TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS-J#407/01-Dec-97

デジタルカメラが欲しいけど、今ひとつよくわからない? 今週号ではゲス トに迎えた Arthur Bleich 氏がデジタル写真の現実に迫るほか、Tom Geweke 氏が Apple の支援のもとで開発されている PowerPC マシン用 Unix、MkLinux を検討する。また、SiteCam と CopyPaste の新バージョ ン、それに Apple が誇るメディアテクノロジー、QuickTime 3.0 のプレ ビューを紹介する。

目次:

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MailBITS/01-Dec-97

(翻訳:尾高 修一 <odaka@iprolink.ch>)

QuickTime 3.0 プレビュー -- Apple 社は今日、待望久しかった QuickTime 3.0 (QuickTime Media Layer とも呼ばれる)のデベロッパー 向けプレビュー版をリリースした。QuickTime は Apple の技術の中で最も 成功したものの一つだが、Apple は QuickTime 3.0 を完全にクロスプラッ トフォームにすることでさらなる浸透を図っている。現在、Windows ユー ザーが QuickTime メディアを再生することは可能だが、QuickTime 3.0 で はデベロッパーたちは Windows でも Mac でも QuickTime の機能(再生、 オーサリング、キャプチャ、圧縮など)にフルにアクセスすることができ る。既にサポートされている多数のフォーマットに加え、QuickTime 3.0 は様々なクロスプラットフォームやハイエンドのビデオ、画像、オーディ オフォーマットのサポートを追加しており、この中には到来間近のデジタ ルビデオフォーマット、DV も含まれている。QuickTime 3.0 は短時間でダ ウンロードできるベクターグラフィックやリアルタイムのエフェクトやト ランジションも扱うことができる。Apple からデベロッパーへのメッセー ジは明らかだ。QuickTime は Mac でも Windows でもベストなメディアサ ポートを提供する、ということだ。

<http://devworld.apple.com/mkt/informed/appledirections/aug97/ stratmosaic.html>

Macintosh 用のプレビュー版には System 7.0 以降、最低 8 MB の RAM、 それに 68020 プロセッサが必要だ(一部の機能は PowerPC のみで利用可 能)。デジタルメディアやビデオを扱うことがある方、特にプログラマー の方は要チェックだろう。QuickTime 3.0 プレビューのサイトではサンプ ルやデベロッパー向け情報がたっぷりと提供されている。ダウンロードは 約 3.7 MB だ。 [GD]

<http://quicktime.apple.com/preview/>

フランス語翻訳者募集! フランス語に堪能で、世界のフランス語使用者 に Macintosh ニュースを伝えることに手を貸しても良いという方、TidBITS のフランス語版翻訳チームが毎週の作業を分担してくれるボランティアを 募集している。関心のある方はフランス語版チームのコーディネーター、 Emmanuel Decarie 氏 <edecarie@aei.ca> に連絡していただきたい。[ACE]

<http://www.tidbits.com/tb-issues/lang/fr/>

CopyPaste 4.0.2 Released -- Script Software International 社は先 週、 TidBITS-364 でもレビューした複数のクリップボードを実現するユー ティリティ、CopyPaste 3.2.2 を大幅にアップグレードした CopyPaste 4.0.2 をリリースした。新機能には 10 個のクリップボードと CopyPaste の他の機能すべてにビジュアルにアクセスすることのできる CopyPaste Palette がある。これはドラッグ ドロップやクリップボードの閲覧・編 集もサポートしている。その他の新機能には特殊文字と HTML エンティティ の双方向変換、メール用にテキストを 60 桁で折り返す機能、日付を短い フォーマットから長いフォーマットに変換する機能などがある。[ACE]

<http://www.scriptsoftware.com/copypaste/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=00751>

歳末ホームページコンテスト -- ホームページを持っていて年末年始に 向けた飾り付け(宗教・思想を問わず)をしようとしている方は、 Association of Internet Professionals (AIP) と WebGrrls International の Silicon Valley 支部が主催している“Homepage for the Holidays 1997 WebAwards”コンテストに応募されてはいかがだろう。ペー ジは個人のものでも組織のものでも構わない。審査員が創造性、エレガン スと楽しさを評価する。賞品には PalmPilot や AIP 会員権があり、遅く とも 97 年 12 月 14 日までに応募しなければならない。TidBITS の姉妹 誌、NetBITS もこのコンテストのスポンサーに名を連ねている。[TJE]

<http://www.guild.usweb.com/holiday/>

SiteCam、1.1 に -- Rearden Technology 社は先週 SiteCam 1.1 をリ リースした。129 ドルの SiteCam 1.0 ユーザーには無償のアップグレード だ。SiteCam は Web カメラ(Web サイトに画像やビデオを流すカメラ)の セットアプとコントロールを自動化するソフトウェアで、新たにハイジャッ ク防止機能が組み込まれている。これは他のサイトが SiteCam のビデオス トリームを奪い取ってよそで流すというもので、Web カメラソフトウェア 一般の問題だ。少々のバグフィックスに加え、新バージョンでは QuickTime タイムラプスムービーのアーカイブ処理、ストリームビデオ、キャプショ ン表示、それにドキュメンテーションを改善している。[TJE]

<http://www.rearden.com/sitecam/>


Mac で Linux を走らせる

by Tom Gewecke <tom@bluesky.org>
(翻訳:高島 均 <hitak@kk.iij4u.or.jp>)

コンピュータのユーザーならほとんどの人が、大学や研究所やインターネッ トで長らくシェアを誇るオペレーティング・システム、Unix にこれまで何 らかの関り(もしくは動かした経験)をお持ちだろう。ところが、必要な ハードウェア、ソフトウェアのコスト、そして本質的に謎めいたその性質 がこの OS をホーム・ユーザーから一般に遠ざけてきた。1990 年代の初 頭、フィンランドの University of Helsinki にいた Linus Torvalds 氏 と国際的なボランティア・グループの手により、Linux というフリーウェ アの Unix クローンが開発された。それ以来 Linux は、ほとんどのコン ピュータ関係書店の棚に並ぶ何種類かの分厚い CD-ROM 付き書籍を通じて、 広く PC ユーザーの手に渡ることとなった。1997 年、PowerPC ベースの Mac 用に Linux のいくつかの類似したバージョンがリリースされたが、こ の記事はそのうちの一つ、つまり MkLinux をインストールして使用してみ た筆者のエキスパートならざる体験談である。

どうしてわざわざ? Mac で Unix を運用したいとすれば、それはいかな る理由によるのだろう? Mac のアプリケーションが使えるわけではないし、 ややこしいコマンドラインのインターフェースは Mac のそれからは程遠 い。Unix は Macintosh の対極にあるものではないのか? 筆者が MkLinux をインストールしたのは、重要な OS に関する自己啓発のためであり、プ リエンプティブなマルチタスクとプロテクトされたメモリを実装する本物 のマルチユーザー・システムがどのように機能するかを学ぶためであった。

より深い技術的知識を持った人たちにはもっと別の魅力があることだろう。 例えば、Linux はインターネットのサーバ用途に使うことができ、全ての 通常のサービスと Mac OS では今なお提供できない諸機能、例えば真のマ ルチホーミングのような機能がある。プログラマーなら、その多くは学校 で Unix を使っていたはずで、Linux ではパワフルなコンパイラ、エディ タ、その他のツールに加えシステム全体(そしてたくさんのアプリケーショ ン)のソースコードが簡単に入手可能で、いろいろ試したりカスタマイズ したりできることを高く評価するだろう。オフィスで Unix を使っている 人なら自宅の Mac で同じ作業ができるだろう。最後に、あの Rhapsody の ことも忘れてはならない。これは Next 社の技術をベースとした Apple 社 の次期オペレーティング・システムで、ユーザーが意識してアクセスしな い限り隠れてはいるものの Unix がまるごと実装されるものだ。

選択 -- Macintosh Power PC 用 Linux には 2 つの入手しやすいバー ジョンがある。Apple 社が資金提供している MkLinux は、Mach のマイク ロカーネル上で作動する Linux の移植版である。Developer Release 2.1 (DR2.1)の CD-ROM 付き書籍が Prime Time Freeware 社から 50 ドルで 販売されている。MkLinux は一般的に PowerPC 601 ベースの NuBus Mac と PowerPC 604 ベースの PCI Mac 上で作動する。しかしながら(まだ) 603 マシンや(伝えられるところでは)新しい G3 システム上では作動し ない。最低 500 MB のディスクスペース(単独のディスクかまたは Mac OS 起動ディスク上のパーティション)と最小限でも 8 MB の RAM が必要であ る。

<http://www.mklinux.apple.com/>
<http://www.ptf.com/>

DR2.1 が 1997 年の初めに発表されてから、6 回のアップデートがなされ ている。これらはインターネットからのダウンロードのみでしか入手でき ず、全部合わせると 200 MB を超えるものである。この記事では、バージョ ン 2.1 に限定して話を進める。筆者が気付いた MkLinux の大きな不都合 の一つに、シリアルポート経由で印刷ができないということがある。PCI マシンのユーザーからは恐らく 5 番目のアップデート以外では PPP が動 作しないとも報告されている。

<http://www.mklinux.apple.com/info/ftp.html>

もう一つの選択肢は Linux for PowerPC(linux-pmac)である。これは、 Australian National University の Paul Mackerras 氏率いるボランティ ア・グループによって作られた、Mach を使わない元々のものの移植版であ る。このシステムは、最近 32 ドルの CD-ROM で入手できるようになり、 Open Firmware を使用している Mac であれば全てで作動するとされてい る。Open Firmware とはオペレーティング・システムがロードされる前に ハードウェアの初期化や診断を行うプロセスのことだ。このことにより、 PowerPC ベースの 601 NuBus マシンと明らかに何種類かの Performa はサ ポート対象外であるが、PowerPC 604 ベースマシンや多くの PowerPC 603 ベースマシンがサポートされている。

<http://www.linuxppc.org/>

筆者の Mac は PowerPC 601 搭載なので、linux-pmac は試していない。68k Mac 用の Linux については現在開発中となっている。

MkLinux も linux-pmac もどちらも好みに合わないのなら、さらに 2 つの Unix ライクな非商用オペレーティング・システム、すなわち NetBSD(従 前の MacBSD)と OpenBSD が Mac で利用できる。これらはいくつかのモデ ルの Mac で作動し、CD-ROM でそれぞれ 35 ドルから 30 ドルくらいで入 手できる。もし商用のものをお望みなら、Tenon Intersystems 社の注目の MacTen をあたってみて欲しい。[Tenon 社は最近、著名な Apache Web サー バに自社の Unix 技術を統合させた Mac アプリケーションである WebTen も完成させた。-Adam ]

<http://www.netbsd.org/>
<http://www.openbsd.org/>
<http://www.tenon.com/>

これら全ての移植版はインストールするマシンのタイプとモデルをかなり 選ぶので、どの Mac やクローンでどの Unix が動作するのかを FAQ や メーリングリストやベンダーで入念にチェックして確認して欲しい。この 記事の後半は、筆者の Performa 6116 で問題なく作動した MkLinux DR2.1 について述べていく。

インストール -- Prime Time Freeware(PTF)社の CD-ROM と本を使え ば MkLinux DR2.1 のインストールは簡単でなんてことはない。最も難しい ところは適切なパーティションにハードディスクをフォーマットすること だった。APS 社製の 1 GB 外付けハードディスクを使ったのだが、付属の フォーマッタでは Unix のドライブ・パーティションをセットアップする ことができなかった。(PTF の本で解説されているとおりに)ResEdit を 使って Apple 社の HD SC Setup を改造することでうまく行ったのだが。 ネットワークのセットアップにもちょっとした問題があった。MkLinux に は PPP や LAN 接続のセットアップを簡単にする setnet というコマンド があるのだけれども。また、MkLinux にモデムをダイヤルさせ ISP に接続 させるためには、デフォルトの chat スクリプトを書き換えなければなら なかった。

DR2.1 のインストール後、Mac OS に新しいコントロールパネルが加わって いることに気付いたが、これでコンピュータの起動時に MkLinux の起動を 可能にするダイアログを表示させるよう設定できる。仮想メモリと RAM Doubler は MkLinux の作動時にはオフにしなければならない(この点は最 近のアップデートで改善されたところだが)。

もし手助けが必要であれば、実に様々なマシン上で MkLinux を動かしてい る他の人々の思いやりの気持ちを頼ることができる。MkLinux の話題を扱 う少なくとも 10 のメーリングリストが Apple 社によって提供されてお り、そのほとんどで取り交わされる内容が充実している。また、Web には たくさんの FAQ やヘルプに関するページがあって、その一つに Linux on the PowerPC FAQ-O-Matic がある。

<http://www.dartmouth.edu/cgi-bin/cgiwrap/jonh/lppc/faq.pl>

コツを覚える -- もし Unix コマンドについてよく知らないあるいはよ く覚えていないのなら、何をするにも事前に何らかの学習が必要となるだ ろう。この点、PTF の本はそこそこの助けにしかならない。したがって、 一番良い方法は PC 用 Linux に関する何冊かの分厚い解説書のうちからど れか一つを借りるなり買うなりすることだ。筆者の場合は、セールで見つ けた『Linux Unleashed』を使ったところである。

<http://www.amazon.com/exec/obidos/ISBN=0672309084/tidbitselectro00A/>

マスターしなければならない最も重要なことは、ブートとシャットダウン の手続き、ユーザーアカウントの設定、ファイルシステム内の歩き方、ファ イルのコピー・移動・名前の変更、ファイルのパーミッションの変更、ハー ドディスクへのアクセス、vi というプログラム(慣れるのが容易ではない !)を使ったテキストファイルの読み書き、FTP を使ったダウンロード(Mac OS で FTP を使うことも可能だが)、そして圧縮ファイルを解凍して新し いプログラムをコンパイルしインストールすること、である。

筆者の経験では想像していたよりずっと簡単であったものの、これらの作 業は直観的とは言い難く、最初のうちはやる気を削がれることだろう。巧 みなグラフィカル・プログラムもあってこれらコマンドの迷路を避けて通 ることも可能なのだが、基本的なことができなければきちんとしたインス トールやプログラムの起動がうまくできないだろう。

X Windows を動かす -- Unix は全くもってテキストベースの世界である というわけではない。Mklinux は X Windows を再現している。これは X11 というコマンドをタイプすることによってグラフィカル・インターフェー スを起動するものだ。最もベーシックな状態で、X は通常のコマンドを実 行できる独立したウインドウを提供する。しかしながら、このシステムは、 デスクトップをカスタマイズ可能にするウインドウ・マネージャを使うこ とによって、より凝った作りとなる。

MkLinux DR2.1 には 2 つの無償のウインドウ・マネージャ、飾り気のない Tab Window Manager(twm)に加え Freeware Window Manager(fvwm2)が 付属してくる。fvwm2 には見栄えの良い 3-D ボーダーがあり、またスク ロールするウインドウ、複数の“ページ”(デスクトップ)、コマンドの タイプ無しで動作を起動するあらゆる種類のウインドウボタンを作り出す ことができる。

<http://www.hpc.uh.edu/fvwm/>

X Windows にはたくさんのアプリケーションがあるが、それらの多くは無 償であって、見た目や動作は Mac や Windows から類推されるものに近い。 筆者の MkLinux セットアップでは、ファイル操作(Tkdesk)、テキスト編 集(Nedit)、ニュース購読(Knews)、メールの受信(Xfmail)、ファイ ル転送(Xftp)、Web のブラウズ(Mosaic)などの魅力的なグラフィカル ・プログラムの数々をさほどの困難なくインストールすることができた。 Netscape Communications 社は、MkLinux 用に Navigator や Communicator をコンパイルし始めたところである。いくつかのゲームもあって、そのな かには見覚えある顔の男が大量のコンピュータに Windows をインストール しようとするのを阻止する XBill というものなんかもある。MkLinux アプ リケーションの基本的な配布元は MkArchive である。

<ftp://ftp.netscape.com/pub/communicator/4.04/development/english/unix/ mklinux/>
<ftp://ftp.dodds.net/pub/linux/mkarchive/>

結論 -- X Windows で作業をすると、見た目や操作感や機能がやっぱり 似て非なるものだとしても、Mac を購入した一番の理由であろうそのイン ターフェースの数々を何とか再生しようと、ひととおりやってみることに なる。MkLinux マシンを立ち上げ、使い勝手を向上させ、そして維持しよ うとすれば、しばらくの間全く飽きが来ないこと請け合いだ。特に Rhapsody が完成間近であることからすれば、さらに試し甲斐があるという ことを知っておいても良いだろう。本格的なアップデートである MkLinux DR3 が 1997 年末までにリリースされそうだ。このアップデートではパ フォーマンスの向上とさらにいくつかの可能性が約束されている。


デジタルカメラに焦点(第一部): 高解像度は善なり

by Arthur H. Bleich <arthur@zim.com>
(翻訳:尾高 修一 <odaka@iprolink.ch>)
(翻訳:尾高 里華子 <odaka@iprolink.ch>)

デジタルカメラで写真を撮り、すぐにコンピュータの画面に表示してその まま画像処理プログラムに流し込むのは実にスリリングな体験だ。現像液 の中で写真が徐々に生まれる様子や、濡れたネガをリールから外して光に かざして見る時の興奮と同じものなのだ。

このデジタル・マジック・マシンを手に入れるために、ただ単に「ほお、 そいつは面白そうだ」という以上の理由が必要な方は、以下の点を考慮し ていただきたい。即座に画像を見ることができること、スキャニングが不 要なこと、フィルムを買わなくて良いこと(クリエイティブな実験を促進 する効果がある)、環境に優しいこと。それに、新たな写真の領域に最初 に踏み出すパイオニアとしての歴史的意義がある。動機はともかく、この 記事でデジタル写真の基礎を身に付けていただこう。

この 2 部構成の記事では、まず最初に解像度を説明し、感度などデジタル カメラの使用にまつわる一般的な事項について述べる。来週号では、購入 の前に検討すべきことをカバーし、現在市販されているローエンドからミッ ドレンジの製品についての意見を述べる。まずは、正しいデジタルカメラ を探し始める前に、撮った画像をどのように使いたいのかを考えよう。こ の目的によってどれだけの解像度が必要かがほぼ決まるからだ。

画面解像度 -- デジタルカメラを語る際に、解像度を避けて通ることは 不可能だ。解像度については今までに何冊もの本が書かれてきたが、私は できるだけ簡単に説明しようと思う。もし今技術的な話を読みたくないの であれば、次の部分は飛ばしてしまっても結構。ただ、これだけは覚えて おいていただきたい。「高解像度は善なり」。これさえ暗記しておけば恐 いものなしだ。

さて、画面のサイズと計測の話に入る前に用語の統一をしておこう。デジ タルカメラ(やスキャナ)が出力する画像はピクセル(pixel)と呼ばれる 小さな正方形(時には長方形)から構成されている。ピクセルとは “picture cell”または“picture element”の略だ。そして、ピクセルは コンピュータの画面上の画像をも構成する。一方、プリンタはページの上 にたくさんの小さな丸い点を描いて画像を作る。

デジタル画像や画面上の画像はピクセル/インチ(ppi)で計測される。プ リンタ出力はドット/インチ(dpi)で計測される。多くの人が ppi と dpi を混用する(特にスキャニングの話をする場合には)ので、潔癖症の人に は大いに嫌われる。話がややこしくならないようにここでは ppi と dpi を区別して扱うことにする。

デジタルカメラが 640 x 480 ピクセル/インチ(ppi)の画像を記録する と、解像度は普通の掛け算で求めることができる。640 x 480 = 307,200 ピクセルだ。

仮にあなたのデジタルカメラはデフォルトで横 640 ピクセル、縦 480 ピ クセルを記録するとしよう。この画像が画面上でどの程度の大きさに見え るかは割り算で求めることができる。たとえば、ほとんどの Mac モニタで は 1 インチあたり 72 個のピクセルがある。したがって、640 ピクセルが 何インチに相当するかは 72 で割る。すると 8.8 インチ(約 22.4 cm)と なる。短い方も同様にすると、6.6 インチ(約 16.8 cm)となる。

8.8 インチ x 6.6 インチはそこそこの大きさなので、印刷を前提にしなけ れば 640 x 480 は十分なサイズだ。仮に不要な部分を取り除いても十分使 える大きさの画像が残ることになる。

印刷解像度 -- しかし、この写真を紙に印刷しようとすると事態は一変 する。同じ 640 x 480 ppi の画像を同じ 8.8 インチ x 6.6 インチの写真 として印刷することも可能だが、結果が満足できるものになるとは限らな い。これは画像の品質にどれだけこだわるかによるからだ。写真がぼやけ て見えるか、エッジがギザギザに見える(ピクセル化と呼ばれる)かもし れない。この現象は低解像度の画像で、色やディテールを再現するために 十分な数のピクセルが存在しない際に起きる。

手っ取り早い解決策として、画像処理プログラムで補完処理、つまりピク セルを追加して ppi 値を高くすることも可能だ。補完処理はピクセル間の 空間に新たにピクセルを足して画像が滑らかに見えるようにするのだが、 プログラムがどこにどんな色のピクセルを足せば良いかなどを推論しなけ ればならないため、残念ながら良好な結果が得られるとは限らない。必要 な品質を得るためには、画像のサイズを小さくしなければならないことが 多い。これによって既存のピクセル間の距離が短くなり、全体の解像度が 上昇してより良好な写真とすることができるのだ。

このへんで「何いってんだ? 俺のカラーインクジェットプリンタは 720 dpi で印刷できるからそんなの関係ないぜ。マニュアルにだってそう書いてあ るもん。」とお思いの方もおられるだろう。それはまあその通りなのだが、 マニュアルが言っているのは、プリンタが 1 インチあたり最高 720 個の インクのドット(各ピクセルに対して平均 3 個のドット)を吹き付ける能 力があるということだ。ピクセルとドットが別物だということをお忘れな く!

ここで数学の話に戻ると、大きさが 8.8 インチ x 6.6 インチの 640 x 480 の画像がある場合、この画像には 1 インチあたり 72 個のピクセルがあ り、プリンタは 1 インチあたり 216 個のドットを吹き付ける(1 ピクセ ルあたりインクを 3 ドット x 72 ピクセル = インク 216 ドット)。

720 dpi のプリンタを買ったつもりなのに 216 dpi にしかならないので、 これは断然返金してもらうべきだとお思いかもしれない。そうではないの だ。同じ画像を縮小して、ピクセルを 1 インチあたり 240 個詰め込めば 720 dpi で印刷することができる。すると、各ピクセルにインクが 3 ドッ ト割り当てられ、本来可能な 720 dpi での出力が実現できるのだ(残念、 返金はダメのようだ)。ピクセルをこれだけぎゅうぎゅうに詰め込むには、 8.8 インチ x 6.6 インチの画像は 2.6 インチ x 2.0 インチ(6.6 x 5.1 cm)に縮小しなければならない。額に入れて人形の家に飾るには最適なサ イズだろう。

だがご心配には及ばない。この 3:1 の縮小は極端な話で、必ずしも必要で はないのだ。4.4 x 3.3 インチ(72 ppi から 144 ppi へとピクセルを詰 め込む)でも立派な写真ができるし、72 dpi のままで 8.8 x 6.6 インチ の良好なプリントを得ることもできる。もちろん、1024 x 768 ppi のカメ ラで撮った写真なら 7.1 x 5.3 インチ( 18 x 13.5 cm、144 ppi)でも素 晴らしいプリントが得られるし、少し離れて眺めれば14.2 x 10.6 インチ (36.1 x 26.9 cm、72 ppi)でもそこそこの写真が得られる。画像がどう 見えるかは鑑賞距離と大いに関係があるのだ。たとえば、屋外広告の画像 はたったの 18 dpi で印刷されていることをご存じだろうか? 遠くからな 十分きれいに見えるのだ。

ここまでの算数から引き出される結論は、デジタルカメラにおいては解像 度は高ければ高い程良いということだ。そこそこの大きさのプリントを作 りたいのであれば、財布が許す限り高解像度のカメラを買うべきだ。ほと んどのカメラは解像度の高低を切り替えることができるが、ほとんどの場 合高い方を使うことになるだろう。

高解像度は巨大なり -- 解像度が高いということは当然ファイルサイズ が大きいということでもある。たいてい画像はカメラ内で JPEG(Joint Photographic Experts Group)方式で圧縮されているのだが、それでも大 きいのだ。最初は自分の撮ったショットをすべて残しておきたいと思うだ ろうが、そんなことをするとあっという間にハードディスクが一杯になっ てしまう(リムーバブルドライブと一緒にカートリッジをごっそり買う理 由にもなってくれるのだが)。

画像や圧縮率(選択モードがついているカメラが多い)次第でファイルの サイズは変わってくる。圧縮していない画像は圧縮したものに比べて 5 倍 〜 20 倍ほどサイズが大きくなるだろう。50K に圧縮した 640 x 480 ppi の画像は、画像編集用のプログラムで開けるとだいだい 900K に、200K に 圧縮した 1,024 x 768 ppi の画像は 2.25 MB になる。そして(今回取り 上げることことにしている 250 ドル 〜 1,300 ドルの価格帯のカメラでの 最高解像度である)1,280 x 1,024 ppi の場合 900K の JPEG 画像が 3.75 MB にまでも膨れ上がるのだ。

しかし、これはまだ序の口にしかすぎない。画像を編集する際には、質の 低下を招いてしまう JPEG 形式で画像を保存したくないと考えるだろう。 質の低下というのは、ファイルサイズを小さくするために画像情報の一部 を捨てるために起るもので、一度捨ててしまった情報はオリジナルの画像 (すなわち全く手を加えていない状態で保存されているもの)に戻らない 限りは取り戻せないのである。そこで、画像編集プログラムによっては LZW で全く情報を捨てずに圧縮できる TIFF(Tagged Image File Format)形式 か圧縮しない PICT 形式で保存することになるだろう。(画像ファイル形 式および圧縮については NetBITS-007 をご覧頂きたい。)

<http://db.netbits.net/getbits.acgi?nbart=04458>

忍耐は善なり -- では少々閑談でも。我が家には猫が数匹いるのだが、 新婚カップルに会うと子供を作る前にまず猫からといつも言っている(生 物学的には不可能なことであるが、私の言いたいことは判っていただける だろう)。猫を飼うと、我慢ということやそれなりの付き合い方というも のを学ぶことができるのだ。デジタル写真でも同じことが言える。間に合 わせの満足でよいのなら確実に得ることができるだろうが、同時に我慢と いうことを学ばなければならないだろう。

生まれて始めてデジタルカメラで撮った画像を Mac のシリアルポートを 使ってハードディスクに転送した時は、興奮のあまり画像一枚を送るのに 約 30 秒もかかるということに気が付かなかった。たいしたことでないよ うに聞こえるかもしれないが、40 コマを送るのに単純計算でも 20 分、さ らに縦位置で撮ったものを首を曲げて見なくてすむように正しい方向に回 転させたりもしなければならないので所要時間はさらに増える。

さて、転送が終わったら次は良いもの悪いもの没などの仕分けをしなけば ならない。今のところ簡単に仕分けをする術がないのだ。ダウンロードす る前に表示させる“デジタルコンタクトシート”は、画像があまりにも小 さいために細かいところを見ることができず木偶の坊でしかない。だから 結局ほとんど全部を転送させるはめになる。画像がディスクに収まったと ころで、今度は、画像をスクリーン上に並べる簡単な方法がないという事 態に出くわすことになる。サイズを変更したり、チョコチョコと手を加え てあげたりしなければならない。

Jade 1.2 というフリーウェアのプログラムがあり、画像フォルダをそのプ ログラムのアイコンの上にドラッグ ドロップすると写真が様々なサイズ のタイル状またはスタック状に表示される。素晴らしいものではあるが、 無念かな今のところ写真を正しい向きに回転させることはできない。

<http://www.pdn-pix.com/pdntools.html>

これら諸々のことは将来的には改善されて、瞬時に大量の画像を転送し、 適切な位置や選択ができるソフトが現れる日が来ることと思う。だが、今 は未だ忍耐が試される時なのだ。

画像処理ソフト -- 画像を転送したり処理したりするのに画像処理ソフ トが欲しいと思うだろう。たいていのカメラメーカーがこの処理を簡単に してくれるプラグインを出している。そしてたいていのカメラにクロスプ ラットフォームである Adobe の PhotoDeluxe がバンドルされている。私 としては PhotoFix の方が好みである(これはバンドルされる時は PhotoStudio の名前で呼ばれる)。32 回の瞬時取り消し・やり直しができ るようになっているおかげで、学習曲線など無いに等しい。本来写真専用 の暗室で行なうようなことをセミナーなどの練習なしで手軽に実現できる のだ。画像処理ソフトの大御所 Adobe Photoshop という選択肢もあるが、 趣味でデジカメをやる人には、とても手におえるしろものではないし、値 段のほうも手が届かない。

<http://www.adobe.com/prodindex/photodeluxe/main.html>
<http://www.microspot.com/>
<http://www.adobe.com/prodindex/photoshop/main.html>

感度 -- 普通のカメラでは感度でフィルムを選ぶことができるが、1,500 ドル以下のデジタルカメラの場合、感度は(普通のフィルム換算で ISO 50 〜 200 に)固定されている。だが、これはたいした制約ではない。ほとん どのカメラが光が少ない状況でもちゃんと写るようになっている。これは レンズが f 2.8 に相当するぐらいに結構明るいおかげである。たいていの ものにほぼ標準でフラッシュが内蔵されており、暗い時、日中シンクロ、 コントラストを高めたい時に役に立つ。さらに、時が止ったかのように写 すために、シャッタースピードを 1/10,000 秒まで上げることのできるも のまである。

シャッターを押してから実際に露光するまでのわずかなタイムラグに最初 戸惑うかもしれない。撮影前の測定やホワイトバランスを考えるのに何分 の一秒かがかかるのだ。次のショットまでにカメラが画像を処理・圧縮す るのにも時間がかかるし、フィルムを巻き上げる音がしないことを物足り なく感じる御仁がいるだろう。だが、この辺のことにはすぐに慣れるだろう。

夢は手中に ? -- Brady や O'Sullivan のような南北戦争を写したカメ ラマン達は、暗室テントの中で毒薬でもある感光剤をプレートに塗り、乳 剤が乾く前に撮影をしなければならなかった。これも戦いそのものだった が、そこに現れるものへのスリルがために彼らは撮影していたのだろう。 デジタル写真の世界に一歩足を踏み込めば彼らと同じような感覚を味わえ ること請負だ(それも毒など触らずに)。

来週は、価格帯が 250 ドル 〜 1,300 ドル程度の中から私が選んだデジタ ルカメラ、ベスト 8 をお送りしよう。

[この記事の著者である H. Bleich 氏は写真家、ライター、映画製作者、 音楽家、教師と多くの顔を持っている。現在は、双方向テレビを通じて医 学的または心理的問題を抱える子供達のケアを行なう The Children's Telemedical Health Fund の専務理事を務めている。]

<http://www.cthf.org/>


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