TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#1352/13-Jan-2017

Consumer Reports は当初、バッテリ寿命が悪いことを理由に挙げて 2016 年型 MacBook Pro に「推奨できない」という評価を与えたが、その後その評価を取り消し、Apple のソフトウェアの中のこれまで誰も経験しなかった類いのバグが彼らのテスト結果に影響を与えていたと述べた。Glenn Fleishman が、Consumer Reports がどのような誤りに陥ったのか、それがなぜ問題なのかを説明する。また今週号では Jeff Porten が CES 2017 からの報告の締めくくりとして、ショウのフロアからさまざまの機器や製品を紹介する。Adam Engst は Ookla の Mac 用アプリ Speedtest をレビューする。たった二回クリックするだけで、あなたのインターネット・パフォーマンスが分かるという。今週注目すべきソフトウェアリリースは、Fantastical 2.3.3、HoudahGeo 5.1.5、それに Typinator 7.1 だ。

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Ookla Speedtest をメニューバーから走らせる

  文: Adam C. Engst: [email protected], @adamengst
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

もしあなたが私の様であれば、自分の Internet 接続がどれ程速いかなどあまり気にしないであろう... それが明らかに正常に働かなくなるまでは。もしその様な場に遭遇したら、私は Speedtest.net や Netflix の Fast.com といった Web サイトをダウンロードし、現状がどうなっているか調べる。しばしば、答えは "何かがおかしい" で、その様な場合、私はまず最初に AirPort Extreme を再起動してみる。そして、それでも治らないなら、次は Spectrum (以前の Time Warner Cable) 支給の Arris ケーブルモデムの番である。これらの再起動で、十中八九、私の Internet 接続は元に戻る。私には、これは余分な手間だと感じられる。何故ならば、製造者ならそんな簡単な修正は予期し、折り込んでくれることを期待するからである。しかし、これはそう悪い話ではない。と言うのも、もっと複雑な問題だと時間がかかる Spectrum サポートへの電話が必要となるからである。

しかし、最終的には速度テストの話になるし、私は Ookla の Speedtest サービスをありがたいとは思うが、そのサイト上の宣伝には夢中になれない。とりわけ MacKeeper や同様の製品のための怪しげな宣伝で、サイト自身のインターフェースと区別するのが難しいものは嫌である。選択肢としては、他のサービスやツールにはこと欠かないし、私自身もこれ迄の間にその幾つかを試したことがあるが、この様なテストをする必要性は滅多にないので、結局のところ、覚えやすい Speedtest.net に行ってしまう。(この記事の調査で見つけたものの主なものは、SourceForge Speed Test, Measurement Lab の Network Diagnostic Test, Speakeasy Speed Test, そして DSLReports の Speed Test である。これら全てが同じ様な測定結果を示したが、私は SourceForge テストのインターフェースと推奨事項が一番気に入った。)

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と言うわけで、私は Ookla が Mac のメニューバーに住み、速度テストを2回のクリックでやらせてくれる Speedtest アプリを無料で出してきたことを歓迎したい。

一旦 Mac App Store からインストールした後、メニューバーに現れる様にするには、それを Application フォルダから起動しないといけないかもしれない。テストウィンドウを開くには、そのメニューバーアイコンをクリックし、そして大きな "Go" の丸を再度クリックする。Speedtest はそのテストを開始し、そして結果を同じウィンドウに表示する。テストを繰り返す時は、Go をもう一度クリックする。Speedtest アプリはあなたの試験結果を覚えており、ウィンドウの右上隅にある人影のボタンをクリックすることで、最高速度、平均速度、そして直近3回の結果が見られる。ずっと前の結果を見たい時は、Result History をクリックする。

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このアプリを終了したい時は、この画面上にある Quit Speedtest をクリックするのだが、このコマンドを隠しておく場所としては奇妙な場所に思える。幸いにして、どの時点でも Command-Q を押せば同じことが出来る。

Speedtest アプリの私のお気に入り機能は、それが他のアプリに切り替えたとしてもテストを継続することとである。Speedtest ウィンドウは消えるが、その結果をバナー通知の形で返してくる。

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私の一番の苦情は Speedtest をメニューバー専用のアプリとした Ookla の決定に関わる。これはとりわけ CPU 喰いではないが、私の 27-inch Retina iMac 上での CPU 使用率は、走っていない時で 1-2 パーセント、テストをしている時で 5-9 パーセントといった所であった。速度テストを走らせる頻度を考えれば、私なら使った後は Speedtest を閉じておきたいと思う。現状では、気づかない程度ではあろうが、私の iMac の動作を遅らせる。

何れにしても、もし Web サイトに行くよりアプリの方を好むのであれば、この Mac 用の Speedtest アプリは検討する価値がある。これは無料で、使い易く、そしてそのインターフェースには宣伝も出てこない。

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Consumer Reports の MacBook Pro 評価を気にすべき理由

  文: Glenn Fleishman: [email protected], @glennf
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

Consumer Reports が 22 December 2016 に 2016 MacBook Pro に対し "推奨しない" 評価を与えた時、多くの人と同様、私も頭を掻いてしまった。この新しいラップトップは申し分ないとの評価ではなかった;そうではなく、CR は試験に供した3台のユニットの間で、色々なテストに対して電池寿命が大きくバラついたと言うのである。技術報道者の一人として、私はその様な状況下に遭遇したら自分だったり何をするであろうかは知っている積りである:自分のせいでテスト結果に誤りが出たに違いないと想定し - 同じモデルの電池寿命が 3.75 時間から 16 時間とバラつくとは - そして、その原因が分かるまで、自分のせいか、Apple のせいかに拘らず、試験結果を公表することはしないと思う。私もこの様な経験は幾度もしてきていて、その中には、初代の 802.11n AirPort ルータに重要なバグがあることを発見し、Apple は後日それを修正したしたと言う例も含まれる。

CR のテスト結果のバラつきのはっきりした原因は 11 January 2017 に明らかになった。 Apple が CR に提供された試験方法を調べたところ、Safari の中で開発者オプションを有効にした後にのみ現われる一つの設定項目に影響を与えるバグを発見した。Apple はもう既にこのバグ修正を織り込んだ Sierra の開発者ベータをリリースしており、CR もこのバグ修正を取り込んで問題のラップトップの再試験を実施すると言っている。アップデート: CR はこのバグ修正を取り込んだ再試験を行い、今や MacBook Pro を推奨としている。

私はこの事態に苛立ちを覚える自分を抑えきれない。それは Apple を擁護したいとか、或いは、Consumer Reports をけなしたいとか言うものではない。もちろん CR には、iPhone 4 の頃、有りもしない Antennagate 問題を煽ったことを含む光と闇が交錯する歴史がある ("Apple、iPhone 4 アンテナ問題に答える" 16 July 2010 参照)。

そうではなく、私が気になるのは CR がどの様に Apple とやり取りしたかではなく、同社が読者に仕える役目を果たせなかったやり方である。 (CR は購読出版ではあるが、時には一般大衆に対しても無料で材料を提供することもある。) 最初の報告で、試験方法を十分に明らかにすることもせず、そして、結果に対する理由は試験設定ではないことを確かめるにはもっと為すべきことあったことを認めもしないことで、CR の行動は全ての技術の報道や評価に対する信頼性を低下させるのではないかと心配になる。

Consumer Reports は、今や、これ迄のどの時代よりも技術評価における重要性を担っている。何故ならば、綿密な試験をこなせるだけの人的資源と時間を有している出版物はもう殆ど残っていないからである。私も、最近、Fast Company に、広範囲に及ぶ独立の試験の欠如故に、安全で信頼性のある USB-C 製品を見つける困難ささについて書いたばかりである。この様な理由から、人々は益々 CR の推奨に依存する傾向があり、結果として余り良くない購入判断へとつながる二つの理由が存在する:

問題の設定を有効にするには、まず Safari > Preferences > Advanced を開いて、Show Develop Menu in Menu Bar チェックボックスを選択する。それから、Develop メニューで、Disable Caches を選択しなければならない。CR は、一連の 10 種の Web ページをローカルネットワーク経由で繰り返し引き出すスクリプトを用いており、キャッシュを不能にすることで、ユーザーが多くのサイトから新しいページを引き出す効果をシミュレートしている。キャッシュしないことで、このテストはネットワークやサーバー性能に関係しない一貫性を提供出来る;キャッシュが有効だと、Safari はネットワークや他のシステム資源を殆ど使わない。このバグは、どうもアイコンキャッシングに関わっており、場合によっては電池寿命を大きく損なうことになるようである。

そうではあっても、この設定を使う人はまず誰もいないであろう - キャッシュはほとんどの場合性能を改善する。確かに新しい MacBook Pro 所有者の中には、前のラップトップや宣伝された性能に比べて電池のもちが悪いと苦情を言う人もいるが、普通のユーザーがこの特定のバグに遭遇するすることは無いであろう。(Apple は、macOS の中で電池の残量の計算を MacBook Pro のリリースに伴い不能にしたが、これは予測精度が上がった故だと報じられている。"macOS 10.12.2 Sierra、新型 MacBook Pro にフォーカス" 13 December 2016 参照。)

Consumer Reports は、責任ある技術出版物では標準として守られている事柄の殆どを行った:Apple に対して試験結果を提示し反論の機会を与えたが、Apple がそのバラつきの理由を説明出来なかった時、結論を変えなかった。結果を出版した後になって、CR は追加の情報を Apple に供与し、それを精査した事で Apple はバグが Safari のどこにあるかを突き止めた。

CR は再試験をし、電池寿命は以前のモデルや競合するラップトップに劣らないとの結論に達したので、最初の報告がどれ程の被害をもたらしたのかを問うのは非礼ではないであろう。

Apple の売上げに悪い影響を与えた可能性は否定出来ない。記者は自らの偽りのない、十分に吟味された試験結果が、ある会社の売上げに影響を与えるかどうかを心配するべきではないが、彼らは 常に 厳密さと公平性には配慮する必要がある。(記者は良心の呵責にさいなまされることもあるが、とりわけ小さな企業について書いている時には、これらは読者の利益を最優先させることとバランスが取られなければならない。)

もっと心配なのは、CR の報告が消費者が Consumer Reports そのものに、ひいては技術出版物全般に対して抱く信頼に対する影響である。企業の宣伝を検証する信頼に足る技術報道無しでは、消費者は本質的に偏った情報源しか持てなくなる。どんな技術企業でも自社の製品の品質について消費者をだますことを積極的に狙うことは極めて稀ではあるが - Galaxy Note 7 問題を直ちに認めないことで Samsung が起こした最近の大失敗を思い起こして欲しい - 誰もが自社製品を最善の光で飾ろうとする。そしてその結果、都合の悪い現実は見え難くなってしまいがちである。

そう、私は Consumer Reports が、彼らの試験がなぜそれ程大きなバラつきをもつ結果となったかの見極めをするのに、自ら行なったと言っている以上にもっと一生懸命な努力をせずに彼らの推奨を公にしたことに対して疑問を呈したい。実際、CR は Google Chrome を使っての試験も少しやっているが、最初の記事では詳細に記述されてはいない。CR は、どう見ても Chrome を使った試験に基づいて MacBook Pro 推奨する気にはならなかったようだが、試験での Safari 問題を分離する手助けにこれらの結果を使うことは出来たはずである。

この話の教訓は、一つの試験の結果が通常からかけ離れている時、為すべきことはもっと深く掘り下げることで、この世に混乱を持ち込む事ではない。その理由は、会社の感情や売上げを救うためではなく、読者との信頼の絆を保つためである。

注:この記事は CR が再試験をし、電池寿命はばらつきもなく十分な性能を有していることを確認し更新して推奨を出したより数時間前に出された。

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CES 2017: CES 展示会場でのガジェット探し (1 日目と 2 日目)

  文: Jeff Porten: [email protected]
  訳: 清水 史彦 <qff01604@nifty.com>

これまでのところ、CES で、「専任担当」として、私は、一日をセッションやミーティングで過ごし、あと一日は展示会場をうろついて過ごしていた。セッションは、様々な家電製品のトピックスに関するものであった。TidBITSのためのいくつかの面白いアイデアについて考えたり、リサーチを少々加えたりする時間が一度取れたなら、私は、それらについて書き上げようと思う。

私が見た物について言えば、ミーティングはどれも非常に面白かった。だが、展示会場は、私が報道向けの個別イベントでこれまで見た物に比べると、少々面白さに欠けていた。公平を期して言うなら、それは、驚くほど巨大な展示会場で、ずっと多くの距離を私が歩いたことと関係があるかもしれない。私は、製品がどんな物で、興味をそそられるかどうか、私ですら分からないうちに、自分たちの製品の身の上話を語りたがる幾人かの広報担当者に対して、思わず、Mr. Grumpy Journalist だったかもしれないと思う。(訳者注:Grumpy は、「白雪姫」に登場する七人の小人の一人の「おこりんぼ」)。

では、私が面会した会社から始めて、それから、みなさんのために、私が展示会場で見つけた物に移ろうと思う。

Other World Computing -- OWC ならびに macsales.com として知られている Other World Computing は、2016 年の MacBook Pro 向け DEC 拡張ドックのプロトタイプで、「これまで私が見た中で最高の物」という称号をただいま保持している。これは、MacBook の底面に、本体と段差無く取り付けられ、重さと厚みが少々増える。そして、Thunderbolt 3 ポートの一つに差し込むフラットな U 字形のコネクタが付いている。得られる物は、以下の通りだ。4 TB までの追加 SSD ストレージ、3 つの USB type-A ポート、多機能 SD カードリーダー、そして、ギガビット Ethernet ポートだ。OWCの CEO である Larry O'Connor は、他に何か入れられないかどうか、まだ最終的に詰めているところで、最終的に厚みと重さがどのくらいになるか分からないと言った。値段もまだ決まっていないが、O'Connor は、空のSSD ベイを有するエントリー・レベルのモデルがあり、そして、SSD の価格は、内蔵タイプのアップグレードに Apple が課す価格に対して、極めて競争力があると語った。

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また、OWC は、Thunderbolt 3 Dock を誇らしげに展示してもいた。これには、2 つの Thunderbolt 3 ポート (MacBook Pro を電源につながなくてもいいように、パススルー・パワーが付いている)、Mini DisplayPort、5 つの USB 3 Type-A ポート、ギガビット Ethernet、デジタル・オーディオ出力、3.5 mm オーディオ・コンボ入力、そして、SD スロットがある。MacBook Pro に合った色で登場し、2017 年 2 月に 299 ドルで販売開始となる。

この会社は、外付けストレージ製品でも知られていて、Thunderbolt 3 EnvoyPro SSD のデモンストレーションを行っていた。これは、ポータブル (そして、とても薄い) ドライブで、2017 年 3 月に出荷される際には、500 GBから 2 TB の容量範囲で出てくる。価格はまだ設定されていない。展示は無かったが、私にとって新しかったのは Envoy Pro mini で、これは、USB 3.1 の入出力速度を持つ USB メモリサイズの SSD だ。これは、今でも買うことができ、容量は、120 GB、240 GB、そして、480 GB、価格はそれぞれ、100 ドル、178 ドル、そして、270 ドルだ。

私はまた、Larry O'Connor が、入出力速度とドライブ性能について、この業界にどっぷり浸かっているプロならではの数字を、技術を真剣に知り尽くしている人物のような活力と共に、淀みなく披露してくれたことに感謝する次第である。こういった事は、CES では、よくある事ではない。広報担当者や会社幹部は、技術的な質問に答えるために、エンジニアを呼ぶ必要があるのが普通だ。O'Connor は、私よりも Mac のハードウェアについて深く把握している。これは、この会社の経営者にあなたが話しかける時に、ワクワクするものとなる。

Even のイヤフォン -- 以前書いたように、私は聴覚が劣っている ("iOS 補聴器... 或いは、スーパーマンの耳の買い方" 2011 年 2 月 8 日参照)。私が、何らかの身体障害者用測定スペクトルにふさわしいかどうかは分からないが、調子のいい日でも、私は、聞き逃す周波数があるし、耳が詰まって調子の悪い日には、右の耳がほとんど全く聞こえない。通常の場合、もし他の人が、私には聞こえない音に反応しなかったら、何を聞き逃したのか、私が気づくことはない。

世の中には、「聴こえないわけではないが、それほどいい耳ではない」私たちのような人が大勢いるように思われる。そして、Even 社 🎁 は、しゃれたソリューションを持っている。それは、聴覚テストを内蔵したヘッドホンとイヤホンで、そして、聴くのに問題がある周波数に合わせて、イコライザーを調整してくれる。ヘッドセット (これは、どちらの側をどちらの耳にあてるか分かるように色分けされている) を装着し、テストを始めるために、コード上のボタンを数秒間、長押しする。すると、ヘッドセットから、左右の耳にそれぞれ、非常にソフトな音から始まって、次第にボリュームを上げながら、8 種類のオーディオ・サンプルが流される。そして、聞こえたらボタンを押す。テストにかかる時間は約 3 分だ。終了後、ヘッドセット上の Evenボタンを押して、イコライザーをオンオフする。別の環境に居て、音響特性を調整する必要があれば (すなわち、機内や、異なるバックグラウンド・ノイズがある場合)、単にテストをもう一度やるだけだ。(同社の Web サイトには、テストのオンライン・バージョンがある。)

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これらの製品は、ゆくゆくは、音楽ならびに映画用に、私の頼りになるヘッドセットになると思う。1 日使ってみたが、Even の音響特性の効果で、音楽がものすごく豊かに聞こえた。Podcast は、それほど違って聞こえなかったが、これが、アメリカ人のアクセントではない英語を聞くのに役立つかどうか試してみることに、私は興味を持っている。これは、時々私を困らせるのだ。いくつか警告がある。オーディオ処理はコードで行われるので、多くの有線ヘッドセットとは異なり、これらを使うためには再充電しなければならない。また、これらのスイッチを入れるのを忘れないでいる必要がある。(使っていない時は、通知用に内蔵されているオーディオの合図と共に、自動的にスリープする。) そして、多くのヘッドセットのように、ボタンの実装を顎の高さに持ってくることができないので (ボタンは、左右のコードがそこから出て来るのに十分低い位置にある)、内蔵マイクは胸の位置に来る。これは、電話に最適とは言えない。だが、聴覚に幾分障害を持つ人のためにより良い音をという彼らが意図する目的故に、私は、Even 社のヘッドホンは、大きな勝利だと考えている。ヘッドホン (179 ドル) とイヤホン (99 ドル) は、Even の Web サイトで、ただいま入手可能だ。そして、Even には、もうじき登場する Bluetooth バージョンがあり、これを使えば、複数の聴覚プロファイルを同時に保存することができるようになる。

Aifi の Bluetooth スピーカー -- Aifi は、「めちゃめちゃクール、だけど、金に糸目をつけない時に限ってで」賞という怪しげな賞を受賞した。単独では、一台の Aifi スピーカーは、他にもたくさんある、ポータブルの良い Bluetooth スピーカーだ。だが、もしあなたが 2 台以上持っていたら、魔法が起こる。それらを横に並べたり、積み重ねたり (あるいは、碁盤目状に配置したり) してみるとよい。すると、追加されたスピーカーは、それらが触れているユニットに対して、自動的にスレーブになり、一つのオーディオ・ソースで複数のスピーカーを、ケーブル接続やセットアップをすることもなく、駆動することができるようになる。しゃれた LED 照明システムが色を変えて、Aifi スピーカーが、独立しているのか、スレーブになっているのか表示する。そして、スピーカーが水平に並べられているのか、あるいは、垂直に重ねられているのかに応じて、音楽は、そのオーディオ形態を賢く変化させる。残念ながら、これは 1 台 299 ドルで、その機能を最大限に活用するためには、あなたはこれがたくさん (えー、最低 2 台) 必要なのだ。

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SCOTTeVEST の OTG -- SCOTTeVEST は、オタク向けに、追加のポケットを山ほど付けたジャケットやベストの製造に関する長い実績を持っている。だが、むしろ私が驚いたのは、同社の OTG だ。これには、29 のポケットのうち、フルサイズのラップトップを持ち運ぶのに十分なほど大きな 2 つのポケットと、タブレット用の もう一つ のポケットがある。なので、もし、あなたが MacBook Pro、iPad Po、そして、面白半分に iPad をもう一台持って旅行に行くのが好きならば、準備は万端だ。M サイズと L サイズのジャケットには、15 インチの MacBook Pro を収納することができる。一方、S サイズは 13 インチまで収納できる。価格は 215 ドルで、ただいま入手可能だが、クーポン・コード CES17 を使えば、CES 期間中は 30%、1 月の残りの期間は 25% オフとなる。

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Elgato の Eve -- CES で、私の目を退屈でぼうっとさせるものが一つあるとすれば、それは、スマートな家電製品を提供する何百もの会社だ。そうした家電製品の中には、HomeKit に準拠したものもある ("大草原の HomeKit のお伴: 中心となる概念" 2016 年 11 月 3 日参照) し、他には、競合する他の 4 つの規格の一つに準拠するものもある。こうした製品のうち、どの製品が他の製品よりも優れているのかを語ることは、私にはできない。なので、今まで、私はそうした製品を全てスキップしてきた。だが、私は、Elgato の Eve システムについて語ろうと思う。それは、純粋に、私にはこの会社に弱みがあるからだ。彼らの製品の一つは、私が 13 年以上前に TidBITS 向けに書いた最初の記事のテーマであった ("TiVo に代わるもの: EyeTV" 2003 年 11 月 10 日参照、コンピュータの仕様に関する過去からの本当に楽しい経験のために)。

Eve は、私が関心を持っている各種のキットの販売代理店だ。すなわち、センサー、スイッチ、そして、コンセント (それぞれ、40 から 80 ドル) を取り揃えていて、全て、無料の iOS アプリでやり取りできる。理屈では、値段ははるが、これらをパレット買いして、全ての家電製品をコントロールしたり、あるいは、家の中の全てのドアの状態をチェックしたりすることが可能だ。実際には、コントロールしたいとか、モニターしたいとか思う重要なものをいくつか選び出し、そして、実際にやりながら拡張していく。価格設定や特徴の段になると、Eve は、ここにいる他の全てのベンダーと似たようなものになってしまう。誰か、価格で競争したり、他とは違う特徴を持っていないかどうかだが、私はまだそうしたベンダーを見たことがない。

Carrobot の Driving Assistant -- ある種の仮想現実や拡張現実がなければ、CES は、まさにCES だとは言えない。そして、これまで私が注目してきたもの (顔の大部分を覆うゴーグルを装着した何十人もの人をスキップした後で) は、Carrobot の C2 だ。これは、車のフロントガラス用の車内のヘッドアップ・ディスプレイだ。これには、あなたが当然だと思うようなもの、例えば、あなたがコックリコックリしていたり、電話に気を取られたりしていることにこれが気付いたら、あなたを怒鳴りつけるといったようなものとは別に、いくつかの巧みな技がある。だが、私は、これに内蔵された音声のやり取りについては少々疑問を抱いている。これは、せいぜい、Siri やGoogle Assistant のコピーのように思われる。これがあなたのお気に入りになるかどうかを決める最速の方法は、彼らのちょっとばかげた 2 分間のYouTube ビデオを見てみることだ。もし、あなたが中国語を喋るのであれば、その場合はただいま入手可能だ。それ以外の人には、2017 年 4 月に出荷され、価格は 500 ドルもする。

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Xenoma E-Skin -- 私は、Xenoma の E-Skin について語ろうと思うが、それは、E-Skin が、このカテゴリーにおける新たなトレンドだからではなく、このカテゴリー (衣類に織り込まれた技術) が、近い将来、あるいは中期的に、爆発的に伸びるからだ。布地に埋め込まれたプリンタブル・エレクトロニクスは、衣服を、カメラ不要のモーション・キャプチャー・ユニットに変える。200 ドルという価格なので、E-Skin のプレミア・シャツは、あなたが気軽に買いたいと思うものではないが、あなたが重要顧客というわけではない。Xenoma は、この技術プラットフォーム上でモノづくりをするデベロッパーと契約することを主として目論んでいる。ここでの狙いは、規模が大きくなれば、プリンタブル・エレクトロニクスは非常に安価になるので、最終的に、この技術を有する衣服が、もっとも安い飾り気のない古い衣服を除いて、価格競争力を持つようになるということだ。今のところ、あなたがスマートな衣服に関してできることはあまりないが、10 年後に何を着ることになるか知りたいのであれば、この技術から目を離さないことだ。

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UpWell -- 慢性の健康障害がある人物として話をしながら、私は、私のような人たちの擁護者であるという UpWell のキャッチフレーズに、ただちに興味をそそられた。本質的に、UpWell は、慢性病を持つ人たちのために、一か所で何でも揃う買い物や、トラッキングの無料サービスを提供したいと思っている。ただいま現在、ベータ・バージョンではあるが、同社は、糖尿病、メンタル・ヘルス問題、そして、心臓疾患のためのプログラムを持っている。これらのプログラムのうち、どれか一つに登録すると、その問題について、個人に合わせた教育とサポート・システムが提供される。最終的に、UpWell は、処方薬の購入や、合法的なトラッキングも扱うことになるだろう。私は、このサービスに関して、品質をチェックする機会がまだないが、ベータ・バージョンに何があって、2017 年 6 月に完全に立ち上がったら、何が含まれるようになるのか、完全には分からない。だが、もし、ほんの少しでも興味をそそられると思われるのであれば、試してみることだ。と言うのは、ベータ・プログラムは、一般向けに開放されているからだ。

NuCalm -- 毎年、私は、典型的には少なくとも一つのものについて、純粋に、まがい物の評価のための記事を書く。そして、今年の候補は、NuCalm が言っていることで、その製品を使うと、20 分で 2 時間以上の睡眠のメリットが得られると言うものだ。あなたがするのは、どうもこう言うことらしい。首に局所クリームを塗りつけ、顎に微小電流を流すアクセサリーを取り付け、「ニューロアコースティック」アプリとヘッドホンで音を聴き、そして、アイマスクをつける。(アイマスクが、光を遮ること以外に、何か特別なことをしているかどうかは不明だ。) 私は、ニューロ・テクノロジーが言うことについては全て極めて懐疑的なので、このまがい物は、ジャンルに関してであって、この特定のベンダーではないということを強調しておきたい。どうやら、NuCalm はおよそ 20 年ほど経っていて、研究によって支えられているようだ。だが、私は、それが実際に効果があると分かるまでは信用しない。NuCalm は、医療プロバイダーを通じたサービスとして、現在利用可能であり、2017 年の第四四半期には、コンシューマー製品として登場する。価格はまだ設定されていない。

FACIL'iti -- 私は、アクセシビリティの専門家ではないので、Web のアクセシビリティについて複数の競合する規格があるのかどうか分からない。とは言うものの、私が FACIL'iti について見たデモには感銘を受けた。これは、あなたが購入するものではなく、あなたのお気に入りの Web の発行者に従うよう要求するものだ。一度 FACIL'iti にサインアップして、あなたが苦労している障害について、フォームに記入する。FACIL'iti には、失読症から光過敏性癲癇、そしてパーキンソン病に至るまで、あらゆる障害のために用意された設定がある。それから、あなたが、アクセシビリティに適合した Web サイト (これまでのところ 300 ほどある) に行くと、ページ全体の色、テキスト、そしてレイアウトが、あなたに合うように調整される。例えば、あなたがパーキンソン病を患っているのであれば、使うことができないドロップ・メニューは、非常に大きなクリックするターゲットが付いたサイドバーになる。未来の Web デザイナーとして、私は、FACIL'iti と、アクセシビリティに適合したサイトがここで見せてくれた仕事の意義に、私は感銘を受けた。そして、年老いていく一人の男として、私は、これや、これに似たようなものが、もっと普及するのを見たいと思う。

Power Aid のソーラー・ハット -- CES には、お馬鹿な帽子のための物があるようだ。Power Aid のソーラー・ハットは、最初は馬鹿げているように思われたが、太陽の光が降り注ぐ気候の中で、屋外で長時間過ごす人たちにとっては有用かもしれない。あなたが当然考えるように、これは、太陽電池パネルが付いた帽子に過ぎない。だが、あなたが、電話を屋外にいる間に充電しようと思うのであれば、立ち止まって、パネルを地面に広げるよりも、帽子をかぶって歩き回る方がはるかに簡単だ。だが、野球帽では、1 時間あたり、175 mAh しかないので、この製品は、電源なしで数日間過ごすたくましいアウトドア狂に、もっとずっとふさわしい。野球帽は、ただいま 50 ドルで入手可能だと私は言われた (この会社のサイトではもっと高いが)。バケツ形の帽子は、2017 年 4 月に登場する予定で、充電能力が 2 倍になって 70ドルだ。

International Communication Project -- 私は、International Communication Project にとても惹きつけられた。彼らは、私に何も売ろうとはしなかったからだ。代わりに、彼らのブースの展示は全て、みんなに、自分の子供たちに話しかけるのを思い出させることに関する物だった。特に、就学前の子供たちにできるだけ頻繁に話しかけること、そして、画面を覗き込む時間が、話をする時間や言語能力の発達を押しのけてしまうということに注意しなければならない。これは、運営団体による一回限りのキャンペーンのように思われる。彼らは、世界中で、コミュニケーションの困難について行なっている他の多くのキャンペーンをリストに掲げている。だが、テクノロジーに特化したキャンペーンは無かった。それでもなお、CES で姿を見せるのは、彼ら自身を技術のスポットライトの中に登場させる賢いやり方だ。

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CES 2017: CES 展示会場でのガジェット探し (3 日目と 4 日目)

  文: Jeff Porten: [email protected]
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

CES の最後の二日間は、さらにもっと消耗の激しいものであった。私の両足が「座って休ませろよ、このバカ!」と叫び続けるのを無視して、記事のネタを探しつつ必死にフロアを歩き続けなければならなかったからだ。でも、努力の甲斐はあった。見つけたさまざまの機器や製品を、以下で紹介して行こう。

CES が終わった後、ここラスベガスで出張中の休暇を楽しもうと思う。疲れを癒し、睡眠時間を取り戻したいからだ。でも、そうやって体を休めたら、今回のショウの全体的な動向に思いを巡らしつつ、これから数年間にコンシューマ向けテクノロジーにどんなものがやって来るかについて、考えをまとめた記事を書くつもりなので、また今後の TidBITS を楽しみにしていて頂きたい。

Gyenno Spoon II -- 賢いロボット・スプーンなんて行き過ぎだと思うかもしれないが、パーキンソン病や、その他筋肉の働きが悪くなる病気を持つ人々には、これが唯一の使えるスプーンなのかもしれない。スタビライザーを内蔵して、手や腕がひどく震えてもスプーンが平らに保たれるようになっている。第一世代の Gyenno Spoon は $299 で現在入手可能だ。ハンドル部分が小さくバッテリ寿命が向上した第二世代の製品が、今年中に同じ価格で発売される。実際に使っている様子が見たければ、Gyenno のサイトにビデオがある。

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Keezel ハードウェア VPN -- 仮想プライベートネットワーク (VPN) はあなたのコンピュータからインターネットへ流れるデータを暗号化するので、Wi-Fi ネットワーク上にいる人があなたのネットワークを盗み見ることもできないし、あなたがしていることを ISP に追跡されることもない。また、VPN はあなたの地理的位置の見かけを変えることもできるので、あなたの国でブロックされているウェブサイトに行きたい場合に使えることもある。通常 VPN はソフトウェアベースなので、使う度にあなたが自分でオン・オフの切替をしなければならない。その際に誤って設定を間違えれば、たちまちインターネット接続が無効になってしまう。Keezel が狙うのは、そこの手順を単純化することだ。これは持ち運び可能なハードウェア VPN ルータで、Keezel を Wi-Fi ホットスポットに接続し、デバイスを Keezel に接続する。主たる利点は、デバイスが Keezel を覚えているだけでよいので、うっかり暗号化なしの接続をしてしまう危険性が減ることだ。また、Keezel は 8000 mAh のバッテリーを内蔵し、周辺機器を充電することもできる。現在 Indiegogo で予約注文を受付中で価格は $139 だが、今年中に出荷された時点で価格が $149 となる。(現時点で予約注文すれば 2017 年 4 月に届くはずだ。)サービス価格は月額 $5 だが、購入時に年払い、二年払い、あるいは無期限の購読を購入することもできる。

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iOS 用 Aipoly Vision -- Aipoly が同社の iOS 用 Aipoly Vision アプリをアップデートした。これは AI を使った画像認識システムで、カメラが捉えたものを音声にして発声することで、目の見えない人の助けになろうとするものだ。無料のこのアプリは認識可能な 1000 個のオブジェクトを含んだデータベースを内蔵しており、月額 $5 の購読をすれば現在 5000 個でさらに増え続けるオブジェクトを含む有料データベースが使える。同社の CES ブースにはキッチンがディスプレイされていたので、主として家にあるオブジェクトが対象となっているのだろうと思う。一般向けには、Aipoly の Poly アプリが同じテクノロジーを使って事実上何でも認識する。皿の上の食べ物、目の前のレストラン、近所にある記念碑といったものが見分けられ、それぞれについての補足情報も表示する。こちらは 2017 年 5 月に登場予定だ。

Batband 骨伝導ヘッドフォン -- 周囲の音が自由に聞ける状態で電話が聞こえるようにする必要があれば、骨伝導ヘッドセットが頭蓋骨を通して直接サウンドを耳に届けることができる。Batband ヘッドセットはそのためのもので、耳の上のところに先をこめかみに向けるようにして装着する。サウンドはちゃんと聞こえたが、非常に騒音の多い CES のフロアではすごく聞きやすいとは言えなかった。長時間装着し続けても快適なのかどうか、私は考えてしまった。Indiegogo キャンペーンでの価格は $199 だが、2017 年 7 月に出荷されれば価格が $249 となる。

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Fireflies ワイヤレス・イヤーバッド -- Apple の AirPods の競争相手となる製品は片手では数えられないほど多く見かけたが、そのほとんどすべてで価格が Apple と同等かそれより高いことに私は驚いた。Apple が AirPods に結構な利幅を適用していると私は思い込んでいたのだが、その価格は競争力のあるものだったと見える。私が気付いた範囲で AirPods よりも安かったのはただ一つ、$120 の Fireflies イヤーバッドだ。そうは言っても、iPhone ユーザーならば $40 余分に出して AirPods を買った方が Siri 統合や Lightning 充電があるので得だろう。

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QuietOn 雑音除去イヤーバッド -- QuietOn が、AirPod のフォームファクターの中に雑音除去(ノイズキャンセル)機能を盛り込んだ。最大 40 dB の能動型および受動型雑音除去を提供するワイヤレス・イヤーバッドだ。一度の充電で 50 時間保ち、誰かのいびきを遮断する必要があってさえも十分快適に眠れるように作られている。$199 で現在入手可能だ。

パブリック・スピーキング練習用 VoiceVibes -- ほとんどの人は人前で話すのが死ぬより怖い、とよく言われるが、これは問題だ。人前でうまく話せるようになるための最良の方法は、何度も繰り返し実践することだからだ。このジレンマを脱することを狙った VoiceVibes は、ウェブベースのトレーニング用アプリを通じて話す練習の機会を提供する。このアプリの前でスピーチをすれば、あなたの声が生き生きしているかどうか、話す速度が適切かどうか、その他の要因に基づいて採点してくれる。私も、ポッドキャストの中の自分の声が嫌いなので、このアプリを試してみたいと思う。2017 年後半に VoiceVibes は大勢の人々の前で話す体験をそのまま再現できる VR (仮想現実) システムをリリースする予定だ。(これこそ史上最も怖い VR ゲームだと思う人もいるかもしれない。)通常 VoiceVibes は各種の団体や組織に向けて販売されているが、今回同社は TidBITS 読者のために特別提供をしている。60 日間に限り、コード CES2017 を使って個人としてサインアップすれば、$30 で 6ヵ月間の購読ができる。その後の価格は未定なので、60 日間が過ぎた後にこれをお読みの方は [email protected] に電子メールで問い合わせて頂きたい。

iPhone リモコン Puck -- CES でほとんど毎回呼び物となるのが、あなたの電子機器に付属のリモコンに代わるものとして使えるハイテクのリモコンだ。でも、私が Puck を気に入った理由は、一度に一つずつデバイスに機能を追加するための安価な手段であるからだ。一個 $30 の Puck は小さな円筒形をしていて、特定の一つの電子機器の正面に置き、赤外線リモコンをシミュレートすることによってその電子機器をコントロールする。付属の iPhone 用アプリですべての Puck を、従ってそれぞれ対応するデバイスをコントロールできる。一個の Puck が複数個のデバイスをコントロールすることもそれらのデバイスがすべて赤外線照射範囲内にあれば可能なようだが、同社のウェブサイトではそれを確認することができなかった。そのように使うつもりなら、注文の前に問い合わせてみるべきだろう。

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Hudway Glass ヘッドアップ・ディスプレイ -- すべてを内蔵して $500 もする自動車運転用ヘッドアップ・ディスプレイ Carrobot C2 について書いた際に(2017 年 1 月 10 日の記事“CES 2017: CES 展示会場でのガジェット探し (1 日目と 2 日目)”参照)既にスマートフォンでできることをあまりにも多く再現しようとし過ぎている点を私は批判した。どうやら同じことを思った人もいると見えて、$49 の Hudway Glass は基本的に、自らがヘッドアップ・ディスプレイとなる iPhone マウントだ。跳ね上げ式の透明なスクリーンが、画面をあなたの眼前に映し出すとともに、それを通して自動車の前方も見えるようになっている。映し出されるのは単なる鏡像なので、Hudway の iOS 用無料アプリを使うか、あるいは他の開発者のアプリを使うかして、正しい向きに鏡像が表示されるようにしなければならない。

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Haiku 自転車取り付けディスプレイ -- 私は Haiku のフォームファクターが気に入った。自転車のハンドルに取り付けて使う、スマートフォン用のディスプレイ兼リモコンだ。ディスプレイには道順やメッセージなど現在進行中の通知が表示される。ジェスチャーを使ったシステムを使って、道路から目を離さず手をハンドルから離さずに、スマートフォンをコントロールしたり Haiku をナビゲートしたりできる。現在 Indiegogo 上で 85 ユーロとなっているが、2017 年 4 月 $99 で出荷予定だ。

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Unistellar 拡張現実望遠鏡 -- NASA が発表する画像についてあまり知られていない秘密の一つは、家庭用の望遠鏡で見たものをそのまま反映した画像ではないということだ。普通には見えない星がコンシューマ向け望遠鏡で見えるようになることもあるが、Hubble 宇宙望遠鏡で撮影された豪華なカラー画像は目に見える色スペクトルに入るように後処理されたものだ。つまり、裏庭に置いた望遠鏡でいくら見てもそんな画像にはならない... ただし、AI レンズ Unistellar を使った場合は別だ。これは二つのことをする。望遠鏡が受け取った光を増幅することと、あなたの目に見える画像の上にオプションで拡張現実画像を重ねて、Hubble やその他の望遠鏡による画像に施された効果を含めることだ。この拡張現実表示はまた、星座の情報や、天文学の博士号を持っていないと分からないような星間距離の情報などもポップアップの中に表示する。2018 年にリリースされれば、$1000 から $1500 を支払って Unistellar のレンズを既存の望遠鏡に追加することもでき、Unistellar が独自に発売する望遠鏡(AI を内蔵していて自動位置取りもできる)を購入することもできる。

Tapp タッチ式南京錠 -- 南京錠は古いテクノロジーだが、多数の南京錠を使う必要がある場合、かさばる鍵束を持ち歩いたり、たくさんの数を覚えていなければならなかったりして面倒だ。スマート南京錠の Tapp はその代わりにタッチインターフェイスを使い、最大 500 個の異なる指紋を記憶することができる。iPhone 用アプリで、誰がその南京錠にアクセスしたかを日付と時刻の記録とともに完全な履歴として提供する。再充電可能なこの南京錠は、2 時間充電すれば 18ヵ月間働き続ける。2017 年 3 月に $99 で発売される。

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連邦捜査局 (FBI) -- ショウの会場で FBI がブースを出しているのを見て私が感じた第一印象は、FBI が去年 Apple といざこざを起こしたこともあり、厳しいものであった。(2016 年 2 月 17 日の記事“バックドアを批判した Tim Cook の公開書簡についての考察”参照。)幸いにも、この政府機関が今回 CES にいたのは、もっと前向きの話題についてコミュニティーに働きかけるためであった。つまり、出展者たちがショウの会場で知的財産の盗難やハッキングに遭わないように、出展テクノロジーをセキュア化する援助をするためのブースだ。会場で自ら働く任務を割り当てられた特別捜査官が、名刺を手渡しながら、侵入を疑わせるようなことが起こればすぐに知らせて欲しいと人々に呼びかけていた。これをきっかけに、製造業者たちが常にセキュリティを心に留めるようになればと思う。特にインターネットに接続する機器については重要なことだ。詳しいことが知りたければ、FBI に連絡してトレードショウのセキュリティのための Strategic Partnership について問い合わせるとよい。

Cardberry -- 現代の小売業界における疑わしい側面の一つは、あらゆる店が買い物をする度にポイントカードを使わせようとすることだ。(ラスベガスではさらに深刻で、どのカジノでもプレイする度にスキャンすべきカードをくれるので、財布がたちまち George Costanza の財布みたいになってしまう。)あらゆるポイントカードを一枚のカードにまとめてくれるのが Cardberry だ。過去にあった類似のものとは違って、Cardberry は iPhone アプリの中に情報を保存することにより無制限の枚数のカードを含めることができる。ただ、このやり方のため一つ余分に手間がかかる。つまり、カードを使う前にアプリの中で適切なカードを選んでおかなければならない。バーコードをスキャンするものについては、カード内蔵の LED がスキャナに直接バーコード情報を送信することでカードに印刷されたものの代わりとする。$99 で現在入手可能で、カード充電器と、カードリーダー(これで他のカードをスキャンできる)が付く。ブースでは、チップリーダーとデータライターも付いた $129 のモデルが展示されていたが、係員によればこれは既に販売中だがまだサイトには載っていないという。Cardberry は、クレジットカードやデビットカードに $99 のモデルを使うことは勧めていない。セキュリティが銀行が推奨するレベルより低いからだ。この点が $129 のモデルで改善されているのかどうかははっきりしなかった。

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Energysquare ワイヤレス充電器 -- モバイルフォンやポータブル電子機器にワイヤレス充電ができる機器を私はたくさん見てきたが、たいていは充電ポートのところに誘導充電ステッカーを貼って、それからデバイスをパッドの上に置いて充電するタイプだった。けれども Energysquare はちょっと違う。誘導充電の方法を使わず、二つの金属製の接点が充電器具に付いていて、その接点がパッドに触るようになっており、この方が効率的だ。現在 Kickstarter プロジェクトが進行中で、当初価格はパッド 1 枚と充電器具 5 個で 49 ユーロだ。同社は 2017 年 5 月に $89 で一般発売することを期待している。

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10-Vins D-Vine -- 私はワイン通ではないので、D-Vine の存在理由を理解できていないのかもしれない。D-Vine は、家庭内ソムリエ(ワイン鑑定士)になると主張する。10-Vins の真空パックされたフラスク(瓶)を一つデバイスに取り付ければ、そのフラスクの RFID チップを読み取って、そのワインに最適の温度で曝気処理を施す。ただしこれは 10-Vins が供給するフラスクに入ったワインでのみ動作し、フラスクの価格はワインによってグラス一杯あたり $3 から $22 までとさまざまだ。デバイス自体は 2017 年 9 月に $1200 で出荷されるが、これに興味を惹かれるのはよほどのワイン愛好家だけだろう。でも、本物のワイン愛好家なら、飲めるワインを供給されるもののみに制限したいと思うだろうか? また、自分でワインに最適の温度と酸素化を施すことができるのではないか?

Troffee -- Troffee がボタンを押すだけで使えるバリスタ(エスプレッソ職人)システムだと知って私はワクワクしたが、目の前にある商業用ユニットの価格が $90,000 だと聞いてがっかりした。何だそりゃ! でも、オランダにあるこの会社は、普通の人間にも手の出る価格のモデルを今年後半に出す予定だという。これらのマシンは、さまざまの種類のエスプレッソやコーヒー飲料を自動的に調製し、さまざまのシロップの中からあなたが選んだものを加えることさえできる。

Parkmatch -- Uber や Lyft が自動車をやり繰りするのと同じように、フランス国内のみの Parkmatch サービスは駐車スペースをやり繰りする。つまり、私有の駐車場のための Airbnb のようなものだ。無料のサービスにサインアップすれば、駐車できる個人の駐車スペースへアプリが道案内してくれる。この会社が米国にやって来たら、特に都市部では一大事になるだろうと思う。会社の広報担当によれば、2017 年後半か 2018 年前半には米国でも Parkmatch サービスが開始できることを期待しているという。編集者に教えてもらったことだが、これに少し似た SpotHero と呼ばれるサービスがシカゴ、ニューヨーク、サンフランシスコにあるが、こちらは個人の駐車スペースでなく商用の駐車場を使ったものだという。

Kanex GoPower Watch -- 会場の Kanex ブースではこの製品を見かけなかったが、Kanex が GoPower Watch を発表した。これは、バッテリーを使った持ち運び可能は Apple Watch 用充電ドックだ。Apple の充電器の磁気誘導充電を再現しているが、4000 mAh を提供するお陰で Apple の充電器の 6 倍速く Apple Watch を充電できる。標準的な USB-A ポートも備えていて、他の周辺機器に電源を供給したり iPhone を同時に充電したりもできる。$100 で現在入手可能だ。

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TidBITS 監視リスト: 注目のアップデート、2017 年 1 月 16 日

  文: TidBITS Staff: [email protected]
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Fantastical 2.3.3 -- Flexibits が Fantastical 2.3.3 をリリースして、Edit メニューに Copy Day as Text を追加して一日のスケジュールをテキストとしてコピーできるようにした。(Option キーを押せば Copy Week as Text に変わる。) この人気のカレンダーアプリはまた、イベント場所の中のリンクをクリックできるようにし、ウィンドウ左端からドラッグすれば(隠れていた)サイドバーが現われるようにし、URL フィールドにテキストをペーストできなかったバグを修正し、Wacom タブレットとの互換性を改善し、CalDAV サーバでのアカウント設定を改良している。(Flexibits からも Mac App Store からも新規購入 $49.99、無料アップデート、13.9 MB、リリースノート、10.11+)

Fantastical 2.3.3 へのコメントリンク:

HoudahGeo 5.1.5 -- 2016 年の末に Houdah Software は HoudahGeo 5.1.4 をリリースして、Lightroom が標高と道順の値を取り込めなかった問題を回避した。この写真ジオタグ付けアプリはまたプロジェクトウィンドウを閉じた後に起こる可能性のあったクラッシュを修正し、ドイツ語ローカライズ版に訂正を加えた。

そして今回、Houdah Software はバージョン 5.1.5 を出して、前回のバージョンで発生したバグの結果として HoudahGeo が一部の画像ファイルからタイムスタンプを読めなくなっていた問題を修正した。今回のアップデートではまた、Places ウィンドウがフルスクリーンモードのプロジェクトウィンドウと平和的に共存できるようにしている。(新規購入 $39、TidBITS 会員は 25 パーセント割引、無料アップデート、21.7 MB、リリースノート、10.11.5+)

HoudahGeo 5.1.5 へのコメントリンク:

Typinator 7.1 -- Ergonis が Typinator 7.1 をリリースして、前回のバージョンで導入したインタラクティブ入力フォーム(2017 年 12 月 2 日の記事“Typinator 7.0”参照)に改良を加え、入力フォームを開いたまま一時的に他のウィンドウに切り替えられるようにすることにより、コピー&ペーストでフォームフィールドに入力できるようにした。このテキスト展開ツールはまた、これまでのバージョンの Typinator で使われていた「バックスペースしてから展開」マーカーを無視するようになり、macOS 10.12 Sierra で走った際に Includes フォルダから画像の挿入ができなかったバグを修正し、Dropbox 経由で共有したセット間のコンフリクトの処理を改良し、購読チェックにより起こるネットワークトラフィックの量を減らしている。2016 年 1 月 1 日以後に Typinator 6 を購入した場合、Typinator 7.1 は無料だ。それ以前に購入した場合には 12.49 ユーロでアップグレードできる。(新規購入 24.99 ユーロ、TidBITS 会員には 25 パーセント割引、アップグレード 12.49 ユーロ、Typinator 7 ライセンスがあれば無料アップデート、8.0 MB、リリースノート、10.6.8+)

Typinator 7.1 へのコメントリンク:


ExtraBITS、2017 年 1 月 16 日

  文: TidBITS Staff: [email protected]
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

今週の ExtraBITS では、Jason Snell が数名の Apple 識者たちとともに同社の 2016 年の実績を採点し、開発者 Greg Raiz が iOS の Activity シートに新たな見解を披露し、元 Apple で自動化の導師をしていた Sal Soghoian がアプリ拡張では既存の Mac 自動化ツールの代わりにはならない理由を説明し、共同作業用ツール Trello の所有者が変わり、Apple ベテランの Chuq Von Rospach が Apple の 2016 年を振り返る。

2016 年の Apple: Six Colors 成績表 -- Six Colors の Jason Snell が、Apple の 2016 年における成果について、彼独自の成績表を公表した。前回と同様、37 名の業界ウォッチャーたちの意見に基づいて作ったものだ。TidBITS や Take Control のスタッフや著者たちの多く (Adam Engst、Tonya Engst、Josh Centers、Jeff Carlson、Kirk McElhearn、Rich Mogull も含まれる) も参加している。彼らの一致した意見として、Apple は 2015 年に比べて苦しい一年を過ごし、特に Mac、iPhone、iPad、Apple TV、それにハードウェア信頼性の面で評価が低くなった。明るい面を見れば、彼らの感触として Apple がより良くなった分野には Apple Watch、クラウドサービス、ホームオートメーション、それに開発者との関係がある。皆さんの評価と合うかどうか、どうぞこの記事でご覧頂きたい!

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iOS の Activity シートを修正する方法 -- Medium の記事で、アプリ開発代理店 Raizlabs の CEO Greg Raiz が、Apple がどうすれば iOS の Activity シートを改善できるか考察する。(これは Share (共有) シートと呼ばれることが多いが、共有と無関係のアクションも含んでいるのでその呼び方は誤解を招くおそれがある。)彼が指摘するのは、めったに使われない AirDrop があまりにも大きな面積を占めているため共有したいアプリが隠れてしまうことが多く、またカスタマイズのオプションも多過ぎることだ。Raiz は、現在のアプリ内部でのアクションと他のアプリとの間のデータ共有とをはっきり区別させつつ、よりクリーンでよりシンプルな Actions シートを提案する。また、アプリのアクションに優先順位を決め、使用頻度によって共有アプリを並べ替える。iOS 11 で、Apple がこれに沿った線で Activity シートをデザインし直してくれることを願いたい。

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Apple は自動化をアプリ拡張で置き換えるつもりなのか? -- 最近 Apple から放出された自動化の導師 Sal Soghoian が、MacStories に説得力あふれる論説を書いて、アプリ拡張では AppleScript や Automator など既存の自動化ツールに取って代わることができない理由を述べた。彼は見事な腕を発揮してアプリ拡張とは何かを説明してから、それらを既存の自動化ツールと比較する。ここで本当に心配なのは、Apple がそのような手立てを考慮しているのではないかという懸念があることだ。Soghoian は、iOS と macOS のアプリ開発のさらなる融合を目指すための手段として Apple がそれを考えているかもしれないと示唆するが、アプリ拡張を優先して自動化ツールを捨て去ることは、多くのプロフェッショナルの Mac ユーザーたちに我慢の限界を超えさせるものとなる可能性が高いのが現実だ。それはすなわち、これまで Mac ユーザーであった人たちが iOS から離れて行き、彼らが影響力を持つネットワークも連れて行くという「逆ハロー効果」を生みかねない。

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Atlassian が Trello を 4.25 億ドルで買収 -- 私たちは共同作業用ツール Trello がこの上なく大好きだが、Trello はつい最近、同社が企業向けソフトウェアの会社 Atlassian に 4 億 2 千 5 百万ドルで買収されようとしていると発表した。Trello は Atlassian の研究・開発能力を生かしてサービスを改善できると主張するが、ユーザーの中には Trello が他の既存の Atlassian 製品と同様に複雑なものになってしまうのではないかという懸念を述べる人たちもいる。いずれにしても、Atlassian がこれほど多額の出資をするからには、この会社が Trello に関して何か大きな計画を持っていると考えられるので、私たちの大好きなツールが急激に衰える心配はあまりないと思う。

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Chuq Von Rospach がレビューする Apple の 2016 年 -- Apple ベテランの Chuq Von Rospach が、Apple の 2016 年における成果を論評した。彼はこの会社にかなり辛辣な言葉を投げ掛けて「とにかくエンジンが全くフル回転していない」し「自分自身と呼吸が合っていない」と述べた。彼は Apple が出荷予定日を守ることができず、結果として自らの製品を無力な状態に追い込んだ点を指摘する。さらに具体的に、Apple が顧客と連絡を取ろうとしなくなったこと、あまりにもデータに依存し過ぎること、出荷する製品に膨大な数のバグや不具合が残ったままの杜撰な実行をするようになったことを、Von Rospach は非難する。それにもかかわらず、彼は心を砕いて、この批判が根本的問題を暴露するものではないと言い添える。Apple はただいくつかの点を再修正する必要があるだけで、それさえあれば再び軌道に乗ることができるだろう。

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日本語版最終更新: 2017年 01月 13日 金曜日 , S. HOSOKAWA