TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS-J#350/21-Oct-96

今年度第 4 四半期に2500 万ドルの収益を上げた Apple が、今週号のトッ プを飾っている。ちょうど発表されたばかりの PowerBook 1400 シリーズ の記事と GeoPort ユーザーに耳寄りなニュースもお伝えする。さらに、 Adam が WorldScript Power Adapter を使って Power Macintosh をスピー ドアップするというあまり知られていない Tips を紹介しているほか、 Steve Becker 氏が、パワフルなユーティリティ OneClick のレビューを 引っ提げて登場している。

目次 :

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MailBITS/21-Oct-96

(翻訳::尾高 里華子 <odaka@iprolink.ch>)

今週号は setext フォーマット、Web フォーマットともに、少々手を加え た。大した事ではなく、形式や言葉遣いをちょっといじっただけの事務的 なものにすぎない。[ACE]

Apple の四半期決算 ... 黒字 ! Apple は第 1 〜 3 四半期の業績を理 由に、ウォール街、経済誌、工業誌、財政専門家達から散々たたかれ続け た末、先週、第 4 四半期は 2500 万ドルの 黒字 だったという収支報告 を行い、大方の経済アナリスト達を驚かせた。Apple は 1996 会計年度全 体ではまだ多額の損失(なんと 8 億 1600 万ドル)があるものの、今回の 黒字方向への転換は、主に新 CEO (最高経営責任者) Gil Amelio 氏の下 でのリストラ、経費削減、効率化が功を奏したのだ。Apple はまだ危機か ら脱したわけではなく、多くの難題を抱えているのだが、この予想外の ニュースは、新製品の発表や稼ぎ時である休暇シーズンを狙う際、Apple を後押しすることとなるだろう。[GD]

<http://product.info.apple.com/pr/press.releases/1997/q1/ 961016.pr.rel.q496.html>

Apple Telecom 3.0 リリース -- Apple は今日、公式に Apple Telecom 3.0 をリリースした。これでようやく、GeoPort ユーザーは 28.8 Kbps の スピードを手に入れることができる。2 種類のアップデートが用意されて おり、一つは、市販用の GeoPort Telecom Adapter Kit (合衆国および日 本で 12 月より入手可能になる見込み)、もう一つは、無償の GeoPort & Express Modem Updater 3.0 である。GeoPort Telecom Adapter Kit は約 130 ドルで販売される予定であり、GeoPort アダプタ、Apple Internet Connection Kit、およびファックス・留守電・スピーカーホン機能を備え た新しいコミュニケーション指向プログラムがセットになるだろう。無償 GeoPort & Express Modem Updater は、2 枚のディスクイメージからなる ものがオンラインで入手可能で、これで、Power Mac と GeoPort を併用す れば、28.8 Kbps の速度が実現できる。 [GD]

<http://product.info.apple.com/pr/press.releases/1997/q1/ 961021.pr.rel.geoport.html>
<ftp://ftp.support.apple.com/pub/apple_sw_updates/US/mac/ Networking-Communications/Apple_Telecom/>


Apple 社、PowerBook 1400 を発表

by Geoff Duncan <geoff@tidbits.com>
(翻訳:齊藤 聡<akkun@ca2.so-net.or.jp>)

顧客と広報の見方からすれば、PowerBook 5300 シリーズは Apple 社が今 までに製造した Macintosh のうちでもっとも悲惨なものといえるだろう。 多くの献身的な 5300 シリーズの所有者は Apple 社に忠実であり、自分の マシンと幸運な時を過ごしたのだが。まず、このシリーズはリチウムイオ ンバッテリの潜在的な発火の問題を正すために出荷停止したとき “HindenBook”というあだ名をつけられた( TidBITS-295 参照)。また ソフトウェアの互換性の問題、システムのアップデート、ひっそりとした ハードウェアのリコール、さらなるアップグレード、といった事件があり、 そして Apple 社が 5300 シリーズを販売店の棚から回収し“リペアエクス テンション”プログラムをはじめたまさにそのときにメジャーなハリウッ ド映画への宣伝のための大規模な投資があったのである。( TidBITS-331 参照)。

とにかく、PowerBook 1400 シリーズは以前の PowerBook の致命的な欠点に 取り組み、高品質な信頼できるノート型コンピュータを提供することを狙っ ているものであり、PowerBook 5300 の保守的なフォローアップであって、 ノート型コンピュータの世界で注目を集めようとしたものでないことは意 外なことではない。悪いニュースは、PowerBook 1400 シリーズはかなり高 速だったり、極端に安価だったりしそうもないということだ。良いニュー スといえば、それが CD-ROM ドライブを内蔵でき、柔軟な拡張性があり、 丈夫でよく考えられた設計がなされているという報告があることだ。

<http://product.info.apple.com/pr/press.releases/1997/q1/ 961021.pr.rel.pb1400.html>

基本的スペック-- PowerBook 1400 シリーズは 5300 シリーズの最上位 機種の位置を占めている。つまり、117 MHz で稼働する PowerPC 603e プ ロセッサを使用している。133 MHz の 603e プロセッサを搭載するハイエ ンドの PowerBook 1400 は 1 月に登場する予定だ。ローエンドの PowerBook 1400cs はプロセッサキャッシュがなく、DSTN 液晶ディスプレ イを搭載する。ハイエンドの PowerBook 1400c は TFT 液晶ディスプレイ と 128K レベル 2 キャッシュを搭載する。

ディスプレイは対角 11.3 インチのものを使用し、800 × 600 で 16 ビッ トカラーを表示できる。DSTN 液晶ディスプレイは一般的に TFT 液晶に比 べて画質が悪く不鮮明だが、1400 シリーズの DSTN 液晶ディスプレイは本 当に良くなっており、5300 シリーズの DSTN 液晶の画質をはるかに凌いで いるという。

PowerBook 1400 シリーズは 5.5 インチのフロントローディングデバイス ベイを装備している。これはフロッピーディスクや(ついに!)6 倍速 CD-ROM ドライブ用に使うことができる。PowerBook 1400 シリーズ用の拡 張ベイデバイスには SCSI が使われていない。内蔵ハードディスクも含め、 そういったものにはすべて拡張仕様ではないが高速な IDE バスを採用して いる。拡張ベイには予備のバッテリを装着しておくこともできる。しかし 5300 シリーズとは異なり、拡張ベイには電源供給の機能がない。しかし、 PowerBook 1400 は小さくて充電可能なリチウムバックアップ電池を採用し ているので、データや RAM ディスクを失うことなく 1400 をスリープさせ た状態でバッテリを交換することができる。PowerBook をスリープさせた 状態でフロントデバイスを抜き差しして交換することも可能である。

以前の PowerBook とは異なり、PowerBook 1400 シリーズはテーブルのよ うな平らなところで使いたいときにキーボードを前方に傾けるための出し 入れできる脚がついていない。その理由は、PowerBook が前方に傾いてい るとフロントローディングベイに装着した - CD-ROM ドライブのような - リムーバブルメディアデバイスがきちんと開かなくなってしまうからだ。

PowerBook 1400 シリーズは 5300 シリーズと同様に PC カードによる拡張 機能をもっている。2 枚の Type II カードまたは 1 枚の Type III カー ドが収納できる。内部の拡張スロットには Ethernet カードおよびビデオ カードを同時に収納できる。また 5300 シリーズのように、1400 シリーズ はニッケル水素バッテリを使用する。これは実際の使用環境で 2 時間から 3 時間連続使用できると報告されている。

Apple 社によると、PowerBook 1400 シリーズには (最近リリースされた System 7.5.5 ではなく - TidBITS-346 を参照)System 7.5.3 がプレイ ンストールされて出荷される予定である。これには ClarisWorks、Apple 社の Internet Connection Kit、Apple Remote Access およびそのほかの ユーティリティが付属する。

BookCovers -- PowerBook 1400 の新しい機能の中で最も話題になるのは おそらく着脱可能なカバーパネルだろう。これは BookCover と呼ばれてい る。Apple 社は PowerBook 1400 シリーズに通常の灰色のカバーと透明な カバーとを同梱して出荷する予定だ。透明なカバーの基本的な考え方は、 自分の 1400 を外見で区別するためにその下に印刷されたラミネートカー ドを 1 枚すべり込ませることができる、というものだ。Apple 社は伝え聞 くところでは、1400 に多数のカードの絵柄 - 森林資源を無駄にすること 以外はデスクトップパターンと同じデザインの PowerBook というようなも の - を同梱する予定であったり、またはユーザーがその気になれば自分自 身の“CoverWear”をちゃんと作成できるようにする予定だという。私は サードパーティの差し替え用のカバーについての記事を目にしている。一 部はステレオスピーカーのような機能を高めるものを提供するようだが、 あるものは……ええと、あるものは全くそうではない。Ringo Starr の描 いたタレントもの BookCover を想像していただきたい。そうすればそれが 分かるだろう。

拡張とは何か? PowerBook 1400 のカバーを外して内部をいじるのは、 特に以前の PowerBook のこみいった内部構造に比べるとじつに簡単であ る。キーボードの上のパネルを外すだけで、キーボードが取り外せ、そこ でヒートシンクと普通のねじを何本か取り外すだけでよい。これは PowerBook 1400 のひとつの大きな変更点によるものだ。それは複雑になっ た(だが、より柔軟になっている)RAM の増設についてである。1400 は 8 MB の RAM をマザーボードに直付けしてあるが、さらに 3 枚の増設メモ リボードを装備するスペースがある。Apple 社は 4 MB または 8 MB のメ モリボードをメモリ増設ベイのひとつに差して出荷する予定であり、残り の 2 つのスロットは空いたままになっている。この空いたスロットの一方 にメモリが差してあるともう一方は使うことができないのだが、積み重ね 可能な増設メモリボードを差すと Apple 社が増設したメモリボードを取り 外す必要がなくなる。PowerBook 1400 は現在最大で 64 MBの RAM を搭載 することができる。2 枚の積み重ね可能な増設メモリボードを一方の側に 重ねて差し、もう一方には 8 MB の増設ボードを差し、マザーボードには 8 MB が直付けされている、というわけである。

多くのベンダーが PowerBook 1400 に特化した製品を発表している。フロ ントストレージベイ用には VST Technologies 社が増設ハードディスク、 ZIP ドライブ(これは来年になる)、MO デバイスを製造する予定である。 MO デバイスは 230 MB のものが最初に提供され、1997 年の中頃には 640 MB に移行することが期待されている。Focus Enhancements 社 <focustech@aol.com> と Newer Technology 社は内蔵 Ethernet アダプタ を発表している。さらに、Newer Technology 社は積み重ね可能な増設メ モリボード、16 ビットビデオカードおよび(最注目の)200 MHz プロセッ サアップグレード(128 K のレベル 2 キャッシュ)といった多数の拡張製 品を発表している。私は Apple 社と Focus Enhancement 社の両方が同様 にビデオ製品を出すと聞いている。

<http://www.vsttech.com/>
<http://www.newertech.com/>

たぶん最も賢い 1400 関連の製品は、Keep It Simple Systems 社の PowerCover である。私は“BookCover”と“solar”だけに言及している が、あなたのイマジネーションにその残りをとっておくことにする。

<http://wildwestweb.com/public/nkiss/PowerCover>

性能 -- PowerBook 1400 の 117 MHz の 603e プロセッサはいまやたい した性能とはみなされないだろう、特に Power Computing 社のデスクトッ プ機に同じプロセッサの 240 MHz 版が搭載されており、Apple 社も Performa 6400 シリーズとして 200 MHz の 603e 機を出荷していることを 考えるとなおさらである。予備試験では PowerBook 1400 の性能はその前 モデル PowerBook 5300 と同等である - スピードの向上は全くない。 PowerBook 1400 シリーズの CPU は着脱可能なドーターカードにのってお り、Newer Technology 社はすでに PowerBook 1400 向けの 200 MHz CPU アップグレードを提供する予定であると発表している。

しかし、PowerBook 1400 を購入する前にその性能がプロセッサアップグ レードにより十分にその性能を改善することが可能か考えると、そのシス テムバスは 33 MHz であり、32 ビット幅であることにつきあたる。これは 現行のハイエンドのデスクトップ機のバスの半分のスピードである(そし て半分の幅である)。これは PowerBook の CPU 以外の部品が CPU に追い つくために CPU がたっぷりと待たされることを意味している。一部の処理 - 特に CPU に依存する作業 - ではプロセッサアップグレードで改善され るだろうが、システム全体にわたった性能については劇的に向上すること はない。

価格と入手の可能性 -- いま PowerBook 1400 についてたくさんの宣伝 がなされているが、実機は 11 月半ばまで入手できそうにもない。Apple 社は、自分たちの生産能力が完全に追いつくまで、少なくとも 1 月半ばま で PowerBook 1400 を購入するのが困難になるだろうとすでに注意を促し ている。これは PowerBook にはいつものことだが、もしもその PowerBook が発売されたときにユーザーが入手できるようになっていればそれは素晴 らしいことだろう。

PowerBook 1400 シリーズの価格は多くのユーザーが失望するものである。 特にローエンドの PowerBook 1400 が 2,000 ドル以下で登場するというう わさが何カ月も流れた後ではなおさらである。Apple 社は 12 MB の RAM と 750 MB のハードディスクを装備しフロッピーディスクのみの 1400cs を現在およそ 2,500 ドルとしている。また、CD-ROM ドライブが付属し、 16 MB の RAM と 1 GB のハードディスクを装備した 1400c は 3,500 ドル ぐらいで販売されるようだ。

Hooper とは何か? もし PowerBook 1400 に満足できないならば、辛抱 強く待とう。Apple 社は 1997 年の前半には Hooper というコードネーム のハイエンドのノート型コンピュータを出荷するようなのだ。これは少な くとも 200 MHz のクロックスピードで PCI 拡張スロットを内蔵するとい う。Macintosh 互換機メーカーが 1997 年内には、特に Mac OS の PowerPC プラットフォーム(PPCP)マシンが入手可能になれば、Mac OS 互 換のノート型コンピュータを登場させるチャンスもある。


WorldScript Power Adapter による高速化

by Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
(翻訳:山浦 礼子 <raeko@bnn.co.jp>)

私達は、当然、Mac のパフォーマンスを最大限に引き出すことに興味を持っ ている。ということは、Apple の Mac OS Evangelist である Tim Holmes 氏 が教えてくれた Tips は Power Mac ユーザーにとってはちょっとは有 効なものかもしれない。それは、WorldScript ユーザーのにみ役立つと思 われがちな WorldScript Power Adapter が、実際にテキストを扱うネイ ティブ PowerPC 用のルーチンを含んでいるということだ。つまり、 WorldScprit Power Adapter を起動したままにしておけば、WorldScript を使用していない場合も、少しではあるがスピードは向上するということ だ。

少しだけこの Tips をトリッキーに感じた私は、WorldScript に詳しい Aladdin Systems 社の Leonard Rosenthol に聞いてみた。彼はそれを素早 く解析し、WorldScript Power Adapter が Power Mac 上に“ScriptUtils” と呼ばれる割り込み用ブロックのための新しいルーチンをインストールす ることを発見した。ScriptUtils は、基本的には描画以外のテキストに関 連するすべてのルーチンを扱う。すなわち、ソート、比較、日時などであ る。

プログラマー言葉で話されてもわからないといって、心配しないでいただ きたい。つまり、スクリーン上のテキスト描画は WorldScript Power Adapter を使用してもスピードは高速化されないが、テキストのソートや、 テキストの文字列を比較するなどの場合は高速化されるということだ。た とえば、あなたがファインダ上でファイルをソートする場合、あるいは Eudora Pro でメッセージを振り分けたり、あるデータベース上でテキスト 検索をする場合に、WorldScpritp Power Adapter の新しいコードはそれら に対しての処理のスピードを高速化する。とくに WorldScript 対応のワー ドプロセッサとテキストエディタ(たとえば Nisus Writer のような)は スピードが向上する。というのもそういったプログラムは行の長さを計算 する場合をはじめ、頻繁に ScriptUtils を呼び出すからである。

この Tips では真の目覚ましいスピード向上は望めないように思える。し かし、どんな小さなものでも手の届くものであれば、それを使わない理由 はない。


OneClick - スーパーユーティリティ

by Steve Becker <maceeze@aol.com>
(翻訳:尾高 修一 <odaka@iprolink.ch>)

柔軟で、簡単で、網羅的で高度なカスタマイズが可能なユーティリティに 対するニーズを満たすべく、去年末 WestCode Software 社は OneClick を 発表した。OneClick は Control Strip、QuicKeys、Square One、 SuperClock、PopChar、Popup Folder などの最も良い部分を取り込むこと により、必要メモリが少なく、価格も安く、使い方を憶えるのも比較的簡 単な一つのプログラムにまとめ上げたのだ。

私は今まで数多くの Macintosh ユーティリティを使ってきた。結局のとこ ろ、お金がかかったし、機能拡張のコンフリクトにつながり、一部では機 能が重複していたにもかかわらず、それでも私が欲しかった機能を全部は 与えてくれなかったのだ。私は自分のコンピュータの使い方は比較的幅広 いと考えている − ワープロにメールから、事業の会計に Web での証券取 引に至るまでの範囲をカバーしているのだ。私の使用機材は 68030 ベース の IIsi から Power Mac 6100/66 まである。幅広いハードウエア/ソフト ウエアのニーズに適応してくれる OneClick に私は非常に満足している。

具体的には -- OneClick は 300K 以下の RAM しか消費しないたった一 つのコントロールパネルから構成されている。OneClick をインストールし てリスタートしたら、一回きりの短いチュートリアルと数々の Global パ レットが表示される。System Bar には便利なボタンが事前に多数登録され ており、Task Bar は起動しているプログラムごとにボタンを表示し、 Launch Strip からはアプリケーションだけではなく、ファイルやフォル ダなど Finder が開くことができるものすべてをすばやく起動することが できる。OneClick はあるプログラムが起動している時だけに現れるアプリ ケーション別のパレットもサポートしている。この中には、付属する Finder 用のパレット、それにいくつかのポピュラーなアプリケーション用 のものが含まれている(私は ClarisWorks 用のものが特に気に入ってい る)。これらのパレットのカスタマイズや新規作成には OneClick Editor を使用するのだが、これについては後程説明しよう。

パレットのボタンからはプログラムを起動したり、ファイルを開いたり、 スクリプトを実行することができる。各ボタンはその機能を示すアイコン とテキストのどちらかまたは両方を表示するので、キーボードショートカッ トを憶える必要は無い(ボタンにキーボードショートカットを割り当てる ことはできる)。あるボタンの機能が分かりにくければ、OneClick は Balloon Help またはより目立たない黄色い説明タグを表示する。どちらの ヘルプオプションもオン/オフが簡単にでき、ヘルプテキストを書き換え ることも可能だ − これも親切な機能だ。

多くの OneClick ボタンはペースト、日付挿入、フォント変更(それぞれ の字体で表示されるインストールされているフォントの一覧がポップアッ プする − 実によくできている)、フォントサイズ変更、用紙設定、ごみ 箱を空に、エイリアスを作る、情報を見る、などといった基本機能を実行 する。付属してくるより強力な機能を持ったボタンには文字挿入(PopChar のように、これはあるフォントに用意されている任意の文字を表示し、挿 入することができる)、用語集(頻繁に使うテキストを用語集としてまと めておき、すばやく挿入する − 私はこれでシグネチャー用の用語集を作っ ている)、ポップアップする階層ファイルリスト(Popup Folder 風)、 ポップアップする電話帳・ダイアラ、System Folder 内にあるファイルの ポップアップ階層リスト、自動保存(ユーザーが指定した時間ごと)、そ してウインドウのタイルが含まれている。[さらに、OneClick は Apple の Control Strip ボタンを使用することができる。 -Tonya]

新しいユーザーには基本機能のボタンが特に重宝するだろう。経験豊富な ユーザーとしても、これらのボタンの多く、たとえば日付挿入、フォント 変更、それにフォントサイズ変更は時間の節約になる。一部印刷や(事前 に用意しておいた設定を適用するための)カスタマイズされた用紙設定な ど、新たに基本機能ボタンを作るのは簡単で、私はこれらをほとんどのア プリケーションで使っている。文字挿入、ポップアップする階層ファイル リスト、それにポップアップする電話帳・ダイアラなどの強力な部類に入 るボタンはほかのユーティリティプログラムをまるまる置き換えることが でき、私の Mac の能力を大幅に拡張してくれるものだ。

OneClick はメニューバーに OneClick メニューを追加するが、このメ ニューはどのパレットからでもアクセスすることもできる。OneClick メ ニューからはパレットの表示/非表示をすばやく切り替えることができ、 OneClick Editor に切り替えることも可能だ。

インターフェースのカスタマイズ -- OneClick Editor を使えば、どの プログラム用にも新しいパレットを作ることができ、既存のパレットを変 更することもできる。新しいパレットにボタンを追加するには、単に OneClick Library か既存のパレットからボタンをドラッグするだけだ。

ボタンやパレットのカスタマイズには事実上無限の可能性がある。どのボ タンにも好きなアイコン(または複数のアイコン)を割り当てることがで き、ボタンのバックグラウンドカラーやサイズ、それにパレットの位置を 指定したり(1 ピクセル単位で調整可能)、ボタンに色々なスタイルを割 り当てることもできる。同様に、パレットにもバックグラウンドパターン やカラーなど多様なカスタマイズ用オプションが用意されている。

私はタブを使用した OneClick Editor のレイアウトを気に入っているが、 多くの機能にはラベルが付けられておらず、機能が直感的にはわかりにく い。また、Undo も用意されていない。WestCode 社はこういった問題があ ることを理解していて、将来のバージョンで修正するつもりだ。

画面のごたごたを避ける -- これだけたくさんのパレットが画面をごた ごたさせると思われるかもしれないが、WestCode 社はこの潜在的な問題へ の対策を事前に用意している。パレットはクリック一つで小さなアイコン に縮小(OneClick 用語では“アイコン化”)することができる。多くのパ レットは小さなタイトルバーだけにすることもできる。すべてのパレット を隠すには、OneClick ポップアップメニューから Hide Palettes を選ぶ か、キーボードショートカットを使う。パレットのデスクトップ上の位置 も設定することができ、そのほかにも色々な設定が可能だ。将来のリリー スでの改良の可能性があることは、パレットが前面にあるウインドウを隠 さないように自動的にどいてくれるというオプションだ。[WestCode 社は この機能を年内にリリース予定のバージョン 1.5 で追加したいとのことだ -Tonya]

クリエイティブに -- OneClick がこれまでに述べてきたことだけしかで きなかったとしても充分に立派なプログラムだが、実はこれはほんの始ま りにすぎないのだ。Record 機能を使うだけで Mac で行う様々な作業の大 部分を簡単にボタンスクリプトにすることができる − それだけで記録さ れた作業をクリック一発で実行できる新しいボタンができるのだ。

キーボードで押されたキーや、ラジオボタンをクリックしたりメニューア イテムを選択するアクションを記録することが可能だ。OneClick はこう いったアクションをマウスの動きではなく、何が行われたかによって記録 するため、スクリプトが実行された時にマウスが特定の位置になければな らないということがない。スクリプトが記録されたら、ヘルプとエラー検 出機能が内蔵された OneClick Editor ウインドウで編集することができ る。私は何度か記録されたアクションが正しく動作しないという場面に遭 遇したが、ほとんどの場合、記録は簡単で、すばやく、すばらしく効果的 だった。

AppleScript を使いこなせる方や、OneClick 独自の(より簡単な) EasyScript を憶えたいという方は、ボタンスクリプトをゼロから書くこと も可能だ。ここで少し注意を促しておきたい: スクリプティング言語が初 めてという方は、マニュアルを熟読していただきたい。

[さらに、Matt Neuberg 氏 <matt@tidbits.com> は次のように述べている。 「OneClick のスクリプティング言語は驚異的によくできていて、簡単に憶 えることができる。すばらしいデータタイプやオブジェクト指向メッセー ジング、それにあらゆる制御構造が用意されている。OneClick はリアルタ イムでシステムで何が起きているかという情報を集めることができ、実に 興味深い方法で利用できるようにしてくれる。OneClick ボタンはプログラ ムすることができるので、ボタンに何かを Drag Drop したり、キーを押 しながらクリックした際には別の反応を呼び出すことができるし、ポップ アップメニューを表示してそこからアイテムを選択させることもできる。 OneClick はほかのスクリプティング言語とやりとりする能力も最高だ。」 -Tonya]

OneClick のエディタには基本的なグラフィックエディタと、ほかのファイ ルからアイコンを借りてくる機能が備わっている。これと、ボタンのアイ コンにテキストを追加したり、ヘルプテキストを作成する機能により、作 成したボタンが何をするかが非常にわかりやすくなる。

私自身の例を出そう。私のお気に入りのワープロは WriteNow なのだが、 WriteNow のインターフェースにはツールバーが無い。Record 機能と EasyScript Editor を組み合わせ、私は WriteNow 用に実にすばらしいボ タンパレットを作ることができた(これは必ずしも客観的な意見ではない かもしれないが)。今、私の WriteNow は依然として必要メモリが少なく、 きびきびと動いてくれる一方、WordPerfect や ClarisWorks のようなより ハイエンドのワープロにあるようなカスタマイズ可能なツールバーを与え てくれる。

警告 -- このプログラムには“このプログラムは中毒になる恐れがあり ます”という注意を促すラベルが貼ってあるべきだ。カスタマイズ機能と 作業の効率化(と何ができるかを探求する誘惑)に加え、アクティブで親 切な OneClick メーリングリストもある。(メーリングリストの購読は WestCode 社の Web サイトから申し込むことができる。)また、WestCode 社の Web サイトには定期的にアップデートされる無償のボタンコレクショ ンもある(ここには私が作った WriteNow パレットをはじめとする少々の パレットが含まれている)。さらに、OneClick ユーザーのグループが定期 的に新しいフリーウエアのボタンをアップロードする Button Circle も結 成された。

<http://www.westcodesoft.com/>
<http://rhino.harvard.edu/dan/ButtonCircle.html>

WestCode 社と Button Circle の Web サイトには Eudora、Photoshop、 Netscape Navigator、Emailer、それに AOL といったプログラム用のパレッ トをはじめ、信じられないほど多彩な機能のボタンがある。たとえば複数 のテキストクリッピングを保存したり、複数のページ上にある選択された テキストを印刷したり、ノートやアドレスブックを作成したり、使用可能 なメモリを表示したり、テキストを引用符付きでペーストする、などだ。

OneClick を持っていることは自分用のユーティリティ工場を持っているよ うなものだ。そのダイナミックで柔軟な性質のため、ユーザーは想像力に かられてスクリプトを書いたり、頻繁に行う作業を記録したくなるのだ。 もしあなたが冒険派でなくても、ほかの人が着実にフリーウエアの新しい ボタンやパレットを供給してくれる。

コメントを少々 -- OneClick ほど革新的なプログラムは珍しい。ほかの 多くのプログラムを不要にし、メモリを少ししか使わず、System Folder に一つしか機能拡張ファイルを入れず、Mac OS とアプリケーションを大幅 に強化してくれる大量のボタンが付属し、新しいフリーウエアのボタンや パレットを通じて着実に拡張され、個別のニーズに対応するようにカスタ マイズが可能で、使うのが楽しい。私にとって、このプログラムは Macintosh そのものの本質を良く表している − ユーザーに力を与えて Mac からより多くのものを引き出すことができるようにし、同時にその経験を 楽しいものにしてくれるのだ。

最近、Heidi Roizen 氏(Apple 社デベロッパー担当副社長)は BMUG (Berkeley Macintosh Users Group)で、Apple がデベロッパー・コミュ ニティのニーズに目を向ける新しい方針について興味深い講演をしてくれ た。WestCode 社は Macintosh プラットフォームだけの仕事をしていこう としている小さな、独立した革新的なデベロッパーの好例である。私は Roizen 氏と Gil Amelio 氏が WestCode 社を Apple から可能な限りの支 援を受けるべきデベロッパーとして重視することを期待している。実際、 この製品を Mac にバンドルするか、その技術を Mac OS に取り込むという 合意ができたら、Windows に対する Mac OS の利点をさらに大きくする方 法になるだろう。また、Mac OS 8 がまだ夢である今、これによって System 7.x に新たな命と興奮が吹き込まれることになるかもしれない。一方、ほ かのデベロッパも OneClick の可能性に注目し始めている。たとえば、 Quicken の次期バージョンは Tool Bar に OneClick の Shortcut Technology を採用するのだ。

最後に -- ここまで読んできた方には、私が OneClick を高く評価して いることがお判りになるだろう。ほとんどのユーザーは OneClick は全く、 あるいは少ししか問題が無いと報告しているが、私は多数のバグに遭遇し た。これらのほとんどは現行の 1.0.2 リリースでフィックスされている。 この問題でデータを失ったことはなく、いずれにしても OneClick 全体と しての有用性を考慮するとと十分我慢できる範囲内だった。WestCode 社の テクニカルサポートは珍しいぐらい親しみやすく、親切だ。フリーダイア ルではないが、もし誰も電話に出なかった場合には、電話番号を伝えてお けば WestCode 社から電話をかけてくる。

WestCode 社は年内に OneClick 1.5 をリリースする予定だ。重要な改良点 は、よりパワフルな Task Bar と Launcher パレットに関するものだ。最 近使用したアプリケーションを表示し、起動できるようになる(Apple Menu Options のようなものだ)Task Bar ボタンが追加され、もう一つの Task Bar ボタンは Launcher をポップアップする。これは Launcher を隠して いるような場合には特に便利だろう。新しい Launcher はインターネット アプリケーションのセットなどといった具合に、ファイルのセットを保持 することができるようになる。

OneClick の実売価格は約 75 ドルで、Quickeys ユーザーは約 40 ドルで 乗り換えアップグレードをすることができる(正確な価格は Quickeys の バージョンによって異なる)。OneClick は System 7.0 以降のシステムと 68020 以降のプロセッサを必要とする。

[Steve Becker 氏は初めて Mac を買って以来の BMUG メンバーで、MacEase という Mac コンサルティング会社をカリフォルニア州 Berkeley で経営し ている。]

[OneClick と最強のライバルである Quickeys 3.5( TidBITS-348 でレ ビュー済み)と KeyQuencer 2.0(レビューを準備中)を比較検討したいと いう方は期待していていただきたい。3 つの製品を全部レビューした後、 比較する予定だ。-Adam]

      WestCode Software -- 800/448-4250 -- 619/487-9200
        619/487-9255 (fax) -- <westcode@westcodesoft.com>

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