TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS-J#400/06-Oct-97

TidBITS 世界制覇に向けさらに一個のドミノが倒れた。今回の 400 号で、 Adam は、WWW が普及する約 4 年前から存在していた TidBITS が、今日、 どのように洗練されたソフトウェアを使用し、常に変化する Web サイトを お届けしているかを解説している。また、その他では、ShareWay IP のリ リースに言及し、ユーザー側でのフォント管理の難しさを一気に解決する かもしれないプログラム Font Reserve を見てみよう。そして、Rick Holzgrafe 氏による「成功するシェアウェア」シリーズをお送りしよう。

目次:

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今回の TidBITS のスポンサーは:


MailBITS/06-Oct-97

(翻訳:松岡 文昭 <mtokfmak@mxa.meshnet.or.jp>)

TidBITS は来週休刊 -- TidBITS は来週休刊とさせて頂くので、次号は 20-Oct-97 となる。しかし、Web サイト上の TidBITS Updates は更新を継 続する予定であり、NetBITS は通常通り木曜日の夜の発送となる。このお 休みはアメリカのコロンブス記念日に関係していると言えなくもないのだ が、実はそうではない。また、どちらにしてもアメリカの学校でプロパガ ンダされたコロンブス伝説は事実との類似性が余りないものでもあり、も し、何年にもわたってアメリカの歴史の教科書に入り込んできた欺瞞に興 味がお有りならば、James Loewen 氏の本 Lies My Teacher Told Me を大 いにお勧めしよう。 [ACE]

<http://www.amazon.com/exec/obidos/ISBN=0684818868/tidbitselectro00A/>

Connectix 社と Insignia 社のエミュレーション対決 -- Connectix 社 の 150 ドルの Virtual PC のレビュー( TidBITS-397 を参照)で、 Insignia Solutions 社が MS-DOS 6.22 と約 80 ドル分のアクションゲー ム CD を同梱し、DOS のゲーマーをターゲットとした、Pentium MMX のエ ミュレーション(Virtual PC も同じ)を提供する RealPC を出荷したこと に言及した。先週、Connectix 社は、IBM の PC DOS と三つのスポーツゲー ムを同梱した 70 ドル(推定市場価格)の Virtual PC - PC DOS の出荷を 開始し、RealPC と真っ向からの競合を開始した。RealPC と VirtualPC は 共にその他のオペレーティングシステムのインストールを可能としており、 双方共に Windows 95 は別途購入となっている。MS-DOS または従来の Windows バージョンから Windows 95 へのアップグレードは 100 ドルであ り、フルバージョンは、もし見つけられればだが、180 ドルとなっている。 [TJE]

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=04121>
<http://www.insignia.com/Corporate/Releases/Mac/RealPC_Ships_970915.html>
<http://www.connectix.com/html/pr_pcdos.html>

我々の為の AppleShare Via IP -- Open Door Networks 社は、Internet 上でファイル共有を行うために AppleShare コンパチサーバーを実現する プログラム ShareWay IP Gateway を出荷した。FTP を使用する代わりに、 AppleShare Client Chooser 機能拡張 3.7 もしくはそれ以降(Mac OS 8 に同梱されている)を使用している人達は、あたかもサーバがローカルの AppleTalk ネットワークに存在するかのように、遠隔地の AppleShare サー バをマウントできるのだ。ShareWay IP の美点は、Apple の高価な AppleShare IP 5.0 の最も魅力的な機能をはるかに安く提供していること だ。ShareWay IP には二つのバージョンが用意されており、189 ドルの Standard Edition(教育関係は 119 ドル)と 59 ドルの Personal Edition (教育関係は 49 ドル)となっている。Standard Edition はサーバとして 同一 AppleTalk ネットワーク上のどの Mac でも走らせることができ、殆 どの AppleShare サーバと動作する。Personal Edition は ShareWay IP として同一 Mac 上での Personal File Sharing のみを提供する。双方と も System 7.5.3 かそれ以降と Open Transport 1.1.2 かそれ以降が必要 である。入門価格は 97 年 11 月 30 日まで有効であり、無償評価版は Open Door 社の Web サイトより入手可能である。 [ACE]

<http://www.opendoor.com/shareway/>


400 号と可変 Web サイト

by Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
(翻訳:尾高 修一 <odaka@iprolink.ch>)

私は区切りをつけるのを好む傾向がある。 TidBITS-100 は setext (structure-enhanced text)フォーマットで発行された最初の号だった が、このフォーマットはそれ以来ずっとメールでの配信に使用されている。 TidBITS-300 では Mac ユーザーの友達たちとパーティーを開いて、Mac が偉大である 300 の理由を列挙した。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=01283>

TidBITS-400 用にはこのような演出をする時間がなかった。というのも NetBITS の創刊や Web サイトの作業に追われていたからだ。ここでは Web サイトについて少し述べてみたい。

<http://www.tidbits.com/>

TidBITS は Web よりも何年も前から存在していたので、Web が本格的に普 及しだした頃には既に成熟した出版・配布システムが確立していた。初期 における私たちの Web 利用の試みはあまり立派なものではなかったが、今 日の水準からすると初期の Web サイトのほとんどは素人っぽく見えるだろ う。一年ほど前に Web サイトを根本的にデザインし直したことが今年の アップデートにつながったのだ。サイトの基本的な構造には満足していた が、地味な感じがした上ナビゲートするには時間がかかった。毎週最新号 を読む人が集まる火曜日にはかなりのヒット数を記録したが、それ以外の 日は落ち込んだ。トラフィックを増やして TidBITS をより有意義なものに するため、見た目とナビゲーション、それに内容の充実を計ったのだった。

グラフィック -- 最初に手掛けたことは新しいロゴをデザインすること だった。この新グラフィックはページの左側にナビゲーションバーを置い た、より機能的なデザインの呼び水となった。TidBITS は純粋にテキスト だけなので、グラフィックは常に頭痛の種だったが、シアトル在住のグラ フィックデザイナーで友人の Jon Hersh 氏 <jondot@halcyon.com> と協力 して、TidBITS という言葉を面白みの中心としたロゴに落ち着くことがで きた。カラーは“BITS”が切り抜かれている破り取ったような紫色の紙に よって表現されており、“Tid”と“BITS”の間にある垂直線が左側のナビ ゲーション用エレメントと右側のコンテンツを切り分ける役割を果たして いる。

このナビゲーションバーにより、TidBITS の一部の面を強調することがで きる。たとえば、ここに翻訳版へのリンクを張ったり、TidBITS 読者だけ のための DealBITS ディスカウントへ直接リンクすることもしている。

変わるグラフィック -- ほとんどのページではロゴは不変なのだが、ホー ムページに何度か足を運んでいただくと、“BITS”の下の短いスローガン と、右側の見出しにお気付きになるだろう。見出し部分をクリックすると、 Blue World Communicatioins 社の Lasso 経由で FileMaker データベース にある特別に選ばれた記事を読めるようになる。

<http://www.blueworld.com/lasso/>

一時間に一度、Geoff が作った BlurbMaster というプログラムが FileMaker データベースを検索し、事前に選ばれた記事群の中からランダム に見出しとスローガンを取り出してくる。次に clip2gif でスローガンと 見出しを組み合わせた新しいグラフィックを作り、見出し上のクリックを 処理する適切なイメージマップタグのあるホームページのコピーを生成し、 新しいファイルをアップロードする。

私たちのホームページを訪れる度に、私たちが今までに書いた中で最も面 白い記事へリンクしたランダムな見出しを見ていただくことになる。ひと つ試していただきたい。これはなかなかのスグレモノだし、TidBITS に載っ た 3,000 以上もの記事の多くは今でも色あせていないのだ

TidBITS Updates -- BlurbMaster はホームページを飾るだけではない。 Web サイトが一週間を通じて興味深いものであるようにするため、私たち は TidBITS Updates を始めることにした。これは以前に取り上げたトピッ クのその後の状況や、次号まで待てないような最新ニュースを高品質かつ 凝縮されたアップデートとして提供するものだ。バックナンバーと同様に、 すべてのアップデートは FileMaker データベースに格納されている。Web フォーム経由で新たなアップデートを追加すると、BlurbMaster がホーム ページと TidBITS Updates ページの両方を生成して最新の状態に更新する。

Got BITS? これだけではない。今度は TidBITS Updates によってもたら された問題を解決しなければならなかったのだ。個々のアップデート記事 に恒久的なリンクを張ることができるようにしたいのと同時に、ホームペー ジに記事のリストを載せておきたかったのだ。ホームページから TidBITS Updates ページへアンカーを張ることは簡単だったが、アップデート記事 はページの下の方へ移動してしまいには外れてしまうため、アンカーリン クは約一週間で壊れてしまう。Geoff の解決策は AppleScript を使った CGI、GetBITS だった。ユーザーがアップデート記事へのリンクをたどった 際に、GetBITS は以下の 2 つのことのいずれかを行う。アップデート記事 がまだアクティブな場合には、TidBITS Updates ページの該当するアンカー にジャンプする。アップデートが既に消えている場合には、GetBITS はデー タベースから抽出する。したがって、最近のアップデート記事にリンクを 張るにはホームページの URL をコピーするだけで、ユーザーが正しい場所 にたどり着けるように GetBITS が面倒を見てくれる。

GetBITS は別の意味でも便利だ。今までは誰も TidBITS の個々に記事にリ ンクを張ることはできなかった。TidBITS の各号の内部のアンカーを指定 することはできたが、その号全部をロードしなければならなかったのだ。 Geoff の記事データベースによって、必要に応じて個々の記事をゲットす ることができる一方、Lasso でデータベースを検索するための URL は TidBITS でバックナンバーに載った記事を示す場合にはあまりにも長すぎ た。したがって、GetBITS は短い、簡単に理解できる URL を受け付け、そ れをデータベース検索用の長い Lasso URL に変換するという交通整理の役 目も果たしてくれるのだ。

今後、GetBITS がいる db.tidbits.com を指した URL を目にすることが多 くなるだろう。この URL をクリックすれば個々の TidBITS 記事を読むこ とができる。特定の記事やアップデートにリンクしたい場合には、ホーム ページの Search Author/Title リンクをクリックし、読みたい記事を探 し、ページの一番下にある GetBITS URL を HTML ファイルにコピーしてい ただきたい。

ダイナミックな行い -- 全体的に見て、400 号に到達し、かつ Web サイ トに新機能を追加できた気分は最高だ。さて今度は TidBITS のスポンサー を探す努力をしなければならない。読者の方で良い案や心当たりのある方 は、<sponsors@tidbits.com> までご連絡いただきたい。


フォント管理最前線

by Matt Neuburg <matt@tidbits.com>
(翻訳:小川 浄 <tao@peanet.ne.jp>)

フォントにまつわる皮肉をひとつ:「フォントは 1984 年に Macintosh が 引き起こした革命の起爆剤となった。以来フォントは ASCII の頭痛の種で ある」。フォントは Mac 利用者が行うほとんどの作業の中核に横たわって いる。しかし Font DA Mover 時代の悪夢から System 7.1 と Fonts フォ ルダにいたるまで、フォントはまことに付き合いづらい存在だった。

フォントに管理は必須である。筆者はそこそこのフォント使用者だが、そ れでもハードディスクのあちこちに何百というフォントが散らばっている。 フォントの種類はあまりにも多く、ひとつのフォントにあまりにもたくさ んのバージョンが存在している。その識別が大事に発展しかねない。以前 筆者が雑誌を編集していたころ、ロードされていた違う Garamond でファ イルを開いたらレイアウトが滅茶苦茶になった。用途によって必要なフォ ントも違ってくる。筆者は特定のフォントを常用しているが、たった一度 の使う機会のため手元に置いておきたいフォントもある。ある特定のアプ リケーションにはある特定のフォントが必要である。別の特定アプリケー ションに付属のフォントは筆者の持っているフォントとダブってしまう。 また別の特定アプリケーションはことわりもなくフォントをインストール しようとする。FOND ID はコンフリクトを起こし得るし、フォント自体も 壊れることがある。そこで自分の持っているフォントがどんなふうに見え るのかを知る、そしてフォントの特徴を整理整頓しておく、という課題が 出てくる。オメガは筆者の Greek フォントではどうタイプされるだろう? Old English フォントでのソーンは? dingbats フォントで星形はどう出る か?

Mac 黎明時代から、サードパーティのユーティリティは我々を困難より救 い出してくれることになっている。由緒あるユーティリティ、Suitcase、 MasterJuggler、PopChar、KeyFinder、TypeTools 等は筆者のデスクトップ を通り過ぎ、その後も何ダースもユーティリティが宙に舞った。しかし実 験を重ねても心底ごもっとも、と思わせるような現実的問題解決法、つま り惰眠を貪っている Apple Computer の耳に真実の声を直接「 これ な んだよ! こんなふう にすべきだったんだ!」と響き渡らせるようなレベ ルの製品には出会わなかった。

存在しなかったのだ。少なくとも今までは。

本当の問題解決法 -- DiamondSoft 社の Font Reserve は輝くばかりの 簡明なパラダイムでもって、フォントにまつわる諸問題を一気に解決する と言明している。使用者はシステムや Acrobat Reader その他に必要なわ ずかのフォントを除いた すべての フォントを Font Reserve の管理下 に置く。Font Reserve は ID のコンフリクトを解消し、フォントの損傷を 取り除き、ビットマップフォントと同族 PostScript フォントを関係づけ る。Font Reserve はデータベースのように機能し、フォントを分類し、 フィルタにかけ、サブセットに置く。また Font Reserve はコントロール センターのようにも機能し、使用者がフォントを見て確認し、どのフォン トが利用可能かチェックできる。

筆者は 1 月に Font Reserve のデモを見て感激し、以来リリースを心待ち にしていたのだ。バージョン 1.0 のバグをいくつか解消した 1.0.2 は PPC と 68K、どちらでも作動する。とうとう Font Reserve がやってきたのだ。 完全ではないにしても素晴しい製品であり、筆者は今後の同製品の発展を 楽しみにしている。

<http://www.fontreserve.com/>

Vault -- Font Reserve のキモは“vault”である。vault は Font Reserve がフォントを体系化し管理するためのフォルダである。これを聞 いてちょっと危ないと思う読者もいるかもしれないが、心配ご無用。vault は初期設定では不可視で、使用者が可視フォルダに変更することもできる。 vault はどこにでも移動可能で、オリジナルのフォントファイルを入れて おかなくてもよい──コピーやエイリアスでよいのだ。

ホームユースでは、まず Font Reserve にフォントをコピーさせてみるだ ろう。そして信頼がおけると分かったら、オリジナルを消してしまうかも しれない。いくつもコピーをとっておく必要はないし、問題はフォントの 体系化ができないということなのだから、Font Reserve に体系化を任せな い理由があるだろうか?

複数の利用者がひとつのフォントを使うネットワーク上なら、エイリアス の利用が好まれるだろう。フォントは中央サーバに置いて、各ユーザーの ディスクにはスペースを食わないエイリアスを置く。さらに新しい機能と して、vault のマスターバージョンをネットワークで結ばれた他のユーザー に「エクスポート」できるようになった。雑誌を作っていた時分にこれが あったらどれほど楽ができたろう。

vault へとつながる扉は一方通行ではない。使用者はいつでも vault の外 へフォントをコピーできる。特定の仕事に用いられているフォントをサー ビスビューローに持ち込むとき、あるいは仕事の成果と一緒にフォントを 圧縮するとき、これはとても便利である。

さらに Font Reserve がフォントを開く(システムが利用可能になるよう に)とき、vault の中のコピーを開くことはしない。そうではなくそのコ ピーのコピーを作り、それを開くのである。したがって開いたフォントが 偶然損傷しても vault の中身に影響はない。この手法により、開いている ファイルの数も減る。Font Reserve は開いたフォントのコピーを少数の スーツケースに詰め込むからである。

What You Get -- Font Reserve は複数のアプリケーションから成ってい て、その中で一番重要なのは使用者の意識からは一番遠い Font Reserve Database である。Font Reserve Database は vault に対して作動し、フォ ントファイルを開いたり閉じたりする。Font Reserve Database は操作部 分のないバックグラウンドアプリケーションで、システムファイルの起動 項目フォルダに入れておけば常時稼働する(使用者が終了させなければ)。 推奨 RAM サイズは 3,000K、これから使ってみようと考えていた読者の中 にはこれを聞いて引いてしまう人もいるかもしれない。しかし筆者は機能 拡張ではなくアプリケーションとして提供された点に賛意を表したい。シ ステムは安定するし、機能拡張をはずして起動しても Font Reserve Database を走らせてフォントにアクセスすることができる。

Font Reserve Database には操作部分が存在しないので、ほかのアプリケー ションが代わってインターフェースを提供する。そのようなアプリケーショ ンのひとつが、その名も Font Reserve である。Font Reserve はコント ロールパネルを装っているが、通常のアプリケーションである。ここから データベースの起動・終了、vault の可視・不可視切り替え、vault の設 置場所の変更、各種設定を行なう。

Font Reserve Browser は vault に取り付けられた窓である。中のフォン トをここからチェックし、オンにしたりオフにしたりできる。Browser の ウィンドウには二つの枠があり、ひとつはフォントのセット用、もうひと つは個々のフォント用である。セットとは使用者が設定するフォントのグ ループである。セットは Finder 上のフォルダリストのように表示され、 フォルダとエイリアスのように機能する。つまりひとつのフォントはたく さんのセットに所属させることが可能で、あるいはまったく所属させなく てもよい。全てのセットのフォントをワンタッチでオンにしたりオフにし たりでき、またセットを Finder ウィンドウにドラッグして、含まれてい るフォントを残らずコピーすることも可能である。

vault にフォント(あるいはフォントを含んでいるフォルダ、ボリューム) を加えるには、フォントを Browser のウィンドウへドラッグ ドロップ すればよい。下の方の枠へドラッグ ドロップすれば個々のフォントとし て加えられ、セットパネルへドラッグ ドロップすれば自動的にセットが 形成される(それがわずらわしいなら DropFont and DropSet というユー ティリティのエイリアスの上へドラッグ ドロップすることも可能)。 ダイアログが現われ、ドロップされたオリジナルファイルをどう処理する か確認することとなる。その後フォントはチェックを受け vault にファイ ルされる。Font Reserve が“問題のある”フォント(壊れたフォントや ビットマップのない PostScript フォント)に遭遇した場合、フォントを 加える作業と違い手間取ることになる。表示されるダイアログもないので、 使用者は後でログをチェックせねばならない。ログそのものは問題のない フォントが加えられたときには情報を提供しない。その場合フォント名を リストアップしないからである。

Browser ウィンドウの下の方の枠では、各々の行がフォントを表わす。そ こに表示される情報は、フォントの名、メーカー、タイプ、ラベル、所有 者、その他(所有者とラベルは使用者が設定できる)である。各カテゴリ において分類し、それに基づいたフィルタを作成し、さらにフィルタを使っ てアルファベット順に並べることもできる。つまり使用者はウィンドウに 表示されたフォントを制限し整理整頓するという拡張パワーを得ることに なる。

Browser ウィンドウによってフォントをオンにしたりオフにしたりもでき る。ひとつのフォントを固定的または一時的にオンにできるということは、 コンピュータまたは Font Reserve を再起動させれば、自動的に特定のフォ ントを開くまたは開かないように設定できるという意味になる。

フォントについて学ぶために Browser ウィンドウを使うこともできる。 フォントのアイコンを Command キーを押しながらクリックすれば、その フォントによってフォント名を表示した、大きなディスプレイが出現する。 フォントのアイコンをダルブクリックするとプレビューウィンドウが現わ れ、そのフォントについてのデータを得ることができる。キャラクタセッ トを見て、そのフォントで段落を読み、ちょっとしたサンプルやさまざま なサイズなどを眺めてみよう。これらすべてが幅広く使用者によって設定 可能。ただし筆者は将来のバージョンではプレビューウィンドウがそのサ イズと場所を記憶してくれたらよいと思う。

Font Reserve Browser のインターフェースは素晴しい。それはフォントの リストを表示する単一のウィンドウで(ほかにプレビューウィンドウが表 示されることもある)、両ウインドウとも - 特にフォントリストを表示す るウィンドウは - 抜群のデザインである。Mac インターフェースへの思い 入れを感じさせるような出来映えで、Mac インターフェースが建設的で直 観的な新しい使用法に対して今もって生き生きとした対応力を失っていな いことの証明である。

恐怖のスーツケース -- 筆者が個人的にフォントを扱いづらいものと感 じているのは、主にフォントスーツケースにまつわる不便さである。Font Reserve は筆者の状況を改善できなかっただけでなく、その不便さに輪を かけてしまった。筆者はこれを玉についたキズとみなしている。

例えば Browser は FOND ファミリの全部の構成メンバーを、単一のフォン トとして表示する。ファミリが実際にどのフォントを含んでいるのか知る 手段はない。したがって Palatino、Palatino Italic、Palatino Bold の TrueType フォントと、対応するビットマップフォントの各サイズが vault に入っている場合、Browser はたったひとつのリスト表示、Palatino を返 す。実際の状況を知る唯一の方法は vault をひっくり返し(マニュアルで は使用者がそうする理由はない、と自慢げである)当該スーツケースを見 つけて中を見ることである。

Brower に TrueType フォントをドロップすることはできない。先にスーツ ケースに入っていなければならず、Font Reserve はスーツケースを作成す るのを楽にしてはくれない。(バージョン 1.0.2ではこの点が改良される由。)

Font Reserve はフォントでないファイル、例えば FKEY やサウンドは、そ れがフォントスーツケースを偽装していても受け付けない。さらに Font Reserve は筆者がその手のモノを扱うときに使っていたユーティリティ (Suitcase や Carpetbag)と互換性がないので、仕方なく筆者はそれらを フォントスーツケースに偽装させて system Folder の Fonts フォルダに 入れている。言い替えれば、Font Reserve は筆者の使っていたユーティリ ティの機能を残らず肩代りすることなく、それらと置き換わってしまった。 無礼というものである。

その他あら捜し -- 実際には関係の深い、別々の FOND ファミリのメン バーは、時折別々のファミリとして扱われる。例えば Mishawaka と Mishawaka Bold はペアであることがきちんと認識されない。(ひょっとす るとビットマップだからかもしれない。一般に Font Reserve は PostScript フォントと組んでいないビットマップフォントとは相性がよく ない。)

Font Reserve には特定のアプリケーションの起動に反応してフォントファ イルを開くという機能はない(Suitcase にはこれがある)。特定のフォン トを必要とするアプリケーションが存在するのだから、この機能の欠如は 残念である。例外は QuarkXPress で、書類を開くときにスキャンして Font Reserve に必要なフォントをロードするように知らせる XTension がある。

Font Reserve はハードディスクのルートレベルで不可視ファイルを広く利 用している。Mac の世界では行儀がよいとは見なされないところだ。不可 視テンポラリファイルには適切な置き場所がある(Temporary Items フォ ルダ)。そして非テンポラリファイルは可視ファイルであるべきだ。Font Reserve はスクリプタブルではない。データベースとのやり取りがもっぱ らアップルイベント経由であることを考えれば、これが妥当であるとは思 えない。Font Reserve に印刷機能があればさらに良いだろう。フォント名 リストや、各フォントのサンプルがプリントできればなお良い。あら捜し の最後に、筆者は DiamondSoft 社に Relauncher (Font Reserve に同梱 されているアプリケーション)について、マニュアルの中で解説するよう に望んでおきたい。

結論 -- 改良の余地は残っているが、Font Reserve の着想は素晴しく、 それが見事に実現されている。筆者はよろこんでこれまで使っていたフォ ントユーティリティの労をねぎらうことにした。筆者が Font Reserve を 初めて走らせると、以前から悩まされていたフォント損傷の障害を察知し た。それ以来トラブルフリーで作動している。ホームユースには個人的経 験から Font Reserve を推薦する。組織での利用形態にも同じ理由から推 薦しよう。

Font Reserve には system 7.5 以降が必要。Suitcase や ATM Deluxe 等 のフォント管理ユーティリティとはコンフリクトを起こすが、TypeTamer や standard ATM とは問題を起こさない。DiamondSoft 社から直接購入す ると電子版が 119.95 ドル、20 ドルを追加すれば CD 版と印刷されたマ ニュアルが入手できる。複数コピーを購入すると割引がある。

DealBITS -- Cyberian Outpost は TidBITS 読者に Font Reserve を 109.95 ドルで提供中。Cyberian の通常価格から 5 ドルの割引。

<http://www.tidbits.com/products/font-reserve.html>

    DiamondSoft -- 415/381-3303 -- 415/381-3503 (fax)

成功するシェアウェア(第 3 部)

by Rick Holzgrafe <rick@kagi.com>
(翻訳:尾高 里華子 <odaka@iprolink.ch>)

この記事の第一部( TidBITS-395 参照)では、私の考えたシェアウェア成 功のための鍵“7 つの P”のうち最初の 2 つ Product(製品)と Patience (忍耐)について取り上げた。第 2 部( TidBITS-398 参照)では 3 つめ の Polish(洗練)について説明した。今週はシェアウェアを公開する上で 難問 Pay Up(支払)の話をして、次回、残りの Propagation(配布)、 Promotion(宣伝)、Politics(政治)を説明してこの連載を終了しようと 思う。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=04108>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=04155>

4 つ目の P: Pay Up(支払) -- たいていの人は、なんらかのきっかけ がないとシェアウェア料を支払わない。これは悲しいが真実である。たい ていの人は正直者である反面、めんどくさがり屋だったりうっかり屋だっ たりするのだ。面倒なことは忘れ去られてしまう事の最たるもので、支払 は誰もが面倒なことのベスト 10 に入れるような事柄なのだ。

支払: 悪党、真面目な人、マウスポテト -- 私はユーザーを 3 タイプに 分けている。悪党達は、ともかく可能な限り支払いをしない。そういった 人達のことはあまり考えないようにしている。泥棒に対しては未然に防ぐ か罰するようにすべきなのだが、ことシェアウェアに関してはどちらも非 常に難しいのが現実である(詳しくは後述)。真面目な人というのは、全 てのシェアウェア料を即座に払い、そうでない場合は製品を放棄する人達 である。彼らにはきっかけは必要ない。こういった人達に関しては、時折 その存在に感謝する以外は同じくあまり考えることがない。

私が“マウスポテト”と呼んでいるのが、その中間に属する人達だ。本質 的には正直者なのだが、真面目な人になるは少々手助けが必要なのだ。問 題は支払をする時彼らの頭の中にはローンだの子供の学費だの車の保険料 だのがあって、支払が終わってからやる楽しいゲームのことやそのシェア ウェア料の支払いのことは忘れているということだ。こういった人達はあ なた次第で何とかなるし、支払を簡単かつおもしろくすると支払ってくれ るのだ。では、そのテクニックを幾つか紹介しよう。

支払: 催促 -- “Nagware(小言ウェア)”というのは支払の催促を続け るソフトウェアである。たいていの場合、小言を言うだけである。未払い ユーザーはその全機能を使うことはできるが、ただ支払の小言を食らうの だ。支払を済ますと、小言を止める術を教えてもらえる。

Nagware は効くだろう。成功した製品でこれを用いているものもある。 Peter Lewis 氏作の Anarchie や NetPresenz、私の Solitaire Till Dawn などがこの例だ。実際のところ Anarchie と Solitaire Till Dawn は完全 にユーザーの誠実さに依存している。つまり、Preferences ウィンドウに ある“I Paid(支払済)”の欄のところをクリックすれば、実際に支払っ たか否かに関わらず誰でも小言を止めることができるのだ。大多数の人は 忘れっぽいだけで、根は誠実なので有効だ。彼らに支払ってもらうまでは 相当な時間がかかるが、彼らは支払ってもいないのに“I Paid”ボタンを クリックするような不正な真似はしないだろう。

<http://www.stairways.com/anarchie/>
<http://www.stairways.com/netpresenz/>
<http://www2.semicolon.com/Rick/STD.html>

支払: ご褒美 -- もう一つのテクニックは、支払いに対するなんらかの ご褒美を設けることだ。これは支払が行われるまでは機能限定のデモモー ドでしか動作しないプログラム“Crippleware(非完全品)”という形式を 取っている場合が多い。登録を済ませると、ユーザーは完全品を手にする ことができる。これには、パスワードを入れる、特別な FTP サイトから手 に入れる、フロッピーやメールで完全機能版を受け取るなどがある。

支払を済ませたユーザーのためのご褒美としては、そのほかにアドオンや ボーナス(紙のマニュアル、お楽しみディスク、ほかのプログラム)など がある。

Crippleware の形式を取ろうという方は、戦いの準備が必要だ。作品が人 気がでると、すぐにハックしてただでフル機能を利用する犯罪者が現れる。 またパスワードをポストするという奴もいる。支払をしてくれたユーザー に送るご褒美は、いずれ地下サイトなどから無償でダウンロードできるよ うになるだろう。こういった戦いに応じるのも一つの手だ。戦いが好きな ら進み給え、幸運を祈る。犯罪者達はこちらが何をしようともとにかくお 金を出そうとしない。彼らと争うのは時間の無駄だ。製品の向上とマウス ポテトに支払をしてもらうことに手間をかけるのだ。

これは Crippleware というやり方が悪いという意見にはつながらない。 Crippleware は Nagware よりもうっとうしくかつ不便なものなのだから、 マウスポテト達には効果があるだろう。私の知っているよく売れているシェ アウェアのほとんどが Crippleware である。これでは泥棒達に太刀打ちで きないことを肝に銘じて、完璧な防護策を講じようといったことに全精力 をつぎ込まないことだ。実際に支払を済ませたユーザーが不快に感じない ようにマウスポテトを動かす中道的な方法を見つけよう(ユーザーと製品 がともにパスワードを忘れてしまったために、支払ってあるのに突然製品 を利用できなくなってしまうことほど腹のたつことはない)。支払ってく れたすべてのユーザーへのパスワードの送付と、パスワードを無くしてし まったユーザーからくる電話やメールでの問い合わせへの対応は必ず実行 する。自分自身の、そして使ってくれる人の労力と災いを最小限に食い止 めるようなシステムを考えることだ。

多彩なご褒美、その有効性、価格などについてデベロッパー向けに書かれ た Kee Nethery 氏の “Hookware”の話は非常に参考になるだろう。

<http://www2.semicolon.com/Rick/ShareSuccess/Hookware.html>

支払: 簡単にせよ -- 私の場合当初は、米ドルの現金または米国の銀行 で振り出すことのできる米ドル建ての小切手で支払ってくれるようにお願 いしていた。外貨を換金するのは費用の高くつくことだった(今でもだ が)。それに私はクレジットカートでの支払を受け付けたいと思っていた のだが、自分の部屋にこもって仕事をしているような人間にとっては、店 を構えている人と同等に銀行に対応してもらうのはとても難しいのだ。こ のため私に支払をしてくれようとする人は、手紙とそしてたいていは小切 手を書かなければならなかった。口で言うとたいしたことではないかもし れないが、多くの人がここで二の足を踏む。国外のユーザーにとってはさ らに敷居が高くなる。彼らが米ドルを入手するのは、私が外貨を現金化す るのと同じように簡単なことではないのだ。

ある時 Kagi が私に救いの手を差し伸べてくれた。Kagi というのはシェア ウェア作家のような人達宛の支払を取り扱ってくれる会社だ。ユーザーは Kagi に私の製品のシェアウエア料を支払い、Kagi は月に一度自分達と銀 行の手数料分の数パーセントを差し引いた額の小切手を私に送ってくると いう仕掛けだ。

<http://www.kagi.com/>

これは利用者にとっても素晴らしいものだ。私の製品には Kagi が用意し た小さなプログラムが付いていて、その中にユーザー用の注文票が入って いる。支払方法には、米国の小切手、何十という大抵の国の通貨、クレジッ トカード、またはその他オプションがある。現金で支払う場合は、注文票 を記入して支払と一緒に Kagi に送ればよい。クレジットカードまたは電 子送金決算をする場合は、ファックスまたはメールで必要な情報を送る。

Kagi を利用し始めて、私の売上は 50 % アップした。(これは Kagi が保 証してくれているものでもないし、利用している人の中には売上が伸びて いない人もいるかもしれないが、たいていの人はその恩恵にあずかってい る。)Kagi のお陰で現金だの切手だのに煩わされることなく即座に支払い ができるようになった。こういったサービスを提供しているのは Kagi だ けではないので、別のところを開拓するのもいいだろう。私としては Kagi を強くお薦めする(ただし Kagi から紹介料をもらっているわけではない)。

[次回、Rick はシェアウェアを成功させるためのさらなる秘訣を披露して くれる。]

[Rick Holzgrafe 氏はシェアウェア製品を作製していない時には、Silicon Valley にある有名な会社でプログラムを書いている。]


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