TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS-J#398/22-Sep-97

Mac OS 8 をインストールされて、新しい機能を活用しているだろうか?今 週はコンテキストメニューを取り上げよう。ニュースの部では、来るべき NetBITS の創刊号、Steve Jobs 氏の新しい地位、そしてクローンを購入し た人達の為の Mac OS Up-to-Date プログラムの詳細について言及する。そ して、Virtual PC に関するさらなる情報、抗ジャンクメールの EIMS 2.0b2 についてのニュース、そして Rick Holzgrafe 氏による「成功するシェア ウェア」の第 2 部をお届けしよう。

目次:

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MailBITS/22-Sep-97

(翻訳:松岡 文昭 <mtokfmak@mxa.meshnet.or.jp>)

NetBITS 登場 次の金曜日に我々のいかした新しい刊行物 NetBITS のサ ンプル刊を電子メールにてお送りするので、お見のがしなく。全詳細は NetBITS の創刊号ならびに次号の TidBITS(木曜日の夜に Web サイトのパ スワード保護を解除する予定。NetBITS は .net の最上階層ドメインを使 用。)で紹介する。TidBITS の読者は最初の二刊のみは自動的に受け取る が、それ以降に関してはサブスクライブ(もちろん無償だ)する必要があ るとだけ、今は言っておこう。<netbits-on@netbits.net> へ電子メールを 送るとテキストバージョンをサブスクライブでき、そして、HTML バージョ ン(ご使用の電子メールプログラムが HTML メールを解読できることを確 認要)は <netbits-html-on@netbits.net> へメッセージを送るのだ。もし あなたがプレス関係者で内覧をご希望の場合は、メモを頂ければ若干の追 加情報をお送りしよう。詳細はまもなく![ACE]

<http://www.netbits.net/>

Mac OS Up-To-Date プログラムが拡大 -- Apple は先週、Mac OS 7.6 を 受け取った Macintosh 購入者が 9.95 ドルとタックスで Mac OS 8 にアッ プグレードできるという Mac OS Up-to-Date プログラムを、もとに戻し た。以前、Apple は当該プログラムを、Apple から Mac を購入した人達の みが恩典を受けられると、変更したのだ。だが、今、97 年 6 月 22 日以 降に Power Computing 社や UMAX 社から対象となる Mac を購入した人達 も、同様に Mac OS 8 にアップグレードできるのだ。Power Computing 社 と UMAX 社の顧客からのオーダーは 97 年 10 月 15 日までの消印が必要 だ。その日付以降、UMAX 社と Power Computing 社は Mac OS 8 での出荷 となるはずである。以前に Power Computing 社または UMXA 社の顧客より 提出されたオーダーは有効であり再提出の必要はない。Apple は、Mac OS Up-to-Date プログラムが適用されるように、他の Mac OS ライセンシーと 作業を継続していると言っている。我々は Apple がこれ等 Mac ユーザー の為に正しいことをしているのをうれしく思っているが、もしクローン購 入者に Mac OS Up-to-Date プログラムを提供するという最初の約束を反故 していなければ、Apple は信じられないくらいの嫌悪の情を避けることが できたはずだ。[ACE]

<http://product.info.apple.com/pr/press.releases/1997/q4/ 970915.pr.rel.macos.html>

Jobs 氏、「暫定 CEO」に任命される -- Apple の取締役会と経営者マ ネージメントチームに「特別アドバイザー」として数カ月間仕えた後、 Steve Jobs 氏は、Apple の取締役会が新しい CEO を選出できるまで(多 分今年の終わり前に)、正式な暫定 CEO に任命された。新しいタイトルは 殆ど何も変えないのだが、興味深いのは、Jobs 氏が、称賛同様、彼の行動 に対してしかるべき責任をとることを強いられるうることだ。以前は、Jobs 氏にとって、彼の行動による問題に対する責任を回避するかたわら Apple での成功を自分の手柄とする事が、容易であったのだ。Jobs 氏の動機は謎 のままである - 彼は CEO のポストを拒否し、今でさえ何カ月間かの暫定 CEO の立場にあるだけだ。しかし彼の最近の行為は、彼自身のイメージに 会社を作り直そうとする者の行為である。 [ACE]

<http://product.info.apple.com/pr/press.releases/1997/q4/ 970916.pr.rel.jobs.html>

EIMS 2.0 パブリックベータ版 -- Qualcomm 社は、従来 Apple Internet Mail Server として知られていた、Eudora Internet Mail Server (EIMS) のバージョン 2.0b2 をリリースした。EIMS 2.0 は製品版のリリース時に は 199 ドルとなる予定だが、EIMS 1.2 はフリーウェアのままとなる。我々 がベータ版に切り替えた理由は、ちょうどここで起こったように、メール サーバ経由でジャンクメール屋達がメールをリレーするのを阻止できるか らだ。EIMS 2.0 のインストーラは EIMS 1.2 のアップグレードを 1.2 の 設定を壊さずできるのだ(1.2 に逆戻りしたい場合に好都合)。その他特 記すべき変更点は、リモート管理、複数ドメインのサポート、メールグルー プ、自動返信と Ph サポートだ。我々のテストでは、EIMS 2.0 の使用期間 付きベータ版は安定しており実用的であった。そして、2.0b1 で 8 文字に 制限されていたパスワードサイズは、2.0b2 では 31 文字に増やされた。 EIMS 2.0 は、少なくとも 68030 ベースの Mac、System 7.1、Open Transport 1.1.2 と DNS へのアクセスを必要とする。 [ACE]

<http://www.eudora.com/betas/eims2.html>

Virtual PC 後報 -- TidBITS-397 での Glenn Fleishman 氏による Virtual PC のレビューに対し、Julie Bernstein 氏 <julie_bernstein@ls.berkeley.edu> は、Connectix 社は、ハードディス クイメージ作成後にその大きさを変更できるよう、HD Utility (Virtual PC の Extras フォルダにある)というプログラムを提供していると、コメ ントを寄せてくれた。さらに、HD Utility は SoftWindows からのディス クイメージや Apple PC Compatibility Card 形式を Virtual PC 形式に変 換してくれる。また我々は述べ忘れていたが、Virtual PC では Mac から Windows へとコピー・ペーストできるが、Wiondows から Mac ではできな いのだ。その方向での情報の移動はファイル内か電子メールによるもので なければならない。

最後に、Glenn と私の 2 人は、同一マシン上で二つの Ethernet 方式(二 つのカード、または PC カードと内蔵)を用いると、Virtual PC が混乱し うることを発見した。このことは記事の中でほのめかしたのだが。Global Village 社と Apple の双方は、Glenn が彼の 3400 とGlobal Village PC Card で用いる Ethernet 方式へのアップデータをリリースし、彼の問題を たちどころに解決している。Apple のものはサポートなしのリリース候補 となっている。 [ACE]

<ftp://ftp.globalvillage.com/pub/software/mac/GV_PC_Card_3.0_Update.sea.hqx>
<ftp://ftp.info.apple.com/Apple.Support.Area/Apple.Software.Updates/US/ Macintosh/Unsupported/PB_3400_Modem_Driver_Update.img.hqx>


二十日鼠とメニュー

by Tonya Engst <tonya@tidbits.com>
(翻訳:小川 浄 <tao@peanet.ne.jp>)

読者が Mac OS 8 へとアップグレードした 120 万人 + の内のひとりで筆 者と同じような状況なら、新しい特長の恩恵を受けるのに時間がかかって いることだろう。その中のひとつコンテクストメニュー(CM)は見過ごさ れやすいが価値ある機能だ。Apple 社はマウスの大きな動きを減らし、ユー ザーが行なっている作業の流れの中でコマンドに直接アクセスするのをサ ポートする目的で CM を新設した。CM はアイコン、ウィンドウ、その他の アイテムをコントロールキーを押しながらクリックすると画面に現われ、 ユーザーは必要なコマンドに素早くアクセスできる。

Mac OS 8 に備え付けの CM は Finder 上で作動し、数は少ないが基本的な コマンドが内部に用意されている。例えばユーザーはファイルを操作して ゴミ箱に入れたり、ラベルを付けたり、エイリアスを作ったりできる。ま たコントロールキーを押しながらゴミ箱をクリックするとゴミ箱を空にす るコマンドが現われる。システムフォルダの中の CM 項目フォルダへプラ グインをインストールして再起動をかければ、Mac OS 8 備え付け CM に機 能をプラスできる。現時点では PowerPC ベースの Mac のみプラグインが 利用可能なので、この記事の残りの部分は 68040 ベースのマシンを使って いる読者には役に立つどころか嫌味になってしまう。

CM に似た機能を提供するプログラムもいくつか存在するようだが、そのよ うな試みは Mac OS 8 の CM とは別個のものである。Bare Bones Software 社の BBEdit 4.5 は Mac OS 8 の CM をサポートして出荷された最初のア プリケーションで、備え付けコマンドの一部機能をサポートし、CM 項目 フォルダにインストールされた適切なプラグインにも対応する。

Quick Compression -- 筆者が真っ先に追加した CM コマンドは Chris DeSalvo 氏の 5 ドル の Compression Plug-In 1.0 だ。CM 経由で Aladdin 社の StuffIt Expander と DropStuff ユーティリティを使ってファイルや フォルダを圧縮・伸張するプラグインで、わずか 13K のダウンロードによ り入手できる。最初筆者の Compression Plug-In はうまく作動しなかった が、1.0.1 という新バージョンは起動ディスクと別のボリュームにあった StuffIt Expander と DropStuff を見つけ出して障害を回避してくれた。

<http://www.mycds.com/staff/desalvo/shareware.html>

Internet Address Detectors -- 次に CM 項目フォルダに追加したのは Apple 社から無償で入手した Apple's Internet Address Detectors (IAD) というプログラムである。ほとんどのアプリケーションにおいて、IAD は コントロールキーを押しながらクリックして選択したテキストを解析し、 中の URL と電子メールアドレス関連の実行可能な機能をサポートする。例 えば URL を開いたり、ブックマークとして保存する。IAD は Internet Config、Netscape Navigator、AOL、Internet Explorer、Anarchie、 Fetch、Cyberdog 等と協調して動作し、パッケージには Apple Data Detectors コントロールパネルも含まれている。そのコントロールパネル の設定により、ユーザーが使用しているインターネットソフトウェアに必 要なコマンドだけを提供するようにセットできる。(コントロールパネル のウィンドウを広げてコントロール項目をさらに一覧可能にもできる。) IAD がアプリケーションの適切なバージョンを発見できないような場合に は、デスクトップの再構築で障害を除去可能。

CM をサポートしていないアプリケーションには、新しい機能拡張 CM イ ネーブラを追加して Mac OS 8 CM の機能を実現することもできる。ご推察 通り、すでに他の機能にコントロールキーをあてている特定アプリケーショ ンでは障害が出る。Apple 社は冷淡なテクニカルノートを発表し、 FileMaker と Excel で発生する障害にふれて「当社では将来に備えてコン トロールキーの使用を避けるようにデベロッパーにアドバイスしてきたつ もりだ」とこれらアプリケーションを名指しで取り上げた。ユーザーの立 場は宙に浮いてしまったが、運がよければ Apple 社がカスタムキーボード ショートカットを受け付けるバージョンをリリースするか、ソフトウェア デベロッパがソフトウェアをアップデートして CM 対応にするだろう。

<http://til.info.apple.com/techinfo.nsf/artnum/n22077>

IAD は 2.2 MB の DiskCopy イメージとしてダウンロードできる。インス トールには DiskCopy 6.x(IAD ダウンロードページから入手可能)あるい は Aladdin 社の ShrinkWrap 3.0 が必要。

<http://www.macos.apple.com/macos8/iad/>
<http://www.aladdinsys.com/dev/shrinkwrap/>

Web パブリッシングお助け機能 -- 筆者はほんの数日間 Acme CMM Widgets を使用した結果、2 つの項目を HTML の定番ツールにすることに した。Acme Technologies 社が作成したこの無料パッケージは 39K のダウ ンロードファイルに 3 つのツール、Copy Image Size、ColorFinder CMM、 Clipboard to Clipping が含まれている。Copy Image Size は Finder 環 境で GIF イメージのアイコンを対象に作動し、どんな GIF イメージでも その高さと幅のアトリビュートをイメージタグとしてクリップボードにもっ てくる(将来 JPEG サポートの計画もある)。ユーザーは HTML ドキュメ ントにタグをペーストするだけである。ColorFinder CMM はスポイトツー ルである。スポイトでスクリーン上のピクセルをクリックすると ColorFinder CMM はそのピクセルの色の HTML または RGB 表示をクリップ ボードに持ってくる。ユーザーはいく通りかのタグや表示タイプを選択で きる。Clipboard to Clipping tool はそれほどは役に立たないようだ。ク リップボード中のテキストのテキストクリッピングファイルをデスクトッ プ上に作成するツールである。

<http://www.acmetech.com/cmm.html>

CMM Widgets をすでにダウンロードしている読者に。イメージタグの高さ と幅のアトリビュート値が入れ違うことがある。97年 9 月 17 日にポスト されたバージョンではこの問題が解決されている。

Finder 操作 -- Trygve's CMM Plug-ins 2.1 には数ダースものプラグイ ンが含まれている。それら全部が Trygve Isaacson 氏が作成した 10 ドル のシェアウェアパッケージで、248K のダウンロードファイルになる。筆者 の興味をそそったのは、Touch(ファイル、フォルダの修正日付を現在に変 更する)、Simple Strip HTML(選択した HTML ファイルから HTML タグを 残らず取り除く)、Open With(選択したファイルを指定したアプリケー ションで開く)である。CM プラグインを作ろうと思っているプログラマ は、サンプルとテンプレート付きの Trygve's CMM Framework をチェック するとよいだろう。

<http://www.bombaydigital.com/cmms/>

Finder 操作をもう少し -- 最後に Stephen Marshall 氏の 10 ドルの シェアウェア MacOS8 CMM Expansion Pack 1.0 をみてみよう。2 つのプラ グイン、Finder Info と Set Custom Icon が 84K のパッケージでダウン ロードできる。筆者は Finder Info のみをその機能を説明できる友人や参 考書の助けを借りて使用することを、ほとんどのユーザーにおすすめする。 もっと経験を積んだユーザーは Finder 情報(不可視など)やカスタムア イコンビットを変更したりして楽しめるだろう。Set Custom Icon はファ イルやフォルダに好んでカスタムアイコンを割り当ててコンピューティン グ体験をカスタマイズする人たちの時間を節約する。

<http://www.vuw.ac.nz/~marshall/Unofficial_Pages/Software/software.html>

片手で -- ベータテスト中のあるソフトウェアが原因で、筆者の神経系 統はクリックしたままにすると CM が開く(両手を使って、コントロール キーを押しながらクリックするのではなく)のにすっかり慣れてしまった。 この機能を待ち望んでいるのは筆者だけではないだろう。Tools & Toys 社 にいる同志たちは先週 Look Mom, No Hands! をリリースした。9 ドルの シェアウェアで、マウスボタンを押し続けることで CM が開くようにする 機能拡張である。ダウンロードは 80K、インストール後わずか 10K の RAM を使用する。筆者は今日午前このお宝をインストールし、他愛なくも幸福 を感じている。Look Mom, No Hands! は Finder 上のアイコンでのみ作動 する。

<http://www.toolsandtoys.com/ToolsAndToys/Home/>

結果報告 -- 筆者のコンピューティング習慣は CM によって変わりつつ ある。使うほど CM の美点を感じている。プロのウェイターのように必要 のない時は消えていて必要になるとさっと現われる。おそらく CM を使い こなす上で一番の勘所は設定だろう。CM プラグインを作成しているプログ ラマには、ユニークかつ会社名を含んでいるような名称をつけてほしいと 期待を込めて願っている。あるいは情報ウィンドウから追加情報を得られ るようにしておいてほしい。筆者のマシンには早くもインストール後メー カー名が分からなくなったアイテムがいくつかあり、シェアウェア料金を 払うのが困難になっている。

存在している素晴らしい CM ソフトをすべて網羅したとはとても思えない ので、もっと探検を続けたい読者や新しい開発結果を常に知っていたい読 者は、CM ツールのダウンロードポイント、激励会場、ニュースソースと なっている CM Central というサイトをチェックしてみてはいかがだろう。

<http://www.interdesign.ca/cmcentral/>


成功するシェアウェア(第 2 部)

by Rick Holzgrafe <rick@kagi.com>
(翻訳:尾高 修一 <odaka@iprolink.ch>)
(翻訳:尾高 里華子 <odaka@iprolink.ch>)

この記事の第一部( TidBITS-#395_ 参照)で、シェアウェア作家が製品を 作成・販売する際に考慮すべき“7 つの P”を紹介し、最初の 2 つの P、 Product(製品)と Patience(忍耐) について述べた。今週号では、見落 とされがちだがとても重要な 3 つ目の P、Polish(洗練)について述べよ う。来週号では残りの 4 つの P、Pay Up(支払)、Propogation(配布)、 Promotion(宣伝)、それに Politics(政治)をカバーする。

3つ目の P: Polish(洗練) -- 「作業の最初の 90 % に 90 % の時間が かかり、残りの 10 % にあと 90 % の時間がかかる」という格言があるが、 これはまさにその通りだ。プログラミングが完了してすべての機能が問題 なく動作するようになっても、リリースからはまだ程遠いのだ。

もう一つの名言に、「細部にこだわれ」というものがある。多くのプログ ラマーが考える以上に細部は重要なのだ。これからユーザーになるかもし れない人は製品が信頼できるものでなければならない。仮に製品が機能的 には完璧でも、ユーザーの目に欠陥が多いと映れば支払をする意欲が薄れ る。これは不合理だが事実なのだ。

では、どういう細部が重要なのだろうか?

きれいにせよ -- 人々は見栄えのする製品を喜んで買うのだ。もちろん 美しさは堅牢さや機能に代わるものではないが、製品の外見が良ければそ れに比例して売り上げも上がる。

もしあなたが芸術家ではないのなら、誰か一人確保したほうが良い。友達 にただでやってもらうように頼み込むか、支払える範囲内で雇う。趣味の 良いスプラッシュスクリーン、かっこいいロゴ、クールなアイコンやボタ ンのラベルで、かなり良い印象を与えることができる。Solitaire Till Dawn の外見を良くする度に売り上げが大幅アップするのだが、これが偶然 だとは思えない。美しさは金になる!

<http://www2.semicolon.com/Rick/STD.html>

ヒューマン・インターフェース・ガイドライン -- Mac であれ、Windows や Unix であれ、あらゆるプラットフォームには特定の“スタイル”があ る。特に Mac の場合は Apple が早くからヒューマン・インターフェース ・ガイドライン(HIG = Human Interface Guidelines)を出版していたこ とにより、完全に一定したユーザーインターフェースを持っていることで 知られている。このガイドラインにはアイコンやボタンを配置する位置、 このようなエレメントの大きさ、周囲の余白の広さ、カラーやサウンドの 正しい使い方などがこと細かに指定してある。これが理由で、Quit、 Print、Open などといったコマンドがどのアプリケーションでも同じ場所 にあり、同じ名前で同じキーボードショートカットを持っているのだ。Mac ユーザーは HIG に正しく従っていないアプリケーションにはそっぽを向い てしまうので、ほとんどの Mac デベロッパーはもう下手にインターフェー スをいじらないようになっている。しかし、良い HI(ヒューマンインター フェース)デザインにはこういった明らかな点のほかにも色々な面がある のだ。

HIG: ダイアログやアラートのレイアウトには細心の注意を払うべし -- 多くのプログラムにはごちゃごちゃと混雑したウインドウがある。ユーザー は数少ないボタン類が十分な余白に囲まれているウインドウを好むのだ。 コントロールとディスプレイは注意深く整理しなければならない。関連し たコントロールはまとめておき、関係のないコントロールからは離してグ ループ化しておくべきだろう。チェックボックスはボタンは整列させ、だ らしなく見えないようにする。よく使うエレメントは同じ位置に置く。た とえば、OK と Cancel ボタンはすべてのダイアログで同じ位置に置くべきだ。

コントロールが多すぎる場合には、切替え可能なパネルや、ユーザーがコ ントロール群を選択して、必要なコントロールだけを表示して残りは隠す ように心がけたい。この方法を使えば小さなウインドウにたくさんのコン トロールを入れてもごちゃごちゃしなくなる。Netscape Navigator や Eudora が参考になるだろう。

HIG: ダイアログは避けるべし -- モーダルダイアログは少なければ少な いほど良い。モーダルダイアログはユーザーのワークフロー(あるいは “プレイフロー”)の邪魔になる。ダイアログは各種のエラーを表示する ために使われることが多いので、ユーザーに報告しなければならないよう なエラーの数を減らせば良い。

ダイアログの悪い使い方の例に、私が一度見た一人遊び用のカードゲーム がある。カードを動かすには、まず最初にその上でクリックしなければな らない。正しくない移動先をクリックすると、目の前にアラートが現れ、 そこには移動できないと教えてくれる。さらに悪いことに、動かしたいカー ドをクリックしてから気が変ると、簡単にキャンセルする方法が無かった のだ。どこか正しくない場所をクリックし、アラートを消し去り、次に別 のカードを動かそうとしなければならなかった。

ユーザーが目的地にカードをドラッグ & ドロップするようにした方が良い インターフェースになる。マウスボタンから指を離すとカードが落ちるわ けだ。もし移動できない場所にカードが落とされたら、カードはするりと 元の位置に戻り、ユーザーはすぐに別の場所にカードを移動しようとする ことができる。さらに好ましいのは、カードが正しい位置ドラッグされた 時にはハイライトするようにすることだ。

ユーザーが間違いを犯すことができないようにインターフェースをデザイ ンすれば、ユーザーを苛立たせることもなく、つまらないダイアログやア ラートをたくさん作る必要も無くなる。

HIG: 多すぎるオプションは悪なり -- ある機能がこう動くべきか、それ ともああ動くべきかを決めようとする時、両方を可能にしてユーザーが選 択できるオプションにする誘惑にかられる。時にはこれは正解なのだが、 オプションがあまりにも多すぎるとユーザーが怖じ気づいてしまう。ほと んどの人は理解するのも使うのも簡単なプログラムが欲しいのだ。少しで も難しすぎそうなものはごみ箱に直行だ。

では、オプションを最小限にするにはどうしたらいいだろう? 一つの方法 は、何人の人が本当にこのオプションを必要とするか自問することだ。も しユーザーの 90 % が一方を好むのであればそちらを採用して残りの 10 % にはイライラしてもらったほうが得策だろう。

時にはオプションを隠すこともできる。Peter N Lewis 氏作の FTP クライ アント、Anarchie はファイルのアップロードとダウンロードの際にプログ レスウインドウを表示する。このウインドウは転送に必要な推定残り時間 を色々な方法で表示することができる。人によっては今までの経過時間を 知りたがり、別の人は何時何分頃に作業が終了するか(“今から 12 分後” ではなく“5 時 35 分”)を知りたがる。Peter はこういった様々な表示 を同時にウインドウに表示することもできたが、そうしてしまうと巨大な 雑然とした判読不能なディスプレイを生み出してしまうことになる。また、 オプションを Prefereces ウインドウ に入れることもできたが、そうする と今度はややこしいインターフェースになってしまう。そこで彼が選んだ 方法は単純かつ効果的だ。ユーザーが表示をクリックすると、別の表示に 切り変わるのだ。もう一度クリックすると、また別な表示に変わる。さら にクリックすると、最初の状態に戻る。パワーユーザーはドキュメンテー ションかオンライン TIPS を読んでこのことを知るのだが、そんなことど うでもいいというユーザーはこの機能があることも知らないだろう。

<http://www.stairways.com/anarchie/>

時にはオプションが不適当な場合もある。拙作のユーティリティ、The Tilery はタイルをクリックすることによって開いているアプリケーション を切り替えるものだ。あるタイルをクリックすると、すべてのウインドウ と同様に The Tilery が前面に出てくる。次の瞬間、The Tilery が選択さ れたアプリケーションを前面に持ってくるようにシステムに指示するのだ。 こうして The Tilery が前面から 2 番目にあるアプリケーションとなり、 タイルをクリックされたアプリケーションのすぐ後ろにいることになる。 これはこれで結構なのだが、ユーザーが Command + Q を続けて押して多く のアプリケーションを一度に終了しようとした時に問題が起きる。最前面 のアプリケーションが終了したら、次にある The Tilery が前面に現れる。 しかし、The Tilery は普通のプログラムには見えないためにユーザーはそ のことを忘れ、Command + Q ではからずも終了してしまう。これは苛立た しい限りで、このことではたくさんのメールを頂戴したものだ。

<http://www2.semicolon.com/Rick/Tilery.html>

この問題に対する私の最初の回答は、The Tilery が Command + Q を無視 するようなオプションを加えることだった。こうすればマウスで Quit を 選択しない限り終了しない。これで問題は解決したのだが、正しい方法で はなかったのだ。このオプションを設定しない限り、The Tilery は依然と して終了してしまったのだ。このオプションが何のためにあるかを知るに はマニュアルを読まなければならず、このオプションを設定するメニュー アイテムが、本来ならシンプルであるはずのユーティリティを複雑に見せ ていた。それに、思わぬ時に The Tilery が最前面に来てしまうという問 題は依然として未解決のままだった。

真の解決策は、故意に前面に持ってこられない限り The Tilery をバック グラウンドに置いておくというものだった。この方法を実現するには少し 時間がかかったが、その結果は大幅な改良につながった。(告白すると、 Command + Q を無視するオプションは依然として存在している。というの は、既にユーザーインターフェースの一部として定着してしまっているか らだ。新機能がさらにオプションを増やすことになったので、オプション 設定のインターフェースはさらに雑然としてしまった。でも今は問題が正 しく解決されているのだ!)

HIG: メニューは慎重かつ思慮の行き届いた構成にすべし-- ユーザーが コマンドを見つけるのに迷路のようなメニューやサブメニューでまごつい てしまうようなことがあってはならない。メニューは直感的に見つけるこ とのできるしかるべき場所に配置されなければならない。一つ一つのコマ ンドの機能を考えながら、File メニューに入れるべきだろうか、Edit メ ニューに入れるべきだろうかのように検討していくのだ。サブコマンドを まとめるコマンドに関しては、メニューの階層を増やしていくより新しい メニューアイテムを作ることを考えてみよう。これは口で言うほど簡単な ことではなが、「細部にこだわれ」そしてレイアウトと用語の両面で、メ ニューが明瞭、簡潔かつエレガントになるように心がけるのだ。

ヒューマンインターフェースに関するものを一つ一つ挙げていくと切りが ない。ベータ版を試してくれる人達の意見も参考になるが、出荷後はユー ザーが別の意見を出してくれる。ユーザーはバグの報告だけではなくイン ターフェースの微妙な部分に関しても、良いところ悪いところを知らせて くれるだろう。その時は、彼らの言葉に耳を傾けるのだ。

スペルの確認-- 正しいスペルと文法は命である。ユーザーが読むことに なるものは、マニュアル、警告、メニューを問わずすべて適切なスペルで かつ文法的にも正しく書かれていなければならない。これは製品の全体的 な印象に影響を及ぼす。欠陥が少なければ少ないほど、製品に対する信頼 感が増すのだ。

スペルや文法が苦手な人は、だれか得意な人を見つけ頼むなり雇うなりし て自分の書いたものを校閲してもらうことだ。スペルチェックソフトの類 を利用しても構わないが、スペルチェッカでは“lose”と“loose”や “its”と“itUs”のような綴り自体が間違いでなかったり微妙な判断が必 要なものは訂正できないのだ。これらの細かなことに気が付かない人にとっ ては、たいしたことではないように思えるだろうが、多くのユーザーや 論評家にとっては重要なことなのだ。[我々のような編集関係の人間はこの 手の初歩的なミスを見つけると情けなくなるのだ。実際、有名な市販製品 でさえミスがあったりする。 -Adam]

ドキュメンテーション -- 本当に良く設計されたアプリケーションであ れば、ドキュメンテーションはあまり必要にはならない。つまり、どうやっ て使うかは一目瞭然だろう。では、どのみちユーザーはマニュアルなど読 みはしないのに、どうしてマニュアルを書くのに時間を浪費しなければな らないのだろう ? 多くのユーザーが実際にマニュアルを読んでいるのだ。 それに、支払方法を書いたところだけでも読んでもらいと思うのではない だろうか。

できのいいマニュアルを書くことができるということ自体が一つの職にな る。これで食べている人が大勢いるし、そのテクニックを短くまとめて書 くことなど私にはできない。その代わり、役に立ちそうな TIPS を少々紹 介しよう。

製品がまともなものである限り、簡潔な ReadMe ファイルと総括的なマニュ アルの両方を付けるべきである。ReadMe ファイルは以下の点を簡潔に網羅 したテキスト文書であるべきだ。

あなたの製品に気をとめるだろうほとんどすべての人が、こういった情報 を知りたいと思うのだ。それはユーザーやレビュー記者かもしれないし、 自分の Web サイトや CD-ROM で製品を取り上げてくれようと考えている人 達かもしれない。これらの情報がなかったり、まとまっていなかったり、 見つけにくかったりすると彼らはいらいらするだろう。ReadMe ファイルに すべての情報を短く適切に書いておくのだ。これに関しては、 TidBITS-330 で Tonya が書いた ReadMe の記事が参考になるだろう。

マニュアルを書き始める前に、ユーザーがどういう風にマニュアルを使う だろうかということを思い描く。マニュアルを始めから終わりまで読んで から製品を使い始める人などほとんどいない。大抵の人が、何か分からな いことに出くわしたときや困ったときに初めて開くのだ。こういった人達 のために、マニュアルを項目ごとにまとめておかなければならない。メ ニューコマンドの並んでいる順番に説明していくのではなく、“〜のやり 方”というふうに章の名前を付けていくのがよい。“トラブルシューティ ング”の章を設けて、ユーザーが自分の抱えている問題およびその解決方 法を簡単に見つけることができるようにまとめておく。アップグレードを 重ねると、みんなが出くわしやすい問題はどれなのかがわかるようになる。 最初のリリースでは、どの問題だろうかを推測しなければならない。

まず第一章で、マニュアル全体の説明を行う。各章に何が書かれているか を説明しておけば、ユーザーは自分の必要なところをすぐに探し出すこと ができるのだ。そして、文字よりもずっと視覚に訴えることのできる図や 絵を用いるのがよい。

マニュアルはすべてのユーザーが読むことができるものならどのメディア を用いても構わない。たとえば、マニュアルを Microsoft Word 形式で出 すべきではない。みんなが Word を持っているわけではないのだ。どのシ ステムでも表示および印刷ができるスタンドアロンの文書を作成する方法 はいろいろとある。どうしても駄目な時は、テキストファイルとして保存 する。

オンラインヘルプも検討してみる。これにも様々な方法があるが、繰返す が、要はどうまとめるかなのだ。製品に対する見方は、作者とユーザーで は異なっている。ユーザーが知りたいのは、「これをするにはどうすれば よいのだろう」「どうしてできないのだろう」というようなことなのだ。 マニュアル同様オンラインヘルプも、ユーザーが必要な情報を素早く見つ けることができるようにしておく。

[次回は、シェアウェアを成功させるための最後の秘訣である。]

[Rick Holzgrafe 氏はシェアウェア製品を作製していないときには、 Silicon Valley にある有名な会社でプログラムを書いている。]


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