TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS-J#427/27-Apr-98

数字をまじめに扱う場面になると、たいていの Mac ユーザーは Microsoft Excel を使い始める。しかし最新バージョンの Microsoft 社の表計算ソフ トはアップデートする価値があるのだろうか? Matt Neuburg がこの問に答 えを出すため Excel 98 を調べてくれる。また今週は、Mac が Quicken を 失うという大事件について Adam が周辺事情を探り、今なお健在の Macintosh 版個人向け財務ソフトも紹介する。最後に、Eudora Pro 4.0.1 や HyperCard 2.4、Dreamweaver 1.2、AutoShare 2.2、Assimilator 2.0 などの新ソフトウェアのリリースをお伝えする。

目次:

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MailBITS/27-Apr-98

(翻訳:秋山 晃子 <nobineko@club.udn.ne.jp>)
(翻訳:亀岡 孝仁 <tkameoka@fujikura.co.jp>)

Eudora Pro 4.0.1 アップデータ配布開始 -- Qualcomm 社が Eudora Pro 4.0 から 4.0.1 バージョンへの無料アップデータの配布を始めた。この アップデートでは新しい機能追加があまり無いものの、部分的な改良が数 多く施されている。たとえば、Filters ウインドウでの検索機能がかなり 改良されている、HTML の構文解析やパフォーマンスがスムーズになってい る、ニックネームの自動補完機能が向上ししている、スタイルテキストと プレーンテキストの文書を 1 本の MIME メッセージで一度に送信すること が可能になっていることなどである。付け加えて、私は Eudora Pro 4.0 にも備わっている、ある素晴らしい機能を最近知ったばかりだ。それは次 のようなものである。ある選択したメッセージにどのフィルターが適用さ れているのかを調べるには、Shift キーを押しながら Windows メニューか ら Filters を選択するとよい。すると Eudora は Filters ウインドウを 開いて該当するフィルターを示してくれる。Eudora Pro 4.0.1 への更新は きわめて重大とは言えないが、これらの改良は 2.3 MB のダウンロード をするだけの十分な価値がある。 [ACE]

<http://eudora.qualcomm.com/pro_email/updaters.html>

Apple 社が HyperCard 2.4 を出荷 -- 休止状態の二年間を経て、Apple 社は本家本元のオーサリングそしてスクリプティングツールである HyperCard のアップグレードをリリースした。追加的なアップグレードで あるが、HyperCard 2.4 には QuickTime 3.0 への広範囲なサポート (QuickTime の制御や再生を行うリアルタイムスクリプティングを含む) や、QuickTime VR の場面へのサポートが追加され、インターネット設定で 指定したプラウザで URL ページを開けるようなスクリプトを書くこともで きるようになった。また HyperCard 2.4 はバグが修正され、インター フェースも少し改良されている。たとえば、スクリプトエディタのハンド ラーポップアップやフローティングウインドウは Mac OS 8 でも正しく表 示されるようになっている。HyperCard 2.3.5 の所有者はアップデータ (5.7 MB のダウンロード)を無料ダウンロードできる。所有してない人は HyperCard 2.4 を 99 ドルで Apple Store から購入することになる。これ は、QuickTime 3.0 アーキテクチャに統合するよう全面的に作り替えられ ると以前から噂されている HyperCard 3.0 ではないものの、HyperCard を 長い間支持してきた人たちの忍耐に応えるために、なんらかの動きを見せ ることが重要だと HyperCard 開発チームが感じていたことを示すものだ。 [GD]

<http://www.apple.com/hypercard/>
<http://www.apple.com/store/>

新 Virtual Desktop -- Virtual Desktop について“モニタのシールド と予備知識” TidBITS-426 で取り上げたあと、AWOL Software Productions 社の Ross Brown 氏 <ab026@freenet.carleton.ca> から次の ような助言をいただいた。Mac OS 8.0 と 8.1 に互換性があるのは Virtual Desktop 1.9.2 であり、1.9.1 ではありません。98 年 4 月 24 日にリリー スされた新バージョンは今週後半 Info-Mac に収録されることになってい ます。 [ACE]

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=04835>
<ftp://mirrors.aol.com/pub/info-mac/gui/virtual-desktop-192.hqx>

Dreamweaver 1.2 アップデート入手可能 -- Macromedia 社が出した、299 ドルの Dreamweaver への最新アップデートは引き続きデザイナーの興味を そそるものになっている。Dreamweaver は Cascading Style Sheets やア ニメーティッドボタンのような新しい機能を擁するオーサリングソフトウェ アである。新バージョン 1.2 にはサイトマネージメント機能や、バージョ ン 4.x のブラウザに特有なコードをバージョン 3.x のブラウザに対応さ せるための変換ツール、ブラウザの種類を検出したりや画像を前もってロー ドするとかの JavaScript 新機能、そしてホームページを表示しながらで きる編集機能などが追加されている。登録ユーザーは 5.4 MB のアップデー タをダウンロード、または 19.99 ドルで CD-ROM を注文できる。30 日間 無料お試し版(6 MB)も入手可能だ。 [JLC]

<http://www.macromedia.com/software/dreamweaver/>

CE 社 QuickConference を売却 -- CE Software 社は Iowa 州所在の Prairie Group が CE 社のロングセラーであるメールソフト QuickMail か ら派生したインスタント・メッセージソフトである QuickConference IP の開発と販売を引き継ぐであろうと発表した。QuickConference IP は Prairie Group から 98 年 5 月 1 日発売される予定で、TCP/IP を使って ローカルネットワークかインターネット上で Mac OS , Windows NT, そし て Windows 95 のユーザーがインスタント・メッセージをやりとりする事 ができる。CE 社のベテランでよく知られた Mac 開発者である Don Brown 氏が Prairie Group に移り本ソフトの開発を率いる。値段は 5 ユーザー ライセンスで 119.95 ドルである。 [MHA]

<http://www.cesoft.com/company/pressreleases/qcip980421.html>
<http://www.prgrsoft.com/>

PageSpinner Extension サイトを編む -- HTML エディタである PageSpinner のファンは Optima System 社の新製品 Site Assistant 1.0 に注目すべきである。これは PageSpinner のエクステンションでサイトに 関する運用を効率化する。機能としては、簡易イメージ挿入、Anarchie や Fetch 経由の複数ページのアップロード、そしてページアーカイブがある。 Site Assistant は 20 サイトまでのセッティングを記録し現在活動中のサ イトを Finder リストに似た様式で表してくれる。Site Assistant はまた マルチファイルの初歩的な Search & Replace 機能を有している。Site Assistant は小さなサイトを運用していくには手頃なものであろうが、大 きなサイトの運用には遅すぎるし、パワーユーザーの要件には満たない部 分がある;たとえば Search & Replace 機能では、ワード完全一致だけの 検索とか置換を個別に承認するとかいった基礎的なオプションが無い。Site Assistant は 25 ドルの PageSpinner 登録ユーザーには無料である。更に 詳しい PageSpinner 記事は TidBITS-384 の "Web を編む - Part I; ト レードオフと PageSpinner" を参照のこと。[TJE]

<http://www.algonet.se/~optima/pagespinner.html>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=02195>

AutoShare 2.2 リリース -- Mikael Hansen 氏がフリーウェアのメーリ ングリストマネジャーであり自動返信機である AutoShare 2.2 をリリース した。バージョン 2.2 で新しくなったのはリリースされたばかりの Eudora Internet Mail Server 2.1 との.互換性、AppleScript 辞書への機能強化、 そしてプロセスエクステンがある。最も注意を引くのは、AutoShare 2.2 がハードおよびソフトのバウンス [返却メール ] を扱うバウンスモジュー ルを含んでいることである。ダウンロードは 1.8 MB である。[ACE]

<http://www.dnai.com/~meh/autoshare/>
<http://eudora.qualcomm.com/eims/updaters.html>

抵抗無用... あなたは同化されてしまう -- Stairways Software 社が シェアウェアである Assimilator 2.0 をリリースした、これは学生ラボ、 試験ラボ、そして店などで Mac を一般の使用に供する様な状況下で沢山の Mac を管理する手助けをするものである。要は Assimilator は大量の Mac のディスクがほぼ同一のファイル構成(初期設定ファイルは異なっていな ければならない場合がある)となる様にするもので、ネッワーク上の AppleShare サーバからコピーしてくる事で行う。2.0 での新機能には、複 数パーティション、TCP/IP 上の AppleShare IP が扱え、そして MacLabManager メーリングリストからのフィードバックに基づいた新規の カスタマイズ機能がある。Assimilator についての短い紹介が TidBITS-304 から始まる記事 "InterviewBITS with Peter Lewis" にある ので読んで欲しい。Assimilator 2.0 は個人用は 10 ドル、サイトライセ ンスが 500 ドル、複数サイト法人ライセンスは 2,000 ドルである。アッ プグレードは 98 年 1 月 1 日以降の登録者には無料であるが、それ以外 は一台当たり 5 ドルである。[ACE]

<http://www.stairways.com/assimilator/>
<http://www.stairways.com/mailinglists/maclabmanager.html>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbser=1037>


財務と競争?

by Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
(翻訳:尾高 修一 <odaka@iprolink.ch>)

先週の Intuit 社が 売上減少を理由に Quicken for Macintosh の開発を 中止するという発表は、たくさんの批判的意見を呼び起こした ( TidBITS-426「Intuit 社が Quicken Macintosh 版を打ちきる」 を 参照)。Apple 社の年次株主総会での Steve Jobs 氏の発言は、Intuit 社 が考えを変えるかもしれないという期待を持たせるものだったが、実際に どのような展開になるかは予断を許さない。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=04830>

悪いのは誰? できたての TidBITS-Talk リストでのディスカッションは なかなか興味深かった。Intuit 社も悪いが、Apple も悪いという意見が大 勢を占めたからだ。Intuit がどうしても欲しくなるようなアップグレード を実現できていなかったと感じている人も何人かいた。見るべき新機能が 乏しく、Windows 版にはあった機能が Mac 版には搭載されないということ だった。また、人によっては古いバージョンの Quicken が必要な機能をす べて備えていたため、アップグレードの必要はないと感じていた。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=04834>

当初、私はこの Intuit 社の方針転換の責任が一部 Apple にもあるという 説には賛同していなかった。だが、Intuit 社が市場を支配することになっ た原因の一つには Apple が多くの Performa モデルに Quicken をバンド ルしたことが挙げられる。TidBITS を検索すると、Claris 社は早くも 1992 年から ClarisWorks に Quicken をバンドルしていたことがわかるのだ。 Quicken が市場を支配していたがために、他の製品とのバンドルによって 新規購入ユーザーや旧バージョンをアップグレードするユーザーが減少し、 リリースごとに潜在購入者数が確実に減少していったのだ。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=02830>

Quicken の競合製品、CheckWriter Pro を作っている Aatrix software 社 の CEO、Steve Lunseth 氏は、Apple と Intuit のバンドル契約によって 他の個人向け財務プログラムが消滅することになったと述べた。すべての Performa に付属してくる無料のソフトウェアと競争することは無理だから だ。つまるところ、Mac 版 Quicken を失ったことが Apple にとって問題 だとすれば、それもある程度は自業自得といわざるをえない。

<http://www.aatrix.com/>

選択枝 -- 主に Apple による Quicken バンドルの結果として、Aatrix 社は CheckWriter Pro の販売を中止し、MECA Software 社は Managing Your Money を同様の休眠状態に追い込んだ。唯一生き残った個人向け財務 ソフトウェアは、その名も Survivor Software 社の MacMoney だけだ。 Survivor Software 社の CEO、Mike Farmer 氏は、「宣伝する予算こそあ りませんが、私たちはずっと MacMoney のサポートや改良を行なってきま した。」と語ってくれた。MacMoney は QIF ファイルを読むこともできる ので、Quicken ユーザーもその気になればほとんどのデータを移すことが できる、とも述べていた。

<http://www.survivor.com/>

Intuit と Quicken がこういう事態になったので、CheckWriter Pro をよ みがえらせる可能性はあるかと Steve Lunseth 氏に尋ねてみた。彼はすぐ に CheckWriter Pro は Mac OS 8 上で問題なく動作するとし、なかなか強 力そうな機能を次々と紹介してくれた。そうして一瞬黙った後、もし Intuit が Quicken 98 for Macintosh を現状のままにし、Apple が他のデ ベロッパーを援助して競争を奨励してくれたら、CheckWriter Pro を再発 売するだろうと述べた。

MECA Software 社から受け取った情報は Managing Your Money は市販され ていないということだけだったが、十分なインセンティブさえあれば復活 も夢ではないかもしれない。

Apple 次第 -- どうやら様子が見えてきたようだが、あまり期待はでき そうにない。MacInTouch で Henry Norr 氏がレポートした Apple の株主 総会によると、Steve Jobs 氏は“Intuit に正面から立ち向かわなかった” 責任は認めている。しかし、上記からもわかるように、対 Intuit 戦略の 欠如だけが原因なのではない。

<http://www.macintouch.com/applemtg98.html>

Steve Lunseth 氏は、Apple がほかのデベロッパーを援助したら CheckWriter Pro を復活させても良いと語っていた。 TidBITS-425 の 「デベロッパー用プログラムと QuickTime ライセンスでの激怒」で Geoff Duncan が述べたように、Apple は今のところ小さなデベロッパーには興味 が無いようだ。Henry の株主総会レポートによると、Jobs 氏は Apple の 新デベロッパープログラムを擁護し、トップ 100 のデベロッパーにもっと 注力しなければならないと述べた。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=04821>

Apple が生き残って繁栄するためにはトップ 100 のデベロッパーが必要な のは確かだが、私には Apple がまたもや業界の影響関係を無視しているよ うに見える。小さなデベロッパーは大企業が吸い上げる才能のプールとなっ ているのであり、小さなデベロッパーこそが特に新分野での新しいアイデ アの源泉となっているのだ。

この関係は大切で、短期的な収益は長期的には大きな損害につながりかね ない。HyperCard が良い例だ。HyperCard は長い間無料だったが、その間 に何千人もの個人ユーザーがそれぞれのニーズにみあった小さく、便利な ソリューションを作り出すことができた。こういったソリューションが HyperCard を必要としたことは、同時に Macintosh をも必要とすることで もあり、したがって HyperCard ベースのソリューションを必要とする組織 では Mac が永遠に必要とされることを意味していたのだ。HyperCard を商 用マルチメディアオーサリングツールに仕立て上げようとしたことにより、 Apple は何千人もの小さなデベロッパーから Mac を新たな大口ユーザーの もとに送り込むきっかけとなるソフトウェアを作り出す機会を奪ったのだっ た。

私も皆さんと同様、Apple と Intuit の今後の Macintosh 計画は知らな い。しかし、他のデベロッパーを締め出すようなことは続けないでほしい と切に願う。誰のためにもならないのだから。


セルに捕われて: Excel 98

by Matt Neuburg <matt@tidbits.com>
(翻訳:尾高 里華子 <odaka@iprolink.ch>)
(翻訳:松岡 文昭 <mtokfmak@mxa.meshnet.or.jp>)

Microsoft Excel を表計算ソフトと呼ぶのは、グランドキャニオンを溝と 呼ぶようなものだ。そして、グランドキャニオンと同様、Excel は巨大で 厳しく他を寄せ付けない地であるような感があるが、実際は力と美が溢れ ている。しかし、その大半は人目に付きにくくなっている。そしてある種 の苦労をともなわなければ近づくことができない。だからこそ、Excel 98 が Excel 5 に、中でも特にインターフェースに大きなに改良を加えたもの だということは歓迎できる。

<http://www.microsoft.com/macoffice/>

Excel は成熟し洗練された高機能のソフトであり、大幅な変更を望む者は いなかった。それに、大改良が施された Excel 5 が 4 年前に出ていた。 それ以前はセルのデータをセルに直接入力することができず、専用の入力 バーに入力しなければならなかった(多くの初心者がこれに戸惑ったりお じけづいたりした)。また、セルテキスト内での書式を適用できないとか、 ワークブックが難しくかつ貧弱だとか、名前を定義した範囲は使いづらい とか、マクロ言語はワークシートのセルに詰め込まれた解読不能の魔法の 文字列でしかなく、デバッグすると体重が 10 分の一ほど減ってしまうと いうようなこともあった。

バリバリの数字たち -- Excel 98 を 97 分の税申告の準備に使ってお手 並みを拝見することにした。私の税申告用紙の内容そのままのワークシー トを作成すること主な作業だった。それから、私の数字(様々な種類の支 出や収入)を繋ぎあわせた。つまり、和や差を出すような計算や百分率、 あるセルから別のセルへ数字をコピーするなどだ。新しい Schedule D の ような用紙では様々な割合で税を計算しなければならず、Form 2210 では 既に支払った推定税額との過不足調整しなければならない。これを自分の 手でやろうと思ったら面倒でやる気も失せてしまうような作業なだ。だが、 Excel は人の手を煩わせることもほとんどなく、魔法のように自分で用紙 を埋めていってくれるのだ。

税申告用には Excel を表計算として使っていたが、通年では収入や支出が ある度にそれを記録していくデータベースとして使っていた。そしてその データベースをソートしたりフィルタをかけたりして、仕事用の電話代の ような特定の情報を得るのに使うのだ。各行に項目(金利、配当、事務経 費、旅費など)ごとの集計を行い、縦方向に四半期ごとの計、そして縦横 それぞれの総計を入れていく“ピボットテーブル”を作ることができるの は Excel のすごいところだ。これで表計算から税金関係の数字を取りだす ことができるのだ。

グラフを使ってみるために、Excel で持ち株のポートフォリオをたどるよ うにしてみた。私は Yahoo のカスタマイズ可能なポートフォリオ機能を利 用しており、毎日持ち株の価格を Web ページで確認できるようにしてい た。Excel は HTML も読めるようになったので、その Web ページをイン ポートして Visual Basic が即座に数字を入れるところに日付と値を加え ていくようにルーチン化し、それがグラフに反映されるようにした。(そ の後、Yahoo やブラウザを介さずに Excel の“Web クエリー”を使って株 価をインターネットから直接インポートするさらに進んだ自動化を実現す ることができた。)

<http://quote.yahoo.com/>

以上の実験から、Excel 98 は実に使いやすいという印象を持った。Excel 5 に慣れている方なら、98 をすぐに使うことができるだろし、同一プログ ラムではないだろうかという第一印象を持つかもしれない。Excel を初め て憶えるのにも 98 は申し分のないバージョンだ。たまにしか使わない人 やパワーユーザーは、やりたいと思うことに手が届きやすくなったと感じ るだろう。

心配と安心 -- では、逆説を一つあげよう。Excel のように大きくパワ フルなソフトは、えてしてその力が探求しにくいようになっている。恐れ がそうさせているのだと思う。何かアクションを実行した時の結果を先に 見越すことができない場合、実際に行うのをためらってしまうということ がある。そのためついつい怠け者になってしまうのだが、ある機能を試し てみないことの安全性の方がそれを学んで得ることのできるだろう利益よ りも勝っている時は、その機能に手を出さない。

Excel はこの理論に実に当てはまるのだ。ひとつには、扱うデータが重要 なものだということがある。一つの失敗が Beardstown Ladies 達よりも大 変な問題になりかねない。また、Excel の動作のほとんどがユーザーの目 には見えないようになっているのだ。画面に表示されているワークシート は“本当”の実体ではない。“本当”の実体は隠されている計算式とそれ らが各セルとどのように相互作用するかである。たとえば、苦労して式を 作ったとしよう。その苦労がゆえについ保守的になり、誤ってそれらがな くなってしまうことを恐れるのだ。この式を少し変更したものか、それと もそのままにしておいたほうがいいのだろうかと考えるのだ。このセルを 移動させたら、データがだめになったり式が壊れたりするだろうかと恐れ るのだ。

以上の理由から、Excel 98 に施されたインターフェースの改善は非常に大 切なものだったのだ。この手の心配を少なくしてくれたという点で、ユー ザーがさらに信頼し、さらに大好きになり、ついには生産性の向上にもつな がるのだ。

例を挙げると、選択しているセル領域をコピーまたは移動させようとドラッ グすると、手を放したときのドラッグ先の領域をアクティブで表示してく れる ScreenTip がカーサーの側に現れる。セル範囲が自動的に入力される ように選択領域の隅をドラッグすれば、ScreenTip ボックスには Excel が 入れてくれる値が表示される。どちらの場合もその動作がどんな結果をも たらすか確信できないならば、Control キーを押しながらドラッグすると 手を放したときにコンテクストメニューが現れる。この機能は 5.0 にも搭 載されていたが、98 のほうが使いやすくなっていると思う。それでも心配 な方は、ついに Excel にも16 行程までの Undo と Redo が搭載されたこ とを記憶にとどめておいていただきたい。

入力データの種類を間違えるというようなミスを犯さないように、セルに 入力規則を設定できるようになった。その規則に合わない入力が行われる と警告が出るようになっている。さらに、この入力規則設定で(特に関連 のなさそうに思われる)別の便利な機能を組み込むこともできる。セルを クリックすると自分の作った ScreenTip が現れるようにできるので、その セルの役目を書き留めておくと便利だろう。(また、セルに貼り付ける事 実上のメモとしても使えるし、コメントと呼ばれるこれはかつてはセルの 隠れた機能だったが、今ではコメントの付いているセルを矢印で指したテ キストボックスとして表示することができる。)さらに、ユーザーが入力 する値を選択するドロップダウンリストを表示させることのできる。

Excel にまつわる心配事では式が適切に機能しないのではというものがあ る。今では式に関して確信を持つのが簡単になったのだ。ほかのセルの値 を使うように指定してある式の入ったセルをダブルクリックすると参照し ているセルに色分けされた枠線が付く。正しい数字同士を組み合わせてい るかどうかを先に確認したい場合、このテクニックは Excel のワークシー ト分析を使うよりも簡単である。さらに、枠線を動かしたりサイズ変更す れば、式の参照領域を変更することができる。

複雑な式を作ったり、それに関するトラブルシューティングはとてつもな く大変な作業だったが、今では簡単で楽しくさえもある。式を編集すると、 大幅に改良された Function Wizard が実際にどの値がどの関数に渡されて いるかを表示してくれる。これで式の中のどの関数が間違った出力をして いるかと、その理由が即座に分かるようになっている。さらに、入力中に かっこを閉じるのを忘れるなどのタイプミスを犯した時、Excel は文句を 言ってユーザーをほったらかしにするのではなく、なかなかスルドイ修正 案を提示してくれるようになったのだ。

グラフとその他の賢くなった事 -- グラフ作成は今回とても簡単になっ た。グラフウィザードは、あなたのデータを用いながら、完成されたグラ フがどのようになるかをすべてのステップで正確に表示してくれる。選択 されたグラフ(もうダブルクリックして選択する必要はない)は今回追加 されたグラフメニューから容易に修正ができる。ScreenTips はカーサーの 下にあるのがグラフのどのデータ値またはエレメントなのかを表示し、分 析と編集に役立っている。

グラフウィザードのある時点で、セル範囲を入力する編集フィールドを含 んだダイアログボックスに出くわす。これは Excel ではよく見られる場面 だ。その範囲を入力するための最も簡単な方法は通常それを選択すること であり、Excel では常にそれが可能だったのだが、ダイアログボックス自 体が邪魔となっていたのだ。今回、このような場合は(グラフウィザード だけでなく Excel 全体を通して)、「折りたたみ」ボタンでダイアログを 編集フィールドのみに縮小し、そして選択を行った後で、ボタンを再度ク リックしてダイアログを元の状態に戻すことができるようになった。これ は小さなインタフェースの変更が如何に大きな違いとなるかの良い例である。

フォーマットについてもたくさんの細かな改善がなされている。たとえば、 セルの統合、テキストの回転、セルの中身を字下げする機能、印刷範囲の 容易な調整だ。ピボットテーブルは、フォーマット、修正、維持がより簡 単になっている。共同作業能力も、ワークブック共有(複数のユーザーが 同じワークシートをネットワーク上で同時に開き変更できる)や Word と 類似の修正追跡機能にて強化されている。いくつかの基本的上限も見直さ れ、ワークシートのサイズは現在 64,000 列で - そう、私の知人にはその 上限に常に達するスプレッドシートを用いる人達がいる - セルには 32,000 字を持たせることができる。

オフィス・パーティー -- Excel は Office 98 との統合によりいくつか の特徴も継承している。これらは前回の私の Word 98 のレビューに述べて いる( TidBITS-425「Word 賢者」 を参照)。アニメーション化された Office Assistant の Max がいる。拡張されたドロー用ツールのコレクショ ン。ハイパーリンクがあり、HTML の読み書き能力も備えている。 (Internet 経由でファイルを保存することはできないが、Windows 版同 様、FTP にてのアップロードが可能だ。)そして次に Visual Basic を用 いたディバッグ環境は Excel 5 程にはもう良くはないという事実もある (「ウォッチ」の設定がなくなっているのだ)。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=04822>

統合に費やされたはずのこれらすべての歳月の後も、Excel と Word がそ れほど似ていないままなのは不思議だ。たとえば、Word のメニューは常に カスタマイズが可能であったが、今回の Excel が手作業でメニューをカス タマイズできるの最初のバージョンなのだ。キーボードショートカットは Word のものとは異なり、Word のようなカスタマイズはできない。Excel の内部機能は、Word のマクロ・コマンドのように完全に人目につくように なっていない。Word はツールバー項目のキーボードショートカットを ToolTip に表示できるが、Excel はできない。いくつかのユーザー設定オ プションは Excel に対してのみ有効で、他はすべての Office プログラム に適用されることから、試してみるまでどっちがどっちか判らない。Excel は Word にはない描画オブジェクト「スマート・コネクター」(たとえ図 形の場所が変更されても図形の間のリンクを保持する矢印)を自慢として いる。テンプレートはとても異なった方法で提供されている。Microsoft 社はそろそろ「雄大な統一」を行うべきである。

総合計 -- Excel 98 での私の体験はほとんどが肯定的なものであった。 機能拡張でのコンフリクトが原因と思われるいくつかのバギーな動きはあっ た。様々な時点で、階層メニューが作動しなくなったり、メニューが全く 動かなくなったりした。Visual Basic で作業中(特に新しいダイアログ作 成時)のフリーズもあった、また、まず Excel 5 の文書を開き、それを Excel 98 形式で保存しようとしても、できなかったのだ。これらの問題の ほとんどは私は解決したと思っているが、時折、逸話的だが説明のつかな いフリーズに遭遇している。でも、Excel 98 は、ほとんど定期的に MacsBug のお世話になっていた Excel 5 に比べ、安定性で劣っているとは 思えない。

これらのわずかな問題は別として、Microsoft 社は、たくさんの方法で、 Excel を単に使い易くしただけでなく、威圧感を少なくしたことで、賞賛 に値するのだ。それは、私が彼等の仕事は完了したと考えているというこ とではない。Excel には未だにインターフェースが必要以上に不可解な箇 所がたくさんあるのだ。しかしこれまでの努力は確実に成果をあげており、 またプログラムの機能性に関してはこれ以上に望むものがほとんど残って いないゆえに、Microsoft 社が、ユーザーが Excel の持つパワーに容易に アクセスできるよう、この方向を維持することが望まれる。

最後に、要点として、あなたはアップグレードすべきだろうか?もしあな たの行う作業が Excel 5 のインターフェースの煩雑さと関わりがなく、ま たはそれらに対し全く免疫ができているほど、あなたがエキスパートであ るなら、アップグレードは価格に見合わないと判断するかもしれない。も う一方で、あなたが私のようにグラフの x- 軸のスケールを変更するのに 不安に感じたり、何故ある計算式が奇異な値を出したかを調べるのに何時 間も費やしたことがあるなら、多分 Excel 98 が欲しいと思うだろう。そ して、新しいグラフィック、印刷、共同作業や Web 関連の機能が必要なら ば、アップグレードはほぼ必須である。

Microsoft Office 98 スイート一式のアップグレード費用は 299 ドル。 Excel 98 単体は 149 ドル。新規ユーザーの場合、Office 98 は 499 ド ル、Excel 98 は 399 ドル。これらは希望小売価格であり、実勢販売価格 はもっと安くなる。TidBITS のスポンサー Cyberian Outpost 社は Office 98 を 447.95 ドルで販売しており、Small Dog Electronics 社では Office 4.2.1 および Office 98 へのアップグレードのバンドル版が 339 ドル (リンクは今週号のスポンサー紹介を参照)。アカデミック・ユーザーに は、Microsoft Office 98 は 199 ドルで、Excel 98 単体は 129 ドル。 Microsoft Office 98 Gold Edition は約 100 ドル高く、FrontPage 1.0、 Encarta 98 Deluxe、そして Bookshelf 98 が含まれている。また本日、 Apple は 98 年 3 月 15 日から 98 年 6 月 15 日迄の間に Mac OS 8.1 と Microsoft Office 98 の両方を購入した場合の 30 ドルの払い戻し販売 促進を開始した。詳細は Apple の Web サイトに載っている。

<http://www.microsoft.com/macoffice/productinfo/macprice.htm>
<http://www.apple.com/promo/>


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