TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS-J#327/06-May-96

今週の大ニュースはライセンス関連。Apple 社が Java を Sun Microsystems 社から取得、Mac OS に統合する計画を発表した。また IBM 社が Mac OS を Apple 社から手に入れた。さらに今週号では、Power Computing 社の 高速 Mac の新製品に関する情報、Tonya の新しい HTML 作成ツール、 PageSpinner 試用記を。最後は、Sean Peisert 氏のほとんどのユーザー が使わなければならないツールを集めたレビュー、テキストエディタだ。

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Kaz Yoshikawa <kaz@fact.com>
尾高 修一  <odaka@iprolink.ch>
尾高 里華子 <odaka@iprolink.ch>
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米谷 仁志  <comet@po.iijnet.or.jp>
齊藤 聡   <akkun@ca2.so-net.or.jp>
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水木 潔   <HGH03125@niftyserve.or.jp>
村上 浩   <murasan@yk.rim.or.jp>
矢倉 遠十吉 <oto@mb.infoweb.or.jp>
山浦 礼子  <raeko@aol.com>

目次:


MailBITS/06-May-96

(翻訳::矢倉遠十吉 <oto@mb.infoweb.or.jp>)
(   尾高 修一 <odaka@iprolink.ch>)

Tonya と私は Internet Starter Kit for Macintosh の第 4 版の仕事に没 頭している。そのため、しばらくの間メールを出すのが遅れがちになると 思う。

もし、あなたが自由に配付できるフリーウェアやあるいはシェアウェアの インターネットプログラムの作者であれば、私は書籍に添付される CD に あなたのプログラムを入れることを検討したいと思う。自由に配付可能な デモバージョンのある商用のインターネットプログラムについても同様だ。 そこで、もし CD にあなたのプログラムを収録する希望があれば、以下の アドレスにある Web フォームに記入してほしい。

<http://www.tidbits.com/iskm/cd_form/cd_submit_form.html>

同様に、もしあなたが PPP をサポートしているインターネットサービスプ ロバイダー(世界のどこであろうと)であり、書籍とインストーラの中へ の収録を希望するなら、<iskm-providers@tidbits.com> 宛てにメールを 送ってほしい。私たちは名前を収集し、そして Web のサインナップフォー ムを送付してもらえれば、より多くの情報を送りだせるだろう。[ACE]

IBM 社広範囲での Mac OS ライセンスを取得 -- TidBITS-324 に記載し たように、IBM 社は今日、Mac OS の各メーカーへの 2 次ライセンス供与 を含む PowerPC プロセッサを販売することに関して Apple 社と合意した ことを発表した。ご存知のように、 IBM 社は Mac クローンを製造する計 画を表明していないことであるが、それはかわりにデザインスペックのガ イドラインやライセンスそして論理回路部品を PowerPC プラットフォーム を作ろうとする他の企業に販売するということなのだ。反対に、これらの 企業は Mac クローンを開発したり IBM 社から直接 Mac OS のライセンス 供与を受けたりすることを選択できる。そして、それらについては Apple 社と交渉する必要などないのである。 Datatech(DTK) Enterprise 社と Tatung 社は IBM 社から Mac OS の2次ライセンス供与の計画を発表する予 定である。他の企業はすでに PowerPC プラットフォームに対するサード パーティ製品を発表したが、それはシステム企業が PowerPC プラット フォームで Mac OS コンピュータを組み上げるのを促進するものだ。また、 IBM 社は Mac OS のために OS/2 を外す計画だという噂もある。[GD]

<http://www.ibm.com/News/ls960506.html>

PowerTower & PowerCenter -- Power Computing 社は先週 Mac クローン の 2 つの新しいラインナップを発表した。それは入手可能なもので最速の 単一プロセッサを搭載した Mac が含まれている。 Power Tower のライン は PowerPC 604 プロセッサをミニタワー型の躯体でめまいのしそうな 166 あるいは 180 MHz で走らせることを誇っている。それには 3 つの PCI ス ロットと最小で 16 MB の RAM 、4 倍速 CD ドライブそして 4 つのドライ ブベイが装備される。 PowerCenter のラインは、低層ケース(120 MHz) あるいはデスクトップケースの場合 120、 132 または 150MHz の PowerPC 604 で、3 つの PCI スロットと最小で 8 MB の RAM が装備される。 PowerTower は 3,800 ドルの価格帯で、 PowerCenter は 1,900 ドルぐら いからである。テストの結果では PowerTower が Apple 社ハイエンド機種 の Mac 9500/150 に対して、わずか 5 から 15 % 優っている。けれども、 それらは7200のマザーボードデザインをベースとしているために(150 MHz を超える PowerPC 604 機種を作ることが可能な現段階で唯一のもの)、メ モリ・インターリーブを使用できない。前回のモデル同様 Power Computing 社のマシーンはキーボード付きで出荷され、価値の高いソフトウェアがバ ンドルされる(PowerTowers には Speed Doubler が含まれる)。そして、 30日間の返品保証がある。 [GD]

<http://www.powercc.com/>

Web 最前線をアップデート -- 最近の Web ブラウザアップデートに関す る記事( TidBITS-326 を参照)を書くとすぐに、そう、時節遅れになっ てしまうのだ。 Netscape 社は先週 Navigator のバージョン 2.02 をリ リースした(主にセキュリティの問題を解決)。一方、 NCSA は Mosaic の 3.0b2 をリリースした。そして Apple 社の Cyberdog のベータ 4 も現 在入手可能である(もしあなたが Power Mac と OpenDoc をお持ちなら)。 [GD]

<ftp://ftp.netscape.com/pub/navigator/2.02/mac/Netscape2.02Installer.hqx>
<ftp://ftp.ncsa.uiuc.edu/Mosaic/Mac/NCSAMosaic30b2.hqx>
<http://cyberdog.apple.com/>

Quicken 6 R7 -- Intuit 社は Quicken 6.0 for Macintosh のリリース 7 を発表した。このリリースは、Quicken のオンラインバンキング機能に あった制約を取り除き、ユーザーから報告された「少々の」問題を解決し たものだ。ダウンロードファイルサイズはバージョンによって 1.2 MB か ら 3.4 MB となっており、あなたがどのバージョンを必要としているかに よる。[GD]

<http://www.qfn.com/quicken/technical-support/quicken/releases/qfm6-releases/>


Apple 社 Java をライセンスする

by Geoff Duncan <geoff@tidbits.com>
(翻訳:齊藤 聡 <akkun@ca2.so-net.or.jp>)

Apple 社は先週 Sun 社の Java プログラミング環境のライセンスを受け、 現在の Java ライセンス許諾会社の膨大なリストに加わったと発表した。 Apple 社は CyberDog を含めたメディアおよびインターネットの技術にと どまらず、(Mac OS、Newton および Pippin を含む)自社のオペレーティ ングシステムと Java を統合する計画であると言っている。Apple 社は自 社のオペレーティングシステムに Java の導入を計画している唯一の会社 というわけではない。Novell 社、Microsoft 社、SGI 社、IBM 社等が同様 な戦略を発表している。Apple 社が Java を直接サポートするようになる までにどのくらいの時間がかかるかを考えると、この発表が現在 Java を Macintosh に導入しつつあるデベロッパーにどんな影響を与えるか疑問に 思わざるを得ない。

<http://product.info.apple.com/pr/press.releases/1996/q3/960430.pr.rel.java.html>

クロスプラットフォームアプリケーション技術としての Java の悪夢のシ ナリオの一つはクライアントのプラットフォームに無頓着になり、インター フェースや機能のあらゆる規則を捨て去る原因になりかねないことだ(も しも、いまでも Microsoft 社のアプリケーションが Apple 社のヒューマ ン・インターフェース・ガイドラインをねじ曲げていると思っているなら、 Microsoft や他のベンダーからの Java ベースのアプリケーションを目に するまで待つといい!)。これに対して、インターフェース・ライブラリ として OpenDoc を Java に統合することを Sun 社に納得させるキャンペー ンが展開されつつある。OpenDoc はすでに(Java と比較して)比較的成熟 した技術であり、クロスプラットフォームのためのインターフェースとア プリケーションデザインを念頭にして構築されている。Java あるいは OpenDoc で開発を計画しているなら、そのアイデアは調査する価値がある。 [GD]

<http://summary.net/~breck/java-opendoc.html>


PageSpinner 出現

by Tonya Engst <tonya@tidbits.com>
(翻訳:Kaz Yoshikawa <kaz@fact.com>)

世界のシェアウェア Web オーサリングツールのメンバーに、スウェーデン の Optima System 社による PageSpinner という新しい製品が仲間入りし た。価格は 25 ドル。 PageSpinner はシステム 7 以上と 1,800K のアプリ ケーションメモリを必要とし、 68020 プロセッサ以上の Mac で動作する が、サイズの大きなファイルを作業するには、68040 又は PowerPC 搭載の Mac を Optima System 社は推奨している。さらに、カラーもしくはグレー スケールのモニタ、640 x 400 ピクセル以上の表示能力を持つモニタを必 要とする。現在リリースされている PageSpinner のバージョンは 1.0.4 であるが、私は他にいくつかの機能が追加されている 1.1b1 をレビューし ている。読者がこの記事を読んでいる頃には 1.1b2 が登場しているかもし れない。

PageSpinner の最新バージョンは Optima System 社の Web サイトより ダウンロードが可能だ。また Info-Mac にても最新版を入手可能であるよ うだ。

<http://www.algonet.se/~optima/pagespinner.html>
<ftp://mirrors.aol.com/pub/info-mac/text/html/page-spinner-104.hqx>

PageSpinner は Miracle Software 社の HTML Web Weaver/World Wide Web Weaver によく似ていて、私の様にがんじがらめのサイト管理機能を必要と しない人または、HTML を習う事を苦にしないがタグやシンタクッスの習得 の為に補助が必要な人、にはピッタリだ。これらの製品が HTML をこれか ら学ぼうとする人達への非常によくできた入門ツールであるといえる。 (Miracle Software 社の製品に関する詳細は TidBITS-317 を参照されたし)

PageSpinner は他の Mac 上の Web オーサリングプログラムでは滅多に (あるいは、全く)見かけない、いくつかの新しい機能とアイデアが導入 されている。特にタグ付けを行うコマンドがメニューまたはダイアログボッ クスに現われるとき、HTML 2.0 に含まれないタグについては、それが HTML 3.0 のタグなのか Netscape 拡張のタグであるのかを、隣にアイコンを表 示して教えてくれる。さらに、PageSpinner には新しくドキュメントを作 成する際のダイアログボックス内に、単に選択しただけでプレビューが表 示されるいくつかの手軽なテンプレートが付属してくる。このダイアログ はよくできていて、バックグランドやテキストの色、背景のタイリングな どなどを設定可能だ。

PageSpinner はツールバーを備えているが、きょうび出回っているツール バーのようにボタンをすき間なく詰めて並べたものではなく 、ほどよい大 きさのボタンのグループ間に空間が設けてあり、ほとんどのものより操作 が簡単になっている。さらに興味深い事に、PageSpinner は HTML アシス タント浮動ウインドウという、任意に開いた状態にしておく事ができるウ ンドウを装備している。HTMLアシスタントはリンクの作成や、テーブル の作成、フォームインターフェースの設定を含むおよそ 12 種の作業に貢 献してくれるのである。

各々の HTML アシスタントタスクには、例題のボタンがあり、そのボタン をクリックすると、何種類ものリストやテーブルといったミニテンプレー トが用意された HTML の例題ダイアログが表示される。(テーブルなどの タスクには、複数テンプレートが用意され、フォームなどの他のタスクに は何も用意されていない)。それらのテンプレートは HTML コードと同様 にビジュアルに、あるいは HTML コードとしてプレビューでき、そのコー ドを例題ダイアログから自分のドキュメントにコピーする事ができるのだ。 私が HTML アシスタントや HTML 例題を偉大であると思う理由は、それら が利用者にこのプログラムがどんなコマンドがあるかを提供するのではな く、それらをいかに有効に活用するかといった理解を助けるものである点に ある。そういった意味で、PageSpinner は HTML の学習曲線の向上に貢献 するといえる。

また、Web オーサリングツールによくある 32K のファイルサイズの制限に おいて、 PageSpinner はそれよりも大きなサイズを扱う事が可能である。

多くのオーサリングツールがそうであるように、PageSpinner はテキスト と HTML タグをドキュメントウインドウ上に表示する。テキストは Web 上 に表示される形式(ヘッダは大きく、bold は太く等)と同じ様に表示され る。タグは深い灰色で表示され、テキストとは異なる事を一目で判断可能 だ。またデフォルトのフォントとその大きさをタグとテキストにそれぞれ 設定が可能である。

他の似たような Web のオーサリングツールと異なり、PageSpinner のタグ は独立したオブジェクトである。つまりタグは絶対にボディのテキストの ように表示されないのである。PageSpinner を、編集可能なタグ、編集可 能だが消去できないタグ、どうやっても変更できないタグのどれかに設定 できる。自分独自のタグを PageSpinner で入力したのであれば、それは独 立したタグオブジェクトに変換されて認識されるのである。

同様に、もし PageSpinner 自身以外で作成された HTML ドキュメントを開 くのであれば、PageSpinner から Restyle コマンドを利用して、自分で書 いたタグを PageSpinner のタグに変換する事が可能だ。Restyle コマンド は PageMill の新しい PageMill 変換機能をを経由して取り込まれたドキュ メントにも同様に機能する。 PageMill 変換は <BR> 訂正に関連した問題 に対してある程度の柔軟性がある。しかし、それはテキストを“きれいに 印刷”はしてくれるものではない(きれいに並べ変えてはくれるのではあ るのだが)。(Adobe 社はこの <BR> 問題を 7月までに、 PageMill 2.0 で解決するべく計画している。詳細は TidBITS-325

PageSpinner 1.1b1 はテーブル作表機能が改善され、テーブルをゼロから 作成する際、タブで区切られたテキストを変換して作る際、のどちらの場 合も便利になった点を誇っている。(アシスタント上でテーブルを作成す るのであれば、Table メニューを使って付加するタグを付け加えたり更新 したりできる)。新バージョンでは関連リンクとアンカーが適切に処理さ れている。

PageSpinner のドキュメントにアクセスする為には Help メニューから Apple Guide を利用可能だ。ドキュメントは良く書かれているが、私はさ らに詳しく書かれていてもよいと思う。また HTML の他の例もみたい。私 は近頃、 HTML フォームの世界を研究しているので、例題がいくつか用意 されればありがたいものだ。

私は、PageSpinner を全ての面で評価したわけではないが、同製品が今の 調子でもたもたと改善されていくのであれば、同製品の評価は捕えどころ がない。また、私は PageSpinner の Find/Replace、Web Tool メニュー、 そして他の幾つかの役に立つ機能についても評価を見送った。おそらく、 読者は同製品が完全ではない事がわかると思うが、しかしユニークな機能 や、HTML をかじってみたい人向きの機能、HTML の習得において学習曲線 を一気に向上させたい人向きの機能は一見するに値するであろう。


テキストエディタ - ASCII を自由自在に

by Sean Peisert <speisert@ucsd.edu>
(翻訳:西村 尚  <hisashin@st.rim.or.jp>)
(   村上 浩  <murasan@yk.rim.or.jp>)

Macintosh ユーザーはテキストエディタに漠然と親しんでいるだけだ。 SimpleText がテキスト文書を開き、コントロールパネル類で自分のマシン を設定するわけだから、コンフィグレーション・ファイル類を編集する必 要などめったにない。それでも、オンライン・ワールドの急激な膨張はテ キストのみの(ASCII)文書を読み、編集するツールへの強い要求を作り出 した。それはニュースへの投稿や電子メールから ReadMe ファイル、FAQ 類、HTML に至るまで、ASCII がオンライン用文字データの標準規格だから である。

テキストファイルはワードプロセッサが一つあれば開ける。多くの人にとっ てはそれで十分だ。しかし、テキストエディタの方がより効率的な代用品 になることもよくある。テキストエディタはワードプロセッサといくらか 類似するところもあるが、基本的にフォントやグラフィック、特殊文字、 余白、印刷出力といったものには無縁だ。その替わり、テキストファイル を実用的に操作できるように設計されている。

この記事では優れた、一般に入手しやすいテキスト編集ツールの概略を紹 介する。自分の目的にはあれよりもこれの方が合っているということはあ るかもしれないが、これらのエディタはすべてとびきり上等のプログラム たちだ。あるエディタが含まれていないからといってそれが優秀ではない というわけではなく、単にそれを含めるスペースがなかったにすぎない。 同様に、この記事は 2 つの人気のあるテキスト編集の“怪物”を扱ってい ない。Alpha と商品版の BBEdit がそれだが、それはその 2 つだけで評価 記事を書くに値するからだ。

求めるもの -- テキスト処理ツールを選択するときに、心に留めておく べきいくつかの要素がある。第一にそのプログラムが 32K 以上の大きさの ファイルを開けるかどうかだ。この制限は Apple 社の SimpleText の主な 機能不足の一つで、ファイルによっては問題とはならないが、FAQ などの オンライン文書は 32K よりも大きいものが多い。ここで扱うプログラムは すべて 32K 以上のファイルを開くことができる。

古いテキストエディタに関する不満の一つは“ソフト・ラッピング”への 対応を欠いていることだったが、もうそんなことはない。ここにあるエディ タはすべてソフト・ラッピングをサポートしているし、それはほとんどの ワードプロセッサがやるのと同じだ。(テキスト行が余白などあらかじめ 調整した境界に達すると、プログラムは残りのテキストを文字の並びを変 えることなく次行に移動する。)反対に、ハード・ラッピングは目に見える える各行の終わりに復帰文字を挿入して、その行を“強制的に”区切る。 ほとんどの電子メール、ニュース投稿などのオンライン文書(TidBITS の 各号を含む)はハード・ラッピングを用いているはずだ。

オペレーティング・システム(UNIX や DOS、Mac OS)が違えばハード・ ラップされた各行の終わらせ方も違う。初期設定では、Mac は復帰文字を 使って、UNIX は改行文字を使い、DOS は両方を使う。ここにあるエディタ は、行の折り返しやファイルをある方式から他の方式へ変換することをそ れぞれ違うやり方で扱う。したがって、あなたは自分のニーズに合ったツー ルを選択したいと思うだろう。

BBEdit Lite 3.5.1 はフリーウェアのエディタで、Bare Bones Software 社の商品版テキストエディタである BBEdit 3.5.1 によく似た親戚だ。 BBEdit は本来プログラマ用に考案されたが、数年を経て著しく進化した。 BBEdit は現在 2 つのプログラム(一つは商品版、一つはフリーウェア) に別れている。BBEdit 3.5.1 と Lite 3.5.1 の相違点は BBEdit Lite と 共に配布される ReadMe ファイルに広く扱われている。

<http://www.barebones.com/>

BBEdit Lite は最近は他の多くのエディタが持っている、例えばドラッグ & ドロップのような機能を欠いているし、スクリプト処理機能もない。し かし、BBEdit の最新版では、ソフト・ラッピングをサポートし、Power Mac ネーティブ・コードをいくつか含んでいる。BBEdit Lite は周りで最速の エディタの一つで、それはその起動の速さを見れば一目りょう然だし、900K のファイルを開くのにたった 3 秒しかかからない。(テスト用には Power Mac 6100/60AV を、大量の RAM、System 7.5.3 と Connectix 社の Speed Doubler 中の Speed Emulator のもとで、可能なかぎりすべて Power Mac ネーティブかファット版のプログラムと共に使った。)このすさまじい速 さは、ここでレビューした他のいくつかのエディタの 4 倍から 5 倍 の速度である。

BBEdit Lite は狭いディスク領域しか占めず、RAM の使用量も少ないし、 Apple イベントを認識する。だから Anarchie のようなアプリケーション と連携して使ってテキスト文書を閲覧できる。BBEdit Lite は CodeWarrior や Symantec C++ のようなプログラミング環境のためのエディタとして直 接的に他を統合するものではない。

BBEdit Lite はシステムメモリを使うことで軽い RAM 使用を達成してい る。BBEdit Lite の割り当てメモリを越える文書を開くと、BBEdit Lite のアプリケーション使用領域外のメモリをシステムに要求する。(多くの アプリケーションがサウンドや QuickTime で同様のことをやっている。) そういうメモリが使用可能なら、BBEdit はそのファイルを難なく開くの で、BBEdit のメモリ割当てを小さく保っておいて、なお大きなファイルを 扱えるのだ。

BBEdit はクールな機能も欠いてはいない。その強力な検索エンジンは grep 表現と複数ファイル検索をサポートしている。(ワードの検索に加えて、 grep は複雑なパターンの検索ができる。典型的な検索エンジンはワードか フレーズを探せるだけだ。)BBEdit には“釣り合い”機能があり、丸かっ こや大かっこ、引用符などの半端な組を同一のものにする(プログラミン グや HTML ライターに便利だ)。

BBEdit Lite のパワーの多くは BBEdit エクステンションに組み込まれて いる。これらのエクステンションはシステムフォルダに入れるのではない。 替わりに、BBEdit が規定した特殊なフォルダにインストールし、その後 BBEdit 内の一つのメニューからそれらを選択する。エクステンションは、 例えば HTML 作成、日付や時間の挿入、行の並べ替え、テキストの読み上 げなど、多岐にわたるタスクのために書かれている。こういったエクステ ンションが BBEdit Lite を最初に登場した以上に強力にしている。

<ftp://mirror.aol.com/pub/info-mac/text/bbe/>

Emacs -- このコーネル大学製 GNU Emacs の移植版は GNU Emacs エディ タからと聞いて期待するまさにそのものだ。

<ftp://ftp.cs.cornell.edu/pub/parmet/>

GNU Emacs は広く配布されているテキストエディタで、オリジナルは Free Software Foundation によって開発され、UNIX やその他のオペレーティン グ・システムの特徴をほとんどそのままに、Macintosh と PC で利用でき るように移植されている。Emacs は“モード”を使ってキー・バイディン グ(コマンド群が特定のキーに“連結された”もの)とエディタの機能の し方を変更する。モードは C プログラミング、HTML 作成、標準的なテキ スト編集など多くの目的に合わせたものを利用できる。このモジュラ方式 が Emacs を現在手に入るエディタで最も高機能なものの一つにしている。

この Mac 版 Emacs は基礎的な使用では特別なキー操作を必要としないが、 キーストローク・バインディングは Emacs を非常に強力にしているもの だ。Emacs の利点を完全に使いこなすということは、何百というキー操作 を記憶することを意味するが、使っていくうちに覚えられる。この Mac 版 には UNIX 版 Emacs のテキストエディタ・モードにあるものはすべて含ま れる(電子メール、ニュース、シェル機能は除く)が、おまけの機能も 2、 3 追加されている。初期値では、テキスト・ウインドウは明るいグレイで、 モニタの前に長い時間いても目が疲れることをかなり減らしている。(こ のプログラムの中で使われるカラーはすべて編集可能だ。)ここに取り扱っ たエディタのほとんどと同じく、Emacs は UNIX、DOS、Mac の ASCII フォーマットに自動的に対応してくれる。通常の Emacs は“Control”と “Meta”機能変更キーの使用を必要とするが、Mac 版 Emacs は Control と Meta の役割をどんな機能変更キーにも割り当てられる。

Emacs のパフォーマンスは驚くべきものだ。テストとして、900K の送信用 メールファイルで 2,088 件ある“from”から“with”への置換をやってみ た。Emacs は 1 秒ですべての対象を検索・置換した。BBEdit Lite は 9 秒、PlainText は 62 秒、Style は 3.5 分、Text-Edit Plus は 4 分 45 秒かかった。

残念なことに、Mac 版 Emacs が UNIX を起源とする結果、非グラフィカル でわかりにくいものになっている。例えば、Emacs ウインドウにはスクロー ルバーがないし、マウスを使ったテキスト選択もできない。Emacs は CodeWarror のインターフェースになるが、これは UNIX システムで Emacs を使って育ったプログラマには素晴らしい。現行版 Mac 用 Emacs は UNIX 側のバージョン 18.59 と緊密な関係を持っている。UNIX 側の現行バージョ ンはバージョン 19.x だ。Mac 移植版の作者はバージョン 19.x を移植し たいと語っているが、性急になにかを期待すべきでないだろう。

[Alpha も偉大な、洗練されたテキストエディタで、ここに取り上げられて はいないが、これも Emacs の機能を数多く備えている。 -Geoff]

<ftp://www.cs.umd.edu/pub/faculty/keleher/Alpha/>

Plaintext 1.6.1 は、神経生物学の教授である Mel Park 氏が空き時間 を利用して開発したフリーウェアのテキストエディタである。Plaintext の長所は、そのシンプルさと、違うプラットフォームのテキストファイル を変換するオプションが多様な点である。

<ftp://nb.utmem.edu/pub/plaintext/>

Plaintext には他のエディタにはほとんどみられない機能がいくつかある。 一つはブックマークのサポートである。特に長い書類を扱っていて、自分 が何処を読んでいるのか憶えておきたい時や、重要な句を書き留めておき たい時に、マークを設定しておくことができる。Mark メニューから設定し ておいたマークを選択すれば、すぐにその場所へジャンプできるし、ファ イル中にマークをたくさん設定することもできる。Plaintext にはカラム 編集機能もあり、縦列を選択することができる。また、ちょっとしたコマ ンドライン言語もサポートしている。

Plaintext のコマンドライン命令のほとんどは、Unix コマンド(find、 ls、 pwd、cat など)で、MPW シェル(MPW は Macintosh Programmer's Workshop の略で、Apple 社が開発した Unix ライクなプログラミング環境 のことである。)に敬意を表して作者が取り入れたものである。これらの 単純なコマンド(コマンド名を入力し、Return キーではなく Enter キー を押すことで実行される)のオーバーヘッドはメニューやダイアログボッ クスより小さいため、 Plaintext はより小さく均整のとれたアプリケー ションになっている。ほとんどのコマンドはメニューバーからも実行可能 である。

Plaintext は最近何度かアップデートしており、バグの修正や、機能もい くつか追加されている。Plaintext はほぼ完全に Apple イベントを履行し ているが、AppleScript 用語辞書は持っていない。Plaintext はドラッグ & ドロップをサポート(この機能は BBEdit にはない)しており、Park の 話では、将来的には AppleScript を完全サポートする予定で、OpenDoc を サポートする可能性もあるとのこと。

SaintEdit は、Craig Marciniak 氏が 1992 年に紹介し、最近アップデー トしてバージョン 1.5b13 となった 10 ドルのシェアウェアである。この 2 年間は冬眠していたような感じであったが、高機能化したバージョン 2.0 で復活を遂げようとしている。この新バージョンは WASTE エンジンを基礎 としており、スペルチェッカ、改善されたインターフェース、 AppleScript のサポート、ドラッグ & ドロップ、多種多様な変換/検索/置換オプショ ン、テキストの読み上げ、HTML マクロを備えるもよう。Craig は公開ベー タ版をもうすぐ発表すると約束している。

<ftp://mirror.aol.com/pub/info-mac/text/saint-edit-15b13.hqx>

Style 1.4 Marco Piovanelli 氏による 10 ドルのシェアウェアである。 “スタイル付きテキストエディタ”と称されるように、Style は複数のフォ ント、テキストスタイル(ボールドなど)、フォントサイズ、カラーの使 用と、テキスト揃えをサポートしている。また、サウンドやグラフィック の埋め込みもサポートしている。Style は SimpleText 書類を読むことも 作成することもできるし(スタイルはそのまま)、Style 独自のフォーマッ トではなくテキストとして書類を保存すれば、SimpleText から Style の 書類を読むこともできる(スタイルはそのまま)。Style は Marco の WASTE テキストエンジンを使っているため、32 K 以上の書類を扱うことも できるし、WorldScript を介して多国語を使用することもできる。日本語 やロシア語などの書類を作成するには、ありがたい機能であることは間違 いない。

Style はいくつか優れた技術をサポートしている。XTND、ドラッグ & ド ロップ、Internet Config といった技術であるが、加えて Style はファッ トバイナリであり、AppleScript 記録機能もサポートしている。Style は BBEdit や Tex-Edit Plus に似たメモリ管理手法をとっており、Style の メモリ区画に空き領域がなくなった時には、一時的なメモリを使用する。

Style には気の効いた機能がほかにもいくつかある。Window メニュー、 Smart Quotes、オートインデント、基本的な検索と置換の機能、ライン フィード変換、多様なスクリプト機能、コマンドキーを割り当てられる特 別なスクリプトメニューなどである。AppleScript を Style Script フォ ルダにドロップさえすれば、メニューアイテムとしてそのスクリプトが現 れるのだ。Style にはサンプルのスクリプトとドロップレットがいくつか 付属している。

<ftp://mirror.aol.com/pub/info-mac/text/style-141.hqx>

Tex-Edit Plus 1.7.0 は、Tom Bender 氏による 10 ドルのシェアウェア で、Plaintext と SimpleText の双方の機能をうまくブレンドした SimpleText の機能強化版といった感じのエディタである。現バージョンは Power Mac ネイティブで WASTE エンジンを搭載しており、大幅に改良され た速度が自慢である。日本語版 Tex-Edit Plus 1.7 も入手可能。フランス 語版もまもなく発表されるはずである。

<ftp://mirror.aol.com/pub/info-mac/text/tex-edit-plus-17.hqx>
<ftp://members.aol.com/tombb/>

Plaintext のように、Tex-Edit Plus は Mac、Unix、DOS のテキストファ イルを変換することができる。検索/置換機能も良く出来ていて、タブや キャリッジリターンなどの特殊文字を簡単に扱うことができる。Modify Document メニューはすばらしく便利な変換機能を有しており、巻き引用符 と通常の引用符、省略符号、ダッシュ、スペースなど、ワードプロセッサ やデスクトップ出版用プログラムでよく使う特殊文字を変換することがで きる。

Tex-Edit Plus は膨大な Sound メニューを持っており、テキストの読み上 げや音声レコーディングのオプションがある。今回レビューした全てのテ キストエディタは書類を見る際に別のフォントを設定できるのだが、 Tex-Edit Plus は同じ書類中で複数のフォント、サイズ、スタイルが使え る。むしろ、SimpleText、Style、代表的なワードプロセッサに近いといえ る。Tex-Edit Plus のボーナス的機能のひとつは 、SimpleText 書類を開 いて、そのフォーマット(インライン画像を含む)を表示できることだと 作者はコメントしている。ほかのエディタには全くみられない機能である。 また、Tex-Edit Plus はリードオンリーの SimpleText ファイルを開くこ ともできる。

ほかに便利な機能としては、日付と時間の挿入、行番号を指定してのジャ ンプ、ドラッグ & ドロップ、テキストの行揃えなどがある。ひとつ厄介な 点があるので警告しておく。Shift-Delete で前方削除するのだが、この機 能をオフする手段がないのだ。これさえなければ、このプログラムは非の 打ちどころがないと思われる。Tex-Edit Plus も BBEdit Lite や Style 同様、一時メモリを使用しており、プログラムのメモリ割り当てを増やし て再起動しなくても、かなり大きなファイルを開くことができる。

新バージョンは近々入手可能となる予定で、非表示文字も表示できるし、 AppleScript 記録機能と QuickDraw GX もサポートすると作者は語ってい る。

結論 -- どのエディタを使うかは、その用途が何かに大きく依存する。 グラフィックとか、フォント、サイズ、スタイルを複数使ったテキストを 作成(SimpleText の ReadMe ファイルのように)するためには、Tex-Edit Plus か Style を選択するしかない。ほかのエディタはこれらの機能をサ ポートしていないのだ。Style の長所がその Script メニュー、URL をコ マンドクリックできる点(Internet Config の助けを借りて)、それに WorldScript 対応の WASTE エンジンであることは疑いない。Tex-Edit Plus には、ほかにもすばらしい機能がいくつかある。検索と置換は他よりすぐ れているし(処理は遅いが)、サウンドを書類に埋め込むこともできるし、 変換オプションも他のエディタより豊富である。

グラフィックや複数のフォントサイズを含んだファイルを作成する必要が ないのであれば、BBEdit Lite か Plaintext もしくは Emacs が選択肢で ある。BBEdit Lite は小さく、速くて、エレガントなテキストエディタで ある。そのインターフェースと信頼性はすばらしく、ブログラミング、 HTML 編集、ASCII テキストの構成、また単に書類を見るにも、すぐれた道 具である。Bare Bone 社がソフト・ラッピングを BBEdit Lite に組み込む ことを決定したことで、さらに多目的なテキストエディタとなり、ほとん ど全ての人の要求を満たすことができる。BBEdit Lite は完全な(まして や、それに近い) Power Mac ネイティブではないのだが、依然としてその 動作は速い。完全にネイティブな PlainText よりもずっと速いのである。

BBEdit Lite のエクステンションやテキスト変換能力を越えた変換機能が 必要であれば、Plaintext を選択すると良い。Plaintext は他のエディタ ほど広範囲な機能を備えてはいないが、堅実なプログラムである。Emacs はほかのどんなエディタと較べてみても、かなり特異な存在である。Mac 初心者や一般ユーザーには薦められないが、Unix 版を使い慣れた人なら、 この移植版がすばらしい出来であることが分かるであろう。


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