TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS-J#363/27-Jan-97

Apple 社の市場シェアは低下している。しかし、それは正確にはどういう 意味をもつのだろう? 今号では、オペレーティングシステムの販売に関 していかに表面的ででたらめな統計がなされているかを探究している。ま た今週は、Geoff Duncan が Apple 社の新しい Mac OS 7.6 について賛否 とその変更点について考察している。何人かの読者の投稿によって Macworld を振り返り、NetPresenz や UserLand 社の Frontier の新しい バージョン、加えて Eudora の意義深いベータ版のリリースに目を向けて いる。

目次:

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Kaz Yoshikawa <kaz@fact.com>
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尾高 里華子 <odaka@iprolink.ch>
小山 純一  <vb4j-oym@asahi-net.or.jp>
加藤 たけあき<oiso@wolfenet.com>
米谷 仁志  <comet@po.iijnet.or.jp>
齊藤 聡   <akkun@ca2.so-net.or.jp>
杉浦 雄一郎 <ysugiura@direct.ca>
高島 均   <hitak@can.bekkoame.or.jp>
西村 尚   <hisashin@st.rim.or.jp>
水木 潔   <HGH03125@niftyserve.or.jp>
村上 浩   <murasan@yk.rim.or.jp>
矢倉 遠十吉 <oto@mb.infoweb.or.jp>
山浦 礼子  <raeko@bnn.co.jp>

今回の TidBITS のスポンサーは:


MailBITS/27-Jan-97

(翻訳:齊藤 聡 <akkun@ca2.so-net.or.jp>)

Eudora Light/Pro アップデート -- Qualcomm 社は Eudora の Light 版 および Pro 版のバージョン 3.0.2b7 をリリースした。我々はソフトウェ アのベータ版のリリースに関してはめったに取り上げない。それはインター ネットの世界のソフトウェアリリースがあまりにも煩雑なおかげなのだが、 このベータ版では、タイプ中に余計な行が入ることや、もっとはっきりし ているのは、閉じているニックネームファイルにニックネームをドラッグ した場合に少なくとも生ずるニックネームファイルの変造といった、潜在 的ないらだたしい問題を修正している。ダウンロードファイルは Eudora Pro で 1.5 MB、Eudora Light の場合には 2 MB である。すでに Eudora Pro 3.0 または 3.0.1 をインストールしていなければ、Eudora Pro ベータ版 をインストールすることはできない。[ACE]

<http://www.eudora.com/mac302b.html>

NetPresenz 4.1 のリリースと議論の場 -- Stairways Software 社の Peter Lewis 氏は NetPresenz のバージョン 4.1 をリリースした。これは 人気のある Web、FTP、Gopher サーバーである。主に改善した部分は高負 荷状況下の安定性の向上、Web サーバーにはエンハンスド CGI のサポー ト、CGI 認証、動的な Web ページを作成するためのサーバー側インクルー ドが導入されている。10 ドルという NetPresenz の価格に打ち勝つことは まだできない。また、4.1 は 1996 年の 1 月 1 日以降に登録したユーザー は無料でアップグレードできる。その日付以前に登録したユーザーは 5 ド ルでアップグレードできる。[ACE]

<http://www.stairways.com/netpresenz/>

また、Stairways 社は NetPresenz と Anarchie について議論するための 2 つの新しいメーリングリストについて発表した。登録するには、電子メー ルを <netpresenz-on@list.stairways.com> または <anarchie-on@list.stairways.com> に送る。そのメーリングリストは TidBITS の登録方法と同じ方法がとられているので、コマンドは必要ない。 Stairways 社が運営している他のメーリングリストも含め、Web 経由で登 録することもできる。[ACE]

<http://www.stairways.com/mailinglists/>

最後の Frontier にあらず -- UserLand Software 社の Frontier がバー ジョン 4.2 にアップデートされた。強力で高速な Mac のスクリプト環境 である Frontier 4.2 には(Web ページを定期的にアップデートするため の NewsPage を含め)大幅に洗練された Web サイト管理ツール、改良され たマクロ処理、Frontier の内蔵アウトライナーによる HTML の直接編集、 MCF サイトマップ作成のサポート( TidBITS-355 を参照)、ウェブ管理 者とページ作成者のための Finder 用スクリプトの便利なスイート (Leonard Rosenthol の OSAMenu 経由で入手できる)、WebSTAR 2.0 との 緊密な統合機能、が装備されている。Frontier はまだ無料である。好奇心 の強い人はオンラインドキュメントを調べることでそのセンスの良さが分 かるに違いない。[MN]

<http://www.scripting.com/frontier/>


Mac OS ハードウエア市場は低調?

by Matt Deatherage <mattd@gcsf.com>
(翻訳:尾高 修一 <odaka@iprolink.ch>)

最近、各種の市場調査会社がコンピュータ業界の現在の統計と将来の予想 を発表した。我らが Mac OS は、誰に何を言わせるかにもよるが、曇りか 雨という予報をされている。

ほとんどの米国のコンピュータメーカーは、1996 年第 4 四半期でそこそ この利益を上げると予想されているものの、特に米国とヨーロッパではパー ソナルコンピュータの売り上げは予想を下回るというのが共通した見方だ。 IBM 社と Hewlett Packard 社はグローバルかつ多角化した巨大企業である ため好調を維持し、Compaq 社も去年の在庫管理のまずさと不調だった上半 期から順調に回復すると見られている。一方、Apple 社は同四半期に 1 億 2 千万ドルの赤字を計上したが。同社は、この原因は売ろうにも PowerBook がなかったことと、米国で Performa の売り上げが伸び悩んだことだけだ としている。

このニュースについて、Oppenheimer Co 社のアナリストは Wall Street Journal に対し、Apple のオペレーティングシステムは「息切れ」状態で、 Macintosh よりも Windows の方がソフトウエアが多いのでユーザーは Windows を選んでいるのだと述べ、さらに Apple は教育市場でもシェアを 失い始めるだろうと言っている。この主張を裏付けるデータも理由も述べ ずに。

International Data Corporation 社(IDC)は 1996 年のオペレーティン グシステム別の出荷台数の見通しを発表した。同社は、Windows 95 は予想 された販売数に達しなかったとし、「多くの企業ユーザーは新しいオペレー ティングシステムへの移行を見合わせた」と述べている。ここでの新しい オペレーティングシステムとは Windows 95 と Windows NT を指している。 いずれの場合も伸び率が鈍かったわけではない。Windows 95 は 96 年に全 世界で出荷された OS の数のうち 65 % を占めているが、これでも予想よ りも 9.3 % 低いのだ。Windows NT は 303 % の伸びだが、予想より 32 % 低い。IDC の“観測”によると、「Apple クローンはまだシェアの増加に は結び付いていない」。また、「Apple が状況を好転させるためには、現 行の Mac OS との高度な互換性を持った完全なマルチタスク OS を導入し、 テクノロジーリーダーとしての地位を奪還しなければならない」とし、 「最近発表された Apple の NeXT Software 社の買収と、将来の OS への NeXT テクノロジーの統合ではこのニーズを完全に満たすことはできない」 とも述べている。

<http://www.idcresearch.com/HNR/pcopso.htm>

IDC のレポートがこれほど悲観的である以上、Mac OS の売り上げはよほど 悪かったに違いない。ところが現実には、全出荷数の 6.8 % から 6.6 % へ下がっただけだ。これを同四半期にシェアの半分近くを失った OS/2 と 比べていただきたい。

Mac OS シェア -- 問題の一部として、一貫しない用語の定義の問題があ る。メディアが絶体絶命的に報道するシェアの低下は、Apple Computer 社 だけについてである。1995 年以降は、これでは Mac OS 市場の真実を伝え ていることにはならない。今では Apple 以外の企業も Mac OS マシンを販 売しているからだ。ところが、これは新しい展開であるため、Macintosh のシェアがそのまま Mac OS のシェアだという認識がまだ根強く残ってい る。これは間違いだ。

ご存じでない方のために付け加えておくと、シェアというのは、特定のカ テゴリでの新規販売数において、ある企業が占める割合のことだ。厳密に 言えば、シェアは一定の期間を対象として計測されなければならないが、 普通は今現在におけるある企業の売り上げを競合他社と比較するために現 在形で用いられることが多い。IDC のレポートでは、1996 年に販売された パーソナルコンピュータ用オペレーティングシステムのうち、6.6 % が Mac OS だったと述べている。1995 年には 6.8 % であった。この数値には新し いマシンに付随した新しいライセンスだけが対象となっており、アップグ レードは含まれていないことは興味深い。ということは、これは Mac OS を動作させることができるハードウエアのシェアを計測する方法だと言っ て良いだろう。

0.2 % の低下は大きいとはいえない。IDC の統計を元にすれば、年間の 500 万台のうちの 15 万台ということになる。IDC によると、1995 年には 450 万台の Mac OS ライセンスが売れたので、500 万で低下したというのは変 ではないだろうか? これはオペレーティングシステムの市場が成長してい るからなのだ。Mac OS の販売も伸びたが、市場全体ほどではなかったの だ。6.6 % のシェアを維持するには、Mac OS の出荷数は 515 万台に達し ていたはずだ。これには届かなかったので、売り上げは伸びながらもシェ アの低下を招いたということになる。

IDC の統計の誤差が 0.2 % 未満である限り(絶対とはいえないが、多分そ うだろう)、統計的に見て Mac OS の売り上げは 1996 年には低調だった といえるだろう。ところが、メディアの報道や Apple 自身も、販売が低調 だとか伸びが鈍いとはいわずに、売り上げが減少していると繰り返し述べ ている。

クローン投入 -- Mac OS クローンメーカーは、恐らくは Apple の売り 上げに食い込むことによって、シェアを拡大した。NEWS.COM の記事では、 4 大クローンメーカーである Daystar Digital、Motorola、Power Computing、UMAX の各社に焦点を当て、なぜこの 4 社が好調なのかを明ら かにしようとした。その記事の中で、NEWS.COM は IDC のライバル、 Dataquest 社の推定では、1996 年第 3 四半期における米国での Macintosh 市場のうち、8.5 % はクローンで占められていたと述べている。

<http://www.news.com/SpecialFeatures/0,5,6931,00.html>

もちろん Dataquest 社の数値は年間を通じてのものではないが、これで事 態が少し面白くなるのは確かだ。ある情報筋が推定したように第 4 四半期 の Apple の米国内でのシェアが 7.3 % だったとしたら、他社を含めた Mac OS のシェアは 7.9 % になる。これは Apple が一年前に持っていた 13.2 % には程遠いが、今のメディアの論調からすれば消費者が Mac の購入に二 の足を踏むのも仕方がないだろう。Mac OS 全体のシェアは恐らく 7.9 % よりも高いだろう。というのは、私は第 3 四半期のクローンの売り上げを 第 4 四半期の Apple の売り上げに足しているからだ。第 4 四半期には Motorola と APS 社からもクローンが発売されており、しかも他社の Mac OS の売り上げに食い込んだわけではなさそうなため、クローンの販売数は 第 3 四半期よりも多い可能性が高い。

Motorola は発売後 8 週間で最低 4 万台の StarMax クローンを販売した ことが知られているし、同社のマーケティング責任者が NEWS.COM に語っ たところによれば、このうちの 1/4 は初めて Mac OS を買ったユーザーだ と推定されている。Motorola は他社に出遅れたために店頭販売を行ってこ なかったが、今では製造設備が不足して店頭での大量販売ができないこと を理由にしている。

一方、UMAX は 1996 年の下半期に 10 万台を出荷した。Power Computing の売り上げはまだ公表されていないが、以前の Tim Bajarin 氏の推定で は、50 万台に達している可能性がある。DayStar Digital の数値はもっと 低く、3,000 台前後になっていると思われる。同社は利益率の高いハイエ ンドのシステムを製造しており、200 MHz の 604e CPU を 4 基搭載したマ シンは、10,000 ドルという価格も合わせて、特殊なマーケットをターゲッ トとしている。

[注記: Apple はつい最近クローンの売り上げを発表し、Power Computing は最初の一年間で 100,000 台を売ったとしている。 -Adam]

UMAX も Motorola も、2000 年までには Mac OS 市場の 10 % のシェアを 獲得することができると考えている。これは両社が Mac OS 市場を拡大し てさえくれれば、Apple にとっても歓迎すべきことだ。特に UMAX は市場 拡大に熱意を燃やしている。というのは、UMAX は Mac OS がアジア市場に マッチすると考えており、親会社が台湾に本社を置いている同社には、そ のことが誰よりもよくわかっているはずだ。同社は NEWS.COM に、台湾で の Mac OS の売り上げを 300 %、それに東南アジアや中国の一部ではそれ 以上伸ばすと述べている。これはまさに Apple が必要としていることで、 もし他のクローンメーカーもが同様に市場を拡大することができれば、初 期のクローンにシェアを食われていたのを我慢した甲斐があったというも のだろう。

何を意味するか? -- どの市場調査会社も行っていないのは、継続して Mac OS のシェアの動向をハードウエア単位で追跡し、(Apple Computer 社の)Macintosh のシェアと分離することだ。OS の売り上げをベンチマー クとするなら、何ヶ月も連続して Apple がメディアに叩かれたことによっ て消費者の信頼を失ったにもかかわらず、IDC の数値は 1995 年から 1996 の間でほとんど変化がなかったことを物語っている。これは胸を張っても 良い成果だ。IDC は「Mac OS クローンはシェアを拡大するまでには至って いない」と述べているが、誰もが Mac OS のシェアが縮小すると考えてい たわりには決して悪い結果ではない。

非 Mac OS 市場が一枚板ではないということも憶えておいて損はないだろ う。Computer Industry Almanac 第 8 版によると、1996 年第 3 四半期時 点で 2,500 万台の Macintosh が世界に存在していた(Apple は 2,600 万 といっている)。DOS ユーザーは 1 億 8,000 万、Windows 3.x ユーザー は 1 億 3,000 万、Windows 95/NT ユーザーは 5,300 万だ。このいずれも 若干異なるプログラミングインターフェースを持っており、Windows 3.x 用に書かれたコードは Windows NT では一種のエミュレーションで動作す るが、その逆は不可能だ。もし Apple が Rhapsody を非 PowerPC ハード ウエア用にリリースするという計画(こういう計画あるかどうかは人によっ て意見が異なるが)が実現すれば、デベロッパーは Mac OS 用プログラム を書いて簡単に比較的新しい Windows マシンで使用可能にすることができ る。これは間違いなくもっと多くのデベロッパーを Mac OS に惹きつける ことになり、IDC の理論を適用すれば、ソフトウエアが増えれば売り上げ も増えることになる。

Apple が本腰を入れなければならないのは明らかだ。ライセンスする優れ た Mac OS がなければ、どれだけ魅力的な価格設定をしてもクローンの売 り上げはいずれ落ち込む。個々の Mac OS クローンメーカーは市場調査の レーダーにかかるには小さすぎるので、どうしても Apple だけに目が行く ことになる。Apple の第 4 四半期の損失はなまぬるいマーケティング、棚 面積の減少、全体的に予想より低かった売り上げ、それに消費者の信頼の ゆらぎによってもたらされたものだ。しかし、クローンメーカーは好調だ し(Power Computing は事実上最初の四半期で利益を計上した)、それは 売り上げにも反映されている。時には良いニュースを見つけるには少し掘 り下げないといけないこともあるが。

[この記事は MDJ の許諾を得て転載・改訂されている。MDJ は毎日 Macintosh の世界のニュース、製品、イベントをカバーしている出版物だ。 Mac に関する示唆深いニュースが不足しているという方には、MDJ のお試 し購読をお薦めしよう。購読を申し込みたい TidBITS 読者には、期間限定 で 毎月 11.95 ドルの特別料金(20 % 引き)を提供していいる。詳しくは MDJ の Web サイトへ。]

<http://www.gcsf.com/tidbits.html>


Macworld 新参者への反響

by Jeff Carlson <jeffc@tidbits.com>
(翻訳:高島 均 <hitak@kk.iij4u.or.jp>)

火曜日は楽しい電子メールの日であった。 TidBITS-362 で“初めての Macworld 体験記”(筆者の最初の TidBITS 記事)を掲載してから、世界 中の読者から間断なく続くコメントや歓迎のことばの数々を受け取った。

特に、数人の人から、新参の参加者は目につく無料配布物を一つ残らず集 めるのを控えよというアドバイスへのコメントがあり、また Steve Jobs 氏の“現実歪曲フィールド”の話に対する反応が寄せられた。

Suzanne Courteau <suzanne_courteau@macworld.com> さんはこう記す:
まず、私はプレス用かばんをオフィスに置いていきました。上着のポケッ トの中にペンと名刺を持ち運びました。本当にすばらしい製品を偶然見つ けたときには、その製品管理者もしくは広報管理者にそれを私のオフィス まで送ってほしいと名刺にメモを書き残すだけ、といたって簡単でした。 配達されたすべての情報を手にすることができましたし、そして背中や足 の問題など全くなかったのでした。

Adam L.Pollock <alp@&umich.edu> さんはためらいなく厄介な方法をと る:
ペンや CD やディスクなどなどを一つ残らず集めることに関しては、それ は間違いなく私の目標でした。私はTシャツも捜し求めていて、ショーの 終了時には無料のものを求めて歩き回り、交換したりして、12 枚のTシャ ツを集めたのでした!

Jack C.Kobzeff <jack.c.kobzeff@jpl.nasa.gov> さんはこう見る:
私は、Jobs 氏の現実歪曲フィールドが今回は半分の力でしか作用してい ないと感じました。Mac の初期のころや NeXT 社の創設時に彼を見たこと がありますが、そのときの彼はエスキモーの人々に雪を売らんとするほど でした。NeXT のプレゼンの間中彼はすさまじく、アプリケーションもなく フロッピイディスクもないマシンのことでスーツとネクタイ姿の会社重役 たちを興奮させたのでした。今回は、彼が単に年をとったのか、お金持ち になり過ぎたのか、本当は Apple 社の買収話には心あらずなのか私にはわ かりませんが、しかし彼は同じレベルの現実歪曲フィールドを持ち合わせ ていなかったのです。それは存在はしていました、ただし以前よりも全く 弱々しく。


Apple 社 Mac OS 7.6 を出荷

by Geoff Duncan <geoff@tidbits.com>
(翻訳:尾高 里華子 <odaka@iprolink.ch>)
(翻訳:齊藤 聡 <akkun@ca2.so-net.or.jp>)

Apple 社は、今日 Mac OS 7.6 を出荷した。これは、いろいろなものをひ とまとめにしたシステムソフトウェアリリースであり、少しばかりの新機 能と、目につかないようなかなりの変更と、あとは、すでに無料で入手可 能な Apple テクノロジー一式が入っている。この Mac OS 7.6 は、タダで はないし、ダウンロードして入手することもできない。CD-ROM 版で 120 MB を越えることを思うと、良いことなのだろう。

<http://www.macos.apple.com/macos/releases.html>

Mac OS 7.6 は、システムソフトウェアとしては、おおむね必要な水準をク リアしている。この 7.6 が登場する以前は、最新システムソフトウェアを インストールするのは、骨の折れる作業だった。システムソフトウェアを 2 つ 3 つインストールした上に、OpenDoc や Open Transport といったも のはまた別にインストールしなければならなかった。Mac OS 7.6 では、こ ういった手順がだいぶ軽減されるし、System 7.5 の種類の多さのために 起った混乱を最小限のものにしてくれるだろう。それに、Apple 社は、1997 年の 1 月中に Mac OS のアップデートを出荷するという約束をちゃんと 守ったのだ。

しかし一方では、Mac OS 7.6 は、今ひとつ盛り上がりに欠けていた。その 主な理由は、惹かれるようないかした新機能が不足していたからだろう。 Mac OS 7.6 には、Apple が数年来言い続けていた、マルチスレッド、 PowerPC ネイティブの Finder、高速フルテキスト検索エンジン、アクティ ブアシスタンス、話にだけ聞く Appearance Manager(これでデスクトップ が相当カスタマイズできるようになる)、統合された Java サポートなど が入っていないのだ。これらの機能は、1997 年 7 月に予定されている次 のアップデートである Tempo に組み込まれるかもしれない。

Mac OS 7.6 のインストール -- Install Mac OS は、Mac OS 7.6 の新機 能の一つである。基本となるオペレーティングシステムと(OpenDoc、 Cyberdog、QuickDraw GX といった)アドオンの両方に使える統合インス トーラだ。この新しいインストーラは前から予告されていたものであるが、 実際には個々のコンポーネント用のインストーラをコントロールするシェ ルプログラムなのである。ありがたいことに、この Install Mac OS は、 ソフトウェアをインストールする際にハードディスクのドライバを更新す るようにユーザーに通告してくれる(今までは、ReadMe ファイルにその旨 が書かれているだけで、問題が起こって始めてそれに気がつくというのが 普通であった)。そして、システムソフトウェアをインストールしようと すると、先ず Disk First Aid を走らせるのだ。この Install Mac OS を 使えば、(今までは隠されていた機能である)別の名前のついた新しいシ ステムフォルダを作ったり、既存のシステムをアップデートしたりもできる。

とはいえ、Install Mac OS は困惑のもとにもなる。インストーラにどれを インストールしようとしているのかを伝えると、コンポーネント別の従来 型のインストーラを起動し、再度何をしたいのかを聞かれるはめになる。 例えば、Mac OS 7.6、OpenDoc 、QuickDraw 3D の 3 つをインストールを するとすると、まず、Mac OS 7.6 のインストーラが現れて、次に OpenDoc のインストーラが、そいて最後に QuickDraw 3D のインストーラが登場と いう具合になるのだ。2 つめのインストーラが現れるころには、どうして こういった状況になったのか、次はどうなるかを忘れてしまっているかも しれない。

さらに Apple は、個々のインストーラ・アプリケーションの変更も行っ た。最も目につくのは Mac OS 7.6 のカスタムインストールで、これによ り、コントロールパネルや機能拡張といった従来のカテゴリーに加えて、 機能別に分類したコンポーネント(Mobility、Multimedia、Assistance の ようなもの)も加わった。残念ながら、これは、(PC Exchange のような) 個々のアイテムが複数のカテゴリーに表示されるということなので、一つ のカテゴリーであるアイテムを選択しても他のところにあるそのアイテム が選択されるわけではない。このため、あるものをインストールしたかど うか分からなくなりやすい。

同梱されているもの -- Mac OS 7.6 には、基本となるシステムソフト ウェア以外に、次のようなものが入っている。QuickTime 2.5、OpenDoc 1.1.2、Cyberdog 1.2.1、QuickDraw 3D 1.0.6、QuickDraw GX 1.1.5、 MacLink Plus 8.1(DataViz 社製)、Open Transport 1.1.1、Open Transport/PPP 1.0、Remote Access Client 2.1、バージョン 1.2 の Apple Internet Connection Kit。

Mac OS 7.6 の中に、QuickDraw 3D 1.5 と Open Transport 1.1.2 が含ま れていないことにお気付きになった方もいるだろう。どうしてだろうか ? その答えは日程の問題という一語につきる。社内の(文字どおり)何ダー スにも及ぶ製品ごとに分けられたグループから集めてくる 100 MB を超え るデータを調整するのはたやすいことではないのだ。Apple は、Mac OS 7.6 の出荷を予定通り行うために、製品ごとの絶対的な締切を設けたのだろう。 これは、Apple の漸次型アップデートポリシーに対応しており、 (Cyberdog、Open Transport、QuickTime のような)個々のテクノロジー はそれぞれ別々にアップデートされるので、最新バージョンをすぐにでも 手に入れたいユーザーは、Mac OS のメジャーリリースを待たなくてもよい のだ。

しかしながら、こういった状況は Apple のテクノロジーを絶えず追い求め ているユーザーにとって、悩みの種でもある。すでに Open Transport 1.1.2 をインストールしている人が、Mac OS 7.6 のインストーラを使うと Open Transport の新しいバージョン置き換えようとしていますと(再三) 文句を言われるのだ。Open Transport 1.1.2 を使おうと思っている方は、 まず Mac OS 7.6 をインストールしてから、1.1.2 を再インストールしな ければならないのだ。また、Mac OS 7.6 では、従来型のネットワーキング はサポートしていないので、Open Transport を使わざるをえない。このよ うな問題を抱えていては、ユーザーのほうが(パワーユーザー、プログラ マ、Mac 狂のような)状況を理解するだけの知識を持たなければならなく なってしまい、Apple は仲間を増やすことができないだろう。

ニューフェース -- Mac OS 7.6 には、新しいインストーラ以外にも Extensions Manager 4.0 という以前のバージョンから大きく改善されたも のが入っている。Extensions Manager 4.0 は、システムの機能拡張や機能 拡張セットの管理に加えて、(ソートできる)新しいインターフェースと 機能拡張をそのまま一式とかフォルダごと、パッケージごとに見る機能が 備わった。とりわけ、パッケージごとに機能拡張を見る機能は役に立つだ ろう。これを使えば、Now Utilities や OpenDoc のような複雑な組み合わ せのある一部に関係あるものすべてを割り出したり、オン/オフにしたり することができるのだ。ソフトウェアベンダーは、システムの機能拡張を それせれどのパッケージに属しているかをはっきりさせることができるも のに変更しなければならないが、すでにこの情報を持ったシステムコンポー ネントは意外なぐらい存在する。Extensions Manager 4.0 は、Casady Greene 社の Conflict Catcher のように機能拡張のコンフリクトをつきと めることはできないが、機能拡張の構成を詳しく書き並べたテキストファ イルをエクスポートしてくれる。

その他にも Mac OS 7.6 には、新しい便利なアイテムが少々入っている。 Desktop Printing 2.0.2 を使えば、デスクトッププリンタをデスクトップ からフォルダ内へと動かすことができる。新しいコントロールストリップ モジュールからデスクトッププリンタを選んだり、(LaserWriter 8.4 が 必要になってくるかどうかはっきりしないのだが)印刷のダイアログボッ クスで切り替えることもできるようになる。また、Talking Alerts という Speech Control Panel の中に潜んでいる機能がある。これは、 Text-to-Speech を使って、設定した時間以降に画面に表示される警告の ダイアログを読み上げてくれるものだ。視覚障害のある人や部屋越しに Mac に叫んでもらいたい人にとっては便利な機能かもしれない。残念ながら、 この Talking Alerts は、モーダル警告メッセージしか読み上げてくれない。

また、Macintosh の画面のスナップショットを撮ることができる古めかし い FKEY(PictWhap)がアップデートされた。Command + Shift + 4 にはも はやプリンタに画面のキャプチャを送る機能はない。このキーの組み合わ せにより画面の一部を選択してファイルとして保存できるようになってい る。さらに、Caps Lock がかかっていれば、カーソルが標的のような形状 になり、ク リックできるウインドウならどれでもそのウインドウの画面 キャプチャを撮ることができる。Command + Shift + 3 というキーの組み 合わせは以前と同じように画面全体の画像を撮るのに使用する。しかし、 (どちらのキーの組み合わせでも)コントロールキーを押していると、起 動ディスクの最上階層にファイルとして保存する代わりにクリップボード にその画像を取り込む。こういった機能は Nobu Toge 氏の由緒あるシェア ウェア Flash-It のようなスクリーンショットユーティリティに匹敵する ものではないが、あらゆる場面でテクニカルライターに重宝されるだろう。

<ftp://mirror.aol.com/pub/info-mac/gst/grf/flash-it-302.hqx>

Mac OS 7.6 には低レベルの変更が数多くある。PowerPC と68040 の Mac は 2 テラバイトを超える大きさのボリュームをサポートし、以前の多くの アップデータやシステム機能拡張がシステムファイルに取り込まれ、アッ プルイベントが 64K 以上のデータを扱えるようになり、システム全体にわ たる改良により安定性がかなり向上した。2 つのメモリ管理の変更に注意 しておこう。ひとつは、Connectix 社の MODE32 を以前に使用していた 24-bit マシン(Mac II、IIx、SE/30 および IIcx)は Mac OS 7.6 ではサ ポートされない。同様に Plus、SE、Classic、Portable、LC、PowerBook 100 といった 68000 または 68020 プロセッサを搭載した機種もサポート されなくなった。また、PowerPC 搭載 Mac は Mac OS 7.6 ではモダンメモ リマネジャを使用しなければならない。古い 68K メモリマネジャのサポー トはもはやなされていない。

ユーザーは、Macintosh という表示が Mac OS という文字に変更されつつ あり、なじみのある About this Macintosh が About this Computer と なっていることに気付くだろう。同様に、愛着のある Welcome to Macintosh はより現代的な(そしてより一般的な)Mac OS のロゴにおいや られて、起動時の最初に表示されるだけになっている。

取り入れられていないもの -- Mac OS 7.6 には Mac OS Runtime for Java (MRJ) がない。これは OS の年 2 回のアップデート計画を発表した とき Apple 社が約束したものだ。Apple 社は MRJ1.0 for PowerPC をやっ と完成した。68K 機種用のバージョンはもうまもなくであると約束している。

<http://www.applejava.apple.com/>

Mac OS 7.6 は、Apple 社の先駆的ではあるがいまや死にかけの電子メール とワークグループソフトの PowerTalk をもはやサポートしない。PowerTalk の機能を必要とするなら、現行のシステムを使い続けるしかない。プログ ラマやパワーユーザーは Mac OS 7.6 では、まだ一般には入手不可能な MacsBug 6.5.4 を必要とすることにも注意するべきだ。

Mac OS 7.6 のもっとも重大な欠点は CFM-68K がサポートされていないこ とだ。CFM-68K 機能拡張は、OpenDoc、CyberDog、LaserWriter 8.4、Apple Media Tool、AOL 3.0、Internet Explorer 3.0 といった現行のアプリケー ションの中のわずかなソフトを動かすために 68K Mac が必要とするもので ある。Apple 社は最近 CFM-68K に深刻なバグを発見し、68K Mac の所有者 にこれを使わないように勧告している( TidBITS-356 を参照)。Mac OS 7.6 には CFM-68K に依存するソフトウェアを走らせるためにリスクを負っ てでも CFM-68K を使用するオプションすらない。幸いにも、Mac OS 7.6 上の CFM-68K のテストはデベロッパー向けの段階にまできており、まもな くパッチが入手可能になるだろう(Apple 社は現在、2 つの潜在的な修正 をテストしている)。

入手法 -- Claris 社から直接 Mac OS 7.6 を購入することができるのだ が、まもなく(メールオーダーやオンライン販売を含めた)従来の販売経 路でも入手可能になるようだ。Claris 社から購入すると、Mac OS 7.6 は CD-ROM 版で 99 ドル、FD 版では 129 ドルである。System 7.5(System 7.5 のパッケージそのもの、あるいは System 7.5 がプレインストールさ れた本体)を購入したことが証明できる場合、69 ドル(FD 版なら 99 ド ル)でアップグレードできる。7.6 がプレインストールされていない Mac を最近購入した場合、Apple 社の Mac OS Up-To-Date プログラム(詳細は 以下の URL)により 24 ドルでアップグレードできるようだ。上記の価格 には輸送料金、手数料、税金は含まれていない。Claris 社からの 69 ドル の CD-ROM アップグレードは合計で 80 ドル以上になるだろう。

<http://www.macos.apple.com/macos/releases/fulfillment.html>

今回、我々は Mac OS 7.6 の各国版の入手についての情報を得ることができな かった。

Mac OS 7.6 を買うべきか? Mac OS 7.6 はもっと低価格であったら良 かったと思う。Apple 社にはアップグレード価格を引き下げることを(あ るいは、法人ではないユーザー向けに購読形式価格導入を)再検討しても らいたいものだ。Power Macintosh を所有していたり最新鋭のアプリケー ションを使うことが好きなユーザーには、Mac OS 7.6 は有益である。現在 の状況に満足していたり、68K Mac を所有しているユーザーは、Mac OS 7.6 を無理に使わずに、7 月に出荷が予定されている Tempo を待つのがよいだ ろう。しかし、研究室を管理していたり多くの Mac を管理している場合、 System 7.6 の一括インストーラによって実時間の節約ができることを体験 することになるだろう。


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