TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS-J#347/30-Sep-96

無用な電子メールに困っている多くのインターネット・ユーザーの一人であ るあなたには、業者がどうやってあなたの電子メールアドレスを手に入 れ、それがメールボックスに配達されるか、そしてどうしたら手際よくそ れらに対処することができるかをお答えます。また今週は、GeoPort の新 しい 28.8 Kbps ソフトウェア、MkLinux の最新版のリリース、ソフトウェ アのアップグレードがいかにして顧客の信頼を無くしていくかについての タイムリーなエッセイ、最後に Matt Neuburg の QuickKeys 3.5 レビュー の前半をお届けします。

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目次:


MailBITS/30-Sep-96

(翻訳::加藤たけあき <oiso@wolfenet.com>)

MkLinux DR2 -- 先週 Apple 社は、“ベータ版の品質”であるという Power Macintosh 用の Linux オペレーティング・システムである DR2 of MkLinux をリリースした。MkLinux DR2 は DR1 から格段の改善がみられ、 向上したシリアル、SCSI、(AppleTalk を含む)ネットワークのサポート といった、より向上したパフォーマンスを提供しているが、PCI Power Mac のサポートは 未だ実現されていない。MkLinux DR2 は FTP と CD-ROM で 入手可能だが、サイズが巨大なので Prime Time Freeware 社からの 20 ド ルの CD-ROM をお勧めする。[GD]

<http://www.mklinux.apple.com/>
<http://www.ptf.com/ptf/products/MKLP/>

おそらく... Apple Telecom 3.0 -- TidBITS でよく受ける質問は、 「Apple 社は、いつ GeoPort の 28.8 Kbps 対応ソフトウェアをリリース するんですか?」というものだ。我々もこのソフトウェアについては、皆 さんと同様にまごついているのだが、最近になって公式と非公式な情報筋 の両方から一致した見解が浮かび上がってきている。数多くにわたるリリー ス予定日の公約と、MacWorld Boston でのデモ、数週間前にオーストラリ ア、スウェーデンの FTP サーバーでの Telecom 3.0 の配布を中止にした という状況などから、Apple 社はおそらく Telecom 3.0 を 10 月後半には リリースするだろうと思われる。

新しいソフトウェアは、全二重方式のスピーカーフォン機能、Caller ID 機能、そして一緒に出荷される Apple 社製のボイスメール・ソフトウェア が(現在のソフトにバンドルされている Cypress Research 社製のものの 代わりに)含まれ、v.34 が GeoPort Telecom Adapter でも標準仕様にな る予定だ。しかし Telecom 3.0 には、660AV や 840AV モデルのオーナー 達を置き去りにして、Power Mac 上でしか動作しない(しかもハイスピー ドでの使用時に、マシンのパフォーマンスがかなり低下するようだ)といっ た、いくつかの制限も報告されているようだ。また、初期の GeoPort Adapter はハードウェアの問題で、トップスピードでの接続ができなくな るかもしれない。これらの制限のない新しいバージョンの GeoPort Adapter は間もなく 100 ドル前後で出荷される予定だ。金額に関していえば、いく つかの情報筋は、一部または全てのソフトウェアが無料になるだろうと報 じているが、その他では、このパッケージは有料になるとしている。より 信頼できる情報が手元に届き次第、皆さんにレポートしたいと思う。[GD]

<http://www.macweek.com/mw_1037/gw_geoport.html>


悪性のアップグレード病

by Marc Zeedar <zmarc@designwrite.com>
(翻訳:尾高 里華子 <odaka@iprolink.ch>)

Matt Neuburg 氏は TidBITS-345 に掲載された Now Utilities 6.5 に関 する記事で、ソフトウェアの販売方法に深刻な問題が生じているという 点に触れていた。ソフトウェア会社はどんどん“アップグレード病”に冒 されていき、変わらず長く役に立つというソフトウェアの価値が脅かされ ている。

ソフトウェアのメジャーアップグレードは、以前は 2 〜 3 年に一回ある と思っていれば良かったが、今では年に一度か、多くの場合一年も経たな いうちに行われるのだ。たいていの場合、メジャーアップグレードで動作 のためのシステム必要条件(RAM・パワー・空きディスクなど)が厳しくな り、新しいファイルフォーマットが伴い、他のプログラムと互換性が無く なる可能性が増し、さらに新たな技を覚えなければならなくなるのだ。

このようなマイナス部分を抱えていては、ソフトウェア会社がユーザーに アップグレードを納得させるために見掛け倒しの新しい機能を売り込まな ければならないというのも無理のないことだ。その上、アップグレード料 金は、市場価格や多数の会社が 出している“乗り換え価格”と比べてあま りお得でないかもしれない。私は正規コピーを購入して、ユーザー登録カー ドを送らさせて頂くという形で製品を支援している。運が良ければ、市場 価格よりも 5 ドルほど節約できたりする。(店に行けば新しい物が 29.95 ドルで買えると言うのに、多くの会社がアップグレード料の 25 ドルに 10 ドルの送料・手数料まで上乗せしているのだから馬鹿げた話だ。)

2 年ほど前に 99 ドルで購入して、今でも問題なく動いている WordPerfect 3.0. がこの風潮のいい例だろう(私は Power Mac は持っていない)。現 最新版の 3.5 はもちろん良いかもしれないが、釣られるほどの新機能は備 えていないように思える。Corel 社はアップグレード料としてなんと 89.99 ドルを要求している。他の新しいのを買った方がましだ。(乗り換え価格 は現在 89.99 ドル)

もうこういった餌に飛び付くことは滅多になくなった。After Dark は 3 つ前のバージョン以来アップグレードしていない。未だに Now Utilities 4.0 や Quicken 3 を使用しているが私にとっては十分であるし、Kai's Power Tools や Bryce をアップグレードするかは(あまりにも費用がかか るので)悩んだこともない。FreeHand はバージョン 7 にはアップグレー ドするつもりだが、今のところ 4.0 を使っている。

2 〜 3 解決方法を考えてみた。一つは、既存のユーザーに対するとりわけ 低価格のアップグレードだ。(私がここで言っているのは、10 ドルから 25 ドルぐらいのものかメディア代だけとかオンラインでの配布のものだ。 ユーザー登録番号をパスワードとして使えばいいし、マニュアルは追加料 金にすればよい。)私のお気に入りは、Metrowerks 社の CodeWarrior で 実施されているような購読方式だ。これは、デベロッパーが確実に予定さ れたリリースを行う(ユーザー側はそれを受ける)もので、これにより、 デベロッパーは最新機能 全て を一度で網羅しなくてもよくなる。新機 能は年に 4 回あるリリースで随時取り入れられていき、ユーザーが全く新 しいインターフェースに面食らうことがない。ユーザーは決まった回数だ け無償のアップグレーそが受けられることを事前に知らされており、その 後は改めて申込をしなければならない。[この購読方式には、その会社が実 現できないような機能を約束したり、予定日に間に合わせるためにバグ混 じりのソフトウェアを出荷したりするという問題があると指摘する人達が いる。-Adam]

ソフトウェアのアップグレード関連の問題は、おとなしい苦情や珍しい事 件などではない。ソフトウェア業界全体がこの危機に瀕しているのだ。 (Microsoft Office や Word 6 のアップグレードの問題をちょっと考えて いただきたい。)

ソフトウェア開発は岐路に立っている。ソフトウェアを商品にしてしまう と製品の価値が下がる。デベロッパーは労働の代価を守るために今行動を 取らなければならない。もしそれをしなかったら、ユーザーは、わざわざ 正規版を買ったり正規にアップグレードしたりする気持ちが次第に薄れて いくだろう。プラグインや Open Doc の Live Object のような技術では もっと問題が深刻になるだろう。(例えば、従来のプログラムよりもプラ グインや Live Object の方が高くつくなんてことが受け入れられるだろう か?)

私はと言えば、Now Utilities 4.0 を使い続けていくだろう。


形態、機能と Quickeys 3.5 (第一部)

by Matt Neuburg <matt@tidbits.com>
(翻訳:尾高 修一 <odaka@iprolink.ch>)
(  :村上 浩  <murasan@yk.rim.or.jp>)

「問題はだな」とハンプティ・ダンプティは言った、「どちらが主となる べきか。それだけだ。」- Lewis Carroll

ソフトウエアデベロッパーにとって、形態と機能の理想的なバランスを実 現するのは容易なことではない。当然のことながら、欠陥のある機能は見 た目だけの派手なグラフィックなどで補えるものではないが、インター フェースで差を付けることができることは事実だ。そう、インターフェー スで大きな差がつくのだ。ある機能がどれだけ重要であっても、その性能 を発揮させるための手順が(人間の精神に根差した特性のため)あまりに も面倒だったり、わかりにくかったり、直感的でなかったり、繰り返しを 要求したり、いらいらさせたり、あるいはあまりにも大変だと感じられる ような場合には、誰もその機能を使ったりしないだろう。もしどうしても 使わなければならないとしたら、嫌々使うだろう。

CE Software 社の Quickeys (QK) は 1987 年に登場した。TidBITS は 1990 年半ばにバージョン 2 が現れた時(第 16 号!)以来取り上げてきて いる。[これは Quickeys が最初の 5 年間、TidBITS の配信になくてはな らない役割を演じていたという理由にもよる -Adam] Quickeys の機能は、 ほかのプログラムにある形態上の欠点を補うことにある。CE 社が最近 QK 3.5 を発表したことは素晴らしいことだ − たとえ 3.5 で新しくなったの がインターフェースだけであっても。現行バージョンの 3.0 は 1993 年半 ばにリリースされたものだ。この 2 部構成の記事の第一部では、QK 3.5 の全体的な説明をし、来週号でこのアップグレードを詳しく見ていこうと 思う。

ベイビー、俺のコンピュータを操作してくれ -- QK の機能は、 Macintosh の基本的な操作の一部を実行することができるシステム機能拡 張を中心としている。あたかも目には見えないユーザーがいるかのよう に、キーを押したり、メニューアイテムを選択したり、マウスをドラッグ したり、ファイルを開いたりすることができるのだ。その形態はこの機能 にアクセス、またはこの機能にトリガをかける(呼び出す)ための(特定 のキーを押すなどの)各種の方法、そしてあるトリガを特定の機能に結び 付けるためのダイアログによって決定されている。

なぜ QK は便利なのだろう? これには主に 4 つの理由がありそうだ。だ が、その理由に入る前に、QK のアクションはコンピュータ全体に対して “ユニバーサル”であるか、特定のアプリケーションのみに限定されるか の 2 通りがあることを述べておくべきだろう。特定のアプリケーションに のみ適用されるアクションとそのキーストロークは、そのアプリケーショ ンが前面にある時にだけ有効になる。このことは、異なるアプリケーショ ンの間では、同じキーストロークを別の QK アクションにトリガをかける ために使うことができるということと、かつキーストロークがアプリケー ションを問わず“ユニバーサル”なアクションにトリガをかけることがで きるということになる。アプリケーションに限定されたキーストロークは ユニバーサルなものをオーバーライドしたり、無効にすることができるの で、ユニバーサルなキーストロークはある特定のアプリケーションを除い たほかの全部のアプリケーションに適用することができる。

シーケンスはアプリケーションのいらいらするようなインターフェースを 回避するためにも使うことができる。私が CE 社の QuickMail 3.5 を使っ ていた頃、新しいメッセージをインターネット経由で送り出す手順はス テップが多くて面倒だった。私の記憶が正しければ、まずメールの送り先 を指定したいことをコンピュータに伝え、“special”ボタンをクリック し、“first name”の欄に何かを入力し、“server”欄の中身を “Internet”で置き換え、“address”欄にアドレスを入力し、OK をク リックし、もう一度 OK をクリックしなければならなかった。QK を使え ば、一つのキーストロークでクリップボードの中身を使って新しいイン ターネット経由のメールを作るシーケンスにトリガをかけることができ た。

それ行け、トリガ -- 簡単に覚えておけるトリガ用のキーストロークも いずれは使いきってしまうものだ。そのため QK は長年に渡りさまざまな タイプのトリガイベントを追加しながら進化してきた。

そのひとつが時間である。設定した時間にあわせてアクションを実行する のである。QK の場合、時刻もしくはアプリケーション(または、Mac 自 身)のスタートアップ後の秒数で時間設定することができる。時刻設定を 使えば、無人で Mac に定期的なアクション、たとえばディスクの最適化作 業や週一のバックアップ作業などを深夜に実行させることができるだろう。 アプリケーションごとの相対時間で設定すれば、アプリケーション起動直 後の作業、たとえばスプラッシュ画面やダイアログをクリックで消すといっ た作業を自動化することができる。

別途用意してある QuickKeys メニューからの選択でアクションにトリガを かけることもできる。このメニューはアップルメニューやメニューバー上、 またはポップアップメニューで階層的に表示することができる。このメ ニューに表示したいアクションを設定しておけば、自動的にその内のユニ バーサルなアクションと最前面にあるアプリケーション用のアクションだ けをメニュー表示するようになっている。

また、リファレンスカードも備えている。これは QK アクションのひとつ で、トリガがかかるとその時点で使用可能な全 QK アクションをモーダル ダイアログに表示してくれる。このリファレンスカードはどのキーストロー クがどのアクションに対応しているかの確認にも利用できる(QK メニュー の一覧では確認できない)。

さらに、QK アクションにトリガをかけるための、ダブルクリックで起動す る小さなアプリケーションを作成することも可能だ。このアプリケーショ ンならエイリアスの配置や起動と同じように扱うことができる。

1992 年 の中頃、QK 2.1.2 で新しいタイプのトリガ、SoftKeys が紹介さ れた。それ自身が QK アクションになっていて、トリガがかかると 10 個 のボタンを配置したモーダルダイアログが前回の設定状態で表示される。 ボタンにはキーボード最上列の数字キーのように 1 から 0 の数字がつい ており、それぞれの QK アクション名がその隣に表示される。ボタンをク リックするかその数字キーを押すとダイアログは消え、対応する QK アク ションにトリガがかかる。SoftKeys ダイアログでトリガをかけた QK アク ションから別の SoftKeys ダイアログを呼び出せるので、次々に参照して いく一連のダイアログを作り、それを辿って目的のアクションを実行させ ることもできる。SoftKeys は様々な QK アクションを分類して使いやすく するためのものだが、実際には DOS 上の続けざまに現れるモーダル“メ ニュー”のことを思いだしてしまい背筋が寒くなる。そもそも、私たちの 多くはこのメニューが嫌で Mac に乗り換えたのである。

賢明にも 3.5 の QK では SoftKeys が廃止され、効果的なツールバーがそ れにとって代わった。ツールバーはユニバーサル用にも、アプリケーショ ンごとにも作成できる。ひとつのアプリケーションに複数のツールバーを 設定することも可能だ。アイコンをカスタマイズすることもできるし、ア イコン上にマウスを持っていくとその QK アクション名が現れる“ホット ヘルプ”機能もついている。ツールバーは 3 種類用意されている。その内 2 つは、“フローティング型”(ウィンドウ状)と“埋め込み型”(移動 できるが画面端に固定)のツールバーだ。これらツールバーの表示/非表示 はキーストロークまたは QK メニューで切り換えることができる(フロー ティング型のものはクリックでも非表示にできる)。また、表示状態のア プリケーション用ツールバーは別のアプリケーションに切り換えると消え てしまうが、その状態は維持されており、元のアプリケーションに戻れば また表示される。もうひとつのツールバーは“クリック & ゴー型”で、む しろ SoftKeys に近い機能を備えている。呼び出さない限り表示されない ツールバーで、アイコンをクリックすると消えてしまう。

Mac ユーザーの中にはツールバーに対して強い拒否反応を示す人も多いが、 なにも無理をしてこの機能を使う必要はない。そうでない人は、どのアプ リケーションにでも強力なツールバーを追加できるこの機能をきっと歓迎 することだろう。ただし、ツールバー編集のインターフェースにユーザー が馴染めるか心配だ。使っていると頭が混乱してくるし、扱いにくいのだ。 たとえば、ツールバーを設定している間はアクションの作成や編集ができ ない。また、アプリケーション用のツールバーに別のアプリケーションで 使っているアクションのアイコンをインストールできたりするのだ(この 場合、クリックしてもなにも起きない)。

次週、乞うご期待 -- QK 3.5 の機能についてはこんなところである。で は、その設定はどうすればいいのだろう? AppleScript など、ほかの Mac 操縦法との相性はどうなのだろう? 3.5 にアップグレードする価値はある のだろうか? これら事項については、次週の第二部でお伝えしよう!


バルクメール・ブルース

by Geoff Duncan <geoff@tidbits.com>
(翻訳:齊藤 聡 <akkun@ca2.so-net.or.jp>)
(  :尾高 里華子 <odaka@iprolink.ch>)
(  :山浦 礼子 <raeko@bnn.co.jp>)

インターネットにある程度の時間を割いていると、必要としない電子メー ルによる案内や広告を受け取ることが非常に多いだろう。こういったメッ セージは多種多様である。ある日、たちまち大金持ちになれる計画につい ての情報を受け取るかもしれないし、その次にはインターネットサービス プロバイダの広告を受け取るかもしれない。一部のメッセージは、政治的 な熱弁や悪意に満ちたこき下ろしのような論争であったり、悪質なもので あったりする。手編みの子猫用ブーツの広告や(わたしは話を誇張してい ない)土星から来た地球外生命体がニュージャージーでビンのキャップの リサイクルを計画しているという報告といった本当に変なものもある。

その問題は真新しいものではないが、最近のインターネットの膨張は“バ ルクメール [bulk email](訳注:ジャンク電子メールやダイレクト電子 メールなど無駄なメールの総称)”あるいは“スパム [spam](訳注:同一 内容の記事を多数のニュースグループにポストする行為)”の爆発的な増 殖と同調している。それらに対する怒りの返事のおかげで最近数ヶ月にわ たってその増殖は続いている。産業界全体がバルクメールを量産している し、いまや問題は法廷に持ち込まれている。この記事でバルクメールのあ らゆる面を論ずることはできないが、その背景のいくつかとジャンクメー ルに適切に対応する方法について説明する。

発信者の理屈 -- 私は個人的にバルクメールが押し寄せて迷惑している ので、それを送る者の立場を説明しようとは思わない。しかし、バルクメー ルに寛容な一部の人々とその話題を議論しているとき、ある理屈に私は驚 かされた。

たいてい、バルクメール屋達は、自分達が情報を配布するサービスを提供 しており、それが自分達を受け入れる者に情報に基いた判断をさせる助け になると信じている。米国では、彼らは自分達の仕事は自由な発言をする ことだと信じている。世界的に、バルクメールは国際的な貿易協定 - もし 存在するとすれば、その協定を守らせるのはほとんど不可能だろうが - に より制限されるだけの自由な企業活動とみなされる。さらに、米国では、 バルクメール屋達はインターネットが公共的な資産であり(それが一部税 金を使用して生まれたから)、電子メールアドレスは住所と同じような公 共的な記録であると思っている。多くのバルクメール屋達は自分達の活動 は郵便広告を“改善した”形態であるから広まったのだと主張する。彼ら のねらい目は良かった。送付にかかる時間はほとんどいらない(メールの メッセージは数秒で消されてしまうが、現実の物を輸送する必要はない) し、環境にはほとんど影響を与えない。紙もわずかな燃料もそれを送付す るために使わないからだ。

ほとんど例外なく、バルクメール屋達は自分達の活動を正当化しようとし ている。つまり、一部は 50 または 100 件程度の配布先にだけ送るよう に、自分達の配布先を絞り込んでいるという。またあるバルクメール屋達 は自分達の配送に反対するするアドレスや全ドメインをリストから削除す るのに苦労しているそうだ。

もちろん、多くはほとんど良心を持ち合わせていない。自分達の活動を問 題にする人々を軽蔑し続けたり、バルクメールが経済的でもハイテクでも 文化的な向上意識もないものだという意見に(しばしば感情的に)反対を 主張する。インターネットに新たに参入し、自分の行動がどんなに問題か わかっていないようなバルクメール屋もいくつかある。

2、3 のバルクメール屋達も興味深い点を指摘している。バルクメールに もっとも激しく反対するユーザーはここ数年の間インターネットを使用し ている傾向があった。しかし新しいインターネットユーザーはほとんどわ ずかしかバルクメールに反対していない。そしてここに別の驚くべき点が ある。受取人がメッセージを受け取ることを積極的に拒否しなければ、もっ とも良心的なバルクメール屋達でさえそのメッセージが 成功 したもの と常に解釈する。彼らは受取人が製品や特にそのメッセージに興味を持っ ていないだろうが、受取人は 受け取り を拒否せず次回の配送の適当な 相手になると信じるほうにつく。

受信者の意見 -- バルクメールに対抗する意見は多く、そしてよく知ら れている。私はここでその内の一部を要約するだけにしたい。第一に、郵 便とは異なり、大部分のインターネットユーザーは電子メールを受け取る ために固定料金、時間または単位バ イトを基本として支払っている。その ため多くの場合では欲しくない電子メールでも受取人が事実上料金を負担 する。さらに、バルクメールにかかるコストは郵便で広告を送る費用より もかなり小さい。バルクメールはより容易に濫用できるし、かなり多くの 数を配布することができる。バルクメールは郵便による広告よりも州や地 方の法律に抵触することなく、不当で個人的な攻撃をすることにより向い ている。バルクメール屋にくりかえし送付先にされたということは嫌がら せを受けているということだ。

とはいえ、バルクメールに対する不平の中で一番よくあるのが不快だとい うものである。ほとんどのインターネットユーザーがバルクメールは腹立 たしいもので、インターネットの最大の欠点だと考えているのだ。頼みも していないのに届けられるメールが自分たちのプライバシーを侵害してい るとか、インターネットの有効利用の邪魔をしていると感じているかもし れない。

バルクメールが道を誤ってしまうというのが、多分最悪のシナリオだろ う。バルクメール送付の不始末でたった一つのアカウントに何千通ものコ ピーを送ってしまうこともありえるのだ。さらに問題になるのは、イン ターネットのサイトを襲い、回線を切らざるを得なくしてしまうような メール(やメールの逆襲)の大洪水である。こういった事態は個人個人ま たはサイト全体への攻撃だとみなされるし、たいていは憎しみのこもった 資源を浪費する反応を生むことになり、何も知らない何千というインター ネットユーザーに被害を及ぼす可能性があるのだ。

スパム産業 -- ここ 2 年間で、バルクメールを取り巻くビジネスやソ フトウェア製品が一気に乱立した。可能な限り広範囲にメッセージをまき 散らすのが専門の請負人だと自分を売り込むプロのスパム屋による営業努 力によって幕が開いたバルクメールの舞台を、今では一攫千金を夢見るプ ログラマーや企業家達が跳梁している。メールアドレス収集プログラムや 数時間で何千人もの人達にバルクメールを送るようなプログラムを書いて いる者もいるし、バルクメール集配センターになるサイトを立ち上げると いった徹底したバルクメール向けのサービスを提供するものまでいる。こ れらの活動の多くが目に見える公然のものであり、少なくともそのひとつ は裁判沙汰になっている。

バルクメール屋達は、あの手この手であなたのアドレスを入手する:

これら全ての方法で何千というメーリングリストが生み出され、そのうち の多くはかなりの数がダブっていたりする。どれか一つから自分のアドレ スを削除したところで、他にあるものまでは消えないし、再度書き加える のはたやすいのだ。バルクメール屋の中にはアドレスの除去を責任を持っ て 実行 しているところもあるが、しかし逆らうべくもなく、こういっ たリストがひたすら成長するのだ。

どうすればよいか? -- 残念ながら今のところバルクメールを追い払う確 実な撃退策はないが、問題は悪化してきているのでスパムのないメールア カウントをくれるようなサービスとか、メールをフィルターにかけるソフ トウェアがもっと洗練されていくのを期待することはできる。現時点での バルクメールを止める最も効果的な方法は、皆さんが不満を表明すること である。

通常、これに対する返事をあなたが受け取ることはないかもしれないが、 インターネットプロバイダーはその行為を辞めさせるべくバルクメール屋 に注意を促すものだ。もしもそのメールが続くようであれば、通常、プロ バイダーはそのアカウントを没収する。

バルクメールの送付を行なうために特に設けられたインターネットのドメ インからバルクメールを受け取っている場合は、こうした戦術では失敗し てしまう。もしも Whois や Traceroute のようなユーティリティをご存じ ならば、サイトの上流プロバイダーを探して彼等に文句を言うことが可能 になるのであるが、それについては誌面の都合上ここでは割愛させていた だく。

バルクメールの将来 -- バルクメール屋の営業を停止させるために現在 のところ効力を持つものはないため、ひょっとすると郵便、あるいはファッ クスについての既成の法律を修正したものなのかもしれないのだが、法律 の制定が求められている。事はたいへん複雑なのだが、ここ米国では、ジャ ンクファックスを防止するために作成された法律を適用する場合を筆頭に、 私が話したコミュニケーションの法律の専門家達は、既成の法律制定をメー ルに対して適用するのではお粗末だということに一般的には賛成している。 もちろん、ここで可決した法律を国内で効力を持たせることはもちろん, (ましてやそれを)国外に適用することは難しいだろう。

バルクメールに関する最初の裁判事件は現在審議中であり、これについて はオンラインコミュニティが注意深く様子を観察することだろう。こうし た事件の結果がどうであれ、バルクメール屋の成功はバルクメールを削減 することを目的とするサービスを加速するだろう。すでに、メールクライ アントにその場で本物であると実証するフィルタを組み込むという話しが ある − たとえばあなたがメールをチェックするたびに、登録プロバイ ダー、あるいはインターネット上であればどこでも使用できる登録ベース のサービスにより提供されるスパム防御フィルタの最新セットをメールプ ログラムがチェックするという具合だ。小さな編集スタッフとまぁまぁの 接続があれば、頻繁にバルクメールフィルタをアップデートして供給する ことは技術的な問題ではない。

あぁ、ところでもしもあなたがバルクメールを好む奇特な人だというので あれば... 、私は子猫のためのとっても素敵な手編みのブーツを買える場 所を教えることができますよ。


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