TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#1382/21-Aug-2017

iOS 11 の新機能の中で最良のものの一つが、命を救う可能性を持つ Do Not Disturb While Driving 機能だ。Josh Centers がその動作の仕方を解説する。また今週号ではセキュリティ担当編集者 Rich Mogull が iPhone で顔認識機能が Touch ID を置き換えるかもしれない問題について考える手掛かりを提供し、Marc Zeedar が印刷本のデジタル版を作製するためにデザインされた書籍スキャナ CZUR M3000 をレビューする。今週注目すべきソフトウェアリリースは CleanMyMac 3.8.6、Alfred 3.4.1、Mactracker 7.6.6、Bookends 12.8.3、それに Microsoft Office 2016 15.37 だ。

記事:

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iOS 11 で Do Not Disturb While Driving 登場

  文: Josh Centers: [email protected], @jcenters
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

iOS 11 をインストールすると、これは現時点では公開ベータの形で入手可で September 2017 には一般向けにリリースされると見られているが、あなたの iPhone が車の中でとても静かになっていることに気づかれるかもしれない。これは iOS 11 の中の Do Not Disturb While Driving と呼ばれる新機能のお陰である。Apple はこの機能をデフォルトで有効にしている。[訳者注:日本語版では、この機能は「おやすみモード」> 運転中の通知を停止 となるものと見られている。]

手短に言えば、Do Not Disturb While Driving は、車を運転中に自動的に有効になり、iPhone 上での通知を阻止し、そして名前の通り、駐車するまで iPhone を使って出来ることを制限する。

下記の不注意運転の統計を見て欲しい。そうすれば何故 Apple がこの機能を搭載しようと思ったかがお分かりになるであろう。U.S. National Highway Traffic Safety Administration の推定によると、660,000 の運転者が日中に運転しながら携帯電話を使っているという。2015 年だけで、不注意運転により 391,000 の人が負傷し、そして 3477 人が亡くなっている。スマートフォン市場での iPhone の 30 から 40 パーセントのシェアを考えると、議論の余地はあるかもしれないが、iPhone はこの年だけで少なくとも 100,000 の負傷と 1000 の死に対する何らかの責めを負うと言えるであろう。これは、テック業界報道でよく見られる取るに足らない事での大騒ぎによりも遥かに具体的な問題である。

Apple が最初に Do Not Disturb While Driving を WWDC で発表した時 ("iOS 11、多くの細かな点で賢くなる" 5 June 2017 参照)、車の機能に関する Apple のムラのある実績に鑑み私は少々懐疑的であった。CarPlay は未だに離陸出来ておらず、それが入手可の時であっても、とてもまともと言えるものではなかった ("CarPlay による iPhone/自動車統合、限定的で誤作動もある" 18 January 2016 参照)。理屈の上では、Maps があれば駐車場の中で自分の車を探すのを自動的に手伝ってくれるが、それもその車に内蔵の Bluetooth があればの話である - これは後付けの機器では動作しない。

驚きかつ嬉しいことに、Do Not Disturb While Driving は iOS 11 ベータを私の iPhone 7 Plus に載せた状態でも自動的に有効化された。この機能は、Bluetooth 接続か、Wi-Fi 信号の Doppler 効果に依存して動きを検出する。

この機能の有効化は Settings > Do Not Disturb > Activate で変えられる。設定は Automatically (iPhone が動きを検出した時 Do Not Disturb While Driving が有効化される), When Connected to Car Bluetooth, 或いは Manually の中から選べる。もし、あなたも配偶者も iPhone を持っており、一緒にドライブすることも多いのであれば、設定を色々いじってみて同乗者にとって何が一番合っているかを見つけ出す必要があるかもしれない。

Do Not Disturb While Driving を手動でオンにするために、Apple はオプションのボタンを Control Center に提供しているが、デフォルトでは見える様になっていない。このボタンを Control Center に追加するには、Settings > Control Center > Customize に行く。(新しい Control Center については、近刊の "Take Control of iOS 11" で更に詳しく解説する。)

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Do Not Disturb While Driving が有効になっている間は、iPhone で出来ることは限られるが、Siri は動作する。見られるのはただ一つの通知だけで、そこにはこの機能がオンになっていると表示されている。この機能を不能にするには、この通知をタップし、"I'm Not Driving" 又は "Disable Do Not Disturb While Driving" のどちらかを選択する。或いは、もしあなたが同乗者ならば、Home ボタンを押して "I'm Not Driving" をタップすることも出来る。しかし、それが限度である:一旦 Do Not Disturb While Driving がオンになると、iPhone は通知を受け取らないだけでなく、Home 画面, Widget 画面, Control Center, 或いはカメラにもアクセス出来なくなる。

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しかしながら、もしオーディオ再生を旅を始める前に開始していれば、Lock 画面のメディア制御を使って操作出来る。進路指示もまた通常通り働く - Google Maps は音声だけの進路指示、Apple の Maps アプリは音声進路指示に加えて Lock 画面上に映像を提供する。しかし、運転中に何らかの操作をする必要が出た場合は、Do Not Disturb While Driving をオフにしなければならない。

CarPlay を使っていれば、それはそのまま機能すると報じられているが、通知は阻止されるであろう。私の運転する車はどれも CarPlay をサポートしていないので、私には確かめる術がない。

あなたが運転中に誰かがメッセージを送ると、自動化された返事を受け取る。その内容は、デフォルトでは:

Do Not Disturb While Driving をオンにして運転中です。このメッセージは目的地に着いてから見ます。(通知は受けないようになっています。もし緊急の場合は、"緊急" として返事を貰えば、通知は元のメッセージ付きで通達されます。)

このメッセージの最初の文は Settings > Do Not Disturb > Auto-Reply で変更出来る。しかし、後半の文は変更出来ない。

後半の文の内容通り、もし相手が "緊急" を付けて返事をすると、元のメッセージは強制的に沈黙の壁を通り抜け通達される。

デフォルトでは、Messages が自動的に返信するのは好みの連絡先だけであるが (誰かを追加するには、Contacts か Phone でその人に行き、下にスクロールし、Add to Favorites をタップする)、それも Settings > Do Not Disturb > Auto-Reply To で変更出来る。

この抜け道は iOS 内蔵の Messages アプリでしか働かない様だが - SMS 及び iMessage の両方 - 将来は Apple が開発者にこれに対するサポートを他のメッセージアプリに組み込ませるのではなかろうか。

総じて、私は Do Not Disturb While Driving で私の通常の活動が妨害されるとは感じなかった。実際、緊急であった試しなど一度もなかった通知から解放されることで運転はより平穏になった - 問題なのは、通知を受け取ること自体ではなく、それにより自分が何をする必要があるのかを考えることの方である。そして、その様な通知について運転中に安全に出来ることなど何もないので、目的地に着いた後で、通知がどっと流れ込んでくることは何ら問題ではない。

一番大事なことは、Do Not Disturb While Driving が、皆さんと他の運転者の両方が目の前の道路に集中する手助けをすることで、負傷や死亡事故を減らせる可能性をもたらすことである。iOS 11 が普及するにつれて、これらの悲惨な不注意運転の統計数値が減るのかどうか見極められるのを楽しみにしたい。

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実現しそうな Apple の "Face ID" テクノロジーに備える

  文: Rich Mogull: [email protected]
  訳: 清水 史彦 <qff01604@nifty.com>

私たちの iPhone や iPad 上には、指紋センサーが、あたかもずっと前からあるように思われるが、Apple が Touch ID を発表したのは、ほんの 4 年前であった。そして、Touch ID は、私たちが、自分のデバイスをどのようにしてロック解除するかに関する当然の思いを、永遠に変えてしまった。(指紋スキャナがどのように動作するかに関するさらなる詳細については、2013 年 9 月 10 日の私の記事、"指紋スキャン認証について Q&A" を見ていただきたい。) Touch ID は、iPhone を手に取るのと同じくらい使いやすいオプションによって、iPhone を日常的に使うユーザーのセキュリティを高めた、密かな小さなイノベーションであった。

Touch ID の真のイノベーションは、スマートフォンに指紋リーダーを加えたことにあったのではない。Apple は、これを行った最初の会社では決してなかった。だが、Apple が、Touch ID を、iPhone のハードウェア、キーチェーン、そして、長いパスコードに結びつけたやり方には、真のイノベーションがあった。Touch ID はパスコードを置き換えるわけではなく、パスコードを補完する。基本的には、指紋は、パスコードをロック解除する。このことによって、アプリの全てのパスワードを格納しているiPhone とキーチェーンの両者が、同様にロック解除される。

こうしたこと全てが、暗号化と鍵の管理を扱う A7 チップ、後に A-seriesチップ内に統合された Secure Enclave コプロセッサに組み込まれた、特別なセキュリティ・ハードウェアによって管理・保護されている。指紋はデバイスから離れることはない。いや、指紋は、デバイスから離れることは できない のだ。そして、指紋自体は、Secure Enclave 以外では、決して必要とされないし、使用されることもない。

結果として、iOS ユーザーは、強力なパスコードによるセキュリティを、パスコードを全く使わないという便利さと共に得ることができる。確かに、Apple は実際、ユーザーに時々、そして、ある条件のもとで、パスコードを入力するよう要求する。だが、全般的に見れば、日常的な使用においては、テキスト・メッセージに応答するのに、iPhone をロック解除しようと思うたびに、6 文字以上の文字を入力することに思い悩む必要はない。Touch IDの主として不都合な点は、これが、iPhone の前面において物理的なスペースを必要とするという点である。Touch ID がなければ、そのスペースは画面が「自分の土地」として使えることになるのであるが、実際にはそうなっていない。

仮想の Apple 製品についてコメントするのは、通常、危険を伴うが、Appleは最近、そして、明らかにうっかりして、近日公開予定の HomePodスマート・スピーカー用のファームウェアを発表した。このファームウェアの発表は、その他の近日公開予定の製品や技術に対する言及に満ちていたので、この発表によって、Apple が、Touch ID センサーではなく、顔認証に基づく新型 iPhone を発表する可能性がかなり高まっている。

顔認証は、全く異なる類の生体認証技術であり、歴史的に、指紋リーダーよりも実装がはるかに難しいとされている。指は、濡れたり、汚れたり、傷付いたりするが、現代のセンサーは、単に指紋の盛り上がっている部分や渦巻き模様だけでなく、もっと多くのものを頼りにしているうえ、iPhone のようなデバイスは、複数の指紋を格納することができる。

朝、鏡を覗いた人なら誰でも言えるように、顔は、一日を通じて変化する。私たちは、眼鏡をかけ、照明の状態が異なる場所に移動するし、定期的に髭剃りをしない人もいる。さらに悪いことに、この自撮りの時代においては、高解像度の私たちの顔写真が、インターネット上に溢れている。そして、多くの人たちが高品質のプリンタを持っている。ハッカーたちは、最近、Samsung の顔認証システムを、写真とコンタクトレンズで破ったところだ。

実現する可能性のある "Face ID" が、どのように機能するのか私には分からないが、もし、Apple が、顔認証を iOS のセキュリティの兵器庫に加えるのであれば、私は、自分が何を期待するかよく分かっている。もし、私たちが、Apple がこうした推移を通常どのように扱うかを考えるなら、それがどのようなものになるだろうかということについて、ある種の推測を行うことができる。重要なのは、 正確さ ではなく、 等価性 を評価することだ。私たちは、 Face ID (差し当たり、私たちは、この名前を受け入れることとする) が、Touch ID と正確に同じように動作するかどうかは気にしなくてよい。私たちは、単に、Face ID が Touch ID に肉薄しているか、あるいは、他の点で、なお一層優れている必要があるだけだ。

誰かが、あなたの写真が画面に出ている iPad を掲げて、あなたの iPhoneをロック解除する (正直になろう。これが、私たちがみな試すであろう最初のハッキングだ) という世界について、パニックを起こし始める前に、この問題と、もし、Apple が実際に Face ID を発表するのなら、何を期待すべきかについて、じっくり考えてみよう。

Face ID は Touch ID と同じくらい安全か? -- この問いに対する答えは、単なるイエスかノーかにはとどまらない。今日の Touch ID の安全性を見ると、もし、Face ID が姿を見せるのであれば、私には、考慮すべき 3 つの側面を見て取ることができる。

Face ID は、Touch ID と同様に有能か? -- 前述したように、Touch IDの類まれな能力は、これによって、大抵の場合、パスワードを全く使用しないのと同等の便利さで、ユーザーが、強力なパスワードを使うのを可能にしたことであった。これが、Touch ID と、かつての電話ベースの指紋アプローチとの間における、最大の差異化要素の一つだ。すなわち、指紋とパスコードとの調和である。使いやすさという点については、4 つの基準に焦点を当てるべきだ。

成功を決定づけること -- Face ID が現実のものとなれば、多くの記事が、Touch ID との違いの全てについて焦点をあてるであろう。多くの人たちが、Face ID が、正確に同じように動作しないと文句を言うであろう。そして、多くのセキュリティ研究者が、Face ID を出し抜くやり方を見つけるであろう。だが、本当に重要なのは、Face ID が同じゴールにたどり着くかどうかだ。

すなわち、そのゴールとは、_大抵の場合、パスワードを全く使用しないという便利さと共に、ユーザーが強力なパスワードを使うことを可能にすることだ。_

Face ID は、Touch ID と同じである必要はない。現実世界での使用において、満足のいく程度に同等に機能する必要があるだけだ。私は、Face IDが、未来の iPhone に姿を見せることに賭けるつもりはないが、もしそうなれば、全般的に見れば、Face ID は、Touch ID とちょうど同じくらい良いということを、Apple が確実にするであろうということには賭けるつもりだ。Face ID を搭載した iPhone が出荷される際には、Face ID は、騙すのが同様に、あるいは、もっと難しく、Secure Enclave に結び付けられ、極めて高速で、そして、スマートフォン・ベースの顔認証に対する以前の試みを邪魔した、現実世界の状況の大部分において、動作するであろう。

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CZUR M3000 は安価で信頼できる書籍スキャナ

  文: Marc Zeedar: [email protected]
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

子供のころの私は本の虫で、ほとんど一日に一冊のペースで本を読んでいた。外国に住んでいて英語で書かれた本を見つけるのが難しかったので、見つかればどんな本でも貪り読んだものだ。当時の私はコンピュータについて全く何も知らなかったけれども、何らかのデバイスを使ってこの世にあるすべての本を手にできたらなあと夢想していたことだけははっきり覚えている。

今日では、その夢が現実に近づきつつある。テクノロジーは現存しているが、知的所有権というものが私たちを行き詰まらせている。デジタル形式で入手不可能な本は何百万冊もあって、弁護士たちが我が物顔でいる限り、その多くは将来も決してデジタル形式にならないかもしれない。それが私には苛立たしい。私はデジタルに読書する方がずっと好きだからだ。デジタルな本は軽くて読み易く、ページが湾曲せず真っ平らで、一定した明るさを持ち、調節も可能で、好きなだけメモの書き込みもできる。その上、一度に何千冊も iPad に入れて持ち運ぶことができる。

実際のところ、私はデジタル本が好きなあまり、数年前に自分が持っていた印刷本の九割を近所の図書館に寄贈するという大胆な行動に打って出た。その結果 72 インチ幅の本棚が 10 個も空になった。ほとんど丸々一部屋分の空きスペースができたのだ! iPad が登場して以来の五年間で、自分が印刷本を一冊も読んでいないことに私は気付いた。そう、読みたい気持ちにさえならないと自分で分かっていた。自分が持っている本を(例えば "The Hobbit"、これはあの最初の映画が登場するより前から持っていた)もう一度読み返したい気持ちになれば、私は単純にデジタル形式の本を買い直した。

特に気に入っている少数の印刷本は手許に残したので、今も私はおよそ千冊の本を持っている。でも、これらの本をどうすればデジタル化できるのか、その方法を見つけ出すことが私の長期的目標だった。

最初の試み -- 数年前に私が最初に試したのは、フラットベッド・スキャナを使って本をスキャンすることだった。これは実際うまく行った。2ページをスキャンしたものを分割するためのソフトウェアを自分で書いて使ったことも大いにそれに寄与した。スキャンした画像をすべて Adobe Acrobat Pro に取り込んで、それらを一つの PDF ファイルに統合し、そのテキストを OCR にかけてすべてを検索可能にした。

ただ、問題はスキャン作業があまりにも遅いことだった。スキャンそのものに一ページあたり 30 秒ほどかかる上に、次のページへめくる時間も必要で、本を正しく位置取りしてから次のスキャンに移ることになる。一冊の本を処理するのに 2 時間近くかかることが普通で、とても退屈な上に、長時間同じ姿勢を続けるので体が痛い。その上、スキャン作業が済めば、その次にさまざまな後処理を施す必要もあった。

他の解決策はないものかとインターネットを探し回った結果、書籍スキャナというものはとてつもなく高価だという事実に愕然となった。ハイエンド側では、図書館などで使われるプロフェッショナル級のマシンが $100,000 以上もする。ローエンド側では、信頼性に疑問を持たざるを得ない寄せ集めで作ったような感じのデバイスがあったが、それでも価格は何千ドルもした。

最善の解決策は最も単純な一枚給紙のスキャナを使うことのようで、どうやらその方法で素晴らしい結果が得られるようだった。ただしそれは もしも 本の背綴じ部分を切り落としてすべてのページをバラバラにする気があるならばの話だ。私にはそんな気はなかった。

その後、自分でハックした方法をいくつか試してみた。デジタルカメラを使って本のスナップ写真を撮り、それをもとに処理を施す、間に合わせの方法を考えたのだった。

けれども問題はカメラではなかった。問題は本そのものにあった。完璧に装丁された書籍は平らに保っておくようにはデザインされておらず、本のページをめくって行くうちに左右の側にあるページ番号が自然とずれてきて、高さが揃わない。何らかの方法でしっかり圧力をかけてページが平らになるようにしない限り、湾曲したページや揃わないページによるあらゆる種類の歪みに悩まされることになってしまう。

結局私はあきらめた。

CZUR 登場 -- 最近になって、たまたま Amazon に来ていた私は何かを目にしたきっかけで、安価で使い物になる書籍スキャナを探してそのままになっていたことを思い出した。大して期待もせずに "book scanner" とタイプしてみると、驚いたことにいくつか入手できるものがあり、価格も以前に比べて劇的に安くなっていた。

ローエンド側では、$100 以下で手に入るオーバーヘッド・スキャナがいくつかあった。ただ、いずれもソフトウェアやサポートの面では大して備えておらず、ほとんどは Mac 互換でなかったし、自分のカメラで適当に撮影するのとあまり違わないものだった。カメラの方がきっと画質も良いだろう。

その次に見つけたのが、CZUR M3000 Professional Book Scanner だ。これはもともと Indiegogo プロジェクトとして始まったものらしく、今は正規の製品だ。CZUR の価格は $399 でそれほど安価とは言えないが、プロフェッショナル向けの製品に比べれば手頃な価格だ。私の考え方は、これを使ってもしも 400 冊の本をスキャンできるなら、一冊あたり一ドルを払っても文句はないというものだ。たとえこれらの本すべてがデジタル版で入手できたとしても、買い直すよりずっと安く済む。でも、たとえスキャンする本がたった 100 冊だったとしても、私の手作業にかかる時間を考えれば、当然ながらこのスキャナを買う価値はあるだろう。

この CZUR は中国の新興企業の製品で、ハイエンドとローエンドが奇妙に入り混じっている。例えば、製品の梱包は行き過ぎと思えるほど精巧に出来ている。Apple の梱包さえ見劣りするほどだ。USB のコードさえ小さなラベル付きの箱に入れられて、その箱がまた別の箱の中のスロットに収められている。でも、他のパーツは原始的に見える。ソフトウェアの挙動は、控え目に言っても何だか変だ。でも、良い知らせがある。 ちゃんと動く のだ。

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ハードウェアについて言えば、この CZUR は単純なオーバーヘッド・スキャナだ。LED 照明が内蔵されていて対象物を照らし、Sony 製の高画質 16 メガピクセルカメラが付く。(充電可能電池を内蔵した追加の LED 照明装置も付属しているが、何のためにこの追加照明を使うのか私には分からなかった。) また、必要なコントラストを得るための黒いゴム製の下敷きマットと、奇妙な形をした黄色い親指カバーが2個、このカバーを着けて本のページを押さえて撮影すると、CZUR Scanner アプリが黄色い指の部分を識別して自動的に画像から消してくれる。

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最も重要な部品として、ケーブル付きボタンが2個付属する。片方は手で、もう片方は足踏みペダルでボタンを押すようになっている。(ただし一度にどちらか片方しか接続できない。) 本を開いて押さえるのに両手を使っている間、素早くページをスキャンして行くにはこの足踏みボタンが 素晴らしく うまく働く。

見てそれと分からないハードウェアとして、マイクロフォン (セットアップの際にモバイルアプリが Wi-Fi パスワードを音声で送信し、スキャナはこのマイクロフォンを使ってそれを受信する) と、本のページの湾曲具合を CZUR が探知するためのレーザーも付いている。

CZUR はスキャンの結果をワイヤレスに CZUR クラウドへ送信するため Wi-Fi に対応している (クラウド上に無料で 10 GB のアカウントが与えられる) が、そのセットアップがあまりにもややこしく、ソフトウェアの機能があまりにもお粗末なので、誰もが自然とこの方法をあきらめて USB 経由でコンピュータに接続したくなるだろう。

このクラウドの厄介な点の具体例を挙げよう。CZUR Cloud という名の iPhone アプリでは、新規のクラウドアカウントのセットアップができない。なぜなら、そのためのフィールドの一つが "verification" (検証) という名前だが、そこに何を入力すればよいのか全く分からない。結局私はウェブサイトへ行ってそこで新規アカウントをセットアップしたが、その際に CAPTCHA 画像が示されてそれを読み取って文字列を入力させられ、この文字列が "verification" だと分かった。でも、モバイルアプリの中に CAPTCHA 画像は表示されない!

CZUR Cloud アプリのもう一つの問題として、スキャンしたものを削除できる手軽な方法がない。CZUR ウェブサイト上でクラウドアカウントにログインすることができ、そこからスキャンを削除することができるが、ただ、そこには酷いバグがある。選択して いない サムネイルが削除されて、選択したサムネイルが削除されないのだ。悪い体験をした以上、私はクラウド機能には一切手を出さないことに決めた。

本をスキャンする -- 私がいろいろ試行錯誤した内容をここでお話ししても皆さんを退屈させるだけだと思うので、ただ CZUR Scanner ソフトウェアではいくらかの調整が必要だと言うに止めておきたい。説明書はかろうじて英語と言える程度のもので、時には全く意味を成さないこともある。例を挙げよう:

スキャンする題材以外の何を「プレビュー領域」にあってはいけません。またはアルゴリズムを干渉しスキャン効果を影響します。例は「手」や USB ボタンの「線」や「携帯電話」や「ペン」など。

ご覧の通り、確かに理解は可能だが、単純に「スキャン領域にはスキャンするもの以外を置いてはいけません」と言えばよいものを、わざわざ解読不能に近い表現にしている。説明書の内容が少ないことを、ありがたいと思うべきなのかもしれない!

CZUR Scanner のインターフェイスは標準的なものではない。ダイアログにはすべて OK ボタンでなく Confirm ボタンがあって、位置も入れ替わっていて Cancel が右側にあるし、デフォルトボタンがないので Return を押しても何も起こらない。さらには Quit というメニューコマンドがない! このソフトウェアを終了するには、メインウィンドウのクローズボタンをクリックする。

私は当初 CZUR Scanner を動かすことが全くできなかった。スキャンモードでは真っ黒なウィンドウしか表示されなかった。Amazon のレビューでヒントを探したあげく、このソフトウェアは Sierra で動作すると知った。私の Mac を OS X 10.11 El Capitan から macOS 10.12 Sierra へアップグレードしてみると、やっと CZUR Scanner が動き出した。最初に何回か実験してみた結果はどれもあまり良くなかったが、最後になって実際に本をスキャンしてみると、すべてが驚くほどうまく行った。

それ以来私は数冊の本をスキャンしたが、手順はとても簡単だ。まずスキャナの電源を入れて、CZUR Scanner アプリを起動し、スキャンモードに入る。それから、スキャンの種類 (カラー、グレイスケール、または白黒) と、必要な後処理 (平らなアイテム、開いた本、手動設定、または後処理なし) を選ぶ。

魔法の大部分はこの後処理で起こる。とりわけ書籍のスキャンではここが重要だ。この段階で CZUR Scanner は、開いた2ページのスキャンを仮想のページごとに切り分け、湾曲したページを平らにし、といった処理を施す。建前上は後からこの後処理モードを変更することも可能なはずだが、試してみたところうまく行かなかった。例えば、見開きをページに切り分けることができない。これは、スキャンする前に正しいモードに設定しておかなければ働かない。

当初私は本のスキャンには白黒モードが最適だろうと思っていた。画像ファイルのサイズが小さくなるだろうからだ。けれども実験してみた結果、グレイスケールの方が結果が良くファイルのサイズも 小さくなる ことが分かった。なぜかは聞かないで欲しい。私はきっとバグだろうと思う。

CZUR Scanner の設定が済めば、スキャナの前へ行って、指先カバーを両手の親指に嵌める。最初の見開きのところで本を開き、両手の親指で押さえながら、足踏みペダルを踏んで写真を撮る。CZUR はこの処理にかかる時間が 1.5 秒以下だと主張する。もちろん実際の撮影そのものはそれくらい素早く済むだろうが、赤いレーザービームが本の上に照射されてページの湾曲具合を測定するという追加の手順があるので、もう少し時間がかかる。それでも、十分高速だ。見開き一枚あたりほんの数秒だろう。

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レーザービームが消えれば、ページをめくり、両手の親指で本を開いて押さえ、また足踏みペダルを踏む。本の終わりに到達するまでこの操作をただ繰り返せばよい。

退屈な作業に聞こえるかもしれないが、個々の段階があまりにも素早く済むので退屈を感じている暇はない。以前にフラットベッド・スキャナを使った際は、あまりにも進むのが遅いので途中で iPhone のゲームに走ったり iPad で読書を始めてしまったりしたものだ。

本一冊を一度にスキャンすることの難点の一つは、何か間違いを犯したか否かが全部の作業が終わるまで分からないことだ。(その昔のフィルムカメラの時代を思い出す。カメラの設定をいろいろ試しても、フィルムが現像されるのは何日も後なので、もうその頃には特定の効果を得るために何をしたのか思い出せなかった。)

けれども、本をスキャンしている途中で中止したり、一時停止したりはできる。CZUR Scanner アプリがほとんどの調整を実行しているので、中断してから再開しても本が以前と全く同一の位置にある必要はなく、気にせず残りの部分をスキャンできる。始めてから少しして、スキャンの結果が良くないかもしれないと思えば、そこでスキャンを中断して画像をチェックしてみよう。そうすれば、何がうまく行って何がそうでないかが次第に見えてくるだろう。

理論的には、本の分量にもよるが、本を丸ごと一冊スキャンするのに 15 分もかからないはずだ。ただ、私の最初の数回の試みはもっと遅かった。かなり古い 150 ページのペーパーバック本のスキャンに 30 分近くかかった。いくつか問題が起こったからだ。その後、もっと新しいハードカバー本をスムーズにスキャンできて、356 ページで 25 分かかった。さらにもっといろいろ試すうちに 15 分という目標にだんだん近づいたが、標準的には 20 分で本一冊というのが妥当なところかもしれない。いくつかのページをやり直す必要があれば数分間ほど余分に時間がかかる。

さて、スキャンが終われば、Mac 上でスキャンウィンドウを閉じてよい。注意すべきは、標準的な macOS ウィンドウのクローズボタン (赤いボタン) をクリックするのではなく、タイトルバーの下に見える特殊な小さい "x" 印をクリックしなければならないことだ。

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すると、CZUR Scanner のメインウィンドウに戻る。ここでスキャンの結果を見ることができるが、結果は番号の付いた画像ファイルのリストとして右側に並ぶ。

CZUR Scanner にはバッチモードがあるので、複数個の画像にグローバルな修正を加えることができて便利だ。回転、トリミング、コントラスト変更、カラー調整、画像の削除、さらにはページの差し替えもできる。ページを差し替えたい場合、CZUR Scanner がスキャンモードに戻るので、そのページを満足行くように撮影し直したら、指定してあったページを CZUR Scanner が賢くその新しい画像で置き換えてくれる。2ページ見開きの片側のページでもできる。

残念ながら、実際にはページのスキャンは大きさも位置取りもバラバラであることが多く、バッチ処理でトリミングを施しても無意味だ。例えば、少し傾いたページやマージン幅が他とは違うページなどがところどころにあるのはよくある。もしもスキャンの結果がもっと均一になっていたなら、例えばすべての画像に対して一斉にトリミングを施して、テキストの OCR には不要なヘッダ部分やフッタ部分を切り取っておくことも可能だろう。

CZUR ウェブサイトにあるビデオの一つは「手動調整」画面を示して説明しているが、私の知る限り Mac 版の CZUR Scanner にそんな画面はない。ビデオを見るとなかなか役に立つ調整ができるようだ。例えばスキャンの形を調節したり、ページを切り分ける線を手動で設定したりといったことだ。Mac 版にも今後のアップデートでそのような拡張機能が加われば嬉しい。

けれども理想的には、何も編集の必要がないのが最も良い。私の一冊目の本はいくつか再スキャンが必要で、二冊目も同様だったけれども、三冊目は最初の試みでうまく行った。(これこそ、練習が役に立つことの証明だ。もっと後にスキャンした本ではいくつか問題が起こったけれども、それは私が急いで作業をしていたからでもあるし、本が古かったせいであまり協力的でなかったからでもある。)

では、スキャンの際に起こり得る問題とはどんなものだろうか?

さて、編集が終わったら、チェックボックスボタンをクリックしてサイドバー上のすべての画像を選択してから、Export タブに移って、Searchable PDF を選ぶ。すると CZUR Scanner は OCR (光学式文字認識) を実行しつつ、スキャンの結果を一つのファイルとして書き出す。この処理には Mac の速度によって 5 分から 10 分程度かかるが、その間つきっきりで見ている必要はない。

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これで、基本的に終了だ! 結果の PDF はかなり大きなファイルかもしれない。私の 356 ページの本は 86 MB になった。ファイルには、画像レイヤーとテキストレイヤーの両方が含まれているからだ。(これは白黒モードで撮影した結果であって、なぜかその方がグレイスケールよりファイルが大きくなる。後日 162 ページの本をグレイスケールでスキャンしたらたった 22 MB のファイルになった。)

当然ながら、PDF を作成しても元の本のレイアウトとフォーマッティングはそのままだ。読書用デバイスにもよるがズームインして見ることは可能だけれども、テキストを整形し直したりその他何かを変えたりといったことはできない。

テキストレイヤーが存在しているので、本を検索できる。これは素晴らしいことだ。ただ、OCR のエラーやスキャンの不具合その他の結果として思った通りに検索できないこともあり得る。例えばある時、その本の中にあると知っている語句を検索したら、Preview がそんなテキストはないと言ってきた。実は、これはその単語が本の中で行末にあってハイフンで切り分けられていて、私が検索にハイフンを含めていなかったからであった。

OCR テキストでの作業 -- OCR (光学式文字認識) で作成された生のテキスト部分をいろいろテストしてみて、私はかなり感銘を受けた。CZUR Scanner は ABBYY FineReader OCR エンジンを使っているが、これは Adobe の OCR エンジンよりも性能が良い。CZUR Scanner は標準的な画像ファイルを作るので、そうしたければ自由に他のプログラムで OCR をすることも可能だ。いずれにしても多数のエラーが出ることは覚悟すべきだ。よくある間違いを見つけるために正規表現によるパターンマッチングを使ったにもかかわらず、本一冊分のテキストをクリーンアップするのに私は数時間もかかった。

主たる問題点を挙げれば、ヘッダやフッタが (本文の文章の中に混じって含まれ) 邪魔になること、CZUR Scanner が段落の終わりを見分けられるとは限らない (すると複数の段落が一つに繋がってしまう) こと、行の終わりでハイフンで切り分けられた単語をうまく扱えない (ハイフンが空白文字に置き換えられるので "hatch-ing" が "hatch ing" になる) ことなどがある。

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また、本の中ではフォーマッティングとか、章番号や章タイトルなどの表示がいろいろバラバラなやり方で書かれているので、そういうものはすべて手作業で直す必要がある。私がスキャンした本の一つは章のタイトルの背後に凝ったグラフィックスを描いていて、結果としてそういうタイトルは数個のガラクタ文字を伴ってしまっていた。

私は自分でちょっとした検索/置換のスクリプトを書いて、これを使ってよくあるエラーの約 75 パーセントを修正することができた。楽な本の一つでは、これはたっぷりしたマージン幅を持ちくっきりした活字を使ったハードカバー本だが、スクリプトで修正し切れなかった重大なエラーとフォーマッティングにたった 10 分間で対処することができた。

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忘れないで頂きたいが、これらはすべて「個人的利用」レベルの品質であって、完璧な仕上がりには程遠い。完璧に仕上げるためには一つ一つの行をじっくり読んで、さらにスペルチェッカーも走らせる必要があるだろう。また、ボールド体やイタリック体など特殊なテキストフォーマッティングはすべて手で施さなければならない。私のスクリプトは異なる本ごとにそれに合わせて調整する必要があるのだろうが、現時点での私の必要の範囲では心から有望に思える。

あと、言っておかなければならないのは私の場合主として小説をスキャンしているので、フォーマッティングが最小限のレベルであることだ。詩とか、方程式とか、図や表とか、あるいは複数カラムのあるページをスキャンする場合は、スキャン結果にもっと多くの問題が生じると思われる。料理本が2冊あって、そこからいくつか見開きをスキャンしてみたが、これはただ CZUR Scanner が分数やその他の複雑なフォーマッティングをどの程度うまく扱えるか見たいと思ってしたことだ。生のスキャンのままで、完全に未編集のものだが、OCR がどの程度うまく働くかのサンプルとしてテキストを取り出してみた。

OCR テキストで作業することの利点は、自分でそれを PDF に変換できることだ。その際、自分の好きなテキストサイズやレイアウトを選ぶことができる。その結果は、印刷されたページを写真撮影したものよりもはるかに読み易い。その上、あの 86 MB の本が、今やたったの 1.2 MB だ!

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プレインテキストの重要な利点がもう一つある。それは、EPUB や Mobi など他のフォーマットに変換できることだ。その本を iPhone 上 (EPUB) あるいは Kindle 上 (Mobi) で読みたい場合はとてもありがたい。iPhone や Kindle は必ずしも PDF をうまく扱えるとは限らないからだ。

生のテキストは素晴らしいけれども、その作成には手間がかかる。それに、もしも OCR が一連のテキストでトラブルに遭遇すれば、参照すべき PDF に元のスキャンレイヤーが含まれていないということもあり得る。

CZUR にそれだけの価値があるか? -- その質問に答えられるのは、あなた自身しかいない。ほとんどすべての本は著作権で保護されているので、CZUR を使ってデジタル化した本を販売することはできず、金儲けにはならない。

自分の個人的利用のために本をデジタル化するのは完全に合法的だと私は思うが、技術的に言えば物理的な本を売ることも良くないのだろう。スキャンの方を手許に残して物理的な本を無料で寄贈することすら法律的にはグレイゾーンに属するが、私は別に気にしない。

私は職業的なライターであり出版者であるので著作権を尊重しており、スキャンした本を配布する行為を大目に見るつもりはない。(ただし著作権が期限切れになれば話は別だが、今の時代そうなるにはとてつもなく長くかかる。)

だから、残るのは個人的利用のみだ。では、二度と読まないかもしれない本をデジタル化するためにたとえ一時間でも費やす価値があるだろうか? その答は、それがどんな本であるか、あなたがどんなタイプの読者であるか、どれほど時間の余裕があるかに依存する。CZUR は十分に使い易いので、夜にテレビを観ながら数冊スキャンするといったこともできるだろう。

私はそういう感じの使い方をしたい。そして、特に気に入っている数冊の本に対してのみ、たぶん手間をかけて生のテキストを変換するつもりだ。あるいは、ひどく小さな字で印刷されている本をもっと読み易くしたいと思えば変換するだろう。他の大多数の本は、何もせず画像のままにしておくつもりだ。

けれども忘れないで頂きたいが、デジタルな書庫には他の利点もある。つまり、本の内容のテキストを検索できることは素晴らしいし、ライターや研究者にとってはそれが不可欠のことかもしれない。さらに、旅行中に自宅の書庫を丸ごと持ち運べるというのも素晴らしいだろう。デジタル版が一般に入手可能でない本のデジタル版を持っているのは、デジタル読書のファンにとってこの上なく嬉しいことに違いない。多くの企業では、古いカタログや、法的書類、その他歴史的価値があるけれども膨大な場所塞ぎになる書物の類をデジタル化するために CZUR が使えるかもしれない。

既にフラットベッド・スキャナを持っているのでない人は、CZUR を他の種類のスキャン作業に使うこともできる。とりわけ、大き過ぎるものや、立体的なものもスキャンできるのが便利かもしれない。また、フラットベッド・スキャナより動作速度が速いのも利点だが、大きな差が出るには相当多数のスキャンをする必要があるだろう。残念ながら、この種の別目的使用だけで CZUR の価格を正当化するには無理があると私は思う。本来の目的は書籍をスキャンすることであり、その目的で使いたいと思わない人はこの製品の目標顧客ではない。

確かにこの CZUR スキャナは万人向けでないが、デジタル形式で持っていたいと思う印刷本がたくさんあって、多少の学習曲線と少々難のあるソフトウェアを我慢できるという人には、きっとよく働くことだろう。

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TidBITS 監視リスト: 注目のアップデート、2017 年 8 月 21 日

  文: TidBITS Staff: [email protected]
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

CleanMyMac 3.8.6 -- MacPaw が CleanMyMac 3.8.6 をリリースして、1Password および LaunchBar との互換性を改善し、Dropbox のキャッシュを除外リストに入れた場合に正しく除外されるようにした。この汎用クリーニングおよびメンテナンスアプリは今回、CleanMyMac 3 メニューの空きスペースを正しく更新するようにし、クリーンアップ終了画面でクリーンアップ済みの容量を正しく再計算するようにし、アプリケーション名をコンテクストメニューから選んだ際に Uninstaller 内でそのアプリケーションのサイズが 0 と表示されたバグを修正し、macOS Localizations クリーンアップで SIP (System Integrity Protection) の位置が無視されなかった問題を解決している。(新規購入 $39.95 または月額 $9.99 の Setapp 購読サービス、無料アップデート、10.9+)

CleanMyMac 3.8.6 へのコメントリンク:

Alfred 3.4.1 -- Running with Crayons が Alfred 3.4.1 をリリースして、macOS 10.12.4 Sierra またはそれ以降では非互換なワークフロー (サードパーティの Alfred Workflow ライブラリの旧バージョンを含むもの) がロードされないようにした。このキーボード駆動のランチャーはまた、JSON 出力スクリプトフォーマットに新機能を含む更新を施し、スニペットのトリガーが重複する場合にもスニペットデータベースのキャッシュを正しく更新するようにし、Snippet Trigger 機能を入力オブジェクトに結び付けられるようにし、10.13 High Sierra で Screen Saver システムコマンドを修正している。(基本的機能は無料、Powerpack は 17 ポンド、2.7 MB、リリースノート、10.9+)

Alfred 3.4.1 へのコメントリンク:

Mactracker 7.6.6 -- Ian Page が Mactracker 7.6.6 をリリースして、最近二ヵ月間に出たメジャーな Apple ハードウェアアップデートに関する詳細な情報を盛り込んだ。iMac や全タイプの MacBook (2017 年 6 月 6 日の記事“Apple、iMac と MacBook ラインを増強、iMac Pro で興奮を誘う”参照)、iPad Pro (2017 年 8 月 10 日の記事“Apple の 10.5 インチ iPad Pro、スイートスポットを狙う”参照) も扱っている。また、Apple オペレーティングシステムの最新アップデート情報 (2017 年 7 月 19 日の記事“Apple、macOS 10.12.6, iOS 10.3.3, watchOS 3.2.3, tvOS 10.2.2 を発表”参照) もカバーする。(Mactracker ウェブサイトからも Mac App Store からも無料、91.8 MB、リリースノート、10.7+)

Mactracker 7.6.6 へのコメントリンク:

Bookends 12.8.3 -- Sonny Software が Bookends 12.8.3 をリリースして、この文献参照ツールが次期リリースの Mellel 4 でも使えるようにした。今回のリリースではまた、JSTOR デジタルライブラリから非常に多数の PDF をバッチ読み込みしようとすると警告を出すようにし (ウェブ再起動であるかのように見えてしまうのを防ぐため)、Google Scholar から取り寄せた参照文献データの中での URL 探知機能を改良し、Autofill From Internet が SQL エラーに終わることのあったバグを修正し、PDF にメモを追加しようとすると余計な四角い注記枠が追加されてしまった問題を解消し、添付ファイルフィールドの中のファイル名を Apple イベントによって読み込むことができなかったバグを修正している。(新規購入 $59.99、TidBITS 会員には 25 パーセント割引、無料アップデート、37.4 MB、リリースノート、10.7+)

Bookends 12.8.3 へのコメントリンク:

Microsoft Office 2016 15.37 -- Microsoft が Office 2016 アプリケーションスイートのバージョン 15.37 をリリースして、Word、Excel、PowerPoint に Advanced Threat Protection (ATP) 機能を追加した。これらのアプリの中でウェブリンクをクリックすると、ATP 安全リンクサービスがそのリンクが悪意あるものであるか否かを確かめてから、リンクへのアクセスを許したり、あるいは元のターゲット URL の代わりに警告ページへリダイレクトしたりする。(潜在的脅威の有無を調べるために Google Chrome、Safari、Firefox、Opera のいずれもが利用している Google Safe Browsing テクノロジーに似ている。) また、Word は新しい Researcher 機能 (Reference タブにある) を追加した。これを使って話題を探せば、信頼できる情報源とコンテンツを研究論文に組み込むための役に立つ。(一回限りの購入ならば $149.99、Microsoft AutoUpdate 経由で無料アップデート、リリースノート、10.10+)

Microsoft Office 2016 15.37 へのコメントリンク:


ExtraBITS、2017 年 8 月 21 日

  文: TidBITS Staff: [email protected]
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

今週の ExtraBITS では、Apple CEO の Tim Cook が Charlottesville で起きた暴力的なデモについてコメントを述べ、Apple がビデオコンテンツに多額の投資をし、多くの LockState スマートロックがファームウェアアップデートの失敗により使えなくなった。

Apple CEO の Tim Cook、Charlottesville について語る -- Apple の全従業員にあてた電子メールの中で、CEO の Tim Cook は Charlottesville (バージニア州) で起きた「悲劇的かつとても嫌な」出来事について次のように述べた。「私たちの国であのような憎悪と偏見を許すべきではないし、私たちはそれについて明確に意思表示しなければならない。これは右派とか左派とかいう話でも、保守派かリベラル派かという話でもない。これは、人間の品性と倫理についてのことだ。」彼はまた、Apple が Southern Poverty Law Center と Anti-Defamation League にそれぞれ百万ドルずつ寄付するとも発表した。自身が南部生まれで十字架焼却を巡って Ku Klux Klan に立ち向かった経験もある者として、Cook はこのような出来事を本当に困ったことだと感じているが、彼は次の言葉で文章を結んだ。「今は暗い日々が続いているが、私は未来は明るいといういつも通りの気持ちでいる。良い方向に向けた変化をもたらすため、Apple は重要な役割を担うことができるし、必ずや担うつもりだ。」

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Apple がビデオコンテンツに十億ドルを注ぎ込むという報道 -- Variety の記事によれば、Apple は 10 本のテレビ番組のために十億ドルの予算を割り当てたという。多額という印象を受けるかもしれないが、来年には Netflix が 70 億ドル、Amazon が 45 億ドル、HBO が 20 億ドルをそれぞれオリジナルコンテンツのために使うと見られている。Apple が "Planet of the Apps" や "Carpool Karaoke" を超える魅力的なものを制作してくれることを願いたい。

コメントリンク: 17399

ファームウェアアップデートの失敗でスマートロックが石の塊と化す -- ホームオートメーションは素晴らしくもなり得るが、やはり不都合がない訳ではない。LockState RemoteLock 6i を使っている人たちがまさにその経験をした。誤ったソフトウェアアップデートが走った結果として、そのロック(錠前)の遠隔コントロールが働かなくなったのだ。ただし鍵を使えば解錠することはできる。特に大きな影響を受けたのが Airbnb (民泊サービスサイト) のホストたちだ。RemoteLock は直接 Airbnb に統合させて Airbnb の部屋を遠隔から管理・監視できるからだ。この話の最悪な点は何かというと、問題を修正するためにユーザーは錠前そのものを LockState に送ってファームウェアを入れ替えてもらわなければならず、そのために 5 日間から 7 日間もかかることだ。LockState に交換用の錠前を送ってもらうこともできるが、その場合には直るまでに 14 日間から 18 日間もかかる。いずれにしても、問題の錠前の持ち主はこのデジタルな問題に対処するために、自分の手で物理的に錠前を取り外さなければならない。

コメントリンク: 17398


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日本語版最終更新: 2017年 08月 25日 金曜日 , S. HOSOKAWA