TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS-J#389/21-Jul-97

Mac OS 8 のリリースで Apple 社の意気上がる今週、その盛りだくさんの 新しい特長を Geoff が レポート。さらに、パワーアップした PowerBook 1400s、Macintosh ユーザーも参加できるインターネット上の暗号解読コン テスト、予想よりも少なかった Apple 社四半期損失の各ニュースを掲載。 そして Tonya が Web パブリッシングとサイト管理の新しい「フロンティ ア」を探求し、今週号を締めくくる。

目次:

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MailBITS/21-Jul-97

(翻訳:小川 浄 <HGB00351@niftyserve.or.jp>)

Apple 社予想より少ない第三四半期損失を計上 -- Gil Amelio と Ellen Hancock の退職劇( TidBITS-388 参照)もさめやらぬ Apple 社は、第三 四半期財務報告を計上し落着きを取り戻した。Apple 社は 5 千 6 百万ド ルの純損失(一株当り 44 セント)を計上。前年同期損失は 3 千 2 百万 ドル(一株当り 26 セント)だった。5 千 6 百万ドルといえば決して少な い額ではないが、7 千万ドルから 1 億 3 千万ドルとされていた予想から すれば控え目な数字と言ってよいだろう。[JLC]

<http://product.info.apple.com/pr/press.releases/1997/q4/ 970716.pr.rel.q397.html>

Bovine RC5 コンテスト -- Macintosh のあるユーザーグループが RSA Data Security Secret-Key コンテストの 56-bit key RC5 部門に参加して いる。コンテストの目的は 56-bit RC5 暗号技術を打ち破ることである。 あまたのこじ開け型コンテストのなかでも Bovine RC5 プロジェクトは可 能性のあるキーをしらみつぶしにテストするのに余剰 CPU サイクルを用い るよう、進んで努力している点が特徴。参加するには Mac ユーザーの場合 は無料クライアントプログラムをダウンロードし、インターネットに接続 されたパワーマック上で動作させておく(68K では速度が遅すぎる)。Guy Kawasaki 氏の EvangeList チームとして参加するには、指定のアドレス <evangelist@apple.com> に電子メールを送付する。EvangeList チームは 最近 24 時間にチェックされたキー数でトップ部分を占めているが、それ でも可能性のあるキーのうち 6 %がチェックされただけで仕事はまだまだ 残っている。

<http://rc5.distributed.net/>
<ftp://ftp.distributed.net//pub/rc5/v2/rc5v2-macos.sit.hqx>

1 万ドルの賞金は Bovine 主催者側(1 千ドル)と優勝チーム(1 千ド ル)、Gutenberg プロジェクト(8 千ドル)に分配される。Gutenberg プ ロジェクトとは文学作品がインターネット上で無料で入手できるようにな ることを目指す長期プロジェクトである。暗号技術にまつわるややこしさ に触れないとしても、隠されたキーを発見するマシンに Mac がなるのなら ば、あるいはほかの形式のコンピュータよりも Mac がたくさんのキーを チェックすることになるならば、それは Apple 社と Macintosh の肯定的 評価という結果に結びつくだろう。Macintosh コミュニティに参加する手 軽で積極的な方法だと思うのだがいかがだろうか。[ACE]

<http://www.gutenberg.net/>


パワーアップした PowerBook 1400

by Tonya Engst <tonya@tidbits.com> (翻訳:尾高 里華子 <odaka@iprolink.ch>)

Apple 社は先週 PowerBook 1400 シリーズに近々新機種が登場すると発表 した。今月 1400 シリーズの購入を予定している方には気になる話であろ う。

<http://product.info.apple.com/pr/press.releases/1997/q4/ 970714.pr.rel.pb1400.html>

従来型 -- PowerBook のスぺックをご記憶でない方のために説明してお くと、PowerBook 1400 シリーズは外観の模様替えができる BookCover 機 能と、簡単に内部にアクセスできるように取り外しやすくなったキーボー ドが特徴である( TidBITS-350 および TidBITS-371 を参照)。いずれ も PowerPC 603e プロセッサを搭載しており、6 倍速の CD-ROM および 750 MB 〜 1 GB のハードディスクを内蔵している。このシリーズの従来型には 4 機種があり、その中の最下位機種はデュアルスキャン・パッシブマトリ クス方式の液晶ディスプレイ搭載の 1400cs/117 で、最上位機種はアクティ ブマトリクス方式の液晶ディスプレイおよび 128K 2 次キャッシュ搭載の 1400c/133 だった。予想店頭価格は 2,500 ドル 〜 4,000 ドルとなっていた。

新型 -- 新 PowerBook 1400 シリーズには、1400cs/133、1400c/133、 1400c/166 の 3 機種が用意されている。CPU は速くなったりもするが、 ディスプレイは従来と同様のものを搭載しており、予想価格は 2,500 ドル 〜 3,500 ドルぐらいである。また、各機種とも 8 倍速の CD-ROM ドライ ブと 128K 2 次キャッシュを標準装備しており、ハードディスクの容量は 1.3 GB か 2 GB のいずれかである。出荷当初この新モデルには Mac OS 8 ではなく、Mac OS 7.6 または 7.6.1 が付属することになっている。一連 の発表の中で、よりコンパクトな PowerBook 2400c の出荷が 8 月まで延 びるとの報告もあった。Mac OS 8 をインストールして出荷するということ が、この延期の表向きの理由である。

<http://product.info.apple.com/pr/media.alerts/1997/q4/ 970714.pr.alrt.pb2400.html>


Mac OS 8 登場

by Geoff Duncan <geoff@tidbits.com>
(翻訳:尾高 里華子 <odaka@iprolink.ch>)
(翻訳:松岡 文昭 <mtokfmak@mxa.meshnet.or.jp>)

今週 Apple 社から Mac OS 8 が公式にリリースされる。これは Macintosh オペレーティングシステムの新バージョンであり、1984 年以来もっとも画 期的な改良であると言われている(空飛ぶ円盤をモチーフにした広告がお 目見えすると思われる)。Mac OS 8 は新機能を搭載し、インターフェース を一新し、インターネット関連ソフトも山と積んでいるが、最大の目玉は 何と言っても PowerPC ネイティブでマルチスレッドの Finder である。

Mac OS 8 での変更点を簡略な記事にまとめあげるのは容易ではない。そこ で、近々 Mac OS 8 の“実体”を特集第 2 段としてお送りする。

システムの使用条件および購入 -- Mac OS 8 は従来のシステム以上に動 作のための条件が厳しくなった。プロセッサは 68040 または PowerPC を 搭載し、12 MB 以上の RAM を実装し(仮想メモリと合わせて 20 MB 必 要)、最低で約 65 MB のディスクの空きスペース(フルインストールの場 合は約 130 MB になる)が必要となる。Mac OS 7.6 は、24 ビット Mac や 68000 や 68020 をベースにしたマシンを置き去りにしてしまったが、Mac OS 8 は(Mac II シリーズのマシンや LC、Performa、PowerBook の中にも 膨大な数存在する)68030 ベースのマシンをサポートしなくなった。さら に、アップグレードカードを使って 68040 や PowerPC プロセッサにアッ プグレードした元 68030 マシンもサポートされない(ロジックボードを交 換してアップグレードしたものは大丈夫である)。これらの見放されてし まったマシン達にとっては、Mac OS 7.6.1 がサポートされる最後のオペ レーティングシステムとなる。

CD-ROM 版の Mac OS 8 は約 99 ドルで、フロッピー版の場合にはさらに 25 ドル上乗せになる上に一部おまけが削除される。Mac OS 7.6 をお持ち の方は、Mac OS 8 に同梱されることになっている 30 ドルの払い戻し証書 を利用できる。97 年 6 月 1 日から同年 7 月 31 日までの間に Mac OS 7.6 を購入した方は、送料実費で Mac OS 8 を手に入れることができる。 詳細は 7.6 に同梱されている。

この新バージョンは今週末には Claris 社、主な通信販売店、小売店など から売り出される。(Claris をはじめとする)多数の小売店は Mac OS 8 にバンドル製品を付けた期間限定セールを行うので、お見逃しなく。

<http://www.claris.com/macos8/>

Apple によれば、Mac OS 8 の各国版は年内にはリリースされる予定である。

新 Finder の全貌 -- Mac OS 8 になって最も改良された点は、マルチス レッドで PowerPC ネイティブの新 Finder である。今までの Finder は ファイルのコピーやゴミ箱を空にするというような作業を一つずつしか行 えなかったのだが、マルチスレッドになると複数のそういった作業を同時 に実行できるようになる。似たような機能を実行するサードパーティーの 製品はあったが、マルチスレッドは多数の細かい改良が施されている。た とえば、Finder のウインドウは裏で何かが起きている際でも開くように なったし(巨大なフォルダや CD-ROM、遅いサーバを使っている場合に便利 な機能である)、ウインドウの描き換えも速くなった。これらの改良のお 陰で、Mac OS 8 Finder は快適になったが、マルチスレッドの美味しいと ころをマスターするのには時間が必要となる。数年来 Finder はそういっ たことを行わないものだと教えられてきたので、今ではそうしたいとも考 えなくなっているのだ。

マルチスレッドのことはすぐには気が付かなくても、“プラチナ仕立て” になった新しい Finder にはきっと気が付くだろう。全体がグレー階調の 色使いで、立体感のあるものになっている。この外見の変更は Appearance コントロールパネルから行う。ここでは、全体をかつての System 7 風仕 立てではなくプラチナ風に見えるようにするかどうかといった設定や、シ ステムフォントを伝統的な Chicago フォントを使うか新しい Charcoal フォントにするかといった設定を行う。すべてのプログラムの見栄えをプ ラチナ風にするのはだいたいうまくいったが(なかには少々化けそこなっ たプログラムもあった)、サイズが数ピクセル大きくなってしまうウイン ドウがあったために、ウインドウの配置の点で苛立たしく感じた。Apple 社は現在この新しいプラチナ仕立ての Finder をお披露目するためにスク リーンショットを公開している。

<http://www.macos.apple.com/>

(Appearance コントロールパネルから操作する)新しい Appearance Manager を使っても、自分のシステムを最近広報などに使われていた新し くかつ往々にして妙な独特の雰囲気をもった見栄えにはできない。しかし、 Mac OS 8 には多彩な外見に対応する土台はあるので、デベロッパーが色々 な見栄えにするプログラムを書くことはできるし、こういった類のものが 今後登場してくると思われる。どうしても自分の Mac の外見をいじってみ たいという人は、Mac OS 8 をサポートしている Kaleidoscope のバージョ ン 1.7 をチェックしていただきたい。

<http://www.kaleidoscope.net/>

“spring-loaded(ポップアップする)”フォルダと呼ばれるものが、この 新 Finder の特色のひとつである。これは、フォルダをダブルクリックす る時に 2 回目のクリックを押したままの状態(一と半クリック)にしてお くと、フォルダ階層の深いところへと進んでいくことができるもので、そ の中のここといったところに文書を入れたり、お望みのフォルダを開いた りすることができる。マウスを離したら、お望みのもの以外の途中に開い た一連のウインドウがすべて閉じるのでデスクトップが散らからない。

Finder のウインドウは、画面の下部にラベルとして残るポップアップ・ウ インドウ(“引出し”と呼ばれることもある)にすることができる。この 引出しは、何かをドラッグして持って行くか、ラベルをクリックした時に 開き、作業が終わるとすぐに閉まるようになっている。その他の新機能と しては、エイリアスの元となるオリジナルを探し出すショートカット (Command + R)やアイテムをゴミ箱に移動させるショートカット(Command + Delete)などがある。また、Finder のリスト表示にどの項目を表示させ るかをウインドウ単位で指定することができるようになった(だが、項目 の順序や幅の変更はできない)。

新システムの機能 -- Mac OS 8 は新しく便利な機能をいくつかサポート している。(デスクトップを含む)Finder で何かを Control + クリック した場合、通常使われるコマンドを持った状況に応じたメニューが現れる。 メニューバーやポップアップメニューは一度クリックしたらそのまま消え ずに残る貼り付き型のメニューになっている。この機能は腱鞘炎の人にい いかもしれないが、私は特に巨大なポップアップメニューのなかでの移動 に常用するようになった。そのほかよいものとしては、デスクトップの背 景として画像を使用するビルトイン機能や、現在プログラムが使用してる メモリに関する表示が良くなった About ボックスがある。

しかし、Mac OS 8 で改良されなかった点も非常に目立つ。Chooser を開け ると 1988 年に引き戻されたような感じがするし(現在はロックされたボ リュームで動作するようになったのだが)、“開く”や“保存”の標準ダイ アログは 1985 年から何ら変わっていない。ポップアップウインドウや階 層化された Apple メニュー、キーボードショートカットなどの多くの改良 点は、上記のものを含めた難点を良くしたと言うよりは、回避したといっ た感がある。

インストール -- Mac OS 8 は、Apple が Mac OS 7.6 と一緒に導入した 全能型のインストーラと同種のものを使用し、多くの二次インストーラを 動作させるようになっている。インストールのプロセスは少々ぎこちない が、複数のインストーラを経て手動で行うより遥かに好ましいものだ。Mac OS 8 には二つのセットアップ・アシスタント - Mac OS Setup Assistant と Internet Setup Assistant - が用意されており、マシンに名前をつけ、 プリンタを選択し、そして Internet 接続へと導いてくれる。Internet Setup Assistant は、何をしているのか理解出来ている場合に最も有用と 思われる。例えば、LAN 経由で Internet に接続している多くの人々は、 彼等が何のサブネット・マスクを使用すべきか判らないであろう。これ等 のアシスタントは前のシステムから幾らか情報を拾い上げるが、Mac OS 8 をクリーン・インストールすると Internet Setup Assistant が作業する 為の情報は皆無となり、初心者は ISP(申込書は組み込まれている)に登 録しなければと考えるかもしれない。

Internet 機能の統合 -- Mac OS 8 にはどの OS よりも高いレベルで Internet 機能が統合されていると、Apple は言っている。もし事実なら、 それは今日の Internet アクセスの残念な状況を反映してることとなる。 三つの例外を除き、Mac OS 8 の Internet 機能の統合は、既存ソフト(三 つの Web ブラウザ、三つの電子メールソフト、PointCast、Castanet、 等々)の肥大なバンドルである。最近、私は、私の姉妹と両親が Internet へアクセスする為のセットアップを行ったのだが、彼等に対し、これ等ソ フトの騒然さを優れた Internet 機能の統合と呼ぶことなど、想像できな い。

では三つの例外とは何であろうか?第一は、アップルメニューの中の Connect To... と呼ばれる AppleScript(本当に!)である。どのアプリ ケーションからでも、“Connect To...”を選択し、URL をタイプかペース トするだけで良いのだ。それは小さな機能だが効率的なのだ。第二は、 「ファイル共有」のように設定できる、小さいが頑健な Web サーバ機能の Apple's Personal Web Sharing だ。Web Sharing を Internet 上で効率よ く使用するには安定した IP アドレスが必要だが(殆どのダイアルアップ ・ユーザーは対象外となる)、ローカルの TCP ネットワーク上で CGI プ ログラムやデータ共有のテストを行うにはもってこいだ(Personal NetFinder を使用することで Web ユーザーに Finder のようなリスト表示 を提供する)。Web Sharing の古い ReadMe ファイルには困惑しないよう に。PCI 搭載機で Web Sharing を使用するには Mac OS 7.6 に戻さなけれ ばならないと示唆しているが、実際に必要なのは Mac OS 7.6 かそれ以降 だ。

第三の例外は、もっと些細だが、Internet Config である。Apple は狡猾 にも Internet Utilities フォルダに Internet Config 1.3 を入れたが、 実際、Internet Config は Internet Setup Assistant、Connect To... ス クリプト、等々の後ろでバックボーンの役割を果たしているのだ。Apple は Mac OS 8 のドキュメント中のどこにも Internet Config について言及 していないようだが、Mac Internet コミュニティで開発されたフリーウェ アの解決策が Mac OS 8 と一緒に配布されているのを見るのは喜ばしいこ とだ( TidBITS-255 を参照)。

スピードと互換性 -- 過去数週間、様々なバージョンのMac OS 8 を使用 してみて、安定且つ感応性が良いことが判った。ケーブル不良で数日間 7.6.1 に戻したのだが、従来の OS がどれだけ私の足を引っ張っていたか に驚いてしまった。新システムはアプリケーション間で CPU をもっと効率 よく共有させるので、バックグランドでの作業は早く、幾つかのプログラ ムでは最高 25 パーセントものパフォーマンス向上が見られた。しかし、 Mac OS 8 はしたいと思う時にしたいと思う以上のことを私にさせてくれる のだが、必ずしも早くはない。例えば、ファイルのコピーは Mac OS 7.6.1 よりも遅くなりうる。それは Finder が他のことが起きる為の時間をもっ と割いているからなのだ。これは私には気にならない。特に Mac OS 8 下 での Finder のバックグラウンド処理はとても早くなっているのだから。

ほぼ例外なく、私のコンサバなサードパーティのコントロールパネル、機 能拡張、ユーティリティのセットは、私の Power Mac 7600 では動いてい る。異なった報告もあるが、私のマシン達(Quadra 650、Duo 2300c と Power Mac 7600)では、Now Utilities のバージョン 5.0.3 又は 6.7 の いずれのコンポーネントでもロードされた瞬間に、Finder がクラッシュし た。Now Software 社は OS 8 で報告された問題を調査中である。Connectix 社は、RAM Doubler は Mac OS 8 で動作するが、Speed Doubler は非互換 であり使用すべきでないと言っている。Symantec 社は Norton Utilities と Suitcase のアップデートをリリースしている。MacsBug を使用するな ら、Mac OS 8 ではバージョン 6.5.4a3 が必要である。

<ftp://ftp.symantec.com/public/Updates/mac/>
<ftp://ftp.apple.com/devworld/Tool_Chest/Testing_-_Debugging/ Debuggers_-_dcmds/MacsBug_6.5.4a3.sit.hqx>

重量に値するか? 大抵の人々は Mac OS 8 はアップグレードに値すると 判断するであろう。それを成すための CPU パワーやメモリを有していれば だが。Apple では OS 8 が新しいハードウェアとアップグレードの販売に 拍車をかけることを期待している。Mac オーナー達は、長い間じっと我慢 し新システムへのステップアップを行うからだ。OS 8 が以前のリリースよ りもっと Windows に似ていると、何人かは批判するであろう。それ等不平 にも幾つかの理はある。だが、OS 8 はエレガント且つパワフルであり、あ なたのマシンが Macintosh 以外に間違えられることは決してないであろう。


Web を編む Part 5:新たなフロンティア

by Tonya Engst <tonya@tidbits.com>
(翻訳:尾高 修一 <odaka@iprolink.ch>)
(  :高島 均 <hitak@kk.iij4u.or.jp>)

ここ最近の TidBITS では、Web ページ作成用ソフトウェアに対する私の世 界観を述べてきた。まず TidBITS-384 からテキスト系エディタを取り上 げ、続いて TidBITS-386 ではビジュアル系エディタについて述べた。そ して TidBITS-387 ではテキスト系とビジュアル系エディタの双方の特徴 を兼ね備えた GoLive 社の CyberStudio をページ作成の面から検討した が、CyberStudio はサイト管理機能をも備えているので、他の競合製品と ともに近いうちに再度取り上げることを約束した。しかし、その前に以前 からユニークな Web 出版環境を提供してきた Frontier を取り上げてみた い。

<http://www.scripting.com/frontier/>

Frontier を理解する -- Frontier 4.2.3 は無償で提供されている賢い データベースだ。このソフトウェアが無償なのは UserLand Software 社の 創立者、Dave Winer 氏がそのような形態でリリースしようと決めたからで ( TidBITS-279 参照)、賢いのはほとんどすべてのことを Apple イベン トと内蔵スクリプティング言語(UserTalk)を使ってコントロールするか らで、データベースだというのは情報を格納することができるからだ。 Frontier は Macintosh のスクリプティングコミュニティで幅広く使われ ており、ユーザーから熱烈な支持を受けている。その理由の一つに、Web サイトのパーツを格納し、高度な自動化された Web サイトへと変換するこ とができるということがある。

<http://www.scripting.com/frontier/snippets/features.html>

Frontier 探検 -- Frontier の探検はメインテーブル(“root”と呼ば れる)を開くところから始まる。root テーブルは、“kind”(タイプ)と “value”(値)を持ったエントリ群で構成されている。たとえば、 “readme”というエントリは“wp text”(ワープロテキスト)というタイ プで、これをダブルクリックするとテキストを表示したウインドウが現れ、 若干のワープロ用コマンドを収めた WP メニューが登場する。Frontier を 使って Web 出版をしようという方は、データベースに HTML を wp エント リとして格納することができる。

root には user というエントリもある。このエントリのタイプはテーブル で、ダブルクリックするとユーザーに関連したアイテムを収めたテーブル が表示される。たとえばこの中にある“organization”というエントリに は、私が最初に Frontier を使用した時に “TidBITS”という値が収めら れた。他の同様なエントリで、Frontier が Web ページを出版する方法を 指定することができる。Frontier の中で動きまわるには、階層化された多 数のテーブルからテーブルへ移動するか、データベースの一部を表示した り隠したりするアウトラインを使用することができる。

宝への鍵 -- テーブルのエントリには Frontier スクリプトがコールす るコマンド、“verb”もある。有能なスクリプターなら、他のアプリケー ションも含め Macintosh 上のほとんどすべてのものを Frontier スクリプ トで自動化することが可能だ。スクリプトを実行するには、メニューから 選択したり、Frontier 内で開いて Run ボタンをクリックしたり、Frontier の Quick Script ウインドウで名前を入力するなどの方法がある。また、 やや先走ってしまうが、Web ページの“レンダリング”を行う際にスクリ プトをコールすることもできる。

TidBITS Contributing Editor であり経験豊富な Frontier ユーザーでも ある Matt Neuburg は、「Frontier は Macintosh におけるコマンドライ ンだ」として、以下の 4 点を指摘してくれた。

ほとんど何でも自動化することができるという機能と階層的なデータベー スという構造により、Frontier はユニークな Web 出版ツールとなってい る。Frontier をサイト管理ツールとして使うのであれば、Frontier の内 側からでも外側からでも作業することができる。

外側からの作業 -- Frontier に熟達しなくても済むため、外側から作業 する方が簡単だ。外側から作業するには、Bare Bones Software 社の BBEdit を使用してごく普通にページを作成する一方で、BBEdit 内に Frontier が追加した Sites メニューを使って、BBEdit で作成した HTML を“レンダリング”して最終的なサイトを生成することになる。

<http://www.barebones.com/bbedit.html>

レンダリングの原理を理解するまでにそう長くはかからないだろう。 Frontier が HTML ページ(またはページ群)をレンダリングする際には、 以下のような複雑な処理やフィルタをかけることになる。

BBEdit を使って作業するなら、Frontier をいじる必要は全くなく、しか も上記の機能はいつでも使うことができる。Frontier の内側から作業する ことにしても、いったんセットアップが完了したらほとんどの作業を BBEdit 側からすることもできるだろう。

内側からの作業 -- Frontier に保存する HTML ページを作るには、どん なソフトウェアを使っても良い。ページを作成してから Frontier に移し、 Frontier の階層構造を利用することができるのだ。Frontier はすべての HTML ページをテーブルのエントリとして格納する。サイトをレンダリング したら、この各エントリがそれぞれ Frontier の内部構造を反映した Web ページとなる。

(今述べたことは大幅に単純化してある。Web ページはスクリプトやアウ トラインから生成することも可能なのだ。スクリプトはそれまでに作成し たどんなものからページを生成することができるし、アウトラインには色々 な利用法があるのだが、この記事ではあまり深入りはしないことにする。)

しかし、Frontier の階層構造の利用法はこれだけにはとどまらない。たと えば、複数のグロッサリを使うことができ、Frontier は HTML ファイルに 最も近い位置にあるグロッサリを使って引用符で囲まれたテキストを置き 換える。(グロッサリが HTML ファイルと同じテーブルに無い場合は、 Frontier は一つ上の階層を探し、それでも見つからなければその上、とい う具合にグロッサリが見つかるまで階層を上がっていく。)

“ディレクティブ”を使用する際にも階層が大きな役割を果たす。ディレ クティブはバックグラウンドカラーなど、ある Web ページ群に共通する特 徴をどう処理するかを指定するテーブルエントリだ。ディレクティブは HTML ファイルに直接書き込むこともできる。HTML ページがレンダリング される際、その中に直接書かれたディレクティブが優先して処理される。 しかし、HTML の中でディレクティブが指定されていなければ同じテーブル でエントリを探し、見つからなければ上の階層へと登っていく。ディレク ティブを使うと、サイトの一部にオレンジのバックグランドを使い、別の ページは緑にするといいったことが簡単にできる。

私の頭はこのあたりで飽和してしまうので、これまでに述べたことはほん の表面を引っ掻いただけに過ぎないと思っていただいて間違いない。まだ テンプレートや、ファイルの中に別のファイルを入れる機能、それにサイ トのアウトラインを HTML として出力する機能には触れていない。特にテ ンプレートは重要な機能だが、これは読者の皆さんの宿題としておこう。

レンダリング -- ページをレンダリングするときには、そのページ(もし くはそのテンプレート)に貼り付けたあらゆるマクロを実行するなど、い くつかのフィルタやプロセスが起動される。これには、実に多くの使い途 がある。

一つの例として、一時間おきに更新されている新しい TidBITS のホーム ページを見てほしい。ページが更新されるたびごとに、ページには自動的 に組み立てられる新しいグラフィックが表示されていく。この新しい画像 には、数種類のスローガンのうちの一つが表示されたり、読者が読みたが るような特に興味深い記事(もしくは記事群)に関する見出しが表示され るのだ。これはクライアントサイドのイメージマップとなっていることか ら、ページの新しいバージョンごとに新しい HTML が生成されなければな らない。Geoff Duncan はこの作業を AppleScript と HyperCard で行って いるものの、Frontier でも同様のことができるのだ。

もう一つの例には、Pam McAllister <pmcallister@pugetsound.org> 氏か らの次の寄稿を考えてみよう:

私は数ヶ月前に Frontier を使い始めました。システムを理解して、私の サイトを Frontier に取り込むのには数日を要しましたが、今では以前よ りわずかの時間で更新や追加の作業を行うことができます。手作業だった ならとても時間を割けないようなたくさんの機能、例えばサイトの各部分 のインデックス作成機能などを加えてきました。また、すべてのページを FileMaker のデータベースへ格納する Frontier のスクリプトを書き上げ ました。これによって、(Lasso を使っての)Web サイト上からの検索が 可能になります。新人のスクリプターであっても、このプロジェクトには 2 〜 3 時間しかかかりませんでした。[Pam が手掛けていることの一例に、 SoundWeb のサイトをチェックしてみてほしい。]

<http://www.pugetsound.org/>
<http://www.blueworld.com/lasso/>

複雑さ -- Frontier を習得することは、筆者に、ある生徒が「頭が満タ ンです」と言って授業を辞退したいと申し出る Far Side の漫画のことを 思い出させた。筆者の学習曲線の上昇は、Matt Neuburg が作成したオンラ イン・チュートリアルのおかげで良くなっていったのである。

<http://www.scripting.com/matt/webtutorial/>

(Matt は現在 O'Reilly Associates 社と Frontier に関する初めての本 を執筆する契約を取り交わしている。この本は、来るべき Frontier 5 の リリースに合わせてお目見えするはずだ。)

あなたにぴったり? -- まとめてみると、Frontier の構造を利用するこ とによって、他のプログラム(もしくはツールは限られているけれども Frontier 自身)で作成した HTML ページを簡単に組織化できるようにな る。一度 Frontier の中でサイトに命を与えれば、正しく設定する限り、 データベース内のページやそのほかのリソースを移動したり、複数のペー ジに現れるエレメントを変更したりするのは容易である。また、順にナビ ゲートされる一連のページを通じて、“次へ進む”や“前に戻る”という リンクを生成することもできる。サイトは、ローカルなフォルダにレン ダリングしたり、または FTP によりリモートのサイトへレンダリングする こともできる。レンダリングは、ページごと、テーブルごと、もしくは直 近にレンダリングしたときから変更があった部分ごとで、それぞれ可能だ。 Frontier は、自動化を必要とするページ・レンダリング、特に複数のアプ リケーションが共同作業しなければならないようなときの適任者である。

Frontier は他に組み込んで使うには十分に心地好いのだが、その習得に じっくり時間をかけるに値するかどうかは、そのサイトの性質によるだろ う。この記事のために調べていく途中、Frontier の一見したところ尻込み しそうなテーブルの羅列には、もっと手軽なユーザーインターフェースが ぜひとも必要だと考えたところである。一日もたてば、付き合いやすく便 利だ思うようになるとしてもだ。とはいえ、もし筆者に、階層構造、HTML、 マクロ、一般的なスクリプト関連用語に関するそれなりの理解がなかった ならば、恐らく中途で断念していたことだろう。さらに、Web サイトの運 営のために Frontier の使い方を憶えておこうとするのは、コマンドがメ ニュー上やダイアログボックス内でははっきりと見えないことからしても、 困難を伴うだろう。

すでに存在するサイトを Frontier に取り込むことは可能だが、Frontier の機能のメリットを得ようとするならば、手作業でかなりのものを修正し なければならないだろう。Frontier には、必要とするようないくつかの機 能が欠けている。各ページやリソースが互いにどう関連しているのかを、 クモの巣や組織図の類推のような形で視覚的に確認することはできない。 どのページが完成しているかとか誰が作業中であるかとかを知らせてくれ る追跡メカニズムはない。Frontier で崩れない相対リンクを作成するには マクロで行う必要があるのだが、一方ほかのプログラムならば、リンク先 を表すピクチャーをそのリンクソースにドラッグすればよいだけだ。 Frontier には、リンクチェッカや HTML チェッカだけでなく、サイト全体 に対する検索/置換機能やスペルチェッカがない。ただ、Frontier に精通 しているユーザーなら、Frontier をほかのアプリケーションに組み込むこ とによってこうした制限を解決できるはずだと確信している。

次回は、CyberStudio のサイト管理機能に話題を戻し、また、ほかのサイ ト管理用ソフトウエアについて見ていくことにしよう。


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