TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#1350/02-Jan-2017

2017 年を迎え、皆さんからの切れ目のない支援に感謝したい! ここ二週間における Apple 世界の大ニュースは、待ちに待った AirPods のリリースだった。Julio Ojeda-Zapata がこの Apple のワイヤレス・イヤーバッドをレビューし、Josh Centers が AirPods で接続が切れたり音が途切れ途切れになったりする問題の解決策を説明する。また、前号以後には macOS 10.12.2 Sierra も登場した。このリリースで、新型 MacBook Pro モデルにおけるいくつかの問題点に対処が施されたが、その一方で Sierra が以前からトラブルを起こしていた PDF 対応に関する深刻な問題が一つ、新たに発生している。さて、Sierra で何か助けが必要なら、Apple の新しい iOS 用 Apple Support アプリを使うのが良いだろう。ウェブ上で見つからない情報を提供してくれる訳ではないが、それでも以前より楽にナビゲートできるかもしれない。あともう一つ、Glenn Fleishman が ChronoSync 4.7 の魅力的な新機能に深く踏み込み、これらをクラウドバックアップ用に活用できるのではないかと考察する。今週注目すべきソフトウェアリリースは、SEE Finance 1.1.2、ChronoSync 4.7.2、HandBrake 1.0.1、GraphicConverter 10.3、Quicken 2017 for Mac 4.4.1、LaunchBar 6.8、MoneyWiz 2.5.3、Default Folder X 5.1、Boom 2 v1.5.1、Capto 1.2.3、BBEdit 11.6.3、それに iTunes 12.5.4 だ。

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Apple Support アプリ、iOS でのサポート選択肢を能率化

  文: Josh Centers: [email protected], @jcenters
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

あなたの iPhone、iPad、あるいは Mac で何か助けが欲しいけれども、Apple の Support ウェブサイトで分かりにくい曲がりくねった道筋を辿るのは嫌だと思いませんか? そういう人たちのために、別の選択肢ができた。Apple から新しく iOS 用に出された Apple Support アプリ だ。41.5 MB のこの無料のアプリで、サポート記事を読んだり、Apple サポートに連絡したり、修理の予約をしたりが手軽にできる。他方、Apple が既存の Apple Store アプリから Genius Bar 予約をする機能を削除したことに注意しよう。[訳者注: 現在のところ Apple Support アプリは米国向けで、日本では入手できないようです。]

新しい Apple Support アプリは、あなたの Apple ID を使って登録されたあなたのデバイスを自動的にすべてリストする。もしもあなたの Apple ハードウェアコレクションの中のどれかがリストに登場しないなら、Get Help with Other Products をタップすれば別のデバイスを調べ始める。

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一つの製品を選択すると、このアプリはサポートのカテゴリーリストを表示する。あなたが困っている問題に最も近いと思えるカテゴリーをタップしよう。すると、いくつかの解決策が提案される。たいていの場合、関連あるサポート記事や、連絡方法の選択肢、例えば Apple に電話する、Apple から電話するようスケジュールを設定する、あとで Apple に電話するようリマインダーを設定する、あるいは Apple とチャットする、などの方法が呈示される。

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この Apple Support アプリは決してあっと驚くようなものでもないし、Apple の Support ウェブサイトに既存のものでない何かを提供することもないようだが、何か問題が起きた時にあなたの iOS デバイス上に持っていれば便利なアプリだと言えるだろう。

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AirPods の接続にまつわる問題の解決法

  文: Josh Centers: [email protected], @jcenters
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

私は自分の AirPods を一般向け出荷日の初日, 19 December 2016, に受け取った。そして直ぐに好きになった。それは心地良く、聞こえも良く、そして私の Apple 機器間で雑作もなく切り替えられた (例外は Apple TV で、こちらは少々手がかかる)。

だが、3日目になって、AirPods を iMac につなぐのに問題が起こり始め、がっかりさせられることなった。たとえつなげたとしても、オーディオはつっかえ、そしてつながったり切れたりした。

トラブルシュートとして、私は幾つかの手順を試した。Bluetooth を入り切りする、ペアリングを切りそして再度ペアリングする、そして Mac を再起動するであるが、結果的にはこれらの組み合わせで動くようになった:

  1. AirPods をどれでもいいからネイティブにサポートする Apple 機器からペアリングを切る。iOS では、これを Settings > Bluetooth で、Mac 上では、System Preferences > Bluetooth で行う。AirPods のペアリング切断を1台のネイティブにサポートする Apple 機器から行えば、同じ iCloud ログインを共有する全ての Apple 機器から切り離される。

  2. AirPods とペア付けした 全ての 機器の電源を切る。私の場合、これは iPad, iPhone, iMac, そして MacBook Pro であった。私は Apple Watch の電源も切るべきであったと思うが、そこまで思いが及ばなかったし、結果的には問題は起きなかった。

  3. 問題に遭遇した機器の電源を入れる - この場合、私の iMac - そして AirPods をそれにペアリングする。

  4. 残りの機器の電源を入れる。数分のうちに iCloud が自らの魔法を働かせ、その AirPods を自動的に再ペアリングしてくれるはずである。

これらの手順を踏んだ後、AirPods は私の iMac とも再度完全に動き始め、そして、iPhone に切り替え、更に再度 iMac へと戻った後でも順調に動き続けた。もし、あなたも接続や断続の問題に遭遇しているのであれば、このやり方で解決出来ることを願っている。

この再ペアリング以来、私は Mac 上での新しい動きに気づいた:Safari の中で YouTube ビデオを見ている間に、片方のポッドを耳から外すと、Safari はそのビデオを一時停止するのである。こんなことは以前には起こらなかったので、最初のペアリング時には何らかの不具合が生じていて、この機能は働かなかったのではなかろうか。

新しい機器にはどんなものでも、バグや不具合はつきものである。我々としては、Apple が報告された問題に注意を払い、そして問題を修正するべく努力することを願うのみである。何故ならば、AirPods は、ワイヤレスのイヤフォンを求め、値段では怖じ気づかなかった Apple ユーザーにとっては魅力的な製品だからである。

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macOS 10.12.2 Sierra、新型 MacBook Pro にフォーカス

  文: Josh Centers: [email protected], @jcenters
  訳: 清水 史彦 <qff01604@nifty.com>

Apple は、macOS 10.12.2 Sierra をリリースした。これにより、いくつかの小さな新機能と、信頼できる一連のバグ・フィックスがもたらされる。バグ・フィックスの中には、最近リリースされた Touch Bar 付きの MacBook Pro において、Sierra の動作を改善するものもある。この 1.2 GB のアップデートは、Software Update を通じて手に入れるのが最も簡単だ。代わりに、デルタ・アップデータ (10.12.1 用, 1.94 GB)、または、コンボ・アップデータ (10.12 用, 2.05 GB) をダウンロードすることもできる。

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もし、あなたが、新型 MacBook Pro のラップトップのうち、どれか一台を持っているのなら、おそらく、すぐにでもアップデートした方がいいだろう。だが、他のみなさんには、少なくとも 2, 3 日待って、新しいバージョンで何か予期しない問題がないか確かめることを、私たちはおすすめする。

macOS 10.12.2 のアップデートは、新型 MacBook Pro に真っ向から狙いを定めた多くの改変が特徴だ。これには、Chinese Trackpad Handwritingボタンの Touch Bar への追加、Touch Bar のスクリーンショット撮影機能のサポート、各種のグラフィックス上の問題と System Integrity Protectionの修正、Touch Bar の絵文字ピッカーが、メイン・ディスプレイに現れるというバグの修正が含まれる。

Touch Bar のスクリーンショットを撮るためには、Command-Shift-6 を押せばよい。すると、スクリーンショットが Desktop に現れる。指定時刻に作動するスクリーンショットを撮るために、Capture > Timed Touch Bar(Command-Shift-T) を選択して、アップデートされた Grab ユーティリティを使うこともできる。

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10.12.2 において、Apple は、Touch Bar を搭載した MacBook Pro のバッテリー持続時間に関する広範なクレームに対応している。だが、それはおそらくあなたが望んだであろうと思われるやり方ではない。バッテリー持続時間を改善する代わりに、Apple は、バッテリー・メニュー・バーの項目から、バッテリー持続時間の予測を外したのだ。Apple は、TechCrunch に対して、これらのラップトップのバッテリー持続時間に問題はないが、バッテリー持続時間の予測は誤っていたと述べた。バッテリー持続時間を正確に予測することが困難であろうがなかろうが、多くの人が、新型 MacBook Pro は、Apple が宣伝している「10 時間まで」というバッテリー持続時間には程遠いと思っている。

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目につくのは、Apple のリリース・ノートに、新型 MacBook Pro を悩ませている、大容量のデータを USB 接続でコピーする際の問題 ("一部の 2016 年型 MacBook Pro に USB ドライブの問題", 2016 年 12 月 5 日) について、何も言及されていないことだ。だが、この記事に関する読者による議論で、Apple は、10.12.2 のベータ版では、この問題に対処しようとしていたことが明らかになった。私たちは、10.12.2 のリリース版に、この問題の解決が含まれているか、まだ確認できていないが、もし、あなたが、Time Machineで、あるいは、SuperDuper や Carbon Copy Cloner のようなアプリでバックアップを取ろうとした際に、問題があるのであれば、ただちに、10.12.2 を試してほしい。

サポートされているその他全ての Mac のために、macOS 10.12.2 では、

企業ユーザー向けには、macOS 10.12.2 で、多くの修正も加わる。

最後に、macOS 10.12.2 のアップデートには、49 個のセキュリティに関わる修正が含まれている。

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Sierra の PDF 問題、10.12.2 で悪化

  文: Adam C. Engst: [email protected], @adamengst
  訳: 清水 史彦 <qff01604@nifty.com>

macOS 10.12 Sierra に関する最初の問題の一つは、Fujitsu の ScanSnapスキャナで作られた PDF を中心に展開した。("ScanSnap ユーザーは Sierra アップグレードをせず待つべき", 2016 年 9 月 20 日参照) これらの問題は、当初恐れられたほどには深刻でないように思われた。("ScanSnap の Sierra との競合は簡単に回避出来る", 2016 年 10 月 3 日参照) そして、Apple は、これらの問題を macOS 10.12.1 で解決した。("macOS 10.12.1 Sierra、watchOS 3.1、tvOS 10.0.1 がバグを修正", 2016 年 10 月 24 日参照) だが、今や、Sierra の PDF 関連の問題は、ますます深刻になっているようだ。読者は、PDF を Preview で編集する際には、用心した方がよい。

Sierra の PDF 関連の問題が ScanSnap スキャナ以上に影響を与える可能性があることを私が最初に聞いたのは、この問題に関する 2016 年 10 月 26 日付けの記事の一つに寄せられたコメントにおいてであった。ソフトウェア開発者である Craig Landrum (文書管理システムの会社である Mindwrap の創始者) は、次のように述べている。

PDF に関する Sierra の主要な問題は、Apple が macOS 10.12 で、PDFKitフレームワークを改訂することを選んだことにある。そして、このことによって、PDF 関連の開発者が頼りにしている多くのものが破壊された。(私は、scan-to-PDF ソフトウェアを書いているし、影響を受けた他の開発者のことも知っている。) サードパーティーの PDF ライブラリを使っているソフトウェアはおそらく問題なく動くだろうが、Apple の PDFKit ライブラリを頼りにしている開発コミュニティの中にいる私たちは、本当に打撃を受けた。そして、私たちには、この問題を自分たちで解決する手段は何もないのだ。PDFKit に関して見出されたいくつかの深刻な問題については、Apple に送られたバグの報告が山のようにある。私たちは、次回のリリースで、Appleがこれらの問題に対処することを希望している。

Craig Landrum のコメントは、10.12.1 のリリースや ScanSnap のバグ・フィックス後に寄せられたので、彼の PDFKit に対する批判は、以前は正しかったのだろうが、もはやそうではないとして、私はファイルにしまい込んだ。だが、その後数か月もの間、ずっと、さらなる苦情が出現し続けた。DEVONtechnologies のトップである Eric Bonisch-Volkmann は、DEVONthinkで、Sierra の PDF に関するバグへの対処に、多大な開発時間を割いてきていると私に語った。DEVONthink の開発リーダーである Christian Grunenbergは、Sierra の PDFKit の改訂版は、「未完成品」だと述べ、次のように言っている。

Apple は、iOS と macOS の両者に、共通の基盤を使いたいと考えている。だが、これはリリースがあまりに時期尚早だったうえに、Apple は、はじめて (少なくとも私の経験においては) 互換性について注意を払うことなくいくつかの機能を軽視した。そして、さらに悪いことには、以前の多くの機能が、今や壊れているか、あるいは、全く実装されていない。これは、多くの回避法、あるいは、実装すべきものを、私たちが自分で付け加えなければならないということを意味する。そして、やらなければならない仕事が、今なお残っているのだ。

10.12.2 は、新たな問題を持ち込んできた。(Apple は、今は、少なくとも失われた互換性については解決したいと思っているようだ) そして、他の問題については、もちろん、ほとんど何も解決されていない。これは、DEVONthink だけの問題ではなく、他の多くのアプリケーション (例えば、EndNote, Skim, Bookends, そして EagleFiler) も同様に影響を受けている。

実際、EagleFiler の開発者である Michael Tsai は、PDFKit に関して、自分の問題を確認し、ちょうどブログに投稿したところだ。

私は、macOS 10.12.0 で、多くの PDF のバグに出くわした。私が知る限り、まだ解決されたものはなく、10.12.2 における新しい問題のために、すでに2 件の Radar (訳者注: Apple のバグ・トラッキング・システム。ここでは、Radar に報告されたバグ・レポートを指している。) を申し立てした。特に、PDF は、Apple がかつて優位性を保っていた領域だったことを考えると、基本的な機能がこんなに長期間、壊れたままでいるというのは悲しいことだ。

さらに懸念されることに、そして、これが最終的に、こうした報告をすべて見つけ出し、この記事を書くよう、私が後押しされた理由であるが、最近リリースされた macOS 10.12.2 は、PDFKit に関する深刻なバグを、新たにもたらしたのだ。DocumentSnap サイトの Brooks Duncan は、彼の読者の一人から来たメモを公表した。その読者は、Fujitsu の ScanSnap ソフトウェアでスキャンした PDF に加えられた OCR テキストのレイヤーが、そのPDF を Preview で編集すると、消去されてしまうと警告している。EricBonisch-Volkmann はこの問題を確認し、悲しそうに、次のように述べている。

10.12.2 では、数個のバグが解決されたが、PDF の OCR テキスト・レイヤーは死んでしまった。私たちは、DEVONthink 2.9.8 で、以前のバグに対処したし、次回の 2.9.9 では、10.12.2 の新しい問題に対処するつもりだ。だが、そう、あなたが PDF を Preview で編集するや否や、テキスト・レイヤーは消えてしまうのだ。私たちの顧客は大喜びだ!

DocumentSnap の読者は、この問題は、他のソリューションを使ってスキャンされ、OCR された PDF には影響を与えないと述べたが、Brooks Duncan は、ScanSnap と Doxie スキャナで行ったスキャンの両者で、この問題を再現することができた。彼は、どちらのソリューションも ABBYY FineReader エンジンに依っていると言及している。

Sonny Software の Jon Ashwell (Bookends 文献アプリの開発者) は、同様にかなりの不満を表明し、次のように述べている。

私たちは、Sierra で壊れてしまった完璧に素晴らしいコードの問題に対処するため、とても一生懸命に努力してきた。バージョン 10.12.0 と 10.12.1はひどかったが、10.12.2 は私たちにとって最悪だった。PDF を注釈付きで表示すると、Bookends がクラッシュを引き起こすようになったのだ。私たちは、この問題に取り組んできたが、その過程で、対処法を探している間、PDFの注釈機能を停止しなければならなかった。私は、Apple に対して、数多くのRadar を申し立てしたが、そのうちの二つは、重複しているとして閉じられてしまった。別のケースでは、私たちのアプリを提出するように依頼され、そうしたのだが、その後、何の音沙汰もないままである。私は、杜撰なコードやApple の冷淡さといった、これほど残念なケースをいまだかつて見たことがない。

PDF の注釈に関する問題については、Apple のデベロッパー・フォーラムにおける怒りにかられた投稿から判断して、他の開発者も同様に苦しんでいると言える。

Christian Grunenberg は、この問題は Apple に全責任があると非難している。

Apple は、PDF の仕様のうち、ほんの一部しかサポートしていない。そして、そのサポートたるや、常にバグだらけだ。例えば、古い ABBYY FineReader 8のエンジンで作られた東欧の文字を含む PDF 文書は、編集後、PDFKit によって文字化けしてしまう。そして、Peter Steinberger (PDF フレームワークのPSPDFKit の作者) によって報告された問題は、Apple はそれを解決するつもりがないというレスポンスと共に、ただ単に閉じられてしまった。

PDFKit を使っていないアプリは、もちろん、こうした問題に対して影響を受けることはないが、それも、そうした PDF がもっと広範囲に共有されることはなく、Preview で編集されることもないという程度においてのみだ。Smile の Greg Scown は、PDFpen は、PDFKit とは無関係に動作すると私に言った。だが、

Preview のバグは、PDFpen の顧客にも影響を与えている。PDFpen ユーザーの文書を受け取った人は、文書を見たり編集したりするのに、PDFpenよりもむしろ Preview を使うだろう。私たちは、いまのところ、PDFpen が、文書の OCR レイヤーのデータ喪失を引き起こすという報告は受け取っていないが。

興味深いことに、Preview 自身は、サードパーティーのアプリほどには、PDFKit のバグの被害を被っていないかもしれない。Micahel Tsai は、彼が見てきたバグのいくつかは、Preview では現れないと言っている。これは、Apple の Preview チームがこの問題に気づいていて、PDFKit そのものの中でそれらの問題を解決するのではなく、むしろ問題を回避する方を選んだということを示唆している。

以下のことを述べるのは私にとって苦痛だ。だが、"Take Control of Preview" の共著者として言うならば、Sierra のユーザーは、Apple がこれらのバグを解決するまで、PDF 文書を編集するのに、Preview を使わないようにすることを私はおすすめしなければならない。もし、Preview でのPDF 編集が避けられないのであれば、編集によって何らかの破損が発生した場合に備えて、そのファイルのコピー上でのみ作業を行い、元のファイルを保持するように必ずすること。Smile の PDFpen は、PDF を扱うあらゆる種類の操作に対して、明らかに代替手段となる。(そして、参考資料として、私たちには、"Take Control of PDFpen 8" もある。) Adobe の Acrobat DC も選択肢の一つだが、これは値段が高い。

当面、私たちは、PDF関連のバグのうち、どれが Apple によって 10.12.3 で解決されるのか、念入りに見守っていくつもりだ。10.12.3 は、ただいま、ベータ・テストに入っている。

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Apple のワイヤレス AirPods は待った甲斐あり

  文: Julio Ojeda-Zapata: [email protected]
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

最初は October 2016 の後半と約束されていた AirPods がようやく出た。待った甲斐はあるか? 簡単に答えれば:多くの部分では、イエスである。言い換えれば、最近封切りとなった Star Wars 映画になぞらえて言えば、これは待ち望んだポッドである (勿論、その法外とも思える値段を受け入れられるのであればだが)。

Apple はその象徴的な EarPods のワイヤレス版を 7 September 2016 に発表したが ("W1 チップ搭載 AirPods、ワイヤレスオーディオの新時代を開く" 7 September 2016 参照)、それは一部には iPhone 7 からイヤフォンジャックを取り除いてしまったことに対する非難の声をかわすためであった。Apple が言いたかったことは、"あのジャックは忘れて欲しい、こっちの方がずっと良いです" で、October 2016 の後半には出すと約束した。

同社はこの AirPods のリリースを December まで遅らせなければならなかったが、その理由は明らかにされていない。結局 12 December 2016 にオンラインで、そして Apple Store では一週間後に売り出された。オンラインでは、最初の日に 4 週間の繰越注文となり、Apple は現時点で、新しい注文の分は 6 週間後の出荷になるとしている。

Apple は、私にテスト用の AirPods を送ってくれたので、私はそれ以来これを多用している。全体的に私は満足している。

外観と装着感 -- この白色の AirPods は外見上は EarPods と何ら変わらない - 違いはコードが無くなってコードレスとなった。耳に嵌る部分は同じである。そして、白い音声ケーブルがぶら下がっていない代わりに、AirPods の先端は金属が埋め込まれ、比較的目立たない外観に仕上がっている。

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AirPods は私の耳にはぴったりで、しかもずれて来ない。勿論、耳は千差万別であり、あなたの感触は違うかもしれない。しかし、私は以前の EarPods ではすぐに外れてしまう問題を経験していた。恐らく、ケーブルの重さが悪さをしていたのであろう。

充電ケース -- AirPods を使っていない時は、見栄えのする小さな充電ケースに収めておく。ケースの蓋は磁石式に閉じ、そして AirPods もケースの穴に磁石式に収まる。

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Lightning ケーブルがケースの底に接続出来るようになっており、これでケース内にある電池を充電する。AirPod 穴の間にあるライトが充電中はオレンジに光り、そして充電が完了すれば緑に変わる。

Apple によれば、AirPods は一回の充電で、聞くのであれば約 5 時間、そして通話の場合は 2 時間はもつ。私のテストでもこれ迄のところ同様の結果となっている。

移動中は、このケースが更なる電池寿命を提供する;必要に応じて AirPods をケースに放り込んでおけば、合計して 24 時間以上の聞き時間か、最大 11 時間の通話時間が得られる。AirPods を 15 分充電すれば、最大 3 時間の聞き時間か、1 時間以上の通話時間が得られる。

Apple によれば、もしケースも AirPods も両方とも電池を使い切ってしまった場合、完全に充電するには約 2 時間かかると言う。

Bluetooth -- AirPods は他の色々な機器と同様 Bluetooth に依存しているが、Apple は同社の新しい W1 チップを加えて標準の Bluetooth 経験を改善した。設計目標としたものは、ワイヤレス接続、音質、そして電池寿命を最適化することである。

最初のペアリングは至って簡単である。充電ケースを開けた途端、AirPods と iPhone はお互いを見ることが出来た。設定は魅力的なアニメーション経由で手順を踏める;Connect をタップし、次は Done である。それだけ。他の Bluetooth アクセサリのペアリンッグではこれ程簡単にはいかない。

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AirPods を使ってみる -- AirPods には電源ボタンは無く、ケースから出すと自動的にスイッチオンとなる。耳に嵌めれば、使用可能であることを示すトーンが聞こえる。自分の機器上のオーディオ出力として AirPods を選択し、そしてオーディオアプリで Play を押す。時には、再生が始まるまで多少の遅れがある場合もある。使用中にどちらかのポッドを耳から外すと、オーディオは中断し、そして戻すと再開する - これは誰かがあなたの注意を引きたい時には便利な機能である。

音質は良いが、格別良いと言うわけでは無く、EarPods のものと余り変わらない。片方しか使わないと、音質は更に落ちるが、皿洗いをしながらポッドキャストを聞くとか、サイクリングをしたり、走ったり、或いは運転したりする時に安全を図るため片方の耳を空けておくと言うような場合では十分である。

どちらかの AirPods をダブルタップすると、違うことが起こる。デフォルトの設定では、Siri を起動するか、かかってきた電話に答えることになる。この動作は Settings > Bluetooth で変えられ、一時停止と再開にダブルタップを使うようにも出来る。自分の AirPods の隣にある i アイコンをタップするとこれらの設定が見られる。

この Siri ダブルタップオプションは、功罪相半ばする。Siri を呼び出せば、次のトラックに跳ぶとか、音量を調整するとかの作業をやらせることが出来る。

それ以上は、機能性は一定せず、使うアプリに依存する。例えば、Apple の Music アプリでは、Siri に曲をもう一度やり直すように言えるが、私が使う Google の Play Music アプリでは、曲をやり直すのは不可能である。

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Siri が想定されたように働かない時はとりわけイライラさせられる。と言うのも、AirPods には物理的な制御手段がないからである。音量と再生の制御の全てを Siri に依存するとなると、Siri は Internet 接続に依存している。もしオフラインの状態にいるならば、音量と再生の制御は機器上で手動でやらなければならい。これは Apple が今後手を打たなければならないものの一つである。何故ならば、Siri の前身である Voice Assistant はこれらのことをするために Internet 接続を必要とはしなかった。

音声通話 -- 電話での通話も AirPods でうまく働く。携帯電話をかけている時、私の話しかけている相手方は私の声はよく聞こえると言っており、そして彼らの声も私にはまずまずに聞こえた。繰り返しになるが、AirPods の音声品質はそもそも目を見晴らせるようなものではない。

電話アクセサリとしての AirPods の信頼性は重要である。と言うのも、私は前に携帯通話用の他の Bluetooth アクセサリで苦い経験をしているからである。私の声はひどく聞こえると言われたり、私の側では通話を続けるために iPhone を取り出さなければならないと言ったことがしょっちゅうであった。

しかしながら、AirPods を使っての Internet ベースの音声通話の音質は一貫しないことがある。

私は Josh Centers と一連の VoIP-call テストを FaceTime と Slack を使って行った。我々の全般的な印象は、この様な通話は予測不能だと言うことである。声はよく聞こえる時もあるし、くぐもってしまう時もある。時には、背景で微かではあるがはっきりした 雑音が聞こえることもあるが、全くないこともある。

我々はどうも一つの大きなバグを突き止めたようだ:我々のどちらかが、iPhone から Slack で音声通話をしようとすると、不快な削岩機の様な音が響くのである。

複数機器への対応 -- AirPods を複数の Apple 機器で使うのは簡単である。前提は、すべての機器が同じ iCloud アカウントにログインしていることである。一旦 AirPods を一台の iPhone, iPad, 或いは Mac と設定すれば、後はあなたのどの iOS 機器や Mac とも働く。

Mac 上では AirPods を System Preferences > Sound で、或いは、メニューバーにある Sound や Bluetooth アイコン経由でオーディオ出力機器として選択する。iPhone や iPad 上では、一番下から上方にスワイプして Control Center を出し、次に右から左へスワイプしてオーディオ制御を出す。左下にあるアイコンがオーディオ出力のオプションを表しており、接続されている AirPods もここに含まれる。

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私の iPhone, iPad, iMac そして MacBook Pro の間での切り替えは全般的にはうまく行く。しかしながら、時折、私の iCloud アカウント上の iOS 機器が AirPods の存在を忘れてしまうことがあり、その場合は手動での再ペアリングを強制される。Josh は同じ様な問題を解決したことがある;"AirPods の接続にまつわる問題の解決法" (21 December 2016) 参照。

奇妙なことは他にもある。AirPods 経由で綺麗に聞こえていた Mac のオーディオが、Sound 設定ペーンに行き Input タブに行った時、突然そしてびっくりする程品質の劣化を引き起こすことがある。ある時、私がこれをやったら、iTunes での "Batman vs. Superman" 映画再生が、AirPods からの奇妙な干渉障害を伴って切れてしまった。その上 Mac は映画の再生位置も忘れてしまっていた!

どうも AirPods は、マイクの入力用に Bluetooth の帯域を空けようとして出力オーディオの帯域を絞ろうとしているようで、その結果、意図しない音を発するらしい。幸いにして、これは基本的にはうまく動作している複数機器対応の中の稀な出来事である。他の Bluetooth アクセサリでは通常複数機器で使うのは大変であることを考えると、この対応能力はとても価値がある。

もし iPhone にペア付けされた Apple Watch をお持ちで、その iPhone を AirPods と共に使っている場合、AirPods はその時計とも接続されており、音は電話と時計の間で自動的に切り替えられる。例えば、かかってきた電話を Apple Watch で受けた場合、掛け手の声は AirPods を通して聞こえてくる。

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最近 "Take Control of Apple TV" のアップデートを書いたばかりの Josh は、Apple TV とのテストもやってみた。 Settings > Remotes and Devices > Bluetooth で AirPods とペア付けした後、Settings 画面に戻り AirPods を接続先として選択するだけである。手動で接続を切る必要なない、何故ならば、ネイティブにサポートする機器から AirPods に接続すると Apple TV からは自動的に切断されるからである。

Non-Apple 機器 -- 新しい AirPods を Apple が作ったのではない機器と使おうと思ったどうであろうか?

良い知らせは AirPods は実際に non-Apple の機器でも働く - 結局のところ、これも Bluetooth アクセサリに変わりはない - でも、使うのは結構大変である。

まず手始めに、設定手順からして違う。AirPods 充電ケースの背面に小さなボタンがあるので、このボタンをポッドの間にある小さなライトが白く点滅し始めるまで押し続ける。それが、あなたの Android ハンドセットや Windows PC 上の Bluetooth 設定の機器リストに AirPods が現れているか見るきっかけである。

私は Windows-based Microsoft Surface Pro ノートブック、そして3台の Android ハンドセットとのペアリングをテストした - それらは Samsung Galaxy S7, Google Pixel, そして Lenovo Moto Z - いずれも大きな問題はなかった。

AirPods は Apple エコシステムの外では、極めて利便性に欠ける。例えば、AirPods を一つの non-Apple 機器から他のものへと切り替えたいと思った場合、二番目の機器とペアリングする前に、最初の機器から AirPods のペアリングを解かねばならない。つまり、AirPods は通常の Bluetooth アクセサリの様に振る舞うが、Apple の秘密の味付けは何ら加えられない。しかしながら、ネイティブにサポートされている Apple 機器に切り替える場合、それに先立って手動でペアリングを解く必要はない。

待った価値はあるか、そして値段には見合うか? -- 何故 AirPods がこれ程遅れたのかは永久の謎に終わるかもしれないが、個人的には Apple が問題解決に時間をとったことを歓迎する。iFixit は、この遅延は充電ケース内の半田付けの問題が原因ではないかと推測している。

あらゆる点から見て、AirPods は私が iPhone と共にテストしたことのある最善の Bluetooth オーディオアクセサリである。オーディオ再生の品質ではもっと高品質のものもあるかもしれないが、音声通話に関しては AirPods はこれまで使ったことのあるものの中では別格と言える程良い。ペアリングの簡単さは利点だし、Apple 機器から機器へとシームレスに移行できるのは嬉しいおまけである。

AirPods の最大の欠点はその値段かもしれない:一式で $159 で、補充用ポッドは $69 もする。この何分の一かの値段で買える Bluetooth イヤフォンは数多くある - 勿論 Apple の先進的な技術は付いてこないが。

異論はあるかもしれないが、品質は値段相応である。AirPods が登場するまで、私の一番のお気に入りの Bluetooth イヤフォンは LG の物であった。首の周りに巻きつける型の物もあり、これだとケーブルは正面に出てくる。音質は素晴らしいが、値段は AirPods とあまり変わらない辺りから始まり上がっていく。もっと普通のデザインの LG イヤフォンもあり、そちらだと $100 近辺となる。

AirPods の成功と言えるデザインとその高価さ故の悩みもある。まず第一に、私の耳に余りに心地良く収まってしまうので、付けていることすら忘れてしまいがちで、そのままシャワーを浴びてしまうのではないかと心配になってくる (公式には、耐水とはうたわれていないが、非公式のテストでは大丈夫な様に見える)。

第二に、あまりに小さいので私は失くしてしまうのではないかと心配である。その可能性を減らすため、私は使っていない Apple Lightning ドックにケースを取り付け iMac のそばに置いて、この AirPod キットを一種のデスクトップ充電ステーションにした。

imageこれらの個人的な心配事は脇におけば、私は AirPods に興奮している。私は、この様な信頼性と利便性を兼ね備えた Apple オーディオアクセサリを所有することを長いこと夢見てきた - そして、それは今や現実となった。

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クラウドバックアップ用 ChronoSync 4.7 を検討する

  文: Glenn Fleishman: [email protected], @glennf
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

その昔、Apple の Backup アプリ を、ちゃんと取って代われるものが何もないというだけの理由で、その価値以上に気に入って使っていた Mac ユーザーは少なくない。この Backup アプリはいくつかのバージョン改訂を経たが、その中で最も記憶に残っているバージョンにおいてさえ、できるのはファイルを選択的に Mac から MobileMe iDisk へコピーすることのみであった。MobileMe iDisk とは、その後「クラウドストレージ」として知られるようになった概念の、Finder にマウント可能なバージョンと言うべきものだ。

iCloud の登場により Backup アプリの iDisk オプションは不要となったが、それでも iCloud Drive の実現までにはまだまだ何年もかかり、しかも一般的なファイルストレージの機能しか実現されなかった。ローカルなバックアップについては Time Machine がその隙間を埋めたが、結局のところクラウドベースのオプションを提供するには至らなかった。そして、独立のクラウドバックアップのオプション、例えば BackblazeCrashPlan などが、定期的に料金を支払うことと引き換えにあなたのデータをバックアップするようになった。(CrashPlan では、ローカルまたは LAN ベースのバックアップもできる。)

Apple の Backup アプリの後継と言えるかもしれないものが登場した。Econ Technologies の ChronoSync の、バージョン 4.7 リリースだ。ChronoSync は古くから活躍している Mac 用アプリで、オンデマンドおよびスケジュールによる同期とバックアップをする。私たち TidBITS スタッフ一同は、この ChronoSync が新たに Amazon の Simple Storage System (S3) や Google の Google Cloud Storage を同期元あるいは同期先として使うオプションを加えたことを知ってワクワクした気持ちになった。ChronoSync 4.7 はまた SFTP (Secure FTP) 対応も追加しており、これを使えば遠隔ファイルストレージにさらなる選択肢が増える。

ChronoSync は膨大な数のオプションを持ち、それらの動作のしかたに私たちは全般的に満足している。また、価格の $50 を一度払えばその後いつまでもアップデートが受けられることも嬉しい。(さらにその上、TidBITS 会員は定価の 20 パーセント引きで購入できる!)この記事では ChronoSync の機能の大まかな概観だけを述べることにしよう。詳しく説明しようとすれば一冊の本が必要になってしまうだろうからだ。その代わりに、オフサイトのバックアップシステムとして ChronoSync が効果的に使えるという点に特に焦点をあてて考えて行くことにしたい。

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ChronoSync の高度な柔軟性と、クラウドストレージサービスの理解や設定の複雑さの結果として、以下の議論は必然的に込み入ったものとなる。けれども一言で要約するとすれば、オフサイトのバックアップで究極のコントロール能力を発揮したいと思う人にとって ChronoSync は素晴らしい選択肢ではあるが、他にいくつもあるクラウドバックアップ専用のサービスに比べれば料金が高く動作も遅いという結果になるだろう。

(バックアップのいろいろな戦略やそのためのソフトウェアについて一般的な情報を得たいなら、Joe Kissell の本 "Backing Up Your Mac: A Joe On Tech Guide, Second Edition" をお薦めする。本の内容は macOS 10.12 Sierra 用にアップデート済みだ。)

ChronoSync の果てしない数のオプション -- まずはとにかく、ChronoSync は機能豊富だと言っておこう。そして、Econ Technologies は止むことなく機能を追加し続ける。このアプリの主要な機能は、同期、ミラーリング、ブート可能ボリュームのクローン作成、アーカイブ作成、そしてバックアップのために、ファイルをコピーすることだ。ChronoSync は、マウントされたドライブでも、ネットワーク上のボリュームでも、さらに追加のアプリを使えば iOS とでも動作する。

ChronoSync を使うには、データを移動させる両側の場所の組を指定するための Synchronizer か、または複数個の Synchronizer をグループにまとめてスケジュールによる動作その他の目的に使う Container か、いずれかを作成しなければならない。操作の大半は Synchronizer ウィンドウの Setup 表示の中で行ない、ここでコピー元 (Source) とコピー先 (Destination) それぞれの場所 (Target) を指定する。中央にある Operation ドロップダウンメニューから、一方向のコピーなのか双方向の同期なのかを選択できる。

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一方向コピーの際に、ChronoSync はできる限りの柔軟性(と外国語対応)を発揮してコピー元とコピー先の識別をしようとする。左右の側の上方にあるタブを見れば、データがどちらからどちらへ流れているかが分かる。タブの表示はあなたが選択した操作の働く向きを示している。

例えば、Operation ポップアップメニューで Backup Left-to-Right を選べば、左のタブが Source Target、右のタブが Destination Target と表示する。次に Backup Right-to-Left を選べば(こちらの方が多くの場合に当てはまるだろう。どちらの Target がマスター側なのかを反転させれば向きは逆になる)タブの表示が入れ替わってそのことを示す。タブをクリックしてその名前をカスタマイズすることもできる。より具体的な名前、例えば "Home Computer"、"Work Computer"、あるいは "Updated Local Copy" や "Synced Remote Copy" などを表示させたい場合に便利だ。

Operation メニューの三つ目の重要な選択肢が Synchronize Bidirectional、双方向の同期だ。これは二つの Target 相互間でやり取りして両方とも最新の状態にする。あなたと他の人たちがファイルの一つの集まりを共有してお互いに変更を施している場合に非常に便利だ。例えば、何人かのグループが複数の場所で一つのプロジェクトの共同作業をしている場合、あるいはあなたが自宅と仕事場で、またはデスクトップ機とラップトップ機で、同じ題材に対する仕事をしている場合などが考えられる。そのような場合、ファイルのアップデートがどの場所で起こったとしてもすべての場所でファイルが最新の状態に同期されていて欲しい。同期が実行される際にもしも双方の Target 上で同じファイルが両方とも変更されていた場合には、ChronoSync がコンフリクトの警告を出し、あなたがコンフリクトを解消できるようにする。

(Dropbox、Box、Google Drive その他のファイル共有サービスはこれよりもっとスムーズな複数個所でのファイル更新機能を提供するけれども、それが可能なのはサービス側が持つサーバの上を通してデータの同期をする場合に限られ、そのこと自体が一つの弱点となる。またこれらのサービスは数ギガバイト以上を保存している個々のユーザーに対し繰り返し発生する料金を請求する。他方、ChronoSync の Synchronize Bidirectional オプションではあなた自身の持つサーバを使うことができ、無料あるいは埋没費用で使える。)

双方向の同期は理解しやすいが、一方向のコピーには多様な複雑さが伴う:

Operation ポップアップメニューの下に Synchronize Deletions チェックボックスがある。これは少々馬鹿げたオプションだ。つまり、Destination 側でファイルを削除すれば、それに対応する Source 側のファイルを ChronoSync が削除する。いわば、逆の意味の同期だ。たいていの人はこのチェックボックスに触りたくないと思うだろうが、必要が生じた場合に備えてのものだ。

もう一つ、Operation ポップアップメニューの下に Archive Replaced Files チェックボックスがある。これは置き換えを受けたファイルを特別のフォルダの中にしまい込む。Synchronizer ウィンドウの Options 表示で、アーカイブのオプション、例えば何個までのバージョンをどれだけの期間にわたって保持するかなどをコントロールできる。また、Archive 表示を開けば古いファイルや削除されたファイルが表示され、さまざまの方法でそれらをリストアできる。

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ChronoSync の Analyze 表示が、これらすべてのことの意味を理解する助けになる。数多くのオプションであなたが設定した操作を実行すれば実際に何が起こるかを、ここで効果的にプレビューできるからだ。また、起こる予定のことをこの表示で覆すこともできる。例えばコンフリクトを解消したり、特定の項目を除外したりできる。

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あなたが選んだパスの中にあるサブフォルダが全部含まれることを避けたいなら、Analyze タブを開いて、その中でフォルダを右クリックし、そのフォルダをさまざまの操作から除外できる。また、Rules 表示の中でフォルダ、ファイルタイプ、その他数多くの要素に基づいて除外のルールを設定することもできる。ChronoSync がどれほど深いかを実感したければ、この Rules 表示の中にそれらのマッチテストを作成するための Simple、Intermediate、Advanced の三種類の方法が用意されている。

遠隔バックアップをするのが目的ならば、Mirror オプションのいずれかを選んだ上で、Archive Replaced Files をチェックし、Synchronize Deletions のチェックを外しておくのがよい。なぜならこれは遠隔 バックアップ であり、遠隔の 作業用コピー ではないので、あなたが自らの意思で遠隔にあるものを編集することは考えにくいし、また Source 側で削除したファイルを遠隔で同じ場所に置いておく理由もないからだ。Archive オプションをチェックしておけば、削除したファイルを復活させることもできる。これと、ローカルに保存してある Time Machine バックアップとを組み合わせれば、最大限の柔軟性が提供されることだろう。

さて、パズルの最後の輪がスケジュール機能だ。個々の Synchronizer ごとに別々にスケジュールを設定できる。けれども、おそらくあなたはいくつもの場所やいくつものドライブを、それぞれ別々のオプションを付けてバックアップしたいだろう。そんな場合にはまず Container を作成してから、それにスケジュールを設定する方が良い。スケジュールの設定は簡単で、ChronoSync の説明書に詳しい説明がある。

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ChronoSync の他のすべてと同様に、スケジュールのためのオプションにもさまざまの細かな設定項目がたくさんある。たいていの人にとって、最も単純なやり方は Run メニューから Daily または Weekly の繰り返しスケジュールを選んで、それから適切な開始時刻を指定することだろう。

一つの Synchronizer または Container に複数個のスケジュールを追加することもできるし、イベントに基づいて、例えばボリュームがシステムにマウントされる度に、スケジュールが呼び出されるように設定することもできる。あなたが普段持ち運ぶドライブで設定しておけば、そのドライブを接続すると自動的に ChronoSync がバックアップを始め、ドライブが即座に同期されるというのは素晴らしいではないか。

さて、ここまでで基本的なことを述べたので(信じて頂きたいが、これは ChronoSync の表面をほんの少しかじったに過ぎない)ここからは遠隔のデータ Destination について論じよう。これは、バージョン 4.7 での新機能だ。

他のクラウドバックアップサービスと比較する -- 私がこの記事を書き始めたのは、オフサイトのホスト型バックアップを暗号化付きで継続的に、しかもフルに私の意のままに維持する目的で ChronoSync が使えるかどうかを調べたかったからだ。ChronoSync 4.7 になって、Amazon S3 (Amazon ウェブサービスの一部) や Google Cloud Storage (Google Cloud Platform の一部) などを Destination 側として使えるようになった。これらのサービスの料金はいずれも使用量と転送データ量に応じて課金される。また、ChronoSync 4.7 では SFTP (Secure FTP) も使えるので、アクセス可能なすべての SFTP サーバに対して暗号化接続を作成することができる。

私は ChronoSync の新機能を他のいろいろのクラウドベースのバックアップサービスと比較してみようと思った。それらのサービスでは月ごとまたは年ごとの定額料金で一台または複数台のコンピュータからデータ量無制限のバックアップができるので、今や何百万人ものユーザーがいる。例えば一台のコンピュータからならば、Backblaze の料金は月額 $5、年額 $50、または二年で $95 で、保存できるデータ量は無制限だ。オンラインでのリストアは無料で、ドライブに入れた形でファイルを回収するには 128 GB フラッシュドライブならば $99、4 TB ハードドライブならば $189 となる。これらのクラウドバックアップサービスはファイルのバージョン追跡もしており、バージョン履歴バックアップ機能も無制限データ料金の中に含まれる。

クラウドにホストされるバックアップサービスはまた、さまざまの暗号化オプションも提供する。中でも Mac ユーザー向けには CrashPlan と SpiderOak が、ユーザー自身がすべての暗号化ピースを所有し制御できるという点で他をリードしている。Backblaze はその面では少々後れをとっているが、暗号鍵の「所有権」はユーザーに認めている。(詳しくは私が PCWorld に書いた記事 "The best online backup service for securely encrypting your data" を参照。)

幸いにも、Amazon と Google のいずれでも、暗号化鍵を指定してサーバに鍵を保存することなくスクランブル暗号化をさせることができる。これならば、あなた自身が制御権を持つ合理的な妥協手段と言えるだろう。つまり、ファイルはちゃんと暗号化され、暗号化鍵がサーバに保存されたりクラウドプロバイダの手に渡ったりすることはない。AmazonGoogle はいずれもこの点での動作方法に関する詳しい情報を提供している。ChronoSync では、あなたが好きな鍵を選んで適切な接続フィールドに入力することができ、それぞれのサービスに適したフォーマットを ChronoSync が生成してくれる。(また、暗号化スパースバンドル・ディスクイメージなどローカルな暗号化を使うこともでき、そのディスクイメージのバンドル要素のみを同期させることも可能だが、その方法では使用するバンド幅が大幅に増えてしまうことがあるし、ファイルをリストアする際にもいろいろな難点がある。)

まずは Amazon のストレージ提供について見て行こう。Google のものも大まかに言えば似ているので、Amazon についての情報の大部分は繰り返して説明する必要がないだろう。ここで用語について少し説明しておこう。この種のクラウドストレージは Amazon が "bucket" と呼ぶものを中心にしてデザインされており、他のすべての会社も同じ用語を踏襲している。一つの bucket は、クラウド基盤全体にわたって固有の名前を持つディレクトリであって、誰がどこで所有している他の bucket も、決してそれと同じ名前を持つことはない。一つの bucket が複数のデータセンターの集まり ("region" と呼ばれ、地理的に定められるもの) に割り当てられることもあるし、どこにあってもクラウドサービスはそれを見つけることができる。地理的にどの場所に置かれているかは関係ないのだ。クラウドのプラットフォームにもよるが、bucket がストレージの特定の段階を使用するように設定されることもあり、この点についてはあとで述べる。また、その bucket 全体としての段階に関係なくその中の特定の項目が特定の段階のものとマークされることもある。さらに、ルールを適用することにより項目を一つの段階から別の段階へとシフトさせることもある。

Econ Technologies は Amazon Web ServicesGoogle Cloud Platform でアカウントを設定するためのよく出来たガイドを公開しており、その中で bucket を作成して設定するやり方も説明している。決して分かりやすい手順ではないので、ガイドがあるのはとてもありがたい。

Amazon S3 は Standard、Standard-Infrequent Access、Glacier という三段階のストレージを提供する。これらは、あなたがどの程度高速にデータを回収したいかに対応している。(四段階目の Reduced Redundancy というものもあるが、これは失敗率が高く、バックアップやアーカイブの目的には適していない。主として「簡単再現」あるいは一時的データのためのものだ。)

これら三つの段階はいずれも同じ高いレベルの "durability (耐久性)" を持つ。これはデータ喪失が起こる可能性を測る尺度だ。この durability の高さは、Amazon がデータを互いに地理的に離れた複数のデータセンターに複製して置いていることによる。三つのストレージ段階の違いは、従ってそれぞれの料金が違う理由は、あなたがどれくらい頻繁にどれくらい素早くデータを回収したいかにある。Standard はファイルリクエストの失敗率が一万分の一以下と約束する。失敗とはすなわちファイルをもう一度リクエストすることを意味し、通常それは自動再試行となって時間がかかる。Infrequent Access ではその失敗率が千分の一に落ちるが、バックアップ目的ならばそれで十分だろう。Glacier は稀にしか回収が必要とならないアーカイブ目的のためのもので、しかもファイル回収のリクエストを開始するまでに 4 時間ほどかかる。その時間をかけて、ファイルが一時的に通常の S3 ストレージに移されるのだ。

それぞれの段階により料金が大きく異なる。米国の四つの region のうち三つ (Oregon、Ohio、North Virginia) で、保存量 GB あたり月額が Standard では $0.023、Infrequent Access では $0.0125、Glacier では $0.004 だ。もう一つの Northern California region や、南アメリカ以外の海外 region では、これより少し高い料金となる。(Amazon は 2016 年 12 月に、パーセントで2桁の料金値下げをした。クラウドの価格は通常大幅に値下げされる。)

Amazon はデータのアップロードに対しては料金を課さないが、ダウンロードの料金は Standard では米国またはヨーロッパのデータセンターから GB あたり $0.09 で、他の地域のデータセンターならばもっと高くなる。Infrequent Access でのダウンロード料金は Amazon のどの region から回収する場合でも GB あたり $0.01 ずつ高くなり、最も安い場合でも GB あたり $0.10 だ。また、ファイルのアップロードや回収の個々のリクエストごとにごく少額の料金がかかり、これはリクエスト 1,000 件ごとに課金される。あなたの Mac からサイズの小さなファイルを百万個アップロードした場合、Standard で $5、Infrequent Access ならば $10 程度になるだろう。(リクエスト 1,000 件あたりそれぞれ $0.005 と $0.01 となっている。)

Amazon S3 を ChronoSync の Target に設定する際、Infrequent Access をオプションとしてセットアップすることができる。そうすれば、あなたが同期する個々の項目はそのストレージクラスとして書き込まれ、その料金が適用される。ChronoSync は Glacier に直接それ自体として書き込むことはできない。Glacier を使うには、ウェブ上の Amazon Web Services Console の中でアーカイブのルールをセットアップしてそう設定しなければならない。複雑に聞こえるかもしれないが、実際にはたった二回クリックするだけの作業だ。また、ChronoSync は Glacier からファイルを回収することもできない。それにはコンソールを使う必要があるが、こちらもまた、複雑に聞こえるが、Console がガイドで手引きしてくれる。

Glacier は従来、あなたが保存させているデータ量に基づいてデータ回収の料金も計算していたので、料金が複雑なことになっていた。膨大なファイル回収料金を課されて打ちのめされたという恐怖の物語さえ聞こえていた。幸いにも、最近になって Amazon はこの点を劇的に単純化し、今はあなたのリクエストを Amazon がどの程度素早く処理すべきかに応じて三段階のファイル回収料金が定められている。データ回収が始まるまでに 5 時間から 12 時間待てるならば、データ回収料金は GB あたり $0.0025、つまり TB あたりたった $2.50 だ。さらにその後で、データを S3 内部の一時的ストレージ場所から取り寄せるために通常のダウンロード料金 (GB あたり $0.09) がかかる。Amazon は、毎月 10 GB の無料 Glacier データ回収を提供する。

Glacier を利用してコスト効率の良い使い方をするための細かなことはまだまだたくさんある。例えばファイルを ZIP アーカイブとして、またはその他の巨大な一個のアーカイブとしてアップロードする方法などが、Glacier FAQ に説明されている

200 GB のデータを Amazon S3 の最も安価な region で保存しておくと、月額料金は Standard、Infrequent Access、Glacier でそれぞれ $4.60、$2.50、$0.80 となる。これはストレージそのものに対する料金で、そのデータをすべて回収するには Standard で $18.00、Infrequent Access で $20.00、Glacier の最も遅い場合の料金で $18.50 (回収が $0.50、ダウンロードが $18.00) かかる。さらにファイルリクエストに対する料金があと少々、これは数セントか、あるいはファイルの数が膨大ならば数ドルといったところだろう。アーカイブ目的で利用しているストレージ容量を除外すれば、私の仕事場の Mac からバックアップする 1.3 TB のファイルにかかる料金はそれぞれのクラスで $29.90、$16.25、$5.20 となり、回収・リクエスト料金は $117.00、$130.00、$120.25 となる。

Google の方は、バックアップに適した三段階のストレージを提供している。Multi-Regional、Nearline、Coldline の三つだ。下に記す料金は世界中の大部分で適用される。日本にある Google のアジア向けデータセンターを使用すると料金がほんの少しだけ高いし、また中国とオーストラリアにある Multi-Regional データを回収する料金も少しだけ高い。それぞれの段階は次のようになっている:

Google も、Amazon と同様にファイルのアップロードと回収それぞれについてリクエストごとの料金を課金する。

200 GB のデータを Google Cloud Storage の最も安価な region を使って保存しておくと、月額料金は Multi-Regional、Nearline、Coldline でそれぞれ $5.20、$2.00、$1.40 となる。200 GB を回収する料金はそれぞれ $24.00、$26.00、$34.00、プラス少額のリクエスト料金だ。私の 1.3 TB 分のファイルについてはそれぞれ月額 $33.80、$20.00、$9.10 と、回収の際に $156.00、$169.00、$221.00 だ。

長々と述べてきたが、結局のところ分かったことをまとめれば、Backblaze のコンピュータあたり月額 $5 という料金の方がほとんどすべての状況下で安いが、ただし Amazon S3 や Google Cloud Storage で Glacier/Coldline 段階を使った場合は分からない。また、ある程度大きな量のデータを扱う場合には Backblaze の方が圧倒的に安い。要するに、あなたがオフサイトのバックアップのための解決策として ChronoSync を考慮する場合、保存が長期間にわたりデータを少量でも回収することがごく稀な場合には Glacier が完璧に適していることを除き、コストが安いという理由は当てはまらない、ということだ。

(余談だが、Backblaze は B2 と呼ばれるクラウドファイルストレージサービスを提供していて、アップロード GB あたり $0.005、回収 GB あたり $0.05 という定額料金と、あらゆる種類のリクエスト 1,000 件あたり $0.004 という料金を課している。私の例に当てはめれば 200 GB ならば月額 $1、1.3 TB ならば月額 $6.50 となって、Amazon や Google の最も「冷たい」段階よりも安い。ChronoSync は今のところ B2 には対応していないが、ファイル転送アプリを Cyberduck 経由して使うことは可能だ。)

SFTP についてはどうか? -- ChronoSync で SFTP を経由してデータをバックアップすることを考慮してもよい。その場合には、あなたのデータの所有権や暗号化オプションなどに対してさらなるコントロールが可能となる。接続先として、あなたが自分でサーバを持つか、またはリースでサーバを借りるかするからだ。ここではあなたが自分でそのサーバを運営するか、またはどこかの会社に料金を払って使わせてもらうかするだけなので、Amazon S3 や Google Cloud Storage を使う場合に重要部分として付くもの、つまり冗長性、データセンターのセキュリティ、内蔵の暗号化などは得られない。

SFTP 経由でアクセスするこの種の無印のサーバには、黙っていてもデフォルトで付いてくるデータ暗号化など存在しない。あなたが自分で追加のソフトウェアをサーバ上で走らせて、入ってくるファイルを暗号化しなければならない。そうしないと、そのサーバにログインできる人なら誰でもあなたのデータを読めてしまう可能性がある。この制約のため、追加の上の追加のバックアップであるそれらのファイル、つまりあなたが別に持っているコピーのさらにバックアップであるそのサーバ上のファイルに施す自前のツールとしては、SFTP が最も便利に使える。

SFTP は、クライアントと SFTP サーバの間で暗号化トンネルを使ってデータを転送するための汎用プロトコルだ。あなたがクラウドベースの仮想プライベートサーバを持っていてそこに余分のストレージ容量があるなら、あるいはストレージを交換したい相手の友人が自分のコンピュータで SFTP サーバを走らせることができるなら (かつあなたと友人の二人とも高速のインターネットリンクを持っているなら)、これが一つの代替手段となる。安価ではないかもしれないし、自分で SFTP サーバを設定し維持しなければならないので手軽な手段でないことは確かだが、完全なる制御を手にしたい場合には立派な代替手段かもしれない。

例えば、私は自分のさまざまのウェブプロジェクトで使うために Linode サーバを持っている。そのために私は毎月 $100 を既に支払っており、重要な書類やファイルを保存するためならおよそ 100 GB のストレージ容量をそのサーバ上で割り当てることができる。他のサービスも調べてみたところ、月額たった $25 で 1 TB の SSD ストレージと月ごとに 5 TB のスループットを提供する同種のサービスが見つかった。(私はこのサービスをテストしていないので、今のところリンクするつもりはない。)

パフォーマンスのテスト -- ChronoSync がどの程度うまく働くか、どの程度高速かを調べるために、私はいくつかの種類のバックアップやそれに類する作業をセットアップしてテストしてみた。それから、Transmit (Amazon S3 と SFTP で) と Cyberduck (Google Cloud と SFTP で) を使った直接のファイルコピーも試して、結果を比較してみた。クラウドのテストはすべて HTTPS による暗号化転送を実行したが、サーバ側の暗号化は Transmit も Cyberduck も対応していないので使わなかった。

ChronoSync は、ファイルへの変更をきちんと探知してバックアップを完璧にこなしたが、スループットは遅かった。残念な結果になった原因の一つに私が対称型 gigabit インターネットサービスを無制限の設定で使っていることもあるようで、これは極めて異例の状況と言えるだろう。

ごく小さなものから、数百メガバイト、さらにはギガバイト以上のものまで、さまざまなサイズのファイルを取り混ぜて含むディレクトリをいくつか選んでテストした。また、Econ Technologies の主任開発者の勧めに従い、Apple の Disk Utility で作成したスパースバンドル・ディスクイメージを使ったテストもした。一個の巨大なファイルに依存するのではなく、スパースバンドルというフォーマットはディスクイメージを (イメージが置かれるボリュームのサイズに応じて) 1 MB から 8 MB の小さなファイルに切り分けるので、バックアップがずっと容易になる。たった数個のファイルに変更を加えただけならば、ほんの数メガバイトのバンドル要素一個のみを更新すればバックアップが済むからだ。

すべてのテストで、ChronoSync は何らかの非効率に苦しめられ、動きが取れない状態に陥った。この問題を Econ Technologies に報告したところ、彼らは 非常に 反応が早かった。私のテストの結果に基づき、アプリを 4.7.0 から 4.7.1 にアップデートして、小さなファイルが Amazon S3 では二倍に、Google Cloud Storage では三倍にスループットを遅くしていた問題に対する改善を実装してくれた。また今後のアップデートでのさらなる速度向上を目指して開発中だとも言ってくれた。

私は 2.16 GB のスパースバンドル・ディスクイメージを作成して、これをいくつかの方法でテストしてみた。また、一つの巨大な 1.5 GB ファイルもテストして、ファイル一個の転送でスループットに違いが出るかどうかも調べた。私はシアトルに住んでいて、私が作成した Amazon の bucket は U.S. West (Oregon) region にあり、Google の Multi-Regional bucket は北半球にある。SFTP サーバはカリフォルニア州の Linode データセンターにある。私がテストをした時点で、Google の Fiber speed test によれば私の接続は 300 Mbps upstream となっていた。

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スパースバンドル・ディスクイメージのテスト結果は次の通りだ:

巨大なファイルのテスト結果は次の通りだ:

同じコンピュータで Backblaze バックアップをすれば、いつも決まって 200 から 400 Mbps の upstream 速度が出る。

これらの結果の数字だけを見れば ChronoSync が圧倒的不利に見えるけれども、現実問題として遅いスループットで違いが出るのは、非常に高速の upstream 接続を持っていて、かつ日常的に一日あたり数ギガバイトずつバックアップをしているような場合に限られる。ただしそれでも、第一回目のバックアップが遅い点は大きな苦痛だろう。12 Mbps という速度では、初めて 200 GB のバックアップセットを作成するのに一日半かかるし、1 TB のコピーには八日ほどもかかる。この初期転送の速度だけでも直接転送のパフォーマンスに近づけてもらえさえしたら、ChronoSync を選ぶことがずっと楽になるだろうにと思う。

クラウドバックアップ用に ChronoSync は価値ありか? -- クラウドにホストされたバックアップサービスは、自動化されたバックアップを魅力的な価格で提供し、古いバージョンを保持する機能も強力にサポートし、素晴らしい冗長性を持つ。けれどもそれと引き換えに、一定程度の制御能力を手放さなければならない。そしてそれこそが、ChronoSync を使えば取り戻せる点だ。

ChronoSync を別途契約したストレージサービスと組み合わせて利用することの重要な利点は、直接回収可能なフォーマットでファイルが保存されること、そしてすべての暗号化オプションをあなた自身が制御できることだ。欠点を言えば、速度が遅いことと、特に大量のデータをリストアしなければならないような状況では料金が高くなることだ。

要約すれば、もしもあなたが多様な種類のストレージやバックアップの必要を持ち、クラウドバックアップのプロバイダが提供するソフトウェアのブラックボックス的な面を信用したいと思わず、しかもできるだけ暗号化を自分自身で制御したいと思うならば、ChronoSync があなたの希望を満たすオプションのセットを提供できるかもしれない。

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TidBITS 監視リスト: 注目のアップデート、2017 年 1 月 2 日

  文: TidBITS Staff: [email protected]
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

SEE Finance 1.1.2 -- Scimonoce Software が SEE Finance 1.0.10 をリリースし、この個人財務アプリのバックアップ機能に改善を加えた。今回のアップデートでは File メニューに Generate Backup オプションを追加してバックアップファイルをオンデマンド作成できるようにし、バックアップ機能が有効の間は変更されたファイルを 24 時間ごとにバックアップするようにし、バックアップ先に指定された場所で read/write アクセス権があることをチェックする方法を SEE Finance にもう一つ追加している。今回のリリースではまた、macOS 10.12 Sierra を使っている場合にはレポート、取引画像ウィンドウ、および取引明細画像ウィンドウから PDF サムネイル表示を削除し、読み出し専用またはロックされたファイルをロードすることに関係したクラッシュ一件を回避し、取引画像ウィンドウを表示するキーボードショートカットを(選択された取引で最近ダウンロードされたアイコンをクリアするショートカットと衝突していたため)削除している。SEE Finance は Scimonoce Software からも Mac App Store からも、期間限定で $39.99 (定価の $10 引き) で販売中だ。(新規購入 $49.99、無料アップデート、32.2 MB、リリースノート、10.6+)

SEE Finance 1.1.2 へのコメントリンク:

ChronoSync 4.7.2 -- Econ Technologies が ChronoSync 4.7.2 をリリースし、いくつかのセキュリティアップデートとマイナーな SFTP のバグ修正を施すとともに、遠隔 Amazon S3、Google Cloud、および SFTP 接続のプロファイルに接続追跡のオプションをさらに追加した。この同期およびバックアップ用アプリ(最近の記事“クラウドバックアップ用 ChronoSync 4.7 を検討する”(2016 年 12 月 22 日) で紹介したもの)はまた、接続・プレ設定の処理の最中のエラーに対し単に接続に失敗するのでなく汎用エラーコードをより良く処理できるようにし、同期の前にターゲットの検証ができなくなった問題を解消し、遠隔接続プロファイルで診断用ログが有効の場合の詳細ログメッセージを改良し、またいくつかのクラッシュのバグを修正している。(無料アップデート、ChronoSync は新規購入 $49.99、TidBITS 会員には 20 パーセント割引、41.2 MB、リリースノート、10.8+)

ChronoSync 4.7.2 へのコメントリンク:

HandBrake 1.0.1 -- 13 年間にわたる開発を経て、HandBrake Team がオープンソースのビデオ変換プログラム HandBrake のバージョン 1.0.0 をリリースした。今回のアップデートは公式のプリセットを完全に書き換え、より広い互換性のための新しい汎用プリセットと、Matroska (MKV) プリセット (Opus オーディオ付き VP9 ビデオも含む)、さらには新しいデバイス用およびウェブ用のプリセットも含めている。(HandBrake 0.10.x における公式プリセットは引き続き Legacy カテゴリーから利用できるが、あなたが過去に作成したカスタムのプリセットは新バージョンと互換でないかもしれない。)新バージョンの HandBrake はまた、オーディオ・ビデオの同期エンジンを改良して困難な情報源もより良く処理できるようにし、libvpx を使った VP9 ビデオエンコーディングと libopus を使った Opus オーディオのエンコーディング・デコーディングを追加し、一部の言語での字幕のレンダリング機能を拡張し、新しい Decomb/Deinterlace フィルター設定を追加してデフォルトを改良し、コンマで切り分けられた章マーカーの読み込み・書き出し対応を改善し、サードパーティのダウンロードのために複数ソースの URL への対応を追加し、ドラッグ&ドロップ対応を改善している。

バージョン 1.0 の後間もなく HandBrake 1.0.1 がリリースされ、macOS 10.12 Sierra よりも前の OS X システム上で焼き付け済み字幕機能を使う際にクラッシュすることがあった問題を修正し、プリセットを保存あるいはロードする際に一部のコントロールが更新されなかった問題を解消し、さらに一件のクラッシュのバグを解決した。(無料、12.6 MB、リリースノート、10.7+)

HandBrake 1.0.1 へのコメントリンク:

GraphicConverter 10.3 -- Lemkesoft が GraphicConverter 10.3 をリリースし、この古参のグラフィック変換および編集用ユーティリティに数多くの機能を追加した。今回のアップデートではいくつかのエフェクト (Tilt-Shift、Old Photo、Blur、Anonymise Faces) を追加し、新型 MacBook Pro に装備された Touch Bar に (スライドショー、ブラウザ、カスタマイズされた画像で) 対応し、Layer パレットに各種のブレンドモード対応を組み込み、Convert & Modify に二つのバッチ設定 (auto rotate と apply unapplied XMP changes) を追加し、テキスト平坦化で起こり得た問題を修正し、保存の際に標準的でない EXIF タグを削除するオプションを追加している。(Lemkesoft からも Mac App Store からも新規購入 $39.95、無料アップデート、118 MB、リリースノート、10.8+)

GraphicConverter 10.3 へのコメントリンク:

Quicken 2017 for Mac 4.4.1 -- Quicken Inc. が財務管理用旗艦アプリ Quicken 2017 for Mac のバージョン 4.4.1 をリリースし、いくつかの新機能と拡張を加えた。今回のアップデートでは(最もユーザーからのリクエストが多かった)基本的自動バックアップ機能が追加された。アプリを終了する際にファイルを自動的に指定された場所にバックアップして一度に最大五つまでのバージョンを保存しておくというものだ。今回のリリースではまた、登録状況アイコンの挙動を改良し、接続されたアカウントを更新した後にサイドバー上のアカウントのうち新しい取引があるものすべての横に青い点を付けて示すようにし、配当と購入の取引を一つの再投資配当という取引にまとめるようにし (Quicken Windows の挙動と合わせるため)、比較および要約のレポートをスプレッドシートに Export または Copy する機能を追加し、支払先の名前が短縮されたり途中で切れたりしたバグを修正し、いくつかのクラッシュを解消している。定価は $74.99 だが、Quicken 2017 for Mac は 2017 年 1 月 3 日まで限定で $44.99 のセール販売中だ。(Quicken ウェブサイトからも Mac App Store からも新規購入 $74.99、Quicken 2017 から無料アップデート、リリースノート、10.10+)

Quicken 2017 for Mac 4.4.1 へのコメントリンク:

LaunchBar 6.8 -- Objective Development が LaunchBar 6.8 をリリースし、1Password 統合の改善、新アクション、絵文字対応の改善を組み込んだ。最近 1Password にサードパーティとの拡張統合機能が追加された(2016 年 11 月 18 日の記事“1Password 6.5.1”参照)ことにより、1Password ヴォールトの中からログイン、クレジットカード、セキュアノートその他にアクセスできるようになった。さらに、1Password カテゴリーが索引付けされるようになり、例えば CC とタイプして 1Password の Credit Cards カテゴリーを選択し、このパスワードマネージャに保存されたすべてのクレジットカード番号のリストをブラウズすることもできるようになった。

このキーボードベースのランチャーはまたいくつかの新しいアクションも追加している。Safari Tabs アクションは現在 Safari で開いているすべてのタブへのアクセスを提供し、Wiktionary および Wikiquote の各アクションはそれぞれライブの提案を表示する。今回のアップデートではまた、絵文字の名前がすべて macOS Character Palette での名前と一致するようにし、Calendar 入力を改善してアラームの時刻をイベントが発生した時に指定できるようにし、ルールやカテゴリーを索引付けする Info Browsing を改良し、アプリケーションの中をブラウズして最近使った書類やその他の項目にアクセスする機能を復活させている。(新規購入 $29、TidBITS 会員には 20 パーセント割引、無料アップデート、14.2 MB、リリースノート、10.9+)

LaunchBar 6.8 へのコメントリンク:

MoneyWiz 2.5.3 -- SilverWiz がバージョン 2.5.3 の MoneyWiz をリリースし、新型 MacBook Pro の Touch Bar に対応させた。このコンテクスト対応の Touch Bar は、MoneyWiz の Accounts セクションにいる間はあなたのアカウントのリストを表示し、取引を選択した際には Edit、Delete、Duplicate、Set cleared/pending の各ボタンを表示し、カーソルが Description、Payee、または Tags のフィールド上にある間は過去の入力項目を呈示する。この個人用財務マネージャはまた、購読版の MoneyWiz の名前を MoneyWiz Premium に変更して混乱を避け、MoneyWiz へのログインに Touch ID を使えるようにし、いくつか詳細不明のバグを修正している。(年間購読 $59.99、無料アップデート、22.9 MB、リリースノート、10.8+)

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Default Folder X 5.1 -- St. Clair Software が Default Folder X 5.1 をリリースし、Open および Save のダイアログを拡張するこのユーティリティに改良とバグ修正を盛り込んだ。今回のアップデートでは新たに Move、Copy、Make Alias コマンドを追加して Open および Save のダイアログの中からファイルの整理ができるようにし、Command キーを押しながら Default Folder X メニューの項目を選べばそれが Finder で表示されるようにし、フォルダセットを切り替えるオプションのキーボードショートカットを追加し、メニューバーから Default Folder X が消えてしまったバグを修正し、macOS 10.12 Sierra でファイルダイアログのサイズが正しくなかった見栄え上のバグを回避し、また PDF Studio への対応を追加している。(新規購入 $34.95、バージョン 4 からのアップグレード $14.95、TidBITS 会員には新規購入で $10、アップグレードで $5 の値引、8.2 MB、リリースノート、10.10+)

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Boom 2 v1.5.1 -- Global Delight が同社の音量ブースターおよびイコライザー用アプリ Boom 2 のバージョン 1.5.1 をリリースし、前回のバージョン(2016 年 9 月 16 日の記事“Boom 2 v1.5”参照)で導入された Controlled Boost オプションに改良を施した。今回のアップデートではまた、デフォルトの Mac スピーカーからの出力を拡張するためオーディオを再調整して以前より明快な音が出るようにしている。Global Delight はまた iOS 用の Boom もバージョン 1.1 にアップデートして、iOS 10 用に新しいユーザーインターフェイスに変更するとともに 3D Touch への対応も追加した。定価は $14.99 だが、Boom 2 は現在 Global Delight ウェブサイトで $9.99 (Mac App Store では $10.99) の期間限定セール販売中だ。(Global Delight から新規購入 $14.99、TidBITS 会員には 25 パーセント割引、無料アップデート、13.2 MB、10.10+)

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Capto 1.2.3 -- Global Delight が Capto 1.2.3 をリリースして、スクリーンを録画中は Desktop 上のフォルダやその他の項目を隠すことができるようにし、またデスクトップの背景色を切り替えられるようにした。このスクリーンキャプチャ用ユーティリティはまた、Send To オプションを使ってファイルを好きなフォルダの中に保存できるようにするとともに、クリック一つで番号付けオプションをリセットできるようにしている。(Global Delight から新規購入 $29.99、TidBITS 会員には 25 パーセント割引、Mac App Store からも新規購入 $29.99、29.7 MB、10.10.5+)

Capto 1.2.3 へのコメントリンク:

BBEdit 11.6.3 -- Bare Bones Software が BBEdit 11.6.3 をリリースし、山盛りのバグ修正や改善を盛り込んだ。この古参のテキストエディタは今回、Grep 置換パターンで大文字・小文字を変換する際に ASCII 外の文字で正しく動作していなかった問題を解消し、HTML 書類の中の PHP でもコンテンツがスペルチェックされるようにし、SFTP ブラウザから項目を開く際に起こることのあったクラッシュを修正し、macOS 10.12 Sierra 上で起動時に「偽の」クラッシュを起こしていた原因を修正し、Functions および Markers パレットでカラム位置や項目の並び順が記憶されなかった問題を正しく並べ替えている。($49.99、無料アップデート、14.1 MB、リリースノート、10.9.5+)

BBEdit 11.6.3 へのコメントリンク:

iTunes 12.5.4 -- Apple が iTunes 12.5.4 をリリースして、同社が Apple TV (2016 年 12 月 12 日の記事“tvOS 10.1、Apple TV 経験を "TV" アプリと統合”参照) と最新 iOS リリース (2016 年 12 月 12 日の記事“iOS 10.2 に TV アプリ、HomeKit の通知、新しい絵文字が加わる”参照) に装備した、新しい TV アプリへの対応を追加した。今回のアップデートでは新型 MacBook Pro の Touch Bar にも対応し、Touch Bar 上でスクラブすることにより曲やビデオ、ポッドキャストの再生中に別の部分に移ることができるようになった。(無料、直接ダウンロードでも Software Update 経由でも 263 MB、リリースノート、10.9.5+)

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ExtraBITS、2017 年 1 月 2 日

  文: TidBITS Staff: [email protected]
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

2017 年初めの ExtraBITS は、Mac ファンをがっかりさせる二つのリンクの紹介だ。一つはプロフェッショナルの映画制作者による新型 MacBook Pro への批判的なレビュー、もう一つは Mac が Apple 内部で影響力を失いつつあることの証拠だ。

No Film School による 2016 年型 MacBook Pro のレビュー -- 最も要求度の大きいプロフェッショナルの Mac ユーザーの代表格が、映画制作者たちだ。だからこそ、Apple のプロフェッショナル向けハードウェアを評価する際には彼らの意見が大きな意味を持つ。No Film School ウェブサイトで映画制作者の Charles Haine が、Touch Bar 付きの新型 MacBook Pro をレビューして、欠けている点が多いと結論づけた。類似の 2013 年モデルと比較しても、彼の目には新型 15 インチ MacBook Pro に大きな優位点は何もないと映る。彼にとって Touch Bar の動作はぎこちなく、キーボードの音はやかましく、トラックパッドは扱いにくい。一番問題なのは、大きく宣伝されている新しいディスプレイの色表現が忠実でないことだ。前回の MacBook Pro に比べて全体的なパフォーマンスはそれほど大きく違わないが、ただ新型 MacBook Pro では例えば Adobe Premiere による RED ファイルのレンダリングや、非線形ビデオエディタ DaVinci Resolve の使用など、GPU 負荷の高い処理をする際の速度が大幅に向上している。ここで注意すべきは、No Film School が方針として Apple の Final Cut Pro X を使ったテストは実施しないという点だ。いわく、「10.3 リリースは大きなアップグレードであったし、以前に失ったプロ向け市場で Final Cut Pro X が足掛かりを築きつつあるようには見えるけれども、これがもはや一般的なプロフェッショナル向けツールとは言えないという状況は依然として変わっていないからだ。」

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Mac が Apple 内部で苦闘中? -- Bloomberg Technology の記事で Mark Gurman が、Apple が実際内部的に Mac を軽視しつつあるという議論を展開した。私たちが最近記事で述べたのと同様の論調だ。Gurman は同社内部の数多くの情報源を引用して、いくつもの困惑させられる変化を紹介する。今日では、Mac ハードウェアチームが Jony Ive のデザイングループと顔突き合わせて議論する時間もぐっと減り、マネージャーたちが同時に複数個の互いに競合するアイデアを提起することが多くなって、競合に敗れるアイデアに費やされる時間が空費されることになる。ソフトウェアの面では、もはや Mac オペレーティングシステム専従のグループは存在しないと Gurman は述べ、エンジニア全員が一つのグループを成していて、しかも大多数が iOS を優先して扱っているという。今や Apple 従業員たちでさえ Mac デスクトップが戦略的に重要な意味を持つのか否かという疑問の声を挙げつつあり、それを受けて Tim Cook が前向きの声明を出したくらいだ。曖昧な内容の声明ではあったが。

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日本語版最終更新: 2017年 01月 06日 金曜日 , S. HOSOKAWA