TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#1368/08-May-2017

Apple の Q2 2017 決算報告は一年前の四半期に比べて、私たちが気に入っているこのコンピュータ会社により相応しいものとなったが、それでもまだ少しどんよりしたところはある。Apple CEO の Tim Cook は四半期に一度の投資家向け電話会議の場を利用して、Apple の米国内での雇用創出を強調するキャンペーンを開始した。おそらくこれは、Apple 海外資金の本国への送金を現政権に認めさせようとする手段の一つなのだろう。先週は Google Docs に向けた大規模なフィッシング攻撃があった。Google が直ちに穴を塞いだが、やはり私たちも Google アカウントをセキュアにする対策をすべきだと Adam Engst が勧める。Microsoft が教育市場向けイベントを開催したが、特に Apple を標的とした発表について、中でも新バージョンの Windows と、新型 Surface ラップトップ、それと人気の Minecraft ゲームへの興味深い追加機能について、Julio Ojeda-Zapata が分析する。Geoff Duncan は寄稿記事で、Obama 時代のネット中立性を後退させようとする共和党の法案を概観する。最後に今週は iBooks Author Conference 入場パスが当たる DealBITS 抽選がある。今週注目すべきソフトウェアリリースは OmniFocus 2.9.1 と、OmniOutliner Essentials および Pro 5.0.3 だ。

記事:

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Apple の Q2 2017 業績、微増に留まる

  文: Josh Centers: josh@tidbits.com, @jcenters, Michael E. Cohen: mcohen@tidbits.com, @lymond
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

2017 会計年第2四半期の業績報告で、Apple は純利益 $11.03 billion (希薄化後1株あたり $2.10)、売上げ $52.9 billion を発表した。同社の売上げは、低調な前年同期の売上げ $50.6 billion よりも 5% 上昇した ("Apple、Q2 2016 で 13 年ぶりの売上げ減少を記録" 26 April 2016 参照)。

大きな知らせ - 文字通り - は Apple の保有現金で、これは $256.8 billion に膨れた - 1兆ドルの四分の一を超える。ひょとすると、Apple は、J.R.R. Tolkien の "The Hobbit" に出てくる同じ様な宝の山がある竜が占拠する山にちなんで macOS 10.13 Erebor を WWDC で発表するかもしれない。

他の良い知らせとしては、Mac は思っても見ない上昇を継続し、前年比 14% の売上げ増で、販売台数は 4.2 百万台に達した。Mac の販売は Apple の昨年の売上げの内 $25 billion を占める。

Services の売上げも再度 Apple の明るいそして光り輝くスポットとなり、前年比 18% 増のおよそ $7 billion であった。Cook はこの成長は主として、決済数が年間で 450% も上昇した Apple Pay と、売り上げが2桁成長した Apple Music 及び iCloud Drive 購読のお陰だとした。Apple CFO Luca Maestri は、Apple の目標は Services の売上げを 2020 年迄に倍増させることだと言った。これ迄の数四半期の Services 部門の並外れた成長度合いを見ていると、これは実際に到達可能だと思われる。

Apple の核である iPhone 事業に関しては、熱狂度は下がってしまう。売上げ増は記録したが、ほんの僅かである:前年比 1% 増で、販売台数は 50.8 百万台であった。Apple は iPhone 一台当たりでは儲けを増やしていることになる。と言うのも、同社は、昨年同期に比べると販売台数では 1% の 減少 を記録しているからである。Cook は Apple が製品構成の予測を誤ったと言った。iPhone 7 Plus は予測以上の人気であったと言うことで、それならば Apple が販売台数減にも拘らず売上げを増やしたことの説明にもなる。

悪かった側では、iPad 売上げの下降傾向は止まらず、前年比で 12% の下落で、Q2 2017 には 8.9 百万台しか売れなかった。何れにしても、Cook によれば、iPad 販売は引き続き下落したが、今四半期の結果は Apple の予測を上回ったと言う。CFO Luca Maestri はまた iPad の "供給上の制約" があったことを認めていたので、これも売上げ下落の一要因であった可能性はある。

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Other Products 部門は、Q1 2017 には大打撃を受けたが ("Apple、Q1 2017 の記録的業績で外見上成長に復帰" 31 January 2017 参照)、驚異の前年比 31% の売上げ増を記録した。これは、AirPods, Apple Watch, そして Beats ヘッドフォンといった製品のファンに対しては良い知らせであろう。そして Cook はこれらが成長の牽引力であったことも明らかにした。"過去4四半期でのウェアラブル製品からの売上げは、Fortune 500 の会社の大きさに匹敵する" と Cook は語った。

国際市場では、Apple は 14% の売上げ減少を Greater China 事業地域で経験したが、これは Americas での 11% の増加、Europe での 10% の増加、Japan での 5% の上昇、そして残りの Asia Pacific 市場でのとても健全な 20% の増加が無かりせば、かなりの懸念材料となっていたであろう。一方で、Apple は China でも Mac, Services, そして小売で2桁の売上げ成長を遂げている。Cook は Apple の China での業績は再度上向きに転じていることを強調して、China については "とても楽しみしている" ことに変わりはないと言った。

小売について、Cook は Apple Retail はその歴史の新しい局面に入ったと語った。具体的には、小売を率いる Angela Ahrendts の統率する新しい体験と新しいデザインを指す。Cook は Apple の Dubai における新しい店を取り上げたが、ちなみにこれは 495 番目の Apple Store の場所となる。Apple がその 500 番目の店についてお祭り騒ぎにするかどうかも興味を引くところではある。

Apple は現在の米国政府ともうまくやっていこうとする姿勢の様に見える。新政府はオフショア企業の利益に対する税金を減らす話をしている。Cook は、Apple が全米 50 州に於いて 2 百万の仕事を作ってきたことを強調し、そして Apple は昨年 $50 billion を米国のサプライヤーや開発者に支払ったことを付け加えた。"Apple は米国でしか生まれ得なかった会社である" と Cook は語った。この言い回しは、Apple が米国の労働市場に対する自らの貢献度を強調するキャンペーンの導入部から来ている ("Tim Cook、Apple の米国内雇用を強調、更なる増加を約束" 4 May 2017 参照。)

最後に、Apple は $250 billion の資本還元プログラムを $300 billion に拡大したが、そこには同社の株主に対する配当金の増額も含まれる。18 May 2017 に Apple の株主は一株当たり $0.63 の配当金 (前四半期の一株当たり $0.57 から 10.5% の増加) を受け取る。Maestri が言うには、Apple は配当金を毎年増やしていく積もりで、次の8四半期で $89 billion を株主に返す計画である。

結局の所、Apple の四半期業績は可もなし不可もなしの典型例である。同社の売上げも、販売成績も素晴らしくもなければ、惨めでもない、ただ単に OK なだけである。そして、この四半期のアナリスト電話会見も、あたかもそれを具現化した様に、何時もになく活気がなかった。

実際、我々はここ一年の毎四半期に観測してきた同じ劇的さに欠ける、うんざりする程一貫した兆候を見ている:iPad はジワジワと下落、Services は着実に上昇、そして予測不能な Other Products 部門といった所である。Apple の財務面の安全性は1兆ドルの四分の一という現金で保たれてはいるが、投資家は iPhone 成長の避けられない減速について長期的な心配はしているかもしれない。しかし、現時点では、株式配当の増加に彼らも満足しているであろう。

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Tim Cook、Apple の米国内雇用を強調、更なる増加を約束

  文: Josh Centers: josh@tidbits.com, @jcenters
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

Michael Cohen と一緒に Apple の Q2 電話会見を聞いていた時、Apple CEO Tim Cook が如何に Apple が米国 50 州に亘って 2 百万の雇用を生んできたかについて話しているのに私の耳はひきつけられた ("Apple の Q2 2017 業績、微増に留まる" 2 May 2017 参照)。この発言は、結果的には、遥かに大きなキャンペーンの始まりであったことが分かった。

Cook は、この 2 百万という数字を Jim "Mad Money" Cramer とのインタビューの間にも再三繰り返し、そして Apple の米国拠点の店やサプライヤーのついての話に長々と時間を割いた。Cook はまた Apple はその資金を比喩的な口のある (必要な) 所に投じていることにも言及した:米国内での先進製造技術を推進するための $1 billion のファンドである。Apple は最初の投資案件を今月下旬に明らかにするという。

Apple は何故こんな事をしているのか? Trump 大統領は、選挙期間中に製造業の職を米国内に戻す事を約束し、そして製造の大部分を China に海外移転させていることに対する自らの激怒の標的としてしばしば Apple を名指ししてきた。同時に、Trump は海外にある資金を米国内に送還させる会社を手助けしたいとも語ったことがある。これは Cook が擁護してきた大義でもある (Apple の税務状況に背景については "Apple、税慣行について召喚される" 24 May 2013 を参照)。

Cramer はすぐにそのつながりを描写して見せた:

つまり、それをやる時、政府はひょっとすると "そうか、そうか、Cook が自分の会社の資金 $1 billion を投じようと言うなら、乗ろうじゃないか" と言ってくれるのではないか、Trump 大統領は "俺たちは、彼に海外資金を送還して貰わねばならない。あの様な大金を海外に置いたままだと彼は何をするかは分かったもんじゃない。俺たちは、彼に税控除を与えねば" と言ってくれるかもしれないと言う目で政府を見ませんか? あなたは大統領と協力し、これらの一部でも実現すればさらに多くの雇用を作り出せると思いませんか?

Cook は、この先進製造技術基金は Trump 政権との交渉戦術の一つであるかもしれないことは否定せず、次の様に言った:"資金還流 - 実際には、総合的な税制改正こそが、この国の経済にはとても重要だと思う。" 事実、Cook は、この $1 billion は米国内にある Apple の金から来るもので、実際には借り入れしなければならいであろうとまで語った。

Cook は後に語った:

繰り返しになるかもしれないが、世界中のどこの国の政府とでも、同意出来るものと、同意出来ないものとがあり、妥協点を見出そうするものだし、同意出来ないことについては影響を及ぼすべく努力しようとするものである。もし自ら舞台に立たないと言うのであれば、それは最悪のシナリオだと思う。何故ならば、自ら発信しなけば、自らの大義にも貢献しないし、自らの観点にも何ら役立たない。

先進製造技術基金に加えて、Apple は米国内で提供する雇用の詳細な分類を含む新しい Web サイトを公開しており、そこには州に拠点を置く職数とアプリ数が州別に表示されている。

では、今後 Apple は自らの製品の多くを米国内で作り始めるのであろうか? 疑わしい。米国内で Apple が製造している主な製品は Mac Pro であり、これは高コスト、低生産台数の製品で、その上、他にも多くの問題を抱えている ("Mac の過失です: Apple、Mac Pro の失敗を認め、さらなる透明性を約束" 4 April 2017 参照)。

中国での生産には数多くの利点がある:低賃金、より多くの熟練工、そして、時には文字通り工場から通り一つを隔てた所にあるサプライヤーと言ったものである。しかし、最も重要なのは中国の緩い規制であろう。その一例は 2012 年の New York Times の記事にも記載されている

Apple の経営陣は、現時点では、海外に行くのは彼らの唯一の選択肢であると言う。元役員の一人は、発売迄にあと数週間と言う時点で iPhone の設計変更に対応するために同社がどの様に中国の工場に依存したかを語ってくれた。Apple は最後の最後で iPhone のスクリーンを設計変更し、組立てラインの組み直しを強制した。新しいスクリーンは工場に真夜中近くになって届き始めた。

この役員によると、工場長は敷地内にある独身寮にいる 8,000 人の作業員を直ちに起こしたと言う。授業員一人一人には、ビスケットとお茶が与えられ、持ち場へと配置され、そして 30 分も経たないうちに、面取りされたフレームにガラスのスクリーンを嵌め込む 12 時間シフトが始まった。96 時間以内に、この工場は日産 10,000 台を超える iPhone を生産していた。

"このスピードと柔軟性には息を飲むものがある"、この役員は言う、"これに対抗出来る米国の工場など無い" と。

Apple が米国でこんなことをやったら、決してタダでは済まない。役人も労働組合も支持してくれないであろう。そして、中国での巨大な製造能力を抱えていてすら、Apple が需要に対応するために苦闘をしいられることはしばしばある - AirPods を買おうとした人誰にでも聞いてみると良い。

しかしながら、Apple が少なくともその製造の一部を米国に移すことには戦略的利点があるかもしれない。支払いを巡る論争のせいで、Apple のサプライヤーである Qualcomm は Apple が iPhone を米国に輸入するのを阻止しようとしている。言うまでもないが、もし Qualcomm が勝つようなことになれば、Apple の事業に及ぼす打撃は計り知れないであろう。しかし、iPhone の一部分だけでも米国で生産されていれば、Qualcomm の脅しもこれ程深刻なものにはならないかもしれない。

更に、米国製の iPhone は、法律によって、労働者の権利、公正な報酬、そして安全措置は保証された労働力によって製造されるであろうし、そして、その全取組が高い環境標準で律せられるであろう。しかし、これらの要件の達成は安くはないので、米国製の iPhone は、現在の $650 から始まる価格よりももっと高くつくであろう。Marketplace の記事によれば、全コストは $2000 にも達すると言うが、全ての部品が米国で作られると言う前提下なので、現実的とは言えない。

皆さんは、米国で、或いは少なくとももっとマシな労働と環境保護を持つ国で製造された iPhone に対してもっと多く払っても良いと思いますか? そしそうなら、どれ程なら払っても良いと思いますか? ご意見は、この記事のコメント経由か、或いは我々の非公式の Twitter 投票で知らせて欲しい。現時点では、回答者のほぼ三分二が $50 から $100 程度なら余分に払っても良いとしている。

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DealBITS 抽選: iBooks Author Conference 2017 入場パスが当たる

  文: Adam C. Engst: ace@tidbits.com, @adamengst
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

iBooks Author を使って電子ブックや教材などを本格的に作りたい人ならば、テネシー州 Nashville で 10 月 12 日と 13 日に開催される iBooks Author Conference に参加してはいかがだろうか。会場は TidBITS Managing Editor の Josh Centers の自宅のすぐそばだ。

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セッションで扱われる話題は本のデザイン、EPUB と iBooks フォーマットでの出版それぞれの長所と短所、公正使用、iBooks Author と出版業界、といったものだ。このカンファレンスでは素晴らしいキーノート講演もある:

参加したいとお思いだろうか? そういう方は、2017 年 5 月 14 日の真夜中までに DealBITS ページで応募して頂けば[訳者注: 応募期間は日本時間で 5 月 15 日(月曜日)の午後 4 時ごろまでです]定価 $599.99 の iBooks Author Conference 2017 入場パス 2 枚のうち 1 枚が当たるかもしれない。ただし、旅費や宿泊費は自己負担となることに注意して頂きたい。寄せられた情報はすべて TidBITS の包括的プライバシー規約の下で扱われる。

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Google、フィッシング攻撃を阻止:自分のアカウントを調べよう

  文: Adam C. Engst: ace@tidbits.com, @adamengst
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

先週、巨大なフィッシング (なりすまし) 作戦がメールユーザーを狙った。中身は、既知の通信相手から Google Doc に加わるよう勧める招待状の様に見える。しかしながら、そのリンクされた Web ページは Google Docs の様に見えるが、実際にはあなたの連絡先に載っている人々へスパムを送りつけるアプリへのアクセスを許可するよう求めるものであった。

この攻撃はとてもうまく仕組まれており、暴露された情報も、例えばオリジナルのメッセージは hhhhhhhhhhhhhhhh@mailinator.com に送られ、あなたには BCC されていると言った、あったが多くの人が騙された。

Google は素早く対応を取り、このフィッシング作戦を1時間以内に不能にし、そして次の声明をリリースした:

我々は Google Docs をかたるメールからユーザーを保護する対策を取り、そして問題のアカウントを不能にした。我々はこの偽ページを削除し、Safe Browsing を通してアップデートを送出し、そして、悪用対策チームはこの種のなりすましの再発を防ぐ作業に取り組んでいる。ユーザーには Gmail でのフィッシングメールを報告するようお願いしたい。

その後、Google は以下の声明を出してフォローアップした:

我々は、皆さんがご自分の Google アカウントについて心配されているのを認識している。そして、その後の調査でもっとはっきりした説明も出来るようになっている。我々は、Google Docs をかたるメールスパム作戦からユーザーを守る対策を講じた。影響を受けたのは Gmail ユーザーの 0.1% 以下である。この攻撃からユーザーを守るための対策は、自動化したものと手動の組み合わせで行い、その中には、偽のページとアプリケーションの削除、そしてアップデートを Safe Browsing, Gmail, そして他の反悪用システム経由で送り出したことが含まれる。我々は、この作戦をほぼ1時間以内に阻止出来た。この作戦で、連絡先情報にアクセスされそして利用されたが、我々の調査ではその他のデータは暴かれていないことが判明している。この件に関して、ユーザーが更に為すべきことはない;自らのアカウントにつながっているサードパーティのアプリについて調べたいユーザーは Google Security Checkup を訪ねて欲しい。

Gmail ユーザーの 0.1% という数字は小さく写るかもしれないが、実際には 1 百万人を超す可能性がある。と言うのも、Google は Gmail には 10 億人のユーザーいると February 2016 に報じている。

Google が言うには、現時点で、ユーザーがこの攻撃から自分自身を守るためになすべきことは何もない。しかし、自分の Google アカウントにつながっているもの全てを確認するにはいいきっかけであることには違いない。

Google Security Checkup ページから入る。ここから、アカウント復元情報、接続された機器、アカウント許可、アプリパスワード、そして2段階認証設定を調べることが出来る。

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特に、Check Your Account Permissions では、見覚えのないアプリへのアクセスを削除するのをお忘れなく。アプリをクリックすると、それが自分の Google アカウントにアクセスするのを何時許したか、そしてそれがどの情報にアクセス出来るかに関わる更なる詳細情報が見られる。

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Check Your App Passwords では、パスワードの多くを或いは全てを無効にすることすら出来る。Google は自らの2段階認証システムをサポートしないアプリに対するパスワードを生成させてくれるが、iOS 8.3 かそれ以降、そして OS X 10.10.3 Yosemite かそれ以降での Google の名のついたアプリではその必要はない。同様に、iOS の Mail の中で Gmail を設定する場合も、アプリ固有のパスワードを必要としない。そして殆どの独立したアプリもここ数年間にアップデートされている。どうも、私は自ら作成したアプリ固有のパスワードを 2015 年以来どれも使っていないようなので、これら全部を削除しても問題なさそうに思える。

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メールメッセージからクリックして辿るメールや Web ページの両方で、とりわけパスワードや他の個人情報を要求している場合には、読んでいる内容を注意深く判断するのを強くお勧めすること除いて、この話の教訓とも言えるものがあるのかどうか私には定かではない。フィッシングメッセージには、まず間違いなく、ミススペル、文法間違い、或いは To や From 行には何らかの奇妙さがある - 大きな会社はこの種の過ちはしないであろう。もしメールメッセージで怪しげな感じがしたら、メッセージからクリックして進むのではなく、リンクされた Web ページへ手動で辿るべきである。

でも、あまり心配性にならないように。皆さんの Inbox に届くメールの大部分は全く無害なものであり、メッセージを開く度にフィッシング攻撃を心配するのでは、生きてなどいけない。

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Microsoft 新 OS とラップトップ、教育市場で Apple と Google を狙う

  文: Julio Ojeda-Zapata: julio@ojezap.com
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

テクノロジー界の巨人たちはもう何十年も教育市場でぶつかり合ってきた。

初めの頃、Apple が K-12 (幼稚園から高校まで) でも高等教育でも人のうらやむ立ち位置を保っていた。最初は Apple II が、後には Mac が、それを駆動した。けれどもその後安価な Windows ベースの PC によって不利な形勢に追い込まれた。それから、iPad により教室での Apple の復活が見えたが、その立場はまた Google と同社のウェブベース Chromebook からの挑戦を受けた。一方、Microsoft は虎視眈々と教育市場への再登場の計画を練っていた。

Redmond に本拠を置くこのテクノロジーの巨人が手の内を見せたのは 2017 年 5 月 2 日のプレスイベントで、今回ここではコンシューマとビジネスの領域が軽く扱われ、教育に正面から焦点が当てられていた。自然と簡潔になった基調講演では、主として教室での使用を意図した新型の Surface ラップトップ機と、こちらも基本的に生徒が使うことを意識して作られた新しいバージョンの Windows オペレーティングシステム、そして数多くの教育向けソフトウェアツールが発表された。

では、それらを一つ一つ見て行こう。結果として、Apple 製の教育向け製品を使っていたり薦めていたりする人にも、こちらの方面でどんなことが起こっているかの感じを掴んで頂けるだろう。

Surface Laptop -- 教育市場では、iPad も Chromebook もそれぞれの問題を抱えている。タブレット機として、iPad は物理的キーボードが統合されていないので、タイピングに少々難がある。価格も高い。一方、Chromebook はキーボードを備えていて価格も比較的安いが、iPad ががっしりしていて造りも素敵なのに比べればパワーが非力で安っぽいと感じる人が多い。

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そこで Microsoft は新型の Surface Laptop でこの双方の問題点を消し去ることを狙う。しっかりした造りのパワフルな PC で、伝統的な二つ折りの構造を採用している。

価格は $999 から、重量 2.76 ポンド (1.25 kg) の Surface Laptop はたくましい第 7 世代の Intel Core プロセッサを使い、宣伝によれば最大 14.5 時間のバッテリ寿命を誇り、13.5 インチで 3400 万ピクセルのタッチディスプレイは頑丈な Gorilla Glass 3 (教室での使用に必須) を纏う。Microsoft はこの "PixelSense" ディスプレイがあらゆるノートブック機の中で最も薄い LCD タッチスクリーンだと述べ、特定の状況下で 13 インチ MacBook Pro より 4 時間以上長くバッテリが保つと主張する。

美的な点を言えば、外面は陽極酸化処理の金属製で、ちょっと Apple 風の味付けで Burgundy、Cobalt Blue、Graphite Gold、Platinum の四種類の色合いが揃っている。内側では、この Surface Laptop はより温かい材質を使っていて、キーボードとトラックパッドの周囲はソフトなタッチの Alcantara 布地、これは Microsoft の Surface Pro タブレット機のキーボードカバーで使われているものと同じ、耐久性に優れ汚れの付きにくいポリエステル・ポリウレタン素材だ。

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この Surface Laptop は最も厚い部分でも 0.57 インチ (14.47 mm) と、従来型でないデザインを特長にした前回の Surface 機器からは大きな方針転換を見せている。これは、奇妙なヒンジ部分と取り外し可能なスクリーンを備えたごつい感じの Surface Book とも違うし、取り外し可能なキーボードと金属製のフリップアウト型スタンドを持つ Surface Pro タブレットとも違っている。

Windows 10 S -- Apple の iOS と Google の Chrome OS には使いやすくて管理もしやすいという定評があるが、そのための方法が両者で根本的に異なっている。

そして今、Microsoft が第三の選択肢を提供する。同社が Windows 10 S と呼ぶ単純化されたバージョンの Windows で、同社はこれを主に教室での使用に向けたものと意図している。その目的のため、機能にはいくらか制限がある。例えば、Microsoft のアプリストアから入手したアプリしか走らせることができず、従来型のデスクトップアプリで走らないものが数多くある。そのようにした理由は、Apple が Mac App Store に施したものと同じだ。つまり、ダウンロード用に提供されるアプリはすべてセキュリティの検査に合格しており、使われ方に均一性を提供する。いずれも、教室のテクノロジー管理者にとってはこの上なくありがたいことだ。ただ、Microsoft は過去にもアプリストア専用のバージョンの Windows を試みたことがあったが、あまり成功しなかった。

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Windows 10 S にはそれ以外にも重要な制限事項がある。Microsoft 自身の製品 Edge 以外をユーザーがデフォルトのウェブブラウザと指定することができないのだ。また、検索のプロバイダを Microsoft の Bing 以外に変更することもできない。

Microsoft は同社の Office アプリのフル機能版をアプリストアを通じて利用できるようにすると発表した。これまでは、アプリストアでは Office の機能限定版しか提供されていなかった。また、Microsoft は Edge ウェブブラウザに生徒を念頭に置いた変更を加え、タブをグループに分けて整理するためのスペースを追加した。これは、学校のレポートその他を書く際にテーマに分けて整理する際などに便利だろう。

テクノロジー管理者たち向けにもいくつか素敵なものが用意されている。例えば、どの Windows 10 S PC でも Windows 10 Pro にアップグレードできるオプション (ただしその後 Windows 10 S に戻すことはできない) や、USB フラッシュドライブに Windows 10 S 構成スペックを入れたものを挿入するだけで自動的に教室のラップトップ機をセットアップできるオプションがある。

Microsoft は Windows 10 S を自社のみに制限してもいない。Surface Laptop に加えて、Acer、Asus、Dell、Fujitsu、HP、Samsung、Toshiba その他のノートブック機も Windows 10 S を走らせることができる。報道によればこれらのマシンの中には $189 で手に入るものさえあるとのことで、それならば安価な Chromebook と全く互角な価格帯と言えるだろう。

Teams、Minecraft、さらにその先も -- Microsoft はこれまでハードウェア分野に拡張を続けてきたけれども、その中核はソフトウェア会社だ。だから、月曜日の基調講演で教育目的に適したアプリケーションの数々に焦点が向けられたのも驚くには当たらない。

その一つが Microsoft Teams で、これはもともとビジネス市場向けにリリースされたグループチャット用ソフトウェアであった。今回これを教育市場に提供するにあたって、Microsoft は「この Teams を教室のデジタルハブとして、教師や生徒が共同で作業し学べるようにしたい」と述べた。

Teams を教育向けにすることは Microsoft にとって重要な戦略だ。Google の生産性アプリに内蔵された強力な共同作業機能が、学校でもビジネスでも既に広く使われているからだ。それに加えて、ビジネスにおいても教育においても Slack などプラットフォーム非依存の製品がグループチャットを現代的な共同作業の重要な部分としつつあるからだ。

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また、Microsoft は Minecraft 関係の発表もした。人気のこの世界構築ソフトウェアを、同社は 2014 年に買収した。この中に、Microsoft は生徒に狙いを定めたコーディング機能を組み込もうとしている。Apple がコーディングアプリ Swift Playgrounds を位置付けるやり方と似ていなくもない。(2016 年 6 月 13 日の記事“iPad の上で、Swift を使って遊ぶ”参照。)

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この変更により、Minecraft が生徒向けコーディングプラットフォームの TynkerScratchX、それに Microsoft の MakeCode などと統合され、さらには大人向けのコーディングテクノロジーである JavaScript とも統合される。こうして、生徒たちは Minecraft の環境の中で、例えば建物を構築したりなどをするコードを書くことができる。この点も Apple が Swift Playgrounds でしていることとそれほど大きく違わない。ただ、Minecraft は既に学齢期の世代の間で絶大な人気を得ている。

Microsoft はまた、生徒たちを念頭に置いた「複合現実」を新たに押し出すと発表した。複合現実というのは、(ゴーグルを装着してシミュレートされた世界を進む) 仮想現実と、(例えば Pokemon Go のように、デジタルな構成物を現実世界に重ねる) 拡張現実とを組み合わせたものだ。例えば Microsoft の HoloLens ヘッドセットのような機器は、その種の混合体験を容易にすることを意図して作られており、Microsoft は今後もさらなる複合現実用ハードウェアを出す準備中だと述べている。(2015 年 1 月 23 日の記事“Windows ユニバーサルとなる... そしてホログラフィックにも”と 2016 年 6 月 17 日の記事“iPhone 上の仮想現実は非公式ながらもはや現実のものに ”を参照。)

それに加えて、Microsoft は教育内容の巨大会社 Pearson との提携も発表した。Pearson はさまざまの内容分野において複合現実のコンテンツを提供すると約束している。具体的には、健康、商業、歴史、STEM (つまり science, technology, engineering, mathematics) が挙げられている。

第三の選択肢 -- 学校における Windows PC の普及は今も続いているけれども、Microsoft は明らかに教育市場の中で Apple と Google に後れを取っていると感じてきた。

それに対する反応として、Microsoft は自らの中核製品の数々を、教師たちやその上級管理者たちにとって魅力あるパッケージになると信じるものへと変化させてきた。その結果として出したものが、パワフルで耐久性あるラップトップ機と、使い馴染んだオペレーティングシステムに使い易さとセキュリティを増したバージョン、それに、Minecraft だ!

否定的にものごとを見る人たちは、新型の Surface Laptop の価格が教育向けとは言えないと指摘するだろう。最低でも $999 というのは $200 かそこらで買える Chromebook に比べれば法外に高い。また、Microsoft が MacBook Pro との比較を述べ立てれば述べ立てるほど教育向けというメッセージが薄まる。MacBook Pro は、高等教育の場には相応しいかもしれないが、K-12 の教室ではその意味が減るからだ。

また、Microsoft はいったいなぜまた新たな機能限定版の Windows を出すのだろうかと戸惑う批評家たちもいるだろう。この会社は、そのブランドたるオペレーティングシステムの簡略化バージョンとして出した過去の二回の試み、Windows RT と Windows Starter Edition の体験から何も学ばなかったというのか?

けれども、今にも壊れそうな Chromebook と、キーボードのない iPad にうんざりした教師たちならば、Microsoft が出してくるものを真剣に検討するかもしれない。そして、もしもそれが競争を育むのならば、最終的に学校が勝者となることだろう。

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FCC と議会、ネット中立性の後退に向けて動く

  文: Geoff Duncan: geoff@tidbits.com
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

米国においては「ネット中立性」が長きにわたってインターネットの基本原理の一つであった。これはつまり、Comcast、Time Warner、Verizon などの ISP (インターネットサービスプロバイダ) はインターネットのあらゆる合法的な利用を 同等の 優先権をもって扱うべきであって、えこひいきを認めないという原則だ。合理的なネットワーク監理は許される。例えば乱用、不正使用、あるいは何かの問題に対処するために ISP が素早く運用上の決断を実行することはできる。けれども ISP が特定のアプリケーション (例えば Netflix や BitTorrent など) を格下げ扱いにしたりまたは遮断したり、あるいは特定のビジネスパートナー (例えば Sony や Microsoft など) のトラフィックを他の者より優先して扱ったりすることはできなかった。

それにもかかわらず、インターネットの歴史の大部分において、ネット中立性は米国の法律や法令に基づく確固とした法的根拠を一切持たなかった。Federal Communications Commission (FCC, 連邦通信委員会) は 2005 年に初めてネット中立性の原則を策定しようと試みたが、それは 2007 年に Comcast からの訴訟を受けて法的拘束力を持ち得ないものとなってしまった。FCC は 2010 年に Open Internet Order という形で二度目の試みをしたが、2014 年に今度は Verizon からの訴訟に敗れた。(2014 年 1 月 20 日の記事“ネットの中立性は低下したが、廃れてはいない”参照。)

そして 2015 年に、FCC は奥の手を取り出し、従来型とモバイル双方の ISP を 1934 年の Communications Act (電気通信法) の Title II 条項に基づく "common carrier" (通信事業者) と再分類した。(2015 年 2 月 7 日の記事“FCC、ネット中立性に本腰”参照。)FCC は common carrier に対しては何をするか命ずることが 可能 で、FCC は基本的に彼らがネット中立性の原則に従わなければならず、インターネットトラフィックでえこひいきをしてはならないと告げた訳だ。もちろん、ISP 各社は (再び) FCC 相手に訴訟を起こしたが、今回は敗れた。FCC が ISP を common carrier であると宣言する権限は 2016 年に支持され、その判決は今週になって実質的に再確認された

だからこそ全くもって皮肉なことなのだが、今回、Trump 政権の意向を受けた新しい委員長の下に、FCC は裁判所に支持されていたネット中立性の枠組みを大急ぎで取り消そうとしている。それだけではない。共和党によって制御された議会は、そもそもの初めからその法的根拠を作り出すために使ってきた FCC の権限自体を剥奪しようと動いている。つまり、将来の FCC にはこの「取り消し」を「やり直し」する権限がなくなるのだ。そしてこれらすべてのことが、「自由の回復」という名の下に行なわれようとしている。

FCC が提案したこと -- 新しくコミッショナーとなった Ajit Pai (彼はもともと 2012 年に Obama 大統領の指名により FCC に加わった) の下で、FCC はもう一度 ISP を "common carrier" でなく "information service" (情報サービス) と再分類することを提案している。これは実質的に、FCC がネット中立性の規制を成功裏に実装することを可能にした法的枠組みを取り消すことになる。

確かに、今日 common carrier に対して課せられている Title II の規制条項はインターネット時代に出来たものではない。この概念は 19 世紀初頭の運送業者から来たもので、その後 1930 年代には電信電話会社に、1980 年代には Ma Bell (AT&T とその傘下にあった各地の Bell 電話会社) による独占に対して、それぞれ適用されてきた。

けれども ISP を "information service" として再分類すれば、彼らが気に入らないトラフィック(例えば競争相手のもの)を自分たちのネットワーク上で格下げしたり遮断したりすることも、有料の優先スキーム(「優先レーン」と呼ばれるもの)を導入して Amazon、Netflix、Google、Facebook、Microsoft、Apple などメジャーなインターネット会社から料金を徴収することでそれらの会社のネットワークや顧客に優先的かつ拘束されないアクセスを与えるようにすることも、ISP が意のままにできるようになるだろう。

ネット中立性は必要なのか? -- FCC に加わって以来、Pai 委員長は一貫してネット中立性は問題点を生むだけの解決策だと主張し、アメリカの ISP はずっと実効あるネット中立性の規制なしに運用を続けており、消費者にもそのプライバシーにも広範囲に体系的な損害が及んだ証拠は何もないと述べ続けている。Pai 委員長は、そして ISP 各社の大多数も、トラフィックを格下げしたり遮断したりすることは、たとえそれが競争相手のものでも、何ら ISP の利益にはならないと論じる。結局のところ、消費者たちが 期待する オープンなインターネットとは、どんなネットワークのどんな合法的なコンテンツにもアクセスできることが肝心だ。もしも ISP がそれを妨げたなら、それは自らの競争力を減らすことになり、消費者からの反発によって自らのビジネスに損害を被ることになるだろう。要するに、Pai は政府による規制よりも市場の力の方がネット中立性をうまく扱えると考えているのだ。

Pai はまた、Title II 分類を排除することで、障壁が取り除かれ大手の ISP が例えば優先レーンのようなビジネス手法を通じて新たな収入源を開拓できるようになって、ブロードバンドの展開と米国内での競争が加速されると主張する。競争と収入が増せば、さらなる投資に魅力が増し、インターネット展開も加速するだろう。Title II 分類が 2015 年に発効して以来、12 社の最大手の ISP がブロードバンド投資を合計 360 億ドルも縮小し、20 社近くの小規模のプロバイダが開発を減速させたり中止したりしたと Pai は主張する。もちろん、少なくとも理論的には、投資が増えれば雇傭も創出されるはずで、この点は政権の主たる狙いの一つだ。

ネット中立性の支持者たちは、Pai の主張は筋が通らないと主張する。例えば、2015 年の Open Internet Order によってインターネットトラフィックの遮断や品質低下が禁止されたことでユーザーに損害が及んだとする Pai の提案書には証拠が一切示されていない。(とは言っても、現在 FCC は実例の呈示を要求しているところだ。)

ISP は過去に合法的なインターネットトラフィックを意図的に品質低下させたことが 実際に ある。最近十年間続いているネット中立性の議論が 2007 年に火蓋を切ったのは、Comcast が意図的に BitTorrent トラフィックを遮断し品質低下させたことが理由であった。2014 年には Verizon と Comcast が意図的に Netflix のピアリングポイントにおける品質を低下させ、Netflix が優先アクセスのための料金を支払うまでそれは続いた。

もっと多くの ISP 各社がこれに似たことを試さなかったのは、従来のネット中立性体制の下では法的状況が不透明だったからだと言えるだろう。けれども Pai が提起する「インターネットの自由を回復する」提案の下では、法的状況がすっかりクリアになる 可能性 がある。つまり、基本的に ISP 各社は何でも好きなことができる自由を手に入れるかもしれない。

競争力や消費者の反発が ISP が人気のサービスを遮断したり品質低下させたりすることを阻む力となるという議論にも、また疑わしいところがある。FCC 自身が 2016 年に調査した結果によれば、アメリカ人の 10 パーセントは現代的ブロードバンド (下り 25 Mbps、上り 3 Mbps と定義される) へのアクセスを持っておらず、田舎に住むアメリカ人、部族地域、合衆国海外領土ではそれぞれ 39、41、66 パーセントが持っていない。たとえ消費者たちがブロードバンドアクセスを持っていても、Center for Public Integrity が 2015 年に調査した結果によれば大多数のアメリカ人はサービスの選択肢を一つか二つしか持っていないという。これは、ISP 各社が重複を避けようとして地域を分割しているからのようだ。これらの数字は年々改善の兆しを見せているけれども、また多くの地域でモバイルインターネットが重要な因子となりつつはあるけれども、ブロードバンドの競争が米国の多くの市場で活気あるとか効果的であるとか言うのは難しいだろう。

その上、Pai コミッショナーは FCC が ISP のビジネス手法に規制を加えることを望まない。ISP による反競争的な行為や消費者のプライバシーへの侵害に対する苦情を処理するのは FCC でなく Federal Trade Commission (FTC, 連邦取引委員会) がすべきだと彼は見ている。(Pai の考え方についてさらに詳しいことは 2017 年 4 月 3 日の記事“共和党議員、FCC の ISP プライバシー規則を否決”参照。)

そして議会も? -- 2016 年の選挙の結果変わったのは FCC の委員長だけではない。大統領職も、また合衆国議会も、今は共和党が制御する。共和党の観点から言えば、2015 年の Open Internet Order を取り消しにすることは幸先の良いスタートだ。しかしながら、例えば 2020 年か 2024 年に、もしも大統領政権に変化があったとすれば、FCC は少なくとも理論的には単に 2015 年の Open Internet Order を「やり直し」して、ISP を再び common carrier と再分類できるだろう! それをするための FCC の法的権限は残るからだ。

そこで、上院議員 Mike Lee (共和党、ユタ州) が提起したのが "Restoring Internet Freedom Act" (インターネットの自由を回復する法律) だ。全文はまだ発表されていないが、その要点は ISP を common carrier と再分類する権限を FCC から剥奪することにある。この法案には Ted Cruz や Rand Paul など共和党の元大統領候補も含む重要人物たちが共同提案者に名前を連ねているが、まだ議会に提出されるまでには長い道のりが残っている。

次は何が起こる? -- FCC は、2017 年 5 月 18 日に Restoring Internet Freedom NPRM (Notice of Proposed Rulemaking) への最初の投票を行なう。いったんそれが済めば、2017 年 7 月 17 日まで公開意見聴取の期間となり、その後は一ヵ月間の返答期間が続く。2015 年の規則策定提案の際にはあまりにも数多くの意見が寄せられ、システムが何度もクラッシュしたほどであった。しかしながら、FCC は既にシステムを更新した(さらには大量のコメントを受け付けるための API もある)と述べているので、今回はシステムの挙動が改善されるかもしれない。でもそうでないかもしれない。実際、コメディアン John Oliver のネット中立性についての番組gofccyourself.com へのカスタムリンクが付いていて、それが FCC のコメントページへリダイレクトされるようになっており、その結果あまりにも多くのコメントが殺到したので既に FCC のサイトは一度ダウンしている。+Express リンクをクリックすればあなたのコメントを書き込める。

しかしながら、前兆は既に見えている。コミッショナー Pai は、既に FCC の 2015 年の Open Internet Order を後退させられる得票を得ているからだ。なので真の問題点は、はたしてどのような規制の枠組みがそれに置き換わるのか(あるいは何の規制もなくなるのか)だ。2015 年の Open Internet Order をどのような形で押し戻すにせよ、ほぼ間違いなくネット中立性の支持者たちから法廷での挑戦を受けることになるだろう。けれどもおそらく彼らの挑戦は苦戦に陥るだろう。裁判所は、これまでほぼ例外なしに common carrier の分類については FCC に判断を委ねてきたのだから。

その一方で、ISP 各社がこぞって新しいビジネスモデルの実験を始めることは想像に難くない。具体的には、有料での優先扱い、各種のデータ量上限で提携会社の除外扱い、追加料金を支払わない一流サービスに対する妨害、さらには自社の業務に害を与えると彼らが考えるサイト、アプリ、サービスなどの遮断やアクセス制限さえも考えられるだろう。

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TidBITS 監視リスト: 注目のアップデート、2017 年 5 月 8 日

  文: TidBITS Staff: editors@tidbits.com
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

OmniFocus 2.9.1 -- The Omni Group が OmniFocus 2.9.1 をリリースして、バージョン 2.9 (2017 年 4 月 17 日の記事“OmniFocus 2.9”参照) で導入された新しいデータベースフォーマットへ移行した後でアーカイブ機能が使えなくなったバグを修正した。このタスク管理アプリはまた、添付ファイルを追加した日付を親行の Added カラムに正しく表示するようにし、同期を無効にした場合にデータ喪失の可能性について警告するようにし、クラッシュ二件を修正し、さらにローカライズ版を更新している。(Omni Group ウェブサイトでの新規購入は Standard 版が $39.99、Pro 版が $79.99、Mac App Store では Standard 版が $39.99、アプリ内購入で Pro 版にアップグレード可能、29 MB、リリースノート、10.10+)

OmniFocus 2.9.1 へのコメントリンク:

OmniOutliner Essentials および Pro 5.0.3 -- The Omni Group がバージョン 5.0.3 の OmniOutliner EssentialsOmniOutliner Pro をリリースした。Launch Services が OmniOutliner を .ooutline ファイルを開くデフォルトアプリとして(他にどんなアプリがインストールされていても)認識するようにした、メンテナンス・アップデートだ。このアウトライン作成および情報整理アプリのいずれの版も、矢印キーで行を移った際にスタイル属性が更新されなかったバグを修正し、古いバージョンの Excel からデータをペーストする際に PDF 添付ファイルになってしまわないようにし、またカラムの Autosize 設定に関するいくつかの問題点を修正している。

OmniOutliner Pro 専用のアップデートもいくつかある。カラムのリサイズに関するいくつかのバグを修正し、Column Titles スタイルの背景色を変更する際の問題点を解消し、プレインテキストやリッチテキストのファイルから読み込んだ際にサイドバーが正しく使われるようにし、キーボードショートカットリストでセクションを折り畳んだ際に起こったクラッシュを修正している。

OmniOutliner Essentials の価格は $9.99 (OmniOutliner のどの旧バージョンからでもアップグレード料金は $4.99) で、OmniOutliner Pro は $59.99 (アップグレード料金は $29.99) だ。OmniOutliner 5 は Mac App Store から無料でダウンロードでき (2 週間は無料で試用可能) Essentials と Pro の機能のロックをそれぞれ $9.99 と $59.99 で外すオプションがある。(Essentials の新規購入 $9.99、Pro の新規購入 $59.99、アップグレード $4.99/$29.99、26.6 MB、リリースノート、10.11+)

OmniOutliner Essentials および Pro 5.0.3 へのコメントリンク:


ExtraBITS for 8 May 2017

  文: TidBITS Staff: editors@tidbits.com
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

今週の ExtraBITS は二件のみだ。人気ある DVD リッピングアプリ HandBrake が一時的にマルウェアに感染し、Apple が iPad Pro 用の Smart Keyboard で拡張修理プログラムを開始した。

HandBrake アプリがマルウェアに感染 -- DVD リッピングアプリ HandBrake の開発者たちが、ダウンロード用ミラーサーバの一つで攻撃者がこのアプリのコピーにマルウェアを埋め込んだという警告を発した。そのサーバは既に停止しているが、もしあなたが 2017 年 5 月 2 日 14:30 UTC から 2017 年 5 月 6 日 11:00 UTC までの間に HandBrake をダウンロードしたのならば、感染している可能性がある。HandBrake フォーラムに、あなたの Mac が感染しているか否かを確認する方法と、感染ファイルを削除する方法の詳しい説明がある。HandBrake の開発者たちが Apple の開発者証明書でアプリに署名を入れていさえすれば、今回の攻撃は起こらなかったはずだ。Apple も XProtect を更新して、今後は Trojan OSX.Proton.B に感染したファイルをダウンロードできないように対策を施した。

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Apple、iPad Pro 用 Smart Keyboard で修理プログラムを開始 -- Apple が「機能上の問題」があったとして iPad Pro 用の Smart Keyboard の拡張修理プログラムを開始した。キーが押されたままで打ち続ける、センサーに問題が起こる、磁力式コネクタが正常に働かない、接続が不安定になる、キーが反応しなくなる、といった問題があるという。9.7 インチおよび 12.9 インチの iPad Pro モデル用の Smart Keyboard が対象で、保証期間を二年間延長して購入後三年以内の製品を無償修理対象とする。今回のプログラムの対象となる Smart Keyboard に対する交換品を購入済みの人には、Apple が返金をする。Apple からの連絡が届かなかった場合は、Apple Store または Apple Authorized Service Provider に連絡するとよい。

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日本語版最終更新: 2017年 05月 12日 金曜日 , S. HOSOKAWA