TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS-J#329/20-May-96

WWDC を終え、Macintosh の世界はガヤガヤしている。そう、Mac OS の次期 のバージョン、あるいは QuickTime や Macintosh 用の Linux といった、 Project X のような Apple 社の技術についての情報を以下でチェックし よう。そして今週は、Apple 社の Open Transport と、LocalTalk Brigde や LaserWriter Bridge の使用についての詳細、TidBITS について皆が知 りたいことすべて、そして Robert Hettinga による「Apple、ビッグ・ビ ジネス、そしてインターネット」についてのちょっと挑発的なエッセイを お届けしよう。

今回の TidBITS のスポンサーは:

Copyright 1990-1995 Adam & Tonya Engst. 詳細は末尾を参照してください。
問い合わせは <info@tidbits.com> へ、感想は <editors@tidbits.com> へ。

TidBITS 日本語版は以下のメンバーのボランティアによって翻訳されています。
Kaz Yoshikawa <kaz@fact.com>
尾高 修一  <odaka@iprolink.ch>
尾高 里華子 <odaka@iprolink.ch>
小山 純一  <vb4j-oym@asahi-net.or.jp>
加藤 たけあき<oiso@wolfenet.com>
米谷 仁志  <comet@po.iijnet.or.jp>
齊藤 聡   <akkun@ca2.so-net.or.jp>
杉浦 雄一郎 <ysugiura@direct.ca>
水木 潔   <HGH03125@niftyserve.or.jp>
村上 浩   <murasan@yk.rim.or.jp>
矢倉 遠十吉 <oto@mb.infoweb.or.jp>
山浦 礼子  <raeko@bnn.co.jp>

目次:


MailBITS/20-May-96

(翻訳:山浦礼子 <raeko@bnn.co.jp>)

Harmony、Copland の前に -- Copland(今は“Mac OS 8”と呼ぶ)が 1997 年の半ばまで出荷しないと Apple 社が発表していたため、Apple 社 は Copland のもう一つ前の Mac OS(現在のコードネームは“Harmony”) を予想して WWDC に出席した人達を驚かすことはなかった。“Harmony”の 大まかな出荷予定は1997の前半とされており、システム自身に QuickDraw 3D、QuickTime 2.5、OpenDoc、Cyberdogのほか、複数のCopland テクノロ ジーを組み込む予定である。また、Harmony は Apple 社が最近発表した Web サーバを Mac OS 上に構築したり、Java サポートを組み込むといった 計画を遂行するものだとも私は聞いている。(先週、Apple 社はパフォー マンスを向上させ、かつ Sun への依存を軽減するために Natural Intelligence 社の Java インプリメンテーションをライセンスした。) [GD]

<http://product.info.apple.com/pr/press.releases/1996/q3/ 960516.pr.rel.roaster.html>

MkLinux のデベロッパー・リリース -- Apple 社は、Mach マイクロカー ネルに基づいて Power Macintosh 用 に移植した Linux オペレーティング ・システムである、MkLinux の最初のデベロッパー・リリースを近ごろ発 表した( TidBITS-313 を参照)。現在、MkLinux は NuBus ベースの Power Mac(6100や7100、8100)でのみ動作しているが、Apple 社はPCI Power Mac や将来の PowerPC プラットフォーム・マシン上でも MkLinux を動作可能とすることを計画している。CD-ROM 版 MkLinux DR1 は Prime Time Freeware 社から 10 ドルで(完全なソースコード付き!)購入でき るが、もしも(とっても)高速な接続が可能なら、オンライン上でもすべ て入手できる。 [GD]

<http://www.mklinux.apple.com/>
<http://www.ptf.com/ptf/products/MKLP/>

Info-Mac Web サイト -- 長いことかかったが、ようやく Info-Mac チー ムは Pacific HiTech 社とともに“公式”Info-Mac Web サイト を構築し た。ボランティアに支えられた Inco-Mac アーカイブ は、10 年以上にも およぶオンライン・コミュニティの重要な産物であり、新しい Web サイト は Info-Mac、ミラーサイト、検索エンジン、Info-Mac ダイジェストのほ か多数の情報を見つけるための中核を担ってくれるだろう。もっとよいこ とは、あなたがInfo-Mac について誰かに教えたいときは、その URL をたっ た1つ伝えるだけですむようになったことだ。 [GD]

<http://www.pht.com/info-mac/>

Metrowerks 社は、最新の Mac ソフトウェア開発環境、CodeWarrior 9 が入手可能となったことを近ごろ発表した。CodeWarrior 9 は、Apple 社 や Motorola 社のコンパイラを含むサードパーティ製のプラグ・インとと もに Java をフルサポートする。また Metrowerks 社は、Java や ActiveX のサポートについても Microsoft 社と合意したことを発表した(ActiveX は Microsoft 社の あまり評判の良くない OLEのインターネット版だ)。 これだけではなく、Metrowerks 社は、InterCon 社の インターネット製品 と同様に、Microsoft Internet Explorer の Java サポートを提供してい く。 [GD]

<http://www.metrowerks.com/>
<http://www.microsoft.com/corpinfo/press/1996/may96/metro2pr.htm>
<http://www.intercon.com/pressreleases/metrowerks.html>

Connectix 社と America Online は、AOL ユーザーのための簡単なビデ オ会議についてのジョイント・プロジェクトを発表した。AOL はオンライ ン上で Connectix 社の Color QuickCam (Macintosh 版、Windows 版とも に発売中) の販売を始め、Connectix 社は AOL ユーザーがオンラインで コミュニケーションする場合に静止画さらには動画を送信するための技術 を供給する。これらの機能は、今年末にはソフトウェアに組み込まれる予 定だ。 [MHA]


TidBITS 物語

by Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
(翻訳:尾高 里華子 <odaka@iprolink.ch>)
(  :尾高 修一 <odaka@iprolink.ch>)

過去 6 年間にわたり毎週 TidBITS を発行し続けているということで、私 たちは継続という感覚を存分に味わっている。ある話題を取り上げたかど うか、それを書いたのは誰だったか、その号が発行されたのはどのくらい 前だったのかということが、いつも私たちの頭の片隅にある。一方では、 TidBITS の読者の多くが、現実に読者のほとんどが、その全工程をと もに歩んだのではないということを忘れてしまいがちだ。1 月の Macworld Expo 期間中、私は多くの TidBITS の読者に会ったのだが、特にその中の ある二人と会ったことで、私はこの記事を書くことにしたのだ。一人は、 自己紹介の中で、自分がどんなに TidBITS が好きかということと、1991 年の第 50 号からずっと購読しているという話をしてくれた。そして、そ のほんの数分後に、今度は別の読者が現れ、TidBITS が好きで、2 つ前の 号から TidBITS を読み始めたのだと言った。長期購読者は既にこの類の記 事を 2 〜 3 読んでいるだろうが、そうでない新規の読者が、誰が・どこ で・なぜ、TidBITS を発行していているのかを知ることができるように、 新たな記事を書こうと思ったのだ。

いつ・どこで・誰が・どのように -- TidBITS のスタッフであることは、 仕事と言うよりライフスタイルになっていると言ったほうがよいだろう。 TidBITS は、私とTonya Engst と Geoff Duncan という妙な三人組みが運 営している。私には発行者という肩書が付くこともあるし、Geoff が編集 長のようなもので、Tonya は副編集長ということになるだろう。3 人の中 で一番きちんとしているは彼女だ。そして、他の大勢の人達が TidBITS を 手助けしてくれていて、彼らのすばらしい支援には感謝している。特に、 ニュース編集者である Mark Anbinder 氏は、過去数年間に及び私たちに数 多くの記事を書いてくれているし、Rice 大学の Mark Williamson 氏は、 とりわけ重宝な TidBITS のメーリングリストの管理に携わってくれてい て、Lauren Snell 氏は、DealBITS を実現してくれている。さらに、 TidBITS を様々な言語に翻訳をしてくれている大勢のすばらしい人達がいる。

TidBITS は、1990 年 4 月にスタートした。これは、Tonya と私が結婚す る前のことであり、私たちが Geoff と出会うずっと前のことだ。当時私た ちはまだ、ニューヨーク州の Ithaca という、二人が育ち、Cornell 大学 に通っていた所に住んでいた。TidBITS は、Macintosh 界の最新ニュース を要約することを目的に始まり、ソフトウェアのレビューや論説といった ことにまで広がり、ついには、インターネットに重点を置くようになった。

創刊から第 99 号までは、累積型のアーカイブとして機能する HyperCard スタックで発行され、第 100 号のときに、setext フォーマットに移行し た。これにより、読者が毎号ダウンロードとデコードをしなくて済むよう になり、読者数を一気に増やすことができた。それが、私たちの配布哲学 に方向性をもたらし、また、私たちが、Acrobat、DOCMaker、その他その類 のファイルフォーマットを使用しない理由のひとつでもあるのだ。 TidBITS の初期の話についてもっと読んでみたい人は、 TidBITS-222 を参照して いただきたい。

1994 年の 11 月、私たちは Geoff を編集長として雇った。Geoff は、各 号をまとめた上で配布し、記事とMailBITS の大半を手掛け、寄稿を調整 し、編集者としてメールを管理している。さらに彼は、目にするもの全て をスクリプトに書き、お手製のツールを開発している。私たちが Geoff を 雇った経緯については、 TidBITS-256 を参照していただきたい。

TidBITS は、読者に無償で配布され続けているのだが、私たちには、2 〜 3 年にわたり PBS (Public Broadcasting Service) 枠内での共同スポン サーがついている。TidBITS のスポンサーになってくれている会社のおか げで、Geoff への支払、Macworld Expo への交通費、時折のハードウェア 購入といったものが保証されている。TidBITS は、私たちのビジネスの流 儀(無い金は使わない)により、常に利益があるのだが、これは大きなお 金のことを指しているのではない。信じられないぐらい安い諸経費のおか げで、巨額の収入を得る必要が無いのだ。これは、インターネットで商売 をしようという人の参考になるだろう。

私たちは、比較的最近、スポンサーにはなることができないぐらいの小さ な会社も参加でき、インターネット上での商売をプロモートする方法を試 すことができるように、また、些細な見返りをもたらしてくれるものとし て DealBITS を始めた( TidBITS-297 を参照)。2 〜 3 ヶ月前に Lauren Snell <lauren@tidbits.com> が新たに加わり、DealBITS の広告主との調 整をしてくれている。

<http://www.tidbits.com/dealbits/>

150,000 人の読者と 40,000 人分のメーリングリストがあるにもかかわら ず、先頃のうわべだけのインターネット出版物やサービスと比較してみて、 TidBITS は、メディアの注目が割に少ないのである。これは、私たちの存 在が古いということや、見掛け倒しのはなやかさよりも、質の高い情報を 提供するということを好んできたということ、そして、自分達の仕事をす る以外に宣伝はしないといった事実に原因があると思われる。私たちは独 断でメーリングリストに名前を加えたりはしないし(著名な人に無理矢理 何かを押し付けるのは、失礼極まりないやり方である)、また、読者から の多種多様な手紙を公表したりもしない(もっと重要な情報のためのスペー スをつぶすことになる)。

私たちは、自分達の主としている基準にしたがって、その号をどんな内容 にするか決めているので、いまだに TidBITS を作ることに興奮しているの だ。つまり、私たちは、自分達を熱狂させてくれるものや、ニュースにす るに値する、または重要だと考えるものについてのみ記事にしがちなので ある。つまらなかったり平均以下だったりする製品を使うのは面白くない ので、そういったものは滅多にレビューしない。私たちは多少かち合った りもするが、Geoff が最新ニュース、システムソフトウェア、開発関連の ものを扱うことが多く、Tonya は最近、ワードプロセッサと Web のオーサ リングツールについて書き、私はインターネットへの接続、クライアント、 哲学、そしてその他の様々なソフトウェアに専念している。私たちは、 TidBITS の読者が投稿してくれた記事も数多く出版に加えている。たいて いは、誰かが、それ相当な記事にするに値するぐらい、何かをいかしてい ると思うなら、その製品は、私たちが、その記事を出版したいと思うぐら いいかしているのだ。

TidBITS のありか -- 最近たまげたひとつの新事実がある。TidBITS の 読者の中には、Web にある TidBITS のことだけしか知らない人がいる ということだ。私たちがメーリングリストを第一にしているということを (1990 年 ! からやっているのに)知らないのだ。同時に、何年も TidBITS を読んでくれている人の中に、TidBITS が Web からも手に入るということ に気がついていない人がいるのだ。というわけで、手短に、これが TidBITS のありかだ。

TidBITS のメーリングリストに購読申し込みをするには、メッセージの 本文

SUBSCRIBE TIDBITS あなたの氏名

と書いて、<listserv@ricevm1.rice.edu> 宛にメールを送ればよいのだ。

「あなたの氏名」の部分は、あなたの本当の名前に置き換える。また、下 記の FTP および Web の URL でも TidBITS を見つけることできる。 TidBITS は、他の多くのサイトからも入手可能だし、様々な言語に翻訳し たもの(下記の一番下にある URL をチェックのこと)も入手可能だ。

<http://www.tidbits.com/tb-issues/>
<ftp://ftp.tidbits.com/pub/tidbits/issues/>
<http://www.tidbits.com/sites.html>

記事の転載 -- 私たちを今まで導いてきた哲学に、TidBITS は読者に対 して無償(か、これはの現在インターネット上では無理だが、有料である ことを誰も気がつかないほど安い)でなければならないということがある。 この哲学の延長として、非営利、非商用の出版物(ユーザーグループの ニュースレターなど)は TidBITS の記事を自由に転載してかまわない。唯 一のお願いは、クレジットに TidBITS と著者名、それから問い合わせ先の アドレス <info@tidbits.com> を明記することだ。営利目的の出版物の場 合は、転載許可を得るために私たちにご連絡いただきたい。

記事と寄稿 -- 私たちはあらゆることの専門家になることはできない。 何か TidBITS が取り上げるべきだと思うようなことがあったら、そのこと についての記事を書くことを検討していただきたい。私たちは異なる視 点からの意見を載せるのは好きだし、記事が TidBITS のスタイルに合うよ うに著者とともに調整・編集したいと思う。見返りに差し上げることがで きるのは知名度だけだが、TidBITS の記事がほかの大小の出版物に(著者 に原稿料が支払われて)転載されたことも何度かあるし、TidBITS に頻繁 に寄稿する著者の場合には、TidBITS の記事が糸口となってほかの仕事が 入ったという例もある。

TidBITS に寄稿したいと思ったら、<editors@tidbits.com> へ連絡してい ただきたい。ガイドラインをお送りして、ほかに似た企画が進行している かどうかお知らせしよう。

質問とメール -- 受け取ったメールは読んで返事を書こうとはしている が、受けとるメールの量が増えたために徐々に困難になっている。さらに、 多くの人が私たちを無料のテクニカルサポート要員とでも思っているよう で、これにはいらいらさせられる。コメントやフィードバックは歓迎だし、 可能な場合には相談に乗りたいとも思うが、私たちだって何でも知ってい るわけではないし、何でも調べることができるわけでもないうえ、メール を処理するためにリサーチや記事を書くための時間が奪われるのだ。

処理するのに大量のエネルギーを要する類のメールに、私たちがある話題 についてどんなことを知っているかという質問がある。TidBITS は出版物 であるため、その話題が多少なりともその時に注目されていれば、すでに 記事にしたという可能性がある、というよりその可能性が高い。しかし、 時にはそれなりの理由があって話題になっていることがらを取り上げない のだ。確認ができない噂のような場合や、私たちが面白いと思わないよう な場合、またはリサーチを終わらせるための時間がもう少し必要な場合な どがある。ある話題について書く時には充分に深く掘り下げて書きたいと いう欲求のほかに、中途半端に書くと後で質問攻めにあわされるというこ とを経験から学んだからだ。

下記の URL に、TidBITS の検索可能なアーカイブがある。時にはなかなか 接続できないかもしれないが、ここで検索する方が私たちにメールで質問 するよりもほぼ間違いなく速いだろう。

<http://wais.sensei.com.au/macarc/tidbits/searchtidbits.html>

そして永遠の謎 ... -- 最後に、なぜ TidBITS の BITS が大文字になっ ているかという謎の理由を明かしたい。このことを説明したことがあった かどうかわからないし、最近 Geoff が、編集長に着任してから 1 年以上 になるのにまだこの理由を知らないとこぼしていた。さあ、これがスクー プだ: 私たちが TidBITS という名前を思いついたのは Steve Jobs 氏が NeXT を出荷した頃だった。当時、すべてのいかした製品には変な具合に大 文字が使われていて、すごくいかした製品には大文字がメチャクチャな使 われ方をしていた。もちろん、私たちはすごくいかした製品にふさわしく、 メチャクチャな方向を選んだのだったが、すごくいかした製品にはメチャ クチャな大文字だけでなく、きちんとした仕事をすることが必要だという ことは認めよう。


LaserWriter/LocalTalk Bridge と Open Transport

by Caleb Clauset <cclauset@umich.edu>
(翻訳:加藤たけあき <oiso@wolfenet.com>)

Apple 社の LaserWriter Bridge、LocalTalk Bridge と Open Transport との現時点での互換性に関して、かなりの混乱があるようにみえる。これ らのブリッジは、LocalTalk と Ethernet の 両方に接続されているマシン の 2 つのネットワーク間に文字どおり“橋”をかけるものだ。Apple 社の LaserWriter Bridge は(名前からして)LocalTalk 上の LaserWriter を Ethernet のネットワーク上でも共有させることを可能にし、LocalTalk Bridge は AppleTalk で提供されているあらゆるサービスのやり取りをこ れら 2 種のネットワークを介しても行えるようにすることができる。

今日までリリースされているバージョン(2.0.1)では、どのバージョンの Open Transport とも互換性を持たない。Apple 社の LaserWriter Bridge と LocalTalk Bridge ソフトウェアは、特定のバージョンの AppleTalk ソ フトウェアを確認するように設計されていて、Open Transport はそれよ りも新しいバージョンとして認識されてしまうために、ブリッジが起動さ れないのだ。

(バージョン 2.1 としてリリースさせる予定の)Apple 社がサポートして いる、Open Transport と互換性を持たせるアップデートは開発中なのだ が、現在それらはデベロッパー向けのものだけしかない。今のところ唯一 の方法は、ブリッジの AppleTalk ソフトウェアを確認する機能に Open Transport を認識させるようにする一時的なパッチだけである。

そのパッチは 2 種類あり、一つが LaserWriter Bridge 用で、もう一つが LocalTalk Bridge 用だ:

<ftp://mirrors.aol.com/pub/info-mac/comm/atlk/lw-bridge-ot-patch-202.hqx>

<ftp://mirrors.aol.com/pub/info-mac/comm/atlk/localtalk-bridge-ot-patch.hqx>

あなたの LaserWriter Bridge や LocalTalk Bridge に適したパッチを使 用するように、くれぐれも注意してほしい。勇敢にも ResEdit を使ってマ ニュアルでパッチをあてようという方々は、次のようにして行うことがで きる:

これらのパッチは Open Transport のバージョン 1.0.8 以上を使用してい る(PCI Power Macintosh とクローンを含む)全ての Macintosh コン ピュータで動作するはずだ。気をつけてほしいのは、このパッチは広範囲 に渡ってテストされたものではないということだ=とりあえず Open Transport 上で使用できるようにするための応急処置であって、どんな不 具合が生じるか判らない性質のものである。もしあなたが、このパッチを あてることを少しでもためらっているなら、間もなく登場すると思われる Apple 社がサポートしているアップデートを待ったほうがいいだろう。


Apple のクレイジーなアイデア

by Geoff Duncan <geoff@tidbits.com>
(翻訳:齊藤 聡<akkun@ca2.so-net.or.jp>)

何年にもわたって、Apple はたくさんの新しい製品を発表し、リリースし、 広めてきた。グラフィカルユーザーインターフェースを持ったパーソナル コンピュータ、PostScript プリンタ、Newton、個人的ファイル共有など。 ソフトウェアの面では、Apple はドラッグ & ドロップから QuickTime ま でのすべてのものを広めてきた。Apple はクレイジーな(そしてたいてい は一流の)斬新なアイデアや技術ではちきれんばかりであり、- 少なくと も部分的には - このことが報道機関が Apple のことをこうまで密接に調 べる理由である。もちろん Windows は現在支配的なデスクトップ OS であ るけれども、Microsoft の熱狂者でさえ Windows はその起源が Apple に たどりつくことを知っている。先週、World Wide Developers Conference (WWDC) において、Apple は記者団にもっと考えるべき項目を与えた。

Project X -- その名前が想像力にかけるきらいはあるものの、Project X は、Web サイト、ハードディスク、オーディオトラックを表示するリス トビューや3次元の“情報空間”を与える情報ブラウザである。これはほか の情報ソースにも拡張できる。Project X は Apple 独自の MCF (Meta Co ntent Format) ファイルフォーマットを基にしている。これは基本的には ほかの情報についての情報を保存するための階層的な方法である。だれも 望んではいないものは新しいファイルフォーマットであるが(特にそれが まだ公開されていないものであるときには)、それにもかかわらず Finder やほかの方法を超えた利点を持つ情報ナビゲーションの興味深いモデルで ある。Apple は WWDC で Yahoo の MCF ビューをデモした。Power Ma c 用 の Project X のデモは今でも可能であるが、68K 版はまもなく登場が期待 できる(MCF フォーマットの白書も期待したい)。Apple は Project X の Cyberdog 対応版を計画している。ほかのブラウザ用のバージョンも計画し ている。Project X の将来を予測するのは早すぎるけれども、それは注意 を引きつけているし、その小さなディスク占有量と RAM の要求量について 注目に値する。

<http://www.atg.apple.com/go/projectx/>

Apple e.g. -- WebSTAR またはほかの Web サーバー用のフリー検索 CGI である Apple e.g. は検索結果の適切な順序付けとともに高速な全文検索 を提供する検索エンジンとして(Cyberdog や Mac OS 8 の検索エージェン トに組み込まれる)V-Twin 検索エンジンを使っている。気が利いている方 法としては、検索結果はそのとなりにチェックボックスを伴って表示され る。もし希望したものが見つからなかったならば、もっとも近いものを チェックして Apple e.g. に「これに近いものを探してくれ」と伝えるこ とができる。Apple は、ほかの会社に Apple e.g. をその会社の製品に組 み込むための開発用のキットについても発表した。しかしながら、そのキッ トには V-Twin エンジンのフルバージョンが入っていない。Apple e.g. は Apple の CyberTech Web サーバからまもなく入手可能になるだろう。ま た、その製品名にはほんのわずかな想像力しか感じられないけれども、そ れは“Apple Internet Full Text Searching Solution for the World Wide Web”よりはましだ。

<http://cybertech.apple.com/>

HyperCard および QuickTime -- WWDC というインターネット誇大広告に おいてほとんど見落とされていたのは HyperCard と QuickTime の将来に ついての重要な公式の声明であった。最近の生きている兆候と熱心な支持 者の存在にもかかわらず、HyperCard はそのマルチメディアの能力が Director や SuperCard のような製品により精彩を欠いてしまったので数 年間にわたって死にかけているという評判を得ていた。(HyperCard は最 も有用なプロトタイプ作成ツールのひとつとして残るだろうが)。

WWDC において Apple は HyperCard 3.0 のデモ版を動かした。最も大きな 驚きはその新しいバージョンが QuickTime 3.0 を中心に据えていたこと だ。基本的にすべての HyperCard スタックは QuickTime ムービーになり、 MoviePla yer、Netscape プラグイン、Cyberdog およびワードプロセッサ を含むQuickTi me を扱うことができるアプリケーションで取り扱うことが できる。QuickTime を使うことは最終的にはクロスプラットフォームのサ ポート(QuickTime はすでに Windows 上で確立している)と同様に完全に 統合されたカラー機能を HyperCard に与える。そのプレゼンテーションに よると、既存の HyperCard の外部拡張は使用可能のまま残り、HyperCard (と QuickTime)にリモートコンテンツを扱う能力を与えるようなインター ネットに対応した media ハンドラが登場するらしい。QuickTime 3.0 と HyperCard 3.0 の両方とも1997年の春にリリースされる予定である。


Apple とビジネスマーケットそしてジオデシックネットワーク

by Robert Hettinga <rah@shipwright.com>
(翻訳:杉浦 雄一郎 <ysugiura@direct.ca>)

Apple には暗雲が取り巻いているものの、ホームマーケットと教育マーケッ トではまだまだ健闘している。この Apple の暗い状況は、傷を深める一方 のビジネスマーケットでの失敗に原因の一部があるが、私に言わせればこ れは特に今始まったことではない。

いままでに Apple の気持ちがビジネスマーケットに向けられていたことは なかった。このマーケットに対する表面上の態度とは裏腹に、Apple はよ り優れたワードプロセッサや表計算ソフトウェアを作ろうという熱意を見 せたことがない。これは Excel および Word が Windows プラットホーム に移行する前に起きたマイクロコンピュータのビジネスマーケットの急成 長の頃に、逸品を持っていたとしてもだ。この無関心さは、Apple のビジ ネスユーザーへの対応の仕方からもうかがえる。Apple のコマーシャルは 外部コンサルタントや一匹狼をヒーローに仕立て上げており、結果として 大企業や保守的な人達へのアピールを犠牲にして、外部コンサルタントや 一匹狼にアピールしている。

メインフレームコンピュータとの互換性が問題になった時も(一時メイン フレームのデータを LAN に降ろす作業が良く行われていた)Apple はそれ を傍観していた。また LAN が台頭してきたときも、Apple は LAN の活躍 する大企業向けには、LAN のための技術を築かなかった。その代わりに Apple はデスクトップコンピュータからなるフラットな構造のピア・トゥ ・ピアのネットワークを構築した。残念ながら Apple は 2 つの重大な問 題に注意を払わなかった。すなわちネットワークの帯域幅と、マルチタス クだ。マルチタスクは大量のデータを扱うユーザにとっても、きちんと機 能するネットワークのために必要だ。バックグランドでプリントをしてい る時や、Mac にファイル共有をさせながら仕事をしようとすると生じる厄 介な性能低下はパワーユーザーを悩ますことになる。

PC ユーザーにとってマルチタスクはそれほど問題ではなかった。なぜなら 通常、前述の 2 つの仕事はプリンタを動かしたり、ファイルを供給するこ とに専念している別のコンピュータに任せられてしまうからだ。対照的に 大半の Macintosh ネットワークは(特に System 7 の登場以来)任意のコ ンピュータが任意のコンピュータのためのサーバになることができ、各コ ンピュータが自分自身のプリントサーバとして機能している。Apple が Apple Workgroup Serversを投入したのはゲームも後半になってからのこと だ。

二つめの問題である高速プロセッサ上におけるプリエンティティブ・マル チタスクについての取り組みは遅々としているものの、幸い一つめの問題 である帯域幅については、ほとんどの Mac にイーサネットを標準装備する ことにより対応がなされている。世界がどうやらピア・トゥ・ピア・アー キテクチャの方向に向いていることを考えると、これは Apple にとっては プラスと言えよう。インターネット全体もピア・トゥ・ピアの「ジオデシッ ク」構造のネットワークであり、ここでは各コンピュータがそれぞれの機 能に合わせて最適化されて、情報のやり取りが行われている。インターネッ トには中心となるシステムが存在せず、これは Apple が当初より描いてい たネットワーク像と一致する。

さらに安心材料を上げると、将来的にはビジネスにおいて LAN は無用にさ えなってしまうだろう。2 ヵ月前のことだが、ある米国最大手の信託銀行 の債権取引室で Netscape が使用されているのを見た。ここでは Netscape はプロトタイプ開発における対決で PowerBuilder をやすやすとくだして いた。このプロトタイプは製品版であった。Netscape はファイア ウォールの外からの SQL コールから実際の金銭取引の管理まであらゆるこ とをこなすことができる。勝負はついていた。Netscape がこの点におい て特別だというわけではなく、セキュリティさえしっかりとしていれば、 どんなブラウザとサーバの組み合わせでも同じことができる。現在でさえ、 クライアントにしろサーバにしろいくらでも開発することができる。Apple の Cyberdog のように、部品化文書構造の舞台がオンラインになると特に そうだ。

LANの必要性は今後なくなるだろう。なぜなら LAN とインターネットの違 いは、セキュリティのためのファイアウォールと、Novell の TCP/IP と 互換性のない独自プロトコールを処理できるクライアントを持つ必要性が あるか否かという点だけだからだ。IETF による IPSEC スタンダードのよ うなインターネットの暗号化プロトコルを使用すれば、ファイアウォール は要らなくなる。ネットに接続されているコンピュータとセッションを確 立することができるのは、そのコンピュータにアクセスを許可されている デジタル署名を持つものだけとなる。そしてネットワークは可能な限り開 かれたものである必要がでてくる。すなわち、当然のことながら NetWare ではなく TCP/IP を使用しているということだ。これは「地球の衛星軌道 まで出てしまえば、あとはどこへ行くにも中間地点まできていることにな る」という、ハインラインの古い宇宙のジョークのようなものだ。一度ファ イアウォールを取り除いてしまえば、そこはなににも束縛されない空 間なのだ。

<http://www.ietf.cnri.reston.va.us/html.charters/ipsec-charter.html>

それでは高度な暗号化技術によりファイアウォールが消滅すると、ファイ アウォールの内側で蓄積されていた情報と独自規格からなるソフトウェア マーケットになにが起こるのだろうか?ここで洗剤の CM にでてくる、浮 遊する油分の粒を思い出していただきたい。細かく粒へ分解されていくや つだ。これを見ていると私には Bill Gates が「うわー、溶けちゃうよ!」 と叫んでいるのが聞こえてくるような気がする。これで Bill Gates がな ぜインターネット互換のものに対して突然敵意を表わしたかをおわかりい ただけるだろう。

William Gibson の言葉を借りれば、この“インターネットの時代”におい ては、ユーザーインタフェース、プラットフォーム、デスクトップ、LAN といったものも重要だが、本当の生命はネットにこそあるのだ。

私はしばらくの間、少なくとも Apple がほとんどの Mac を作ってる限り、 Mac は「みんなのため」というよりも「優れた人達のため」と思っている。 それが私の実感だ。個人的には Apple の将来については、ポルシェの将来 と同じくらいにしかもはや憂慮しておらず、Apple の経営陣が Herr Doktor Porsche 氏のようにある事実に目を覚ますものと思っている。それは仮に Apple がフォルクスワーゲンを開発したとしても、Apple は最新技術の開 発を維持するのに十分な利益を維持しながらそれを効率的に大量生産する ことはなどできないだろうということだ。Apple の真髄は常に最新技術の 開発にあったはずだ。遅かれ早かれ Apple は、917 のように技術の威力を 見せつけるようなものを再び製造するようになるだろう。911 は手頃な価 格でパワーを提供するもので、928 はそのそっくりな外観だけが欲しい人 のためのものだ。幸い、Power Computing 社のようにポルシェには手が 出ない人のために、フォルクスワーゲンを生産してくれる会社が数多くあ る。“Macintosh”はもはや“Apple”だけを意味するのではなくなるのだ。

正真正銘の偏狭 Mac ファンの私のようなものは、Apple の将来を Cyberdog に見い出している。Cyberdog は「大粒」の情報とソフトウェアの油分を分 解してネット上に解き放つものだ。ネット上では愚鈍な Java ターミナル だけではなく全てのコンピュータが、解き放たれた粒子をよりうまく 使用することができるのだ。また Cyberdog とは、インターネットレベル の高度なセキュリティを持つ暗号化技術を開発し、誰もが任意の場所で任 意のコンピュータと情報のやりとりができるようにすることを意味する。 そして許可なしでは誰もログインすることができず、許可を持つもの が何をしているかを見ることもできないのである。全てのネットワークア プリケーションにはデジタル商取引の機能を持たせることになる。すなわ ち Digicash 社の E キャシュのような保有者のデジタル認証を扱う機能 や、 MicroMint プロトコルあるいはその継承技術のようなマイクロペイメ ントを扱う機能である。自分のコードを使用してメールでお金を送れるよ うになったり、トラフィック量の上下限を超えると通過パケットあたりの 料金をリアルタイムに調整するようなルータの出現を想像してみていただ きたい。ネットの未来像はまことに風変わりな世界と言えるかも知れない。

<http://www.digicash.com/>
<http://theory.lcs.mit.edu/~rivest/rivestshamir-mpay.ps>

こういったことが現実化するまでは、ポルシェのパーツ製造は、ディベロッ パが自分のやっているビジネスの現状を見極めている限り、まだまだ収益 のあがるビジネスだと言えるだろう。

[Robert Hettinga 氏はデジタル商取引やインターネットについて精力的に 執筆している。このトピックについての詳しい情報は、Hettinga 氏の他の エッセイを参照されたい。]

<http://thumper.vmeng.com/pub/rah/>


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