べたことに立ち返って、責任は社会全体にあるのだと言っておきたい。けれども、変化へのチャンスもまた、私たちが毎日無料のサービスを選ぶやり方と、より広範な方策への支持という形で、私たちの手の中にある。広告ブロッカーは、軍備拡張競争の中における単なる一つの武器に過ぎず、決して解決法とはなり得ない。でも、最後にいくつか、本当に違いを生み出せるかもしれない変化のアイデアを、実現の見込みの大きそうなものから順に挙げておこう。

これらのアイデアのいずれも、私は別に固唾を飲んで待ちわびている訳ではない。だから当面は、もしもあなたが今日の状況に悩まされているのなら、あなたがよしとする方法でビジネスをしている会社のみにあなたの支持を集中させるよう心掛けることをお勧めしたい。

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TidBITS 監視リスト: 注目のアップデート、2015 年 10 月 26 日

  文: TidBITS Staff: [email protected]
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Tinderbox 6.3.2 -- Eastgate Systems が Tinderbox 6.3.2 をリリースし、内蔵の $Tags アトリビュート (References に分類される) を新たに追加した。これを使ってメモにフリーフォームのタグ付けができる。この個人用コンテンツアシスタントはアウトライナーや RSS リーダーからの OPML 読み込みや、スプレッドシート(とりわけ長いテキストフィールドを持つもの)の読み込みを改善している。また、このアップデートではマップにいくつかの改良が施された。とりわけ選択されたメモの次や前の兄弟に左右矢印で移動できるようにし、直線リンクに矢印の頭を正しくレンダリングできるようにし、透明または半透明の領域を持つ画像装飾が不透明にレンダリングされないようにしている。今回から Roadmap が treemap のコンテクストメニューからアクセスできるようになり、切り取られた Roadmap ウィンドウが自動的にカラム幅を調整するようになった。(新規購入 $249、無料アップデート、48.8 MB、 リリースノート、10.8+)

Tinderbox 6.3.2 へのコメントリンク:

Postbox 4.0.7 -- Postboxが同名の電子メールクライアントのバージョン 4.0.6 を出して、Gmail/Google アカウント用に OAuth 2 への対応を追加するとともに、フォルダ作成を改善 (New Folder と New Sub-Folder のアクションを分離) した。今回のアップデートではまた、複数個のメッセージを未決とマークする際の問題点を修正し、添付ファイルの Save All ボタンの見栄えを Retina ディスプレイ上で修正し、アップデータにリリースノートを表示することでアップデートの体験を改善している。

そのアップデートのリリース後間もなく、Postbox はバージョン 4.0.7 にアップデートされた。これは Compose ウィンドウのコンテクストメニューの配列を変更し、選択したものを Google で検索するオプションを追加している。また、Postbox 4.0.7 では Compose ウィンドウ内でテキストを選択したり、コンテクストメニューを使って Response を作成したりできるようにし、Junk ツールバーボタンに Run Junk Mail Controls on Folder コマンドと Delete Mail Marked as Junk in Folder コマンドを追加し、Folder 枠と Focus 枠にヘッダ部分を表示したり隠したりするコントロールを追加している。(新規購入 $15、無料アップデート、25.6 MB、リリースノート、10.9+)

Postbox 4.0.7 へのコメントリンク:

SpamSieve 2.9.22 -- C-Command Software の Michael Tsai が SpamSieve 2.9.20 をリリースし、OS X 10.11.1 El Capitan の Apple Mail への対応を追加した。このスパムフィルタリングユーティリティは、システムが起動エージェントの再生成を遅らせた場合に備えて Apple Mail に到着するメッセージのフィルタリングをする際の起動に以前より多くの時間を割り当て、また今回のアップデートは起動エージェントが継続的に走るよう設定されている場合に Mail か SpamSieve が終了しても勝手に終了しないようになった。もしも El Capitan の AppleScript バグのためメッセージのトレーニングができなくなった場合、SpamSieve がマニュアルに新設した Duplicate Apple Mail Accounts セクションを開いて回避策を示すようにしている。(新規購入 $30、 TidBITS 会員には 20 パーセント割引、無料アップデート、14.5 MB、 リリースノート、10.6+)

SpamSieve 2.9.22 へのコメントリンク:

Safari 9.0.1 -- Apple が Safari 9.0.1 を OS X Mavericks 10.9.5 と Yosemite 10.10.5 用に、また El Capitan 10.11 用にもリリースした。このアップデートは、WebKit における複数のメモリ破壊問題に関係した脆弱性にパッチを当てている。これらの脆弱性は悪意あるウェブサイトによる任意のコードの実行を許す危険性を持っていた。Safari 9.0 は、Software Update 経由のみで入手可能だ。(無料、85.4 MB、10.9+)

Safari 9.0.1 へのコメントリンク:

Mac EFI セキュリティアップデート 2015-002 -- Apple が Mac EFI セキュリティアップデート 2015-002 を OS X 10.9.5 Mavericks 用にアップデートして、EFI (Extensible Firmware Interface) が認証なしに上書きされてしまう可能性のあった問題点に対処した。このアップデートは直接ダウンロード でも、また Software Update 経由でも入手できる。(無料、82 MB、10.9.5)

Mac EFI Security Update 2015-002 へのコメントリンク:

セキュリティアップデート 2015-007 (Mavericks) と 2015-004 (Yosemite) -- Apple が OS X 10.9.5 Mavericks 用のセキュリティアップデート 2015-007 と 10.10.5 Yosemite 用のセキュリティアップデート 2015-004 をリリースし、同時にリリースされた OS X 10.11.1 El Capitan (2015 年 10 月 21 日の記事“Apple、OS X 10.11.1 で Microsoft Office 2016 のクラッシュを修正”参照) に施されたセキュリティ修正の多くをもたらした。名前に少々混乱してしまうが(通常 Apple は同じ年のうちに番号を再利用することはないのだが、番号 004 は今年の 4 月に使われている)これらのセキュリティアップデートは幅広い種類のメモリ破壊問題をパッチしており、マルチ・スレッディング・モードの Accelerate Framework、オーディオファイルの処理、CoreGraphics、フォントファイルの処理、ディスクイメージの解析における脆弱性が修正された。いずれの脆弱性も任意のコードの実行に結び付く可能性があった。これらのセキュリティアップデートは Software Update からも、また直接 Apple の Support Downloads ウェブサイトからのダウンロードでも入手できる。(無料、10.9.5 Mavericks 用 266.2 MB、10.10.5 Yosemite 用 334.7 MB)

Security Update 2015-007 (Mavericks) と 2015-004 (Yosemite) へのコメントリンク:


ExtraBITS、2015 年 10 月 26 日

  文: TidBITS Staff: [email protected]
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

今週の ExtraBITS では、Josh Centers が Tech Night Owl でテレビ番組を論じ、Find My Friends がウェブ上に登場し、出版者たちがネイティブなアプリとモバイルなウェブの間で板挟みになる。

Josh Centers、Tech Night Owl でテレビを議論 -- Tech Night Owl への最新の出演で、Josh Centers は従来のようなテクノロジーの話題から外れ、お気に入りのテレビ番組についてホストの Gene Steinberg と議論した。話題に上ったのは The Blacklist と Hannibal だ。もちろん、二人の議論は次第にテクノロジーに戻り、具体的には新しい Apple TV や、噂の的の Apple Car が語られた。

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Find My Friends が iCloud.com に -- 先週の他の多くのアップデートと合わせて、Apple は iCloud.com に Find My Friends アプリのウェブベース版を追加した。iOS 版と同じく、このウェブベース版の Find My Friends も、あなたの友人たちがいる位置を地図の上に表示する。もちろん、その人たちがあなたに位置情報の表示を許した場合の話だが。

コメントリンク: 16041

出版者たちがアプリとモバイルウェブサイトの間で論争 -- The New York Times が、出版者たちが直面する緊張関係を伝える。コンテンツをアプリを通じて配布すべきか、それともモバイルウェブサイトを通じてすべきかという問題だ。これが、いくらか誇張を交えた Apple 対 Google の論争に結び付けて語られる。アプリは忠実な読者のために役立ち、支払いを受けるにも好都合だが、多くの出版者たちにとってあまりにも高くつき過ぎる。一方、ウェブサイトによる配布はコストも少なく新規の読者を開拓するにも好都合だが、あまり良いモバイル体験を提供することができない。(そしてもちろん、大多数の読者たちにとってアプリとサイトの違いがそれほど明らかなことかどうかも明らかではない。)出版者 Ann Kjellberg の言葉によれば、Google と Apple が狙っているのは「クリエイティブに働く人たちの努力を支えることではなくて、多くの人々を自らのビジネスモデルに、自らのデバイスに、スクリーンとのやり取りに、病みつきにさせることだけ」なのだという。

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