TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS-J#331/03-Jun-96

Gil Amelio 氏は Apple Computer の完全組織改革を、Apple は Web にある Mac で作ったベストページのコンテストをそれぞれ発表した。さらに今週 号には、店頭で PowerBook を見かけない理由、Performa の修理プログラ ム、Newton 2.0 用の新しい CompuServe クライアント、新たな WYSIWYG HTML テープルエディタ「TableWorks」などの情報がある。そして、サイ バースペース法のオンライン講座のニュースと、洪水時のインターネット プロバイダとしての短いエッセイを付け加えておいた。

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目次:


MailBITS/03-Jun-96

(翻訳::矢倉 遠十吉 <oto@mb.infoweb.or.jp>)

Amelio 氏、Apple 社再編を表明 -- 企業再編の公約に引き続き、Apple 社の CEO である Gil Amelio 氏は先週、1996 年 6 月 1 日付けで大規模 な組織改革を発表した。おおまかに言うと、次のように述べている。改革 は、 Apple 社の主力商品、マーケティング、そして個々の収支センターか ら Macro Landi(Apple ヨーロッパ、中東、そしてアフリカの前代表)に 対して報告のあった販売事業部を独り立ちさせるというものである。Apple 社内から引き上げられた新任の事業部責任者は、それぞれの分野を管理し ていく予定だ。同時に、Apple アメリカの社長 Jim Buckley は一身上の都 合により退職した。[GD]

<http://product.info.apple.com/pr/press.releases/1996/q3/ 960530.pr.rel.reorg.html>

弁護士不在の中でのサイバースペース法 -- もしあなたがインターネッ トに関する法的諸問題について不思議に思われたり、ネット上で法律家の ようにふるまう人達から無料の法律相談を受けた場合の有効性について考 えたりされたことがあるなら、Cyberspace Law Institute と Counsel Connect から提供されている無料の電子講座をチェックしてもらいたい。 それは一週間に平均して3つのメッセージがメールで届けられる。メーリン グリストは一方通行のみであるが、その Web サイトは議論の場を提供して いる。その講座は 6 つの法律分野をカバーしている。著作権、プライバ シー、商標、名誉毀損、表現の自由、そして契約関連である。講座は合衆 国法に焦点を当てているが、他の国の人々にも関心を起こさせるものであ る。購読するには、メッセージの本文に“subscribe cyberspace-law your Name”として、メールを送信してもらいたい。[ACE]

<http://www.counsel.com/cyberspace/>

LeVitus 氏 Power Computing 社を去る -- Power Computing 社は先週エ バンジェリストの Bob LeVitus 氏が著述業として更に多くの時間を割くた めに Power Computing 社を退職した旨を発表した。Bob は 20 冊の著作が ある定評のある Macintosh の著述家であり、MacUser 誌とその他の刊行物 にカラムを寄稿している。Bob はエバンジェリストのディレクタとして一 年と少しだけ前に Power Computing 社に参加した。[GD]

<http://www.powercc.com/News/96.05.24a.html>

Degital Technology 社 FaceSpan を取得 -- Degital Technology International 社はインターフェース・デザインとアプリケーション開発 用ツールを Software Design Unlimited 社から購入した。FaceSpan は Mac OSA 言語( AppleScript と UserTalk など )に関するインターフェース ・ツールキットである。それは、ウインドウ、ダイアログ、そして普通は 言語内では実現できない他の機能面を備えたユーザーインターフェースを つくるために使用される。Degital Technology 社は FaceSpan の開発を積 極的に推し進める計画を示唆した(1996 年 7 月 1 日に 2.1 アップデー トバージョンで開始)。それは、 OpenDoc と クロスプラットフォーム機 能に関する計画を含んでいる。[GD]

<http://www.dtint.com/>

Web ページ賞の獲得 -- QuickTake デジタルカメラの獲得に関心があり ますか?“Been There, Done That”とプリントされた T シャツについて はどうですか?もし、あなたが Macintosh を使ってホームページを制作し たことがあり、そして短いエッセイを書く気がある人は、Apple 社の新し い“Create the Best Page with Macintosh (Macintosh でベストなペー ジ制作)”のコンテストにぜひ参加して欲しい。コンテストは4つの範囲が ある。個人/家族、K-12 教育、高等教育、そしてビジネスの分野だ。 Apple 社はページ判定に 4 つの評価基準を設ける。表面デザイン、独自 性、ベストな技術活用(例えば QuickTime )、そしてエッセイの説得性で ある。メールによる参加締切りは 1996 年 7 月 15 日まで。不幸にもコン テストは合衆国居住者に限定されている。私は将来に世界的規模でコンテ ストが催されることを望んでいる。[TJE]

<http://www2.apple.com/contest/bestpage/overview.html>


Newton MessagePad、メール機能を奪還す

by Richard C.S. Kinne <kinnerc@snymorva.cs.snymor.edu>
(翻訳:尾高 里華子 <odaka@iprolink.ch>)

先週 Apple から、無償の CompuServe Mail Software for Newton 2.0 ク ライアントが、ひっそりとリリースされた。Newton でのメールのやりとり を eWorld に依存していた多くの Newton MessagePad ユーザーをムッとさ せることになった Apple の eWorld の中止を発表( TidBITS-318 を参 照)以来、待望されていたソフトウェアである。

<ftp://ftp.support.apple.com/pub/apple_sw_updates/US/Newton/ Other_Newton_Updates/CompuServe_Mail_for_Newton.hqx>

CompuServe Mail Software for Newton 2.0 は、Newton OS 2.0 ROM に組 み込まれていた eWorld メールソフトウェアの後継者とされている。この 700K 少々のソフトウェアは、Apple から供給され、CISmail 本体と Adobe Acrobat 形式の書類の 2 つの主要なファイルから成っている。

CISmail パッケージは、ほかの Newton ソフトと同じようにインストール する。MessagePad に付いている Newton Backup Utility を使い、Install Package アイコンを選択すれば、CIS メールクライアントを PDA にロード できる。インストールの際に Extras Drawer の Extension フォルダにサ イコロのような 97K のアイコンが残る。そして、MessagePad に CompuServe のためのメール機能が加わるのだ。メニューの eWorld の選択 枝が表示されるところ全てに、今度からは CompuServe の選択枝も表示さ れるようになり、CompuServe のクライアントの機能は、完全に Newton OS に統合されるのだ。

機能的には、CISmail は eWorld メールソフトウェアに取って代わったか のように、ほとんど同じように動くのだが、ただし、大きな漏れもあるの だ。eWorld では、Newton 2.0 ユーザー同士は、インターネットを介して、 手書きのスケッチやソフトウェアパッケージをやりとりできた。残念なが ら CISmail にはこの機能がなく、代りにテキスト形式のメモや Names ファ イル・Datebook・Call アプリケーションのアイテムを送ることができるだ けだ。でも幸いなことに、このクライアントは宣伝文句どおりに機能する のだ。私は Megahertz 14.4 CruiseCard PC モデムを使って、自分の CompuServe アカウントから MessagePad を用いての複数のメールの送受信 に成功している。

CompuServe のアカウントを持っていない人はどうなるか? Catamount Software 社が出している Aloha 2.2.4 があるのだ。これは、AOL オンラ インサービスを通じ、AOL ユーザーに MessagePad とインターネット間で のメールのやりとりを可能にしてくれる。Aloha のバージョン 1.1 は、 Newton OS 2.0 を搭載できない MessagePad でも動作するのだが、両バー ジョンとも 50 ドルとやや高い。

<http://www.catamount.com/Aloha2.html>

CompuServe Mail Software for Newton 2.0 は、MessagePad の機能にとっ て重要なパッケージであるが、私には Apple が失地を奪還したに過ぎない としか思えない。MessagePad が登場してから数年経つが、ポータブルな通 信機器となる夢の実現は、未だはるかかなたであり、CISmail によってそ の夢が近づいたわけではない。旅をすることが多く、今までコミュニケー ションを維持する手段として MessagePad で eWorld を利用していた人に は、このクライアントは、しばらくの間は、最も金銭的に無駄のない解決 手段になるかもしれない。

CompuServe Mail Software for Newton 2.0 をオンラインで入手できない 人は、Apple Assistance Fulfillment Center (800/211-1537) に電話す れば、手に入れることができる。


TableWorks で WYSIWYG テーブル

by Tonya Engst <tonya@tidbits.com>
(翻訳:尾高 修一 <odaka@iprolink.ch>)

TidBITS-326 で、Web 用テーブルを作るためのユーティリティーをいくつ かレビューし、なぜそのようなユーティリティーが必要なのかについて述 べたが、その時はまだ SoftTools 社のテーブルエディタ、TableWorks 1.0 r2 を紹介するには早すぎた。私は最近 TableWorks を少しいじってみた が、TableWorks は前途有望なユーティリティーであるという印象を持っ た。HTML タグのことを全く考えもせずにテーブルを作るのはなかなか楽し かった。

TableWorks を起動すると、Web ページのタイトルを記入する部分と、テー ブルを作成するエリアが表示される。TableWorks の操作はプルダウンメ ニューかキーボードショートカットで行い、テーブルを作成するための多 種多様なコマンドに使いやすいインターフェースが与えられている。

<http://www.tableworks.com/>

TableWorks では、複数の行や列にまたがるセルを作ったり、セルの端をド ラッグして大きさを変えたり、枠線の太さを変えたり、セルのパディング やスペーシングを設定することなどが可能だ。このようなビジュアルな編 集はスクリーン上できれいに表示され、Miracle Software 社の World Wide Web Weaver や SoftQuad 社の HoTMetaL Pro など、ほかのビジュアルな テーブル作成プログラムと比べて、表示上の奇妙なくせがはるかに少ない。 HTML タグをほとんど表示せず、テーブルが Netscape 2.0 でどのように見 えるかをおおむね再現するという点で、TableWorks は完全に WYSIWYG で ある。

TableWorks のセルにはテキストセルかピクチャーセルの 2 種類がある。 ピクチャーセルにはグラフィックしか入れることができない。TableWorks はグラフィックをセットアップするために素敵なダイアログを与えてくれ る。このようなグラフィックはほかの URL へのリンクを内蔵することもで きる。テキストセルはテキストを入れるものだ。テキストセルもほかの URL にリンクさせることができるが、セル内のすべてのテキストがリンクを構 成しなければならない。

TableWorks の Save と Copy HTML 機能は登録してフィー(39.95 ドル、 カナダの場合は 54.95 ドル)を払わなければオンにならない。私のテスト では、TableWorks はクリーンな HTML を出力したので、簡単に ほかの HTML オーサリングツールにペーストすることができるだろう。 TableWorks は 特に Adobe PageMill(ビジュアルに Web ページを作成するツール) ユーザーに魅力的だろうから、TableWorks が出力するテーブルを PageMill にペーストして、全体の HTML を Raw HTML として整形することができる ことを述べておくべきだろう。(PageMill 2.0 には WYSIWYG テーブル編 集機能が付属してくるはずだが、リリースは Adobe 社が予定していた 7 月より遅くなりそうだ。)

TableWorks には便利なドキュメンテーションが付属し、TableWorks を使っ てみるつもりなら、5 〜 10 分の時間を割いて読むことをお薦めする。ド キュメンテーションはあたかもほかの言語から英語に翻訳されたかのよう だが、理解することは可能で、暖かみのある文章に仕上がっている。

私が遭遇したやや個人的な問題に、私は Word 5 を非常に使い慣れている ので、特に Option + クリックで列を選択するというような Word のテー ブル用ショートカットが使えないのを不便に感じたということがある。こ のほかにも Word はポインタの位置や形とクリックやダブルクリックの組 み合わせによって行やセル、セルの一部などを選択することができる。私 は SoftTools 社が Word と全く同じ操作方法を踏襲すべきだとは思わない が、Word が持っている気の利いたテーブルの選択方法が欲しいと思ったの は事実だ。

TableWorks は現時点で最も優れた WYSIWYG テーブル作成機能を備えてい るため、私は TableWorks が出てきたことを嬉しく思う。それでも、 TableWorks にはまだ発展途上の製品らしさが見受けられる。たとえば、 テーブル全体を選択すると、テーブルが黒く反転するかわりにマージンが 反転する。デフォルトのフォントサイズを(小さすぎる)Times の 12 ポ イントから変更する方法がない。それに、TableWorks が基本的なフォー マット用タグをサポートするか、テーブル内に HTML タグを入力する方法 を備えてほしいと思う。SoftTools 社 はバージョン 1.0.1 で Undo や Split Cell コマンドを追加する予定だ。


インターネットと洪水

by Ryan Sweet <msweet@teleport.com>
(翻訳:西村 尚 <hisashin@st.rim.or.jp>)

私はオレゴン州ポートランドを本拠とし、現実的にオレゴン州とワシント ン州南西部全域にわたる Teleport Internet Services というインターネッ ト・プロバイダーで働いています。どのくらいの広さかはわかりませんが、 2、 3 ヵ月前、記録的な洪水がポートランドや(大部分は)オレゴン州全 域のそれより小さい町を襲おうとしていました。この洪水の経験の一部、 私たちが何を学び、非常事態の中でどう事に対処したかををシェアすれば 役に立つだろうと思いました。これは Teleport の勧誘でもうるさい客引 きといった類のものではまったくありません。単にひとつのプロバイダー がその経験をシェアして全体の向上のために他のプロバイダーとわけあお うというものです。

まず、少し背景を書きます。Teleport Internet Services はポートランド の繁華街、Willamette 川から 4 ブロックのところに位置しています(ポー トランド自体 コロンビア川に合流するところで Willamette 川に跨ってい ます)。ネットワークは SprintNet、Structured、MCI、RainNet に接続し ています。T-1 回線と電話線はその他の機材と一緒にすべてビルの地下に 置かれていました。大体 17,000 人の会員がいてオレゴン州で最大のイン ターネット・プロバイダーです。

洪水がやってくれば、Willamette 川は繁華街を防護する堤防を越えて溢れ ると予想されました。これは、もし地下室が浸水したら US West が T-1 回線や電話回線などの修理や再設置にどれだけかかるか知っている人が見 つかるまでダウンしたまま待つことになることを意味しました。言うまで もなく、これは非常事態です。私たちは最後の最後までサーバを動かそう と決心しました。まず最初に考えることが重要だと思えたことのひとつに、 なにかが起こる前に保険請求の下準備を始めることがありました。災害が 起こった場合、州内の各保険請求代理人は翌一年間対応に忙殺され、その ため私たちは長い間オフラインにいるという二重の災難に見舞われるでしょ う。

次に私たちは Web に焦点を当てました。私たちのホームページは会員のほ とんど全員が初期設定のホームページとして使い、たくさんの人がここを 見て最新情報を得ています。まず最初に、私たちはシステムダウンする恐 れがあるという注意を掲載しました。次にボイスメールの応答メッセージ を非常事態を反映したものに変更しました。最新の洪水関連ニュースを編 集してホームページの一番上にリンクを張り、救急隊員や市と連絡を密に して最新の緊急指令とボランティア、砂袋などの緊急物資が必要だという ことをポストしました。システムダウンした場合は報道機関に知らせるこ とができるように準備したので、報道機関は学校、大学、大企業と同じよ うに私たちも機能停止機関のリストに加えることができたわけです。一般 的に、私たちはどの道路が水に沈んだか、どのエリアが浸水したかなどの 最新情報をポストし続けるよう努力しました。

<http://www.teleport.com/>

その後、緊急対策本部は市民に電話の使用を控えるように呼びかけ始めま した。電話のシステム基盤は、あまりに多くの人が 911 番などの電話番号 に電話をかけようとした場合の負荷を扱いきれないからです。そこで私た ちはホームページに目立つようにある注意書きを掲載しました。だいたい こういった意味です。「インターネットを使うな!」(インターネット・ プロバイダーがいうにはなんと奇妙な言葉でしょう...)内部では議論もあ りました。我々は完全にシャットダウンし、緊急電話用に電話回線の帯域 を空けておくべきか、あるいは、洪水情報の情報源としてインターネット を使っている人たちのためにオンラインに留まるべきか。私たちはオンラ インに留まることに決め、結局は幸運に恵まれました。市は文字通り一丸 となって現在の堤防の上に防壁を築いたからです。さらに、川の水位は予 報レベルより下がり、ポートランドの繁華街は災害から免れました。いた るところに砂袋が残りましたが。

結局、私たちは情報プロバイダーとしての自分たちの役割と最新情報を発 信する手段を完全に認識しました。緊急時には、緊急対策本部とコミュニ ケーションを取るにつれ、社内の編成が極めて重要になりました。Web チー ムは以前にはなかったたくさんのリンクを作り、こういったリンクが次の 災害時に私たち全員に恩恵を与えてくれるでしょう。恐らく最も重要なこ とは、力を合わせて洪水と戦うことが、コミュニティを築くための優れた 機会になったということです。そういったコミュニティこそ、Baby Bells 回線会社や全国的なインターネット・プロバイダーとなんとか競合してい くときに、多くの地方インターネット・プロバイダーが力説しなければな らないものです。なんと、スタッフの何人かが昼休みに外へ出て砂袋を持っ てポーズを取っては、写真さえ撮っていたのです。洪水は、インターネッ トは非常事態に対応できるようになればテレビやラジオと同くらい重要に なりうるという方向に、多くの人の目を開かせました。また、あと少し母 なる自然の怒りに触れポートランドの繁華街が洪水に見舞われていたら、 私たちの力など(そして他の誰であっても)いかに無力であるかを気づか せてくれました。


ハードウェア事情

by Geoff Duncan <geoff@tidbits.com>
(翻訳:杉浦 雄一郎 <ysugiura@direct.ca>)
(  :齊藤 聡<akkun@ca2.so-net.or.jp>)
(  :山浦礼子<raeko@bnn.co.jp>)

現在のところ TidBITS では Macintosh のハードウェア情報については十 分にカバーしているとは言い難い。取り上げる価値のある新機種や優れも のの周辺機器についてはできるだけ取り上げるようにしているのだが、ハー ドウェアのレビューや評価はめったに行っていない。それは、私たちのよ うなしっかりとした所在地を持たない、ちっぽけな仮想組織にとっては、 本格的なハードウェアテストをするリソースが十分にないというのが第一 の理由だ。ただ私たちが身銭をきってなにかを購入し、それに満足が得ら れたような場合はレビュー等の記事を書くこともあるだろう。

もう一つの理由はハードウェアの複雑さにある。もし、システムやアプリ ケーションソフトウェア、ベータ版、アップデート版、ユーティリティな どが入り組んだ状況を把握するのが難しいと思うなら、ハードウェア関連 の問題をちょっと追ってみて欲しい。ほとんどのユーザーは、ハードウェ アはマジックのように感じるだろう。それは、ただただ動作するのだから。 もし動かなかったりしたら、ユーザーは不愉快に感じ、声を荒げて文句を いい、編集者に投稿をしたりするものだ。しかしハードウェアの世界の現 実は少なくともソフトウェアの世界と同じくらい、一般的にはそれ以上に 複雑なものだなのだ。だからそれ以上怒りをぶちまけるのはやめて、最近 発生している 3 つのハードウェア問題について考察してみよう(闇の部分 にも目を向けるため)。

犯人はエポキシ -- この問題は何ヵ月も前(コンピュータの世界では太 古)から起きているいるのだが、Power Computing 社の Power 120 デスク トップ機で一部のユーザが遭遇しているミステリアスなクラッシュなどの 問題は、コンピュータ製造の複雑さを端的に表わしていると言える。 TidBITS にはこの問題についての電子メールが今だに寄せられているため、 どうやら詳細が部分的に見えてきている。

この状況は昨年の 11 月頃に始まったようだ。時折ユーザからクラッシュ が新しい(当時)Power 120 マシンに不意に発生するとの声が聞かれたの だ。特にウィンドウや他のアイテムの移動時に画面表示に異常をきたすと いう問題を伴う場合が多いようだ。これらは典型的な、CPU チップ(この 場合は 120MHz PowerPC 601)の放射熱に起因する問題で、Power Computing 社ではユニットの修理を受け付けはしたものの、問題の原因はわかってい なかった。

やがて判明したのは、Power 120 の一部のユーザーが経験したこれらの問 題は、マシンそのもののエンジニアリングや Mac クローンのみに影響のあ る正体不明のソフトウェアバグに原因があるわけではないということだっ た。問題は Power 120 の一部でヒートシンク(放熱のためにプロセッサに とりつけられる翼状金属部品)をプロッセッサにとりつけるために使用さ れたエポキシ接着剤の不良から派生していたのだ。不良エポキシが乾燥す ると、ヒートシンクの効率が下がり、プロセッサのオーバーヒートを招い ていたというわけだ。質問がでる前に言うと、使用されているエポキシ接 着剤が不良かどうかを判断するのはそれほどシンプルなことではない。エ ポキシはこの業界では普遍的に使用・製造されているもので、ハイテク製 品とは言えないものだ。コンピュータメーカーがエポキシを購入するのは、 ペンキ屋がペンキを買うようなものなのだから。

Power 120 を 1996 年 1 月 15 日以前に購入し、頻繁なクラッシュとモニ タの問題が発生するようだったら、Power Computing のテクニカルサポー ト(1-800-769-5833)にコンタクトするべきだろう。注意してい欲しいの はこの症状は使用して 1 月程度以内に発生するものなので、Power 120 を 使用していてこれらの問題が起きていないようだったら、心配する必要は ないということだ。

<http://www.powercc.com/Letter/p120.html>

Apple Repair Extension Programs -- 先週、Apple 社は 2 種類の repair extension programs を発表した。一つは 5200、5300、6200 およ び 6300シリーズの Performa と LC向け、もう一方は PowerBook 5300 シ リーズと PowerBook 190 シリーズ向けである。こういったプログラムはよ くユーザーに(そして一部の産業系の記者により)リコールと呼ばれてき た。しかし、私はリコールが多少間違って使われている言葉であることに 気づいている。というのは、一般的にリコールは顧客によるリコールを示 すときに使われるからであり、その点で製造者は欠陥または危険な製品を 修理または交換するために自らが把握している顧客すべてと接触を持つの である(この種の活動はむしろ米国の自動車工業界において普通のことで ある)。別の種類のリコール、販売者のリコールは、販売者が売れなかっ た筐体を修理したり返品するときに発生する。もっとも売れてしまった筐 体は顧客の手もとに残る。かつてあるいはいつか、ほとんど全ての主要な コンピュータメーカーに販売者のリコールが頻発するだろう。Apple 社の 2つのプログラムは販売者のリコールである。これは(Apple 社の“repair extensions”と呼んでいる)7年間の保証期間延長プログラムと結びついて いる。特殊な体験をし、そういった問題のことを知っている顧客のマシン は、遠くない将来そのサービスを受けることができる。

<http://product.info.apple.com/pr/press.releases/1996/q3/ 960510.pr.rel.repair.html>

TidBITS への電子メールやオンラインフォーラムの記事から判断すると、 Apple 社は状況をかなり公にしている - 顧客に通知するためのメーリング リストまで設置している - けれども、repair extension programs につい ての間違った情報は非常に多い。さらに、Apple 社の顧客 - 特に新しい PowerBook を期待している顧客 - は在庫がないことと PowerBook の在庫 がいつ入荷するかわからないと言う販売者に不満を持っている。また、 PowerBook を修理に出しているユーザーはマシンを修理するために Apple 社から販売店に部品が届けられるのを何週間か - 何か月も - 待つことに なる。どうなっているのだ?

PowerBook 5300 と 190 シリーズ -- Apple 社の PowerBook 5300 と 190 シリーズについての repair extension program ははっきりとした問題を 扱っている。PowerBook 5300 シリーズは“燃える PowerBook”事件でおそ らくもっとも有名だろう( TidBITS-295 を見よ)。私はこのrepair extension program が結びつけられる多くの推測を知っている。幸運にも、 これは正しくない。こういった問題は無関係であり、これらの PowerBook には安全上の問題点などないのだ。

PowerBook 190 と 5300 シリーズの Repair Extension Program は、以下 の問題を扱うものである(これらの問題は常に起きているとは限らないこ とに注意してもらいたい。あなたがこれらの機種のうちの一つを所有して いるからといってこの問題が生じるということを意味していない)。

もしこれらの問題の遭遇しているなら、Apple 社のディーラーに問い合わ せをするか、(もし米国に住んでいるなら)修理の予定を立てるために Apple 社 800/767-2775 に電話するかすべきである。

割れたケースの問題は機能に対応しきれていない形状の事例である。本質 的に、ラップトップユーザーは小さくなめらかで軽いデザインを求めてい るが、それは容易にテーブルから落ちてしまう。不幸にして、PowerBook 5300 と 190 シリーズのデザインは多くのユーザーがそれを持つときに壊 れるのを防ぐようには見えない。結果的にプラスチックの溝は割れ、隙間 があいてしまう。全ての隙間のあいたケースが落下の結果であるとは言え ないが、軽くするためのデザインと耐久性の間には本来はかりにかけなけ ればならない条件が存在する。

PC カードと拡張ベイデバイス(フロッピーディスクや光磁気ディスクのよ うな)とを同時に使うときの問題は電力消費に関係しており、多くの電力 を消費する PC カードと多くの電力を使う拡張ベイデバイスと同時に使用 すると発生する。Apple 社の修理は新しいマザーボードを使う。変更した 新しいマザーボードは LocalTalk ネットワークを落とす PowerBook 5300 シリーズの問題を解決している。

AC アダプター接触が切れてしまうトラブルは PowerBook にひどい制限を もたらした。実際のところ、多くの AC アダプターを使用する電子デバイ ス(ビデオカメラのような)は同様な問題を有している。というのは、コ ネクターは装置のケースやシャーシに固定されるというよりもむしろ単に 回路基盤にくっついているからだ。だからといってそれがあなたの身にふ りかかるのは楽しいことではない。それに Apple 社はマザーボード交換に よりその問題を修正すべきだ。コネクターをより信頼できるものにするに はどんな設計変更をすべきか不明確だけれども。 Apple 社はハードディス クの能力を向上させるためのシールドを付け加えている。たぶんこれは一 部の干渉からディスクをうまく保護する。

私は公式な確認をとっていないけれども、Apple 社がアップデートされた 機種のシリアル番号に“/B”をつけたことは明らかである。だから店頭で PowerBook 190 シリーズまたは 5300 シリーズをみるときには、そのマシ ンがアップデートされているかどうか調べるためにシリアル番号を確認す るとよい。私は 2、3 のディーラーには Apple 社から修理された PowerBook が戻ってきているといううわさを聞いている。また私は対策の 完了した PowerBook のモデルが広く入手できるようになるまでに 2 から 4 週間以上かかると見積もられていることも聞いている。

このような問題は Apple 社の基本的な品質についての問題を示唆している のだろうか? Apple 社が行おうとしている提案は失敗するのか? こう いった問題は Apple 社を 助け ないけれども、こういった論点はラップ トップ産業の中では典型的なものである。PC のラップトップの世界では、 このような問題には、公な(そしてコストのかかる)修理と保証延長プロ グラムよりも、ディーラーの簡単な修理という援助がつねに存在した。 Compaq、NEC および IBM のような評判のよいコンピュータメーカーでは顧 客の手にある間に燃え上がるラップトップを持っていた。あるいはユーザー の膝の上で本当に溶け出すほど熱くなるプロセッサを内蔵していた。その ような事件に比べれば、Apple 社の PowerBook の品質は驚くほど良い。

Performa と LC -- Apple 社の 5200、5300 と 6300 シリーズ用の Repair Extension Program は、2つの問題を解決するために設けられた。

どちらの場合も、Apple ディーラーはそれらの Mac を Apple 社に送り返 すよりも修理するので、ディーラーはその修理に関しての情報や部品を用 意するべきである。もしもこのような問題に遭遇したのであれば、Apple ディーラーに連絡するとよい。

そうはいうものの、フリーズの原因は多く存在するために、自分の経験で はそのシステムのフリーズがマシンの欠陥に起因するものかどうかを決め かねる場合もあるだろう。Apple 社によれば、この問題は「すでに Apple 社が認めている特定のコンポーネントの問題」に起因するという。ものは いいようだが、つまりマザーボードに既知の問題があるということだ。

MacWEEK によると、このトラブルがやっかいなのは ROM、キャッシュ、ク ロックチップといったコンポーネントの問題によるためだという。例えば、 特定の Apple 純正でないコンポーネントメーカーの問題を持ち出して、 Open Transport 1.1 がこれらの Macintosh で動作しないのもこの問題の せいだという憶測もいろいろ報告されているそうだ。(バグフィックス版 とされるOpen Trans port 1.1.1はベータ版を間近に控えており、もうすぐ Apple 社はそれを特定のデベロッパーに配布する。これらの Performa や LC モデルとともに動作するはずである。)

<http://www.zdnet.com/macweek/mw_1019/news_powerbook.html>

Apple 社は同社でわかっている問題はどのマシンであっても無償で修理し、 このプログラムは 7 年間有効である。しかし、クラッシュが他の原因によ る場合、Apple ディーラーが無料でその問題を特定し、修理してくれると は限らない。だからそのマシンを持ち込む前に自分自身でトラブルシュー ティングを心がけたい。


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