TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS-J#397/15-Sep-97

Mac で PC ソフトウェアを走らせる方法を検討中の読者はいらっしゃるだ ろうか? 今週号では Connectix 社が PC エミュレーション市場に放った挑 戦状、Virtual PC をチェック。さらにクローンライセンスの状況報告では Motorola 社のクローン撤退計画のニュース、そして Word 97-98 のドキュ メントを扱う Word ユーザー必携の新しいコンバータを紹介、Mac のがら くたキャビネットのまことに珍妙な中身をワクワクしながら取り出してみる。

目次:

Copyright 1997 TidBITS Electronic Publishing. All rights reserved.
問い合わせは <info@tidbits.com> へ、感想は <editors@tidbits.com> へ。

TidBITS 日本語版は TidBITS 日本語版翻訳チーム メン バーのボランティアによって翻訳・発行されています。


今回の TidBITS のスポンサーは:


MailBITS/15-Sep-97

(翻訳:小川 浄 <tao@peanet.ne.jp>)

TidBITS Updates -- クローンライセンスにまつわる重大ニュースがあわ ただしく飛び交っているが、我々はそれに促される形で以前からあたため ていた Web ベースのプロジェクトを立ち上げた。ここ数週間のように TidBITS が出た直後にニュースが発生した場合、TidBITS Updates ページ (ホームページにヘッドラインがある)に短い要約を掲載する。重要なソ フトウェアのリリース情報や、編集者へのメッセージ、その他適当と思わ れるトピックも掲載していこうと計画している。もっとも TidBITS 同様 TidBITS Updates ではとりわけ重大と判断したニュースにしぼる予定で、 できごとすべてを扱うつもりはない。我々は目下 TidBITS Updates に必要 な内部手順を確立している最中なので、TidBITS Updates の中身へのアク セスには今しばらくの間我々のホームページを利用していただきたい。 [ACE]

<http://www.tidbits.com/>

Word 97-98 Importer 入手可能 -- 先日 Microsoft 社は Mac 用 Office 98 を今年中にリリースすると発表した。そして興味をそそることにベータ 版の Word 97-98 Import コンバータをリリースしたのである。Mac 用 Word 5 と 6 のユーザーはこのソフトウェアを Word 97-98 フォーマット(Word for Windows 97、これから発売される Word for Windows 98 および Word for Macintosh 98 で用いられる)のドキュメントを読み込むのに使うこと ができる。同社の Web サイトからダウンロード可能で容量は 1.4 MB。同 社に確認したところ今後しばらくの間ベータ版にとどまるという。ドキュ メントを Word 5 または 6 フォーマットに変換し忘れるという Word 97 ユーザーの頭痛の種を体験した読者なら、このベータ版ソフトウェアは役 に立つだろう。ただし Read Me ファイルに載っている既知障害リストには ざっと目を通しておくことをおすすめする。インストーラがインストール するのは、本体(Word 97 - 98 Import version 97081800 と呼ばれる)、 新規グラフィックスフィルタ数点(JPEG 、PNG 、メタファイル)、そして バッチコンバータである。Importer は 68020 搭載 Mac 以降で作動。

<http://www.microsoft.com/MacOffice/ProdInfo/Office/CoExist.htm>

Microsoft 社は Office 98 の発表にともない Office 98 は PowerPC 搭載 の Mac 上でのみ作動すること、そして Office 98 には自動修復機能があ る - ユーザーが Office 98 に必要なたくさんの Shared Library のひと つをうっかり取り除いてしまってもソフトウェアが自動的に新規 Library を生成する - とアナウンスした。[TJE]


クローンを追い払う

by Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
(翻訳:尾高 里華子 <odaka@iprolink.ch>)

Apple はクローンゲームに参加していた重要な 2 社を切り捨てた。私が最 近のクローンライセンス関連記事でありえないだろうと言っていたことを やってくれたのだ。2 週間前、Apple は Power Computing 社の Mac 関連 資産を Mac OS ライセンス込みで買い取ったのだ。そして先週、Motorola Computer Group は Mac OS クローンの製造を中止する旨の発表を行った。 Motorola 社は今年末まで StarMax の販売は続けるが、その後は保証内の サービスとテクニカルサポートを行うことになる。さらに、Motorola 社は 既存および新規の StarMax ユーザーに対する電話でのサポートを今までの 90 日間から一年間に延長する。

<http://www.mot.com/GSS/MCG/new/press_rel/pr970911.html>
<http://www.mot.com/GSS/MCG/starmax/html/qna.html>

Power Computing 社の場合と同様に、最後までもつれていたのはクローン メーカーが Apple に支払う金額のことではなかったようだ。Motorola 社 は今までよりも多いライセンス料を Apple に支払うつもりであったらし い。だが、ロイターが伝えるところによると「クローンメーカーが Common Hardware Reference Platform(CHRP)ベースのシステム開発に必要とする ものを Apple ははなそうとしなかった」ということだ。つまりこれは、Mac OS を CHRP マシンに搭載するライセンスを Apple が Motorola に供与し たくなかったということだと思われる。なぜなら、マザーボードに CHRP を採用していないマシンに Mac OS 8 を搭載するという契約が、UMAX 社と Apple の間で成立しているのだ。

サブライセンスは ? Motorola 社が TidBITS のスポンサーでもある APS 社をはじめとした他のクローンメーカに Mac OS をサブライセンスしてい るのを思い出していただきたい。APS の Paul McGraw 氏が次のように語っ てくれた。

Apple Computer 社の現在のライセンスに対する動向を考えると仕方のない ことかもしれないが、Motorola Computer Group(MCG)が Mac OS 互換機 部分を切り捨てるという決定を下したことは甚だ遺憾である。この決定は 市場全体、特にサブライセンシー達の事業にとって損害である。そしてこ の決定のために、我々もここ数ヶ月のうちに厳しい決定をいくつか迫られ ることになるだろう。最低でもこの事を一般に公表する前にサブライセン シーに伝える義務があると MCG に思って欲しかったというのが普通の考え であろう。残念ながら事前に伝えない方を選んだという事実は、MCG がサ ブライセンスを供与しているパートナーのことをどの程度思っているかを 物語っているのだろう。

業界筋の情報によれば、IBM も同じく Mac OS 事業から撤退する決定を下 したようである。IBM は Macintosh クローンの製造は行っていないが (PowerBook 2400 のデザイン面で協力をしていたし、Macintosh クローン の製造に着手する前に Apple から CHRP およびポータブルデザインの認可 を受けるつもりだったらしい)、台湾の Tatung 社および日本の Akia 社 に Mac OS のサブライセンスを与えている。Tatung、Akia の両社は IBM 製 CHRP を採用した CHRP Mac を設計していたのだ。

現行のクローンライセンス契約はまだ有効であり、今後の成り行きは未だ 霧に包まれている。Motorola 社は Apple に対して訴訟を起こす可能性を 除外してはいない。情報筋によると、Macintosh クローン事業を始めるの にあたり Motorola 社が投入した費用は 1 億 4 千万ドルであり、中止に かかる費用は 9 千 5 百万ドルになるらしい。Motorola が損失を最小限に 食い止めようとすると考えざるをえない。IBM の方はまだクローンマシン を製造していないので金銭面での投資は少ないのだが、サブライセンシー 達はこれからしばらくこの問題に頭を悩まされるはめになる。たとえば、 PowerTools 社は Motorola 製マザーボードを搭載したマシンの製造を継続 するものの、UMAX 社ともマザーボードの件で契約を交わしたということが MacInTouch に書かれていた。

結末はいかに ? 言うまでもなく(Steve Jobs が率いていると思しき) Apple のやり方のために TidBITS-395 で私が挙げたマイナス面に行き着 いてしまったものがある。Macintosh のデベロッパーのなかにはほかのプ ラットフォームに事業を移行しようかという話もあるし、企業は Mac に限 定した広告やトレードショーから引き上げ始めている。Apple の行動は全 体的な業界の評判や、PowerPC の供給元である Motorola や IBM との関 係、そして今までは忠実だった Macintosh ユーザの信頼に、さらに如何と もし難いダメージを加えているのだ。

Apple は生き延びることができないほど金銭的損失を出しているというの が Apple の重役連からの反論である。すべての数字を知っているのは Apple だけなので、この反論を正確に判断することはできない。かりに Apple の言葉を信じたとしても、Apple と Steve Jobs 氏がこの状況を上 手に取り繕っていないのは明らかだろう。もし存在するのであれば、最近 の Apple の広報担当は誰なのだろうかと思ってしまうのだ。

Apple の広報が流した唯一の情報は、Jobs 氏が MacInTouch の Ric Ford 氏と電話で会談をしたということだ。この時の話をもとに、Ric は Jobs 氏が Mac OS と PowerPC チップに戦略を集中していると判断している。さ らに、Jobs 氏が来年 Macintosh 市場を拡大するための実行可能な計画を 手にしているとも考えている。Jobs 氏が語ったことが真実であって欲しい し、そして彼の計画には成功してもらいたい。Jobs 氏がクローンライセン スを切り捨てることがやむを得ないと判断したのは残念である。それは、 クローンライセンスが消滅してしまうことが、ものすごく危険な結果に繋 がると考えているからだ。

<http://www.macintouch.com/newsrecent.shtml>


Macintosh がらくたキャビネット

by Kris Kunze <puck@wr.com.au>
(翻訳:松岡 文昭 <mtokfmak@mxa.meshnet.or.jp>)

ヤクの入ったシアトルの霧雨に多分苦しんでいる TidBITS の善良な人たち は、私の Web サイト "Oddities, Curios, and Rarities for Macintosh" について、私に記事を書いて欲しいと依頼してきた。さて、まあ、よかろ う。我々はすべて愛、賞賛、そしてアンディー・ウォーホールの言う誰に でもある 15 分間の名声の時を片づける機会が必要なのだ。

<http://www.mac-curios.com/>

私のページのテーマは全く単純だ。それは Mac 用の奇妙で不思議なそして 珍しいシェアウェアのダウンロード・コレクションなのだ。各アイテムに は有益な記述か、全く無関係なことについての大言荘語が添えられている。 人々はそれを一読し、考えるのだ、「おお、ほんとに愉快そうじゃないか。 私はホチキスをシミュレートするこのプログラムをダウンロードし、何時 間か楽しんでみよう。」そして彼らはするのだ。そしてそれを愛してしま うのだ。そして私にそう書いてよこすのだ。

<http://www.mac-curios.com/Files/SimStapler.hqx>

ユニークで馬鹿げたブランドのソフトを Macintosh が育てたことがますま す明らかとなっている。ごみ箱から飛び出す Grouches や Windows 95 の 風刺的なエミュレーションから、催眠術をかけるための回転する黄色い車 輪まで、Macintosh はアンダーグラウンドでユーモラスなフリーウェアを 作り上げたのだ。これにはもちろん理由がある。研究結果によれば、我々 Macintosh ユーザーはしばしば思考を着実に処理するのに必要とされる重 要な酵素を欠いており、種として不均衡に同血統繁殖しているのだ(少な くとも部分的には我々の生まれつきの魅力と性的な魅力によるものだが)。

<http://www.mac-curios.com/Files/95Demo.sit.hqx>
<http://www.mac-curios.com/Files/bugeyes.sit.hqx>

あっ、しまった、言ってしまった?私が言うつもりであったのは、何かが 我々 Mac ユーザーを群衆から別なものとしているのだ。Macintosh の創造 に投じられたオリジナルの美学は今日まで続いている。この美学はソフト ウェアは使い易くあるべきというアイデアだけではなく、使って楽しくも あるべき、というものだ。そして、単に使って楽しいだけでなく、 クレージー であり、我々のオペレーティング・システムの中を、場所を 取る間抜けな開発者の写真で無駄使いしようではないか。Mac には恒常的 逆流として、そのような類の性格があるのだ。

これは私の Web ページが材料に事欠かないことを意味する。何時も、奇妙 さの天井を打ったと思うとき、私はもっと多くの宝物を見つけるのだ。最 近、Hotline (ほんのわずかの人たちが探検する Internet の一部)に ちょっと手を出した時、私は小さいウインドウにアニメーションで動く線 で作られた人を表示する Psychomatic というユーティリティを見つけた。 その作者は、その日、「倦怠を覚え」、経営用ソフトウェアを書くことを 中断し、この無用なアイテム(実際、巧妙で芸術的なメリットを含んでい る)を作り上げたのだ。環境が違っていれば、それは近代美術の画廊で、 エキサイティングにマルチメディア展示した鼻の穴の毛の直ぐ隣りで、プ ロジェクタで壁に投射されているかの様にも思える。

<http://www.mac-curios.com/Files/Psychomatic.sit.hqx>

私の Curios コレクションの全てのアイテムがこのような明白なメリット を持っているわけではない。良い例が Lobsterpetting で、ロブスターの 絵を表示し、それをあなたがなでるというユーティリティだ。それが喜ん でチューチュー鳴くにつれ、あなたは、自分は一体何をしているのだろう といぶかり、そしてその著者の心に何がおきているのか理解しようと試み るだろう。殆ど何もないのだ、同封された ReadMe を精読すれば判るのだ が。それは下手なアートだろうか? コメディーだろうか?折り紙つきの愚 か者の心を通して伝えられた実存主義的主張だろうか?

<http://www.mac-curios.com/Files/Lobster.sit.hqx>

恐らく上記のいずれでもないだろう。しかし Lobsterpetting は Macintosh に特有のものなのだ。プラットフォームを使い分ける人達(ああ、そう、 とっても近代的な)が私に言うには、Windows では同様なジャンルが育ま れなかったのだ。本当に悲しいことだ。冷たく灰色な企業マシンは、感情 のない無の夜明けに向かって空っぽで退廃した創造者達を引きずりながら、 堅苦しく踏み外すことのない目的で埋められた無限の夜へと大股で進んで いくのだ。

一方、どこか帝国のはずれの野原で、狂人と愚か者の一群が新しい時代の 始まりをたくらむのだ。彼等はカラフルなペイントを買い、バラエティに とんだそれ等の匂いを嗅いでは飲み、笑い、そして深紅に染まった日の出 へと彼等の道を塗り進むのだ。彼等は貧窮しており、利益は不十分だが、 彼等には魅力的な何かがあり、活気で満たされているように思える。私の 収録するソフトウェアは、愚か、意味がない、またはつまらないもの(し ばしばこれ等 3 つが結束したコンビネーション)かもしれないが、しかし それはクレイジーな精神が Macintosh の世界では生き続けていることの証 なのだ。


Virtual PC: 遅いが待つ甲斐あり

by Glenn Fleishman <glenn@popco.com>
(翻訳:尾高 修一 <odaka@iprolink.ch>)
(翻訳:小川 浄 <tao@peanet.ne.jp>)

Connectix 社の 新製品、Virtual PC を使うのはやや奇妙な体験だ。アイ コンをダブルクリックして一分もしないうちに、Windows 95 のスタート アップスクリーンが目の前に出現することになる。人によっては、これは 恐るべき悪夢のような事態だろう。別の人にとっては避けられない事態だ ろう。さらに別の人にとっては、Intel マシンでしか動作しないソフトウェ アに依存した組織内で Macintosh を使うための現実的方法でもあろう。

<http://www.connectix.com/html/connectix_virtualpc.html>

ちょっと考えていただきたい。私は PowerBook 3400c/200 を持っている。 Virtual PC をインストールしてあれば、Mac OS 8 と Windows 95 の両方 を持ち歩くことができ、このいずれからも CD-ROM と フロッピーにアクセ スできるほか、ダイアルアップと Ethernet 経由のネットワーク接続も可 能だ。Macintosh モデムを使い、Windows 95 が Dial-Up 接続ツールで PPP 接続を行っているところを見るのは実に奇妙な体験だ。私のように時には Windows を使わなければならないが、そのための機材も出費も避けたい人 たちにとっては悪夢というよりは夢が現実になったというべきだろう。

Virtual PC は Mac の PowerPC プロセッサを使って Intel Pentium MMX チップとそれに付随するチップ群をエミュレートし、本来なら PowerPC プ ロセッサでは絶対に動作しないようなソフトウェアを動作させることので きる“仮想マシン”を作り出すのだ。このため、Virtual PC には Windows 3.1 または Windows 95 が付属するものの、Connectix によれば Windows NT、OS/2、または Intel マシン用 Rhapsody プレビュー など、どんな Intel マシン用オペレーティングシステムでもインストールすることがで きる。このレビューは、Virtual PC 上で Windows 95 を動作させた場合だ けを対象としている。

確かに Virtual PC は Mac ユーザーが PC クローンを買うはめになる事態 を避けさせてくれるのだが、そこそこの馬力を持った Mac が必要だ。 Virtual PC の Windows 95 版を動作させるには、最低でも 180 MHz で動 作する PowerPC 603e、最低 32 MB の RAM、それに 300 MB の空きディス クを Connectix は推奨している。同社は二次キャッシュが性能向上に役立 つことも述べており、二次キャッシュは大きければ大きいほど好ましい。 Connectix 社の Brian Grove 氏は、「Virtual PC のパフォーマンスを向 上させる唯一最大の方法は(特に Windows を使う場合は)二次キャッシュ を大きくすることです。このことは特に 603e マシンの場合に顕著です。 速い PowerPC プロセッサでさえも、Virtual PC がデータがキャッシュか ら届くのを待っているような場合があるからです。」(Windows 3.11/DOS 版の場合、必要ハードウェアの条件はやや緩和される。)

インストール -- Virtual PC のインストールは楽勝だ。CD-ROM ドライ ブは必要だが、インストーラは単に事前に環境が設定されたディスクイメー ジをコピーするだけなのでほんの数分で完了する。

インストール作業のうち最もクールなのはリスタートしなくても良いとい うことだ。システム機能拡張など、システムに変更を加えるものは含まれ ていない。この事実のため私の同僚、Steve Broback 氏(『Beyond the Little Mac Book』の共著者)の口から「おお!」という感嘆が漏れ、彼は すぐさま自分用に Virtual PC を買ってきてインストールした。

インストールの後、Windows 仮想マシンにどれだけの RAM を割り当てるか を決めることができる。Virtual PC アイコンを選択し、File メニューか ら Get Info を選び、Preferred Size フィールドを書き換える。Virtual PC 自身も多少のメモリを消費するので、Preferred Size フィールドに 40 MB と入力すると Windows には 33 MB が与えられることになる。

Virtual PC を使ってみて、皮肉なことに気がついた。Virtual PC に同梱 される Windows 95 のバージョンは“revision B”で、これには最少ファ イル割り当て単位を使わない File Allocation Table(FAT)アップデート が含まれている。ということは、Windows 95 ファイルシステムは(特に小 さなファイルが大量にある場合には)Mac OS よりもはるかに少ししかディ スクスペースを消費しないということになる。Mac OS 8.0.1 にはこの制約 を取り払い、Macintosh ファイルシステムに大幅な改良を加えた HFS Plus が含まれる予定になっているが、私の Mac のディスクスペースは Macintosh よりも Virtual PC の配下にあるディスクイメージの方がより 効率的に使われているというのは皮肉なことだ。

PC のように -- 通常の使用では、Virtual PC は実に快適だ。私はあり とあらゆる種類の画像処理や Web 関係のソフトウェアを全く問題なくイン ストールすることができた。Netscape Communicator 4.0、Microsoft Internet Explorer 3.0、DeBabelizer 4.0、それに Ulead PhotoImpact シ リーズが全く支障なく動作した。

しかし、私は Microsoft Internet Explorer 4.0 for Windows 95 のプレ ビューリリースをインストールするという難題を Virtual PC に押し付け てしまった。Macintosh 版の Explorer プレビューリリースとは異なり、 Windows 版の Explorer 4.0 ベータはデスクトップ環境全体を変えること ができるのだ。これは Windows ユーザーの間でさえも不人気な機能で、本 物の PC でも多くの問題が起きているらしい。Virtual PC には間違いなく 不向きだ。私は Virtual PC を最初からインストールし直すことになって しまった(とはいっても本物の PC に Windows をインストールし直すより はずっと簡単にできたが)。

LAN 上で TCP/IP を使っていると、Virtual PC は Macintosh が使用して いるものとは別の IP アドレスを必要とする。こういった意味では、Mac が 2 つの IP アドレスを同時に扱うことができるようになった最初の一般 向け製品だということになる( Ethernet を使用するには Open Transport が必要だ)。実用面では、Macintosh と Windows の環境で同時にインター ネットを使うことができるということになる。私は Mac でブラウズしなが ら Windows で FTP してファイルをダウンロードしたりするのだ。

Connectix が一台のマシンに 2 つの IP アドレスを与えることに成功した のは、特に変ったことを何もしていないからだ。仮想マシンは独自の TCP スタックを走らせる。これはアプリケーションソフトウェアとネットワー クハードウェアの仲介をするソフトウェアだ。コンピュータには物理的に 一つしか Ethernet デバイスを接続することができないが、各スタックは それぞれが完全に独立した論理的な IP アドレスを持つことができる。Unix や Windows NT の世界では、一つだけの Ethernet デバイスで多数の IP アドレスを持っている人は多いのだ。

PPP の設定は Windows 側で行う。Windows 95 のウィザードが説明しなが ら作業をさせてくれる。PPP の設定はややこしいので、ウィザードは私に はぴったりだった。私の PowerBook 3400c の内蔵モデムでは Windows PPP が動かなかったので(Windows 95 の他のアプリケーションはモデムを認識 していたのだが)、Global Village PowerPort Platinum Pro PC Card(私 は GV PPPPP と呼んでいる)に切り替えた。これで Virtual PC を起動す ると不可解な“プロセッサエラー”に遭遇することになったので、 Preferences サブメニューで Ethernet を一時的にオフにした。Connectix はこの問題の原因を突き止めており、今後のメンテナンスリリースで解決 されることになるだろう。

Mac 側の問題 -- Mac と Windows 環境を切り替えるのは簡単だった。 Windows 側はフルスクリーンかウインドウ内表示を選ぶことができる。フ ルスクリーンモードでは、Command キーを押すと Mac のメニューバーと Ethernet 接続、CD-ROM ドライブ、フロッピーディスク、それにハードディ スクの動作状態を示すステータスバーが表示される。

Virtual PC ではビデオモードを切り替えるのも簡単で、PowerBook 3400 の 800 x 600 モードでも、外部モニタでも問題なく動作した。Windows の 解像度は Windows Display コントロールパネルを使う。Windows に割り当 てる VRAM の量は Virtual PC の Preferences ダイアログボックスで設定 する。

Virtual PC の最も気の利いた機能は、作業状態を保存することができると いうことだ。これは Virtual PC の Windows 環境をスリープさせるような ものだ。Virtual PC を(Windows 95 の Start メニューではなく)Virtual PC のメニューから終了させると、Virtual PC での作業状態をディスクに 保存するか尋ねられる。次に Virtual PC を起動すると、少々待ち時間が できるが(私の 3400c では約 20 秒)、元の状態に戻ることができること になっている。このレジューム機能は完全に期待通りの働きをしてくれる わけではないので、私にとっては一長一短だ。3400c の動作中に入れ替え 可能なドライブベイ(CD-ROM または フロッピー)と、Ethernet と TCP/IP の設定を簡単に切り替えられるという Mac の機能は素晴らしいものだが、 レジュームさせると Virtual PC を大混乱に陥れるという問題がある。こ れはまるで起動してある PC から Ethernet カードや CD-ROM ドライブを いきなり抜き取るようなものだ。このような環境を変える前には完全に Windows 95 を終了しなければならない。Mac の方を終了する必要はない。

システム構成 -- Virtual PC をインストールする前にシステムの構成を チェックする必要がある。例えば筆者はもともと 48 MB の RAM をセット していたが、RAM Doubler を使用して Virtual PC 以外に複数のアプリケー ションを走らせておくという使い方をした結果をみて、RAM を 80 MB に アップグレードした。それでもメモリ管理に RAM Doubler を走らせてい る。もっと RAM を増設すれば Windows に 32 MB 以上を割り当てることが できる。32 MB 以上というのは Virtual PC に関係なく Windows 95 に必 要な RAM の事実上最低限の容量である。

もうひとつ、ディスク容量も要チェックだ。Virtual PC は PC の C ドラ イブとして作動するファイルを生成する。ユーザーは 150 MB または 260 MB のどちらかのディスクイメージを選択するのだが、それは最小限または 標準ディスクイメージのどちらを使うかによって決まる。260 MB でもどう にか作業が可能という状態で、また Windows メモリマネジメントシステム はひっきりなしに RAM -ディスク間でスワッピングするので(Mac の仮想 メモリと同じ)、40 あるいは 50 MB を念のため残しておくべきだろう。 これらディスクイメージは ShrinkWrap のディスクイメージのようにダブ ルクリックでファインダにマウント可能である。その際 Windows 95 のロ ングファイルネームは 8 文字・ドット・ 3 文字の DOS 形式名称に変更さ れる。

Virtual PC の Preference ダイアログにしたがえば、増設ドライブとして 機能する新規ファイルを作成するのは簡単だ。D ドライブをクリックし、 新規ハードディスクイメージボタンをクリックし、そして作成したいディ スクイメージファイルの容量を入力する。不便なことに Windows 95 セッ ション中にこの作業を行なうと仮想マシンをリスタートするオプションが 現われる。使用中の Mac をパワーダウンさせるのは面倒だし、Windows 95 を走らせている PC を落とすのも同様だ。Virtual PC による仮想マシンも 同じなのである。そこで最初に Windows 95 のスタートメニューからシャッ トダウンを選択し、しかる後シャットダウンダイアログのなかの DOS モー ドのリスタートを選択する。DOS モードに入ってしまえばいつでもリブー トできる。そこで新規ディスクイメージを作成しリスタートをかける。そ の際 Preference ダイアログの警告やドキュメントが役に立った。筆者は この手順を試行錯誤の末に編み出したのである。

ドライブはいったん作成してしまうと容量を変えることはできない。そし てその全容量の(中身は一杯でも空でも)イメージがユーザーの Mac の HD 上に現われる。Windows に取り組んでいる限り、そういうものなのだ。 これらディスクイメージは広く使われている Dantz 社の Retrospect とい うバックアップソフトウェア(ほかのバックアッププログラムも同様)の バックアップ作業とは相性が悪い。Virtual PC は起動したり終了するだけ でもイメージファイルを更新するので、Retrospect は次に作業を実行した ときにバックアップしようとする。昨今筆者のディスクイメージ状況では Retrospect がこれらのファイルをバックアップしないように気をつけてい ないと毎晩通常プラス約 600 MB をバックアップしてしまう。

<http://www.dantz.com/>

筆者は容量問題に対する解決法をいく通りか見つけた。まず、ユーザーが 全部の PC ファイルについてディスクイメージを利用せねばならない理由 はない。Virtual PC によって Mac と Windows 環境間のフォルダの共有が できるのだから、その共有フォルダ(おそらく K ドライブになる)に作業 結果の大部分を保存すればよいのである。Retrospect はそのフォルダをひ とつのファイルと認識するだろう。あるいは、Retrospect にディスクイ メージをファイルではなくボリュームと認識させる目的でファインダにマ ウントする方法もある。マウントしたディスクイメージも共有フォルダも DOS 形式ファイルネームを使うので、後で元に戻すのは大変かもしれない。 第二に、Virtual PC を常時立ち上げておいて Virtual PC のディスクイ メージをバックアップするのに Windows 95/NT Retrospect Remote コント ロールパネルを使うというやり方もある。つまりディスクイメージが実際 の PC の中の本当のハードディスクであるように扱うのである。ちょっと 妙だが、ちゃんと機能するしロングファイルネームにも対応する。

性能 -- Virtual PC のスピードについてよく質問を受ける。筆者の PowerBook 3400c による環境は Connectix 社による 603e チップ 200 MHz という推奨ラインの許容範囲ぎりぎりといったところだが、やはりスロー に感じられた。[Virtual PC のベータ版テスターからいくつかコメントが 届いた。彼らの PowerPC Mac は Connectix 社の推奨ラインに達していな かったが、驚いたことに喜々として Virtual PC を走らせていた。-Tonya] 筆者には 50 MHz の Pentium MMX マシンを動かしているような感覚だっ た。特定の作業は速かったが、それ以外では基本的ネットワーク機能や描 画機能の終了に何分か待たされた。とは言え単独の Mac アプリケーション である Virtual PC の利点のひとつはプロセッサのパワーを独り占めする こともなく完璧にバックグランウンドで動く点にあるのだ。筆者の 603e より速いチップではその分の差は出ると思うが、それを考慮しても Virtual PC の性能に口をぽっかり開けるようなことがあるとは思えない。

Virtual PC は筆者が慣れ親しんだ PC ハードウェアよりもリスタートを要 求する度合が大きい。そして設定にはちょっとばかり手間がかかる。しか し全体的には Windows 95 で通常のシャットダウンをし、再び必要になっ たときに起動する手順を取れば継続して良好なマナーを見せた。

Windows ソフトウェアを走らせる必要があって Virtual PC の最低限のス ペックに合致するマシンをお持ちのユーザーにならば、150 ドルを下回る あたりの実売価格の Virtual PC を推薦しないわけにはいかない。Web を デザインしたり Web に文章を載せているユーザーには Mac 上のブラウザ と PC 上のブラウザの両方でテスト可能という点のポイントはますます高 くなるだろう。ひとつのマシンでこれができるのは(待ち時間を考慮して も)ありがたいものだ。

[Mac 上で Windows アプリケーションを走らせる SoftWindows を長い間作 り続けてきた Insignia Solutions 社は本日 Real PC を出荷開始した。 Real PC は Pentium MMX をエミュレートし Sound Blaster を完全にサポー トする。DOS や Windows 環境下でゲームを走らせることに重きを置いてい る。Real PC の推定実売価格は 79 ドル、Windows OS は付属しない。 -Tonya]

<http://www.insignia.com/>

DealBITS ディスカウント -- Cyberian Outpost は TidBITS 読者に Windows 95 付の Virtual PC を 134.95 ドルで販売している。URL は以下 の通り。Cyberian 通常価格から 5 ドル値引き。

<http://www.tidbits.com/products/virtual-pc.html>

    Connectix -- 800/950-5880 -- 415/571-5100 -- 415/571-0850 (fax)
      <sales@connectix.com>
Insignia Solutions -- 800/848-7677 -- +44/131-458-6849 <maccs@isinc.insignia.com>

非営利、非商用の出版物およびウェブサイトは、フルクレジットを明記すれば記事を転載またはウェブページにリンクすることが できます。それ以外の場合はお問い合わせ下さい。記事が正確であることの保証はありませ ん。書名、製品名および会社名は、それぞれ該当する権利者の登録商標または権利です。TidBITS ISSN 1090-7017

tb_badge_trans-jp2Valid HTML 4.01!Another HTML-lint gateway