TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS-J#351/28-Oct-96

Newton が欲しいですか ? そんなあなたのために、Apple は 2 つの新型モ デルを準備中だ(一つは、キーボード内蔵型のノートブック)。また今週 は、Adam の RAM Doubler 2.0 のよい点・悪い点のレポートと Apple の Open Transport 1.1.1 リリース情報がある。Matt Neuburg 氏は、 BinarySoftware 社販売の新マクロプログラム、KeyQuencer 2.0 のレビュー を寄稿してくれている。

目次:

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MailBITS/28-Oct-96

(翻訳:尾高 里華子 <odaka@iprolink.ch>)

新型 Newton、2 機種 -- 今日 Apple は、新型 Newton 2 機種 (MessagePad 2000 と eMate 300)の発表を行った。MessagePad 2000 の 方は、“従来型”MessagePad の性能を高めたものだ。StrongARM 110/ 161.9 MHz プロセッサ、5 MB の RAM、PC カードスロット 2 基、16 階調 グレースケール 100 dpi のスクリーンになり、標準でワープロやスプレッ ドシート、電子メール、Web のソフトウェアがついてくる。一方、eMate 300 は、内蔵キーボード、(16 階調グレースケールの)480 x 320 のバッ クライト・ スクリーン、ARM 710/25 MHz プロセッサで構成された全く新 しい形のノートブックである。ワープロやドローソフトに加えて、辞書、 計算機、アドレス帳、カレンダー機能を備えたものになる。eMate 300 は 学校関係をターゲットとしており、800 ドル以下になるだろう。 MessagePad 2000 と eMate 300 はともに、Newton OS 2.1 を用い、出荷は 1997 年第 1 四半期になるだろう。[GD]

<http://www.newton.apple.com/>


Apple、Open Transport 1.1.1 をリリース

by Geoff Duncan <geoff@tidbits.com>
(翻訳:尾高 修一 <odaka@iprolink.ch>)

Apple 社は先週、Open Transport 1.1.1 をリリースした。Open Transport 1.1.1 は AppleTalk やインターネットの TCP/IP をはじめ、ネットワーク のあらゆる側面を担当するローレベルのシステムソフトウエアだ。Open Transport 1.1.1 は、Performa および Power Macintosh 52xx、53xx、 62xx、63xx シリーズで動作する最初のバージョンであることに加え、特に Web マスターなどのネットワーク管理者をはじめとして従来からのユーザー も恩恵を受けることのできる多数のバグフィックスを含んでいる。

<http://product.info.apple.com/pr/product.updates/1997/q1/ 961024.prd.updt.opentrans.html>

Open Transport 1.1.1 は Apple 社から直接 net install またはディスク イメージ形式で無償で入手することができる。

<ftp://ftp.support.apple.com/pub/apple_sw_updates/US/mac/ Networking-Communications/Open_Transport/>

ディスクイメージ版をダウンロードした場合には、Chad Magendanz 氏によ る ShrinkWrap などのプログラムを使ってディスクをマウントするかフロッ ピーにコピーしなければならない。また、別ファイルになっている OT 1.1.1 Extras も合わせて入手したい(net install 版には同梱されてい る)。ダウンロードファイルサイズは約 5.5 MB だ。さらに、Open Transport 1.1.1 アップデートは CD-ROM でも供給されており、Apple 社 から 13 ドルで購入することができる(800/293-6617、offer number1407)。

<ftp://mirror.aol.com/pub/info-mac/disk/shrink-wrap-201.hqx>

OT 1.1.1 のインストール -- Open Transport 1.1.1 は 68030 以上のプ ロセッサを装備した Macintosh(Power Mac 全機種を含む)を必要とする。 新しいシステムソフトウエアのコンポーネントをインストールする際には、 必ず事前にディスクの バックアップ を取っていただきたい(最低でも システムフォルダだけでも)。

Open Transport 1.1.1 のインストールは比較的単純で、インストーラを起 動してInstall ボタンをクリックするだけだ。(Custom Install に切り替 えると、68K 用かすべての Macintosh 用を選ぶことができる。)従来から Open Transport を使用している場合は、バージョン 1.1 の上にインストー ルしなければならない。理想的には、万が一のことを考えてバージョン 1.1 が手元にあった方が良いだろう。OpenTransport 1.1 は個別の商品として も System 7.5 Update 2.0 の一部として(無料で)も供給されている ( TidBITS-318 参照)。System 7.5.5 を使用している場合には、System 7.5 Update 2.0 から OT 1.1 をインストールするにはカスタムインストー ルスクリプトが必要となるかもしれない( TidBITS-349 参照)。

OT 1.1.1 のベータ版を使用していた場合には、まずそれを取り除いてから 1.1 を再インストールし、次に OT 1.1.1 の最終版にアップグレードする。

Performa および Power Macintosh 52xx、53xx、62xx、63xx シリーズの ユーザーは直接 OT 1.1.1 をインストールすることができる。これらの機 種では、インストーラがキャッシュと ROM DIMM のハードウエアチェック を行い、Apple 社の repair extension program のもとでの交換が必要か どうかを確認する。修理は Apple ディーラーで無料で行うことができる が、 Open Transport 1.1.1 は修理が行われるまでインストールすること はできない。該当するユーザーは Apple 社に連絡することもできる (800/801- 6024)。

<http://prod01.apple.com/pr/product.updates/1996/q3/960606.pr.up.repair.html>

Apple 社は System 7.5.3 以上のユーザー全員に Open Transport 1.1.1 の使用を推奨しているが、実際には System 7.1 以上なら OT 1.1.1 を使 用することができる。わかりにくいことに、Open Transport と従来型の ネットワークを簡単に切り替えることができるユーティリティ、Network Software Selector は、System 7.5.3 以上でしか動作しない。7.5.3 以前 のシステムでどうしても Open Transport を使いたい場合には、インストー ルする前に現在使用中のネットワーク設定とソフトウエアをバックアップ されたい。

OT 1.1.1 の利点 -- Open Transport 1.1.1 では多数のバグフィックス や機能の拡張が行われている。これらはほとんど目に見えない部分でのこ とだ。

さらに、OT 1.1.1 の ReadMe と Technical Info ファイルには特定のアプ リケーションを利用する際の詳細な情報や、既知の(しかし比較的珍しい) 不具合や非互換性について書かれている。Open Transport で不具合を経験 したことがある方は、 インストールする前に これらの文書に目を通し ていただきたい。

PPP は? -- ダイアルアップ接続のインターネットユーザーのために述べ ておくと、Open Transport 1.1.1 はバージョン 2.5 以上の MacPPP と FreePPP をはじめ、いくつかの商用 PPP 製品に対応している(詳しくは ReadMe ファイルを参照)。ところが、Apple 社の待望久しい Open Transport/PPP は Open Transport 1.1.1 には 含まれていない 。PPP のサポートは公式には依然としてサードパーティを通じてしか提供されて おらず、そのいずれも“OT-savvy”ではない。

Apple 社は Open Transport 用の PPP を年内にリリースする予定だ。それ までは、OT/PPP のベータ版が Apple 社のサポート対象外ファイルエリア に置かれている。

<ftp://ftp.support.apple.com/pub/apple_sw_updates/US/mac/Unsupported/>


RAM Doubler 2

by Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
(翻訳:齊藤 聡<akkun@ca2.so-net.or.jp>)

1994 年の 1 月に Connectix 社は、大部分の Mac(68030 以上の CPU が 要求される)でメモリが 2 倍になったかのように見せかける革新的なユー ティリティである RAM Doubler を発表した。私はそのときそれに深い感銘 を受けたが(製品レビューとその動作原理については TidBITS-208 を参 照)、いま Connectix 社が、メジャーアップデートとして RAM Doubler 2 をリリースしたことに、さらに感銘を受けている。

Connectix 社は、バグの修正あるいは新しい Mac への対応や新たにリリー スされたシステムソフトウェアへの対応を主目的として、何年にもわたり RAM Doubler 1.x の無料アップデータを配布してきた。RAM Doubler は非 常に低レベルで機能するので、ハードウェアやシステムソフトウェアが変 わると他のプログラムに比べて簡単に機能しなくなる。しかし、前述した ように、アップデータが無料でインターネットを通じて入手できたので、 ダウンロードしたアップデータを使えば、大部分の人々には何の問題もな かった。

新しくしかも斬新 -- 1996 年の 8 月に、Connectix 社は、大きく改善 した RAM Doubler 2 をリリースした。

<http://cgi.info.apple.com/cgi-bin/read.wais.doc.pl?/wais/TIL/ Macintosh!Hardware/Pwr!Mac!Including!Perf/Power!Macintosh!Technology/ Virtual!Mem!!Diff.!on!Pwr!Mac>

つまり多量の RAM を搭載していたとしても、一般的には Power Mac では VM あるいは RAM Doubler を使うべきだといえる。しかしこれには反対意 見もある。メモリコントロールパネルで VM を“入”にすると、その最小 の設定値は搭載されている RAM 容量よりも 1 MB 大きい値になる。VM は 不可視の VM 退避ファイルをハードディスク上に作るが、その大きさは VM を使用した に使用可能となる全メモリ量と同じになる。80 MB の RAM を搭載していたと仮定しよう。VM を“入”にすると、最小で 81 MB の設 定値になる。81 MB のディスク容量が失われたことを確認してほしい。

RAM Doubler 2 を設定してもメモリが全く増えないように設定していたら、 メモリ量を多く見せかけるための機能に普通つきまとう処理速度の問題を 抜きにすれば、VM または以前のバージョンのRAM Doubler のほうに利点が あるといえる。これはRAM Doubler 2 がより多くのメモリを用意するため に最後の手段としてのみディスクにスワップすることによる(最初はアプ リケーションに割り当てられたもののうち未使用メモリを利用する。それ が利用できないときはメモリを圧縮する)。私の実メモリ 20 MB 搭載し 60 MB に設定した 660AV では、RAM Doubler 2 の不可視 VM 退避ファイル は目下 390K である。私はそれなら受け入れることができる。

反対理由 -- 私は RAM Doubler をはっきりと推奨しているけれども、 RAM Doubler 2 を使うことに賛成できない多くの理由がある。

賛成理由 -- RAM Doubler 2 を避けるべき上述の重要な理由にもかかわ らず、私はそれにもっときちんと取り組むための多くの理由があると考え ている。

終わりに -- あるユーティリティはべつのものにはない機能を提供して いるので推薦しやすいものがある。RAM Doubler についてはこれは当ては まらない。Apple 社の VM は無料だからである。しかしながら、RAM Doubler が 100万セット以上も売れ、RAM Doubler 2 が発売後ひと月で 50,000 セットも売れたという事実は Mac の社会に RAM Doubler のような 機能を持つユーティリティが必要であることを示している。私は RAM Doubler なしで自分の旧式の 660AV を使うことはできない(私は搭載され ている RAM で使用できるよりも多くのアプリケーションをスタート時に立 ち上げてしまう)し、RAM Doubler 2 はすばらしいものになった。RAM の 3 倍増機能と新しいインターフェースはすばらしいし、そして私の PowerBook 5300 のためにはファイル・マッピング機能がよい。この PowerBook 5300 は 24 MB と十分なRAM を搭載しているが、この機能をハー ドディスクの回転を止めるために使う。

配布 -- 我々は TidBITS の読者のために Cyberian Outpost に特別な提 案をした。下の特別な URL を使って RAM Doubler 2 をオンラインで注文 することができるが、そのときに 4 ドルの値引きを受けることができる (送料が無料になるぐらいに考えてほしい)。

<http://www.tidbits.com/products/ram-doubler.html>


KeyQuencer - QuicKeys キラーになるか ?

by Matt Neuburg <matt@tidbits.com>
(翻訳:尾高 里華子 <odaka@iprolink.ch>)
(  :杉浦 雄一郎 <ysugiura@direct.ca>)

Mac を自動化したいけれど、あまりお金はかけたくないとか、RAM 食い虫 の有名な市販のマクロソフトはちょっとという人は、KeyQuencer を検討し ようと思うかもしれない。あの有名な Alessandro Levi Montalcini 氏の 才と気前のよさがうかがえるプログラムで、かつては 10 ドルのシェア ウェアだったが、現在はバージョンも 2.0 に上がり、Binary Software 社 から市販マクロ・ユーティリティとして 40 ドルで販売されている。 System 7.x 上でわずかな RAM (200K 以下)を使うだけで、俊敏にかつ滑 らかに動作する。System 6.0.4 以降のシステム搭載のマシンであれば、お おむね機能すると言われている(が、公式なサポートはない)。

<http://www.binarysoft.com/keyquencer/keyquencer.html>

どういったものか -- KeyQuencer のマクロは“スーツケース”に置かれ る。起動時にデフォルト・スーツケースがロードされ、その中に入ってい るマクロ(アクティブなマクロ)はショートカット・キーでトリガをかる ことができる。ほかのスーツケースに入っているマクロにトリガをかけけ るのには、ショートカット・キーは使えないが、KeyQuencer Launcher と いう小さなプログラムで行うことになる。これはすべてのスーツケースを 表示するリストになっていて、マクロ名をダブルクリックすれば、そのマ クロが実行できる。マクロ名は 31 文字まで可能なので、判り易いリスト を作ることができる。複数のスーツケース・ウインドウを開いたままの状 態で、この Launcher を常時立ち上げておくこともでるので、よく使うマ クロはショートカット・キーを使ってトリガをかけることができる。たま にしか使わないマクロを使いたい時(または、アクティブなマクロのショー トカット・キーを忘れてしまった時)は、Launcher のリストを利用すれば よい。(Launcher はアプリケーションであって、ダイアログやパレットで はない。一番前にあるウインドウで働くようになっているマクロをダブル クリックすると、Launcher のウインドウにそのマクロが作用してしまうと いうことに注意して頂きたい。)

このテクニックは、QuicKeys や OneClick とは異なり、KeyQuencer には アプリケーションを特定したマクロが存在しないということを補うのに役 に立つかもしれない。一旦あるマクロにショートカット・キーをアサイン して、マクロをアクティブにすれば、そのショートカット・キーはシステ ム全域で他のものには使えなくなる。全ての拡張機能、コントロールパネ ル、およびアプリケーションで使われていないショートカット・キーを見 つけ出す準備が必要になる。あらゆるショートカット・キーを使いきって しまったり、うっかりとマクロを実行してしまうという危険性が潜んでい る。KeyQuencer は、すぐにアクティブになる多数のマクロを自己インス トールしてしまうのだ。そんな事は知らず、HyperCard のスタック・スク リプトを読むつもりがスタックを圧縮してしまったり、Finder にいないの にもかかわらず、大事なものをゴミ箱へ動かしてしまったりしたというこ とがあった。ある特定のアプリケーションが一番前にあるかどうかを見て、 そのトリガとなるショートカット・キーを実行させるか、中止するかをマ クロを使ってチェックすることができる。だが、あらかじめインストール されてしまうマクロの大半が、こういったチェックを行わないので、注意 が必要だ。

マクロの作成、編集、名前付け、ショートカット・キーのアサイン、スー ツケース間でのコピーは、KeyQuencer Editor という別のアプリケーショ ンで行う。これで、簡単に気持ちよく作業が行える。マクロを編集するの に、そのマクロを“開く”必要はない。リストにあるマクロの名前をクリッ クすれば、眺めたり編集したりするためのワープロ風ウインドウに内容が 表示される。すべてのマクロは、一つまたは複数のテキスト・コマンドで 構成されている。コマンドをタイプしてもいいし、Command のフローティ ング・ウインドウ内にあるコマンドの名前をダブルクリックしても入力す ることができる。この Command のフローティング・ウインドウは、すべて のコマンドおよび(あるコマンドが選択されているときは)パラメータが 載っているリストである。オンライン・ヘルプ・ウインドウも、連動して コマンドの機能やパラメータの説明に描き換えられる。

KeyQuencer と QuicKeys の環境すべてが、あまりにも異なっている。 QuicKeys の方は短いマクロ名しか付けられないし、マクロのタイプを選択 するために用意されているメニューは判りにくい。その上、編集では、マ クロを試す前に完璧に片付けなければならないモーダル・ダイアログ嵐に 襲われ、適切に動作しないことがわかると、また一から全て開かなければ ならないのだ。KeyQuencer では、Launcher、Editor ともにアプリケーショ ンなので、通常のウインドウがあり、700K の空き RAM があれば、全てを 開いたままにしておくこともできる。編集では文字列を扱い、編集途中の マクロを保存することができるし、テストするために何かを閉じる必要は ない。

コミュニケーション -- KeyQuencer には、QuicKeys メニュー・トリガ に匹敵するような特別なメニューはない。だが、同梱されている James Walker 氏作のシェアウェア OtherMenu を使えば、KeyQuencer のマクロに トリガをかけることができるようになる。同様に、時間によるトリガも付 いてないが、(アプリケーション起動後の経過時間ではなく)絶対時間だ けが必要な時には、同じく同梱の Chris Johnson 氏作のシェアウェア Cron を利用すればよい。アクティブなマクロを選択したり、呼び出したりする ための Control Strip のモジュールや NowTabs のプラグインをインストー ルすることもできる。AppleScript や Frontier から KeyQuencer に変数 の受渡しを含め、話しかけることもできるのだ。Macro を CodeWarrior の ビルド・プロセスに組み込むことも可能だ。

<ftp://mirror.aol.com/pub/info-mac/gui/other-menu-183.hqx>
<ftp://mirror.aol.com/pub/info-mac/cfg/chris-cron-10a7.hqx>

ネットワーク上のリモートなマシンへでも、KeyQuencer が稼動していれ ば、その機能を実行することができる。無理にすることはないのだが、 KeyQuencer のマクロを使って、リモートなマシンが希望通りに同調するよ うに設定することができる(これは、まだ試していない)。

言語 -- KeyQuencer には、約 260 のマクロが前もって用意されている が、変更したいとか、新しいものを作りたいという時は、KeyQuencer 言語 を使わなければならない。これは、融通が利かない上に覚えにくい、コマ ンドとパラメーターを組み合わせたイディオムであり、オンラインヘルプ とリファレンスマニュアルを卒業する日が永遠に来ないことに気がつくだ ろう。

つまり、言語と言うよりは、コマンドの寄せ集めなのだ。サブルーチンが 存在せず、あるマクロから別のマクロを呼び出す唯一の方法が、最初のマ クロに、次のマクロのキーストロークをタイプするように命令することだ。 ループ、ブランチ、条件による基本構造は無いが、Repeat コマンド(一つ または複数のコマンドからなる引用されたストリングをパラメータとして 用いるもの)やある特定のアプリケーションが前面にいる時や、2 つのス トリングがぶつかった時は、マクロを中止するコマンドはある。計算のオ ペレータは無いが、数式を入れておく Evaluate コマンドや暫定的な増加 や減少のカウンタを表す Counter コマンドがある。文字列を取り扱う機能 は無いが、クリップボードをいじるコマンドはある。変数はあるが、それ を扱うシンタックスはとんでもなくひどいものである。

A を 1 に、B を 2 に設定して、それらを加算し、その結果を C に入れる ためのスクリプトは、次のようになる。

> SetVariable A "1" > SetVariable B "2" > Evaluate "\[a]+\[b]" copy -- 結果がクリップボードに入る > SetVariable C clipboard -- 再度、取り出す

1 から 10 までの数字を間にタブと改行を入れながらタイプするスクリプ トは、次の通りだ。

> Repeat 10 "Counter increment save\rType $counter \q\\t\\r\q"

なにができるか -- KeyQuencer のコマンドは全て KeyQuencer Extensions というフォルダー内(システムフォルダの中)にある小さな ファイルに対応している。これらのファイルの一つを KeyQuencer Extensions フォルダから削除して再起動すると対応するコマンドが無効に なる。また、新しいコマンドが書かれた場合はそれをフォルダに追加する とコマンドのレパートリーが増える(使わないコマンドがある場合はそれ らを無効にするとメモリをさらに節約できる。2、3 のコマンドを使ったマ クロを数点しか使っていないようだったら、80 K 未満で KeyQuencer を動 かせる!)。

通常のマクロの機能、つまりキーを押す、文字列をタイプする、メニュー 選択をする、マウスのクリックをする、様々な種類のイベントを待つといっ たことができる。また QuicKeys に見られるようなちょっと特殊な機能も あるし、アプリケーションやウインドウの切り替え、スピーカー音量やモ ニター色深度の設定、プリンタの選択、サーバのマウントなど、QuicKeys を上回ると言える機能もある。また、強力なバッチ(Batcher)アプリケー ションも用意されており、作成したアプリケーシュンのコピーに実行する マクロをあらかじめ設定しておき、そこにファイルやフォルダをドラッグ & ドロップして処理をさせることができる。

KeyQuencer には多種多彩なコマンドも用意されている。例えば、ウインド ウや画面の強制的なリフレッシュ、ウインドウや特定範囲のスクリーン ショット、PPP の接続と切断、ファイル情報の取得、カーソル位置の動的 な表示、一番手前にあるウインドウの位置変更、オーディオ CD の操作、 クリップボード内容の変更、10 種ものクリップボードの操作、クリップ ボードとファイルの間の読み書きといった具合だ。

ちょっとひっかかる点 -- ついでに気がついた点がいくつかあるが、こ れらは KeyQuencer の全体的な評価に影響を与えるほどのものではないだ ろう。まず完全に動作しない可能性のあるコマンドがいくつかある。サウ ンドボリュームコマンドは私のコンピュータでは効果がないし、 “scrolltop/buttom”コマンドは Nisus Writer では機能しないといった 問題がある。一部のキーストロークコンビネーション(例: KeyQuencer のオン/オフをするもの)はユーザーで設定変更ができない。私のコン ピュータでは、エディタ内で Now SuperBoomerang が時々動かないし、スー ツケースを開くとオンラインヘルプのウインドウ内にゴミが書かれてしま い、システムがクラッシュする。ラウンチャー内では、リスト表示の順番 を変更できず(名前順とキーストローク順の切り替えなど)、エディタを 使っていたときに最後に保存した順番に固定されてしまう。HyperCard XCMD のシンタックスの説明がない。そして最後に説明の明快さとデザインにお いて、マニュアルに改良の余地があるだろう。

結論 -- さて、ここでこのマクロユーティリティが、あなたが長年待ち 望んでいたものなのかどうか結論を出さなければならない。正直なところ、 私には判断しかねる。このプログラムは素晴しいのだが、万人向けとは言 えないだろう。判断はあなたの考え方、優先順位、現在持っているツール の種類に大きく依存する。とにかく Binary のウェブサイトに間もなく公 開されるはずのデモ版をダウンロードして、気にいるかどうか試してみる のが一番だろう。とりあえず多少の意見を述べておこう。

全体的な機能としては、KeyQuencer にはなんらかの理由でできないこと で、QuicKeys ならできるということはあまりないだろう。しかし、 QuicKeys に欠けているが、KeyQuencer にある機能は存在する。しかし、 言語がちょっと貧弱、あるいは不備があるという人もいるだろう。私にとっ ての究極のマクロはツールを作成するのためのツールなので、一つの機能 には一つのプログラムという考え方をしてしまうのだが、KeyQuencer は 取り扱いにくい種々のエクステンションを一まとめにしたといった感があ る。私は OneClick のより充実したプログラミングおよび情報取得可能な 構造の方が好みだ。これらにより、独自の複数クリップボードを作成 (KeyQuencer の Clipboard コマンドと比較)、AppleScript を動かして MacPPP を開いたり閉じたりする(KeyQuencer の PPPSwitch と比較)、 ウインドウのリストを取得し手前にあるウインドウ以外を全て閉じる(私 の知っている限りでは KeyQuencer では不可能)といったことができる。 さらに、私のしたいことを全てしてくれるプログラムなど存在しないのだ から、Frontier、AppleScript、HyperCard などのスクリプトツールの助け を借りたいということもある。私は少し偏屈なのかも知れない。しかし私 が思うに、あなたにとって重要になってくるのは、KeyQuencer には特定ア プリケーション用のマクロやレコーディング機能が欠けているといった機 能的なことよりも、むしろ設計思想的な問題だろう。ただハイレベルツー ルの既成コレクションが欲しいという人には、KeyQuencer は魅力的だろう。

これは最も重要なことなのだが、KeyQuencer はかなり厳格なスタンダー ドで動作する。それは他のマクロプログラムにはなかなか見られないもの だ。例えば、アクティブウインドウを一行だけ上にスクロールするための キーストロークといったごくシンプルなことでも、OneClick の場合 Nisus Writer のウインドウとうまく協調してくれない。これは Nisus Writer の スクロールバーにある上向き矢印が通常の位置にないのが原因なのだが、 KeyQuencer の場合はもっと深いレベルのやり方でウインドウにスクロール するよう“tell”(告げる)ため、問題なく実行できる。また KeyQuencer はウインドウのタイトルバーへのコントールキー+ダブルクリックをシミュ レートすることができる。私のシステムではこれでウインドウシェードが かかるようになっているのだが、OneClickではこれができない。ここに KeyQuencer の作者であるAlessandro Levi Montalcini 氏の熱意、ノウハ ウ、哲学観が現われていると言えよう。これほどクリーンで強力な機能が 一人の人間の頭脳から産み出されるということは、この巨大ソフトウェア 開発の時代にあって素晴しいことと言えよう。

お得な情報 -- KeyQuencer を Cyberian Outpost から購入したいとい う TidBITS の読者のために、特別価格をとりつけた。次の URL を使えば KeyQuencer 2.0 を 4 ドル引きでオンライン購入ができる(送料無料に相 当すると考えて欲しい)。

<http://www.tidbits.com/products/key-quencer.html>

[KeyQuencer、OneClick( TidBITS-350 )、QuicKeys ( TidBITS-348 ) の比較を見たいという方は、将来の号をお楽しみに。 -Adam]

    Binary Software, Inc. -- 310/449-1481 -- 310/449-1473 (fax)
      <binary@binarysoft.com>

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