TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#1314/28-Mar-2016

ニュース速報がある。司法省が Apple に対する訴訟を取り下げようとしている。ExtraBITS で説明をお読み頂きたい! iOS 9.3 アップデートは素敵な機能をいくつか追加したが、いくつか問題点もあった。今回 Apple は iOS 9.3 を再発行して古いデバイスでの問題に対処したが、ウェブリンクのバグは依然として残っている。AT&T が Wi-Fi Calling 機能を国外にも拡張し、あなたが外国にいても米国への通話や米国からの通話に Wi-Fi Calling を使えるようになった。AT&T 関係の話がもう一つ、AT&T やその他のセルラーキャリアによる個人データの利用を制限できる方法を Adam Engst が説明する。Apple が第四世代 Apple TV を tvOS 9.2 にアップデートしたので、Home 画面のフォルダ、Bluetooth キーボード対応、音声口述、その他要望のあった多くの機能が追加された。Josh Centers がそれらを詳しく紹介する。私たちは今回もまた Preview のパワーに分け入り、この OS X 内蔵のビューワーを使って書類や画像をクロップしたりリサイズしたりできることを実地に示す。あともう一つ、Glenn Fleishman の "Take Control of Slack Basics" の第 4 章が TidBITS 会員向けに出され、メッセージのフォーマット付け、編集、削除、リンク付けについて解説する。今週注目すべきソフトウェアリリースは Quicken 2016 for Mac 3.2.1、Skype 7.24、LaunchBar 6.6、Tinderbox 6.5、Moneydance 2015.7、セキュリティアップデート 2016-002 (Mavericks 用、Yosemite 用)、Safari 9.1、それに OS X Server 5.1 だ。

記事:

----------------- 本号の TidBITS のスポンサーは: ------------------

---- 皆さんのスポンサーへのサポートが TidBITS への力となります ----

Apple、40 周年記念 Mac を開発中

  文: Adam C. Engst: [email protected], @adamengst
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

今日 2016 年 4 月 1 日は、Apple 社が Steve Jobs、Steve Wozniak、Ronald Wayne によって 1976 年 4 月 1 日に設立されてからちょうど 40 年目の記念日にあたる。今から 20 年前の 1996 年に、Apple 重役チームは会社の 20 周年記念に特別限定版の Mac を出そうと思い付き、Jonathan Ive を指名して彼の Apple における初期プロジェクトの一つとしてデザインを任せた。その結果として生まれたのが Twentieth Anniversary Macintosh で、1997 年 1 月に発表され、同社の公式法人格付与 20 周年を記念して出された。(1997 年 7 月 7 日の記事“パーティーに呼ばれた創立 20 周年記念 Mac”参照。)

image

そして歴史は繰り返す。Apple は今回もまた、この大きな 40 周年の記念日を祝って限定版のハードウェアを出したいと考えた。私たちの情報源によれば、それは Fortieth Anniversary Mac と呼ばれるという。前回のものと同様、この Fortieth Anniversary Mac もテクノロジーの展示媒体となるように作られ、これからのコンピューティングが向かうと Apple が信じるものを実証するための、数多くの機能が装備される。今や Apple の Chief Design Officer となっている Jonathan Ive が再びこれをデザインするが、前例を考慮するとするなら、実際にリリースされるのは 2017 年 1 月くらいになるのだろうか。

あの Twentieth Anniversary Mac は、12.1 インチ LCD スクリーンを備えたオールインワンのデザインで今日の iMac の前兆となった。そして Fortieth Anniversary Mac もまた、あのデザイン方向を引き継いですべてをスクリーンに集中させたデザインになると予想される。最終的なサイズはまだ決まっていないが、17 インチ Retina ディスプレイと予想するのが妥当なところだろう。今や Apple の最上級 Retina iMac が 27 インチのスクリーンを持つことを考えれば 17 インチでは小さ過ぎると思うかもしれないが、これは巨大な iPad なのだと考えれば Apple の思考方法が理解できることだろう。

その通り、その名前とは裏腹に、この Fortieth Anniversary Mac は長年期待されてきた OS X と iOS との融合を果たすものとなる。Mac 流と iOS 流のインタラクションの双方に対応し、両方の環境の最良の面を同時に活用することができるようになるのであって、どちらか片方ではない。コンピュータ全体を占めるスクリーンは、スタンドから取り上げるだけで物理的には iPad のように機能する。ちょっと大き過ぎると思うかもしれないが、このスクリーンを小型の製図台としても使えるように支えるスタンドをサードパーティのアクセサリーメーカー各社が開発してくれると Apple は期待している。テーブル上で使うスタンドと、フロアスタンドとの双方が開発されているという話だ。

タッチに基づくインタラクションが常に使え、iPad と同様にこの Fortieth Anniversary Mac も Bluetooth キーボードによる入力に対応する。けれどもその一方でマウスやトラックパッドにも対応し、それが探知される度に従来型のマウスポインタをスクリーン上に表示するとともに OS X アプリへの滑らかな制御を提供する。一方 iOS アプリでは Smart Keyboard が今日の iPad Pro に働くのと全く同じようにキーボードによるインタラクションができ、必要に応じてオンスクリーンのキーボードに代わって使えるようになる。

キーボードの話を続けると、この Fortieth Anniversary Mac はもう一つの点でも Twentieth Anniversary Mac を手本にしている。すなわち、Twentieth Anniversary Mac のキーボードには革製のパームレストと内蔵トラックパッドが組み込まれていた。Fortieth Anniversary Mac のワイヤレスキーボードは現行の Magic Keyboard によく似ているが、キーボードの下から手前へ引き出せるトレイが付いていて、それが Force Touch 対応トラックパッドとパームレストを提供する。その上、iPad Pro と同様に Apple Pencil を使って直接 Fortieth Anniversary Mac のスクリーン上に絵や字を書くことができる。もちろん、内蔵のトラックパッドでも Apple Pencil が使える。

マウスとキーボードをタッチに基づくインタラクションと混合させるなんて、とんでもないキメラだと非難する人もいるだろうが、最近数回の OS X リリースで内蔵アプリに施された変化をよく見れば、例えば Messages や Calendar は既に両方のプラットフォーム上で基本的に見栄えも動作も同じになっている。その上、OS X の Launchpad のような機能が iOS と Mac とで基本的なインタラクションを互いにますます近づけつつあるので、この混合を具合が悪いと感じないユーザーもたぶん多いだろう。それに、リリース日が 2017 年 1 月ということになれば、OS X 10.12 (現コードネーム "Tiburon") と iOS 10 とで Apple がマルチタスク関係の機能をさらに調整する余地がたっぷりあることも考えれば、Fortieth Anniversary Mac の上で両者が一緒になってもそれほど奇妙には感じられないだろう。

そうは言っても、Fortieth Anniversary Mac のユーザーは Mac アプリを使う際にいくらかの適応能力を発揮する必要には迫られるはずだ。Mac App Store を通じて販売されたアプリのみが Fortieth Anniversary Mac で動作することができるので、そのお陰で Apple はある種の機能を要件とすることができる。 例えば Mac アプリと iOS アプリがスクリーン上に並んだ際には Split View を必須としたり、Fortieth Anniversary Mac のプロセッサと互換でないプライベートなフレームワークをアプリが使うことを禁じたりといったことが考えられる。Fortieth Anniversary Mac は、今日の iPad Pro が持つ A9X チップの後継となる A10X チップを搭載すると思われる。12.9 インチ iPad Pro は 4 GB の RAM を持つが、Fortieth Anniversary Mac は 8 GB の DDR4.1 RAM を備えることになる。入門レベルの Mac と同等というところだ。

また、iPad の世界にある二つの機能が Fortieth Anniversary Mac に進出を果たす。Touch ID を備えた標準的な Home ボタンはもちろん存在し、すべての Mac アプリはパスワードの代わりとして Touch ID を受け入れる。それから、最近の iPhone と同様、ボタンを押さずに Siri にコマンドを発することができる。新しい TalkKit API によって Mac アプリと iOS アプリの双方がそれぞれ独自に Siri とのコマンドと反応とを登録できる。ただし、Apple はアプリを審査する際にこれらの機能を注意深く調べて、Apple が不適切と思う挙動を Siri がしないようにチェックすることになる。

他の仕様について言えば、この Fortieth Anniversary Mac は 802.11ad Wi-Fi と Bluetooth 4.1 を使ったワイヤレス・ネットワーキングに大きく依存する。iPad Pro と同じく物理的なコミュニケーションポートは 2 基しか持たない。充電用とコミュニケーション用に使う標準の Lightning ポート 1 基と、更新された磁気使用の Smart Connector ポート 1 基だ。この後者は電源に使い、スクリーンスタンドにドックされた状態ではコミュニケーションにも使う。スタンド自体は Thunderbolt 3 対応の USB-C ポート 4 基を備え、さまざまのアダプタを通せば旧来の周辺機器も使える。四隅にマウントされたスピーカーが標準装備となり、9.7 インチ iPad Pro と同じ前面カメラ (5 メガピクセル FaceTime HD) と後面カメラ (12 メガピクセル iSight) が付く。

時が経ってこの Fortieth Anniversary Mac が成功を収めれば、OS X アプリと iOS アプリの差異は次第に剥がれ落ち始めるだろう。それぞれのアプリがそれぞれの機能に最も相応しいインターフェイス要素を使い、もはやプラットフォームの機能による制約を課されることがなくなる。だから、例えばパワフルなワードプロセッサにおいては、執筆したり書式を付けたりする際には従来から Mac ユーザーが慣れ親しんだキーボードとマウスポインタを使ったあらゆるインタラクションが使え、その一方で編集作業のために書類に印を付けたりする際には Apple Pencil を使った選択やコマンドが使えるという訳だ。

特別限定版の製品には常に言えることだが、この Fortieth Anniversary Mac が成功を収めるか否かの判断は容易でないかもしれない。価格はまだ決まっていないが、スペックから当然と思われる価格よりも高くなることは間違いないだろうし、Apple はどれだけの数を生産するかもまだ決めていない。それからまた、Apple が Fortieth Anniversary Mac をシルバー、ゴールド、スペースグレイ、ローズゴールドの標準の四色で発売するのか、はたまたプロトタイプで使われた Ive のお気に入りの色と言われるローズゴールドのみにするのかも不明だ。

[訳者注: 念のため申し添えますが、この記事“Apple、40 周年記念 Mac を開発中”はあくまでもエイプリルフールのための冗談で、4 月 1 日一日限りの内容となっておりますので、あしからず!]

コメントリンク16383 この記事について | Tweet リンク16383


Apple、旧デバイス用に iOS 9.3 を再発行、ただしリンクにまだ問題あり

  文: Josh Centers: [email protected], @jcenters
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

一部の古い iOS デバイスでアクティベーションの問題があったのを受けて、Apple は iOS 9.3 アップデートを一時的に取り下げた後で、影響を受けた人たちのために再発行した 。問題の起こったデバイスは iPhone 4S、iPhone 5、iPhone 5c、iPhone 5s、第三世代 iPad、第四世代 iPad、iPad 2 (GSM モデルについては別途アップデートを後述)、iPad mini、iPad mini 2、それに第五世代 iPod touch だ。

iOS 9.3 での問題は、それらのデバイス上でユーザーが Apple ID ユーザ名やパスワードを思い出せない場合にアクティベーションが途中で止まってしまうことであった。もしもあなたの iOS デバイスがアクティベーションの途中で止まってしまったなら、ハングアップを脱するための方法を Apple が説明しているので参照して頂きたい。

新しいアップデート (build number 13E237) を入手するには、Settings > General > Software Update をチェックするか、あるいは iTunes 経由で入手することもできる。

Apple は GSM モデルの iPad 2 タブレットのための iOS 9.3 アップデートも出した。こちらも同様のアクティベーションの問題を解消している。

しかしながら、多くのユーザーが iOS 9.3 の中でウェブリンクをタップするとハングアップやクラッシュを起こすと報告している。新しい iOS 9.3 リリースも、まだこの問題を修正していない。影響を受けた TidBITS 読者の一人が Apple に問い合わせたところ、これは「新たに発生した問題」だと言われたという。つまり、Apple は現在まだこの問題を知りつつある段階にあって、おそらくはまだ解決法を見出せていないのだろう。9to5Mac の Benjamin Mayo が、 この問題は iOS デバイスにインストールされた特定のサードパーティのアプリによるものであることを突き止めたと主張しているが、それ以外に私たちはまだこの問題を照らし出す光を見出せていない。

iOS 9.3 が大多数のマイナーな iOS アップデートに比べてずっと長期間ベータ版に留まっていたことを考えれば、このアップデートにあるこれらのバグを Apple が見逃したのは驚くべきことだ。いずれにしても、パスワードはすべて 1Password や LastPass のようなパスワードマネージャの中に保存しようという私たちのお勧めに従ってきた人はそもそも最初から今回のアクティベーションの誤作動に出会わなかった可能性が高い。残念なことに、ウェブリンクのバグの方は依然として多くの iOS ユーザーにとって大問題であり、私たちにできるのは Apple が早く修正をリリースしてくれるよう願うことだけだ。

まだ iOS 9.3 にアップデートしていないという人は、Apple からさらなる動きがあるまで待つのが断然賢明だと言うべきだろう。

コメントリンク16370 この記事について | Tweet リンク16370


AT&T、Wi-Fi 通話に国際電話を追加

  文: Josh Centers: [email protected], @jcenters
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

Wi-Fi 通話は、信頼性のある Wi-Fi 接続がある限り、受信状態の悪い地域でも明瞭な通話を可能にしてくれる。このサービスは、最初 iOS 8 で T-Mobile のために導入され、後日 Sprint ユーザーに対しても iOS 8 の中で提供され、そして AT&T にも iOS 9 のリリースに合わせて拡大された。Verizon もようやく iOS 9.3 で Wi-Fi 通話のサポートを、海外旅行先からの米国向けの無料通話を含めて、追加したばかりだが ("iOS 9.3、Night Shift を採用、Notes を保護、等々" 21 March 2016 参照)、AT&T はその最大の競争相手に歩調を合わせて、自らの Wi-Fi 通話を世界中に拡大した。

image

これは、海外旅行中の AT&T 顧客で iPhone 6 かそれ以降を手に iOS 9.3 を走らせていれば、米国へ電話をかけたり、米国からの電話を受信したりを Wi-Fi 経由で無料で出来ることを意味する。米国以外の番号への通話に対しては、皆さんのプランで決められている料率で課せられる。

もしまだやっていないのであれば、Wi-Fi 通話をオンにするやり方は以下の通りである。Wi-Fi 通話は今や米国では数多くのキャリアによってサポートされている。Settings > Phone > Wi-Fi Calling に行き Wi-Fi Calling on This iPhone を有効にする。911 緊急通話の記録のために自宅の住所を入力する必要があるであろう (更なる詳細については、"iOS 9 で Wi-Fi Calling をオンにする" 28 October 2015 参照)。Apple も Wi-Fi 通話についての更なる情報を提供している。

Wi-Fi 通話を有効にした後では、左上のステータスバーにあるキャリアの名前は Wi-Fi 接続がある時には恐らく違って見えるであろう。AT&T iPhone 6 の場合、AT&T Wi-Fi が AT&T LTE の代わりに表示される。それから先は、Wi-Fi ネットワークにつながっている時に電話をかけたり、受けたりするのは全て、セルラーネットワークではなくインターネット経由でなされる。

Wi-Fi 通話は、もし自宅やオフィスでのセルラー受信状態が悪い場合は、人生を一変させるような機能であり、もし AT&T 顧客で海外にしょっちゅう旅行するのであれば、ローミング料金の節約で財産を残せるかもしれない。

コメントリンク16358 この記事について | Tweet リンク16358


"Take Control of Slack Basics" の Chapter 4、入手可に

  文: Adam C. Engst: [email protected], @adamengst
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Slack では、メッセージがすべてだ。そこで Glenn Fleishman は、連載中の "Take Control of Slack Basics" の次の章でメッセージの話題に私たちを誘う。当然ながら、メッセージとは根本的にはシンプルなものだ。何か鋭い言葉をビシッとタイプして、Return を押すだけだ。でも、皆さんも今はお分かりのように、Slack がそこに一連の深い機能を提供して、メッセージングを一段高いレベルへと引き上げる。Chapter 4 の "Post Basic Messages" の中で、Glenn はまずエチケットという極めて重要な話題に軽く触れてから、メッセージの文章を書くことに関係したさまざまのアクション、例えばメッセージの体裁の整え方、他の人たちに言及するやり方、画像やウェブページへのリンクの含め方、絵文字の使い方などについて説明する。また、メッセージの編集と削除、メッセージリスト内でのナビゲーション (多数のショートカットもある)、メッセージに対する反応、あとで参照したいメッセージのマーク付け、さらには特定のメッセージへのリンクなどのやり方も学べる。

image

Slack のメッセージ関係の機能を実際に使ってみて練習したい方は、どうぞ私たちの公開 SlackBITS グループに参加して頂きたい。現在の参加者は 130 名以上いて、Slack について、また Mac、iOS、Apple TV について、ここで議論を交わしている。ぜひとも、ここで何でも質問して頂きたい! 参加の方法は Chapter 1 の "Introducing Slack" に説明がある。Chapter 2 "Get Started with Slack." も、誰でも読めるようになっている。

けれども Chapter 3 の "Master the Interface" とこの新しい Chapter 4 は TidBITS 会員限定なので、まだ TidBITS 会員になっておられない方にはどうぞこれを機会に会員になって頂きたい! TidBITS 会員には他にもたくさん特典があるけれども、何より大切なのは TidBITS 会員プログラムのお陰でここ数年間の TidBITS が続けてこられたということだ。皆さんのサポートこそ、私たちにとって本当に何物にも代え難い。既に TidBITS 会員になって下さっている方は、どうぞ会員登録の際の電子メールアドレスを使って TidBITS サイトにログインし、連載チャプティクルを読んで、コメントを書き込んで頂きたい。

完成版の電子ブック "Take Control of Slack Basics" は、完成し次第 PDF、EPUB、Mobipocket (Kindle) の各フォーマットでどなたでも購入して頂ける。

コメントリンク16363 この記事について | Tweet リンク16363


セルラーキャリアによる CPNI データ使用を制限する

  文: Adam C. Engst: [email protected], @adamengst
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

私は最近、自分のセルラーサービスプロバイダの AT&T からメッセージを受け取った。AT&T が私の "customer proprietary network information" (CPNI) を AT&T 系列の会社内のみで AT&T 独自のマーケティング目的で使用するのを私が制限することができるという事実を知らせる、注意喚起であった。文章は明確に書かれていたが、それでもこのメッセージは完全に意味不明であった。例えば、そこには CPNI が次のようなものを含むと書かれている:

「あなたが現在購入している電気通信と相互接続 VoIP のタイプ、あなたがそれらを利用する方法とそれに関係したサービスの料金請求方法が含まれる。CPNI にはあなたの電話番号、名前、住所は含まれない。」

image

電話番号、名前、住所が CPNI に含まれていないと分かったのは嬉しいが、その前に書いてある「それらを利用する方法」という部分は何のことかさっぱり分からない。この CPNI プライバシー方針の中で AT&T はそれ以上の情報を提供しておらず、CPNI が「通話の詳細」も含むという事実も述べられていない。

混乱した私は、Geoff Duncan に尋ねてみた。彼は長年電気通信やデータのプライバシーについて TidBITS に記事を書いてくれている。彼の説明によれば、もともと CPNI とは請求書に載っているようなことすべてを指していたのだが、今ではサービスやキャリアによってさまざまに異なった意味に使われ、データプランの種類や使用量、デバイスの情報、位置情報の履歴、ウェブブラウズの履歴、さらには人口統計的な各種データまで含むことさえあるのだという。

いったい何のために CPNI は使われるのか? AT&T によれば、同社は「系列社でない第三者に CPNI を販売することはない」といい、また CPNI についての別のページでこの情報を使うことのできる会社を明確化しているが、そこには実際数多くの会社が含まれている:

「AT&T 系列の会社とは、コミュニケーション関係の製品および/またはサービスを提供する AT&T 会社、具体的には地域ならびに長距離通話の AT&T 社、AT&T Corp.、AT&T Long Distance、AT&T Internet Services、AT&T Mobility およびその他 AT&T Inc. の子会社または関連会社でそれらの製品および/またはサービスを提供、デザイン、市場開拓あるいは販売するものを含む。」

Geoff によれば、FCC が当初定めた規制の枠組みは二つの商慣行を防ぐ目的で作られたという。一つは競合なしにより高い商品を売りつける戦略、それは例えば電気通信会社が CPNI を利用して競合会社には手の出ないやり方で特定の顧客に追加サービスによる価格調整をすることで起こり得た。もう一つはいわゆる「電話詐欺」で、外部の者が CPNI を購入してその電話会社になりすまし、顧客から情報を引き出したりその他普通ではしないようなことをさせたりすることだ。

CPNI に関する法律が最も新しく変更されたのは 2007 年のことだが、Geoff によれば AT&T は 2012 年になって同社の CPNI 利用に関する通知を顧客に送り始めたのだという。実際、私が自分の電子メールアーカイブ全体で "CPNI" を検索してみたところ、ヒットしたのはたった一つ、今回のものと一語一句同じ AT&T からのメッセージで、日付は 2012 年 8 月となっていた。

実際に CPNI の不正使用はあるのだろうか? その答はイエスだ。Electronic Privacy Information Center (EPIC) が出している多くの記事以外にも 、さらなる調査の結果によれば 2014 年に Verizon は CPNI を顧客に通知せずにマーケティング目的に使ったことで 740 万ドルの罰金を支払ったという 。さらに悪いことに、AT&T は 2015 年に 280,000 人近くの米国内の顧客の個人情報漏洩(と CPNI 乱用)のため 2 千 5 百万ドルの罰金を支払わねばならなかった。悪漢たちがメキシコ、コロンビア、フィリピンの三つの AT&T コールセンターの従業員たちを金で口説き落として盗難あるいはグレイマーケットのスマートフォンのロックを外させたからだ。

キャリアによるあなたの CPNI 使用を制限してもその情報が収集されない保証はないと知っておくことは重要だ。だから、オプトアウトしたとしても今述べた AT&T の情報漏洩のようなことが起これば情報は流出しないとも限らないが、もちろんオプトアウトするのも害はない。いずれにせよ、顧客にオプトアウトの機会を提供することを電気通信会社に義務付けるべきだと FCC が判断したという事実は、そうする価値があると私に思わせるに十分だ。

AT&T による CPNI の利用を制限する手順は難しくないが、あなたが手許に持っていないかもしれない情報が必要となる。以下のようにすればよい。(あるいは、800-315-8303 の音声応答システムを使うか、または 800-288-2020 に電話して直接係員と話すこともできる。)

  1. http://att.com/ecpnioptout に行く。(面白いことに今回の電子メールメッセージの中のテキストに付随したリンクは追跡リンクを使っていて、これを使ったら私の CPNI の情報の一部となるのかなと思わされた。)

  2. あなたのアカウント番号または顧客 ID と請求書送付先の ZIP コードを入力し、Restrict Use of My CPNI を選び、Submit をクリックする。

    面倒なのはアカウント番号を見つけることだが、これはおそらくあなたの請求書に書いてあるだろうし、あるいは AT&T のサイトにログインしてあなたのプロフィールを見ても分かるだろう。AT&T によれば CPNI 通知の中にも書いてあるとのことだが、それは正しくない。上に示した私あての通知書のどこにも ID は記載されていない。

    image

では、他のキャリアについては、あるいは収集されて共有ないし転売される可能性のある他のタイプの個人情報についてはどうだろうか。MIT Information Systems & Technology Knowledge Base のページが AT&T、Verizon Wireless、Sprint の三社の各種プログラムをオプトアウトするためのリンク集を提供している。すべての人がこれらのリンクを試してみることをお勧めしたい。私が発見したのは、うちの電話番号が AT&T の "External Marketing & Analytics Reports" でオプトアウトしてあるにもかかわらず、依然としてそれらの電話番号で "Relevant Advertising - Wireless" を受け取るという設定になっていることだ。それが何を意味しているのかは知らないが。MIT のページによれば T-Mobile は CPNI を販売しておらず、そのことは T-Mobile の CPNI ページに書いてある内容と合致しているようだ。

個人的な意見を言えば、企業が製品やサービスを私に提供するために自分の情報が使われても私は大して気にならない。けれども、もしもこの情報がそれほどに価値あるものなら、いったいなぜそれらの会社は(私が料金を払って使っているサービスから)収集した情報を無料で使うことができるのだろう? そうならば、個人情報を市場に出して、この情報をどんな目的に使うのかと尋ね、それに対していくら払ってくれるのかと自分で尋ねることができるようにならないだろうか? イタリア人の研究者たちが 2014 年に個人データの経済学に関する研究を発表した ことがあって、さらにはそれを狙った Handshake と呼ばれる会社まであるのだが、ここは 2013 年以来ずっと閉じたベータ版のままのようで、あまり良い兆候とも言えない。それでも、考えるべきことではあるのではないか...

コメントリンク16345 この記事について | Tweet リンク16345


tvOS 9.2 で、第四世代 Apple TV はようやく一人前に

  文: Josh Centers: [email protected], @jcenters
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

Apple TV の第二世代と第三世代を題材とした "Take Control of Apple TV," の著者として、私は第四世代 Apple TV を長年にわたって待ち望んでいた。それが出た時嬉しいとは思ったが、未完成の印象は拭えなかった。しかし、最近リリースされたばかりの tvOS 9.2 を使うとこの第四世代 Apple TV も磨かれた Apple 製品の一つに見えてき始める。皆さんの Apple TV はもう既にこのアップデートをダウンロードし終えているかもしれないが、まだであれば、Settings > System > Software Updates > Update Software からダウンロードを起動できる (そして、お察しの通り "Take Control of Apple TV" の第二版を、最新の詳細の織り込みが完了し次第、出版する予定である。今すぐ注文してくれた人は全員アップデートを無料で入手出来る。)

tvOS 9.2 は何を付け加えたのか? 一言で言えば:スクラビング (再生位置の調整) の改善、新しいフォルダ、iOS に合わせて更新されたアプリ切り替え、Bluetooth キーボードのサポート、音声口述経由でのテキスト入力、iCloud Photo Library や Live Photos のサポート、拡張された Siri 検索、そして Conference Room モードの再現 である。では、個別に見てみよう。

スクラブするには一時停止 -- tvOS 9.2 では Apple はビデオを見ている間に間違って早送りしたり、巻き戻したりしてしまうのを、タッチパッド上でのスワイプをするにはビデオを一時停止することを必要とすることで防止している。

今でも、早送り、巻き戻しは Siri Remote タッチパッド上の右側又は左側を押し続けることで、一時停止することなしに可能である。同様に、タッチパッドのどちら側かを押すことで、一時停止なしで 10 秒スキップをすることが可能である。しかし、今やビデオをスクラブするには、まず一時停止することが必要である。これで、Siri Remote に関する大きなイライラは解消されるはずである。

Home 画面フォルダを作成 -- tvOS 9.2 では Apple TV Home 画面にフォルダが導入された。フォルダには無制限のアプリを収容出来るが、同時に表示出来るのは 9 つのアイコンに限られる;もっと見るには、下にスクロールする。

image

アプリをフォルダに入れるには二通りの方法があるが、どちらのやり方でも、アプリアイコンをハイライトし、そしてタッチパッドをアイコンが震え出すまで押し続ける。最初の方法は iOS の中でフォルダを作成するやり方と似ていて、そのアイコンを他のアイコンに重なるまで移動させて、離してやるとフォルダが作成される。また、アイコンをフォルダにドラッグしてやればそこに追加される。フォルダ内では、そのアイコンを好みの位置まで動かすことが出来る。満足したら、Menu を押してそのアプリの場所を確定出来る。このやり方の方が馴染みがあると思うが、スワイプにはある程度の技量を要する。

image

二つ目のやり方は、ハイライトしたアプリが震えている間に Play/Pause を押すのである。そうするとメニューが現れ、そのアプリで新しいフォルダを作成するか、或いはそのアプリを既存のファイルに移動させるかのオプションが提示される。

image

同じやり方でアプリをフォルダから取り除くことも出来る - 二番目の方法で、メニューから Move to Home Screen を選択する。フォルダを削除するには、全てのアプリをそのフォルダから取り除く。フォルダを別のフォルダの中に移動することは出来ない。

フォルダを作成すると、tvOS はそのフォルダを作成するのに使われたアプリの種類に基づいてデフォルトの名前を生成する。これは iOS での場合と似ている。フォルダの名前を変更するには、それを開いて、上方にスワイプすると、テキスト入力フィールドとオンスクリーンキーボードが現れる。デフォルトの名前を削除し、自分自身のものをタイプするか口述する。

image

アプリの切り替え -- 新しいアプリ切り替え機能を見るには、Home ボタンを二度押しする。iOS での場合とほぼ同様に、有効なアプリのサムネイルを右や左にスワイプして好みのものを選び、それをクリックするとそのアプリに切り替わる。上方にスワイプすればどのアプリを閉じられるが、問題が起きていない限り、わざわざ手間をかけて閉じるまでもない。

image

Bluetooth キーボードのペアリング -- 以前の Apple TV モデルで私が好きだった機能の一つは、Bluetooth キーボードをペアリングしてテキスト入力を手助け出来ることであった。この機能が第四世代 Apple TV には無いことを知って私はがっかりした。とりわけ、そのタッチパッドテキスト入力インターフェースは恐ろしいほど酷いものだったからである。この問題は iOS Remote アプリを使ってかなりの程度回避出来るものではあるが (私の本の編集者は、テキスト入力フィールドが現れる度に、iPhone を引っ張り出して Remote アプリを走らせるという変な癖がついてしまった)、Bluetooth キーボードのペアリングをサポートしないというこれまでの状態は許せるものではなかった。Apple はこの機能を第四世代モデルにも tvOS 9.2 でようやく復活させた。そのやり方を以下に示す:

  1. Bluetooth キーボードをペアリングモードにする。
  2. Settings > Remotes and Devices > Bluetooth に行く。
  3. Other Devices の下で、キーボードを選択する。

image

どんなテキスト入力フィールドにもこのキーボードでタイプすることでテキストを入力出来る。Apple TV のインターフェースの中でナビゲートするには矢印キーを使う。Return キーはタッチパッドを押す役目をし、Esc は Menu ボタンの役を担う。

テキストを口述する -- テキスト入力に音声口述を使うことも出来、これは Siri Remote を使って "タイピングする" ことに比べれば格段の進歩である。この機能を使えば、Apple TV インターフェース内での検索、そしてユーザー名やパスワードの入力もずっと楽になる。しかしながら、そのためには下記のいずれかの方法で口述を有効化しなければならない:

  1. Settings > General に行き Dictation をオンにする。

  2. テキスト入力フィールドが現れている間に Siri ボタンを口述を使うことを促す画面が出るまで押し続け、そして Use Dictation を選択する。

    image

その画面上の "About Dictation and Privacy" をクリックすると、あなたの話したテキストの殆どがどの様にインターネット経由で Apple に処理のために送られるかを読むことができるが、ユーザー名とパスワードフィールドに対して話されたテキストは手元でしか処理されない。

口述を有効にしていれば、どんなテキスト入力フィールドに対しても Siri ボタンを押し続けてテキストを口述出来る。これは "Hold to dictate" のテキストが表示されているかいないかには関わらない。Siri の場合と同様、話し終わるまでボタンを押し続けることを忘れないように。Siri が理解するのは言葉だけではない;文字名も理解するので、この方法でパスワードの入力も出来る。大文字の文字を入力するには、その文字又は言葉の前に "cap" と言う。これには注意も必要である。何故ならば Siri は混乱することがあるからである - 時として、大文字にする代わりに "cat" を挿入することもある。ミャオ!

Apple が口述を Apple TV に付け加えてくれたのは嬉しいが、口述テキストを編集する方法は、全フィールドを後戻りしていく以外にはないので、本当に基本的なニーズ以外のことを満足させるにはまだまだである。例えば、Tonya が "Welcome to the Engst household" を Conference Room Mode の歓迎メッセージに加えたいと思った時、Dictation 機能は彼女の名前を "Angst" と綴ったが、たった一文字のミススペルを正すのにそのフィールドに挿入点を入れられなかった。

自分の iCloud Photo Library を見る -- もし iCloud Photo Library をお使いならば ("iCloud Photo Library: 問われなかった FAQ" 15 April 2015 参照)、ここにきてようやく自分の同期された写真や動画全てを Apple TV 上で見られるようになった。

tvOS 9.2 にアップデートした後初めて Photos アプリを開くと、iCloud Photo Library を使うよう促される:もし辞退しても、後で Settings > Accounts > iCloud で再設定出来る。いずれにしても iCloud パスワードを入力しなければならない。その後、Photos アプリを開けば、自分の写真や動画全てを見られるはずであるが、最初に全てをコピーしてくるには多少の時間がかかるかもしれない。残念ながら、Moments, Collections, 或いは Years で並べ替える術は一切ない。しかしながら、他の機器からのアルバムは見えるはずである。

iCloud Photo Library に欠けているものは、写真をスライドショーで見たり、スクリーンセーバーとして使うオプションである;これらのオプションは、共有 iCloud アルバムに対して Shared 画面上では使える。

iCloud Photo Library の写真を AppleTV 上で編集することは出来ないが、その方がいいと思われる。しかしながら、もし皆さんが私のようならば、スクリーンショットの様な居間にはそぐわない写真が沢山あるであろう。これらの画像は Photos for Mac でそれらを Control クリックし、そして Hide X Photo(s) を選択することで隠すことが出来る。ここで "X" は選択した画像の数を表す。画像を隠すのは、iOS 用の Photos アプリ上でそれらを選択し、Share ボタンをタップ、そして Hide を選択することでも出来る。隠された写真は手元の危機上の Hidden アルバムに移され、iCloud Photo Library からは削除される。

Photos アプリはまた Live Photos に埋め込まれた動画スニペットも表示出来るが、中途半端である。と言うのも、写真が "ライブ" であることを示すものは何もないからである。もし見ているのは Live Photo だと分かっているのであれば、タッチパッドを数秒間押し続ければその動画を表示出来る。

拡張した Siri 検索 -- Siri は今や App Store も検索出来る。Siri ボタンを押し続けて言う、"望遠鏡アプリを探して" とか "猫に関するアプリを探して" と。Apple の特別イベント時に、同社は Apple TV 用のアプリは今や 5000 を越すと言っていた。

image

Conference Room Display -- 第二及び第三世代の Apple TV にあった Conference Room Display は、第四世代では最初欠けていた。これは、会議や、教室の場面で便利な場面もあり、特定の Apple TV に対してコンテンツを AirPlay するやり方をスクリーンセーバーに嵌め込みパネルとして追加する。

image

これをオンにするには、Settings > AirPlay > Conference Room Display に行く。その画面上では、カスタムメッセージを付け加えたり、背景写真を選び - 自分のライブラリからでも Apple のものからでも - そして、スクリーンセーバーをプレビュー出来る。

image

注意することは、既に自分のスクリーンセーバーのセットを General > Screensaver で設定している場合、それは Conference Room Displayの背景写真の選択をオーバーライドする。それでも Conference Room パネルはきちんと現れる。スクリーンセーバーの代わりにその写真を使いたければ、General > Screensaver > Start After を Never に変更する。

image

これらの追加機能は大歓迎だが、そもそもこの製品の最初から盛り込まれていなかったのはおかしい話である。加えて、口述機能も嬉しいが、まだまだ中途半端だという事実は、Apple が未だ居間用のインターフェースの感じを掴んでいないことを示している。

何れにしても tvOS 9.2 は重要なアップデートであり、Apple が顧客ニーズに対してより積極的に対処する姿勢の表れとも言えよう ("Apple の 3 月イベントが顧客への反応の強化を反映" 21 March 2016 参照)。今や、どうしようもない程ひどい欠如機能を嘆く代わりに、将来のテレビに対して Apple がどんな提案をしてくるのか楽しみに出来るようになった。そして私も "Take Control of Apple TV," の第二版を出すのを楽しみにしている。これは間も無く登場の予定である。

コメントリンク16328 この記事について | Tweet リンク16328


Preview のパワー: 画像のクロップとリサイズ

  文: Adam C. Engst: [email protected], @adamengst, Josh Centers: [email protected], @jcenters
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

OS X に昔からある多目的の書類および画像ビューワーの Preview について、ファイルを開いたり見たりすることの基本を、これまでの記事“Preview のパワー: Preview にファイルを取り込む”(2016 年 2 月 25 日) と“Preview のパワー: 画像や PDF を表示する”(2016 年 3 月 13 日) で概観してきた。今回は、Preview の画像処理機能のさまざまについて、踏み込んでみることを始めたいと思う。

テクノロジーに関する記事や本の著者として、私たちはよくスクリーンショットを使う作業をしており、Preview は Pixelmator や Photoshop といったフル機能のツールよりも時間の節約になる。それは、Preview の持つ焦点を絞ったツールセットのお陰だ。“Preview のパワー: Preview にファイルを取り込む”でも説明した通り、スクリーンショットを Preview 自体の中から撮ることさえできる。

私たちがスクリーンショットに編集の手を入れる際に最もよくする作業は、クロップとリサイズだ。不要な部分を取り去って、画像が大きくなり過ぎないようにするためだ。Preview はこれらの作業の両方ともに優れている。

Preview で画像をクロップ -- 画像をクロップするというのは、選択された領域以外のすべての部分を削除するという意味だ。Preview ではこれが簡単にできる。けれどもその前に、Rectangular Selection ツールの使い方を理解しておかなければならない。

画像を表示している際には Rectangular Selection ツールがデフォルトのはずだが、もしそうでなければ Tools > Rectangular Selection を選べばよい。また Markup Toolbar の左端から選ぶこともできる。Markup Toolbar を表示するには View > Show Markup Toolbar (Command-Shift-A) を使う。

Rectangular Selection ツールの使い方は簡単だ。クリックしてからドラッグして長方形の選択ボックスを作るだけだ。選択ボックスを移動させたければ、カーソルをボックスの内側に置いてカーソルが手の形になるようにしてから、クリックしてボックスをドラッグすればよい。同じように、青い丸をクリックしてドラッグすればボックスのサイズを調整できる。サイズの調整中は小さなポップオーバーの中にピクセル寸法が表示されるので便利だ。

image

ここに示した実例のスクリーンショットで、Finder と Preview のウィンドウ以外のすべてをクロップして取り去りたいと思った。そこで、選択ボックスが二つのウィンドウを囲むようにしておいてから、Tools > Crop (Command-K) を選べば不要な部分が切り取られる。

image

別に難しいことではないが、ウィンドウやダイアログなどのオブジェクトのまわりで簡単に正確なクロップができるようにするためのテクニックがある。

まず第一に、正確な選択をしようと一生懸命になってはいけない。難しいこともあるからだ。そうではなくて、欲しいオブジェクトのまわりに少し余裕を残した粗い選択をまず先にして、Command-K で最初のクロップをしておく。

それから、選択長方形の各辺の真ん中にある青い丸のハンドルを使って、その辺の正確な位置を決める。作業が四回必要になるけれども、角のハンドルを使うより正確な作業がし易い。角のハンドルでは二つの寸法を一度に変えることになるので、両方を同時に正確な位置に決めるのが難しいからだ。四つの辺の位置がすべて決まったら、Command-K で二度目のクロップをする。

私たちが Take Control ブックのインライングラフィックスとして使うボタンの画像のような、非常に小さなオブジェクトをクロップしたい場合は、まず大まかなクロップをしてから、ズームインしてオブジェクトの輪郭が正確に見えるまで拡大して、その状態で選択長方形の辺のハンドルをドラッグして最終的な選択域を決め、それからクロップしている。ズームの方法は“Preview のパワー: 画像や PDF を表示する”に説明がある。

ここでもう一つ、“Preview のパワー: Preview にファイルを取り込む”で触れた機能を思い出しておこう。長方形に選択した後で、クロップする代わりに、その選択部分をコピーしてから File > New from Clipboard を選んでそのコピーされたデータを含んだ新規書類を作成することもできる。つまり、選択してから Command-C、その次に Command-N だ。これで、欲しいコンテンツを含んだ新規のファイルを手軽に作ることができる。ワークフローによっては、クロップされた画像を得るためにこちらのやり方の方が適していることもある。

ここでは画像について説明してきたけれども、同じ方法を使って PDF をクロップすることもできる。PDF のクロップが便利に使える状況はめったに起こらないが、Preview が一度に一つのページしかクロップできないことも覚えておこう。その上、Preview は実際にコンテンツを削除するのではなく単に隠しているだけなので、その PDF を他のアプリで開けばクロップされていない状態で見える可能性が高い。Preview はこの事実をわざわざ警告してくれる。

Preview で画像をリサイズ -- 画像の中の不要な部分をクロップで取り去っても、まだ(寸法の意味で、またはファイルサイズの意味で)大き過ぎたとしよう。ここでも、Preview を使って手軽にその画像を縮めることができる。

Tools > Adjust Size を選べば、便利なダイアログが開く。設定を好きなように変えてから、OK をクリックすれば変更が適用されるし、Cancel をクリックすれば元に戻る。個々のコントロールが何をするかを簡単にまとめておこう:

image

画像のサイズ設定をいじっていると、すぐに混乱してしまいがちだ。Preview は画像の表示の際に物理的な寸法(それは解像度にもある程度基づいている)を尊重し、すべての画像を実際のサイズで開こうとするからだ。“Preview のパワー: 画像や PDF を表示する”の中の Preview の環境設定の説明のところで 1 Image Pixel Equals 1 Screen Pixel か Size on Screen Equals Size on Printout かのどちらを選んだ方が良いかについて全く判断がつかないと書いたが、今はそこのところが理解できる。つまり、"100%" と書いてあれば、それは "Actual Size" という意味なのだ。

主としてスクリーン上に表示するための、例えばウェブページに置く画像で作業する場合には、1 Image Pixel Equals 1 Screen Pixel を選んでおく方が良いだろう。そうすれば、1920 × 1280 の画像を 300 ppi で開けば、Preview はそれをピクセル数で実際のサイズに表示する。たった 72 ppi でしかない 1920 × 1280 の画像であっても全く同じサイズに表示される。それは、あるべきことだ。解像度は、スクリーン上の出版には無関係だからだ。

しかしながら、主として印刷して使うための画像で作業する場合には、Screen Equals Size on Printout を選んでおく方が役に立つだろう。なぜならその場合、同じピクセル数の画像ならば解像度が高ければ小さく、解像度が低ければ大きな写真として印刷されるからだ。それは、印刷した際の結果と同じことだ。この場合、二つの画像の実際のサイズが同じであっても、Preview は 300 ppi の画像を 72 ppi の画像よりもずっと小さいサイズで表示する。

解像度に依存する物理的寸法を Preview が尊重することの問題点は、他のプログラム、例えば Graphic Converter などがピクセル寸法のみに集中しているところにある。他のグラフィックスアプリも使って作業する場合、同じ画像を Preview だけが違った風に表示するので混乱してしまうかもしれない。だから、Preview の中での見栄えのことをあまり気にし過ぎてはいけない。スクリーン上で表示するための画像では、ピクセル寸法のみに集中していればよい。

すべて Undo 可能 -- 画像を編集する際の最も安全なやり方は変更を加える前にあらかじめコピーを作っておくことだが、これはすぐに忘れがちだ。そういう場合、望まない変更を元に戻すには二つの方法がある。

一つ目は、あの古びた Edit > Undo (Command-Z) コマンドだ。このコマンドは、最後にした操作を元に戻す。また、Edit > Redo (Command-Shift-Z) コマンドもある。こちらは Undo した操作を再びやり直す。何も目新しくはない。

でも、既にファイルを保存して閉じてしまっていて、あとになってそのファイルを開き直した場合、Undo コマンドが使えない。けれどもありがたいことに、そういう場合にも古いバージョンに戻すことはできる。これは、Preview が Modern Document Model に対応しているお陰だ。(2012 年 8 月 7 日の記事“現代的 Mountain Lion 書類モデルの様式とは”参照。)File > Revert To を選べば、そこに二つの選択肢、Last Opened と Browse All Versions がある。Last Opened を選べば、あなたが最後にそのファイルを開いた時点以後に施したすべての変更が元に戻される。

Browse All Versions を選べば、Time Machine 風のインターフェイスが表示される。その書類の現在のバージョンが左側に、過去のバージョンが右側に示される。矢印ボタンを使ってバージョン間を移動する。残念ながら、リサイズを施しただけの画像同士の違いを見分けるのは不可能に近いことが多いので、タイムスタンプを頼りに推測しなければならないかもしれない。Restore をクリックすれば、ファイルは右側に示されているバージョンに復元される。または、Done をクリックすればキャンセルされる。

image

Preview で書類や画像に施すことのできる変更について、まだほんの少し触ってみた程度のことしか語れていないが、それでもこの記事で扱った内容は今後の探求の土台となるものだ。ファイルで一部分を選択したり、望まない変更を元に戻したりする方法を、あなたはもう身に付けている。次回は、Preview の画像編集のパワーについて詳しく見ることにしたい。

コメントリンク16339 この記事について | Tweet リンク16339


TidBITS 監視リスト: 注目のアップデート、2016 年 3 月 28 日

  文: TidBITS Staff: [email protected]
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Quicken 2016 for Mac 3.2.1 -- Intuit が、Quicken 2016 for Mac 3.2.1 (私たちの最近のアンケートで得票数一位、2016 年 2 月 29 日の記事“あなたの好みの Mac 個人財務アプリ”参照) をリリースして、数多くのバグを修正した。今回のアップデートでは、Windows Converter での振替取引の問題を修正(ならびに非常に古い Quicken Windows ファイルを変換する機能を追加)し、Online Transfer 処理を改善してクレジットカード支払をバンキングからクレジットカードへの振替として正しく表示できるようにし、債券の額面価格が Quicken Windows でのものと合致するよう計算方法を調整し、Dates のホットキー対応を改善し、バックグラウンドタスクを走らせている最中に起こったクラッシュを修正し、Reprint Checks が小切手の印刷をできなくなっていたバグを修正している。(新規購入 $74.99、無料アップデート、リリースノート、10.10+)

Quicken 2016 for Mac 3.2.1 へのコメントリンク:

Skype 7.24 -- Microsoft が Skype 7.24 をリリースしてユーザーインターフェイスに改善を加えた。このインターネット電話およびメッセージングアプリには新たに小さなウィンドウサイズ (SlimView と呼ばれる) にも適応可能なレイアウトが導入され、View > Sidebar メニューに詳細なサイドバー表示項目 (Compact、Regular、Detailed) を追加し、共有された位置情報への道案内を受け取れるようにし、また Skype Home、Contacts、History にそれぞれキーボードショートカットを追加している。(無料、42.4 MB、リリースノート、10.9+)

image

Skype 7.24 へのコメントリンク:

LaunchBar 6.6 -- Objective Development が LaunchBar 6.6 をリリースし、このキーボードベースのランチャーが iTunes と動作する方法に関係した改善をいくつか施した。今回のアップデートでは Albums カテゴリーをブラウズする際にアルバムのアーティストとタイトルを双方とも表示するようになり、再生中のトラックのアーティスト・アルバム情報を iTunes/Now Playing info に表示するようになり、iTunes Today Widget が Notification Center で有効になっていた場合に一部の iTunes アクションに失敗していた問題を解消し、iTunes Library を再索引付けする際の問題点を修正し、Identically Named Songs でのバグ一件を修正している。

LaunchBar 6.6 はまた、スニペットにアクセスするための修飾キー付きタップのオプション (Preferences > Shortcuts で設定する) を追加し、Send To 操作の対象として iCloud Drive が使えるようにし、Clipboard History の中で Info Browsing をする際に画像にメタデータを追加するようにし、電卓の中の Send To 操作を改善し、絵文字のリストを開くため専用のホットキーを追加し、絵文字を最近使ったセレクションによって並べ替えるようにし、Action Editor の Resources タブに Quick Look 対応を追加し、Copy (および Paste) File Contents コマンドを改良して (Markdown など) 新たなプレインテキストフォーマットでも使えるようにしている。(新規購入 $29、TidBITS 会員には 20 パーセント割引、無料アップデート、13.3 MB、リリースノート、10.9+)

LaunchBar 6.6 へのコメントリンク:

Tinderbox 6.5 -- Eastgate Systems が Tinderbox 6.5 をリリースして新しい Word Cloud 機能を追加した。これを使えばメモ、書類のセクション、あるいは書類全体の中で最もよく使われている用語を一目で見られるようになる。この個人用コンテンツアシスタントはまた、プロジェクト項目の間に幅広のリンクを描けるようになり、大アイコンに対応し (またマップのレイアウトを改善して大きなアイコンも異なる形とうまく馴染めるようにし)、プロジェクトの進行状況をパーセントの輪で示す新しいダッシュボードのオプションを追加し、Tinderbox が Mac のプロセッサを利用する方法を改良し、Freemind およびタブ区切り値ファイルからの読み込み対応を追加している。(新規購入 $249、無料アップデート、54.1 MB、リリースノート、10.8+)

Tinderbox 6.5 へのコメントリンク:

Moneydance 2015.7 -- The Infinite Kind が Moneydance 2015.7をリリースした。最近のアンケートで良い成績を得た(2016 年 2 月 29 日の記事“あなたの好みの Mac 個人財務アプリ”参照)この個人向け財務管理アプリケーションの、メンテナンス・アップデートだ。今回のアップデートでは、認可された認証機関を OFX 接続用に追加し、(Moneydance 2014 と同様) 確認用ポップアップウィンドウをレジスターの隣にドッキングさせられるようにし、予算インターフェイスの中で計算の速度を改善し、クレジットカードのアカウントがすべてのバンキングデータを受け入れられるようにし、レジスターの中でメモを分割して保存するやり方を修正し、またポルトガル語とブラジルポルトガル語のローカライズ版を改良している。Moneydance 2014 のライセンスがあれば、無料で Moneydance 2015 にアップグレードできる。Moneydance 2012 またはそれ以前からは、$24.99 で Moneydance 2015 にアップグレードできる。(Infinite Kind からも Mac App Store からも新規購入 $49.99、無料アップデート、74.2 MB、リリースノート、10.7+)

Moneydance 2015.7 へのコメントリンク:

セキュリティアップデート 2016-002 (Mavericks および Yosemite) -- Apple が OS X 10.9 Mavericks と 10.10 Yosemite 用にセキュリティアップデート 2016-002 をリリースして、同時進行でリリースされている 10.11.4 El Capitan (2016 年 3 月 21 日の記事“OS X 10.11.4 が Notes、iBooks、Live Photo 対応を改善”参照) と重なるところのあるいくつかのセキュリティ修正を加えた。今回のアップデートでは、悪意を持って作られた .png ファイルを処理すると任意のコードが実行される可能性があった Apache 関係の脆弱性、XML に関係した複数のメモリ破壊の問題、情報漏洩やバッファオーバーフローの原因となっていた OpenSSH の問題などがパッチされた。(無料、10.9.5 Mavericks 用は 370.8 MB、10.10.5 Yosemite 用は 462.1 MB)

セキュリティアップデート 2016-002 (Mavericks および Yosemite) へのコメントリンク:

Safari 9.1 -- Apple が Safari 9.1 を OS X 10.9.5 Mavericks、10.10.5 Yosemite、および 10.11 - 10.11.3 El Capitan 用にリリースした。これは 10.11.4 El Capitan (2016 年 3 月 21 日の記事“OS X 10.11.4 が Notes、iBooks、Live Photo 対応を改善”参照) の中にはバンドルされて含まれている。今回のアップデートでは更新されたバージョンの WebKit を組み込んで画像、CSS、ウェブフォーマットへの対応を拡張し、Web Inspector のパフォーマンスを改善し、JavaScript ダイアログが他のウェブページへのアクセスを妨害しないようにしている。また、いくつかのセキュリティパッチも施され、具体的には Top Sites ページに存在していたクッキー保存の問題点、悪意を持って作られたウェブコンテンツを処理する際に任意のコードが実行される可能性があったメモリ破壊の問題、WebKit 文字エンコーディングのキャッシュの問題 (Apple の Support ウェブサイトのセキュリティコンテンツ記事参照) などが修正された。Safari 9.1 は Software Update 経由でのみ入手できる。(無料、10.9+)

Safari 9.1 へのコメントリンク:

OS X Server 5.1 -- Apple が OS X Server 5.1 をリリースした。OS X 10.11.4 El Capitan (2016 年 3 月 21 日の記事“OS X 10.11.4 が Notes、iBooks、Live Photo 対応を改善”参照) との互換性のためのアップデートだ。実際、OS X Server 5.1 は 10.11.4 El Capitan を要するようになり、また従来のバージョンの OS X Server は 10.11.4 El Capitan では動作しないので、忘れずに双方とものアップデートをインストールしておく必要がある。今回のリリースではまた、TLS (Transport Layer Security) 1.2 への対応を追加し、iOS 9.3 の新しい教育関係機能 (2016 年 3 月 21 日の記事“iOS 9.3、Night Shift を採用、Notes を保護、等々”参照) 対応を追加し、Profile Manager に新たな制限を追加し、iCloud データキャッシングにパフォーマンス最適化を施している。Apple のセキュリティノートによれば、今回のアップデートではまた Time Machine Server がサーババックアップを実行する際にアクセス権が無視されても管理者に適切に警告しなかった問題に対処がなされ、Apache で .DS_Store および .htaccess へのファイルアクセスに問題があったのをパッチしている。(新規購入 $19.99、無料アップデート、186 MB、リリースノート、10.11.4+)

OS X Server 5.1 へのコメントリンク:


ExtraBITS、2016 年 3 月 28 日

  文: TidBITS Staff: [email protected]
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

今週の ExtraBITS は、Apple の FBI との争いに焦点を絞る。ニュース速報はどうやらこの争いが終わったらしく見えることで、司法省が訴訟を取り下げようとしている。それに先立ってこの裁判の判事が Apple に iPhone へのバックドアを提供するよう命じた裁判所命令に法的強制力がないと思われると発言したが、これを受けて政府側は裁判で負けるよりも撤退した方が賢明だと判断したのかもしれない。それからもう一つ、SF小説の著者 Charles Stross が、プライバシーを巡る Apple 対 FBI の戦いは Apple が独自に銀行を開設しようとしている兆候ではないかと思案する。

司法省が Apple 訴訟から撤退 -- The New York Times の記事によれば、San Bernardino テロリストの iPhone のロックを外すよう依頼された第三者がそれに成功し、その結果として司法省は Apple に対する訴訟を取り下げることになるという。意味のあるデータが取り出せたのかどうか、また FBI がその iPhone の内容を公表したり、その情報にどうやってアクセスできたかを Apple に知らせたりすることがあり得るのかどうかは不明だ。この見当違いの裁判のために Apple がどれほどの費用を使ったのかは知らないが、信念に基づいた同社の防御姿勢が大きな忠誠心を生み出したことだけは確実だろう。

コメントリンク: 16374

Apple 対 FBI: これはすべて金のため? -- SF作家 Charles Stross の小説は経済や産業を扱ったものが多いが、その彼が現在の Apple の FBI との法的確執を経済の視点から眺め直す。彼によれば、Apple 手持ちの膨大な資金は、同社を前世紀の General Motors 社と似た立場に置くことになるという。当時、膨大な年金基金を手にしていたこの自動車会社は「自動車を作る子会社を持つ保険会社」へと変貌した。Stross は、顧客のセキュリティを追求する Apple の姿勢が Apple Pay に結び付いており、同社の長期的戦略がその保有現金を使って「小売銀行サービスの子会社を作って直接に金融サービスを提供する」ことにあるのではないかと指摘する。彼の推測に同感であろうとなかろうと、この Stross の分析記事に少々の時間を投資する価値はあるだろう。

コメントリンク: 16371

iiPhone バックドア裁判所命令に法的強制力がない、と判事が語る -- 司法省が Apple との法廷聴聞会の延期を突然申し出た際、その理由として FBI が San Bernardino テロ事件関係の iPhone のロックを外す別手段を見つけたからだと司法省は主張した。けれども「これはバックドアと同等のものを作成するよう Apple に強制できる可能性が減ったと FBI が感じ、メンツを保てる解決法を探っている兆候なのかもしれない」と述べた Adam Engst は正しかったのかもしれない。Motherboard の記事で Sarah Jeong が、今回の聴聞会前の協議の席で判事が弁護士たちに向かって iPhone のバックドアを要求した当初の裁判所命令には「法的強制力がなく」それはずっと以前から変わらずそうであった、と繰り返し語ったことを明かしている。まだこの事件が終わった訳ではないが、最終的には Apple が勝つ予兆が出てきていると言ってよいだろう。

コメントリンク: 16365


tb_badge_trans-jp2

TidBITS は、タイムリーなニュース、洞察溢れる解説、奥の深いレビューを Macintosh とインターネット共同体にお届けする無料の週刊ニュースレターです。ご友人には自由にご転送ください。できれば購読をお薦めください。
非営利、非商用の出版物、Web サイトは、フルクレジットを明記すれば記事を転載または記事へのリンクができます。それ以外の場合はお問い合わせ下さい。記事が正確であることの保証はありません。
告示:書名、製品名および会社名は、それぞれ該当する権利者の登録商標または権利です。

TidBITS ISSN 1090-7017©Copyright 2016 TidBITS: 再使用はCreative Commons ライセンスによります。

Valid XHTML 1.0! , Let iCab smile , Another HTML-lint gateway 日本語版最終更新: 2016年 4月 01日 金曜日 , S. HOSOKAWA