TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#1322/23-May-2016

まずは重要なことから。来週は TidBITS の週刊号をお休みさせて頂く。ここ米国では Memorial Day の祝日を祝うためで、次号は 2016 年 6 月 6 日発行となる。Apple はアジアへの集中を増しており、Tim Cook の同大陸への訪問、インドと中国での新たな投資、それから、GarageBand を中国の楽器をテーマにアップデートしたという...? Google と Apple は多くの点で競争しているが、Julio Ojeda-Zapata が報告する Google I/O カンファレンスでの発表を見れば、この検索の巨人は今後も Apple ユーザーを大々的にサポートするようだ。今年の後半の話だが、MacTech の発表によれば 11 月に Los Angeles で開催される MacTech Conference では Home Automation Showcase が呼び物となるらしい。そして今週は「Preview のパワー」連続記事の最終回として、画像や PDF の保存・書き出し・変換について調べる。今週注目すべきソフトウェアリリースは Skype 7.28、OmniOutliner 4.5.3、Parallels Desktop 11.2、PDFpen と PDFpenPro 8.0.1、セキュリティアップデート 2016-003 (Mavericks および Yosemite)、それに Safari 9.1.1 だ。

記事:

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Memorial Day の祝日のため 2016 年 5 月 30 日号は休刊

  文: Josh Centers: [email protected], @jcenters
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

次の月曜日は米国での Memorial Day (戦没者追悼記念日) の祝日となり、また TidBITS スタッフの面々も家族のためにすべきことが数多くある。そこで、来週は電子メール号をお休みにさせて頂くことにした。

次の TidBITS の電子メール号は 2016 年 6 月 6 日発行となるが、それまでの二週間もウェブ上での新しい記事の出版はいつも通りに続ける。TidBITS 会員は個々の記事が出版され次第電子メールで受け取ることもできるし、フルテキスト付き RSS で読むこともできる。もちろんそれ以外のすべての読者の皆さんも TidBITS ウェブサイトを訪れて記事を読んで頂くことができるし、また見出しの通知を RSSTwitterFacebook で受け取って頂くこともできる。それから、この機会に過去の号を見直してみたい方のために、バックナンバーは常にオンラインで入手可能で、過去の号を電子メールで受け取って頂くことさえできる。(2013 年 3 月 8 日の記事“TidBITS の号を自分自身に再送信”参照。)

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MacTech Conference 2016 に Home Automation Showcase 登場

  文: Adam C. Engst: [email protected], @adamengst
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

MacTech Conference は、Apple IT プロ、技術者、コンサルタントたちが集まる重要な機会となっているが、今年のイベントには新しい催しが加わることが発表された。出席者のための、Apple に集中した Home Automation Showcase だ。カンファレンスの期間中さまざまのベンダー各社がいて、Apple ユーザーが家にいても仕事場にいても、自分のまわりのものをコントロールできるようにするための、製品やテクノロジーを実演してくれる。Apple の HomeKit と互換な製品が多いが、それ以外の Apple 互換なホームオートメーション用プラットフォームで働く製品も出展される。加えて、ホームオートメーションやいわゆる "Internet of Things" セットアップの導入・維持・保護・問題解決に興味ある人のため、MacTech は丸一日のカンファレンス前日ワークショップも提供する。

今回で七年目となる MacTech Conference 2016 は、11 月 16 日から 18 日まで Los Angeles にて開催される。カンファレンス前日ワークショップの開催は 2016 年 11 月 15 日だ。MacTech は講演者のフルリストの発表を Apple の Worldwide Developer Conference の発表が出るまで保留にしているが、カンファレンスの組織委員には MacTech 出版者 Neil Ticktin、編集主幹の Ed Marczak、セッション共同司会者たる Genentech の Nadyne Richmond、イベント守護神たる BackgroundBackup.com の Sean Costello といった面々が名前を連ねている。A既に発表されている講演者としては、Walt Disney Animation Studios の Greg Neagle、Red Queen Coder の Janie Clayton、JAMF Software の Charles Edge などがいる。Charles は、"Take Control of OS X Server" の著者としてもお馴染みの人物だ。

三日間のカンファレンスの超早期割引価格は 2016 年 5 月 31 日までに限り $999 となっていて、価格には朝食、昼食、夕食、休憩中の食べ物、また夕べの行事も含まれている。前日の Home Automation ワークショップは別料金で $299 だ。カンファレンスの早期割引価格は 2016 年 6 月 1 日に $200 上がり、2016 年 9 月 30 日から 2016 年 10 月 28 日まではさらに $200 上がる。2016 年 10 月 29 日以降は、標準価格の $1599 となる。

Tonya と私は今年も MacTech Conference に出席するつもりなので、もしもあなたが Apple 製品の販売、インストール、あるいはサポートで生計を立てておられるなら、会場でお目にかかれるのを楽しみにしている!

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Apple、アジアへの注力を高める

  文: Josh Centers: [email protected], @jcenters
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

Apple は長い間アジアの急成長市場に注目してきた。そして、大中国圏、日本、そして残りのアジアパシフィックを合わせた Q2 2016 の売り上げが南北アメリカよりも大きい事を考えれば (そして欧州を遥かに凌駕する)、これは当然であろう。 それでも、Apple は最近この大陸での足掛かりをよりしっかりしたものにする努力を加速しており、その一環として CEO Tim Cook はインドと中国を訪問、そして同社はこの地域で大きな手を打ちつつある。

最初の動きは 13 May 2016 にあり、Apple は中国の配車サービス会社で Uber の競争相手でもある Didi Chuxing に対して驚きの $1 billion の投資をする。Apple はこの投資は同社が中国市場を更に理解するのを手助けするであろうと言い、そして、最近 iTunes Store と iBooks Store が中国で閉鎖されたことを思えば、Apple は中国政府がこの投資を前向きに捉えてくれることを望んでいてもおかしくはないであろう。この動きはまた Apple の自動車開発の噂にも油を注ぎ、Apple は自動運転車を隠し持っているのではないかとの突拍子もない憶測まで飛び出している。実際の所は、Apple は Didi Chuxing からの中国での地図データへのアクセスに興味があるというのではなかろうか。

更に Apple は三日続けての国際発表におよび、中国楽器を加えた GarageBand のバージョン、インドでの iOS アプリ開発及び設計推進施設、そしてインドでの新しい Maps に焦点を当てた開発事務所を売り込む本格的なプレスリリースにまで及んだ。

GarageBand 中国音楽を奏でる -- Apple の発表の最初のものは 17 May 2016 に出され、 GarageBand に対するアップデートを売り込むもので、伝統的な中国の楽器の追加と 300 に及ぶ Apple 制作の中国音楽のループを盛り込んだ本格的なプレスリリースまで用意した。

Mac 上で中国楽器を演奏するには、GarageBand を 10.1.2 にアップデートし、それからGarageBand の Library で新しい Chinese Traditional カテゴリを探す。そこにはダウンロード出来る三つの楽器が含まれる:Chinese [Drum] Kit, Erhu, そして Pipa である。Chinese ループにアクセスするには、View > Show Apple Loops を選択し、そして "chinese" で検索する。楽器の様に、ループは GarageBand の中でダウンロードする必要がある。

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GarageBand 2.1.1 for iOS では、Chinese 音は隠れている。これらにアクセスするには、曲を開き、右上の歯車をタップ、Song > Advanced に行き、それから Chinese Instruments をオンにする。GarageBand for iOS はまた、Live Loops に対する二つの新しい Chinese テンプレートと、中国の人気のソーシャルネットワークである QQ と Youku に対する新しい共有オプションを有している。

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たとえ中国音楽になど興味がなくとも、これらの楽器を使って格好良いことも出来る。YouTube ユーザーの iPhonedo は GGame of Thrones テーマ曲 をこれらを使って作り直した!

Apple のインド戦略 -- 翌日の 18 May 2016 には、インドの Bengaluru (Bangalore) の新しい iOS アプリ開発及び設計推進施設を発表した。Bengaluru はインドにおけるテックハブとなり、インドの他のどの地域よりも多いテック起業家を生み出していて、市内のテック部門で働く人は百万人を超える。この推進施設に所属する Apple のチームは "開発者達にベストプラクティスについて目を開いてもらい、そしてそのやり方を教え、技術を磨く手助けをし、そして iOS プラットフォーム上での彼らのアプリの設計、品質、そして性能を変身させるべく働く"。Apple のエキスパートは、開発者のために一対一のアプリレビューもまた提供する。Apple は iOS App Design and Development Accelerator を 2017 年に開設する予定である。

三つの発表の最後として、Apple は 19 May 2016 にインドの Hyderabad に新しい Maps に焦点を当てた開発事務所を開くことを発表した。この事務所は最大 4,000 の職を生み、Maps の開発を加速すると Apple は言っている。このプレスリリースによると、Apple は iOS エコシステムに関連して 640,000 を超える iOS アプリ開発や他の仕事を支援していると言う。

Tim Cook の大旅行 -- この間、Tim Cook はアジアで駆け足の旅をしていた。最初の訪問地は Beijing で、Didi Chuxing 総裁の Jean Liu、中国の起業家たち、そして中国のインターネット規制官のトップである Miao Wei と会うためである。彼の Ministry of Industry and Information Technology は最近中国での Apple サービスを禁止したばかりである ("iBooks Store と iTunes Movies、中国で閉鎖" 25 April 2016 参照)。

Miao は後日 Apple に関して前向き発言とも見えるものを出したが、同国が Apple に本や映画を再度売らせるかどうかはまだ分からない。Google Translate に頼れば、この発言の一部は次の様なものである:

Apple は中国での事業をさらに拡大し、研究開発や生産チェーンにおける協業を深め、中国の消費者に便利で、安全なユーザー経験を提供することを望んでいる。

Apple の中国との規制闘争は、Apple がアジアに対して急に焦点を当てることとなった一つの動機となっているかもしれないが、Apple の Q2 2016 の業績不振に対する答えとも言える ("Apple、Q2 2016 で 13 年ぶりの売上げ減少を記録" 26 April 2016 参照)。"これは株主に対する '我々は中国の将来を信じている' と言うメッセージである" と市場研究会社である IDC のアナリスト Bryan Ma は The Wall Street Journal に語っている。悪名高き投資家 Carl Icahn は最近彼の Apple 株を、Apple に対する中国の "態度" の所為で売り払ってしまった

中国の後 Tim Cook はインドに向い、Bollywood(インドの映画界)有名人とのパーティsを開き、 Hindu のお寺に詣でたe。これは Apple CEO の個性の範囲内には十分収まる;Steve Jobs は若い時にインドを訪れており、後に Facebook CEO Mark Zuckerberg にこの地のお寺を訪れるように勧めた。ひょとすると Cook は、インド政府との再生 iPhone を売る交渉で、障害物の除去者として知られる Hindu の神 Ganesha が Apple の側に降り立つことを願っているのかもしれない。

Apple の突然のアジアに対する新たな関心には色々な読み方があると思われるが、一つだけは明らかに見える:Apple はインドと中国を同社の将来には欠かせないと見ており、相応の投資をしている。

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Preview のパワー: 画像の変換と PDF への書き出し

  文: Adam C. Engst: [email protected], @adamengst, Josh Centers: [email protected], @jcenters
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

OS X 内蔵の書類および画像用強力アプリ Preview を調べてきたこの連続記事で、Preview にファイルを取り込む方法(2016 年 2 月 25 日の記事“Preview のパワー: Preview にファイルを取り込む”)から、高度な編集テクニック(2016 年 4 月 25 日の記事“Preview のパワー: 高度な編集テクニック”)まで、皆さんを案内しながらずっと紹介してきた。今回は連続記事の最終回とするが、結びにふさわしい場所を探訪しよう。つまり、ファイルを保存したり書き出したりすることについてだ。

Preview は Modern Document Model を利用しているので (2012 年 8 月 7 日の記事“現代的 Mountain Lion 書類モデルの様式とは”参照)、既存のファイルはあなたが編集するに応じて自動的に保存される。また Preview は Resume 機能にも対応しているので、たとえあなたが保存をせずに Preview を終了しても、あるいはクラッシュや停電などによって Preview が閉じてしまっても、あなたの仕事が失われることはない。

でも、そういったことはすべて Mac の基礎だ。もっと興味深いのは Preview があなたのファイルを別のフォーマットに変換できるという点だ。PDF ファイルを画像として書き出すこともできるし、その逆もできる! 例えば 1 ページだけの PDF チラシがある場合、PNG か JPEG に変換すれば Facebook に手軽にポストできて便利だろう。

Preview の File メニューにある三つのコマンドが、あなたのファイルを書き出す際の役に立つ:

では、どれにすればよいか確信がなかったら、どのフォーマットを使うべきなのか? もしもその画像が写真ならば、JPEG が画質とファイルサイズの節約との最良のバランスを提供してくれるだろう。一方、もしもそれがコンピュータが生成したスクリーンショットなどのグラフィックで、一様に色付けされた広い領域があるような場合は、あるいは透明性機能が必要な場合は、PNG を使うのがよい。TIFF は、主として印刷して出版する目的に使う場合に適している。例えば、本の中で使うスクリーンショットについてはカラー処理のワークフローに関係した理由で PNG でなく TIFF にするようにと指定してくる出版社もあるだろう。また、Photoshop のようなアプリでレイヤーを編集する必要がある場合にも TIFF を使うのがよい。

では、他にたくさんあるさまざまの画像フォーマットはどうか? 大体において、それらは古かったり、めったに使われなかったり、あるいはその両方だったりする。少なくとも Mac の世界ではそうだ。ただし二つだけ例外があって、それは Photoshop と QuickTime Movie だ。いずれも十分広く使われているけれども、Preview で便利に使えるとは思えない。ファイルを Photoshop フォーマットで保存すれば、Photoshop がネイティブにそれを開けるようにはなるけれども、私たちが知る限りそうしたからといって PNG に比べて利点が得られるということはない。また、Preview で開いてから QuickTime Movie で保存できるようなファイルフォーマットを私たちは知らない。まず頭に浮かぶのはアニメーション GIF だが、それを QuickTime Movie として保存することはできない。他のフォーマットについて調べてみたい方のために、フルリストを挙げておこう。情報の得られるリンクも付けておいた:

長いリストではあるが、世の中にはもっともっとたくさんの画像フォーマットが存在している。開けないファイルに出くわしたなら、あるいは Preview が対応していないフォーマットに画像を保存する必要が出てきたなら、あの頼りになる Lemke Software の GraphicConverter を使うとよい。200 種類近くのファイルフォーマットを読み込むことができ、およそ 80 種類のフォーマットに書き出すことができる。

PDF への書き出し: Quartz フィルター -- PDF つまり Portable Document Format については何冊もの本が書かれている。(例えば O'Reilly Media から出ている "PDF Hacks"、"PDF Explained"、"Developing with PDF" などがお薦めだ。)最初は Adobe によって作り出されたけれども 2008 年以来オープンな ISO 標準となった PDF は、テクノロジーの世界における最も有用なるファイルフォーマットの一つとなっている。極端に単純化して言えば、PDF は印刷された書類の中のテキストとグラフィックスをデジタルな形にしたものだ。PDF の最も一般的な利用法は印刷と出版で、政府の書式から Take Control 電子ブックまで、ありとあらゆる実例がある。けれども PDF には信じられないほどの柔軟性がある。OS X の Quartz レンダリングエンジンは内部で PDF を使っており、だからこそ OS X ではさまざまなものを非常に手軽に PDF として書き出せるのだ。

Preview の Export ダイアログには、PDF に書き出す際に二つの追加オプションが出る。Quartz フィルターと、暗号化だ。Quartz フィルターは、書き出す PDF にさまざまなやり方で変更を加える。フィルターには書類の見栄えを調整するものと、内部的なフォーマットを微調整するものとがある。

前者に該当する Quartz フィルターには、Black & White、Blue Tone、Gray Tone、Lightness Decrease、Lightness Increase、Sepia Tone がある。色調 (tone) を調整するものたちは名前通りのことをし、画像を白黒にしたり、すべての色にブルー、グレイ、あるいはセピアの色合いを足したりする。

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二つの明度 (lightness) フィルターもすべての色に適用されるので、施したその効果は、写真においては比較的微妙な違いだが、色のついたテキストでははっきり違って見える。

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書類フォーマットに微調整を加えるものとしては、Apple は Create Generic PDFX-3 Document と Reduce File Size という二つの Quartz フィルターを提供する。PDFX-3 というのは PDF のサブセットで、印刷に関係する要件を加えることでカラー処理のワークフローを容易にするためのものだ。でも正直言って、カラーを管理するワークフローを必要とするのなら、Adobe Acrobat Pro を使うべきだ。(というか、既にそちらを使っているだろう。)

Reduce File Size というのは魅力的な名前だが、その書類の中に写真以外の画像がある場合には、注意が必要だ。Reduce File Size フィルターを使うと、Preview はその書類の中にあるすべての画像の画質を落とす非可逆な圧縮を施すので、写真でない画像ははっきり分かるほどにぼやけてしまう。写真でも画質は落ちるけれども、見て分かるほどの違いは少ない。幸いにも、Preview の初期の時代に比べれば Reduce File Size フィルターは大幅に改善されている。初期には、PDF の目次部分のメタデータまで削除されていたのだから。

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PDF への書き出し: 暗号化 -- Preview の Encrypt チェックボックスの方が、たぶん便利に使えるだろう。機密の情報を含んだ PDF を他の人と共有する場合には、書類を暗号化することで、広く一般に読まれてしまう危険性を減らすことができる。暗号化すれば、内容の表示にパスワードが必要となる。

PDF 用語では、Preview の Encrypt チェックボックスで生成されるパスワードは "document open" または "user" パスワードと呼ばれる。これは、書類の編集や印刷を制限するための "permissions" または "owner" パスワードの対語だ。すぐ後で permissions パスワードの設定方法を説明するが、Export ダイアログでこれを設定することはできない。

Preview では、たった一つの例外を除いて、permissions パスワードを入力して既存の制限を覆す方法はない。変更を阻む permissions パスワードで暗号化された PDF を開いて、Preview の File > Export または Export as PDF コマンドを使おうとすると、permissions パスワードの入力を求められる。けれども残念ながら、これは虚偽のセキュリティだ。なぜなら、permissions パスワードで保護された PDF に変更を加えれば、Preview がファイルのコピーを作るので、それを保存できるようになる。その上、Export はパスワードを求めるかもしれないが、File > Save As は求めない。おやおや。

さて、PDF を document open パスワードで暗号化するには、File > Export を選び、Encrypt チェックボックスを選択し、パスワードを入力し、それからもう一度パスワードを入力して確認する。それ以後は、その暗号化された PDF をあなた自身も含めて誰がどんな PDF 対応アプリで開こうとしてもパスワードの入力を求められる。

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私たちが知る限り、document open パスワードが比較的強力なものであれば、力ずくでそれを破ることはできない。(もちろん、弱いパスワードを使っていると、辞書攻撃だけで破られてしまうかもしれない。)PDF からパスワードを除去すると称しているユーティリティあるいはインターネットサービスを見かけたことがあるかもしれない。例えば PDFUnlock などだ。それらが言っているのは permissions パスワードについての話であって、document open パスワードの話ではないので、Preview 自体を使って効率的にできる以上のことができる訳ではない。

では、暗号化された PDF から document open パスワードを除去したければどうするのか? パスワードを知っていれば、単純なことだ。その PDF を開いて、パスワードを入力し、それから Export コマンドを使って、Encrypt チェックボックスを選択せずに保存し直せばよいだけだ。特に、一時的に機密の内容であったけれどももはや機密にしておく必要のなくなった書類などで、このテクニックは便利に使えるだろう。

PDF へのプリント: さらなる暗号化 -- さきほども述べたように、どんな書類もどんなアプリからでも PDF に「プリント」できる。これは OS X のシステムワイドの機能であり、Quartz が PDF を基盤としているお陰だ。書類をプリンタに送ったりウェブページを PDF として保存したりする前にあらかじめプリント結果の見栄えをテストできるのは非常にありがたい。

でも、PDF 書き出し機能を内蔵しているというのに、なぜ Preview から PDF にプリントする必要があるのか? その理由の一つは、Preview の書き出し機能を使った場合に比べてより多くのメタデータやセキュリティオプションを提供しているからだが、もう一つの理由はよくある Preview の問題点を解決してくれるからだ。

この連続記事を書き始めて以来、何人かの読者が同じ問題についてコメントを寄せてくれた。Preview で書類にマークアップして、それを保存し、共同作業をしている人に送ると、その人たちの目にはあなたが書き込んでおいた注釈が見えないのだ。いったいなぜこんなことが起こるのか、私たちには分からない。PDF は標準のはずなのだが、だからといってすべてのアプリがそれを正しく実装しているとは限らない。けれども、PDF にプリントする方法を使うことで、どうやらたいていの場合注釈が正しく見えるようになるようなのだ。

こちらの方法で PDF を書き出すには、File > Print を選ぶ。するとダイアログが開くので、左下にある PDF ポップアップメニューをクリックして、Save as PDF を選べばよい。(そのメニューのずっと下の方に、さまざまのアプリがあなたのためにインストールしたプリントのワークフローが並んでいるかもしれない。これを使えば、例えば書類を PDF にプリントしてそれを Messages に送るといったようなことが一挙にできる。)

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次に開く Save ダイアログに、さらなるいくつかのオプションがある。ファイル名を入力できる以外に、title、author、subject、keyword のメタデータも入力できる。これらは標準的 PDF メタデータで、Preview の Inspector ウィンドウ (Tools > Show Inspector を選ぶか、Command-I を押す) にも、他の PDF アプリにも、さらには Finder の Get Info ダイアログにも表示される。

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でもそれだけではない! Security Options をクリックすれば、その PDF に対する document open パスワードと permissions パスワードを両方とも設定でき、しかも permissions パスワードによる制限が編集、印刷、またはその両方のどれに適用されるかも選べる。

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バックミラーに映る Preview -- この記事を、Preview についての連続記事の最終回としよう。皆さんが楽しく読んでこられたことを願いたいし、Preview に関するさらなる質問や、教えたいヒントをお持ちならば、お知らせ願いたい。Preview の奥底に、まだまださらなる機能が隠れているかもしれないのだから。

最後に一言。まだ具体的な予定は決めていないけれども、この連続記事に寄せられた反応があまりにも好意的なものだったので、"Take Control of Preview" ブックの計画を始めようと思っている。

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Google I/O 2016、Apple にとっても魅力ある発表がある

  文: Julio Ojeda-Zapata: [email protected]
  訳: 清水 史彦 <qff01604@nifty.com>、Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

先週、Google は、Google I/O カンファレンスを開催した。これは、Appleの Worldwide Developers Conference (WWDC) におおむね相当するものだ。WWDC は来月始まる。("WWDC 2016 の日付、発表される" 2016 年 4 月 19 日参照)

Google がカンファレンス中に発表した 2 時間の基調講演の多く、例えば、Android OS のアップデートのようなものは、その多くが Apple のユーザーとは、ほとんど無関係だ。だが、発表の中には、Apple の世界と交差するものがいくつかある。

Google は、Google Asdistant というサービスを発表した。これは、GoogleNow の名前を変えてアップデートしたもので、Apple の Siri や、Amazon の個人向けバーチャルアシスタントである Alexa に対して、Google が出した答えだ。

Google は、Google Home についても発表を行った。これは、物理的な装置であって、Google Assistant を音声で制御する機能を含む。そしてこれは、Alexa という音声ベースのアシスタントが付属する Amazon の人気デバイスEcho に対して Google が出さなければならなかった回答だ。

Google Assistant も、将来は Allo に統合されるだろう。これは、iOS または Android 向けの新しいメッセージ用アプリで、Apple のメッセージに相当する。だが、Allo は、革新的なコミュニケーション、セキュリティ、検索能力を付与するものだ。Allo とならんで、Google は、別の iOS およびAndroid 向けアプリ、Duo と呼ばれるビデオメッセージ用アプリを発表した。Google は、両者を今年の夏に出荷すると約束している。

最後に、Google は、Android Wear スマートウォッチ用 OS の機能強化を発表した。この OS は、以前から iPhone との限定的な互換性を提供している。

OK, Google" - Amazon、Apple、そして Microsoft は、スマートアシスタント機能競争の渦中にある。これは、ユーザーの命令を、カジュアルで対話的なプロンプト (デバイスに入力を促すもの) で実行する実体を開発するものだ。Siri と格闘した Apple ユーザーの誰もが認めるように、結果は気まぐれだ。

Google Now は、Siri と比べて非常に良いとか悪いとか分っているわけではないが、Google は、この技術分野の進歩に対して、ユニークな位置付けにある。これは、自然言語処理と、質問に答える際に持っておく必要のあるデータを提供することができる巨大なデータ貯蔵庫に対する、同社の長い取り組みの歴史のためだ。

Google の最新の試みである Google Assistant は、部分的にはチャットボット (自然言語で会話の相手ができるプログラム) だ。会話ができるこうしたサイバー空間内の存在は、最近、大流行りだ。FacebookMicrosoft は、一見したところ、知覚能力を持つような人工的な実体を宣伝しているし、グループ・メッセージング・ツールである Slack では、多くのボットが住処を得ている。

現実世界が、これらのチャットボット対して抱く印象はいろいろだ。チャットボットの Google Assistant バージョンが、私たちがこれまで見てきたものより良くなるかどうかは明らかではない。

Google は、「Google と対話形式で、双方向に継続的な会話を行い、Googleが文脈を理解しながら、顧客のコントロールのもと、現実世界で何かを成しとげる」ために、Google の顧客は、Google Assistant を利用することができると述べている。また、「Google Assistant は、個々のユーザーにとって、自分の個人用 Google を構築するようなものだと考えている」と述べた。

こうしたことは、主として音声によるやり取りで行われるようになるだろうと Google は考えている。音声によるやり取りは、現状では、Google 検索要求の約 20% を占めている。(典型的には、iPhone を含むモバイルデバイス経由で)

Google Assistant のデモで、Google は、スマートフォンユーザーが、どのようにして、今夜どんな映画をやっているか尋ねることができるか、そして、子連れでも大丈夫かどうか、確認できるかを実演した。こうすると、GoogleAssistant は、家族向きの上映に検索結果を絞り込み、チケットを買うよう提示するだろう。(これは、まだ特定されてはいないが、例えば、Fandangoのようなオンラインベンダーとの統合によって行われる) ユーザーは、映画が、「ちょっとでも面白いかどうか」尋ねることもできる。こう質問すると、Google Assistant は、映画の批評と予告編について、打ち明けてくれるだろう。

同様に、ユーザーは、「今夜はカレーを食べよう」と言うこともできる。こう言うと、Google Assistant は、近所の飲食店をいくつか提案し、カレーを店で受け取るか、または、配達してもらうかするために、注文を出すよう提示するだろう。

Alexa よ、Google Home を紹介しよう - Amazon の Echo、これは、同社の Alexa 音声アシスタントを統合した円筒状の Bluetooth スピーカーであるが、これは、2014 年の終わり頃に、どこからともなく現れ、コンピュータ技術に詳しい人たちを魅了した。

Echo は幅広い魅力を持っている。これは、一つには、Echo がプラットフォームにほとんど無関係だからだ。iPhone ユーザーも Android ユーザーも、同じようにこれを利用することができ、ニュースをリクエストしたり、明かりをつけたり、買い物リストをアップデートしたり、アラームや to-do アイテムを設定したりするこができる。

以来、Amazon は、Echo の商品ラインアップを拡大し、より小型で安価なAmazon TapEcho Dot を加えてきた。後者は、不思議なことに、Alexa からしか注文できない。Alexa は、第二世代の Fire TV にも登場する。

Echo の人気を考えると、Amazon の競合相手は、同等の機能を持つデバイスを提供することを大いに期待されてきたと言える。そして、Google は、今や、まさにそれを Google Home で実行しつつある。Google Home は、本年後半に発売予定だ。

Google Home は、暗く冷たい感じの Echo よりも、魅力的に見えるように設計されている。このデバイスは、いくぶん花瓶のような形をしており、上が白く、底は、色と仕上げ (例えば、織物や、金属のような) を、どんな家の装飾にも合うように、いろいろカスタマイズすることができる。スロープを描いた側面には、デバイスとユーザーがやり取りしている間、ダンスを踊る色のついた小さな球体が組み込まれている。Google は、そうした小さな球体の「振付」に、多くの思考を注いだと言っている。

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Echo と同様に、家で、家族の誰もが Google Home に検索を命じることができ、自然な感じに聞こえる返事を受け取ることができる。

デモ用ビデオ では、家族の人たちが、この小さな仕掛けを大いに利用している様子を見せた。たとえば、スケジュール変更、旅程や小荷物配達のチェック、家庭用オーディオや照明のコントロールなどだ。Google Home は、学校の宿題の問題を手伝ったり、スペイン語で「リンゴ」を何と言うか尋ねると、ひどいアクセントで、"manzana" という答えを示すことさえする。

Amazon の Echo は、音楽を再生するように設計されているが、ユーザーは、いくぶん小さくて弱々しいスピーカーに不平を言っている。Google は、Google Home のスピーカーには、「豊かな低音と澄んだ高音」があると主張している。これは、スマートフォンユーザーが、スマートフォンの音楽を、デバイスに「投げる」時に重要な機能だ。デモでは、iPhone は、このシーンで現れて、すぐに消える。

Echo は概してスタンドアロンの装置だ。だが、Google は、家の中にある多くの Goole Home が協調して動作するようにすることで、Google Home がEcho よりも上位の選択肢だとしている。網目型ネットワークに参加するSonos ブランドのオーディオ装置のようなものだ。家にあるスピーカーやテレビに、Google Chromecast や Chromecast Audio の無線ドングルがついていれば、Google Home は、それらをコントロールするのに使うこともできる。

Google は、Google Home は、まだ「初期段階」だと言っている。つまり、この製品については、多くのものが、まだ公表されていないということだが、Google は、すでに、さらに遠くを見通している。その時が来たら、Google Home で Uber の乗車を予約したり、夕食を注文したり、お母さんに花を送ったり、そしてもっと多くのことが、全て音声による命令でできるようになるのだ。

"Allo? It's Me." -- Google Assistant は今年の後半に Google Home に登場することになっているが、それよりも前に今年の夏、iOS および Android 用の新しい Allo メッセージングアプリとしてデビューを果たす。

Google は以前からメッセージングに手を出しつつあって、Voice、Hangouts、Android Messenger など数多くのアプリでそれぞれ違った顧客層を狙ってきた。これらのアプリで、Google は Apple の Messages、Facebook の WhatsApp および Messenger の各アプリ、その他数限りない他のアプリと対抗している。

Allo は、完全にオリジナルとは言えないものの、Google がメッセージングに取り組む方法を根本的に考え直している。例えば、Google アカウントは一切不要で、ユーザーは電話番号を提供するだけでよい。

Google によれば、アイコンとスタンプの魅力的なライブラリが新たに作られ、アイコンやスタンプは "Whisper Shout" (ささやく/叫ぶ) と呼ばれる機能のスライダーを使って大きくしたり小さくしたりできるという。その設定に応じて文字のサイズも大きくなったり小さくなったりし、ユーザーは写真に落書きしたりもできる。

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同社の Inbox 電子メールアプリに倣って、Google はスマート返信機能も提供する。その時スクリーン上にある内容に応じてカスタマイズされた出来合いの返信文も使える。例えば、夕食に誘われれば自動的に "I'm in" (話に乗った) と返信するようにもできる。

素敵な一ひねりだと思うが、これらの返信は写真にも適用できる。Google の画像認識技術はますます熟練の域に達しつつあり、既に Google Photos サービスでたくさん使われているが、これからは、この技術をメッセージングにも応用しようというのだ。犬の写真が届けば "cool poodle!" と返信できるし、パスタの一皿の写真が届けば "that's a nice plate of lasagna" と返信できるわけだ。

Google によれば、Allo はユーザーの習慣、行動パターン、嗜好などを時間をかけて学習するように作られているので、その自動化機能の妥当性や有用性は時とともに増すという。この学習は Google Assistant にも及び、音声による質問も Google Home デバイスでするのと全く同じになされ、文字にタイプした質問も同様に扱われる。

Google は Allo ベースの Google Assistant とのやり取りを「あなたの世界で何かを成しとげるため、あなたと Google の間で継続的に進む会話」と形容している。

例えば、何人かの友人たちがどこで夕食を食べようかとチャットしていたとしよう。彼らはまさにそのメッセージのスレッド内で Google Assistant を使ってレストランを検討したり、また(発表された OpenTable 統合機能を利用して)レストランの予約をしたりもできる。

あるいは、誰かが Allo を使って "did my team win?" (私のチームは勝ったのか?) と質問すれば、アシスタントはそのユーザーの過去の行動パターンと利用可能な前後関係から判断して、それがどのチームかを識別できる。

さらに、Google Assistant をある種の友人として扱うことさえできる。その @google ハンドルを使って直接呼びかけて、可愛い猫の写真を見せてもらったり、シンプルなゲームをプレイしようと誘ってもらったりできる。その種のシンプルなゲームの実例を Google は示してみせた。アシスタントがある映画の名前を絵文字の羅列で示し、人間はそれがどの映画なのかを推測するというものだ。Siri は、少なくとも一人の自閉症の少年の大親友となることができた。ならば、Google Assistant も若い世代に人気を博するかもしれない。

Allo の実演の中で、Google はセキュリティについても強調した。このアプリのメッセージはデフォルトで暗号化される。「匿名 (incognito) モード」というのがあって (Google の Chrome ブラウザの匿名モードと同様) 終端間の暗号化をフルに使うことでさらにセキュリティを増す。また "discrete" なインターフェイスとアラートもあって、Google の説明によれば「肩越しに盗み見る者や詮索好きな目」にとって覗き見るのが困難になるようにしている。

人気ある Snapchat アプリの戦略ノートから一ページを切り取ったかのように、Allo は有効期限機能も誇らしげに掲げる。メッセージのスレッドに有効期限を設定でき、いったん消去したメッセージは復元不可能にできるオプションだ。

Knock, Knock -- Allo によってメッセージングを再発明しようとするのと全く同じに、Google は iOS および Android 用のメッセージングアプリ Duo によってビデオメッセージングを改革しようと試みる。

Duo には Allo ほど新機能が詰め込まれていない。少なくとも Google I/O の会場のデモを見た限りではそう言える。革新の多くはその内部で起こっている。

Duo は WebRTC と呼ばれる比較的新しいマルチメディア・テクノロジーに依存して働く。これは Google が開発したもので、インターネット上でますます多くのビデオやオーディオを動かす力となりつつある。Google によれば、Duo は多様な条件下で信頼性をもって動作するようにデザインされており、低速の接続その他悪条件の下でも優美さを保って速度を落とすことができるという。

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ユーザーの目に見えるものとして、Duo は "Knock, Knock" と呼ばれる機能を導入した。これは、電話をかけた人のビデオがプレビューとして表示されるというものだ。電話を受ける側の人にとっては、Knock, Knock は通話をふるい分ける機能として役に立つかもしれない。言ってみれば、目で見る caller ID (発信者番号) のようなものだ。また、電話をかける方がありとあらゆるどんちゃん騒ぎを見せて電話を受けてもらえるようにするための手段ともなる。

Google エンジニアの一人が壇上でこの機能のデモのために、彼の二人の可愛らしい娘たちにライブで通話してみせた

Allo と同様、Duo もユーザーの電話番号に関連付けられて動作し、Google アカウントを必要としない。

Android Wear 2.0 -- Google のスマートウォッチ用オペレーションシステム Android Wear は、Google によるさまざまのウォッチに Apple のスマートフォンをペアリングさせるための iOS 用アプリを Google がリリースして以来、iPhone のオーナーにも意味あるものとなった。(2015 年 10 月 26 日の記事“Android Wear 時計が iPhone でも働く”参照。)

Google Wear が Apple の watchOS の座を奪うことは当面なさそうだ。でも、Google I/O デモの最中に Google スタッフの一人が口にしたように「ポケットの中にどんなスマートフォンを入れていようと、手首にはいつでも好きなものを着けていられるべきだ。」Android Wear は、iPhone ユーザーの中でも特に Google のアプリやサービスに頼ることの多い人たちには魅力的だろう。

この秋に出る予定のバージョン 2.0 の Android Wear は、数多くの新機能を導入する。どのような時計盤面であっても、どのアプリからのデータでも表示できるようになる。その点、Apple の watchOS はサードパーティのコンプリケーションに対応しているものの、すべての時計盤面で使えるわけではない。

Android Wear 2.0 は手書き文字認識に対応し、スムーズとは行かないかもしれないが、ユーザーが短いメッセージを走り書きできるようになる。自動化された返信も、Allo (あるいは Apple Watch) と似た形で使えるようになる。さらに、今やスマートフォンのキーボードでは当たり前となった文字から文字へのスワイプにも対応したキーボードさえ搭載されるというが、ウォッチのちっぽけなスクリーンではなかなか使いにくいのではなかろうか。

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フィットネスの分野では、Google はさまざまの健康管理アプリが手軽に情報を互いにやり取りできるようにし、ウォッチがより透明性をもってフィットネス情報をログ保存できるようにする。さらに、Android 2.0 ウォッチはハンドセットへの依存を減らし、独立動作のアプリや、直接にオンラインにアクセスするアプリも登場する。例えば、セルラー、Wi-Fi、Bluetooth のいずれでも Spotify を聴くことができるようになる。

I/O の結末は -- Apple ユーザーに関する限り、Google には良いところも悪いところもあるだろう。

多くの場合、人目を引く新しいアプリや機能はまず Android 用に登場し、後になって iPhone や iPad にも広がって行く。この傾向への歓迎すべき例外が、Google の iOS 用キーボード Gboard であった。(2016 年 5 月 13 日の記事“Google、素晴らしい iPhone 用キーボード Gboard を発表”参照。)

それと同時に、Google は時として既存の iOS 用アプリのアップデートが犯罪的と思えるほどに遅いことがある。いったいなぜ iPad 用の Google Docs が未だに分割スクリーンに対応していないのかは長年の謎だ。

けれども Google は、少なくとも Microsoft の Windows Phone OS に見せた態度のようには、iOS を打ち捨てたり無視したりする素振りを一切見せていない。Windows Phone OS が今や消滅寸前のプラットフォームと成り果てているのは、Google に見捨てられたことが間違いなく要因であったのだから。

もしも Google の I/O での最新の発表が何かを暗示するとすれば、同社は引き続き iOS を最優先すべきものと見ている。この姿勢は一つには自らのためでもある。例えば Google は、Google Home と二つのメッセージングアプリが広く使われることを望んでいるからだ。その目標が達成されるかそうでないかは分からないとしても、Apple ユーザーの立場から見れば、数多くの Google サービスに頼っていても、Android デバイスに移行する必要はなく依然として iOS デバイスを使い続けても安心だという意味合いがあるだろう。

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TidBITS 監視リスト: 注目のアップデート、2016 年 5 月 23 日

  文: TidBITS Staff: [email protected]
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Skype 7.28 -- Microsoft が Skype 7.28 をリリースして、Skype の Dock アイコンから通話やテキスト会話を開始できる機能を加えた。これらの新コマンドにアクセスするには、Skype を Control-クリック、右クリック、または二本指タップしてから、Call Phone Number を選んで Dial Pad を開くか、あるいは Start a New Conversation を選んで連絡先の人たちを新規のチャットスレッドに招待するかすればよい。また、Skype のリリースノートにはバージョン 7.28 からメディアバーのピンアイコン(紙クリップアイコンをクリックすれば見えるようになり、音声・ビデオメッセージの送信、写真・連絡先の共有、顔文字の挿入のためのアイコンもある)で自分の位置情報を共有できると書かれているけれども、TidBITS スタッフとの間でテストしてみると、位置情報のピンアイコンが見えるようにならなかった人もいた。

また、私たちのところに電子メールで届いた Skype の発表によれば、ビデオメッセージングの動作方法が変わったので今後ビデオメッセージを送信するには今回のアップデートが必要となるという。なので、あなたと Skype 経由のコミュニケーションをする人たち全員にアップデートを促しておくのがよい。それに加えて、ビデオメッセージ (限られた時間のみ Skype が保存している) を選択すると一番下に出る新しいダウンロードアイコンを使って自分のハードドライブに保存することもできる。(無料、43.7 MB、リリースノート、10.9+)

コメントリンク: 16520

OmniOutliner 4.5.3 -- The Omni Group が OmniOutliner 4.5.3 をリリースして、安定性の改善を二件施した。このアウトライン作成および情報整理アプリは、選択した画像を強くクリックすると起こったクラッシュを修正するとともに、Markup などの拡張を使用している状態で添付ファイルに施した編集を保存することに関係したクラッシュも修正している。今回のアップデートではまた、新規で未保存のテンプレートを閉じてからダイアログで Save を選んだ際にテンプレートが正しく保存されるようにしている。(標準版の新規購入 (Mac App Store) $49.99、Pro 版の新規購入 (Mac App Store) $99.99、無料アップデート、24.2 MB、リリースノート、10.10+)

OmniOutliner 4.5.3 へのコメントリンク

Parallels Desktop 11.2 -- Parallels が Parallels Desktop のバージョン 11.2 (build 32581) をリリースした。Pro Edition に Developer Settings 枠を新設して、ユーザーが仮想マシンの Parallels Tools 自動アップデートを管理できるようにするとともに、Linux 仮想マシンの走る Mac から SSH 公開鍵を同期して、パスワードを入力せず SSH 接続ができるようにした。また、この仮想化ソフトウェアのすべての版 (standard, Pro, Business) で、新たにプリンタを追加した際のクラッシュを修正し、Ubuntu 16.04 対応を追加し、仮想ハードディスクのサイズを増やす際のファイルシステムのリサイズに関するバグを修正し、USB デバイスを Mac から仮想マシンへ割り当て直す際に起こったエラーメッセージを解消している。(標準版の新規購入 $79.99、Pro/Business Edition は年額 $99.99 購読、294 MB、リリースノート、10.9.5+)

Parallels Desktop 11.2 へのコメントリンク:

PDFpen と PDFpenPro 8.0.1 -- Smile が PDFpenPDFpenPro, のバージョン 8.0.1 をリリースした。最近のアップグレードの後初めてのメンテナンスリリースだ。(2016 年 4 月 28 日の記事“PDFpen 8、添付ファイル、デジタル署名その他を追加”参照。)これらの PDF 編集アプリは、Shift-Space でページを上へスクロールできるようになり、Adobe 製品との署名フィールドの互換性を改善し、選択ウィジェットの表示で起こったクラッシュを修正し、また無料アップデートのチェックのため古いライセンスコードを見つける方法を改良している。

PDFpen と PDFpenPro のシングルユーザーライセンスのアップグレードはそれぞれ $30 (ただし 2016 年 1 月 1 日以降に PDFpen 7 または PDFpenPro 7 を購入した場合は無料アップグレード) だ。PDFpenPDFpenPro のいずれも Mac App Store から入手できるが、いずれの版のバージョン 8 も Smile から入手でき、Smile からならばアップグレード価格も適用される。単に最新バージョンのアプリを Smile ウェブサイトからダウンロードして、起動するだけでよい。登録プロセスが Mac App Store 版も自動的に認識して適切なアップグレード価格を適用する。(新規購入 $74.95/$124.95、TidBITS 会員には 20 パーセント割引、アップグレード $30、バージョン 8.0 からは無料アップデート、70.3/70.9 MB、リリースノート、10.10+)

PDFpen と PDFpenPro 8.0.1 へのコメントリンク:

セキュリティアップデート 2016-003 (Mavericks および Yosemite) -- 先週のリリースで OS X 10.11.5 El Capitan には多数のセキュリティパッチが施されたが (2016 年 5 月 16 日の記事“Apple、OS X 10.11.5, iOS 9.3.2, tvOS 9.2.1, watchOS 2.2.1をリリース”参照)、Apple はそのうちいくつかのパッチを選んで、10.9 Mavericks および 10.10 Yosemite 用のセキュリティアップデート 2016-003 に含めた。このアップデートでは、カーネルメモリ内容の暴露に繋がる可能性のある脆弱性をパッチし、カスタム URL スキームが攻撃者に任意のコードの実行を許す可能性のあった問題に対処し、アプリケーションを終了させたりコードの実行を許したりする可能性のあった複数のメモリ破壊の問題を解消している。(無料、10.9.5 Mavericks 用は 370.9 MB、10.10.5 Yosemite 用は 454.8 MB)

セキュリティアップデート 2016-003 (Mavericks および Yosemite) へのコメントリンク: 16508

Safari 9.1.1 -- Apple が Safari 9.1.1 を OS X 10.9.5 Mavericks、10.10.5 Yosemite、10.11 から 10.11.4 までの El Capitan 用にリリースした。10.11.5 El Capitan には、既にバンドルされて含まれている。(2016 年 5 月 16 日の記事“Apple、OS X 10.11.5, iOS 9.3.2, tvOS 9.2.1, watchOS 2.2.1をリリース”参照。) 今回のアップデートでは、ブラウザ履歴を完全に削除できないことがあったバグを修正し、悪意あるウェブサイトを訪れた際にデータの開示を引き起こすことがあった SVG 画像処理における脆弱性をパッチし、WebKit に関係した複数のメモリ破壊の問題を修正している。Safari 9.1.1 は Software Update 経由でのみ入手できる。(無料、リリースノート、10.9+)

Safari 9.1.1 へのコメントリンク: 16507


ExtraBITS、2016 年 5 月 23 日

  文: TidBITS Staff: [email protected]
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

今週の ExtraBITS には、重要なニュースがある。Apple は 9.7 インチ iPad Pro で iOS 9.3.2 が問題を起こすことを認め、その後このデバイス用のアップデートを取り下げた。他のニュースでは、Apple が Apple Store の未来への展望を示し、2012 年に侵入を受けた LinkedIn の 1 億件以上のパスワードが漏洩し、Apple が有名な投資会社から大きな支援を受け、Apple Pay の競争相手の一つが消えるかもしれない。

Apple、iPad 上での iOS 9.3.2 の "Error 56" 問題を調査中 -- iMore の記事で、Rene Ritchie が Apple の声明を伝えている。同社は「一部の iPad ユニットでソフトウェアアップデートの際にエラーが表示されるという少数の報告を調査中」だという。Apple のサポート書類によれば Error 56 はハードウェアの問題とのことだが、Apple はまず iTunes でデバイスの復元を試み、それがうまく行かなければ Apple サポートに連絡するよう求めている。

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Apple、9.7 インチ iPad Pro 用の iOS 9.3.2 を取り下げ -- MacRumors の記事によれば、Apple は現在 9.7 インチ iPad Pro 用の iOS 9.3.2 を取り下げており、修正のため作業中だと iMore の Rene Ritchie に伝えたとのことだ。言いにくいことだが、私たちがいつも Apple の OS アップデートをインストールする前に一週間ほど待つことを勧めているのは、まさにこういうことが理由だ。9.7 インチ iPad Pro をお持ちの方は、しばらく待つのが得策だ。もうじき修正された iOS 9.3.2 が出ることだろう。待っても別に失うものはない。今回は、ほんの少数のバグ修正とセキュリティ改善のみだからだ。

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Apple の Union Square 店、Apple Store の未来を垣間見せる -- Apple の Retail and Online Stores 担当上席副社長 Angela Ahrendts と Chief Design Officer の Jonathan Ive が、San Francisco の Union Square に開店した新しい Apple の旗艦店舗のお披露目をした。Apple Union Square 店の呼び物は、拡張する外側の窓、店内の緑樹、屋外の公共広場で使える無料 Wi-Fi、壁に映し出される 6K ビデオ、ビジネストレーニング用のプライベートルームなどだ。Apple は Apple Store をコミュニティーの拠点として活かすことを望んでおり、App Store エディターたちによるゲームナイト、地域のアーティストとのクリエイティブセッション、ライブの音楽活動なども予定している。Apple によれば、これらのことの多くは各地の Apple Store にももたらされるという。iMore の記事に、写真やビデオもある。

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1 億 1700 万の LinkedIn パスワードが漏洩 -- 以前、2012 年に LinkedIn が侵入を受けたが、その余波がまだ影響を与えている。最近になって、あの侵入の結果の 1 億 1700 万件の電子メールアドレスとパスワードがオンラインにリリースされた。LinkedIn は関係するすべてのユーザーに連絡しようとしているところだが、たとえあなたが今回連絡を受けなかったとしても、あなたのパスワードを再チェックして、他のサイトで使ったことのあるパスワードや、強力でないパスワードは、これを機会に変更することをお勧めしたい。傷ついたレコードのように(これはまた時代遅れの例えだが!)同じことばかり何度も言っているのは承知しているが、オンラインのアカウントには一つ一つ異なる、強力なパスワードを使うことが非常に重要だというのは、何度強調しても強調し過ぎということはない。

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Warren Buffett、Apple に十億ドルを投資 -- Apple が 13 年ぶりに四半期売上げの前年比減少を記録して以来、Wall Street では同社の株に興味を失った人たちもいるが、一人の大物投資家が Apple に大きく賭けている。Warren Buffett の Berkshire Hathaway 社が、2016 年になってから Apple に十億ドル以上を投資したのだ。Berkshire Hathaway は保守的姿勢の投資をすることで有名であり、テクノロジー分野に乗り出すことは稀なので、ここが支援にまわったことはこの不透明な時代に Apple への信任投票がなされたという意味合いを持つ。Berkshire Hathaway が出資したニュースを受け、Apple の株価は即座に 3.7 パーセント上昇した。

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CurrentC、電池切れ -- The Verge の記事によれば、Apple Pay の競争相手である CurrentC の背後にいる小売協会 MCX が、30 人の従業員を解雇しようとしているという。この解雇は、結局広く浸透しなかった CurrentC が停止状態に陥っていることを示唆するものかもしれない。MCX と提携関係を持つ業者たちは 2014 年 10 月に結束して Apple Pay を阻止しようとしたが、Best Buy など一部の業者はその後 Apple Pay 対応を追加し、また Walmart など独自の支払用アプリを導入した者もいた。結末は、完全に予想できていた。CurrentC は顧客のアカウントチェックを脆弱な QR コードに結び付けていたので、不便であると同時に安全性の問題もあるという二重苦を背負っていたからだ。

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日本語版最終更新: 2016年 5月 20日 金曜日 , S. HOSOKAWA