TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS-J#344/09-Sep-96

ビッグニュースは私たちが Web サイトをデザインし直したことだ。Adam が その過程について記しているので、同じようにしたいとお考えであればご 参考に。Adam はまた高速で、無料の Web ログ解析ソフト Analog につい てもレビューしている。Internet Explorer 2.1 や Cyberdog 1.1 といっ た登場したばかりのいくつかのインターネットプログラムについての記事 をアップデートし、さらに System Update 7.5.4 について予め明らかに なっている情報をお届けしよう。最後に、私たちは 2 人のゲストを迎え ているので紹介しよう。一つは MacFriendly Web サイトについて、もう 一つは Apple 社についての論評である。

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山浦 礼子  <raeko@bnn.co.jp>

目次:


MailBITS/09-Sep-96

(翻訳:山浦礼子 <raeko@bnn.co.jp>)

だいたい来週くらいまでは e-mail についての返事が遅れると思ってほし い。というのも、Geoff が骨休めをし、Tonya は記事の締切や肩こりと戦 い、また私たちが家族の訪問を受けるからだ。言い換えれば、ときとして わが愛すべきコンピュータの仮想世界に現実世界が押し寄せるということ なのだが、気分転換したり、ものごとを正しく判断できる状態を保つには よいことである。 [ACE]

メーリングリストのアップデート -- 私たちは最近 TidBITS リストの購 読と購読中止用として Web にそのフォームを用意した。しかし、Web ブラ ウザの e-mail プリファレンスの設定を間違える人が多いため、このフォー ムで申し込んだ人には購読、あるいは購読中止について確認用の e-mail が送付されるので、それに対して返事を送らなければならないようになっ ている。理屈としては、こうしたテクニックを使用して購読者が正しい e-mail アドレスを使用しているかどうかを確かめておけば、毎週号を送付 したときに起こる数百のバウンスメールを減少するということになる。 [ACE]

<http://www.tidbits.com/about/list.html>

System 7.5.4 Update -- Ric Ford 氏の MacInTouch サイトにポストさ れたメモによれば、Apple 社は System 7.5.4 Update を今週末 すべての スタンダードな Apple Web と FTP サイトでリリースするということだ。 そのメモによれば、基本的にはパフォーマンスと信頼性の拡張がなされ、 現在 System 7.5.3 が動作する Mac にのみインストールできる。古い機種 の Mac オーナーにとってもっとも興味深いのは、“System 7.5.4 Update のリリースをもって、Apple 社は Macintosh Plus、SE、Classic、 Portable、 PowerBook 100、SE FDHD、SE/30、 LC、II、IIx、そして IIcx の最後のシステムソフトウェアリリースとする。これらのコンピュータは 32-bit メモリアドレッシングをサポートするようにデザインされていな い。将来の Mac OS リリースでは 32-bit メモリアドレッシングを必要と するようになり、これはほかの Macintosh 全機種でサポートされている” という宣誓であろう。 [ACE]

<http://www.macintouch.com/754announce.html>

Microsoft Internet Explorer 2.1 -- 先週、Microsoft は Internet Explorer 2.1 を入手可能とした。新しいリリースではフローティングフ レームを含むフレーム機能をサポートし、(歓迎すべき動向だが)フレー ムをオフにするためのオプションとプラグインを追加した。フィードバッ クやパフォーマンスの拡張のほかは、そのほとんどが History や Favorites 機能の拡張を中心に行っている。Netscape Navigator にあり、 Internet Explorer にはない便利な機能としては、ページのズーミングに より最適なサイズにする機能のほか、Netscape の URL 推測能力、それは ユーザーが“apple”と入力するとブラウザが“http://www.apple.com”だ と推測するという能力が欠けている。ダウンロードは、バージョンに依存 し、1.7 MB から 2.3 MB を要する。 [ACE]

<http://www.microsoft.com/ie/download/>
<http://www.microsoft.com/ie/download/mac21.htm>

Cyberdog 1.1 -- Apple 社は彼らの OpenDoc ベースに統合されたイン ターネットツールである Cyberdog 1.1 をリリースした。 Cyberdog 1.1 は、つい最近リリースされたばかりの OpenDoc 1.1 を必要とする。 Cyberdog 1.0 からの変更と拡張としては、68K(68030 以上)のサポート、 AppleTalk のボリュームをブラウズしてマウントする AppleTalk のサポー ト、そしてNetscape プラグインのサポート、最小限度のスクリプティング 機能(GetURL AppleEvent のサポートを含む)、そして多くのほかのちょっ としたインターフェースと機能拡張などだ。ドキュメントということに主 眼をおいた OpenDoc としては皮肉な展開なのだが、Cyberdog 1.1 にはデ フォルトでノートブックを開いてくれる Cyberdog アプリケーションが付 属し、一度の操作ですべての Cyberdog 1.1 のドキュメントを開いてくれ たり、Cyberdog のドキュメントをドラッグ & ドロップするようになって いるのである。Cyberdog 1.1 のダウンロードには 3.4 MB を要し、OpenDoc 1.1 はほかに 2.8 MB 必要となる。 [ACE]

<http://cyberdog.apple.com/download/dodownload.html>
<http://cyberdog.apple.com/br/releasenotes.html>
<http://www.opendoc.apple.com/users/getod.html>


デジタルしないで、アナログでいこう

by Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
(翻訳:村上 浩  <murasan@yk.rim.or.jp>)

つい最近のことだが、Macintosh の Web マスターがすぐにでも飛びつきそ うな優れものの小さなプログラムを見つけた。Stephen Turner 氏作の Analog というフリーの Web ログ解析プログラムがそれである。特に変わっ たところはないのだが、過去使ったことのあるほかのプログラム( WebStat やその新しい仲間の ServerStat Lite)に較べて際立っているのが、その 目も眩むほどの処理スピードだ。普段使うインターネットサーバをすべて 走らせている PowerMac 6150 上で、Analog は 17 MB のログファイルを 2 分 24 秒で処理したのである。

<http://summary.net/soft/analog.html>
<http://www.statslab.cam.ac.uk/~sret1/analog/>

Web サーバの管理などすることのない、もしくはサーバのログファイル解 析に頭を悩ませたことのない方のために説明しておくと、Web ログ解析プ ログラムというのは、Web ログをスキャンして基本的なリポートを提供す るプログラムのことである。リポートには(少なくとも Analog の場合) 以下のものが含まれている。

以下の URL で我々の Web サーバの 5 月から 8 月までの統計をみてもら えれば、Analog が出力する HTML がどんなものかわかるだろう(きれいな バーグラフ画像もいくつか含まれている)。4 月までの統計には WebStat を使っていたので、出力フォーマットを比較したい場合には、その 4 月以 前のものを参照していただきたい。

<http://www.tidbits.com/about/stats.html>

リポートのほとんどが有用なのは明らかだが、中でも特に面白い統計結果 がいくつかある。たとえば、我々の Web サイトはどの曜日よりも火曜日の ヒット数が多い。月曜の夜に発行しているので当然ではあるが、それを知っ ておくのもいいことだ。同じように、一日のうちでどの時間が最もヒット 数が多いかのリポートをみると、午前 2:00 頃のポイントが少ないことが 分かる。それで毎晩この時間にサーバを自動で再起動させている。Web サ イトのファイルごとにヒット数を調べて一覧にするのが私のお気に入りで ある。サイトを訪問した人がそこで何をしているのかが大体分かるからだ。 前々からこの Web サイトは再構築するつもりでいたので(以下の“ある Web の再考”を参照)、どのページが人気があって、どのページが人気が ないかを知っておくのは参考になる。

8 月は WebSTAR ログの REFERRER と AGENT オプションを有効にした最初 の月だったので、Analog がどんな結果を示してくれるのかとても興味が あった。REFERRER オプションは訪問者がどこのサイトから来たのかその URL を記録するもので、AGENT オプションは訪問者が使っている特定の Web ブラウザを記録するものだ。残念ながら、AGENT オプションはあまり信用 できない。いくつかの Web ブラウザ(特に Microsoft Internet Explorer)は、ブラウザごとに違う HTML を送出できる Web サーバから Netscape 互換の HTML を確実に取り込むために、自分自身を Netscape Navigator と名乗るからだ。

興味深かったのは、8 月の TidBITS サイトのページ要求数 85,000 の内、 外部リンクからのアクセスがほんの数千回だったことだ。ある程度これは 理解できる。このサイトは Internet Starter Kit for Macintosh 第二版、 Internet Starter Kit for Windows 第二版(これらの本は MacWeb と NetManage Chameleon WebSurfer for Windows を使っているユーザーのア クセス数が不釣り合いに多い要因にもなっている)のホームページを使っ ているユーザーからのアクセスが非常に多いからだ。それでもやはり、ほ かのサイトでは URL を直接入力してアクセスした数に対して外部参照から アクセスした割合がどれほどなのか興味のあるところだ。

ブラウザに関するリポートも興味深いものだった。それによれば、ページ 要求の約 60 % が Netscape Navigator のいくつかのバージョンからのも のである。MacWeb は 24 %、そしてそのほとんどが Microsoft Internet Explorer であろう“Netscape (compatible)”が 5 % で第三位だった。 MacWeb でのアクセスの大多数は Internet Starter Kit for Macintosh 第 二版のホームページから来たものだ。つまり、この本を買った人の多くは 新しい Web ブラウザにまだ切り替えておらず、ホームページの設定も変更 していないということだろう。とはいえ、瀕死状態の MacWeb でのアクセ スがこんなにあるとは予想もしていなかった。Netscape Navigator が他を 大きく引き離しているが、Netscape の拡張 HTML やフレーム機能のような 忌まわしいものを使うつもりはない。ただ、テーブル用タグといった HTML 3.2 のタグを使う分には特に問題ないことが分かって安心した。

8 月からのログファイルを Analog で解析した際、すべての参照が我々の サイト内部からのものであることが分かった。そこで、我々のドメインか らの REFERRER は無視するように Analog を設定して、リストを外部サイ トの REFERRER だけに制限した。Web ブラウザのタイプ識別も改善しよう と試みたがうまくいかなかった。Analog の設定ファイルを理解するにはも うしばらく時間が必要なのかもしれない。

Analog は追加設定なしでもたいていはうまく機能するが、おそらくユー ザーはリポートの一部を微調整したいと考えるだろう。その場合には追加 設定をする以外に方法はない。Analog は Jason Linhart 氏によって Macintosh に移植された。オリジナルが持つすべての機能と猛烈なスピー ドはそのまま引き継いでいるが、Macintosh 的インターフェイスはまだ持 ち合わせていない。機能的に問題はないのだが、そのおかげで Analog の 設定には必要以上にいらいらさせられるのだ。最初のうちしばらくは二つ の主要な設定用テキストファイルをいじることになるだろう。一度その設 定が完了したら、その後変更することはほとんどないと思う。Analog を使 う上で生じた問題がもうひとつだけあって、大きなログファイルを処理さ せるには RAM をたくさん割り当てる必要がある。十分な RAM がないとエ ラー 25、つまりメモリ不足エラーを表示して終了してしまうのだ。このエ ラーがでるたび RAM 割り当てを増やして再起動したところ、この問題は解 決した(ドキュメントにはこの問題と解決策が記載してある)。

Macintosh 版の Analog が対応しているのは MacHTTP と WebSTAR フォー マットのログなので、ほかの Web サーバのログでは機能しないかもしれな い。インターフェイスを犠牲にしてパフォーマンスを重視するプログラム が溢れている昨今、その非凡なスピードだけでも Analog は検討に値する ものだ。Analog では条件が合わないというなら、Web ログファイルを解析 するユーティリティはほかにもいくつかある。その一覧は以下のページで 確認願いたい。

<http://arpp.carleton.ca/mac/tool/log.html>


マックフレンドリ・ウェブサイト:提案書

by John Faughnan <john@umnhcs.labmed.umn.edu>
(翻訳:杉浦雄一郎 <yuichiro@activewave.com>)

Macintosh ソフトウェアはアイデンティティを喪失しつつある。Macintosh ソフトウェアの新製品の中には、クロスプラットフォーム製品の開発をシ ンプルにするという理由で、Windows ファウンデーションから移植されて くるものが数多くあるが、こういった製品は Mac OS 特有の機能にほとん ど、あるいはまったく対応していない場合が多いのだ。ソフトウェアレ ビューをする人達はこの問題を無視する傾向にある。それはこういった Apple の技術の全てが目立ったものではないし、彼らにはハードコアな機 能をきちんと評価し、真価を見抜くための技術的な備えがないからだろう。 Netscape Navigator のアップルイベント対応について書かかれたレビュー がいったいどれだけあるだろうか。

Apple は以前から Apple 技術に対応しているプログラムについては、それ を示すためのステッカーを「認定」されたソフトウェアに貼ることをソフ トウェアベンダーに許可してきた。最近では QuickTime 対応や PowerPC 最適化コードのステッカーが良く見かけられるが、消費者はこのステッカー でプラットフォーム固有の重要機能がサポートされているかどうかを知る ことができる。しかしながら Apple はこのポリシーをきちんと実行してい ない。たとえ一部の機能についてはステッカーが用意してあるとしても、 製品の箱にはいくつもの Apple 技術対応を宣伝する派手なステッカーが過 剰気味にベタベタと貼られていたりする。

幸いインターネットでは、情報を広く共有するためのスペースを用意する ことにより、もっと優れた解決策が得られる。インターネット、具体的に はウェブの使用により、消費者は情報に基づいた購入判断をできるように なるのだ。これはステッカーでは実現できないことだ。

ここで一つ提案をしたい。信頼されている Macintosh コミュニティのメン バーが、Mac OS の重要な機能の対応情報を消費者に知らせるための専用 ウェブサイトを設けるのだ。これは「マックフレンドリ」サイトとでも名 付けるといいだろう(権利の主張はしない!)。

マックフレンドリウェブサイトには表を掲載する(おそらく数ページに渡 る表になるだろう)。表の一列目はソフトウェア製品の識別に使い、残り の列にその各ソフトウェアの Macintosh 固有機能への対応情報を掲載す る。ソフトウェアそのものについての記述は一切載せないことにするが、 有料でソフトウェアの識別名からベンダーのサイトにリンクを張ることが できるようにする。

それではどんな Macintosh 固有機能をサイトに載せるべきであろうか。 ちょっと考えただけでもこれだけ挙げられる。

もちろんこれらの機能の中には、一部のプログラムに対しては該当しない ものもある。例えば、Chad Magendanz 氏の ShrinkWrap はネットワークア プリケーションではないので Open Transport に対応する必要はない。そ の場合、表に「該当外」のグラフィックかタグを入れれば良いだろう。

マックフレンドリー・ウェブサイトには、その他のアプリケーションの機 能や、他のプラットフォームから移植されたプログラムにありがちな問題 についての情報を掲載してもいいだろう。こういった情報により各プログ ラムがどの程度「マックフレンドリ」なのかわかるようにするのだ。消費 者は上記の項目の他にも、次のような項目にも興味があるかもしれない。

成功のポイントは、ソフトウェア会社にマックフレンドリー度の情報をセ キュリテーが考慮されたやり方で提出してもらうことにあるだろう。情報 提出をしない会社の製品については各項目にクエスチョンマークをつける。 こうすれば消費者は該当製品がマックフレンドリーアプリケーションでは ないと推測することができるだろう。もしソフトウェア会社が虚偽のソフ トウェアのサポート情報を提出した場合は、サイトから削除してしまう。 技術的には、このようなデータベースに基づいたウェブサイトをセットアッ プすることは難しいことではない。

マックフレンドリ・ウェブサイトを作る上で一番のネックはソフトウェア 会社とのやりとりだろう。多数の会社から情報を引き出すのは非常に困難 な作業になるかも知れないからだ。仮に自社製品の情報・更新をしてくれ るとしても、ほとんどの会社がある程度の正確さを持って定期的に自分で 行ってくれるとは考えにくい。

一つの代替案としては、このサイトを利益を産むベンチャービジネスにし てしまい、うまくソフトウェア会社から情報を引き出す人を雇えるように するということが考えられるだろう。リスト掲載は無料にし、ソフトウェ ア会社のサイトへのリンクは有料で張る。ウェブ上の広告もたぶんうまく 行くだろう。

もっと Apple にとって魅力的な代替案もある。Apple がこのサイトを運営 するのだ。Apple ではすでにサードパーティー製品のデータベースを持っ ているので、外部がやるよりも少ない労力でこのサイトを立ち上げること ができるはずだ。

<http://www.devworld.apple.com/mkt/thirdparty.html>

いずれのやり方にせよ、マックフレンドリ・ウェブサイトはインターネッ ト上の既存の Macintosh リソースを大幅に補強するものになるだろう。筆 者はこのアイディアの権利は主張しない。誰かが実現してくれればそれで いい。実現されれば筆者は間違いなく頻繁に利用することになるだろう。


変わり者になる夢

by John Martellaro <marty104@usit.net>
(翻訳:尾高 修一 <odaka@iprolink.ch>)

ヴォルテールは、「もし神が存在しなかったら、人間は神を発明しなけれ ばならないだろう」と言った。これほどではなくても、もし Apple Computer が存在しなかったら、人類は Apple を発明しなければならない、 ということも同じくらい強力かつ説得力のあるテーゼといえるだろう。な ぜなら、私たちは夢想家で、夢想家は空を見上げ、常にどんなことが可能 かを考え、探し求めるからだ。

これとは逆に、アナリストたちのほとんどは Apple 社を分析する時にはビ ジネスの世界の暗い大地に目を向けるのだ。Sam Whitmore 氏は『PC Week』 誌(96 年 7 月 22 日号)に、Apple 社が抱える問題を冷静かつ正確に分 析した記事を書いた。Apple のファンもこの論文に反論することはできな かった。これは公平で(ビジネスの)核心をついていたからだ。しかしこ の記事は、ほかの多くの Apple 社の没落について語った記事と同様に、非 常に重要なことを見落としていた。Sam は変わり者やアウトサイダーにな ることを全く恐れない人たちがいることを忘れていたのだ。夢想家や著述 家、芸術家、科学者 − こういった人たちは未来を見据えて「これでよし」 と言い、ほかの人たちとは異なった原理に従って生きるのだ。

Apple 社が取り組んだ最も困難な課題の一つである Mac OS 8 がさらに遅 れた今、Macintosh サポーターでさえも、恐れと不確実性と疑念の石を投 げ付け始める誘惑にかられてしまう。

私たちは自分達よりも多くの勇気を Apple 社に要求するのだろうか?

その昔、炎と情熱に満ちていた Steve Jobs という男は、PC ユーザーを凡 庸という名の崖に向かって黙々と歩き、次々と落ちていくゾンビに見立て た。誰だって意志を持たないロボットなどとは比較されたくない。 Microsoft 社は、ビジネスマンが過去 10 年間何よりも求めていた「品格」 というものを与えることによって大きな成功を収めたのだ。Windows 95 が 「Macと同じくらい良い」という主張は、何年もの間、より良いものを採用 するだけのビジョンも勇気も持っていなかった人たちへの賛歌なのである。 Microsoft の強さはまた弱さでもあるのだ。

ほんの少しでもより良く、クールで、インスピレーションを与えてくれる ものに魅力を感じる人はいつでも存在する。そして、Dilbert に出てくる 課長のように、技術屋のアドバイスを無視することによって権威を誇示し なければならない人も存在するのだ。1991 年の『Computer Weekly』誌の 「50 MHz 486 への反応は冷ややか」という記事を例に出そう。この記事で は、「今当社のユーザーのほとんどは [80386 ベースの PC で] 必要以上 のパワーを持っています」という Hughes Aircraft 社の社員のコメントを 載せている。Chevron 社の管理職も同意見で、「この価格ではサーバ用と してしか検討できません」と述べている。公平を期すために、これらの人 たちは相当なパワーを必要とするグラフィカルなシステムではなく、DOS を使っていたことを指摘しておこう。(当時、Macintosh IIfx がまさにそ のグラフィカルなシステムを実現していたのだが。)それではこの人たち はどちらに目を向けていたのだろう? じっと予算とにらめっこしていたの である。

Macintosh ユーザーが目を向けるのはどこだろうか? Douglas Adams 氏や Arthur C. Clarke 氏のような人は星を見上げるのだ。Apple Computer 社 の精神は優秀さと冒険の精神だ。それは未来と、人類の精神が考え出すこ とができるあらゆるポジティブなるものを愛するのだ。私たちはいつも少 しだけ高い代金を払ってきたが、いつも自分のポケットから払ってきた。 私たちの中には、昼間は Windows で収入を得、そうして稼いだ自分の金で 夜にはイマジネーションを豊かにしてくれるもののために出費するのだ。

Apple 社はここ数年、道を見失っていた。Apple はインスピレーションや 好奇心のことを忘れてしまったのだ。Apple は価格戦争に巻き込まれ、ど んな犠牲を払ってでも必死になってシェアの拡大を目指した。今、Apple の使命は最高のものになることだ。確かに、最高のものを求める人は全人 口の 10 % しかいないかもしれない。でももし Apple がその 10 % を見捨 てたとしたも、そこから戦いを続けるためにひっそりと出番を待っている ほかの夢想家や起業家がいる。彼らがどんなことをしてくれるかを予想す ることはできないが、ほかの何かを求める夢想家の精神は残るのだ。ほか のどんなことよりも、このことを Apple に知ってもらいたい。


ある Web の再考

by Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
(翻訳:尾高 修一 <odaka@iprolink.ch>)
(  :尾高 里華子 <odaka@iprolink.ch>)

この前の日曜日、新しい Web サイトを公開した。これはかなりの思索と数 時間の HTML コーディングの成果なので、その過程で考え、学んだことを 少し書いてみようと思う。

<http://www.tidbits.com/>

古い方の Web サイトは、ほかの多くの初期のサイトと同様に、アメーバ的 に成長した。私たちは MacHTTP を立ち上げ、デフォルトページが必要だっ たのでその場ですぐに作った。時間が経つにつれ、もっと多くのページが 必要だと思ったので、さらにページを作って、多くの場合にはホームペー ジから直接リンクを張った。これはすべて HTML 3.2 どころか 3.0 以前に 起きた話なので、良い HTML が持つ構造化された性格を保ちながら(同時 に Shockwave、JavaScript、間延びしたアニメーション GIF、BGM、3D サ ラウンドのサウンドや匂いを駆使するのを避けながら)視覚に訴えるもの を作るのは難しかった。さらに、2 年前には妥当と思えたデザインは、今 では古くなったベーグルのように硬くなり、同じぐらい魅力のないものに なっていた。

そこで、今年の夏に Macworld Boston と友達の Oliver の結婚式の帰りに Boston から ニューヨーク州 Ithaca まで車に乗っている間、Tonya と私 は頭の中でサイトの構造をたどり、今どんなページがあって、それに対し てどんなページが欲しいか、また、今どんなサイトになっていて、それに 対してどんなサイトでありたいか、などのメモを書き留めた。

このようなブレーンストーミングは良い Web サイトの再設計には不可欠 だ。どんなメッセージを発信しようとしているのか、サイトを訪ねてくる 人が何を期待して、何をしたいと思うかを慎重に考えなければならない。 TidBITS の場合には、私たちが週刊のニュースレターを発行していること は明白なので、誰かが私たちの Web サイトを訪れたら、多分最新号にどん な記事が載っているかを知りたいのだろう。以前は、この情報にたどり着 くまで何度もクリックをくり返さなければならなかったので、最新号のイ ントロと目次をいきなりホームページに載せた。これ以外に、TidBITS メー リングリストの購読申し込みのための簡単な Web フォームと、多数の言語 に翻訳された TidBITS にすばやくアクセスするためのリンクを並べた。こ の 2 つのアイテムも、「TidBITS Web サイトに行ったら何をしたいだろう ?」という質問に答えると思えたものだ。

以上が、TidBITS グラフィックと私が書いた本の宣伝とともに、私たちの ホームページの主なエレメントとなっている。Web サイトを訪れた人の質 問は「今週号の TidBITS には何が書いてあるのだろう?」「どうすれば TidBITS を購読できるのだろう?」といったことにとどまらないが、以上が 主なものなので、ほかの質問に対する答えはホームページの最上部にテキ ストのナビゲーションバーとして置いておいた。ナビゲーションバーはほ かの全てのページにも現れており、2 つの行で構成されている。上にはホー ムページへのリンク、そして“About TidBITS”のページへのリンクがあ る。下にはバックナンバー、バックナンバーを検索するためのサーチエン ジン、そして数多くの翻訳版のリストがあるページへのリンクがある。

以前は、それほど重要でないページもホームページから直接リンクを張っ ていた。これでは選択枝が多すぎる上に整理もされていなかった。今度は ホームページの次のレベルにある About TidBITS ページがこの役目を担っ ており、TidBITS に関する情報を集中的に管理している。誰が TidBITS を 作っているのか、どうやって収入を得ているのか、どこに配布されている のか、またはどうしたら私たちと連絡がとれるかといったことの答えは About TidBITS ページからすぐに見つけることができるだろう。

About TidBITS ページや翻訳版のリストがあるページ、そしてどこで TidBITS を入手できるかを記したページなどいくつかのページでは、“テ キストブロックボタン”を採用した。これはグラフィックのボタンが紛ら わしく、(特に異文化を背景に持っている人からは)容易に誤解を招くこ とや、さらなるグラフィックを作って転送するためのオーバーヘッドを考 えてのことだが、なかなかうまくいっていると思う。可能な限り、私たち はテキストを使うため(私たちはグラフィックデザイナーではなくてライ ターなので)、2 桁のテーブルに入ったテキストのリストはボタンオブジェ クトのように見え、かつ簡単なテキストによる明快な説明も付けることが できる(どこでも「ここをクリックしてください」という表現は使わない ように配慮してある)。そしてもちろん、テキストブロックボタンのデザ インは適切な場合には何度も登場し、サイト中のリストページに統一感を 与えている。

もう一箇所、テキスト表示のナビゲーションバーで統一するということに もかなりの時間を費やした。ホームページ(および近いうちに TidBITS に アクセスできるようになるページ、このページは Geoff がやっている自動 配信とうまく組み合わせないといけないのだが)は、最上部にナビゲーショ ンバーが配置されている。これは、ページの最後にあるナビゲーションバー は隠れてしまいやすく、そのためそこに出ているサイトにたどり着きにく くなると思ったからだ。例えば、America Online のどこに TidBITS があ るかを知りたいのだが、私たちのホームページの URL しか知らない人がい るということも十分有りえるのだ。ホームページの最上部に About TidBITS のリンクを張っておくと、早くしかも簡単に TidBITS にたどり着くことが できる。それ以外のページに関しては、そこに何が書かれているかを知る ためにはともかくページ全体を読む必要があると思い、ページの最後とい う適切な(かつ視覚的にも美しい)位置にナビゲーションボタンを置いた。

何度も訪れてくれる人があまりいないということが多くの Web サイトが抱 えている問題である。それを確かめるために Web ログの分析をしようとし たこともないが、自分たちの今までのサイトにも同じ問題があると感じた のだ。確実に再訪してもらうための何よりの方法は、内容を定期的に変更 することである。毎週 TidBITS を発行しているということをいかしてホー ムページに最新号のイントロと目次を置くことにした。こうすれば、私た ちのページを訪れてくれる多くの人がきっと望んでいるだろうことに応え るうえに、私たちにとっても一週間毎にホームページを変更し、みんなが 定期的に訪れてくれるようにするよい機会にもなるのだ。

Tonya が今までに HTML 作成ツール、WYSIWYG なものやそうでないものに ついて散々書いてきたので、皆さんの中には私たちが何を使ったか知りた い人もきっといるだろう。今 Tonya は雑誌にその手の記事を書くのにとり わけ忙しくしているという現実もあり、先に私が手を付けたのだが、結局 全部自分でやってしまった。HTML は苦手ではないが、今まで一人で何ペー ジにもわたる全ての HTML を書いたことがなかった。それでも、自分たち のページに関するアイデア(白いバックグラウンド・ロゴのグラフィック ・テキストブロックボタン・テキスト表示のナビゲーションバー)はよく 分かっていたし、慣れ親しんでいる環境で作業をするのが最も楽であろう と考えた。私の場合 HTML マクロの付いている Nisus Writer ということ になる。Nisus Writer は最新でも最高でもないが、作業がちゃんと行える し、あちこちにあるナビゲーションバーにでてくるどこかのページの相対 URL でへまをしているのに気が付く度に、開いている全てのファイル上で Find/Replace の機能を使うことができるのだ。再構築中に多くのページを ルートレベルからサブフォルダに移動させたり、リンクの多くをだいなし にしたりしたので、内部リンクチェッカーが欲しいと思った。さらに、ま だ Adobe SiteMill をインストールする暇もないので、もしほんのわずか でもミスがあれば連絡をいただければすぐに修正をするつもりだ。

一度新しいサイトを見て、加えて欲しい情報の要望や疑問に応えていない 部分があればご連絡いただきたい。もしかしたら、それは単に私たちが公 表していないことなのかもしれないし、サイトを設計し直すときにうっか りとしていたことかもしれない、その際は追加したい。TidBITS の全号が 載っているページをアップデートし続けるとか新たなグラフィックなどを 含めまだやらなければならないことも残っているし、古くなるベーグルの ように硬くなりだすまでは、変更することが山のようにあるのだ。


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