2017 年の終わりが近づき、TidBITS は二週間の冬休みを頂く。その間、私たちは休養したり、子供たちや親戚たちと共に過ごしたり、TidBITS の新しいインターネット基盤構造の開発に取り組んだりしたい! けれども今週のうちは、毎年恒例の WinterFest セールで Take Control タイトルや職人技の Mac ソフトウェアを値引き購入でき、先週の DealBITS 抽選で賞品となった BeLight Software の Swift Publisher 5 を半額で購入できる。その他のニュースとしては厄介な HomeKit 脆弱性を iOS 11.2.1 と tvOS 11.2.1 が修正し、Apple がパワフルな iMac Pro をリリースした。そして今週号の特集記事は、Josh Centers による iPhone Upgrade Program のレビューと、Jeff Carlson による Adobe の全く新しい Lightroom CC の詳細な検討だ。今週注目すべきソフトウェアリリースは Final Cut Pro X 10.4, Compressor 4.4, Motion 5.4、Logic Pro X 10.3.3、Mellel 4.0.3、Moneydance 2017.6、それから AirPort Base Station ファームウェアアップデート 7.6.9 および 7.7.9 だ。では、また 2018 年にお目にかかりましょう!
記事:
----------------- 本号の TidBITS のスポンサーは: ------------------
---- 皆さんのスポンサーへのサポートが TidBITS への力となります ----
文: Adam C. Engst: [email protected], @adamengst
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>
12 月の終わりが近づいたので、少なくともビジネスの世界ではそうなので、今週号が TidBITS の 2017 年最終号となる。今週一杯は私たちもいつも通り業界の出来事に注意を払いつつ、皆さんの注目に値すると思われることがらを記事にしてゆくが、その後はゆるゆると元日までホリデーのお休みを頂きたい。どうか皆さんも私たちと同じように、この時期に皆さんの思い思いのやり方で、一緒に過ごして楽しい人たちと共に時を過ごされますようにと、心から願っている。次号の電子メール版 TidBITS は 2018 年 1 月 8 日発行の予定だ。
このお休みの間は TidBITS の出版をしないが、これを機会に過去と将来の双方ともに心を配りたいと思う。2017 年は、私たちにとって変化の年であった。私たちは Take Control Books を売却して (2017 年 5 月 1 日の記事“Take Control Books、Joe Kissell が買収”参照)、TidBITS Content Network を開始した (2017 年 2 月 13 日の記事“Apple コンサルタント向けの TidBITS Content Network を紹介”参照。) また、これをご報告できて嬉しいのだが、私たちのインターネット基盤構造の大幅な書き換えの作業も順調に進んでいる。先週、初めて私はステージング用サイトを動かすことができ、それは私たちの 27 年間分のバックコンテンツが揃った状態でちゃんと稼動した。
私たちが今日も TidBITS を出版し続けることができるための原動力となっている TidBITS 会員プログラムの、その基盤となるテクノロジーを、今回は完全に一から作り直すことを予定している。私たちの努力を支えて下さる会員の皆さんの一人一人に、心からのお礼を申し上げたい! 単なる噂や論争の的を追いかけることで人の注目を得ようとせず、実際的で役に立つ情報を皆さんにお届けすることは、私たちにとって大きな意味がある。今この時期に更新して下さる方々は多いと思うが、それはとてもありがたいことだ。でも、もしもあなたがクレジットカードの期限切れまたはその他の理由で更新に困難を覚えておられるのなら、どうぞ年が明けてから、私たちが新しいシステムをスタートさせるまでお待ち頂ければと思う。
もちろん、長期スポンサー企業である、必須のユーティリティ TextExpander と PDFpen のメーカー Smile と、私たちのお気に入りのインターネットバックアップサービス Backblaze の両社にも、いつも感謝の気持ちで一杯だ。
Tonya と私は Josh Centers、Michael Cohen、Agen Schmitz、Julio Ojeda-Zapata、Glenn Fleishman、Rich Mogull、Lauri Reinhardt、Matt Neuburg の非常に有能かつ好意に満ちた尽力にも心から感謝している。あなたたちは皆、素晴らしい。私たちは常日頃から感謝の言葉を口にするよう心掛けているけれども、ここであらためて公式に、あなたたちへの感謝の念を述べておきたい。
TidBITS 会員の皆さんからの資金のお陰で、今年も多数の記事を委託できた。それらの記事を通じて TidBITS の発する声を広げ強めてくれた Jeff Porten、Geoff Duncan、Jeff Carlson、Jeffrey Battersby (そう、"Jeff" に関係した名前の人たちは TidBITS の執筆に何か運命的なものを持っているのかもしれない)、Mike Matthews、Joe Kissell、Marc Zeedar、Kirk McElhearn、Mark Anbinder、William Porter たち筆者の面々に感謝したい。
それから、毎週 TidBITS をオランダ語と日本語に翻訳して下さっている疲れ知らずのボランティアの皆さん、記事にコメントを書いたり SlackBITS や TidBITS Talk に参加したりして下さる方々、そして貴重な時間を費やして私たちの文章を読んで下さるすべての読者の皆さんに、大きな感謝を捧げたい。
ありがとう、皆さん、そして、お一人お一人の願いがすべて叶いますように。また 2018 年にお目にかかりましょう!
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文: Josh Centers: [email protected], @jcenters
訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>
9to5Mac の Zac Hall が重大な HomeKit 脆弱性を発見した後、Apple はサーバー側で修正したのだが、それには不幸な副作用があり、あなたの HomeKit 機器に他のユーザーがアクセスするのを許可出来なくしてしまった ("HomeKit に脆弱性発見、既にパッチ済み" 8 December 2017 参照)。このセキュリティ欠陥に対応し、そして共有するユーザーへの遠隔アクセスを引き続き許可するべく、Apple はこの程 iOS 11.2.1 と tvOS 11.2.1 をリリースした。
iOS と tvOS が同時にアップデートされたのはのには意味があり、遠隔アクセスに対する HomeKit ハブとして使えるものには iPad, 第四世代 Apple TV, そして Apple TV 4K があるからである。
私はこの攻撃の実際の性質を知りたいと思った。と言うのも、Apple も 9to5Mac も意図的にぼかしていたからである。Steve Troughton-Smith が Twitter 上で明かしたのは、それはメールアドレスさえあれば、誰かが一つのシーン (状況設定) を遠隔で有効に出来るというものであった。"大草原の HomeKit のお伴: 中心となる概念" (3 November 2016) で説明した様に、HomeKit でのシーンは、一連の明かりをつけるといった幾つかのことを一度に実行するマクロの様なものである。例えば、玄関の鍵が HomeKit 対応のもので、それが一つのシーンに組み込まれているとすれば、攻撃者は地球の反対側からあなたの玄関の錠を開けることも可能となる!
iOS 11.2.1 アップデートは、iPad Pro 上では 60.2 MB の大きさだが、Settings > General > Software Update 又は iTunes 経由で入手出来る。このアップデートは、この HomeKit 脆弱性のみに対応したものである。同様に、tvOS 11.2.1 も Settings > System > Software Updates に行くことでインストール出来る。繰り返しになるが、HomeKit 脆弱性は Apple がこのアップデートで対応した全てである。もし HomeKit を使っていないのであれば、我々が知る限り、このアップデートをインストールすべき理由はない。
HomeKit に関して "大草原の HomeKit のお伴" シリースを書き、そしてそのセキュリティは他のホームオートメーション解よりも優れていると売り込んできた人間として、私はがっかりしたが、格別驚かされたわけではない。脆弱性は避けられない。幸いにして、Apple は責任のある会社であり、この問題も速やかに、そして隠すことなく解決された。そうは言っても、私の家を HomeKit 対応の錠前で守るのは心配である。
(日本語)スマート電球 Philips Hue を使ってみる|大草原の HomeKit のお伴: 中心となる概念|大草原の HomeKit のお伴: Accessory と Room を設定する|大草原の HomeKit のお伴: Accessory をコントロール|大草原の HomeKit のお伴: あなたの家を自動化する|大草原の HomeKit のお伴: 他の "Home" アプリで微調整する|Philips Hue 照明をハリケーンや竜巻警報に使う|大草原の HomeKit のお伴: スマートコンセント2つ|大草原の HomeKit のお伴: Elgato の Eve Room|大草原の HomeKit のお伴: iOS 11 で登場するものは|大草原の HomeKit のお伴: HomeKit のセキュリティで心の平安を
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文: Adam C. Engst: [email protected], @adamengst
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>
最新の DealBITS 抽選で当選し、BeLight Software の印刷デザイン用アプリ Swift Publisher 5 を受け取ったのは、pobox.com の Frank Carroll、yahoo.com の Glenn Gray、gmail.com の Per F. Christensen、messengerconnection.com の Scribner Messenger と gmail.com の Warren Bumpus の 5 名だ。おめでとう! 当選した皆さんは間もなく誰もが見やすいチラシやパンフレットや絵葉書などを作るようになるのだろうと思う。
当選しなかった皆さんもがっかりすることはない。BeLight Software では、2017 年 12 月 25 日までの期間中に限り、Swift Publisher 5 何と 50 パーセント割引で提供しているからだ。つまり、定価 $19.99 のところ $9.99 となる。TidBITS 読者のための特別割引は、このリンクを使えば利用できる。
今回の DealBITS 抽選に応募して下さった 244 名の皆さんに感謝したい!
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文: Adam C. Engst: [email protected], @adamengst
訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>
Take Control Books の出版者として、我々はここ数年の間小さな Mac 開発者のグループによって開催されてきた毎年の WinterFest セールに参加してきた。今はそれを決める立場にないが、Joe Kissell は我々に Take Control は今年も参加すると言ってくれた。WinterFest の期間中は 25% 割引で提供されるという。そこには、数多くの新本も含まれるという:Tonya Engst の "Take Control of Mac Basics" Jeff Carlson の "Take Control of Lightroom CC" Jason Snell の "Photos: A Take Control Crash Course" Kirk McElhearn の "?Take Control of Scrivener 3" そして Joe 自身のベストセラー "Take Control of iCloud, Sixth Edition" 等である。
今年の WinterFest は 20 December 2017 に始まり、9 January 2018 まで続く。お知らせのページは未だ完成していないが、後数日待っていただけるなら、色々な素晴らしい Mac アプリに対する割引も掲載されるであろう。今年新たに参加するものには Panorama X データベースがある。これは、我々が Take Control をやっていた時には事業に不可欠のアプリの一つで、その最新バージョンである。これに参加する他の必須の手作りのソフトウェアには、Aeon Timeline, Bookends, DEVONthink Pro 及び Pro Office, HoudahSpot, Nisus Writer Pro, Storyspace, TaskPaper, TextExpander, そして Tinderbox が含まれる。Take Control 本や Mac ツールをお探しなら、WinterFest を是非のぞいて見て欲しい!
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文: Josh Centers: [email protected], @jcenters
訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>
約束通り、Apple は 2017 年末前に iMac Pro をリリースしたが、注文を受け付ける日を Web ページに数日前に静かに示し、そして 14 December 2017 現在、注文を受け付けている。我々も、数人の YouTuber や Apple が早期製品を種蒔きのため提供した人達からの第一印象について "The iMac Pro Arrives on December 14th" (12 December 2017) で少し紹介したが、その後も引き続き更なる詳細が明らかになってきている。
仕様とオプション -- 一番目につくのは iMac Pro は高価に映るであろうことで、最低モデルは $4999 から始まる。この値段だと次の仕様のマシンが得られる:
新規追加で目を引くのは iMac Pro の ARM ベースの T2 チップで、これは、他にも色々やるが、システムの全てにわたり暗号化とセキュリティを管理する。これは、ブート過程の全ての要素を T2 プロセッサが認証し、何も改竄されていないことを確認するセキュアブートオプションを提供することが出来る。この T2 プロセッサについては、将来更なる詳細分析を報告したいと思う。
もっとお金を注ぎ込んで iMac Pro を更に高速とすることもできる。以下に CPU オプションを記す。但し、14-core と 18-core モデルは今後 6-8 週間は出荷されない。
そして RAM オプションは:
iMac Pro のアップグレードで自分で出来るものは何もないが、iMore の Rene Ritchie は、購入後でも Apple Store か Apple Authorized Service Provider に持ち込めば、RAM の増設はやって貰えると記している。
自分でアップグレード出来るプロ級マシンを欲している人は、Apple が 2017 年以降と約束しているモジュラー型の Mac Pro を待たなければならない。同社は、どんな形になるのか、値段はどれ程になるのか、仕様はどうなるのかについては何のヒントも与えていないが、Rene Ritchie によると、それには Pro Display が付属するという - よしよし!
もっと多くの固体ストレージ容量を欲しければ、入手可ではあるが、値段に驚かないように:
ビデオアップグレードに対してのオプションは1つしかない:
iMac Pro にはスペースグレイの Numeric Keypad 付きの Magic Keyboard と同じスペースグレイの Magic Mouse 2 が付いてくる。しかしながら、スペースグレイの Magic Trackpad は $50 の追加料金が必要である。スペースグレイの付属品は個別には買えないので、$149 出して Magic Mouse 2 と Magic Trackpad 2 の両方を買っておくのも悪くないかもしれない。また iMac Pro 用の VESA Mount Adapter Kit もあり、iMac Pro を机や壁に固定することを考えているのであれば、更に $79 の出費となる。
値段について -- 全てで最高を取れば iMac Pro はとてつもない $13,348 となる。人によっては $14,000 に近い数字を挙げる人もいるが、そこには VESA Mount Adapter Kit 及びインストール済みの Final Cut Pro X ($299.99) と Logic Pro X ($199.99) が含まれている。iMac Pro に対する AppleCare+ は $169 のままである。
これは間違いなく高額と言えるが、一般的に言えば、これを高すぎると感じるのであれば、あなたは狙いとする客層には属していない。Apple は iMac Pro を特定の人向けと考えている - ビデオ編集者、オーディオ専門家、技術者、そして開発者の様な - これらの人にとって、時はまさに金なりである。もし、編集を手早くやれ、或いは、複雑なアプリのコンパイルを相応に加速して出来るのであれば、向上した生産性で iMac Pro のコストを補うのにそれ程の時間は必要でないであろう。
勿論、お金を不必要に使う理由は何もない。開発者 Marco Arment は地元の Apple Store のビジネス担当者を通して買い (ビジネス用に使うという前提で) 5% から 15% の値引きを引き出し、そしてプログラマーや Web 開発者が使うコンピュータハードウェアシステムに対する New York 州の ST121.3 免除の様な州販売税免除を検討することを勧めている (知っていましたか?)。
初期の報道 -- 最初に出た記事の中には YouTuber Marques Brownlee からのものがあった。彼には Apple が種蒔きとして早期アクセス機を与えていた。彼のビデオは、iMac Pro がビデオ制作に最新バージョンの Final Cut Pro X と共にどの様に役立つかを良く示している。
London 在住のビデオ編集者 Thomas Carter は、彼の第一印象を Randi Altman の postPerspective に書いている。結論は:"これらのテストは本当に私の度肝を抜いた。それらは多くの人にとっては必ずしも日常のシナリオではないであろうが、私にとってすらも、ワークフローを編集するのに全プロセスを通して最大限の品質に近いレベルで作業することが夢物語ではないと思わせてくれる。... もっと掘り下げてやってみる時間はなかったが、これは明らかに私が使ったことのある Mac では最善のものである - それは馬鹿らしいほど強力で、そして使っていて楽しい。"
少なくとも一人の開発者が早期の iMac Pro を受け取った:Hunter Research and Technology の Craig A. Hunter で、彼は iMac Pro を航空力学設計と開発のための NASA ツールでテストした。彼はそのレビュー を次の様に結んだ:
人のポケットで使われたくてウズウズしているお金に関する古い言い習わしがある。時折だが、私に同様だが逆の効果をもたらす製品が世に出てくることがある - それは、とても抗し難く、とても興奮させられ、見ているだけでうっとりするもので、私の財布は熱くなり、火を噴きそうにすらなってしまう。新しい iMac Pro はその様な製品の一つである。
最も興味を引く記事に関して言えば、Ars Technica に目を向けるのが適当であろう。ここで、記者の Samuel Axon はもう既に進行中の専門家による使われ方を紹介している。彼曰く、"この画面上で起こっていることが最先端であることに疑問の余地はない - とりわけ、一体型としては。創造的な仕事の専門家で、Apple のエコシステムに嵌まり込んでいる人は、この様な強力なマシンで仕事をするのを歓迎するであろう。これは、確かに、約束されているが未だ世に出ていない Mac Pro アップデート程柔軟性はないかもしれないが。"
我々は iMac Pro を TidBITS の人間のために買おうとは思っていない。それは、我々の作業ではそれ程の力は必要としないからであるが、もし読者の中で買う人がいるのであれば、その性能でどの様に生産性が向上したかを我々にも聞かせて欲しいと思う。
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文: Josh Centers: [email protected], @jcenters
訳: 清水 史彦 <qff01604@nifty.com>
今、私は iPhone X を持っていて、自分の iPhone 7 Plus を返却したところだ。かくして、Apple の iPhone Upgrade Program の全てのサイクルを一つ完了した。そして、私は、自分の印象を共有し、みなさんが持っているかもしれない質問に答えたいと思う。
iPhone Upgrade Program の輪の外にいる人たちのために、以下、ざっと、記憶を新たにしてみたい。アメリカでは、かつて、携帯電話は、通信事業者によって、2 年契約で販売されていた。みなさんは、低価格の割引価格、通常は、200 ドルかそこらで携帯を手に入れたものだし、携帯のコストの残りの部分は、購入後の 2 年間に、サービス料金の一部として精算していたものだ。
通信事業者は、このやり方にウンザリしていた。そして、T-Mobile が 2013年に iPhone 5 を分割払いで購入するプランを成功裏に導入した後は、この業界では、携帯の割引と契約サービスは、次第に姿を消していった。
Jay Yarrow (かつて、Business Insider にいた) のような評論家のなかには、これが、Apple の失敗を決定的なものとするであろうと主張した人もいた。だが、今私たちが分かっているように、それは現実からは程遠いものであった。なぜなら、Apple は、新しい環境に適応したからだ。
多くの人が、新しい iPhone のために、一度に 649 ドルから 1348 ドルも支払いたいとは思っていない。そこで、通信事業者は、分割払いプランの提供を始めた。このプランは、顧客が、携帯の支払いを 24 ヶ月で終えるようにするものであった。こうしたプランの多くは、1 年かそこらで、新しい携帯のために、古い携帯を下取りに出すことができた (その携帯がきちんとした状態であると仮定して)。アクティベーション料金は別にして、この分割払いのやり方では、デバイスをずっと持ち続ける場合の支払いを超えて、余分な支払いが生じることはない。携帯の代金を払い終えたなら、携帯を下取りに出さなければ、それは自分の物であって、持ち続けることができる。
Apple は、市場機会があると見て、独自の分割払いプログラム、すなわち、iPhone Upgrade Program を立ち上げた。これは、AppleCare+ が含まれている点を除いて、本質的には、通信事業者の分割払いプランと同じである。なお、iPhone Upgrade Program の月々の料金が、通信事業者のプランよりも高いのは、AppleCare+ が含まれているからである。
(私は、自分の iPhone 7 Plus で、AppleCare+ を使う機会があった。と言うのは、私は、愚かにも、iPhone 7 Plus を手に入れてほんの数日後、休暇中に画面を破損させてしまったからだ。その修理には、典型的な Apple Storeの訪問 (車の運転で 2 時間、食べ物無しで閉鎖的なモールで待つこと2 時間、そして、家に帰るのに運転で 2 時間) が必要であった。だが私は、その修理に、通常 149 ドルの料金の代わりに、ほんの 29 ドルと消費税2.68 ドルを支払うだけで済んだ。AppleCare+ では、割れた画面の修理に、その金額で画面を 2 回交換可能であり、その後は、全額を払わなければならなくなる。)
さて、いよいよ、こうしたこと全てから、神秘的な雰囲気を取り除くことにするが、iPhone Upgrade Program は、実は、Citizens One によって運営されている無利息ローンなのだ。毎年、このプログラムを通じて、あなたが新しい iPhone を注文すると、Citizens One は、あなたの信用度 (新しいiPhone の注文は、"hard pull" (*) であって、あなたの信用度のスコアに不利な影響を与える可能性がある) をチェックして、承認されたなら、新たなローンを発行する。(* 訳者注: hard pull は、住宅ローン、ローン、クレジットカードなどでお金を借りると発生し、信用度スコアの低下につながる。hard inquiry とも言う。)
サードパーティによって運営されているとは言え、iPhone Upgrade Programには、いくつか、Apple 固有の利点と欠点がある。
iPhone Upgrade Program: 実践経験 -- 2016 年の iPhone UpgradeProgram に対する私の最初の印象は、素晴らしいものではなかった。それは深夜のことで、私は、眠たいと思いつつ、iPhone 7 Plus を素早く注文するのをしくじったばかりでなく、ローンの用紙にも記入しなければならなかった。それは厄介なことではなかったが、急を要し、不安定なサーバと格闘しているときは、一刻を争うものだ。全てやり終えたものの、書類に書き込むという余計な仕事のために、私は、iPhone 7 Plus を初日に入手することができなかった。結局、発売から 1 週間後に届いた。
これが、まさに定義通りの「先進国問題」であることは分かっているが、私はこれを生計のためにやっているので、Apple 製品についてみなさんに語れるように、それをできるだけ早く手に入れるというプレッシャーが、私にはかかっているのだ。また、iPhone Upgrade Program の顧客は、Apple にとって最も忠実な顧客であり、新しい iPhone が出るたびにすぐに欲しいと思うのは当然だ。
(アメリカの iPhone の顧客のために、一つ注意点がある。Apple は、iPhone Upgrade Program で、SIM ロック解除された電話機をあなたに販売する (これは、このプログラムのもう一つの利点だ。特に、国際的に旅行する人にとっては。) だが、これは、あなたが、四大通信事業者、すなわち、Verizon、AT&T、T-Mobile、そして、Sprint の顧客である場合に限って正しい。Apple は、通信事業者のプラン無しで、SIM ロック解除された電話機を売らないし、たとえ、Virigin Mobile が iPhone 専用の通信事業者だとしても、Virgin Mobile で動作する電話機は売らない。また、iPhone Upgrade Program は、最新の iPhone しか提供しない。したがって、このプログラムを使って、昨年のモデルを購入することはできない。)
注文を終えた後は、承認のメールを受け取るまで、Citizens One が承認したかどうか知る方法はない。承認には、数時間、ないし、数日かかることさえある。なので、注文が殺到する前に済ませようとする場合には、余計なストレスがかかることになる。そして、何か入力を間違えると(これは、深夜にはやりがちだ)、さらにもっと遅れることになる。私は、プログラム加入の最初のこのプロセスを、Apple が将来改善することを望む。
だが、今年、iPhone X を注文する段になった際、Apple は、その埋め合わせをした。事前注文が始まる数日前に、私は、Apple Store のアプリを開き、自分のモデルを選び、事前に認証プロセスに取り組むよう促された。深夜に、事前注文の熱狂が襲った時、自分のアップグレードを完了するのに、iPhone 上でほんの数回のタップしか要しなかった。iPhone Upgrade Programの顧客の中には、予定された初日に、自分の iPhone を受け取らなかった人がいたかもしれないが、このプログラムは、私たちを、有利に扱ってくれたようだ。当然そうあるべきだ。なぜなら、私たちは、サードパーティの売り手ではなく、Apple に直接お金を払っているのだから。
いったんプログラムに加入したら、全てが自動的に進む。申し込みの際に提出したクレジットカードに、毎月自動的に課金される。そして、そう、これがもう一つの注意点だ。iPhone Upgrade Program に申し込むには、クレジットカードを持っていなければならない。デビットカードは使えないのだ。
また、最初の月の支払いに加えて、消費税が全額前払いで課金されることに注意すること。もし、やりくりが厳しいのであれば、注意すること。
自分の iPhone 7 Plus の返却プロセスは容易であった。自分の iPhone Xが到着して数日後、私は、袋、SIM 取り外しツール、二組のテープ、そして、取扱説明書が入った、何も書いていないダンボール箱を受け取った。私がしなければならなかったのは、iPhone 7 Plus のリセット、SIM カードを取り出して空のトレイに置き換えること、iPhone 7 Plus を袋に入れること、その袋を箱に入れること、箱にテープを貼ること、出荷ラベルを剥がして返却ラベルを表に出すこと、そして、FedEx の人が次に荷物を配達に来た時に、それを手渡すことだけであった。それは、Apple が実行できると考えられる、ほぼ最高に苦痛のないものであった。もし、デバイスを、Appleに修理のために送ったことがあるなら、それは、同様の体験となる。
数日後、私は Apple から、私の下取りが完了し、ローンが終わったことを通知するメールを受け取った。それを見て私はホッとした。なぜなら、私のiPhone 7 Plus には、背面に削り痕があったからだ。もし、Apple がその状態に満足しなかったなら、私は修理代を請求されていたかもしれない。幸い、Apple は、それほど小うるさくないようだ。とは言え、画面が割れていたなら、修理を要求されると思う。
iPhone Upgrade Program のまずい点 -- Apple の製品は、Disney Worldの乗物のようなものだ。あなたが Apple の期待通りに振舞っている限り、それは素晴らしくよく機能する。だが、あなたがレールから外れた途端、物事は面倒なことになる。iPhone Upgrade Program も何ら変わりはない。
あなたがプランに忠実である限り、iPhone Upgrade Program はソツなく機能する。だが、支払い方法を変える必要があったり、デバイスの支払いを早く終わらせたいと思ったり、あるいは、支払い不足の埋め合わせをする必要がある場合、あなたは、Citizens One と取引しなければならない。なぜなら、Apple はそうしたことは何も扱わないからだ。そして、Citizens One との取引には、Citizens One の口座を作る必要があり、これは、取引が不要であれば、必要ないことだ。
幸運にも、私には何も問題はなく、単に、この記事を書くための調査の間に、口座を作っただけだった。だが、口座を作ったのは良いことであった。と言うのは、そのプロセスは苦痛に満ちたものだからだ。私は数えるのを途中でやめてしまったが、Citizens One が受け入れるユーザーネームとパスワードの組み合わせを作るのに、おそらく 30 回から 40 回は、試みなければならなかった。パスワードに関する要求の無意味なリストを、スクリーンショットで見てほしい。
いったんログインしたら、Citizens One のウェブサイトで、私がしなければならないことはあまりなかった。支払い方法の変更が可能だし、まあ、そんなところだ。私は、探し回って、ようやく自分の iPhone の支払いを早く終わらせることに関するリンクを見つけた。そして、そのリンクは、私に、Citizens One に電話しろと言っていた。やれやれ!
とは言え、私の経験では、Verizon (妻が iPhone をここから購入した) も、Citizens One と似たり寄ったりだ。Verizon のサイトでは、大きくて赤いPAY OFF YOUR DEVICE ボタンが提供されていたが、私は、それを動作させることができず、最終的には、カスタマーサポートとのチャットで、妻のiPhone の支払いを終えた。AT&T は、同社の Web サイトから、電話機の支払いを早く終えることが容易にできるようにしていると、私は聞いたことがあるが、AT&T は、全額の支払いを認めているだけで、複数回に分けて支払いを早く終わらせることは認めていない。
理想的には、iPhone の早期の支払いや精算を、誰かと会話する必要なく、全て Web サイトから行うことが可能であるべきだ。私は、Apple や通信事業者は、これを容易にしたくないのではないかと思っている。なぜなら、彼らは、ずっと支払いを続けてほしいからだ。
もし、あなたが iPhone Upgrade Program で iPhone X のユーザーなら、2018 年に、特に、あなたが、最新の iPhone を直ちにほしい場合は、厄介な問題に対処しなければならない羽目になるかもしれない。iPhone Xは、iPhone 8 の 1 ヶ月後にやって来た。だが、もし Apple が iPhone の次の最上位機種を、12 ヶ月未満で発表するなら、12 は、あなたが買い替え可能となるのに、Apple が要求する最小の支払い回数であり、あなたは、12 回分に相当する支払いを終えるまで、待たなければいけないかもしれない。すなわち、
あなたは、引き続き、来年アップグレードの資格があるでしょう。けれども、あなたが、新しいアップグレード資格を得る日は、新しいiPhone Upgrade Program のローンの開始日によって決まります。このプログラムでは、少なくとも 12 回分に相当する支払いをあなたが完了する限りにおいて、6 ヶ月以降にアップグレードの資格を得ることにどうぞご注意ください。
私は、iPhone Upgrade Program の他のメンバーから、もしあなたが Appleの Web サイトで早期のアップグレードを試みたなら、12 回分の支払いに等しい金額の残金を、直接 Apple に支払うよう指示されると聞いた。なので、もし、あなたが iPhone を 10 ヶ月しか所有しておらず、月々の支払いが 45 ドルなら、直ちにアップグレードするのに、さらに 90 ドルの支払いを要求されるということだ。
要求されるサイクルに関してもっとも厄介な部分は、もしあなたが、新しいiPhone を注文するのに、1 週間も待たなければならないなら、出荷時期がますます後ろにずれ込むので、最終的に、新しい iPhone を受け取るのに、もっとずっと長く待つことになるかもしれないということだ。
私は、来年まで判断を保留するが、もし、iPhone Upgrade Program によって、私が、次期 iPhone を長期間待たねばならない、あるいは、リリースと同時に手に入れるのに、法外な支払いが必要となるなら、私は他の方法を真剣に考えるであろう。
iPhone Upgrade Program は、あなたに適しているか? -- iPhone UpgradeProgram がデビューした時、あなたは、Apple Store に行って、iPhone を購入するか、あるいは、下取りに出さなければならなかった。当時、これは支持し難いものだったが、今では、プログラムのサイクル全てをネット経由で行うことができるので、このプログラムは、おすすめすることがずっと容易だ。
iPhone Upgrade Program は、常に最新のデバイスが欲しいが、一度に全額を支払いたくはない熱心な iPhone ファンにとって、おそらく最善の策だ。そして、もし、あなたは、デバイスの取り扱いが荒くなりがちなら、AppleCare+ は、通信事業者から提供される保険よりも、はるかに良い。
以下、申し込む前に問うべき、二つの質問を示す。
* AppleCare+ が必要、あるいは、欲しいか? iPhone X のように、iPhoneの修理には途方もない金額がかかることを考えると、AppleCare+ は良い考えだ。だが、Apple Store が近くにない場合は、AppleCare+ は保険のための最善の策ではないかもしれない。
* Apple 以外の携帯に心を惹かれているか? もし、あなたが Android の携帯を考えているなら、Apple のプログラムに縛られたくないかもしれない。(だが、Apple のただし書きを熟読すると、新しい iPhone にアップグレードして、それからそれを返却することによって、あなたは、1 年早く、義務を免れることができるようだ。状況によって変わるかもしれないが。)
多くの iPhone ユーザーにとって、iPhone Upgrade Program は、金銭的利益となる。なぜなら、AppleCare+ の料金を前もって支払う必要がないからだ。あなたは、希望するなら、iPhone を持ち続けることができるし、機種変更したいのであれば、12 回の支払いを終えた後にそうすることができる。このプログラムでは、iPhone を即座に購入するよりも、高い柔軟性が提供される。そして、もしあなたが iPhone を毎年即座に購入するのであれば、そして、古い iPhone を毎回手間暇かけて売る気がない限り、結局、iPhone Upgrade Program を通じて支払うよりも、多くの支払いをすることになる。
また、もしあなたが疑問に思っているなら、イエス、iPhone Upgrade Programを通じて、2 台以上の iPhone を購入することもできる。この技は、「入会希望」か「プログラムに入会済み」の選択に来た際に、「入会希望」を選ぶことだ。これにより、もう一つの Citizens One のローンが設定可能となる。
いくつか小さな抗議はあるものの、Apple は全てのステップで、私の忠誠に報いてくれた。もともと、私は、同社が、郵送での翌年の下取りを可能にするだろうという希望を持って、iPhone Upgrade Program に申し込みをした。そして、それは、かなえられた。今後数年間、iPhone UpgradeProgram は、Apple にとって、iPhone を販売する好ましい手法になると、私は予想する。そして、Apple の顧客は、Apple から直接購入するインセンティブを与えられるであろう。毎年、最新の iPhone を、多額の前払い無しで欲しいと思う熱心な Apple ファンにとって、これは良い選択だ。
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文: Jeff Carlson: [email protected], @jeffcarlson
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>
新しい写真ソフトウェアが登場する度に、写真家たちが次々とそれを試して、評価した結果を発表する。この新しいアプリをあなたも調べてみるべきか、それともあなたの必要とする範囲では今使っているもので十分か、という具合だ。私が思うに、多くの Mac ユーザーは macOS と iOS の双方で Photos アプリを使っていて、デバイス間の同期に iCloud Photo Library を使っているのだろう。(もちろん、今でもまだ Aperture や iPhoto を使い続けている人たちも多いだろうが、もしもあなたがそうなら、切り替えが困難にならないうちに早めにメーカーサポートのある製品に切り替えておくことを、真剣に考慮するように強くお勧めしたい。)
Adobe が、最近同社の Lightroom エコシステムに大きな転換を施したので、ここはきちんと考えておくべきだろう。今後、"Lightroom" は二つの別々のアプリケーションとして存在するようになる。一つは Lightroom CC で、こちらは完全に新しいアプリであって、Adobe がクラウド同期を中心として構築したものだ。一方 Lightroom Classic CC は、市場に初登場してからの 10 周年を最近祝った既存の写真エディタおよびオーガナイザの、新しい名前だ。(混乱してしまったのはあなただけではない。この Lightroom Classic がこれまで Lightroom CC という名前であった。) この転換は、既存の Lightroom ユーザーにとっても、また画像の編集と管理のために(プロ用の最高レベルに飛び込むことなく)今よりもう一歩ステップアップした写真用ツールを探している人たちにとっても、それぞれ大きな意味合いを持つ。
とりわけ後者に属する人たちにとって、新しい Lightroom CC は一見の価値がある。実際、私は Adobe が施した変更があまりにも大きいと思ったので、この新しいアプリを丸々一冊で扱った新刊の本を書き上げたばかりだ。133 ページから成る "Take Control of Lightroom CC" は、Lightroom CC の中で写真ライブラリに読み込み・編集・同期の作業をどのように実行するかを詳しく解説している。また、現在 Lightroom Classic を使っていて Lightroom CC も試してみたいと思う人たちのために、Lightroom CC と Lightroom Classic を互いに協力して働くようにする方法を扱った章も入れてある。
現代的なアプローチ -- これは、以前にも見たことがある状況だ。Apple が Mac 用に Photos アプリを開発したのは、iCloud Photo Library を中心に据えて自分のフォトライブラリ全体にどの Apple からでもアクセスできるようにするアプリケーションが Mac 用にも必要となったからだ。iPhoto アプリはそのようにデザインされていなかったので、Apple は不格好に iCloud 構想を取って付けるよりも、新たに一から Photos アプリを作る道を選んだ。
Adobe のやり方がこれと違っているのは、将来 Lightroom ユーザーがすべてかゼロかの選択に追い込まれたりしないという点だ。Apple は iPhoto の開発を中止したばかりでなく、そのプロレベルのツールであった Aperture も放棄してしまった。結果として多くの Aperture ユーザーたちが Lightroom に乗り換えることとなったので、Adobe はこの Apple の不人気な転換から学んだ。Lightroom Classic は今後もフル機能の Lightroom のプロ版であり続け、しかも Adobe は今後も活発にその開発作業を続ける。一方 Lightroom CC はその Lightroom Classic の中核機能の大多数を備えつつ、あなたのライブラリ全体にどのデバイスからでもアクセスできるようにデザインされている。
私は長年 Lightroom Classic を使ってきたが、人を威圧するような感じが Lightroom CC の方が少ないことを認めざるを得ない。例えば、Lightroom Classic で私が大好きな機能の一つに、読み込みの際にメタデータを適用する機能がある。あとで大いに時間の節約になるからだ。また、その作業の最中に、それと同時にファイルを改名したり、バックアップのコピーを作成したり、編集を加えたり(さらにはそれらのオプションすべてを専用のプリセットとして保存したりも)できる。けれどもこれらすべてを Import ウィンドウの中に詰め込めば、いったい自分はどこへ嵌まり込んだのかと戸惑う写真家たちもいるだろう。これとは対照的に、Lightroom CC はどの写真を読み込むかという点のみに集中して、そこにあるオプションは読み込みの際にそれらをアルバムに入れるか否かという選択のみだ。もちろん Lightroom Classic に比べて機能では劣るが、強力な機能を求めていない人にはずっと優しい。
また、Lightroom Classic の中のいくつかのモジュールを考えてみよう。これらは、洗練されたスライドショーや、ウェブサイトや、書籍レイアウトなどを作成するためのものだ。もちろんこれらは素晴らしい機能だが、はたしてどれほど多くの人たちが利用しているだろうか?
Lightroom CC は、Apple の Photos (あるいは Google Photos) を使うタイプの人々に対して、最新式の魅力を見せる。つまり、摩擦を最小限にしつつ写真を共有したり編集したりしたい人に向いている。
当然ながら、この「最新式の」という言葉は往々にして欠点を隠すために使われる。「この自動車はハンドルを付け忘れたのではありません、これが最新式なのです!」という具合だ。そう、Lightroom CC も、スタート時点のバージョン 1.0 であって、いくつか抜け落ちた穴がある。例えば、印刷ができない。現在のところ共有は Facebook への共有か、あるいは画像の書き出しによるしかない。検索機能は Adobe Sensei テクノロジーによって駆動され、機械学習を使って写真の中の物や風景を識別するが、完全にサーバベースで機能するため、自分のフォトライブラリの中で検索するにもかかわらずインターネット接続が必要となる。Adobe によれば Lightroom Classic にある HDR やパノラマ結合ツールを組み込むことを目指して開発中とのことなので、私としてはそれ以外の機能もこのアプリケーションが当初リリースの段階から発展するにつれて少しずつ組み込まれると期待したい。
実際、Adobe は既にいくつかの穴を埋めつつある。Lightroom CC 1.1 では、Tone Curve 編集コントロール、Split Toning ツール、それと Auto 機能の Adobe Sensei ニューラルネットワーク・テクノロジーへの移行に基づく改善などが追加された。
では、自分の写真システムをどうすべきか考慮中の人に向けて、Lightroom CC はどんなことを提供できるのだろうか? 私が思うに、主たる魅力的な分野が二つある。一つの画像の中で部分的な調整を施せる能力、もう一つはクラウド同期を構築した際の Adobe 独特のやり方だ。
写真編集での強み -- Apple の Photos で画像を編集すると、あなたが施す調整はその写真全体に適用される。例えば露出を上げると、前景にあるものだけでなく画像の中にあるすべてのものが明るくなってしまう。もちろんそれがあなたの望みであることもあるが、場合によっては空が真っ白になってしまい結果として写真の鮮明度が落ちてしまうこともある。
Lightroom CC には、特定の領域のみに設定を適用するためのツールが三つある。Linear Gradient ツールは、あなたが調整を施そうとする広い領域を定義する。例えば日没の写真のカラーを昔懐かしいムードのある色合いにしたいとしよう。空全体を Linear Gradient 領域とすることで、そこをキャンバスとして自由に彩度、明度、コントラストを変えたり、またその他の編集ツールを使ったりすることもできる。選択領域の境界部では段階的処理がなされるので、施した効果はなだらかに画像の他の部分に溶け込む。
Radial Gradient ツールも同じことをするが、選択領域が楕円形をしている。写真の中で人物の顔の部分が暗過ぎたなら、そこを Radial Gradient 領域として露出やシャドウ値を調整することで顔色を明るくでき、しかもその効果が領域の境界部に溶け込むので写真全体の中で不自然に目立つこともない。私はしばしば被写体の目の部分に Radial Gradient を施して、その部分を微妙に明るくし彩度も上げている。
さらにもっと精密な操作がしたければ、Brush ツールを使って絵を描くように個別の領域に調整を施すこともできる。
この Brush ツールは段階処理を施す領域を描くことも、消し去ることもできる。例えば空にコントラストを追加したいけれども、前景にある船の帆柱や遠くの丘などがその空の Linear Gradient 領域に食い込んでいる場合に便利だ。
もっと他の調整を施したければ、どんな Lightroom CC 写真であってもそれを Adobe Photoshop に送ることができる。Adobe Photoshop なら複雑な編集作業も自由自在だからだ。例えば Lightroom の Healing Brush はかなり有能だが、やはり Photoshop の Healing ツールの方がずっと高機能だ。
あなたが Photos を使っていても、Photos には今述べたような局所的な調整機能が内蔵されていないが、全く手が届かない訳ではない。Photos の編集拡張フレームワークを利用して、その画像をサードパーティのアプリに開かせることができるからだ。さらに、macOS 10.13 High Sierra においては Photos アプリに Edit With コマンドが装備されて、編集拡張に依存せず同じことができるようになった。つまり、写真を Photos アプリの中から Photoshop、Affinity Photo、Pixelmator、RAW Power、あるいはその他のアプリに送って編集させることができる。編集が終われば、Photos ライブラリにその編集後のバージョンが現われる。
写真はいたるところに -- 2015 年に、Apple が Photos を、Adobe が Lightroom CC を、それぞれリリースしてから少し経った頃、私は記事にこう書いた。「ちょっと便利なだけと見えるかもしれないことが - 考えてもみて、自分の iPhone で写真を撮って、そしてそれが Mac 上に現れるのだ! - 我々がデジタル写真を扱う方法における目に見える変化の始まりなのである。」(2015 年 5 月 11 日の記事“Lightroom CC と Photos for OS X で、写真を何処でも”参照。) そう、まさに今回の新しい Lightroom CC の存在そのものが、その再構成の結果なのだ。
写真を Lightroom CC の中へ読み込むと、オリジナルが Adobe の Creative Cloud にアップロードされ、Lightroom Mobile の走るあなたのデバイスや、他のコンピュータ上で走る Lightroom CC で利用できるようになる。(あなたは同時に二台のコンピュータ上で Lightroom CC を使用できる。) この複数デバイス対応は、Android フォンやタブレット、そして Windows コンピュータなど、Photos が無視しているプラットフォームも含んでいる。
Lightroom Classic も Creative Cloud との同期ができるが、同期する対象はあなたが同期用にマークしたコレクションに属するものに限られており、コレクションを作成したり選んだり、それらを Lightroom Mobile 用に有効にしたりといったことを、あなたが手作業でしなければならない。
では、iPhone や iPad で撮影した写真はどうか? Apple は、デフォルトの Photos アプリを持っているお陰で写真の読み込みという余計な手順を省ける。でも、Lightroom にもそれができる。Lightroom Mobile に、Camera Roll から画像を自動読み込みするオプションがあるからだ。Lightroom Mobile にはさらなる利点もある。内蔵のカメラ機能が raw 画像をキャプチャできるのだ。iOS はサードパーティのアプリがこの機能を持つことを許しているが、Apple は自らの Camera アプリにはこの機能を実装していない。
また、Lightroom CC がライブラリの中の画像ファイルを処理するやり方についても注目したい。Photos アプリのように、Mac でのデフォルトのやり方はパッケージファイルを作ることだ。これはファイルに見えるが実際にはフォルダであり、いろいろなものをその中に保存できる。けれども、特に大サイズの写真ファイルでは、このやり方がすぐにディスク容量を食い尽くしてしまう。ラップトップ機の 256 GB や 512 GB のストレージ容量では、ありふれたサイズのフォトライブラリもあっという間に大き過ぎて困るようになる。
これに対する Apple の解決法は、iCloud Photo Library を提供して Photos アプリに Optimize Mac Storage オプションを付けることだ。これで、サイズの大きなオリジナルのファイルの代わりに、小さなサムネイルのみを保存することで容量が節約できる。そして、必要に応じて Photos アプリが iCloud からフルサイズの画像をダウンロードするのだ。もちろん、大サイズの内蔵ハードディスクを持っていれば、そのようなことは問題にならない。
けれども、例えば MacBook や MacBook Pro のように内蔵ドライブの容量が少ない場合、あるいは特に大きなフォトライブラリを持っている場合、Apple のやり方では制約が生じる。オリジナルが、手許にないからだ。外付けディスクに Photos を保存する方法もあるが、例えば旅行中などそのディスクを接続していない際には、写真にアクセスできなくなってしまう。その上、iCloud 自体のみに依存するというのは確固たるバックアップ戦略とは言えない。私の回避策は、古い old Mac に大サイズの外付けディスクを接続して Photos を走らせ、そこで Download Originals to This Mac オプションをオンにしておくことだ。でも、誰もがそんな方法を実現できる訳ではない。
Lightroom CC のやり方は、もっと思慮深いものだ。Apple と同様、Adobe も Creative Cloud 上のコピーをあなたの画像のバックアップと捉えているので、Lightroom CC はバックグラウンドで画像ファイルを削除して容量を稼ぎ、そのファイルで作業の必要が生じれば再ダウンロードする。でも、それだけではさきほどと同じく信頼できるローカルなバックアップにはならない。
この問題の回避策として、Lightroom CC はオリジナルの写真ファイルを保存しておく場所としてあらかじめ外付けハードディスクを指定できるようにし、すべてのものを追跡するために Lightroom CC が使うデータベースをあなたのコンピュータの内蔵ディスクに残すようにした。例えばあなたが MacBook Pro を携えて旅行に出るなどその外付けドライブが利用できない場合には、編集する必要のあるオリジナルファイルがローカルに利用できなくても、どの写真でも Lightroom CC が Creative Cloud からダウンロードできる。
新規に読み込んだ画像は、内蔵ディスクに保存される。いったんその Mac がオリジナルのローカル保存用の外付けディスクに再接続されれば、自動的に Lightroom CC がすべての新規ファイルをその外付け保管場所へ移動させる。このようなセットアップの下では、その外付けドライブのバックアップを別途に管理してそこにフォトライブラリを保存しておくのも簡単だ。
写真を編集しようという際にインターネットアクセスがなくてその場でオリジナルをダウンロードできなくなるという状況を懸念する人たちのために、改訂版の Lightroom CC 1.1 では画像を Smart Preview つまりフルに編集可能な低解像度版として保存しておくオプションが追加された。
クラウドを使う費用 -- 当然ながら、価格も考慮すべき要因の一つだ。Lightroom CC は、Adobe の Creative Cloud 購読プランのどれかを購読していることを要する。購読料金は月額 $10 からだ。一方、Apple は Photos を macOS に内蔵させており、つまりこちらは無料だ。
その次に考慮すべきはクラウドストレージの料金だ。どちらのエコシステムを使うにしても、デジタル写真のライブラリに使うとなれば、いずれは追加ストレージ容量に料金を払うことになる。Adobe の購読プランとそれに付随するストレージの料金の概要は次の通りだ:
意外にも Apple のストレージアップグレードの方がお買い得だ。ただしもちろん、こちらを契約しても Adobe のアプリケーションが使えるようにはならない。(これらの価格が米国におけるものであることにご注意頂きたい。世界各国での価格は Apple のウェブサイトに記載されている):
Adobe がもっと競争力を高めるために値下げしてくれることを期待したい。
残念なことに、これらのクラウド(雲)はそれぞれ勝手な風に流されて別々に空に浮かんでいる。ストレージ容量を増やすため Creative Cloud のストレージレベルに追加料金を払うのではなく、Lightroom のライブラリを iCloud に (あるいは Dropbox やその他の場所に) 保存できるようになればどんなに素晴らしいかと思う。でも、多くの機械学習や各種サービスが Adobe のクラウド基盤構造の上にホストされている以上、それは実現しない夢でしかない。
未来に備えて今すぐ見てみよう -- あなたがどの程度本格的な写真家であるにせよ、時々あなたがフォトライブラリを管理する方法を再評価してみるのは良いことだ。なぜならこれは単なるファイルの話ではなく、思い出を扱う話なのだから。あまりにも長い間一つのものにしがみつき過ぎて、気が付くと急激な変化が必要になるということだけは、避けなければならない。もう一度ここで強調しておきたいが、例えば Aperture や iPhoto のユーザーの皆さんは、いつ終わってもおかしくない時間を過ごしていると自覚すべきだ。Photos で十分必要に足るという皆さんは、どうぞまだまだしばらくはそのまま続けられるとよい。あと一年経ったら、その時の状況に応じてまたお話ししましょう。
でも、写真にもう少しいろいろな編集操作ができるようになって欲しいと思っておられる方や、既に何か他の Adobe 製品を使っていて Creative Cloud エコシステムの中にいるという方には、ぜひ Lightroom CC を試してみることをお勧めしたい。私自身はまだ Lightroom Classic を使っているけれども、これを開く回数は以前よりずっと減った。その代わりに Lightroom CC も使うようになったからだ。高速で、すっきりしていて、最近の私が扱っているタイプの写真術のためにとてもうまく使いこなせるからだ。そこには、一回のワークショップと二回の家族写真撮影で撮った合計 3000 枚近くの写真が含まれる。
それから、もしもあなたが Lightroom CC を試してみようと思われるなら、その際ぜひ私の著書を横に置いて参考にして頂ければと思う。"Take Control of Lightroom CC" は既に発売中で、価格はたったの $15 だ。そして、私がこんなに説明してもまだやはり Photos を使い続けるという方には、Jason Snell がアップデートしたばかりの本 "Photos: A Take Control Crash Course" を見てみられることをお勧めする。
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文: TidBITS Staff: [email protected]
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>
Final Cut Pro X 10.4, Compressor 4.4, Motion 5.4 -- 新型 iMac Pro のリリースに合わせて (2017 年 12 月 15 日の記事“Apple、iMac Pro をリリース”参照)、Apple は Final Cut Pro X 10.4、Compressor 4.4、Motion 5.4 をリリースし、360 度 VR ビデオ対応に焦点を当てた。正距円筒図法のビデオをさまざまのフォーマットやフレームサイズのもの (平面視や立体視のフォーマットも含む) から Final Cut Pro と Compressor に読み込めるようになり、接続した VR ヘッドセットから Final Cut Pro と Motion へ 360 度ビデオを送ることもできるようになった。
Final Cut Pro からは、360 度ビューアから編集を施しながらヘッドセットと正距円筒図法表示を同時にモニターでき、Horizon オーバーレイを使ってビデオの向きを変更でき、パッチを使ってシーンからカメラやリグを削除できる。Final Cut Pro と Motion のいずれも、どのようなグラフィック、静止画、あるいは 360 度ビデオプロジェクトのビデオでも配置、位置替え、リサイズでき、360 度ビデオにぼやけや輝きなどの効果を適用でき、ビデオを YouTube、Facebook、Vimeo へ直接共有できる。Compressor は、業界標準の全天球メタデータを埋め込んだ 360 度ビデオの書き出し対応を追加している。
これら Apple のプロフェッショナル向けビデオ編集アプリには他にも非常に多数の新機能や改良、また重要なバグ修正が施されている。
Final Cut Pro X 10.4 ではカラーグレーディング用の新しいツールが追加され、インスペクタの専用カラータブにすべてのカラーコントロールが集められた。新しいカラーホイールはヒュー、サチュレーション、ブライトネスを調整できる統合スライダで従来のホイールを改良し、極めて精密な調整ができるカラーカーブや、画像の他の部分は変更せず明るさの調整ができるヒュー/サチュレーションカーブも備えた。
カラーグレーディング以外にも、Final Cut Pro には次のような改良や修正が加えられている:
High Efficiency Video Coding (HEVC) ビデオクリップと High Efficiency Image Format (HEIF) 写真の読み込み・編集・再生への対応を追加
iMovie for iOS プロジェクトを直接読み込んで高度な編集、オーディオ操作、仕上げ作業を実施できる
High Dynamic Range (HDR) ビデオを Rec. 2020 HLG または Rec. 2020 PQ for HDR10 で読み込み、グレーディング、配信できる
macOS 10.13 High Sierra を使っていれば 4 GB より大きな WAV ファイルを RF64 として読み込み・書き出しできる
ラップトップ機のディスプレイを閉じ外部モニタに繋いで High Sierra 上で Final Cut Pro を使う際に起こった安定性の問題を修正
ビデオ変換および出力用ツール Compressor のバージョン 4.4 でも HEVC ファイルへの対応を追加し、ビデオの映像品質を同等に保ちながら H.264 よりファイルサイズを最大 40 パーセント小さくしている。また、色空間変換と HDR メタデータ用のコントロールを提供し、HDR ビデオを Standard Dynamic Range (SDR) ビデオに変換することもできる。その他の点を挙げれば:
MXF ファイルのエンコーディングを、さまざまなコーデックとパラメータに対応するように実装
iPhone 上のムービーのフレームレートを正しく識別
Panasonic GH5 MP4 ファイルを ProRes に書き出すとファイル冒頭に 3 個の緑のフレームが作られた問題に対処
最後に、モーション・グラフィックス・ツール Motion 5.4 では、Motion プロジェクト、Final Cut Pro ジェネレータ、Final Cut Pro トランジション間でいつでも簡単に変換できるようになった。HEVC ビデオと HEIF 写真への対応を追加したことに加えて、今回のアップデートでは次のような変更がある:
モーション・グラフィックス・プロジェクトを Compressor に送信し HEVC フォーマットで書き出す
Metal を使って Optical Flow 解析を高速化、高品質化
新しい Overshoot ビヘイビアでキーフレームを使わずにリアルなスプリングアニメーションを作成
Time Date Text Generator 24 時間時計の問題点を解決
テキストシーケンスの中の文末の句読点のアニメーションを修正
これら三つのビデオアプリはいずれも今回最低限 OS X 10.12.4 Sierra を要するようになった。(いずれのアプリも無料アップデート。単独の購入では Final Cut Pro X 新規購入 $299.99、3.02 GB、リリースノート、10.12.4+; Compressor 新規購入 $49.99、393 MB、リリースノート、10.12.4+; Motion 新規購入 $49.99、2.38 GB、リリースノート、10.12.4+)
Final Cut Pro X 10.4, Compressor 4.4, Motion 5.4 へのコメントリンク:
Logic Pro X 10.3.3 -- Apple が Logic Pro X 10.3.3 をリリースして、新たにリリースされた iMac Pro (2017 年 12 月 15 日の記事“Apple、iMac Pro をリリース”参照) 用に最大 36 コアへの対応と、Sculpture と Amp Designer の最適化への対応を追加した。これらの変更により、従来のバージョンに比べて最大 12 倍のパフォーマンスが得られる。このプロフェッショナル向けオーディオアプリでは、APFS ボリュームを使っている Mac 上で Loops、Channel Strip 設定その他のコンテンツが再び使えるようになり、Sculpture に新たに高精細モードを追加し、Dual Mono または Multichannel で挿入されたプラグインでの遅延補正を修正し、すべてのズームレベルで領域を短縮化した際に VoiceOver カーソルが機能を失わないようにし、さまざまのクラッシュの問題を修正している。(Mac App Store から新規購入 $199.99、無料アップデート、1.35 GB、リリースノート、10.11+)
Mellel 4.0.3 -- RedleX が Mellel 4.0.3 をリリースした。長文の執筆のために作られたこのワードプロセッサで、バグ修正を狙ったメンテナンス・リリースだ。今回のアップデートではサイズの大きな書類でパフォーマンスが遅くなることに関係したいくつかの問題点を解消し、メモリリーク 2 件を塞ぎ、いくつかのクラッシュの問題を修正し、Markers パレットを使ってアウトライン項目にマーカーを適用する際の問題に対処し、URL を hyperlink URL フィールドに入力する際に URL エンコードされていない URL をペーストすると壊れたリンクが作成されたバグを修正している。(RedleX からも Mac App Store からも新規購入 $59、アップグレード $29、無料アップデート、92.4 MB、リリースノート、10.6+)
Moneydance 2017.6 -- The Infinite Kind が Moneydance 2017.6 をリリースして、投資ポートフォリオ画面のレイアウトを改善するとともにオンラインバンキングのセットアップ手順を簡素化した。この個人用財務マネージャはまた、通貨交換ツールウィンドウを修正し、debug フラグが設定されていなければ同期ファイルの書き込み時に Dropbox 通知を出さないようにし、オンライン取引の確認オプションを改善し、いくつかのファイル選択ウィンドウを呼び出すとクラッシュを起こした macOS 10.13 High Sierra のバグを回避し、債券価格として 10 桁以上の金額を正しく入力できなかったバグを修正している。(The Infinite Kind から新規購入 $49.99、TidBITS 会員には 40 パーセント割引、無料アップデート、102 MB、リリースノート、10.7+)
AirPort Base Station ファームウェアアップデート 7.6.9 および 7.7.9 -- Apple が、現行の 802.11ac Wi-Fi 搭載の AirPort Extreme および AirPort Time Capsule ベースステーション (これらのタワー型モデルはファームウェアアップデート 7.7.9 を受ける) と、旧型の 802.11n Wi-Fi 搭載 AirPort Express、AirPort Extreme、および AirPort Time Capsule モデル (こちらはファームウェアアップデート 7.6.9 を受ける) それぞれにファームウェアアップデートをリリースした。[訳者注: 日本では AirPort は AirMac と呼ばれています。]いずれのアップデートも KRACK 攻撃をパッチし (2017 年 10 月 17 日の記事“Wi-Fi セキュリティ欠陥 KRACK、言われる程悪くない”参照)、ステート管理を改善することで WPA マルチキャスト/GTK クライアントでノンス (nonce つまり Number ONCE、一度のみ使える任意の数) の再利用を阻止している。また、アップデート 7.7.9 ではメモリ破損の問題を修正することで Wi-Fi チップに対して通信範囲内にいる攻撃者が任意のコードを実行できた問題に対処している。AirPort ベースステーションのアップデートは、Mac 上で AirPort Utility を使って、または Apple の AirPort Utility アプリをインストールした iOS デバイスを使ってしなければならない。(無料、7.6.9 用リリースノート、7.7.9 用リリースノート)
AirPort Base Station ファームウェアアップデート 7.6.9 および 7.7.9 へのコメントリンク:
文: TidBITS Staff: [email protected]
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>
今週の ExtraBITS では、クレジットカードの署名が間もなく不要になり、FCC がネット中立性撤廃を採決し、またもう一人の元重役が Facebook を批判する発言をした。
クレジットカードの署名が 2018 年には不要に -- The Verge の記事によれば、Discover、Mastercard、American Express のクレジットカード三社が、2018 年 4 月以降には購入の際に署名を求めないようにする計画を発表した。そのお陰で Apple Pay がますます使いやすくなるはずだ。(American Express は世界中で署名を不要にするというが、残りの二社は現時点では米国内のみでの方針変更に留める予定だ。) 理論的には、署名は不正を予防するための要件だ。顧客の署名をカード裏面の署名と照合でき、後日検証することも可能だからだ。しかしながら、現実にレジ係が署名を照合することなどほとんどなく、非接触式の支払いの場合には照合できるものがなく、判読不能な署名を書く人も多く、その上いずれにしても今や多くの取引がオンラインでなされている。Visa は、この種の発表を何もしていない。
FCC、ネット中立性撤廃を採決 -- Ajit Pai 議長の率いる FCC が、インターネットサービスプロバイダ各社によるインターネット・トラフィックのブロック・回線速度低下・有料優先順位付けその他を禁止してきた Obama 時代のネット中立性規制を撤廃するための採決をしたが、これはもはや驚くほどのことではないだろう。Ars Technica の記事で、何が起こったのか、どうしてこのようになったのか、今後どうなるのかについて Jon Brodkin が要点を述べる。ネット中立性に対しては超党派の圧倒的な支持が多くのアメリカ人から寄せられているので、今回の FCC の採決はおそらく裁判所と議会の双方で異議申し立てを受けることとなるだろう。
元重役いわく: Facebook は社会から社会的構造を引き裂きつつある -- Chamath Palihapitiya の発言が、またもや新たな Facebook の元重役からの同社への批判となった。最近 Stanford 大学での講演の中で、彼は「社会を動かす社会的構造をビリビリに引き裂くためのツールを私たちは作り出してしまったようだ」と語り、彼自身がそれに関与したことに「途方もない罪の意識」を感じていると述べた。Palihapitiya は遠回しな言い方などしない。「私たちが生み出した、ドーパミンで突き動かされるごく短期のフィードバックループは、社会の動き方を壊しつつある。社会的慣習にかなった会話も、互いの協力もなく、誤報と歪曲された言葉が飛び交う。そしてこれはアメリカ人の問題でも、ロシア人の宣伝の話でもなくて、地球全体の問題なのだ。」Facebook でユーザー増加を担当した副社長まで登り詰めた Palihapitiya のこの発言は同社の神経に障ったらしく、自らを擁護する声明を出すという Facebook としては異例の対応をした。「Chamath が Facebook にいた時期の私たちは、新しいソーシャルメディア体験を築くことと Facebook を世界中に成長させることに集中していました。当時 Facebook は今とは非常に違った会社であり、その後の成長に応じて私たちは自らの責任がどのように増してきたかを自覚するようになったのです。」興味深いのはこの声明の中で Facebook が Palihapitiya の批判を否認している訳ではないことだ!
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