TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS-J#366/17-Feb-97

Mac OS は最も扱い易いオペレーティングシステムと言えるだろう。とはい え、秘密のベールに包まれた部分がまだまだあるだろうことはビギナーで も薄々感じている。David Pogue 氏と Joseph Schorr 氏の共著本では、そ の Mac の内部機構を探索している。また、Geoff Duncan は Apple 社が発 表した新型 Macintosh のリポートを、Matt Neuburg は Canvas 5.0.1 の レビューを、そして Jeff Carlson からは Ricochet Wireless Modem を 使ってお気に入りのカフェからインターネットを探検した話をお届けする。

目次:

Copyright 1997 TidBITS Electronic Publishing. All rights reserved.
問い合わせは <info@tidbits.com> へ、感想は <editors@tidbits.com> へ。

TidBITS 日本語版は以下のメンバーのボランティアによって翻訳・発行されています。
Kaz Yoshikawa <kaz@fact.com>
井ノ本琢也  <inomoto@helix.mgh.harvard.edu>
尾高 修一  <odaka@iprolink.ch>
尾高 里華子 <odaka@iprolink.ch>
小山 純一  <vb4j-oym@asahi-net.or.jp>
加藤 たけあき<oiso@wolfenet.com>
米谷 仁志  <comet@po.iijnet.or.jp>
齊藤 聡   <akkun@ca2.so-net.or.jp>
杉浦 雄一郎 <ysugiura@direct.ca>
高島 均   <hitak@can.bekkoame.or.jp>
西村 尚   <hisashin@st.rim.or.jp>
水木 潔   <HGH03125@niftyserve.or.jp>
村上 浩   <murasan@yk.rim.or.jp>
矢倉 遠十吉 <oto@mb.infoweb.or.jp>
山浦 礼子  <raeko@bnn.co.jp>

今回の TidBITS のスポンサーは:


MailBITS/17-Feb-97

(翻訳:村上 浩 <murasan@yk.rim.or.jp>)

QuickTake 200 -- Apple 社は QuickTake 200 を発表した。これで同社 も暫くはデジタル写真業界の流れに取り残されずに済む。QuickTake 200 は、ファインダーと写真表示を兼ねた 1.8 インチ LCD ディスプレイに加 え、NTSC ビデオ出力やビデオ会議用カメラとしての機能も備えている。写 真は着脱可能なメモリカードに取り込まれる。バンドルしてある 2 MB の カードなら約 20 枚の高品質画像が保存可能だ。このカメラには Adobe PhotoDeluxe と PageMill が付属しており、3 月初めに約 600 ドルで発売 の予定。 [GD]

<http://product.info.apple.com/pr/press.releases/1997/q2/ 970217.pr.rel.quicktake200.html>


Apple 社、Mac の新機種を発表

by Geoff Duncan <geoff@tidbits.com>
(翻訳:齊藤 聡<akkun@ca2.so-net.or.jp>)

今日、Macworld Expo Tokyo において、Apple 社は Mac の新機種を発表し た。それは、現存する Mac を低速機種にしてしまい窓際に追いやってしま うようなもの、Mac 互換機市場を狙ったもの、そして一部の PowerBook ユーザーの顔を青ざめさせるかもしれないものである。

<http://product.info.apple.com/pr/press.releases/1997/q2/ 970217.pr.rel.products.html>

Power Mac -- ハイエンド市場には、Power Macintosh 9600/233、 9600/200MP が登場する。これは Apple 社の 9500 シリーズの 604e プロ セッサをより高速なものに置き換えたものである。新しい 9600 シリーズ は 12 倍速 CD-ROM ドライブ、4 GB のハードディスク、32 MB の RAM、512 K レベル 2 キャッシュ、6 基の PCI スロット、10Base-T Ethernet、高性 能を誇る IMS 社の Twin Turbo 128 M4A ビデオカードを搭載している。同 じように、新しい Power Mac 8600/200 は 8500 の高速版である。これは 12 倍速 CD-ROM、32 MB RAM、8500 と同じビデオ入出力機能、内蔵 Zip ド ライブを搭載している。9600/233 は 5 月から 4,250 ドルで購入できるよ うになる。9600/200MP と 8600/200 はそれぞれおよそ 4,750 ドルと 3,250 ドルで 3 月から購入できるようになる。

より現実的なものには 2,300 ドルから 2,800 ドルの価格帯の Power Mac 7300 がある。7300 は 7200 や 7600 といった中位機種を置き換えるもの であり、180 MHz や 200 MHz で稼働する 604e プロセッサ、16 または 32 MB のRAM、12 倍速 CD-ROM ドライブ、2 GB のハードディスク、256K のレ ベル 2 キャッシュ、3 基の PCI スロット、10Base-T Ethernet を装備す る。また、7300 では 7000 シリーズのマザーボードへの容易なアクセス性 をもった内部設計にセキュリティ機能も追加した。内部コンポーネントへ のアクセス性さらに良くなっているようだ。明らかに、一部の CPU カード の熱問題により 7300 の出荷は遅れていたが、伝え聞くところでは、 Apple 社は 3 月初旬には入手可能になるだろうとディーラーに話したということ である。

<http://www.macweek.com/mw_1107/nw_delay.html>

9600、8600、7300 が主要な機種であるなら、安価な Power Mac 4400 は Apple 社の新しい方向性をもった機種である。Mac 互換機と直接競合する かのように設計された 4400 は 200 MHz の 603e プロセッサ、16 MB の EDO RAM、8 倍速 CD-ROM ドライブ、2 GB の IDE ハードディスク、2 基の PCI スロット、256K のレベル 2 キャッシュ、10Base-T Ethernet(Comm II スロットに挿したカードを経由する)を装備する。4400 は互換機メー カーが使っている Tanzania マザーボードをはじめて使用した Apple 社の 製品であり、(互換機のように)Apple 社製ではない 筐体やスイッチのな い 電源ユニットといった PC の世界の安価な部品を流用している。他のモ デルと異なり、4400 はほとんどソフトウェアがバンドルされていないが、 価格はおよそ 1,700 ドルであり、同じような構成の Mac 互換機と同じ性 能であるから、4400 はよく売れるかもしれない。

Power Mac 9600 と 8600 は内部コンポーネントに容易にアクセスできるよ うに振り分け式の筐体を新たに採用している。また、9600、8600、7300 は 交換可能な CPU ドーターカードを採用している。これによりマシン全体を 交換することなく CPU をアップグレードできる。これらの新機種は、 System 7.5.3 がプリインストールされて出荷される 4400 を除き、System 7.5.5 がプリインストールされて出荷される。Apple 社はこのすべての新 機種で、4 月に登場する予定の Mac OS 7.6.1 が稼働するだろうと言って いる。これら新機種すべてにキーボードとマウスが付属する。

PowerBook 3400c -- Apple 社は高速でハイエンド用途向けの PowerBook 3400c についても発表した。3400c は 180 から 240 MHz の 603e プロセッ サ、16 MB の RAM、256K のレベル 2 キャッシュ、1.3 GB から 3 GB の IDE ハードディスク、オプションとして 6 倍速から 8倍速の CD-ROM ドラ イブ、内蔵 33.6kbps fax モデム、10Base-T Ethernet、12.1 インチのア クティブマトリックス液晶画面を装備している。 PowerBook 3400c はまた 電源を入れたまま交換可能なドライブベイ(フロッピーディスクドライブ や CD-ROM やその他のデバイス用)、タイプ II 2 枚かタイプ II 1 枚の PC カードを装備できるスロット、赤外ポート、4 スピーカーサウンドシ ステムを装備する。未確認だが、3400c は非常に格好がよく、高クロック スピードであり、32 ビット PCI バスを持ち、高速なビデオ回路を持って いるという。しかしながら、7.5 ポンド(訳注:約 3.4 kg)という重量 と、4,500 ドルから 6,500 ドルという途方もない金額のために、PowerBook 3400c は万人向けとは言えない。3400c の 180 MHz および 200 MHz 版は 今週にも入手可能であり、240MHz 版は 4 月には登場する予定である。

対応 -- Macintosh 互換機メーカーは、Apple 社が新機種で互換機メー カーのパイをを盗むのを放っておくだろうか? ありそうもないことであ る。 Apple の新しいモデルに対応して、互換機メーカーが新しいモデルを 発表することと共に、価格を引き下げることを期待しよう。また、Apple 社の新機種が販売ルートに乗りはじめたら、製造中止になった 7600、 8500、9500 の安売りに注意を向けておこう。


Macworld Mac Secrets(第 4 版)

by John Nemerovski <johnemer@tmug.com>
(翻訳:尾高 里華子 <odaka@iprolink.ch>)

私は、新しい Macintosh 本を手に取ると、すぐに使える貴重な情報を即座 に見つけることができるかどうかでその本の善し悪しを判断する。David Pogue 氏と Joseph Schorr 氏の著書、『Macworld Mac Secrets(第 4 版)』は、次の点で合格点だといえよう:

この本の中で、“奥義”という言葉にあてはまるのは三分の一で、残りの 三分の二は、Macintosh 全般の役に立つ基本的知識と、楽しくかつ有効に Mac を使うための Tips であり小技である。

金額に見合うだけの大きな本 -- 『Mac Secrets』は、(1,208 ページに およぶ)膨大な本と、(550 MB の)CD-ROM、本とバンドルソフトを更新す るための Web サイトの三部立てになっている。この第 4 版には、Mac OS 7.6 の新しいインストーラーのリファレンスというまさにホットなものと、 そして皮肉なことに、Apple 社と Be 社との合併の噂が書かれている。

<http://www.idgbooks.com/idgbooksonline/macsecrets/>

この本の著者は、“何も変えずに、全てを新しく”をモットーにこの第 4 版を書いた。書籍サイズや雰囲気は旧版のものを受け継いでいるものの、 以前よりもすっきりとして、さらに読みやすくなった。CD の方は、第 3 版ではカスタムフォルダアイコンを使っていたが、今回は“味気なく、つ まらない、普通の”フォルダに変り、すみやかに開くことができるように なった。

Pogue、Schorr 両氏は、多彩な手法を用いてこの本を書いている。オーソ ドックスな文のあちらこちらに時折対話形式の表現を織り混ぜている。奥 義や本当の事、事例、“Answer Man”の解答などのミニコーナーもある。 また、スピード Tips、専門的な話、CD に収録、奇妙な事実、耳寄りな情 報などには黒ポチが付けてある。例えば、試してみるに値する Tips とし ては、“極上のトラブルシューティングの法則:クリーンインストール” というものがある。ここでは、今まですべての Mac システムソフトに関し て、既存のシステムの上に上書きインストールではなく、ゼロからインス トール事のメリットが書いてある。

第 4 章は、コントロールパネルと機能拡張のミニ百科事典のようになって いて、“究極の機能拡張関連ガイド”などがある 30 ページの素晴らしい トラブルシューティングの章である。用語解説や索引部分もかなりの量で、 専門用語、概念、奥義そのものを探し当てたり、理解する上で役に立つ。

ただの本に在らず -- これは、本と言って良いのだろうか、それとも、 ソフトウェアパッケージと言うべきだろうか ? この二人の著者たちは、 “自分たちが、調べ事やこの本を書くために惜し気もなく膨大な時間をつ ぎ込んだにもかかわらず、読者にとっては、付属のソフトウェアの方がメ インに見えるかもしれない”と考えている。実際、全部で 110 に及ぶシェ アウェア、フリーウェア、商用プログラム、デモが、CD-ROM に納まってお り、本の方でもこれらのソフトウェアの説明に 58 ページを割いているの だ。

以下のような非常に実用的なものが収録されている:CanOpener、Claris Emailer、 DiskFit Direct、TechTool、TypeIt4Me、Remember?、Cyberdog、 OpenDoc、QuickTime 。この CD は、まさにソフトウェアライブラリであ り、この本の Web サイトを通じて最新の状態にしておくことができる。 (アップグレードや商用アプリケーションをフルバージョンにするための 割引券も付いている。)

CD では、収録ソフトのエイリアスが、章、種類、作者などのグループ別に それぞれ整理されて入っており便利である。本の全テキストが、検索ので きる Adobe Acrobat フォーマットで CD に収録されている。

『Macworld Mac Secrets』には、大量の Mac の奥義が詰まっているが、本 に書かれていない奥義がまだあることは間違いない。この二人の著者は、 公表されていない Mac の奥義のベスト 50 を選ぶコンテスト '97 を行っ ており、優勝賞金は 500 ドル、入賞者には記念の本が贈られる。

<http://www.idgbooks.com/idgbooksonline/macsecrets/secretscontest.html>

『Macworld Mac Secrets』は、自分の蔵書に加えるにしても、贈り物にす るにしても、非常に役に立ち、値段に見合うだけの価値はある。特に中級 者レベルの Macintosh ユーザーにこの本をお薦めしたい。

    Macworld Mac Secrets(第 4 版)、David Pogue 氏・Joseph
Schorr 氏共著、ISBN 0-7645-4006-8、44.95 米ドル、62.99 カナダドル.
    IDG Books Worldwide, Inc. -- 800/762-2974 -- 800-667-1115
(Canada) -- <international@www.idgbooks.com> (international)

もうしばられることはない : Ricochet Wireless Modem

by Jeff Carlson <jeffc@tidbits.com>
(翻訳:高島 均 <hitak@kk.iij4u.or.jp>)

筆者は“喫茶店コンピューティング”の大ファンである。でもこれは、コー ヒーの染み着いた機器が用意され待ち受けるサイバーカフェや、開かれた ラップトップマシンが偽ギークたちを上品に見せる流行の喫茶店チェーン に出向いていくということではない。PowerBook とともにお気に入りの喫 茶店に座ってちょっとした書き物をする、といった話である。ほとんど毎 日をコンピュータのスクリーンの前で過ごしているので、周りの壁や雰囲 気を変えることが心地良いのだ。

だから Metricom 社の Ricochet Wireless Modem のことを聞いたときは、 わくわくしたのだった。電話のジャックやケーブルから解放されて、一日 中を喫茶店で過ごし、電子メールを送受信し、Web を探索し、Apple Remote Access で仕事場のサーバに電話することさえできてしまうのだから。ユー トピアを偶然見つけたのだろうか?そう、あと一歩のところまでは。

<http://www.ricochet.net/>

ケーブル接続からの解放 -- Ricochet モデムは、小さくて黒くて四角い 約 370 グラムの機器で、Mac のシリアルポートに繋ぐコードが付いてい る。コードはわずか 15 センチ程の長さで、付きまとわれる心配をする必 要がない。デスクトップマシンで Ricochet を使うなら、オプションの約 3 メートルのケーブルを買ったほうが良いだろう。同梱されるマジックテー プを使って PowerBook のカバーに取り付けることもできる。ただ、筆者は 愛車のバンパーのステッカーにも神経質な人間なので、マジックテープは 箱の中に置いたままにした。一式にはさらに AC アダプタ、Ricochet ソフ トウェア、MacPPP、 Netscape Navigator 2.0 を納めた 2 枚のディスクの ほか、マニュアルが付いてくる。

月額 29 ドル 95 セント(基本サービスコース)で、Metricom 社のサーバ を通じ時間無制限のインターネットアクセスと POP メールのアカウントを 手にすることができる。モデムのレンタルにさらに月額 12 ドル 50 セン ト必要だが、 299 ドル(12 か月のサービス利用に契約する場合)かまた は 599 ドル(インターネットアクセスはいらないが、Ricochet を通じた イントラネットや LAN、同室の人同志で接続するためにモデムを必要とす る場合)で買い取ることができる。さらに、月額 25 ドルで後に買い取り 可能なレンタル契約をすることもできる。筆者は、Ricochet がやがてさら に小さく軽くなるはずと思い、基本レンタルを選択した。追加料金は追加 サービスを提供する。すなわち、おすすめコースだと Telephone Modem Access (TMA) が含まれており、これによって電話番号を通じてのみ利用で きるサービス(他のインターネットサービスプロバイダや BBS など)にダ イヤルすることができる。また、エリートコースには(POP メールに代わ る) cc:Mail のアカウントとソフトウェア、TMA、 Ricochet のサービス エリア外からのメール受信用ダイヤルイン、そして外部へのファックス送 信(通常でページ当たり 50 セントと高料金だが)などが含まれてくる。

<http://www.ricochet.net/order/pricing/metro.html>

Ricochet サービスの最大の制約はそのサービス対象エリアで、これは、シ アトル市、サンフランシスコ市ベイエリアの大部分、ワシントン市に限ら れている。Metricom 社が需要に見合うよう必死になって対象エリアを拡大 しようとしているとの情報を得てはいるが。

<http://www.ricochet.net/coverage/index.html>

しかしながら、対象エリアの拡大は必ずしも簡単ではなく、大量のインフ ラと市行政当局の協力を必要とする。対象となっている市のいずれかに住 んでいるとしたら、たくさんの街灯に箱状の付属物が取り付けられている のに気付くだろう。これらの“マイクロセル受信機”が Ricochet モデム からの信号を受信し、周波数ホッピングと呼ばれる技術を使ってライセン ス不要の無線周波数帯域(902-928 MHz)の範囲内で他のマイクロセルへと 伝達していくのだ。無線パケットはやがては Wired Access Point (WAP) に届けられ、ここから T1 接続された Ricochet のサーバへと転送される。 マイクロセルは碁盤目状におよそ 400 から 800 メートルの間隔をおいて 配置され、街灯や多目的柱に取り付けられている。これらの装置を設置す るには、ほとんどの場合問題ないものの、市当局の承認が必要だ。ところ が、例えばサンフランシスコ市の大部分のようにこの承認が未決定のまま 目下のところ空白となってしまっている例もある。

Ricochet を使う -- ソフトウェアのインストールは驚くほど簡単であ る。筆者はまず TCP/IP の設定のバックアップをとったが、Ricochet のイ ンストーラにはその用意周到はやり過ぎだったようである。というのは、 TCP/IP の情報は新しい設定として記録され、アクティブとなるからだ。再 起動すれば準備完了だ。

Ricochet の電源スイッチは本体の側面についている。モデムの電源を入れ るにはアンテナを回して除ける必要がある。これは不意にスイッチが入っ てバッテリを消耗することを避けるための工夫だ。スイッチには 3 段階あ り、切、入/無音、入/有音である。もし大方のモデムから発生する故障 した R2D2 のような金切声に慣れているなら、Ricochet の優雅な小鳥の鳴 き声は歓迎すべき違いだろう。作動状態にすると、Ricochet が手近なマイ クロセルからの信号を探していることを示す赤いランプが付き、ランプが 緑に変われば PPP でダイヤルできる状態になって、接続されればランプは 黄色に変わる。

接続が完了すればインターネット体験は有線接続の場合と同様である。 Metricom 社では Ricochet は 14.4 Kbps から 28.8 Kbps の範囲で作動す ると広く(そして賢明にも)発表している。つまり、超高速というわけで はないものの、セルラー電話/モデムによる接続よりはましといったとこ ろだ。オフィスを離れているときにインターネットにアクセスする必要の ある人にとっては、スピードを抜きにしても Ricochet の利用はメリット があるだろう。筆者の経験では場所によってはそのスピードが低い領域あ たりで止まってしまうことがあった。マニュアルでは、屋外または窓際で の使用及びステレオスピーカーなどの支障となる障害物から離すことを推 奨している。

Ricochet のバッテリは保証のとおり 4 時間から 6 時間ほどもち、この点 は申し分ない。Metricom 社の Web サイトにある Tips を発見する前に不 意に何度かバッテリを使い切ったことがあったが、このチップによれば、 このモデムは Zterm のような通信プログラムを起動して "ATS327=3" とタ イプすればスリープさせることができるのである。"ATS326=x"(x は分の 数でデフォルトでは 10 分)とやればスリープさせる前にスリープ継続時 間数を設定することも可能だ。

ワイルドなワイヤレス法 -- Ricochet を数時間使ってみて、ワイヤレス コンピューティングの概念にすっかり慣れてしまった。突然、電話会社や 有線アクセスと深い関係を持つという着想が旧式で時代遅れであるように 思えてきた。過去を振り返り有線接続に頼っていたことを笑えるまでには まだ数年を必要とするに違いないが、確かに無線によるインターネット接 続は来るべき方法である。それまでの間、インターネットへのモバイルア クセスを必要とするユーザーは、Ricochet が増大するポータブルコン ピュータ製品ラインナップに非常に貴重なものとして加わることを見い出 すだろう。

皮肉なことに、Ricochet を堪能はしたものの、もはやそれが筆者と共にな いことを白状しなければならない。それを入手した主な理由の一つに、喫 茶店で使うという特典のほか、仕事場及び自宅での 2 つ目の電話回線のよ うに使いたいということがあった。ところが、自宅ではそのスピードが常 に遅かったこと(と仕事場では ISDN 回線が設置されたこと)から、もう 少し低廉な方法を採り自宅のアパートに 2 つ目の電話回線を引くこととし たのだ。率直に言って、月々 42 ドル 50 セントはちょっとばかり贅沢で あって、それで Ricochet を返品したのだ。とはいっても、喫茶店コン ピューティングの主唱者であることに変わりはないし、将来また入手する ことにためらいはない。さしあたりは、お気に入りの喫茶店で他の人が Ricochet を使っているのを羨ましがるのに甘んじることとしたのである。


Deneba 社のマイクロソフト化: Canvas 5.0.1

by Matt Neuburg <matt@tidbits.com>
(翻訳:尾高 修一 <odaka@iprolink.ch>)

私は芸術家ではないが、時には図や絵を書いたりする必要に迫られる。そ して、初めて MacPaint と MacDraw を使った時の驚きと喜びが私に Macintosh の印象を刻印したと言っても過言ではない。私は長年この二つ の機能を併せ持った SuperPaint のファンだった( TidBITS-112 参照) が、SuperPaint は“進歩”とともに重たくなり、ニュージーランドの庭の 図を描いた時には、使いにくく、印刷もまともにできないし、画面の再描 画も遅かった。私が Canvas 3.5 に乗り換えたのはこの時だ。

これまでの経緯 -- 1987 年に登場した Canvas は一種のカルト的な人気 があった。Canvas はドローもペイントもこなし、精確さや複数のレイヤー で SuperPaint をはるかに凌いでいたほか、コンポーネント化されたアー キテクチャにより、テキストをパスに沿わせたり、寸法表示を追加するな どの新しいツールの組込みが可能だった。しかも速くて強い。一番の驚き は、膨大な数のファイルフォーマットを扱うことができたことだ。

Deneba 社が Canvas に大幅な改良を加えて一気にバージョン 5.0 とする ことを発表したとき、我々ユーザーはほくそえんだ。選択は正しかった! しかし、期待はなかなか満たされなかった。毎月のように Canvas 5.0 の 広告が現れ、1995 年 8 月 と 1996 年 1 月の Macworld Expo でプレ ビューされたにもかかわらず、製品は現れなかった。ようやく 1996 年 8 月の Expo で“出荷”された。とうことは、9 月末か 10 月になってユー ザーの手元に届き始めたのである。

オンラインコミュニティでは絶望の声がひびきわたった。ユーザーはクラッ シュ、誤作動、遅い再描画、異常に大きなファイルサイズ、印刷不能、PICT へのエクスポート不能、3.5 からのインポート不能などの不満を口にした。 私が 5.0 を使った最初の作業だった家の間取り図は見るにも無残な失敗 だった。寸法表示はめちゃくちゃで、回転させたテキストは StyleWriter で印刷できなかった(3.5 に戻したら問題なく印刷できた)。Deneba のカ スタマーサポートサーバは完全に飽和状態だった。メールを送ると数日後 に自動応答メッセージが送られてきて、人間が回答してくれるのはうまく いけば数週間後、悪ければ梨の礫だった。これだけ待ったあげく、5.0 は まだ本物ではなかったのだ。

11 月に 5.0.1 アップデータが登場した。1 月には新たなインストール CD が出荷された。私が経験していた印刷の問題は Apple の Color StyleWriter 1500 用ドライバを使うようにしたら消えてなくなった (Deneba がくれたアドバイスはすべて無駄だった)。ようやく騒ぎが落ち 着いてきたのだ。

機能 -- 公約通り、Canvas 5.0.1 は大幅な進歩を遂げ、ユーザーが個別 に購入しなければならないようなアプリケーションの機能を一つのプログ ラムとしてまとめ上げている。

色の濁り -- 残念なことに、Deneba は決定的に不愉快なユーザーイン ターフェースを作り上げてしまった。移植されたクロスプラットフォーム 製品の雰囲気がいたるところで感じられる。ヘルプファイルは Microsoft Help に似ているし、ダイアログには Mac らしからぬルック フィールが あるし、画面の下部にはステータスバーがあるし、3.5 にあったスクリプ タビリティは完全に失われているし、時々無意味なエラーメッセージが表 示される。インストールは悪夢そのもので、いくつもの正体不明のファイ ルが System フォルダに投げ込まれる。マニュアルは 3.5 の 900 ページ もの塊ではなくなっているのは評価できるが、使いにくく、繰り返しが多 く、Windows と Mac 用の 2 種類のイラストと説明がくどい。

問題の一部はつきつめればスピードということになる。私のマシンでは Canvas 5.0.1 はたまらなく遅い。私が LC 475 を使っているのは事実だ が、それでも FPU は無いものの 68040 プロセッサを搭載している。3.5 なら快適に使えるし、ネットからの情報によれば Power Mac ユーザーでさ え 5.0.1 を重いと感じているようだ。

画面の再描画は驚異的に遅い。しかも、最も不適切な時に勝手に再描画し ようとしてくれる。たとえば、パレットに少し触った時。一つのオブジェ クトに何らかの操作を加えた時。全然画像を覆っていないフローティング ウインドウをスクロールした時。別のアプリケーションから切り替えると、 画面の一部が再描画され、次にフローティングパレット、次に画面全体が 再びゆっくりと描き換えられることがある。これ以外にも、画面が操作の 途中で突如として消えるか正しく描き換えられず、強制的に再描画させ、 またまた待たされるということも頻繁に起こる。

操作によってはマシンを完全にフリーズさせたように見えることがあった。 ステータスバーにメッセージが現れず、ポインタも時計にならず、メニュー バーの時計も動かず、クリックにも反応せず、別のアプリケーションに切 り替えることもできない。私はプログラムがクラッシュしたと思って何度 もマシンをリスタートことがあったが、ほとんどの場合は実際に何らかの 計算が行われていたらしい。そのことを表示してくれれば良いものだが。

筆を選ぶ -- 基本的なツールにはそれほど改良は加えられていない。全 体として、肉体的にも精神的にも不便で使いにくい。

たとえば、選択ツールは貧弱だ。クリックするか長方形を描くことしかで きないので、特定のベクターアイテムを選択するのは難しいし面倒でもあ る。

ベジェ曲線ツールでは、描いたり選択している最中に何が起きているのか は、顔をモニタにへばりつけても見にくい。また、新しい曲線を描くのは 異常に難しい。最初のポイントと曲線を描いた後、見にくいポイントだけ が残って曲線は消えてしまうので、2 番目のポイントと曲線を描いたらど んなことになるのかを想像するのは困難だ。(こうしてポイントを描いて いくと、最後に描いたポイントと曲線は表示されるので、2 番目のポイン トを描く時にだって表示しても良いではないか?)ポイントやハンドルを選 択するためのキーボードショートカットは用意されていないので、目視で 探さねばならず(これが難しい)、その真上でクリックしなければならな い(これまた難しい)。こういったツールに多少は改良が加えられている。 新しいポップアップメニューは、モディファイアキーを押しながらのクリッ クといったいくつもの組み合わせを憶えるのと比べたら進歩だが、基本的 な機能の欠如を埋め合わせるだけのものではない。

ペイントツールを使う際も、何をしようとしているのかを見ることはでき ない。使っているブラシの大きさや形に関係なく、いつも同じ小さなアイ コンとして表示されるので、マウスでクリックしたらどんなことになるか は想像する以外にない。これは 3.5 からは大きな後退だといえるだろう。

どのオブジェクトについても、ある時点での設定がどうなっているかを調 べるのは難しい。たとえば、オブジェクトを選択した後に線ツールをクリッ クしても、そのオブジェクトの線の太さは表示されない(パレットをテア オフして、選択されたアイテムが見つかるまでスクロールしなければなら ない)。オブジェクトのペンや塗り潰しがインクパレットで選択されるわ けでもない。あるオブジェクトの設定とデフォルトの設定の違いもわかり にくい。

結論 -- Canvas 5.0 は情けないほどバグや不具合が多かった。Deneba が 5.0.1 でフィックスや変更したとする点のリストを見ると、いかに多 かったかがわかる(しかもこういったリストはわざと短くしてあるものだ)。

<http://www.deneba.com/dazroot/softlibs/canvas5/resolved.html>
<http://www.deneba.com/dazroot/softlibs/canvas5/changes.html>

Canvas 5.0.1 ははるかに安定して動作するが、依然として重く、役に立た ず、不親切だ。特に画面の再描画の遅さは犯罪的だ。私はプログラムが画 面全体をビットマップとしてキャッシュするだけの RAM が余っているし (ディスクにページングしても今の状態よりはずっと速いに違いないが)、 いずれにしても画面上にある 50 ほどのオブジェクトのうちの一つの色を かえただけですべてを描き換えなければなければならない理由はない。こ のバージョンの Canvas が使えるものになるには、画面の再描画と基本的 なドローとペイントツールのインターフェースが根本的に考え直されなけ ればならないだろう。

一方、Deneba は現行製品のリストから Canvas 3.5 を落とさないでいる。 これは賢明だろう。

<http://www.deneba.com/dazroot/prodinfo/canvas5/cv5main.html>


非営利、非商用の出版物およびウェブサイトは、フルクレジットを明記すれば記事を転載またはウェブページにリンクすることが できます。それ以外の場合はお問い合わせ下さい。記事が正確であることの保証はありませ ん。書名、製品名および会社名は、それぞれ該当する権利者の登録商標または権利です。TidBITS ISSN 1090-7017

tb_badge_trans-jp2Valid HTML 4.01!Another HTML-lint gateway