TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS-J#388/14-Jul-97

道を間違えたと感じている読者はいるだろうか? 人生における現在位置を いぶかっている方は? 今週は、当初軍事目的や測量に用いられ、今では消 費者に使われている Global Positioning System (GPS) テクノロジーを探 求。また Gil Amelio 氏と Ellen Hancock 氏の Apple 退社にまつわるコ メント、そして HTML の新バージョンのレポート、新しくリリースされた Disinfectant 3.7.1 についての短信を掲載。今週 Tonya は Web パブリッ シングソフトウェアの連載を休み、来週再開の予定。

目次:

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MailBITS/14-Jul-97

(翻訳:小川 浄 <HGB00351@niftyserve.or.jp>)

Disinfectant 3.7.1 -- 先週 Disinfectant 3.7 をリリースしたばかり の John Norstad 氏は早くも Disinfectant 3.7.1 をリリースした。あま り一般的でない形式の大きなリソースファイルをスキャン中にクラッシュ を起こす可能性を修正したもので、これは新種のウィルス発見に対応した リリースでは ない 。バージョン 3.7 を使用してスキャンに異常がなけ れば、バージョン 3.7.1 は必要なしと思われる。

<ftp://ftp.acns.nwu.edu/pub/disinfectant/disinfectant371.sea.hqx>

Northwestern 大学の FTP サーバの反応が重いのに困惑したという指摘が 2、3 の読者から先週届いた。同サーバは 20 名の FTP ユーザーに同時に 対応できるようになっているが、Disinfectant の新版リリースは過大なト ラフィックを発生させたようだ。エラーが出たら FTP ログのメッセージを チェックし、数分後にもう一度試すとよい。また Disinfectant は Info-Mac ネットワークのようなミラーサイトからも入手可能である。 [GD]

<ftp://mirror.aol.com/pub/info-mac/vir/disinfectant-371.hqx>


Amelio 氏、Hancock 氏 Apple を去る

by Geoff Duncan <geoff@tidbits.com>
(翻訳:小川 浄 <HGB00351@niftyserve.or.jp>)

97 年 7 月 9 日、Apple Computer 社は Gilbert Amelio 氏が Apple Computer 社社長および CEO を辞すると発表した。Amelio 氏は 96 年 2 月に Michael Spindler 氏の後を継いで Apple 社の CEO に着任したので 17 ヶ月をわずかに上回る在任期間になる。技術担当執行副社長 Ellen Hancock 氏も辞職を表明した。同氏は一年ほど前に Amelio 氏に続いて National Semiconductor 社から Apple 社に転職した人物である。

<http://product.info.apple.com/pr/press.releases/1997/q4/ 970709.pr.rel.amelio.html>

今回これまでのトップ人事異動と違うのは、Apple 社が新しい CEO を発表 しなかった点である。そのかわり選定委員会が設置され、社外から候補を 探している。当面最高財務責任者 Fred Anderson 氏が Apple 社の日常業 務に対して責任を負う。そして Macintosh コミュニティに激しい論議を巻 き起こした流れのなかで、Apple 社の共創始者であり前 NeXT 社 CEO、 Steve Jobs 氏が CEO 選定委員会を含め中心的アドバイザーとしてより広 い役割を担うことになろう。

Amelio 氏辞任に対する分析と推測は Macintosh 関連のメディアにおいて も主流メディアにおいても盛んだが、そのかなりの部分は不正確で、超現 実的と言えるものもある。一般に Amelio 氏はビザンチン風に雑然として いた Apple 社内の組織や活動を刷新し、業務を簡素化し、製品の質を向上 させ、Apple 製品ラインを明確にしたと評されている。しかし Amelio 氏 の強みは、セールスマンというよりは技術者や経営者としてのそれである。 Apple 社がさらにマーケットに焦点を絞った組織になろうとしていると仮 定してみれば、同氏の辞任は全く予想不可能だったわけではない。その向 こうに見えてくるのは Apple 社が筋の通った説得力を持つマーケット志 向、消費者志向の CEO を求めているのではないかという点である。そうい う CEO ならば Apple 社の売り上げを伸ばし(おそらくさらに重要な) Apple 社の一般的イメージも改善できるだろう。ここで辞任の検証と分析 を焼き直すより、Amelio 氏自身に語ってもらうのがよいだろう。San Jose Mercury News 紙による驚くほど良質のインタビューが下に存在する。

<http://www.sjmercury.com/business/apple/giltalkstranscript071097.htm>

Ellen Hancock 氏の辞任は、Copland オペレーティングシステムをお蔵入 りにして NeXT 社を買収した Apple 社の決定において、同氏が技術最高責 任者として担った中心的役割に関係する。NeXT 社買収後、Hancock 氏の責 任事項の多くが NeXT 社からの管理職に移ってしまったのである。Hancock 氏はことあるごとに Apple 社は自社のマーケットと顧客に集中すべきで、 NeXT 社のように企業を対象にしようと試みるべきではないと語っていた。 また同氏は MacWEEK とのインタビューにおいて、Apple 社 CEO として働 くのにやぶさかでないと述べている。

<http://www.zdnet.com/macweek/mw_1127/nw_hancock.html>

Apple 社はその中核ビジネスにおいて多くの挑戦に直面しており、また広 報活動においても闘いを続けているように見える。CEO の交替が同社への 世間の批判の炎に油を注ぐ形になるのは間違いない。しかし自社の先進性 と特長をきちんと知らせることを始めねばならないことは明らかである。 それには会社組織のトップからの、力強く、決断力のある、公然としたリー ダーシップが必要だろう。


視野に入ったクーガ

by Tonya Engst <tonya@tidbits.com>
(翻訳:松岡 文昭 <mtokfmak@mxa.meshnet.or.jp>)

定期的に W3C (World Wide Web Consortium)の Web サイトを訪れる人達 は、Cougar とコードネームが付けられた HTML の次期バージョンについて ヒントを得てきたことであろう。先週、W3C はそれまで散らばっていたそ れ等のヒントを HTML 4.0 の公開ドラフトとしてリリースすることで、アッ プデートし、統合した。このリリースは、魅力ある新機能群を成文化した 点で重要なのだ。これらの特徴の多くは、新しいブラウザでのみ使用でき、 Microsoft 社ではすでに Internet Explorer 4.0 でサポートする計画を発 表している。

<http://www.w3.org/Press/HTML4>

HTML 4.0 ではフォームに多くの改良が加えられている。Web ページ制作者 は、フォームエレメント毎にキーボードショートカットをアサインでき、 またユーザーが Tab キーを使って移動できるようフォームエレメントにタ ブ順を設定できるようになっている。フォームには、Web ページ制作者が スクリプトを組み込む為のボタンを持たせることができ、アップロードす るにあたってファイル名を促進する新規アイテムも利用可能だ。Web ペー ジ制作者は、全てのエレメントが適切な状態となるまで、それ等を無効に しておくこともできる(例えば、全ての Web ユーザーに歓迎されうる機能 である、フォームの必須エレメントが完全に入力されるまで Submit ボタ ンを無効にするとか)。

ドラフトの他のハイライトには、クライアント側スクリプトを追加するた めの新規スクリプトエレメント、テーブルを認知しやすくするための列と 行のグループ化や固定したヘッダとフッタ間でスクロールできるテーブル、 Unicode 2.0 と同等となる新しい文字セット ISO-10646、が含まれている。 (Unicode は、アラビア文字、キリル文字、ヘブライ文字、カタカナ、タ イ文字、チベット文字を含む 25 の異なったスクリプトから、38,885 文字 を保持している。)

<http://www.unicode.org/>

Web ページ制作者には実際のドラフトを読むことをお勧めする。それは W3C の以前の Web 出版物の多くよりいっそう読者に易しい出来となっている。

<http://www.w3.org/TR/WD-html40-970708/contents.html>


迷いの予感? GPS 概論

by Karen Nakamura <karen@gpsy.com>
(翻訳:尾高 修一 <odaka@iprolink.ch>)
(  :亀岡 孝仁 <tkameoka@fujikura.co.jp>)

5 年ほど前まで、Global Positioning System(GPS = 全地球測位システ ム)はハイテク軍事サスペンス小説の中にしか存在していなかった。小説 の中のスパイは、地球上どこでも自分(または標的)の位置を市街図や 3D の地形図付きで正確に知ることができる手のひらサイズの機器を持ってい たものだ。

現実は芸術を模倣する。過去 10 年間、3 つの驚くべき事態が起こった。 まず、米軍が GPS を民生用に開放したのだ。次に、受信機の価格が 1,000 〜 10,000 ドルから 100 〜 200 ドルへと急降下し、誰もが気軽に購入で きるようになった。最後に、コンピュータ制御が可能な新鋭ユニットが登 場し、パーソナルコンピュータとの連携を現実のものとしたのである。 Macintosh と 300 ドル分のハードウェアとソフトウェアがあれば、つい最 近までは SF の世界にしかなかったことができるようになるのだ。

この記事では、Global Positioning System の背後にある技術を解説し、 現在市販されている受信機のラインアップを検討する。また、今週号では TidBITS の編集長、Jeff Carlson がユーザーの視点から GPS 技術につい て述べ、私が Macintosh 用に開発した GPS 通信ソフト、GPSy をレビュー してくれる。

税金の行方 -- GPS はまさに驚異的だ。この技術は軍が何十億ドルもか けて開発したもので、24 基の人工衛星(マニアは“SV”、Space Vehicle と呼んでいる)によって支えられている。この人工衛星は、GPS 受信機が 地球上のどこでも自分の位置を知ることができるような正確なデータを発 信している。受信機はその位置(緯度・経度)、高度、スピード、方向、 それに正確な時刻を算出することができる。ほとんどのユニットには事前 にプログラムされた地点に対する位置や、通過した経路をプロットするマッ ピング機能が内蔵されている。高度なモデルには市街図や海図が内蔵され ているほか、コンピュータと接続するためのシリアルポートも搭載されて いる。

軍やハイエンドの測量用モデルはミリ単位の精度を持っているが、通常市 販されている民生用モデルは“たかだか”100 メートルまでの精度しか持っ ていない。これは軍の “選択的供与(SA = Selective Availability)” という方針によるもので、GPS 信号の精度が軍事目的には不十分な程度ま で落ちるようにスクランブルがかけられているからだ。これによって、お 気に入りの釣り場を見つけられるだけの精度はあっても、ネバダ州にある Area 51 基地に巡航ミサイルを打ち込むだけの精度はなくなるのだ。面白 い副作用として、GPS を用いたカーナビシステムでは、車がわずかに道路 を外れ、川や建物に突入するように見えることがある。

100 メートル以下の精度が必要な場合には、GPS 受信機と Differential GPS(DGPS)ユニットという FM 受信機を併用すれば、3 〜 10 メートルの 精度が得られる。米国沿岸警備隊は全国の沿岸部で無料で DGPS 信号を発 信しているほか、内陸部でも多数の DGPS 放送局が有料の放送を流してい る。Federal Aviation Administration (FAA = 連邦航空局) はすべての航 空機で GPS を使うようにしようとしており、2000 年頃には広範囲にわたっ て無料の DGPS 放送を開始する予定になっているため、内陸部でも無料で DGPS を利用できるようになるだろう。DGPS 受信機の価格は現在 500 ドル 前後だが、FAA の計画が実施されれば GPS 受信機に DGPS 受信機能が内蔵 されるようになるだろう。

舞台裏 -- 24 基の人工衛星の軌道がずれているため、95% の確率で地球 上のどの位置からでも同時に 4 基の衛星が見えるようになっている。後程 見ていただくように、この 4 基という数字が肝心なのだ。

各衛星は反復メッセージを発信して、それ自身並びに他の衛星の位置と軌道 パラメーター(almanac)とその作動状況診断書(health bit)、及び原子 時計を使った正確な時刻を伝える。この情報は厳格なタイミングで発せられ る信号として暗号化される。

GPS がどのように機能するかを理解するために、少し簡単な算数をしてみ よう。高校の物理で習った反響定位を憶えておいでだろうか? 音波や電波 を発して、それが何かに当ってはね返ってくるまで待てば、所要時間を音 速(または光速)で割ることによって距離を得ることができる。

    距離 = 速度 * 時間
時間 = 距離 / 速度

信号の発信と受信が同じ地点で行われるレーダーやソナーとは異なり、GPS の場合は人工衛星は発信するだけで GPS 受信機は信号を受信するだけだ が、これを別とすればほぼ同じ理屈で動作する。

では、どういうしくみになっているのだろうか? 仮に私と一人の友達が完 璧に正確な時計を持ってフットボール場のグラウンドに立っているとしよ う。友達が「私は右奥のゴールポストのところにいて、今 5 時 0.000 秒 よ!」と叫び、それを私が聞いたのは 5 時 0.333 秒だとしたら、この 0.333 秒の時間差によって距離を知ることができる。音速を約 300/秒と すると、友達は私から 100 メートル離れた位置にいる(または、私が右奥 のゴールポストから 100 メートル離れた位置にいる)ことがわかる。

それでは、もう一人の友達が左奥のコーナーポストにいて、同じことをし たとしよう。で、その距離が 150 メートルだということがわかったら、私 がどこにいるかを知ることができるだろうか? ほぼわかると言って良いだ ろう。最初の友達からは 100 メートル離れていることが分かっているの で、右奥のゴールポストを中心に半径 100 メートルの円を描くことができ る。次に、2 人目の友達を中心に半径 150 メートルの円を描く。2 つの円 は 2 ヶ所で交差するので、このうちの一つが私が立っている位置というこ とになる。これで 3 人目の友達がいれば円が交差するのは 1 ヶ所だけに なる。

以上の説明がわかりにくければ、実際に紙の上に描いてみると良いだろう。

星の叫び -- 当然この例よりは正確な時計と光の速度を用いるのだが、 GPS はこの原理で動作するのだ。しかし、一つだけ落とし穴がある。先程 の例では各自がシンクロした時計を持っていることが前提となっていたが、 すべての GPS ユニットに原子時計を搭載したら、異常に高価なものになっ てしまう。3 人の友達(あるいは衛星)がいれば、次の 4 つの不確定要因 のうち 3 つを確定することができる。

    X, Y = 位置
Z = 高度
t = 時刻

衛星が 3 機しかなく、時計も不正確な場合には、高度は既知の定数として 扱わなければならない(たとえば標高 0 メートル)。3 機の衛星では 3 つの不確定要因(X、Y、時刻)しか確定することができないからだ。一方、 4 基の衛星があれば、X(経度)、Y(緯度)、Z(標高)、t(時刻)の 4 つの不確定要因を確定することができる。具合が良いことに、正確な位置 がわかるだけでなく、正確な時間も知ることができるため、GPS は位置マ ニアだけでなく、時刻マニアにとっても有用な技術となるのだ。GPS が安 価で極めて精度が高い情報源であるため、多くの人がコンピュータやネッ トワークの時計を GPS に合わせている。

しかし、先程の例に戻って考えてみると、注意しなければならない落とし 穴もある。友達、または衛星の間には十分な距離がなければならない。近 すぎると信号の時間差が小さすぎて正確な位置を算出することができない からだ。これは GPS 用語で“精度の希釈”と呼んでいるもので、精度に多 大な影響を与える。また、私と友達の間には空間が広がっていないとなら ない。信号をブロックしたり、好ましくない反射(“マルチパス”信号) を起こすような大きな物体があってはならない。このようなエラーはさら に精度に悪影響を及ぼす。

GPS 信号は電磁波なので、ガラスを通過することはできるが、水の分子 (木の幹や茂った葉)には吸収され、コンクリートやスチール、岩などに は反射する。ということは、GPS ユニットは熱帯雨林やコンクリートジャ ングル、深い谷、自動車や船舶の中、大雪の中ではうまく動作しない(ほ かにも色々あるが)。こういった障害物は精度を悪化させ、現在地を確定 することが不可能になる。

GPS 受信機の技術 -- GPS 受信機には大きく分けて二つの型がある:一 つは順次単チャネル型でもう一つは並列多チャネル型である。単チャネル GPS は無線受信機がたった一つしかなく、受信可能性のある衛星全部を一 個ずつスキャンしていかねばならない。このためチャネルを切り替えてい く度に「ロック」を失うことがあり、時間もかかるし精度も落ちる。多チャ ネル型は 4 個から 12 個の受信機を持っており、それぞれが一つの衛星に 割当てられているのですべての衛星に対して強いロックを維持できる。

世の中には 2 チャネル型というのも出てはいるが、現実には単チャネル型 よりほんのちょっと良いという程度である。並列多チャネル型は衛星補足 時間では 15 倍も早く衛星信号へのロック能力という意味では比較になら ないほど優れている、これは深い森の中とか高層ビルの谷間とかの難しい 状況下でさえもである。

しかしながら、船上での用途に限って言えば単あるいは 2 チャネルの順次 型でも、障害物のない海上という環境下ゆえ十分使える。これらは時代遅 れの技術と見なされているので安い掘り出し物が見つかるかもしれない。 しかしながら海以外の用途に対しては、12 チャネル並列型以下の物で妥協 してはいけない、というのも過去 6 カ月の間に価格差は大きく縮まってい るからである。

受信機の評価 -- ここで価格帯が 150 ドルから 300 ドルの家庭用の GPS 受信機を簡単に比較してみたい。すべての機種は並列 12 チャネル型であ る。さらにすべて 100 m の精度である、これは米政府が民生用 GPS 精度 を同じ様なやり方で制限しているからである。もし政府が SA 妨害を取り 除いてくれたならば、これらの機種は 15 m の精度は十分に出せるであろ う。

もし一台買おうとしているのならば、形状(携帯型か取付型か);外部ア ンテナ;マッピング機能、そしてコンピュータ制御性といった項目にも気 を配るべきである。

私の Web サイトにこれら GPS 機の販売店のリストをのせてある。地元で 探すときは、ボート店とかアウトドアスポーツ店とかを当ってみることを おすすめする。たいてい低級機も扱っている。

<http://www.gpsy.com/gpsinfo/index.html#resellers>

Garmin -- 私の好きな GPS 受信機は Garmin, Inc. 社のものである。そ の中心商品である携帯型は Garmin GPS 12XL で約 250 ドルである。12XL は携帯用として設計されており手のひらにおさまる。4 本の単 3 電池で 12 時間動き、夜間用のバックライトもついている。Garmin 社からはさらに低 級機である GPS 12 と言うのも出ており、12XL と違うところは外部アンテ ナ接続とかビーパーが付いていないことぐらいでスポーティな携帯性は変 らず 200 ドル以下で売られている。

一方 GPS II+ は車載用としてダッシュボードとかコンソール上にのるよう 設計されている。これにはズームボタンが付いており経路調べをしている ときの片手操作を容易にしている(もちろん運転中には勧められない)。 Garmin からは出来のよい二輪車ハンドル用取付具も出されている。私はこ れより前の型の GPS II を Honda CX500 Custom に取付けており New England をツアーする時の欠かせない友となっている。II+ は 4 個の単二 で 20 時間の電池寿命がある。

Garmin 機の最大の特長はコンピュータに接続するための双方向のシリアル ポートを持っていることである。多くの GPS 機は現在位置情報を送出する だけだが、Garmin 機は道路情報データベース、ルート表、等の有用な情報 を GPS 機側に移植出来る。多くのプログラムが Garmin transfer protocol を支持している事も、コンピュータと共に使う用途には Garmin 機が良い 選択の理由となっている。

<http://www.garmin.com/>

Eagle -- Eagle/Lowrance 社は Eagle Explorer という 12 チャネルの 安価な機種を出している(約 200 ドル)。Explorer は強力な 12 チャネ ルの GPS 受信機を備えているが、残念な事にユーザーインターフェースが Garmin 社の物ほど使いやすくない。また外部アンテナ機能もないので、車 内での使用もさらに難しくなる。Eagle/Lowrance 機は独自のデータ転送プ ロトコルを使用していて現時点ではどの Mac 製品にもサポートされていな い。個人的には Eagle Explorer をお勧め出来ない。それは単品としても コンピュータと一緒でも使いにくい。

もしボートをやるのであれば、Eagle 社には Accunav Sport という 4 チャ ネルの機種があり、それはプラグインの沿岸航路用の海図モジュールをサ ポートしている。なかなか良くできた機種だがいかんせん受信機の技術は 2 年前の物で多少時代遅れとなっている。探し歩けばもっと条件のいい買 物が出来ると思う。

<http://www.eaglegps.com/>

DeLorme -- DeLorme Mapping 社は Street Atlas という全米をストリー トレベルでカバーする地図を CD-ROM で出版している。それだけでなく DeLorme Tripmate というかわいい小さな 12 チャネル機を製造している。 Tripmate はそれ自体にはディスプレイも操作部もなく、コンピュータとつ ながないと使えない設計になっている。そうではあっても、それはすばら しい機種である、性能もいいし、それに 150 ドルという値札には納得がい く。

<http://www.delorme.com/>

データケーブル -- Macintosh GPS ユーザーにとっての最大の問題は、 データケーブルが無いことである。大抵のデータケーブルには Mac スタイ ルの DIN-8 ではなく PC スタイルの DB-9 コネクタが付いてくる。現時点で は、Mac 用の GPS ケーブル供給業者は私の会社だけのようである。もちろ ん、半田ごてとかワイヤクリンパーが手元にあれば、自作できる。詳細は 私の GPS Cable Page に掲載されている。

<http://www.gpsy.com/cables.html>

自分の道を見つける -- GPS 受信機は車載用としてはまだ標準装備には なっていないが、価格低下と機能改善が進んでおりこれは単に時間の問題 だと思う。GPS 機器がどこでも入手出来るようになることで、自分がどこ にいるのだろうかという不安を解消する手助けになるであろう、少なくと も一つの意味では。

GPS に関する更なる情報については、次のサイトを訪ねてみて欲しい、 U.S. Coast Guard, NOAA (National Oceanic and Atmospheric Administration), Iowa State University, そして私の Web サイト。

<http://www.navcen.uscg.mil/>
<http://www.ngs.noaa.gov/GPS/GPS.html>
<http://www.cnde.iastate.edu/gps.html>
<http://www.gpsy.com/gpsinfo/>

[Karen Nakamura 氏は Mac 中心のマッピングと GPS/GIS のソフトウェア 開発会社である Global Mapping Systems の創設者である。もう一つの顔 として、彼女は文化人類学者であり日本と米国における聾唖者社会運動に ついて研究している。]


GPSy で木立の中のドライブを

by Jeff Carlson <jeffc@tidbits.com>
(翻訳:尾高 里華子 <odaka@iprolink.ch>)

今週号の GPS の記事を書いてくれた Karen Nakamura 氏は、TidBITS に GPS ユニットと自作ソフトの GPSy を繋いで使ってみないかというおもし ろそうな話を持ち掛けてきた。

<http://www.gpsy.com/>

近々 GPS 製品を使用しそうな者は我々スタッフのなかにはいなかったのだ が、次の 3 点にそそられた。人工衛星を利用して地球上のある一人の位置 を正確に示すという未来っぽいことができること、我々が興味を持ったこ の GPS に関する記事を一本書こうと Karen が申し出てくれたこと、そし て、このクールなおもちゃで遊ぶことができるということだ。

衛星を捕らえる支度 -- Karen は、GPSy と DeLorme 社の Street Atlas 3.0、GPS 2 製品(Garmin GPS 12XL と DeLorme TripMate)を送ってきて くれた。小型のバックライト付き液晶デジタルディスプレイと多数のコン トロールボタンの付いた Garmin を持って山に行くことを思い浮かべてみ た。一方 TripMate の方は、防水処理の施された黄色いもので、コントロー ル部やスクリーンは付いておらず、片方の端っこから黒いケーブルが出て いるだけである。

<http://www.delorme.com/StreetAtlasUSA/>

GPSy と Street Atlas を連動させるために CD-ROM ドライブが必要だった ので、友人から CD-ROM ドライブ内蔵の PowerBook 3400c を借りてきた。 GPS を使うことのできるのはわずか 2 日間だけだったので、あらゆること を試すべく Adam と Tonya の家に向かった。

このソフトのセットアップは簡単で、ファットバイナリでわずか 850K の GPSy 2.1 をフロッピーから PowerBook のハードディスクにドラッグする だけですんだ。GPSy の現在のバージョンは 2.5.3 で、これは我々がこの 製品を試した時はまだベータ段階だった。Street Atlas のインストールも 簡単できた。

最初につまずいたのはハードウェアがらみだった。一般向けのディバイス というものは、ドキュメントすべてに目を通さなくても使えるものだとい う信念の基に、Garmin を繋いでみようとしたのだがうまくいかなかった。 いじくりまわしたり、ボタンを押してみたりしたあげく、結局マニュアル を読むことになった。そして、あいにくその日は天気が悪く、一度に 2 〜 3 個以上の衛星を捕らえることが難しかった。

結局 Garmin を諦めて、接続に人為的な失敗が伴わなかった TripMate を 使うことにした。こちらは至って簡単で、TripMate と PowerBook フック で繋ぐだけでデータを送ることができた。

データの世界 -- GPS ユニットが受信する情報は、ビットやバイトの空 中砲火を浴びているような感があったが、GPSy はそれを表示するバリエー ションも豊富に揃えてあった。GPSy が特殊な頭の持ち主、少なくとも世界 中に散らばってる測定地を表す頭文字や用語に熟知している人向けにでき ているということは疑う余地もないことだ。参考までに我々が衛星から受 け取った情報の一部をそのままお見せしよう( NMEA Data フィールドはど んどんスクロールしていく)。

NMEA Device: GP - Global Positioning System (GPS)
NMEA Sentences: [ APB BWC DBT GGA GLL GSA GSV MTW VTG ]
NMEA Data:
 $GPAPB,A,A,0.0,R,N,V,V,13.6,M,001,14.0,M,16.8,M
 $GPGGA,215043.54,4123.46,N,07254.86,W,1,04,2.0,00086,M,,,,
 $GPVTG,357.2,T,10.9,M,21.7,N,40.2,K

データは怒濤のように流れてくるし、さらに専門用語の波も襲いかかって きたが、GPSy の主要機能の使い方を見つけ出すのには何ら支障なかった。 Displays メニューや数字を割り振ってあるショートカットキーを使えば、 データを解析するための多数のウインドウにアクセスできるようになって いるのだ。例えば、Command + 1 で、(政府の指示による“選択的供与” に従った範囲内の)正確な地点を示す小型のウインドウを呼び出すことが できる。

進行方向、ナビゲーション(方角)、航行・飛行データ、(私のお気に入 りの)上空の現在捕らえている衛星を信号の強さによって色で表したもの などの各種ウインドウがあった。また、自分の位置が出ている世界地図を 呼び出すこともできるが、一ピクセルが町や地方数個分に値するサイズに なってしまう。

データ表示だけではなく、ルートや経由地点のような命令やデータを GPS とやり取りするオプションも使ってみた。さらに、GPSy は Apple の PlainTalk テクノロジーを利用して位置をはじめとする情報を音声で伝え てくれることもできる。

<http://speech.apple.com/>

公道へ(実在しない場合もあるが) -- GPSy で遊んだ後、(我が家へと 車を走らせる時に)実際に道路で使ってみた。Street Atlas を立ち上げ て、GPSyLink メニューから Locate Once を選ぶと簡単に自分の位置が確 定できる。

Karen が TripMate は強力粘着テープで車の上につけると最も良いと教え てくれたのだが、車の塗装がはげるのが心配だったのでダッシュボードの 上に取り付けた。すべてがうまく動作することを確認してから、GPSy のロ グ機能をオンにして、帰途についた。

その夜は雨だったのに、GPSy が 1 〜 2 秒遅れぐらいで私の位置をちゃん とフォローするのには驚いた。GPSy には、進んでいる方向、位置、私が運 転してきた時速が表示されていた(これは、スピード違反で捕まったりし て、無実を訴えたい時に使うことができるかもしれない。もっとも、警官 は傍らにそんないかしたもの積んでいたのでは、道路の方への注意が散漫 になるのでは思うかもしれないが)。

Street Atlas のウインドウ上では、小さな青い車が自分が運転したのと大 体同じ道を走る。例の“選択的供与”のために一般用の GPS には制限があ り、この小さなアイコンは完全に正確なわけではないのだ。実際に、車が 茂みに隠れてしまったり、湖をかすめたりしているのを目撃した。それで も、上空で探知した情報に敏速に対応するのを眺めるのは新鮮だった。

ハイウェイで迷子に -- GPSy および GPS ユニットを使ってみて、車な どの車両に取り付けた GPS 受信機が話だけのものだという考えを改めた。 衛星の力と絶えず更新する地図をもってしても、自宅へ帰る道で曲がると ころを間違えてしまったが、今後に期待が持てる分野である。

GPSy は 30 ドルのシェアウェアで、最低使用条件は System 7.0 以降を搭 載した 68020 ベースの Mac である。起動後 15 分だけしか使用できない 750K のデモ版がダウンロード可能ある。

<http://www.gpsy.com/download.html>


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