TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#1353/23-Jan-2017

Apple が同社のオペレーティングシステムすべてをアップデートした。中でも macOS Sierra のアップデートは PDF のメジャーなバグに対処したというが、おそらくアップデートせずに少し待った方がよいと思われる理由を以下でお読み頂きたい。Apple が iOS 用と tvOS 用の TV アプリに Netflix 対応を追加したという記事が出て巷に混乱を巻き起こしているが、Josh Centers がその話が厳密には正しくない理由を解説する。Jeff Porten は CES 報告の続報として、5G セルラーネットワーキング(第五世代移動通信システム)によりモバイル機器からインターネットを利用する方法に変革がもたらされると伝える。最後に今週の特別記事として、Adam Engst が読者たちの Mac 自動化に関する物語を集めた。この特別記事は Apple の重役たちに送る予定だ。読者たちの反応は膨大なものだったので、今すぐ全部を読み通そうとは思わないで頂きたいが、中には驚くべき物語も多い。今週注目すべきソフトウェアリリースは、Final Cut Pro X 10.3.2 と Compressor 4.3.1 と Motion 5.3.1、BusyCal 3.1.4 と BusyContacts 1.1.6、Mailplane 3.6.9、Boom 2 v1.5.2、Logic Pro X 10.3、それにセキュリティアップデート 2016-007 (Yosemite) と 2016-003 Supplemental (El Capitan) だ。

記事:

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Apple、macOS Sierra 10.12.3, iOS 10.2.1, tvOS 10.1.1, watchOS 3.1.1 リリース

  文: Josh Centers: [email protected], @jcenters
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

Apple は、全てのオペレーティングシステムに対する小さなアップデートをリリースし、バグとセキュリティ懸念に対応した。PDF に関する問題を経験した Sierra ユーザーを別とすれば、多くのユーザーは少し待ってアップデートするのが最善と思われる。

macOS 10.12.3 Sierra -- macOS 10.12.3 Sierra アップデートには、ほんの少数の目に付く修正が含まれるだけである。その中で顕著なものは、PDF を編集している時 Preview が OCR テキストを消してしまうバグに対する修正である ("Sierra の PDF 問題、10.12.2 で悪化" 2 January 2017 参照)。このアップデートはまた、暗号化を有効にしてエクスポートされた PDF 書類との互換性の問題も解決していると約束している。

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残念ながら、開発者からの初期の報告では、PDFKit に関する他の多くの問題は解決していないという;C-Command の Michael Tsai は、以前に報告されているユーザーインターフェースとレンダリングのバグはまだ見えると言っている。例えば、PDF を Preview で開き、Tools > Rectangular Selection を選択、一つの選択を引き出し、そして Command-C を押す - ページ全体を消してしまう恐ろしいディスプレイのバグが、もう一度クリックするまで現れる。

Apple はまた 10.12.3 アップデートは以下のことをすると言っている:

macOS 10.12.3 は 1.05 GB アップデートで Software Update から入手可である;単独のダウンロード版はまだ出ていない。もしこれ迄 PDF 問題を Sierra で経験しているのであれば、すぐにこれをインストールした方が良いと思われる。そうでなければ、数日待って、大きな問題がオンラインで報告されないか確かめた方が良い。

このアップデートには 9 つのセキュリティ修正が含まれる。

iOS 10.2.1 -- iOS 10.2.1 に対するリリースノートは最小限である:"...バグ修正と iPhone や iPad に対するセキュリティの改善が含まれる。" しかしながら、このアップデートには確認されただけでも 13 セキュリティ修正がある。このアップデート - iPhone 7 Plus 上では 67.4 MB - は Settings > General > Software Update か iTunes から入手可である。

それほど重要なアップデートではないようなので、我々としては、問題が起こらないかどうかを見る期間を一週間ほど置いてから iOS 10.2.1 にアップデートすることをお勧めする。

tvOS 10.1.1 -- 第四世代 Apple TV に対する tvOS 10.1.1 アップデートは、Settings > System > Software Updates > Update Software 経由で入手出来る。9 つのセキュリティ修正以外に、このアップデートについて我々は何も知らないが、小さなバグ修正は含めれているだろうとは想像出来る。もしあなたの Apple TV が問題なく動作しているのであれば、オンライン上に問題報告が現れるかどうか見て、来週にでもインストールするのが良いと思われる。

watchOS 3.1.3 -- iOS や tvOS アップデート同様、この watchOS 3.1.3 アップデートにも、途方もない 31 個のセキュリティ修正以外に、最小限のリリースノートしか無い。この 126 MB アップデートは iPhone 上で Watch > General > Software Update で見つけられる。アップデートするには、Apple Watch はあなたの Wi-Fi 接続された iPhone の到達範囲内にあり、充電器に接続されていて、少なくとも 50% の電池残量があることが必要である。このアップデートにはおそらく予期する以上の時間がかかるであろうから、少なくとも1時間は見ておくこと。

watchOS 3.1.1 では数多くの Apple Watch がただの石ころになってしまったこと、そしてそれは Apple によってすぐに引き上げられ、再リリースされたことを考えると、我々としては、watch OS 3.1.3 アップデートはまず一週間は行わず様子を見ることをお勧めする。

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Netflix と TV アプリについての混乱を整理する

  文: Josh Centers: [email protected], @jcenters
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

AppleInsider が iOS 及び tvOS 用の TV アプリは今や Netflix コンテンツを再生することに対応すると報告した時、少々の波紋が広がった。覚えておられるかもしれないが、Netflix は未だに TV アプリ組み込みには同意していない ("tvOS 10.1、Apple TV 経験を "TV" アプリと統合" 12 December 2016 参照)。しかしながら、AppleInsider が間違っている訳ではなく、実際に Netflix コンテンツを TV アプリから検索し、再生出来る。しかし、TechCrunch の Matthew Panzarino が指摘している様に、その様な機能は TV アプリが出された時から存在していた

一体全体何が問題なのか? Netflix は TV とは働かないが、現実には、働く? これは有名なシュレディンガーの猫思考実験の様なもので、そこでは箱の中にいる猫は生きてもいるし同時に死んでもいる。しかし、量子力学と違い、この謎には簡単な答えがある。

第四世代 Apple TV の誕生以来、tvOS の検索結果は複数の視聴方法を提供してきたが、その前提となっているのは、コンテンツ提供者は Apple の検索エンジンに組み込まれていることである。Netflix は初期からこれのパートナーであり、例えば、"The Walking Dead" と呼びかければ、コンテンツのリストにはその番組を AMC, iTunes, 或いは Netflix で視聴するオプションが示される。

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このデータは Apple に対して tvOS の誕生以来提供されてきたし、Apple が新たなパートナーを付け加えるにつれて増大してきた。TV アプリは基本的にはこのデータに対する新しいグラフィカルなフロントエンドに過ぎないのだが、コンテンツプロバイダーは TV アプリが提供する新しい機能性に対して同意する必要がある。例を挙げると:

これらは Netflix が未だ同意していないものである。なぜダメなのかは明らかではないが、私は Netflix というブランド力を弱めてしまうのではないかという恐れから来ているのではないかと推測する。データ収集が原因だとする憶測も聞いたことがあるが、TV アプリはコンテンツプロバイダーのアプリ内部のコンテンツはオープンにしていて、必要とするデータはどんなものでも収集出来るので、これは理にかなわない。私が思うに、Netflix はコンテンツプロバイダー間の違いを曖昧にしてしまう一つのインターフェースの中の単なる一つのプレーヤーに成り下りたくないということなのではなかろうか。

しかし TV アプリの中で Netflix 限定の "Stranger Things" を探すとすると、その番組を提供するだけでなく、エピソードのリストを示し、かつそれらを一回のタップで Netflix の中で再生させてくれる。これは TV が元々そこにあった検索機能の上に構築されたものだからである。Netflix は Siri を使って Netflix コンテンツを探すこと自体は問題にしていないが、ブラウズするのは自らのアプリの中でやって欲しいと思っている。

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しかしながら、この検索は今や iOS の中でも働く。何故か? それは TV アプリが iOS 10.2 の中で登場した時、Apple は iOS の Siri 検索データを tvOS の Siri データと統合したからである。iOS 10.1 で Siri に James Bond 映画を見せてと頼めば、任意の組み合わせの映画を返してくるであろう。同じ Siri 検索を iOS 10.2 で行うと、それは tvOS でやるのと同じように働く。

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この混乱は、コンテンツ契約がどれ程扱いにくくなり得るかを表している。Siri Remote の Home ボタンには TV アプリと同じアイコンが付与されているので、Apple は元々 TV アプリを tvOS に対する最初のフロントエンドとして計画していたのであろうと推測するのは理にかなっている。しかし、Apple は恐らく交渉の過程で予期せぬ障害にぶち当たり、公開する方を優先してこれらの計画を諦めねばならなかったのであろう。その間、Apple は TV アプリを有用にするに十分なだけのパートナーを手に出来るまで、Siri 検索機能をコンテンツを集めてくる方法として使ったのである。Apple が TV インターフェースとして十分なだけのパートナーを得た時、同社は Netflix が入っていないにも拘らず、公開する方を選んだ。

ところで、"Take Control of Apple TV" は、皆さんが tvOS インターフェースの中で遭遇するその他の難問解決にも役立てるはずである。

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CES 2017 からのアイデア: あなたの未来にある 5G

  文: Jeff Porten: [email protected]
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

私が CES で参加したイベントの一つが、5G についてのパネルディスカッションだった。5G とは、次世代の携帯電話ネットワークテクノロジーを意味する包括的用語だ。5G が広く使われるようになるのは 2020 年以後だろうと業界ウォッチャーたちは考えているが、必要なテクノロジーや規格を開発するための作業は既に進行中だ。

歴史的に言って、新しい携帯電話テクノロジーはそれ以前より高速で、価格は当初高いけれども、異なる人たちがそれぞれ何に費用を注ぎ込むかを決めて行くに従って、次第に「普通」の価格へと落ち着くものだ。けれども 5G は違う道を辿ると思われる。確かに、それは高速だ。実際、息を飲むほどに高速で、最大速度はおそらく毎秒 26 ギガバイトに達するだろう。(その通り、バイトであってビットではない。)けれども 5G は他にも多くの面で以前より良くなる。だから、私たちが現在使っているものがたちまち時代遅れに見えるということもあり得る。それは、現代のブロードバンド接続に、ダイヤルアップに比べて単に高速だという点以外の利点があるのと同じことだ。

けれども、このことで鶏が先か卵が先かという問題が起こる。ネットワークがこれほど速くなっても、それで私たちが具体的に何をするのかという問題だ。私たちは本当にスマートフォン上で 4K ビデオのストリーミングをする必要があるのか? 今の私たちが第一世代の 3GP ビデオを見た場合と同じ感覚を将来の私たちは現代のビデオテクノロジーに感じるだろうか? これほどのスループットが広く信頼性を持って利用できるようになれば、他にどんなメディアやインターネットサービスが利用できるようになるのか?

この記事では、まずパネルディスカッションの様子を要約してから、その後で地上に戻って、はたしてここで約束されているものを私たちが手にすることができるのかどうかについて分析してみたい。今回のセッションで感じた皮肉は、たった 384 Kbps の無料 Wi-Fi しか約束されていないホテルの会議室で、私たちが何ギガバイトもの携帯電話スループットを議論していたことだ。

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384 Kbps というのはもう何年も前から十分なインターネット速度とは見なされていないし、一日あたり $15 という価格で 1 Mbps のサービスを販売するのはまさに「恥知らず」の商法だ。これほど現実から乖離した接続状況こそ、あの部屋に満ちていた懐疑的な気持ちの大きな原因だったのではなかろうか。

5G の目標 -- パネルディスカッションの席で毎秒 26 ギガバイトの話をした者は誰もいなかった。それは、CES がイベント前日に配布した説明資料に書かれていたことだ。興味深いことに、Wikipedia の 5G ページには高速性自体が目標ではないと書いてある。なので、Consumer Technology Association がどこからその話を持ち出したのかよく分からない。これは技術的目標なのかそれとも宣伝のための目標なのか、あるいは現時点での計画の中からただ自然に出てきた技術的数字なのか? いったいなぜ 8 GBps や 100 GBps ではないのか? 現時点では「ギガバイト毎秒」の前にどんな数字が付いていても現状の大幅な改善と言えるのだから。

でも、速度だけが問題なのではない。5G のデザイン目標は、現状のワイヤレスサービスよりずっと低い遅延時間 (latency) を達成することにある。遅延時間とは、ネットワークが何かを実行する前に、何をすべきか見つけ出すために必要とする時間だ。バンド幅を庭の水やり用のホースの水量に例えるなら、遅延時間は蛇口をひねってから水がホースの先から吹き出すまでにかかる時間だ。目的によっては光の速度もイライラするほど遅いものなので、常にいくらかの遅延時間は避けられない。けれども、遅延時間がたったの数ミリ秒ならば、私たち人間の感覚はそれが即座の動作だったと受け取る。結果として、クラウド上で起こっていることと、手許のデバイス上で起こっていることとの区別がつきにくくなることもあるだろう。ボタンを押してから何かがダウンロードされるまでの時間が即座と認識されるなら、ローカルに起こったことかサーバ上で起こったことかの違いはなくなる。

5G はまた、Internet of Things (IoT) デバイスで使われる極めて低スループットかつ低周波数のデータにも対応する。4G ネットワークにおいては、ネットワーク対応のセンサーが常時ネットワーク上に置かれている必要があり、これがバッテリ寿命に影響する。けれども 5G にはこれよりはるかに消費電力の低いプロトコルが含まれ、バッテリーの再充電も交換もせず何年間も動作するデバイスが可能となる。現時点で「スマート」でないはるかに多くのものが今後ネットワーク対応になって行くに違いないという信念を踏まえて言うなら、5G ネットワークは一個のセルの上で遥かに多数のデバイスを同時に扱えるようになるはずだ。

パネリストの何人かは、5G のこの機能を "network slicing" と呼んだ。そんな魔術のようなことが どうやって 起こるかについて素人にも分かるような参考文献を見つけることはできなかったが、実際上のことを言えば、ネットワークスライスとは移動通信基地局が保証する 5G デバイスへの通信時間とバンド幅の保証枠のことだ。つまり、通話が切れたりインターネットのデータが一時的に停滞したりを心配する必要なく、ネットワークへの接続でサービスの高品質が保証されるということだ。このことにより、そのネットワークで何ができるかについて、以前とは異なる期待が生まれる。例えば、4G 上では Netflix に接続できないままの十分間も大きな問題にはならないが、仮想上のロボットタクシーが十分間も立ち往生すれば大問題だろう。(そうは言っても、ネットワークの信頼性が上がれば映画のレンタルなど時間制限のあるものを販売し易くなるだろう。ダウンロードにかかる時間やぎくしゃくした接続を誰も気にしなければの話だが。)

理論的に言って、5G で約束された至福の境地とは、ネットワークが極めて高速で極めて信頼性が高いので、その存在さえ忘れてしまうほどになる状態だ。今日の状態とどう違うかというのなら、スマートフォンの画面に示された信号強度バー(あるいは Mac のメニューバー上の Wi-Fi バー)を自分がどれほど頻繁に見ているか考えてみよう。5G は、それらの表示がなくてもよい程度に信頼性が高くなることを目指している。バーがなくなってもよいと思えるにはネットワーク接続性にどの程度の安心感を持てば十分か、想像してみよう。

5G の予定表 -- 何百社ものベンダーから出されるさまざまのデバイスやソフトウェアを効率的に相互運用できるためには、まず最初に規格を起草して、誰もが同じプラットフォームの上で物作りをできるようにしなくてはならない。それらの規格は、よりどりみどりの頭字語の名前の付いた機関が、勧告し公表する。Next Generation Mobile Networks Alliance (NGMN)、International Telecommunications Union (ITU、国際電気通信連合)、3rd Generation Partnership Project (3GPP)、Institute of Electrical and Electronics Engineers (IEEE) などの機関だ。どの機関が最終的に規格を決める権限を持つのか、そもそもそのような権限を持つ期間があるのか否かさえ、私は知らない。いずれにしてもこの種のものは自主的な規格なので、主たる問題は官僚的なものというより、すべての人たちが技術的プロトコルを受け入れられるか否かという点にある。

パネルディスカッションは(おそらく技術的先進国では)大多数の人々が初めて 5G を経験できるようになるのが 2020 年頃になるだろうという点で意見が一致していた。その点 Wikipedia はもっと悲観的で、最終的な規格が出されるのが 2020 年代前半になるだろうとしている。今からその時までの間は規格の案が存在しているが、規格案は変更でき実際に変更されるので、ハードウェアを購入する人々(あるいはネットワークに投資する会社)としては自分のデバイスが将来の規格案や最終的規格にフル互換でなくなった場合に早期導入者の悲哀を味わう可能性がある。だから、5G モデムチップは既に入手可能ではあるけれども、それを使ったデバイスを急いで買い込むのは賢明でない。

米国では 5G の展開が二つの理由で遅れる可能性がある。一つ目はネットワーク投資だ。米国の電気通信キャリア各社は 4G LTE ネットワークに巨額の投資をしており、その投資を実質的に回収できるまでは 5G への移行に二の足を踏むかもしれない。

二つ目は、初期のネットワークと同様に、米国での展開は広大な田舎という地理的要因により遅れるかもしれない。また、セルラーネットワークへの規制が比較的軽いことによりメジャーなキャリア各社がそれぞれ独自にアップグレードや競争の計画を押し進めてしまっていることもある。私が知っている範囲では、5G が一つの移動通信基地局で広大な領域をカバーできるという話が全く聞こえてこないので、まず都市部や大都市間幹線地域で 5G が受信できるようになるのは間違いないだろう。人口の少ない地域は取り残されるに違いない。

それに加えて、当然ながら、あなたのデバイスが 5G に対応していなければ、素敵なネットワークが何をしても何の役にも立たない。テクノロジーの競争力のためにその種のデバイスを早期に出してくるメーカーもあるだろうが、もしも Apple がそれに加わらなければ、5G 対応の iPhone が出るのは先のことになるだろう。

早期採用の期間における 5G チップの価格にもよるが、既存の家庭用ケーブルテレビや光ファイバーネットワークと競争する目的で 5G ネットワークが展開するようになることも考えられる。携帯電話に搭載するものほど小さくする必要がないので、標準的なモデムはより安価に 5G 対応ができるだろう。(現在インターネット独占企業の下で生きざるを得ない人々にとっては素晴らしい知らせと言えるだろうが、ここでもやはり、人口の少ない地域に住む人にはなかなか実現しないだろう。)

それはさておき、韓国の SK Telecom 社が、2018 年の Pyeongchang 冬季オリンピックまでにテスト用 5G ネットワークを稼動状態にすると約束しているので、今はまだ使うことのできないネットワークテクノロジーについて、二年ほど待てば固唾を飲むようなニュース記事が読めるいうことだ。

5G の潜在的利用法 -- ネットワークとか受信状態とかを一切気にする必要なくすべてがいつでもうまく働く、そんなテクノロジーとともに生きられるなら、それは素晴らしいことだろう。旅行中、私は新たなホテルの部屋に着く度に、まるで儀式のごとくにセルラーネットワークの信号強度を確かめて、その場の Wi-Fi 速度と比較している。たいていの大きなホテルで、両者の品質は部屋によって大きく変わる。

都市部でほぼ完璧なネットワークが構築可能だというのは想像できる。けれども田舎で、あるいは地下鉄やエレベーターの中で、どのくらいうまく働くことができるかは分からない。電波の死角を突き破ることができるようなテクノロジーの飛躍的進歩がない限り、物理法則がすべてに優先する。5G ネットワークでは複数の周波数の電波を同時に使うことが許され、周波数によって物理的な障壁を突き破る力の強いものもあるので、ある程度の進歩は期待できるだろう。けれども一般的に言って、大量のデータを運ぶのに適した周波数と、遠方へ、あるいは障害物を回避して基地局に到達するのに適した周波数とは違う。多くの物理的障害物を突破するため、低い周波数に依存せざるを得ない地域においては、最高の速度は得られない。

もしも最高速度が大幅に上がれば、今日では考えられないような新たなメディアが扱えるようになるかもしれない。最も明白な例としては仮想現実 (VR) や拡張現実 (AR) のサービスがある。現在の 4G ユーザーにとってその種のサービスはネットワークに負担をかけ携帯電話料金にずしりと反映されるものとなっている。パネリストの一人は、数ギガバイトのダウンロードを必要とする VR プログラムもあると述べた。現時点では、そういうものは家庭内ネットワークでしか使えない。さらに、VR ユーザーが乗り物酔いの状態にならないためにも、5G の持つ遅延時間の低さが必要となるだろう。

地図アプリが今日使われているのと同程度の気軽さで仮想現実や拡張現実のアプリが使われるようになる時代を想像してみよう。それは、私たちがモバイルテクノロジーを使う方法についても、また私たちがネットワークに要求するものについても、大転換となるだろう。さらに、まわりの環境から有用なデータが絶え間なく私たちに提供されるようになれば、ウェアラブルのテクノロジーが今よりずっと重要なものになるだろう。

最後にもう一つ、個人による放送の時代は既に始まっているが、5G がそれを大きく変えるかもしれない。現在のネットワークは、およそ 90 パーセントがダウンロード、10 パーセントがアップロードという利用を前提にしている。これは、多くの人々はデータの出版よりデータの入手の方に興味があるという理論に基づくものだ。5G では、上りと下り双方のトラフィックを同等に重視することで、自律走行車、遠隔手術、その他上りバンド幅が重要となる各種の状況に対応できるようになることが期待される。また、警察官が常時カメラを身に着けるべきか否かという議論を思い出してみよう。5G があれば、誰でも常時カメラを身に着けて、ボタンを押すだけ、または音声コマンドだけで映像を公開できる、そういう環境を作り出すことも可能になるだろう。

予測から現実へ -- パネリストの一人の名前から単語を拝借するなら、私は 5G とその来たるべき採用について "stoked" (ワクワクした) 気持ちでいるが、どの程度早期に私たちがその利益を享受できるかについてはあまり楽観的になれない。第一に、現在 5G として宣伝されているものが 本当に 5G であることを保証する役割を持った機関が存在していない。以前、4G が広く利用できるようになる前に、3G に多少のサービスを付け加えただけのものが 4G として市場に出回ったことがあったが、5G でも同じことが起こるのではないかと私は思っている。

最大の問題点は、テクノロジーでなく、ビジネスモデルだ。2017 年のネットワーク価格をそのまま 5G に適用するのは、現在のブロードバンド接続をその昔の AOL の「一時間ごとの課金」で考えるのと同じくらい馬鹿げたことだ。けれども、価格モデルには極めて厄介な問題が取り付くものだ。プロバイダの提供するプランからデータ上限が取り除かれることは稀で、たとえ上限が取り除かれたとしても、無制限データ接続がネットワークの提供可能な最高速度を利用できることは滅多にない。今でもまだデータのタイプ(例えば一般的データ、ビデオのストリーミング、テザリングなど)によって異なる料金が適用されることがよくある。私が現在使っているデータプランにそのまま従うならば、5G 接続で毎秒 $100 を課金されることさえあり得るだろう。私が気にしてもいないバックグラウンドのアプリが私のスマートフォン上で何かしているのではないかといつも怯えていなければならないようなテクノロジーなど、私は断じて願い下げだ。当然ながら、実際の価格モデルで毎秒 $100 などということにはならないだろうし(それでも月ごとの携帯電話料金請求書に $20,000 と書かれた人の話が時々聞こえても驚くには当たらないと考えるべきだ)そんなに大量のデータを現実的な目的のために消費することなどほとんどの人には難しいだろうが、ただ要点は間違いなく事実だ。つまり、5G の価格モデルがどのようになるか、私たちはまだ何も知らない。

私にとって、真の意味で飛躍的な進歩とは、私が注意を払う度合が増えるのでなくもっと少なくなるテクノロジー、つまりデータ量の上限とか計測とかを伴わないビジネスモデルだ。さらに言えば、現在のように異なる場所によってさまざまな手順を考えて使い分けなければならない、そのような必要がなくなれば本当の革新となる。LTE がほとんどの公共 Wi-Fi ホットスポットより高速なのは事実だが、それでも私は自分の Getting Things Done 計画を立てる際に「家ではどうするか」「Starbucks 店内ではどうするか」「携帯電話に依存しなければならない場所ではどうするか」といちいち考えなければならない。仕事に出る前に自宅でしておかなければならないことや、長期間の旅行の最中にはできないことなどが、今の時代にもまだ存在しているという事実に、私は時代錯誤感を覚えずにはいられない。でも、それが今日の現実なのだ。5G が提供するという他のどんなことよりも、この種の変化に私はワクワクしてしまう。でも、携帯電話各社がそれを実現してくれるとは、やはり私には思えない。

その代わりに、たとえテクノロジーによって革命的な変化が可能になったとしても、サービスプランは市場の中にある要因に従って変化することだろう。携帯電話の平均的月額料金は 2014 年に $73 であったと言われているが、私の予想では 5G プランはそれより少し上の価格を狙おうとするだろう。言うまでもなく、それだけの料金を払って得られるものは、さまざまの技術的尺度に照らしてもより高品質のサービスとなるだろう。

私が心から望みたいのは、すべてのアメリカ人にとってブロードバンドが真の意味で遍在し手の届く価格になる、そんなテクノロジーだ。この意味で私が期待したいのは、個人的に私が使っているキャリアの Google Fi や、その他肝っ玉の据わったサードパーティのネットワークプロバイダたち、あるいはあまり高望みはできないと思うが T-Mobile と Sprint が、私たちが毎月の携帯電話料金請求書を見る際の考え方を変えてしまうような、新しいサービスプランを思い付いてくれることだ。ただ、今日のメジャーなキャリア各社がいかに凝り固まっているかを考えれば、間違いなくそこに苦しい戦いが控えている。それでも、セルラーネットワークサービスも、しばしば独占的な傾向を見せる家庭用インターネットサービスも、ともに混乱に陥って当然の存在に違いない。

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73 人の TidBITS 読者から寄せられた Mac 自動化物語

  文: Adam C. Engst: [email protected], @adamengst
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

ユーザーの手による自動化のテクノロジーに対する興味を失いつつあるのではないかと思わせる Apple の動きを受けて、私たちは読者の皆さんに、ご自分の仕事を達成するためどれほど自動化に依存しておられるかを語って頂きたいとお願いした。(2017 年 1 月 7 日の記事“あなたの Mac 自動化の話を聞かせて欲しい”参照。)すると多くの物語が届いたので、ここにそれらを集めてみた。TidBITS 読者の皆さんが、AppleScript や Automator、その他 Mac が利用できる多くの自動化テクノロジーを駆使して、どんなことを成し遂げているか、その驚くべき物語の数々を以下でお読み頂ける。分量が非常に多いので、一気に全部読み通そうと思って下さる必要はない。

私はこの記事を Apple の Tim Cook と Craig Federighi にも送ろうと思っている。そうすることで、自動化テクノロジーが Mac の将来にとってどれほど重要かが彼らにも分かってもらえると思うからだ。そう、私自身がひっきりなしに自動化ツールを使っている一つの実例として、この記事の中に並べられた 73 個の物語の一つ一つの冒頭は、私が BBEdit のたった一つの grep 検索で整形しており、これで私は少なくとも 10 分間の節約ができている。

では、それぞれの物語に進もう! 寄せられた物語に対して私は綴りのミスや、語句の一貫性、段落の長さなどに軽い編集を加えたし、また文中で引用された個々のアプリについてそれぞれリンクを追加することで、どのアプリが自動化システムの中で重要な位置を占めているかが浮き彫りになることを狙った。

Wooster -- 私の大好きなユーティリティの一つが Automator だ。Apple 製のアプリやサードパーティのアプリが Automator のお陰で共同作業し、事実上あらゆることができるのはまるで魔法のようだ。

例えば、私は Finder で 300 枚のスクリーンショットを複製/改名し、それらを Pixelmator に送ってすべての画像に切り取りを施し、それから Transmit に命じて私のサーバにアップロードできる。これだけの作業を手でするのはあまりにも大変だ。全部のアプリがこうやって一緒に働いて私のために仕事をしてくれるのは、まさに魔法以外の何物でもない。

Tommy Weir -- 私は自分のシステム上のすべてのファイルにカスタムファイル命名法を適用している。一年に一度、それらを関連付けられたグループに分類し、DEVONthink Pro Office の開発者たちが提供してくれた Automator アクションを使ってアーカイブ保存している。

ごく単純なことだ。フォルダを監視して、ファイルを読み込んだりタグ付けしたりするだけだ。けれども最も重要なのは、整理ができていること、毎年毎年首尾一貫したやり方ですることだ。その事実が、私の心の平和と仕事のためにどれだけ重要かは、言葉にできないほどだ。あと二つ例を挙げておこう:

Chuck Shotton -- 端的に言えば、もしも Sal の仕事が AppleScript、AppleEvents、アプリケーションのスクリプト対応とスクリプト記録対応、AppleEvent Dictionaries、Script Editor、そして実行可能アプリケーションとしてのスクリプト、といったものを生み出していなかったならば、インターネット初期における Mac 上のウェブ業界の大半は存在していなかっただろう。MacHTTPWebSTAR 用に作られた外部拡張、Userland Frontier、その他あらゆる Mac 上の HTTP サーバはそれらのテクノロジーにのみ依存して動作していたからだ。

すべては、アプリケーションがいかに会話するかだった。今でもアプリケーションがいかに会話すべきかが問題なのだが、会話すべきやり方を Apple は結局採用してくれなかったようだ。最新バージョンの MacHTTP である MacHTTP-js でさえ、その仕事をこなすために多数の AppleEvents に依存している。この偉大なるレガシー(資産)が、ただ単に iOS で働かないというだけの理由で打ち捨てられることがないように願いたい。

Anthony Reimer -- 私は AppleScript と Automator を使って Finder の中でアクションを自動化している。私が自分で作成し仕事でよく使っているものを挙げよう:

また、私はこれらの自動化テクノロジーを使って FileMaker Pro との統合もしている。例えば、テキストデータを FileMaker からファイルへ書き出し、それを BBEdit にクリーンアップさせ、編集後のファイルを Fetch を使ってウェブサイトにアップロードする。AppleScript と FileMaker のお陰で、これだけの作業がユーザーにとってはたった一つの手順となる。

私たち Mac Admin コミュニティーにとって、自動化こそすべてだ。得られる効率性と、結果の首尾一貫性がその理由だ。自動化の核心には Python とシェル・スクリプティングがあるが、私は今でも Automator と AppleScript を日常的に応用している。

Anonymous -- 過去 16 年間にわたって、私は年に 15 回ほどずつ一連の会社の財務作業をしてきた。私が作ったワークフローのお陰で、21 ページのレポートが 4 ページに短縮され、90 分かかっていた私の仕事時間が 20 分に短縮された。総計すれば 16 * 15 * (90-20) = 16,800 分、つまり 280 時間、つまり 35 営業日、つまり私の人生から 7 週間分の仕事時間が短縮された。

その分の時間を私は家族と過ごしたり、他の仕事をこなしたりするために使い、ポイントしてクリックするという単調な作業に費やさずに済んだ。HyperCard よ、AppleScript よ、Automator よ、そして Apple が提供してくれる他のすべてのものよ、私に時間を与えてくれてありがとう!

Rob Wells -- 私は小さな新聞社で働いているが、AppleScript がなければ私たちの仕事は進まない。

最も重要なのは、マスターとなる InDesign ファイルから作業用ページを作成する AppleScript だ。この AppleScript が、正しい書体を適用し、個々のページに編集日付を設定し、ページ番号を設定し、日付を含んだ適切なファイル名でコピーをディスク上に保存する。

この AppleScript を書いたのは五年ほど前で、それ以来ずっと、これは多くのミスを防いでくれている。誤った日付で印刷に回ることなどない! それ以前にはスタッフが古いページの複製を作ってから作業していたが、いろいろな意味で危険を伴うやり方であった。

仕事の別の部分では、私たちは AppleScript を使って信頼できる PDF ファイルを作成している。カスタム設定などもきちんと施されるので、そのままプリンタで使える。

AppleScript を使って私たちがしている他のことには、BBEdit でスクリプティングを使って記事の中のよくあるミスを修正したり、天気予報を取り込んで紙面に入れたり、テレビ番組表を作ったり、フットボールの試合結果やスコアを入れたり、またバーコードの作成にも(また、そのバーコードが正しいことをチェックするにも...以前はこれが大きな問題だった)使っている。どうぞ、どなたでも私たちのコードを自由に使って頂きたい。

以上に述べたのは AppleScript の話のみだ。最近になって作成したツールの大多数は Python で書いて AppleScript インターフェイスを付けたものだ。また、Hazel と Python スクリプトを (Lingon を通じた) 起動エージェントとして走らせてさまざまのことに使っている。

わが社のニュース編集室はすべて Mac のオフィスだ。時々、スタッフの誰かがもっと安価な Windows マシンを買おうと言い出すことがある。でも、Mac が長持ちすること(私たちのマシンの大多数はほとんど 10 年近くも古いものだ)に加えて、自動化が使えることが、そんなことをすると困ったことになるぞと私が反論する際の大きな理由となる。

私が理解するところでは、大手の新聞社はこの種の作業を処理するために自分たち専用に書かれたソフトウェアを利用している。でも私たちにそんな財力はない。Mac の自動化テクノロジーのお陰で、私たちはこういったことを社内で、自分たちの力でできている。

Mike Warren -- 私は年寄りなので、自動化こそがコンピュータを持つ理由のすべてであった時代を覚えている。私は AppleScript をプログラミング言語だと見なす。記録管理、予算編成、外国語辞書、単語カードなどのプログラムを私は AppleScript で作った。パートナーへ送る毎日の電子メールにも AppleScript を使っている。(フラットファイルのデータベースや Calendar から情報を取り出し、メッセージを組み立て、Mail を使って送信し、それを私の Safari ホームページとして保存する。)あまりにもたくさんのちょっとしたスクリプトや Keyboard Maestro マクロを使っているので、他の人の Mac を使う必要が生じると突然無力になったような気がする。

Daniel -- Keyboard Maestro に、AppleScript とシェルスクリプトを組み合わせれば、API のないウェブアプリケーションのための素晴らしいグルーとして働く。最近、うちの組織の(学術出版に関する)保存庫に移動があったが、新しいシステムの読み込みスクリプトのバグの結果として、テキストで一杯のファイルが何百個も行方不明になってしまった。システムの中の既存の記録に新規ファイルをアップロードするための API はなかったので、アップロードのフォームにいくらか手動の手順を施す必要があったのだが、自動化ツールを使ったお陰で、その個々の手順がアプリケーションと Finder 双方で間違いやすい 30 回ほどのクリックを必要とするものから、記録あたり 3 回ずつのクリックで済むものになった。数時間もかかる面倒な作業から解放されたのだ。

その移動の際にもう一つ別のエラーが起こって、私は双方のシステムでそれぞれ添付ファイルの順序を確認する必要に迫られた。これも数百個の項目についてだ。でも自動化のお陰で、たった一つのキーボードショートカットで、ID のリストの中で次の項目にナビゲートし、双方のシステムでの記録を見つけ、それからすべての添付ファイルを順番に新規ウィンドウの中に開き、それらのウィンドウをスクリーン上に2カラムできちんと並べ、違いが一目で分かるようにできた。順序がちゃんとしていれば新たにクリックすれば次の項目に進み、何か問題があればそれを処理してから次に進むことができた。

Thomas Tempelmann -- 私は開発者だが (Find Any FileiClipiBored などのアプリを作っている)、最近になって Automator と AppleScript を使い始め、コンピュータに詳しくない顧客が何か技術的なトラブルに遭った場合に援助する目的で使っている。私が目を通す必要のあるファイルを集めたり、システム情報を収集したり、それらを私に電子メールで送ったり、彼らの設定を修正するためファイルをコピー・移動・削除したりなどのスクリプトがある。

つい先日も、私は AppleScript を使って私のアプリの一つに遅いメモリリークがあることを検証した。検証には何千回もマウスを動かす必要があった。でも AppleScript があれば、15 分かけてコードを書き、それからそのコードに作業を任せて 1 時間ほど放っておくだけで、普通ならば何日も、あるいは何週間もしなければ再現しない問題点を浮かび上がらせることができた。数時間後、自分のアプリに存在したバグのうちここ数年間で最も発見しにくいものの一つを私は特定し修正することができた。

もう一つ付け加えると、お金を払って Script Debugger を手に入れておいて本当によかったと思う。これのお陰で、AppleScripts のコード書きが本当に楽になった!

gastropod -- 今の私が主に自動化を使っているのは、少々間接的なやり方だ。私にとって MailTagsMail Act-On は不可欠だ。これらは私にたくさんの自動化をしてくれて、フィルターテストや利用可能なアクションを大幅に拡張し、また選択されたメッセージをすべて一つのフォルダに移動するなどのアクションを、フォルダ階層を辿ってドラッグする必要なしにたった一つのキーを押すだけで実行してくれる。私は majordomo サーバを走らせいくつものメーリングリストを運営しているので、メールの複雑な並べ替え機能があると大助かりだ。

その昔には、QuicKeys を使ってキーボードのマッピングを変えたり、Finale など音楽ソフトウェアにマクロを追加したりしたものだ。そのお陰で、毎週何時間も時間の節約ができ、フラストレーションも大いに減った。

今後は Keyboard Maestro に飛び込んでみようと思っている。一つには現在の Finder の悲惨なウィンドウ処理方法を改善するためだ。ウィンドウをそれぞれあるべき位置に戻すためだけに、私は週あたり一時間ずつも空費している。

そうそう、もう一つ思い出したのは、数年前に EXIF 処理の繰り返し作業をするため Automator で作ったサービスだ。Automator はまず ExifTool を呼び出してすべてのメタデータを BBEdit に表示させ、すべてのメタデータを削除し、EXIF/IPTC フィールドもいくつかのものを除いて削除し、GPS データを書き換え、といった作業だ。これらのサービスは作業が楽になるという利点もあるが、毎回 ExifTool の説明書をチェックせずに済むので時間の節約になる。オプションがあまりにもたくさんあるのでとても覚え切れないからだ。その場で選んだファイルに適用できるので、コマンドラインを使うよりずっと楽だ。

Naomi Pearce -- Automator の初期の時代、Sal はコメントを書いて、複数のアプリケーションを一緒に働かせるやり方を変革することになるというようなことを述べた。ユーザーがアプリケーションを学習する必要がなく、実行させたいタスクのためのアクションを見つければよいだけだから、と。私はそれを横目で見ながら、「ふうん、そうね、まあいいけど」とつぶやいた。

それから少し経って、私はある企画書で数日間にわたって仕事をした。(数日間もかかったのは、広報活動の基礎についてかなりの量の要請事項があったからだ。)その仕事を仕上げ、PDF にプリントして、送信した。次の日、あれで良かったかと問い合わせてみると、MacSpeech, Inc. の Andy Taylor はイエスと答え、概要は受け取ったので、詳しい内容が送られてくるのを待つよ、と私に言った。ちょっと待って、何を言ってるの?

「PDF にプリント」というのは、とりわけ Word を使っている者には、当然の内容を含んでいるように思える。でも、私は自分が送った書類を開いてみて、確かに Andy の言う通り、書類全体が PDF にプリントされたのではなく、最初のページのみを PDF にしたものに過ぎないことが分かった。第 1 ページをプリントすることはでき、第 2 ページをプリントすることもできるけれども、書類全体を一つの PDF にプリントすることはできなかった。唖然とした私を数秒間が通り抜け、私はパニックになった。騙された! いや、私は本当に騙されたのか?

そこで私は Sal が Automator について言った言葉を思い出して、Automator を開いた。Workflow をクリックしてワークフローを作成した。検索を使って、複数個の PDF ページを組み合わせるアクションを見つけ、それをドラッグして持ってきた。もちろん、どの PDF ページを組み合わせるかを知らせる必要があったので、Get Specified Finder Items というアクションを見つけ、それを一番上へドラッグして最初に起こるようにした。次に、結果を見て確認できるように結果を開くアクション (Open Finder Items という名前だったと思う) を見つけ、そのアクションを Combine PDF Pages の下へドラッグした。必要なことはこれで全部だろうと思えたので、第 1 ページの書類と第 2 ページの書類を最初のアクションの上へドラッグしてから Run をクリックした。

そう、私が最初に「何を言ってるの?」と思ってから 15 分も経たないうちに、私は問題を解決していた。まるで魔法のように。

そして、私は確かにアプリケーションを学習することもしなかったし、何が悪かったかを解明する必要もなかった。私は、自分が実行したいアクションを見つけるだけでよかった。そう、まさに Sal が言った通りだった。私は馬鹿だった。ワオ!これができるのは Mac だけだ。

Walt Jump -- 私はいつも Automator を使って政府のデータベースから特定のファイルをダウンロードし、それらを改名し、特定のフォルダに移動させて私の FileMaker データベースで使っている。こうすることで、毎日少なくとも一時間か二時間の節約になる。また、誰かが作ったプログラムで米国特許商標庁のデータベースにアクセスし、複数のデータベースから取り込んだデータを一つのファイルとして出力させているが、このプログラムは AppleScript と Automator を利用している。

Douglas Mobley -- 私がボランティアで働いている博物館には、古い新聞をデジタル化して検索できるようにするプロジェクトがある。そのワークフローをごく単純化して言えば、ページを一枚ずつ写真撮影し、それを Photoshop で処理してから、その画像を OCR にかけて、新聞一号分ずつにデータをまとめる、というものだ。私は Photoshop アクションを使ってそこのところの手順だけを自動化していたが、昨年になって AppleScript を使ってワークフロー全体を自動化するようになり、私の生産性(一時間に何ページ処理できるかを測定した結果)が 50 パーセント以上も向上した。フォルダの作成とファイルの改名を AppleScript で Finder を制御することにより処理し、Photoshop によるページ画像の処理を AppleScript が担う。また、Automator によるスクリプト記録機能を使って、自分の AppleScript にどんなシステムイベントを含めるべきかを理解するようにしている。

Jeff Porten -- 私は AppleScript が存在し始めた時代からずっとそれに関する記事を書いてきたと思うし、クライアントたちのために AppleScript を単発的に使いながらのプロフェッショナルなコンサルタント業務をたくさんしてきた。AppleScript がなければ、私の仕事は上がったりだ。私が最もよく使う事例は次のようなものだ:

  1. Desktop 上のアイコンをクリーンアップして整理し、カスタマイズしたグリッドに従って並べ、カラータグによりグループ分けする AppleScript。

  2. 読みたい一連のファイルや観たい一連の映画がある場合に「現在のフォルダからどれかを選ぶ」ランダマイザがある。

  3. キーボードショートカットが指定されていないアプリケーションにそれを適用する。たった一行の AppleScript が何十個もあって、Quicksilver による起動キーがそれぞれに割り当てられる。例えば、Control-Command-3 を押せば Finder 項目が黄色にラベル付けされる。(また "Comment and label yellow" スクリプトは、黄色のラベルを使って項目にコメントが付いていることを示す。

Rob Lewis -- 私は 1986 年以来 Mac を使っているし、私の家族が持っていた Mac は全部で 15 以上、それに加えていろいろな iPod や iPhone もある。Apple が最近 Mac のラインアップを軽視するようになって、私が忠実な Mac ユーザーであり続ける理由はもはや AppleScript 以外にないと言っても過言でない。もしも AppleScript が消滅すれば、私がここに居続ける理由などほとんどないからだ。それに、もしも私のメインのコンピュータが Mac でなくなれば、次に買うスマートフォンが iPhone である理由もあまりない。正直言って私はとても心配だ。名前に i が付くピカピカの何やかやを追いかけ過ぎて、Apple が魂を失ってしまったのではと思わせる兆候があまりにも多い。

私の家には、AppleScript と XTension プログラムに基づくかなり精緻なホームオートメーションシステムが動いている。このシステムでいろいろなものを制御したり調整したりがとても簡単にできるところが、大いに気に入っている。私は、拡張バージョンの Automator さえ出来たならば、ついに、ついに! 普通の人間にもホームオートメーションが使えるようになるのではないかと長年思ってきた。私に言わせれば、Apple はとてつもなく大きな好機を逃したのだ。

Chris Schram -- 私は二つの違ったディスク上にいくつかの Photos ライブラリを持っている。Automator アプリを使って、そこに AppleScript を少々埋め込んで、これらのライブラリの世話をし、どのライブラリを開くかを選べるようにしている。

また、AppleScript を使って私の気象観測所のデータを収集して私のウェブ空間にアップロードしている。観測所に付属していたソフトウェアよりも、動作が信頼できる。気象データをマッサージして Numbers スプレッドシートに読み込ませるためにも AppleScript を使っている。

Jake -- 私はニューヨーク市内で音楽会場の予約を担当している。扱う演奏会は毎月 100 件から 200 件程度だ。作業は自動化に頼るところが大きく、Keyboard Maestro、AppleScript、Automator を少々、それに TextExpander を主に使っている。また、最近 BetterTouchTool を使い始めて、これでアプリごとに個別の Touch Bar ボタンを作成し、それで私の AppleScript を呼び出している。Touch Bar に懐疑的な人たちに言いたいが、私は Touch Bar こそ、ここ何年もの間に Apple が生み出してきたものの中で最高のツールだと思う。これは、マクロのための素晴らしいランチャーとなる。私のマクロは、非常にたくさんあるのだ!

私のアクションの例を挙げれば、確認済みのイベントを (BusyCal の) カレンダーに追加、確認メールを指定の日付・時刻に送信 (iCalBuddy というパワフルなコマンドライン・ユーティリティによるところが大きい)、画像を自動的にリサイズ・再フォーマット、ウェブカレンダーにバンドの説明、写真、リンクその他を付けてアップロード、などがある。基本的に、私のすることはすべて、何らかの形で Mac 自動化に依存している。何時間もかかる作業が数分で済み、より多くの音楽がニューヨークにもたらされる。

私にとって、自動化こそ Mac を使う際の最良の側面だ!

Jon Gotow -- 私も開発者として一言言わせて頂きたい。(私は Default Folder XApp TamerJettisonHistoryHound の著者で、他にも 30 年近く前からいろいろ作り続けている。)私は主として三つのやり方で AppleScript を使う:

  1. 私自身のビジネスの中で処理を自動化するため。電子メールを選り分けたり、メッセージを処理したり、またソフトウェア開発やテストにも使う。

  2. 顧客サポートのため。問題点を修正するのを助けたり、デバッグ情報を修正したりする目的で顧客に AppleScript アプレットを送ることもある。テストの手順を言葉で説明しようとするよりも、その人に AppleScript を走らせてもらう方がずっと信頼できるからだ。

  3. 私のソフトウェアを他の開発者の製品と統合させるため。例えば Default Folder X は人気の Finder 代替製品 Path Finder が走っていれば探知し、Finder の代わりにいろいろなタスクを実行するよう Path Finder に頼む。まさにそれこそ、Path Finder ユーザーの望むことだからだ。AppleScript がなければ、それは実現不可能(または極めて困難)だろう。

DeeAnne Lau -- 私が使うプログラムの多くで AppleScript が使われている。迷惑メール制御プログラム SpamSieve を自分流に調整するために使う。私には反復運動損傷があって首に神経圧迫もあるので、スクリプトで Finder やウェブアクションをコントロールできれば痛みが大いに緩和される。Automator と A Better Finder Rename アプレットを使ってコンテクスト対応のサービスをキー組み合わせで呼び出せる。また、Script Debugger を使って、コンパイルしたり問題点を探したりしながらスクリプトの基盤を成すことがらの理解を深めることができる。私は未だに iTunes 用に Doug's AppleScripts のいくつかを使っていて、iTunes という(フラストレーションの溜まる)プログラムにいろいろなことをさせている。さらに、Hazel のお陰でダウンロードフォルダやプリンタ関係のフォルダで秩序が保てる。私は引退しているが、今でも財務管理、コミュニケーション、学習、娯楽などのために Mac を使っていて、AppleScript と Automator に大きく依存している。

paule -- 私は Automator を使って、息子のフットボールチームのために撮影した写真ファイルの大量改名をしている。

どの程度時間の節約になっているかを計算したことがあるが、Automator が週あたりおよそ 45 分の節約を生み出しているという結果が出た。一シーズンは 14 ラウンドの試合なので、11 時間が稼げた計算になる。

シェルスクリプトを書いても同じことができるのは承知しているが、私にとっては Automator を使った方がずっと簡単だ。最近十年間は、私はシェルスクリプトを一行も書いていない!

Felix Deimel -- 私は AppleScript のいくつかの機能を使って、私のプロフェッショナル向け遠隔管理アプリ Royal TSX のユーザーたちにキーボード入力を自動化させている。パスワードの自動入力から、対応する彼らの接続や認証情報から値を挿入するといった複雑なスクリプトまでいろいろある。

macOS 10.12.2 アップデートで、このスクリプトの動作の信頼性がガタ落ちになった。テキストのどこかに大文字や特殊文字があると、大文字・小文字の区別がデタラメになってしまうようになったからだ。正しく働くこともあるが、そうなるか否かは全く予測不能で、エラーの確率が非常に高かった。

この問題について radar も TSI も投稿したが、Apple からはまだ何も返事がない。バグ報告はここで読める。私の顧客の一人も +1 レポートを投稿してくれた。同じ問題を経験しておられる方は、ぜひ私の radar の「重複投稿」をして下さるとありがたい。

何の偶然かは分からないが、このバグが始まったのは Sal が Apple を去ったのとほぼ時を同じくしているが、その解釈は皆さんにお任せする。

Jean-Pierre SMITH -- 私はコード書きではない。Automator、AppleScript、JavaScript、シェルスクリプト、その他奇妙なケダモノたちが存在することは承知しているが、そういったものを自分で書けるだけの知識はない。そんな私も、それらを利用すると便利で、楽しく、結婚生活に良い影響を与えると知っている。

バックアップ用にブート可能なクローンを作ると決めた時、私はすべてのハードドライブを妻の iMac に接続して、認証済みのトラフィックを通じて私の MacBook Pro のクローンをセットアップした。これで安心でき、ランサムウェアが MacBook Pro に入り込まないよう保護を与えることもできる。そこで私は一日中、すべてのディスクをマウントさせたまま、雑音を立てさせたままにした。当然ながら、妻は騒音と電気料金について文句を言った。離婚への道の第一歩だ。

でも、私の MacBook Pro のクローンはすべてその iMac に接続された状態で置かれ、Carbon Copy Cloner やその使いやすい自動化ツールからは離れた場所にある。そこで私は Internet AppleScripts を探し出した。これを使えば、タイマーソフトウェア (Task Till Dawn) を通じて呼び出すことにより、私の必要に合わせたやり方で、遠隔からディスクをマウントしたりイジェクトしたりできる。こうして、それらのドライブがマウントされ騒音を立てるのが毎日真夜中近くの一時間だけになって、結婚生活が救われた! AppleScript よ、ありがとう!

Andy Lietz -- 私たちの会社は、印刷前工程と印刷が仕事だ。私たちは始終 AppleScript を使って、タイプセットを自動化し、ExcelFileMaker から来たデータに応じて InDesign のレイアウトを変えている。AppleScript は、すべてを一つに結び付けるグルーとなり、これこそ私たちが Mac を使っている大きな理由の一つだ。けれどもプログラミング言語としては、AppleScript は Python や Ruby などに比べると、ますます古くさい感じを増している。

私は Macworld Expo の会場で Sal に会ったが、とりわけ Adobe を説得して InDesign の中に良い AppleScript 対応を入れるようにしてくれた点で彼を称賛したい。彼の姿が(そして、見掛け上では、Apple による自動化への支援が)この会社からなくなってしまうのはとても悲しい。

Bill Cheeseman -- 私は法廷弁護士で、大きな法律事務所で環境、金融、知的財産関係の訴訟を専門に働いている。私はよく AppleScript を使って、さまざまの種類の情報源から関連情報を集め、それを複雑かつ標準化されたスプレッドシートの中で整理し、それを分析にかけてきた。こうすることで、相手方よりずっと優位に立てるからだ。

Kimball Kramer -- 私はキーボード大好き人間だ。全部で 200 個以上のサービスやワークフローを使いこなしていて、それぞれにキーボードショートカットを割り当て、ウェブサイトを開いたり、アプリケーションを開いたり、書類を開いたり、ウィンドウを開いたり、メニューバー上のクリックを置き換えたり、その他のことに使っている。応用範囲は狭くなるが、QuicKeysyKey も使っている。

Charles Butcher -- 私にとって、AppleScript を使ってプログラマーでない人も複数のアプリケーションを結び付けて使いこなせることこそ、macOS のおそらく最も重要な差別化要因だ。初めて Quadra 800 を使った時以来ずっと私は Apple に忠実だったが、もしも Apple が AppleScript を捨て去ったならば、私はたぶん Windows かプレイン UNIX に移行するだろう。

私は FileMaker Pro を使ってフリーランスの仕事をしている。AppleScript のお陰で、カレンダーイベントや to-do を FileMaker の中にいながらにして作成でき、別のアプリケーションの中にいるままテキストを BBEdit にクリーンアップさせることができ、スキャンしてその OCR 書類を DEVONthink に直接送ることができ、その他たくさんの細かな作業を全部合わせれば、長年のうちに既に何百時間も節約できているに違いない。

確かに、AppleScript を書くのは苦痛なこともあるし、私は未だに Automator をうまく使いこなせない。でも、非常に多くのアプリが AppleScript に対応しているという事実は、たとえそれらが不十分であったとしても、奇妙なやり方であったとしても、現実の達成であることに変わりない。Mac の「レベルが下がった」と人は言う。今のところ、私はそれでも構わない。けれども、もし AppleScript が失われるなら、それはプロフェッショナルたちにとって大打撃だろう。

John Cooper -- 私は Keyboard Maestro をウィンドウの管理、アプリケーションの起動、テキスト展開などに使っている。また A Better Finder Rename をファイルの大量改名に使っている。おそらくもっともっと自動化を使いこなすことはできるのだろうが、仮にとりわけ Keyboard Maestro が(その基盤となるテクノロジーが利用できなくなったために)消え去ってしまったとしたら、正直に言おう、それは私の Mac 使用に命取りの一撃となるかもしれない。

Frank Remsen -- 私はいくつか驚くべきスクリプトを書いて、InDesign での作業の多くの部分を自動化している。これで、自分のデザインファイルから PDF を切り分けて、それを Transmit 経由で FTP サーバにアップロードする作業が楽になる。また、ブログに記事のコンテンツを投稿する作業を私が眠っている間に AppleScript で自動的に実行するためのスクリプトもたくさんある。自分が作ってオンラインで販売する T-シャツ用のタグを作るスクリプトもある。AppleScript は不可欠のテクノロジーで、Mac OS の中に残っている必要がある。私は AppleScript を救うための嘆願書も書いた。

David -- ずっと以前から、あらゆる種類のことを自動化するために私は AppleScript を使ってきた。私は大学に勤めているので、自分で開発したスクリプトの多くは授業の補助のためのものや、成績記録をつけるためのものだ。

当初は Excel で、成績計算のためのさまざまの公式を組み込んだスプレッドシートを作成するスクリプトを作った。授業をした日付も、休日をきちんと除外して正確な日付になるようにした。私は、学生名簿を表示したウェブページからコピーするだけで、そのスプレッドシートが自動作成されるようにした。

そして、授業で出席をとるために、プロンプトに学生の名前を表示して、私が「出席」または「欠席」と口で言うだけでシートに適切なマークが書き込まれるようにした。Mac は、私の知る限り、System 7.5 (私が最初に使ったバージョンの Mac OS) で SpeechRecognitionServer を使った時代以来ずっと、音声コマンドを処理できる能力を備えてきた。

成績を入力する際にも同じことができる。(私が成績と出席の両方を扱えるのを目にして以来、私のオフィスメートは Mac を買おうと心を決めた。)

それから、個々の学生ごとにそれぞれその記録を含むウェブページを作成した。1000 人の学生がいても、すべてのページがすぐに作成された。

次に (Terminal アプリを使って) 私のサイトに FTP し、すべてのファイルにその位置を反映した名前を付けた。

その次に、大学が学生の成績を取り込むために使っている無能なソフトウェアに成績を入力するため、Safari と JavaScript に加えて AppleScript を使ってスプレッドシートのデータを読み取ることにより、自動的に学生の成績と、出席状況、最後に出席した日付を入力させた。

もう一つ別の例を挙げよう。この大学では、救済レベルの講義の最終試験の問題を数学科で作る際に、2000 問以上の問題を含んだ Microsoft Word 書類から取り込んで作っていた時期があった。

その書類はさまざまのセクションに分けられ、期末試験は個々のセクションの中から一問ずつランダムに選ぶことで作られていた。それは、長くて労力のかかる作業だった。私はその作業を自動化する手助けをするように言われ、それが完成した後はセメスターの 7 回の試験の問題が一分以内に全部出来上がるようになった。しかも既に印刷用のフォーマット付けが施され、すぐ印刷できるようになっていた。

Satimage が AppleScript で作った開発ツール Smile を使うことで、さまざまの QuickTime ムービーを作り、微積分の準備の三角法の授業や、微分法と積分法の授業、確率分布の授業その他に役立てた。

私はあらゆる種類の数学演算のためのライブラリを作った。行列の代数や、統計ライブラリは、統計学の授業をする助けになった。R やその他市販の統計学ソフトウェアに比べて、私のやり方の方がずっと高速で易しいものになった。

ここまで挙げてきたのは大掛かりなものばかりだが、もっとありふれた自動化の例もいくつか挙げておこう:

Mac の自動化は、私が Mac を使う理由の中で飛び抜けて重要なものだ。私の親戚の大多数は、今や私の影響で Mac を使っている。

だから、その通り、Apple は Mac 自動化を支援すべきだ。なぜなら、一人の自動化ユーザーは、他の多くの人たちを取り込むからだ。

rufus -- 私は自宅で個人的に気象の趣味に熱中している。私も、他の何千人の人たちも使っている Mac 用ソフトウェア WeatherCat には AppleScript がたくさん内蔵されている。私たちの多くは自分でスクリプトを書いて、気象データを National Weather Service を含む八つの国際的気象データ収集組織へ送信する手順を自動化するようにしている。他の Macintosh 気象アプリの開発者たちも、やはり AppleScript を利用してそれぞれの製品を拡張している。Apple は、ユーザーによるカスタマイズを誇っているはずだ。Automator と AppleScript があるからこそ、それが可能なのだ。

Mark Bernstein -- ソフトウェアのデザイナーとして、私は複数のアプリケーションを連携させるためスクリプト化された複雑な挙動に依存する仕事を毎日続けている。

Rob -- 私は Automator とフォルダアクションを非常に多く使っている。Automator のお陰で Photos にバッチ機能を追加でき、これが Aperture を置き換えるようになった今、有用度を大きく改善できる。AppleScript を使った電子メール整理もよく使っている。

けれども私にとっての自動化と言えば、今や IFTTT だ。いろいろなスマートホーム製品と Amazon Echo で、IFTTT は特にうまく働く。今は IFTTT やそれに似た自動化製品が勢いを増しつつある時代だというのに、Apple が他の方向に進みつつあるように見えるのは、驚くべき(そして本当に悲しい)ことだ。

Gavin Eadie -- ワオ、もの凄い量のコメントが集まっているね! 私の場合、Finder でいろいろなことを便利にするために AppleScript を使っている。

私が毎日使っているものの一つは、毎晩真夜中に Dropbox の中に作成される新規フォルダへのエイリアスを Desktop 上に作る。このフォルダは日付をフォルダ名としていて、毎日私は新規に作った保存しておきたいものをすべてその「今日の」フォルダへ放り込む。毎晩真夜中に、および私がログインする度に、このスクリプトが起動される。

思うに、これを毎日手でせよと言われても、到底無理だろう。もう 14 年も前にこのやり方を設定して(ただし後になって Dropbox のお陰で一段と便利になったが)使い続けてきた私は、その便利さとそのお陰で提供される履歴記録とにすっかり依存している。

Aaron Priven -- 自動化がなければ、バスの停止信号と運行予定を作成する私たち AC Transit では、これほど多種多彩な仕事をこなせなくなる。

そうは言っても、私自身は AppleScript を使わずに Adobe の JavaScript 実装(現在 Adobe のアプリをスクリプト化するためだけに使っている)か、あるいは Apple の JavaScript for Applications(これも他のアプリをスクリプト化するために使っている)のどちらかに移行できたら素敵だと思っている。(AppleEvents やその他の基盤テクノロジーではなくて) AppleScript は、本当に使いにくい代物だから。

Polly -- 私は以前、AppleScript に Extra Script を追加して音声でマウスをコントロールするために使っていた。マウスに一切触らずに、シングルクリック、ダブルクリック、右クリックができた。腕が痛い時、本当にありがたかった!

Steve Cunningham -- 私は、現行の Apple の経営方針にコメントを述べても無駄骨だと思う。彼らのやり方だけを見れば、Occam's Razor に従うならば彼らがどんな言葉を口にしようとも彼らが Mac から徐々に撤退しようとしていると分かる。前兆は既に見えている。そうは言っても、AppleScript は私が Mac を持っている主たる理由の一つだ。自分の生活を楽にするために、私は何百ものスクリプトを書いた。二つだけ紹介しよう。Software Marketing and Tracking System と、Dead Man Monitoring System だ。

Software Marketing and Tracking System は AppleScript、FileMaker、それに Mail を使ってソフトウェアの試用、購入、配布チャンネルその他を追跡する。到着した電子メールは自動的に処理されて、購入をログ記録し、シリアル番号を発行し、顧客データベースを作成し、試用版のインストールを追跡する。システム全体が電子メールの着信により駆動され、手作業の介入は一切要らない。これで、何年分もの手作業が節約できた。

Dead Man Monitoring System は、コミュニケーションのできない麻痺患者のためのものだ。患者の部屋に 2 時間誰も入らなければ、助けが呼ばれる。介護をするのは私一人なので、万一私に何か起これば、患者は脱水状態に陥って死んでしまうだろう。

このシステムは、動作検知カメラを使って患者の部屋への出入りを追跡する。動きを検知すると、一つのフォルダの中にカメラがメッセージを置き、それが Monitoring スクリプトを呼び出して、動きをログ記録し、Dead Man Counter をリセットする。この Monitoring スクリプトは 2 時間ごとにも自動的に走り、その間何も動きがなければ、一連のアラームと通知を発する。まずその部屋でアラームを鳴らし、それからリストに載っている外部応答者に通知する。日中どの時刻にモニターするかは設定でき、その設定も応答者リストも変更できる。これらすべてが AppleScript で実現される。このシステムは無停電電源装置 (UPS) で保護された Mac mini で走り、Launch Agents を使って自らの故障をモニターしている。

joecab -- The New York Times は以前、古くてガタの来た QuarkXPress プラグインを使って、ある海外の会社が作ったクロスワードパズルを植字していたが、その会社は倒産し、彼らは見捨てられた。新聞社の人たちは私が Mac 専門家でパズルファンでもあると知っていたので、彼らは私に相談し、私は AppleScript を使った代替方法をすぐに作ってみようと答えた。

そして今や、私が書いたスクリプトが、彼らの新聞に印刷されるクロスワードパズルをすべて印字し、校正のためその PDF を FTP サーバにアップロードし、さまざまの電子バージョンとして書き出してオンラインクイズとして提供するようになった。もしも AppleScript (と素晴らしい Script Debugger) がなかったら、私は何もできなかっただろう。だから、本当にありがとう、Sal!

Colin Bay -- 私はほぼ毎日、メーリングリストからダイジェストを受け取っている。そのメールが到着すると、AppleScript が (Spark によるホットキーで起動されて) そのメールのテキストを処理して、厄介な特殊文字を削除し、煩わしい URLdefender URL を本物の URL で置き換え、ファイル名に番号付けし、一貫したフォルダに保存する。

ほんの数分もあれば手でできる作業には違いないが、それを毎日繰り返してできるだろうか? いやいや。だから私は AppleScript が大好きだ。

Nicholas Orr -- 私は AppleScript と Automator を使って、私が販売するアプリをパッケージに仕上げる。それ自体の中にも AppleScript を使った UI 自動化が含まれている。複数のアプリとオペレーティングシステムの間での自動化について長い歴史があるからこそ、ファイルをコピーしてそれぞれ正しい場所に置く作業をうまく働かせることが可能となる。

Jim Neumann -- 私はもう 15 年以上にわたって、プロフェッショナルとしての仕事を AppleScript 化してきた。単純な作業から、複数のスクリプトを一つのワークフローに連鎖させて部門全体を運営するようなものまで、その価値は繰り返し繰り返し実証されてきた。私たちのアプリである DEVONthink Pro OfficeDEVONagent Pro も、やはり頑丈な AppleScript 辞書を備えていて、クライアントたちがそれぞれ独自の体験を拡張できるようにしている。私たち DEVONtechnologies に働く者全員が、自動化の大ファンだ!

Greg C -- 私は長年にわたってたくさんの自動化をしてきた。特に素晴らしいものではないけれども私が気に入っているのが、1400 個以上のファイルを Excel からウェブヘルプシステムへ変換した作業だ。スクリプトを組むのに半日かけて、それからたった一時間ほどスクリプトを走らせるだけで、すべてが完了した。

つまり、それが要点だ。自動化ができないなら、それはもはやコンピュータではない。私は別に AppleScript が大好きな訳ではないが、Apple イベントを生み出したことこそ、真の意味で素晴らしい革新だと思う。

私の願いは、Swift が Apple イベントと直接やり取りできる手段を提供してくれることだ。忌まわしい回避策に頼るのは、もうたくさんだ。早ければ早いほど良いのだが。

Nick Morris -- 私は AppleScript の大ファンではない(シンタックスがうっとうしいし、時々どうしようもなく頑固になる、良いデバッグツールがないのも困る)が、それでも長年使ってきたし、Automator も合わせると、幅広い種類の作業に使ってきた。

現在は、AppleScript と Automator を組み合わせて、Mac 上でのブログ書きや電子ブックの作成に使っている。スクリプトやフォルダアクションで、次のようなことをしている:

私が使ったことのあるスクリプト(インターネット上で見つけたスクリプトを自分用に書き換えたもの)で最も楽しいのは、Keynote を自動化してスライドが表示される度に tweet を送出するものだった。その tweet にはそのスライド用に講演者が付けた説明文も含まれた。私が講演をしながらそれと同時に tweet しているのを見て、聴衆はわけが分からず大混乱に陥ったものだ。

Carlos -- AppleScript を使うアプリや Keyboard Maestro、Automator、HazelDefault Folder X を通じて私は AppleScript を毎日使い、結果として毎年何百時間も節約できている。

私は写真家なので、お気に入りのワークフローの一つは撮りたての写真の入った SD カードを Mac に挿入する度に PostHaste というアプリを起動するものだ。するとそのワークフローは自動的にサーバ上にフォルダを作成し、クリップボード内容をそのフォルダ名として貼り付ける。あらかじめ、カレンダー上のイベント名をコピーしておくのだ。その後で、作成したばかりのフォルダの内容を示した Finder ウィンドウが開きその隣に Image Capture が開くので、私は新しい写真をドラッグ&ドロップする。すると Hazel が自動的に写真を改名してくれる。

Patricia Pfitsch -- 夫と私は小規模の翻字ビジネスをしている。クライアントは制作会社で、彼らがドキュメンタリー用に撮影した生の映像が私たちに送られ、私たちは彼らが見聞きしたものをすべて翻字して文章の台本を作成し、それをクライアントに送っている。私たちのクライアントはいつも締め切りに追われているので、できるだけ早く台本を完成させることが非常に重要で、何時間にもわたる映像を受け取って 12 時間以内に台本をクライアントに届けなければならないのが普通だ。これほどのスピードを達成するには、AppleScript を使って名前やその他会話に頻繁に登場する単語や語句のショートカットを作ることが不可欠となる。(人々が会話の中で何回 'you know' と言うか、聞けばきっと唖然とすることだろう。)また、翻字作業中に映像を止めたり動かしたりするにも AppleScript を使っている。AppleScript は、私たちの成功の鍵だ。これがなくなれば、私たちは廃業するしかない!

Brian Christmas -- 過去九年間にわたって、私は Mail Manager という大きなアプリをビルドしてきた。このアプリはどんな絵画アプリから届いた絵画でも処理できる。工房の進行状況をモニターするシートを印刷し、個々の画像に二つのバーコードと二つのテキストフィールドを追加してから、個々の絵画を 100 パーセントの正確度で印刷する。また、個々のファイルごとに印刷後に(冗長性目的で)三重の保存をする。これらの画像は、印刷用の金型やプラスチック型を作るために使われるが、米国大統領の印章にも使われた。

これらすべてが最上位機種の iMac で走り、AppleScript と、Xcode の中の Objective-C ライブラリに依存して働く。

Emmanuel Levy -- 私たち Quomodo では XML と AppleScript に依存して働くウェブホスティング環境を開発しており、通常のように MySQL と PHP に依存するのではない。私たちの方法の利点は、XML がデータベース言語であると同時にウェブページ言語でもあることだ。この環境のお陰で、MySQL/PHP のフレームワークを使った場合よりずっと素早くずっと自由に拡張や新機能を開発することができる。

具体的な(それでいて非常にシンプルな)CGI が HTTP リクエストを私たちの AppleScript ハブ (Smile) へ送信すると、Smile がハードな内容をどこかの OSAX (通常は XMLLib.osax) へ送る。たくさんの Smile アプリがまとまって、毎秒最大 100 個のリクエストを処理できる。

私たちの DIY ウェブサイトシステムは、100,000 人以上の管理者が維持する 50,000 以上のサイトを見事に扱うことができている。

William Adams -- 私は、Olav Martin Kvern が不可能だと断じたスクリプトを書き上げた。これらのスクリプトを使って、私はクリエイティブな生産作業を十分速いスピードで進めることができ、そのお陰で私の会社は入札に勝ち利益を挙げ続けている。もしも Mac が AppleScript を失ったら、私たちは他のツールを使って今と同じレベルのコントロールを実現し、かつ競争力を保てる程度の自動化を達成できるやり方を見つける必要に迫られるだろう。

Rob Lewis -- 何年か前に人気の高かった予定管理ソフト Now Contact が廃止となった時、私はそのデータファイルを Apple の Address Book (現在は Contacts と呼ばれている) に書き出す AppleScript を書くことができた。他のソフトよりずっと優れた仕事ができたので、廃止されて何年も経った今でさえこのスクリプトが欲しいというリクエストが私に届いている。

そして、私が以前のノート管理ソフトを Evernote に切り替えた時にも、古いノートを書き出して素敵にカテゴリー分けする AppleScript を私は書いた。

また、OmniGraffle の中ではカスタマイズしたシリアル番号とバーコード付きのラベルを印刷する AppleScript を使ったし、Excel の中では液量の測定のために特化した目盛りを算出して印刷する AppleScript を使った。

Mark Leslie -- 私は世界的なスポーツ衣料のブランドで働いているが、AppleScript と macOS の自動化テクノロジーがなければ、私たちは到底この市場のスピードについて行くことができなかっただろう。

もう何年も前、私たちが初めて大規模な自動化ワークフローを実装した時、私たちは既存の制作アートチームの人員を増やす必要なしに二年連続で製品 SKU を 20 パーセント以上増やすことができた。それだけでなく、ユーザーエラー(タイプミス、コンポーネント配置、ファイル名など)も大幅に減ったので、それまでよく起こっていた作り直しが減り、校正作業からも解放されたので、重要な製品そのものの詳細により多くの努力を注げるようになった。

私たちの仕事のあらゆる面で、製品創造、可視的仕様書類製作の準備、カラー管理、販促資料やカタログ、製品写真などにおいて、AppleScript と、アプリケーション相互の深い連係とが、私たちの能力を押し進めてくれる。会社のデータ蓄積から読み込んだデータはワークフローを駆動するために送り込まれ、資産表にはメタデータ属性が割り当てられる。私たちはサーバ上のホットフォルダを使って macOS の専用「アプライアンス」を駆動し、それを資産表作成エンジンとして走らせる。このようにして作成された資産表が他のサーバに転送されて発送チームや別のアートチームに渡される。

こうしてすべてのものが正しい場所に配置され、あらゆる成功を達成してきたことを考えると、私たちはいつも自動化のさらなる可能性に気付かされる。AppleScript と、Apple イベントと、スクリプト対応アプリケーション、その深い広がりとパワーを私たちがどのように利用できるかと考える時、私の目にどこまでも終わりは見えない。

Laine -- 私はディスクイメージをマウントする度に出るソフトウェア使用許諾条件の通知に飽き飽きしているので、通知を取り除くスクリプトを書いた。

Chip Patterson -- 私たちは毎日のビジネスの中で AppleScript を使っている。日常的な作業を効率的にするためのスクリプトがいくつかあり、そのため私たち仲間の 25 パーセントが Dell でなく MacBook を使っている。もしも AppleScript へのサポートが弱くなれば、ビジネスの中でもっと Mac を使おうという戦いに敗れてしまうことだろう。使いやすさと有用性を議論する際、AppleScript が決定的な意味を持っている。

Jim Royal -- 私は AppleScript を非常に多数のさまざまな作業に利用してきた:

私が忘れてしまったものもたくさんあるだろう。私にとって AppleScript は不可欠だ。

Simon Bowler -- 私は AppleScript を使って、FileMaker を使う医療事務のさまざまの作業を自動化している。AppleScript の他にまず例のない特長は、数多くの異なるプログラムや情報源から取り寄せた変数やデータを構文解析して FileMaker のようなアプリに挿入できる点だ。

Carlos -- 私が最もよく使う自動化機能はテキストからオーディオへの変換だ。Services 経由でほとんどすべてのアプリケーションがこの機能に対応している。失読症の私は文字を読むのが困難なので、この機能を使っている。コンピュータが私のために文章を読んでくれて、私はただそれについて行くだけでよいので、本当に 助かっている!

David Ohman -- 私は Andrews McMeel Universal で Digital Product Development の副部長をしているが、2000 年代の初期に私が制作ワークフローに AppleScript を取り入れた。現在は、私たちのコンテンツのうちで何らかの意味で私たちが AppleScript で開発した自動化を使わずに作成され、処理され、あるいは触れられずに済んだものは、あったとしてもごく少数に過ぎない。今度あなたが Andrews McMeel Syndication (以前は Universal Press Syndicate/UniversalUclick と呼ばれていた) あるいは United Features Syndicate が出版した漫画を読む際には、AppleScript があるからこそそれがあなたの手に届いたのだと思いを馳せて頂きたい。

RJay Hansen -- 私はダイレクトメール・プリントショップ・ウェブデザインの会社でデザインおよびプリプレスの管理をしている。この仕事を始めて間もなく、私は繰り返し使われる多くの作業を自動化する AppleScript を書けば部門の効率が大幅に上がるだろうと気が付き始めた。ジョブフォルダの階層(部門のメンバー各個人が毎日何度も作成しているもの)を自動的に作成するシンプルなスクリプトから、ExcelAcrobatInDesign の相互の処理とやり取りを自動化する複雑なスクリプトまで、いろいろだ。さらに私は InDesign 用の基本的な組み付けプログラムまで AppleScript で書いた。これらのスクリプトのお陰で年中通して計り知れないほどの人的時間が節約できた。もしもこの機能が macOS から取り去られる日が来たなら、それはこの上なく悲しい日となることだろう。

Joern Dyck -- 私はかつて、遠隔にある Xserve の上で 5000 本のビデオを開いて保存しなければならないことがあった。その当時、QuickTime ファイルはそのファイルが完全にロードされてからでなければブラウザで再生が始まらなかった。(今日では、冒頭の数バイトがロードされるや否やすぐにビデオの再生が始まることを誰もが期待するようになった。)Apple は、古いビデオをアップデートする方法を提供したが、それは QuickTime Player でそのファイルをただ開いてそのまま(変更せずに)保存するだけというものであった。

でも、QuickTime Player で 5000 個のファイルを手で開いてから保存するなど、誰にもできない作業だ。

けれども AppleScript を使って、私はフォルダの中のすべてのファイルにわたり、それらを一つずつ QuickTime Player で開いてから保存し直させることができた。コード自体はほんの数行で、可哀想な Xserve は何日かぶっ続けで徹夜仕事をこなしてくれた。AppleScript は、夜中でも喜んで働いてくれる。

この種の問題を私は数多く AppleScript を使って解決した。AppleScript は本当に称賛に値するはずだが、その称賛を受けることはめったにない。

Chris -- テクノロジーに詳しくないアーティストたちや、クリエイティブなプロたちに、私はワークフローの援助を提供している。Automator を使ってダブルクリック可能なアプリケーションを作成し、そのアプリケーションが時には混乱を招くような複数のコマンドの組み合わせを bash スクリプトとして実行する。こうすることで、手順を単純化してエンドユーザーを制御しつつ、エラーの可能性を最小限にすることができる。

Steven McCarthy -- 私は雑誌出版とプリプレスの仕事で 20 年以上にわたって AppleScript を使ってきた。最初は Hearst Magazines、後に McGraw-Hill で働いた。今は Bloomberg LP で、Businessweek、Markets、Pursuits などの雑誌の仕事に AppleScript を使っている。

長年にわたり私が自動化してきたワークフローはさまざまで、InDesign レイアウトを出力前チェックしたり、リンクをアップデートしたり、出版可能状態の PDF を作成したり、ファイルの FTP 転送を自動化したりする。さらにはさまざまのファイルを厳格な名付け方法に従って整理されたファイルやフォルダに変換あるいはアーカイブ保存するスクリプトもある。

また、私は印刷レイアウトをモバイルとオンラインのウェブアプリに応じてそれぞれ作り直す際の、モバイルアプリ側のためのワークフローも自動化した。これらの自動化されたワークフローのお陰で、数千時間とは言わないが数百時間は手動作業の時間が省けたはずだ。その端的な証拠として、何らかの理由でスクリプトの動作が止まってしまった場合、古い手動のワークフローに戻るなんて絶対嫌だと叫ぶスタッフの反発の声が必ず挙がる。AppleScript がどんなに助けになったか、私には到底言い表わせない。長年 AppleScript コミュニティーを教え導いてくれた Sal に心からの感謝を捧げたい。それは、どんな言葉でも言い足りない。

Rick Pepper -- 広く見過ごされ、または馬鹿にされている AppleScript の重要な機能は、プログラマーでない人でもアクセスできることだ。そして、他のどのやり方とも違う AppleScript の独特な点は、たった一つのコード本文から数多くの全く異種のアプリケーションとコミュニケーションをして複雑な作業をし遂げる能力だ。

プリプレス技術者の多くはできる限りの方法を駆使して「とにかく結果を仕上げる」必要があり、AppleScript はまさにそれをする力を彼らに与える。

私にとって AppleScript は「なぜ Mac を使うのか」という質問への答だ。それはつまり、機動的になるということだ。もしも Apple が Mac を殺すならば、それは私たちの自動化を殺すことになる。もしも Apple が AppleScript を打ち捨てるならば、それは将来の Mac の売上げを失うことを意味する。

1990 年代中頃に私が書いたことの大部分は、必要に応じてアップデートしさえすれば今でも十分に通じる。それは、このプラットフォームが安定した状態を保ってきたからだ。もしも Apple が態度を変えれば、それはつまり私たちが 1994 年以来享受してきた利点と効率性とを大体において切り捨てるということだ。

私は、大規模な商用印刷企業で働いている。過去 22 年間、私たちはここで次のようなことに AppleScript を使ってきた:

  1. 印刷物制作全体にわたるワークフローを構築

  2. 数限りない種類のファイルタイプを望ましいファイルタイプに変換

  3. 「Mac 互換でない」システム用にファイルを出力

  4. プリプレスのライン間際のアーカイブ・ストレージシステム(1990 年代後半の初代のシステムでさえ 46 GB もあった!)からの復旧を自動化

  5. 前述のライン間際にアーカイブされたファイルを取り出して二番目のシステム(現在 50 TB で、まだ増大中)にアーカイブし直す作業を自動化

  6. 独自仕様でビルドした EPS ファイルを Illustrator 8 と Scripz により出力後扱いやすい EPS に変換

  7. ウェブベースの印刷注文システム用にウェブプレビューを作成

  8. デジタルカメラから取り込んだファイルのファイル名をバッチ処理で変更

  9. Lightroom から書き出したメタデータ (XMP ファイル) を他のテキストファイルフォーマットに変換

  10. 90 年代後半にあった Illustrator 8 のバグを回避するため EPS ファイルを読み込み・修正・書き換え

  11. EPS ファイルの PMS カラーを Illustrator 8 と Scripz で、後には Illustrator 9 で、cyan, magenta, yellow, black のいずれかに変換

  12. さまざまなデータ源から HTML テーブルベースのレポートを作成

  13. AppleScript/QuarkXPress ベースの自動化された組み付けシステムを作成、これは 90 年代後半から 10 年間以上使った

  14. テキストファイルから Quark ファイルを作成・投入し、出力要件に基づいていくつかの異なる EPS あるいは Postscript ファイルを生成してそれらを遠隔サーバに配布

  15. Fetch を使った FTP と生のテキスト処理により AS/400 メインフレームとデータ交換

  16. サーバボリュームをマウント・ディスマウント

  17. SoundApp と FileMaker を使って AppleScript でコントロールするデジタル・ジュークボックスをビルド(iTunes がまだ存在しない時代の話)

  18. 電子メールで届いた注文に対する Microsoft Entourage を使った検索・返信・添付ファイル処理を自動化

  19. QuarkXPress と GraphicConverter を使った自動車販売業者用月刊雑誌の構築を自動化、これは下端自由のカラムを使ったフリーフローのレイアウト(画像は固定位置に置くのではない)だが、たった一時間以内で、手を触れる必要も一切なく、何千台もの自動車を処理することができた!

  20. プリプレス担当者が QuarkXPress のジョブを作成する際に Finder を使う必要をなくす(ジョブ作成には送り状番号に基づくフォルダ階層を作成し、必要な Quark テンプレートを(何千もある中から)選んで開き、それを新規フォルダに保存し、書類の中のスラグ行を更新する必要がある)

  21. さまざまなファイルやフォルダをチェックして必要に応じてコピーやインストールする作業を自動化

  22. Quark ファイルを InDesign に変換し、その際フォントの更新もする作業を自動化

  23. Microsoft Word から表のデータを、または Excel からデータを抽出し、それに処理を加えてタブ分離テキストファイルとして保存する作業を自動化

  24. その他にも数え切れないほどさまざまのユーティリティスクリプトを作成してテキストを処理、マッサージ、書き出しする

  25. 制御テキストファイルの入力に応じてファイルをコピー・移動する作業を自動化(まとめて処理するように作られた私たちの組み付け校正システムの一部だが、たとえワークフローの他の部分に変更が起きても生産性を失わず順応できる必要があるからだ。)

Argyl Dickson -- 5 秒から 10 秒ほどから、5 分から 6 分ほどのものまで、何百本もの短いビデオファイルを私たちは制作している。これらのものを投入しているプロジェクトのアーキテクチャは、冒頭のビデオフレームと末尾のビデオフレームを示した JPEG ファイルを要求する。それがないと開始時と終了時に光のちらつきが入ってしまうからだ。でも、個々のビデオファイルを一つずつ手で開いて冒頭と末尾の静止フレームをいちいち保存していたら、一時間以上もかかってしまうだろう。

そこで私はスクリプトを書いて、何百ものファイルを処理し、冒頭と末尾のフレームから JPEG ファイルを生成し、それぞれに適切な名前を付けるようにした。すると、何時間もかかり得た作業が、一分も経たないうちに完了した。これもまた、AppleScript が自動化を通じて私や私のクライアントたちを助け、何百時間もの人的時間を省いてくれた、そのほんの一例に過ぎない。

Carlos Ysunza -- 私は Mexico City にある写真とデザインのスタジオで働いている。たった四人で、八台の Mac を使っているので、ビジネスの重要な部分を AppleScript に丸ごと依存している。

私たちの最も重要なクライアントは国際ビジネスの会社だが、このクライアントのために私たちは毎月、化粧品のカタログを作っている。AppleScript は、その処理の大部分を自動化してくれる。

その次に大きなクライアントのために、私たちは巨大な FileMaker データベースと、Photoshop、それに Epson プロッターを組み合わせた複雑な印刷システムを構築した。ここでも、すべてが AppleScript でコントロールされる。

もちろん、もっと他にいろいろの、私たちの毎日の作業の中で細かいけれども時間を食うプロジェクトのためにも AppleScript を使っている。

Mac 上で AppleScript の自動化がなければ、これほど少人数でこれほど多くの仕事をこなすことなど不可能だ。私たちにとって、AppleScript の自動化は必須のテクノロジーだ!

David Popham -- 私は主として InDesignIllustrator を自動化するために AppleScript を使っているが、AppleScript が JavaScript より大幅に優れているのは一つのスクリプトで複数のアプリケーションを結び付けることができる点だ。Excel スプレッドシートから取り込んだデータを BBEdit でクリーンアップし、それを使って Illustrator でグラフを作成して最後にそれを InDesign 書類の中に置くといったことができる。

私がしたことの実例をいくつか挙げよう:

Christian Boyce -- 私の会社では、毎日 AppleScript を自分たちの仕事のために使っている上に、会社の顧客たちのため彼らそれぞれ独特のさまざまな問題に取り組む助けとなるように私たちがスクリプトを書くこともある。結果として膨大な時間の節約になっている。

具体例をいくつか挙げよう。私たちが面会予約をする際、事務長がカレンダー上のイベントをクリックしてから、(DragThing によって) スクリプトを呼び出すと、そのスクリプトが面会する顧客と私あてに電子メールを作成する。このスクリプトは私のスマートフォンにもテキストメッセージを送信する。毎朝 8:01 AM に事務長の Mac でスクリプトが走り、カレンダーをスキャンして次の営業日の面会予約をリストする。そして自動的に顧客たちに面会予約のリマインダーを電子メールで送る。これらの電子メールはすべて私が望む通りの内容で(間違いなど一度もない)すべて自動的に発送される。

私はある形成外科医のためにスクリプトを書いた。彼女のウェブサイトには、新規の患者のためのフォームがある。このフォームの結果は電子メールで返送される。その電子メールが届くと、受付係がそれをクリックし、するとスクリプトが走ってデータを読み込み Contacts の中に新規連絡先を作成する。このスクリプトはまた、FileMaker の中に新規レコードを作成し、医師のためにすべての情報を彼女の好みのレイアウトで印刷した PDF を作成する。

AppleScript はアプリ同士を結び付けるので、本物の 1 + 1 = 3 効果を生む。Mail、Calendar、Contacts、FileMaker、他にも多くのアプリが、AppleScript によって結び付けられたシステムの一部となる。

私は InDesign を使う顧客たちのためにたくさんのスクリプトを書き、彼らはそれで膨大な時間を節約できる。しかも、素晴らしい結果が得られる。例えば、ページ上の写真の下に説明文が必要だったとしよう。私が書いたスクリプトは写真の幅を調べ、それと同じ幅のテキストボックスを作ってそれを標準的な縦方向のオフセットを付けて配置し、そのテキストボックスのテキストの書式を "caption style" に設定する。(その名前の書式が存在していなければ作成する。)それから、写真と説明文のボックスとをグループ化して、移動させても両者の相対位置が崩れないようにする。

私は決して最高の AppleScript 書きではないが、私も私の顧客たちも大いに使いこなせるスクリプトを書くことはできている。

私は、AppleScript は Mac の「秘密兵器」だと思う。誰かの生活を少しでも(または大幅に)良くするために使えることが、一番嬉しい。

James -- 私は AppleScript を仕事場でほとんどあらゆることに使っている。アートの作成、本の制作、電子ブックの変換、ファイルの検証、ファイルの配布といったことだ。私たちのビデオ管理、MathML 作成、カバー作成などはすべて AppleScript で動いている。

AppleScript を使ってコストを節約できることこそ、私たちのチームの仕事が外部委託に回されていない唯一の理由だ。章レベルの電子ブック作成ができることだけでも、年間百万ドル相当の外注コスト節約になり、その上ベンダーが提供する製品に比べて速くて正確だ。私たちが AppleScript で動かしているページレイアウトシステムは 120 万ページを記録し、コストを業界標準よりずっと低いレベルに抑えている。端的に言えば、AppleScript と、全面的にそれに対応するアプリ (InDesign など) がなければ、私たちのチームが出力する成果はほんの少量になってしまい、同時にはるかに大きなコストがかかってしまうだろう。

Olle Westbergh -- 私たちの会社のワークフローは Apple の自動化テクノロジーに大きく依存している。これが消え去れば、私たちは macOS を捨てて Linux か Windows に移行せざるを得ないだろう。

Henry Domke -- 私のアートビジネス Henry Domke Fine Art のためのファイル作成作業の面倒な部分を自動化するため、AppleScript は重要な役割を果たしている。Automated Workflows で作成されたカスタムアプリケーションが、何百時間分もの作業を省いてくれた。AppleScript を使って Ray Robertson と Ben Waldie が作ったアプリケーションのお陰で、私は仕事を続けられている。また、ミスも減らしてくれる。どうか、自動化テクノロジーへのサポートを今後も続けて欲しい!

Larry McMunn -- 1993 年に、私は AppleScript という名前の新製品を使い始めた。グラフィックデザイナーでありアーティストである私は、プログラムを学ぶ必要なしにページレイアウトのたくさんの作業を自動化できる能力を約束するその製品に賭けた。それから二年後、私は世界最大の投資信託会社と提携することができたが、その際このテクノロジーを使って書類を作成した。長年にわたり、次々と金融会社をクライアントのリストに加えることができたが、それは何万ものページを素早く効率的に制作することができるお陰だった。そして 22 年が経ち、私たちは当時に開発した中心的アイデアや概念を今も使い続けている。会社の成功は、AppleScript のパワーと柔軟性がなければあり得なかっただろう。

これらの書類は数多くの情報源から自動的に集められてタイプセットされる。AppleScript のパワーがあったからこそ、これほど多様なデータ源をもとにして一つのワークフローに統合することが実現できた。書類の中には 25 か 30 のデータ源から作られるものさえある。しかも、それらさまざまの情報源はテキストファイル、Microsoft Word 書類、Excel ワークブック、FileMaker4D から巨大なメインフレームによるデータベースまで、多岐にわたる。

Mark Aldritt -- Script Debugger (AppleScript 用エディタ兼デバッガ) の開発者として、私は自分の仕事にも膨大な量の自動化をしている。Script Debugger のコンパイルにも、バグ追跡システムから項目を集めてリリースノートを作成するにも、ソフトウェアのバージョン管理をするにも、ソフトウェアのアップロードをするのにも自動化を使っている。私一人で運営している会社なので、そういう作業を素早く正確にこなす必要があるからだ。その昔、手作業でしていた頃には、しょっちゅうエラーが発生していた。現在使っているバグ追跡の自動化は、クラッシュの報告を処理して顧客サポートの電子メールをさまざまな状況に応じて自動処理できる。電子メールによるマーケティングも自動化している。他にも挙げればきりがない。自動化のお陰で、うちのようなちっぽけな組織でもちゃんと業務をこなして行ける。

個人的なレベルでも、日々の生活にたくさんの自動化をしている。例えば、近所の図書館で本や CD、DVD を借りると、図書館から確認の電子メールが届く。AppleScript でこういう電子メールを処理して、個々の項目ごとに返却予定日にリマインダーを出すように設定している。

Hanaan Rosenthal -- 私が 21 歳の時、妻と私は銀行預金が $2500 あった。高校も出ていなかった私はキャンディー配達の仕事を辞めて、$2435 を出して中古の Mac II を買い、自ら Mac コンサルタントと称した。何年もしないうちに、私は New York Times、Fidelity Investments、Reuters、その他大企業クライアントのために AppleScript を使ったワークフローの自動化をしていた。単にワークフローを改善するだけでなく、自動化がなければ存在しなかったような製品を作り出していた。例えば、New York Times の日刊新聞の経済面と天気図は、今現在でも私の AppleScript を使って毎日生成されている。

Mark -- 私は開発者ではないが、長編映画の撮影後編集の仕事をしている。私たちの製品は高度に機密を要するので、部門と部門の間で共有されるビデオはすべて大量にウォーターマークが施され、受取者ごとに個々にマークされる。その作業を Media Composer 内部ですることも可能だが、それでは遅くて具合悪く、比較的手作業も必要で、しかも編集システムに結び付いてしまう。

そこで私は AppleScript を必要なだけ学んでアプリケーションを書き上げ、このアプリケーションが QuickTime ファイルを取り込み FFmpeg コマンドを施して必要なフォーマットに変換し、名前、日付、タイムコードなどさまざまな情報を焼き付けるようにした。ファイル名データを使ってフレームハンドルを切り取ることもする。ソースファイルから、数多くの変数が自動的に読み込まれる。AppleScript はそれらすべてのデータをフォーマットし FFmpeg フィルターを作る。

私のアプリに QuickTime ファイルをドロップして、プリセットを選んでから、Encode ボタンを押すと、フォーマットされた FFmpeg の「ジョブ」がバッチ作業に分割され、Terminal に送られてバッチ処理がなされる。

これらすべてのことが、映画編集の作業が進行している裏でバックグラウンドの処理で進む。こうして膨大な時間が節約できる。毎日何時間分にもあたる。私たちにとって、AppleScript は必要不可欠だ。

Joern Dyck -- 私はビデオスタジオを経営していて、ライブ番組を制作している。録画された番組は、あとでウェブサイトでダウンロードできる。私たちにとって AppleScript が絶対的に必要なのは、日中に番組を制作・放送して、夜中に AppleScript が編集とアップロードの作業を引き受けることができるからだ。次の朝に私たちが仕事に戻ると、すべてが既に処理され、チェックされ、アップロードされ、アーカイブ保存されている。まるで魔法だ。すべては、こんな風に働く:

私たちのライブ番組は 3 時間か 4 時間続く。番組が終わると、私たちは録画をいくつかの小さな部分に切り分ける。これは大量のデータだ。だから、撮影後編集の処理(例えば書き出して、圧縮し、サーバにアップロードする)には非常に時間がかかる。

だから、その種の作業は夜中に自動的にするのがよい。

Final Cut Pro X は、データベースから作成した XML ファイルで自動化できる。このデータベースにはそのビデオクリップについてのあらゆる情報、つまりタイトル、説明文、ポスター画像、その他たくさんのことが含まれている。結果として生成されるのはたくさんの圧縮されたビデオファイルで、すべてが一つのフォルダの中に揃う。

AppleScript はこのフォルダを監視して新規ファイルを待つ。新規ファイルが現われると、AppleScript はいくつかのアプリケーションを使ってビデオにいくつかの属性を与える。(Final Cut Pro が私たちの望むすべてのことをしてくれる訳ではないからだ。)

その後、AppleScript はマスターサーバにビデオをアップロードする。これは実際かなり複雑な処理だ。サイズの大きなファイルでは (7 から 10 GB というものもある) では、アップロードがいつも保証されている訳ではない。そこで、AppleScript はアップロードが成功したか否かをチェックする。もしも失敗していれば、アップロードを繰り返す。(次の朝仕事場に来て 10 GB のファイルがアップロードされていなかったことに気付くなど、絶対にご免被りたいことだ。)個々のファイルごとに異なるバージョン(小、中、大)を作ってあるし、いろいろな番組があるので、AppleScript は賢く最適のフォルダを選ぶ。

次に、AppleScript はローカルなアーカイブにビデオを保存し、データベースに適切に項目を追加する。私たちが仕事に戻ると、すべてがクリーンアップされ、次の番組を始める用意が出来ている。もしも何かがうまく行かなければ、詳しい情報を記した TextEdit 書類が Desktop に作られている。また、問題の起こったファイルに赤色のラベルが付いていることもある。あるいは、責任ある人に電子メールで通知されることもある。

顧客は私たちが昼も夜も働いていると思っているかもしれない。そうでなければ、いったいどうやって編集済みの 10 GB のビデオを翌朝に提供できるだろうか? でも真実は、チームを昼も夜も働かせることなどできない。それに、そんなやり方は馬鹿げている。退屈な、同じことの繰り返しの、長い待ち時間を伴う作業だからだ。異なる複数のアプリケーションを利用する自動化されたワークフローが、これほど相応しい仕事が他にあるだろうか?

私たちは Apple を、大会社のみに出来ていた仕事を私たちのような小規模のチームでも出来るようにしてくれる会社だと思っている。AppleScript は、まさにそれだ。確かに学習曲線はあるが、最初はシンプルに始めればよい。いったん軌道に乗れば、信じられないほどクールで生産的になる。Apple はもっともっとそういうことをすべきであって、それを減らすべきではない。

私たちのシステムの最も重要なところは、自分自身でアクションを呼び出せること (例えば、何かを一分に一回チェックしたり、フォルダを監視したり)、判断 (if や else)、それから他のアプリケーションを使えることだ。Swift のようなものでプログラミングをする方法は、私たちの選択肢になりえない。私たちはソフトウェア開発者でないからだ。私たちが必要とするのは、むしろ料理のレシピのように使いこなせて、簡単に変更を加えられるものだ。

もう一つだけ例を挙げておこう。ライブ番組の録画中、私たちは 12 台の Mac を使う。番組ごとに異なるセットアップを使うが、これらの Mac を普通にセットアップしていれば一時間はかかる。私たちはこれを AppleScript で自動化した。AppleScript は、ネットワーク上の Mac を制御できるからだ。どんな番組を制作したいかを AppleScript に告げるだけで、すべてがセットアップされる。クリック一つで、一分後にはすべての準備が出来ている。

Eric Geoffroy -- AppleScript は、すべてを支配する輪だ。AppleScript があれば、Finder、JavaScript、Python、それに bash をコントロールできる。私が自動化に使っているたくさんの方法は、さまざまの異なるツールボックスを使う。別々のスクリプトを多数まとめて使う代わりに、AppleScript はたった一つのマスタースクリプトですべてをコントロールして、今挙げたものや他のさまざまなプログラミング言語との間でデータを出し入れすることができる。

Windows にも、Linux にも、そして iOS にも、AppleScript に似たものはない。これは、Mac だけができる独特のいくつかのことの中の一つだ。とりわけ Windows は、かつて Mac を特別な存在にしていたものをコピーし尽くしたが、AppleScript だけはコピーできなかった。

自動化による時間の節約は膨大だ。私はかつて使っていた手動の作業を計時したことがあるが、2 時間から 6 時間かけても人的エラーは起こった。それと同じ作業をするのに、今では 20 分で済む。場合によっては 30:1 にもなる。

以前の私は会社が Mac から PC への切替を強要するのではないかと心配だった。そんなことになれば私たちのワークフローも生産性も破壊されてしまうからだ。私は長年 Microsoft Windows との闘いを続けてきた。でも今は、Apple 自体がどうなってしまうのかと心配している。

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TidBITS 監視リスト: 注目のアップデート、2017 年 1 月 23 日

  文: TidBITS Staff: [email protected]
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Final Cut Pro X 10.3.2, Compressor 4.3.1, Motion 5.3.1 --Apple が同社のプロフェッショナル向けビデオ編集アプリのシリーズをアップデートして Final Cut Pro X 10.3.2Compressor 4.3.1Motion 5.3.1 をリリースし、H.264 ファイル書き出し時およびフレームレート変更時のパフォーマンスを改善した。

Final Cut Pro X 10.3.2 では、オーディオファイルのカスタムフォルダを Sound Effects ブラウザに追加でき、再起動後もオーディオメーターのカスタム幅を保持し、ロールが混在する第二のストーリーラインがタイムライン内で重なる問題を解決し、Apple USB SuperDrive 経由で Final Cut Pro プロジェクトから DVD を作成できない問題を解決している。

Compressor 4.3.1 は、分散エンコーディング使用時に Fade In/Fade Out フィルタが正しく適用されるようにし、ダブルバイト文字言語(日本語や簡体字中国語など)の使用時にディスク名およびタイトルが正しく表示されるようにし、新型 MacBook Pro の Touch Bar 上のマーカーボタンが正しく表示されない問題を解決し、Terminal 経由で Compressor の使用時にロケーションパスを考慮するようにしている。

Motion 5.3.1 は、複数のカメラビヘイビア使用時の安定性を改善し、さらにいくつか安定性に関するバグを修正している。具体的には、Timecode テキストジェネレータ使用時の安定性、再生時にカーソルがマーカー上を動くときの安定性、ナッジ・キーフレーム・ショートカット使用時の安定性などだ。(いずれのアプリも無料アップデート。単独の購入ならば Final Cut Pro X 新規購入 $299.99、2.97 GB、リリースノート、10.11.4+; Compressor 新規購入 $49.99、445 MB、リリースノート、10.11.4+; Motion 新規購入 $49.99、2.31 GB、リリースノート、10.11.4+)

Final Cut Pro X 10.3.2, Compressor 4.3.1, Motion 5.3.1 へのコメントリンク:

BusyCal 3.1.4 と BusyContacts 1.1.6 -- BusyMac が BusyCal 3.1.4 をリリースして、Google AppAuth対応を追加し、新規アカウントを追加する際の手順を改善し、大きなデータベースでの参加者検索のパフォーマンスに磨きをかけた。このカレンダーアプリはまた、参加者検索がすべての結果を表示していなかったバグを修正し、Attendee フィールドに電子メールアドレスをペーストする際の問題を解決し、繰り返すイベントを編集した後に情報ウィンドウを閉じると起こったハングを解消し、高速でページをめくった際にクラッシュすることがあったのを修正している。

BusyMac はまた BusyContacts 1.1.6 もリリースして、Google AppAuth 対応を追加し、新規アカウントを追加する際の手順を改善し、設定アシスタントのグラフィックスを更新するとともに、言語コードのクラッシュ一件を解消した。(BusyCal は BusyMac からも Mac App Store からも新規購入 $49.99、無料アップデート、11.3 MB、リリースノート、10.11+。BusyContacts は BusyMac からも Mac App Store からも新規購入 $49.99、無料アップデート、5.4 MB、リリースノート、10.9+)

BusyCal 3.1.4 と BusyContacts 1.1.6 へのコメントリンク:

Mailplane 3.6.9 -- Uncomplex が Mailplane 3.6.9 をリリースして、ノートと書類の保存に関する DEVONthink Pro 統合を追加した。(2016 年 12 月 5 日の記事“DDEVONthink/DEVONnote 2.9.8”参照。)この機能は Mailplane が Evernote と統合する機能と同様に働く。Uncomplex はまだ DEVONthink ヘルプページを出していないが、詳しくは同社の Evernote ヘルプページを見ればよい。この Gmail 専用電子メールクライアントはまた、Receipts アプリに送り状を送信する機能に対応し、何かを Excel から検索フィールドへペーストすると起こったクラッシュを修正し、カレンダーのイベント通知での問題点を解消し、Microsoft Office 添付ファイルを開く際に起こったクラッシュを修正している。(新規購入 $24.95、無料アップデート、21.3 MB、リリースノート、10.10+)

Mailplane 3.6.9 へのコメントリンク:

Boom 2 v1.5.2 -- Global Delight が同社の音量ブースターおよびイコライザー用アプリ Boom 2 のバージョン 1.5.2 をリリースして、Apple の新しい AirPods (2016 年 12 月 20 日の記事“Apple のワイヤレス AirPods は待った甲斐あり”参照) への対応を追加した。また、今回のアップデートでは Bluetooth ヘッドセットで起こった音の歪みの修正や、その他詳細不明のマイナーな修正も加えられている。定価は $14.99 だが、Boom 2 は現在、Global Delight ウェブサイトで $9.99 (Mac App Store では $10.99) の期間限定セール販売中だ。(Global Delight から新規購入 $14.99、TidBITS 会員には 25 パーセント割引、無料アップデート、12.9 MB、10.10+)

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Logic Pro X 10.3 -- Apple が Logic Pro X 10.3 をリリースした。このプロフェッショナル向けオーディオアプリのメジャーな新リリースで、ユーザーインターフェイスを更新するとともに、2016 年型 MacBook Pro の Touch Bar への対応を追加した。新しい共有オプションにより、GarageBand 互換なバージョンの Logic プロジェクトを iCloud にアップロードしておけば iPhone や iPad 上の iOS 版 GarageBand (バージョン 2.2 かそれ以降) から新規トラックを Logic セッションへ追加できる。

今回のアップデートではまた、トリミング中のオーディオファイル全体に波形を表示できる新しいリージョン編集デザインを追加し、Mixer でトラックを録音可能に切り替える際の僅かな遅れをなくし、本格的なステレオパンによりステレオ信号のより正確なコントロールと個別の操作を可能にし、Music XML ファイルの読み込みを可能にし、環境設定ウィンドウに新たに Recording ページ(Overlapping 録音設定、録音ファイルタイプ、録音のビット深度の設定)を追加し、Apple Loops にリージョンに基づく自動化を書き込めるようにし、音を完璧なピッチに設定する際にアーティファクトが発生する可能性を減らすため Flex Pitch を改良し、数多くのキーボードコマンドを追加している。(Mac App Store から新規購入 $199.99、無料アップデート、1.32 GB、リリースノート、10.9+)

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セキュリティアップデート 2016-007 (Yosemite) と 2016-003 Supplemental (El Capitan) -- 2016 年 12 月 13 日に、Apple はセキュリティアップデート 2016-007 を OS X 10.10 Yosemite 用に、セキュリティアップデート 2016-003 を 10.11 El Capitan 用にそれぞれリリースして数多くの脆弱性をパッチした。中でも、アプリケーションにカーネル権限を取得され任意のコードを実行される可能性がある脆弱性一件と、ローカルなユーザーがサービス運用妨害を起こす可能性がある脆弱性一件が塞がれた。

2017 年 1 月 17 日になって、Apple はセキュリティアップデート 2016-003 の新バージョンを出して、El Capitan の走る Mac がフリーズまたは無反応に陥ることのあったカーネルの問題点に対処した。2017 年 1 月 17 日以前にセキュリティアップデート 2016-003 を適用した人は、セキュリティアップデート 2016-003 Supplemental が Software Update に表示されていることに気付くだろう。いずれのアップデートをインストールする際にも、問題が起こった場合に備えて必ずバックアップを作っておくようにしよう! (無料、10.10.5 Yosemite 用は 498.1 MB、10.11.6 El Capitan 用は 717 MB (Supplemental は 623.9 MB)、リリースノート)

セキュリティアップデート 2016-007 (Yosemite) と 2016 2016-003 Supplemental (El Capitan) へのコメントリンク:


ExtraBITS、2017 年 1 月 23 日

  文: TidBITS Staff: [email protected]
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

今週の ExtraBITS では、JetBlue が機内 Wi-Fi の無料提供を開始し、新たに出現した Mac マルウェアが非常に古いコードを使っていることが判明する。

JetBlue、無料機内 Wi-Fi を提供 -- 格安航空会社 JetBlue が、米国本土内の飛行機の便で同社の Fly-Fi サービスを通じて無料の機内 Wi-Fi を提供している。このサービスは Amazon がスポンサーとなり、旅行客が Amazon Prime にサインアップして Amazon Prime Video から映画やテレビ番組をストリーミング視聴するよう勧誘するものだ。Fly-Fi は Ka-バンドの衛星通信に依存し、15-30 Mbps を約束する。JetBlue によれば、これは Ku-バンドよりも、また競合各社が提供する地対空通信テクノロジーよりも高速だという。これがうまく行って、他の航空会社も JetBlue に倣って機内 Wi-Fi を改善し、価格を下げてくれるようになれば嬉しいのだが。

コメントリンク: 17005

Mac マルウェア "Fruitfly" は古いコードを使用 -- Apple が "Fruitfly" (キイロショウジョウバエ) と名付けた新しいマルウェアが、Mac 世界を飛び回っている。幸いにも、Apple はこれに対する防御を備えたアップデートを黙ってリリース済みだ。けれども、Malwarebytes Labs が発表した分析結果はとても興味深い。Fruitfly は古いコードの寄せ集めで、中には二十年も前のものもあり、プログラミング言語 Perl や Java で書かれた部分も含まれているという。Malwarebytes は Fruitfly が Linux オペレーティングシステムでも走ることを発見した。つまり、これはもともと Linux マルウェアであって Mac 用に書き直されたものだとも考えられる。

コメントリンク: 17002


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日本語版最終更新: 2017年 01月 27日 金曜日 , S. HOSOKAWA