TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS-J#353/11-Nov-96

ハロウィンのキャンディもなくなり、そろそろ話題を PageMill 2.0 の出 荷、Claris 社の Emailer 1.1 無料配布、ShrinkWrap の最新バージョン、 新しい Quicken 7 に関する問題といったニュースに移しましょう。これま でに発行された全ての TidBITS の HTML 版へのコンバートが完了したこと を喜んで報告させていただくと共に、Adam が先週のインターネット・ディ レクトリ・サービスについての記事に対して寄せられたコメントを紹介し、 Tonya による Casady & Greene 社の多目的英文章作成ツールである Spell Catcher のレビューをお送りします。

目次:

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山浦 礼子  <raeko@bnn.co.jp>

今回の TidBITS のスポンサーは:


MailBITS/11-Nov-96

(翻訳::加藤たけあき <oiso@wolfenet.com>)

Page をめくれ -- Adobe 社は Web 制作者を喜ばしてくれそうな PageMill 2.0 をリリースした。柔軟なテーブル機能と、同社が“やさし い”HTML 編集と称している HTML ソースコード表示が可能になり、プレ ビュー・モードでは、QuickTime ムービーを再生したり Acrobat や Shockwave を含む、その他多くのプラグインを使うことができる。PageMill 2.0 は、インターフェースが、所々細かなマウス操作が必要になるくらい 小さいという点が残念ではあるが、おそらく現在出荷されている WYSIWYG HTML エディタの中で、最も多機能で充実したものだろう。予定小売り価格 は 99 ドルで、アップグレードは 49 ドル。他の Adobe 社製品の所有者に は 69 ドル。Claris Home Page、Netscape Navigator Gold からの乗り換 え価格は 79 ドルである。Adobe 社によると、この新バージョンはカラー モニタが使える全ての Mac で 4 MB のアプリケーション RAM(合計で 8 MB 以上)、System 7.1 以降の環境で動作するとしている。Adobe Systems -- 800/833-6687 408/536-6000 -- 408/537-6000 (fax) [TJE]

<http://www.adobe.com/newsfeatures/pagemill/main.html>

電子郵便配達は 2 度ダウンロードする -- Claris 社は現在から Claris Emailer 2.0 を出荷するまでの間、Emailer 1.1 を無料配布することを決 定した。発表から一年程経っているこのメール・クライアントは、人気の オンライン・サービスへのアクセスと、インターネットの POP 機能が組合 わさっている。来年初頭に予定されているバージョン 2.0 では、向上した メール処理機能と、より効率的な単一データベース保管システムが提供さ れる。

<ftp://ftp.claris.com/pub/USA-Macintosh/x.Shareware-Freeware/ Emailer_Seeding/>

また、CE Software 社もインターネット・メールのユーザーが試用できる ように、QuickMail Pro の公開ベータ版を自社 Web サイトに置いている。 今年末に出荷される予定のこのソフトウェアには、人気の QuickMail のグ ラフィカルなインターフェースと、POP3 と SMTP をインターネット・メー ルの標準として組み入れている。同社は将来的には IMAP とディレクトリ ・サービスをサポートすることも計画している。[MHA]

<http://www.cesoft.com/quickmail/qmprobeta.html>

ShrinkWrap 2.1 -- Chad Magendanz 氏は、彼の名作ディスクイメージ・ ユーティリティである ShrinkWrap のバージョン 2.1 をリリースた。いく つかの希れに起こる(ネットワーク上のイメージをマウントしようとする 時や、古いバージョンの Speed Access と StuffIt Engine との不具合を 含む)問題が修正され、最適化とパフォーマンスの向上がなされている。

<http://www.halcyon.com/shrinkwrap/>

このリリースは、ShrinkWrap が Aladdin 社の製品となる前の 最後の メジャー・リリースということにおいて注目すべきものだ。1997 年以降、 ShrinkWrap は Aladdin Systems 社のものとなり(全ての商用、シェアウェ ア・ライセンスとユーザー登録は、そのまま引き継がれる。)、そのテク ノロジーは StuffIt Expander や Installer Maker のような製品に取り入 れられて行くことだろう。[GD]

Steve Becker 氏 <maceeze@aol.com> の寄稿: 近日発表する予定のレ ビューのために Quicken 7 をテストしていたときに、Quicken 7 ユーザー の方に知らせておくべき、Investment Module の不具合を発見しました。 Portfolio Window で、投資利益率( ROI:Return On Investment )のパ フォーマンスは、あなたの投資を基本にして調整されたものを基にしてい て(例えば、初期投資に再投資をプラスしたもの)、実際の初期投資の金 額ではない。つまり投資利益分の金額を減らしてしまっている。しかし ROI の投資レポートを出すときには、どうも Quicken は証券収入からの再投資 すべてを未調整の初期投資に対する収入とみなしてしまうといった、もっ と標準的な方法に基づいて計算している。

もし Portfolio Window に出されたパフォーマンスを基に投資の判断をし ているのであれば、これは危険なことで、他の情報筋からはパフォーマン スが上がっていると報告されている証券を間違って投資がうまくいってい ないという結論を出してしまう可能性がある。このことは、一般にパフォー マンスが始めに初期投資したドル額に基づいて報告される投資信託におい て、特に問題となる。

さらに、Portfolio Window に表示されている別の情報が、終値によって影 響されてしまっているので、そのデータを解釈しようとする時に、混乱し てしまう可能性がある。私が Intuit 社と、この問題について話し合った ところ、この問題を解決するために Quicken 7 のアップデートをリリース する予定だということだ。


Web の TidBITS 完成する

by Geoff Duncan <geoff@tidbits.com>
(翻訳:山浦礼子 <raeko@bnn.co.jp>)

Matt Neuburg <matt@tidbits.com> の精力的、かつ勤勉な努力のおかげで、 1990 年 4 月の TidBITS-001 から今日に至るまで、すべての TidBITS が HTML 形式でオンラインで入手できるようになった。Matt は、(非常によ く自動化されている、Nisus Writer のマクロ一式を使って)私たちが過去 に setext で作成した全号の TidBITS を HTML 形式に変換するという気の 遠くなる作業を終えた。こうして、それらのファイルは過去の資産のライ ブラリ化という大きな進展により、各号はさらに利用しやすい実用的なも のになっている。

<http://www.tidbits.com/tb-issues/>

ある特定の号にアクセスするには、フォームに URL を使う。

たとえば:

http://www.tidbits.com/tb-issues/TidBITS-xxx.html

“xxx”と表示されている箇所に、閲覧したいと思う記事の番号だ。たとえ ば“030”(最初のゼロに注意すること)、あるいは“200”といった具合 だ。

TidBITS の思い出の号を辿ってみると、いくつかの輝かしいものに出会う。 たとえば、エイプリールフール特別号を実現した TidBITS April Fools 第 1 号( TidBITS-114 )や、先見の明を持つ Matt 氏が初めて執筆した TidBITS-095 (そして、それよりずっと後になるが、私のぱっとしない初 演作の TidBITS-167 )。ほかのクラッシックな話題としては、1991 年に Adam と Tonya が故郷のシアトルに引っ越した際に Mark Anbinder 氏が絶 やすことなく発行し続けた TidBITS や、Mel Park 氏が クラシックなコン ピュータゲームの Adventure の系譜についてほとんど信じ難いほどに詳細 に紹介した TidBITS-229 、そして、いかに Mac が優れているかという理 由を記した TidBITS-300 などが挙げられる。もちろん、TidBITS に記載 されているすべてのことを番号で検索するのだから、私は Adam と Tonya が結婚した号が TidBITS-062 であることを付け加えておくべきで あろう。

私達は Matt が素材を HTML に変換してくれたことに対して、たいへん深 く感謝している。だから、ここでやめるわけにはいかない! 私達は、こ れまで発行してきた内容の一覧を短く改良し、また、ひょっとしたら Web ベース で TidBITS の各号のインデックス化と検索機能を実現したいと思 う。


ディレクトリサービス再び

by Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
(翻訳:尾高 修一 <odaka@iprolink.ch>)

運悪くちょうど私が Mac 用ディレクトリサービスの記事を書いた直後 ( TidBITS-352 を参照)、Apple 社は LDAP(Lightweight Directory Access Protocol)をサポートすることを発表した。LDAP は他の業界大手 の支持を得ており、Apple の LDAP サポートが既存の maX.500 クライアン トよりどの程度進んだものになるかは未知数だ。

<http://product.info.apple.com/pr/press.releases/1997/q1/961107.pr.rel.imap.html#Apple Supports LDAP>

興味深いことに、Apple のプレスリリースの大部分は IMAP(Interactive Mail Access Protocol)のサポートについて述べている。IMAP は現在主流 の SMTP や POP と同様に、インターネットでメールの送受信をするための プロトコルだ。今回の発表が、Apple Internet Mail Server の次期バー ジョンでの SMTP と POP とともに IMAP のサポートにつながるか興味深い ところだ。

先週号の記事には多くの読者の方からコメントを寄せていただいたので、 ここでいくつか紹介しよう。

Andrew Starr 氏 <atstarr@amherst.edu>:
Netscape Navigator が Eudora を mailto 用に使うことができることを紹 介されていましたね。この方法はうまくいくのですが、“Eudora Mailto: helper”を使えばさらにもう少し便利になることがわかりました。たとえば、 mailto:atstarr@amherst.edu?subject=hello といったフォームからのリン クから、Subject フィールドに正しく書き込むことができるのです。

<http://www.eudora.com/other.html#mailto>

また、Eudora からスクリプト経由で FileMaker Pro や Now Contact を使 う方法も紹介されていましたが、ぎこちないスクリプトには反対でしたね。 私自身も時々あまりにも多くのことをやろうとしすぎるスクリプトには反 感をおぼえるのですが、Claris Organizer 2.0 と Eudora 2.0 の連携は完 璧です。Claris Organizer には小さなスクリプトが付属しており、メール フィールドの隣にあるボタンをクリックすると Claris Emailer を起動す ることができるので、私は Emailer のかわりに Eudora に情報を送るよう にスクリプトを書き換えました。

<http://www.amherst.edu/~atstarr/eudora/maceudora.html#nicknames>

Will Mayall 氏 <mayall@fogcity.com> と David Creemer 氏 <david@claris.com>:
Claris OfficeMail は Emailer とセットで使用した場合には自動的にアド レスブックを更新することができます。この機能はすべてのユーザーのロー カルアドレスブックがメールサーバにある最新のユーザーのリストと一致 するようにするものです。さらに、OfficeMail が Emailer アドレスブッ クを更新した後、“Export Addresses...”を選択すれば、タブで区切られ たテキストファイルを作成することができます。

Ken Weiss 氏 <krweiss@ucdavis.edu>:
記事の中で触れられていませんでしたが、既存の、または開発中のディレ クトリサービス用ツールがまだいくつかあります。一番ベーシックなのは もう何年も前からある NICNAME/Whois です。これはテキストベースで、 TCP/IP のもとで動作し、単にポートをモニタして簡単なコマンドに応答す るだけのものです。もう一つは Whois++ で、これもポートをモニタするも のです。Whois++ は照会ルーティングの概念を取り込んでいるため、 LDAP/X.500 よりも効果的に分散した大きな組織での使用に対応できるはず です。記事で紹介されていたほとんどの方法は照会ルーティングを一切行 わず、X.500 式の上方インデックス統合も行わないため、大きなデータベー スに効果的に適用することができません。

バックエンドデータベースがディレクトリサービスの鍵となる問題だとい う指摘は正しいと思います。電話帳というものが本質的には属性と値から なるデータベースだということを忘れられていることが多いようです。

George Yolland 氏 <gyolland@casey.org>:
以下は記事の中で少しだけ触れられながら、充分には展開されなかったと 感じた点です。

John O'Shaughnessy 氏:
私の経験から、大きな企業は(少なくとも私が働いたことがあるところは) メール用のディレクトリサービスに頼りきっていると言うことができます。 私は 10,000 人もの従業員を LAN メールパッケージに登録したり、メール パッケージを既存のディレクトリサービスにつなげるのも見てきました。

私の会社では、従業員に関する多種多様な情報を入れた Oracle データベー スを使っているため、基本的な情報をユーザーに表示するツールを作成し ました。このデータベース用の GUI フロントエンドは作りましたが、最近 主に使うのは(少なくとも Mac と PC では)Eudora の Ph 機能とのイン ターフェースです。Eudora クライアントから Ph サーバを指定し、Unix サーバ側では Ph リクエストに応答するように適切な“/etc/services” ディレクトリを定義します。次に Ph リクエストを上記のデータベースに リンクすれば、ユーザーはデータベース全体を Eudora から検索すること ができるのです!

もっと大きな問題は、記事の中でも少し触れられていましたが、誰がデー タのメンテナンスを行うかということです。私の会社ではデータの一部を 人事関係の部署が、ほかの部分は情報関係の部署が、という具合にメンテ ナンスしていますが、このプロセス全体を考え直しているところです。私 の会社では間違いなく大問題となっています。


Spell Catcher: ライター向け多機能ユーティリティ

by Tonya Engst <tonya@tidbits.com>
(翻訳:村上 浩  <murasan@yk.rim.or.jp>)
(翻訳:尾高 里華子 <odaka@iprolink.ch>)

今年初めに Casady & Greene 社が Spell Catcher をリリースした時から、 このユーティリティを試用してみようと決めていた。Spell Catcher で最 も注目すべき点(ほかにも数々あるが)は、全てのプログラムで同じイン ターフェースと辞書を使いスペルをチェックできることだ。Spell Catcher 1.5.6 は、ライターが長年重宝してきた Thunder 7 をベースにしている。 Thunder 7 のサポートは現在行われていない。

Spell Catcher の希望小売価格は 79.95 ドルだが、実買価格はそれよりも 20 ドル程度安くなっている。Thunder 7 ユーザーなら 19.95 ドルでアッ プグレード可能で、クロスアップグレードも用意されている。Casady & Greene 社によれば Mac Plus 以降であればどの Macintosh でも Spell Catcher は動作するとのこと。Spell Catcher 用として最低 2 MB の RAM、 2 MB のハードディスク空き容量、System 7.0 以降での使用を同社は推奨 している。(Casady & Greene 社に問い合わせたところ、辞書サイズを小 さく抑えれば、700 K 程度の RAM でも動作可能なことが分かった)

<http://www.casadyg.com/C&G/Tools/SpellCatcher/description.html>

Spell Catcher のインストールはスムースに終了。リスタート後、Spell Catcher コントロールパネルを使って Eudora 3.0、Word 5.1、 ClarisWorks 4.0v4、Nisus Writer 4.1 上で Spell Catcher がアクティブ になるよう設定した。Spell Catcher により、上記プログラムのメニュー バーにはメニューが一つ追加される。感嘆符がその目印だ。

簡易修正 -- Spell Catcher のオプション機能である Interactive Checking は、タイピングを監視し、誤ったスペルのワードを検出すると ピープでそれを知らせてくれる。このビープはエラーの種類により異なっ た音色を持っている。ビープを無視してそのまま続けることもできるし、 Command + [ もしくは Spell Catcher メニューから Suggest Spelling を 選択して Suggest Spelling ウィンドウをアクティブにすることも可能だ。 アクティブにすると、小ぶりのダイアログボックスに正しいスペルの候補 一覧が番号付きで表示される。目的のスペルを敏速に選択したい場合は、 選択肢の番号を入力するかダブルクリックすればよい。また、候補を登録 したり、辞書に未登録のワードを追加することもできる。ワードを追加す る際には、一般的な変形、例えば複数形などもその場で選択し追加するこ とができる。

所有の Power Mac 7600 では Suggest Spelling ウィンドウをスムースに 扱えるのだが、同じく所有の Duo 230 だと候補一覧の表示が遅すぎるた め、間違いが分かっている場合には直接タイプした方が早いことも度々あっ た(ただし、候補一覧が全部表示されるのを待たなくても、目的の正しい スペルが現われたらすぐに選択できるようになっている)。Spell Catcher にはこのウィンドウ中のボタンを白黒に減色する設定がついている。処理 をスピードアップするためのものと思われるが、Duo にはあまり効果がな かった。

瞬間修正 -- 頻繁にスペルを間違えるワードは、語彙集に登録しておく ことができる。そうすれば、以後そのワードの入力を間違えてもピープは 鳴らず、Interactive Checking の方で自動的に訂正してくれる。また、 Spell Chatcher には予め 1,071 個の語彙集が用意してある。この語彙集 により、“the”のつもりで“teh”と入力するようなよくある間違いはビー プ無しで修正される。

語彙集ですぐ思いついたのが、頻繁にタイプするテキスト用にこれを使え ないものかということだった。例えば、電子メールの署名や普通郵便の宛 先などである。語彙集には 255 文字までしか使えないことが分かった。短 いものにはこれで十分だが、パラグラフごと登録することはできない。

マニュアルをていねいに読まないと分からないだろうが、語彙集の登録で 改行を挿入するためには Option + J を入力する必要がある。何の脈略も ないこの方法は私には好きになれない。すぐには気が付かないというのが 第一の理由である。第二の理由は、語彙集の登録ワードを作成する二行分 のテキストボックス中では、改行しても見ためには次の行にテキストが移 動しないことである。改行した場所には三角形のキャラクタが表示され、 以後入力したテキストも同じ行に続いてしまう。もう一つ気に入らないの が、一つのテキストボックス中に 68 文字(一行につき 34 文字)しか一 度に表示できない点である。

Power Mac に較べ Duo 230 上では語彙集による置換処理はかなり遅くなる と最初は思っていたが、置換スピードの違いは使うアプリケーションに大 きく依存していることが後に分かった(また、その確認もした)。Word 5.1 と Eudora 3.0 では、スペルを間違えたワードの置換スピードは目で確認 できるほどの遅さだった。ただし、タッチタイピングする上では何の影響 もない。タイピングをしながら自動的に間違いが訂正されていくのを見て、 心地よい驚きを覚えることが日に何度かある。

しかしながら、ClarisWorks になると Spell Catcher の動作が若干また遅 くなる。NisusWriter 4.1 では長いワード(“unsuccessful”等)の置換 でその現象がより顕著になる。置換には 5 文字タイプできるぐらいの時間 がかかり、しかもそのタイプした文字は Spell Catcher が置換処理を終了 するまで画面に現われないのだ。この処理速度の低下は、ワードを再入力 する必要がある場合にのみみられる。語彙集の登録ワードを省略語を入力 した場所に挿入する場合、例えば、“snailm”の場所に住所を入力する場 合などは、処理速度はずっと速くなる。

Interactive Checking は、誤って大文字を 2 つ続けて入力した場合にも 適用できる。例えば、“Apple”とすべきところを“APple”と入力してし まった場合などである。使ってすぐ、この機能を無効にする方法が必要な ことに気付いた。実際、Interactive Checking のオン/オフはキーボード ショートカットもしくは Spell Catcher メニューから簡単に切り替えるこ とができる。Spell Catcher メニューのアイコンを見れば、その色の違い によって Interactive Checking のオン/オフが分かる。

ビープはお嫌い? -- 間違うたびにビープを鳴らされてはたまらないと思 うだろうが、確かにその心配が現実になる可能性はある。実際、私も最初 はそう思った。ところが、一日もすると、特殊なスペルで最もよく使うも のは Spell Catcher にもう教えこんでいて、頻繁にするタイプミスについ ても語彙集のショートカットをだいぶ追加していた。また、以前よりも慎 重にタイピングするようになったし、それに応じてタイピングの正確性も 短期間で大幅に向上した。ビープをオフにできることや、メニューバーを フラッシュさせてエラー検出を知らせる設定にできることは、後になって 分かった。また、ビープの音程と長さを調整する Tone オプションも備え ている。

メニューでチェック -- Spell Catcher は選択範囲内のスペルもチェッ クできる。Check Selection スペルチェッカのダイアログボックスは先に 述べた小ぶりのものよりやや大きめにできている。このダイアログボック スには Ignore All と Replace All のボタンがついている。Statistics ボタンは判読率とともにワード数、文字数を表示させるためのものだ。 Power Mac 7600 上で最近発行した TidBITS の統計結果を出すのには約 3 秒、Duo 230 上では 5 秒かかった。

選択範囲内チェックの場合、Spell Catcher は使用中のアプリケーション に選択範囲のテキストをクリップボードにコピーさせてから、そのクリッ プボード内でチェック作業を行う。スペルチェックが終了するとダイアロ グボックスが現われ、修正したものを元のドキュメントにペーストするか どうか聞いてくる。この処理がスムースに進み、Spell Catcher を使って いるアプリケーション上の書式にも悪影響がなければ(私の場合、スムー スに処理できた)、修正後のペーストを自動化することも可能だ。Word 5.1 では、テキストが未選択との警告を Spell Catcher から受けてしまう問題 が生じた。この問題を回避するためにいつも使っていたのは、Check Selected コマンドを再度呼び出すという手だった。

シソーラスと辞書セット -- 嬉しいことに Spell Catcher には言葉の定 義まで出ているシソーラスが付いているのだ。単語を入力して Command + ] を押すか、Spell Catcher メニューの Thesaurus Lookup を選択するかす れば、シソーラスを呼び出すことができる。

さらに、8 万 6 千語の大辞典と 5 万語の小辞典のほかに、HTML コーディ ング辞書、科学・工学用語辞書、法律用語辞書、医学用語辞書といった付 属辞書がセットになっている。

癖とあら捜し -- Spell Catcher でスペルをチェックするのには少々問 題もある。一つは、私は Nisus Writer の Ignore All 機能に頼るように なってしまっていることだ。この機能は、ある文書に入力されているある 単語のスペルを常にチェックしないように特別な文字スタイルを適用する ものだ。(ほかにも似たような機能を備えたワープロがある。)Spell Catcher の Ignore All では、個々の文書に文字スタイルを適用していく ことはできないのだ。その代わり、ある単語に Ignore All を設定すると、 Mac をリスタートするまではすべての文書でそれが適用される。現実問題 として Spell Catcher がこの辺りのことを解決できるかどうかは私には分 からないが、スタイルベースでの Ignore All の設定はどうしても諦めた くないのだ。

また、Spell Catcher は URL までチェックしてくれようとする。 Interactive Checking をオンにしていると、URL を入力する度に警告音が 鳴るので特にいらいらするのだ。

まだある機能 -- 色々と調べてみてようやく気がついたのだが、Spell Catcher は機能満載のライター用ユーティリティである。Interactive Checking には、自動 Smart Quotes 機能や Double Space Eliminator の ような懐かしいものが付いている。これらの機能は、ショートカットキー で切り替えることができるし、アプリケーションごとにオン/オフの設定 をすることも可能だ。

Ghostwriter 機能というものもあり、これをオンにしておくと、文書単位 でタイプしたキーストロークを覚えておいてくれる。Ghostwriter は、日 付別のフォルダを作っていき、さらにそのフォルダに、適切にアプリケー ション別のフォルダを作る。アプリケーションフォルダの中に実際に作業 したファイルと同じ名前のファイルが保存される。ジャンプしたり消去し たりということをほとんどせずに、ひたすら文書を入力していくと、その 文書のコピーが出来ているのだ。Ghostwriter は、文書のあちらこちらで 入力をすればするほど、役立たずになってしまうのだが、クラッシュの際 には救世主になってくれるかもしれない。Power Mac と Duo のどちらで GhostWriter 使っても、作業の邪魔だと感じることは全く無かった。

Ghostwriter は、普遍的に使うことも、また特定のアプリケーションだけ で使うこともできる。アプリケーションごとの初期設定、ファイルのサイ ズや保存期間の設定も可能である。例えば、Eudora の場合 Ghostwriter は読んだり作業したりするメールごと、または開いたメールボックスごと にファイルを作成する。そこで、文字の入っているファイルだけを保存す るように設定を変えた。メールボックスやメッセージを読むだけで、全く 入力しなかったら保存されることはない。こうすれば、不要な空のファイ ルを減らすことができるのだ。

その他、細かいが役に立ちそうなテキスト操作関連の機能がある。例えば、 引用符をまっすぐなものから内側に曲がったものに、曲がったものをまっ すぐなものに瞬時に変えることができるし、テキストを大文字・小文字の 様々な形に変更できる。

人間の香り -- 特筆すべきものとして、マニュアルがあげられる。最近、 工場生産されたような無味乾燥なマニュアルが段々増えていると思う。こ のマニュアルは特別親しみが持てるとかユーモアがあるとかいうものでは ないが、生身の人間が書いたということが伝わってくるのだ。セットアッ プや使い方を説明した後、舞台裏で何が起こっているかを説明しながら、 自分の辞書を作成したり、それがうまく動くようにする方法を事細かに書 いてある。

マニュアルには、Spell Catcher が“ハッシング”テクニックを使ってルッ クアップを実行することが説明してある。タイプした単語一つ一つをマッ チするものが見つかるまで辞書にある全ての単語と直接比べたりはせず、 単語が正しいかどうかを即座に判断するのに、一連の比較のアルゴリズム を使うのだ。これにより、迅速な処理を極めて小さい間違いの範囲で行え るのだ。

核心に迫る -- スペルチックやシソーラスが付いているプログラムのほ とんどが、その機能のためのモジュールや辞書のセットで巨大メガバイト サイズになってしまっている。Spell Catcher を常時使うことにしてしま えば、私のハードディスクを占領しているこれらのファイルを捨てること ができるし、今後インストールする時にも、それらの機能をインストール しなくてよくなるのだ。さらには、新しいプログラムに付いてくる新しい スペルチックやシソーラスの機能を覚えなくて済むのだ。

つまるところ、ほとんどのライターは Spell Catcher を便利な道具だと思 うだろうし、学生の頃にこんなものがあれば良かったと思う。論文を書く 学生、物を書くことを仕事にしている人だったら、Spell Catcher は是非 検討すべきである。

しかし、大切な警告をしておくと、私の Duo 230 では、正しいスペルの候 補を表示し始めるのに時間がかかる(Duo 230 は、33 MHz 68030 なので、 SE/30 よりも速いが、68040 ベースの Macintosh よりは遅い)。処理速度 に関して自分が辛抱強いほうだとは思っていないが、私の Duo より遅いマ シンに Spell Catcher をインストールしようと思っている方は、ご注意を。

今後 Spell Catcher を使うかどうかは、JEM Software 社から近々リリー スされる Online Army Knife (OAK) を見てから決めようと思う。OAK は皆 さんがこの記事を読んでいるころまでには出荷されるだろう。OAK はユニ バーサルなスペルチェックを行うが、よりインターネット指向のアプロー チをし、付属機能の組み合わせが異なる。そのほかに、Working Software 社から出ている Spellswell Plus もユニーバーサルなスペルチェックをし てくれるものだ。私たちは複数の製品をレビューする傾向にあるので、きっ と Spellswell Plus も調べてみることになるだろう。

<http://www.arielpub.com/OAK.HTML>
<http://www.working.com/>

お買得 -- Cyberian Outpost から Spell Catcher を購入しようという TidBITS の読者は、下記の専用 URL を使って注文すれば 5 ドルの割引が 受けられる。

<http://www.tidbits.com/products/spell-catcher.html>

    Casady & Greene -- 408/484-9228 -- 408/484-9218 -- <c&g@casadyg.com>

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