TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#1344/31-Oct-2016

今週号ではまず iOS 10.1.1 のお知らせがある。今回は Health データの表示に関する問題を修正したアップデートだ。新型の iPhone や Apple Watch が登場した会計四半期であったにもかかわらず、Apple の収益は下降を続けている。Josh Centers と Michael Cohen が協力してそれが何を意味するかを説明する。先週、Apple は二つの大きな新製品を発表した。Touch Bar を搭載した新型 MacBook Pro ラップトップと、tvOS と iOS の両方で複数のアプリからビデオコンテンツを統合することを狙った TV という新しいアプリだ。また、Apple の新しいノートブック機を購入しようかと考えている人のために、Joe Kissell が既存のデータを新しい Mac へ移行させる方法を徹底的に解説する。今週注目すべきソフトウェアリリースは VMware Fusion 8.5.1、DEVONthink/DEVONnote 2.9.6、Final Cut Pro X 10.3、Compressor 4.3、Motion 5.3、Airfoil 5.5、GarageBand 10.1.3、iMovie 10.1.3, Mac 用の Pages 6.0.5, Numbers 4.0.5 と Keynote 7.0.5、iTunes 12.5.2、MoneyWiz 2.5、Safari 10.0.1、セキュリティアップデート 2016-006 (Yosemite) および 2016-002 (El Capitan)、Art Text 3.1、Keyboard Maestro 7.3.1、Slack for Mac 2.3、それに Moneydance 2017 だ。

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iOS 10.1.1、Health データ表示問題を修正

  文: Josh Centers: [email protected], @jcenters
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

Apple は iOS 10.1.1 をリリースした。これは同社にとって3週間で3回目の iOS に対するアップデートである。このアップデートで唯一特定されている修正は、ユーザーによっては Health データが見られないという問題に対するものである。

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iOS 10.1.1 では、新しいセキュリティ修正は提供されていない。

このアップデートは、機器によって 50 MB から 65 MB のサイズとなるが、Settings > General > Software Update 又は iTunes 経由でインストール出来る。

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$9 Billion の利益を計上したが、Apple の売上げは Q4 2016 で再び減少

  文: Josh Centers: [email protected], @jcenters, Michael E. Cohen: [email protected], @lymond
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

Apple は、純利益 $9 billion (希薄化後一株当り $1.67)、売上げ $46.9 billion を Q4 2016 会計四半期の業績として報告した - この期は 24 September 2016 に終了した。これはとてつもない金額だが、同社の売上げは前年同期に較べて 9.8% 下落した ("Apple、Q4 2015 で新記録の一年を終了" 27 October 2015 参照)。粗利率もまた少々下落し、前年の 39.9% から 38% となった。Apple は一般株一株当り $0.57 の配当金も発表し、支払日は 10 November 2016 となる。

新しい iPhone 7 と 7 Plus モデルが Q4 2016 に登場したにも拘らず iPhone 販売台数は前年比で 5% 減、売上では前年同期に較べて 13% 減となった。新たにリリースされた iPhone 7 モデルは、この四半期の最後の2週間の間の予約注文だけが算入されたので、影響は小さかった。興味深いことに、Apple は、韓国の競争相手 Samsung が最近経験した爆発する Galaxy Note 7 の問題のせいでの売上げ増は見込んでいない。CFO Luca Maestri は Apple は既に作れるだけの iPhone を売り尽くしていることを認めた。

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多少明るい話としては、Apple は iPad の売上げ減に歯止めをかけ Q4 2015 の売上げと同じとした。しかし一方で iPad の販売台数は 6% の減となっている。Apple がより利益率の高い iPad Pro ラインへ焦点を当てていることがその説明として挙げられ、それが功を奏しているように見える。Apple はまた、自らのタブレットを使ってのビジネス市場をより効率的に狙っており、iPad 関連の企業ソリューションに世界中で 120 社と連携していると語った。

Mac の製品群では新製品を欠いて、前年対比で販売台数は 14%、そして売上は 17% の減となっている。いずれにせよ、全世界での Mac 設置数は歴代最高を記録している。27 October 2016 に発表された新しい MacBook Pro モデルが、来るべきホリデー四半期に販売を再活性化出来るかどうかはまだ分からない ("新 MacBook Pro、状況に応じて変わる Touch Bar を搭載" 27 October 2016 参照)。

Other Products の部門は散々で、売上げは前年比で 22% の減となった。この部門には幾つかの新製品も含まれる:Apple Watch Series 2, Apple Watch Series 1, そして W1 搭載の Beats Solo3 ワイヤレスヘッドフォン等である ("Apple Watch Series 2、GPS、防水、更なるパワーを提供" 7 September 2016 そして "W1 チップ搭載 AirPods、ワイヤレスオーディオの新時代を開く" 7 September 2016 参照)。しかしながら、これらの新製品はこの四半期の後半に登場したものであり、また AirPods は未だ市場に現れていない。

ひょっとすると、医療保険会社 Aetna が何万台という Apple Watch を買っていることがこの流れを変えることになるかもしれない ("Aetna、従業員と顧客に Apple Watch を奨励" 28 September 2016 参照)。もし健康管理の会社が、従業員や顧客に Apple Watch を身に付けて貰うことで、長期的には費用の節約になることが証明出来れば、Apple にとっては巨大な機会となる可能性がある。Apple Watch には後押しが必要である:市場調査会社 IDC は、スマートウォッチ全般の売上げは 2016 年の第三四半期で前年比 52% に近い下落であり、良くやっているのは Garmin だけであると報じている。

Other Products と言えば、Apple が Amazon Echo に対抗するスマートスピーカーを出すのではないかという噂さが渦巻いているが、CEO Tim Cook は、これらの噂にはあまり反応しないようで、我々はモバイルの世界に生きており、人々は Siri の様なデジタルアシスタントを常時欲しがっていると語った。

また、電話会見の中の Q&A では、Apple の人工知能に対する関わりについての論争もあった。多くの専門家が、Apple はプライバシーに重きを置くあまり、この分野で Google に遅れをとっていると論じてきた。Cook はそれを間違ったトレードオフの捉え方だとして、"我々はその考え方にくみしない。違った類の取り組みとか、更なる思考を要するかもしれないが、プライバシーをないがしろにすべきだとは私は思わない" と語った。

Apple の成長分野の一つは引き続き Services 部門であり、Q4 2015 に較べて売上げは実に 24% もの成長を見た。サービスは Apple の強い分野ではないとする意見もあるが、Services は今や Mac, iPad, 或いは Other Products よりも大きな部門であり、それより勝るのは iPhone 部門だけである。App Store の売上げだけでも 43% の増加で、Apple Music の売上げは 22% 増えた。Apple Pay もまたその存在を増大させ、その取引高は前年比で 500% 増えた。前四半期の Apple Pay 取引高は、それ以前の全ての会計年度を合わせたものよりも大きかった。

Apple の国際市場での業績は良い所と悪い所に分かれた。China での販売は下落したが、Americas, Japan, Europe, そして Asia-Pacific 地域を含む他の地域での売上げは増加した。事実、Japan での売上げは前年同期比で 23% の増加となった。China での期待外れの結果にも拘らず、Cook は China については "極めて楽観的" だと言い、India では機会が増えていることを付け加えた。ここでは、販売は年率で 50% 増加した。彼は、これらの機会は India における圧倒的多数の若者、この地域での 4G モバイルネットワークの成長、そして中産階級の増加にあるとした。

2016 年は Apple にとっては厳しい年で、同社にとっては年間売上げが 2001 年以降では初めてとなる減少を記録した。しかしながら、この流れをあまり読みすぎないことも大事である。何故ならば、Q4 2016 の $9 billion という利益は、同社がこれまでの Q4 で記録した2番目に高いものだからである。Apple の会計報告は現時点では間違った方向に向かっているように見えるが、同社は次の四半期で成長に戻ると予測している。これは新しい iPhone 7 モデルが本調子を発揮することで現実になるであろうし、MacBook Pro の販売も溜まった需要が大きければ貢献してくるであろう。

いずれにしろ、Apple の巨大な現金の山は Q3 2016 以来 $6.1 billion 増加し $237.6 billion にまでなっている - 1兆ドルの4分の1に近い額で、California 州政府全体が 2015 年に使った額 ($159 billion) よりも多い。間違いなく、Apple はこれだけの金があれば何か面白いことをやろうと思えば出来るであろう。

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Apple の TV アプリ、Apple TV 経験の統合を目指す

  文: Josh Centers: [email protected], @jcenters
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

第四世代 Apple TV の登場で、Apple はアプリこそが TV の未来であると宣言した。しかし、TV 上で iOS スタイルのアプリを使う問題は、Siri があなたに代わって見つけてくれない限り、望みのコンテンツを探すためにはその中を探し回らなければならないことである。Apple は、この問題を解消してくれると願う新しいアプリを導入しようとしている。それは 単純に TV と呼ばれる

Apple TV 上の TV -- この新しい TV アプリは December 2016 に登場予定で、コンテンツをインストール済みの全てのアプリから集めてくる。但し、対象となるアプリは Apple の集約プランを利用するものだけとなる。現時点では、約 1600 のアプリがこの TV アプリにコンテンツを提供する可能性を持つが、報ずる所によると Netflix は利用しないようで、それに Amazon Prime Video は未だ tvOS プラットフォーム上の何処にもその姿は見えない。我々は Netflix はいずれ対応するようになると見ているが、Amazon が現在の方針を変える見込みはまずないであろう。

TV アプリの中心となるのは Watch Now 画面で、Up Next リストの形であなたの好みの番組を示す。その画面のトップでは、途中で中断した番組や、新しいエピソードが見られるようになった番組を選択させてくれる。

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何を見たいか分からない? この Watch Now 画面は TV や映画を、あなたの嗜好や Apple の集めたものに基づいてすすめてくる。

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Watch Now 画面はまた TV 番組や映画をカテゴリ別にブラウズさせてくれる。このデモは Political Animals の様な余り見かけないものを扱っていた - 政治に焦点を当てた番組や映画であろうと想像する。

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TV アプリは、未だインストールしていないアプリが提供するコンテンツを提示する場合もある。その様な場合は、TV アプリの中からそのアプリをインストールすることが出来、インストール終了後そのコンテンツは TV アプリの中に統合される。Apple Design Lead Jen Folse はデモで、この能力を TV アプリ中から Starz アプリをインストールして、Starz がどの様に "Power" と Starz 独占の "Star Wars: The Force Awakens" が What to Watch の下で表示されるかを示した。

tvOS と iOS の両方で使える多くのアプリの様に、Apple TV 上の TV アプリからインストールされたアプリはまた同じ Apple ID を使う iOS 機器上にも現れる (勿論、あなたの機器の設定でこれを有効にしている場合に限られる)。

TV はまた、あなたが購入した TV 番組や映画の全てを一緒にする Library 画面や、コンテンツを新たにレンタルしたり購入したりすることを可能にする Store 画面を提供する。

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iOS と言えば、TV アプリはまた iOS 10 にも登場する予定で、こちらでは Videos アプリに置き換わり、首尾一貫したユーザー経験を提供する。あなたのコンテンツの好み設定は二つのオペレーティングシステムの間で同期される。

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TV アプリは、あなたの Apple TV の使い方に対する大きな変更となるであろう。Siri Remote 上の Home ボタンを押せば、Home 画面に行くのではなく TV アプリを開くことになるであろう。思うに、Home 画面に跳ぶには第三世代 Apple TV でやったのと同じ様に Menu ボタンを押したままにするのであろう。.

Single Sign-On、まあ言ってみれば -- TV アプリと共に、Apple は tvOS 10 に約束していた Single Sign-On 機能を導入する予定である ("tvOS 10、Dark Mode 等々を追加" 13 June 2016 参照)。この機能は、複数のコンテンツアプリを認証するために、個別に接続することなしに、あなたの TV プロバイダーにサインインする中心的な場所を提供する。

残念ながら、Apple 自身のプレスリリースによれば、最初から Single Sign-On をサポートするのは2つのメジャー TV プロバイダーだけ、DirecTV と Dish、だという。もし Comcast, Cox, 或いは Time Warner Cable の加入者ならば、現時点では全てのアプリを個別に有効化しなければならない。

Siri、オペレーティングシステムにも -- 幾つかの Siri 改善も TV アプリと共に提供される。Siri は今でもスポーツのスコアを示し、ライブコンテンツを表示出来るが、Apple は間も無くこの能力を強化する。Folse がデモで Siri に "the Louisville game" と言ったら、現在のスコアとゲームをライブで見るオプションが提示された。

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更に、TV や映画のコンテンツを iPhone や iPad 上で検索することがようやく出来るようになる。現時点では、iOS で James Bond 映画を検索するために Siri を使おうとすると、無作為のフィルムのただ一般的なリストを表示するだである。二つの異なる Siri の実装がメディアコンテンツに対して同じように働くのがようやく実現するのであれば嬉しい話である。

Minecraft、Apple TV に登場 -- 他の Apple TV 大ニュースとして、Minecraft が tvOS に今年末までに来るというのがある。Minecraft は近年では最大のゲーム成功物語の一つで、その創作者 Notch は Microsoft が Minecraft を $2.5 billion で買収した時に、即座の億万長者となった。このゲームは、空想役割演技ゲームと仮想の Lego セットを組み合わせたもので、全ての年代の子供に大評判となった。これに関する更なる話は "FunBITS: Minecraft 速修コース" (19 September 2014) を参照されたい。

私自身の興味を言えば、Minecraft がコントローラーとどの様に動作するのかを見たいと思う。個人的にはこのゲームが Siri Remote を使って動くとは思えないので、ひょっとすると、これが Made for iPhone (MFi) ゲームコントローラーを必要とする最初のゲームとなるのかもしれない。当初、ほとんど全ての tvOS ゲーム開発者は、ゲーム操作のために Siri Remote をサポートしなければならなかったが、これは tvOS 10 と共に変わり、カスタムの MFi コントローラーに依存しても良いこととなった ("tvOS 10、Dark Mode 等々を追加" 13 June 2016 参照)。

前よりは良くなったが、まだまだ -- この TV アプリは正しい方向への一歩であり、Apple TV コンテンツを見つけ易くし、そして tvOS と iOS の両方でのコンテンツ視聴経験を改善するものである。しかしながら、Netflix や Amazon Prime Video 無しでは、コンテンツの鍵となる二つの供給元を欠き、完全に身動きが取れないと迄はいかなくとも、不自由であることには違いない。Netflix しか見ないという人が大勢いることを知りながら、TV が如何に "あなたのビデオ全て" を提供するかについて Apple が語る時、鼻を鳴らさずにいるのは困難である。

TV アプリは tvOS を Amazon の Fire TV や Google の Android TV の様な競合者に近づける。後者のどちらもがホーム画面上でよりコンテンツに焦点を当てた取組みをしている。しかし、このやり方には弱点もある:彼らはあなたに あなたが どうしても見たいものではなく、彼らが あなたに見て (そして、支払って) 欲しいものを示しがちである。Apple は、定額課金制を TV アプリの中に取り込む契約をコンテンツの所有者とするのであろうか? ひょっとすると、もうしているのかもしれない。

Apple TV でもう一つ気になるのは 4K 解像度コンテンツのサポートの欠如である。一方で Apple はこれを、例えば iPhone 6s とそれ以降、そして Mac 上の Final Cut Pro X では売りにしている。現状では、もし 4K TV を持っていれば、4K コンテンツを生かすには、その内蔵のアプリを使うか、或いは 4K 対応の Blu-ray プレーヤー、Fire TV, 又は Roku ボックスを使うしかない。たとえ 4K TV を持っていなくとも、4K ストリーミングの良さは目に見える。私の新しい Sony TV は 1080p ストリーミングコンテンツでさえどれ程 "雑音ぽい" かを実感させてくれる。雑音は、ピクセル化した背景や他の見苦しさとなって現れる。私の経験では、Netflix からの 4K コンテンツでは何時も鮮明さで大きな違いがあるとは言えないが、目に見えるブロックノイズ等は見られない。

最後に、もう一つ疑問を提起したい。私の友人 Zac Cichy が指摘した様に、TV アプリのアイコンは Siri Remote 上の Home ボタンと瓜二つである。Apple は、この TV アプリを tvOS と一緒に出荷するつもりだったのであろうか、そしてそれは常に Home 画面として機能する役目だったのであろうか? それは、コンテンツ契約の欠如故に遅らせられたのであろうか? 何故 Apple は TV アプリを今出そうとしているのであろうか、そして、何故 Netflix は参加していないのであろうか? 私は、これらの疑問に対する答えを知りたいと思うが、恐らくそこまで到達するのは無理だろうと思っている。

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さて、私も "Take Control of Apple TV" の第三版に取り掛からねば!

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新 MacBook Pro、状況に応じて変わる Touch Bar を搭載

  文: Adam C. Engst: [email protected], @adamengst
  訳: 清水 史彦 <qff01604@nifty.com>

"Hello Again" の特別イベントで、Apple はついに 13 インチ、および 15インチの MacBook Pro の新型モデルを発表した。Apple が、ほぼ 18 ヶ月ぶりに行う、プロ向けラップトップの最初のアップデートである。("Apple、更新された MacBook Pro, iMac, そして iPhone Dock をリリース" 2015 年5 月 19 日参照) この新型モデルは、サイズと重量を減らすために、12 インチの MacBook からヒントを得た、新しい意匠を有している。また、全く新しい Touch Bar が導入された。これは、状況によって変化する入力デバイスで、キーボードの上にあったファンクション・キーを、マルチタッチ機能を有する Retina ディスプレイで置き換えたものだ。このディスプレイには、Touch ID センサーが一体化されて組み込まれている。前回のモデルの発表以来、どのくらいの時間が経ったかを考えたなら驚くべきことではないかもしれないが、新型 MacBook Pro の機能は、性能面でも大いに改善されている。

MacBook Pro の旧モデルは、引き続き販売されている。MacBook Air と 12インチの MacBook に、アップデートはなかった。だが、Apple は、11 インチの MacBook Air をラインナップから外した。Apple は、iMac、Mac mini、あるいは、Mac Pro については、何も言及していない。したがって、デスクトップの Mac のアップグレードを期待している人たちは、引き続き待つ必要がある。

手を伸ばしてバーに触りなさい -- 確かに、新しい MacBook Pro は、より小さく、より軽く、そして、より速いが、大きなニュースは Touch Barだ。これは、薄い、タッチセンサー式のスクリーンで、キーボードの上にある。ここは、かつてファンクション・キーがあった場所だ。Touch Bar は、キーボードの幅いっぱいにひろがっている。奥行きは、Touch Bar が置き換えたファンクション・キー列とほぼ同じで、0.4 インチ (1.02 cm) をわずかに上回る程度だ。残念ながら、Touch Bar には、3D Touch/Force Touch やTaptic Engine のどちらもない。したがって、単にタッチを受け入れるだけであって、何らかのフィードバックを返すものではない。

Touch Bar の特徴は、これが 2170 × 60 ピクセルの Retina ディスプレイであるという点だ。アプリは、Touch Bar を使って、状況に応じて変化するツールを表示することができる。Touch Bar は、マルチタッチで、同時に10 個までのタッチによる入力を扱うことができるので、アプリの開発者は、Touch Bar の可能性について、想像力を思い切り駆け巡らせているところだ。

例えば、Photos では、あなたが何をしているかにもよるが、Touch Bar で、あなたの写真のコレクションをスクラブしたり (横にこするような動作)、お気に入りの写真をマークしたり、写真を編集したりすることができる。いったん写真を編集しようとすると、Touch Bar は変化して、編集ツールを提供する。例えば、露出、カラー・スライダー、そして、回転角度制御のようなツールだ。Final Cut Pro X のようなビデオ編集アプリでは、Touch Bar によって、トリミング・ツールと一緒に、タイムライン・スクラバーが提供される。

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あらゆるアプリが、それぞれ独自のやり方で、Touch Bar を利用することになる。例えば、絵文字を使う人のために、Messages のようなアプリは、利用可能な絵文字を、スクロール可能な帯で表示することができるだろう。また、Touch Bar を使えば、iOS ユーザーにとって馴染みのある QuickType のような入力候補を提示することも可能だ。

また、Apple は、Touch Bar のツールの少なくともいくつかをカスタマイズする方法を示した。ちょうど、多くの Mac アプリのツールバーで、どのボタンが現れるようにするか、選ぶことができるのと同じようなものだ。例えば、Finder で Touch Bar をカスタマイズすると、ウィンドウのツールバーを編集するのに用いられるのと同じようなインターフェースが示される。このインターフェースによって、利用可能なアイテムを表示している画面から、ボタンやコントロールを、Touch Bar まで、下にドラッグすることができる。

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Touch Bar の一番右端には、Touch Bar と一体化された Touch ID センサーがあり、指で押せば、Mac にログインすることができる。iPhone や iPad とまさに同じだ。実際には、これは、もっとずっと良い。と言うのは、起動時や、ユーザーを素早く切り替える際に、Mac 上の異なるアカウントにアクセスするのに、違う指を使うことができるからだ。例えば、あなたは、主要なアカウントにログインするのに、あなたの右人差し指を使い、右手の小指をトラブルシューティング用のアカウントに設定することができる。また、あなたの配偶者に、さらに別のアカウントにログインさせたりすることができる。Touch ID センサーは、Apple の新しい T1 チップと情報をやり取りする。そして、このチップには、Web 上で Safari 内で Apple Pay を使うための情報を格納する Secure Enclave が入っている。

今でもファンクション・キーを頼りにしている人たちは、キーボードの左下隅にある物理的な Fn キーを押せばよい。すると、Touch Bar は、ただちにクラシックな F1 から F12 までのファンクション・キーに姿を変える。

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Apple の幹部である Phil Schiller や Craig Federighi は、今なお IBM 3270 端末のファンクション・キーを必要としている人たちについて、たくさんのジョークを飛ばしたが、現実問題として、ファンクション・キーを、あらゆる状況に対応するショートカット・キーとして、ずっと頼りにしてきている人たちがいるのだ。オーケー、こんなことを考えるのは、もしかしたら私だけかもしれないが、数十年前、私は、お気に入りの執筆ツールを F1 で、デフォルトの Web ブラウザーを F2 で、電子メールアプリを F3 で、ファイル転送アプリを F4 で、常に起動することがもしできたなら、私の生産性はもっと高くなると強く思ったものだ。もし私が最終的に、Touch Bar が使用可能なこれら Mac のうちの一つを買ったなら、私は結局、自分がどのようにして Touch Bar を使うか考えることになるに違いない。

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Esc キーについてはどうだろう? 一見したところ、Esc キーがないために、Apple の観測筋からは、あらゆる種類の反応が呼び起こされた。Apple は、バーの左端を「システム・ボタン」のために予約していて、状況に応じて、Esc キーや、システムが提供する他のボタンになる。したがって、アプリケーションの強制終了が必要となる滅多に起こらない状況でも、Command-Option-Esc は、今なお一つの選択肢だ。

実際のところ、Apple の開発者向けガイドラインによると、Touch Bar は、三つの 領域を持っている。すなわち、システム・ボタン領域、中央にアプリ領域 (アプリ特有のコントロールが配置される)、そして、右手にコントロール・ストリップ領域 (ユーザーが、ボリュームや明るさを調節するといったシステム・レベルのタスクを管理できる) だ。コントロール・ストリップ領域は、Siri 専用のボタンがある場所でもある。ユーザーは、コントロール・ストリップ領域を完全に隠して、アプリ特有のコントロールをもっと表示させることもできる。また、アプリ領域を隠すことを選択することも可能だ。

一方、Touch Bar は、Apple の側でも魅力的なイノベーションだ。Macユーザー、特に、楽器のようなアプリのインターフェースやコントローラーを操作するプロが、バーチャルなソフトウェアの世界とどんな風に関わるかということに関して、Touch Bar は大きな変革をもたらす可能性がある。

一方、もし、Touch Bar が、Mac に関する体験の主要な部分となるのであれば、Apple は、Touch Bar に全力を傾ける必要がある。ただいま現在、Touch Bar は、13 インチ、および、15 インチの新しい MacBook Pro で利用可能であるに過ぎない。また、Apple は、デスクトップの Mac に対して、新しい Magic Keyboard についてほのめかすことさえしなかった。私は、開発者たちは、Touch Bar がクールで新しいという理由だけで、ただちにこれをサポートするのではないかと思う。だが、もし Apple がTouch Bar を製品ラインナップに全面展開しないのであれば、サポートは次第になくなって行くだろう。加えて、これらの新しい MacBook Pro が、置き換えられた旧モデルに比べて、どの程度優れているかに関わらず、新しく買う人の多くは、そうしたことはあまり考慮しないであろう。なぜならば、ラップトップで作業することには、デスクトップと比較して、本来的なトレードオフがあるからだ。例えば、低下した性能、机上で使用する際の劣ったエルゴノミクス・デザイン、そして、同一性能のデスクトップと比べて高い価格などである。

SlackBITS、そこで私たちは、Apple のプレゼンテーションが行われている間、TidBITS の読者とおしゃべりしていたのだが、私たちは、Touch Barは、全面タッチセンサー式の画面よりも、良いのか悪いのか、じっくり考えていた。こうした全面タッチセンサー式の画面は、例えば、Windows のラップトップの多くや、Chromebook で利用可能だ。そして、もし、キーボード上の Touch Bar の位置が、エルゴノミクスやユーザー・インターフェースの点で優れているのであれば、iOS については、何と言えば良いだろうか? iOS は、インターフェースについては、全てタッチ・ベースの直接的な操作だ。iOS 11 では、一貫性のあるインターフェース要素として、画面の一番下にバーチャル Touch Bar を置くという選択肢がアプリに提供される、あるいは、いっそのこと、Home ボタンが Touch Bar で置き換えられるなどといったことはありうるだろうか?

いずれにせよ、メインのコンピューター・ディスプレイに加えて、入力とコントロールに特化したマルチタッチ・ディスプレイを別に持つというアイデアは強力であり、Touch Bar の使用方法が、時間と共にどのように進化して行くかを見るのは興味深いことであろう。

サイズと重量 -- 基本に戻って、新型 MacBook Pro は、いくつかの印象的な数値を有している。13 インチの MacBook Pro は、旧モデルと比較して、かなり小さく、軽くなっている。

13 インチの MacBook Air との比較において、新しい 13 インチの MacBook Pro は、より薄く (MacBook Air の厚い側と比較して)、より幅が狭く、より奥行きが短い。そして、わずか、0.06 ポンド (27 g) 重いだけである。12インチの MacBook は、今でもより小さく、約 1 ポンド軽いが、画面が小さく、CPU は遅い。

新しい 15 インチの MacBook Pro は、旧モデルと比較して、サイズと重量において同様の減少が見られる。

機能面でのスペック -- 新型 MacBook Pro の一つの外観が、あなたがそれを見たとき、きっとあなたの眼に飛び込んで来るだろう。それは、Force Touch トラックパッドで、旧モデルに搭載されていたトラックパッドの 2 倍の大きさがある。実際、Phil Schiller が述べたように、Force Touch テクノロジー (Taptic Engine を通じて、クリックの感触をシミュレートする) こそ、Apple がこんなに大きなトラックパッドを生み出すことができた唯一の理由なのだ。もしこの技術がなかったら、こんなに大きな面全体にわたって確実に動作する機械的なシステムを作ることは不可能であろう。トラックパッドのサイズが大きくなったのは、マルチタッチのジェスチャーにとって良いことであるはずだ。

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どちらのモデルも、同様に、改良された画面が特徴となっている。解像度は従来と同じだ。すなわち、13 インチのモデルでは、2560 × 1600 ピクセル、15 インチで 2880 × 1800 ピクセルだ。だが、Apple は、ディスプレイが67% 明るくなり、コントラスト比が 67% 高くなり、また、P3 の広い色域をサポートしたおかげで、25% も多くの色を表示できるようになっていると述べている。

Apple は、どうやら、12 インチの MacBook から、教訓を得たようだ。このモデルは、たった一つの USB-C ポートを、充電と拡張のために持っているだけだったため、大いに批判を浴びることとなった。("12 インチ MacBook: 特定のユーザーに向いた、別物の Mac" 2015 年 4 月 29 日参照) 新しいTouch Bar 搭載 MacBook Pro は、これとは異なる方向性を打ち出している。4 つの Thunderbolt 3 ポートを両側に 2 つずつ配置し、そのどれも充電と拡張に使用することができる。だが、もし 2 台の充電器につないだとしても、MacBook Pro が高速に充電されることはない。単に 1 つのポートから充電されるだけだ。

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Thunderbolt 3 (これによって、40 Gbps までのスループットが提供される)は、USB-C と同じコネクターを使用する。そして、DisplayPort (したがって、アダプターを介して、HDMI、VGA、さらに Thunderbolt 2 がサポートされる) と USB 3.1 Gen 2 をサポートしている。USB 3.1 Gen 2 は、10 Gbps の転送速度を持ち、古い USB デバイスと下位互換性を有している。私たちは、Thunderbolt 3 について、もうじきもっと詳しく書くつもりだが、差し当たり、これらの新型マシンは、2 台の 5K ディスプレイ、または、4 台の 4Kディスプレイを駆動できるという事実について考えてみてほしい。実に見事なものだ。

ここまで来たところで、Apple が 13 インチ MacBook Pro について、実際には、2 種類の バージョンを導入したということを認識する必要がある。これまで、私は、ハイエンドの機種について述べてきた。だが、300 ドル安い価格で、Touch Bar がなく、伝統的なファンクション・キーに戻り、Thunderbolt ポートを片側のみに 2 つだけ有するモデルも購入することができる。さらに、この機種は、より低速なプロセッサーと、性能の劣るグラフィック・プロセッサーを搭載している。

したがって、プロセッサー、グラフィックス、メモリ、そしてストレージについては、ベース・モデルをどのように組み上げるかという問題がある。Touch Bar モデルに関して、Apple は、きわめてややこしいことになっている。すなわち、それぞれ 2 種類の機器構成が提供されていて、安価なバージョンは、ある種の選択肢を欠いている。例えば、1799 ドルの 13インチの MacBook Pro は、ストレージの容量を増やすことができない。それに対して、1999 ドルのモデルでは、より大容量のストレージが搭載されているし、さらなる大容量も選択することができる。15 インチのモデルの方では、2399 ドルのモデルは、CPU がわずかに遅く、デフォルトではストレージ容量が少ない。そして、グラフィック・プロセッサーの機能も、2799 ドルのモデルに比べて劣っている。そして、Apple は、このモデルのアップグレードに対しては、より高い料金を課している。なので、買うときは注意してほしい!

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1499 ドルの 13 インチの MacBook Pro (Touch Bar 非搭載)

1799 ドルの 13 インチの MacBook Pro (Touch Bar 搭載)

2399 ドルの 15 インチの MacBook Pro (Touch Bar 搭載)

こうした新しいコンポーネントの全てが現実の性能にどの程度影響を及ぼすのかを知るのは難しいと思われる。というのは、Apple は多くのサブシステムの速度も改善したからだ。少なくとも、これらの機種は Mac の史上最速のラップトップだと言ってよいだろう。まだ見なければならないことがあるとすれば、それは、こららの機種が、Apple のデスクトップ機種とどの程度匹敵するものになっているかだ。Phil Schiller は、実際こう言っている。電力消費が過大にならないように、Apple は、RAM を最大 16 GB に制限したと。

無線ネットワークについては、Bluetooth 4.2 と同様に、802.11ac Wi-Fi がすべてのモデルにわたって標準となっている。そして、iPhone 7 からヘッドフォン・ジャックをなくした Apple の「勇気ある行為」にも関らず、新型MacBook Pro は、3.5 mm のジャックを保持していて、ステレオ・スピーカー、3 台の内蔵マイクロフォン、そして、720p FaceTime HD カメラを提供している。マイクが旧機種より 1 台増えていて、Bluetooth は 4.0からバージョンアップした。だが、こうした変化は重要ではない。

バッテリーの持続時間も同様に改善されるべきだが、Apple の測定によると、新型 13 インチ MacBook Pro は、iTunes ムービーの再生で、10 時間しかもたない。これは、旧機種の 12 時間から低下している。これはおそらく、バッテリーがかなり小さくなったためだ。古い 13 インチモデルは、74.9 Whのリチウム・ポリマー・バッテリーを搭載していた。これに対して、新型Touch Bar 非搭載機種は、54.5 Wh のバッテリーで、Touch Bar 搭載モデルは、さらにわずかに少ない 49.2 Wh のバッテリーとなっている。同様に、15 インチモデルは、95 Wh のバッテリーから、76 Wh のバッテリーに容量を下げている。新型 13 インチモデルは、61 W の USB-C パワー・アダプターを同梱しており、これに対して、15 インチモデルは、87 W の USB-C パワー・アダプターだ。どちらも、残念ながら、もはや、MagSafe ではない!

最後に、発表後に明るみに出た奇妙な事実を付け加えたい。新型 MacBook Pro は、デフォルトでは、起動時のサウンドを鳴らさないのだ。たぶん、電源を切った後で蓋を開くと自動的に起動するからだろう。うれしいことに、簡単な Terminal コマンドで、 起動時のサウンドは、再び有効にすることができるし、自動的に起動するという設定も変更すること ができる。

はなはだしくややこしい MacBook のラインナップ -- Mac マトリクスの時代を思い出してほしい。デスクトップとラップトップがあり、それぞれ、コンシューマー向けとプロフェッショナル向けがあった時代だ。過ぎし日のそうしたシンプルな日々は遠い過去のものとなった。そして、今や、Appleのラップトップのラインナップを、スコアカードなしで把握するのは不可能となった。これについては、12 インチの MacBook と、13 インチの MacBook Air が引き続き購入可能だというのと同様に、MacBook Pro の旧モデルが引き続き購入可能だということも理由の一部だ。Apple は、少なくとも、11 インチの MacBook Air と、2012 年の 13 インチ MacBook Pro をラインナップから外した。後者は、SuperDrive を搭載していたが、Retina ディスプレイではなかった。以上より、現状では、以下に示すラップトップのリストが私たちに与えられることとなった。基本となる価格に基づいて、昇順で示してある。

問題は、サイズ、重量、性能、ディスプレイ品質、利用可能なアップグレード、そしてその他の機能が、リスト全体にわたってシーソーのように変動するということだ。このため、新しい MacBook Pro の機種の一台を買うのに喜んでお金を払いたくない人にとっては、めまいがするような選択肢の組み合わせとなっている。だがお金を払うと決めたなら、話は簡単だ。これらの新型機種は、全ての点で最高であり、非力な 12 インチの MacBook と比べて、ほんのわずかに大きくて重いだけだ。

価格以外の何らかの理由で、旧モデルをおすすめすることは難しい。Appleは、新型モデルを発表した後でも、旧モデルの価格を下げなかったので、旧モデルをおすすめするのはなお一層難しい。Apple は価格で競争しているわけではないが、2 年近くも古い 13 インチの MacBook Pro が、依然として1299 ドルもする理由について、誰かに説明を試みるとするなら、それは厄介なことだ。

注文 -- 新型 MacBook Pro の機種は、どちらも、シルバーもしくはスペース・グレーを選ぶことができる。後者は、以前は、12 インチのMacBook でのみ可能なオプションであった。ゴールドやローズ・ゴールドに輝く MacBook Pro が欲しくてたまらない人は、がっかりすることだろう。

新型 MacBook Pro は、すべて、直ちに注文することができるが、Apple は、Touch Bar 搭載モデルは、2 週間は出荷されないだろうと述べた。そして、その翌日、私たちが自分用の機種を注文した時には、出荷時期の遅れは、すでに 4-5 週間に延びていた。

私たちは、これらの新型 MacBook Pro を個人的に体験するのを楽しみにしている。なぜなら、Touch Bar は、私たちが TidBITS や Take Control を執筆する際の文書作成といった類の作業に、大いに威力を発揮するかもしれないからだ。加えて、TidBITS のスタッフの中には、Apple がラップトップのラインナップをアップデートするのを、辛抱強く何年も待ち続けていた人がいる。やっとその時が来た!

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新しい Mac へと移行する方法

  文: Joe Kissell: [email protected], @joekissell
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>  訳: 清水 史彦 <qff01604@nifty.com>

新しい Mac を手に入れたら、それが新品であろうと、またはあなたには初めてというだけのものであろうと、最初に浮かぶ疑問は、あなたの古い Mac (またはプラットフォームを乗り換えようとしている場合は PC) の中のすべてのデータを新しい Mac へどうやって移そうかというものであるはずだ。これまで何度も Mac から Mac へのデータ移行をしたことがある人ならば大して考え込む必要などないかもしれないが、今までそんなことをしたことがない人や、少なくとも最近はしたことがないという人には、大量の書類や、フォルダや、アカウントや、環境設定や、その他のものを扱わなければならないと考えただけで圧倒される気がするかもしれない。

実際のところ、データの移行をするにはいくつかの方法があるし、そのどれを選ぶべきかはあなたの状況に依存する。考えるべき道は主に四つある。簡単なものから困難なものへと順番に挙げれば、次の四つの方法だ:

さて、もしも最初の二つの方法(クラウド同期か、クローンを使った移行)のどちらかがあなたの必要を満たしているのならば、もうこの記事をこれ以上読む必要はない。この記事の残りの部分は、Setup Assistant または Migration Assistant を使って Apple の移行テクノロジーを利用する必要がある人たちのために書いた。けれども、その人たちにお勧めする手順の説明に入る前に、まずは移行に関するいくつかの重要な背景情報を知っておいて頂きたい。

移行の概念を理解する -- 移行というのは、要はコピーすることを、聞こえの良い言葉で言い直したに過ぎない。コピーすることは、お馴染みの、普通の、毎日する作業であって、何も怖がるようなものではない。バックアップを作成する際にはいつも一つの場所から別の場所へコピーをする。ネットワーク上でファイルを共有する際も同様だ。あなたは古いコンピュータの上にいろいろなものを保存している。それを、新しいコンピュータへとコピーするだけのことだ。別に大したことじゃない。でも、コピーすべきものは非常にたくさんあり、最良の結果を得るためには正しくコピーしなければならないのだ。

基本的に、移行には二つのことがらが含まれる:

Apple が Setup Assistant と Migration Assistant に組み込んだ移行テクノロジーは、古いコンピュータから新しいコンピュータへ何をどのようにコピーすべきかを知っている。たとえ、古いコンピュータと新しいコンピュータの間で置くべき場所やファイルフォーマットが変更されていたとしても、古いものたちがどこにあるか、それぞれがどこへ行くべきか、どうすればそれらを損なわずにコピーできるかを心得ている。扱いにくい点もきちんと処理して、あなたがそんなことを心配せずに済むようにしてくれる。さらには、接続をする際の手順さえ単純化してくれる。つまり、ファイル共有の設定や、ネットワークボリュームのマウントなどをあなたがする必要はない。あなたがする必要があるのは、せいぜいソースとなるコンピュータの上でアプリを走らせて、いくつかボタンをクリックすることだけだ。

ここまではすべて順調だ。けれども、Setup Assistant を使って転送する(つまり、完全に新しい Mac で設定をしたり、または空ボリュームの上に macOS をインストールする)場合と、後になってから Migration Assistant を走らせる場合とでは、大きな違いがある。Setup Assistant では、すべてを一から始めるので、新しい Mac の上にはあなたの古い Mac にあるデータに基づいてアカウントが作成される。けれども Migration Assistant では、新しい Mac の上に既存のアカウントはそのままにして、新たなアカウントを 追加する ことになる。このことが極めて重大な問題を生む。これは、いくら強調しても強調し足りない問題だ:

Migration Assistant は、アカウントの合併ができない。

つまり、こういうことだ。例えば私が新しく買った Mac を家に持ち帰って、Setup Assistant を使って新規のユーザアカウントをセットアップし、アカウントのフルネームをJoe Kissellとし、ショートネーム(“アカウント名”であり、私のホームフォルダの名前でもある)を joeと設定したとしよう。実際それが私の名前であり、私の古い Mac でも PC でも(ただし Windows は長いユーザ名のみを使用する)使ってきた名前だという論理的な理由からだ。そうして私はファイルを保存したり、カレンダーに項目を追加したり、普段していることを、その新しい Mac でし始めたとしよう。そして、それから一週間経って、思い立って自分の古い Mac か PC からこの新しい Mac へデータを移行させようと決断したとする。つまり、私の古いコンピュータ上のメインのユーザアカウントの中にあるすべてのファイルを移行させたいということだ。でも、それをしようとしても、Migration Assistant が悪い知らせを告げてくる。つまり、データを移行させるには アカウント名を変更 しなければならない、なぜなら一台の Mac の上ではすべてのユーザ名がフルネームもショートネームもそれぞれ一つずつ別の名前でなければならず、この新しい Mac 上には既にフルネームが Joe Kissell でショートネームが joeのアカウントが存在しているから、というのだ!

そこで、私はやむなく、移行しようとするアカウントを Joseph Kissell、そのショートネームを joseph なり jkなり何なりに改名する羽目になる。でもそうすると、私が思っていたのとは違った結果になる。二つのアカウントができるからだ:

もしも Migration Assistant が何らかの方法で私の古い Joe Kissell アカウントの内容を新しいアカウントに統合してくれさえしたなら、何の問題もないだろうにと思う。でも、それはできない! そしてもちろん、手作業で二つのアカウントを統合させるための複雑な手順を考え付くことは可能かもしれない。でもそれは、間違いを起こしやすい、大量の作業になるし、全然楽しくない。

この話の教訓はこうだ: 新しい Mac を手に入れたら、あるいは macOS のクリーンインストールをしたら、古いデータを(アカウント名を変えずに)移行させる最良の方法は、移行を 直ちにする こと、つまり最初に起動をして Setup Assistant を走らせた時点でしておくことで、後になって Migration Assistant で移行するのは望ましくない。

でも、既に手遅れの場合には、つまり既に違う名前で新規アカウントを作ってしまってある場合には、選択肢が三つある。そのうち最初の二つは Migration Assistant で実行できるのだが、それぞれ次のようなやり方だ:

とは言うものの、Migration Assistant も、Setup Assistant の中のそれに相当する部分も、すべてかゼロかのものではないということは言っておかなければならない。例えば、アプリケーションのみを転送するために使うこともできるし、特定のユーザアカウントのみとか、あるいは一つのユーザアカウントの中の特定のタイプのデータのみとか指定してそれだけを転送することもできる。すべてを転送したいと思う人が大多数なのは間違いないだろうが、選択は完全にあなた次第だ。

以上の背景を心に留めた上で、以下では次の三つのシナリオごとに手順を説明しよう:

Setup Assistant を使って別の Mac から移行 -- 新品の Mac に (あるいは空白のボリュームに macOS のクリーンインストールをしている最中に) Setup Assistant を走らせて別の Mac からデータを転送したい場合には、次の手順を踏めばよい:

1: もしも新品の Mac を初めて使っているのならば、Setup Assistant に指示される通りに順々に進めば、Transfer Information to This Mac 画面に至る。同様に、空白のボリュームに macOS をインストールしたばかりでも、プロンプトに従って進めばこの画面に至る。

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2: "From a Mac, Time Machine backup, or startup disk" を選ぶ。でもまだ Continue をクリックしてはいけない。

3:古い Mac が新しい Mac に接続されていることを、または Time Machine バックアップかブート可能な複製が置かれているドライブが新しい Mac に接続されていることを、確認する。それぞれの場合を説明しよう:

4: Thunderbolt または FireWire ケーブルを使っている場合には、まず初めに古い Mac の電源を切り、それから T キーを押し続けながら電源を入れる。これで、古い Mac が Target Disk Mode で起動する。つまり、外付けハードドライブとして機能するようになる。

Ethernet ケーブルまたは Wi-Fi ネットワークを使っている場合には、まず古い Mac の上で Migration Assistant を開く。( /Applications/Utilities にある。) プロンプトを辿って、Migration Assistant 画面まで行く。この画面で To Another Mac を選んで、Continue をクリックする。

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5: ここで新しい Mac に戻り、(手順 2 で開いていた Transfer Information to This Mac 画面で) Continue をクリックする。

6: ソース、つまりデータの転送元(たいていの場合選択肢は一つしかない)を選んで、Continue をクリックする。

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ただし、次のような但し書きを念頭に置く必要があるかもしれない:

7: 次に、転送したいデータの種類を選ぶ。画面には、それぞれの項目のサイズと、選択された項目の合計サイズ、それに行き先のボリュームで利用できる容量が表示され、選択されたものが変わる度にそれぞれの表示が自動的に更新される。インストーラを開いた当初は、それぞれを表示してサイズを計算するのに数分程度かかるかもしれない。

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あなたが転送しようとしているボリュームにたった一つしかユーザアカウントがなければ、たった三つのチェックボックスしか見えないかもしれず、これらはすべてデフォルトでチェックされている。Applications、Documents & Data (これには Edit ボタンが付く)、Computer & Network Settings の三つだ。もしもそのボリュームに複数個のユーザアカウントが(例えば上の図のように)あれば、スクロールするリストの中にたくさんの項目が並ぶかもしれない。ここでも、すべてデフォルトでチェックされている。Applications、個々のユーザアカウント (名前でリストされる)、"Other files and folders" 項目、それに Computer & Network Settings だ。

個々の選択肢の説明と、私がお勧めする選択方法を書いておこう:

すべての選択を指定し終えたら、Continue をクリックする。

すると Setup Assistant は、選択された項目をあなたの新しい Mac へコピーする。どれほどの量のデータを転送しようとしているかに応じて、その処理は数分で済むかもしれないし、何時間もかかるかもしれない。

次の三つのことに注意しよう:

移行処理が終われば Migration Complete 画面が開き、データの移行が完了して使う準備が整った、というメッセージが示される。Quit をクリックすればウィンドウが閉じる。すると、あなたの Mac はログインを促してから、最後の質問をいくつか問いかけるだろう。

Migration Assistant を使って別の Mac から移行 -- もし、あなたがすでに新しい Mac をセットアップしていて、データを古い Mac から移行させたいのであれば、そのプロセスは、ほとんど 私が記載した通りだ。だが、2 ヶ所、変更点がある。

1: 新しい Mac 上で、Migration Assistant を /Applications/Utilities から開く。先に示した Migration Assistant の画面になるまで、プロンプトに従う。

2: 先の一連の解説における手順 2 から始める。だが、手順 6 まで行った際に、もし、あなたが、転送元の Mac 上で、あるユーザー・アカウントを選択していて、そのアカウント名 (ショートネームであろうとフルネームであろうと) が、転送先の Mac 上で既に作成されているアカウント名と重なっている場合には、転送するアイテムのリストの下に、メッセージが現れる。すなわち、「コンフリクトが検出されました。転送したい情報の選択は終了させて、コンフリクトの解決のために Continue をクリックしてください。」だ。Continue をクリックすると、下記に示すダイアログが現れる。

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先に私が議論したように、あなたは、以下のどちらかを選ぶことができる。

Windows PC からの移行 -- Migration Assistant を使って、Windows PCからデータを移行させる手順は、Mac から Mac への転送で行う手順と同様である。

ヒント: もし、あなたがこれを macOS のインストール中に行っているのであれば、それほど苦労する必要はない。特に、下記の手順 1-3 に従えば、Setup Assistant があなたに、ファイルをどこから転送するのか聞いてきたときに、"Windows PC から" を選び、Continue をクリックすればよい。それから、手順 9 まで飛んで、そこから始めればよい。

Windows から macOS への移行の手順は、次の通りである。

1: PC と Mac が、同じ Wi-Fi 上にある、あるいは、もっと良いのは、Ethernet ネットワーク上にあることだが、それを確認する。

2: PC 上で、Windows Migration Assistant をダウンロードして、それをインストールする。

3: PC 上で、Migration Assistant を走らせ、Continue を 2 回クリックする。すると、 Searching という画面になる。

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4: Mac 上で、 /Applications/Utilities から、Migration Assistant を開く。

5: Migration Assistant の画面になるまで、プロンプトに従う。

6: "Windows PC から" を選択し、Continue をクリックする。

7: データの転送元として、Windows PC を選ぶ。多くの場合、あなたがWindows Migration Assistant を走らせている PC しか出てこないだろう。だが、もし、二つ以上出てきたら、所望の一つを選べば良い。Continue をクリックする。

8: パスコードが、Windows の画面と Mac の画面の両方に現れる。その数字が、両方で同じであることを確認し、それから、Windows PC 上で、Continueをクリックする。

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9: Mac に戻って、転送したいと思っているデータの種類を選択する。選択肢は、以下の通りだ。

10: 選択が終わったら、Continue をクリックする。

ファイルが転送される。終了したら、Windows PC 上の Migration Assistantで Quit をクリックする。そして、セットアップを完了させるために、Mac上のプロンプトに従う。

最後のアドバイス -- 先に述べたように、もし、あなたが、新しい Macの包みを解いてすぐにファイル転送を行うなら、あるいは、あなたが、起動可能な複製から、新しい Mac を完全に上書きする気があるのなら、ファイル転送のプロセスは、はるかに、はるかに簡単だ。

とは言うものの、もし、あなたがこの記事を、古い Mac のコンテンツを、しばらく使った新しい Mac 上にマージする必要があるという理由で読んでいるのであれば、上記のアドバイスが役に立つことを願う。

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TidBITS 監視リスト: 注目のアップデート、2016 年 10 月 31 日

  文: TidBITS Staff: [email protected]
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

VMware Fusion 8.5.1 -- VMware が人気の仮想化パッケージ VMware Fusion を標準版Professional 版の双方ともアップデートして、Windows 10 仮想マシンを Unity モードで走らせた際のクラッシュを修正した。VMware Fusion 8.5.1 ではまた、macOS 10.12 Sierra で複数モニタを Full Screen モードで使っている際に仮想ディスプレイが一つのスペースに統合されてしまったバグを修正している。加えて、Sierra で走らせた際にマウスポインタを仮想マシンの中へ動かすと仮想マシンウィンドウのタブバーが空白になってしまった問題も解消している。(新規購入 $79.99/$199.99、無料アップデート、368 MB、リリースノート、10.9+)

VMware Fusion 8.5.1 へのコメントリンク:

DEVONthink/DEVONnote 2.9.6 -- DEVONtechnologies が DEVONthink の三つの版 (Personal、Pro、Pro Office) と DEVONnote をバージョン 2.9.6 にアップデートした。三つの版の DEVONthink はいずれも macOS 10.12 Sierra で走っている際の PDF に関する問題点を回避し、Sierra でのスキャンの互換性を改善し、フォーマット付けされたノートに HTML チェックボックスを追加する機能を導入し、同期のパフォーマンスと信頼性を高め、共有拡張に画像を受け入れる機能への対応を追加している。DEVONtechnologies はまた iOS アプリの DEVONthink To Go もバージョン 2.0.5 にアップデートして、PDF サムネイル表示を追加するとともに、あなたが読んだり再生したりした位置を記憶する機能を改善した。

加えて、三つの版の DEVONthink も DEVONnote も、ELO Office で書き出されたファイルやフォルダのメタデータが石と化してしまわないようにし、Sierra で最前面のアプリケーションから URL をキャプチャできなかったバグを修正し、スマートグループエディタを改良して複数個の "kind" 条件を複合述語を使って有効なスマートグループに変換できるようにし、OS X 10.9 Mavericks 上で OpenMeta 対応を削除した。(いずれもアップデートは無料。DEVONthink Pro Office 新規購入 $149.95、リリースノート。DEVONthink Professional 新規購入 $79.95、 リリースノート。DEVONthink Personal 新規購入 $49.95、 リリースノート。DEVONnote 新規購入 $24.95、リリースノートTidBITS 会員には DEVONnote もいずれの版の DEVONthink もそれぞれ 25 パーセント割引。10.9+)

DEVONthink/DEVONnote 2.9.6 へのコメントリンク:

Final Cut Pro X 10.3、Compressor 4.3、Motion 5.3 -- Apple が同社のプロフェッショナル向けビデオ編集アプリのシリーズをアップデートして Final Cut Pro X 10.3Compressor 4.3Motion 5.3 をリリースし、暗いインターフェイスをデザインし直し、対応する Mac と外付けディスプレイでの広色域にフル対応し、新型 MacBook Pro が搭載するコンテクスト対応 Touch Bar への対応を追加した。(2016 年 10 月 27 日の記事“新 MacBook Pro、状況に応じて変わる Touch Bar を搭載”参照。)

Final Cut Pro X 10.3 では、クリップをロール(ダイアログ、ミュージック、エフェクト)ごとにカラーコード付けする Magnetic Timeline 2 と、オーディオロールをドラッグ&ドロップしてレイアウトを変更したり特定のオーディオロールをハイライト表示したりできるように拡張された Timeline Index、メタデータに基づいてロールを自動的に作成・割り当てするための iXML 対応が導入された。今回のリリースではまた、タイムコードのコピーとペーストができるようにしてテキスト書類からの数値入力を高速化し、外付けディスプレイへの直接 A/V 出力に Thunderbolt ケーブルが使えるようにし、(MXF-wrapped Apple ProRes、Canon Log2/Cinema Gamut and Panasonic V-Log、Sony XAVC-L at 4K など) 多数のビデオフォーマットへの対応も追加している。

Compressor 4.3 は、iTunes Store Package を改良して、代替オーディオ・クローズドキャプション・字幕をオーディションして同期を確認できるようにし、メディアパススルーにより不要な圧縮を回避し、素材の再生中にオーディオストリームをシームレスに切り替えて確認を高速化している。また、Inspector にビデオやオーディオのファイルの詳細情報を表示するようになり、OpenEXR イメージシーケンスへの対応を追加している。

Motion 5.3 は、アイコンの配置方法を更新し、ポータブル Mac やデスクトップディスプレイに合わせてウインドウのレイアウトを最適化し、3D テキストの再生時と調整時のパフォーマンスを改善し、3D テキストにさらにリアルな磨き上げメタルの表面を提供し、Live Photos 対応を追加し、Align To ビヘイビアを新設してキーフレーミングなしで複数のオブジェクトを簡単に接続しアニメートできるようにしている。

これら三つのビデオアプリは今回から最低限 OS X 10.11.4 El Capitan を要するようになった。(いずれのアプリも無料アップデート。単独の購入ならば Final Cut Pro X 新規購入 $299.99、2.97 GB、リリースノート、10.11.4+; Compressor 新規購入 $49.99、445 MB、リリースノート、10.11.4+; Motion 新規購入 $49.99、2.31 GB、リリースノート、10.11.4+)

Final Cut Pro X 10.3、Compressor 4.3、Motion 5.3 へのコメントリンク:

Airfoil 5.5 -- Rogue Amoeba がAirfoil 5.5 をリリースした。このワイヤレスオーディオ送信アプリのメジャーなアップデートで、Google Chromecast デバイス (Chromecast Audio, 第二世代 Chromecast Video、初代のスティック型 Chromecast モデルなど) へのオーディオストリーミングへの対応を追加している。今回のアップデートでは、Mac 用iOS 用の Airfoil Satellite アプリとの間で Airfoil が動作する方法を改良して、AppleScript 対応を追加し、Airfoil Satellite を即座に表示するようにし、再生コントロールにグローバルなホットキーを使うオプションを提供している。今回のリリースからメインウィンドウの中でスピーカーをタイプごとに分離しないようにし、またオーディオ出力デバイスが欠落した際の処理を改善している。(新規購入 $29、TidBITS 会員には 20 パーセント割引、無料アップデート、14.4 MB、 リリースノート、10.9+)

Airfoil 5.5 へのコメントリンク:

GarageBand 10.1.3 -- Apple が GarageBand 10.1.3 をリリースして、新型 MacBook Pro が搭載するコンテクスト対応 Touch Bar への対応を追加した。(2016 年 10 月 27 日の記事“新 MacBook Pro、状況に応じて変わる Touch Bar を搭載”参照。)今回のアップデートでは、選択したトラックのすべての Smart Control を Touch Bar を使って調整でき、Touch Bar をタップするだけで音源やエフェクトのサウンドを微調整したりトラックの音量を調整したりできるようになった。(新しい Mac には無料で付属、Mac App Store から新規購入 $4.99、無料アップデート、949 MB、10.9+)

GarageBand 10.1.3 へのコメントリンク:

iMovie 10.1.3 -- Apple が iMovie 10.1.3 をリリースして、新型 MacBook Pro が搭載するコンテクスト対応 Touch Bar への対応を追加した。(2016 年 10 月 27 日の記事“新 MacBook Pro、状況に応じて変わる Touch Bar を搭載”参照。)今回のアップデートでは、Touch Bar を使ってビデオクリップをムービーに追加したり、それらを使ってピクチャ・イン・ピクチャ、グリーンスクリーン、スプリットスクリーンエフェクトを作成したりできる。また、Touch Bar をタップしてムービーを再生したり、クリップを分割したり、クリップの音量を調整したりする機能にも対応した。(新しい Mac には無料で付属、Mac App Store から新規購入 $14.99、無料アップデート、2.05 GB、10.11.2+)

iMovie 10.1.3 へのコメントリンク:

Mac 用 Pages 6.0.5, Numbers 4.0.5, Keynote 7.0.5 -- Apple が Mac 用 iWork アプリ三つへのアップデートをリリースした。Pages 6.0.5Numbers 4.0.5Keynote 7.0.5 で、新型 MacBook Pro が搭載するコンテクスト対応 Touch Bar への対応を追加した。(2016 年 10 月 27 日の記事“新 MacBook Pro、状況に応じて変わる Touch Bar を搭載”参照。)これら三つのアプリはいずれも Touch Bar を使ってテキスト・図形・表・チャートの編集ができ、また Keynote では Touch Bar から Slideshow 再生のコントロールができる。(三つのアプリはいずれも新しい Mac にバンドルされている。単独の購入は Pages $19.99、228 MB、Numbers $19.99、170 MB、Keynote $19.99、469 MB、三つのいずれも 10.12+ 必要)

Mac 用 Pages 6.0.5, Numbers 4.0.5, Keynote 7.0.5 へのコメントリンク:

iTunes 12.5.2 -- Apple が iTunes 12.5.2 をリリースして、いつも通りに安定性とパフォーマンスの改善を盛り込むとともに、Beats 1 で聴いている際に歌詞が表示されなかったバグを修正した。今回のアップデートではまた、アルバムが正しい順序で再生されなかった問題(私たちもこれに悩まされた)が解消されている。

iTunes 12.5.1 では、Albums または Recently Added の表示でアルバムの中から曲を一つ選ぶと、再生される曲順は Songs 表示で並んでいる順序に従っていた。なので、選択したアルバムの中の次のトラックが再生されると思っていても、iTunes は Songs 表示での並び順(つまり曲名、再生数、最後に再生されたもの、その他)によって再生順序 (Up Next で分かる) を決めていた。私たちがバージョン 12.5.2 をテストしてみたところ、旧来のアルバム再生順序、つまり、その昔のビニルレコードで意図されていた通りにアルバムの中のトラックの順序で再生する挙動に戻っていた。(無料、直接ダウンロードでも Software Update 経由でも 263 MB、リリースノート、10.9.5+)

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iTunes 12.5.2 へのコメントリンク:

MoneyWiz 2.5 -- SilverWiz がバージョン 2.5 の MoneyWiz をリリースした。2016 年の初めごろに私たちがアンケートを取った際にも注目を集めた、個人用財務アプリだ。(2016 年 2 月 29 日の記事“あなたの好みの Mac 個人財務アプリ

MoneyWiz は無料でダウンロードでき、最大 2 つのオフラインアカウントまでならば無料で使える。もっと多くのアカウントを使ったり、オンラインバンキングや PayPal に接続したりしたい場合には購読が必要で、料金は月額 $5.99 または年額 $59.99 だ。購読をすればあなたのすべての Mac、iOS、Windows、Android デバイスの間でデータを同期できるようになる。(年間購読 $59.99、無料アップデート、20.8 MB、 リリースノート、10.8+)

MoneyWiz 2.5 へのコメントリンク:

Safari 10.0.1 -- Apple が Safari 10.0.1 を OS X 10.10.5 Yosemite および 10.11.6 El Capitan 用にリリースして (macOS 10.12.1 Sierra には既に含まれている) WebKit に二件のセキュリティパッチを施した。今回のアップデートで、任意のコードの実行を許すメモり破損の問題点が複数個除去され、ユーザー情報の漏洩に結び付く入力認証の問題点一件も修正された。いずれも、悪意を持って作られたウェブコンテンツを処理した後に起こるものだ。今回のリリースではまた、詳細は不明だが多数のバグ修正もある。Safari 10.0.1 は Software Update 経由でのみ入手できる。(無料、 リリースノート、10.10+)

Safari 10.0.1 へのコメントリンク:

セキュリティアップデート 2016-006 (Yosemite) と 2016-002 (El Capitan) -- Apple が OS X 10.10 Yosemite 用のセキュリティアップデート 2016-006 と 10.11 El Capitan 用のセキュリティアップデート 2016-002 をリリースして、macOS 10.12.1 Sierra リリースで施されたいくつかのセキュリティパッチ(2016 年 10 月 24 日の記事“macOS 10.12.1 Sierra、watchOS 3.1、tvOS 10.0.1 がバグを修正”参照)をこれら二つの古いオペレーティングシステムにももたらした。双方のシステムで、これらのセキュリティパッチによりメモリ破損の問題二件と SGI 画像の解析処理の問題一件に対処が施される。(無料、10.10.5 Yosemite 用は 473.6 MB、10.11.6 El Capitan 用は 414.9 MB、リリースノート)

セキュリティアップデート 2016-006 (Yosemite) と 2016-002 (El Capitan) へのコメントリンク:

Art Text 3.1 -- BeLight Software が Art Text 3.1 をリリースして、このグラフィックデザイン用アプリに 3D オブジェクト用 Depth Gradient 効果、三つの 3D 面取りタイプ、一つの 3D Shear Transformation を新たに導入した。今回のアップデートではまた、macOS 10.12 Sierra 対応となり、Camera Parallel Projection ツールでアイソメトリック・スタイルのグラフィックスを作成できるようになり、3D テクスチャを作成し微調整するためのカスタム画像フォルダを導入し、ユーザーのスタイル要素を Custom Templates にテンプレートとして保存できるようにし、20 個のロゴサンプルを追加している。(BeLight Software からも Mac App Store からも新規購入 $29.99、無料アップデート、628 MB、 リリースノート、10.10+)

Art Text 3.1 へのコメントリンク:

Keyboard Maestro 7.3.1 -- Stairways Software の Peter Lewis が、Keyboard Maestro 7.3.1 をリリースした。macOS 10.12 Sierra の下で走る際の Send Mail Message アクションの Send Now オプションを修正する、メンテナンス・リリースだ。このパワフルな自動化およびクリップボードユーティリティはまた、Custom HTML Prompt の read/write 変数が Sierra で起こしていた問題を解消し、Composite onto Image アクションが (DPI に関係なく) ピクセル単位で働くようにし、いくつかのメモり破損の問題点を修正している。(新規購入 $36、TidBITS 会員には 20 パーセント割引、無料アップデート、19.6 MB、 リリースノート、10.10+)

Keyboard Maestro 7.3.1 へのコメントリンク:

Slack for Mac 2.3 -- Slack が Mac 用デスクトップクライアントのバージョン 2.3 をリリースし、起動の際、あるいはチャンネルやチームを切り替える際のパフォーマンスを改善した。このグループメッセージングシステムおよび生産性ツールは、ウィンドウからタイトルバーを取り除くことにより複数個のチームにサインインしている場合のユーザーインターフェイスを簡素化し、明るいテーマへの対応を改良することでチームのサイドバーのデザインを一新し、新たなチームにサインインする際のフルスクリーンへの対応を追加し、他のアプリからの深いリンクを承認できるようにした。(Slack からMac App Store からも無料、64.2 MB, 10.9+)

Slack for Mac 2.3 へのコメントリンク:

Moneydance 2017 -- The Infinite Kind が Moneydance 2017 をリリースした。2016 年の初めごろに私たちがアンケートを取った際に最も多くの票を集めた個人用財務アプリの一つへの、メジャーなアップグレードだ。(2016 年 2 月 29 日の記事“あなたの好みの Mac 個人財務アプリ”参照。)今回の新バージョンでは複数のコンピュータやモバイルデバイスの間でデータを同期できるフルに暗号化された増分同期エンジンを追加し、(例えば Dropbox など) どの共有フォルダを使っても終端間でデータを暗号化できるようになった。この新バージョンで Python スクリプトへの統合対応が追加され、新設のスクリプトエディタを使って自分のスクリプトや拡張をビルドして走らせられるようになっている。

Moneydance 2017 ではまた、複数のカラースキームから好きなものを選んだり、自分でカラースキームを作成したりもできるようにし、予算計算に関するバグを修正し、資産配分その他のグラフをクリーンアップし、レジスターの中で今日の取引に集中するキーボードショートカット Command-T を追加し、アプリ終了・ファイル切り替えの際にバックグラウンドで走るクリーンアップ処理を改良し、OFX 修正取引を処理する際の挙動を改善している。

Moneydance 2015 のライセンスを購入した人は無料で Moneydance 2017 にアップグレードできる。Moneydance 2015 より前のリリースのライセンスを持っている人は (50% 割引の) $24.99 で新バージョンにアップグレードできる。Moneydance 2017 は Apple の承認プロセスを通過し次第 Mac App Store にも間もなく登場するはずだが、そのバージョンにはサンドボックスの制約のため拡張・プラグインのインストーラが含まれていない。( The Infinite Kind から新規購入 $49.99、Moneydance 2015 から無料アップデート、それ以前のバージョンからのアップグレード $24.99、97.5 MB、リリースノート、10.7+)

Moneydance 2017 へのコメントリンク:


ExtraBITS、2016 年 10 月 31 日

  文: TidBITS Staff: [email protected]
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

今週の ExtraBITS では、Chuq Von Rospach が Apple の MacBook Pro イベントに対する苦情に応じ、長年の Apple 相談役 Ken Segall が Siri Remote に対する嫌悪感を表明し、Apple の AirPods の発売が延期される。

Chuq Von Rospach、MacBook Pro スペシャルイベントへの苦情に対応 -- 先週の Apple スペシャルイベントに、多くの人たちが怒っている。主な苦情は Apple がデスクトップ Mac を無視したというものだが、それ以外にも新しい MacBook Pro に専用の Esc キーがないこと、Thunderbolt 3 ポートしかないこと、RAM が最大 16 GB までという点にも怒りが集まった。けれども Apple ベテランの Chuq Von Rospach がこれらすべての批判に筋の通った反論を書き、Apple としてはただ単にデスクトップ Mac についてもきちんと触れて、いずれ更新されるとほのめかすだけで十分だったろうと示唆した。ただ、結局のところ Mac は再びニッチ製品への道を辿りつつあるとも彼は述べた。そして、Apple のデザイン決定の多くが、その事実を反映しているのだと。

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Ken Segall、Siri Remote を嫌う -- 長年 Apple の相談役であった Ken Segall が、第四世代 Apple TV に付属する Siri Remote に対して辛辣な言葉を投げ付ける。彼はこれを初代の iMac に付属していた悪名高き「アイスホッケーのパック」マウスに例えて、いずれも過剰に対称的で、Siri Remote をどっち向きに持っているのかが分かりにくい、特に薄暗い部屋では厄介だ、と指摘する。また、Siri Remote のトラックパッドも意図せず動作させてしまいがちで、従来型の四方向ボタンに比べて正確度も落ちると批判する。けれども iMac のマウスと同様に、いずれ Apple は間違いに気付いて Siri Remote をデザインし直してくれるだろう、と Segall は期待している。

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Apple、AirPods の発売を延期 -- Apple が出す予定のワイヤレス・イヤーバッド、AirPods を早く買いたくてうずうずしている人には残念な知らせだ。予定よりもう少し長く待たねばならない。Apple は当初、2016 年 10 月末の発売を約束していた。けれども今回同社はこれをきちんとした製品として出荷するには「もう少し時間が必要」と発表した。TechCrunch への声明の中で、Apple は「準備の整っていない製品を出荷すべきでないと私たちは考えており、AirPods を顧客の皆さんにお届けできるまでにはもう少し時間が必要です」と述べた。AirPods が出荷できるようになる期日について同社は明言を避けた。

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TidBITS ISSN 1090-7017©Copyright 2016 TidBITS: 再使用はCreative Commons ライセンスによります。

Valid XHTML 1.0! , Let iCab smile , Another HTML-lint gateway 日本語版最終更新:2016年 11月 4日 金曜日, S. HOSOKAWA