TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS-J#340/12-Aug-96

Geoff がシアトル熱で苦しみ、Tonya と Adam がボストン熱で苦しんでから 一週間ののち、Geoff の Microsoft 社と Apple 社 についての Wall Street Journal の記事への反論、Mac OS 8 と Apple 社の Runtime for Java のニュースと一緒に、我々は Macintosh の世界に注意を戻します。 先週の Macworld Expo の Tonya と Adam の印象と広い範囲の製品メモに より今号も話題新鮮です。

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目次:


MailBITS/12-Aug-96

(翻訳::齊藤 聡 <akkun@ca2.so-net.or.jp>)

Rice 大学から TidBITS メーリングリストを動かす作業は続いている。予 期できない困難がなければ、今号は Rice LISTSERV 経由で送られる最後の TidBITS になるはずだ。もしあなたが最近購読、購読の打ち切り、あるい は購読先の変更をしているとしたら、どうかこの完成まであと一歩となっ ている作業をやり遂げるまで我々に 1、2 週間の猶予をいただきたい。現 在、我々は基本的には 2 つのバージョンの TidBITS メーリングリストを 並行して管理しているが、境界がはっきりしていないところがある。いま、 あなたが TidBITS メーリングリストに登録しておらず、登録したい というなら、LISTSERV を通して登録するよりも <tidbits-on@tidbits.com> に電子メールをいただきたい。どうか辛抱していただきたい! [GD]

Amelio 現実的な Mac OS 戦略を概説する -- 現在の業務における Apple 社の公式なシステムアップデートの政策を単純にもたらすものとして見ら れる動機では、Apple 社の CEO Gilbert Amelio 氏は先週の Macworld Boston で、Apple 社は巨大な単一のパッケージではなく、増分のアップ データの集まりにより Mac OS を将来にわたって配布していくつもりであ ることを発表した。これは実際の人々にどのような意味をなすのだろうか ?第一に、Mac OS 8 が Apple 社から完全に完成された形で出てこないこ とを意味する。代わりに、コンポーネントは Apple 社の完成されたものと して、Open Transport、OpenDoc、QuickTime のようなコンポーネントをは じめとして、複数のコピー操作を同時に行ったり、“ドッキング”フォル ダウィンドウのような Finder の拡張についてまで、つぎつぎに登場する。 この発表はまたデベロッパーがもっとも最近では次月と約束されていた Mac OS 8 の長い間遅れていた DR1 のリリースを受け取れないことも意味して いる。

巨大なシステムのリリースから路線変更することは Apple 社にもっと迅速 にユーザーに技術を配布できるようにさせるけれども、わたしはこの公式 なコメントは Apple 社がシステムソフトウェアとコンポーネントによるリ リースの混乱した沼地を浄化するための主導権を取ろうとしているのだと 希望する。最初の変更分のシステムアップデートが 1997 年の 1 月に予定 されており、1997 年の 7 月以降に別のリリースがあることを、我々はま もなく知ることになるだろう。

<http://www.devworld.apple.com/devnews/devnews0808.html>

Mac OS Runtime for Java -- Apple 社は、Mac OS Runtime for Java の プレリリース版を配布した。これは基本的に Mac OS 上に Java バーチャ ルマシンを導入したことを意味する。わたしは正直にいって Java と OpenDoc の熱狂者にでないかぎりこのリリース版を勧めることはできない。 しかしランタイムはスタンドアロンのビューアと OpenDoc 書類のなかで Java アプレットをユーザーに走らせることを許す。それは 68030 以上の CPU とシステム 7.5 のどんな Mac でも動く。Appe 社は Cyberdog 1.1 の 出荷版(まもなく出荷予定)でも動くと言っているが、Cyberdog 1.1 ベー タを含む以前のバージョンでは動かない。[GD]

<http://www.devtools.apple.com/mrj/>


マイクロソフトの敵の敵は?

by Geoff Duncan <geoff@tidbits.com>
(翻訳:Kaz Yoshikawa <kaz@fact.com>)

1996 年 8 月 15 日発行の Wall Street Journal 紙の記事において、Lee Gomes 氏は、Macintosh に特化された、サンノゼにある“実質的に知られ ていない”Microsoft 開発グループについて概要を述べた。それによると、 同社は Macintosh に関するサードパーティーのインターネット開発を推進 するとしている。(私はURLを用意したいのであるが、Wall Street Journal 紙はオンライン上で無料で利用できる記事を用意していない。)私はこの 記事について何本かの電話による問い合わせを受けたのあるが(ジャーナ リスト達はいったいどこで私の電話番号を 手に入れた のだろうか)、 私の言える全ての事は、仮にこのグループが実質的に知られていないのな ら、誰もが今まで注意を払っていなかった事になる。ほとんどの Macintosh のインターネットコミュニティは、同グループのプロジェクトの一つであ る Mac 版 Internet Explorer を聞いたことがあるはずである。Microsoft 社はこの Macintosh 専門開発集団を発足させたのが一年と少し前である。 そしてそこの従業員には、トレードショーやオンラインで見かける、長年 Macintosh 開発に携わったつわもの達が含まれているのだ。しかしこの開 発集団の事がニュースではない。

ニュースは、Microsoft 社がどうやら、Windows を全く念頭に入れない、 Macintosh に特化したインターネットアプリケーションの開発を助成して いると言う事だ。Microsoft 社が金銭目的以外の何の為にそうするのか は、はっきりしていない。しかし、なぜ同社は Apple 社を直接協力するの であろうか。Microsoft 社にとって Apple 社は敵ではないのだろうか?

Apple 社がインターネット周りのコンピュータ環境を戦略の中心に置いて いるので、Microsoft は間接的に強力な Macintosh の開発コミュニティー から利益をあげるのである。ます始めに、Microsoft 社は Macintosh のソ フトウェア(特に Microsoft Office)から典型的に収益がある。Mac が売 れただけ Microsoft は収益を上げることになる。このデペロッパープログ ラムに当てたものよりはるかに大きな額である。

第二に、仮に Apple 社が崩壊し、Microsoft 社が完全にデスクトップコン ピューティングマーケッティングを制圧した際には、同社は司法省より反 トラスト法(独占禁止法)の厳しい追及に直面する。(ついでながら、 Caldera 社は最近 Microsoft 社に対して DR-DOS における反トラスト法が らみで 告訴を提起した。)Microsoft 社の視点からすれば、Apple 社が健 全でコンピュータ全般で安定した(しかし小さな)比率の市場を持つ事は、 Apple 社が存在しなかった場合に比べてはかりしれないほど望ましい事な のだ。つまり、最近目白押しの Mac のインターネット関連製品は Apple 社の生き残りを助ける一つの道なのだ。

<http://www.caldera.com/news/pindex.html>

第三に、強力な Microsoft 社よりの、Mac のインターネット開発コミュ ニティの存在は、Netscape 社と生死を賭けて戦っているようにみえる Microsoft 社にとって、Netscape 社に対する独立戦線を開くものでもあ る。仮に、インターネット関連デベロッパが Netscape 社ではなく Microsoft 社との取り引きを好むようになれば、Netscape 社はインター ネット市場の制覇をめぐる戦いの一部を失う事になるのだ。

第四に、おそらく明白ではないが、Microsoft 社は Macintosh のインター ネットデベロッパの目のまえにぶらさげるもうひとつのエサを持っている。 Microsoft 社の Office アプリケーションは現在 Macintosh および Windows 市場の双方で現在のところ占有している。そしてどちらのプラッ トホームにおいても将来のバージョンではさらにインターネット中心であ る事はもはや公然の秘密である。もし Office の Mac 版が次のバージョン で全ての最新の Macintosh インターネット関連製品とうまく協調できれ ば、Microsoft 社にとっては「してやったり」と言ったところだろうか。 もしそれらの製品に Office が 同梱 されたとしたらどうだろうか。 Microsoft 社は将来のバージョンの Office が Netscape 社の製品と共に 出荷されるわけがなく、しかるに、ほとんどの小さく目まぐるしい動きで 立ち上がっている Macintosh のインターネット製品関連会社は、そういっ た販売方法を真剣に考えざるをえないであろう。それがとくに Microsoft 社からの開発の資金調達をうけているならなおさらである。

同社のデベロッパコミュニティへの努力への反応は今のところはっきりし ていない。デベロッパ達は、半信半擬、あざけり、歓迎とさまざまあるに しろ、好意的に受け止めているようだ。Microsoft 社は本当に Apple 社や Macintosh を助けたいかのか否かにかかわらず、Microsoft 社はビジネス ある ところに金を動かす事を忘れない事がたいせつだ。Microsoft 社が やっている他の全ての事と同じであるが、これらの行為に利潤が伴わない のであれば、Microsoft 社はこんな事は行わないのである。


Macworld Expo 最高の物

by Tonya Engst <tonya@tidbits.com>
(翻訳:村上 浩  <murasan@yk.rim.or.jp>)

さまざまなインターネット関連のソフトウェアで活気づいていた今年の Macworld Expo は、熱心な来場者や製品発表で賑わっていた。これら製品 についてはさらに今後の記事でお伝えする予定でいるが、年 2 回お届けし ているこの Macworld Expo 最高の物では、特に仕掛けが際立っていた会社 や目をひく展示をしていた会社を順に挙げてみる。

減量的アプローチ -- Aladdin Systems 社のブースは新しいものではな かったが、窮屈しながらも来場者は衣類圧縮の世界に新しい基準を打ちた てた StuffIt T-シャツに喜んでいた。シュリンク・ラップされて配られて いたそのシャツは 50 トンの圧力で圧縮され大きい石鹸の棒ほどの大きさ になっていたのである。また、同社は StuffIt Expander を Netscape Navigator にバンドルすることで Netscape Communications 社と合意した ことを発表した。これにより、別のアプリケーションをダウンロードしな くとも Netscape Navigator で MacBinary ファイルを扱えるようになる。

<http://www.aladdinsys.com/>

マーケティング・パワーの塔 -- 誰一人として飽きさせないように、 Power Computing 社は遊びとマーケティング戦略をうまく組み合わせて並 外れた展示を行い、今回のショー中最も多くの熱い関心を集めていた。た だし、そのメインイベントは屋外にあった。同社は、高さ 225 フィートの 塔を使ったバンジージャンプを主催していたのである。ショーの前日に開 催された MacWEEK Volume Buyers 会議では販売促進用の箱を配っていたが、 Power Computing 社のマーケティング担当はきっとたのしい時間を過ごし たに違いない。その箱は PowerTower に似た形をしていて、蓋をあけると 小型サウンドチップが発する叫び声とともにゴムひもで繋がった紙人形が 飛び降りる仕掛けになっていた。バンジー用のひもといっしょに箱の底に 固定されていたのは“ Mac のために我々は反撃を加えている”との宣言文 がプリントされた T-シャツだった。同社は(もちろん)新型モデルを展示 しており( TidBITS-337 MailBITS/22-Jul-96TidBITS-339 を参照)、過去何回かの主な Macworld Expo の時と同様、多くのベンダーが Power Computing 社製マシ ンを使って製品展示していたため、会場全体に同社の名前が散在していた。

<http://www.powercc.com/>

最も虫だらけの製品 -- Pulse Entertainment 社はリアルなプラスチッ ク製のゴキブリを配布しながら Bad Mojo を展示していた。暗い大胆な CD-ROM ゲームで、プレイヤーは科学者となり、資金援助を受けてゴキブリ を一掃するための研究を完成させるのだ。ゲームの序盤でプレイヤーは不 可思議な“bad mojo”の力を受けてゴキブリに変身する。その使命は物や 動物と関わりあいながら情報を収集し、最終的には人間に戻るために必要 な情報を得ることである。ただし、考えられるエンディングはいくつか用 意されている。このゲームで傑出しているのは、その現実味のある画像と 相互作用や細かい部分がよく練られている点である。Bad Mojo 製作者はい かにゴキブリが動き、表面が汚れていくかを調査することで実にリアルな 環境を作り上げたのだ。4 MB のデモバージョンは同社の Web サイトから 入手できるようになっている。

<http://www.badmojo.com/bmintro1.html>

最もインタラクティブ -- MacUser 誌、MacWEEK 紙、ZDNet 社は共同で The Winners' Club を開催した。いくつかのゲームを連続して行うのだが、 その最後でプレイヤーは目を保護するためのゴーグルをつけ、床にクーポ ン券とドル札が置いてあるシャワー室ほどの大きさをした小さな透明のブー スに入る。その目的は送風機がクーポン券とドル札を舞い上げる間に、で きるかぎりそれを沢山つかみとることだ。制限時間を過ぎたら、つかみ取っ たクーポン券をソフトウェアやハードウェアの賞品と交換するのだが、私 が見た限り挑戦者が獲得できたのは参加賞の T-シャツだけだった。

ネットで儲ける最良の方法 ? インターネットのコンテンツで大きな利益 をあげている企業はほとんどないが、本のような形ある物を Internet 経 由で販売し利益をあげている企業はたくさんある。そのことを十分理解し た上で、Wolff New Media 社は NetBooks シリーズを展示していた。 NetBook では特定のトピック、たとえばインターネットを利用した就職活 動や次期大統領選挙の動向追跡などに関した Web サイトのレビューを行っ ている。代表者の話しによれば、この会社には“ニュース編集室風”の空 気が漂っていて、50 名ほどの編集者が本を書き、最新レビューへのアップ デートはオンラインで行っているそうである。同社は 3 週間ごとに新しい 本を出版する計画でいる。Web サイトも用意されており、約 5 万サイト分 のレビューがあるとのこと。

<http://www.ypn.com/>

株を仕入れる -- 電子的な商取引やレコード管理が一般的になるに従い、 興味深いタイポグラフィやグラフィックデザインのものが多い株券ではあ るが、それもだんだんと珍しい存在になってきている。本物の証券はコレ クターズアイテムとして将来価値の上がる可能性あり(少なくとも壁飾り としては人気がでる)という持論にしたがい、One Share of Stock, Inc 社は株券を額に入れて販売している。どの株券でも選択できるが、今回の ショーでは Apple 社の株券を使って展示していた。同社は誰でも 89 ドル 支払えば一株 21ドルの Apple 社株を額入りで手に入れられる機会を提供 していた。手数料、証券代、額代を考えれば 89 ドルはそれほど高くない だろう。

<http://www.oneshare.com/>

生き続ける -- Expo 会場のあちこちで OpenDoc テクノロジーを利用し た Live Object がみられた。Bare Bones Software 社の BBEdit Lite for OpenDoc 1.0 などいくつかの製品はまもなくリリースされるはずだが、 Nisus Writer 5.0 などの出荷は数カ月先になる。これら製品を目にするこ とはできなかったが、ケベックに拠点を置く Adrenaline Software 社から リリース予定の Live Object に関して熱のこもったリポートを耳にした。 Adrenaline Numbers と Adrenaline Charts というもので、Adrenaline Numbers では Excel のスプレッドシートのインポートと 149 の関数が使 え、Adrenaline Charts では 2-D や 3-D さらにはアニメーション化した グラフまでも作成できる。

<http://www.adrenaline.ca/>

最もハンディな製品 -- GBM Design 社は Comfort Point と Comfortype という可動式リストサポートを展示した。マウス、トラックボール、キー ボードを使う際に“contour paddle”の上に手首をおいてこのサポートを 動かすのである。この paddle は 3 段階に角度を調整できる。Comfort Point はマウス(またはトラックボール)の後ろに取り付けて使用する。 Comfortype はキーボードの手前に置いたトラック上に Comfort Point を 二つマウントしたような外見をしている。20 ドル(会場特別価格)の Comfort Point を Adam が購入したので、どんな具合なのかそのうちわか るだろう。

<http://www.comfortpoint.com/>

最もやかましいパーティ -- この賞を一つのパーティにだけ授与するの は困難だ。今年の Macworld で参加したパーティはすべて度を越して騒々 しいものだったからである。これらは普通でないパーティであって、そこ に普通でない我々が一緒に集まったときに望むものは会話である。音楽な ど聞きたくない。本当に聞きたくないのに、あまりに大音響なので会話を 続けるには叫ぶしかないのである。今年最もひどかったのは、ショーの前 の火曜日の夜に Roxy で開催された Apple 社のパーティと木曜日の夜に開 催された Mac the Knife パーティである。どちらの場合も、耳をつんざく ような大音響に負けじと叫んだおかげで、声がもとに戻るまでには数日を 要した。今後 Mac のショーでパーティを開催する計画があったら、音楽 は排除してみんなが会話できるようにして欲しいものだ。

本格的なフォント管理 -- 最近はフォントをあまり扱わなくなったが、 FontReserve には非常に感銘を受けた。DiamondSoft 社が開発したフォン ト管理ツールの新製品である。FontReserve で注目すべきは、心臓部に強 力なデータベースを持っている点だ。このデータベースがフォントファイ ルを全て管理し、フォント名、フォント ID、開発元、バージョン、ハード ディスク上の所在位置などについての情報を保管しているのだ。すべての フォントを FontReserve データベースに登録しておけば、フォントを階層 的に分類したセットの作成や操作が簡単にできるし、さらにはあるサービ ス業向けに特定のセットに含まれるすべてのフォントをコピーしたフォル ダを作成するようなこともできる。FontReserve はすべてのフォントフォー マットをサポートしており、アウトライン・フォントとビットマップ・フォ ントの整合、重複フォントの削除(名前とバージョン情報を比較した後)、 壊れたフォントがないかのチェック、ISO 規格案の区分にしたがったフォ ントの分類、それにタイプ、開発元、フォントファミリごとの整理をする ことができる。

<http://www.fontreserve.com/>


Expo から HTML の話題

by Tonya Engst <tonya@tidbits.com>
(翻訳:西村 尚 <hisashin@st.rim.or.jp>)

HTML ソフトウェアは Expo の混乱の中で重要な役割を担っていたが、正直 いって、びっくりさせるような新製品がなかったことにがっかりした。例 えばこれまでベールに包まれていて、Web ページやサイトを作成、管理す るためにグラフィカル・ベースのツールを使うまったく新しい方法を探究 したような新製品だ。それでも、評価対象のソフトウェア・リストに加え るべき製品がたくさんあることがわかった。Claris 社は Home Page で大 きな注目を集めていた。これは 99 ドルで出荷予定で、よくできたテーブ ルエディタ、わかりづらいフレーム機能、お粗末な HTML テキスト表示が ついている。gonet 社は golive Pro をひっさげて登場。こちらは鳴り物 入りで興味をそそるアウトライナーと統合タグデータベースを売り物に 149 ドルだ。golive は最近 TidBITS-337 Golive にゴー でレビューされているが、現在は golive Pro の試用版と一緒に gonet 社の Web サイトから無料で入手可能 となっている。

<http://www.claris.com/>
<http://www.golive.com/>

その他の作成ツールでこのショー開催時に出荷されたものはないが、Adobe PageMill 2.0 が公開ベータ版にこぎつけ、Softquad 社は来月中には HotMetaL Pro 3.0 がリリース予定だと公表した。HoTMetaL Pro はリスト 価格 159 ドルになり、アップグレードについては、HoTMetaL Pro 2.0 と HoMetaL Light の現行ユーザは 69 ドルの費用になる。

Bare Bones Software 社は BBEdit 4.0.1 を展示していたが、これは 6 月 下旬に出荷されている。このバージョンは、複数回の Undo(HTML 作家な ら歓迎するはずだ。別のタグをより簡単に試せるようになるからだ)と、 新しいバージョンの HTML 拡張マークアップ、リモートの Web サーバにあ るファイルに対するアクセス、編集、保存を可能にする File メニュー内 のオプションを提供する。こういったオプションは BBEdit の一部であり、 BBEdit 4.0 のときのように Frontier との統合を拡張したものに依存して いない。

多数の製品が HTML 文書や GIF 画像をなんとかして作成する機能を用意し ていたが、こういう機能は来年あたりにはほとんど珍しくもなくなるだろ うと思っている。とりわけ、QuarkXPress の機能を拡張するユーティリ ティ、QX-Tools の製造元、Extensis 社は CyberPress 1.0 を展示してい た。これは QuarkXPress 文書を Web ページに変換する 150 ドルのツール である。CyberPress を買った人には PageMill 2.0 が無償で送られる。 Maxum 社の NetCloak と NetForms を相互に使う必要のある HTML を作成 することに興味を持つ人は Maxum 社の新製品 TagBuilder を使えばこの 繁雑さから逃れられる。TagBuilder ユーザーは HTML をタイプする必要は なく、簡単にウインドウから機能を選んで PageMill 2.0(あるいは、Maxum 社の社長 Johon O'Fallon 氏によれば、その他の HTML 作成ツール)にド ラッグするだけでいい。Adobe 社は TagBuilder を PageMill 2.0 に含め る計画があり、TagBuilder のデモ版は Maxum 社の Web サイトからまもな く入手できるようになるはずだ。もう一つ、Kaetron Software 社の StencilIt という製品は、自らを“芸術に挑戦する人にグラフィックのポ イント・アンド・クリック”と書いたビラ広告をしていた。このプログラ ムは基礎的な画像を多数提供し、これをさまざまな方法で操作し、GIF を 含む多数のファイルフォーマットに保存できる。

<http://www.extensis.com/>
<http://www.maxum.com/>
<http://www.kaetron.com/>


FireSite -- 低速接続の Web サイトをパワーアップ

by Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
(翻訳:杉浦 雄一郎 <ysugiura@direct.ca>)

「金持ちすぎるということは有りえないし、痩せすぎということも有りえ ない」という格言があるが、その現代版は「帯域幅が大きすぎるというこ とは有りえない」といったところだろう(インターネットへ T3 接続して いる人はなにも言わないで結構)。ClearWay Technologies 社の新製品は、 私たちの多くが Web サーバー用に望んでいるけれども、金銭的に実現でき ない帯域幅の提供を約束してくれるものだ。FireSite という名のこの Web サーバー用プラグインは、基本的には比較的低速のインターネット接続時 の実効帯域幅を拡大するもので、例えば 28.8 kbps の専用モデム接続の実 効速度を 75 kbps から 100 kbps 程度に高めてくれる。

<http://www.clearway.com/>

言うまでもなく、FireSite を使えば使ってないときよりも多くのデータを 28.8 kbps モデムで伝送できるというわけではない。FireSite は、高速で 接続されている他の Web サーバーにデータを選択的に動かすことにより、 そのマジックを実現するものだ。すなわち小さな HTML ファイルは低速ラ インで提供し、グラフィックやアニメーションのような大きなファイルに 対するリクエストは高速ライン上の他の Web サーバーにリダイレクトする のだ。

もちろん、この説明は FireSite の動作を極度に単純化したものだ。実際 のところ、これが FireSite についての全てなら、同じ手法を簡単に手作 業でまねできる。グラフィックファイルを他の Web サーバーに置き、絶対 指定の URL でリンクすればいいのだ。これを既にやっている人も多く、 Maxum 社の RushHour(大きいグラフィックと、近似ファイルを専用に扱う Web サーバー)ような製品が役にたつだろう。しかしその場合、ログはど うするかという問題がある。グラフィックが他のサーバーに置いてあると、 ログに記録されない。また、複数のサーバーを管理するのもかなり面倒な ことだ。

<http://www.maxum.com/>

FireSite はこうした問題を、自分の Web サイト上のファイルについての 情報をリレーショナルデータベースに記録することによりスマートに解決 している。ファイルサイズとアクセス頻度を元にしたアダプティブアルゴ リズムにより、FireSite は一部のファイルを自分のサーバーからスレーブ サーバーに移動し、ISO 9660 に沿ったファイル名に変更する。その際の作 業は設定したディスク空間の範囲内で行われる。これらのファイルのいず れかを持つページのリクエストを受けると、FireSite は HTTP リクエスト をインターセプトし、それをスレーブサーバーにリダイレクトする。つま り、誰かが FireSite により「複写」されたサイトを訪れると、すべてを 低速接続で提供されるよりもかなり速い速度で反応が得られるということ だ。スレーブサーバーがダウンした場合(FireSite は常時監視してい る)、FireSite はシンプルにスレーブサーバーが復旧するまでリクエスト のリダイレクトを中止する。

ClearWay は2つのバージョンの FireSite を販売している。標準版の初期 価格は 349 ドルで、GIF と JPEG グラフィックのみ単一のスレーブサー バーに複写する。初期価格 839 ドルのマルチメディア版はそれに加えて Java アプレットやショックウェーブムービーなどの他のデータフォーマッ トを複数のスレーブサーバーに複写することができ、リクエストは負荷を 分散させるため、順番に各スレーブサーバーに割り振ることができる。ま たマルチメディア版は「ウェルカムマット」機能を持つ。この機能により、 ユーザーがブックマークできるページを選択することができ、許可を与え ていないページにユーサーが直接アクセスしようとするとサイトのホーム ページに行ってしまうようにできる。他にもマルチメディア版の興味深い 機能として、「アンチハイジャック」機能がある。これは他のユーザーが その人のホームページに <IMG> タグであなたのグラフィックへの URL を 張って、勝手にグラフィックを使用することを防ぐものだ。FireSite がそ れを探知すると、指定した他のグラフィックを表示させることができる。

私が FireSite で最も気に入っている点はこれがユーザーに存在を意識さ せることなく動作するということだ。Web のインターフェースで設定しな ければならないことがいくつかあるが、それらは大したことではない(接 続速度やスレーブサーバーで使用できるディスク空間といったこと)。リ アルタイムログや FireSite がなにをやっているかを示すいくつかの統計 を参照することができる。また、FireSite で拡大された時のサイトの実効 帯域幅を計算してくれる。

誤解して欲しくないのだが、FireSite は帯域幅に関するあらゆる悩みを解 決する万能薬ではない。Web サーバーのためにインターネットへの専用線 接続と恒久的な IP アドレスが必要で、接続は一般的に使われている動的 IP アドレスによる個人向けの無制限インターネット接続ではだめなのだ。 値段に大きなバラつきは見られるが、平均的な個人向けアカウントが月に 22.50 ドル程度なのに対して、28.8 kbps のダイアルアップ専用接続は月 に 75 ドルから 150 ドル程度かかる。しかしながら、56 k のフレームリ レーや ISDN 接続は月に 300 ドルから 400 ドル程度かかるので、 FireSite は毎月の支払いを低減できるのですぐにもとが取れる。FireSite は安くはないが、ClearWay ではコスト計算をすると、インターネット接続 料の低減ということだけで、FireSite の使用が得だということがわかるは ずだと確信している。

FireSite を動作させるには 3 MB の RAM が必要で、データベース用に最 大約 10 MB のディスク空間が使用される。また、WebSTAR プラグイン (WS*API と呼ばれることもある)に対応の Macintosh 用 Web サーバーが 必要。低速のインターネット接続で問題なくすべてのファイルを提供でき、 FireSite を必要としない小規模 Web サーバーも多いかと思われるが、比 較的低速接続で Mac の Web サーバーを運用していて、なおかつサイトの 性能を向上する必要があるなら、FireSite は十分に検討する価値があると 言えよう。

ClearWay Technologies社 -- 888/552-5327 -- <info@clearway.com>


インターネットを巡って

by Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
(翻訳:齊藤 聡 <akkun@ca2.so-net.or.jp>)

毎回 Macworld Expo のあとに、我々はショーの巨大さと混沌の中にショー 全体にわたって普遍的なテーマを見つけ出そうとしてみる。San Francisco での今回の Macworld Expo では、全ての会社がインターネット製品を展示 していたようだし、すくなくとも“インターネット”という言葉を自分た ちの製品の名前につけようとしていたようだ。先週のショーでは、かなり 多くの会社がインターネット関連の製品を出品していたし、このときには 名前そのものよりももっと製品がインターネットに関係していた。しかし、 この製品はどんな問題を解決するのかとか、こういった製品は誰のために 問題を解決するのかといった構想が、上述の会社の大部分には欠けている。

個々の会社の名前を挙げたくはない。インターネットについての混乱のこ の流行は大部分のソフトウェア会社を苦しめているように見えるからだ。 ほとんど始まったばかりのわずかな会社だけがエレガントで現実的な方法 で実際の問題を解決するようなインターネット製品の着想について正しい 考え方をしている。

この問題は多くの原因によるだろう。インターネット技術は、変化する目 的を示しつつ、急速に変わっている。プログラムが解決する問題がなくなっ てしまうか、誰かに先制される前に、それが行おうとしているものを早く 決め、それを早く実現しなければならない。また、新しいユーザーのため によく機能し、より経験を積んだベテランにも訴えるような製品を創造す るのは難しい。そしてもちろん、それは新しいユーザーが自分自身の能力 で指導者となるために多くの時間を費やすようなものでもないのだ。

もっと真面目にいえば、わたしはインターネットプログラムを開発する大 部分の人々がインターネットを充分に使っておらず、結果として彼らのプ ログラムにはしっかりとした展望がないという印象を持っている。この将 来に対する展望の欠如のもっとも著しい兆候は会社がユーザーからのフィー ドバックを求めていわゆるパブリックベータをリリースするときにみられ る。成功したプログラムは将来に対する確固とした展望を伴ってスタート し、そこでフィードバックに対処する - これは、有効なテストやパブリッ クベータを充分に行うことのできない小さな開発元のプログラムを考えて いる。よい例は Anarchie だろう。これは Peter Lewis が現状のソフトで 直面した問題を解決するために作成したものである。Peter はユーザーに 何を望むかを尋ねてから Anarchie を作り始めたのではない。彼は自分の 望む機能を組み合わせて作成し、フィードバックを基にして数年にわたっ てそれを改良したのだ。

主にフィードバックによりプログラムを作成すると、まとまりのない機能 や中途半端な機能を持つプログラムになる傾向がある。わたしは、どんな 問題がメーリングリストやニュースグループにあがっているか調べたり、 製品のアイデアを明確にする前にインターネット世界についてもっと学ん だりするなどして、多くのオンラインの調査時間を費やす開発元をみたい ものだ。そういった調査は目標の定まった製品には必要である - さもなけ れば我々は、なんの新しい地平も切り開かず現存するどんな問題も解決し ない悪夢のような HTML エディターやブックマークマネジャや本質とは関 係のないインターネット用フロアワックスという製品を使い続けるしかな い。

Apple 社のインターネット上のマルチメディアへの力点は技術的な視点か らのものだ。しかし、わたしはそれがこういった現実性のチェックの欠如 した見本になることを恐れる。QuickTime ムービーが格好良くないとはだ れも主張しないだろうが、わたしはそれを使うことで得をしている Web サ イトをめったにみていない。おなじように、わたしの 660AV では、 Macromedia 社の Shockwave プラグ・インは RAM Doubler とコンクリフト を起こすし、わたしは Shockwave よりも RAM Doubler のほうがもっと必 要なのだ(つまり、わたしがいえる限りでは、わたしは全く Shockwave を 必要としていない)。両社の場合とも、あらわになっている問題を解決す るために現存する技術を手段にしようとしている。わたしは一般のインター ネットユーザーの実生活における問題を解決することにより差をつけよう とする彼らを見たい。


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